(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】廃棄物の堆肥化処理方法
(51)【国際特許分類】
C05F 17/20 20200101AFI20230605BHJP
C05F 17/50 20200101ALI20230605BHJP
B09B 3/60 20220101ALI20230605BHJP
B09B 3/65 20220101ALI20230605BHJP
B09B 101/70 20220101ALN20230605BHJP
【FI】
C05F17/20
C05F17/50
B09B3/60
B09B3/65
B09B101:70
(21)【出願番号】P 2022104685
(22)【出願日】2022-06-29
【審査請求日】2023-02-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514082295
【氏名又は名称】マスダ商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(74)【代理人】
【識別番号】100146891
【氏名又は名称】松下 ひろ美
(72)【発明者】
【氏名】増田 幸次
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-170693(JP,A)
【文献】特開2000-16889(JP,A)
【文献】特開平11-128996(JP,A)
【文献】特開2009-106828(JP,A)
【文献】特開2001-354487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05B1/00-21/00
C05C1/00-13/00
C05D1/00-11/00
C05F1/00-17/993
C05G1/00-5/40
B09B1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を堆肥化する廃棄物の堆肥化処理方法であって、
前記廃棄物を粉砕して小さくつぶす粉砕・つぶし工程と、前記粉砕・つぶし工程にてつぶした前記廃棄物に紅色非硫黄型光合成細菌群を添加して混合した添加混合物を多数の粒状体に形成する粒状体形成工程と、前記粒状体形成工程にて形成した前記多数の添加混合粒状体を第1処理域に積み、前記第1処理域の下側から第1圧力の空気を前記多数の添加混合粒状体間を通して流して1次発酵させる1次発酵工程と、前記第1発酵工程後の前記多数の添加混合粒状体を第2処理域に移して積み、前記第2処理域の下側から第1圧力よりも小さい第2圧力の空気を前記多数の添加混合粒状体間を通して流して2次発酵させる2次発酵工程と、前記2次発酵の後に前記多数の添加混合粒状物を乾燥させる乾燥工程と、を含むことを特徴とする廃棄物の堆肥化処理方法。
【請求項2】
前記粒状体形成工程においては、混合して粒状化する混合造粒機を用い、前記混合造粒機は、つぶした前記廃棄物に紅色非硫黄型光合成細菌群を添加した前記添加混合物を外径5~25mmの団子状の前記多数の添加混合粒状体を形成することを特徴とする請求項1に記載の廃棄物の堆肥化処理方法。
【請求項3】
前記粒状体形成工程においては、前記粉砕・つぶし工程にてつぶした前記廃棄物に前記紅色非硫黄型光合成細菌群を添加するとともに、前記乾燥工程後の完成した堆肥を戻し堆肥として添加し、前記混合造粒機は、前記つぶした前記廃棄物、前記紅色非硫黄型光合成細菌群及び前記戻し堆肥を混合して前記添加混合物を形成することを特徴とする請求項2に記載の廃棄物の堆肥化処理方法。
【請求項4】
前記第1発酵工程において、前記第1処理域の下側から送給される空気の第1圧力は0.3~0.7kPaであり、前記第1圧力の空気の送給開始から7~14日経過して前記多数の添加混合粒状体間の内部温度が60~70℃に低下した段階で前記第1発酵工程が終了することを特徴とする請求項1に記載の廃棄物の堆肥化処理方法。
【請求項5】
前記2次発酵工程において、前記第2処理域の下側から送給される空気の前記第2圧力は0.005~0.02kPaであり、前記第2圧力の空気の送給開始から30~60日経過して前記多数の添加混合粒状体間の内部温度が25~35℃に低下した段階で前記2次発酵工程が終了することを特徴とする請求項1に記載の廃棄物の堆肥化処理方法。
【請求項6】
