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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】仮想現実装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20230605BHJP
【FI】
G06F3/01 510
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020523470
(86)(22)【出願日】2018-07-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-03
(86)【国際出願番号】 AU2018050732
(87)【国際公開番号】W WO2019010545
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-07-12
(31)【優先権主張番号】2017902751
(32)【優先日】2017-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】520012116
【氏名又は名称】スマイリースコープ・ピーティーワイ.・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】チャン、エブリン
(72)【発明者】
【氏名】レオン、ポール
【審査官】星野 裕
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0306340(US,A1)
【文献】特開2017-119032(JP,A)
【文献】特開2017-045443(JP,A)
【文献】特開2017-049960(JP,A)
【文献】特表2011-528126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者にとってヘッドマウント可能であり、前記着用者以外のオペレータにとってアクセス可能なデバイスユーザインターフェースを介したデバイス制御を可能にし、装置が前記着用者によって着用されている間に、前記オペレータがデバイス較正および仮想現実(VR)体験の開始を制御することを可能にし、身体的処置に各々が関連付けられている1つまたは複数のVR体験を提供するように構成され、ここにおいて、前記1つまたは複数のVR体験のうちの少なくとも1つが、前記着用者による身体的処置体験の再想像を容易にするように設計される、仮想現実デバイスであって、ここにおいて、前記VR体験が、身体的感覚に関連付けられ不安または痛みの反応を潜在的に誘起する少なくとも1つの処置的作用を組み込んだ、前記身体的処置の処置的作用に関する実行順序と、前記処置的作用の各々1つに対する、痛み、不安、または存在感のうちのいずれか1つまたは複数のそれぞれの処置的作用に対する知覚を修正するための、身体的感覚を誘起する前記それぞれの処置的作用の側面に基づいたVR置換の定義特性とを備えた、VRコンティニューム体験フレームワークを使用して生成される、仮想現実デバイス
【請求項2】
前記着用者に対して較正を実行し、前記オペレータからの単一の初期化入力に応じて、前記VR体験を開始するように構成される、請求項1に記載の仮想現実デバイス。
【請求項3】
前記VR体験が、前記初期化入力の前に、前記デバイスユーザインターフェースを介して前記オペレータによって選択される、請求項2に記載の仮想現実デバイス。
【請求項4】
前記VR体験があらかじめ定義される、請求項2に記載の仮想現実デバイス。
【請求項5】
前記デバイスユーザインターフェースは、前記ヘッドマウント可能なデバイスに備えられる、請求項1から4のいずれか一項に記載の仮想現実デバイス。
【請求項6】
前記VR体験が、前記身体的処置の間に前記着用者によって体験される感覚のコンテキストリフレーミングを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の仮想現実デバイス。
【請求項7】
前記VR体験が、前記身体的処置のためにオペレータのタイミングを前記VR体験と調整させるようにさらに設計される、請求項1から6のいずれか一項に記載の仮想現実デバイス。
【請求項8】
前記VR体験および身体的処置タイミングが、前記着用者の前記VR体験との相互作用による影響を受ける、請求項7に記載の仮想現実デバイス。
【請求項9】
処理、メモリ、視覚表示、動き感知、オーディオおよびユーザインターフェース機能性を提供するモバイルフォンと、前記モバイルフォンをサポートするヘッドセットとを備え、VRソフトウェアアプリケーションが実行されている間に、前記モバイルフォンの機能をVR機能性のためのみの使用に制限するように構成された前記VRソフトウェアアプリケーションが前記モバイルフォンにロードされている、請求項1からのいずれか一項に記載の仮想現実デバイス。
【請求項10】
前記VRソフトウェアアプリケーションが、VR体験表示と同時に表示されるタッチスクリーンユーザインターフェースを提供するように構成され、前記ヘッドセットが、前記ユーザによる前記タッチスクリーンユーザインターフェースのビューを妨げるように構成される、請求項に記載の仮想現実デバイス。
【請求項11】
前記VR体験はVRコンティニューム上の体験であり、ここにおいて、前記VRコンティニュームは、何らかの実世界知覚を可能にし、完全没入型VRとして十分相互作用する、複合現実または拡張現実(AR)を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の仮想現実デバイス。
【請求項12】
身体的感覚に関連付けられ不安または痛みの反応を潜在的に誘起する少なくとも1つの処置的作用を組み込んだ身体的処置にコレオグラフィされたVRコンティニューム体験を生成するための仮想現実(VR)コンティニューム体験フレームワークであって、
前記処置的作用の実行の順序と、
前記処置的作用の各々1つに対する、痛み、不安、または存在感のうちのいずれか1つまたは複数のそれぞれの処置的作用に対する知覚を修正するための、身体的感覚を誘起する前記それぞれの処置的作用の側面に基づいたVR置換の定義特性と
を備える、仮想現実(VR)コンティニューム体験フレームワーク。
【請求項13】
各VR置換が、存在感に関する前記身体的処置の要件および前記身体的感覚を誘起する前記作用の側面、ならびに存在感、不安、および痛みの知覚のうちの1つまたは複数の修正に対するターゲット方向に基づいて定義される、請求項12に記載の仮想現実(VR)コンティニューム体験フレームワーク。
【請求項14】
VR置換が、前記作用によって誘起される前記身体的感覚と一致しない、前記身体的感覚の改変された知覚を促進するように、身体的相互作用の側面をリフレームすることを特徴とする、請求項12または13に記載の仮想現実(VR)コンティニューム体験フレームワーク。
【請求項15】
VR置換が、実際の物理的作用よりも少ない痛みまたは不安に一般に関連付けられた相互作用を使用して、VRコンテキストの表現を選定するための前記身体的感覚の持続時間および属性を模倣することを特徴とする、請求項12から14のいずれか一項に記載の仮想現実(VR)コンティニューム体験フレームワーク。
【請求項16】
VR体験が、一般的なテーマのVR体験構成要素のライブラリから、それぞれの定義されたVR置換に対して、前記定義されたVR置換の特性を満たすVR体験構成要素を選択し、前記処置的作用に関するシーケンスに基づいて、前記選択されたVR体験構成要素をVR体験にコンパイルすることによって生成される、請求項15に記載の仮想現実(VR)コンティニューム体験フレームワーク。
【請求項17】
前記VRコンティニュームは、何らかの実世界知覚を可能にし、完全没入型VRとして十分相互作用する、複合現実または拡張現実(AR)を含む、請求項12から16のいずれか一項に記載のVRコンティニューム体験フレームワーク。
【請求項18】
仮想現実(VR)体験生成システムであって、
1つまたは複数の医療処置に対する処置的作用の1つまたは複数のシーケンスを記憶する医療処置ライブラリと、
身体的感覚に関連付けられ、不安または痛み反応を潜在的に誘起する各処置的作用に関して、痛み、不安、または存在感のうちのいずれか1つまたは複数のそれぞれの処置的作用に対する知覚を修正するための、身体的感覚を誘起する前記それぞれの処置的作用の側面に基づいたVR置換の定義された特性と、それぞれの定義されたVR置換に関する複数のVR体験構成要素とを備えたVR置換リソースライブラリと、ここにおいて、前記VR体験構成要素が、1つまたは複数のVR体験テーマのコンテキストで前記定義されたVR置換の前記特性を満たし、
前記医療処置ライブラリから医療処置に関する処置的作用のシーケンスを取り出すことによって、前記医療処置に関するVR体験をコンパイルし、前記VR置換リソースライブラリから、一般的なVR体験テーマを使用して、それぞれの定義されたVR置換に関するVR体験構成要素を選択し、前記医療処置に関する前記処理的作用シーケンスに基づいて、前記選択されたVR体験構成要素をVR体験にコンパイルするように構成された、VR体験コンパイラと
を備える、
仮想現実(VR)体験生成システム。
【請求項19】
前記VR体験はVRコンティニューム上の体験であり、前記VRコンティニュームは、何らかの実世界知覚を可能にし、完全没入型VRとして十分相互作用する、複合現実または拡張現実(AR)を含む、請求項18に記載の仮想現実(VR)体験生成システム。
【請求項20】
身体的感覚に関連付けられ、不安または痛みの反応を潜在的に誘起する、少なくとも1つの処置的作用を組み込んだ、身体的処置にコレオグラフィされた仮想現実(VR)コンティニューム体験を生成する方法であって、
前記処置的作用の実行の順序を決定するステップと、
前記処置的作用の各々1つに関して、痛み、不安、または存在感のうちのいずれか1つまたは複数のそれぞれの処置的作用に対する知覚を修正するための、身体的感覚を誘起する前記それぞれの処置的作用の側面に基づいたVR置換の特性を定義するステップと、
一般的なVR体験テーマを使用して、それぞれの定義されたVR体験に関するVR体験構成要素を取得するステップと、ここにおいて、前記VR体験構成要素が、前記定義されたVR置換の前記特性を満たし、
前記身体的処置に関する前記処置的作用の実行の前記順序に基づいて、前記選択されたVR体験構成要素をVR体験にコンパイルするステップと
を備える、方法。
【請求項21】
VR体験構成要素を取得することが、VR置換リソースライブラリから前記VR体験構成要素を選択することを備える、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
VR体験構成要素を取得することが、前記定義されたVR置換の前記特性に基づいて、VR体験構成要素を作成することを備える、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記VR体験はVRコンティニューム上の体験であり、前記VRコンティニュームは、何らかの実世界知覚を可能にし、完全没入型VRとして十分相互作用する、複合現実または拡張現実(AR)を含む、請求項20から22のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、仮想現実の装置およびアプリケーションに関する。
【背景技術】
【0002】
仮想現実は、着用者の目の前にスクリーンを備えたヘッドマウント式ゴーグルと、場合によっては、ユーザの存在感を想像環境にシミュレートする没入型で対話型ユーザ体験を提供するためのスピーカまたはヘッドフォンを使用するコンピュータ技術である。仮想現実(VR)ヘッドセットの動きは、ユーザが3次元の仮想世界を「見回す」ことを可能にするために追跡される。
【0003】
現在利用可能なVRデバイスは、一般に、小型立体視ディスプレイと、動きを追跡するためのジャイロスコープおよび動きセンサーと、ヘッドフォンまたはスピーカとを含む。スマートフォンを使用してVR体験を提供するための、いくつかの知られているスマートフォン用ヘッドマウントが存在する。スマートフォンは、デバイスプロセッサ、ディスプレイ、ジャイロスコープ、動きセンサー、スピーカなどを利用するVRソフトウェアでプログラムされる。ヘッドマウントは、ディスプレイが、それぞれの目に対して1つずつ、2つに分割されるように、スマートフォンを着用者の目の前に保持し、スマートフォンソフトウェアは、ユーザによって3次元として知覚される立体画像を表示する。
【0004】
仮想現実用の現在のアプリケーションは、ゲームアプリケーションと、シミュレータタイプのトレーニングとを含む。VRの使用は、ユーザが、自らがゲームの空想にとって魅力的なシミュレート環境内に「いる」ように感じることを可能にし得る。仮想現実は、事象に対する人の認知を仮想環境において「現実」に感じることを可能にし得る。これは、現実に感じるが、失敗しても安全である環境においてスキルを練習するための訓練目的に特に有用であり得る。
【0005】
仮想現実は、現在、主に開業医に対するシミュレーションタイプの訓練のための医療アプリケーションにある程度、使用されている。仮想現実は、特に、不安障害を有する患者の治療、または行動治療を支援することが可能であり得ることが推測される。しかしながら、ゲームまたはシミュレータ訓練などのアプリケーションのために開発された仮想現実システムは、一般に、着用者による制御のために設計されており、対話型の臨床的状況には十分適応されていない。
【発明の概要】
【0006】
一態様によれば、着用者にとってヘッドマウント可能であり、着用者以外のオペレータにとってアクセス可能なデバイスユーザインターフェースを介したデバイス制御を可能にし、装置が着用者によって着用されている間に、オペレータがデバイス較正および仮想現実(VR)体験の開始を制御することを可能にし、身体的処置(physical procedure)に各々が関連付けられている1つまたは複数のVR体験を提供するように構成された仮想現実デバイスが提供される。
【0007】
デバイスは、着用者に対して較正を実行し、オペレータからの単一の初期化入力に応じて、VR体験を開始するように構成され得る。一例では、VR体験は、初期化入力の前に、デバイスユーザインターフェースを介してオペレータによって選択され得る。1つの代替例では、VR体験はあらかじめ定義される。
【0008】
1つまたは複数のVR体験のうちの少なくとも1つは、着用者による身体的処置体験の再想像(re-imaging)を容易にするように設計され得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、VR体験は、身体的処置の間に着用者によって体験される感覚のコンテキストリフレーミング(contextual reframing)を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、VR体験は、身体的処置のためのオペレータのタイミングをVR体験と調整させるようにさらに設計される。
【0011】
いくつかの実施形態では、VR体験および身体的処置タイミングは、着用者のVR体験との相互作用による影響を受ける。
【0012】
いくつかの実施形態では、VR体験は、身体的感覚に関連付けられ、不安または痛みの反応を潜在的に誘起する、少なくとも1つの処置的作用を組み込んだ、身体的処置に関する作用の実行の順序と、処置的作用の各々に対する、痛み、不安、または存在感のうちのいずれかの1つまたは複数の作用の知覚を修正するためのVR置換の定義特性(defining characteristic)とを備えた、VRコンティニューム体験フレームワークを使用して生成される。
