(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】カーボン被覆粒子及び黒色顔料
(51)【国際特許分類】
C09C 1/44 20060101AFI20230605BHJP
C09C 3/00 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
C09C1/44
C09C3/00
(21)【出願番号】P 2019091217
(22)【出願日】2019-05-14
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 弘司
(72)【発明者】
【氏名】中壽賀 章
(72)【発明者】
【氏名】高藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】伊原 博隆
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/047606(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/052406(WO,A1)
【文献】特開2016-098353(JP,A)
【文献】特開2008-137887(JP,A)
【文献】国際公開第2017/142087(WO,A1)
【文献】特開2008-150240(JP,A)
【文献】国際公開第2018/088531(WO,A1)
【文献】特開2017-68971(JP,A)
【文献】特開2015-93883(JP,A)
【文献】特開平10-273537(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0035750(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00- 32/991
C09C 1/00- 3/12
C09D 1/00- 10/00
C09D 15/00- 17/00
C09D101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒色顔料に用いられるカーボン被覆粒子であって、
基材粒子と、
前記基材粒子の表面の少なくとも一部を被覆しており、アモルファスカーボンを含有する、被覆層と、
を備え、
前記カーボン被覆粒子全体の重量に対する前記被覆層の被覆量が、5重量%以上、50重量%以下であり、
前記カーボン被覆粒子の体積抵抗率が、1.0×10
7
Ω・cm以上であり、
前記カーボン被覆粒子の平均粒子径が、10nm以上、500nm以下であり、
前記カーボン被覆粒子の粒子径のCV値が、25%以下である、カーボン被覆粒子。
【請求項2】
前記基材粒子が、中実粒子である、請求項
1に記載のカーボン被覆粒子。
【請求項3】
前記基材粒子が、無機粒子である、請求項1
又は2に記載のカーボン被覆粒子。
【請求項4】
前記基材粒子が、樹脂粒子である、請求項1
又は2に記載のカーボン被覆粒子。
【請求項5】
前記カーボン被覆粒子の平均球形度が、90%以上である、請求項1~
4のいずれか1項に記載のカーボン被覆粒子。
【請求項6】
前記カーボン被覆粒子を用いた塗膜での平均OD値が、0.1以上である、請求項1~
5のいずれか1項に記載のカーボン被覆粒子。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載のカーボン被覆粒子を含む、黒色顔料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンにより被覆されたカーボン被覆粒子及び該カーボン被覆粒子を用いた黒色顔料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーボンブラック等の黒色粒子は、顔料、充填剤、耐候性改善剤等として広く使用されている。また、このようなカーボン粒子は、液晶カラーディスプレイのブラックマトリックス用顔料としても使用されている。例えば、特許文献1では、酸素量で規定したカーボンブラック顔料を、絶縁性の高い樹脂皮膜で被覆して電気抵抗性を向上させたカーボンブラック顔料が提案されている。また、特許文献2には、表面を有機物処理した絶縁性カーボンブラック顔料、あるいは樹脂で被覆することにより電気抵抗性を向上させたカーボンブラック顔料を使用して絶縁性ブラックマトリックスを形成する方法が記載されている。
【0003】
しかしながら、カーボンブラック顔料は、導電性を有する材料であり、樹脂被覆をしても絶縁性を十分に発揮することは困難であった。また、これらのカーボン粒子では、高い遮光率を有するとされているものの、可視光の遮蔽性が不十分であるという問題があった。
【0004】
さらに、カーボン粒子を樹脂着色剤、印刷インキ、塗料等の着色剤として使用する場合は、カーボン粒子が優れた分散性、着色性を有することが求められる。そこで、カーボン粒子の着色性を向上させるために、粒子径を大きくすることが試みられているが、粒子径の大きいカーボン粒子は、インクや塗料のビヒクルや樹脂に配合した場合、沈降が起こり易く、分散性や流動性の低下を引き起こすという問題があった。
【0005】
また、粒子径にバラツキが少なく、単分散性の高い黒色粒子は、電子ペーパー等に利用されている電気泳動型の表示素子に有用である。しかしながら、カーボンブラックのような従来のカーボン粒子では、単分散性が不十分であり、凝集が起こり易いという問題があった。
【0006】
そこで、下記の特許文献3では、アモルファスカーボンを含有する黒色粒子が提案されている。特許文献3の黒色粒子は、比重が1.8g/cm3以下、ゼータ電位が-70mV~80mV、波長400nm~800nmで測定した全光線反射率の平均が5%以下、ラマンスペクトルで測定した場合のGバンドとDバンドとのピーク強度比が1.2以上であることを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3543501号公報