前記乾燥工程は、前記多数の添加混合粒状体の含水率が10質量%以下に低下した段階で終了することを特徴とする請求項1に記載の廃棄物の堆肥化処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剪定枝、雑草、食品残渣などを含む廃棄物を堆肥化する廃棄物の堆肥化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
畜糞などの有機廃棄物を発酵処理する方法として、処理前に予め粒状化した後に発酵槽内に収容し、好気性発酵である1次発酵させ、その後嫌気性発酵である2次発酵させ、この2次発酵の後に乾燥させて肥料として利用する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この発酵処理方法では、1次発酵の際に、発酵槽内に60~70℃の温風を供給してその内部の温度が35℃前後(1次発酵が維持される温度)まで上昇させるようにし、このように発酵槽内の温度を上昇させて1次発酵が継続して行われるようにている。また、1次発酵終了後の2次発酵の開始の際にも、この発酵槽内に70℃前後の温風を供給して発酵槽内の温度を上昇させるようにし、このようにして2次発酵が短時間で終了するようにしている。
【0003】
この2次発酵終了時には処理物(粒状の廃棄物)の含水率が50~65%であるので、この処理物の乾燥が行われ、例えば自然乾燥又は乾燥機を用いた強制乾燥が行われて35%前後となるように乾燥され、かく乾燥された処理物の一部は、処理する廃棄物の水分調整材として利用され、その残部は、例えば肥料として用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この発酵処理方法では、1次発酵を行うときには発酵槽に収容した処理物(粒状の廃棄物)に60~70℃の温風を例えば2~3時間供給して温度上昇させ、また2次発酵を行うときにもこの処理物に70℃前後の温風を例えば6~8時間供給して温度上昇させており、それ故に、温風を供給するための設備を設ける必要があるために、設備コストが上昇するという問題がある。また、発酵処理するのに温風を送る必要があるために、温風を生成するための燃料コスト、換言すると処理コストが高くなる問題がある。
【0006】
本発明の目的は、細菌による発酵を利用し、温風を利用することなく堆肥化処理することができる廃棄物の堆肥化処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、廃棄物に紅色非硫黄型光合成細菌群を添加して混合した添加混合物を多数の粒状体に形成し、1次発酵においては、第1処理域の下側から第1圧力の空気を多数の添加混合粒状体間を通して流して好気性発酵をさせ、また2次発酵においては、第2処理域の下側から第1圧力よりも小さい第2圧力の空気を多数の添加混合粒状体間を通して流して嫌気性発酵させることにより、廃棄物を効果的に堆肥化できることを見いだした。
【0008】
本発明の請求項1に記載の廃棄物の堆肥化処理方法では、廃棄物を堆肥化する廃棄物の堆肥化処理方法であって、
前記廃棄物を粉砕して小さくつぶす粉砕・つぶし工程と、前記粉砕・つぶし工程にてつぶした前記廃棄物に紅色非硫黄型光合成細菌群を添加して混合した添加混合物を多数の粒状体に形成する粒状体形成工程と、前記粒状体形成工程にて形成した前記多数の添加混合粒状体を第1処理域に積み、前記第1処理域の下側から第1圧力の空気を前記多数の添加混合粒状体間を通して流して1次発酵させる1次発酵工程と、前記第1発酵工程後の前記多数の添加混合粒状体を第2処理域に移して積み、前記第2処理域の下側から第1圧力よりも小さい第2圧力の空気を前記多数の添加混合粒状体間を通して流して2次発酵させる2次発酵工程と、前記2次発酵の後に前記多数の添加混合粒状物を乾燥させる乾燥工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
このような廃棄物の堆肥化処理方法の粒状体形成工程において、混合造粒機を用い、つぶした廃棄物に紅色非硫黄型光合成細菌群を添加した添加混合物を外径5~25mmの団子状の添加混合粒状体に形成するのが好ましく、このような大きさの添加混合粒状体にすることにより多数の添加混合粒状体の間を通して空気が流れ、またこのように流れる空気によって添加混合粒状体の発酵が促進される。
【0010】
