(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】ロールスクリーン装置
(51)【国際特許分類】
E06B 9/54 20060101AFI20230605BHJP
E06B 9/42 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
E06B9/54
E06B9/42 A
(21)【出願番号】P 2019150536
(22)【出願日】2019-08-20
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000112185
【氏名又は名称】ビニフレーム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002712
【氏名又は名称】弁理士法人みなみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早崎 毅
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-194379(JP,A)
【文献】特開2016-132920(JP,A)
【文献】特開2015-214856(JP,A)
【文献】特開2000-96957(JP,A)
【文献】特開2011-26797(JP,A)
【文献】実開昭52-47099(JP,U)
【文献】特開2013-087451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/32-3/34
E06B 9/17
E06B 9/42
E06B 9/52-9/54
E05B 65/06
E05B 65/44
E05C 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形枠体の1つの辺を構成するカバーボックスと、カバーボックスに隣接する辺を構成する框材と、矩形枠体の内周部を閉鎖可能なスクリーンを備え、カバーボックスは、スクリーンを巻き取り・引き出し自在に収納するものであって、ボックス本体と、ボックス本体に開閉自在に取り付けられたカバーを有するものであるロールスクリーン装置であって、
ボックス本体の長手方向端面に取り付けられた閉塞手段と、カバーの開動作を規制するための規制手段を備え、
閉塞手段は、ボックス本体の長手方向端面を塞ぐ閉塞部と、閉塞部から框材側に突出しており框材の端面から框材の内部に差し込まれる差込部を有するものであり、
規制手段は、框材に設けられた規制部材と、框材の外壁面に形成されたスライド孔と、差込部に形成されたガイド部を備え、規制部材が、框材の長手方向に移動可能であるように、スライド孔を通してガイド部に係合しており、規制部材がカバーボックス側に位置するときにカバーの開動作を規制するものであることを特徴とするロールスクリーン装置。
【請求項2】
規制部材は、框材の外壁面上に位置する規制部材本体と、規制部材本体からスライド孔を通して框材の内部に突出する係止部と、係止部からカバーボックス側の反対側へ向けて突出する挟持部を有しており、
規制部材本体がカバーの開動作を規制するものであり、
係止部がガイド部に係合するものであり、
規制部材本体と挟持部とで框材の外壁面を挟み込むものであることを特徴とする請求項1記載のロールスクリーン装置。
【請求項3】
框材は、長手方向に延び端面に開口する差込スペースを有しており、
差込部は、框材の端面から差込スペースに嵌め込まれるものであることを特徴とする請求項1または2記載のロールスクリーン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻き取り・引き出し自在な網やカーテンなどにより窓や出入口などを遮るロールスクリーン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ロール網戸、ロールカーテンやロールブラインドなどのロールスクリーン装置においては、巻き取られた状態の網やカーテンなどのスクリーンが、カバー付きのボックス内に収納されている。たとえば特許文献1に示すのは、ロール網戸の例であり、網戸やその巻取機構のメンテナンスができるように、カバー(開閉扉)が、蝶番機構により回転して開閉自在となっている。