【文献】特許第4338479号公報
【文献】国際公開第2017/142087号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、特許文献3の黒色粒子では、粒子径を制御することが難しく、その結果光沢が不十分となり、きめ細やかな塗膜を形成することができない場合が生じることを見出した。また、可視光の遮蔽性や、電気絶縁性がなお不十分となる場合があることを見出した。
【0009】
本発明の目的は、黒色顔料に用いたときに、可視光の遮蔽性、電気絶縁性、及び溶媒や樹脂への分散性のいずれをも高いレベルで向上させることができる、カーボン被覆粒子及び該カーボン被覆粒子を用いた黒色顔料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るカーボン被覆粒子は、黒色顔料に用いられるカーボン被覆粒子であって、基材粒子と、前記基材粒子の表面の少なくとも一部を被覆しており、アモルファスカーボンを含有する、被覆層と、を備え、前記カーボン被覆粒子の平均粒子径が、10nm以上、500nm以下であり、前記カーボン被覆粒子の粒子径のCV値が、25%以下である。
【0011】
本発明に係るカーボン被覆粒子のある特定の局面では、前記カーボン被覆粒子全体の重量に対する前記被覆層の被覆量が、5重量%以上、50重量%以下である。
【0012】
本発明に係るカーボン被覆粒子の別の特定の局面では、前記基材粒子が、中実粒子である。
【0013】
本発明に係るカーボン被覆粒子の他の特定の局面では、前記基材粒子が、無機粒子である。
【0014】
本発明に係るカーボン被覆粒子のさらに他の特定の局面では、前記基材粒子が、樹脂粒子である。
【0015】
本発明に係るカーボン被覆粒子のさらに他の特定の局面では、前記カーボン被覆粒子の平均球形度が、90%以上である。
【0016】
本発明に係るカーボン被覆粒子のさらに他の特定の局面では、前記カーボン被覆粒子の体積抵抗率が、1.0×107Ω・cm以上である。
【0017】
本発明に係るカーボン被覆粒子のさらに他の特定の局面では、前記カーボン被覆粒子を用いた塗膜での平均OD値が、0.1以上である。
【0018】
本発明に係る黒色顔料は、本発明に従って構成されるカーボン被覆粒子を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、黒色顔料に用いたときに、可視光の遮蔽性、電気絶縁性、及び溶媒や樹脂への分散性のいずれをも高いレベルで向上させることができる、カーボン被覆粒子及び該カーボン被覆粒子を用いた黒色顔料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るカーボン被覆粒子を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係るカーボン被覆粒子を示す模式的断面図である。
図1に示すように、カーボン被覆粒子1は、基材粒子2と、被覆層3とを備える。カーボン被覆粒子1は、黒色顔料に用いることができる。
【0023】
基材粒子2の形状は、特に限定されないが、本実施形態では、球状の粒子である。基材粒子2の表面2aを覆うように、被覆層3が設けられている。被覆層3は、本実施形態のように、基材粒子2の表面2aの全部を覆っていてもよく、一部を覆っていてもよい。被覆層3は、アモルファスカーボンを含有している。
【0024】
本実施形態において、カーボン被覆粒子1の平均粒子径は、10nm以上、500nm以下である。また、カーボン被覆粒子1の粒子径のCV値は、25%以下である。
【0025】
なお、粒子径のCV値(%)とは、粒子径の標準偏差を平均粒子径で割った値を百分率で表したものであり、下記式(1)により求められる数値のことである。CV値が小さいほど粒子径のばらつきが小さいことを意味する。
【0026】
粒子径のCV値(%)=(粒子径の標準偏差/平均粒子径)×100…式(1)
【0027】
平均粒子径及び標準偏差は、例えば、FE-TEMを用いて測定することができる。平均粒子径及び標準偏差は、電子顕微鏡写真中において任意に選ばれた例えば100個の粒子の平均粒子径及び標準偏差から求めることができる。
【0028】
本実施形態のカーボン被覆粒子1は、上記の構成を備えるので、黒色顔料に用いたときに、可視光の遮蔽性、電気絶縁性、及び溶媒や樹脂への分散性のいずれをも高いレベルで向上させることができる。
【0029】
従来、カーボンブラックのようなカーボン粒子は、導電性を有する材料であり、樹脂被覆をしても絶縁性を十分に発揮することは困難である。また、このようなカーボン粒子は、高い遮光率を有するとされているものの、可視光の遮蔽性が十分でないという問題がある。
【0030】
さらに、カーボンブラックのようなカーボン粒子を樹脂着色剤、印刷インキ、塗料等の着色剤として使用する場合、インクや塗料のビヒクルや樹脂に配合すると、沈降が起こり易く、分散性や流動性の低下を引き起こすという問題がある。また、このようなカーボン粒子は、単分散性が十分でなく、凝集が起こり易いという問題がある。
【0031】
本発明者らは、基材粒子の表面の少なくとも一部が、アモルファスカーボンを含有する被覆層により被覆されている、カーボン被覆粒子に着目した。特に、カーボン被覆粒子の平均粒子径及び粒子径のCV値を特定の範囲とすることにより、黒色顔料に用いたときに、可視光の遮蔽性、電気絶縁性、及び溶媒や樹脂への分散性のいずれをも高いレベルで向上させることができることを見出した。
