(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】制御装置、プログラム及びマイクロホンシステム
(51)【国際特許分類】
H04B 1/16 20060101AFI20230605BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20230605BHJP
H04B 1/10 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
H04B1/16 Z
H04R3/00 310
H04B1/10 B
(21)【出願番号】P 2019127202
(22)【出願日】2019-07-08
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 広樹
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー レゲス
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0258751(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0166423(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0131201(US,A1)
【文献】特開2017-118366(JP,A)
【文献】特表2018-530220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/16
H04R 3/00
H04B 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤレスマイクロホンが無線により送信した音信号を受信する複数の受信装置を制御する制御装置であって、
前記複数の受信装置が受信した前記音信号の品質を示す品質情報を取得する情報取得部と、
前記品質情報が示す前記音信号の品質に基づいて、前記複数の受信装置のうち、前記音信号に基づく音をスピーカに出力させない非出力受信装置を決定する決定部と、
を有
し、
前記情報取得部は、前記ワイヤレスマイクロホンにおいて設定された、前記非出力受信装置を切り替えることを許可するか否かを示す許否情報をさらに取得し、
前記決定部は、前記許否情報が前記非出力受信装置を切り替えることを許可することを示している場合、前記音信号の品質に基づいて前記非出力受信装置を決定し、前記許否情報が前記非出力受信装置を切り替えることを許可することを示していない場合、前記音信号の品質に基づいて前記非出力受信装置を決定しない、
制御装置。
【請求項2】
前記非出力受信装置をミュートモードにするための制御情報を前記非出力受信装置に送信する送信制御部をさらに有する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記複数の受信装置の少なくともいずれかが出力する前記音信号を前記スピーカに出力する中継器に対して、前記複数の受信装置のうち前記スピーカから音を出力する受信装置を特定するための情報を送信する送信制御部をさらに有する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記決定部が前記品質に基づいて前記非出力受信装置を決定するための判定基準の入力を受け付ける入力受付部をさらに有し、
前記決定部は、前記判定基準と前記品質とを比較することにより前記非出力受信装置を決定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記ワイヤレスマイクロホンの使用態様の入力を受け付ける入力受付部をさらに有し、
前記決定部は、前記使用態様に基づいて決定した判定基準と前記品質とを比較することにより前記非出力受信装置を決定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
ワイヤレスマイクロホンが無線により送信した音信号を受信する複数の受信装置を制御するコンピュータを、
前記複数の受信装置が受信した前記音信号の品質を示す品質情報を取得する情報取得部、及び
前記品質情報が示す前記音信号の品質に基づいて、前記複数の受信装置のうち、前記音信号に基づく音をスピーカに出力させない非出力受信装置を決定する決定部、
として機能させ
、