【0013】
いくつかの実施形態では、デバイスは、処理、メモリ、視覚表示、動き感知、オーディオおよびユーザインターフェース機能を提供するモバイルフォンと、モバイルフォンをサポートするヘッドセットとを備え、VRソフトウェアアプリケーションが実行されている間に、モバイルフォンの機能をVR機能性に制限するように構成されたVRソフトウェアアプリケーションがモバイルフォンにロードされている。
【0014】
一実施形態では、VRソフトウェアアプリケーションは、VR体験表示と同時に表示されるタッチスクリーンユーザインターフェースを提供するように構成され、ヘッドセットは、ユーザによるタッチスクリーンユーザインターフェースのビューを妨げるように構成される。
【0015】
別の態様によれば、身体的感覚に関連付けられ、不安または痛みの反応を潜在的に誘起する、少なくとも1つの処置的作用を組み込んだ、身体的処置にコレオグラフィされた(choreographed)VRコンティニューム体験を生成するための仮想現実(VR)体験フレームが提供され、フレームワークは、
処置的作用の実行の順序と、
処置的作用の各々に対する、痛み、不安、または存在感のうちのいずれか1つまたは複数の作用に対する知覚を修正するためのVR置換の定義特性と
を備える。
【0016】
いくつかの実施形態では、各VR置換は、存在感に対する処置の要件および身体的感覚を誘起する作用の側面、ならびに存在感、不安、および痛みの知覚のうちの1つまたは複数の修正に対するターゲット方向に基づいて定義される。
【0017】
いくつかの実施形態では、VR置換は、作用によって誘起される身体的感覚と一致しない、身体的感覚の改変された知覚を助長する方法で物理的相互作用の側面をリフレームすることを特徴とする。
【0018】
いくつかの実施形態では、VR置換は、実際の身体作用よりもより少ない痛みまたは不安に一般に関連付けられた相互作用を使用して、VRコンテキストの表現を選定するための身体的感覚の持続時間および属性を模倣することを特徴とする。
【0019】
いくつかの実施形態では、VR体験は、一般的なテーマのVR体験構成要素のライブラリから、それぞれの定義されたVR置換に対して、定義されたVR置換の特性を満たすVR体験構成要素を選択し、その処置に関する作用シーケンスに基づいて、選択されたVR体験構成要素をVR体験にコンパイルすることによって生成され得る。
【0020】
別の態様によれば、仮想現実(VR)体験生成システムが提供され、VR体験生成システムは、
1つまたは複数の医療処置に対する処置的作用の1つまたは複数のシーケンスを記憶する医療処置ライブラリと、
身体的感覚に関連付けられ、不安または痛みに反応を潜在的に誘起する各処置的作用に関して、痛み、不安、または存在感のうちのいずれか1つまたは複数の作用に対する知覚を修正するためのVR置換の定義された特性と、それぞれの定義されたVR置換に関する複数のVR体験構成要素とを備えたVR置換リソースライブラリと、ここにおいて、VR体験構成要素が、1つまたは複数のVR体験テーマのコンテキストで定義されたVR置換の特性を満たす、
医療処置ライブラリから、医療処置に関する処置的作用のシーケンスを取り出すことによって、医療処置に関するVR体験をコンパイルし、VR置換リソースライブラリから、一般的なVR体験テーマを使用して、それぞれの定義されたVR置換に関するVR体験構成要素を選択し、処置に関する作用シーケンスに基づいて、選択されたVR体験構成要素をVR体験にコンパイルするように構成された、VR体験コンパイラと
を備える。
【0021】
別の態様によれば、身体的感覚に関連付けられ、不安または痛みの反応を潜在的に誘起する、少なくとも1つの処置的作用を組み込んだ、身体的処置にコレオグラフィされた仮想現実(VR)コンティニューム体験を生成する方法が提供され、この方法は、
処置的作用の実行の順序を決定するステップと、
処置的作用の各々に関して、痛み、不安、または存在感のうちのいずれか1つまたは複数の作用に対する知覚を修正するためのVR置換の特性を定義するステップと、
一般的なVR体験テーマを使用して、それぞれの定義されたVR体験に関するVR体験構成要素を取得するステップと、ここにおいて、VR体験構成要素が、定義されたVR置換の特性を満たす、
処置に関する処置的作用の実行の順序に基づいて、選択されたVR体験構成要素をVR体験にコンパイルするステップと
を備える。
【0022】
VR体験構成要素を取得するステップは、VR置換リソースライブラリからVR体験構成要素を選択するステップを含み得る。代替または追加として、VR体験構成要素を取得するステップは、定義されたVR置換の特性に基づいて、VR体験構成要素を作成するステップを備え得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】現在市販の同じVRシステムを使用する2つの使用シナリオの処置ステップを示す図。
図2】本発明の一実施形態を使用する使用シナリオの処置ステップを示す図。
図3】デュアルユーザVR体験を提供するように適応された技術的特徴の概要を示す図。
図4】VRヘッドセットの一実施形態の一例を示す図。
図5a】手続きアイコンの一例を示す図。
図5b】デバイス用途の報告の一例を示す図。
図5c】手続きアイコンの一例を示す図。
図6】アイコンを選択するためのタッチスクリーンアイコンに関する誤差の増大したマージンを示す図。
図7】同じスクリーン上でアクセス可能なVRモードおよびタッチスクリーンメニューを有するデュアルインターフェースを示す図。
図8】先行技術VRデバイスの外部コントローラデバイスの画像を示す図。
図9】先行技術VRデバイスおよび本発明の一実施形態の上の制御ボタンの位置を示す図。
図10】手続き結果を最適化するためのVR処置固有の経験を作成するために本発明者らによって使用されたフレームワークの概要を示す図。
図11】VR処置固有の体験の開発に関連するコア技法のフレームワークを示す図。
図12】ヘルスケア処置の段階および各段階に対応する作用/技法を示す図。
図13】身体的処置の例、およびこれらの処置に一般に予期される生理的痛みのレベルおよび強度を示す図。
図14a】各処置に関する痛みおよび不安の反応のモデル、および処置の間の患者からの認知的存在感または認知反応に対する要件を示す図。
図14b図14aの簡素化されたブロックモデルのセクタ、および患者の反応が各セクタに関する特性と見なされ得る処置のタイプを示す図。
図15】処置的にコレオグラフィされたVR体験に関するエンドツーエンドフレームワークの概要を示す図。
図16】MRI処置に適用されるエンドツーエンドフレームワークの一例を示す図。
図17】VRを使用した針処置をリフレームする一例を示す図。
図18】臨床医制御/変化側面処置およびVR体験の概念化を示す図。
図19】VR(または、AR)患者サポートから恩恵を受けることができる3つの処置に関するステップを示す図。
図20】2つの代替テーマを使用した、窒素ガス麻酔処置および対応するVR置換のステップの一例を示す図。
図21】システムの一実施形態に対する概略的なフィードバックおよび修正ループを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
提供されるのは、着用者にとってヘッドマウント可能であり、着用者以外のオペレータにとってアクセス可能なデバイスユーザインターフェースを介したデバイス制御を可能にするように構成された仮想現実デバイスである。VRデバイスは、装置が着用者によって着用されている間に、オペレータがデバイス較正および仮想現実(VR)体験の開始を制御することを可能にし、1つまたは複数のVR体験を提供するように構成される。VR体験は、着用者による医療処置体験の再想像を容易にするように設計され得る。このデバイスに対するアプリケーションおよびVR体験の例は、注射を打つこと、または血液サンプルを採取することなど、子供に対する医療処置を含む。しかしながら、実施形態は、多くの異なる身体的処置およびシナリオに適用され得る。
【0025】
実施形態は、これらの処置を受けている個人をサポートするために処置固有のVR体験を提供することができる。たとえば、医療処置に関連する痛みおよび/または恐怖感を管理するのを助けるためである。(静脈穿刺-採血、または静脈カニューレの挿入など)医療処置は、ヘルスケアにおいて一般的である。多くの患者は、針を伴う医療処置を、病院体験の中でも最も恐ろしく、痛みを伴う部分であると見なし、この処置は、家族にまで及ぶ可能性がある、かなりの不安および動揺を生じさせる場合がある。局部麻酔クリームまたは気をそらせること(distraction)など、現在の疼痛管理技法は、不十分であり得、結果として、患者を拘束するかまたは鎮静させる必要をもたらす。発明者のVRシステムは、ユーザが、そのような処置の間に、魅力ある対話型3次元「仮想世界」を体験することを可能にし、ここで、この仮想世界のコンテキスト内で、処置の感覚に対するユーザの知覚は、改善された臨床体験をもたらすように潜在的に改変され得る。仮想世界への逃避は、たとえば、痛みの知覚を改変し、不安を軽減するための感覚の再想像を可能にし得る。
【0026】
VRは、医療処置に関連する恐怖感および痛みを軽減させるために薬物を伴わない効果的方法を提供することができる。しかしながら、VRがヘルスケア環境において十分採用されるツールになるためには、VR体験が臨床医と患者の双方にとって最適化されることが重要である。このVRシステムの実施形態が有用であり得る処置として針処置が論じられるが、使用するためにVRが有用であり得る多くの異なるタイプの処置が存在する。中程度から強度の痛みを生じさせることに関連する処置/作用は、静脈穿刺または静脈切開、抹消静脈ラインの挿入、尿道カテーテルの挿入または恥骨上穿刺、剥離表皮の洗浄またはケア、気管内チューブの挿入、抹消動脈ラインの挿入、胸腔チューブの取外し、抹消静脈から中心静脈に挿入されるカテーテルの挿入、腰椎穿刺、内視鏡検査、経鼻空腸チューブの挿入、中心静脈ラインの挿入、筋肉内注射、骨折および脱臼の触診および整復、ならびに簡単な外科的処置を含むがこれらに限定されない。軽度から中程度の痛みを生じさせることに一般に関連付けられた処置/作用は、毛細血管採血、気管内吸引、包帯の交換また除去、運動療法、皮下注射、皮刺テスト、気管内チューブの取外し、皮膚からのテープの除去、経鼻胃チューブの挿入、(培養または標本のための)スクレイピングまたはスワブ、気管切開ケア、気管内チューブの再配置または再固定、気管切開吸引、および創傷洗浄を含むが、これらに限定されない。軽度の痛みに一般に関連付けられた処置/作用は、口腔吸引または鼻腔吸引、抹消静脈ラインの取外し、尿道カテーテルの取外し、経鼻胃チューブの取外し、鼻咽頭のスクレイピングまたはスワブ、抹消静脈ラインの取外し、中心静脈ラインの取外し、皮下埋込可能な静脈ポートへのアクセス、石膏ギプスの装着および取外し、ならびに抜糸を含むが、これらに限定されない。
【0027】
上記の処置および作用(たとえば、抹消静脈路の挿入)の多くは、多くの異なる治療に対する「チャネル」であり(テスト用の採血、化学療法または抗生物質の送達などであり得)、したがって、エンドツーエンド治療のコンテキストで、痛みを生じさせることに関連する、2つ以上の作用または処置が必要とされる場合があることに留意されたい。さらなる研究は、痛みの知覚は、精神的な要因、特に、医療処置に関連する恐怖感および不安によってもやはり影響を受ける可能性があることを示している。たとえば、子供を対象とした研究は、針の突きに対する痛みレベル/強度(0が痛みなし、10が想像可能な最悪の痛みである、0~10の尺度を使用して患者によって主観的に報告された)痛みレベル/強度は、心的外傷または手術など、他の痛みの原因に対してそれほど高くなかったのだが、患者が針の突きを処置の中でも最も痛い部分として思い起こすと記録している。痛みの知覚は、したがって、痛みの物理的な原因だけではなく、処置に関連する患者の不安によって影響を受けるように思われる。VRシステムの実施形態は、患者よる身体的処置体験の再想像を容易にするように設計されたVR体験を使用することによって、痛みの知覚を巧に処理することを目的とする。これは、身体的処置の間に着用者によって体験される感覚をコンテキスト的にリフレームすることを含み得る。体験されるVRは、患者がVR世界のコンテキストで処置の身体的感覚を経験すること(VR経験)を可能にするために、身体的処置とコレオグラフィされ、したがって、患者体験を修正し、結果として、軽減された痛みおよび/または不安をもたらす。したがって、VRシステムの態様は、処置的にコレオグラフィされたVR体験の開発と、臨床設定における使用に向けたVRデバイスの修正とを含む。
【0028】
歴史的に、VRは、ヘッドセットを着用する間に、体験を選択し、ゲームを較正して開始することからすべての機能を単独で実行することになるビデオゲーマーのために開発された。しかしながら、ヘルスケア環境または教育環境など、デュアルユーザシナリオにおけるVRに対する現在の設計には問題がある。これは、制御している人物ではなく、1人のユーザのみがVRデバイスを装着している可能性がある場合に特に問題であり得る。たとえば、ヘルスケアおよび/または教育環境においてはしばしば、少なくとも2人のユーザ、すなわち、オペレータ(たとえば、臨床医、教師)とエンドユーザ(たとえば、患者、学生)とが存在する。さらにそのような場合にはしばしば、VRデバイスの着用者は、デバイスを制御している個人ではない場合がある。そのようなシナリオの一例は、VRデバイス着用者が、幼児、または障害のある人、弱者、怪我人、または禁治産者である場合である。処置をサポートしている、親/家族、教員助手、他の臨床医など、プロセスに関連するサポートユーザが存在する場合がある。
【0029】
現在市販のVRデバイスは、別個のオペレータおよびエンドユーザを有する必要性またはユーザ体験に対応するように設計されていない。
【0030】
臨床設定または教室などの環境において、エンドユーザが使用する前に、オペレータが複数のステップを実行しなければならない場合、たとえば、ユーザにヘッドセットを与える前に、オペレータがまずVR体験を選定するためにヘッドセットを身につけなければならない場合に問題である。本デバイスの一態様は、エンドユーザが使用する前に、オペレータが複数のステップを実行する必要なしに、VRヘッドセットを容易に操作することができるように、このニーズを満たすための技術を適応する。これは、別個のオペレータとエンドユーザとが存在するヘルスケア環境および教育環境において妥当である。一般的なシナリオは以下を含み得る。
【0031】
・医療処置
・外科処置
・看護処置
・歯科処置
・障害を持つ人々のためのVR
・VRセラピー(たとえば、恐怖症治療、PTSD、自閉症)
・患者教育(たとえば、処置、疾病に関する)
・教育(たとえば、子供、学生、大学の設定)
これらのタイプの環境は、ペースが速い可能性があり、この場合、エンドユーザは、短い時間期間にわたってのみVRを使用する可能性があることを予期すべきである。さらに、VRエンドユーザの入れ替わりが早い場合もある。
【0032】
図1は、(Google DaydreamまたはCardboardなど)現在市販の同じVRシステムを使用する2つの使用シナリオに対する処置ステップを示す。
シナリオAは、セットアップ(たとえば、ゲーマーのセットアップ)を含む単一のユーザVR体験に対する処置ステップを示す。シナリオBは、2人の異なるユーザによって実行されることが必要とされるステップを示すシナリオAと比較した、デュアルユーザシナリオ(たとえば、ヘルスケアコンテキスト)に対する処置ステップを示す。