そして、カバーを閉じた際には、カバーの蝶番側の反対側の端部が、ボックスに突き当たる上枠および下枠の端部に係止することで、閉状態が維持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような開閉構造のカバーでは、物理的な外力や経年劣化によりカバーが変形すると、カバーを閉じても端部が上枠および下枠に係止せず閉状態が維持できなくなったり、逆に閉状態のカバーが開きにくくなったりするおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような事情を鑑みたものであり、スクリーンを収納するボックスのカバーが多少変形した場合であっても、確実に閉状態を維持および解除できるロールスクリーン装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、矩形枠体の1つの辺を構成するカバーボックスと、カバーボックスに隣接する辺を構成する框材と、矩形枠体の内周部を閉鎖可能なスクリーンを備え、カバーボックスは、スクリーンを巻き取り・引き出し自在に収納するものであって、ボックス本体と、ボックス本体に開閉自在に取り付けられたカバーを有するものであるロールスクリーン装置であって、ボックス本体の長手方向端面に取り付けられた閉塞手段と、カバーの開動作を規制するための規制手段を備え、閉塞手段は、ボックス本体の長手方向端面を塞ぐ閉塞部と、閉塞部から框材側に突出しており框材の端面から框材の内部に差し込まれる差込部を有するものであり、規制手段は、框材に設けられた規制部材と、框材の外壁面に形成されたスライド孔と、差込部に形成されたガイド部を備え、規制部材が、框材の長手方向に移動可能であるように、スライド孔を通してガイド部に係合しており、規制部材がカバーボックス側に位置するときにカバーの開動作を規制するものであることを特徴とする。なお、カバーボックスに隣接する辺は2辺あるが、本発明は、そのうちの1つの辺の框材にのみ規制手段が設けられたものであってもよいし、2つの辺の框材にそれぞれ規制手段が設けられたものであってもよい。また、框材の外壁面に形成されたスライド孔は、全周が外壁面に囲まれたものであってもよいし、一部分が外壁面の端部に開口した切欠状のものであってもよい。
【0007】
また、本発明は、規制部材は、框材の外壁面上に位置する規制部材本体と、規制部材本体からスライド孔を通して框材の内部に突出する係止部と、係止部からカバーボックス側の反対側へ向けて突出する挟持部を有しており、規制部材本体がカバーの開動作を規制するものであり、係止部がガイド部に係合するものであり、規制部材本体と挟持部とで框材の外壁面を挟み込むものであってもよい。
【0008】
また、本発明は、框材は、長手方向に延び端面に開口する差込スペースを有しており、差込部は、框材の端面から差込スペースに嵌め込まれるものであってもよい。なお、差込部が差込スペースに嵌め込まれるとは、差込部が差込スペースに対して丁度嵌まる大きさであって、差込方向以外の方向に隙間がないように挿入されることを示す。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、移動可能な規制部材によりカバーの開動作を規制するものなので、カバーが多少変形した場合であっても、変形量が規制部材の移動範囲に収まるものである限り、確実にカバーの閉状態を維持および解除することができる。そして、規制部材が閉塞手段の差込部のガイド部に係合していて框材の長手方向に移動可能となっているので、框材の加工精度によらず、ガタツキが小さくなり、確実に操作できるものである。
【0010】
また、規制部材の規制部材本体と挟持部とで框材の外壁面を挟み込むものであれば、施工前において、規制部材を框材に取り付けておけるので、効率的に搬送することができ、規制部材を紛失するおそれもない。さらに、規制部材が閉塞手段に加えて框材とも係合する一体的な構造なので、より部材同士のガタツキが小さくなる。
【0011】
また、差込部が框材の差込スペースに嵌め込まれるものであれば、差込部が框材に対して差込方向以外の方向について位置決めされるので、一体的で部材同士のガタツキがない構造となる。さらに、併せて規制部材の規制部材本体と挟持部とで框材の外壁面を挟み込むものであれば、より一体的な構造となるものであり、また施工の際、規制部材を取り付けた框材の差込スペースに差込部を嵌め込むことで、それ以上の位置合わせをしなくても、規制部材の係止部が差込部のガイド部に係合するので、施工が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】規制部材の動作を説明する拡大平面図(上框の天壁を透過して表示したもの)であり、(a)はカバーの開動作を規制した状態、(b)はカバーの開動作の規制を解除した状態を示す。
