(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】フィルムアプリケータ
(51)【国際特許分類】
B05C 11/04 20060101AFI20230605BHJP
【FI】
B05C11/04
(21)【出願番号】P 2019035463
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2022-02-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年 コンバーティングテクノロジー総合展2019 展示日:平成31年1月30日~2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】510270797
【氏名又は名称】コーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】楯 恒夫
(72)【発明者】
【氏名】長田 良恭
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-191168(JP,U)
【文献】特開2013-169539(JP,A)
【文献】特開平01-266873(JP,A)
【文献】特開2013-202455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00-3/20
5/00-21/00
B05D 1/00-7/26
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面台の上に載置され、該平面台に対して相対的に移動可能な移動台
(1)を有し、該移動台
(1)に設けられ、該平面台との間に一定の隙間を形成する金属製ブレード
(4)を備え
、塗布液を所定の厚さにコーティングするためのフィルムアプリケータにおいて、
該ブレード
(4)の該平面台側の端部の断面形状が、前方円弧部分
(FR)と該前方円弧部分
(FR)の一端に接続する中央直線部分
(CL)及び該中央直線部分(CL)に接続する後方直線部分(BL)とを備えると共に、
該前方円弧部分
(FR)が該移動台
(1)の進行方向側に配置され、
該中央直線部分
(CL)が該平面台の表面に対して平行であり、該中央直線部分
(CL)の長さが0.5mm以上かつ
2mm以下の範囲に設定され
、
該後方直線部分(BL)と該平面台の表面とがなす角(θ)は、30度以上90度未満で、該塗布液が該後方直線部分(BL)で該ブレード(4)の押圧力から徐々に解放されるように設定されていることを特徴とするフィルムアプリケータ。
【請求項2】
請求項
1に記載のフィルムアプリケータにおいて、該ブレード
(4)の少なくとも該前方円弧部分
(FR)の表面には、該前方円弧部分
(FR)に沿った溝
(m)が一定間隔で形成されていることを特徴とするフィルムアプリケータ。
【請求項3】
平面台の上に載置され、該平面台に対して相対的に移動可能な移動台
(1)を有し、該移動台
(1)に設けられ、該平面台との間に一定の隙間を形成する金属製ブレード
(4)を備え
、塗布液を所定の厚さにコーティングするためのフィルムアプリケータにおいて、
該ブレード
(4)の該平面台側の端部の断面形状が、前方円弧部分
(FR)と該前方円弧部分
(FR)の一端に接続する後方直線部分
(BL)とを備えると共に、
該前方円弧部分
(FR)が該移動台
(1)の進行方向側に配置され、
該前方円弧部分
(FR)の表面には、該前方円弧部分
(FR)に沿った溝
(m)が一定間隔で形成されており、
さらに、該後方直線部分
(BL)と該平面台の表面とがなす角
(θ)は、30度以上90度
未満で
、該塗布液が該後方直線部分(BL)で該ブレードの押圧力から徐々に解放されるように設定されることを特徴とするフィルムアプリケータ。
【請求項4】
請求項1乃至
3のいずれかに記載のフィルムアプリケータにおいて、該ブレード
(4)と該平面台との間隔を調整する、調整手段
(3)が該移動台
(1)に設けられていることを特徴とするフィルムアプリケータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムアプリケータに関し、特に、塗料などの液体を所定の厚さにコーティングするためのフィルムアプリケータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス板等の平板や紙等のシート状部材の上に、塗料等の塗布液を均一に塗布することが行われている。