【0032】
本発明においては、カーボン被覆粒子の被覆層が、アモルファスカーボンを含有しているので、従来のカーボン粒子に比べて作製が容易であり、コストを削減することができる。また、カーボンブラックなどの従来のカーボン粒子に比べ、可視光の遮蔽性、電気絶縁性、及び溶媒や樹脂への分散性を高めることができる。
【0033】
また、カーボン被覆粒子が、基材粒子と、基材粒子の表面の少なくとも一部を被覆している被覆層とにより構成されているので、基材粒子の粒子径を制御するだけで、カーボン被覆粒子全体の粒子径を容易に制御することができる。そのため、平均粒子径が10nm以上、500nm以下であり、粒子径のCV値が25%以下のカーボン被覆粒子を容易に得ることができる。
【0034】
カーボン被覆粒子の平均粒子径を10nm以上、500nm以下と小さくすることにより、光沢があり、きめ細やかな塗膜を形成することができる。一方、例えば、可視光で乱反射する200μm~300μm程度の粒子径を有する場合、マット調となり易い。
【0035】
カーボン被覆粒子の粒子径のCV値を25%以下とすることにより、粒子径のばらつきを小さくすることができ、カーボン被覆粒子の単分散性を高めることができる。そのため、黒色顔料に用いたときに、カーボン被覆粒子をより細密に充填することができ、可視光に対する遮蔽性を高めることができる。
【0036】
また、様々な形状の基材粒子を適宜選定することにより、得られるカーボン粒子の形状を容易に制御することができる。また、硬い基材粒子や、柔らかい基材粒子を選定することにより、例えば、トナー用塗料や車両用の粉体塗料などの用途に適したカーボン被覆粒子を得ることができる。
【0037】
あるいは、用いる基材粒子の比重により、容易に比重調整をすることもできる。例えば、バインダー樹脂に対する比重を大きくすることにより、より一層光沢があり、きめ細やかな塗膜とすることができる。
【0038】
本発明においては、カーボン被覆粒子の平均粒子径は、10nm以上、好ましくは30nm以上、500nm以下、好ましくは300nm以下、より好ましくは100nm以下である。カーボン被覆粒子の平均粒子径が上記下限値以上である場合、黒色顔料に用いたときに可視光の遮蔽性をより一層高めることができる。また、カーボン被覆粒子の平均粒子径が上記上限値以下である場合、より一層光沢があり、きめ細やかな塗膜を形成することができる。
【0039】
本発明において、カーボン被覆粒子の粒子径のCV値は、25%以下、好ましくは20%以下である。カーボン被覆粒子の粒子径のCV値が上記上限値以下である場合、粒子径のばらつきをより一層小さくすることができ、カーボン被覆粒子の単分散性をより一層高めることができる。そのため、カーボン被覆粒子をより細密に充填することができ、可視光に対する遮蔽性をより一層高めることができる。なお、カーボン被覆粒子の粒子径のCV値の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.1%とすることができる。
【0040】
本発明において、カーボン被覆粒子の平均球形度は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。カーボン被覆粒子の平均球形度が上記下限値以上である場合、電気絶縁性や可視光の遮蔽性をより一層高めることができる。なお、カーボン被覆粒子の平均球形度の下限値は、特に限定されないが、例えば、80%とすることができる。
【0041】
カーボン被覆粒子の平均球形度(短径/長径)は、FE-TEMやFE-SEMを用いて撮影された電子顕微鏡写真について、画像解析装置を用いて解析処理することにより測定することができる。平均球形度は、電子顕微鏡写真中において任意に選ばれた例えば100個の粒子について、球形度の平均値を求めることにより算出することができる。
【0042】
本発明において、カーボン被覆粒子の体積抵抗率は、好ましくは1.0×107Ω・cm以上、より好ましくは1.0×108Ω・cm以上、さらに好ましくは1.0×1011Ω・cm以上である。この場合、電気絶縁性をより一層高めることができる。なお、カーボン被覆粒子の体積抵抗率の上限値は、特に限定されないが、例えば、1.0×1018Ω・cmとすることができる。また、カーボン被覆粒子の体積抵抗率は、例えば、粉体抵抗測定システムを用いて測定することができる。
【0043】
本発明において、カーボン被覆粒子を用いた塗膜での平均OD値(光学濃度)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上である。この場合、可視光領域において黒色度をより一層高めることができ、可視光の遮蔽性をより一層高めることができる。なお、平均OD値の上限値は特に限定されないが、例えば、1とすることができる。また、平均OD値は、例えば、分光光度計により測定することができる。
【0044】
本発明において、カーボン被覆粒子の比重は、好ましくは1.2g/cm3以上、好ましくは1.8g/cm3以下である。カーボン被覆粒子の比重が上記下限値以上である場合、より一層光沢があり、きめ細やかな塗膜とすることができる。また、カーボン被覆粒子の比重が上記上限値以下である場合、樹脂中や溶媒中での分散性をより一層高めることができる。
【0045】
本発明において、カーボン被覆粒子全体の重量に対する被覆層の被覆量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。被覆層の被覆量が上記下限値以上である場合、黒色顔料に用いたときに可視光の遮蔽性をより一層高めることができる。
【0046】