【
図2】(a)は、閉塞手段と、規制部材および上框との接合状態を示す左面視縦断面図(その他の構成要素を図示省略したもの)であり、(b)は、閉塞手段の差込部のみを抜き出して表示した説明図である。
【
図4】規制部材を示し、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は背面図である。
【
図5】カバーボックスと上框の接合部分の斜視図であり、(a)はカバーの開動作を規制した状態、(b)はカバーの開動作の規制を解除した状態を示す。
【
図6】カバーボックスと上框の接合部分の正面図(規制部材を透過して二点鎖線で表示したもの)である。
【
図8】網の巻取機構を示す説明図(カバーを透過して表示したもの)である。
【
図9】(a)~(c)は、規制部材の組み立て手順を示す説明図(上框の天壁を透過して表示したもの)である。
【
図10】(a)~(c)は、規制部材によるカバーの開動作の規制の説明図(上框の天壁を透過して表示したもの)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な内容について説明する。本発明は、種々のロールスクリーン装置に適用できるものであるが、ここではロール網戸に適用する場合を示す。このロール網戸は、窓の室内側に設置されるものである。以下において、上下左右とは、
図7に示すようにこのロール網戸を室内側から見た状態を基準とするものであり、その状態の手前側(室内側)を前側、奥側(室外側)を後側とする。
【0014】
図7に示すように、このロール網戸は、右側に位置するカバーボックス4と、左側に位置する縦框3と、上側に位置する上框1と、下側に位置する下框2とで構成された矩形枠体を備える。上框1と下框2は、カバーボックス4と縦框3の間に位置しており、上框1の両端面が、それぞれカバーボックス4と縦框3の内周側面の上端部に接しており、下框2の両端面が、それぞれカバーボックス4と縦框3の内周側面の下端部に接している。よって、このロール網戸は、矩形枠体の右辺を構成するカバーボックス4と、カバーボックス4に隣接する矩形枠体の上下辺を構成する框材(上框1と下框2)を備えるものとなっている。また、このロール網戸は、このように構成された矩形枠体の内周部を閉鎖可能な網S(スクリーン)を備える。
【0015】
カバーボックス4は、
図7、
図8および
図10に示すように、上下に延びるボックス本体6と、上下に延びるものであってボックス本体6に開閉自在に取り付けられたカバー5を有する(以下、特に断らない限り、カバー5が閉じられた状態を基準として説明する)。ボックス本体6とカバー5とは、何れも押出形材からなるものである。ボックス本体6は、後側壁面61と右側壁面62を有する断面略L字形のものであって、上面視して2つの壁面は略同じ長さであり、右側壁面62の前端部に断面略C字形のカバー軸部63が形成されている。カバー5は、前側壁面51と左側壁面52を有する断面略L字形のものであって、上面視して左側壁面52が前側壁面51の略半分の長さであり、前側壁面51の右端部に断面略円弧状のカバー軸受部53が形成されている。また、
図1に示すように、カバー5の左側壁面52の後端部には、左側(内周側)に向けて突出する壁面である戸当たり部5aが形成されている。さらに、戸当たり部5aの後側面には、後側に向けて突出する壁面である嵌入部5bが形成されている。戸当たり部5aおよび嵌入部5bは、何れも上面視してカバー5の左側壁面52よりも短いものであり、嵌入部5bは、カバー5の左側壁面52よりも左側(内周側)に位置している。そして、ボックス本体6のカバー軸部63に対して、カバー5のカバー軸受部53が、垂直軸周りに回転自在に嵌合しており、カバー5が開閉自在となっている。
図10(a)に示すように、カバー5を閉じた状態において、カバーボックス4は、左側面(内周側面)の後側部分が開口した状態となる。
【0016】
そして、カバーボックス4のボックス本体6の長手方向端面(上下端面)には、樹脂製の閉塞手段Cが取り付けられている。上下の閉塞手段Cは対称な形状であり、ここでは上側の閉塞手段Cについて説明する。
図3、
図5および
