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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】使い捨てマスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20230605BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
A41D13/11 E
A62B18/02 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018193560
(22)【出願日】2018-10-12
(65)【公開番号】P2020059954
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000162940
【氏名又は名称】興研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002882
【氏名又は名称】弁理士法人白浜国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100134072
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100066267
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 吉治
(72)【発明者】
【氏名】白石 耕平
(72)【発明者】
【氏名】竹内 広宣
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-057839(JP,A)
【文献】米国特許第04739755(US,A)
【文献】特開平03-007173(JP,A)
【文献】特開2003-320041(JP,A)
【文献】米国特許第06196223(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/11
A62B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向を有し、カップ状の被覆部と、前記被覆部の周縁部分に接合された接顔体とを有するマスク本体を含む使い捨てマスクにおいて、
前記接顔体は、前記周縁部分に接合された固定部と、前記固定部から内方へ延びる環状の内周壁部と、前記内周壁部に囲まれた中央開口と、前面側に位置する第1層と、後面側に位置する第2層と、前記前後方向において前記第1及び第2層間に位置する中間層とを有し、
前記第1層、前記第2層及び前記中間層は、それぞれ、前記固定部から内方へ環状に延びる内周壁部を有し、
前記第1及び第2層と前記中間層とは、前記固定部を介してのみ互いに接合されていて、前記第1層、前記第2層及び前記中間層の前記内周壁部は互いに接合されておらず、
着用者の顔面と前記第2層の内周壁部との間における動摩擦係数は、前記第1層の内周壁部と前記中間層の内周壁部との間における動摩擦係数又は前記中間層の前記内周壁部と前記第2層の内周壁部との間における動摩擦係数よりも大きいことを特徴とする前記マスク。
【請求項2】
前記中央開口は、前記前後方向において互いに重なって連通する、前記第1層の中央に位置する第1開口と、前記中間層に位置する第2開口と、前記第2層の中央に位置する第3開口とから形成されており、前記第1開口の面積は、前記第2開口及び第3開口のうちの少なくとも前記第3開口の面積よりも大きい請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記第2層は、伸縮性シートから形成されている請求項1又は2に記載のマスク。
【請求項4】
前記中間層は、非通気性である請求項1~3のいずれかに記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨てマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防塵用等に使用される、使い捨てマスクは公知である。例えば、特許文献1には、装着者の口及び鼻を覆うカップ状の被覆部と、被覆部の周縁部分に接合された接顔体とを有するマスク本体と、マスク本体の両側縁から延出する一対の締紐とを含む使い捨てマスクが開示されている。接顔体は、ウレタンフォーム等の弾性材料から形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭64-26049号公報
【0004】