なお、被覆層の被覆量は、カーボン被覆粒子の熱重量分析をしたときに、100℃~900℃の温度範囲における重量損失から求めることができる。熱重量分析は、熱重量・熱量同時測定装置(セイコーインスツル社製、品番:TG/DTA6200)を用いて測定することができる。なお、上記熱重量分析は、下記の条件で測定する。
【0047】
雰囲気:空気
昇温速度:10℃/分
温度範囲:30℃~900℃
【0048】
ここで、上記「100℃~900℃の温度範囲における重量損失」とは、100℃に到達したときの重量を基準に求める。
【0049】
被覆層の被覆量は、反応時間や反応温度を適宜設定することにより求めることができる。
【0050】
本発明の黒色顔料は、このようなカーボン被覆粒子を含んでいる。そのため、可視光の遮蔽性、電気絶縁性、及び溶媒や樹脂への分散性のいずれをも高いレベルで向上させることができる
【0051】
以下、基材粒子及び被覆層について、より詳細に説明する。
【0052】
(基材粒子)
基材粒子の形状は、特に限定されず、例えば、球状、略球状、楕円球状、略楕円球状、鱗片状、板状、円盤状、半球状、星型状、花弁状、リボン状、ヒトデ状、不定形状、多角板状、楕円板状等の扁平状、棒状、針状、紡錘状などの形状が挙げられる。なかでも、基材粒子の形状は、球状であることが好ましい。
【0053】
基材粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは1nm以上、より好ましくは10nm以上、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下である。基材粒子の平均粒子径が上記下限値以上である場合、黒色顔料に用いたときに可視光の遮蔽性をより一層高めることができる。また、基材粒子の平均粒子径が上記上限値以下である場合、より一層光沢があり、きめ細やかな塗膜を形成することができる。
【0054】
基材粒子は、多孔質粒子でないことが好ましい。従って、基材粒子は、中実粒子であることが好ましい。この場合、基材粒子の硬さをより一層容易に制御することができ、より一層広範な塗膜に用いることができる。なお、基材粒子の比表面積は、好ましくは0.01m2/g以上、より好ましくは1m2/g以上、好ましくは200m2/g以下、より好ましくは100m2/g以下である。基材粒子の比表面積は、ガス吸着式細孔径分布装置により測定することができる。
【0055】
基材粒子は、無機粒子であってもよく、有機粒子であってもよい。有機粒子は、樹脂粒子であることが好ましい。
【0056】
無機粒子を構成する無機材料としては、特に限定されないが、例えば、金属元素、半金属元素、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属等を用いることができる。これらは、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0057】
金属元素としては、例えば、チタン、アルミニウム、セリウム、ネオジウム、タングステン、バナジウム、鉛、亜鉛、ニッケル、ビスマス、スズ、スカンジウム、ジルコニウム等を用いることができる。
【0058】
半金属元素としては、例えば、ケイ素、ホウ素、ゲルマニウム、ヒ素、テルル等を用いることができる。
【0059】
アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム等を用いることができる。
【0060】
アルカリ土類金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム等を用いることができる。
【0061】
また、このような無機材料の酸化物、塩化物、硫化物、炭酸塩、珪酸塩、燐酸塩、硝酸塩、硫酸塩、またはこれらの複合物であってもよい。なかでも、無機材料の酸化物が好ましい。
【0062】
無機粒子を構成する無機材料としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、又はチタニアであることが好ましく、シリカであることがより好ましい。
【0063】
樹脂粒子を構成する樹脂としては、例えば、スチレン含有重合体、アクリル含有重合体、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、又はポリプロピレン樹脂が挙げられる。なかでも、スチレン含有重合体又はアクリル含有重合体が好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0064】
スチレン含有重合体としては、例えば、ポリスチレン、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)、AAS(アクリロニトリル・スチレン・特殊アクリルエラストマー共重合体)、AES(アクリロニトリル・スチレン・EPDMなどのエラストマー共重合体)、AS(スチレン・アクリロニトリル共重合体)等が挙げられる。
【0065】
アクリル含有重合体としては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル(アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルを総称して(メタ)アクリル酸エステルともいう)、アクリル酸、メタクリル酸等の単独重合体あるいは共重合体が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数1~4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、メチルメタクリレートがさらに好ましい。また、共重合し得るモノマーとしては、酢酸ビニル等のビニルエステル、スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル等が挙げられる。