図6に示すように、閉塞手段Cは、ボックス本体6の長手方向端面を塞ぐ閉塞部12と、閉塞部12から上框1側(左側)に突出する差込部13を有する。
【0017】
閉塞部12は、矩形平板状のものであって、ボックス本体6および閉じた状態のカバー5の長手方向端面を丁度塞ぐ大きさのものである。
図8に示すように、閉塞部12は、ボックス本体6に対して上側からネジ止めされている(
図8以外の図においては、ネジおよびネジ孔は図示省略してある)。
【0018】
図1~
図3に示すように、差込部13は、矩形平板状のものであって閉塞部12よりも前後幅および左右幅が短く閉塞部12よりも肉厚な差込部本体13aを備える。差込部本体13aの前側面には、ガイド部31が形成されている。ガイド部31は、左右に延びるものであって、差込部本体13aの前側面から前側に向けて延びる首部31aと、首部31aの前端から上下に向けて延びる頭部31bと、差込部本体13aと頭部31bの間に形成される上下の溝13bと、上下の溝13bの右端部から後側に向けて突出する上面視半円形状の凹部13cからなるものである。上側の溝13bは、首部31aの上面を底面とし、下側の溝13bは、首部31aの下面を底面とするものである。なお、首部31aと頭部31bは、左面視して略T字形となっている。ただし、頭部31bの上面の高さ位置は、差込部本体13aの上面よりも低く、頭部31bの下面の高さ位置は、差込部本体13aの下面よりも高い。ガイド部31は、差込部本体13aの左端から、右端(閉塞部12に接する部分)よりやや手前側まで延びるものである。また、上下の溝13bの左端部は、左側に向けて溝幅が拡幅する形状となっている。さらに、差込部本体13aの中央部には、上下に貫通する上面視略コ字形の孔16aが形成されており、孔16aの内側部分が係合部16となっている。係合部16は、矩形平板状で左側辺が差込部本体13aと一体になっており、右側に向けて上方に傾斜していて差込部本体13aの上面から突出している。また、差込部本体13aの上面の孔16aの前後の位置には、上側に突出し左右に延びる上面突条13dが形成されている。さらに、差込部本体13aの後側面と、ガイド部31の頭部31bの前側面には、それぞれ後側と前側に突出し左右に延びる側面突条13eが形成されている。
【0019】
上框1と下框2は、互いに上下対称な形状であり、何れも押出形材からなるものである。ここでは上框1について説明する。
図2、
図5および
図6に示すように、上框1は、左右に延びるものであって、前側に位置する正面壁1aと、後側に位置する背面壁1bと、上側に位置し正面壁1aと背面壁1bの上端同士をつなぐ天壁1cを有し、正面壁1aと背面壁1bと天壁1cとで下側に向けて開口する略コ字形の断面形状をなしている。天壁1cの下側には、天壁1cと平行で正面壁1aから背面壁1bまで延びる中間壁1dが形成されており、正面壁1aと背面壁1bと天壁1cと中間壁1dとで囲まれた空間が、差込スペースNとなっている。差込スペースNは、上框1の長手方向に延び端面に開口しており、差込スペースNの高さは、正面壁1aの高さの1/4程度である。また、正面壁1aと背面壁1bの上下方向中央部かつ中間壁1dの下側には、それぞれ内側に向けて突出する突出片1eが形成されている。そして、上框1の内側の、中間壁1dの下側部分には、ガイドレール17が取り付けられている。ガイドレール17は、左右に延びるものであって、矩形平板状の水平面部17bと、水平面部17bの下面から下向きに延びる前後2つの垂下片17cと、前後の垂下片17cの下端からそれぞれ内側に向けて延びるリブ17aを備えるものである。ガイドレール17は、水平面部17bの前端部と後端部が、それぞれ前後の突出片1eと中間壁1dの間に納まっており、垂下片17cの下面は、正面壁1aおよび背面壁1bの下面と略同じ高さである。さらに、天壁1cの右端部には、上下に貫通する上面視矩形の受孔15が形成されている。受孔15の大きさは、閉塞手段Cの差込部13の係合部16よりも一回り大きいものとなっている。また、正面壁1aの右端部の、差込スペースNの高さ位置には、前後に貫通する正面視矩形のスライド孔28が形成されている。
【0020】
