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特許7289555生産設備管理装置、及び生産設備管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】生産設備管理装置、及び生産設備管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20230605BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20230605BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021185043
(22)【出願日】2021-11-12
(65)【公開番号】P2023072469
(43)【公開日】2023-05-24
【審査請求日】2022-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】519185605
【氏名又は名称】株式会社名張ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】武藤 英行
(72)【発明者】
【氏名】高木 利之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 尚裕
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 祐児
(72)【発明者】
【氏名】宮木 稜司
(72)【発明者】
【氏名】水上 敏
(72)【発明者】
【氏名】深谷 紗央里
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-159561(JP,A)
【文献】特開2021-140467(JP,A)
【文献】特開2016-181220(JP,A)
【文献】特許第3270023(JP,B2)
【文献】特開2020-027470(JP,A)
【文献】特開2021-174541(JP,A)
【文献】特開2020-123935(JP,A)
【文献】特許第6856230(JP,B1)
【文献】特開2005-032029(JP,A)
【文献】特開2007-072726(JP,A)
【文献】特開2005-032030(JP,A)
【文献】特開2008-190224(JP,A)
【文献】特開2021-152754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に処理を実行する生産設備に対し、該対象物への処理状況を監視して管理する生産設備管理装置において、
制御手段と、
記憶手段と、
検出部で、電気的なON状態とOFF状態との切替えに基づいて、前記生産設備による処理の実行に伴って変化する前記対象物の状態を判別可能な状態検知手段と、
前記生産設備による前記対象物の処理状況に対応した時系列信号情報として、前記検出部から検出される電気信号を、前記ON状態である場合と前記OFF状態である場合とを含む態様で、継続的に取得して、前記記憶手段に記録する信号情報収集手段と、
前記時系列信号情報に対し、閾値を設定する閾値設定手段と、
実行された前記対象物の処理に係る帳票を作成する帳票作成手段と、を備え、
前記状態検知手段では、前記検出部が、前記ON状態と前記OFF状態とを交互に、複数のサイクルで繰り返し可能な状態にある場合、
前記制御手段は、取得した前記時系列信号情報のうち、前記検出部で、前記対象物を検知できている前記ON状態にあるときの第1情報、または前記対象物を検知できていない前記OFF状態にあるときの第2情報の何れか一方の基準情報で、前記検出部での前記電気信号の大きさに対し、前記閾値設定手段により閾値の設定条件下で抽出される時刻tとして、先の前記基準情報に対応する第1の前記時刻tと、その次の前記基準情報に対応する第2の前記時刻tとの差であるピッチ時間Tに基づいて、前記対象物の処理状況を管理するのに必要な演算処理を実行する共に、その演算処理結果を、前記帳票作成手段により作成する前記帳票に反映させること、
前記ピッチ時間Tの基準となるピッチ時間基準値が、前記記憶手段に設定可能であり、
前記制御手段は、実測で得た前記ピッチ時間Tであるピッチ時間実測値と、前記ピッチ時間基準値とを対比して、前記ピッチ時間基準値と前記ピッチ時間実測値とのピッチ時間差ΔTを算出した結果を、前記演算処理結果に盛り込むと共に、前記帳票作成手段を介して、前記帳票に反映させること、
当該生産設備管理装置は、前記ピッチ時間差ΔTを算出した前記結果より、前記帳票を通じて、前記生産設備に対する前記対象物の処理状況に係る情報を、前記ピッチ時間基準値である生産計画と対比した態様で、知得できるものであること、
を特徴とする生産設備管理装置。
【請求項2】
対象物に処理を実行する生産設備に、処理の実行に伴って変化する該対象物の状態を、検出部で、電気的なON状態とOFF状態との切替えに基づいて、判別可能な状態検知手段が既設された下で、該対象物の処理状況を監視して管理する生産設備管理装置において、
制御手段と、
記憶手段と、
電気的な物理量である信号を、その大きさと共に検出可能な信号検出センサと、
前記信号検出センサが、前記既設された状態検知手段に有する配線に接続された状態の下、前記生産設備による前記対象物の処理状況に対応した時系列信号情報として、前記検出部から検出される電気信号を、前記ON状態である場合と前記OFF状態である場合とを含む態様で、継続的に取得して、前記記憶手段に記録する信号情報収集手段と、
前記時系列信号情報に対し、閾値を設定する閾値設定手段と、
実行された前記対象物の処理に係る帳票を作成する帳票作成手段と、を備え、
前記信号情報収集手段では、前記電気信号は、前記検出部、または前記検出部と電気的に接続する配線から、前記信号検出センサによって取得されること、
前記状態検知手段では、前記検出部が、前記ON状態と前記OFF状態とを交互に、複数のサイクルで繰り返し可能な状態にある場合、
