(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】官能化されたフッ素化モノマーを製造する方法、フッ素化モノマー、及びそれを製造するための組成物
(51)【国際特許分類】
C07C 41/26 20060101AFI20230605BHJP
C08G 18/46 20060101ALI20230605BHJP
C08G 63/682 20060101ALI20230605BHJP
C08G 64/10 20060101ALI20230605BHJP
C07C 43/13 20060101ALI20230605BHJP
C07C 67/08 20060101ALI20230605BHJP
C07C 69/635 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
C07C41/26
C08G18/46 007
C08G63/682
C08G64/10
C07C43/13 D
C07C67/08
C07C69/635
(21)【出願番号】P 2020514158
(86)(22)【出願日】2018-05-21
(86)【国際出願番号】 US2018033753
(87)【国際公開番号】W WO2018213850
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-05-21
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519410596
【氏名又は名称】エトナ-テック, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グリュエル マイケル ピー.
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-060530(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0112095(US,A1)
【文献】米国特許第03470258(US,A)
【文献】国際公開第2011/016492(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0219350(US,A1)
【文献】特開昭60-149533(JP,A)
【文献】特表2011-505423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 41/、43/、67/、69/
C08G 18/、63/、64/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能化されたフッ素化モノマーを製造する方法であって、
1つの官能性反応基を有する少なくとも1つのフッ素化求核反応剤を、少なくとも2つのエポキシド基を含む少なくとも1つの化合物と反応させて官能化されたフッ素化モノマーを形成することを含み、
前記形成された官能化されたフッ素化モノマーは、少なくとも2つのヒドロキシル基を有し、
前記形成された官能化されたフッ素化モノマー上のヒドロキシル基のそれぞれは、エポキシド基に由来し、
前記官能化されたフッ素化モノマーは、フッ素化ポリマー、フッ素化オリゴマー又は鎖延長官能化フッ素化モノマーを形成するための反応剤として有用であ
り、
(i)前記少なくとも1つのフッ素化求核反応剤がフッ素化アルコールであり、前記フッ素化アルコールと、前記少なくとも2つのエポキシド基を含む少なくとも1つの化合物との反応が、塩基触媒の存在下で起こり、
前記官能化されたフッ素化モノマーの少なくとも2つのヒドロキシル基のそれぞれは、第2級ヒドロキシル基であり、
前記官能化されたフッ素化モノマーが式(I):
【化1】
(式中、
R
f
は、1個~18個の炭素原子を有し、かつ0個~6個のエーテル結合を有する、部分的若しくは完全にフッ素化された分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基であり、置換される場合、芳香族基、五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、及びそれらの組み合わせから選択される基を含み、又は部分的若しくは完全にフッ素化された置換若しくは非置換のアリール基であり、置換される場合、五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせを含み、
R
1
は、R
f
、又は1個~24個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基、環状アルキル基若しくは複素環基であり、R
1
がアルキル基、環状アルキル基、又は複素環基である場合、R
1
は0個~6個のエーテル結合、エステル結合、又はアリール基を含み、
R
1
は、ヒドロキシル基、ハロゲン、エポキシド、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アミン、及びチオールの群から選択される1つ以上の官能基で任意に置換されていてもよく、
nは2~4である)による構造を有し、又は
(ii)前記少なくとも1つのフッ素化求核反応剤がフッ素化アルコールであり、前記フッ素化アルコールと前記少なくとも2つのエポキシド基を含む少なくとも1つの化合物とを酸触媒の存在下で反応させ、
前記官能化されたフッ素化モノマーの少なくとも2つのヒドロキシル基のそれぞれは、第1級ヒドロキシル基であり、
前記官能化されたフッ素化モノマーが式(II):
【化2】
(式中、
R
f
は、1個~18個の炭素原子を有し、かつ0個~6個のエーテル結合を有する、部分的若しくは完全にフッ素化された分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基であり、置換される場合、芳香族基、五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、及びそれらの組み合わせから選択される基を含み、又は部分的若しくは完全にフッ素化された置換若しくは非置換のアリール基であり、置換される場合、五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせを含み、
R
1
は、R
f
、又は1個~24個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基、環状アルキル基若しくは複素環基であり、R
1
がアルキル基、環状アルキル基、又は複素環基である場合、R
1
は0個~6個のエーテル結合、エステル結合、又はアリール基を含み、
R
1
は、ヒドロキシル基、ハロゲン、エポキシド、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アミン、及びチオールの群から選択される1つ以上の官能基で任意に置換されていてもよく、
nは2~4である)による構造を有する、
方法。
【請求項2】
前記少なくとも2つのエポキシド基を含む少なくとも1つの化合物が、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、アジピン酸ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、及びペンタエリトリトールテトラグリシジルエーテルからなる群から選択される、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのフッ素化求核反応剤が、1個~18個の炭素原子を有し、かつ0個~6個のエーテル結合を有する、部分的若しくは完全にフッ素化された分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のいずれかのアルキル基を含むフッ素化アルコールであり、置換される場合、芳香族基、五フッ化硫黄基、ハロゲン、若しくはそれらの組み合わせを含む、又は部分的若しくは完全にフッ素化された置換若しくは非置換のアリール基であり、置換される場合、五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせを含む、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
官能化されたフッ素化モノマーを製造するための組成物であって、
1つの官能性反応基を有する少なくとも1つのフッ素化求核反応剤と、少なくとも2つのエポキシド基を含む少なくとも1つの化合物とを含み、
前記組成物は、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する前記官能化されたフッ素化モノマーを生産するために用いられ、
ヒドロキシル基のそれぞれは、前記エポキシド基の1つに由来
し、
(i)前記少なくとも1つのフッ素化求核反応剤がフッ素化アルコールであり、前記フッ素化アルコールと、前記少なくとも2つのエポキシド基を含む少なくとも1つの化合物との反応が、塩基触媒の存在下で起こり、
前記官能化されたフッ素化モノマーの少なくとも2つのヒドロキシル基のそれぞれは、第2級ヒドロキシル基であり、
前記官能化されたフッ素化モノマーが式(I):
【化3】
(式中、
R
f
は、1個~18個の炭素原子を有し、かつ0個~6個のエーテル結合を有する、部分的若しくは完全にフッ素化された分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基であり、置換される場合、芳香族基、五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、及びそれらの組み合わせから選択される基を含み、又は部分的若しくは完全にフッ素化された置換若しくは非置換のアリール基であり、置換される場合、五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせを含み、
R
1
は、R
f
、又は1個~24個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基、環状アルキル基若しくは複素環基であり、R
1
がアルキル基、環状アルキル基、又は複素環基である場合、R
1
は0個~6個のエーテル結合、エステル結合、又はアリール基を含み、
R
1
は、ヒドロキシル基、ハロゲン、エポキシド、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アミン、及びチオールの群から選択される1つ以上の官能基で任意に置換されていてもよく、
nは2~4である)による構造を有し、又は
(ii)前記少なくとも1つのフッ素化求核反応剤がフッ素化アルコールであり、前記フッ素化アルコールと前記少なくとも2つのエポキシド基を含む少なくとも1つの化合物とを酸触媒の存在下で反応させ、
前記官能化されたフッ素化モノマーの少なくとも2つのヒドロキシル基のそれぞれは、第1級ヒドロキシル基であり、
前記官能化されたフッ素化モノマーが式(II):
【化4】
(式中、
R
f
は、1個~18個の炭素原子を有し、かつ0個~6個のエーテル結合を有する、部分的若しくは完全にフッ素化された分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基であり、置換される場合、芳香族基、五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、及びそれらの組み合わせから選択される基を含み、又は部分的若しくは完全にフッ素化された置換若しくは非置換のアリール基であり、置換される場合、五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせを含み、
R
1
は、R
f
、又は1個~24個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基、環状アルキル基若しくは複素環基であり、R
1
がアルキル基、環状アルキル基、又は複素環基である場合、R
1
は0個~6個のエーテル結合、エステル結合、又はアリール基を含み、
R
1
は、ヒドロキシル基、ハロゲン、エポキシド、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アミン、及びチオールの群から選択される1つ以上の官能基で任意に置換されていてもよく、
nは2~4である)による構造を有する、
組成物。
【請求項5】
ポリマー又はオリゴマーを製造する方法であって、
請求項1に記載の方法、よって製造された、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する官能化されたフッ素化モノマーを重合して、縮合重合又は開環重合によりフッ素化ポリエステルを形成することを含む、方法。
【請求項6】
ポリマー又はオリゴマーを製造する方法であって、
請求項1に記載の方法によって製造された、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する官能化されたフッ素化モノマーを重合して、縮合重合又は開環重合によりフッ素化ポリカーボネートを形成することを含む、方法。
【請求項7】
フッ素化ポリマー、フッ素化オリゴマー又は鎖延長官能化フッ素化モノマーを形成するための反応剤として有用である官能化されたフッ素化モノマーであって、
前記官能化されたフッ素化ポリマーは、少なくとも2つのヒドロキシル基を含み、
ヒドロキシル基のそれぞれは、1つの官能性反応基を有する少なくとも1つのフッ素化求核反応剤と、少なくとも2つのエポキシド基を含む少なくとも1つの化合物との反応で形成され、
ヒドロキシル基のそれぞれは、前記少なくとも2つのエポキシド基に由来
し、
(i)前記少なくとも1つのフッ素化求核反応剤がフッ素化アルコールであり、前記フッ素化アルコールと、前記少なくとも2つのエポキシド基を含む少なくとも1つの化合物との反応が、塩基触媒の存在下で起こり、
前記官能化されたフッ素化モノマーの少なくとも2つのヒドロキシル基のそれぞれは、第2級ヒドロキシル基であり、
前記官能化されたフッ素化モノマーが式(I):
【化5】
(式中、
R
f
は、1個~18個の炭素原子を有し、かつ0個~6個のエーテル結合を有する、部分的若しくは完全にフッ素化された分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基であり、置換される場合、芳香族基、五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、及びそれらの組み合わせから選択される基を含み、又は部分的若しくは完全にフッ素化された置換若しくは非置換のアリール基であり、置換される場合、五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせを含み、
R
1
は、R
f
、又は1個~24個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基、環状アルキル基若しくは複素環基であり、R
1
がアルキル基、環状アルキル基、又は複素環基である場合、R
1
は0個~6個のエーテル結合、エステル結合、又はアリール基を含み、
R
1
は、ヒドロキシル基、ハロゲン、エポキシド、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アミン、及びチオールの群から選択される1つ以上の官能基で任意に置換されていてもよく、
nは2~4である)による構造を有し、又は
(ii)前記少なくとも1つのフッ素化求核反応剤がフッ素化アルコールであり、前記フッ素化アルコールと前記少なくとも2つのエポキシド基を含む少なくとも1つの化合物とを酸触媒の存在下で反応させ、
前記官能化されたフッ素化モノマーの少なくとも2つのヒドロキシル基のそれぞれは、第1級ヒドロキシル基であり、
前記官能化されたフッ素化モノマーが式(II):
【化6】
(式中、
R
f
は、1個~18個の炭素原子を有し、かつ0個~6個のエーテル結合を有する、部分的若しくは完全にフッ素化された分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基であり、置換される場合、芳香族基、五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、及びそれらの組み合わせから選択される基を含み、又は部分的若しくは完全にフッ素化された置換若しくは非置換のアリール基であり、置換される場合、五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせを含み、
R
1
は、R
f
、又は1個~24個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基、環状アルキル基若しくは複素環基であり、R
1
がアルキル基、環状アルキル基、又は複素環基である場合、R
1
は0個~6個のエーテル結合、エステル結合、又はアリール基を含み、
R
1
は、ヒドロキシル基、ハロゲン、エポキシド、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アミン、及びチオールの群から選択される1つ以上の官能基で任意に置換されていてもよく、
nは2~4である)による構造を有する、
官能化されたフッ素化モノマー。
【請求項8】
鎖延長フッ素化モノマー又はオリゴマーを製造する方法であって、
請求項1に記載の方法によって製造された官能化されたフッ素化モノマーを、環状カルボン酸無水物、環状エーテル、環状カーボネート、及び環状エステルの1つ以上から選択される環状反応物質と反応させて、鎖延長フッ素化モノマー又は鎖延長フッ素化オリゴマーを形成すること、
を含む、方法。
【請求項9】
ポリマー又はオリゴマーを製造する方法であって、
請求項
8に記載の方法により形成される少なくとも1つのカルボン酸基を有する鎖延長官能化フッ素化モノマーを縮合重合により重合させて、フッ素化ポリエステルを形成することを含み、前記官能化されたフッ素化モノマーが少なくとも1つのエーテル結合を有するフッ素化ジオールであり、前記鎖延長フッ素化モノマーがフッ素化ジカルボン酸である、方法。
【請求項10】
ポリマー又はオリゴマーを製造する方法であって、
少なくとも1つのヒドロキシル基を有する第1の反応物質を、開環重合により、環状エステル、環状カーボネート、又は環状エーテルと反応させて、それぞれ、含フッ素ポリエステルポリオール、含フッ素ポリカーボネートポリオール、又は含フッ素ポリエーテルポリオールを形成することを含み、
ここで、前記少なくとも1つのヒドロキシル基を有する第1の反応物質は、(i)請求項1に記載の方法により製造された官能化されたフッ素化モノマー、又は(ii)請求項1に記載の方法により製造された官能化されたフッ素化モノマーを、環状カーボネート、環状エーテル、及び環状エステルの群から選択される環状反応物質と反応させることにより製造される、鎖延長フッ素化モノマー若しくは鎖延長フッ素化オリゴマーから選択される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、「官能化されたフッ素化モノマーを形成する方法、フッ素化モノマー、及びそれを形成するための組成物(Methods for Forming Functionalized Fluorinated Monomers, Fluorinated Monomers, and Compositions for Forming the Same)」と題する2017年9月19日付で出願された米国仮特許出願第62/560,641号、及び同じく「官能化されたフッ素化モノマーを形成する方法、フッ素化モノマー、及びそれを形成するための組成物」と題する2017年5月19日付で出願された米国仮特許出願第62/508,835号の米国特許法第119条(e)に基づく利益を主張し、それらの開示全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
本発明は、とりわけフッ素を含有するポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテル、及びポリウレア等のフルオロポリマーを生産するために使用され得る官能化されたフッ素化モノマーを製造する方法に関する。かかる含フッ素ポリマーは、潤滑添加剤として、また落書き抵抗性、汚れ抵抗性、自己浄化能力、硬度、及び透明性等の表面特性が改善されたコーティングとしての使用等、様々な用途に有用である。
【背景技術】
【0003】
バルクフッ素化材料は、コーティング等のポリマー系システムの表面特性を改善するためにしばしば使用される。フッ化ビニリデン(VDF)含有ポリマー及びテトラフルオロエチレン(TFE)含有ポリマー等のバルクフッ素化材料が、かかる用途に従来から使用されている。しかしながら、バルクフッ素化材料は高価であり、硬度、耐摩耗性、及び透明性等の望ましい物理的特性を欠く場合がある。
【0004】
バルクフッ素化材料の使用に関連する欠陥及び欠点のため、フッ素化界面活性剤もコーティング添加剤として使用されている。フッ素化界面活性剤の使用は、従来の化学を使用して従来の方法でコーティングを生産することを可能にし、フッ素化界面活性剤を以前からあるコーティング及び樹脂に添加して所望の表面特性の改善を提供する。しかしながら、フッ素化界面活性剤は経時的に洗い流され又は侵食される場合があるため、長期間の間に表面特性が失われる又は劣化する可能性があることから、フッ素化界面活性剤の有益な効果は一時的なものに過ぎない。
【0005】
特許文献1は、特許文献2に開示されるフッ素化オキセタンプレポリマー等のフッ素化オキセタンプレポリマーのブロックを含有するポリエステルの合成を開示している。特許文献1は、表面エネルギーが低く、疎水性が高く、摩擦係数が低いポリエステル樹脂を提供することを目的とし、これにより、汚れ抵抗性及び耐摩耗性の改善をもたらすことができる。かかるポリエステル樹脂は、ポリオキセタンをジカルボン酸又は無水物と反応させ、得られたカルボン酸で終端された物質をポリエステルに組み込むことにより製造される。
【0006】
ポリマー系システムの表面特性を改善するための様々な他の方法が開示されている。特許文献3は、基材の表面をエポキシ化し、次いで表面のエポキシド基を含フッ素試薬と反応させることにより、天然ゴム等のポリマー由来の物品の表面に含フッ素基をグラフトすることを開示している。
【0007】
特許文献4は、含フッ素繰り返し単位及びフッ素化アルコールに由来する末端基を有する含フッ素ウレタンオリゴマーを開示している。特許文献5は、含フッ素オキシランの開環重合及び共重合による油田用途に対する含フッ素ポリエーテルポリマーの合成及び使用を開示している。特許文献6は、モノマー及び界面活性剤としての使用のための芳香族酸のフッ素化エーテル及びそのジエステルの合成を提供する。さらに、特許文献7は、フォトレジスト用の原材料としての使用のためのフッ素を含有するヒドロキシアルデヒド、プロパンジオール、及びアルコールモノマーの合成方法を提供する。
【0008】
フッ素化オキセタン系ポリエーテルブロックをポリエステル及び他のポリマーに組み込む方法は、その表面特性にいくつかの利点を提供する可能性があるが、この方法には様々な制限がある。具体的には、ポリマー中の部分的にフッ素化されたポリエーテルドメインの存在は、低濃度であっても濁った又は半透明の外観を生じる。さらに、かかるポリマーの場合、該ポリマーに由来するコーティング及び他の材料の表面硬度が低い。これは、柔らかく、部分的にフッ素化されたポリエーテルブロックが表面に移動する傾向があるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第6,383,651号
【文献】米国特許第5,650,483号
【文献】米国特許第4,595,632号
【文献】米国特許第6,803,109号
【文献】米国特許第8,418,759号
【文献】米国特許第8,779,186号
【文献】米国特許出願公開第2015/0361026号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
その結果、硬度等の物理的特性を維持しながら、ポリマー含有システムの表面特性を安定して長期的に改善する必要性が残されている。また、当該技術分野では、改質された表面特性を提供するポリマーシステムに適したポリマーを製造するのに必要とされる含フッ素モノマーの量を最小限にする必要がある。かかるポリマーは、望ましくは、透明性、硬度、及び耐摩耗性の改善を更に示し、またバルクフッ素化ポリマーと比較して比較的安価となるであろう。当該技術分野では、様々な産業の最終用途に使用可能な、特にポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテル、及びポリウレア等の多様なポリマーを製造するために使用され得る、安価に製造されたフッ素化モノマーも必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、他の様々な最終用途のなかでも、コーティングにおいて使用され得る、また金属加工、並びにモーター及びギアオイル等の自動車用途に対する潤滑剤組成物への添加剤として使用され得る、フッ素を含有するポリマー及びオリゴマーの製造に有用な官能化されたフッ素化モノマーを製造する方法に関する。これらの官能化されたフッ素化モノマーは、様々なオリゴマー及びポリマーの生産に有用であり、その例としては、特に、フッ素を含有するポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリアスパラギン酸エステルが挙げられる。得られたフッ素を含有するオリゴマー及びポリマーは、コーティングに組み込まれた場合、落書き抵抗性、汚れ抵抗性、自己浄化能力、疎水性、及び透明性等の表面特性の改善を提供する。透明性の改善は、ガラス及び透明性が望まれるその他の基材に対するコーティングに特に有用である。