【0003】
塗布液を塗布するには、
図1に示すような、移動台1を備えたフィルムアプリケータが使用される。フィルムアプリケータは、移動台1に着脱自在のブレード4を備え、該ブレード4は、移動台1に設けられたギャップ調整用マイクロメータ3の先端(不図示)に磁石等で接続されている。マイクロメータ3を操作することで、ブレード4の先端が上下し、塗布層の厚みを調整することが可能となる。
【0004】
塗布する際には、ガラス板等の平板の上や、平板上に載置されたシート状部材の上に、フィルムアプリケータを載置し、移動台1と平板等とを相対的に移動させる。この移動の際に、
図2に示すように、平板等の上に配置された塗布液5をブレード4の移動(白抜き矢印の方向への移動)によって、塗布液が平板等の上に均一に伸ばされ、所定の厚みの塗布層(フィルム等)が形成される。なお、移動台1の移動方法の一つとして、移動台1に設けられた開口部2に両手の指を差し込み、移動台を操作者側に引き寄せる方法がある。
【0005】
従来のブレードの先端形状は、
図2に示すような直線状の傾斜面40を備えたものが多く利用されている。しかしながら、このようなブレードの形状では、塗布液5が傾斜面40に当たり、急速に方向を変えながらブレードの先端に向かって進むため、塗布液5の流れが乱れ易く、塗布層の厚みが均一になり難いことが分かった。
【0006】
特許文献1には、ブレードの先端の断面形状として、
図3に示すような円形のものや、
図4に示すような牛鼻形(中心O。中心角270度の扇形)のものが提案されている。
図3の円形の場合には、ブレード4の進行方向側の円弧41では、滑らかに塗布液がブレード先端に向けて取り込まれるため、
図2のものと比較して、塗布液の流れが乱れることが抑制される。しかしながら、塗布液はブレードの最下点(先端)を通過すると、円弧42に付着した状態で移動し易くなり、円弧42から塗布液が離れる位置にムラが発生し、結果として、塗布層の厚みが均一にならないことが分かった。
【0007】
さらに、
図4のように、扇形のブレードを用いた場合には、ブレード4の進行方向側の円弧41では、
図3と同様に塗布液の流れを滑らかにすることが可能である。しかしながら、ブレードの最下点(先端)を通過した後は、扇形の直線部分43がほぼ垂直に立ち上がっており、塗布液に対してブレードの押圧力が一挙に開放されるため、塗布液が波立ち易くなり、結果として塗布層の厚みが均一にならないことが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、上述したような問題を解決し、塗布層の厚みを均一に形成することが可能なフィルムアプリケータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明のフィルムアプリケータは、以下の技術的特徴を有する。
(1) 平面台の上に載置され、該平面台に対して相対的に移動可能な移動台を有し、該移動台に設けられ、該平面台との間に一定の隙間を形成する金属製ブレードを備え、塗布液を所定の厚さにコーティングするためのフィルムアプリケータにおいて、該ブレードの該平面台側の端部の断面形状が、前方円弧部分と該前方円弧部分の一端に接続する中央直線部分及び該中央直線部分に接続する後方直線部分とを備えると共に、該前方円弧部分が該移動台の進行方向側に配置され、該中央直線部分が該平面台の表面に対して平行であり、該中央直線部分の長さが0.5mm以上かつ2mm以下の範囲に設定され、該後方直線部分と該平面台の表面とがなす角は、30度以上90度未満で、該塗布液が該後方直線部分で該ブレードの押圧力から徐々に解放されるように設定されていることを特徴とする。
【0012】
(2) 上記(1)に記載のフィルムアプリケータにおいて、該ブレードの少なくとも該前方円弧部分の表面には、該前方円弧部分に沿った溝が一定間隔で形成されていることを特徴とする。
【0013】