そして、カバーボックス4の上端部に取り付けられた閉塞手段Cの差込部13が、上框1の端面から上框1の内部に差し込まれており、これにより、カバーボックス4と上框1とが接続されている。より詳しくは、閉塞手段Cの差込部13が、上框1の差込スペースNに対して丁度嵌まる大きさであって、差込方向以外の方向に隙間がないように上框1の端面から差込スペースNに嵌め込まれるものである。この際、上框1の天壁1cの下面には、差込部13の上面突条13dのみが接触し、また上框1の正面壁1aの後側面および背面壁1bの前側面には、差込部13の側面突条13eのみが接触するものであり、接触面積が小さいので、摩擦抵抗が小さく挿入しやすくなっている。また、挿入する際、差込部13の係合部16は、上側から天壁1cに押さえ付けられて下側に弾性変形することになり、差込部13を最奥まで、すなわち上框1の端面が閉塞部12の左側面に接触するまで挿入すると、係合部16が丁度天壁1cの受孔15に納まって変形が元に戻り、係合部16の右側辺が受孔15の右側辺に係合して抜け止めとなる。さらに、差込部13が最奥まで挿入された状態において、上框1のスライド孔28の左端の左右位置は、差込部13の左端よりも右側に位置し、スライド孔28の右端の左右位置は、差込部13の溝13bの右端と略一致する。このようにしてカバーボックス4と上框1が接続されると、カバー5の戸当たり部5aの後側面が上框1の正面壁1aの前側面に接触するとともに、カバー5の左側壁面52が右側に弾性変形して、カバー5の嵌入部5bの左側面が上框1の正面壁1aの右端面に接触する(
図1および
図10に示すカバー5は弾性変形していない状態のものである)。そして、下框2についても、同様にしてカバーボックス4に接続される。
【0021】
縦框3は、断面略矩形の押出形材からなるものである。縦框3と、上框1または下框2とは、コーナーキャップ3aにより接続されている。コーナーキャップ3aは、
図7に示すように、縦框3の端面を塞ぐものであって、縦框3の端面からその内部に挿入される縦框側挿入部3bと、上框1または下框2の端面からその内部に挿入される横框側挿入部3cを備えるものである。
【0022】
網Sは、このようにカバーボックス4、上框1、下框2および縦框3によって構成された矩形枠体の内周部を閉鎖可能なものであって、開放時においては、ロール状に巻き取られた状態で、カバーボックス4内に納まるものである。すなわち、カバーボックス4が、網Sを巻き取り・引き出し自在に収納している。後述の機構により、網Sは常時巻き取られる方向に力が作用しており、閉鎖する際には、その力に抗して網Sを引き出す。
図5、
図7および
図8に示すように、網Sは、その本体となる矩形のシート状の網材であるシート19と、シート19の左端部に取り付けられた可動框19aと、シート19の右端部に取り付けられた巻取軸部20を備えるものである。
【0023】
シート19は、虫の侵入を防ぐことができる大きさの網目のものであって、
図5に示すように、上端縁部と下端縁部に、帯状で可撓性の抜け止め部21が設けられている。上下の抜け止め部21は、それぞれ上框1と下框2のガイドレール17の前後のリブ17aの間に、左右方向に摺動自在な状態で納まるものである。
【0024】
可動框19aは、上下に延びるものであって、その上端部と下端部が、シート19の抜け止め部21と同様に、それぞれ上框1と下框2のガイドレール17の前後のリブ17aの間に、左右方向に摺動自在な状態で納まるものである。網Sの閉鎖・開放の操作を行う際には、可動框19aに手を掛けて左右に動かす。なお、縦框3の内周側面(右側面)に、磁石(図示省略)が設けられており、可動框19aの左側面の対応する高さ位置に、磁石に吸着する磁石受部が設けられていて、網Sの閉鎖時において、縦框3の磁石に可動框19aの磁石受部が吸着されることで、閉鎖状態が維持される。
【0025】
巻取軸部20は、
図8に示すように、カバーボックス4内に納められたものであり、上下に延びる軸棒22と、軸棒22の上部および下部に取り付けられた受部材23a,23bと、軸棒22の、上下の受部材23a,23bの間部分に取り付けられたコイルスプリング24と、軸棒22およびコイルスプリング24を覆うようにして上下の受部材23a,23bの間に設けられた筒体25を備える。カバーボックス4内部の、上下の閉塞部12の内側には、閉塞部12と平行な支持壁部7が設けられており、軸棒22の上端および下端が、それぞれ上下の支持壁部7に固定されている。なお、支持壁部7は、閉塞部12と一体に形成されたものであってもよいし、別部材を取り付けたものであってもよい。受部材23a,23bは、軸棒22が挿通されるものであって、軸棒22の中央側の大径部231a,231bと、端部側の小径部232a,232bを備えるものである。