【0012】
本発明は、官能性反応基(複数の場合もある)を有する少なくとも1つのフッ素化求核反応剤を、少なくとも1つのエポキシド基を含む少なくとも1つの化合物と反応させることにより官能化されたフッ素化モノマーを生産する方法を含む。
【0013】
一実施の形態では、本発明は、1つ以上のフッ素化アルコールを、1つ以上の環状カルボン酸無水物と反応させることにより、官能化されたフッ素化モノマーを製造する方法を含む。加えて、フッ素化されたメシレート、トシレート、又はトリフレートを、アミン若しくはポリアミン;アルコール、ポリオール、フェノール若しくはポリフェノール;又はアルコキシド中間体若しくはフェノキシド中間体と反応させることを含む官能化されたフッ素化モノマーを製造する方法も本明細書に含まれる。また、少なくとも1つのフッ素化ハロゲン化アルキルを1つ以上のアミン又はポリアミンと反応させることを含む、官能化されたフッ素化モノマーを製造する方法も記載される。さらに、1つ以上のフッ素化アルコールを、その上に1つ以上の官能基を有する1つ以上のハロゲン化アルキルと反応させることを含む、官能化されたフッ素化モノマーを製造する方法が記載される。別の実施の形態では、本発明は、これらの方法によって生産される官能化されたフッ素化モノマー、及び官能化されたフッ素化モノマーを製造するための組成物を含む。また、本発明の少なくとも1つのモノマーを、環状カルボン酸無水物、環状エステル、環状カーボネート、若しくは環状エーテル等の1つ以上の環状反応物質と反応させることを含む、又は不飽和官能化フッ素化モノマーをポリアミンと反応させることによる、鎖延長フッ素化モノマーを製造する方法も含まれる。
【0014】
本発明はさらに、本明細書に列挙される方法のいずれかによって生産される官能化されたフッ素化モノマーからポリマー及びオリゴマーを製造する方法、並びにそれによって生産されるポリマーに関する。本発明のヒドロキシ、カルボン酸及びカルボン酸エステルの官能性フッ素化モノマーを使用して、フッ素化ポリエステルを合成することができる。さらに、ヒドロキシ官能性フッ素化モノマーを使用して、開環重合により、フッ素化されたポリカーボネート及びポリウレタンと並んで、ポリエーテル及びポリエステルを合成することができる。アミノ官能性フッ素化モノマーは、フッ素化ポリウレアを合成するため、及びエポキシ樹脂システムに対する硬化剤として使用され得る。さらに、不飽和フッ素化モノマーをフリーラジカル重合に組み込んで、様々な有用なフッ素化ポリマーを合成することができる。
【0015】
一実施の形態では、本発明は、少なくとも1つのフッ素化求核反応剤を、少なくとも1つのエポキシド基を含む少なくとも1つの化合物と反応させて、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する官能化されたフッ素化モノマーを形成することを含む、官能化されたフッ素化モノマーを製造する方法に関する。フッ素化求核反応剤は、好ましくは、フッ素化アルコール、フッ素化カルボン酸、フッ素化有機酸無水物、フッ素化アミン、フッ素化チオール、フッ素化アミド、フッ素化スルホンアミド、及びそれらの組み合わせの群から選択される。いくつかの実施の形態では、フッ素化求核反応剤は、2つ以上のかかるフッ素化求核反応剤の混合物等の組み合わせであってもよい。一実施の形態では、エポキシド基を含む少なくとも1つの化合物は、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、アジピン酸ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、及びペンタエリトリトールテトラグリシジルエーテルの群から選択される。
【0016】
少なくとも1つのフッ素化求核反応剤がフッ素化アルコールである実施の形態では、フッ素化アルコールはフェノール、ジオール、又はポリオールであってもよい。好ましい実施の形態では、少なくとも1つのフッ素化された求核反応剤は、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール、4-ヒドロキシフェニル硫黄ペンタフルオリド、2-パーフルオロプロポキシ-2,3,3,3-テトラフルオロプロパノール、及び3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8-トリデカフルオロ-1-オクタノールの群から選択されるフッ素化アルコールである。
【0017】
フッ素化アルコールがフッ素化されたジオール又はポリオールである場合、少なくとも1つのエポキシド基を含む化合物は、反応が少なくとも1つのエーテル結合を有するジオール又はポリオールである官能化されたフッ素化モノマーを生じるように、エポキシド基を1つのみ含むことが好ましい。
【0018】
一実施の形態では、フッ素化アルコールと、少なくとも1つのエポキシド基を含む前記少なくとも1つの化合物との反応は、塩基触媒の存在下で起こり得る。かかる触媒の例としては、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、トリメチルアミン、及びジアザビシクロウンデセン(DBU)が挙げられる。かかる実施の形態における官能化されたフッ素化モノマーは、1つ以上の第2級ヒドロキシル基である少なくとも1つのヒドロキシル基を有してもよい。別の実施の形態では、前記フッ素化求核反応剤がフッ素化アルコールである場合、前記官能化されたフッ素化モノマーは、式(I):
【化1】
(式中、
R
fは、1個~約18個の炭素原子を有し、かつ0個~6個のエーテル結合を有する、部分的若しくは完全にフッ素化された分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基であり、置換される場合、芳香族基、五フッ化硫黄基、及びハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせから選択される基を含み、又は部分的若しくは完全にフッ素化された置換若しくは非置換のアリール基であり、置換される場合、五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせを含み、
R
1は、水素、R
f、又は1個~約24個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基、環状アルキル基若しくは複素環基であり、R
1がアルキル基、環状アルキル基、又は複素環基である場合、R
1は0個~6個のエーテル結合、エステル結合、又はアリール基を含み、
nは1~約4である)による構造を有する。
【0019】
R1が置換される場合、R1は、ヒドロキシル基、ハロゲン、エポキシド、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アミン、及びチオールの群から選択される1つ以上の官能基を有してもよい。
【0020】
更なる実施の形態では、本発明は、本明細書の開示による官能化されたフッ素化モノマーを含み、該官能化されたフッ素化モノマーはフッ素化ポリオールである。
【0021】
あるいは、フッ素化求核反応剤はフッ素化アルコールであってもよく、フッ素化アルコールと、少なくとも1つのエポキシド基を含む化合物との反応は、酸触媒の存在下で起こり得る。かかる触媒の例としては、塩酸、硫酸、又はメタンスルホン酸が挙げられる。このような実施の形態では、前記官能化されたフッ素化モノマーの少なくとも1つのヒドロキシル基の1つは第一級ヒドロキシル基である。前記フッ素化求核反応剤がフッ素化アルコールである実施の形態では、前記官能化されたフッ素化モノマーは、式(II):
【化2】
(式中、
R
fは、1個~約18個の炭素原子を有し、かつ0個~6個のエーテル結合を有する、部分的若しくは完全にフッ素化された分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基であり、置換される場合、芳香族基、五フッ化硫黄基、及びハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせから選択される基を含み、又は部分的若しくは完全にフッ素化された置換若しくは非置換のアリール基であり、置換される場合、五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせを含み、
R
1は、水素、R
f、又は1個~約24個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基、環状アルキル基若しくは複素環基であり、R
1がアルキル基、環状アルキル基、又は複素環基である場合、R
1は0個~6個のエーテル結合、エステル結合、又はアリール基を含み、
nは1~約4である)による構造を有する。
【0022】
さらに、R1が置換される場合、R1は、ヒドロキシル基、ハロゲン、エポキシド、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アミン、及びチオールの群から選択される1つ以上の官能基を有してもよい。
【0023】
少なくとも1つのフッ素化求核反応剤がカルボン酸である実施の形態では、官能化されたフッ素化モノマーは少なくとも1つのヒドロキシル基及びエステル結合を含んでもよく、好ましくは、該官能化されたフッ素化モノマーは式(III):
【化3】
(式中、
R
fは、1個~約18個の炭素原子を有し、かつ0個~6個のエーテル結合を有する、部分的若しくは完全にフッ素化された分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基であり、置換される場合、芳香族基、五フッ化硫黄基、及びハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせから選択される基を含み、又は部分的若しくは完全にフッ素化された置換若しくは非置換のアリール基であり、置換される場合、五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせを含み、
R
1は、水素、R
f、又は1個~約24個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基、環状アルキル基若しくは複素環基であり、R
1がアルキル基、環状アルキル基、又は複素環基である場合、R
1は0個~6個のエーテル結合、エステル結合、又はアリール基を含み、
nは1~約4である)による構造を有する。
【0024】
さらに、R1が置換される場合、R1は、ヒドロキシル基、ハロゲン、エポキシド、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アミン、及びチオールの群から選択される1つ以上の官能基を有してもよい。
【0025】
一実施の形態では、前記フッ素化求核反応剤は、好ましくはトリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸、2,2-ビス(トリフルオロメチル)プロピオン酸、4,4,4-トリフルオロ酪酸、ヘプタフルオロ酪酸、4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロヘキサン酸、4-ペンタフルオロチオ安息香酸、及び3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸の群から選択されるフッ素化カルボン酸である。
【0026】
別の実施の形態では、官能化されたフッ素化モノマーがエステル結合を有するフッ素化ジオールであるように、フッ素化求核反応剤は、フッ素化ジカルボン酸であるフッ素化カルボン酸であり、少なくとも1つのエポキシド基を含む化合物は、エポキシド基を1つのみ有してもよい。
【0027】
一実施の形態では、前記少なくとも1つのフッ素化求核反応剤は、フッ素化アミンであり、前記官能化されたフッ素化モノマーはアミン基を含む。好ましくは、前記官能化されたフッ素化モノマーは、式(IV):
【化4】
(式中、
R
fは、1個~約18個の炭素原子を有し、かつ0個~6個のエーテル結合を有する、部分的若しくは完全にフッ素化された分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基であり、置換される場合、芳香族基、五フッ化硫黄基、及びハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせから選択される基を含み、又は部分的若しくは完全にフッ素化された置換若しくは非置換のアリール基であり、置換される場合、五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせを含み、
R
1は、水素、R
f、又は1個~約24個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基、環状アルキル基若しくは複素環基であり、R
1がアルキル基、環状アルキル基、又は複素環基である場合、R
1は0個~6個のエーテル結合、エステル結合、又はアリール基を含み、nは1~約4であり、
R
2は水素、R
f、又は1個~約6個の炭素原子を有する飽和の分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基であり、
nは1~約4である)による構造を有する。
【0028】
さらに、R1及び/又はR2が置換される場合、R1及び/又はR2は、ヒドロキシル基、ハロゲン、エポキシド、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アミン、及びチオールの群から選択される1つ以上の官能基を有してもよい。
【0029】
別の実施の形態では、少なくとも1つのフッ素化求核反応剤はフッ素化アミドであってもよく、官能化されたフッ素化モノマーはアミド基を含んでもよい。かかる反応は、好ましくは、例えば、水酸化カリウム、トリメチルアミン、又はDBUを含む塩基触媒の存在下で起こり得る。更なる実施の形態では、フッ素化アミドは、好ましくは2,2,2-トリフルオロアセトアミドである。フッ素化求核反応剤がフッ素化アミドである場合、官能化されたフッ素化モノマーは、式(V):
【化5】
(式中、
R
fは、1個~約18個の炭素原子を有し、かつ0個~6個のエーテル結合を有する、部分的若しくは完全にフッ素化された分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基であり、置換される場合、芳香族基、五フッ化硫黄基、及びハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせから選択される基を含み、又は部分的若しくは完全にフッ素化された置換若しくは非置換のアリール基であり、置換される場合、五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせを含み、
R
1は、水素、R
f、又は1個~約24個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基、環状アルキル基若しくは複素環基であり、R
1がアルキル基、環状アルキル基、又は複素環基である場合、R
1は0個~6個のエーテル結合、エステル結合、又はアリール基を含み、
R
2は水素、R
f、又は1個~約6個の炭素原子を有する飽和の分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基であり、
nは1~約4である)による構造も有し得る。
【0030】
さらに、R1及び/又はR2が置換される場合、R1及び/又はR2は、ヒドロキシル基、ハロゲン、エポキシド、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アミン、及びチオールの群から選択される1つ以上の官能基を有してもよい。
【0031】
更なる実施の形態では、フッ素化求核反応剤はスルホンアミドであり、官能化されたフッ素化モノマーはスルホンアミド結合を有する。好ましくは、反応は、水酸化カリウム、トリメチルアミン、又はDBU等の塩基触媒の存在下で起こる。好ましくは、フッ素化求核反応剤がスルホンアミドである場合、スルホンアミドは2,2,2-トリフルオロエタンスルホンアミドである。別のかかる実施の形態では、求核反応剤がスルホンアミドである場合、官能化されたフッ素化モノマーは、式(VI):
【化6】
(式中、
R
fは、1個~約18個の炭素原子を有し、かつ0個~6個のエーテル結合を有する、部分的若しくは完全にフッ素化された分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基であり、置換される場合、芳香族基、五フッ化硫黄基、及びハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせから選択される基を含み、又は部分的若しくは完全にフッ素化された置換若しくは非置換のアリール基であり、置換される場合、五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせを含み、
R
1は、水素、R
f、又は1個~約24個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基、環状アルキル基若しくは複素環基であり、R
1がアルキル基、環状アルキル基、又は複素環基である場合、R
1は0個~6個のエーテル結合、エステル結合、又はアリール基を含み、
R
2は水素、R
f、又は1個~約6個の炭素原子を有する飽和の分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基であり、
nは1~約4である)による構造を有する。
【0032】
さらに、R1及び/又はR2が置換される場合、R1及び/又はR2は、ヒドロキシル基、ハロゲン、エポキシド、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アミン、及びチオールの群から選択される1つ以上の官能基を有してもよい。
【0033】
前記フッ素化求核反応剤は、フッ素化チオールとすることもでき、その場合、前記官能化されたフッ素化モノマーは、チオエーテル結合を有する。好ましくは、前記官能化されたフッ素化モノマーは、式(VII):
【化7】
(式中、
R
fは、1個~約18個の炭素原子を有し、かつ0個~6個のエーテル結合を有する、部分的若しくは完全にフッ素化された分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基であり、置換される場合、芳香族基、五フッ化硫黄基、及びハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせから選択される基を含み、又は部分的若しくは完全にフッ素化された置換若しくは非置換のアリール基であり、置換される場合、五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせを含み、
R
1は、水素、R
f、又は1個~約24個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基、環状アルキル基若しくは複素環基であり、R
1がアルキル基、環状アルキル基、又は複素環基である場合、R
1は0個~6個のエーテル結合、エステル結合、又はアリール基を含み、
nは1~約4である)による構造を有する。
【0034】
さらに、R1が置換される場合、R1は、ヒドロキシル基、ハロゲン、エポキシド、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アミン、及びチオールの群から選択される1つ以上の官能基を有してもよい。
【0035】
別の実施の形態では、前記フッ素化求核反応剤は、フッ素化有機酸無水物であり、前記官能化されたフッ素化モノマーは、少なくとも1つのヒドロキシル基及びエステル結合を有する。好ましくは、前記官能化されたフッ素化モノマーは、式(III):
【化8】
(式中、
R
fは、1個~約18個の炭素原子を有し、かつ0個~6個のエーテル結合を有する、部分的若しくは完全にフッ素化された分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基であり、置換される場合、芳香族基、五フッ化硫黄基、及びハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせから選択される基を含み、又は部分的若しくは完全にフッ素化された置換若しくは非置換のアリール基であり、置換される場合、五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせを含み、
R
1は、水素、R
f、又は1個~約24個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基、環状アルキル基若しくは複素環基であり、R
1がアルキル基、環状アルキル基、又は複素環基である場合、R
1は0個~6個のエーテル結合、エステル結合、又はアリール基を含み、
nは1~約4である)による構造を有する。
【0036】
さらに、R1が置換される場合、R1は、ヒドロキシル基、ハロゲン、エポキシド、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アミン、及びチオールの群から選択される1つ以上の官能基を有してもよい。
【0037】
本発明はさらに、フッ素化求核反応剤と、少なくとも1つのエポキシド基を含む化合物との反応により製造される、官能化されたフッ素化モノマーに関する。フッ素化求核反応剤は、フッ素化アルコール、フッ素化カルボン酸、フッ素化有機酸無水物、フッ素化アミン、フッ素化アミド、フッ素化スルホンアミド、フッ素化チオール、及びそれらの組み合わせのいずれかであってもよく、例えばフッ素化求核反応剤は、2つのかかる反応物質の混合物であってもよい。
【0038】
本発明はまた、官能化されたフッ素化モノマーを製造するための組成物に関し、該組成物は、少なくとも1つのフッ素化求核反応剤と、少なくとも1つのエポキシド基を含む少なくとも1つの化合物とを含む。フッ素化求核反応剤は、フッ素化アルコール、フッ素化カルボン酸、フッ素化有機酸無水物、フッ素化アミン、フッ素化アミド、フッ素化スルホンアミド、フッ素化チオールのいずれか1つであってもよく、又は2つのかかる反応物質の混合物を含むそれらの組み合わせであってもよい。
【0039】
本発明はさらに、好ましくは本明細書に記載される本発明のかかる官能化されたフッ素化モノマーを製造する方法を使用することにより、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する官能化されたフッ素化モノマーを重合して、縮合又は開環重合によってフッ素化ポリエステルを形成することを含むポリマー又はオリゴマーを製造する方法に関する。
【0040】
さらに、好ましくは本明細書に記載される本発明のかかる官能化されたフッ素化モノマーを製造する方法を使用することにより、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する官能化されたフッ素化モノマーを重合して、縮合重合又は開環重合によってフッ素化ポリカーボネートを形成することを含むポリマー又はオリゴマーを製造する方法が本発明に含まれる。
【0041】
本発明の別の実施の形態では、本発明は、官能化されたフッ素化モノマーを製造する方法であって、フッ素化メシレート、フッ素化トシレート、及びフッ素化トリフルオロメタンスルホネート(「トリフレート」)から選択される少なくとも1つの第1の反応物質を、アミン又はポリアミン;アルコール、ポリオール、フェノール又はポリフェノール;及びアルコキシド中間体又はフェノキシド中間体から選択される少なくとも1つの第2の反応物質と反応させて、官能化されたフッ素化モノマーを形成することを含む、方法を提供する。
【0042】
この実施の形態における少なくとも1つの第2の反応物質がアミン又はポリアミンである場合、反応により製造される官能化されたフッ素化モノマーは、それぞれ、フッ素化アミン又はフッ素化ポリアミンである。好ましくは、前記官能化されたフッ素化モノマーは、式(VIII):
nRf-O-A+(NHR2)n-R1→(Rf-NR2)n-R1+nA-OH (VIII)
(式中、
Aはメシレート、トシレート又はトリフレートに対応する官能基であり、
Rfは、1個~約18個の炭素原子を有し、かつ0個~6個のエーテル結合を有する、部分的若しくは完全にフッ素化された分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基であり、置換される場合、芳香族基、五フッ化硫黄基、及びハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせから選択される基を含み、又は部分的若しくは完全にフッ素化された置換若しくは非置換のアリール基であり、置換される場合、五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせを含み、
R1は、水素、Rf、又は1個~約12個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基、環状アルキル基若しくは複素環基であり、R1がアルキル基、環状アルキル基、又は複素環基である場合、R1は0個~6個のエーテル結合、エステル結合、又はアリール基を含み、
R2は水素、Rf、又は1個~約6個の炭素原子の飽和の分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基であり、
nは1~約6である)に従う反応によって製造される。
【0043】