前記情報取得部が、前記ワイヤレスマイクロホンにおいて設定された、前記非出力受信装置を切り替えることを許可するか否かを示す許否情報をさらに取得し、
前記決定部が、前記許否情報が前記非出力受信装置を切り替えることを許可することを示している場合、前記音信号の品質に基づいて前記非出力受信装置を決定し、前記許否情報が前記非出力受信装置を切り替えることを許可することを示していない場合、前記音信号の品質に基づいて前記非出力受信装置を決定しないようにするためのプログラム。
【請求項7】
ワイヤレスマイクロホンと、
前記ワイヤレスマイクロホンが無線により送信した音信号を受信する複数の受信装置と、
前記複数の受信装置を制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、
前記複数の受信装置が受信した前記音信号の品質を示す品質情報を取得する情報取得部と、
前記品質情報が示す前記音信号の品質に基づいて、前記複数の受信装置のうち、前記音信号に基づく音をスピーカに出力させない非出力受信装置を決定する決定部と、
を有
し、
前記情報取得部は、前記ワイヤレスマイクロホンにおいて設定された、前記非出力受信装置を切り替えることを許可するか否かを示す許否情報をさらに取得し、
前記決定部は、前記許否情報が前記非出力受信装置を切り替えることを許可することを示している場合、前記音信号の品質に基づいて前記非出力受信装置を決定し、前記許否情報が前記非出力受信装置を切り替えることを許可することを示していない場合、前記音信号の品質に基づいて前記非出力受信装置を決定しない、
マイクロホンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレスマイクロホンから送信された音を出力する受信装置を制御する制御装置、プログラム及びマイクロホンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のワイヤレスマイクロホンと、複数のワイヤレスマイクロホンが送信した無線信号を受信する複数の受信装置とに対して、周波数が異なる複数の通信チャンネルをそれぞれ割り当てるパブリックアドレス(PA)システムが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のシステムは、ワイヤレスマイクロホンと受信装置とが一対一に対応付けられるように、ワイヤレスマイクロホンと受信装置の組み合わせごとに異なる周波数チャンネルを割り当てる。そのため、従来のシステムは、ワイヤレスマイクロホンが送信した無線信号を受信し、受信した無線信号により送信された音信号を出力する受信装置を切り替える場合に、ワイヤレスマイクロホン又は受信装置の周波数チャンネルを割り当てなおす必要があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、ワイヤレスマイクロホンと受信装置との間の無線通信に使用される周波数を切り替えることなく、ワイヤレスマイクロホンが送信した無線信号による音信号を出力する受信装置を切り替えることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、ワイヤレスマイクロホンが無線により送信した音信号を受信する複数の受信装置を制御する制御装置であって、前記複数の受信装置が受信した前記音信号の品質を示す品質情報を取得する情報取得部と、前記品質情報が示す前記音信号の品質に基づいて、前記複数の受信装置のうち、前記音信号に基づく音をスピーカに出力させない非出力受信装置を決定する決定部と、を有する制御装置を提供する。
【0007】
前記制御装置は、前記非出力受信装置をミュートモードにするための制御情報を前記非出力受信装置に送信する送信制御部をさらに有してもよい。
【0008】
前記制御装置は、前記複数の受信装置の少なくともいずれかが出力する前記音信号を前記スピーカに出力する中継器に対して、前記複数の受信装置のうち前記スピーカから音を出力する受信装置を特定するための情報を送信する送信制御部をさらに有してもよい。
【0009】
前記制御装置は、前記決定部が前記品質に基づいて前記非出力受信装置を決定するための判定基準の入力を受け付ける入力受付部をさらに有し、前記決定部は、前記判定基準と前記品質とを比較することにより前記非出力受信装置を決定してもよい。
【0010】