(3) 平面台の上に載置され、該平面台に対して相対的に移動可能な移動台を有し、該移動台に設けられ、該平面台との間に一定の隙間を形成する金属製ブレードを備え、塗布液を所定の厚さにコーティングするためのフィルムアプリケータにおいて、該ブレードの該平面台側の端部の断面形状が、前方円弧部分と該前方円弧部分の一端に接続する後方直線部分とを備えると共に、該前方円弧部分が該移動台の進行方向側に配置され、該前方円弧部分の表面には、該前方円弧部分に沿った溝が一定間隔で形成されており、さらに、該後方直線部分と該平面台の表面とがなす角は、30度以上90度未満で、該塗布液が該後方直線部分(BL)で該ブレードの押圧力から徐々に解放されるように設定されることを特徴とする。
【0014】
(4) 上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のフィルムアプリケータにおいて、該ブレードと該平面台との間隔を調整する、調整手段が該移動台に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、平面台の上に載置され、該平面台に対して相対的に移動可能な移動台を有し、該移動台に設けられ、該平面台との間に一定の隙間を形成する金属製ブレードを備えたフィルムアプリケータにおいて、該ブレードの該平面台側の端部の断面形状が、前方円弧部分と該前方円弧部分の一端に接続する中央直線部分とを備えると共に、該前方円弧部分が該移動台の進行方向側に配置され、さらに、該中央直線部分が該平面台の表面に対して平行であり、該中央直線部分の長さが0.5mm以上かつ2mm以下の範囲に設定されているため、ブレードの進行方向側では前方円弧部分により、塗布液の流れが滑らかになると共に、ブレードの最下点(先端)に達した塗布液は、中央直線部分で、塗布液の波立ちが抑制されるため、塗布層の厚みを均一化することが可能となる。特に、比較的粘性の高い(例えば、1000mPa・sより大きい粘度)塗布液に対しては、効果が高い。
【0016】
また、本発明は、平面台の上に載置され、該平面台に対して相対的に移動可能な移動台を有し、該移動台に設けられ、該平面台との間に一定の隙間を形成する金属製ブレードを備えたフィルムアプリケータにおいて、該ブレードの該平面台側の端部の断面形状が、前方円弧部分と該前方円弧部分の一端に接続する後方直線部分とを備えると共に、該前方円弧部分が該移動台の進行方向側に配置され、該前方円弧部分の表面には、該前方円弧部分に沿った溝が一定間隔で形成されており、さらに、該後方直線部分と該平面台の表面とがなす角が、30度以上90度未満であるため、ブレードの進行方向側では前方円弧部分により、塗布液の流れが滑らかになると共に、前方円弧部分の表面に形成された溝により、進行方向に対する左右方向(進行方向に対して垂直かつ平面台の表面に平行な方向)への塗布液の移動を抑制でき、ブレードの最下点(先端)を通過した塗布液は、該溝で形成された塗布液表面の凹凸の溝が表面張力で崩れて平らになる作用により、進行方向に沿った塗布液の波立ちが抑制されるため、塗布層の厚みを均一化することが可能となる。特に、比較的粘性の低い(例えば、1000mPa・sより小さい粘度)塗布液に対しては、効果が高い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】フィルムアプリケータの一例を示す斜視図である。
【
図2】従来のブレードの形状を示す断面図(その1)である。
【
図3】従来のブレードの形状を示す断面図(その2)である。
【
図4】従来のブレードの形状を示す断面図(その3)である。
【
図5】本発明のフィルムアプリケータに使用されるブレードの第1の実施例を示す断面図である。
【
図6】
図5のブレードの応用例を示す断面図である。
【
図7】本発明のフィルムアプリケータに使用されるブレードの第2の実施例を示す断面図である。
【
図8】
図7のブレードの応用例を示す断面図である。
【
図9】本発明のフィルムアプリケータに使用されるブレードに溝を形成した例を示す斜視図である。
【
図10】
図9の点線B領域部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のフィルムアプリケータについて、好適例を用いて詳細に説明する。
本発明のフィルムアプリケータは、
図1に示すように、平面台の上に載置され、該平面台に対して相対的に移動可能な移動台1を有し、該移動台1に設けられ、該平面台との間に一定の隙間を形成する金属製ブレード4を備えたフィルムアプリケータにおいて、