【0033】
シナリオAは、(たとえば、VRゲームコンテキストで)VR機器を操作し使用する十分な能力がある1人のユーザが存在する、先行技術VRの現在の一般的な使用である。先行技術(たとえば、Google DaydreamまたはCardboard)は、このシナリオで十分機能するように設計されている。VRは、単一の人物が操作し、エンドユーザであることを意図して開発されている。しかしながら、セットアップは時間がかかる:ユーザが、デバイスを着用している間に、VR内でVRライブラリをナビゲートすることになると仮定する。一般に、選定するための幅広いVR体験がやはり存在し、ユーザは、VRの外から別のデバイス機能にナビゲートすることが可能である。ユーザが終了し、新しい体験をウォッチする(watch)こと、または別のデバイス機能にナビゲートするという仮定がやはり存在する。
【0034】
シナリオBは、1人がオペレータであり、1人がエンドユーザである、2人のユーザが存在する(たとえば、ヘルスケアコンテキスト、処置、または高齢者または子供を対象とする)ときに、先行技術VRデバイス(たとえば、シナリオAと同じデバイス)使用する一例である。これらのコンテキストでは、先行技術デバイスは、多くのステップを必要とし、オペレータは、VR体験をエンドユーザに提供する前後に、VR体験に介入する/を操作するためにVRヘッドセットを着用する必要があるため、先行技術デバイスは効果的ではない。
【0035】
健康/教育環境において現在のVR設計を使用することに伴う問題のいくつかは、以下のポイント1から4に要約される。
【0036】
1.VRのオペレータおよびエンドユーザは、通常、2人の異なる人物(たとえば、臨床医および患者)である。
【0037】
現在の設計を使用する問題は以下を含む:
・VRオペレータについての不十分なユーザ体験
・感染制御:オペレータは、エンドユーザに対する体験を単に選択/制御するためにヘッドセットを着用/汚染することを望まない。
【0038】
2.VRに対する時間集約的なセットアップは、ヘルスケアまたは教育においてしばしば必要とされる迅速な入れ替わりに対して実施可能ではない:しばしば、複数のエンドユーザは1つのVRヘッドセットを矢継ぎ早に使用する(たとえば、臨床医は、患者が採血されている間にVRを複数の患者に与える場合がある、または教師はVR体験を多くの学生に提供する)。
【0039】
・しばしば時間集約的な調整を必要とする:たとえば、瞳孔間距離、焦点距離など。
【0040】
3.あまりにも多くの機能およびオプションが、VR体験をアクセス困難にし、あまりにも容易に休止させる/偶発的に終了させる可能性がある。もう1つの問題は、VR体験の間のVRコンテンツに対する偶発的な変更であり得、たとえば、ボタンを誤って押した場合にシナリオを変更させる。
【0041】
4.体験はそれが終了するまで実行し、次いで、さらなる動きがとられるまで停止する:時には、オペレータは、設定体験よりも多くの時間を必要とする。
【0042】
本発明者らは、デュアルユーザ(オペレータ/エンドユーザ)に対する合理的なユーザ体験を可能にするために修正されたVRデバイスを開発した。修正されたVRデバイスの一実施形態に関する処置ステップの一例が、本発明者らの適応および修正が2人のユーザ(オペレータ、エンドユーザ)に対するVRユーザ体験を最適化するように設計されたシナリオC、臨床使用シナリオに関して、図2に示されている。修正されたVRデバイスの実施形態は、プロセス全体が即時でシームレスであるように、オペレータのためのプロセスを簡素化するために設計されている。これらのVRデバイスの動作修正は、以下を含む:
1.オペレータとエンドユーザの双方に対する合理的なユーザ体験を設計する
・オペレータは、(たとえば、タッチスクリーン、外部ボタンを介して)ヘッドセットを着用する必要なく、VR体験の完全制御を有する
・エンドユーザは、VR体験を閲覧し、VR体験と相互作用することができるが、体験のアクティブ化/選択/終了など、動作を担当しない
2.オペレータが選択するために即時および容易であり、臨床/教育環境に合わせて合理化されたVR体験:
・較正および開始を1つの作用に組み込む。
【0043】
・方向の即時の変更、1人のエンドユーザからもう1人のエンドユーザへの迅速な移動。たとえば、エンドユーザは、異なる方向に向いている場合があり、いくつかの臨床設定(たとえば、予防接種クリニック)では、迅速な入れ替えが望ましく、したがって、較正および開始/終了が即時でシームレスであることが望ましい。
【0044】
・最小限の調整を必要とされるべきである。
【0045】
3.機能はカスタムローダによって限定される
・VRアプリに自動的にブートする
・スマートフォンホームスクリーンに戻ることはできない(ロックされる)
・前に選択された最後の体験を自動的に開始することができる
・場合によっては、始動の後で、何らかのさらなるオペレータ変更をロックする(たとえば、VR体験への変更を妨げる)。
【0046】
4.ループ機能:VR体験が続く
・エンドユーザが体験を再開することができるオプション
・体験が休止された場合、または30秒を超えて動きがない場合、体験は休止される(アイドル)が、止めたところから再開する
これらのデュアルユーザVRデバイス操作修正は、臨床処置の間、たとえば、小児科の針処置の間にVR使用を合理化するために開発された。
【0047】
図2は、本発明の一実施形態を使用したセットアップを含めて、デュアルユーザVR体験のための使用シナリオ(シナリオC)に関する処置ステップを示す。このシナリオでは、VRデバイスは、デバイスを使用するが、オペレータがデバイスを着用する必要なしに、オペレータによるVR体験のセットアップを可能にするように構成される。デバイスは、その場合、着用者の頭(患者)の上に配置され、オペレータは、デバイスの較正および選択されたVR体験の開始をトリガする。VRデバイスの制御のために従来可能にされ得るボタンは、着用者がVRデバイスの制御に干渉するリスクを低減するために、VR体験がプレイしている間、無効にされ得る。停止ボタンおよび再較正ボタンは、必要に応じて、オペレータが干渉することを可能にするように有効状態を維持し得る。VR体験が終了すると、デバイスは、オペレータの干渉を必要とせずに、その体験またはその体験の一部分を自動的に再開するかまたはループするように構成され得る。たとえば、その処置を完了するためにさらなる時間が必要とされる場合、VR体験は続き、その体験のすべてまたは一部分を繰り返すことができる。VRデバイスおよび体験の特徴は、デュアルユーザVR体験のために適応された技術的特徴の概要を提供する図3を参照して以下でさらに詳細に説明される。
【0048】
VRデバイスは、処置の前にオンにする必要を回避するために「常時オン」になるように構成され得る。デバイスは、バッテリー節約のために、運動に敏感なスタンバイモードを有し得る。それにより、デバイスは、何の動きも検出されない所定の時間期間の後に、スタンバイモードに入り、ユーザがデバイスを取り上げる、または動きを再開する(すなわち、麻酔から回復する)など、運動に応じて、アウェイク/使用状態になるためにスタンバイモードを終了する。
【0049】
いくつかの実施形態では、VRデバイスは、ヘッドセット上に取り付けられた処理および表示デバイスを備え得る。VRデバイスディスプレイおよび処理デバイスとして使用され得るデバイスのいくつかの例は、モバイルフォン、小型タブレットコンピュータ、メディアプレーヤ、またはディスプレイを有し、VRソフトウェアを実行することが可能な、同様のそのようなデバイスを含む。ヘッドセットは、デバイスをサポートするように構成され、VR表示の閲覧を助けるための構造構成要素および光学構成要素を含み得る。いくつかの実施形態では、表示および処理デバイスは、使用のためにヘッドセットに固定され得る。一実施形態の一例が、図4に示されている。この実施形態は、モバイルフォン420をサポートするヘッドセット410を備える。モバイルフォン420は、処理、メモリ、視覚表示、動き感知、オーディオインターフェースおよびユーザインターフェース機能性を提供し、VRソフトウェアアプリケーションが実行している間にモバイルフォンの機能をVR機能性に制限するように構成されたVRソフトウェアアプリケーションがロードされている。モバイルフォン420は、たとえば、接着剤、ファスナー、クリップ、または張力セットなどを使用して、ヘッドセットに固定される。
【0050】
処理および表示デバイスは、デバイスが盗まれ得ないこと、または誤って取り外され/除去され得ないことを確実にするために永続的に固定され得る。いくつかの実施形態では、デバイスは、たとえば、処理および表示デバイスを破損するリスクなしに、ヘッドセットのクリーニングを可能にするために、着脱可能に固定され得る。たとえば、処理および表示デバイスは、取外しを困難にし、誤った取外しのリスクを低減するが、処理および表示デバイスの故意の取外しを可能にする方法でスリーブ内に密封され得る。いくつかの実施形態では、ヘッドセット構成要素は、ディスポーザブルであってよく、処理および表示デバイスは再使用可能であってよいことが想定される。1つのそのような実施形態では、処理および表示デバイスは、デバイスをヘッドセットに固定するために、ヘッドセットのスリーブまたはコンパートメント内に永続的に密封され得、処理および表示デバイスを取り外すためのヘッドセットの破損(および、その後の廃棄)を必要とする。そのような実施形態は、汚染のリスクを低減するために、医療/外科設定において使用することが選好され得る。ヘッドセットが外科用器具同様に殺菌されることを可能にするために、オートクレーブに対応するVRデバイスヘッドセットを提供することがやはり想定される。
【0051】
VRデバイスの実施形態は、独立型であり、リモートコントローラまたはデバイスを介してテザリングまたは制御されることが必要とされないことを諒解されたい。
【0052】
ヘッドセットの他の特徴は、防水および拭取り可能なカバーを含み得る。ヘッドセットは軽量であることがやはり望ましい。ヘッドセットストラップは、特に、子供を対象とした使用を容易にするために、調整可能であるすべきである。一実施形態では、重さを均等に分布し、デバイスが子供の頭上により容易にサポートされることを可能にするために、ヘッドセットにはTバータイプのスリーウェイストラップが提供される。デバイスは、特に子供を対象とした使用のためにサイズ決定および成形され得る。現在VRデバイスは、11歳以上の子供による使用のみに推奨されている。ヘッドセットは、したがって、特により年少の子供達のために生産されていない。本発明者らは、医療処置に対するVRの現在のアプリケーションの場合、4歳から11歳の子供達に対するVRの使用の一般的な処置(予防接種)の短い持続時間は比較的安全であり、副作用プロファイルは非常に低いことを見出した。他の修正は、デバイスの外観を子供にとって、より「楽しく」、脅迫性がより低くするための色、パターン、またはデカールを含み得る。いくつかの修正は、成人患者を対象とする使用のために設計されたデバイスには不要であり得る。
【0053】
他の実施形態では、処理および表示デバイスは、ヘッドセットと一体化され得る。そのような実施形態は、処置VRアプリケーション専用の処理および表示ハードウェアを利用し得る。そのような実施形態は、電気通信機能性など、他の機能性を提供しなくてよい。代替として、ワイヤレス通信およびデータキャプチャなどの機能性は、処置VRアプリケーションに対する要件、たとえば、VRプログラムの更新またはVR体験の間に収集されるデータをダウンロードのために制限される短距離ワイヤレス通信に限定され得る。これは、デバイスの複雑さ要件、処理要件、バッテリー要件、およびメモリ要件のうちのいずれか1つまたは複数を削減するために望ましい場合がある。そのような実施形態は、デバイスコストを削減する利点を有し、および/またはデバイスが他のユーザのために盗まれる可能性を低減し得る。専用デバイスハードウェアの使用は、厳密なクリーニングおよび/または殺菌処置を受ける可能性がある実施形態をやはり可能にし得る。
【0054】
デバイスは、デバイスに、ブート時に(オンにしたときに)VRモードで直接起動させるか、またはスタンバイからウェイアップさせるためのカスタムローダを含み得る。これは、オペレータに対するセットアッププロセスを実質的に簡素化し、加速し得る。モバイルフォンを使用して実装される一実施形態では、カスタムローダは、フォンがこのアプリケーション内で自動的であるように、フォンをロックダウンする、Android(登録商標)ベースのカスタムローダとして作成された。すべての他のデバイス機能は、アクセス不可能な状態にとどまることになる。オペレータおよびユーザは、ホームスクリーンにアクセスすること、またはアプリケーションを終了することができない。これは、以下のコマンドプロンプトを用いて、デバイスのセットアップの間にデバイス所有者モードを設定することによって実行された:
adb shell dmp set-device-owner
com.smileyscop.smileyscopelauncher/.DeviceAdmiReceiver
代替として、カスタムローダに対する代替物として、指定された使用制限に従ってフォンまたは他のデバイスのロックダウンを可能にするマルチデバイス管理システムが使用され得る。ロックダウン仕様は、VR体験を実行するためおよびヘッドセットに対する機能性をロックするための制限を定義し得る。
【0055】
場合によっては、デバイスは、最後に使用されたVR体験処置を自動的にロードするように構成されてもよい。この特徴は、デバイスが同じ処置を経験している数人の患者に対して連続的に使用されることになる環境、たとえば、予防接種クリニック、または血液バンクにおいて望ましい場合がある。前に選択されたVR体験が自動的にリコールされる/開始するように構成された一実施形態は、最後に選択された体験の持続性によって実装される。この実施形態では、この値は、ネイティブAndroid UI構成スクリーンによって設定され、Unity体験によって読み取られた。
【0056】
代替として、デバイスは、タッチスクリーンインターフェースまたはハードウェアボタンを介して適切なVR体験の容易な選択のための処置のアイコンまたはリストを示すホームスクリーンを提供することができる。図5aは、処置アイコンの一例を示す。VR体験の制御のための他の特徴も、タッチスクリーンおよび/またはボタンを介してアクセスされ得る。VR体験の「外部に」ユーザインターフェースを提供するこの特徴は、現在のVRデバイスに対する修正である。この特徴は、オペレータが、ヘッドセットを着用する必要なしに、VRを選択および制御することを可能にする。
【0057】
一実施形態では、デバイスは、人工知能アルゴリズムの使用によって特定のデバイスに対してアイコンを自動的に調整するように構成され得る。この実施形態では、使用データが(たとえば、Google Analyticsを介して)収集され、前方のアイコンがさらに一般的に使用されるようにするためにアイコンの提示を調整する目的でAIアルゴリズムに供給される。一実施形態の一例が図5aから図5cに示されている。最初に、VRデバイスにVR体験の範囲がプリロードされる。図5aは、VRデバイス510にVR体験をロードさせるための処置のセットを識別するアイコン、たとえば、針520、歯科530、手当て540、およびレントゲン550のセットを示す。デバイスは、デバイス510使用を監視するように構成される。VR体験が使用されるたびに、分析のためにデータがキャプチャされる。このデータは、分析エンジンに送信され、分析され得る。たとえば、図5bは、使用報告の一例を示す。たとえば、これは、針処置が最も一般的に使用され、その後に手当て処置が続くことを示す、緊急治療室の使用報告であり得る。使用報告は周期的に(たとえば、毎日、毎週、毎時間など)送信されてよく、代替として、使用データは、各使用の後にまたはいくつかの使用の後に送られてもよい。使用データ報告は、使用タイミングデータ、すなわち、体験の開始時間、持続時間を含み得る。分析は人工知能(AI)アルゴリズムをざっと調べることを含む。1つの代替実施形態では、分析エンジンは、デバイス上で実装され得る。