また、この粒状体形成工程において、粉砕・つぶし工程にてつぶした廃棄物に紅色非硫黄型光合成細菌群を添加するとともに、乾燥工程後の完成した堆肥を戻し堆肥として添加し、つぶした廃棄物、紅色非硫黄型光合成細菌群及び戻し堆肥を混合して添加混合物を形成するのが好ましく、これらを混合することにより、添加混合物の水分調整、例えば含水率を40~60質量%にすることができる。
【0011】
また、この廃棄物の堆肥化処理方法の第1発酵工程において、第1処理域の下側から送給される空気の第1圧力を0.3~0.7kPaにするのが好ましく、このような圧力にすることにより、第1処理域に積まれた多数の添加混合粒状体間を通して充分な空気を流すことができ、第1発酵工程においける好気性発酵を行うことができる。尚、多数の添加混合粒状体間の内部温度が60~70℃に低下した段階でこの第1発酵工程が終了する。
【0012】
また、この廃棄物の堆肥化処理方法の2次発酵工程において、第2処理域の下側から送給される空気の第2圧力を0.005~0.02kPaにするのが好ましく、このような第2圧力にすることによって、第2処理域に積まれた多数の添加混合粒状体間を通して少しの空気を流すことができ、第2発酵工程においける嫌気性発酵を行うことができる。尚、多数の添加混合粒状体間の内部温度が25~35℃に低下した段階でこの第2発酵工程が終了する。
【0013】
更に、この廃棄物の堆肥化処理方法の乾燥工程において、第2発酵工程後の添加混合粒状体を乾燥域に移して自然乾燥するのが好ましく、この自然乾燥により、多数の添加混合粒状体の含水率が10質量%以下に低下した段階で終了し、乾燥工程後の添加混合粒子状体は植物栽培用の肥料として用いることができ、また添加混合物をつくる際の水分調整材として好都合に用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の廃棄物の堆肥化処理方法によれば、粉砕・つぶし工程にてつぶした廃棄物に紅色非硫黄型光合成細菌群を添加して混合した添加混合物を造粒して多数の粒状体を形成し、第1発酵工程においては、多数の添加混合粒状体に第1処理域の下側から第1圧力の空気を供給するので、かく供給した空気は多数の添加混合粒状体間を通して充分に流れ、この多数の添加混合粒状体に対して好気性発酵を行うことができる。また、第2発酵工程においては、多数の添加混合粒状体に第2処理域の下側から第2圧力(第1圧力よりも小さい圧力)の空気を供給するので、かく供給した空気は多数の添加混合粒状体間を通して少し流れ、この多数の添加混合粒状体に対して嫌気性発酵を行うことができ、好気性発酵の後に嫌気性発酵が行われる。また、添加した紅色非硫黄型光合成細菌群は、例えば発酵活動が停止した休眠状態をつくるに当たり、再び活性化させる際に働きやすくする微生物相を形成して、発酵に関与する微生物の菌体数やその種類などを増やしたりする作用を発揮し、休眠状態後の発酵を促進する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に従う廃棄物の堆肥化処理方法を実施するための堆肥化処理施設の一例を簡略的に示す平面図。
【
図2】
図1の堆肥化処理施設における第1処理域の一部を簡略的に示す平面図。
【
図3】
図1の堆肥化処理施設にて実施される堆肥化処理方法の処理工程を簡略的に示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う廃棄物の堆肥化処理方法の一実施例及びこの堆肥化処理方法を実施するための堆肥化処理施設の一例を説明する。
【0017】
図1において、図示の堆肥化処理施設は、処理施設の片側(
図1において上側)に5つの第1処理域2(2a~2e)が設けられ、これら第1処理域2(2a~2e)は、長手方向(
図1において左右方向)に間隔をおいて配設された第1内仕切り壁4(4a~4f)と、第1内仕切り壁4(4a~4f)の外側端を接続する第1外壁6(6a~6e)によって区画されている。
【0018】
具体的には、第1処理域2a(2b,2c,2d,2f)は、片側を区画する第1仕切り壁4a(4b,4c,4d,4e)と、他側を区画する第1仕切り壁4b(4c,4d,4e,4f)と、外側を区画する第1外端壁6a(6b,6c,6d,6e)とによって三方が仕切られ、これらによって、内側が開放された第1処理空間8(8a,8b,8c,8d,8e)が規定される。
【0019】
また、処理施設の他側(
図1において下側)に4つの第2処理域10(10a~10d)が設けられ、これら第2処理域10(10a~10d)は、長手方向(
