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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】衣装用保護カバー
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/05 20060101AFI20230605BHJP
【FI】
A41D13/05 143
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019137396
(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公開番号】P2021021155
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】519273278
【氏名又は名称】株式会社リモーション
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【弁理士】
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 伸一
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08353063(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0110719(US,A1)
【文献】米国特許第07725952(US,B1)
【文献】実開昭51-063829(JP,U)
【文献】実開平01-177218(JP,U)
【文献】特開2017-071864(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0262475(US,A1)
【文献】特開平11-124712(JP,A)
【文献】米国特許第04856912(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D1/14-1/16
A41D13/00-13/12
A41D27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立ち姿勢のときに裾(62)が地面に届き、かつ、前記裾(62)のうち後方の部分のボリュームが大きいウエディングドレス(60)を着用したときに前記裾(62)および前記後方の部分を保護するための衣装用保護カバー(10)であって、
折り畳み可能であり、少なくとも前記裾(62)および前記後方の部分を収容するための収容空間(S)を形成可能なカバー本体(20)と、
前記カバー本体(20)の底部(26)に貫通形成されており、前記ウエディングドレス(60)の着用者(50)の両足(53)を挿通するための貫通穴(28)と、
前記カバー本体(20)の前後にそれぞれ設けられた把持部(31)と、を備えており、
前記カバー本体(20)は、シート状に形成されており、かつ、野球で使用するホームベースの形状に形成されており、
前記ウエディングドレス(60)の着用者(50)の両足が前記貫通穴(28)に挿通された状態で当該着用者(50)が前記カバー本体(20)の前部に設けられた把持部(31)を持ち上げ、当該衣装用保護カバー(10)の後方にいる者(70)が前記カバー本体(20)の後部に設けられた把持部(31)を持ち上げることにより、前記カバー本体20)に形成された前記収容空間(S)に少なくとも前記裾(62)が収容され、かつ、前記収容空間(S)のうち前記カバー本体(20)の後方の三角形の領域によって形成された後方に延びた空間に前記後方の部分が収容された状態になり、当該状態にて前記着用者(50)および前記後方にいる者(70)が歩くことができるように構成されたことを特徴とする衣装用保護カバー。
【請求項2】
前記貫通穴(28)の周囲には、前記貫通穴(28)に挿通された前記両足(53)の外周に装着するための装着手段(28a,29)が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の衣装用保護カバー。
【請求項3】
前記貫通穴(28)の周囲と前記底部(26)との間には、伸縮可能なスカート部(27)が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の衣装用保護カバー。
【請求項4】
前記把持部(31)は、前記カバー本体(20)の前方の左右方向の複数箇所と、前記カバー本体(20)の後方の左右方向の複数箇所とにそれぞれ設けられており、
前記カバー本体(20)の前方には、