【0058】
使用分析の出力は、VRアイコンのレイアウトを調整するために使用され得る。たとえば、より一般的に使用されるVR体験に関するアイコンは、スクリーンの上部に配置され得る。AIアルゴリズムは、使用の頻度に従ってアイコンを調整する更新を各特定のVRデバイスに戻すことができる。一実施形態では、より多く使用される処置に関するアイコンは、これらにアイコンをディスプレイ上のより顕著な位置に移動することによって強調され得る。アイコンのサイズもやはり修正され得る。たとえば:
a.VR体験がより高い頻繁で使用される場合、タッチスクリーンメニュー上に、より大きく、より高く配置される;
b.そのVR体験がより低い頻度で使用される場合、タッチスクリーンメニュー上に、より小さく、より低く配置される。
【0059】
たとえば、図5cに示すように、この緊急治療室で使用されるVRデバイス510は、骨折/レントゲン550アイコンおよび歯科520アイコンよりも、より大きな針510アイコンおよび手当て530アイコンを用いて調整されたアイコンを有することになる。さらに、歯科520アイコンの位置は、スクリーン上の下方に移動され、より多く使用される手当て540アイコンは、スクリーン上のより顕著な上部に移動される。
【0060】
この調整は、アイコンが経時的に活動の変化を反映することを可能にするために各デバイス固有であってよい。いくつかの実施形態は、特定の時刻、および特定のVR体験が使用される可能性が最も高い場所を含めて、使用パターンを予測することが可能であり得る。
【0061】
一実施形態は、アイコン周囲のより広いエリアがアイコンをアクティブ化し得るように構成され得る。この実施形態のタッチスクリーンおよびアイコンレイアウトは、アイコン周囲の20%未満がアイコンをやはりアクティブ化することを可能にするように設計される。これは、アイコンが、合理的なタッチスクリーンエラー限界で容易に選択されることを可能にする。図6は、アイコンを選択するためのタッチスクリーンアイコンに関する誤差の増大したマージンを示す。この特徴は、開業医がタッチスクリーンに完全に集中することができない可能性がある、または忙しい緊急治療室など、即時に動く必要がある、忙しい環境に望ましい場合がある。
【0062】
実施形態は、VR体験の音声アクティブ化選択をやはり可能にし得る:アプリが選択され得る特定のサブアプリケーションの音声アクティブ化を検出するようにプログラムされ得る。たとえば、臨床医が「静脈穿刺」と言語で表す場合、アプリは、静脈穿刺VR体験を選択することになる。
【0063】
一実施形態では、デバイスは、VRモードおよびタッチスクリーンメニューを同じスクリーン上でアクセス可能にするデュアルインターフェースを提供するように構成され得るが、タッチスクリーンメニューはVRビューから隠される。たとえば、図7に示すように、ディスプレイは、立体VRビュー画像710、715、および立体表示ウインドウ710、715上に、ヘッドセットによってユーザのビューから隠されることになるユーザインターフェース720を表示する。この実施形態を実装するために、VRビュー内にいる間に隠されているスクリーンの部分上に、オペレータによってアクセス可能なユーザインターフェースを提供するために、ボタンがオーバーレイされた。ヘッドセットは、ユーザがVR体験に関与している間に、このUIがオペレータによってアクセスされることを可能にするように構成され得る。ユーザインターフェースの一実施形態は、Unityコンテキストをカスタム作用でラッピングすることによって、ネイティブAndroidライブラリを使用して構築される。
【0064】
VRデバイスは、ジャイロスコープと時間の組合せによりバッテリーを節約するために、特定の時間期間の後にアイドルモードに入るように構成され得る。VR体験は、使用が検出される場合のみプレイする。使用中でない場合、デバイスは、電力を節約するためにアイドルスクリーンに戻る。実施形態は、ジャイロスコープが定義された期間、たとえば、10から30秒にわたって静止していると検出されるとき、スクリーンをプログラム的に無効にし、体験を休止する。ジャイロスコープが所与の更新フレームに対して1弧度低い角度デルタを有する場合、システムはジャイロスコープが静止していると査定する。静止状態としての査定は、スクリーンの照明を消し、デバイスのバックライトを鈍らせる活動をトリガする。この活動は、有効な動きを検出するために低い間隔でジャイロスコープをポーリングする。有効な動きのときに、活動は、自らを除去し、体験を再開する。代替案は、他のセンサー(サウンド、照明、測位)を含み得る。
【0065】
VRデバイスの実施形態は、VR体験のレンダリングをプリロードするように構成される。これは、より高いフレーム毎秒(FPS)を可能にすることによってVR体験を最適化し得る。
【0066】
VRデバイスの実施形態における有効な修正は、較正とVR体験の開始とを1つの機能で行っている。これは、オペレータが体験を開始するためにヘッドセットを着用する必要なしに、シームレスに体験が開始し較正することを可能にする。シーケンスは、フォン、ヘッドセット、または外部コントローラ/デバイス上のボタンからアクティブ化され得る。代替として、VR体験は、コンピュータから開始され得る。モバイルフォンを使用して実装される一実施形態は、デバイス音量ボタンを使用して、較正ユーザ体験フローを提供する。たとえば、看護婦が患者にヘッドセットを取り付けるとき、看護婦は、体験を再開するために音量ボタンを3回矢継ぎ早にタップする。体験のいずれかの地点からも、この入力に応じて、デバイスは、ヘッドセットの水平中央を再較正し、体験を再開するように構成される。これは、いくつかの点で先行技術とは実質的に異なる。
【0067】
a.知られている市販のどのVRデバイスも、体験の較正(配向させる、焦点を当てる)と開始の組み合わされた機能を有さない。
【0068】
b.Google Pixel/Daydream(この出願の優先日の前に知られている最も似ているVR)は、エンドユーザがVRヘッドセットを着用し、外部コントローラ(図8に示される)を押すことを必要とする。コントローラが指す方向は、較正の方向を左右することになる。体験アイコンは、VR内で可視化されなければならず、体験を開始するために、外部コントローラ上の「開始」ボタンが押下されなければならない。先行技術は、以下の理由により、臨床コンテキストにおける使用には適していない:
i.外部コントローラは、忙しい臨床環境において容易に紛失することになる。
【0069】
ii.オペレータは、体験を開始するためにVRヘッドセットを着用する必要があることになる。
【0070】
iii.オペレータは、外部コントローラを使用せずに、体験をリプレイすることができない。これは、オペレータが処置に関与している場合、オペレータは、体験をリプレイするために、自らの手袋を外して、VRヘッドセットを身につける必要があることになる。
【0071】
c.Samsumg VR(市販のVRデバイス)は、体験を較正および開始するために、エンドユーザがVRヘッドセットを着用し、VRヘッドセットの右下表面に位置するボタンを押すことを必要とする。オペレータは、体験を選択して開始するためにVRヘッドセットを身につけ、次いで、ヘッドセットをエンドユーザに移動させる必要があることになるため、このデバイスも臨床環境での使用に適切ではない。
【0072】
較正および開始シーケンスは、それがオペレータによって容易にアクティブ化されるが、エンドユーザによっては容易にアクティブ化されないことを確実にするように特に設計される。他の機能、ボタン、およびシーケンスは、それらが体験をうっかり休止/再開/終了することができないように、ロックダウンされる。
【0073】
VRデバイスの実施形態では、シーケンスアクティブ化ボタンは、そのボタンがオペレータによって物理的に容易にアクセスされるが、エンドユーザによっては容易にアクセスされないように配置される。たとえば、プロトタイプモバイルフォン実施形態では、本発明者らが選択したシーケンスは、ヘッドセットの上部中央位置にある音量ボタンのタッピングであった。現在知られている市販のVRデバイスは、右側にアクティブ化ボタンを有する(より低い面、たとえば、Samsung Gear、または側面、たとえば、Google Cardboard)。いくつかの市販のVRデバイスはまた、外部コントローラを使用し、臨床設定において、外部コントローラは、容易に誤配置され得るため、望ましくない可能性がある。本発明者のVRデバイスのプロトタイプ実施形態の場合、上部中央位置が選定されたが、ボタンの物理的配置は、VRデバイスの上部または左側のいずれの位置であってもよい。図9は、オペレータアクセスを改善するために、VRデバイス上の上部/左に配置されたアクティブ化ボタンを示す。
【0074】
実施形態は、VR体験の外部観察が、たとえば、患者が仮想世界において何を体験しているかを親または臨床医が観察することを可能にするように構成されてもよい。たとえば、一実施形態では、VRデバイスは、VR体験の2D(すなわち、片目)レンダリングを示す追加のスクリーンをデバイスの側面または前面上に含み得る。代替実施形態では、VRデバイスは、第三者観察を可能にするために、親フォン、タブレット、スマートウォッチなど、別のデバイスと(すなわち、Bluetooth(登録商標)またはWIFIを介して)対になるように構成され得る。
【0075】
実施形態は、VR体験を動的に修正するために、たとえば、処置の次のステップに移る目的で、または患者が静止状態を保つようにVR体験を介して指示またはインセンティブを提供する目的で、患者の心拍数または呼吸数がターゲット範囲内になるまでリラクゼーション練習を繰り返すために利用され得る、患者のバイオフィードバックデータをキャプチャするように構成されてもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、バイオフィードバックデータ、たとえば、デバイスカメラおよびマイクロフォンを使用してキャプチャされ得る、目の動き追跡、瞳孔拡張、発声が、VRデバイスを介して監視され得る。デバイスには、患者の体温、呼吸、酸素飽和度、心拍数などを監視するためのセンサーが提供されてもよい。代替として、そのような患者のバイオフィードバックは、従来の機器を使用して監視されてよく、バイオフィードバックデータは、VRデバイスに送信される。VR体験の動的修正は、以下でより詳細に論じられる。
【0077】
VR体験フレームワーク
本発明の1つの重要な態様は、VR体験の特性および身体的処置に対する各体験の特異性である。各VR体験は、ユーザによる身体的処置体験の再想像を容易にするために、身体的処置のステップと調整させたナラティブ(narrative)を提供するように設計される。VRと身体的処置との間のコレオグラフィは、VR体験のコンテキストで、好ましくは、痛みまたは威圧感がより少ないように、身体的感覚のリフレーミングを可能にするために重要である。VR体験は、患者によって痛みまたは威圧感がより少ない何かに置換するように身体的感覚の知覚をリフレームすることを目的として作成される。
【0078】
図10は、本発明者らが、シーンおよび物語を準備するための方法を開発するために着手した開発プロセスを明らかにする。このプロセスは、処置固有のVR体験を開発するために本発明者らによって使用されている方法の概要を提供する。
【0079】
1.情報収集
・本発明者らは、当該臨床分野の科学文献および既存の研究を検討した。分野の専門家との議論、文献、および電子文献を通して、デジタルおよび小児科分野、疼痛治療の最善の慣行を審査した。
【0080】
・本発明者らは、ヘルスケア処置に関する主要懸念事項、これまでのヘルスケア体験、またやはり予想されるユーザ、たとえば、子供達の関心および趣味を識別するために、調査および初期VRユーザテストを実行した。本発明者らは、針処置が子供のヘルスケア体験の中でも最も恐怖を感じる部分であり、ヘルスケア設定において最も一般的な痛みの原因のうちの1つであることを確認した。
【0081】
2.要件
・情報収集結果から、本発明者らは、VR体験に対する要件を識別および特定した。
【0082】
・これらの要件は、グループに優先付けされた:重大、重要、望ましい、除外。
【0083】
・既存の既製製品を評価するための展望が詳細に調査された。本発明者らは、針処置に適した適切なVR体験は何も存在しなかったことを見出した。VRは針処置の間に子供の気をそらせるために使用されているが、処置のために複数の技法を計時されたTV体験に組み込むことは知られていなかった。
【0084】
3.設計:
・ストーリーボード(storyboard)およびワイヤーフレームが設計されている:処置内の活動を識別し、これらの活動の各々に関する特定の時点を識別するために、複数の医療処理が観察されて計時される。このストーリーボードは、VR体験を処置とコレオグラフィするために使用される。ストーリーボードは、これらの時点の間に生じる特定のタイミングおよび活動を反映するように設計される。各活動に対するオペレータ(臨床医/オペレータ)および(患者)の要件は、ストーリーボード開発に供給される。
【0085】
・ストーリーボードおよびワイヤーフレーム上で反復するために、小児科医、開発者、および設計者により有効なインプットが提供される必要がある。ストーリーボードの特定の重要性は、処置のステップの間に予期される身体的感覚、および、VR体験ナラティブの創造的な要素の選択を導く、それぞれの感覚に対する所望の知覚置換を特徴づけることである。たとえば、図13は、物理的処理およびこれらの処置に一般的に予期される生理的な痛みのレベルおよび強度の例を示す。異なる処置、たとえば、拭取りと比較して針刺は異なる痛みレベルおよび強度レベルを有し得ることに留意されたい。これらは、処置の物理的側面(たとえば、針のサイズ、開いた創傷の拭取りか、または閉じた創傷の拭取りかなど)に応じて変化し得る。処置の実際の物理的性質は変更され得ず、VR体験の目的は、VR体験への没入により、患者の知覚がより楽しい体験の知覚に置換されるように、脅迫感を少なくする何かおよび/または身体的処置によって引き起こされるが、より少ない痛みに関連するか、または(松ぼっくりの突きまたは猫のざらついた舌触りなど、幾分痛いとしても)楽しい何かに身体的感覚の知覚を置換することである。図13は、異なる創造的シナリオにおいて身体的感覚を代替方法で特徴づけ、したがって、VR体験におけるそれぞれの感覚をリフレームするために適用され得ることを示す。
【0086】
・ストーリーボードおよび加圧テストに基づいてプロトタイプが設計される。
【0087】
4.開発:
・この段階で、プロトタイプVR体験が開発されテストされる。
【0088】
・Unity(C#)および作成された複数の構造を使用して、プロトタイプVR体験が開発された。
【0089】
5.精緻化およびユーザテスト
・この段階で、オペレータ(臨床医)およびエンドユーザ(患者、家族)の観点からそれらのVR体験を理解するために、ユーザテスト(たとえば、100件を超えるユーザテスト)が実行される。