特許文献1に開示の使い捨てマスクによれば、装着状態において、弾性変形可能な接顔体が顔面に密接されることから、所要の密封性を発揮するとともに、装着感に優れ、快適に装着することができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたマスクにおいては、通常の装着状態においては、接顔体が顔面に密接することで所要の密封性を発揮しうるものの、装着者が会話をする際に口を大きく開いたときには、接顔体が下方へ押し下げられてマスク全体が下方へ位置ずれする場合がある。また、装着者が、しかめた表情をしたときにはマスク全体が上方位置ずれする場合がある。このように、上方又は下方へマスク全体が位置ずれした場合には、装着感が損なわれ、装着者に不快感を与えるおそれがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の発明の改良であって、会話や表情の変化等によって装着者の顔面が動いたときでも、マスクが位置ずれして装着感が損なわれるおそれのない使い捨てマスクの提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前後方向を有し、カップ状の被覆部と、前記被覆部の周縁部分に接合された接顔体とを有するマスク本体を含む使い捨てマスクに関する。
【0008】
本発明に関する使い捨てマスクは、前記接顔体は、前記周縁部分に接合された固定部と、前記固定部から内方へ延びる環状の内周壁部と、前記内周壁部に囲まれた中央開口と、前面側に位置する第1層と、後面側に位置する第2層と、前記前後方向において前記第1及び第2層間に位置する中間層とを有し、前記第1層、前記第2層及び前記中間層は、それぞれ、前記固定部から内方へ環状に延びる内周壁部を有し、前記第1及び第2層と前記中間層とは、前記固定部を介してのみ互いに接合されていて、前記第1層、前記第2層及び前記中間層の前記内周壁部は互いに接合されておらず、着用者の顔面と前記第2層の内周壁部との間における動摩擦係数は、前記第1層の内周壁部と前記中間層の内周壁部との間における動摩擦係数又は前記中間層の前記内周壁部と前記第2層の内周壁部との間における動摩擦係数よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る使い捨てマスクによれば、接顔体の第1及び第2層と中間層とは、固定部を介してのみ互いに接合されていることから、会話や表情の変化等によって装着者の顔面が動いたときでも、中間層及び第2層のうちの少なくとも第2層が顔面の動きに追従するように変形して、接顔体が顔面に密接した状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本願の使い捨てマスクを前面側から視た斜視図。
図2】マスクの背面図。
図3】マスクの装着状態における、図2のIII-III線に沿う断面図。
図4】装着者が口を大きく開けた状態における、図3と同様の断面図。
図5】(a)図4の一点鎖線V(a)で囲まれた領域の一部拡大図。(b)他の実施の態様における図5(a)と同様の一部拡大図。
図6】各試料の動摩擦係数を測定するときの様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
図1図4を参照すると、使い捨てマスク10は、上下方向Y及び横方向Xと、前後方向Zとを有し、カップ状の被覆部(フィルター部)20と、被覆部20の周縁部分に接合された接顔体30とを有するマスク本体11と、マスク本体11の両側縁から延出する一対の締紐12とを有する。マスク本体11は、さらに、横方向Xの寸法を2等分する縦断中心線Pと、上下方向Yの寸法を2等分する横断中心線Qとを有する。
【0012】
被覆部20は、装着者の顔面の口部及び鼻部を覆うようにカップ状に成形されており、カップの底となる前面21aと、装着者の顔面に当接される後面21bと、カップの縁となる周縁部分22と、前面21aと周縁部分22との間に位置して内部空間を画成する周壁部分23とを有する。
【0013】
被覆部20は、熱可塑性合成繊維を含む繊維不織布、織布、開孔プラスチックフィルム、これらのラミネートシート等の通気性シート材料からなる本体シートから形成されており、装着者の吸気の取り入れと呼気の排出とが可能であって、呼気及び吸気のろ過を可能にするフィルター部として機能する。
【0014】
接顔体30は、被覆部20の周縁部分22に沿う環状であって、周縁部分22を1周するシールライン(溶着ライン)15において周縁部分22の後面21b側に固定された固定部31と、固定部31から内方へ延びる内周壁部32と、内周壁部32に囲まれた中央開口33とを有する。シールライン15は、接顔体30の固定部31と被覆部20の周縁部分22とを重ね合わせた状態で、かかる重畳部分を全体又は局所的に加圧・加熱することによって、周縁部分22に含まれる熱可塑合成繊維を溶融固化して接顔体30と一体的に接合している。接顔体30が、熱可塑性合成繊維又は熱可塑性合成樹脂を含む場合には、シールライン15のシール強度をより高めることができる。このように、被覆部20と接顔体30との外周縁部がシールライン15によってシールされることによって、それらの間から、外気がマスク10内部に進入するのを抑制することができる。
【0015】