さらに、R1及び/又はR2が置換される場合、R1及び/又はR2は、ヒドロキシル基、ハロゲン、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アミン、及びチオールの群から選択される1つ以上の官能基を有してもよい。
【0044】
上記の実施の形態では、前記少なくとも1つの第2の反応物質がアルコキシド中間体又はフェノキシド中間体である場合、前記官能化されたフッ素化モノマーがフッ素化エーテルである。好ましくは、この実施の形態における前記官能化されたフッ素化モノマーは、式(IX):
nRf-O-A+R1-(O-M+)n→(Rf-O)n-R1+nA-O-M+ (IX)
(式中、
Aはメシレート、トシレート又はトリフレートに対応する官能基であり、
M+は、アルコキシド又はフェノキシドの中間体の生成に使用される塩基に由来する対イオンであり、
Rfは、1個~約18個の炭素原子を有し、かつ0個~6個のエーテル結合を有する、部分的若しくは完全にフッ素化された分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基であり、置換される場合、芳香族基、五フッ化硫黄基、及びハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせから選択される基を含み、又は部分的若しくは完全にフッ素化された置換若しくは非置換のアリール基であり、置換される場合、五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせを含み、
R1は、水素、Rf、又は1個~約12個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基、環状アルキル基若しくは複素環基であり、R1がアルキル基、環状アルキル基、又は複素環基である場合、R1は0個~6個のエーテル結合、エステル結合、又はアリール基を含み、
nは1~約6である)に従う反応によって製造される。
【0045】
さらに、R1が置換される場合、R1は、ヒドロキシル基、ハロゲン、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アミン、及びチオールの群から選択される1つ以上の官能基を有してもよい。
【0046】
本発明はさらに、フッ素化メシレート、フッ素化トシレート、及びフッ素化トリフレートから選択される少なくとも1つの第1の反応物質を、アミン又はポリアミン;アルコール、ポリオール、フェノール又はポリフェノール;及びアルコキシド中間体又はフェノキシド中間体から選択される少なくとも1つの第2の反応物質と反応させることにより製造された官能化されたフッ素化モノマーを提供する。
【0047】
さらに、フッ素化メシレート、フッ素化トシレート、フッ素化トリフレート、又はそれらの組み合わせの少なくとも1つから選択される第1の反応物質と、アミン又はポリアミン;アルコール、ポリオール、フェノール又はポリフェノール;及びアルコキシド中間体又はフェノキシド中間体から選択される少なくとも1つの第2の反応物質とを含む、官能化されたフッ素化モノマーを製造するための組成物が提供される。
【0048】
本発明の別の実施の形態では、少なくとも1つのフッ素化されたアルキル又はアリールのハロゲン化物をアミンと反応させて、アミノ官能化されたフッ素化モノマーを形成することを含む、官能化されたフッ素化モノマーを製造する方法が提供される。フッ素化されたアルキル又はアリールのハロゲン化物は、ヨウ化物であることが好ましい。さらに、アミンは第一級アミン又は第二級アミンであることが好ましい。いくつかの実施の形態では、前記アミンはポリアミンであり得る。前記官能化されたフッ素化モノマーは、式(X):
nRf-I+(NHR2)n-R1→(Rf-NR2)n-R1+nH-I (X)
(式中、
Rfは、1個~約18個の炭素原子を有し、かつ0個~6個のエーテル結合を有する、部分的若しくは完全にフッ素化された分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基であり、置換される場合、芳香族基、五フッ化硫黄基、及びハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせから選択される基を含み、又は部分的若しくは完全にフッ素化された置換若しくは非置換のアリール基であり、置換される場合、五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせを含み、
R1は、水素、Rf、又は1個~約12個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基、環状アルキル基若しくは複素環基であり、R1がアルキル基、環状アルキル基、又は複素環基である場合、R1は0個~6個のエーテル結合、エステル結合、又はアリール基を含み、
R2は水素、Rf、又は1個~約6個の炭素原子の飽和の分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基であり、
nは1~約6である)に従う反応により製造される。
【0049】
さらに、R1及び/又はR2が置換される場合、R1及び/又はR2は、ヒドロキシル基、ハロゲン、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アミン、及びチオールの群から選択される1つ以上の官能基を有してもよい。
【0050】
本発明はさらに、1つ以上のフッ素化されたアルキル又はアリールのハロゲン化物を、1つ以上のアミンと反応させてアミノ官能化フッ素化モノマーを形成することにより製造された官能化されたフッ素化モノマーを提供する。1つ以上のフッ素化されたアルキル又はアリールのハロゲン化物、好ましくはフッ素化されたアルキル又はアリールのヨウ化物と、1つ以上のアミン又はポリアミンとを含む、官能化されたフッ素化モノマーを製造するための組成物も提供される。
【0051】
本発明の別の実施の形態は、官能化されたフッ素化モノマーを製造する方法であって、1つ以上のフッ素化アルコールを、塩基触媒の存在下で、少なくとも1つの官能基を有する1つ以上のアルキル又はアリールのハロゲン化物と反応させて、エーテル結合及びアルキル又はアリールのハロゲン化物分子に由来する少なくとも1つの官能基を有する官能化されたフッ素化モノマーを製造することを含む、方法を提供する。前記少なくとも1つのフッ素化アルコールと、前記少なくとも1つの官能基を有するアルキル又はアリールのハロゲン化物分子との反応は求核置換により起こることが好ましい。前記アルキル又はアリールのハロゲン化物分子は、第一級ハロゲン化アルキル又は第二級ハロゲン化アルキルであることが好ましい。一実施の形態では、前記アルキル又はアリールのハロゲン化物分子の少なくとも1つの官能基は、ヒドロキシル基、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アミン、及びチオールの群から選択される。前記塩基触媒は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシド、水素化物又は水酸化物であることが好ましい。
【0052】
この方法の好ましい実施の形態では、官能化されたフッ素化モノマーは、下記式(XI):
nRf-OH+(X)n-R1-(A)t+M+B-→(Rf-O)n-R1-(A)t+nM+X-+nH+B- (XI)
(式中、
Xはハロゲンであり、
Rfは、1個~約18個の炭素原子を有し、かつ0個~6個のエーテル結合を有する、部分的若しくは完全にフッ素化された分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基であり、置換される場合、芳香族基、五フッ化硫黄基、及びハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせから選択される基を含み、又は部分的若しくは完全にフッ素化された置換若しくは非置換のアリール基であり、置換される場合、五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせを含み、
Aは、ハロゲン、ヒドロキシル、エポキシド、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アミン、及びチオールから選択される官能基であり、
R1は、水素、Rf、又は1個~約12個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基、環状アルキル基若しくは複素環基であり、R1がアルキル基、環状アルキル基、又は複素環基である場合、R1は0個~6個のエーテル結合、エステル結合、又はアリール基を含み、
M+は金属又はその他の陽イオンであり、
B-は塩基であり、
tは1~4であり、
nは1~約6である)に従って起こる反応により製造される。
【0053】
本発明はさらに、少なくとも1つのフッ素化アルコールを、塩基触媒の存在下で、少なくとも1つの官能基を有するアルキル又はアリールのハロゲン化物分子と反応させる方法によって製造される、官能化されたフッ素化モノマーを提供する。さらに、官能化されたフッ素化モノマーを製造するための組成物であって、少なくとも1つのフッ素化アルコールと、少なくとも1つの官能基を有するアルキル又はアリールのハロゲン化物分子とを含む、組成物が提供される。
【0054】
本発明はさらに、鎖延長フッ素化モノマーを製造する方法であって、少なくとも1つのフッ素化アルコールを、上記の塩基触媒の存在下で、少なくとも1つの官能基を有するアルキル又はアリールのハロゲン化物分子と反応させる方法により製造された少なくとも1つのヒドロキシル基を有する官能化されたフッ素化モノマーを、環状カルボン酸無水物、環状エーテル、環状カーボネート、及び環状エステルの群から選択される環状反応物質と反応させて、鎖延長フッ素化モノマー又は鎖延長フッ素化オリゴマーを形成することを含む、方法を含む。
【0055】
かかる実施の形態では、前記官能化されたフッ素化モノマーは好ましくは少なくとも1つのエーテル結合を有するフッ素化ジオールであり、前記鎖延長フッ素化モノマーはフッ素化ジカルボン酸である。この方法で製造された鎖延長フッ素化モノマーも含まれる。さらに、縮合重合によってこの実施の形態の方法により形成された少なくとも1つのカルボン酸基を有する鎖延長官能化フッ素化モノマーを重合させてフッ素化ポリエステルを形成することを含む、ポリマー又はオリゴマーを製造する方法が含まれる。別のかかる実施の形態では、環状反応物質は、好ましくは、プロピレンオキシド、グリシドール、エピクロロヒドリン、ブチルグリシジルエーテル、及び2-エチルヘキシルグリシジルエーテルの群から選択される環状エーテルである。環状反応物質は、L-ラクチド、D,L-ラクチド、グリコリド、及びε-カプロラクトンの群から選択される環状エステルであってもよく、最も好ましくはε-カプロラクトンであってもよい。環状反応物質はまた、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、及びトリメチレンカーボネートの群から選択される環状カーボネートであってもよく、そのなかでも反応物質は好ましくはトリメチレンカーボネートである。前記反応物質は、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水アコニット酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、及び1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸無水物の群から選択される環状カルボン酸無水物であってもよい。
【0056】
また、ポリマー又はオリゴマーを製造する方法であって、ヒドロキシル基を有する官能化されたフッ素化モノマーを、開環重合により、環状エステル、環状カーボネート、又は環状エーテルと反応させて、それぞれ含フッ素ポリエステルポリオール、含フッ素ポリカーボネートポリオール又は含フッ素ポリエーテルポリオールを形成することを含み、ここで、該方法で使用される官能化されたフッ素化モノマーは、(i)少なくとも1つのフッ素化アルコールを、塩基触媒の存在下で、少なくとも1つの官能基を有するアルキル若しくはアリールのハロゲン化物分子と反応させて、エーテル結合及びアルキル若しくはアリールのハロゲン化物の少なくとも1つの官能基を有する官能化されたフッ素化モノマーを製造することによって製造されるか、又は(ii)鎖延長フッ素化モノマーであって、(a)少なくとも1つのフッ素化アルコールを、塩基触媒の存在下で、少なくとも1つの官能基を有するアルキル若しくはアリールのハロゲン化物分子と反応させて、エーテル結合及びアルキル若しくはアリールのハロゲン化物の少なくとも1つの官能基を有する官能化されたフッ素化モノマーを製造することによって製造される、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する官能化されたフッ素化モノマーを、(b)環状カルボン酸無水物、環状エーテル、環状カーボネート、及び環状エステルの群から選択される環状反応物質と反応させることによって製造される、鎖延長フッ素化モノマーである、方法が含まれる。
【0057】
本発明による別の実施の形態では、本発明は、官能化されたフッ素化モノマーを製造する方法であって、少なくとも1つのフッ素化アルコールを環状カルボン酸無水物と反応させて、カルボン酸基及びエステル結合を含む官能化されたフッ素化モノマーを形成することを含む、方法を含む。この反応は、少なくとも約80℃の温度で行うことが好ましい。一実施の形態では、上記方法から得られる官能化されたフッ素化モノマーは、式(XII):
【化9】
(式中、
R
fは、1個~約18個の炭素原子を有し、かつ0個~6個のエーテル結合を有する、部分的若しくは完全にフッ素化された分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基であり、置換される場合、芳香族基、五フッ化硫黄基、及びハロゲン原子、並びにそれらの組み合わせから選択される基を含み、又は部分的若しくは完全にフッ素化された置換若しくは非置換のアリール基であり、置換される場合、五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、若しくはそれらの組み合わせを含み、
R
3は、2個~約18個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の分岐又は非分岐の置換又は非置換のアルキル基、環状アルキル基、アリール基、又は複素環基であり、R
3が置換される場合、R
3は、ハロゲン、カルボン酸、カルボン酸エステル、及びカルボン酸無水物の群から選択される1つ以上の官能基を含む)を有する。
【0058】
一実施の形態では、R3は、ハロゲン、カルボン酸、カルボン酸エステル、及びカルボン酸無水物の群から選択される1つ以上の官能基で置換されてもよい。さらに、環状カルボン酸無水物は、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水アコニット酸、無水フタル酸、ピロメリット酸二無水物、及び1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の群から選択され得る。
【0059】
この実施の形態の方法では、それによって製造された官能化されたフッ素化モノマーが炭素-炭素二重結合を有するように、環状カルボン酸無水物は不飽和であってもよい。かかる実施の形態では、不飽和官能化フッ素化モノマーをフリーラジカル重合により重合させて、フッ素化ポリアクリレート若しくはフッ素化ポリスチレン、又はそれらのコポリマー及びブレンドを形成してもよい。さらに、この実施の形態による不飽和官能化フッ素化モノマーは反応性であり、鎖延長官能化フッ素化モノマーを形成するマイケル付加反応機構等の付加反応に使用され得る。
【0060】
官能化されたフッ素化モノマーがカルボン酸基及びエステル結合を有するように、官能化されたフッ素化モノマーが、少なくとも1つのフッ素化アルコールを環状カルボン酸無水物と反応させることにより製造される本明細書の実施の形態では、本発明は、官能化されたフッ素化モノマーを重合して縮合重合によりフッ素化ポリエステルを形成することを含むポリマーを製造する方法を更に含む。また、この実施の形態の範囲には、少なくとも1つのフッ素化アルコールを環状カルボン酸無水物と反応させる方法から製造された官能化されたフッ素化モノマーが含まれる。さらに、フッ素化アルコール及び環状カルボン酸無水物を含む、カルボン酸基及びエステル結合を有する官能化されたフッ素化モノマーを製造するための組成物が含まれる。
【0061】
本発明はさらに、本明細書に列挙されるいずれかの方法によって製造された1つ以上の官能化されたフッ素化モノマーを、1つ以上の環状反応物質と反応させることを含む、鎖延長フッ素化モノマー又はオリゴマーを製造する方法を含む。環状反応物質は、好ましくは、環状カルボン酸無水物、環状エーテル、環状カーボネート、及び環状エステルの1つ以上から選択される。好ましい環状エーテルとしては、プロピレンオキシド、グリシドール、エピクロロヒドリン、ブチルグリシジルエーテル、及び2-エチルヘキシルグリシジルエーテルが挙げられる。好ましい環状エステルとしては、L-ラクチド、D,L-ラクチド、グリコリド及びε-カプロラクトンが挙げられ、ε-カプロラクトンが最も好ましい。好ましい環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びトリメチレンカーボネートが挙げられ、トリメチレンカーボネートが最も好ましい。好ましいカルボン酸無水物としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水アコニット酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、及び1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸無水物が挙げられる。
【0062】
鎖延長フッ素化モノマー又はオリゴマーを製造するかかる方法の好ましい実施の形態では、官能化されたフッ素化モノマーは、少なくとも1つのエーテル結合を有するフッ素化ジオールであってもよく、鎖延長フッ素化モノマーは、フッ素化ジカルボン酸であってもよい。本発明はまた、本明細書の上記方法のこの実施の形態によって形成された鎖延長フッ素化モノマーを含む。かかる実施の形態には、少なくとも1つのカルボン酸基を有する鎖延長官能化フッ素化モノマーを縮合重合により重合してフッ素化ポリエステルを形成することを含む、ポリマー又はオリゴマーを製造する方法が更に含まれる。
【0063】
本発明はさらに、本明細書に列挙される方法の1つにより製造された1つ以上の官能化されたフッ素化モノマーを、1つ以上の環状反応物質と反応させることにより製造された鎖延長官能化フッ素化モノマーを含む。
【0064】
さらに、本発明は、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する第1の反応物質を、開環重合により、環状エステル、環状カーボネート、又は環状エーテルと反応させて、それぞれ、含フッ素ポリエステルポリオールエステル、含フッ素ポリカーボネートポリオール又は含フッ素ポリエーテルポリオールを形成することを含むポリマーを製造する方法を含み、ここで、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する第1の反応物質は、(i)官能性反応基を有する少なくとも1つのフッ素化求核反応剤を、少なくとも1つのエポキシド基を含む少なくとも1つの化合物と反応させる方法により形成される、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する官能化されたフッ素化モノマー、又は(ii)鎖延長フッ素化モノマー若しくは鎖延長フッ素化オリゴマーであって、(a)官能性反応基を有する少なくとも1つのフッ素化求核反応剤を、少なくとも1つのエポキシド基を含む少なくとも1つの化合物と反応させる方法により形成される、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する官能化されたフッ素化モノマーを、(b)環状カーボネート、環状エーテル、及び環状エステルの群から選択される環状反応物質と反応させることによって形成される、鎖延長フッ素化モノマー若しくは鎖延長フッ素化オリゴマーから選択される。
【0065】
本発明はまた、本明細書に列挙されるいずれかの方法によって製造されたヒドロキシ、カルボン酸エステル若しくはカルボン酸で官能化されたフッ素化モノマー、又は鎖延長官能化フッ素化モノマーのいずれかを重合して、縮合重合によりフッ素化ポリエステルを形成することによって製造されたポリマー又はオリゴマーに関する。
【0066】
本発明はさらに、本明細書に列挙されるいずれかの方法によって製造されたヒドロキシル官能化フッ素化モノマー又は鎖延長官能化フッ素化モノマーのいずれかを重合して、縮合重合によりフッ素化ポリカーボネートを形成することによって製造されたポリマー又はオリゴマーに関する。
【0067】
本発明の別の実施の形態では、本発明は、不飽和フッ素化モノマーを少なくとも1つのポリアミンと反応させてポリアミノ官能化フッ素化モノマーを形成することを含む、ポリアミノ官能化フッ素化モノマーを製造する方法を含む。不飽和フッ素化モノマーは、エステル結合を含んでもよい。さらに、不飽和フッ素化モノマーは、フッ素化マレイン酸塩であってもよく、又は特に2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、及び3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロ-1-オクチルメタクリレートから選択されてもよい。この実施の形態においてポリアミンは、1,6-ジアミノヘキサン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、及び3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンの少なくとも1つであってもよい。
【0068】
本発明はまた、不飽和フッ素化モノマーをポリアミンと反応させることにより製造されたポリアミノ官能化フッ素化モノマーを含む。また、不飽和フッ素化モノマー及びポリアミンを含む、ポリアミノ官能化フッ素化モノマーを製造するための組成物が提供される。
【0069】
さらに、ポリマーを製造する方法であって、本明細書に記載される方法の実施の形態に従って製造されたポリアミノ官能化フッ素化モノマーをポリイソシアネートと縮合重合により重合させてフッ素化ポリウレアを形成することを含む、方法が提供される。
【0070】
また、既存のポリマー又はオリゴマーを修飾する反応性官能基を含む、本明細書の開示に従って製造された官能化されたフッ素化モノマーを使用する方法も本発明に含まれる。本方法は、少なくとも1つの反応性官能基を有する官能化されたフッ素化モノマーを準備することと、前記官能化されたフッ素化モノマーの少なくとも1つの反応性官能基を、前記ポリマー若しくはオリゴマー上の反応性末端基、又は前記ポリマー若しくはオリゴマーの骨格上の反応性官能基のいずれか又は両方と反応させることとによって、既存のポリマー又はオリゴマーを修飾することを含む。
【0071】
ポリマー又はオリゴマーを修飾する方法の一実施の形態では、官能化されたフッ素化モノマーの官能基は好ましくはヒドロキシル基であり、ポリマー又はオリゴマーの反応性官能基は好ましくは環状無水物であり、ポリマー又はオリゴマーは、好ましくは、マレイン酸無水物と、スチレン、メチルメタクリレート、ブタジエン、及びエチレンの1つ以上とのフリーラジカル重合コポリマーから選択される。
【0072】
本方法の別の実施の形態では、前記官能化されたフッ素化モノマーの官能基は、カルボン酸基であってもよく、前記ポリマー又はオリゴマーの反応性官能基は、エポキシド基であってもよく、前記ポリマー又はオリゴマーは、グリシジルアクリレート及び/又はグリシジルメタクリレートのコポリマー、エポキシ樹脂、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのポリマー及びコポリマーから選択されてもよい。
【0073】
本方法の更なる実施の形態では、前記官能化されたフッ素化モノマーの官能基は、アミノ基であってもよく、前記ポリマー又はオリゴマーの反応性官能基は、無水マレイン酸、イソシアネート又はエポキシドに由来する環状無水物基であってもよく、前記ポリマー又はオリゴマーは、無水マレイン酸と、スチレン、メチルメタクリレート、ブタジエン及びエチレンの1つ以上とのフリーラジカル重合コポリマー、ポリイソシアネート、グリシジルアクリレート若しくはグリシジルメタクリレートのコポリマー、又はビスフェノールAジグリシジルエーテルのポリマー若しくはオリゴマーであってもよい。
【0074】
本方法のまた更なる実施の形態では、前記官能化されたフッ素化モノマーの官能基は、エポキシド基であってもよく、前記ポリマー又はオリゴマーの反応性官能基は、カルボン酸基であってもよく、前記ポリマー又はオリゴマーは、アクリル酸若しくはメタクリル酸のホモポリマー若しくはコポリマー、ポリエステル、又はポリアミドであってもよい。さらに、この実施の形態によるポリマー又はオリゴマーを修飾する1つの方法では、押出プロセス中に反応が起こり、それによって、ポリマー又はオリゴマー及び官能化されたフッ素化モノマーを含む組成物が押出機に供給され、加熱溶融中に反応が起こる。
【0075】