【0090】
・ユーザフィードバックの重要な側面は以下を含む:
○ストーリー展開
○タイミング:そのテストが各処理(たとえば、予防接種、指刺テスト、静脈穿刺、静脈カニューレ)のプロセスおよび段階を正確に反映したことを確実にするため。タイミングは、精緻化および再テストされ得る。
○視覚的およびサウンドスケープ開発
・品質保証テスト、技術的最適化
6.開発/実装、統合
・まずは臨床的試行による、病院およびクリニックに対するVR体験の展開
・臨床的試行の間に潜在的なソフトウェア改変が存在することになる。
【0091】
・この段階はまた、VRデバイスおよびVR体験をやはり精緻化し得る、その試行および使用法からのデータの収集および分析を含み得る。
【0092】
本発明者らによって実行された調査研究から、本発明者らは、処置固有のVR体験に関する、またはVR体験における処置の再特徴づけ手順に関するコア要件を識別した。図11は、VR処置固有の体験の開発に関連するコア技法のフレームワークを示す。
【0093】
フレームワークは、5つのコア構成要素からなる:
1.処置固有:処理段階を含み、各段階に対する処置に固有のタイミングおよび作用を定義する。
【0094】
2.VRシナリオ内に情報を提供して、コンテキスト化するための認知技法。
【0095】
3.処置からの感覚刺激の知覚を調節するための感覚技法
4.物理的側面
5.患者、家族、または介護者および臨床医に対する教育情報およびサポート。
【0096】
処置固有の側面は、その処置に必要とされる物理的ステップおよび活動に関する。しかしながら、多くの処置の場合、一般的な処置段階は、処置情報を提供し、VR体験を較正および開始するための初期導入およびオリエンテーション段階を備える、図12に示したものと一致し、処置に関する情報は、VRコンテキスト内においても提供され得る。一般に、処置に対する重大な活動に向けて患者の準備を整えることを目的とするリラクゼーション段階が使用されることになり、深呼吸などのリラクゼーション技法に対する指示は、VR体験を介して提供され得る。リラクゼーションのために、動画およびサウンドなどのVR体験の側面も利用され得る。この段階の間に、患者は、処置に向けてやはり準備が整えられてよく、この処置に対して指示された活動と感覚の両方がVR体験内でコンテキスト化され得る。次の段階は、一次処置的活動(すなわち、注射を打つ、針を挿入する、歯科の掘削、接骨、創傷の洗浄または洗浄など)が発生するクリティカルポイント(または、複数のクリティカルポイント)であり、この段階の間のVR体験の特性は、その感覚の患者の知覚を、脅迫感がより少ない、または肯定的な体験に改変することを目的として、開業医による要求に応じて患者に(すなわち、静止状態を保つ、深呼吸するように)指示し、臨床活動からの感覚をVR体験における肯定的なコンテキストにリフレームすることである。次の段階は、この場合も、VR体験のコンテキストで感覚の再想像を容易にする、残りの処置的活動に対応する。最終的なリラクゼーション段階がこの処置を完結させる。これらの段階の各々の中で、処置の再想像を可能にするために、VR体験において認知技法、感覚技法、および物理的技法の組合せが使用され得る。
【0097】
VR体験の主要側面は、処置に関連する知覚をリフレームすることである。したがって、初期ステップの場合、処置に関連して予期される患者の反応、たとえば、予期される痛みおよび不安の反応、ならびにVRを介したターゲット応答知覚への所望の置換を理解することが重要である。図14aおよび図14bは、各処置に対する痛みおよび不安の反応のモデル、ならびにその処置の間の患者からの認知的存在感(cognitive presence)または反応に対する要件を示す。このモデルは、各処置に対する置換VR体験またはAR体験のリソースライブラリを開発するために使用される。これらのモデルは、患者の年齢および/または精神力に基づいて変化し得る。
【0098】
参照を容易にするために、現在の説明は、確立されたVRコンティニューム用語を使用し、ここにおいて、「実環境」は、完全に実世界のオブジェクトおよび対話を指し、「拡張現実(AR)」は、コンピュータ生成コンテンツを実世界に付加することを指し、「拡張仮想感(AV)」は、実世界情報をコンピュータ生成環境に付加することを指し、「仮想現実(VR)」は、完全なコンピュータ生成環境を指す。ARおよびAVは、「複合現実」という包括的用語と呼ばれる場合もある。
【0099】
処置の間に患者をサポートするための最も適切な方法を決定するために使用される極めて重要なフレームワークは、3つのコンティニュームによって決定される:1.医療処置によって生じる痛みのレベル;2.患者/クライアントの基本的な不安のレベル;3.処置によって必要とされる(たとえば、存在し、患者が特定のコマンドまたは活動に従うことを必要とされると認識する必要)、または患者/クライアントによって選好される(たとえば、患者は、処置ステップを完全に認識することを選好するか、大きく気をそらされることを選好するか)。図14aは、3Dブロックモデルに関する軸としてこれらの3つのコンティニュームを示すが、これは、スペクトルとして等しく概念化され得る。患者が受けている処置がどこにあるか応じて、これらのスペクトルがVR手法を決定する。いくつかのシナリオを示すために、図14bでは、各スペクトルは、(現実には、これはコンティニュームになるが、人為的に簡単に保つために)「低」および「高」に分割されている。図14bは、この簡素化されたブロックモデルのセクタおよび患者の反応が各セクタに対する特徴と見なされ得る処置のタイプを示す。
【0100】
治療上のVR置換手法は、基本的な患者要件および処置要件に応じて異なることになる。これが適用可能な一般的なシナリオのいくつかの例は、以下を含むが、これらに限定されない:
ブロックB(弱い痛み、高い心配感、高い存在感および協力レべルが必要とされる):たとえば、患者は、身体検査で協力することが必要とされ、したがって、そこに存在し、臨床医から指示を受けることが可能であることが必要とされ、室内で実際のオブジェクトと潜在的に相互作用する、たとえば、何らかの体重計の上に立つ、筋力のために実際のオブジェクトを押すことが必要とされる。ARメディア:気持ちを落ち着かせ、安心感を与えることになり、患者(たとえば、子供)が何を行うことが必要とされるかについての情報を提供し、説明することになる。
【0101】
ブロックD(強い痛み、高い心配感、高い存在感および協力レベルが必要とされる):たとえば、患者は、術後に身体的なリハビリテーションを必要とする。痛く、不安を引き起こす可能性があるが、患者は、実世界に存在し、異なる訓練に協力することも必要とされる。AR/VRメディア:痛みの感覚をより肯定的な方法でアクティブにリフレームすることになるが、リハビリテーション訓練をやはり楽しいものにする。たとえば、これは、進歩および褒美システムに対する視覚的プロンプトを用いてゲーム化され得る。
【0102】
ブロックH(強い痛み、高い心配感、低い存在感レベルが必要とされる):たとえば、患者は、針挿入または創傷の包帯交換など、侵襲的な医療処置を受けている場合がある。VR:患者が処置室から視覚的に逃れ、気をそらされることを可能にし、痛みをより好適的な感覚に置換することになる。
【0103】
VRに関して、痛みおよび不安に対する患者の知覚を改善するように操作され、置換され得る異なる感覚が存在する。いくつかの例は、以下を含む:
身体的感覚(たとえば、指穿刺針は松ぼっくりで遊ぶことに置換され、創傷の洗浄は猫が舐めていることに置換される)。
【0104】
視界(たとえば、針による採血は魚が素早くつつくことに置換される)。
【0105】
サウンド(たとえば、Jティップ(J-tip)局所麻酔注射器のポップ音は水しぶきに置換され、MRIスキャナノイズは伝ってくるボートのエンジン音に置換される)。
【0106】
匂い(たとえば、焼灼はキャンプファイアーでスクラップを燃やすことに置換され、消毒洗浄はモップバケツまたは森林樹液の匂いに置換される)。
【0107】
医療処置は、患者および家族にとって、無気力およびストレスを感じさせる場合がある。本発明者らは、本発明者らエンドツーエンド処置工程全体を通して子供をサポートすることによって、子供が医療処置に対処する能力を強化することができること認識した。これは、教育およびシミュレーションによって処置に向けて家族の準備を整えることと、痛みの感覚をより肯定的な感覚に置換することと、処置後にフィードバックの報告を受け、またそれを提供することを含む。この段階はまた、処置担当者(proceduralist)の準備、および場合によっては、彼らが処置、VR体験、および、必要である場合のみ、追加の薬剤による疼痛管理の統合から可能な最高の体験を提供し得ることを確実にするために、処置担当者の訓練を含み得る。エンドツーエンドフレームワークの概要が図15に示されている。第1の段階は、子供および家族が、処置に対する理論的解釈、何を期待すべきか、彼らが何をする必要があるのかを理解し、VRを試行することを可能にする教育段階である。この第1の段階は、従来の2DメディアもしくはVRまたは両方の組合せを使用し得る。第2の段階は、子供および家族が、キャラクターを選択し、処置を受けるそのキャラクターに何が起こることになるかをウォッチすることを可能にする観察段階である。この段階は、従来の2DメディアもしくはVRまたは両方の組合せを使用し得る。第3の段階は、子供が処置室に慣れ、そのエリアで遊び探索し、処置をシミュレートし、必要に応じて調整された要素(たとえば、音量)で練習することを可能にする練習段階である。親または臨床医は、たとえば、その処置において使用するために異なるVRシナリオを選定することによって、この段階の間に処置および/またはVR体験の要素を修正することができる。この段階は、従来の2Dメディア、AR、もしくはVR、または組合せを使用し得る。シミュレーションに対する患者の反応に関するデータがこの段階の間にキャプチャされ得る。第4の段階は、子供が彼らのニーズを査定するために模擬処置を受けること、処置をシミュレートし、反応およびその処置に適合するための能力を監視する査定段階である。この段階は、従来の2Dメディア、AR、もしくはVR、または組合せを使用し得る。シミュレーションに対する患者の反応に関するデータがこの段階の間にキャプチャされ得、たとえば、これは、VRデバイスまたはそのシミュレーションの間に使用される他のデバイスを介して自動的に行われ得る。臨床医は、必要に応じて、この段階の間に患者に対する修正を行うことが可能であり得る。第5の段階は、臨床医がシミュレーション環境で患者の反応を検討し、その処置に対する適正を査定し、子供のニーズに最も適した戦略および手法を計画することを可能にする臨床総説である。この段階は、従来の2Dメディア、AR、もしくはVR、または組合せを使用し得る。第6の段階は、処置に向けて子供および家族の準備を整えること、処置前の不安をサポートし、処置の重要な側面に関して子供および家族に思い起こさせ、待機する間に子供の気をそらす準備段階である。この段階は、従来の2Dメディア、AR、もしくはVR、または組合せを使用し得る。第7の段階は、処置の間に子供をサポートし、気をそらさせ、知覚をリフレームまたは置換し、痛み、不安、動揺を軽減させ、協力を高めるために、処置の間にVRまたはARが使用される処置段階である。この段階の間に、VRまたはARは、処置に関する患者の知覚を修正することができる。最後の段階は、すべての参加者が体験に関してフィードバックを提供すること、何が役に立ち、何が改善され得るかを査定し、選好を明確にし、今後のニーズを決定することができる評価段階である。患者は、複数の処置を受けること、または処置を繰り返すこと(たとえば、化学療法または透析を受ける患者)が必要とされる場合があり、したがって、評価段階は、進行中の治療に関するフィードバックループおよび個々の患者に対する結果を改善するためのVR体験の継続的調整の一部を形成し得ることを諒解されたい。
【0108】
MRI処置に適用されるエンドツーエンドフレームワークの特定の例が図16に示されている。この例では、教育段階は、子供および家族が、子供がなぜMRIを受けるのか、造影剤を注入するための針を含めて、MRIスキャンに何が必要となるか、および20分にわたるMRIスキャナにおいて彼らが静止する必要があることを理解することを可能にする。子供は次いで、子供がVR体験を通してMRI処置のセクションまたは全体を経験することができる練習段階に進む前に、MRI処置を経験するためにウォッチするキャラクターを選択することができる。これは、子供が、自宅練習すること、MRI室に慣れること、MRI室を探索すること、処置をシミュレートすること、および、子供がシミュレーションに耐えている場合、徐々に大きくなる、よりソフトなMRIサウンドで練習することを可能にする。査定段階は、子供が、自らのニーズを査定するためにVRにおいて模擬処置を受けること、針処置、IV造影剤注射、およびMRIスキャンをシミュレートするための模擬処置を経験することを可能にする。VRまたは他の機器は(場合によっては、臨床医の観察とともに)反応を監視するために使用され得、センサーは、子供が処置に順応し得るかどうか、具体的には、MRIスキャンのために静止状態にとどまる要件を査定する。総説段階は、臨床医が、シミュレーションに対する患者の反応を検討することを可能にし、十分なスキャン期間にわたって静止状態を保つ子供の能力を査定し、手法、たとえば、覚醒状態でのスキャンが必要とされるかまたは鎮静レベルが必要とされるかを計画する。処置の準備において、待合室でVRは、造影剤のための静脈注射針に関して子供および家族の準備を整え、処置前の不安をサポートし、たとえば、痛みおよび不安を最小限に抑えて、静脈注射針の挿入を可能にし、待機中に子供の気をそらせる。VRがMRI室で使用され得る場合、これは、MRIスキャンの間に子供をサポートし、気をそらさせ、大きな音など、知覚をリフレームまたは置換し、痛み、不安、動揺を軽減させ、スキャンの間の協力および静止状態を保つことを高めることをサポートする。MRIへの干渉を回避するために、MRI室において、MRI対応VRヘッドセットが必要とされる。しかしながら、MRI室の外の準備段階は、VRを必要とし得る。MRI室で完全な視覚的VRが使用され得ない場合、MRI環境の想像的訓練およびVR体験、ならび聴覚VRおよび/または室内に投影されるか、または室内からスクリーン上で可視的な視覚画像によって、子供は依然としてVRシナリオを想像し、鎮静または他の介入に関する要件を低減して、処置への順応を高めることができる。
【0109】
処置後に、子供および家族は、何が役に立ったか、何が改善され得るか、および今後の処置に対する参考を報告する。臨床医は、一般に、使用された手法(たとえば、軽い鎮静、低減されたサウンド、落ち着くVR)、および今後の処置に対して推奨される何らかの修正を報告する。
【0110】
このエンドツーエンド工程は、患者の結果を改善する一連のVR体験を開発するための手法を導く、本発明者らが開発したフレームワークである。処置に対するVR体験は、実世界体験を反映し、VR体験は、実世界体験に対して調整され、計時される。体験をリフレームするために、これが子供に対する我々の針処置がどのようにミラリングされるかの一例が、図17に概説されている。この例は、実世界体験(採血)を子供のVR体験(水中例)でミラリングする。実体験のそれぞれの感覚は、仮想世界において対応する経験を有する。物理的な鎮静が置換されたVR体験として認知され、患者の体験がVR世界の体験として知覚されるように、実生活とVRとがコリオグラフされる。知覚の調節は処置に対して軽減された痛みおよび不安を意味するという発想である。