前記制御装置は、前記ワイヤレスマイクロホンの使用態様の入力を受け付ける入力受付部をさらに有し、前記決定部は、前記使用態様に基づいて決定した判定基準と前記品質とを比較することにより前記非出力受信装置を決定してもよい。
【0011】
前記情報取得部は、前記ワイヤレスマイクロホンにおいて設定された、前記非出力受信装置を切り替えることを許可するか否かを示す許否情報をさらに取得し、前記決定部は、前記許否情報が前記非出力受信装置を切り替えることを許可することを示している場合、前記音信号の品質に基づいて前記非出力受信装置を決定し、前記許否情報が前記非出力受信装置を切り替えることを許可することを示していない場合、前記音信号の品質に基づいて前記非出力受信装置を決定しなくてもよい。
【0012】
本発明の第2の態様においては、ワイヤレスマイクロホンが無線により送信した音信号を受信する複数の受信装置を制御するコンピュータを、前記複数の受信装置が受信した前記音信号の品質を示す品質情報を取得する情報取得部、及び前記品質情報が示す前記音信号の品質に基づいて、前記複数の受信装置のうち、前記音信号に基づく音をスピーカに出力させない非出力受信装置を決定する決定部、として機能させるためのプログラムを提供する。
【0013】
本発明の第3の態様においては、ワイヤレスマイクロホンと、前記ワイヤレスマイクロホンが無線により送信した音信号を受信する複数の受信装置と、前記複数の受信装置を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記複数の受信装置が受信した前記音信号の品質を示す品質情報を取得する情報取得部と、前記品質情報が示す前記音信号の品質に基づいて、前記複数の受信装置のうち、前記音信号に基づく音をスピーカに出力させない非出力受信装置を決定する決定部と、を有するマイクロホンシステムを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、周波数を切り替えることなく、ワイヤレスマイクロホンが送信した無線信号による音信号を出力する受信装置を切り替えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係るマイクロホンシステムの概要を説明するための図である。
【
図2】マイクロホンシステムが起動した直後の処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図3】マイクロホンシステムが非出力受信装置を切り替える場合の処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図5】音信号を出力する受信装置を決定部が切り替える処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】品質情報が示す品質と音信号を出力する受信装置との関係を示す図である。
【
図7】第2実施形態に係るマイクロホンシステムの構成を示す図である。
【
図8】第3実施形態に係るマイクロホンシステムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
[マイクロホンシステムS1の概要]
図1は、第1実施形態に係るマイクロホンシステムS1の概要を説明するための図である。マイクロホンシステムS1は、制御装置1と、ワイヤレスマイクロホン2と、受信装置3aと、受信装置3bと、スピーカ4aと、スピーカ4bとを有する。マイクロホンシステムS1は、制御装置1が受信装置3a及び受信装置3bを制御することにより、ワイヤレスマイクロホン2に入力された音をスピーカ4a又はスピーカ4bから出力するためのシステムであり、例えばパブリックアドレスシステムである。
【0017】
ワイヤレスマイクロホン2は、入力された音を電気信号に変換し、電気信号を無線Wにより送信する。無線Wは、電波を用いる伝送路である。以下の説明において、ワイヤレスマイクロホン2が音を変換して生成した電気信号を音信号という。
【0018】
受信装置3a及び受信装置3bは、ワイヤレスマイクロホン2が無線Wにより送信した音信号を受信する。受信装置3aは、受信装置3aに接続されたスピーカ4aに音信号を出力する。受信装置3bは、受信装置3bに接続されたスピーカ4bに音信号を出力する。以下、受信装置3aと受信装置3bとを特に区別する必要のない場合、受信装置3という。受信装置3は、音信号に基づく音をスピーカ4から出力する出力モード、及び音信号に基づく音をスピーカ4から出力しないミュートモードの2つのモードを有する。