図1において左右方向)に間隔をおいて配設された第2内仕切り壁12(12a~12e)と、第2内仕切り壁12(12a~12e)の外側端を接続する第2外端壁14(14a~14d)によって区画されている。
【0020】
具体的には、第2処理域10a(10b,10c,10d)は、片側を区画する第2仕切り壁12a(12b,12c,12d)と、他側を区画する第2仕切り壁12b(12c,12d,12e)と、外側を区画する第2外端壁14a(14b,14c,14d)とによって三方が仕切られ、これらによって、内側が開放された第2処理空間16(16a,16b,16c,16d)が規定される。
【0021】
この実施形態においては、処理施設の長手方向において第1処理域2aの外側(第1処理域2bと反対側)に機械室18及び攪拌室20が設けられ、機械室18及び攪拌室20は、外側の第1仕切り壁22、内側の第1仕切り壁4a及びこれら仕切り壁22,4aの外側を接続する第1外端壁24によって規定され、機械室18と攪拌室20とは横仕切り壁26により仕切られている。
【0022】
機械室18には、第1圧力の空気を供給するための圧縮空気供給源、例えばコンプレッサ28が配設され、このコンプレッサ28からの圧縮空気が第1処理域2(2a~2e)に供給されるように後述する如く構成されている。このコンプレッサ28から供給される空気は、後述するように、例えば0.3~0.7kPa程度の第1圧力でもって第1処理域2(2a~2e)に噴出されるように構成され、このような高い圧力でもって空気を供給することによって、後述する第1発酵工程における好気性菌による好気性発酵に必要な空気を供給することができる。
【0023】
また、攪拌室20には、攪拌造粒機30が設置される。この攪拌造粒機30は、処理すべき材料を投入するホッパー(図示せず)を備え、処理すべき廃棄物はこのホッパーから投入され、投入された廃棄物などは、この攪拌造粒機30により造粒され、この造粒された粒状体に後述する発酵処理が施される。
【0024】
更に、処理施設の長手方向において第2処理域10aの外側(第2処理域10bと反対側)に完成肥料室32が設けられ、完成肥料室32は、外側の第2仕切り壁34、内側の第2仕切り壁12a及びこれら仕切り壁34,12aの外側を接続する第2外端壁36によって規定され、この完成肥料室32の中間に中間仕切り壁38が設けられている。
【0025】
完成肥料室32には肥料として完成させるための完成選別装置40が設置され、この完成肥料室32の第1室32aに、乾燥後の廃棄物(添加混合粒状体)を投入するためのホッパー42が設置され、その第2室32bに、肥料として完成させるための完成選別装置本体44が設置され、後に説明するように、ホッパー42に投入された廃棄物(添加混合粒状体)は、ホッパー42から完成選別装置本体44に送給される間に小さく粉砕され、粉砕された廃棄物は肥料として肥料排出域46に排出され、この廃棄物に含まれた異物などは異物排出域48に排出される。この処理施設においては、廃棄物をこのように処理して肥料がつくられる。
【0026】
片側の第1処理域2(2a~2e)及び攪拌室20と、他側の第2処理域10(10a~10d)及び完成肥料室32との間には、所定幅の通路域50が設けられ、この通路域50は処理施設の長手方向一端から他端まで直線状に伸びている。この通路域50の一端部には第1開閉扉52(52a,52b)が開閉自在に設けられ、その他端部には第2開閉扉54(54a,54b)が開閉自在に設けられている。
【0027】
第1処理域2(2a~2e)の幅、第2処理域10(10a~10d)の幅、通路域50の幅、攪拌室20の幅並びに完成肥料室32の第1及び第2室32a,32bの幅は、作業用車両(例えば、小型のホイールローダ)が自由に出入りできように構成され、このように構成することにより、処理施設内での作業用車両の走行が容易となり、作業性の向上を図ることができる。
【0028】
次に、
図1とともに
図2を参照して、第1処理域2(2a~2e)について説明する。5つの第1処理域2(2a~2e)は、実質上同一の構成であり、以下、それらの1つの第1処理域2a(2b~2e)について説明する。
【0029】
第1処理域2a(2b~2e)の一対の第1仕切り壁4a,4b(4b,4c、4c,4d、4d,4e、4e,4f)、第1外端壁6a(6b,6c,6d,6e)及び第1床56aは、充分な強度を確保するとともに水分が外部に漏出しないように、例えばコンクリートなどから形成される。