前記前方に設けられた各把持部を纏めた各把持部を挿通するための前方挿通孔(26a)が貫通形成されており、
前記カバー本体の後方には、
前記後方に設けられた各把持部を纏めた各把持部を挿通するための後方挿通孔(26b)が貫通形成されており、
前記カバー本体(20)は、前記前方に設けられた各把持部(31)を纏めた各把持部(31)を前記前方挿通孔(26a)に挿通し、かつ、前記後方に設けられた各把持部(31)を纏めた各把持部(31)を前記後方挿通孔(26b)に挿通し、さらに、前記前方挿通孔(26a)および前記後方挿通孔(26b)にそれぞれ挿通された各把持部(31)をそれぞれ持ち上げることにより、前記収容空間(S)を形成可能となることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の衣装用保護カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立ち姿勢のときに裾が地面に届く衣装を着用して移動するときに、衣装の裾を汚れや破れから保護することができる衣装用保護カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、結婚式を挙げる前に写真を撮る、いわゆる前撮りが行われることが多くなった。また、前撮りは、室内で行う他、屋外で行うことが増加している。また、実際に結婚式を挙げないで、写真を撮影するだけの、いわゆるフォトウエディングが行われることもある。また、フリーのカメラマンなどと契約し、フォトツアーと称してリゾートや観光地などで撮影を行うことが多くなった。例えば、撮影は、沖縄、東京駅前などの国内の他、パリの凱旋門の前、ハワイなどの海外でも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-124712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、花嫁が着用するウエディングドレスや打掛は、裾が長いため、立ち姿勢では、裾が地面と接触する。このため、撮影場所を移動するときは、裾が汚れたり破れたりしないようにするために、裾の何カ所かを持ち上げた状態で移動しなければならない。特に、裾が長いウエディングドレスは、少なくとも3人以上で裾の何カ所かを持ち上げた状態で移動しなければならない。中でも、前述したフォトツアーは、スタッフの人数が充分なフォトスタジオでの撮影と異なり、裾を持ち上げる人が不足するため、裾が汚れたり破れたりするおそれが高くなる。特に、岩場での撮影では、裾が岩に引っ掛かり、裾が破れるおそれが高くなる。
また、室内の撮影に限定されていた高額のウエディングドレスも、近年では、屋外の撮影に貸し出されるケースが増えてきた。
しかし、高額のウエディングドレスのクリーニング代や補修費用は、安価なウエディングドレスよりも高額である。また、複雑な形状のウエディングドレスは、クリーニングしても汚れが落ちなかったり、破れを補修しても元通りに復元できなかったりするというリスクもある。特に、繊細なシルクの素材を多用したウエディングドレスは破れ易いし、汚れも落ち難い。
従来は、ウエディングドレスは汚れたらクリーニングに出せば良いし、破れたら補修に出せば良いという既成概念が定着していたが、高額のウエディングドレスの場合は、上述したように、クリーニング代および補修費用が高額になるし、元通りに復元できないリスクがあるため、上述した既成概念は通用し難い。
上述したように、従来は、立ち姿勢のときに裾が地面に届く衣装を着用して移動するときに、少ない人数で裾を保護するための有効な手段が無いために、様々な問題が発生している。
【0005】
そこで、本発明は、上述した諸課題を解決するために鋭意研究の結果創出されたものであり、立ち姿勢のときに裾が地面に届くウエディングドレスを着用して移動するときに、少ない人数で裾を保護することができる有効な手段を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1に係る発明)
前述した目的を達成するため、本出願の請求項1に係る発明では、
立ち姿勢のときに裾(62:図3)が地面に届き、かつ、前記裾(62)のうち後方の部分のボリュームが大きいウエディングドレス(60)を着用したときに前記裾および前記後方の部分を保護するための衣装用保護カバー(10)であって、
折り畳み可能であり、少なくとも前記裾(62)および前記後方の部分を収容するための収容空間(S:図4)を形成可能なカバー本体(20)と、
前記カバー本体(20)の底部(26)に貫通形成されており、前記ウエディングドレス(60)の着用者(50)の両足(53:図4)を挿通するための貫通穴(28:図1)と、