【0019】
複数の受信装置3は、ワイヤレスマイクロホン2から受信した音信号の品質を示す品質情報を制御装置1に送信する。品質情報は、例えば受信レベル、SN比、ビット誤り率、音量又は音質等の情報である。
【0020】
スピーカ4aは、受信装置3aと接続され、受信装置3aが出力した音信号に基づく音を出力する。スピーカ4bは、受信装置3bと接続され、受信装置3bが出力した音信号に基づく音を出力する。以下、スピーカ4aとスピーカ4bとを特に区別する必要のない場合、スピーカ4という。
【0021】
制御装置1は、例えば、パーソナルコンピュータ又はサーバである。制御装置1は、複数の受信装置3それぞれと通信線(例えばLANケーブル又はUSBケーブル)により接続されている。制御装置1は、複数の受信装置3それぞれから品質情報を取得する。制御装置1は、取得した品質情報に基づいて、音信号に基づく音をスピーカ4に出力させる受信装置3である出力受信装置、及び音信号に基づく音をスピーカ4に出力させない受信装置3である非出力受信装置を決定する。制御装置1は、例えば、複数の受信装置3のうち、品質情報が示す音信号の品質が相対的に低い受信装置3を非出力受信装置とする。制御装置1は、音信号に基づく音を出力させないモードであるミュートモードにするための制御情報を非出力受信装置に送信する。
【0022】
図2は、マイクロホンシステムが起動した直後の処理の流れを示すシーケンス図である。受信装置3a及び受信装置3bそれぞれは、マイクロホンシステムS1が起動すると、自装置のモードを、ワイヤレスマイクロホン2から受信した音信号に基づく音を出力する出力モードにする(ステップS1及びステップS2)。
【0023】
ワイヤレスマイクロホン2は、入力された音を音信号に変換し、変換した音信号を無線Wにより複数の受信装置3それぞれに送信する(ステップS3)。受信装置3a及び受信装置3bは、ワイヤレスマイクロホン2から受信した音信号の品質を特定し、特定した品質を示す品質情報を制御装置1に送信する。
【0024】
制御装置1は、受信装置3a及び受信装置3bそれぞれが送信した品質情報を比較する(ステップS4)。ここでは、受信装置3bが送信した品質情報が示す品質が、受信装置3aが送信した品質情報が示す品質よりも低いものとする。制御装置1は、品質情報を基に受信装置3aと受信装置3bのうち、音信号の品質が相対的に低い受信装置、すなわち受信装置3bを非出力受信装置として選択する(ステップS5)。制御装置1は、ミュートモードにするための制御情報(以下、ミュート命令という。)を受信装置3bに送信する。
【0025】
受信装置3bは、ミュート命令を制御装置1から受信すると、受信装置3bをミュートモードにし(ステップS6)、ワイヤレスマイクロホン2から受信した音信号をスピーカ4bに出力しない。受信装置3aは、ワイヤレスマイクロホン2から受信した音信号をスピーカ4aに出力する(ステップS7)。
【0026】
なお、受信装置3a及び受信装置3bが音信号を受信してから受信装置3bがミュート命令を受信するまでの間、スピーカ4a及びスピーカ4bから音が出力されることは望ましくない。そこで、受信装置3a及び受信装置3bは、品質情報を制御装置1に送信してから所定の時間が経過するまでの間にミュート命令を受信しないことを条件として、音信号の出力を開始してもよい。
【0027】
図3は、マイクロホンシステムS1が非出力受信装置を切り替える場合の処理の流れを示すシーケンス図である。
図3のシーケンス図は、
図2に続く処理の流れを示している。ここでは、先に述べた受信装置3bが非出力受信装置として選択された状態(ステップS6)と、受信装置3aが出力モードで音を出力している状態(ステップS7)を開始状態として説明する。
【0028】
ワイヤレスマイクロホン2は、入力された音を音信号に変換し、変換した音信号を無線Wにより複数の受信装置3それぞれに送信する(ステップS8)。このとき、ワイヤレスマイクロホン2の音信号の品質は、使用者の移動にともない、変化しているものとする。受信装置3a及び受信装置3bは、ワイヤレスマイクロホン2から受信した音信号の品質を再度特定し、特定した品質を示す品質情報を制御装置1に送信する。
【0029】