【0030】
第1処理域2a(2b~2e)の第1床56a(56b~56e)には、幅方向(処理施設の長手方向)に間隔をおいて複数(この形態では、11個)の第1収容凹部58a(58b~58e)が設けられ、複数の第1収容凹部58a(58b~58e)は、第1床56a(56b~56e)の一端(外側端)から内側に直線状に伸びている。各第1収容凹部58a(58b~58e)には第1分岐送給管60a(60b~60e)が配設され、第1分岐送給管60a(60b~60e)は対応する第1収容凹部58a(58b~58e)内に収容され、この第1収容凹部58a(58a~58e)から上方に突出することはない。尚、
図1において、第1処理域2c~2eにおける第1分岐送給管60c~60eについては省略して示している。
【0031】
各分岐送給管60a(60b~60e)の基部側は第1外端壁6a(6b~6e)を貫通して外側に突出し、これら分岐送給管60a(60b~60e)の基部が第1分配管62a(62b~62e)に接続され、この第1分配管62a(62B~62e)が第1分岐供給管64a(64b~64e)を介して主供給管66に接続され、この主供給管66がコンプレッサ28に接続されている。また、第1分岐供給管64a(64b~64e)には開閉弁68a(68b~68e)が配設されている。
【0032】
このように構成されているので、コンプレッサ28が作動した状態において開閉弁68a(68b~68e)が開状態になると、コンプレッサ28からの圧縮空気(第1圧力の空気)は、主供給管66、第1分岐供給管64a(64b~64e)及び開閉弁68a(68b~68e)を通して第1分配管62a(62b~62e)に供給され、この第1分配管64a(64b~64e)により分配された後に各第1分岐送給管60a(60b~60e)に送給される。
【0033】
第1分岐送給管60a(60b~60e)には、その長手方向に間隔をおいて複数の噴出ノズル70a(70b~70e)が取り付けられており、第1分岐送給管60a(60b~60e)に送給された圧縮空気は、これら噴出ノズル70a(70b~70e)から第1圧力で第1処理域2a(2b~2e)に噴出される。
【0034】
この実施形態では、コンプレッサ28(圧縮空気供給源)からの圧縮空気が主供給管66を通して第1処理域2(2a~2e)に空気を送給する第1分岐供給管64(64a~64e)に分配供給されるように構成しているが、このような構成に代えて、各第1処理域2(2a~2e)にそれぞれコンプレッサを配設し、各コンプレッサから対応する第1処理域2(2a~2e)に圧縮空気を供給するようにしてもよい。
【0035】
次に、第2処理域10(10a~10d)について説明すると、第2処理域10(10a~10d)の基本的構成は、上述した第1処理域2(2a~2e)と実質上同一であり、各第2処理域10(10a~10d)の第2床72(72a~72d)には、幅方向(処理施設の長手方向)に間隔をおいて複数の第2収容凹部(図示せず)が設けられ、これら第2収容凹部に第2分岐送給管75が収容されている。尚、
図1において、第2処理域2b~2dの第2分岐送給管75などについては省略して示している。
【0036】
第2処理域10(10a~10d)に対応して、送風ブロア74(74a~74d)が配設され、送風ブロア74(74a~74d)は第2分配管76(76a~76d)に接続され、この第2分配管76(76a~76d)から分岐して第2分岐送給管75が延び、各第2分岐送給管76には、それらの長手方向に間隔をおいて複数の噴出孔(図示せず)が設けられている。
【0037】
このように構成されているので、送風ブロア74(74a~74d)が作動すると、送風ブロア74(74a~74d)からの空気は、第2分配管76(76a~76d)に供給されて分配された後に各第2分岐送給管75に送給され、各第2分岐送給管75の複数の噴出孔(図示せず)から第2処理域10(10a~10d)に噴出される。
【0038】
第2分岐送給管75の複数の噴出孔から噴出される空気は、第1分岐送給管60(60a~60e)の噴出ノズル70(70a~70e)から噴射される空気の第1圧力(例えば、0.3~0.7kPa)よりも低い第2圧力(例えば、0.005~0,02kPa)で噴出されるように構成され、このような低い圧力でもって空気を供給することによって、後述する第2発酵工程における嫌気性菌による嫌気性発酵が行われる。