図5及び6に示すように、該ブレード4の該平面台(6)側の端部の断面形状が、前方円弧部分(FR)と該前方円弧部分の一端に接続する中央直線部分(CL)とを備えると共に、該前方円弧部分(FR)が該移動台の進行方向側に配置され、さらに、該中央直線部分(CL)が該平面台の表面に対して平行であり、該中央直線部分の長さ(L)が0.5mm以上かつ3mm以下の範囲に設定されていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の他のフィルムアプリケータは、
図7及び8に示すように、ブレード4の平面台(6)側の端部の断面形状が、前方円弧部分(FR)と該前方円弧部分の一端に接続する後方直線部分(BL)とを備えると共に、該前方円弧部分(FR)が該移動台の進行方向側に配置され、該前方円弧部分の表面には、該前方円弧部分に沿った溝(
図9参照。符号m)が一定間隔で形成されており、さらに、該後方直線部分(BL)と該平面台の表面とがなす角(θ)が、30度以上90度以下であることを特徴とする。
【0020】
図1のフィルムアプリケータは、移動台1がコ字状のフレーム内にブレード4を配置する形状のものを示しているが、本発明のフィルムアプリケータは、単にブレード4の両端に移動台となる板状体を個別に配置させるものであっても良い。また、板状体の形状も、ブレード4の長手方向から見た形状が、四角形等の多角形の形状や、直線部分と円弧状部分を組み合わせた形状であっても良い。板状体における多角形等の複数の直線部分に合わせて、複数種類のブレードを放射状に一体的に構成し、平面台側に配置されるブレード4の種類を変えることで、ブレードと平面台との間隔や、ブレードの断面形状等を変化させることも可能である。
【0021】
図5に示すように、本発明のフィルムアプリケータに使用されるブレードには、ブレード4の平面台(6)側の端部の断面形状が、前方円弧部分(FR。点aから点bまでの区間)と該前方円弧部分の一端に接続する中央直線部分(CL。点bから点cまでの区間)から構成され、該中央直線部分(CL)がブレードの最下点(先端)となる。中央直線部分(CL)は、平面台(6)の表面と平行になるよう設定されている。
また、前方円弧部分(FR)と中央直線部分(CL)との接続は、滑らかに行うことが好ましく、例えば、両者の接続部分における前方円弧部分の接線が中央直線部分と重なるよう設定することが好ましい。
【0022】
ブレードの進行方向側では前方円弧部分(FR)により、塗布液の流れが滑らかになると共に、ブレードの最下点(先端)に達した塗布液は、中央直線部分(CL)で、塗布液の波立ちが抑制される。特に、中央直線部分の長さLは、短過ぎると塗布液の波立ちを十分に抑制することができない。また、長さLが長すぎると、塗布液に加わる圧力にムラが生じ、進行方向に対する左右方向(
図5の図面に垂直な方向)に移動する成分が発生する。しかも、長さLが長くなるに従い、塗布液が、中央直線部分のブレード表面に付着し易くなり、塗布層の厚みを均一化することが困難となる。このため、中央直線部分の長さLは、0.5mm以上かつ3mm以下、より好ましくは、0.5mm以上2mm以下が好ましい。
【0023】
図5及び
図6のような中央直線部分(CL)を設けたブレードは、粘度が比較的高い(例えば、1000mPa・sより大きい粘度)塗布液を塗布する際に用いるのが好ましい。また、粘度が高いほど、前方円弧部分(FR)や中央直線部分(CL)のブレード表面は凹凸が無い滑らかな表面で構成することが好ましい。ただし、必要に応じて、後述するような表面に溝を形成する構成を採用することも可能である。
【0024】
図5に示すように、中央直線部分(CL)の後方の形状については、後方直線部分(BL。点cから点dの区間)を設け、該後方直線部分(BL)の延長線Aと平面台(6)の表面とがなす角θが90度となっている。
図5等の扇形部分の左側に描かれている直方形(44)は、ブレードの先端部分4を支持するブレード本体である。ブレード4の先端からブレード本体44の下端までの長さ(
図5の点cから点dまでの距離)は、5mm以上確保することが好ましい。これは、ブレード本体44の先端が塗布液に触れるのを回避するためである。なお、
図7に示す他の実施例においても同様に、点bから点dまでの距離は、5mm以上であることが好ましい。
【0025】
さらに、