制御装置1は、受信装置3a及び受信装置3bそれぞれが送信した品質情報を比較する(ステップS9)。ここでは、ワイヤレスマイクロホン2の移動にともない、受信装置3aが送信した品質情報が示す品質が、受信装置3bが送信した品質情報が示す品質よりも低く変化したものとする。制御装置1は、品質情報を基に受信装置3aと受信装置3bのうち、音信号の品質が相対的に低い受信装置を音信号に基づく音を出力させない非出力受信装置として選択する(ステップS10)。すなわち、ここでは、制御装置1は、音信号の品質が相対的に高い受信装置3bを出力受信装置に決定する。
【0030】
そして、制御装置1は、非出力受信装置に決定した受信装置3aにミュート命令を送信する。また、ミュート命令を制御装置1から受信した受信装置3aは、ミュートモードに切り替わり(ステップS11)、ワイヤレスマイクロホン2から受信した音信号をスピーカ4aに出力しない。受信装置3bは、出力命令を制御装置1から受信すると、出力モードに切り替わり(ステップS12)、ワイヤレスマイクロホン2から受信した音信号をスピーカ4bに出力する(ステップS13)。なお、制御装置1は、受信装置3aにミュート命令を送信する前に、受信装置3bに出力命令を送信してもよい。
【0031】
マイクロホンシステムS1は、
図3に示す処理を繰り返す。制御装置1は、複数の受信装置3から品質情報を受信する度に、受信した品質情報に基づいて受信装置を選択し、非出力受信装置を決定する。このようにすることで、制御装置1は、ワイヤレスマイクロホン2に入力された音をスピーカ4に出力する受信装置3を、音信号の品質に応じて変更する。
【0032】
[制御装置1の機能構成]
図4は、制御装置1の機能構成を示す図である。制御装置1は、記憶部11と、制御部12とを有する。
【0033】
記憶部11は、例えば、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)などの記憶媒体からなる。記憶部11は、制御部12を機能させるための各種のプログラムを記憶する。
【0034】
制御部12は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含む。制御部12は、記憶部11に記憶されているプログラムを実行することによって、情報取得部121、決定部123、送信制御部124、及び入力受付部122として機能する。
【0035】
情報取得部121は、複数の受信装置3が受信した音信号の品質を示す品質情報を取得する。情報取得部121は、取得した品質情報を決定部123に通知する。
【0036】
入力受付部122は、決定部123が非出力受信装置を決定するための判定基準の入力を受け付ける。例えば、入力受付部122は、制御装置1に接続されたディスプレイに、判定基準の入力を受け付けるための入力画面を表示させる。入力受付部122は、入力画面に入力された判定基準を決定部123に通知する。判定基準の詳細については後述する。
【0037】
決定部123は、品質情報が示す音信号の品質に基づいて、複数の受信装置3のうち、音信号に基づく音をスピーカ4に出力させる出力受信装置と、音信号に基づく音をスピーカ4に出力させない非出力受信装置とを決定する。決定部123は、例えば、音信号の品質が最も高い受信装置3を出力受信装置に決定し、それ以外の全ての受信装置3を非出力受信装置に決定する。決定部123は、例えば、入力受付部122から通知された判定基準と品質情報が示す品質とを比較することにより、出力受信装置及び非出力受信装置を決定する。
【0038】
送信制御部124は、ミュートモードにするための制御情報(ミュート命令)を、非出力受信装置に決定した受信装置3に送信する。送信制御部124は、音信号に基づく音をスピーカ4に出力させる受信装置3に対して、出力モードにするための制御情報(出力命令)を送信してもよい。送信制御部124は、例えば、ミュートモードになっており、かつ音信号に基づく音をスピーカ4に出力させる受信装置3に対して、出力モードに切り替えるための制御情報を送信する。送信制御部124がこのように動作することで、制御装置1は、制御装置1に接続される複数の受信装置3のうち、1台の受信装置3が音信号を出力し、それ以外の全ての受信装置3が音信号を出力しないように制御する。
【0039】
決定部123は、判定基準と品質情報が示す品質とを比較することにより非出力受信装置を決定する。決定部123は、決定した結果に基づいて、音信号を出力する受信装置3を切り替える。以下、判定基準と品質情報が示す品質とを比較することにより出力受信装置を切り替える処理の流れを説明する。
【0040】