ポリマー又はオリゴマーを修飾する方法における官能化されたフッ素化モノマーの官能基はカルボン酸無水物基であってもよく、ポリマー又はオリゴマーの反応性官能基はヒドロキシル又はアミノ基であってもよく、ポリマー又はオリゴマーは、ポリビニルアルコール、ポリエステル、又はポリアミドであってもよい。かかる実施の形態では、前記反応が押出プロセス中に起こってもよく、それによって前記ポリマー又はオリゴマーと、前記官能化されたフッ素化モノマーとを含む組成物が押出機に供給され、前記反応が加熱溶融中に起こる。
【発明を実施するための形態】
【0076】
本発明は、コーティング等のポリマー系システムに適用されるポリマー及びオリゴマーの形成に有用な官能化されたフッ素化モノマーを製造する方法を提供し、とりわけ落書き抵抗性、汚れ抵抗性、自己洗浄能力、疎水性、及び透明性等の表面特性の改善を提供する。官能化されたフッ素化モノマーは、低濃度でポリマーに組み込まれることで表面特性の改善を可能にし、いくつかの実施形態は、ポリマー系システムの表面特性を改善するために使用される従来の方法に比べて著しく低いコストで表面特性の改善を提供する。さらに、本発明の含フッ素オリゴマー又はポリマーは、従来のフッ素化ポリエーテルブロック含有ポリマーと比較して、耐摩耗性及びその他の表面硬度に関連する特性が改善された物品を生産するために使用され得る。本発明の含フッ素オリゴマー又はポリマーはまた、従来のフッ素化ポリエーテルブロック含有ポリマーと比較して、大幅に改善された透明性を有する物品を生産するために使用され得る。本明細書に記載される方法により生産されるフッ素化オリゴマー又はポリマーは、金属形成、金属加工等の用途の潤滑組成物中の添加剤として、並びにモーターオイル及びギアオイル等の自動車潤滑剤中の添加剤としても使用され得る。
【0077】
本明細書で使用される「製造された、生成された、作られた(made)」、「製造すること、生成すること、作ること(making)」又は「製造する、生成する、作る(make)」は、形成された、生産された、反応から生じた、又は他の方法により作り出されたものを含むことを意図する。本明細書で使用される「ポリ」という用語は、2以上であることを意味し、例えば「ポリオール」は「ジオール」を含む場合がある。「オリゴマー」は、繰り返し分子の低分子量形態であり、繰り返し単位は分子内に2回以上存在する。「ポリマー」は、繰り返し単位を含むより大きな分子を包含することを意図しており、別段の区別がされない場合には、その範囲内にオリゴマーを含むと解釈することができる。
【0078】
一実施形態では、本発明は、反応性官能基を有する少なくとも1つのフッ素化求核反応剤を少なくとも1つのエポキシド基を有する少なくとも1つの化合物と反応させて少なくとも1つのヒドロキシル基を有する官能化されたフッ素化モノマーを形成することによる、官能化されたフッ素化モノマーを製造する方法に関する。少なくとも1つのフッ素化求核反応剤は、フッ素化アルコール、フッ素化カルボン酸、フッ素化有機酸無水物、フッ素化アミン、フッ素化アミド、フッ素化スルホンアミド、及びフッ素化チオールから選択されることが好ましい。
【0079】
フッ素化求核反応剤は、フッ素化アルコール及びフッ素化チオール等の2つ以上のフッ素化求核反応剤の混合物であってもよい。しかしながら、上記反応は、フッ素化アルコール等の単一のフッ素化求核反応剤を含むことが好ましい。別の実施形態では、フッ素化求核反応剤は、2つのフッ素化アルコール、又はフッ素化アルコール及びフッ素化チオール等の同じタイプ又は異なるタイプの2つ以上のフッ素化求核反応剤を含んでもよい。少なくとも1つのエポキシド基を有する化合物に対するフッ素化求核反応剤のモル比は、好ましくは約0.3~約1.5であり、より好ましくは約0.5~約1.1である。
【0080】
少なくとも1つのエポキシド基を有する化合物は、複数のエポキシド基を有してもよく、したがって、ジグリシジルエーテル等のジエポキシドであってもよい。複数のエポキシド基を有する実施形態では、製造される官能化されたフッ素化モノマーは、エポキシド含有化合物中の各エポキシド基に対して1つのヒドロキシル基を有することができる。その結果、官能化されたフッ素化モノマーは、ジオールであってもよく、又はポリオールであってもよい。
【0081】
好適なエポキシド含有分子としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、グリシドール、1,2-エポキシシクロヘキサン、2,3-エポキシ-5-メチルヘキサン、エピクロロヒドリン、ブテンオキシド、スチレンオキシド、シクロペンテンオキシド、1,3-ブタジエンジエポキシド、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ネオデカン酸グリシジルエステル、ビスフェノールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,3-プロパンジオールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アジピン酸ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、及びペンタエリトリトールテトラグリシジルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、少なくとも1つのエポキシド基を含む化合物は、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、アジピン酸ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、及びペンタエリトリトールテトラグリシジルエーテルから選択される。
【0082】
少なくとも1つのフッ素化求核反応剤がフッ素化アルコールである場合、得られる官能化されたフッ素化モノマーはエーテル結合を有する。2,2,2,-トリフルオロエタノール、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノール、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブタノール、2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロ-1-ペンタノール、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-ペンタデカフルオロ-1-オクタノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール、1,1,1-トリフルオロ-2-ブタノール、2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノール、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジルアルコール、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンジルアルコール、3-ヒドロキシフェニル硫黄ペンタフルオリド、4-ヒドロキシフェニル硫黄ペンタフルオリド、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロ-1-オクタノールを含むテトラフルオロエチレンに基づくテロマーアルコール及びフッ素化エーテルに基づくアルコール、例えば2-パーフルオロプロポキシ-2,3,3,3-テトラフルオロプロパノールを含むが、これらに限定されない任意の様々なフッ素化アルコールが使用され得る。好ましい実施形態では、フッ素化アルコールは、2,2,2,-トリフルオロエタノール、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール、4-ヒドロキシフェニル硫黄ペンタフルオリド、2-パーフルオロプロポキシ-2,3,3,3-テトラフルオロプロパノール及び3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロ-1-オクタノールの群から選択される。
【0083】
フッ素化アルコールと少なくとも1つのエポキシド基を有する化合物との反応は、塩基触媒の存在下で起こり得て、該反応により製造されたフッ素化モノマーは、対応する数のエーテル結合及び第二級ヒドロキシル基を含むこととなる。かかる実施形態では、フッ素化モノマーは、好ましくは、式(I)による構造を有する:
【化10】
【0084】
Rf基は、1個~約18個の炭素原子を有する部分的又は完全にフッ素化された分岐又は非分岐の置換又は非置換のアルキル基であってもよい。Rf基がアルキル基である場合、Rf基は更に0個~約6個のエーテル結合を有してもよい。Rf基がアルキル基であり、置換されている場合、Rf基は、芳香族基、五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。あるいは、Rf基は、部分的又は完全にフッ素化された置換又は非置換のアリール基であってもよい。Rfがアリール基であり、置換されている場合、Rfは五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。R1基はエポキシド含有分子に由来し、水素、Rf、又は飽和若しくは不飽和の分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換のアルキル基、環状アルキル基若しくは複素環基であってもよい。R1基は、好ましくは1個~約24個の炭素原子を有する。R1がアルキル基、環状アルキル基、又は複素環基である場合、R1は0個~6個のエーテル結合、エステル結合、又はアリール基を更に含んでもよい。さらに、R1基は、置換される場合、ヒドロキシル基、ハロゲン、エポキシド、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アミン、チオール、及びそれらの組み合わせの群から選択される官能基を含む。さらに、nは好ましくは1~約4である。
【0085】
Rfが非分岐アルキル基である場合、Rfは好ましくは下記式:
CF3-(CF2)x-(CH2)y
(式中、xは0~約10であり、yは1~約10である。より好ましくは、xは0~約5であり、yは好ましくは0~約10である)による構造を有する。
【0086】
R
fが非分岐アルキル基である場合のR
fの好ましい構造としては以下が挙げられる。
【化11】
【0087】
R
fのその他の好ましい構造としては、以下が挙げられる。
【化12】
【0088】
さらに、式(I)において、R1は、一般式:
-CH2-O-Rn-O-CH2-
(式中、Rnは、好ましくは、1個~約10個の炭素原子を有する飽和の分岐又は非分岐のアルキル基であり、1つ以上の環状基、エーテル結合、又はエステル結合を含んでもよい)による構造を有するジグリシジルエーテルから誘導され得る。
【0089】
R
1の他の好ましい構造は、以下の群から選択される:
【化13】
【0090】
式(I)の官能化されたフッ素化モノマーの生産に有用な適切な塩基触媒としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド及び水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水素化物及びアルコキシド;水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;ナトリウム及びカリウム等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属;水酸化テトラメチルアンモニウム及び水酸化テトラブチルアンモニウム等の水酸化第四級アンモニウム;並びにトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、及びDBU等の第三級アミンが含まれるが、これらに限定されない。
【0091】
あるいは、フッ素化アルコールと少なくとも1つのエポキシド基を有する化合物との反応は、酸触媒の存在下で起こり得て、該反応により製造された官能化されたフッ素化モノマーは、エーテル結合及び1つ以上の第一級ヒドロキシル基を含む。かかる実施形態では、フッ素化モノマーは、好ましくは式(II)による構造を有する:
【化14】
【0092】
酸触媒反応において、Rf、R1及びnは、フッ素化アルコールと少なくとも1つのエポキシド基を有する化合物との塩基触媒反応に関して上で定義したものと同じである。好ましいRf基及びR1基は、式(I)に関して上述したものと同じである。適切な酸触媒としては、塩酸、硫酸及びメタンスルホン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
上記反応が、少なくとも1つのエポキシド基を有する化合物と反応したフッ素化カルボン酸であるフッ素化求核反応剤を含む場合、官能化されたフッ素化モノマーは、少なくとも1つのヒドロキシル基及びエステル結合を有する。フッ素化モノマーは、好ましくは式(III)による構造を有する:
【化15】
【0094】
かかる実施形態では、官能化されたフッ素化モノマーのRf基はフッ素化カルボン酸に由来し、カルボン酸に由来するエステル結合を介して接続されている。さらに、エポキシド含有化合物のエポキシド環が開いてヒドロキシル基を形成する。この実施形態では、Rf、R1及びnは、式(I)及び(II)に関して上で定義されたものと同じである。
【0095】
式(III)において、R
fが非分岐アルキル基である場合、R
fは好ましくは以下の式:
CF
3-(CF
2)
n-(CH
2)
m-
(式中、nは0~約10であり、mは0~約10である)による構造を有する。R
fが非分岐アルキル基である場合のR
fの好ましい構造としては以下の構造が挙げられる:
【化16】
【0096】
式(III)において、R
fの他の好ましい構造としては以下が挙げられる:
【化17】
【0097】
式(III)において、R1の好ましい構造は、式(I)に関して述べたものと同じである。
【0098】
好適なフッ素化カルボン酸としては、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸、2,2-ビス(トリフルオロメチル)プロピオン酸、4,4,4-トリフルオロ酪酸、ヘプタフルオロ酪酸、4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロヘキサン酸、パーフルオロヘキサン酸、パーフルオロヘプタン酸、ノナフルオロ-3,6-ジオキサヘプタン酸、パーフルオロ-3,6-ジオキサデカン酸、2,3,4,5,6-ペンタフルオロ安息香酸、トリフルオロメチル安息香酸、トリフルオロメトキシ安息香酸、3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル酢酸、3-ペンタフルオロチオ安息香酸、4-ペンタフルオロチオ安息香酸、4,8-ジオキサ-3H-パーフルオロノナン酸、パーフルオロ(2-エチルオキシ-エトキシ)酢酸、及びパーフルオロ(2-メチル-3-オキサ)ヘキサン酸が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、フッ素化カルボン酸は、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸、2,2-ビス(トリフルオロメチル)プロピオン酸、4,4,4-トリフルオロ酪酸、ヘプタフルオロ酪酸、4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロヘキサン酸、4-ペンタフルオロチオ安息香酸、及び3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸の群から選択される。
【0099】
フッ素化求核反応剤がフッ素化アミンである場合、官能化されたフッ素化モノマーは、少なくとも1つのヒドロキシル基及びアミン基を有する。好ましくは、官能化されたフッ素化モノマーは、式(IV)による構造を有する:
【化18】
【0100】
Rf基は、式(I)~式(III)を参照して上に記載されるものと同じであり、Rf基は、アミン基と同様にフッ素化アミンから誘導される。ヒドロキシル基は、エポキシド含有化合物の開環によって生成され、R1基もエポキシド含有化合物から誘導される。したがって、R1及びnも上記と同じである。R2は水素原子又はRf基であってもよい。あるいは、R2は、1個~約6個の炭素原子の飽和の分岐又は非分岐のアルキル基であってもよく、置換又は非置換であってもよい。R2が置換される場合、R2は、ヒドロキシル基、ハロゲン、エポキシド、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アミン、チオール、及びそれらの組み合わせの群から選択される1つ以上の官能基を有し得る。
【0101】
式(IV)において、R
fは、好ましくは、以下の群から選択される構造を有する:
【化19】
(式中、nは0~約10であり、mは0~約10である)。
【0102】
式(IV)において、R1の好ましい構造は、式(I)に関して述べたものと同じである。R2は、好ましくは、Rf、水素、及びCH3-(CH2)m-(式中、mは1~約10である)の群から選択される構造を有する。
【0103】
2,2,2-トリフルオロエチルアミン、3,3,3-トリフルオロプロピルアミン、4,4,4-トリフルオロブチルアミン、7,7,7-トリフルオロヘプタンアミン、1H,1H-パーフルオロペンチルアミン、1H,1H-パーフルオロヘキシルアミン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロヘプチルアミン、1H,1H-パーフルオロヘプチルアミン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルアミン、4,4,4-トリフルオロ-3-(トリフルオロメチル)ブタン-1-アミン、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)アミン、ビス(3,3,3-トリフルオロプロピル)アミン、2-(トリフルオロメトキシ)エタン-1-アミン、3-(トリフルオロメトキシ)プロパン-1-アミン、4-(トリフルオロメトキシ)ブタン-1-アミン、ビス[2-(トリフルオロメトキシ)エチル]アミン、ビス(4,4,4-トリフルオロブチル)アミン、3,3,3-トリフルオロ-2,2-ジメチルプロパン-1-アミン、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジルアミン、3,3,3-トリフルオロプロパン-1,2-ジアミン、3-アミノフェニル硫黄ペンタフルオリド、4-アミノフェニル硫黄ペンタフルオリド、4-(ペンタフルオロ硫黄)ベンジルアミン、3,4-ジアミノフェニル硫黄ペンタフルオリド、及び3,5-ジアミノフェニル硫黄ペンタフルオリドを含むが、これらに限定されない任意の様々なフッ素化アミンが使用され得る。
【0104】
フッ素化求核反応剤がフッ素化アミドである場合、官能化されたフッ素化モノマーは、少なくとも1つのヒドロキシル基及びアミド結合を有する。反応は塩基触媒の存在下で起こることが好ましい。フッ素化アミドと少なくとも1つのエポキシド基を有する化合物との反応により製造される官能化されたフッ素化モノマーは、好ましくは式(V)による構造を有する:
【化20】
【0105】
Rf基及びアミド結合はフッ素化アミドに由来し、一方、ヒドロキシル基はエポキシド基の開環によって生成される。Rf基、R1基、R2基及びnは、式(IV)に関して上に記載されるものと同じである。さらに、Rf、R1及びR2の好ましい構造も、式(IV)に関して上述したものと同じである。
【0106】
2,2,2-トリフルオロアセトアミド、ペンタフルオロプロパンアミド、4,4,4-トリフルオロブタンアミド、パーフルオロブタンアミド、パーフルオロペンタンアミド、パーフルオロヘキサンアミド、パーフルオロヘプタンアミド、2,2-ビス(トリフルオロメチル)プロパンアミド、4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロヘキサンアミド、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニルアセトアミド、3-ペンタフルオロチオベンズアミド、4-ペンタフルオロチオベンズアミド、パーフルオロ(2-エチルオキシ-エトキシ)アセトアミド、パーフルオロ(2-メチル-3-オキサヘキサン)アミド、及び3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンズアミドを含むが、これらに限定されない任意の様々なフッ素化アミドが使用され得る。好ましくは、フッ素化アミドは2,2,2-トリフルオロアセトアミドである。
【0107】
フッ素化求核反応剤がフッ素化スルホンアミドである場合、官能化されたフッ素化モノマーは、少なくとも1つのヒドロキシル基及びスルホンアミド結合を有する。反応は塩基触媒の存在下で起こることが好ましい。フッ素化スルホンアミドと少なくとも1つのエポキシド基を有する化合物との反応により製造される官能化されたフッ素化モノマーは、好ましくは式(VI)による構造を有する:
【化21】
【0108】
Rf基及びスルホンアミド結合はフッ素化スルホンアミドによって提供され、ヒドロキシル基及びR1基はエポキシドから誘導される。Rf基、R1、R2及びnは、式(IV)について上に記載されるものと同じである。さらに、Rf、R1及びR2の好ましい構造も、式(IV)に関して上述したものと同じである。
【0109】
トリフルオロメタンスルホンアミド、2,2,2-トリフルオロエタンスルホンアミド、ペンタフルオロエチルスルホンアミド、3,3,3-トリフルオロプロパン-1-スルホンアミド、パーフルオロブチルスルホンアミド、パーフルオロヘキサンスルホンアミド、ペンタフルオロベンゼンスルホンアミド、及び3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホンアミドを含むが、これらに限定されない任意の様々なフッ素化スルホンアミドが使用され得る。好ましくは、フッ素化スルホンアミドはトリフルオロメタンスルホンアミド、2,2,2-トリフルオロエタンスルホンアミド、及びパーフルオロブチルスルホンアミドの群から選択される。
【0110】
フッ素化求核反応剤がフッ素化チオールである場合、得られる官能化されたフッ素化モノマーは、対応する数のチオエーテル結合及びヒドロキシル基を含むこととなる。フッ素化チオールと少なくとも1つのエポキシド基を有する化合物との反応は、塩基触媒の存在下で起こり得る。適切な塩基触媒としては、限定されないが、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;水酸化テトラメチルアンモニウム及び水酸化テトラブチルアンモニウム等の第四級アンモニウムの水酸化物;並びにトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、及びDBU等の第三級アミンが挙げられる。フッ素化チオールと少なくとも1つのエポキシド基を有する化合物との反応により製造される式(VII)による構造を有するフッ素化モノマーが好ましい:
【化22】
【0111】
R
f基及びチオエーテル結合は、フッ素化チオールから誘導される。ヒドロキシル基はエポキシド基の開環によって生成され、R
1基もエポキシド含有化合物から誘導される。R
f基、R
1基、及びnは、例えば式(I)の場合と同様に、各式について上に記載されるものと同じである。R
f基は、好ましくは下記式:
【化23】
(式中、nは1~約10であり、mは1~約10である)による構造を有する。さらに、R
1の好ましい構造は、式(I)に関して上述したものと同じである。
【0112】
2,2,2,-トリフルオロエタンチオール、3,3,3-トリフルオロプロパンチオール、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパンチオール、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブタンチオール、2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロ-1-ペンタンチオール、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-ペンタデカフルオロ-1-オクタンチオール、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクタン-1-チオール、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデカン-1-チオール、9,9,10,10,11,11,12,12,12-ノナフルオロドデカン-1-チオール、12,12,12-トリフルオロドデカンチオール、1H,1H,2H,2H-パーフルオロヘキサン-1-チオール、及び4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンタン-1-チオールを含むが、これらに限定されない任意の様々なフッ素化チオールが使用され得る。
【0113】
フッ素化求核反応剤がフッ素化有機酸無水物である場合、官能化されたフッ素化モノマーは、少なくとも1つのヒドロキシル基及びエステル結合を有する。官能化されたフッ素化モノマーは、好ましくは、フッ素化カルボン酸と少なくとも1つのエポキシド基を含む化合物との反応におけるものと同じ構造である式(III)による構造を有する:
【化24】
【0114】
Rf基は、カルボン酸無水物に由来する。Rf基、R1基及びnは、上で検討されるように、式(III)においてフッ素化カルボン酸と少なくとも1つのエポキシド基を含む化合物との反応に関して上で検討したものと同じである。Rf及びR1の好ましい構造もフッ素化カルボン酸と少なくとも1つのエポキシド基を含む化合物との反応に関して上述したものと同じである。