小径部232a,232bは、それぞれ上下の支持壁部7に取り付けられた軸受9a,9bに回動自在に接続されている。コイルスプリング24は、軸棒22が挿通されるものであり、コイルスプリング24の上端部が、軸棒22の、上側の受部材23aの下側部分に固定されており、コイルスプリング24の下端部が、下側の受部材23bの大径部231bに固定されている。筒体25は、上下に延びる円筒状のものであって、筒体25の上下の端部が、上下の受部材23a,23bの大径部231a,231bにより塞がれていて、筒体25と受部材23a,23bとが固定されている。そして、筒体25の表面に、シート19(
図8では図示省略)の右端部が固定されている。
【0026】
よって、筒体25が回転することで、シート19が筒体25に巻き取られ、または筒体25から引き出されることになる。本実施形態においては、上面視して筒体25が時計回り方向に回転すると、シート19が巻き取られ、筒体25が反時計回り方向に回転すると、シート19が引き出される。そして、筒体25が反時計回り方向に回転すると、併せて受部材23a,23bも回転し、下側の受部材23bに固定されたコイルスプリング24がねじられて、時計回り方向のバネ力が発生する。すなわち、シート19を引き出す際には、このバネ力に抗して可動框19aを左側へ動かすことになり、シート19の引き出し量が大きくなるほど、バネ力は大きくなる。網Sの閉鎖時、すなわち、可動框19aが縦框3に接触した状態では、縦框3の磁石の吸着力がコイルスプリング24のバネ力よりも大きいので、閉鎖状態が維持される。そして、縦框3から可動框19aを引き離せば、コイルスプリング24のバネ力によって筒体25が時計回り方向に回転し、シート19は自動的に巻き取られて開放状態となる。
【0027】
なお、下側の軸受9bと連動する調整部(図示省略)が、カバーボックス4の外部に露出するようにして設けられている。調整部は、ドライバーなど工具により回転させられる機構となっており、調整部を回転させることで、コイルスプリング24のバネ力を調整して、シート19の巻取速度を適宜設定できる。
【0028】
そして、このロール網戸は、カバーボックス4のカバー5の開動作を規制するための規制手段Rを備えている。
図7に示すように、規制手段Rは、ロール網戸の上部と下部に2つ設けられているが、上下対称の構造であり、ここでは上部の方について説明する。規制手段Rは、上框1に設けられた規制部材18と、上框1の正面壁1aに形成されたスライド孔28と、閉塞手段Cの差込部13に形成されたガイド部31を備える。
【0029】
図1、
図2および
図4に示すように、規制部材18は、樹脂製のものであって、左右に長い矩形平板状の規制部材本体180と、規制部材本体180の前側面に形成された凸部29と、規制部材本体180の後側面に形成された係止部30と、係止部30の左側面に形成された挟持部36を備える。
【0030】
規制部材本体180は、その右端部の後側面が切り欠かれていて、右端部は、肉厚が薄い舌片状の先端部18aとなっている。先端部18aの長さは、カバー5の戸当たり部5aの長さと略同じである。そして、先端部18aの後側面には、先端に向けて肉厚が薄くなるようにテーパT1が形成されている。また、凸部29は、規制部材本体180の左右方向中央よりやや左側に位置しており、前側に規制部材本体180の厚さと同程度だけ突出している。
【0031】
係止部30は、規制部材本体180の左右方向中央よりやや右側に位置しており、規制部材本体180の後側面に重ねて形成された矩形平板状の基盤部301と、基盤部301の上下端からそれぞれ後側に向けて延びる腕部302と、上下の腕部302の後端から相互に近付く方向に突出する係止片303と、上下の腕部302の右後端からそれぞれ右側に向けて延びる延出部304と、上下の延出部304の右端からそれぞれ後側に向けて突出する上面視半円形状の突起部305を備える。ただし、基盤部301の厚さは、上框1の正面壁1aの厚さと略同じであり、基盤部301の左右幅は、スライド孔28の左右幅よりも短く、基盤部301の高さ(=係止部30の高さ)は、スライド孔28に丁度嵌まる高さである。また、腕部302は基盤部301よりも左右幅が短く、腕部302の左端と基盤部301の左端の位置が揃っており、さらに延出部304の左端と基盤部301の右端の位置が揃っている。
【0032】