[受信装置3を切り替える処理のフローチャート]
図5は、音信号を出力する受信装置3を決定部123が切り替える処理の流れを示すフローチャートである。決定部123が用いる判定基準は、例えば、品質閾値Th、差分閾値D、及び継続時間Tcである。
図5は、受信装置3aが音信号を出力している状態を開始状態として示している。
【0041】
決定部123は、品質Qaが品質閾値Thよりも小さいか否かを判定する(ステップS21)。品質Qaは音信号を出力している受信装置3aから受信した品質情報が示す品質に対応する数値であり、品質が高いほど品質Qaが大きい。品質情報が受信レベルである場合、品質Qaは例えば受信レベルの値である。品質情報がビット誤り率である場合、品質Qaは例えばビット誤り率の逆数である。
【0042】
決定部123は、品質Qaが品質閾値Th以上である場合(ステップS21でNo)、品質Qaが品質閾値Thよりも小さくなるまで待機する。すなわち、決定部123は、音信号を出力する受信装置3を切り替えない。決定部123は、品質Qaが品質閾値Thよりも小さい場合(ステップS21でYes)、音信号を出力していない受信装置3bの品質Qbと品質Qaとの差が差分閾値Dよりも大きいか否かを判定する(ステップS22)。ここでは、品質Qbは受信装置3bが送信した品質情報が示す品質であり、受信装置3bが音信号を出力していない場合の品質を示している。
【0043】
品質Qbと品質Qaとの差が差分閾値D以下である場合(ステップS22でNo)、決定部123は、音信号を出力する受信装置3を切り替えない。また、品質Qbと品質Qaとの差が差分閾値Dよりも大きい場合(ステップS22でYes)、決定部123は、品質Qbと品質Qaとの差が差分閾値Dよりも大きくなった時刻Tを記憶する(ステップS23)。そして、決定部123は、時刻Tから継続時間Tcが経過したか否かを判定する(ステップS24)。
【0044】
時刻Tから継続時間Tcが経過している場合(ステップS24でYes)、決定部123は、音信号を出力する受信装置3を他の受信装置3(
図5に示す例の場合は受信装置3b)に切り替える(ステップS25)。時刻Tから継続時間Tcが経過していない場合(ステップS24でNo)、決定部123は、音信号を出力する受信装置3を切り替えないで(ステップS26)、処理をステップS21に戻す。
【0045】
この音信号の品質値Qの監視は、ワイヤレスマイクロホン2と複数の受信装置3のそれぞれとの位置関係、距離などの変化による通信状態を把握するために行われる。すなわち、ワイヤレスマイクロホン2からの音信号の瞬間的な変動による受信装置3の切り替わりは望ましくない。そこで、決定部123は、このように差分閾値D及び継続時間Tcを用いて、音信号を出力する受信装置3を切り替えるか否かを判定する。決定部123がこのような動作をすることにより、音信号の品質の瞬間的な変動に伴う受信装置3の切り替えが抑制され、通信状態が安定する。
【0046】
図6は、品質情報が示す品質と音信号を出力する受信装置3との関係を示す図である。
図6における横軸は時間を示し、縦軸は品質を示す。実線L1は、受信装置3aの品質Qaの時間変化を示す。破線L2は、受信装置3bの品質Qbの時間変化を示す。一点鎖線は品質閾値Thを示す。時刻Tsにおいては、受信装置3aが音信号を出力しており、受信装置3bが音信号を出力していないものとする。
【0047】
図6を用いて説明する。品質Qaが時刻T0から低下し始めて時刻T1において品質閾値Thよりも小さくなり、時刻T21において、品質Qaと品質Qbとの差が差分閾値D以上になっている。品質Qaと品質Qbとの差が差分閾値Dよりも大きい状態が時刻T21から継続時間Tcが経過した時刻T22まで継続した場合、決定部123は、受信装置3aをミュートモードにして、受信装置3bを出力モードにする。すなわち、決定部123は音信号を出力する受信装置3を受信装置3aから受信装置3bに切り替える。
【0048】
受信装置3aをミュートモードにして、受信装置3bを出力モードにした後に、決定部123は、品質Qbを監視する。次に、品質Qbが時刻T3から低下し始めて時刻T4において品質閾値Thよりも小さくなるとともに品質Qaが上昇している。品質Qaと品質Qbとの差が差分閾値Dよりも大きくなった時刻T51から継続時間Tcが経過した時刻T52において、決定部123は、音信号を出力する受信装置3を受信装置3bから受信装置3aにさらに切り替える。