【0039】
この実施形態では、各第2処理域10(10a~10d)に対応して送風ブロア74(74a~74d)を配設し、各送風ブロア74(74a~74d)からの空気を対応する第2処理域10(10a~10d)に送給しているが、このような構成に代えて、第1処理域2(2a~2e)と同様に、1つの送風ブロアからの空気を分配制御して第2処理域10(10a~10d)に送給するようにしてもよい。
【0040】
次に、
図1とともに
図3を参照して、上述した堆肥処理施設を用いた堆肥処理方法について説明する。この堆肥化処理方法では、廃棄物を堆肥化するものであり、廃棄物としては、例えば、雑草、剪定枝、食品残渣(例えば、給食残渣)などであり、これら廃棄物を堆肥化処理して堆肥として用いるものである。
【0041】
この堆肥化処理方法では、まず、処理すべき廃棄物(雑草、剪定枝、食品残渣など)を粉砕して小さくつぶす粉砕・つぶし工程S1が行われ、例えば堆肥処理施設外のフリースペースで行われる。粉砕・つぶし工程S1では、市販の粉砕装置(図示せず)を用いて処理すべき廃棄物の粉砕乃至つぶしが行われ、この粉砕・つぶし工程S1により、処理すべき廃棄物は、10mm以下の大きさ、好ましくは8mm以下の大きさに粉砕乃至つぶし処理される。
【0042】
次いで、粉砕乃至つぶした廃棄物を混合して多数の粒状体に形成する粒状体形成工程S2が遂行される。この粒状体形成工程S2では、攪拌室20に設置した市販の攪拌造粒機20を用いて行われる。粉砕乃至つぶし処理された廃棄物は、攪拌造粒機20のホッパー(図示せず)から投入され、この投入の際に紅色非硫黄型光合成細菌群が添加される。攪拌造粒機20は、投入された廃棄物と添加された紅色非硫黄型光合成細菌群とを混合し、この添加混合物を造粒して多数の団子状の添加混合粒状体を混合粒状体排出域80に排出する。攪拌造粒機20により生成される添加混合粒状体は、これらの添加混合粒状体の間を通して空気が流れるとともにこれら添加混合粒状体の内部まで発酵(後述する、好気性発酵及び嫌気性発酵)が進行するように、例えば外形5~25mmの大きさとなるように形成され、5~20mmの大きさになるようにするのが好ましい。
【0043】
紅色非硫黄型光合成細菌群としては、緑色を呈したもの、黒ずんだもの、薄いピンク状の物その他種々の物が作られたり、販売されているが、例えば、ワインレッド色を呈したもので、少しどぶの臭いがあるものを用いることができ、例えば粉砕乃至潰し処理した廃棄物8m3当たり400cc~700程度、例えば500cc前後添加して用いるのが好ましい。
【0044】
この実施形態では、粉砕乃至つぶし処理した廃棄物に紅色非硫黄型光合成細菌群を添加して混合しているが、後述する発酵が効果的に行われるように、また添加混合粒状体の水分を調整するために、この堆肥処理方法により生成した堆肥(即ち、後に説明する完成された堆肥)を戻し堆肥として、この粉砕乃至つぶし処理した廃棄物に混合するのが好ましく、この場合、添加混合粒状体は、粉砕乃至つぶし処理した廃棄物、完成した堆肥及び紅色非硫黄型光合成細菌群を含むものとなる。
【0045】
粉砕乃至つぶし処理した廃棄物(質量W1)と戻し堆肥として添加する堆肥(完成した堆肥)(質量W2)との割合(W1:W2)は、例えば(40~60):(60~40)程度となるように混合され、このような割合で混合することによって、添加混合粒状体の含水率を40~60%程度に調整することができ、このような含水率にすることによって、後述する発酵(好気性発酵及び嫌気性発酵)を促進させることができる。
【0046】
尚、堆肥が完成していない段階(即ち、最初の段階)においては、戻し堆肥が存在しないために、戻し堆肥に相当する種堆肥の種つくりをして粉砕乃至つぶし処理した廃棄物に添加混合するのが好ましい。この場合、食品残渣(例えば、給食残渣)、雑草、オガクズ(菌床となる)などを粉砕乃至つぶし処理したものに紅色非硫黄型光合成細菌群及びキレート剤を添加して多数の添加混合種粒状体を形成する。この場合、キレート剤としては、例えば鉄イオンと結合(配位)するものを用いることができる。そして、これら添加混合種粒状体を例えば第1処理域2に積み、第1処理域2の下側から多数の添加混合種粒状体の間を通して充分な空気を流して好気性発酵させる。この好気性発酵は、後に説明する1次発酵工程S3と同様に行う。その後、1次発酵後の添加混合種粒状体を第2処理域10に移し、第2処理域10の下側から多数の添加混合種粒状体の間を通して空気を少しずつ流して嫌気性発酵させ、その後の添加混合種粒状体を乾燥させ、このようにして種堆肥をつくることができる。