挟持部36は、係止部30の上下の腕部302からそれぞれ左側に向けて延びるものであり、規制部材本体180の後側面とは隙間を有している。上下の挟持部36は、それぞれ上下厚さが腕部302と同じであって、前側面(規制部材本体180に対向する面)は、規制部材本体180の後側面と平行であり、後側面は、上面視して先細り形状となるように傾斜している。ただし、前側面の先端部(左側端部)には、規制部材本体180との隙間が左側に向けて拡幅するようにテーパT2が形成されている。そして、基盤部301(延出部304)の右端から挟持部36の左端までの左右幅は、スライド孔28の左右幅よりも長く、腕部302の右端から挟持部36の左端までの左右幅は、スライド孔28の左右幅よりも短くなっている。
【0033】
このような規制部材18は、規制部材本体180が、上框1の正面壁1a上にスライド孔28を塞ぐようにして位置しており、係止部30がスライド孔28を通して上框1の内部に突出している。そして、
図1および
図2に示すように、係止部30が差込部13のガイド部31に係合している。より詳しくは、係止部30の上下の係止片303が、それぞれガイド部31の上下の溝13bに嵌まっており、係止部30がガイド部31に対して左右方向に摺動自在となっている。すなわち、規制部材18が、上框1の長手方向に移動可能であるように、スライド孔28を通してガイド部31に係合している。この際、係止部30の上面は、差込部本体13aの上面と略面一となり、係止部30の下面は、差込部本体13aの下面と略面一となる。また、係止部30から左側(カバーボックス4側の反対側)に向けて延びる挟持部36は、上框1の正面壁1aの後側面に接触している。よって、規制部材本体180と挟持部36とで、上框1の正面壁1aを前後から挟み込んでいる。なお、基盤部301の右端から挟持部36の左端までの左右幅は、スライド孔28の左右幅よりも長いので、規制部材18を最も右側の位置、すなわち基盤部301がスライド孔28の右側縁部に接する位置まで移動させても、規制部材本体180と挟持部36とで上框1の正面壁1aを挟み込んだ状態が維持される。
【0034】
このように構成される規制手段Rを組み立てる際には、まず、上框1に規制部材18を取り付ける。この際、規制部材18の腕部302の右端から挟持部36の左端までの左右幅が、スライド孔28の左右幅よりも短くなっているので、
図9(a)に示すように、基盤部301と延出部304の間にスライド孔28の右側縁部を挿入するようにして、規制部材18を右側に寄せれば、挟持部36もスライド孔28に挿入できる。次に、
図9(b)に示すように、規制部材18を左側に移動させて、規制部材本体180と挟持部36とで上框1の正面壁1aを挟み込む。この際、挟持部36の前側面の先端部にはテーパT2が形成されているので、スライド孔28の左側縁部が引っ掛かることがない。これで、上框1に規制部材18が取り付けられるものであり、規制部材本体180と挟持部36とで上框1の正面壁1aを挟み込むことにより、上框1に対する規制部材18の前後位置が位置決めされ、係止部30の高さがスライド孔28に丁度嵌まる高さであることにより、上框1に対する規制部材18の上下位置が位置決めされる。次に、
図9(c)に示すように、カバーボックス4の上端部に取り付けた閉塞手段Cの差込部13を、上框1の差込スペースNに差し込む。差込部13は、差込スペースNに対して丁度嵌まる大きさであるから、上框1に対する差込部13の前後位置および上下位置が位置決めされ、すなわち、規制部材18の係止部30に対する差込部13のガイド部31の前後位置および上下位置も位置決めされる。よって、差込部13を差込スペースNに差し込むことにより、自動的に係止部30の上下の係止片303がガイド部31の上下の溝13bに嵌まって、係止部30がガイド部31に係合する。この際、溝13bの左端部は左側に向けて溝幅が拡幅しているので、係止片303が溝13bにスムーズに挿入される。このようにして、規制手段Rが組み立てられる。
【0035】
このように構成した規制手段Rによれば、
図1(a)および