【0115】
無水トリフルオロ酢酸、無水ペンタフルオロプロピオン酸、無水2,2-ビス(トリフルオロメチル)プロピオン酸、無水4,4,4-トリフルオロ酪酸、無水ヘプタフルオロ酪酸、無水4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロヘキサン酸、無水パーフルオロヘキサン酸、無水パーフルオロヘプタン酸、無水ノナフルオロ-3,6-ジオキサヘプタン酸、無水パーフルオロ-3,6-ジオキサデカン酸、無水2,3,4,5,6-ペンタフルオロ安息香酸、無水トリフルオロメチル安息香酸、無水トリフルオロメトキシ安息香酸、無水3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸、無水3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル酢酸、無水3-ペンタフルオロチオ安息香酸、無水4-ペンタフルオロチオ安息香酸、無水4,8-ジオキサ-3H-パーフルオロノナン酸、無水パーフルオロ(2-エチルオキシ-エトキシ)酢酸及び無水パーフルオロ(2-メチル-3-オキサ)ヘキサン酸を含むが、これらに限定されない任意の様々なフッ素化有機酸無水物が使用され得る。好ましい実施形態では、フッ素化有機酸無水物は、無水トリフルオロ酢酸、無水ペンタフルオロプロピオン酸、無水2,2-ビス(トリフルオロメチル)プロピオン酸、無水4,4,4-トリフルオロ酪酸、無水ヘプタフルオロ酪酸、無水4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロヘキサン酸、無水4-ペンタフルオロチオ安息香酸及び無水3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸の群から選択される。
【0116】
本発明はさらに、官能性反応基を有する少なくとも1つのフッ素化求核反応剤を、少なくとも1つのエポキシド基を有する少なくとも1つの化合物と反応させることにより製造される官能化されたフッ素化モノマーに関する。好ましくは、フッ素化求核反応剤は、フッ素化アルコール、フッ素化カルボン酸、フッ素化有機酸無水物、フッ素化アミン、フッ素化アミド、フッ素化スルホンアミド、及びフッ素化チオールから選択される。得られる官能化されたフッ素化モノマーは、少なくとも1つのヒドロキシル基を含み、使用されるフッ素化求核反応剤に応じた結合を更に含む(例えば、フッ素化求核反応剤がフッ素化アルコールである場合、得られるフッ素化モノマーはエーテル結合を有する)。
【0117】
フッ素化カルボン酸、3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸(「BTFMBA」)から誘導される官能化されたフッ素化モノマーは、透明性及び硬度が改善された含フッ素ポリエステルポリオールの合成に有用な可能性がある。別の実施形態では、フッ素化求核反応剤は、2,2,2,-トリフルオロエタノール、4-ヒドロキシフェニル硫黄ペンタフルオリド、及び3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロ-1-オクタノール等のフッ素化アルコールであってもよい。これらのフッ素化アルコールから誘導される官能化されたフッ素化モノマーは、透明性及び硬度が改善された含フッ素ポリエステルポリオールの合成に有用な可能性がある。好ましい実施形態では、フッ素化アルコールは2,2,2-トリフルオロエタノールであり、ほとんどのフッ素を含有する出発材料よりもかなり低いコストで入手可能であるという事実により、本発明の官能化されたフッ素化モノマーの合成において経済的利点をもたらす。
【0118】
本発明はさらに、官能性反応基を有するフッ素化求核反応剤と、少なくとも1つのエポキシド基を有する化合物とを含む、官能化されたフッ素化モノマーを製造するための組成物に関する。好ましくは、フッ素化求核反応剤は、フッ素化アルコール、フッ素化カルボン酸、フッ素化有機酸無水物、フッ素化アミン、フッ素化アミド、フッ素化スルホンアミド、及びフッ素化チオールから選択される。
【0119】
本発明の別の実施形態では、本発明は、フッ素化メシレート、フッ素化トシレート、及びフッ素化トリフレートから選択される少なくとも1つの第1反応物質を、アミン若しくはポリアミン、又はアルコキシド中間体若しくはフェノキシド中間体を介してアルコール、ポリオール、フェノール若しくはポリフェノールから選択される少なくとも1つの第2の反応物質と反応させて官能化されたフッ素化モノマーを形成することによって、官能化されたフッ素化モノマーを製造する方法を提供する。
【0120】
フッ素化されたメシレート、トシレート又はトリフレートは、対応するフッ素化アルコールを塩化メタンスルホニル、塩化p-トルエンスルホニル又は塩化トリフルオロメタンスルホニルと反応させることにより、該フッ素化アルコールから容易に生成され得る。アルキルメシレート、トシレート及びトリフレートの合成及び反応の記載がSolomons, T.W.Graham, Fryhle, C.B., "Organic Chemistry", 10th Edition, 2011, John Wiley & Sons, Inc.の518頁~521頁にあり、関連する部分は本明細書の一部をなす。
【0121】
フッ素化されたメシレート、トシレート、又はトリフレートを生成するのに適したフッ素化アルコールは、フッ素化アルコールとエポキシド含有化合物との反応に関して上で検討したものと同じである。
【0122】
第2の反応物質がアミン又はポリアミンである場合、上記反応から生じる官能化されたフッ素化モノマーはフッ素化アミンである。反応は式(VIII)に従って起こることが好ましい:
nRf-O-A+(NHR2)n-R1→(Rf-NR2)n-R1+nA-OH (VIII)
【0123】
上記のように、第1の反応物質はフッ素化されたメシレート、トシレート、又はトリフレートであることが好ましく、したがって、Aは以下の群から選択され得る:
【化25】
【0124】
Rf基は、1個~約18個の炭素原子を有する部分的又は完全にフッ素化された分岐又は非分岐の置換又は非置換のアルキル基である。Rfがアルキル基である場合、Rfは0個~6個のエーテル結合を含んでもよい。Rfがアルキル基であり、置換されている場合、Rfは、芳香族基、五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。あるいは、Rfは、部分的又は完全にフッ素化された置換又は非置換のアリール基であってもよい。Rfがアリール基であり、置換されている場合、Rfは五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。R1は水素原子又はRfであってもよい。さらに、R1は、1個~約12個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の分岐又は非分岐の置換又は非置換のアルキル基、環状アルキル基又は複素環基であってもよい。
【0125】
R1がアルキル基、環状アルキル基又は複素環基である場合、R1は0個~6個のエーテル結合、エステル結合、又はアリール基を含む。R2は、水素、Rf、又は1個~約6個の炭素原子の飽和の分岐又は非分岐の置換又は非置換のアルキル基である。さらに、nは好ましくは1~約6である。R1及び/又はR2が置換される場合、R1及び/又はR2は、ヒドロキシル基、ハロゲン、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アミン、チオール、又はそれらの組み合わせの群から選択される1つ以上の官能基を有してもよい。R2が水素の場合、2つのRf基が付着した二置換窒素を生成できる可能性がある。
【0126】
好適なアミン及びポリアミンとしては、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、2,5-ジアミノ-2,5-ジメチルヘキサン、2,2,4-及び/又は2,4,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、2-アミノエタノール、ジエタノールアミン、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、2,4’-及び/又は4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,4-及び/又は2,6-ヘキサヒドロトルエンジアミン、2,4及び/又は2,6-ジアミノトルエン、2,4’及び/又は4,4’-ジアミノジフェニルメタン並びにポリエーテルポリアミンが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、ポリアミンは、ジエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,6-ジアミノヘキサン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、及び3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンから選択される。
【0127】
式(VIII)において、R
fは、好ましくは、上記の式(I)に関して述べた構造を有する。さらに、R
1及びR
2はそれぞれ、以下の群:
【化26】
から選択される構造を有することが好ましく、
nは0~約10である。
【0128】
式(VIII)による反応は、求核置換を介して起こり、Rfはアミンの窒素と結合を形成し、A-OHは副生成物として産生される。炭酸カリウム、トリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミン等の非求核性塩基を含めて、A-OH副生成物を中和してもよい。各当量のアミンに対するフッ素化されたメシレート、トシレート又はトリフレートのモル比は、好ましくは約0.1~約1.5であり、より好ましくは約0.5~約1である。好ましくは、反応は、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシド等の極性非プロトン溶媒中で起こる。反応混合物を約25℃~約180℃の温度で約3時間~約24時間撹拌する。反応は、得られる生成物の色を改善するため、不活性雰囲気下で行われてもよい。
【0129】
フッ素化メシレート、フッ素化トシレート、又はフッ素化トリフレートである第1の反応物質の反応の実施形態において、第2の反応物質がアルコキシド中間体又はフェノキシド中間体を介するアルコール、ポリオール、フェノール、又はポリフェノールである場合、官能化されたフッ素化モノマーはフッ素化エーテルである。アルコキシド中間体又はフェノキシド中間体は、関連する部分が本明細書の一部をなす、Streitwieser, A, Heathcock, C.H., "Introduction to Organic Chemistry", 2nd Edition, 1981, Macmillen Publishing Co., Inc.,の237頁~239頁に記載されるように、適切な塩基と反応させる等、いくつかの方法のいずれかによって対応するアルコールから生成される。
【0130】
官能化されたフッ素化モノマーは、式(IX):
nRf-O-A+R1-(O-M+)n→(Rf-O)n-R1+nA-O-M+ (IX)
に従う反応によって製造されることが好ましい。
【0131】
Rf基は、第1の反応物物質及び第2の反応物質の反応に関して上で検討したものと同じであり、第2の反応物質はアミンである。さらに、R1及びnは、式(VIII)に関して上記で検討したものと同じであり、M+はアルコキシド又はフェノキシド中間体を生成するために使用される塩基に由来する対イオンである。
【0132】
好適なアルコール、ポリオール、フェノール及びポリフェノールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセロール、ブチレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸メチル及び5-ヒドロキシイソフタル酸ジメチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
R
fの好ましい構造は、式(I)に関して上述したものと同じである。式(IX)において、R
1は好ましくは以下の基:
【化27】
から選択される構造を有し、
nは1~約6である。
【0134】
上記反応は、Rfがアルコキシド酸素と結合を形成し、A-O-M+が副生成物として産生される求核置換を介して行われる。各当量のヒドロキシルに対するフッ素化されたメシレート、トシレート又はトリフレートのモル比は、好ましくは約0.1~約1、より好ましくは約0.5~約1である。反応混合物が反応温度で液体である場合、反応はバルクで行われることが好ましいが、必要に応じて、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド及びジメチルスルホキシド等の極性非プロトン溶媒を使用してもよく、この場合、反応混合物を約25℃~約100℃の温度で約3時間~約20時間撹拌する。得られる生成物の色を改善するため、上記反応を不活性雰囲気下で行ってもよい。
【0135】
本発明はさらに、フッ素化メシレート、フッ素化トシレート、及びフッ素化トリフレートから選択される第1の反応物質を、アミン若しくはポリアミン、又はアルコール、ポリオール、フェノール若しくはポリフェノールから選択される第2の反応物質とアルコキシド中間体又はフェノキシド中間体を介して反応させる方法により製造された官能化されたフッ素化モノマーを提供する。さらに、フッ素化メシレート、フッ素化トシレート、及びフッ素化トリフレートから選択される第1の反応物質と、アミン又はポリアミン;アルコール、ポリオール、フェノール又はポリフェノール、アルコキシド中間体又はフェノキシド中間体から選択される第2の反応物質とを含む、官能化されたフッ素化モノマーを製造するための組成物が提供される。
【0136】
本発明の別の実施形態では、本発明は、フッ素化されたアルキル又はアリールのハロゲン化物をアミン又はポリアミンと反応させてアミノ官能化フッ素化モノマーを形成することにより官能化されたフッ素化モノマーを製造する方法を提供する。フッ素化されたアルキル又はアリールのハロゲン化物は好ましくはフッ素化ヨウ化物であるが、他のフッ素化ハロゲン、例えばフッ素化臭化物が使用され得る。
【0137】
好ましい実施形態では、フッ素化ヨウ化物は、4-ヨード-1,1,1-トリフルオロブタン、6-ヨード-1,1,1,2,2-ペンタフルオロヘキサン、ヨウ化3-(パーフルオロブチル)プロピル、1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロ-7-ヨードヘプタン、及び1H,1H,2H,2H-ヘプタフルオロ-3,3-ビス(トリフルオロメチル)-1-ヨードヘキサンから選択される。さらに、アミンは第一級アミン又は第二級アミンであることが好ましい。
【0138】
適切なアミン及びポリアミンは、フッ素化されたメシレート、トシレート又はトリフレートとアミン又はポリアミンとの反応に関して上で検討したものと同じである。
【0139】
官能化されたフッ素化モノマーは、式(X)の代表的な反応によって製造されることが好ましい:
nRf-I+(NHR2)n-R1→(Rf-NR2)n-R1+nH-I (X)
【0140】
Rf基及びR1基は、式(VIII)及び式(IX)に関して上で検討したものと同じであり、R2及びnは、式(VIII)に関して述べたものと同じである。反応は求核置換を介して起こり、ヨウ素は脱離基であり、フッ素化ハロゲン化物の炭素鎖とアミンの窒素との間で結合が作られ、ハロゲン化水素(例えば、H-I)は副生成物として製造される。各当量のアミンに対するフッ素化ハロゲン化物のモル比は、好ましくは約0.1~約1、より好ましくは約0.5~約1である。
【0141】
式(X)において、R
fは好ましくは以下の1つによる構造を有する:
【化28】
(式中、nは0~約10であり、mは0~約10である)。R
1及びR
2の好ましい構造は、式(VIII)に関して述べたものと同じである。
【0142】
さらに、フッ素化されたハロゲン化アルキルをアミン又はポリアミンのいずれかと反応させることにより製造される官能化されたフッ素化モノマーが提供される。フッ素化されたハロゲン化アルキルと、アミン又はポリアミンのいずれかとを含む官能化されたフッ素化モノマーを製造するための組成物も提供される。
【0143】
本発明による別の実施形態では、本発明は、塩基触媒の存在下で、フッ素化アルコールを少なくとも1つの官能基を有するアルキル又はアリールのハロゲン化物分子と反応させて、エーテル結合と、アルキル又はアリールのハロゲン化物分子に由来する少なくとも1つの官能基とを有する官能化されたフッ素化モノマーを形成することによる、官能化されたフッ素化モノマーを製造する方法を提供する。ハロゲン化アルキルの場合、反応はSN2型の求核置換を介して起こる。SN2型の求核置換では、求核剤と基質の炭素中心との間に1つの結合が作られ、一方で脱離基と基質の炭素中心との間の結合が切断される。したがって、速度決定段階には2つの反応物が関与する。ハロゲン化アリールの場合、反応は芳香族求核置換を介して起こる。芳香族求核置換反応の実現可能性は、ニトロ基、シアノ基、及びトリフルオロメチル基等のハロゲン化アリールの芳香環上の電子吸引基の存在によって大幅に向上される。
【0144】
フッ素化アルコールは、好ましくは第一級アルコール又は第二級アルコールである。アルキル又はアリールのハロゲン化物分子は、好ましくは第一級ハロゲン化アルキル又は第二級ハロゲン化アルキルである。一実施形態では、ハロゲン化アルキル分子の少なくとも1つの官能基は、ヒドロキシル基、エポキシド、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アミン、チオール及びそれらの組み合わせの群から選択される。好適なハロゲン化アルキル又はハロゲン化アリールとしては、3-クロロ-1,2-プロパンジオール、2,2-ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジオール、エピクロロヒドリン、2,3-ジクロロコハク酸、4,5-ジクロロ-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、2,3-ジブロモ-1-プロパノール、及び5-ブロモ-2-クロロ安息香酸が挙げられるが、これらに限定されない。塩基触媒は好ましくは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシド、水素化物、又は水酸化物である。求核置換反応の徹底的な考察がSolomons, T.W.Graham, Fryhle, C.B., "Organic Chemistry," 10th Edition, 1984, John Wiley & Sons, Inc.,の230頁~267頁にあり、関連する部分は本明細書の一部をなす。
【0145】
この方法の好ましい実施形態では、反応は以下の反応式(XI)により起こる。
nRf-OH+(X)n-R1-(A)t+M+B-→(Rf-O)n-R1-(A)t+nM+X-+nH+B- (XI)
【0146】
式(XI)において、Xはハロゲン原子である。Rfは、1個~約18個の炭素原子を有する部分的又は完全にフッ素化された分岐又は非分岐の置換又は非置換のアルキル基である。Rfがアルキル基である場合、Rfは0個~約6個のエーテル結合を更に有してもよい。Rfがアルキル基であり、置換されている場合、Rfは、芳香族基、五フッ化硫黄基、ハロゲン、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。あるいは、Rfは、部分的又は完全にフッ素化された置換又は非置換のアリール基であってもよい。Rfがアリール基であり、置換されている場合、Rfは五フッ化硫黄基、ハロゲン原子、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。Aは、ハロゲン、ヒドロキシル、エポキシド、カルボン酸、カルボン酸塩、アミン、及びチオールから選択される官能基である。R1は、1個~約12個の炭素原子を有する飽和の分岐又は非分岐の置換又は非置換のアルキル基、環状アルキル基、又は複素環基であり、R1がアルキル基、環状アルキル基又は複素環基である場合、0個~6個のエーテル結合、エステル結合、又はアリール基を含む。さらに、M+は金属又はその他の陽イオンであり、B-は塩基であり、tは好ましくは1~4であり、nは好ましくは1~約6である。
【0147】
式(XI)において、R
fは好ましくは式(I)に関して述べた構造を有する。さらに、R
1は好ましくは以下の群から選択される構造を有する:
【化29】
【0148】
上記反応は、水酸化物、アルコキシド、又は水素化物イオン等の塩基Bの存在下で起こる。塩基はフッ素化アルコールのヒドロキシル基を脱プロトン化して、対応するアルコキシド中間体を生成する。アルコキシド酸素は、アルキル又はアリールのハロゲン化物の炭素中心と結合を形成し、ハロゲンXは脱離基としての役割を果たす。ハロゲンと塩基に由来する陽イオンとは、典型的には固形物として除去される、ハロゲン化物塩の副生成物を形成する。各当量のハロゲンXに対するフッ素化アルコール反応物質のモル比は、好ましくは約0.3~約1.5、より好ましくは約0.5~約1.1である。該反応により、エーテル結合を含み、ハロゲン化アルキルに由来する追加の官能基(functionality)Aを有する官能化されたフッ素化モノマーが得られる。
【0149】
本発明はさらに、少なくとも1つのフッ素化アルコールを、塩基触媒の存在下で、少なくとも1つの官能基を有するアルキル又はアリールのハロゲン化物分子と反応させる方法によって製造される、官能化されたフッ素化モノマーを提供する。さらに、官能化されたフッ素化モノマーを製造するための組成物であって、フッ素化アルコールと、少なくとも1つの官能基を有するアルキル又はアリールのハロゲン化物分子とを含む、組成物を提供する。
【0150】
本発明による別の実施形態では、本発明は、フッ素化アルコールを環状カルボン酸無水物と反応させて、カルボン酸基及びエステル結合を有する官能化されたフッ素化モノマーを形成することにより、官能化されたフッ素化モノマーを製造する方法に関する。各当量の無水物に対するフッ素化アルコールのモル比は、好ましくは約0.3~約1.5、より好ましくは約0.5~約1.1である。反応は、好ましくは少なくとも80℃の温度で起こる。この反応は、式(XII)による官能化されたフッ素化モノマーを生成し得る:
【化30】
【0151】
フッ素化アルコールは、環状カルボン酸環を破壊して、エステル結合及びカルボン酸基を形成する。フッ素化アルコールは、フッ素化アルコールとエポキシド含有化合物との反応に関して上で記載したアルコールのいずれかであってもよい。したがって、Rfは、式(I)に関して上述したものと同じである。式(XII)において、Rfの好ましい構造は、式(I)に関して述べたものと同じである。
【0152】
さらに、R
3は、2個~約18個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の分岐又は非分岐の置換又は非置換のアルキル基、環状アルキル基、アリール基、又は複素環基である。R
3が置換される場合、R
3としてはハロゲン、カルボン酸、カルボン酸無水物、又はそれらの組み合わせが挙げられる。R
3の好ましい構造としては、以下の構造:
【化31】
が挙げられ、
nは0~約10である。
【0153】
また、環状カルボン酸無水物は二無水物であってもよく、それにより2つのRf基を含む二置換ジカルボン酸モノマーが得られる。
【0154】
好適なカルボン酸無水物としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水アリルコハク酸、無水ブチルコハク酸、無水ドデシルコハク酸、無水オクタデシルコハク酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水4-メチルフタル酸、無水トリメリット酸、無水1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、無水4,4’-オキシジフタル酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、無水3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’-ビス-(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、無水イタコン酸、無水アコニット酸、無水4-クロロフタル酸、無水4-ブロモフタル酸、無水テトラクロロフタル酸、無水テトラブロモフタル酸、無水シトラコン酸、無水ヘキサヒドロ-4-メチルフタル酸及び無水クロレンド酸が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、カルボン酸無水物は、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水アコニット酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、ピロメリット酸二無水物、及び1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物から選択される。
【0155】