【0066】
(被覆層)
被覆層は、基材粒子の表面の少なくとも一部を覆っている。被覆層は、基材粒子の表面の30%以上を覆っていることが好ましく、50%以上を覆っていることがより好ましく、70%以上を覆っていることがさらに好ましい。この場合、黒色顔料に用いたときに、可視光の遮蔽性、電気絶縁性、及び溶媒や樹脂への分散性をより一層高めることができる。なお、被覆層は、基材粒子の表面の全部を覆っていてもよい。
【0067】
被覆層は、アモルファスカーボンを含有する。アモルファスカーボンを用いることで、緻密性の高い被覆層を形成することができる。被覆層を構成するアモルファスカーボンは、sp2結合とsp3結合が混在したアモルファス構造を有し、炭素からなるものであるが、ラマンスペクトルを測定した場合のGバンドとDバンドのピーク強度比が1.5以上であることが好ましい。
【0068】
アモルファスカーボンをラマン分光で測定した場合、sp2結合に対応したGバンド(1580cm-1付近)及びsp3結合に対応したDバンド(1360cm-1付近)の2つのピークが明確に観察される。なお、炭素材料が結晶性の場合には、上記の2バンドのうち、いずれかのバンドが極小化していく。例えば、単結晶ダイヤモンドの場合は、1580cm-1付近のGバンドがほとんど観察されない。一方、高純度グラファイト構造の場合は、1360cm-1付近のDバンドがほとんど観察されない。
【0069】
GバンドとDバンドのピーク強度比(Gバンドでのピーク強度/Dバンドでのピーク強度)が上記下限値以上である場合、形成された被覆層の緻密性をより一層高めることができ、高温における粒子間の焼結抑制効果もより一層高めることができる。
【0070】
上記ピーク強度比が1.5未満であると、被覆層の緻密性と高温における焼結抑制効果が不十分であることだけではなく、膜の密着性及び膜の強度も低下する場合がある。上記GバンドとDバンドのピーク強度比は1.7以上であることがより好ましく、10以下であることが好ましい。
【0071】
上記被覆層は、カーボン以外の元素を含有してもよい。カーボン以外の元素としては、例えば、窒素、水素、酸素等が挙げられる。このような元素の含有量は、カーボンとカーボン以外の元素との合計に対して、10原子%以下であることが好ましい。
【0072】
被覆層を構成するアモルファスカーボンは、オキサジン樹脂由来の炭化物であることが好ましい。上記オキサジン樹脂は、低温で炭化が可能であることから、コストを低減することが可能となる。
【0073】
上記オキサジン樹脂は、一般にフェノール樹脂に分類される樹脂であるが、フェノール類とホルムアルデヒドに加えて、さらにアミン類を加えて反応させることで得られる熱硬化樹脂である。なお、フェノール類において、フェノール環にさらにアミノ基があるようなタイプ、例えば、パラアミノフェノールのようなフェノールを用いる場合には、上記反応でアミン類を加える必要はなく、炭化もし易い傾向にある。炭化のし易さでは、ベンゼン環ではなく、ナフタレン環を用いることで、さらに炭化がし易くなる。
【0074】
オキサジン樹脂としては、ベンゾオキサジン樹脂、ナフトオキサジン樹脂があり、このうち、ナフトオキサジン樹脂は、最も低温で炭化しやすいため好適である。以下にオキサジン樹脂の構造の一部として、ベンゾオキサジン樹脂の部分構造を式(2)に、ナフトオキサジン樹脂の部分構造を式(3)に示す。
【0075】
【0076】
このように、オキサジン樹脂とは、ベンゼン環又はナフタレン環に付加した6員環をもつ樹脂のことをさし、その6員環には、酸素と窒素が含まれ、これが名前の由来となっている。
【0077】
オキサジン樹脂を用いることにより、エポキシ樹脂等の他の樹脂に比べてかなり低温でアモルファスカーボンの被膜を得ることが可能となる。具体的には200℃以下の温度で炭化が可能である。特に、ナフトオキサジン樹脂を用いることで、より低温で炭化させることができる。
【0078】
このように、オキサジン樹脂を用いて、より低温で炭化させることにより、アモルファスカーボンを含有し、緻密性の高い被覆層を形成することができる。
【0079】
アモルファスカーボンを含有し、緻密性の高い被覆層を形成できる理由については明らかではない。しかしながら、例えば、オキサジン樹脂としてナフタレンオキサジン樹脂を使用した場合、樹脂中のナフタレン構造が低温加熱によって局部的に繋がり、分子レベルで層状構造が形成されるためであると考えられる。上記層状構造は、高温処理されていないため、グラファイトのような長距離の周期構造までは進展しないため、結晶性は示さない。
【0080】
得られたカーボンが、グラファイトのような構造であるか、アモルファス構造であるかは、後述するX線回折法によって、2θが26.4°の位置にピークが検出されるか否かにより確認することができる。
【0081】
上記ナフトオキサジン樹脂の原料として用いられるのは、フェノール類であるジヒドロキシナフタレンと、トリアジンやホルムアルデヒド、アミン類である。なお、これらについては後述するものとする。
【0082】
アモルファスカーボンは、オキサジン樹脂を50℃~900℃の温度で加熱処理することにより得られるものであることが好ましい。オキサジン樹脂を50℃~350℃の温度で加熱処理することにより得られるものであることがより好ましい。低温で炭化が可能なナフトオキサジン樹脂を用いる場合、より一層低温でアモルファスカーボンとすることができる。低温で作製することにより、コストをより一層削減し、より一層簡便なプロセスでアモルファスカーボンを得ることができる。
【0083】
本発明において、被覆層の平均膜厚は、好ましくは0.5nm以上、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下である。被覆層の平均膜厚が上記下限値以上である場合、黒色顔料に用いたときに可視光の遮蔽性をより一層高めることができる。