前記カバー本体(20)の前後にそれぞれ設けられた把持部(31)と、を備えており、
前記カバー本体(20)は、シート状に形成されており、かつ、野球で使用するホームベースの形状に形成されており、
前記ウエディングドレス(60)の着用者(50)の両足(53)が前記貫通穴(28)に挿通された状態で当該着用者(50)が前記カバー本体(20)の前部に設けられた把持部(31)を持ち上げ、当該衣装用保護カバー(10)の後方にいる者(70)が前記カバー本体(20)の後部に設けられた把持部(31)を持ち上げることにより、前記カバー本体(20)に形成された前記収容空間(S)に少なくとも前記裾(62)が収容され、かつ、前記収容空間(S)のうち前記カバー本体(20)の後方の三角形の領域によって形成された後方に延びた空間に前記後方の部分が収容された状態になり、当該状態にて前記着用者(50)および前記後方にいる者(70)が歩くことができるように構成されたという技術的手段を有する。
【0007】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明では、請求項1に記載の衣装用保護カバー(10)において、
前記貫通穴(28)の周囲を前記貫通穴(28)に挿通された前記両足(53)の外周に装着するための装着手段(28a,29:図1)を備えているという技術的手段を有する。
【0008】
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明では、請求項1または請求項2に記載の衣装用保護カバー(10)において、
前記貫通穴(28)の周囲と前記底部(26)との間には、伸縮可能なスカート部(27)が形成されているという技術的手段を有する。
【0009】
(請求項4に係る発明)
請求項4に係る発明では、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の衣装用保護カバー(10)において、
把持部(31)は、前記カバー本体(20)の前方の左右方向の複数箇所と、カバー本体(20)の後方の左右方向の複数箇所とにそれぞれ設けられており、
カバー本体(20)の前方には、
前方に設けられた各把持部を纏めた各把持部を挿通するための前方挿通孔(26a)が貫通形成されており、
カバー本体の後方には、
後方に設けられた各把持部を纏めた各把持部を挿通するための後方挿通孔(26b)が貫通形成されており、
カバー本体(20)は、前方に設けられた各把持部(31)を纏めた各把持部(31)を前方挿通孔(26a)に挿通し、かつ、後方に設けられた各把持部(31)を纏めた各把持部(31)を後方挿通孔(26b)に挿通し、さらに、前方挿通孔(26a)および後方挿通孔(26b)にそれぞれ挿通された各把持部(31)をそれぞれ持ち上げることにより、収容空間(S:図4)を形成可能となるという技術的手段を有する。
【0010】
【0011】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0012】
(請求項1に係る発明の効果)
請求項1に係る発明によれば、ウエディングドレスの着用者が両足をカバー本体の貫通穴に挿通し、カバー本体の前後にそれぞれ設けられた把持部をそれぞれ持ち上げることにより、少なくとも裾を収容するための収容空間がカバー本体に形成され、その収容空間に少なくとも裾を収容することができる。
従って、着用者がウエディングドレスを着用した状態で移動するときは、把持部をそれぞれ持ち上げ、収容空間に少なくとも裾が収容された状態で移動すれば、裾が地面に接触しないため、裾が汚れたり、破れたりするおそれがない。
しかも、裾をカバー本体の収容空間に収容することができるため、移動の際には、前後の把持部をそれぞれ持ち上げる人数が必要なだけであり、裾の周囲を何カ所も持ち上げるための多数の人数は必要としない。
さらに、カバー本体は折り畳み可能であるため、持ち運びに便利であり、収容スペースを小さくすることができる。
従って、着用者は、衣装用保護カバーを装着した状態で歩くときに、装着部分が突っ張るように感じ難い。
さらに、カバー本体は、野球で使用するホームベースの形状に形成されており、カバー本体の後方の三角形の領域により、後方に延びた空間が形成される。つまり、ウエディングドレスの裾のうち、後方の部分を収容する空間が形成される。このため、裾のうち、後方の部分のボリュームが大きい、あるいは、裾が後方に長いウエディングドレスであっても、裾の後方部分を後方に延びた空間に収容することができる。
【0013】
(請求項2に係る発明の効果)
【0014】
請求項2に係る発明によれば、貫通穴の周囲を、貫通穴に挿通された両足の外周に装着することができるため、収容空間に収容された裾などが、貫通穴と両足との間から下方にはみ出るおそれがない。