フッ素化アルコールと反応させる環状カルボン酸無水物は、その反応により生成される官能化されたフッ素化モノマーが炭素-炭素二重結合を含むように不飽和であってもよい。炭素-炭素二重結合は、エチレン性不飽和モノマーとのフリーラジカル共重合を介して反応し、含フッ素ポリマーを生成することが可能である。したがって、本発明は、フッ素化アルコールと不飽和環状カルボン酸無水物との反応により製造された不飽和フッ素化モノマー等の不飽和フッ素化モノマーを、フリーラジカル重合により重合させてフッ素化ポリマーを形成することにより、ポリマーを製造する方法を提供する。フリーラジカル重合によるポリマーの合成に使用される様々な方法の包括的な説明は、Odian, G., "Principles of Polymerization," 4th Edition, 2004, John Wiley & Sons, Inc.の198頁~371頁にあり、関連する部分が本明細書の一部をなす。
【0156】
本発明の不飽和フッ素化モノマーの炭素-炭素二重結合は、マイケル付加等の付加反応を経て、官能化されたフッ素化モノマーを鎖延長することもできる。マイケル付加は、求核性物質がα,β-不飽和カルボニル化合物、すなわち電子欠乏型炭素-炭素二重結合を有する化合物に付加される炭素-炭素結合を形成するために使用される共役付加反応の一種である。マイケル付加は多くの場合、塩基により触媒される。マイケル付加反応を行う前に、不飽和フッ素化モノマー上のカルボン酸基を、ブチルグリシジルエーテル等のエポキシドと反応させることにより、エステルに変換することがしばしば有利である。
【0157】
本発明はさらに、上に記載されるヒドロキシ官能性フッ素化モノマーを、環状カルボン酸無水物、環状エステル、環状カーボネート、又は環状エーテル等の環状反応物質と反応させることにより製造される鎖延長モノマーを含む。鎖延長反応は、ヒドロキシ官能性フッ素化モノマーの反応性及び/又は他の特性を改善するために有用な可能性がある。一般的には、鎖延長反応は、官能基の位置を変更しながら、又は官能基を別の官能基に変更しながら、官能化されたフッ素化モノマーの分子量を増加させる。一例では、鎖延長反応を使用して、第二級ヒドロキシル基を、より反応性の高い第一級ヒドロキシル基又はカルボン酸に変換することができる。別の例では、その後の反応で大きな損失を伴わずにより高温で使用できるようにするため、鎖延長反応を使用して所与のヒドロキシ官能性フッ素化モノマーの揮発性を低下させてもよい。更なる例では、鎖延長反応を使用して、柔軟性等のヒドロキシ官能性フッ素化モノマーの物理的特性を変更することができる。
【0158】
かかる一実施形態では、本発明は、ヒドロキシ官能性フッ素化モノマーを環状カルボン酸無水物と反応させることにより製造された官能化されたフッ素化鎖延長モノマーを提供する。かかる鎖延長モノマーは、カルボン酸官能基及びエステル結合を有する。さらに、ヒドロキシ官能性フッ素化モノマー及び環状カルボン酸無水物を含む、官能化されたフッ素化鎖延長モノマーを製造するための組成物が提供される。
【0159】
好適なカルボン酸無水物としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水アリルコハク酸、無水ブチルコハク酸、無水ドデシルコハク酸、無水オクタデシルコハク酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水4-メチルフタル酸、無水トリメリット酸、無水1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、無水イタコン酸、無水アコニット酸、無水4-クロロフタル酸、無水4-ブロモフタル酸、無水テトラクロロフタル酸、無水テトラブロモフタル酸、無水シトラコン酸、無水ヘキサヒドロ-4-メチルフタル酸及び無水クロレンド酸が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、カルボン酸無水物は、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水アコニット酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸及び無水1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸から選択される。
【0160】
別のかかる実施形態では、本発明は、ヒドロキシ官能性フッ素化モノマーを環状エステルと反応させることにより製造される官能化されたフッ素化鎖延長モノマーを提供する。かかる鎖延長モノマーは、ヒドロキシル官能基及びエステル結合を有する。さらに、ヒドロキシ官能性フッ素化モノマー及び環状エステルを含む、官能化されたフッ素化鎖延長モノマーを製造するための組成物が提供される。
【0161】
上記反応は、β-プロピオラクトン、δ-バレロラクトン、α-メチル-δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、α-メチル-ε-カプロラクトン、L-ラクチド、D,L-ラクチド、及びグリコリドを含むがこれらに限定されない様々な環状エステルのいずれかを使用して起こり得る。環状エステルは、ε-カプロラクトン、L-ラクチド、D,L-ラクチド、又はグリコリドであることが好ましい。環状エステルがε-カプロラクトンであることが最も好ましい。
【0162】
別のかかる実施形態では、本発明は、ヒドロキシ官能性フッ素化モノマーを環状カーボネートと反応させることにより製造された官能化されたフッ素化鎖延長モノマーを含む。かかる鎖延長モノマーは、ヒドロキシル官能基及びカーボネート結合を有する。さらに、ヒドロキシル官能性フッ素化モノマー及び環状カーボネートを含む、官能化されたフッ素化鎖延長モノマーを形成するための組成物が含まれる。
【0163】
上記反応は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びトリメチレンカーボネートを含むがこれらに限定されない様々な環状カーボネートのいずれかを使用することで起こり得る。環状カーボネートはトリメチレンカーボネートであることが好ましい。
【0164】
別の実施形態では、本発明は、ヒドロキシル官能性フッ素化モノマーを環状エーテルと反応させることにより形成された官能化されたフッ素化鎖延長モノマーを含む。かかる鎖延長モノマーは、ヒドロキシル官能基及びエーテル結合を有する。さらに、ヒドロキシ官能性フッ素化モノマー及び環状エーテルを含む、官能化されたフッ素化鎖延長モノマーを製造するための組成物が提供される。
【0165】
エチレンオキシド、プロピレンオキシド、グリシドール、1,2-エポキシシクロヘキサン、2,3-エポキシ-5-メチルヘキサン、エピクロロヒドリン、ブテンオキシド、スチレンオキシド、シクロペンテンオキシド、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、トリメチレンオキシド、3,3-ジメチルオキセタン及びテトラヒドロフランを含むが、これらに限定されない任意の様々な環状エーテルが使用され得る。好ましくは、環状エーテルは、プロピレンオキシド、グリシドール、エピクロロヒドリン、ブチルグリシジルエーテル、及び2-エチルヘキシルグリシジルエーテルから選択される。
【0166】
フッ素化モノマーと環状反応物質の多くの組み合わせが可能であり、このクラスの反応の代表例としての役割を果たす以下の反応を含む開示に基づいて、当業者に理解され得る。一例では、官能化されたフッ素化モノマーは含フッ素ジオールであり、2当量の環状カルボン酸無水物と反応して、下記式に示すように、対応するジカルボン酸を形成する:
【化32】
【0167】
この反応では、フッ素化ジオールは、フッ素化ジオール対環状酸無水物の1:2のモル比で環状酸無水物と反応し、Rfはフッ素化されたアルキル又はアリール基であり、R’及びR’’は水素、アルキル基、アリール基であり、又は互いに結合して脂肪族環、芳香環若しくは複素環を形成する。各環状無水物は、開環によりフッ素化ジオールのヒドロキシル基と反応してエステル結合を形成し、フッ素化ジカルボン酸である鎖延長フッ素化モノマーが得られる。したがって、フッ素化ジオールは、鎖延長反応により修飾されて、フッ素化ジカルボン酸を形成する。
【0168】
反応混合物が反応温度で液体である場合、官能化されたフッ素化モノマーと環状カルボン酸無水物との反応はバルクで起こることが好ましいが、必要に応じて、非プロトン溶媒を使用してもよく、反応混合物を撹拌下で約3時間~約20時間、約100℃~約150℃の温度まで加熱し、その時点で反応混合物を室温まで冷却する。得られる生成物の黄変等の酸化的変色を防ぐため、上記反応を不活性雰囲気下で行ってもよい。加えて、触媒は必要ではないが、ブチルクロロスズジヒドロキシド等の触媒を使用して反応を促進してもよい。
【0169】
フッ素化モノマーと環状反応物との鎖延長反応の別の例では、下記反応式に示すように、第二級ヒドロキシル基を有する含フッ素ジオールを環状エステルと反応させて、第一級ヒドロキシル基を有するフッ素化ジオールを形成する:
【化33】
【0170】
この反応では、フッ素化モノマーはフッ素化ジオールであり、2当量の環状エステルであるε-カプロラクトンと反応される。環状エステルは、ジオールのヒドロキシル基による開環反応を経て、それとエステル結合を形成する。得られたモノマーは、エステル結合及び第一級ヒドロキシル基を含み、これらは反応物質であるフッ素化ジオールの第二級ヒドロキシル基よりも反応性が高い。ε-カプロラクトンの1当量超が所与のヒドロキシル基に付加する可能性があり、その場合、得られる生成物は、分子量がわずかに異なるフッ素化ジオールの分布である。
【0171】
反応混合物が反応温度で液体である場合、この反応はバルクで起こることが好ましいが、必要に応じて、非プロトン溶媒を使用してもよい。反応混合物を、不活性雰囲気下で約3時間~約20時間、約120℃~約180℃の温度に撹拌しながら加熱し、この時点で、反応混合物を室温まで冷却する。ブチルスズトリス-2-エチルヘキサノエート等の触媒を使用して、反応を促進する。
【0172】
フッ素化モノマーと環状反応物質との鎖延長反応の別の例では、下記反応式に示すように、第二級ヒドロキシル基を有する含フッ素ジオールを環状エーテルと反応させて、プロポキシ化フッ素化ジオールを形成する:
【化34】
【0173】
この反応では、フッ素化モノマーはフッ素化ジオールであり、2当量の環状エーテルであるプロピレンオキシドと反応される。環状エーテルは、ジオールのヒドロキシル基による開環反応を経て、それとエーテル結合を形成する。得られた鎖延長モノマーは、エーテル結合及び第二級ヒドロキシル基を含む。1当量超のプロピレンオキシドが所与のヒドロキシル基に付加する可能性があり、その場合、得られる生成物は、分子量がわずかに異なるフッ素化ジオールの分布である。
【0174】
好ましくは、フッ素化モノマーと環状エーテルとの反応は、反応混合物が反応温度で液体であれば、バルクで起こる。この例では、ヒドロキシ官能性フッ素化ジオールは、水酸化カリウム等の塩基触媒の存在下において、圧力容器内の不活性雰囲気下で撹拌しながら約80℃~約120℃の温度に加熱される。次いで、プロピレンオキシドチャージ(propylene oxide charge)を反応器に徐々に供給し、約1時間~約4時間かけて圧力を約20psig~約30psigに維持し、その後、反応混合物を室温まで冷却する。
【0175】
これらの鎖延長反応の例から、本発明と一致して容易に明らかな種々のフッ素化モノマー及び環状反応物質を使用し、他の様々な類似の鎖延長反応が起こり得ることがわかる。
【0176】
本発明はさらに、本明細書に記載される方法のいずれかによって製造された少なくとも1つのヒドロキシル基を有する官能化されたフッ素化モノマーをポリマー化及び/又はオリゴマー化してフッ素化ポリマーを形成することにより製造されたポリマー及び/又はオリゴマーを含む。これらのヒドロキシ官能性フッ素化モノマー及びそれらの対応するヒドロキシ官能性鎖延長類縁体の生産に有用な様々なオリゴマー及びポリマーの例としては、とりわけ、フッ素を含有するポリエステル、ポリエーテル、及びポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0177】
本発明の含フッ素ポリエステルポリオールは、縮合重合により合成され得る。本発明のこの態様では、前述の本発明のヒドロキシ官能性、ヒドロキシ官能性鎖延長、カルボン酸官能性、又はカルボン酸官能性鎖延長のフッ素化モノマーのいずれかを使用してもよい。一般的には、フッ素化モノマー又は鎖延長フッ素化モノマーは、1つ以上のポリカルボン酸及び/又は環状カルボン酸無水物と1つ以上のポリオールとの混合物と共に、不活性雰囲気下、触媒の存在下で撹拌しながら約160℃~約250℃の温度に加熱される。反応の揮発性の副生成物(この場合は水)が除去され、所望の程度の反応が達成されるまで回収される。
【0178】
縮合重合反応で使用するのに適したポリカルボン酸及びポリカルボン酸無水物としては、限定されないが、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、及び無水トリメリット酸が挙げられる。さらに、ポリカルボン酸の対応するメチルエステルが置換されてもよく、その場合、重合反応はエステル交換を介して進行し、揮発性の副生成物はメタノールである。単官能性カルボン酸及びそれらのメチルエステル、例えば安息香酸、並びに飽和及び不飽和の脂肪酸及びそれらのエステルも含まれ得る。
【0179】
縮合重合反応のために好適なポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセロール、ブチレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジトリメチロールプロパン、及びペンタエリトリトールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0180】
また、本発明の含フッ素ポリエステルポリオール及びフッ素化ポリカーボネートポリオールは、環状エステル又は環状カーボネートの開環重合により、本発明のヒドロキシ官能性フッ素化モノマー及びそれらのヒドロキシ官能性鎖延長類縁体からも合成され得る。このプロセスは、本発明のヒドロキシ官能性含フッ素モノマーの鎖延長反応に関する上記のものと実質的に同じであり、フッ素化モノマーに対する環状エステル又は環状カーボネートの比のみが異なり、例えば、フッ素化モノマーに対する環状エステル又は環状カーボネートの比が高くなると、得られるポリエステルポリオール又はポリカーボネートポリオールの分子量も高くなる。
【0181】
1つ以上のヒドロキシル基を有する官能化されたフッ素化モノマーを、開環重合により環状エーテルと反応させてポリエーテルポリオールを形成することもできる。上に記載される環状エステルの開環重合の場合のように、得られるポリエーテルポリオールの分子量は、フッ素化モノマーに対する環状エーテルの比が増加するにつれて増加する。重合は、選択された開始剤及び条件に応じて、陰イオン又は陽イオンの機構を介して進行し得る。環状のエーテル及びエステルの開環重合の詳細な記載は、Odian, G., "Principles of Polymerization," 4th Edition, 2004, John Wiley & Sons, Inc.の544頁~618頁に見られ、関連する部分が本明細書の一部をなす。
【0182】
本発明の含フッ素ポリカーボネートポリオールは、いくつかの方法のいずれかによる縮合重合により合成され得る。一般的には、合成は、ホスゲン又は様々なジアルキルカーボネートのいずれかがポリカルボン酸及び/又は環状カルボン酸無水物の代わりに使用されることを除いて、上記の本発明の含フッ素ポリエステルポリオールの合成に類似している。ビスフェノール、及びホスゲン又はジフェニルカーボネートのいずれかからの芳香族ポリカーボネートの合成、並びにその他の方法の詳細な記載は、Brunelle, D.J., Korn, M.A., Editors, "Advances in Polycarbonates," 2005, ACS Symposium Seriesの8頁~21頁に見られる。ジアルキルカーボネートのエステル交換反応を含む様々な方法を使用する脂肪族ポリカーボネートの合成の総説がJ. Appl.Polym.Sci.2014 March 5; 131(5)にある。これらの文献は各々、関連する部分が本明細書の一部をなす。
【0183】
本発明のフッ素を含有するポリエステル、ポリエーテル、及びポリカーボネートポリオールは、落書き抵抗性、汚れ抵抗性、自己浄化能力、硬度及び透明性等の表面特性が改善されたコーティングを製造するために使用され得る。含フッ素ポリオール上のヒドロキシル基は、例えば、それらをイソシアネート及びアミノ樹脂と反応させることにより、かかるコーティングを硬化させるために使用され得る。かかる用途のコーティング製剤におけるポリオールの使用は、当技術分野で良く知られている。かかるポリオール含有コーティングの化学及び配合の詳細な説明がMueller, B., Ulrich, P., "Coatings Formulation: An International Textbook," 2nd Revised Edition, 2011, Hanover: Vincentz Network,の98頁~159頁、196頁~230頁、及び235頁~241頁にあり、関連する部分が本明細書の一部をなす。
【0184】
本発明の含フッ素ポリオールはまた、エチレン性不飽和モノマーとの共重合等の別の機構による架橋のために不飽和を含んでもよい。
【0185】
本発明の別の実施形態では、本発明は、不飽和フッ素化モノマーをポリアミンと反応させてポリアミノ官能化フッ素化モノマーを形成することによりポリアミノ官能性フッ素化モノマーを製造する方法を提供する。
【0186】
不飽和フッ素化モノマーは、本明細書に記載される方法によって製造されてもよく、又はいくつかの商業的に入手可能な不飽和フッ素化モノマーのいずれかであってもよい。好適な商業的に入手可能な不飽和フッ素化モノマーとしては、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロピルアクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロピルメタクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブチルアクリレート、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブチルメタクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロ-1-オクチルアクリレート又は3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロ-1-オクチルメタクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、不飽和フッ素化モノマーは、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート又は3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロ-1-オクチルメタクリレートである。
【0187】
好適なポリアミンとしては、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、2,5-ジアミノ-2,5-ジメチルヘキサン、2,2,4-及び/又は2,4,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、2,4’-及び/又は4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,4-及び/又は2,6-ヘキサヒドロトルエンジアミン、2,4及び/又は2,6-ジアミノトルエン、2,4’及び/又は4,4’-ジアミノジフェニルメタン及びポリエーテルポリアミンが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、ポリアミンは、1,6-ジアミノヘキサン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン及び3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンから選択される。
【0188】
不飽和フッ素化モノマーとポリアミンとの反応は、マイケル付加反応を介して起こり、ここでは、不飽和フッ素化モノマーの炭素-炭素二重結合が炭素-炭素単結合となって、新たな炭素-窒素結合がモノマーの炭素とポリアミンの窒素との間に作られる。したがって、該反応は、ポリアミノ官能性フッ素化モノマーを提供する。得られたアミン基を有するフッ素化モノマーは、コーティング用途のポリアスパラギン酸エステルシステムに有用である。
【0189】
様々な不飽和フッ素化モノマーを多くのジアミン又はポリアミンと反応させることができるが、下記反応は代表例としての役割を果たす。
【化35】
【0190】
上記の反応では、不飽和フッ素化モノマーは、2:1のモル比でジアミンと反応する。ジアミンのアミン基はそれぞれ、マイケル付加によりフッ素化モノマーの不飽和炭素-炭素二重結合と反応して、ジアミノ官能基を有する鎖延長フッ素化モノマーを形成する。反応混合物を加熱して、約2時間~約6時間、約40℃~約80℃の範囲の温度を維持することが好ましい。
【0191】
本発明はさらに、本明細書に記載される鎖延長方法により製造された官能化されたフッ素化鎖延長モノマーを提供する。かかるモノマーとしては、本明細書に記載される方法により製造された官能化されたフッ素化モノマーを環状反応物質と反応させることにより製造された、官能化されたフッ素化鎖延長モノマーが挙げられる。かかる鎖延長モノマーは、反応で使用されるフッ素化モノマー及び環状反応物質に応じて様々な官能基を有し得る。さらに、官能化されたフッ素化鎖延長モノマーとしては、不飽和フッ素化モノマーをポリアミンと反応させる方法により製造されたポリアミノ官能性フッ素化モノマーが挙げられる。これらの官能化されたフッ素化鎖延長モノマーは、ポリアミン官能基を含む。
【0192】
また、官能化されたフッ素化モノマー及び環状反応物質を含む、官能化されたフッ素化鎖延長モノマーを製造するための組成物も提供される。環状反応物質は、環状エーテル、環状エステル、又は環状カルボン酸無水物のいずれであってもよい。
【0193】
本発明はさらに、不飽和フッ素化モノマー及びポリアミンを含むポリアミノ官能性フッ素化モノマーを製造するための組成物を提供する。本発明のポリアミノ官能性フッ素化モノマーは、ポリイソシアネートと縮合重合により反応してフッ素化ポリウレアを形成することができる。さらに、本発明のポリアミノ官能性フッ素化モノマーは、ポリイソシアネートによって硬化してフッ素化ポリウレアコーティングを形成することができる組成物において、従来のポリアスパラギン酸エステルと組み合わせて使用され得る。ポリアスパラギン酸エステル系ポリウレアコーティングの化学の概説がJPCL; 2002 August; 42-47にあり、関連する部分が本明細書の一部をなす。
【0194】
本発明の別の実施形態では、前述のようにヒドロキシル基、カルボン酸基、アミノ基、エポキシド基、及びカルボン酸無水物基等を含むがこれらに限定されない反応性官能基を含む本発明の官能化されたフッ素化モノマーを使用して、末端基形態で存在する官能基又はポリマー骨格上に存在する官能基との反応を介して、既存のポリマー又はオリゴマーを修飾することができる。
【0195】
ヒドロキシル基を含む本発明の官能化されたフッ素化モノマーを、とりわけ既存のポリマー又はオリゴマーに存在するカルボン酸基、環状カルボン酸無水物及びイソシアネート基と反応させることができる。好ましい実施形態では、とりわけ無水マレイン酸とスチレン、メチルメタクリレート、ブタジエン又はエチレンとのフリーラジカル重合コポリマー等の無水マレイン酸に由来する環状無水物基を含む既存のポリマーを、該環状無水物を本発明のヒドロキシ官能性フッ素化モノマーと反応させることにより、修飾することができる。別の好ましい実施形態では、例えばヘキサメチレンジイソシアネートの三量体等の既存のポリマー及びオリゴマーのポリイソシアネートを、該イソシアネートを本発明のヒドロキシ官能性フッ素化モノマーと反応させることにより修飾することができる。
【0196】
カルボン酸基を含む本発明の官能化されたフッ素化モノマーを、とりわけ、既存のポリマー又はオリゴマーに存在するヒドロキシル基及びエポキシド基と反応させることができる。好ましい実施形態では、例えばグリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートを含むコポリマー等のペンダントエポキシド基を含むポリマーを、該エポキシド基を本発明のカルボン酸官能性フッ素化モノマーと反応させることにより修飾することができる。別の好ましい実施形態では、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのポリマー及びオリゴマー等のポリマー及びオリゴマーのエポキシ樹脂を、エポキシドを本発明のカルボン酸官能性フッ素化モノマーと反応させることにより修飾することができる。
【0197】