【0049】
[使用態様に基づく判定基準の決定]
決定部123は、ワイヤレスマイクロホン2の使用態様に対応する判定基準を用いて、音信号を出力する受信装置3を切り替えてもよい。この場合、例えば入力受付部122が、ワイヤレスマイクロホン2の使用態様の入力を受け付ける。使用態様は、例えば、複数の受信装置3が建物の異なる階に設置された状態での使用態様、又は複数の受信装置3がイベント会場のように単一階の広いエリアに設置された状態での使用態様などである。
【0050】
使用態様に基づいて決定した判定基準と品質情報が示す品質とを比較することにより、決定部123は非出力受信装置を決定する。例えば、複数の受信装置3が建物の異なる階に設置された使用態様において、決定部123は音信号を出力する受信装置3の切り替えが発生しづらい判定基準を使用する。この場合、決定部123は、複数の受信装置3が単一階に設置されている場合よりも差分閾値Dを大きくしたり、継続時間Tcを長くしたりする。決定部123のこのような動作は、ワイヤレスマイクロホン2を用いる人が階を移動した後に、移動前の階に設置された受信装置3からの音信号の出力を抑制する。
【0051】
複数の受信装置3が建物の単一の階に設置された状態での使用態様において、決定部123は、音信号を出力する受信装置3の切り替えが発生しやすい判定基準を使用する。この場合、決定部123は、複数の受信装置3が異なる階に設置されている場合よりも差分閾値Dを小さくしたり、継続時間Tcを短くしたりする。決定部123がこのように動作することで、ワイヤレスマイクロホン2を用いる人の位置によらず、ワイヤレスマイクロホン2に入力された音をより高い品質でスピーカから出力させることができる。
【0052】
[受信装置3の切り替えの禁止]
例えば、複数の階のそれぞれに1台ずつの受信装置3が設置されており、ワイヤレスマイクロホン2を用いる人が、他の階層に移動しない場合(同一の階層に滞在する場合)、非出力受信装置の切り替わりは好ましくない。そこで、ワイヤレスマイクロホン2は、非出力受信装置を切り替えることを許可するか否かを選択するための操作部(例えばスイッチ)を備えてもよい。
【0053】
ワイヤレスマイクロホン2は、当該操作部の状態に基づいて、非出力受信装置を切り替えることを許可するか否かを示す許否情報を受信装置3に送信する。具体的には、例えば操作部の状態が変化した場合に、ワイヤレスマイクロホン2は、操作部の変化に対応する許否情報を受信装置3に送信する。受信装置3は、許否情報をワイヤレスマイクロホン2から取得した場合、許否情報を制御装置1に送信する。
【0054】
情報取得部121は、受信装置3から許否情報を取得し、取得した許否情報を決定部123に通知する。決定部123は、情報取得部121が取得した拒否情報に基づいて、非出力受信装置を品質情報に基づいて切り替えるか否かを決定する。具体的には、決定部123は、許否情報が非出力受信装置を切り替えることを許可することを示している場合、音信号の品質に基づいて非出力受信装置を決定する。決定部123は、許否情報が非出力受信装置を切り替えることを許可することを示していない場合、音信号の品質に基づいて非出力受信装置を決定しない。
【0055】
制御装置1がこのように動作することで、ワイヤレスマイクロホン2を用いる人が、音信号を出力する受信装置3が切り替わることを希望していない場合に、音信号を出力する受信装置3が切り替わらない。
【0056】
[第1実施形態に係る制御装置1の効果]
以上説明したとおり、制御装置1は、複数の受信装置3から取得した品質情報が示す音信号の品質に基づいて、複数の受信装置3のうち、スピーカ4に出力させない非出力受信装置を決定する。制御装置1がこのように動作することで、マイクロホンシステムS1は、ワイヤレスマイクロホン2と受信装置3との間の無線通信に使用する周波数を切り替えることなく、品質が相対的に高い音信号に基づく音を出力できるように、音信号を出力する受信装置3の切り替えを実現する。
【0057】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態に係るマイクロホンシステムS2の構成を示す図である。マイクロホンシステムS2は、中継器5をさらに有する点で、第1実施形態に係るマイクロホンシステムS1と異なる。
【0058】
中継器5は、複数の受信装置3それぞれと接続されており、複数の受信装置3から音信号を取得する。中継器5は、複数の受信装置3の少なくともいずれかが出力する音信号をスピーカ4に出力するミキサーである。