【0015】
(請求項3に係る発明の効果)
請求項3に係る発明によれば、貫通穴の周囲と底部との間には、伸縮可能なスカート部が形成されているため、貫通穴を絞ったときに、スカート部が伸長するので、底部が貫通穴の周囲の方に引っ張られ難いようにすることができる。
従って、着用者は、衣装用保護カバーを装着した状態で歩くときに、装着部分が突っ張るように感じ難い。
【0016】
(請求項に係る発明の効果)
請求項に係る発明によれば、カバー本体は、前方に設けられた各把持部を纏め、かつ、後方に設けられた各把持部を纏めた状態で、纏めた各把持部をそれぞれ持ち上げることにより、収容空間が形成されるため、把持部を持ち上げる人数を少なくすることができる。
【0017】
さらに、カバー本体の前方には、前方に設けられた各把持部を纏めた各把持部を挿通するための前方挿通孔が貫通形成されているため、纏めた各把持部を前方挿通孔に挿通することにより、カバー本体の前方を閉じることができるので、収容空間に収容された衣装の裾がカバー本体の前方からはみ出るおそれがない。
さらに、カバー本体の後方には、後方に設けられた各把持部を纏めた各把持部を挿通するための後方挿通孔が貫通形成されているため、纏めた各把持部を後方挿通孔に挿通することにより、カバー本体の後方を閉じることができるので、収容空間に収容されたウエディングドレスの裾がカバー本体の後方からはみ出るおそれがない。
【0018】
本発明によれば、立ち姿勢のときに裾が地面に届くウエディングドレスを着用して移動するときに、少ない人数で裾を保護することができる有効な手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る衣装用保護カバーを展開した平面図である。
図2図1に示す衣装用保護カバーの左側面図である。
図3】ウエディングドレスを着用した花嫁の左側面図である。
図4図1に示す衣装用保護カバーの使用方法を示す説明図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る衣装用保護カバーの説明図であり、(A)は平面図、(B)は左斜め上方から見た斜視図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る衣装用保護カバーの使用方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〈第1実施形態〉
本発明に係る衣装用保護カバーの第1実施形態について図を参照しつつ説明する。
[衣装用保護カバーの構造]
本発明に係る衣装用保護カバーの構造について説明する。なお、図1において、図面の左方を前方とし、右方を後方とする。また、図面の上方を右方とし、下方を左方とする。また、図2ないし図4において、図面の左方を前方とし、右方を後方とする。また、図面の上方を上方とし、下方を下方とする。
本実施形態の衣装用保護カバー10は、図3に示すウエディングドレス60の少なくとも裾62を保護するものである。
図1に示すように、本実施形態の衣装用保護カバー10は、カバー本体20と、貫通穴28と、把持部31と、袋状部28bと、調節紐29とを備えている。
【0021】
カバー本体20は、シート状に形成されており、かつ、折り畳み可能に形成されている。カバー本体20は、右端縁21と、左端縁22と、前端縁23と、後方右端縁24と、後方左端縁25とを備えている。また、右端縁21と平行に折曲げ部21aが形成されており、左端縁22と平行に折曲げ部22aが形成されている。また、前端縁23と平行に折曲げ部23aが形成されている。また、後方右端縁24と平行に折曲げ部24aが形成されており、後方左端縁25と平行に折曲げ部25aが形成されている。右端縁21および左端縁22は、平行に相対向している。右端縁21および前端縁23は直角を成しており、右端縁21および前端縁23が交差する部分に前方右側角部20aが形成されている。左端縁22および前端縁23も直角を成しており、左端縁22および前端縁23が交差する部分に前方左側角部20bが形成されている。右端縁21および後方右端縁24は鈍角を成しており、右端縁21および後方右端縁24が交差する部分に後方右側角部20cが形成されている。左端縁22および後方左端縁25も鈍角を成しており、左端縁22および後方左端縁25が交差する部分に後方左側角部20dが形成されている。後方右端縁24および後方左端縁25は鋭角を成しており、後方右端縁24および後方左端縁25が交差する部分に後方中央角部20eが形成されている。
【0022】
つまり、カバー本体20は、前方が矩形に形成されており、後方が三角形に形成されている。換言すると、カバー本体20は、野球で使用するホームベースの形状に形成されている。