アミノ基を含む本発明の官能化されたフッ素化モノマーを、とりわけ既存のポリマー又はオリゴマーに存在するエポキシド、環状カルボン酸無水物及びイソシアネート基と反応させることができる。好ましい実施形態では、とりわけ無水マレイン酸とスチレン、メチルメタクリレート、ブタジエン又はエチレンとのフリーラジカル重合コポリマー等の無水マレイン酸に由来する環状無水物基を含む既存のポリマーを、該環状無水物を本発明のアミノ官能性フッ素化モノマーと反応させることにより、修飾することができる。別の好ましい実施形態では、例えばヘキサメチレンジイソシアネートの三量体等の既存のポリマー及びオリゴマーのポリイソシアネートを、該イソシアネートを本発明のアミノ官能性フッ素化モノマーと反応させることにより修飾することができる。第3の好ましい実施形態では、例えばグリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートのコポリマー等のペンダントエポキシド基を含むポリマーを、該エポキシド基を本発明のアミノ官能性フッ素化モノマーと反応させることにより修飾することができる。第4の好ましい実施形態では、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのポリマー及びオリゴマー等のポリマー及びオリゴマーのエポキシ樹脂を、エポキシドを本発明のアミノ官能性フッ素化モノマーと反応させることにより修飾することができる。
【0198】
エポキシド基を含む本発明の官能化されたフッ素化モノマーを、とりわけ、既存のポリマー又はオリゴマーに存在するヒドロキシル基、アミノ基及びカルボン酸基と反応させることができる。好ましい実施形態では、例えば、アクリル酸又はメタクリル酸を含むポリマー及びコポリマー等のペンダントカルボン酸基を含むポリマーを、該カルボン酸を本発明のエポキシ官能性フッ素化モノマーと反応させることにより修飾することができる。別の好ましい実施形態では、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等のカルボン酸末端基を有するポリエステルを、該カルボン酸末端基を本発明のエポキシ官能性フッ素化モノマーと反応させることにより修飾することができる。第3の好ましい実施形態では、例えば、ナイロン6,6等のアミノ末端基及びカルボン酸末端基を有するポリアミドを、該アミノ末端基及びカルボン酸末端基を本発明のエポキシ官能性フッ素化モノマーと反応させることにより修飾することができる。特に好ましい実施形態では、ポリアミド末端基又はポリエステル末端基と本発明のエポキシ官能性フッ素化モノマーとの間の反応は、反応性押出プロセスによって起こり、それにより、改質されるポリマー及びエポキシ官能性フッ素化モノマーを含む組成物が押出機に供給され、その中にて溶融状態で反応が起こり、改質されたポリマー生成物が押出機を出る。
【0199】
カルボン酸無水物基を含む本発明の官能化されたフッ素化モノマーを、とりわけ、既存のポリマー又はオリゴマーに存在するヒドロキシル基及びアミノ基と反応させることができる。好ましい実施形態では、例えばポリビニルアルコール等のペンダントヒドロキシル基を含むポリマーを、該ヒドロキシル基を本発明のカルボン酸無水物官能性フッ素化モノマーと反応させることにより修飾することができる。別の好ましい実施形態では、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のヒドロキシル末端基を有するポリエステルを、ヒドロキシル末端基を本発明のカルボン酸無水物官能性フッ素化モノマーと反応させることにより修飾することができる。第3の好ましい実施形態では、例えば、ナイロン6,6等のアミノ末端基を有するポリアミドを、アミノ末端基を本発明のカルボン酸無水物官能性フッ素化モノマーと反応させることにより修飾することができる。特に好ましい実施形態では、ポリアミド末端基又はポリエステル末端基と本発明のカルボン酸無水物官能性フッ素化モノマーとの間の反応は、反応性押出プロセスによって行われ、それにより、改質されるポリマー及びカルボン酸無水物官能性フッ素化モノマーを含む組成物が押出機に供給され、その中にて溶融状態で反応が起こり、改質されたポリマー生成物が押出機を出る。
【0200】
ここで、以下の非限定的な実施例に関して本発明を説明する。
【実施例】
【0201】
実施例1
フッ素化アルコール及びエポキシドの反応
500ml容の4つ口フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、還流コンデンサー、及びPTFE栓を取り付けた。フラスコに2,2,2-トリフルオロエタノール100.3グラム及びシクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(Air Products, Inc.から入手可能なEpodil(商標)757)147.7グラムを投入した。40%水酸化カリウム水溶液6.3111グラム部分を撹拌しながら反応混合物に滴加した。反応混合物を徐々に80℃に加熱し、温度を合計16時間に亘って80℃~90℃の範囲に維持した。室温に冷却した後、粗生成物の219.2グラム部分を濾過して固形物を除去し、所望の2,2,2-トリフルオロエトキシ置換脂環式ポリオール生成物を含む淡黄色の透明液体生成物213.6グラムを得た。エポキシド基の完全な変換を、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)を使用して確認した。その後の分析は、生成物に94.23%の不揮発性物質が含まれていることを示した。
【0202】
実施例2
フッ素化アルコール及びエポキシドの反応
500ml容の4つ口フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、還流コンデンサー、及びPTFE栓を取り付けた。フラスコに2,2,2-トリフルオロエタノール99.0グラム及びシクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(Air Products, Inc.から入手可能なEpodil(商標)757)145.5グラムを投入した。22.3%水酸化カリウムのメタノール溶液5.4545グラム部分を撹拌しながら反応混合物に滴加した。反応混合物を徐々に80℃に加熱し、温度を80℃~85℃の範囲に維持した。21時間後、エポキシド基の完全な変換をFTIRにより確認した。ディーン-スタークトラップ及び窒素散布チューブを追加した。未反応の2,2,2-トリフルオロエタノール及びメタノールを蒸留により除去した(3.8グラム)。室温に冷却した後、粗生成物の一部を濾過して固形物を除去し、所望の2,2,2-トリフルオロエトキシ置換脂環式ポリオール生成物を含む淡黄色の透明液体生成物130.4グラムを得た。生成物の分析は、ヒドロキシル価257.1(mg KOH/g)及び塩基価0.0(mg KOH/g)を示し、濾過による水酸化カリウムの完全な除去を確認した。残りの93.8グラムの粗生成物を酢酸n-ブチル23.5グラムで希釈し、濾過して固形物を除去し、およそ80%の所望の2,2,2-トリフルオロエトキシ置換脂環式ポリオール生成物を含む溶液113.3グラムを得た。
【0203】
実施例3
フッ素化アルコール及びエポキシドの反応
500ml容の4つ口フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、還流コンデンサー、及びPTFE栓を取り付けた。フラスコに2,2,2-トリフルオロエタノール141.8グラム及びシクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(Air Products, Inc.から入手可能なEpodil(商標)757)207.7グラムを投入した。22.3%水酸化カリウムのメタノール溶液8.1015グラム部分を撹拌しながら反応混合物に滴加した。反応混合物を徐々に80℃に加熱し、温度を80℃~85℃の範囲に維持した。21時間後、エポキシド基の完全な変換をFTIRで確認し、反応混合物を冷却した。未反応の2,2,2-トリフルオロエタノール及びメタノールをロータリーエバポレーターにより除去し(10.2グラム)、粗生成物330.5グラムを得た。粗生成物を酢酸n-ブチル82.6グラムで希釈し、真空濾過を使用して固形物を除去した。濾過された生成物の塩基価の分析(0.0mg KOH/g)は、濾過による水酸化カリウムの完全な除去を確認した。この合成により、所望の2,2,2-トリフルオロエトキシ置換脂環式ポリオールを含む淡黄色の透明な生成物溶液330.4グラムを得た。生成物溶液の分析は、89.97%の不揮発性物質が含まれていることを示した。
【0204】
実施例4
フッ素化アルコール及びエポキシドの反応
500ml容の4つ口フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、還流コンデンサー、及びPTFE栓を取り付けた。フラスコに、4-ヒドロキシフェニル硫黄ペンタフルオリド32.8グラム、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(Air Products, Inc.から入手可能なEpodil(商標)757)24.2グラム、及びメチルエチルケトン(MEK)57.0グラムを投入した。22.3%水酸化カリウムのメタノール溶液2.5043グラム部分を、撹拌しながら反応混合物に滴加した。反応混合物を徐々に80℃に加熱し、温度を80℃~85℃の範囲に維持した。17時間後、エポキシド基の完全な変換をFTIRで確認し、反応混合物を冷却した。サンプル6.2グラムを除去した後、残りの粗生成物中の残留水酸化カリウムを、37%塩酸1.2グラムを滴加することで中和した。得られた中和生成物溶液を濾過して、固形物(0.7グラム)を除去した。追加のMEK12.3グラムを使用して、生成物を反応フラスコからフィルターに移し、濾過ケーキを洗浄した。上記合成により、所望の4-ペンタフルオロ硫黄フェノキシ置換脂環式ポリオールを含む淡黄色の透明な生成物溶液112.5グラムを得た。生成物溶液の分析は、該生成物溶液が40.91%の不揮発性物質を含むことを示した。
【0205】
実施例5
フッ素化アルコール及びエポキシドの反応
500ml容の4つ口フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、還流コンデンサー、及びPTFE栓を取り付けた。フラスコにペンタエリトリトールテトラグリシジルエーテル(Emerald Performance Materials, Inc.から入手可能なエリシス(商標)GE-40)153.9グラム及び2,2,2-トリフルオロエタノール46.2グラム(0.5当量)を投入した。22.3%水酸化カリウムのメタノール溶液の4.7691グラム部分を撹拌しながら反応混合物に滴加した。反応混合物を徐々に80℃に加熱し、温度を80℃~85℃の範囲に維持した。4時間後、FTIRによる分析で2,2,2-トリフルオロエタノールが完全に消費され、エポキシド基の59.8%がエーテル結合に変換されたことを確認し、その後、反応混合物を冷却した。粗生成物をMEKで希釈し、真空濾過を使用して固形物を除去した。反応フラスコから生成物を洗い流し、フィルターケーキをすすぐために使用した量を含めて合計67.3グラムのMEKを添加した。得られた240.5グラムの透明な淡黄色の生成物溶液をロータリーエバポレーターによりストリッピングしてMEK及びメタノールを除去した。上記合成により、所望の2,2,2-トリフルオロエトキシ置換エポキシ官能性ポリオール生成物を含む粘稠な淡黄色の透明な液体196.7グラムを得た。最終生成物の塩基価の分析(0.0mg KOH/g)は、濾過による水酸化カリウムの完全な除去を確認した。生成物のエポキシ当量の計算値は、540.5グラム/当量であった。
【0206】
実施例6
フッ素化モノマーと環状エステルとの反応
500ml容の4つ口フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、還流コンデンサー、及びPTFE栓を取り付けた。フラスコに、実施例2による希釈されていない生成物100.0グラム及びε-カプロラクトン52.4グラムを投入した。反応混合物を撹拌しながら153℃に加熱し、ブチルスズトリス-2-エチルヘキサノエート0.0816グラムを滴加した。反応混合物を加熱して、温度を160℃~165℃の範囲に維持した。16.5時間後、反応混合物を冷却して、所望の鎖延長2,2,2-トリフルオロエトキシ置換脂環式ポリオール生成物を含む淡黄色の透明な液体147.4グラムを得た。
【0207】
実施例7
フッ素化モノマー及び環状無水物の反応
500ml容の4つ口フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、還流コンデンサー、及びPTFE栓を取り付けた。フラスコに、実施例3による90%生成物の酢酸n-ブチル溶液100.0グラム及びヘキサヒドロ無水フタル酸61.5グラムを投入した。反応混合物を加熱し、150℃までの発熱が収まった後、撹拌しながら温度を120℃~125℃の範囲に維持した。3.3時間後、反応混合物を冷却して、所望の鎖延長2,2,2-トリフルオロエトキシ置換脂環式ポリオール生成物を含む粘稠な淡黄色の透明な液体151.6グラムを得た。メタノリシス及び加水分解の酸価の比較は、無水物部分の所望のフッ素化アルコール由来エステルへの98.1%の変換を示した。
【0208】
実施例8
フッ素化モノマー及び環状無水物の反応
500ml容の4つ口フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、還流コンデンサー、及び窒素散布チューブを取り付けた。フラスコに、実施例4による41%生成物のMEK溶液100.0グラム、ヘキサヒドロ無水フタル酸21.3グラム、及びブチルクロロスズジヒドロキシド0.0971グラムを投入した。5.0グラム部分のMEKを使用して、充填漏斗から反応フラスコへと残留反応物を洗浄した。反応混合物を加熱し、穏やかな発熱が収まった後、撹拌しながら温度を80℃~85℃の範囲に維持した。17時間後、反応混合物を冷却して、所望の鎖延長4-ペンタフルオロ硫黄フェノキシ置換脂環式ポリオール生成物を含む淡黄色の透明な液体124.4グラムを得た。メタノリシス及び加水分解の酸価の比較は、無水物部分の所望のフッ素化アルコール由来エステルへの96.6%の変換を示した。
【0209】
実施例9
フッ素化モノマーの重合
4つ口のヘッドを備えた4000ml容の反応フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、窒素散布チューブ、ビグリュー(Vigreux)カラム、コンデンサー、及びレシーバーを取り付けた。反応フラスコに、ヘキサヒドロ無水フタル酸949.8グラム、トリメチロールプロパン1577.1グラム、無水フタル酸608.4グラム、実施例7による生成物119.4グラム、及びブチルスタンノン酸(butylstannoic acid)1.5882グラムを投入した。反応混合物を、窒素散布及び撹拌しながら、3.75時間の間210℃の温度まで徐々に加熱した。更に17.25時間撹拌しながら温度を210℃~215℃の範囲に維持し、その時点でビグリューカラムを取り外し、予想される量の総凝縮液を収集するまで、更に7時間反応を続けた。反応混合物を140℃に冷却し、得られたポリエステル樹脂を、撹拌しながらプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1442.8グラムを徐々に添加することにより希釈した。該反応により、淡色の透明な液体の形態でポリエステルポリオール生成物溶液4323.4グラムを得た。ポリエステル溶液を分析したところ、ヒドロキシル価は165.6(mg KOH/g)、酸価は2.60(mg KOH/g)、不揮発性物質は69.96%、ガードナー-ホルト粘度は417秒でZ6+、密度は1ガロン当たり9.45ポンド、及びガードナー色数は1未満であるとわかった。希釈されていないポリエステル樹脂の推定されるフッ素含有量は0.5%であった。
【0210】
実施例10
フッ素化モノマーの重合
500ml容の4つ口反応フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、窒素散布チューブ、及び還流コンデンサーを取り付けた。反応フラスコに、ヘキサヒドロ無水フタル酸96.2グラム及び実施例8による生成物16.2グラムを投入した。反応混合物を加熱し、撹拌しながら温度を80℃~85℃の範囲に維持した。2時間後、トリメチロールプロパン160.7グラム、無水フタル酸61.5グラム、及びブチルスタンノン酸0.1638グラムを投入し、ディーン-スタークトラップ及び断熱物質を添加した。反応混合物を、窒素散布及び撹拌しながら、3.75時間の間210℃の温度まで徐々に加熱した。予想される量の総凝縮液を収集するまで更に22.5時間撹拌しながら温度を210℃~215℃の範囲に維持した。反応混合物を140℃に冷却し、得られたポリエステル樹脂を、撹拌しながらプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート141.2グラムを徐々に添加することにより希釈した。該反応により、淡色の透明な液体の形態でポリエステルポリオール生成物溶液423.9グラムを得た。ポリエステルポリオール生成物溶液を分析したところ、ヒドロキシル価は175.9(mg KOH/g)、酸価は2.74(mg KOH/g)、不揮発性物質は69.90%、ガードナー-ホルト粘度は338秒でZ6+、密度は1ガロン当たり9.45ポンド、及びガードナー色数は1未満であるとわかった。希釈されていないポリエステル樹脂の推定されるフッ素含有量は0.5%であった。
【0211】
実施例11
フッ素化モノマーの重合
2000ml容の5つ口反応フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、窒素散布チューブ、ビグリューカラム、コンデンサー、及びレシーバーを取り付けた。反応フラスコに、2-メチル-1,3-プロパンジオール800.7グラム、炭酸ジメチル931.5グラム、1.0N KOHのメタノール溶液2.9グラム、及び実施例3の生成物24.2グラムを、ロータリーエバポレーターで酢酸n-ブチルを除去した後に投入した。反応混合物を、窒素散布及び撹拌しながら80℃~85℃の温度まで徐々に加熱し、16時間保持した。その後、温度を10度ずつ上げ、各温度で、カラムの上部の温度が60℃を下回るまで保持し、更に8.75時間後、170℃~175℃の範囲の最終温度に達するまで保持した。メタノール及び炭酸ジメチルからなる凝縮液を連続的に収集し、屈折計で分析して凝縮液のメタノール含有量を決定した。予想された量のメタノールを収集した後、反応混合物を40℃に冷却し、得られたポリカーボネート樹脂を分離し、淡色の透明な液体の形態で1016.4グラムの生成物を得た。ポリカーボネート生成物を分析したところ、ヒドロキシル価は284.6(mg KOH/g)、酸価は0.12(mg KOH/g)、ブルックフィールド粘度は25℃で2000センチポアズ、密度は1ガロン当たり9.66ポンド、及びガードナー色数は1未満であるとわかった。ポリカーボネート樹脂の推定されるフッ素含有量は0.5%であった。
【0212】
実施例12
フッ素化アルコールと環状無水物との反応
500ml容の4つ口フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、窒素散布チューブ、及び還流コンデンサーを取り付けた。フラスコに3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロ-1-オクタノール163.4グラム及び無水1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸89.8グラムを投入した。反応混合物を撹拌及び窒素パージしながら125℃に加熱した。164℃の発熱が収まった後、温度を120℃~125℃の範囲で5.5時間維持した。得られた生成物を、243.8グラムの収量で1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸の所望の3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロ-1-オクチルモノエステルを含む高粘度で無色透明の液体の形態で熱いうちに分離した。室温まで冷却すると生成物が結晶化し、不透明な白色固体を形成した。メタノリシス及び加水分解の酸価の比較は、無水物部分の所望のフッ素化アルコール由来エステルへの96.8%の変換を示した。
【0213】
実施例13
フッ素化アルコールと環状無水物との反応
500ml容の4つ口フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、還流コンデンサー、及びPTFE栓を取り付けた。フラスコに2,2,2-トリフルオロエタノール57.0グラム、無水トリメリット酸72.5グラム、及びブチルクロロスズジヒドロキシド0.0874グラムを投入した。反応混合物を加熱して、撹拌及び2,2,2-トリフルオロエタノールの還流を行いながら温度を70℃~80℃の範囲に維持した。反応混合物が著しく増粘したら、18.8グラムの2,2,2-トリフルオロエタノールを加えた。23時間後、ディーン-スタークトラップを追加し、未反応の2,2,2-トリフルオロエタノールを蒸留により除去した(47.4グラム)。白色固体の形態の生成物を、51.7グラムのメチルエチルケトンを添加して分散させた。生成物のスラリーを分離した後、溶媒を蒸発させて、白色固体の形態で1,2,4-ベンゼントリカルボン酸生成物の所望の2,2,2-トリフルオロエチルモノエステル104.9グラムを得た。メタノリシス及び加水分解の酸価の比較は、無水物部分の所望のフッ素化アルコール由来エステルへの96.0%の変換を示した。
【0214】
実施例14
フッ素化アルコールと環状無水物との反応
500ml容の4つ口フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、還流コンデンサー、及びPTFE栓を取り付けた。フラスコに2,2,2-トリフルオロエタノール131.4グラム、ヘキサヒドロ無水フタル酸135.5グラム、及びブチルクロロスズジヒドロキシド0.1718グラムを投入した。反応混合物を加熱して、撹拌及び2,2,2-トリフルオロエタノールの還流を行いながら温度を80℃~90℃の範囲に維持した。18.75時間後、ディーン-スタークトラップを追加し、未反応の2,2,2-トリフルオロエタノールを蒸留により除去した(41.9グラム)。上記反応のヘキサヒドロフタル酸生成物の所望の2,2,2-トリフルオロエチルモノエステルを、209.1グラムの収量で淡黄色の液体形態で分離した。メタノリシス及び加水分解の酸価の比較は、無水物部分の所望のフッ素化アルコール由来エステルへの92.6%の変換を示した。
【0215】
実施例15
フッ素化アルコールと環状無水物との反応
500ml容の4つ口フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、還流コンデンサー、及びPTFE栓を取り付けた。フラスコに3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロ-1-オクタノール91.4グラム、無水マレイン酸24.7グラム、及びブチルクロロスズジヒドロキシド0.0743グラムを投入した。反応混合物を撹拌しながら125℃の温度まで加熱した。155℃までの発熱が収まった後、温度を2.75時間に亘って120℃~130℃の範囲に維持した。マレイン酸の望ましい3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロ-1-オクチルモノエステルを含む反応の中間生成物は、加水分解の酸価133.5(mg KOH/g)を有し、無水物部分の所望のフッ素化アルコール由来エステルへの変換は推定90.9%であった。次いで、合計58.6グラムのブチルグリシジルエーテル(Air Products, Inc.から入手可能なEpodil(商標)741)を3つのアリコートで22.75時間かけて投入し、更に17.33時間、温度を120℃~130℃の範囲に維持した。所望のマレイン酸ジエステルを含む最終生成物を橙色/褐色の液体形態で分離し、収量は160.6グラム、酸価は7.16(mg KOH/g)であった。
【0216】
実施例16
フッ素化アルコールと環状無水物との反応
500ml容の4つ口フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、還流コンデンサー、及びPTFE栓を取り付けた。フラスコに2,2,2-トリフルオロエタノール99.0グラム、無水マレイン酸48.2グラム、及びブチルクロロスズジヒドロキシド0.1194グラムを投入した。反応混合物を加熱して、撹拌及び2,2,2-トリフルオロエタノールの還流を行いながら温度を80℃~90℃の範囲に維持した。25時間後、ディーン-スタークトラップを追加し、未反応の2,2,2-トリフルオロエタノールを蒸留により除去した(59.6グラム)。マレイン酸の所望の2,2,2-トリフルオロエチルモノエステルを含む反応の中間生成物は分離されなかった。次いで、合計137.9グラムのブチルグリシジルエーテル(Air Products, Inc.から入手可能なEpodil(商標)741)を2つのアリコートでそれから5.50時間かけて投入し、更に16.75時間、温度を120℃~130℃の範囲に維持した。所望のマレイン酸ジエステルを含む最終生成物を橙色/褐色の液体形態で分離し、収量は207.4グラム、酸価は3.93(mg KOH/g)であった。
【0217】
実施例17
フッ素化アルコール及びハロゲン化アルキルの反応