【0084】
被覆層の膜厚の変動係数(CV値)は、好ましくは7%以下である。CV値が小さいほど膜厚のばらつきを小さくすることができ、黒色顔料に用いたときに、可視光の遮蔽性、電気絶縁性、及び溶媒や樹脂への分散性のいずれをもより一層高いレベルで向上させることができる。膜厚のCV値の下限値は、特に限定されないが、例えば、50%とすることができる。
【0085】
膜厚のCV値(%)とは、標準偏差を平均膜厚で割った値を百分率で表したものであり、下記式(4)により求められる数値である。CV値が小さいほど膜厚のばらつきが小さいことを意味する。
【0086】
膜厚のCV値(%)=(膜厚の標準偏差/平均膜厚)×100 …式(4)
【0087】
平均膜厚及び標準偏差は、例えば、FE-SEMを用いて測定することができる。平均膜厚及び標準偏差は、電子顕微鏡写真中において任意に選ばれた例えば100個の粒子の平均膜厚及び標準偏差から求めることができる。
【0088】
本発明においては、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)によって被覆層を測定した場合、ベンゼン環に由来する質量スペクトル、及びナフタレン環に由来する質量スペクトルのうち少なくとも1つが検出されることが好ましい。このようなベンゼン環、ナフタレン環に由来する質量スペクトルが検出されることで、オキサジン樹脂が含有するカーボンに由来するものであることを確認できると同時に、緻密性の高い被覆層を得ることができる。
【0089】
本発明において、ベンゼン環に由来する質量スペクトルとは、77.12付近の質量スペクトルをいい、ナフタレン環に由来する質量スペクトルとは、127.27付近の質量スペクトルをいう。なお、上記測定は、例えば、TOF-SIMS装置(ION-TOF社製)等を用いて行うことができる。
【0090】
本発明においては、X線回折法によって被覆層を測定した場合、2θが26.4°の位置にピークが検出されないことが好ましい。上記2θが26.4°の位置のピークは、グラファイトの結晶ピークであり、このような位置にピークが検出されないことで、被覆層を形成するカーボンがアモルファス構造であるということができる。なお、上記測定は、例えば、X線回折装置(SmartLab Multipurpose、リガク社製)等を用いて行うことができる。
【0091】
本発明において、被覆層は、アモルファスカーボンのみからなるものであってもよく、アモルファスカーボンと他成分を含有するものであってもよい。
【0092】
以下、カーボン被覆粒子の製造方法の詳細について説明する。
【0093】
(製造方法)
本発明のカーボン被覆粒子を製造する方法としては、例えば、ホルムアルデヒド、脂肪
族アミン、及びジヒドロキシナフタレンを含有する混合溶液を調製する工程と、基材粒子を混合溶液に添加し、反応させる工程と、加熱処理する工程を備える方法を用いることができる。なお、加熱処理する工程における温度は、100℃~900℃であることが好ましく、150℃~600℃であることがより好ましい。
【0094】
本発明のカーボン被覆粒子の一例としての製造方法では、まず、ホルムアルデヒド、脂肪族アミン、及びジヒドロキシナフタレンを含有する混合溶液を調製する。
【0095】
ホルムアルデヒドは不安定であるので、ホルムアルデヒド溶液であるホルマリンを用いることが好ましい。ホルマリンは、通常、ホルムアルデヒド及び水に加えて、安定剤として少量のメタノールが含有されている。ホルムアルデヒドは、ホルムアルデヒド含量が明確なものであれば、ホルマリンであっても構わない。また、ホルムアルデヒドには、その重合形態としてパラホルムアルデヒドがあり、原料として使用可能であるが、反応性が劣る場合があるため、好ましくは上記ホルマリンが用いられる。
【0096】
上記脂肪族アミンは、一般式R-NH2で表され、Rは炭素数5以下のアルキル基であることが好ましい。炭素数5以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、シクロプロピルメチル基、n-ペンチル基、シクロペンチル基、シクロプロピルエチル基、又はシクロブチルメチル基が挙げられる。分子量を小さくする方が好ましいので、置換基Rは、メチル基、エチル基、プロピル基などが好ましく、より具体的には、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン等が好ましく使用できる。最も好ましいものは、分子量が最も小さなメチルアミンである。
【0097】
上記ジヒドロキシナフタレンとしては、多くの異性体がある。例えば、1,3-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレンが挙げられる。このうち、反応性の高さから、1,5-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレンが好ましい。さらに、1,5-ジヒドロキシナフタレンが最も反応性が高いので好ましい。
【0098】
上記混合溶液中におけるジヒドロキシナフタレン、脂肪族アミン、ホルムアルデヒドの3成分の比率については、ジヒドロキシナフタレン1モルに対して、脂肪族アミンを1モル、ホルムアルデヒドを2モル配合することが最も好ましい。
【0099】