接顔体30は、顔面の起伏に沿うような凹凸のある立体形状をなしており、特に、装着者の鼻梁部と接する上端部分32Aと、下顎部に接する下端部分32Bとを有する。締紐12は、被覆部20と接顔体30との間に介在された状態でシールライン15によって固定された、プラスチック製の係止具13を介してマスク本体11に連結されている。なお、接顔体30は、凹凸のある立体形状ではなく、平坦状であって平面的に顔面に当接される形状であってもよい。
【0016】
接顔体30は、前面21a側に位置する内層(第1層)40と、後面21b側に位置する外層(第2層)50と、前後方向Zにおいて内外層(第1及び第2層)40,50の間に位置する中間層60とを含む。内層40は、プラスチックフィルムや繊維不織布、好ましくは、弾性復元可能な反撥性のある発泡弾性体から形成することができる。内層40が発泡弾性体から形成される場合には、例えば、発泡ウレタン、発泡ポリスチレンや発泡ポリエチレンウレタンフォーム等を好適に用いることができる。本実施形態においては、内層40は所要の厚さを有する発泡弾性体から形成されている。
【0017】
中間層60は、内層40に比して肉薄かつ柔軟であって、好ましくは非通気性であって気密性に優れた、プラスチックフィルム、繊維不織布又はそれらのラミネートシートから形成することができる。ここで、非通気性とは、空気を通過させない性質であって、通気度が一般的なフィルム又は不織布に比べてかなり低い又はほぼ無いことを意味する。通気度は、一定時間内での空気の通過量の大小で評価することができる。
【0018】
外層50は、プラスチックフィルム、繊維不織布又はそれらのラミネートシートから形成することができる。また、外層50は、伸縮性を有するシート、例えば、ポリウレタン系弾性繊維や熱可塑性エラストマーを原料とする弾性繊維を含む弾性繊維不織布、ウレタンシート、ポリエステルとポリウレタンフィルムとの弾性ラミネートシート等の伸縮性(弾性)シートから形成することができる。
【0019】
内層40は、固定部31から内方へ環状に延びる内周壁部42と、中央に位置する、内周壁部42に囲まれた内側開口(第1開口)43とを有する。中間層60は、固定部31から内方へ環状に延びる内周壁部62と、中央に位置する、内周壁部62に囲まれた中間開口(第2開口)63とを有する。外層50は、固定部31から内方へ環状に延びる内周壁部52と、中央に位置する、内周壁部52に囲まれた外側開口(第3開口)53とを有する。接顔体30の内周壁部32は、互いに内層40の内周壁部42と、中間層60の内周壁部62及び外層50の内周壁部52とから形成されている。接顔体30の中央開口33は、内層40の内側開口43と、中間層60の中間開口63及び外層50の外側開口53とが連通して形成されており、その開口縁33aは、外層50の外側開口53の開口縁53aによって画成されている。
【0020】
内層40、中間層60及び外層50は、前後方向Zにおいて互いに重なるように配置されていて、固定部31を介してのみ接合されており、固定部31から内方へ延びる内周壁部4252,62は互いに接合されていない。したがって、各層40,60,50の内周壁部42,62,52は互いに分離されており、互いに干渉されることなく、自由に屈曲、変形することができる。接顔体30は、かかる構成を有することから、例えば、発泡弾性体層(内層)と、発泡弾性体層の後面全体に接着剤を介して接合された繊維不織布層(外層)との2層構造を有する従来の接顔体とは、その基本的構造が相違する。
【0021】
内層40の内側開口43の面積は、中間層60の中間開口63及び外層50の外側開口53のうちの少なくとも中間開口63よりも大きくなっている。具体的には、図2を参照すると、内側開口43の開口縁43aは、中間開口63の開口縁63a及び外側開口53の開口縁53aの径方向の外方に位置している。本実施形態においては、中間開口63の開口縁63aは外側開口53の開口縁53aに沿うようにその径方向の外方に位置しており、中間開口63が外側開口53よりも僅かに大きく形成されているが、例えば、中間開口63の面積と外側開口53の面積とがほぼ同じであって、前後方向Zにおいて開口縁63aと開口縁53aとがほぼ一致するように重なっていてもよい。
【0022】
内側開口43の開口縁43aは、上方へ凸となる上方部位と下方へ凸となる下方部位とを有する。中間開口63の開口縁63aと外側開口53の開口縁53aとは、開口縁43aよりも先鋭状に上方へ凸となる上方部位と横方向Xへわずかに湾曲して延びる下方部位とを有する。各層40,60,50の開口縁43a,63a,53aがかかる形状を有することによって、開口縁43aと開口縁63a,53aとは互いに上方部位において最も接近し、下方部位において最も離間している。
【0023】
中間層60の内周壁部62と外層50の内周壁部52とは、前後方向Zにおいて互いに重なり合って形成された、内層40の内側開口43から径方向の内側へ延出して環状に延びる内側延出部57を有する。内側延出部57のうちの下方部分57Bの面積は、上方部分57Aの面積よりも大きくなっており、また、下方部分57Bの縦断中心線P上における上下方向Yの寸法W2は、上方部分57Aの縦断中心線P上における上下方向の寸法W1よりも大きくなっている。