500ml容の4つ口フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、還流コンデンサー、及びPTFE栓を取り付けた。フラスコに2,2,2-トリフルオロエタノール55.7グラム、3-クロロ-1,2-プロパンジオール56.0グラム、及び脱イオン水50.3グラムを投入した。脱イオン水100.0グラムに溶解した38.5グラムの85%水酸化カリウムの溶液を、撹拌しながら還流コンデンサーを流し込むことによって徐々に投入した。追加の脱イオン水20.6グラムを使用して、コンデンサーに残ったあらゆる溶液を反応混合物へと洗い流した。98℃までの発熱が収まった後、更に15時間、温度を70℃~75℃の範囲に維持した。得られた粗生成物(292.8グラム)の溶液を1000ml容の丸底フラスコに移し、そこからロータリーエバポレーターを使用して水及び未反応の2,2,2-トリフルオロエタノールを除去した(147.9グラム)。得られた、固体の塩化カリウム及び水酸化カリウムを含む、ストリッピングされた粗生成物120.8グラムを、アセトン100.0グラムで希釈し、濾過して、固形物(36.9グラム)を除去した。濾過した生成物のアセトン溶液をロータリーエバポレーターでストリッピングして、粘稠な褐色液体形態の所望の3-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-1,2-プロパンジオール(TFEPD)を含む生成物83.6グラムを得た。
【0218】
実施例18
フッ素化アルコール及びハロゲン化アルキルの反応
500ml容の4つ口フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、還流コンデンサー、及びPTFE栓を取り付けた。フラスコに2,2,2-トリフルオロエタノール89.2グラム、及び3-クロロ-1,2-プロパンジオール89.5グラムを投入した。脱イオン水130.0グラムに溶解した61.4グラムの85%水酸化カリウムの溶液を、撹拌しながら還流コンデンサーを流し込むことによって徐々に投入した。追加の脱イオン水30.0グラムを使用して、コンデンサーに残ったあらゆる溶液を反応混合物へと洗い流した。水還流しながら100℃までの発熱が収まった後、更に16時間、温度を70℃~75℃の範囲に維持した。室温まで冷却した後、37%塩酸16.6グラムを滴加することにより、残留水酸化カリウムを中和した。中和された生成物溶液の299.5グラム部分を濾過して固形物(13.0グラム)を除去し、分液漏斗に入れ、酢酸n-ブチル86.2グラムで抽出した。水層を除去した後、所望の3-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-1,2-プロパンジオール(TFEPD)を含む得られた生成物溶液の収量は198.6グラムであり、推定される組成は51.9%TFEPD、43.4%酢酸n-ブチル、及び4.7%水(カールフィッシャー電量滴定による)であった。
【0219】
実施例19
フッ素化アルコール及びハロゲン化アルキルの反応
500ml容の4つ口フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、還流コンデンサー、及び均圧添加漏斗を取り付けた。フラスコに2,2,2-トリフルオロエタノール123.0グラム及び3-クロロ-1,2-プロパンジオール123.6グラムを投入した。発熱を最小限に抑えるため、153.5グラムの40%水酸化カリウム水溶液を滴加した。追加の脱イオン水19.6グラムを使用して、添加漏斗に残ったあらゆる溶液を反応混合物へと洗い流した。穏やかに水還流しながら100℃までの発熱が収まった後、更に16時間、温度を70℃~75℃の範囲に維持した。室温まで冷却した後、37%塩酸13.4グラムを滴加することにより、残留水酸化カリウムを中和した。濾過して固形物(54.4グラム)を除去した後、得られた透明な生成物水溶液(336.7グラム)を分液漏斗に入れ、メチルアミルケトン105.6グラムで抽出した。水層を除去した後、得られた生成物溶液(375.0グラム)を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過して、53%TFEPD及び47%メチルアミルケトンの推定される組成を有する生成物溶液211.0グラムを得た。
【0220】
実施例20
フッ素化モノマー及び環状無水物の反応
500ml容の4つ口フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、還流コンデンサー、及びPTFE栓を取り付けた。フラスコに、実施例19による生成物溶液100.0グラム、ヘキサヒドロ無水フタル酸93.8グラム、及びブチルクロロスズジヒドロキシド0.1543グラムを投入した。反応混合物を加熱し、150℃までの発熱が収まった後、撹拌しながら温度を120℃~125℃の範囲に維持した。3.5時間後、反応混合物を冷却して、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びTFEPDの所望の2:1付加物を含む淡褐色の不透明な液体形態の生成物187.2グラムを得た。メタノリシス及び加水分解の酸価の比較は、無水物部分の所望のフッ素化アルコール由来エステルへの99.1%の変換を示した。後の分析は、78.9%の不揮発性物質及び21.1%のメチルアミルケトンの組成を示した。
【0221】
実施例21
フッ素化モノマーの重合
4つ口のヘッドを備えた4000ml容の反応フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、窒素散布チューブ、ビグリューカラム、コンデンサー、及びレシーバーを取り付けた。反応フラスコに、ヘキサヒドロ無水フタル酸917.6グラム、トリメチロールプロパン1564.8グラム、無水フタル酸599.6グラム、実施例20による生成物171.1グラム、及びブチルスタンノン酸1.5656グラムを投入した。反応混合物を、窒素散布及び撹拌しながら、4時間の間210℃の温度まで徐々に加熱した。更に16.7時間撹拌しながら温度を210℃~215℃の範囲に維持し、その時点でビグリューカラムを取り外し、予想される量の総凝縮液を収集するまで、更に6.25時間反応を続けた。反応混合物を140℃に冷却し、得られたポリエステル樹脂を、撹拌しながらプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1428.8グラムを徐々に添加することにより希釈した。上記反応は、ポリエステル生成物溶液4248.7グラムを生じた。ポリエステル溶液の一部を濾過していくらかの不溶性固体を除去し、淡色の透明な液体形態のポリエステルポリオール生成物溶液1350.0グラムを得た。濾過された生成物を分析したところ、ヒドロキシル価は164.7(mg KOH/g)、酸価は2.33(mg KOH/g)、不揮発性物質は68.89%、ガードナー-ホルト粘度は303秒でZ6、密度は1ガロン当たり9.45ポンド、及びガードナー色数は1未満であるとわかった。希釈されていないポリエステル樹脂の推定されるフッ素含有量は0.5%であった。
【0222】
実施例22
フッ素化アルコール及びハロゲン化アルキルの反応
500ml容の4つ口フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、還流コンデンサー、及び均圧添加漏斗を取り付けた。フラスコに2,2,2-トリフルオロエタノール117.4グラム及び2,2-ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジオール139.0グラムを投入した。発熱を最小限に抑えるため、145.8グラムの40%水酸化カリウムの水溶液を滴加した。追加の脱イオン水20.8グラムを使用して、添加漏斗に残ったあらゆる溶液を反応混合物へと洗い流した。71℃までの発熱が収まった後、更に17時間、温度を70℃~75℃の範囲に維持した。さらに脱イオン水45.3グラムを添加し全ての固形物を溶解し、反応物を冷却した。37%塩酸8.4グラムを滴加することにより、残留水酸化カリウムを中和した。得られた混合物を分液漏斗に入れ、そこで2つの相に分かれて、下部の水相から塩が沈殿した。追加の脱イオン水80.1グラムを使用して、反応フラスコから残留塩を洗浄し、分液漏斗内の全ての固形物を溶解した。上部の有機層を収集し、30.0グラムのキシレンと共に1000ml容のフラスコに入れて、共沸混合物により水の除去を補助した。得られた混合物をストリッピングして、ロータリーエバポレーターで水及びキシレンを除去し、所望の2,2-ビス(トリフルオロエトキシメチル)-1,3-プロパンジオール(BTFEMPD)を含む液体生成物70.3グラムを得た。FTIRによる生成物の分析は、臭化アルキルのトリフルオロエチルエーテルへの96.0%の変換を示す。
【0223】
実施例23
フッ素化モノマー及び環状無水物の反応
500ml容の4つ口フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、還流コンデンサー、及びPTFE栓を取り付けた。フラスコに、実施例22による生成物溶液38.2グラム、及びヘキサヒドロ無水フタル酸40.1グラムを投入した。反応混合物を加熱し、発熱が収まった後、撹拌しながら温度を120℃~125℃の範囲に維持した。3時間後、反応混合物を100℃未満に冷却し、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びBTFEMPDの所望の2:1付加物を含む粘稠な黄色液体形態の生成物78.3グラムを、定量的移動を確実にするため、少量のメチルエチルケトンを使用して反応フラスコをすすぎ、下記実施例24に記載される重合反応に直接投入した。
【0224】
実施例24
フッ素化モノマーの重合
4つ口のヘッドを備えた4000ml容の反応フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、窒素散布チューブ、ビグリューカラム、コンデンサー、及びレシーバーを取り付けた。反応フラスコに、ヘキサヒドロ無水フタル酸909.5グラム、トリメチロールプロパン1507.9グラム、無水フタル酸583.3グラム、実施例23による生成物78.3グラム、及びブチルスタンノン酸1.5198グラムを投入した。反応混合物を、窒素散布及び撹拌しながら、3.75時間の間210℃の温度まで徐々に加熱した。更に0.75時間撹拌しながら温度を210℃~215℃の範囲に維持し、その時点でビグリューカラムを取り外し、予想される量の総凝縮液を収集するまで、更に20時間反応を続けた。反応混合物を140℃に冷却し、得られたポリエステル樹脂を、撹拌しながらプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1360.4グラムを徐々に添加することにより希釈した。該反応により、淡色の透明な液体のポリエステル生成物溶液4109.9グラムを得た。ポリエステルポリオール生成物溶液を分析したところ、ヒドロキシル価は169.2(mg KOH/g)、酸価は2.37(mg KOH/g)、不揮発性物質は70.24%、ガードナー-ホルト粘度は390秒でZ6+、密度は1ガロン当たり9.45ポンド、及びガードナー色数は1未満であるとわかった。希釈されていないポリエステル樹脂の推定されるフッ素含有量は0.5%であった。
【0225】
実施例25
フッ素化トシレートの合成
500ml容の4つ口フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、還流コンデンサー、及びPTFE栓を取り付けた。フラスコにp-トルエンスルホニルクロリド75.0グラム、トリメチルアミン39.8グラム、及びメチルエチルケトン110.2グラムを投入した。反応混合物を撹拌し、2,2,2-トリフルオロエタノール44.3グラムをコンデンサーの上部に取り付けられた均圧添加漏斗から滴加し、続いて追加のメチルエチルケトン22.9グラムで漏斗及びコンデンサーをすすいで反応フラスコに流し入れた。77℃までの発熱が収まった後、反応混合物を一晩、すなわち更に15時間撹拌した。得られた混合物を濾過して不溶性のトリエチルアミン塩酸塩を除去し、ロータリーエバポレーターを使用してストリッピングしてメチルエチルケトン及び過剰の2,2,2-トリフルオロエタノールを除去した。最終生成物を所望の2,2,2-トリフルオロエチルp-トルエンスルホネートを含む99.7グラムの褐色の液体形態で分離し、これは周囲温度に冷却すると結晶化した。
【0226】
実施例26
フッ素化トシレートの合成
500ml容の4つ口フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、還流コンデンサー、及び窒素注入口を取り付けた。フラスコにp-トルエンスルホニルクロリド55.2グラム、トリメチルアミン29.3グラム、及びメチルエチルケトン170.0グラムを投入した。反応混合物をヘッドスペース内でわずかに窒素パージしながら撹拌して、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロ-1-オクタノール105.4グラムをコンデンサーの上部に取り付けられた均圧添加漏斗により滴加し、続いて追加のメチルエチルケトン55.0グラムで漏斗及びコンデンサーをすすいで反応フラスコに流し入れた。37℃までの発熱が収まった後、反応混合物を一晩、すなわち更に15時間撹拌した。得られた混合物を濾過して不溶性のトリエチルアミン塩酸塩を除去し、ロータリーエバポレーターを使用してストリッピングし、メチルエチルケトンを除去した。最終生成物を、所望の3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロ-1-オクチルp-トルエンスルホネートを含む145.2グラムの褐色液体形態で分離し、これは周囲温度に冷却すると結晶化した。
【0227】
実施例27
アルコキシド中間体を介するフッ素化トシレートとアルコールとの反応
500ml容の4つ口フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、還流コンデンサー、窒素注入口を取り付けた。フラスコに、ジメチル-5-ヒドロキシイソフタレート43.8グラム、実施例26による生成物107.9グラム、無水炭酸カリウム43.3グラム、及び無水アセトン202.9グラムを投入した。反応混合物をヘッドスペース内でわずかに窒素パージしながら撹拌し、アセトンを加熱還流させた。更に17.75時間、温度を55℃~57℃の範囲に維持した。得られた混合物を濾過して、過剰の炭酸カリウム及び不溶性の副生成物を除去し、濾過ケーキ及びフラスコをメチルエチルケトンですすいだ。得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを使用してストリッピングし、アセトン及びメチルエチルケトンを除去した。最終生成物を、ジメチル-5-ヒドロキシイソフタレートの所望の3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロ-1-オクチルエーテルを含む19.3グラムの褐色液体形態で分離し、これは周囲温度に冷却するとガラス状に硬化した。
【0228】
実施例28
フッ素化モノマーの重合
4つ口のヘッドを備えた4000ml容の反応フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、窒素散布チューブ、ビグリューカラム、コンデンサー、及びレシーバーを取り付けた。反応フラスコに、ヘキサヒドロ無水フタル酸545.3グラム、トリメチロールプロパン892.2グラム、無水フタル酸349.3グラム、実施例27による生成物19.2グラム、及びブチルクロロスズジヒドロキシド0.8979グラムを投入した。反応混合物を、窒素散布及び撹拌しながら、3.5時間の間210℃の温度まで徐々に加熱した。更に1時間撹拌しながら温度を210℃~215℃の範囲に維持し、その時点でビグリューカラムを取り外し、予想される量の総凝縮液を収集するまで、更に19.25時間反応を続けた。反応混合物を140℃に冷却し、得られたポリエステル樹脂を、撹拌しながらプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート828.7グラムを徐々に添加することにより希釈した。該反応により、淡色の透明な液体のポリエステル生成物溶液2424.0グラムを得た。ポリエステルポリオール生成物溶液を分析したところ、ヒドロキシル価は170.6(mg KOH/g)、酸価は3.95(mg KOH/g)、不揮発性物質は69.69%、ガードナー-ホルト粘度は325秒でZ6+、密度は1ガロン当たり9.45ポンド、及びガードナー色数は1未満であるとわかった。希釈されていないポリエステル樹脂の推定されるフッ素含有量は0.5%であった。
【0229】
実施例29
フッ素化トシレート及びアミンの反応
500ml容の4つ口フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、還流コンデンサー、及び窒素注入口を取り付けた。フラスコにジエタノールアミン10.0グラム、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロ-1-オクチルp-トルエンスルホネート49.4グラム、無水炭酸カリウム26.3グラム、及びジメチルホルムアミド150.0グラムを投入した。反応混合物をヘッドスペース内でわずかに窒素パージしながら撹拌し、115℃に加熱した。更に20時間、温度を114℃~116℃の範囲に維持した。得られた混合物を濾過して、過剰の炭酸カリウム及び不溶性の副生成物を除去し、濾過ケーキ及びフラスコをジメチルホルムアミド及びメチルエチルケトンですすいだ。得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを使用してストリッピングし、ジメチルホルムアミド及びメチルエチルケトンを除去した。最終生成物を、所望の3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロ-1-オクチルジエタノールアミンを含む28.8グラムの暗褐色の粘稠な液体形態で分離した。
【0230】
実施例30
フッ素化モノマーとポリアミンとの反応
500ml容の4つ口フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、還流コンデンサー、及びPTFE栓を取り付けた。フラスコに2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート162.5グラムを投入した。2-メチルペンタン-1,5-ジアミンの56.2グラム部分を撹拌しながら反応混合物に滴加した。70℃までの発熱が収まった後、反応混合物を加熱して温度を50℃~55℃の範囲に維持した。4時間後、炭素-炭素二重結合の完全な変換がFTIRで確認され、反応混合物を冷却して、所望のフッ素化ジアミンを淡黄色の透明な液体形態で含む生成物214.4グラムを得た。
【0231】
比較例1
500ml容の4つ口フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、窒素散布チューブ、及び還流コンデンサー付きのディーン-スタークトラップを取り付けた。フラスコに、ヒドロキシ当量が1740の部分フッ素化ポリエーテルジオール(Omnova SolutionsからPolyFox(商標)PF-6320の商品名で入手可能)201.4グラム、アジピン酸17.8グラム(2.1当量)、及びブチルスタンノン酸0.2256グラムを投入した。反応混合物を1時間かけて撹拌及び窒素パージしながら210℃に加熱した。予想される量の総凝縮液を収集するまで、更に18時間、撹拌しながら温度を210℃~215℃の範囲に維持した。次いで、反応混合物を周囲温度まで冷却した。反応の生成物は淡色の液体形態で分離され、収量は191.0グラムであり、酸価は24.49(mg KOH/g)であった。
【0232】
比較例2
4つ口のヘッドを持つ4000ml容の反応フラスコに、加熱用マントル、撹拌機シャフト、熱電対、窒素散布チューブ、ビグリューカラム、コンデンサー、及びレシーバーを取り付けた。反応フラスコに、ヘキサヒドロ無水フタル酸991.0グラム、トリメチロールプロパン1596.2グラム、無水フタル酸615.9グラム、比較例1に記載の方法で合成したPolyFox(商標)PF-6320ジアジペート51.0グラム、及びブチルスタンノン酸1.6124グラムを投入した。反応混合物を、窒素散布及び撹拌しながら、3.75時間の間210℃の温度まで徐々に加熱した。更に15時間撹拌しながら温度を210℃~215℃の範囲に維持し、その時点でビグリューカラムを取り外し、予想される量の総凝縮液を収集するまで、更に7.4時間反応を続けた。反応混合物を140℃に冷却し、得られたポリエステル樹脂を、撹拌しながらプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1441.1グラムを徐々に添加することにより希釈した。該反応により、淡色の略不透明な液体の形態でポリエステルポリオール生成物4354.4グラムを得た。ポリエステル溶液を分析したところ、ヒドロキシル価は192.0(mg KOH/g)、酸価は2.42(mg KOH/g)、不揮発性物質は70.32%、ガードナー-ホルト粘度は332秒でZ6+、密度は1ガロン当たり9.45ポンド、及びガードナー色数は1未満であるとわかった。希釈されていないポリエステル樹脂の推定されるフッ素含有量は0.5%であった。
【0233】
比較例3
ETNA-TEC, Ltd.から商品名TEC 2536で商業的に入手可能な比較例2に記載されているポリエステル樹脂の非フッ素化バージョンが、実施例31~34において対照として含まれていた。6:1の比率のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとキシレンとの混合物に溶解して供給されるポリエステルを分析すると、ヒドロキシル価は167.2(mg KOH/g)、酸価は1.87(mg KOH/g)、不揮発性材料は64.90%、ガードナーホルト粘度は127秒でZ5-、密度は1ガロン当たり9.28ポンド、ガードナー色数は1未満であるとわかった。
【0234】
実施例31
フッ素化ポリマーを含むコーティングの配合及び物理的性質
下記表1(コーティングの配合)に要約されるように、本発明のフッ素化ポリエステルポリオールと並んで、比較例による代表的なポリエステルポリオールを、その後の試験のためコーティングに製剤化した。
【0235】
【0236】
コーティングを冷間圧延鋼(CRS)から作製した試験パネルにスプレーし、180°Fで2時間乾燥させた。続いて、鉛筆硬度(ASTM D3363)、クロスハッチ接着(ASTM D3359)、及びTベンド(ASTM D4145)についてパネルを試験した。物理的特性試験の結果を下記表2(コーティングの物理的特性試験)に要約する。
【0237】
【0238】
実施例32
フッ素化ポリマーを含むコーティングの防汚試験
実施例31で調製された試験パネルを、それぞれ、24時間の間、14種類の染色剤に供した。その後、各パネルを石鹸水溶液で洗浄し、各汚れの残留物を次の尺度に従って評価した:0=残留物なし、1=かすかな残留物、2=中程度の残留物、及び3=強い残留物。結果を下記表3(コーティングの防汚試験)に要約する。
【0239】
【0240】
上記の結果から明らかなように、実施例C3による非フッ素化樹脂は、比較的汚れに抵抗性のコーティングをもたらす。しかしながら、フッ素化樹脂はいずれもSanford Sharpie(商標)及びBIC(商標)Permanent Markerの染色剤の場合に汚れ抵抗性の改善を示し、本発明のフッ素化樹脂は、実施例C2によるフッ素化樹脂とは対照的に、透明であるという追加の利点を有する。
【0241】
汚れ抵抗性のより厳しい試験として、追加の試験パネルを、イエローマスタードを染色剤とする焼き付け(baked-on yellow mustard)に供した。各パネルにイエローマスタードを塗り(subjected to)、所与の温度で所与の時間焼き付けた。次に、パネルを石鹸水溶液で洗浄し、各汚れの残留物を次の尺度に従って評価した:0=残留物なし、1=残留物の痕跡、2=わずかな残留物、3=中程度の残留物、及び4=強固な残留物。結果を下記表4(コーティングのマスタード焼き付け防汚試験)に要約する。
【0242】
【0243】
フッ素化樹脂はいずれも、実施例C3による非フッ素化樹脂と比較して、イエローマスタードの焼き付けに対して汚れ抵抗性の改善を示し、本発明のフッ素化樹脂は、実施例C2によるフッ素化樹脂とは対照的に、透明であるという追加の利点を有する。
【0244】
実施例33
フッ素化ポリマーを含むコーティングの汚れ付着抵抗性試験
また、実施例31で調製されたコーティングを、加速汚れ付着抵抗性試験の手順に供した。ガラスパネルを各コーティングで処理し、180°Fで2時間乾燥させた。Elementis Specialties, Inc.から入手可能なR1599D Easy Dispersing Red Iron Oxideを使用して、55%赤色酸化鉄スラリーを水中で作製し、続いて各パネルの半分にブラシで塗った。次に、パネルを室温で1時間乾燥させ、ぬるま湯で洗い流し、ペーパータオルで拭いた。サンプルを目視で検査して汚れが存在するかどうかを確認し、次いで、残留物を測定するためColorTec PCM Color Meterを使用するスペクトル分析に供した(L:白~黒、a:緑~赤、b:青~黄)。各色パラメーターのパーセント変化の形で報告されるスペクトル分析の結果を、下記表5(コーティングの加速汚れ付着抵抗性試験)に要約する。
【0245】
【0246】
結果は、概して、実施例C3による非フッ素化樹脂に対してフッ素化樹脂の汚れ付着抵抗性の改善を示し、本発明のフッ素化樹脂は、実施例C2によるフッ素化樹脂とは対照的に透明であるという追加の利点を有する。
【0247】
当業者には、広範な本発明の概念を逸脱しなければ、上記の実施形態を変更することができることが認識される。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の趣旨及び範囲内の変更形態を含むように意図されることが理解される。