反応条件によっては、反応中に揮発などにより原料を失うので、最適な配合比は正確に上記比率とは限らないが、ジヒドロキシナフタレン1モルに対して、脂肪族アミンを0.8モル~1.2モル、ホルムアルデヒドを1.6モル~2.4モルの配合比の範囲で配合することが好ましい。上記脂肪族アミンを0.8モル以上とすることにより、オキサジン環を十分に形成することができ、重合を好適に進めることができる。また、1.2モル以下とすることにより、反応に必要なホルムアルデヒドを余計に消費することがないため、反応が順調に進み、所望のナフトオキサジンを得ることができる。同様に、ホルムアルデヒドを1.6モル以上とすることで、オキサジン環を十分に形成することができ、重合を好適に進めることができる。また、2.4モル以下とすることで、副反応の発生を低減できるため好ましい。
【0100】
上記混合溶液は、上記3原料を溶解し、反応させるための溶媒を含有することが好ましい。上記溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン等の通常樹脂を溶解するために用いられる溶媒が挙げられる。上記溶媒としては、単一成分のみを使ってもよく、二種類以上の混合溶媒を使ってもよい。
【0101】
上記混合溶液中の溶媒の添加量は特に限定されないが、ジヒドロキシナフタレン、脂肪族アミン及びホルムアルデヒドを含む原料を100質量部とした場合は、通常300質量部~20000質量部で配合することが好ましい。300質量部以上とすることで、溶質を十分に溶解することができるため、被膜を形成した際に均一な被膜とすることができ、20000質量部以下とすることで、被覆層の形成に必要な濃度を確保することができる。
【0102】
次に、基材粒子を上記混合溶液に添加し、反応させる。反応を進行させることにより基材粒子の表面にナフトオキサジン樹脂からなる層を形成することができる。この反応は、常温で進行するが、反応時間をより短縮することができるため、40℃以上に加温することが好ましい。加温を続けることで、作製されたオキサジン環が開き、重合が起こると分子量が増加し、ナフトオキサジン樹脂となる。反応が進みすぎると溶液の粘度が増し被覆に適さない場合がある。
【0103】
また、例えば、ホルムアルデヒド、脂肪族アミン及びジヒドロキシナフタレンの混合液を一定時間反応させた後に基材粒子を添加してもよい。また、基材粒子への被覆をより一層均一に行うためには、被覆反応時に基材粒子が分散された状態であることが好ましい。分散方法としては、撹拌、超音波、回転などの公知の方法を用いることができる。また、分散状態を改善するために、適当な分散剤を添加してもよい。さらに反応を行なった後に、熱風等により溶媒を乾燥除去することにより、樹脂を基材粒子の表面により均一に被覆させてもよい。加熱乾燥方法についても特に限定されない。
【0104】
次に、加熱処理する工程を行う。これにより被覆した樹脂が炭化されてアモルファスカーボンからなる被覆層とすることができる。
【0105】
熱処理における温度は、好ましくは100℃~900℃、より好ましくは150℃~600℃である。低温で炭化が可能なナフトオキサジン樹脂を用いることにより、さらに低温でアモルファスカーボンとすることができる。
【0106】
加熱処理は、空気中で行ってもよいし、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。熱処理温度が350℃以上の場合は、不活性ガス雰囲気下であることがより好ましい。また、上記加熱処理を行った後、さらに加熱処理を行ってもよい。
【0107】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
【0108】
(実施例1)
シリカ粒子(日産化学社製、平均粒子径52.4nm)を150mgと、1,5-ジヒドロキシナフタレン(東京化成社製)42.0mg、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリアジン(東京化成社製)33.6mgをエタノール50mlに順次添加したエタノール混合溶液を作製した。
【0109】
次に、得られた混合液を、75℃で24時間加熱撹拌した。溶液を遠心分離(20,000rpm、10分)し、上澄みを除去した。得られた沈殿物をエタノールに分散させ、再度遠心分離を行った。この操作を2度行った後に、室温で12時間真空乾燥することにより、アモルファスカーボンを含有する被覆層により被覆された黒色のカーボン被覆粒子を得た。
【0110】
(実施例2)
シリカ粒子(日産化学社製、平均粒子径52.4nm)を150mgと、1,5-ジヒドロキシナフタレン(東京化成社製)8.3mg、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリアジン(東京化成社製)7.1mgをエタノール50mlに順次添加したエタノール混合溶液を作製した。
【0111】
次に、得られた混合液を、75℃で24時間加熱撹拌した。溶液を遠心分離(20,000rpm、10分)し、上澄みを除去した。得られた沈殿物をエタノールに分散させ、再度遠心分離を行った。この操作を2度行った後に、室温で12時間真空乾燥することにより、アモルファスカーボンを含有する被覆層により被覆された黒色のカーボン被覆粒子を得た。
【0112】
(実施例3)
シリカ粒子(日産化学社製、平均粒子径 22.1nm)300mgをイオン交換水20mlに分散させた溶液と、1,5-ジヒドロキシナフタレン(東京化成社製)84.2mgとヘキサヒドロ-1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリアジン(東京化成社製)67.5mgをエタノール80mlに添加した溶液をそれぞれ調製し、混合した。
【0113】
次に、得られた混合液を、75℃で24時間加熱撹拌した。溶液を遠心分離(15,000rpm、20分)し、上澄みを除去した。得られた沈殿物をエタノールとイオン交換水の8:2混合液に分散させ、再度遠心分離を行った。この操作を2度行った後に、室温で12時間真空乾燥することにより、アモルファスカーボンを含有する被覆層により被覆された黒色のカーボン被覆粒子を得た。