以下、右端縁21、左端縁22、前端縁23、後方右端縁24および後方左端縁25に共通の事項を説明する場合は、単に端縁という場合がある。また、前方右側角部20a、前方左側角部20b、後方右側角部20c、後方左側角部20dおよび後方中央角部20eに共通の事項を説明する場合は、単に角部という場合がある。各端縁は、それぞれの折曲げ部により、強度が高められており、端縁から破れ難いようになっている。
【0023】
カバー本体20の底部26には、ウエディングドレス60を着用した花嫁50の両足53(図4)を挿通するための貫通穴28が貫通形成されている。貫通穴28の周囲28aと底部26との間には、伸縮可能なスカート部27が形成されている。図2に示すように、貫通穴28の周囲28aを持ち上げると、周囲28aと底部26との間には、略筒状のスカート部27が形成される。貫通穴28の周囲28aには、巾着袋の口のように、紐を挿通するための袋状部28bが周囲28aに沿って形成されており、その袋状部28bには、調節紐29が挿通されている。調節紐29を調節することにより、巾着袋のように、貫通穴28を絞ることができ、周囲28aを両足53にフィットするように装着することができる。また、調節紐29には、ストッパー29aが設けられており、貫通穴28を両足53に装着したときにストッパー29aを操作することにより、装着状態を維持できる。
【0024】
このように、貫通穴28の周囲28aを両足53の外周面にフィットさせることにより、周囲28aと両足53の外周面との間に隙間が形成されないようにすることができるため、その隙間から、裾62や、ウエディングドレス60の下に着用している衣服が、はみ出ないようにすることができる。また、スカート部27は、貫通穴28の周囲28aを両足53に装着した花嫁50が歩くときに、底部26が周囲28aの方に引っ張られないように、径方向に対する寸法(スカート丈)に余裕を持って作られている。これにより、花嫁50は、歩くときにスカート部27が伸縮するため、両足53が貫通穴28の周囲28aによって突っ張ったように感じ難い。
【0025】
また、底部26の裏面には、底部26を補強するための補強生地30が取付けられている。補強生地30は、花嫁50が衣装用保護カバー10を装着した状態で移動するときに、カバー本体20の底部26が地面と擦れて破れないようにする役割をする。
また、前方右側角部20aと、前方左側角部20bと、後方右側角部20cと、後方左側角部20dとには、それぞれ把持部31が取付けられている。把持部31は、帯状または紐状の部材によりリング状に形成されており、衣装用保護カバー10を持つ者が手で把持できるようになっている。また、前方の左右方向に取付けられた2つの把持部31は、それぞれ同じ大きさおよび形状に形成されており、1つに纏めることができるようになっている。各把持部31を重ねて1つに纏めても良いし、一方の把持部31を他方の把持部31に挿通して1つに纏めても良い。また、後方の左右方向に取付けられた2つの把持部31も、それぞれ同じ大きさおよび形状に形成されており、1つに纏めることができるようになっている。各把持部31を重ねて1つに纏めても良いし、一方の把持部31を他方の把持部31に挿通して1つに纏めても良い。
【0026】
カバー本体20の前方であって前端縁23の近傍には、前方の左右方向の各把持部31を挿通するための前方挿通孔26aが貫通形成されている。また、カバー本体20の後方であって後方中央角部20eの近傍には、後方の左右方向の各把持部31を挿通するための後方挿通孔26bが貫通形成されている。
また、後方右端縁24と平行な折曲げ部24aと、後方左端縁25と平行な折曲げ部25aには、平面視長方形の板状に形成された錘32がそれぞれ取付けられている。カバー本体20の形成材料は限定されないが、軽量かつ丈夫なものが好ましく、例えば、ナイロン、ポリウレタン、アセテート、ポリエステル、絹、綿などを用いることができる。また、補強生地30の形成材料も限定されないが、カバー本体20と同じ形成材料でも良いし、フェルトや合成皮革などでも良い。また、把持部31の形成材料も限定されないが、カバー本体20と同じ形成材料でも良いし、厚手の布生地、または、合成樹脂や金属でも良い。また、錘32の形状や重量は限定されるものではなく、平面視楕円形、半円形、円形、または、三角形などの多角形でも良いし、半球形、球形、棒状、糸状でも良い。さらに、錘32はカバー本体20に着脱可能に取付けることもできる。
【0027】
[衣装用保護カバーの使用方法]
本発明に係る衣装用保護カバー10の使用方法について図を参照しつつ説明する。