【0111】
VR体験は、あなたがその処置、治療目的、および個々のエンドユーザの選好に基づいて、VR体験をカスタマイズすることを可能にするVRリソースライブラリから設計および作成され得る。これらの構成要素は、治療VR体験の土台を形成する。いくつかのVR体験は、特定の処置および目的に対してすでに事前にプログラムされているが、個々のユーザに対してカスタマイズされ得る。個人のニーズおよび必要とされる処置に従って、他のVR体験が作成され得る。本発明者らはVR体験を参照するが、これらは、何らかの実世界知覚を可能にし、完全没入型VRとして十分相互作用する、複合現実/ARを含めて、VRコンティニューム上の体験であってよいことを諒解されたい。
【0112】
図18は、臨床医に制御される/変化側面、処置、およびVR体験を概念化し、これらは、処置の要件、およびVRからの望ましい結果(たとえば、処置の間の患者の順守、疼痛管理)に実質的に関係する。患者の変化/制御可能側面は、患者および処置固有のVR(または、AR)体験を構築するための知覚調節の選択を導くことに関係する。VR体験は、処置、治療目的、および個々のエンドユーザ選好に基づいて、VR体験のカスタイマイズを可能にするVRリソースライブラリから設計および作成され得る。これらの構成要素は、治療VR体験の土台を形成する。いくつかのVR体験は、特定の処置および目的に対してすでに事前にプログラムされている場合があるが、個々のユーザに対してカスタマイズされ得る。個人のニーズおよび必要とされる処置に従って、他のVR体験が作成され得る。
【0113】
リソースライブラリに関してさらなる詳細を提供するために、1つの非常に重要な構成要素は、現実よりも恐怖感が少ない、より肯定的な方法で、実世界の処理要素が仮想世界に置換される方法である。置換は、実生活の感覚を完全に置換する(たとえば、仮想現実世界は実世界のビューを完全にブロックし、置換する)か、または拡張することができ、この場合、実世界は依然として体験され得るが、特定の要素は、コンピュータ生成知覚情報によって「拡張される」(たとえば、サウンドまたは匂いは、肯定的な知覚を強化する補完感覚によってより肯定的にされる)。
【0114】
VR体験を開発するためのフレームワークの態様が、次に、より詳細に論じられる。
【0115】
1.処置固有:VR体験は、1つの特定の処置(または、関係する処置のグループ)に焦点が当てられ、それに対してカスタマイズされる。この原理は、VR体験が最適化され、その処置がターゲットにされることを可能にする。たとえば、本発明者らは、針処置に対する一連の3つのプロトタイプVR体験を開発した。これらの体験は、処置全体として特に計時され、異なる処置段階を反映する。たとえば、静脈穿刺(血管から採血するための針)は、セットアップから最終的な手当てが完了するまで平均的に3~5分かかる。静脈穿刺に対するVR体験は、処置全体(3~5分)が続くようにカスタマイズされ、ストーリー展開は、特定の処置段階を反映するように開発されている。処置時間は異なる場合があり、それに応じて、異なる長さ、たとえば、1分(たとえば、注射のため)、および3分(たとえば、静脈穿刺のため)、ならびに7分(たとえば、IVカニュレーションのため)のVR体験が生成される。異なる持続時間またはステップ数を有する、他のタイプの処置も想定される。
【0116】
a.本発明者らは、針処置を、オペレータおよびエンドユーザからの特定の作用を必要とする、5つの段階に分類した。これらは、各段階に関するタイムフレームおよび技法を指示する図12に示されている。
【0117】
b.VR体験のタイミングは、エンドユーザによって部分的に制御される(たとえば、VR体験が次の段階に移る前に、患者が見る/対話する必要がある特定の数の魚が存在する)。患者がその時間期間内に対話/タスクを完了しない場合、VR体験が次の段階に自動的に移るように、タイムアウトも存在する。
【0118】
2.認知技法:患者に気力を与え、彼らの処置経験を高めるために、複数の心理学的技法および情報提供技法がVR体験に組み込まれている。これは以下を含む:
a.処置に関する情報:オーディオスタイルおよび視覚的スタイルで提供される。これは、処置のステップ、何を期待すべきか、および各段階において患者は何をする必要があるか(たとえば、腕を伸ばす、静止状態を保つ、筋肉を弛緩させる)について説明することを含む。より具体的には、情報は以下の通りである:
i.適切:特定の視聴者、年齢、文化、および言語をターゲットにする。
【0119】
ii.中立:処置に関する情報は、恐怖感をもたらさず事実であるように意図的に選定される。たとえば、脅迫的または否定的な言語(たとえば、「この針を入れさせてくれないなら、あなたはずっと病気のままですよ」)ではなく、肯定的な言語(たとえば、「あなたの身体が早く治るようにあなたにお薬をあげるために肌の下にストローを入れますよ」)を使用し、「刺す」または「痛む」などの表現を避ける。
【0120】
iii.リフレーミング:患者がより肯定的な方法で処置の感覚的な詳細を再想像することができるように、情報はVR内でリフレームされる。たとえば、麻酔洗浄について説明するために「腕に冷たい波が打ち寄せるのを感じるかもしれません」、針の挿入をリフレームするために「魚がこんにちはと言いいに来て、素早く餌をつついたのを想像して」。これは、患者が何を見ることになるか、におうことになるか、聞くことになるか、感じることになるかを予期することを可能にするが、これらの感覚をリフレームするためにVR体験を使用することができる。
【0121】
iv.プロンプトおよび指示:処置の各段階に向けて患者、家族、および臨床医の準備を整える、彼らをサポートするためのVR体験を通して提供される。たとえば、患者は(血液検査のために)腕を伸ばし、(針挿入の間)静止状態を保つように求められる。
【0122】
b.ストーリー展開:各VR体験は、明確なストーリー展開を有し、患者に目的を与える。ナラティブおよび目的は、患者が、処置ではなく、VR体験に集中することを可能にする。たとえば、患者はVR体験の開始時に短い説明を受ける「あなたのお仕事は鯨を見つけて、鯨が大丈夫なことを確認することですよ」。
【0123】
c.リラクゼーション:体験を通して深呼吸および筋肉の弛緩のプロンプトが実装される。リラクゼーションに意図的に集中することを促進するリラクゼーション訓練がVR体験の早期に導入され、次いで、処置の間にプロンプトが出される。これは、患者のストレスを軽減するのに役立つ。
【0124】
d.気をそらせる:VRにおける没入型の気をそらせる技法は、患者が処置の間に病院環境を一時的に「逃れ」、没入型で対話型の楽しい環境に入ることを可能にする。
【0125】
3.感覚技法:VRは、患者が気をそらし、より良い処置体験を可能にする、その中に吸い込まれる没入型の多感覚体験を提供する。
【0126】
a.多感覚体験:すべての感覚(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚)を組み込み、彼らの感覚体験に一貫したナラティブを提供する。たとえば、針挿入段階が魚に餌を与えることとしてリフレームされるとき、子供は魚を見(これは魚が動くようにアクティブ化する)、アクティブ化されると、魚が楽譜を演奏するのを聴き、子供の腕の上を魚がつつく/腕の上で餌を食べているように感じる(すなわち、臨床医は触って血管を探し、針を挿入する)。処置がやはり鎮静下で実行される場合、手術用マスクおよびガス麻酔剤の匂いおよび味は「ダイビング」マスクを着用しているとしてリフレームされ得、深呼吸をして泡を吹くように助長され得る。ナラティブのこれらの一見創造的なタイプの側面は、以下の基準に基づいて注意深く選択され得る:
・身体的処置の間に経験される感覚と少なくとも同様の関連する身体的感覚を有する
・たとえば、オペレータによって必要とされるように身体的に反応するように、たとえば、静止状態を保つように、手足の位置を変えるように、要求された時点でまたは速度で息を吸うように患者を促す。
【0127】
・脅迫的でない
・感覚が仮想世界の部分を感じることを可能にするようにナラティブのコンテキスト内で適切である
・場合によっては、魅力的に、おもしろく、愉快などにする。
【0128】
b.対話性:VR体験は、この場合、オブジェクトを見ることによって、対話するように設計されるが、ハンドヘルドセンサーまたはコントローラおよび音声を介してもよい。対話性は、選定ベースであり、したがって、患者が、自らがそのオブジェクトと対話することを望むか否かを選定することを可能にするように、オブジェクトは意図的に中心から離して配置させる。これは、患者がより気力を持ち、自らの状況および環境を掌握することを可能にする。これは、患者の対話が完了し、次の段階に準備が整ったことを指示するまで、たとえば、次の段階を遅らせることによってVR体験内の対話を監視すること、および臨床医の活動を調整させるナラティブに基づいて、処置のペースに対して何らかの患者の制御を可能にする。次の段階に対する準備状態は、センサーからの生理学的フィードバック、すなわち、心拍数、呼吸数、瞳孔拡張、血液酸素化などに基づいて、VRデバイスによって測定されてもよい。
【0129】
c.感覚情報の特定のタイミングは、処置において何が発生しているかを反映するように設計される。(図12を参照のこと)
d.感覚情報を調節する:感覚情報の量は、オペレータ(たとえば、臨床医)または介護者(たとえば、家族)によって制御(増大/低減)され得る。たとえば、患者がその視界の中のオブジェクトの数に圧倒される場合、オブジェクトの数は低減され得る。患者が、飽きた場合、または気をそらされる量を増大することが必要であるとき、感覚情報の量は増大され得る。この調節は、音声、センサー、アクティブ化、入力、または生理症状において検出された変化によってトリガされ得る。
【0130】
e.患者がVRに安心し、VRに向かうのを助けるために動画技法が組み込まれている。たとえば、VR体験の開始時にそこからエンドユーザがダイビングするボートは、VR内でユーザを安心させ、VRに向かわせるように、エンドユーザが水中にいるときにビュー内にとどまる。同様に、オブジェクトは、子供に直接的に働きかけず、脅迫的でない仕方で働きかける。
【0131】
4.物理的技法:
A.ヘッドセットを介した視覚ブロック:患者は、ヘッドセットを着用することによる物理的な視覚ブロックによって、発生している処置(たとえば、針、失敗した試行、血)を目にしない。これは、多くの患者に選好されるが、処置の部分をウォッチすることを望むかなりの少数派が存在する。これらの患者は、VR体験内で自らの仮想腕、および魚との対話を見ることができる。これは、代替として、自らの実際の腕を見ているが、上部に魚をオーバーレイさせて、臨床医が針を挿入する患者のビューを置き換える、患者との拡張現実であり得る。
【0132】
b.処置配置:配置プロンプトは、患者が処置の間に特定の位置につくように促す。たとえば、患者はその腕を伸ばし(アバター腕に反映される)、(たとえば、イルカに乗るために)特定の方向を向くように求められる。
【0133】
c.患者を静止状態に保つ:これは、処置を首尾よく実行するための臨床医の能力を促すために、患者による予測可能な身体運動を推奨する、本発明者らのVR体験の重要な特徴である。たとえば、これは、以下によって推奨される:
i.調節された視野:視覚的活動量は視野の70~100度に限定される。定義された視野内の活動は、患者が静止状態を保つことが重要である間に患者がその上半身の動き低減することを促す。
【0134】
ii.プロンプト:患者が静止状態を保つことが特に重大であるとき
5.指示情報供給:指示および情報を患者、家族、および臨床医に提供するように、これらの技法は組み合わされ、組み込まれる。指示は、患者が処置の間に彼らが何を求められるかを理解するのを助け、情報は、処置および/または感覚体験に対するコンテキストおよび理論的解釈を提供する。指示および情報は、臨床に「最善の実施」をやはり明らかにする。臨床医は、処置の各段階において指示に従うことが可能である。臨床医は、VRスクリプトに繰り返し暴露されることにより、言語および情報の供給スキルを手に入れることになる。
【0135】
身体的処置とVR体験との間のコレオグラフィは、処置要件から、特に、処置ステップに対する特定のタイミングで生じる。このタイミングは、固定されてよく、または患者または臨床医からのフィードバックに反応してもよく、たとえば、患者が十分リラックスするのを待ってもよく、処置のいくつかのステップは、状況に応じてより長くてもまたはより短くてもよい(すなわち、歯科の掘削、または献血)。したがって、VR体験は、一般に、VRを用いた処置の実行をコレオグラフィするために使用される固定タイミングおよび臨床医とRV体験との間の対話ではなく、処置ステップを中心に(たとえば、ナラティブまたは他の合図を通して)構造化される。図19は、VR(または、AR)患者サポートから恩恵を受けることができる3つの処置のステップを示す。一般的な処置のステップは、医療リソースライブラリ内で定義され得る。与えられる例は、静脈穿刺(採血)、腰椎穿刺(髄液採取)、および窒素ガス麻酔である。静脈穿刺の場合、ステップは以下の通りである:1.導入2.機器をまとめる3.止血帯を当てる4.皮膚を洗浄する5.針を挿入する6.採血する7.針を抜く8.絆創膏を当てる。腰椎穿刺の場合、ステップは以下の通りである:1.導入2.機器をまとめる3.患者を正しい位置に配置させる4.触れて脊髄の位置を確かめる5.皮膚を洗浄する6.針を挿入する7.タイレットを抜く8.髄液を採取する9.針を抜く。窒素ガス麻酔の場合、ステップは以下の通りである:1.導入2.機器をまとめる3.患者にマスクを当てる4.深呼吸を促進する5.鎮静する間、監視する。
【0136】
医療処置の各ステップに対して、VR置換ライブラリは、処置の身体的感覚をリフレームするか、またはリラクゼーションおよび患者の順守を促進するため使用され得る、複数の異なるVRシナリオを記憶することができる。VR置換は、図13および図14a~図14bを参照して上記で論じたモデルに基づいて開発され得る。置換は、VR体験を構築するために参照を容易にするための創造的テーマによってグループ化されてもよい。図20は、窒素ガス麻酔処置のステップ、および2つの代替テーマ、すなわち、宇宙テーマ、または水中テーマを使用した対応するVR置換の一例を示す。導入段階の間の処置の準備ステップの場合、たとえば、熱帯の島近くのボート上でダイビングの準備をしている、または宇宙船が宇宙遊泳の準備をしていることに関して、VRテーマのコンテキストが確立される。これらのシナリオの各々において、患者の気を何らかの形でそらせ、麻酔の送達のためのマスクに関する物理的要件に十分相関する、人工的な呼吸装置の使用に対する心理状態を患者に与える。麻酔科医がその機器の準備を整えるにつれて、患者もスキューバダイビングまたは宇宙遊泳に行く準備を整える。麻酔用マスクを身につける物理的作用は、VRシナリオにおいて、ダイビング用のフェースマスクを身につけること、または宇宙遊泳のための呼吸装置を着用することと調整される。
【0137】
麻酔科医の作用をVR体験と調整させるために、可聴ナラティブが使用され得る。代替として、麻酔科医は、たとえば、ボタンまたは、「マスク/ヘルメットをつける時間ですよ」など、口頭の合図を介して、VR体験における作用をトリガし、落ち着いたら、「何度か深呼吸をして、あなたの装備をテストしてください」と患者に指示することができ、またはこれは作用を調整させるために麻酔科医よる、聴取されることになるVRナラティブの一部であってもよい。VR体験は、次いで、患者の気をそらし、麻酔が効くにつれて、気持ちを落ち着けるように患者を促すために、帯礁でのダイビングまたは宇宙に浮き上がる画像を用いるそれぞれのシナリオを続ける。