【0114】
(実施例4)
シリカ粒子(日産化学社製、平均粒子径 10.2nm)300mgをイオン交換水20mlに分散させた溶液と、1,5-ジヒドロキシナフタレン(東京化成社製)84.2mgとヘキサヒドロ-1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリアジン(東京化成社製)67.8mgをエタノール80mlに添加した溶液をそれぞれ調製し、混合した。
【0115】
次に、得られた混合液を、75℃で24時間加熱撹拌した。溶液を遠心分離(15,000rpm、20分)し、上澄みを除去した。得られた沈殿物をエタノールとイオン交換水の8:2混合液に分散させ、再度遠心分離を行った。この操作を2度行った後に、室温で12時間真空乾燥することにより、アモルファスカーボンを含有する被覆層により被覆された黒色のカーボン被覆粒子を得た。
【0116】
(比較例1)
1,5-ジヒドロキシナフタレン(1,5-DHN、東京化成社製)1.20gと、1,3,5-トリアジン(東京化成社製)0.98gをエタノール20ml及びDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)30mlに順次溶解し、エタノール混合溶液を作製した。次に、得られた混合溶液を80℃で6時間加熱撹拌(回転数:300rpm)した。溶液をガラスフィルターで濾過し、エタノールで3回洗浄した後に、350℃で3時間真空乾燥した。その後、110℃で2時間加熱することで、黒色のカーボン粒子を得た。
【0117】
(比較例2)
1,5-ジヒドロキシナフタレン(1,5-DHN、東京化成社製)1.20gと、1,3,5-トリアジン(東京化成社製)0.98gをエタノール250mlに順次溶解し、エタノール混合溶液を作製した。次に、得られた混合溶液を80℃で6時間加熱撹拌(回転数:300rpm)した。溶液をガラスフィルターで濾過し、エタノールで3回洗浄した後に、窒素雰囲気で400℃で2時間加熱処理し、黒色のカーボン粒子を得た。
【0118】
(比較例3)
1,5-ジヒドロキシナフタレン(1,5-DHN、東京化成社製)1.20gと、1,3,5-トリアジン(東京化成社製)0.98gをエタノール250mlに順次溶解し、エタノール混合溶液を作製した。次に、得られた混合溶液を80℃で6時間加熱撹拌(回転数:300rpm)した。溶液をガラスフィルターで濾過し、エタノールで3回洗浄した後に、窒素雰囲気で800℃で2時間加熱処理し、黒色のカーボン粒子を得た。
【0119】
[評価]
(平均粒子径、CV値及び平均球形度)
実施例及び比較例で得られた粒子のFE-SEM像を、画像解析ソフト(WINROOF、三谷商事社製)を用いて解析することにより、平均粒子径を測定した。また、標準偏差を算出し、得られた数値から粒子径の変動係数(CV値)を算出した。さらに、粒子の最小径と最大径との比から球形度を求め、平均球形度を算出した。なお、平均粒子径、標準偏差、及び平均球形度は、電子顕微鏡写真中において任意に選んだ100個の粒子の平均粒子径、標準偏差、及び平均球形度を求めた。
【0120】
(被覆量)
実施例で得られた粒子について、熱重量・熱量同時測定装置(セイコーインスツル株式会社製、品番:TG/DTA6200)を用いて、空気雰囲気下、30℃~900℃の温度範囲、及び昇温速度10℃/分で、熱重量分析を行った。100℃~900℃における重量損失から、カーボン被覆粒子全体の重量に対する被覆層の被覆量を求めた。
【0121】
(比重)
実施例及び比較例で得られた粒子の比重を、乾式自動密度計(島津製作所社製、アキュピックII134)を用いて測定した(サンプル量:0.2g)。
【0122】
(OD値)
実施例及び比較例で得られた粒子の光学密度OD値は、以下のようにして求めた。得られた粒子45重量%に対し、硬化剤としてイルガキュア907(BASF社製)2.6重量%、硬化性化合物52.4重量%を分散混合させて硬化性組成物とし、その組成物をシランカップリング剤処理を施したスライドガラス状にナイフコーターで1μmの厚さで塗布した。その後、塗布面より紫外線(365nm、6000mJ/cm2)を照射し塗膜を硬化し、塗布膜を得た。得られた塗布膜を透過濃度計(エックスライト社製、品番「Model 301」)を用いて測定した。
【0123】
ここで、硬化性化合物は2-ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬社製)30g、ジアリルフタレート(和光純薬社製)10g、ジトリメチロールプロパントリアクリエート(新中村化学社製)10g、ウレタンアクリレートU-4HA(新中村化学社製)10gを混合して得た。
【0124】
(体積抵抗率)
実施例及び比較例で得られた粒子の体積抵抗率を、粉体抵抗測定システム(三菱化学アナリテック社製)を用いて、荷重15Nでの体積抵抗率を測定した。
【0125】
(分散性)
実施例及び比較例で得られた粒子の分散性を、遠心沈降・光透過方式の分散安定性分析装置(L.U.M社製LUMiSizer612)を用いて評価した。具体的には、ポリビニールアルコール(PVA)の5%水溶液に対して粒子を5重量%の割合で分散した組成物約1mlをガラス製分析セルに入れ、その上澄み液に光を照射し、1時間あたりの透過する光量の変化量の積分値を求め、分散性を以下の基準で評価した。
【0126】
1時間後の光量の変化量が5%以下の場合:〇
1時間後の光量の変化量が5%を超える場合:×
【0127】
結果を下記の表1に示す。
【0128】
【符号の説明】
【0129】
1…カーボン被覆粒子
2…基材粒子
2a…表面
3…被覆層