先ず、図1に示すように、衣装用保護カバー10を床や地面において平面状に展開した状態にする。次に、花嫁50が、自身の両足53(図4)を足先から貫通穴28に挿通する。次に、ウエディングドレス60の裾62が、できる限り、カバー本体20の各端縁よりも内側に入るようにウエディングドレス60のスカート61(図3)を纏める。次に、花嫁50または他の者が、貫通穴28の周囲28aを持ち、周囲28aを両足53の膝下または膝上まで持ち上げ、調節紐29を調節し、周囲28aを両足53の外周面にフィットするように装着する。このとき、周囲28aがフィットし過ぎると、移動時に歩き難くなるため、適当な強さでフィットするように調節する。また、貫通穴28の周囲28aを装着する高さは、花嫁50の歩き易さを考慮して決定する。
【0028】
このとき、図2に示すように、貫通穴28の周囲28aと底部26との間には、略筒状で伸縮自在のスカート部27が形成される。このスカート部27は、貫通穴28の周囲28aと底部26との間に遊びを作る作用をする。換言すると、スカート部27は、周囲28aを絞り、貫通穴28の径が小さくなった場合でも、スカート部27の外周の径は小さくならないため、底部26が周囲28aの方に引っ張られ難い。また、前述したように、花嫁50が歩いて移動するときに、スカート部27が伸縮するため、足が周囲28aによって突っ張った感じになり難い。なお、図2は、形状および構造を分かり易くするために、カバー本体20、補強生地30および錘32は、実際の厚さよりも厚く描いてある。
【0029】
次に、ウエディングドレス60の裾62のうち、前方の部分(前裾)をできるだけカバー本体20の内側に入るように纏めつつ、前方の左右方向に設けられた2つの把持部31を1つに纏め、その纏めた各把持部31をカバー本体20の裏面から前方挿通孔26aに挿通する。これにより、カバー本体20の前方が閉じた状態になるため、ウエディングドレス60の裾62の前方部分がカバー本体20の前方からはみ出るおそれがない。
次に、ウエディングドレス60の裾62のうち、後方の部分(後ろ裾)をできるだけカバー本体20の内側に入るように纏めつつ、後方の左右方向に設けられた2つの把持部31を1つに纏め、その纏めた各把持部31をカバー本体20の裏面から後方挿通孔26bに挿通する。これにより、カバー本体20の後方が閉じた状態になるため、ウエディングドレス60の裾62の後方部分がカバー本体20の後方からはみ出るおそれがない。
そして、前方および後方においてそれぞれ纏めた各把持部31を持ち上げると、ウエディングドレス60の少なくとも裾62を収容するための収容空間Sが、カバー本体20の内側に形成されるため、その収容空間Sに少なくとも裾62を収容する。
【0030】
また、カバー本体20の後方には、後方右側角部20cおよび後方左側角部20dを結ぶ線L(図1)と、後方右端縁24と、後方左端縁25とによって囲まれた三角形の領域により、後方に延びた空間が形成される。つまり、ウエディングドレス60の裾62のうち、後方の部分を収容する空間が形成される。このため、裾62のうち、後方の部分のボリュームが大きい、あるいは、裾62が後方に長いウエディングドレス60であっても、裾62の後方部分を収容することができる。さらに、後方右端縁24と平行な折曲げ部24aと、後方左端縁25と平行な折曲げ部25aとには、錘32がそれぞれ取付けられているため、各錘32の自重により、後方右端縁24および後方左端縁25が自然に下方に沈み込む。これにより、収容空間Sのうち、前述した三角形の領域により後方に形成された空間が自然に形成されるため、裾62の後方部分を上記の空間に収容し易い。
【0031】
前方で纏めた把持部31および後方で纏めた把持部31は、それぞれ1人で持ち上げることができる。図4に示す例では、前方で纏めた把持部31を花嫁50が左手で持ち上げ、後方で纏めた把持部31を新郎70が左手で持ち上げているが、前方または後方で纏めた把持部31は、勿論、誰が持ち上げても良い。また、右手で持ち上げても良いし、両手で持ち上げても良い。さらには、棒の先端に設けたフックに把持部31を係止して持ち上げても良い。なお、纏めた各把持部31を持ち上げる順番は、前後どちらからでも良いし、前後同時でも良い。そして、図4に示すように、前方および後方でそれぞれ1つに纏めた各把持部31を持ち上げた状態を維持しながら、カバー本体20の底部26が接地しないようにして撮影場所まで移動する。このように移動すれば、ウエディングドレス60の裾62が衣装用保護カバー10によって保護され、地面に接触しないため、裾62が汚れたり破れたりするおそれがない。また、カバー本体20の底部26が地面と擦れた場合でも、底部26の裏面に補強生地30が取付けられているため、底部26が破れないようにすることができる。