図10(a)に示すように、規制部材18を右側(カバーボックス4側)へ移動させることにより、カバーボックス4のカバー5の開動作を規制できる。規制部材18の移動は、規制部材本体180の凸部29に指を掛けて行えばよい。カバーボックス4のカバー5が閉じられた状態において、規制部材18を最も右側の位置まで移動させると、係止部30の基盤部301がスライド孔28の右側縁部に接するとともに、カバー5の戸当たり部5aが規制部材本体180の先端部18aの後側に位置する。この際、先端部18aの後側面にはテーパT1が形成されているので、先端部18aが戸当たり部5aに引っ掛かることがない。さらに、突起部305が、ガイド部31の凹部13cに嵌まり込むことにより、規制部材18が最も右側の位置で固定され、カバー5の開動作の規制が不意に解除されることがない。そして、カバー5の規制を解除するには、
図1(b)および
図10(b)に示すように、規制部材18を左側へ移動させる。この際、突起部305がガイド部31の凹部13cに嵌まり込んでいるが、ある程度以上の力を加えれば、規制部材18の各部が弾性変形してわずかに上面視時計回り方向に回転することで、突起部305が凹部13cから抜け出して、規制部材18が移動可能となる。そして、規制部材18を左側へ移動させることにより、規制部材本体180の先端部18aがカバー5の戸当たり部5aから離れれば、
図10(c)に示すように、カバー5を開くことができる。
【0036】
本発明によれば、上記のように左右に移動可能な規制部材18によりカバー5の開動作を規制するものなので、カバー5が多少変形した場合であっても、変形量が規制部材18の移動範囲に収まるものである限り、確実にカバー5の閉状態を維持および解除することができる。そして、規制部材18が閉塞手段Cの差込部13のガイド部31に係合していて上框1の長手方向にのみ移動可能となっているので、上框1の加工精度によらず、ガタツキが小さくなり、確実に操作できるものである。また、規制部材18の規制部材本体180と挟持部36とで上框1の正面壁1aを挟み込むものであり、施工前において、規制部材18を上框1に取り付けておけるので、効率的に搬送することができ、規制部材18を紛失するおそれもない。さらに、規制部材18が閉塞手段Cに加えて上框1とも係合する一体的な構造なので、より部材同士のガタツキが小さくなる。また、閉塞手段Cの差込部13が上框1の差込スペースNに隙間なく嵌め込まれるものであり、差込部13が上框1に対して差込方向以外の方向について位置決めされるので、一体的で部材同士のガタツキがない構造となる。さらに、施工の際、規制部材18を取り付けた上框1の差込スペースNに差込部13を嵌め込むことで、それ以上の位置合わせをしなくても、規制部材18の係止部30が差込部13のガイド部31に係合するので、施工が容易である。
【0037】
以上のように、規制手段Rの構成、組み立て方、動作および作用効果について、ロール網戸の上部(上框1)に設けられたものに基づいて説明したが、下部(下框2)に設けられたものについても、上下対称であり同様なものである。
【0038】
なお、上記の例では、上框1(下框2についても同様である)に規制部材18を取り付けてから、上框1の差込スペースNに閉塞手段Cの差込部13を差し込んだが、これとは異なる組み立て手順として、閉塞手段Cの差込部13に規制部材18を取り付けてから、差込部13を上框1の差込スペースNに差し込んでもよい。すなわち、係止部30の係止片303が、予め差込部13のガイド部31の溝13bに嵌まっており、差込部13が差込スペースNに差し込まれるのに伴って、規制部材本体180と挟持部36とで上框1の正面壁1aを挟み込むことになる。ただし、この組み立て手順を実施する場合、上框1の正面壁1aに形成されたスライド孔28が、正面壁1aの右端まで延び、右端側に開口した切欠状のものとなる。
【0039】
本発明は、上記の実施形態に限定されない。たとえば、本発明はロール網戸のほか、ロールカーテンやロールブラインドなどの種々のロールスクリーン装置に適用できる。また、規制手段が上框と下框の2箇所に設けられたものに限られず、何れか一方にのみ設けられたものであってもよい。さらに、カバーボックスや、上框、下框、縦框および可動框の形状は、意匠性などを考慮して適宜設定できるものであり、網の巻取機構についても、どのようなものであってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 上框(框材)
1a 正面壁(外壁面)
2 下框(框材)
4 カバーボックス
5 カバー
6 ボックス本体
12 閉塞部
13 差込部
18 規制部材
28 スライド孔
30 係止部
31 ガイド部
36 挟持部
180 規制部材本体
C 閉塞手段
N 差込スペース
R 規制手段
S 網(スクリーン)