【0138】
たとえば、この単純なシナリオの場合、感覚の置換または処置ステップのリフレーミングにおいて、多くの異なる「創造的」シナリオが利用され得るが、置換の特性は、図14a~図14bに関して説明したモデルに従って望まれる方法で処置要件または反応調節に基づくことは明らかであろう。たとえば、フェースマスクを当てるステップまたは麻酔を吸引するために深呼吸をするステップの場合、予期される患者の反応は、痛みよりも一種の不安であるが、患者は、認知的に反応する、すなわち、深呼吸をする指示に従う必要があり、したがって、リフレーミングの目的は、VR体験のコンテキストでリフレームされる指示に従うために十分な認知的な冷静さを保ちながら不安を軽減することである。宇宙または水中スキューバダイビングのシナリオの使用は、楽しいファンタジーコンテキストで、身体的感覚と、処置要件を受けた指示に対する認知反応とを整合させる。水に恐怖を感じる患者の場合、ダイビングシナリオは、不適切であり得、不安を軽減するために役に立たない可能性があり、そのような患者の場合、宇宙テーマがより適切であり得ることを諒解されたい。他のシナリオ、たとえば、fairly perfume工場における香水サンプルの香をかぐシナリオ、コスチュームパーティ用にドレスアップするシナリオ、および犬の鼻のマスクを身につけるシナリオが使用され、依然として適切に呼吸することができることを確認することも可能である。VR体験の創造的コンテキストの性質は、非常に変わりやすく、同様に特徴づけられるVR置換に対して、多くの異なる創造的シナリオが適用され得ることを諒解されたい。
【0139】
それぞれの処置的作用に関して、痛み、不安、または存在感のうちの少なくとも1つにおける作用に対する知覚の調節に対するVR置換の特性が定義され得る。VR置換は、存在感に対する処置の要件および身体的感覚を誘起する作用の側面、ならびに存在感、不安、および痛みの知覚のうちの1つまたは複数における調節のためのターゲット方向に基づいて定義される。置換は、その作用によって誘起される身体的感覚と一致しない方法で身体的相互作用の側面をリフレームすることによって特徴づけられ、身体的感覚の改変された知覚を促進する。たとえば、VRコンテキスト置換作用において、作用は、身体的感覚(圧力、振動、または鋭さなど)持続時間および属性を模倣することとしてではあるが、実際の物理的作用よりも、より少ない痛みまたは不安に一般に関連付けられる対話のコンテストで特徴づけられる。
【0140】
VR置換は、患者の知覚を改変するために設計され得るが、その知覚が変わる程度は、患者によって異なり得る。たとえば、ある患者の場合、創傷の拭取りを猫に舐められることとして再想像することは、痛みではなく、ざらつきとして知覚され得るが、別の患者は、依然として何らかの痛みを伴う反応を体験し得るものの、その痛みは、置換がない場合よりも少ない。VRシステムの実施形態は、痛みの調節および等級付けに関するアルゴリズムを使用し得る。患者のフィードバック(手動または自動)を監視することは、臨床医および/またはVRシステムが、VR置換が効果的な範囲を測定することを可能にし得る。
【0141】
身体的処置にコレオグラフィされた仮想現実(VR)コンティニューム体験を生成する方法が次に説明される。この処置は、身体的感覚に関連付けられ、不安または痛みの反応を潜在的に導出する、少なくとも1つの処置的作用を組み込む。VR体験を生成するために、処置的作用の実行の順序が決定される。次いで、処置的作用の各々に関して、痛み、不安、または存在感のうちのいずれか1つまたは複数に関する知覚を修正するためのVR置換の特性が定義される。次いで、それぞれの定義されたVR置換に対して、一般的なVR体験テーマを使用して、定義されたVR体置換の特性を満たすVR体験構成要素が取得される。VR体験構成要素を取得することは、事前に準備されたVR体験構成要素のライブラリからVR体験構成要素を選択することに関連し得る。たとえば、ライブラリまたはデータベースは、テーマおよびVR置換特性によって索引付けされた複数のVR体験構成要素、すなわち、より長いVR体験を形成するために接合/編集され得る短いVR体験セグメントを記憶し得る。VR体験構成要素は、ルックアップによって取得され、テーマおよび物理的作用に関する置換特性に基づいて選択され得る。代替として、VR体験構成要素は、定義されたVR置換の特性に基づいて作成され得る。
【0142】
VR体験構成要素は、次いで、その処置に関する処置的作用の実行の順序に基づいて、VR体験内にコンパイルされ得る。
【0143】
システムの一実施形態は、仮想現実(VR)体験生成システムを含む。このシステムは、医療処置ライブラリと、VR置換ライブラリと、VR体験コンパイラとを備え得る。医療処置ライブラリは、1つまたは複数の医療処置に対する処置的作用の1つまたは複数のシーケンスを記憶する。これらのシーケンスは、それぞれの処置を実行するために必要とされるステップを定義し、場合によっては、処置ステップの実行に関する一般的な時間範囲および/またはそのステップが順に繰り返されてよいか否か(たとえば、創傷の洗浄は、創傷のサイズに応じて、複数の拭取りを必要とし得る)など、いくつかのタイミングデータを含み得る。VR置換リソースライブラリは、身体的感覚に関連付けられ、不安または痛みの反応を潜在的に導出する、それぞれの処置的作用に関して、痛み、不安、または存在感のうちのいずれか1つまたは複数の作用に対する知覚を修正するためのVR置換の定義された特性を記憶する。このライブラリは、それぞれの定義されたVR置換に関する複数のVR体験をやはり記憶する。VR体験構成要素は、物理的作用に直接的に関連するVR体験の小さな部分であり、VR体験構成要素は、1つまたは複数のVR体験テーマのコンテキストで定義されたVR置換の特性を満たす。たとえば、魚がつつくことは、針の突き、または抜糸などの作用に関連するVR体験構成要素であり、VR置換特性が様々な作用の各々に関して同じである場合、同じVR体験構成要素は、2つ以上の物理的作用との関連付けに適している可能性があることを諒解されたい。各VR体験構成要素は、VR体験が、個々のVR体験構成要素が処置ステップに基づいて順序付けされたエンドツーエンドVR体験およびナラティブにコンパイルされ得るように、処置的作用に基づいて選択されるが、一般的なテーマを有する、異なる構成要素を使用してVR体験が生成され得ることを可能にするように、テーマ(たとえば、スキューバダイビング、釣り、森林、宇宙)に従って開発される。
【0144】
VR体験コンパイラは、医療処置ライブラリから、医療処置に関する処置的作用のシーケンスを取り出すことによって、その医療処置に関するVR体験をコンパイルするように構成される。コンパイラは、VR置換リソースライブラリから、一般的なVR体験テーマを使用して、それぞれの定義されたVR置換に関するVR体験構成要素を選択する。選択されたVR体験構成要素をVR体験にコンパイルすることは、その処置に関する作用シーケンスに基づく。これは、作用ベースのVR構成要素をリンクさせるための追加のVR体験構成要素を知覚可能なナラティブに追加することと、VR体験をその処置でコリオグラフィすることとを含んでよく、たとえば、VR体験をリンクさせることは、処置の実行の間の物理的作用と仮想作用との間のタイミングの整合を確実にするために使用され得る(繰り返されまたは省かれることを可能にされ得る)。VR生成システムは、ソフトウェア内で実装されるコンパイラと、医療処置ライブラリおよびVR置換リソースライブラリを記憶するデータベースとともに、メモリリソースを処理する、PC、サーバ、または分散型(クラウド)など、メモリリソースを処理する従来のコンピュータハードウェア処理を使用して実装され得る。VR置換ライブラリ内に記憶されるデータは、上記で論じたように、VR置換定義とVR体験構成要素とを備えることを諒解されたい。VRリソースライブラリは、VR体験が必要とされるたびに新しいVR体験をコンパイルする必要を回避するために、処置、たとえば、一般的な処置に関する(1つまたは複数のテーマを有する)エンドツーエンドVR体験を記憶することもできる。
【0145】
VR置換特性は、VRテーマまたは創造的コンテキストとは無関係に、処置的作用に基づいて定義されることを諒解されたい。たとえば、身体的感覚の属性(すなわち、持続時間、強度、触れられる身体エリア、使用される任意の物理的デバイスの態様)、患者の認知的存在感に対する要件、および患者の反応の望まれる調節(すなわち、痛みの置換の軽減、落ち着かせる/不安の軽減)を定義すること。VR体験構成要素が、次いで、VR置換に関して創造的に作り上げられてよく、任意の数の様々な創造的シナリオが使用され得ることを諒解されたい。
【0146】
実施形態は、それぞれのVR体験が自動的に修正され得ることを可能にするように構成され得る。修正のいくつかの例は、以下を含む。
【0147】
1.センサー検出された擬人化特性、たとえば、頭囲(たとえば、ヘッドバンド内に埋め込まれたインピーダンスプレチスモグラフィ)、年齢に応じたコンテンツの予測子として声の高さ(たとえば、マイクロフォン)による、体験コンテンツおよび/または臨床医のユーザインターフェース(たとえば、示されるメニューまたはデフォルトモード)の自動修正。
【0148】
2.たとえば、オペレータがいる場所またはいない場所に追加のグラフィック図を挿入することによって、刺激を適切に改変するために、体験の長さを追加で改変するために、または処置前または処置後に音楽をプレイするために、センサー(たとえば、カメラ、音声、着用されたバンドまたはバッジ、照明または赤外線で動作する室内センサー)によって通知されるVR体験(すなわち、針処置)の自動修正。
【0149】
3.魚の前の群れを完了するのにかかった時間に基づいて、ユーザが視覚的刺激と相互作用する速度による体験の自動修正、たとえば、魚との対話をより困難にまたは容易にする(距離、数、位置)。
【0150】
4.VRデバイス上のセンサーまたはVRデバイスと通信している外部センサー/監視機器からのバイオフィードバックに基づく、体験の自動修正。
【0151】
データは、処置後分析に使用するために、たとえば、患者の報告および研究のために、VRデバイスおよび他の機器を介した処置の間に収集され得る。
【0152】
処置の間に収集されたデータは、VR体験の修正のため(処置が進行するにつれて動的に、または今後の処置のため、のいずれか)に利用されてもよい。収集されたデータは、意図、および処置または患者のニーズの複雑性に依存する。これは、以下のうちのいずれか1つまたは複数を含み得るが、これらに限定されない:
生理学的観察:心拍数、呼吸数、酸素飽和度、電気皮膚コンダクタンス
視線追跡、凝視、瞬き、瞳孔拡張
処置:タイミング、主な動き、主要段階、処置の部位、処置の成功/失敗
音声:特定の音声作動コマンドに応答するため、患者が痛みを感じているかどうか、または過度に鎮静しているかに関する指示を提供し得る、調子、音量、およびレートの変化を識別するため。
【0153】
データは、VR体験の間に収集され、以下の目的で分析され得る。
【0154】
実生活のイベント(たとえば、処置および処置担当者の作用)に対してVR体験を計時し、それに同期させる
参加者(たとえば、患者、介護者)のニーズを監視し、それに対応する
エンドユーザまたは患者の進歩を査定する
特定の処置および手法に対する患者の適正(たとえば、軽い鎮静が必要、または麻酔が必要)を査定する
今後の同様の処置における患者のニーズに関する情報を提供するために記憶する(たとえば、前回、患者の疼痛耐性は低く、したがって、VRは、今後の処置においてこれにマッチするように増大された強度を反映すべきである)。
【0155】
VRシステムの実施形態は、処置の間のVR体験の動的な修正を可能にするように構成され得る。いくつかの実施形態では、VR体験は、VR体験の供給の間に修正されてよく、図21は、このシステムの一実施形態に関するフィードバックおよび修正のループを概略的に示す。フィードバックループの目的は、ターゲット精神状態を達成する、たとえば、落ち着かせ、実質的に無痛にするためにVR体験を修正することである(これはすべての状況で必ずしも可能であるとは限らない)。いくつかの実施形態は、図21に示す修正オプションの選択のみ(または、選択なし)を実装し得ることを諒解されたい。
【0156】
体験の手動修正は、データフフィードバックに基づいてよく、オペレータおよび着用者の対話によって影響を受ける場合がある。一実施形態では、修正プロセスは、患者と臨床医の双方が、選定を有し、変更(手動)ならびに自動調整(たとえば、バイオフィードバック、センサー)を始動し得る、双対手法である。
【0157】
たとえば、患者体験の観点から、患者は、個人的な興味/選好に従ってコンテンツ(たとえば、VR体験に関するテーマ)を選定することが可能であり得る。患者は、自らがVR/AR体験に没入することになる範囲を選定することも可能であり得る。たとえば、成人患者の場合、より少ない没入が望ましい場合がある。没入レベルのオプションは、処置の準備段階で臨床医と論じられてよい。VR体験の始動とともに処置が開始すると、患者が否定的な感覚を有する場合、すなわち、不安または痛みを有する場合(2120)、ユーザは、VR修正をトリガすることができ、患者のニーズに従って、体験は修正される(2125)。たとえば、これは、感覚知覚の修正の程度を増大するためのシナリオの変更またはVR体験の改変の変更であり得る。患者が、処置の間に望む場合、たとえば、患者が、(ARの有無にかかわらず)処置を観察するできること、または気をそらせることを高め、痛み知覚を軽減することについて考えを変えた場合、患者は、没入レベルを適応すること、たとえば、VR体験にさらに没入することもできる。
【0158】
これらの変更は、通常の段階(2130)またはターゲット精神状態(2110)を促進するために、患者に提供される。修正の後、さらなる修正が必要とされる場合、フィードバックループが再度実行され得る。痛みをリフレームするためのいくつかの実施形態では:VRは、以下からのフィードバックに基づく、痛みの調節および等級に関するアルゴリズムを使用する:
バイオフィードバック:センサー、警告(以下のバイオフィードバックセクションを参照のこと)
自然言語検出:患者が何を言っているか(動揺、特定のオブジェクト、色など)に応じて、刺激およびコンテンツの変更を選択するアルゴリズム。
【0159】
これは、個別化された修正:身体的/感情的/精神的な痛み、不安/動揺-検出し、処置を通じて患者をサポートする。このシステムのいくつかの実施形態は、身体的に気をそらすこと(接触、サウンド、または特定のオブジェクトとしてAR内で見られること)を提供し得る、対デバイスを使用することもできる。AR実装形態の場合、患者は、その「実」環境の何らかの部分を見ることができるが、これはARを通じて修正される。たとえば、処置担当者は異なって見ることができ、患者には針が見えず、むしろVRを介して、魚が患者に近づいているように示されるように、VRデバイスを介した針の追跡を可能にするために針センサーが使用され得る。
【0160】
臨床医は、たとえば、処置の痛みを伴う部分の前または刺激が増大する前に、処置変更を予期して(2140)VR体験を手動で調整することができる。代替として、この修正は、皮膚に対する針の近接性または臨床医の動きなど、環境の変化の感知によってトリガされ得る。この体験は患者のニーズを予期して修正され(2145)、ターゲット精神状態を維持することまたは達成することを促進するための変更が患者に与えられる(2130)。
【0161】