【0032】
なお、裾62のボリュームが大きく、収容空間Sに収容できない場合は、裾62の一部または全部が収容空間Sからはみ出しても良い。また、貫通穴28の周囲28aを両足53に沿って上げるときに、各纏めた把持部31をそれぞれ持ち上げ、周囲28aを上げる様子がカバー本体20によって見えないようにすることもできる。衣装用保護カバー10を適用することができるウエディングドレス60の種類は限定されるものではなく、例えば、Aライン、マーメイドライン、スレンダーライン、エンパイアライン、プリンセスラインなどの種類に適用することができる。
花嫁50は本発明の着用者の一例であり、袋状部28bおよび調節紐29は本発明の装着手段の一例である。
【0033】
[第1実施形態の効果]
(1)上述した第1実施形態に係る衣装用保護カバー10を実施すれば、花嫁50が両足53をカバー本体20の貫通穴28に挿通し、カバー本体20の前後にそれぞれ設けられた把持部31をそれぞれ持ち上げることにより、ウエディングドレス60の少なくとも裾62を収容するための収容空間Sがカバー本体20に形成され、その収容空間Sに少なくとも裾62を収容することができる。
従って、花嫁50がウエディングドレス60を着用した状態で移動するときは、前方および後方でそれぞれ纏めた把持部31をそれぞれ持ち上げ、収容空間Sに少なくとも裾62が収容された状態で移動すれば、裾62が地面に接触しないため、裾62が汚れたり、破れたりするおそれがない。
しかも、カバー本体20は、前方に設けられた各把持部31を1つに纏め、かつ、後方に設けられた各把持部31を1つに纏めた状態で、纏めた各把持部31をそれぞれ持ち上げることにより、少なくとも裾62を収容するための収容空間Sが形成されるため、把持部31を持ち上げる人数を2人に減らすことができる。
さらに、カバー本体20は折り畳み可能であるため、持ち運びに便利であり、収容スペースを小さくすることができる。
【0034】
(2)さらに、前述した第1実施形態に係る衣装用保護カバー10を実施すれば、貫通穴28の周囲28aを、貫通穴28に挿通された両足53の外周に装着することができるため、収容空間Sに収容された裾62が、貫通穴28と両足53との間から下方にはみ出るおそれがない。
【0035】
(3)さらに、前述した第1実施形態に係る衣装用保護カバー10を実施すれば、貫通穴28の周囲28aと底部26との間には、伸縮可能なスカート部27が形成されているため、花嫁50は、歩くときにスカート部27が伸縮するので、両足53が貫通穴28の周囲28aによって突っ張ったように感じ難い。
【0036】
(4)つまり、前述した第1実施形態に係る衣装用保護カバー10を実施すれば、立ち姿勢のときに裾62が地面に届くウエディングドレス60を着用して移動するときに、少ない人数で裾62を保護することができる有効な手段を提供することができる。
【0037】
〈第2実施形態〉
次に、本発明の第2実施形態について図5を参照しつつ説明する。
図5に示すように、本実施形態に係る衣装用保護カバー10は、前方および後方がそれぞれ閉塞され、上方が開口された舟形の形状を呈する。衣装用保護カバー10は、カバー本体11と、貫通穴28と、把持部31と、袋状部28bと、調節紐29とを備えている。カバー本体11は、折り畳み可能に形成されており、略楕円形の底部13と、底部13の周囲から立ち上がり形成された周壁12とを備えている。周壁12の右上端14および左上端15が前後において交わる各部位には、把持部31が1つずつ取付けられている。また、衣装用保護カバー10は、シート状にすることができ、折り畳み可能である。
【0038】
つまり、本実施形態の衣装用保護カバー10は、第1実施形態の衣装用保護カバー10よりも把持部31が2つ少ない。また、第1実施形態の衣装用保護カバー10のように、前方の2つの把持部31および後方の2つの把持部31をそれぞれ1つに纏める必要がない。さらに、前後に設けられた各把持部31をそれぞれ持ち上げることにより、カバー本体11が舟形を呈し、その内側に収容空間Sが形成される。また、カバー本体11の前後が閉塞されているため、ウエディングドレス60の裾62がカバー本体11の前後からはみ出るおそれもない。さらに、本実施形態の衣装用保護カバー10は、折り畳み可能であるため、持ち運びに便利であり、収容スペースを小さくすることができる。
【0039】
〈第3実施形態〉
次に、本発明の第3実施形態について図6を参照しつつ説明する。