図6に示すように、後方直線部分(BL)については、後方直線部分(BL)の延長線Aと平面台の平面6とがなす角度θを、30度以上かつ90度以下の範囲に設定することも可能である。この角度θは、形成される塗布膜(フィルム)の厚みが一定の場合には、塗布膜表面と後方直線部分(BL)とがなす角度とほぼ等しい。この角度θは、塗布液の粘性や表面張力、塗布液の金属表面への付着力にも依存するが、塗布液が後方直線部分(BL)でブレード4の押圧力から徐々に解放され、塗布液が波立つことを更に抑制する観点や、塗布液が後方直線部分(BL)に付着するのを防止する観点から、30度~90度の範囲に設定することが好ましい。
【0026】
また、後方直線部分(BL)の後端dとブレード本体44の先端との距離は、ブレード本体が塗布液に触れるのを防止するため、5mm以上を確保することが好ましい。なお、
図8に示す他の実施例においても同様に、後方直線部分(BL)の後端dとブレード本体44の先端との距離は、5mm以上が好ましい。
【0027】
図7及び8は、本発明のフィルムアプリケータに使用されるブレードの第2の実施例を示す断面図である。ブレード4の平面台(6)側の端部の断面形状が、前方円弧部分(FR)と該前方円弧部分の一端に接続する後方直線部分(BL)とを備えている。後方直線部分(BL)と平面台の表面とがなす角(θ)が、
図7では90度であるが、
図8のように30度以上から90度以下の範囲で調整することが可能である。
【0028】
そして、
図7及び8のブレードの特徴は、
図9に示すように、前方円弧部分の表面には、該前方円弧部分に沿った溝(m)が一定間隔で形成されていることである。
図9の点線Bで示した前方円弧部分の表面の拡大断面図が
図10乃至11に示されている。
図10に示すように、溝mのピッチsは0.1~1mmの範囲であり、溝の深さhは10~300μmの範囲が好適に利用される。特に、ピッチsは0.2±0.1mm、深さhは50±40μmの範囲は適用範囲が広い。
【0029】
また、溝の断面形状としては、
図10のような直線のみで形成すると、塗布液が溝内に付着しやすくなるため、
図11(a)のような波型や
図11(b)のようななだらかな台形型が好ましい。
【0030】
溝の形成方法としては、金属製の円柱状の棒に削り刃を当て、棒を回転させて円周状の溝を形成した後に、刃又は棒を棒の長手方向に移動させて、次の溝を削る作業を繰り返す方法や、棒を回転させながら連続的に削り刃を長手方向に動かし、螺旋状の溝を形成する方法がある。
【0031】
図7又は
図8に示すブレードの特徴として、ブレードの進行方向側の前方円弧部分(FR)により、塗布液の流れが滑らかになると共に、前方円弧部分の表面に形成された溝により、進行方向に対する左右方向(図面に垂直な方向)への塗布液の移動を抑制できる。しかも、ブレードの最下点(先端)を通過した塗布液は、該溝で形成された塗布液表面の凹凸の溝が表面張力で崩れて平らになる作用により、進行方向に沿った塗布液の波立ちが抑制されるため、塗布層の厚みを均一化することが可能となる。特に、比較的粘性の低い(例えば、1000mPa・sより小さい粘度)塗布液に対しては、効果が高い。
【0032】
また、塗布液への押圧力を徐々に解放する方法として、
図8のように、後方直線部分の角度θを調整することも可能である。
【0033】
図1で示したブレード4の代わりに、
図5乃至8で示したブレードを取り付けることで、
図1の移動台1のフレームに設けたギャップ調整用マイクロメータ3を用いて、ブレードと平面台との間隔を調整することが可能となる。ブレード本体44が、マイクロメータ3の先端に取り付けられる。
【0034】
図5乃至8では、ブレードの先端に、断面が円形の4分の1の扇形(中心角90度)を有する棒状部材を用いる例を示したが、中心角180度の扇形の断面を有する棒状部材に置き換えることも可能である。また、
図5及び
図6などで溝を設けない場合は、一つの金属ブロックから、ブレード本体44を含むブレード全体を削り出すことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上説明したように、本発明によれば、塗布層の厚みを均一に形成することが可能なフィルムアプリケータを提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0036】
1 移動台(フレーム)
2 開口部(把持部)
3 ギャップ調整手段
4 ブレード
5 塗布液
6 平面台(表面側平面)
FR 前方円弧部分
CL 中央直線部分
BL 後方直線部分
m 溝