【0047】
この粒状体形成工程S2の後に、添加混合粒状体に対する1次発酵工程S3が遂行される。この1次発酵工程S3においては、攪拌造粒機30により形成された添加混合粒状体が第1処理域2(例えば、2a)に移され、この第1処理域2に山状となるように積まれる。そして、この山状となった多数の添加混合粒状体の下側、即ち第1処理域2(2a)の下側から第1圧力(0.3~0.7kPa)の空気が供給される。
【0048】
例えば、第1処理域2aに積まれた多数の添加混合粒状体を発酵させるときには、コンプレッサ28が作動され、開閉弁68aが開状態に保持される。このような状態においては、コンプレッサ28からの圧縮空気(第1圧力の空気)は、主供給管66、第1分岐供給管64a、開閉弁68a及び第1分配管62aを通して各第1分岐送給管60aに送給され、第1分岐送給管60aの複数の噴出ノズル70aから噴出される。
【0049】
これら噴出ノズル70aから噴出された空気は、多数の添加混合粒状体間の隙間を通って上方に流れるようになる。このとき、添加混合粒状体は団子状であるので、積んだ状態においても隣接する添加混合粒状体間に隙間が存在し、噴出ノズル70aから噴出した空気は、かかる隙間を通してほぼ全体にわたって均一に流れるようになる。また、空気は高圧の第1圧力でもって供給されるので、第1処理域2aに積まれた多数の添加混合粒状体に対して充分な空気を供給することができ、これら添加混合粒状体に対して好気性菌による好気性発酵が行われる。また、添加混合粒状体には紅色非硫黄型光合成細菌群が添加されているので、この紅色非硫黄型光合成細菌群が微生物のエサとなっておの微生物の活性化が図られ、また好気性発酵の際に発生する臭いが抑えられ、発酵の際の臭いの周囲への拡散を抑えることができる。
【0050】
この1次発酵工程S3の開始から2~3日経過すると、多数の添加混合粒状体の温度が60℃前後まで上昇して好気性発酵が活発に行われ、その後80~85℃前後まで上昇し、このように80℃前後の高温まで上昇することにより、添加混合粒状体に付着している雑菌が死滅し、雑菌が非常に少ないものとなる。
【0051】
この1次発酵工程S3の開始から7~14日経過すると、多数の添加混合粒状体の温度が60~70℃まで低下するようになり、このような温度まで低下した段階で好気性菌による好気性発酵が終了し、1次発酵工程S3が終了する。
【0052】
この実施形態においては、例えば第1処理域2aにおいて、1次発酵工程S3の最初から最後まで処理域を変えることなく、また山状に積んだ添加混合粒状体を切り返すことなく実施しているが、この1次発酵工程S3の半ばで第1処理域を移動させる、例えば第1処理域2cに移し替えるようにしてもよく、このように移し替えることにより、添加混合粒状体の切り返しも併せて行うことができる。例えば、第1処理域2cに移し替えた後は、この第1処理域2cに移し替えられた添付混合粒状体80に上述したようにしてコンプレッサ28からの圧縮空気が供給され、この添付混合粒状体80に対して残りの好気性発酵が行われる。
【0053】
この1次発酵工程の後に、添付混合粒状体80に対して2次発酵を行う2次発酵工程S4が遂行される。この2次発酵工程S4においては、例えば第1処理域2aにて1次発酵された添加混合粒状体が第2処理域10(例えば、10a)に移され、この第2処理域10(10a)に山状となるように積まれる。そして、この山状となった多数の添加混合粒状体の下側、即ち第2処理域10(10a)の下側から第2圧力(0.005~0.02kPa)の空気が供給される。
【0054】
例えば、第2処理域10aに積まれた多数の添加混合粒状体を発酵させるときには、送風ブロア64aが作動され、送風ブロア64aからの空気(第2圧力の空気)は、第2分配管76aを通して第2分岐送給管75に送給され、第2分岐送給管75の複数の噴出孔(図示せず)から噴出される。
【0055】
これら噴出孔から噴出された空気は、多数の添加混合粒状体間の隙間を通って上方に流れ、この2次発酵工程S4のときも添加混合粒状体間の隙間を通してほぼ全体にわたって均一に流れるようになる。また、空気は低圧の第2圧力でもって供給されるので、第2処理域10aに積まれた多数の添加混合粒状体に対して少しずつ空気を供給するようになり、これら添加混合粒状体に対して嫌気性菌による嫌気性発酵が行われる。また、この2次発酵のときにも紅色非硫黄型光合成細菌群が微生物のエサとなり、嫌気性発酵の際に発生する臭いも抑えられる。