【0024】
図3を参照すると、通常のマスク10の装着状態において、接顔体30が顔面に密接されて高いシール性が発揮されており、マスク10内部への外気の進入が遮断されている。具体的には、反撥性を有する内層40の内面側に固定部31を介してのみ接合された中間層60及び外層50が配置されていることから、装着状態において、顔面の起伏のある形状に沿うように内層40が弾性変形するとともに、内層40よりも柔軟な中間層60及び外層50が顔面に密接される。
【0025】
図4は、装着者が、大きな声で会話したり、大きく欠伸したりなどをして口4を比較的に大きく開いた状態におけるマスク10の様子を示している。反撥性材料のみからなる接顔体を備えた従来のマスクであっても、接顔体が顔面の起伏形状に沿って変形した状態でフィットされるので、高いシール性が発揮されて粉塵等がマスク内部に侵入するのを効果的に抑制しうる。したがって、通常の装着状態であればかかる従来のマスクであっても十分に内部の気密性を保つことができるが、突発的に、装着者が大きな声で会話したり、大きく欠伸をしたり、しかめた表情をした場合等においては、接顔体が顔面の急な動きに追従することができずに、接顔体と顔面との間に僅かな隙間が形成されて、装着感が損なわれ、装着者に不快感を与えるおそれがある。
【0026】
本実施形態にかかるマスク10においては、内層40の後面21b側に中間層60と外層50とが配置されており、それらが固定部31を介してのみ接合されていて内周壁部42,62,52は互いに接合されずに分離した状態であることから、装着者の顔面形状が変化した場合であっても、接顔体30は、その動きに追従するように変形することができる。
【0027】
図5(a)を参照すると、実施態様の一例として、例えば、装着者の口4が大きく開いたときには、顔面に当接される外層50の内周壁部52が下顎部5の動きに追従して、中間層60の内周壁部62を滑るようにして下方へ移動し、一部が屈曲、変形する。それによって、下顎部5には内周壁部52が当接された状態が維持されるので、接顔体30と顔面との間に僅かな隙間が生じて外気がマスク10の内部に進入するのを抑制することができる。また、かかる態様においては、外層50が下方へずり下がることによって中間層60の内周壁部が露出した状態となるが、中間層60が実質的に非通気性であることによって、中間層60を介して外気が直接的にマスク10内部に進入するのを防ぐことができる。さらに、外層50が伸縮性を有する場合には、装着者の顔面の動きに合わせて容易に伸長、変形させることができ、追従性が向上する。
【0028】
かかる場合には、外層50が装着者の下顎部5の動きに追従して下方へずり下がることから、下顎部5が下方へ移動するときに生じる、顔面と外層50の内周壁部52との間の摩擦抵抗R1が、内周壁部52とそれに当接される中間層60の内周壁部62との間の摩擦抵抗R2よりも大きくなっているといえる。
【0029】
図5(b)を参照すると、他の実施態様の一例であって、図5(a)の態様と同様に、装着者の口4が大きく開いたときに、下顎部5の動きに追従するように、顔面に当接される外層50の内周壁部52が中間層60の内周壁部62を滑るようにして下方へずり下がるとともに、中間層60の内周壁部62が内層40の内周壁部42を滑るようにして下方へずり下がっている。それによって、下顎部5には内周壁部52が当接された状態が維持されるので、接顔体30と顔面との間に僅かな隙間が生じて外気がマスク10の内部に進入するのを抑制することができる。
【0030】
かかる場合には、外層50と中間層60とが装着者の下顎部5の動きに追従して下方へずり下がることから、下顎部5が下方へ移動するときに生じる、顔面と内周壁部52との間における摩擦抵抗R1が、内周壁部52とそれに当接される中間層60の内周壁部62との間の摩擦抵抗R2よりも大きく、かつ、摩擦抵抗R2が内層40の内周壁部42と中間層60の内周壁部62との間における摩擦抵抗R3よりも大きくなっているといえる。
【0031】
このように、図5(a),(b)に示した実施態様では、少なくとも摩擦抵抗R1>摩擦抵抗R2の相関関係が成立することによって、下顎部5が下方へ移動するときに、最も肌側に位置して顔面に接する外層50の内周壁部52が下顎部5の動きに追従するように屈曲、変形することで、顔面と接顔体30との密接された状態が維持されるといえる。
【0032】
<摩擦抵抗の測定>
互いに当接される各層40,60,50の内周壁部42,62,52間の摩擦抵抗R1-R3は、動摩擦係数として測定することができ、標準雰囲気下(室温20℃、相対湿度60%)において、JISK7125「プラスチック-フィルム及びシート-摩擦係数試験方法」に準拠した方法で測定した。
【0033】
まず、各層40,60,50に対応した試料1-3及び着用者の肌に対応した試料4を作製した。
試料1:内層40を形成する材料として発泡ポリエチレンウレタンフォームからなるシート