図6に示すように、本実施形態に係る衣装用保護カバー10と第2実施形態に係る衣装用保護カバー10との相違点は、本実施形態に係る衣装用保護カバー10が、前後に設けられた各把持部31に取付けるための肩掛けストラップ80と、カバー本体11の右上端14および左上端15をそれぞれ把持するための把持部31とを備えている点である。肩掛けストラップ80は、花嫁50の肩に当てるための肩当てパッド81と、肩掛けストラップ80の両端を前後の各把持部31に係止するための係止部82,82とを備えている。肩当てパッド81は、フェルトやウレタンなど、移動時に肩に掛かる衝撃を緩衝することができる材料によって形成することが望ましい。図示の例では、肩当てパッド81は、花嫁50の左肩52に当てられている。また、花嫁50は、左手51で左側の把持部31を持っており、図示されていないが、右手で右側の把持部31を持っている。つまり、花嫁50が衣装用保護カバー10を担いだ状態になっている。
このように、本実施形態の衣装用保護カバー10は、肩掛けストラップ80を前後の各把持部31に係止することにより、花嫁50が1人で衣装用保護カバー10を担いで移動することができる。
従って、本実施形態の衣装用保護カバー10を実施すれば、ウエディングドレス60の裾62を保護しながら移動するために必要な人数を最小限の1人に減らすことができる。
【0040】
〈他の実施形態〉
(1)第1実施形態に係る衣装用保護カバー10が備えるカバー本体20の形状は限定されるものではなく、平面視矩形でも良いし、平面視楕円形などでも良い。
(2)錘32を取付ける箇所および錘の数は、限定されるものではなく、前端縁23、右端縁21および左端縁22の少なくとも1つの近傍に追加して取付けても良いし、各端縁の少なくとも1つの近傍に取付けても良い。また、底部26に取付けた場合は、各把持部31を持ち上げたときに、底部26が錘32の自重によって下がり易いため、収容空間Sを形成し易い。
【0041】
(3)調節紐29に代えてゴム紐を用いても良い。また、スカート部27をゴム製材料により形成しても良い。
(4)カバー本体20(11)の所定箇所に、折り畳んだ衣装用保護カバー10を収容するためのポケットを形成することもできる。この構成を用いれば、衣装用保護カバー10を汚れや破損などから保護することができるし、衣装用保護カバー10の持ち運びにも便利である。
【0042】
(5)前方挿通孔26aおよび後方挿通孔26bは、それぞれ前後方向に複数設け、ウエディングドレス60の裾62のボリュームに応じて、纏めた把持部31を挿通する前方挿通孔26aまたは後方挿通孔26bを選択できるように構成することもできる。例えば、後方中央角部20e(図1)から線Lとの間に後方挿通孔26bを所定間隔置きに複数設ける。そして、裾62のうち、後方の部分(後ろ裾)のボリュームが大きい、あるいは、後方に長いような場合は、複数の後方挿通孔26bのうち、後方寄りの後方挿通孔26bを用いることにより、収容空間Sの後方の空間を広くすることができるため、裾62のうち、後方の部分(後ろ裾)を収容空間Sに収容することができる。また、逆に、裾62のうち、後方の部分(後ろ裾)のボリュームが小さい、あるいは、後方に短いような場合は、複数の後方挿通孔26bのうち、前方寄りの後方挿通孔26bを用いることにより、収容空間Sをコンパクトにすることができるため、衣装用保護カバー10を持ち上げて移動する際に、底部26が接地し難くなる。
【0043】
(6)第2実施形態に係る衣装用保護カバー10が備えるカバー本体11の形状は限定されるものではなく、平面視矩形の箱状でも良い。
(7)第3実施形態に係る衣装用保護カバー10が備える肩掛けストラップ80は、全長を調節可能に構成することもできる。この構成を用いれば、衣装用保護カバー10を担ぐ花嫁50の身長に応じて肩掛けストラップ80の全長を調節することができるため、移動時にカバー本体11の底部26が接地しないようにすることができる。
【0044】
(8)底部26の左右方向に貫通穴28を2個形成し、左方の貫通穴28に左足を挿通し、右方の貫通穴28に右足を挿通するように構成することもできる。この構成を用いる場合は、各貫通穴28間の生地の幅に余裕を持たせることにより、歩き易くすることもできる。
(9)本発明に係る衣装用保護カバーは、ウエディングドレス以外の衣装にも適用することができる。例えば、花嫁50が打掛を着用する場合に、打掛の裾を保護するものとして適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
10・・衣装用保護カバー
20・・カバー本体
26・・底部
27・・スカート部
28・・貫通穴
28a・・周囲
28b・・袋状部
29・・調節紐
30・・補強生地
31・・把持部
32・・錘
50・・花嫁
60・・ウエディングドレス
62・・裾
S・・収容空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6