【0056】
この2次発酵工程S4の開始から30~60日経過すると、多数の添加混合粒状体の温度が25~35℃前後まで低下するようになり、このような温度まで低下した段階で嫌気性菌による嫌気性発酵が終了し、2次発酵工程S4が終了する。
【0057】
2次発酵工程S4が終了した後に、添加混合粒状体に含まれる水分を低減させる乾燥工程S5が遂行される。この乾燥工程S5は、例えば堆肥処理施設に隣接して設置される乾燥域(図示せず)に、2次発酵済みの添加混合粒状体を移して自然放置して乾燥させるようにすることができ、これら添加混合粒状体の含水率が10質量%以下に低下した段階で乾燥工程S6が終了する。尚、2次発酵工程S4が終了した後、この添加混合粒状体を例えば第2処理域10aにそのまま放置して乾燥させる、或いは送風ブロア74aを作動させて送風しながら乾燥させるようにしてもよい。
【0058】
この乾燥工程S6後の添加混合粒状体は、上述したように、粒状体形成工程S2における戻し堆肥として用いられ、また選別工程6を経て植物の堆肥として利用することができる。堆肥として利用する場合、添加混合流体80を完成堆肥として選別する選別工程S6が遂行される。この選別工程S6においては、乾燥工程S5後の添加混合粒状体が完成肥料室32のホッパー42に投入され、投入された添加混合粒状体が完成選別装置40に送られ、この完成選別装置40により所要の通りに選別された後に、完成堆肥は肥料排出域46に排出され、添加混合粒状体に混入していた異物は異物排出域48に排出される。尚、完成堆肥は、例えば、田畑に運んで土壌表面に蒔いたり、例えば肥料として袋詰めされて商品として販売される。
【0059】
以上、本発明に従う廃棄物の堆肥化処理方法を実施する堆肥化処理施設の一例について説明したが、本発明はこのような堆肥化処理方法(堆肥化処理施設)に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更乃至修正が可能である。
【0060】
例えば、上述した実施形態では、堆肥化処理施設の片側に5つの第1処理域2(2a~2e)を設けているが、このような構成に限定されず、第1処理域2を例えば3~4つ、或いは6つ以上設けるようにしてもよい。また、その他側に4つの第2処理域10(10a~10d)を設けているが、このような構成に限定されず、第2処理域10を例えば3つ、或いは5つ以上設けるようにしてもよい。
【0061】
また、例えば、上述した実施形態では、堆肥化処理施設に特に設けられていないが、スペース的に余裕がある場合などにおいては、この堆肥化処理施設に、粉砕・つぶし工程S1を行うための粉砕・つぶし域(例えば、粉砕装置が設置される)を設けるようにしてもよく、或いは2次発酵終了後の添加混合粒状体を放置して自然乾燥させるための乾燥域を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
2,2a~2e 第1処理域
10,10a~10d 第2処理域
20 攪拌室
28 コンプレッサ
30 攪拌造粒機
32 完成肥料室
40 完成選別装置
60a~60e 第1分岐送給管
62a~62e 第1分配管
70a~70e 噴出ノズル
74,74a~74d 送風ブロア
75 第2分岐送給管
76,76a~76d 第2分配管
【要約】 (修正有)
【課題】細菌による発酵を利用し、温風を利用することなく堆肥化処理することができる廃棄物の堆肥化処理方法を提供すること。
【解決手段】廃棄物を粉砕して小さくつぶす粉砕・つぶし工程S1と、粉砕・つぶし工程にてつぶした廃棄物に紅色非硫黄型光合成細菌群を添加して混合した添加混合物を多数の粒状体に形成する粒状体形成工程S2と、多数の添加混合粒状体を第1処理域に積み、第1処理域の下側から第1圧力の空気を多数の添加混合粒状体間を通して送給して1次発酵させる1次発酵工程S3と、第1発酵工程S3後に多数の添加混合粒状体を第2処理域に移して積み、第2処理域の下側から第1圧力よりも低い第2圧力の空気を多数の添加混合粒状体間を通して送給して2次発酵させる2次発酵工程S4と、2次発酵の後に多数の添加混合粒状物を乾燥させる乾燥工程S5とを含む廃棄物の堆肥化処理方法。
【選択図】
図3