臨床医体験の観点から
バイオフィードバックを使用して、臨床医は、血管神経迷走性のエピソード、たとえば、心拍数減速に関して患者/クライアントを検出して先手を打って阻止することができる。瞳孔拡張、安静時EMG、単極誘導ECG、顔の動き、および処理時間など、他のバイオフィードバックは、患者の反応および痛み反応を指示し得る。他のバイオフィードバックは、皮膚コンダクタンス、心拍数(たとえば、オキシメトリによる)EMGを含み得る。
【0162】
別の修正は、環境雑音検出に応じて、VR体験用の音量を上げ下げして修正することであり得る。たとえば、歯科医の掘削または吸引など、環境雑音を阻止するか覆うため。
【0163】
臨床医に有用なバイオフィードバックに加えて、実施形態は、VR体験の自動修正をトリガするためにバイオフィードバックを利用することもできる。たとえば、患者に対するバイオフィードバック監視ベースラインが確立され得(2150)、次いで、VRシステムは、それらの変更がVR体験に対して患者の肯定的な反応を指示するか、または否定的な反応を指示するかを決定するために、アルゴリズム(2155)を使用して自動的に分析される、そのベースラインからの変更に関するバイオフィードバック(すなわち、瞳孔拡張、顔の動き、デバイスを介して監視される患者のノイズ、またはECGなど、他の機器からのバイオフィードバック)を監視する。変動がしきい値を超える場合、VR体験は、自動的に修正され得(2160)、たとえば、患者が存在感および患者からの認知的応答を必要とする処置のステップに対して警報されるにはリラックスし過ぎている場合、VR体験と相互作用するようにまたはVR体験によってシミュレートされるように(たとえば、質問に答えるように、または新しいキャラクターに挨拶するように)患者にプロンプトが示されてよく、たとえば、照明/外的に可視のディスプレイまたは可聴警報を介して臨床医に警告が出されてもよい。代替として、否定的な指示しきい値を超えた場合、VR体験は、痛みまたは不安の反応の調節を増大させるように自動的に修正され得る。変更に対する患者の反応が肯定的である場合、ターゲット精神状態(2110)を達成すること目指して、変更は継続されてよい(2165)。
【0164】
VRシステムの実施形態は、テレメトリを介してスクリーニングテストを可能にするように構成され得る。たとえば、処置シミュレーションのためにVRを使用して患者を遠隔に監視するために。VRデバイスは、VR体験の間にキャプチャされたデータを、臨床医に、または電子医療記録内に含めるために、リアルタイムでまたはVR体験の終結の後で送信するように構成され得る。このデータは、特定の処置に対する患者の順応性(たとえば、MRIスキャンのために静止状態を保つ、シミュレーション、練習持続時間またはストレッチ持続時間、脱感作療法に対する反応など)を査定するために利用され得る。VRに対する患者の反応からのキャプチャデータは、処置を継続するためにVR体験を調整するために、たとえば、VR体験に関するシナリオに対する選好を理解するために、または様々なVR置換に対する個人の調節度合を理解するために、入力され得る。たとえば、痛みの肯定的な置換、また、どの置換シナリオがより高い効果を提供し、どの置換シナリオがより低い効果を提供したかを記録する。今後のVR体験に対してこれが回避され得るように、どのシナリオが肯定的な不安反応(たとえば、水中または飛行の下で)を呼び起こし得るかにやはり留意する。
【0165】
このVRシステムの実施形態は、部屋からのフィードバック、たとえば、温度、環境雑音、VR体験をその環境により近づけて整合させるために、または雑音など、環境障害をマスキングするための、人々または機器の近接性に基づいて、VR体験の調節を可能にすることもできる。
【0166】
修正は、VR体験またはVR処置の個別化された修正を与えるために、前のヘルスケアデータ、たとえば、電子医療記録(EMR)に基づいてもよい。たとえば、EMRは、処置の成功を高めるようにスタッフを指導するために、成功したカニュレーション部位、拘束の必要性などに関する履歴情報を提供し得る。
【0167】
このシステムの実施形態は、特定の患者人工、プロセス、および処置に関する成功要因およびリスク要因を理解するために、複数の処置からの患者データを分析するための人工知能(AI)または機械学習アルゴリズムを利用するように構成されてもよい。AIの利用は、VR体験の患者固有のカスタマイズ/個別化の改善された自動化を可能にし得る。
【0168】
感覚の置換は、VR体験の間に、手動と、自動化フィードバックループに基づいての両方で、修正され得る。これは、患者、処置、および臨床医のニーズに最もマッチするように、VR体験を動的に変更することを可能にする利点を有する。フィードバックループは、肯定的フィードバックと否定的フィードバックの両方に対して機能し、それに応じて応答する。
【0169】
このVRシステムの実施形態は、針、他の処置、歯科、手当てなど、医療処置の間の疼痛管理のために使用され得る。これらの処置の間に、患者を体験から離し、および/または気をそらせるために、痛みはVRを介して管理される。これは、患者が実環境から「逃げ」、身体的感覚をリフレームすることを可能にする。
【0170】
このシステムのいくつかの実施形態は、恐怖症またはリハビリテーションのための個別化された、または適応性のあるVR治療プログラムのために利用され得る。これらの実施形態では、ユーザは、段階的な手法を使用して恐怖症に直面することを誘起し得るかまたは必要とし得る体験環境に没入し得る。これは、以下を可能にする:恐怖感を感じるオブジェクト/シナリオの段階的脱感作;VR体験は、VR環境において恐怖症に対する暴露を増大または低減するために、上記で論じたように、反応の査定に基づいて自動的に修正し得る。
【0171】
実施形態は、たとえば、リハビリテーションプログラム用の環境でユーザを「楽しませる」ことを可能にする、ゲーム化、インセンティブ化(incentivisation)のためにVRを使用して、リハビリテーションのために使用されてもよい。これは、特定の医療状態に対するリハビリテーションおよび体操を含み得る。
【0172】
VRシステムの実施形態は、専門的プログラムと消費者教育プログラムの両方の教育のために使用されてもよい。たとえば、VR体験は、スキル練習のためにまたはスキルテストのために、たとえば、診断、脳卒中または心臓発作の症状を識別するため、または、知識を構築するため、たとえば、臓器に関して学習するために、セットアップされ得る。VRは、医療、介護、および関連する健康教育およびトレーニングにおいても有用であり得る。緊急(たとえば、惨事、混乱状態)、緊急状態の親または患者の教育、たとえば、心臓発作、アナフィラキシーにどのように応じるかに関するシミュレーション環境。VRは、一般的な患者教育、たとえば、吸入器をどのように使用するかについても有用であり得る。他のアプリケーションは、リラクゼーション、瞑想のための没入型映画またはビデオ、健康、およびマインドフルネスを含み得る。
【0173】
VRシステム用のアプリケーションの例は、以下の表に提供される。
【0174】
【表1】
【0175】
本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに、多くの修正が行われ得ることを当業者は理解されよう。
【0176】
任意の先行技術公開が本明細書で参照されている場合、そのような参照は、その公開がオーストラリアまたは任意の他の国において、当技術分野における一般的な一般知識の一部を形成するという承認ではないことを理解されたい。
【0177】
続く特許請求の範囲において、また本発明の選好する説明において、明示的な言語または必要な暗示により、コンテキストがそれ以外を必要とする場合を除き、「備える(comprise)」、または「備える(comprises)」もしくは「備える(comprising)」などの変形態は、すなわち、記述される特徴の存在を指定するが、本発明の様々な実施形態におけるさらなる特徴の存在または追加を排除しないように、包括的な意味で使用される。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
〔1〕
着用者にとってヘッドマウント可能であり、前記着用者以外のオペレータにとってアクセス可能なデバイスユーザインターフェースを介したデバイス制御を可能にし、装置が前記着用者によって着用されている間に、前記オペレータがデバイス較正および仮想現実(VR)体験の開始を制御することを可能にし、身体的処置に各々が関連付けられている1つまたは複数のVR体験を提供するように構成された、仮想現実デバイス。
〔2〕
前記着用者に対して較正を実行し、前記オペレータからの単一の初期化入力に応じて、VR体験を開始するように構成される、〔1〕に記載の仮想現実デバイス。
〔3〕
前記VR体験が、前記初期化入力の前に、前記デバイスユーザインターフェースを介して前記オペレータによって選択される、〔2〕に記載の仮想現実デバイス。
〔4〕
前記VR体験があらかじめ定義される、〔2〕に記載の仮想現実デバイス。
〔5〕
前記1つまたは複数のVR体験のうちの少なくとも1つが、前記着用者による身体的処置体験の再想像を容易にするように設計される、〔1〕から〔4〕のいずれか一項に記載の仮想現実デバイス。
〔6〕
前記VR体験が、前記身体的処置の間に前記着用者によって体験される感覚のコンテキストリフレーミングを含む、〔5〕に記載の仮想現実デバイス。
〔7〕
前記VR体験が、前記身体的処置のためにオペレータのタイミングを前記VR体験と調整させるようにさらに設計される、〔5〕または〔6〕に記載の仮想現実デバイス。
〔8〕
前記VR体験および身体的処置タイミングが、前記着用者の前記VR体験との相互作用による影響を受ける、〔7〕に記載の仮想現実デバイス。
〔9〕
前記VR体験が、身体的感覚に関連付けられ不安または痛みの反応を潜在的に誘起する少なくとも1つの処置的作用を組み込んだ、身体的処置の作用に関する実行順序と、前記処置的作用の各々に対する、痛み、不安、または存在感のうちのいずれか1つまたは複数の前記作用に対する知覚を修正するためのVR置換の定義特性とを備えた、VRコンティニューム体験フレームワークを使用して生成される、〔6〕から〔8〕のいずれか一項に記載の仮想デバイス。
〔10〕
処理、メモリ、視覚表示、動き感知、オーディオおよびユーザインターフェース機能性を提供するモバイルフォンと、前記モバイルフォンをサポートするヘッドセットとを備え、VRソフトウェアアプリケーションが実行されている間に、前記モバイルフォンの機能を前記VR機能性に制限するように構成された前記VRソフトウェアアプリケーションが前記モバイルフォンにロードされている、〔1〕から〔9〕のいずれか一項に記載の仮想現実デバイス。
〔11〕
前記VRソフトウェアアプリケーションが、VR体験表示と同時に表示されるタッチスクリーンユーザインターフェースを提供するように構成され、前記ヘッドセットが、前記ユーザによる前記タッチスクリーンユーザインターフェースのビューを妨げるように構成される、〔10〕に記載の仮想現実デバイス。
〔12〕
身体的感覚に関連付けられ不安または痛みの反応を潜在的に誘起する少なくとも1つの処置的作用を組み込んだ身体的処置にコレオグラフィされたVRコンティニューム体験を生成するための仮想現実(VR)コンティニューム体験フレームワークであって、
処置的作用の実行の順序と、
前記処置的作用の各々に対する、痛み、不安、または存在感のうちのいずれか1つまたは複数の前記作用に対する知覚を修正するためのVR置換の定義特性と
を備える、仮想現実(VR)コンティニューム体験フレームワーク。
〔13〕
各VR置換が、存在感に関する前記処置の要件および処置的感覚を誘起する前記作用の側面、ならびに存在感、不安、および痛みの知覚のうちの1つまたは複数の修正に対するターゲット方向に基づいて定義される、〔12〕に記載の仮想現実(VR)コンティニューム体験フレームワーク。
〔14〕
VR置換が、前記作用によって誘起される前記身体的感覚と一致しない、前記身体的感覚の改変された知覚を促進するように、前記身体的相互作用の側面をリフレームすることを特徴とする、〔12〕または〔13〕に記載の仮想現実(VR)コンティニューム体験フレームワーク。
〔15〕
VR置換が、実際の物理的作用よりも少ない痛みまたは不安に一般に関連付けられた相互作用を使用して、VRコンテキストの表現を選定するための前記身体的感覚の持続時間および属性を模倣することを特徴とする、〔12〕から〔14〕のいずれか一項に記載の仮想現実(VR)コンティニューム体験フレームワーク。
〔16〕
VR体験が、一般的なテーマのVR体験構成要素のライブラリから、それぞれの定義されたVR置換に対して、前記定義されたVR置換の特性を満たすVR体験構成要素を選択し、前記処置に関する作用シーケンスに基づいて、前記選択されたVR体験構成要素をVR体験にコンパイルすることによって生成される、〔15〕に記載の仮想現実(VR)コンティニューム体験フレームワーク。
〔17〕
仮想現実(VR)体験生成システムであって、
1つまたは複数の医療処置に対する処置的作用の1つまたは複数のシーケンスを記憶する医療処置ライブラリと、
身体的感覚に関連付けられ、不安または痛みに反応を潜在的に誘起する各処置的作用に関して、痛み、不安、または存在感のうちのいずれか1つまたは複数の作用に対する知覚を修正するためのVR置換の定義された特性と、それぞれの定義されたVR置換に関する複数のVR体験構成要素とを備えたVR置換リソースライブラリと、ここにおいて、前記VR体験構成要素が、1つまたは複数のVR体験テーマのコンテキストで前記定義されたVR置換の前記特性を満たし、
前記医療処置ライブラリから医療処置に関する処置的作用のシーケンスを取り出すことによって、前記医療処置に関するVR体験をコンパイルし、前記VR置換リソースライブラリから、一般的なVR体験テーマを使用して、それぞれの定義されたVR置換に関するVR体験構成要素を選択し、前記処置に関する前記作用シーケンスに基づいて、前記選択されたVR体験構成要素をVR体験にコンパイルするように構成された、VR体験コンパイラと
を備える、
仮想現実(VR)体験生成システム。
〔18〕
身体的感覚に関連付けられ、不安または痛みの反応を潜在的に誘起する、少なくとも1つの処置的作用を組み込んだ、身体的処置にコレオグラフィされた仮想現実(VR)コンティニューム体験を生成する方法であって、
前記処置的作用の実行の順序を決定するステップと、
前記処置的作用の各々に関して、痛み、不安、または存在感のうちのいずれか1つまたは複数の前記作用に対する知覚を修正するためのVR置換の特性を定義するステップと、
一般的なVR体験テーマを使用して、それぞれの定義されたVR体験に関するVR体験構成要素を取得するステップと、ここにおいて、前記VR体験構成要素が、前記定義されたVR置換の前記特性を満たし、
前記処置に関する前記処置的作用の実行の前記順序に基づいて、前記選択されたVR体験構成要素をVR体験にコンパイルするステップと
を備える、方法。
〔19〕
VR体験構成要素を取得することが、VR置換リソースライブラリから前記VR体験構成要素を選択することを備える、〔18〕に記載の方法。
〔20〕
VR体験構成要素を取得することが、前記定義されたVR置換の前記特性に基づいて、VR体験構成要素を作成することを備える、〔18〕または〔19〕に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14a
図14b
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21