試料2:中間層60を形成する材料としてプラスチックフィルムと繊維不織布とからなるラミネートシート
試料3:外層50を形成する材料として繊維不織布シート
試料4:人工皮膚(ビューラックス社製「バイオスキン」)
【0034】
図6を参照すると、例えば、摩擦抵抗R1を測定する場合には、試料4を上部試験片102、試料3を下部試験片101として、表面が水平かつ平滑な試験テーブル100の上に下部試験片101と上部試験片102とを載置し、上部試験片102の上に底面にフェルトを貼り付けた滑り片103、さらにその上に錘り104(200g)を静置した。試験ケーブル105の先端105aをテープ106を介して上部試験片102に貼り付けて、引張試験機(図示せず)によって試験速度100mm/minで水平方向T1へ試験ケーブル105を引っ張って、動摩擦係数(μK)K1を測定した。同様に、摩擦抵抗R2を測定する場合には、試料3を上部試験片102、試料2を下部試験片101、摩擦抵抗R3を測定する場合には、試料2を上部試験片102、試料1を下部試験片101として測定し、動摩擦係数K2,K3を求めた。
【0035】
測定の結果、摩擦抵抗R1に対応する動摩擦係数K1は、摩擦抵抗R2に対応する動摩擦係数K2よりも大きく、動摩擦係数K2は、摩擦抵抗R3に対応する動摩擦係数K3よりも大きかった。
【0036】
摩擦抵抗R1-R3の相関関係は、各層40,60,50に使用される材料によって調整することができる。具体的には、例えば、摩擦抵抗R1に比べて摩擦抵抗R2の値を小さくするためには、外層50の内周壁部52又は中間層60の内周壁部62が、それぞれ、それらに対向する内周壁部52,62よりも平滑であることが好ましい。例えば、外層50が繊維不織布から形成されて表面が比較的に微小な凹凸のある粗面であるのに対し、中間層60の内周壁部62がプラスチックフィルムから形成されてその表面が比較的に平滑である場合には、外層50の内周壁部52が中間層60の内周壁部62に対して滑り易くなって、摩擦抵抗R2を比較的に小さくすることができる。また、中間層60と外層50、又は、内層40と中間層60がともに、繊維不織布又はプラスチックフィルムから形成されている場合であっても、互いに摺接される面のいずれかが比較的に高い平滑性を有することによって、摩擦抵抗を小さくすることができる。
【0037】
このように、各層40,60,50に使用される材料によって摩擦抵抗R1-R3の大きさを調整することのほかに、内周壁部42,62,52の摺接される面のいずれかに、ワセリン、流動パラフィン、ワックス等の摩擦抵抗低減剤を塗布することによって、摺接される面どうしの摩擦抵抗を相対的に小さくしてもよい。また、これらの面のいずれかに、凹凸加工を付したり、一般的なゴムやシリコンゴムを貼り付けることによって摩擦抵抗を相対的に高くしてもよい。
【0038】
本発明に係る使い捨てマスク10を構成する各構成部材には、本発明の技術的効果を奏する限りにおいて、明細書に記載されている材料のほかに、この種の分野において通常用いられている各種公知の材料を制限なく用いることができる。また、明細書及び特許請求の範囲において、「第1」、「第2」等の用語は、同様の要素、位置等を単に区別するために用いられる。
【0039】
以上に記載した本発明に関する開示は、以下の事項に整理することができる。
【0040】
前後方向を有し、カップ状の被覆部と、前記被覆部の周縁部分に接合された接顔体とを有するマスク本体を含む使い捨てマスクにおいて、前記接顔体は、前記周縁部分に接合された固定部と、前記固定部から内方へ延びる環状の内周壁部と、前記内周壁部に囲まれた中央開口と、前面側に位置する第1層と、後面側に位置する第2層と、前記前後方向において前記第1及び第2層間に位置する中間層とを有し、前記第1及び第2層と前記中間層とは、前記固定部を介してのみ互いに接合されていることを特徴とする。
【0041】
上記段落0040に開示の本発明は、少なくとも下記の実施の形態を含むことができる。該実施の形態は、分離して又は互いに組み合わせて採択することができる。
(1)前記中央開口は、前記前後方向において互いに重なって連通する、前記第1層の中央に位置する第1開口と、前記中間層に位置する第2開口と、前記第2層の中央に位置する第3開口とから形成されており、前記第1開口の面積は、前記第2開口及び第3開口のうちの少なくとも前記第3開口の面積よりも大きい。
(2)前記第2層は、伸縮性シートから形成されている。
(3)前記中間層は、非通気性である。
【符号の説明】
【0042】
4 口
5 下顎部
10 使い捨てマスク
20 被覆部
30 接顔体
31 固定部
32 内周壁部
33 中央開口
40 第1層(内層)
42 第1層の内周壁部
43 第1開口(内側開口)
50 第2層(外層)
52 第2層の内周壁部
53 第3開口(外側開口)
60 中間層
62 中間層の内周壁部
63 第2開口(中間開口)
Z 前後方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6