【0059】
制御装置1においては、決定部123が、情報取得部121が複数の受信装置3それぞれから取得した品質情報に基づいて、複数の受信装置3のうち音信号をスピーカ4に出力する受信装置3を決定する。送信制御部124は、決定部123が決定した受信装置3を特定するための情報を中継器5に送信する。例えば、送信制御部124は、決定部123が決定した受信装置3を識別するための識別情報を中継器5に送信する。中継器5は、制御装置1から受信した情報に基づいて、スピーカ4から音を出力する対象とする受信装置3を特定し、特定した受信装置3から受信した音信号をスピーカ4に出力する。
【0060】
なお、中継器5が制御装置1の機能を有していてもよい。この場合、中継器5が複数の受信装置3から品質情報を取得し、取得した品質情報に基づいて、どの受信装置3から受信した音信号をスピーカ4に出力するかを切り替える。
【0061】
また、中継器5が、受信装置3a及び受信装置3bに対応するスピーカ4a及びスピーカ4bに接続されていてもよい。この場合、中継器5は、受信装置3aから受信した音信号をスピーカ4aに出力し、受信装置3bから受信した音信号をスピーカ4bに出力する。
【0062】
[第2実施形態に係る制御装置1の効果]
以上説明したとおり、第2実施形態に係る制御装置1は、複数の受信装置3それぞれから品質情報を取得する。そして、制御装置1は取得した品質情報に基づいて決定した非出力受信装置を特定するための情報を中継器5に送信する。制御装置1がこのように動作することにより、マイクロホンシステムS2は、ワイヤレスマイクロホン2と受信装置3との間の無線通信に使用する周波数を切り替えることなく、音信号を出力する受信装置3を切り替える。
【0063】
<第3実施形態>
図8は、第3実施形態に係るマイクロホンシステムS3の構成を示す図である。マイクロホンシステムS3においては、受信装置3aが、第1実施形態に係るマイクロホンシステムS1における制御装置1の機能を有する。
【0064】
受信装置3aは、受信装置3bから品質情報を取得する。受信装置3aは、ワイヤレスマイクロホン2から受信した音信号の品質を示す品質情報と、受信装置3bから取得した品質情報とに基づいて、音信号を出力する受信装置3を選択する。すなわち、受信装置3aは、受信装置3aから音信号を出力するか、受信装置3bから音信号を出力するかを決定する。受信装置3aが音信号を出力することを決定部123が決定した場合、受信装置3aの送信制御部124は、受信装置3bをミュートモードにするための制御情報を送信する。受信装置3bが音信号を出力することを決定部123が決定した場合、受信装置3aは、受信装置3aをミュートモードにして、受信装置3bを出力モードにするための制御情報を受信装置3bに送信する。
【0065】
このように複数の受信装置3のうちの1台が制御装置1として機能することにより、マイクロホンシステムS3は、制御装置1を別途備えることなく、実施形態1と同等の効果を得る。
【0066】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成できる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【0067】
以上の説明においては、入力受付部122が判定基準の入力を受け付ける場合を例示したが、制御装置1が入力受付部122を有しておらず、判定基準が予め記憶部11に記憶されていてもよい。また、以上の説明においては、マイクロホンシステムが2台の受信装置3を備える場合を例示したが、受信装置3の台数は任意である。受信装置3が3台以上ある場合、制御装置1は、1台の受信装置3に音信号を出力させ、他の受信装置3をミュートモードにする。
【0068】
また、以上の説明においては、受信装置3は電源が投入された直後に出力モードで動作を開始する場合を例示したが、受信装置3は電源が投入された直後にミュートモードで動作してもよい。この場合、制御装置1は、音を出力させることに決定した受信装置3に対して出力命令を送信し、出力命令を受信した受信装置3が音の出力を開始する。
【符号の説明】
【0069】
1 制御装置
2 ワイヤレスマイクロホン
3 受信装置
4 スピーカ
5 中継器
11 記憶部
12 制御部
121 情報取得部
122 入力受付部
123 決定部
124 送信制御部