前記制御手段は、取得した前記時系列信号情報のうち、前記検出部で、前記対象物を検知できている前記ON状態にあるときの第1情報、または前記対象物を検知できていない前記OFF状態にあるときの第2情報の何れか一方の基準情報で、前記検出部での前記電気信号の大きさに対し、前記閾値設定手段により閾値の設定条件下で抽出される時刻tとして、先の前記基準情報に対応する第1の前記時刻tと、その次の前記基準情報に対応する第2の前記時刻tとの差であるピッチ時間Tに基づいて、前記対象物の処理状況を管理するのに必要な演算処理を実行する共に、その演算処理結果を、前記帳票作成手段により作成する前記帳票に反映させること、
前記ピッチ時間Tの基準となるピッチ時間基準値が、前記記憶手段に設定可能であり、
前記制御手段は、実測で得た前記ピッチ時間Tであるピッチ時間実測値と、前記ピッチ時間基準値とを対比して、前記ピッチ時間基準値と前記ピッチ時間実測値とのピッチ時間差ΔTを算出した結果を、前記演算処理結果に盛り込むと共に、前記帳票作成手段を介して、前記帳票に反映させること、
当該生産設備管理装置は、前記ピッチ時間差ΔTを算出した前記結果より、前記帳票を通じて、前記生産設備に対する前記対象物の処理状況に係る情報を、前記ピッチ時間基準値である生産計画と対比した態様で、知得できるものであること、
を特徴とする生産設備管理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する生産設備管理装置において、
前記制御手段は、繰り返された複数の前記基準情報に対し、前記検出部で前記ON状態または前記OFF状態となった回数を算出し、その算出結果を、前記演算処理結果に盛り込むと共に、前記帳票作成手段を介して、前記帳票に反映させること、
を特徴とする生産設備管理装置。
【請求項4】
請求項1に記載する生産設備管理装置において、
前記状態検知手段は、光を発光可能である共に、発光した光を、前記対象物での反射により受光可能な光電センサであること、
を特徴とする生産設備管理装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載する生産設備管理装置において、
電気的な信号に対し、少なくともA/D変換(Analog-to-digital)を行う信号変換手段を備え、
前記信号情報収集手段は、取得した前記電気信号を、前記信号変換手段により、デジタル信号に変換させた変換後の前記電気信号を収集すること、
を特徴とする生産設備管理装置。
【請求項6】
請求項に記載する生産設備管理装置において、
電気的な信号に対し、少なくともA/D変換(Analog-to-digital)を行う信号変換手段を備え、
前記信号検出センサは、前記電気信号である電流、または電圧を計測可能なセンサであり、前記信号変換手段は、前記電気信号である電流、または電圧に対し、増幅を行うこと、
を特徴とする生産設備管理装置。
【請求項7】
請求項2または請求項6に記載する生産設備管理装置において、
電気的な信号に対し、少なくともA/D変換(Analog-to-digital)を行う信号変換手段を備え、
前記信号検出センサは、前記配線の被覆を信号取得部で包囲した態様で、前記電気信号である電流の大きさを取得可能な電流センサであり、
前記信号情報収集手段は、前記配線に装着した前記信号取得部を通じて取得された前記電気信号を、前記信号変換手段で変換させた前記変換後の電気信号を収集すること、
を特徴とする生産設備管理装置。
【請求項8】
請求項乃至請求項のいずれか1つに記載する生産設備管理装置において、
個々に特性が異なる複数種の前記電気信号のうち、前記信号情報収集手段で取得可能な適合対象となる前記電気信号の信号種が複数、前記記憶手段に登録されていること、
を特徴とする生産設備管理装置。
【請求項9】
請求項に記載する生産設備管理装置において、
取得した前記電気信号を伝送する外部ケーブルの端子を、着脱自在に接続可能な入力ポートが、複数設けられていること、
前記入力ポートを通じて入力された前記電気信号に対し、信号種を判別する信号種判別手段と、
前記信号種判別手段で判別した前記電気信号の信号種と、前記適合対象の前記電気信号の信号種との照合に基づき、前記信号情報収集手段で取得される前記電気信号の信号種を特定する信号種特定手段と、を備えること、
を特徴とする生産設備管理装置。
【請求項10】
請求項乃至請求項のいずれか1つに記載する生産設備管理装置において
記閾値に基づき、取得した前記時系列信号情報に、異常事象を含むか否かを判断する異常事象判断手段と、
取得した前記時系列信号情報に前記異常事象が含まれている場合、前記異常事象に係る警告を発する異常事象報知手段と、を備え、
前記制御手段は、前記警告を、前記演算処理結果に盛り込むと共に、前記帳票作成手段を介して、前記帳票に反映させること、
を特徴とする生産設備管理装置。
【請求項11】
請求項乃至請求項10のいずれか1つに記載する生産設備管理装置において、
通信回線により接続された状態にある端末の画面に、前記帳票が表示可能な帳票表示手段を備えていること、
を特徴とする生産設備管理装置。
【請求項12】
対象物に処理を実行する生産設備に対し、該対象物への処理状況を監視して管理する生産設備管理装置の制御部に格納された生産設備管理プログラムにおいて、
検出部で、電気的なON状態とOFF状態に切替えることにより、前記生産設備による処理の実行に伴って変化する前記対象物の状態を判別可能な状態検知手段を、前記生産設備に配設した下、前記状態検知手段では、前記検出部が、前記ON状態と前記OFF状態とを交互に、複数のサイクルで繰り返し可能な状態にある場合に、
前記生産設備による前記対象物の処理状況に対応した時系列信号情報として、前記検出部から検出される電気信号を、前記ON状態である場合と前記OFF状態である場合とを含む態様で、継続的に取得して、記憶手段に記録する第1のステップと、
前記時系列信号情報に対し、閾値を設定する第2のステップと、
取得した前記時系列信号情報のうち、前記検出部で、前記対象物を検知できている前記ON状態にあるときの第1情報、または前記対象物を検知できていない前記OFF状態にあるときの第2情報の何れか一方の基準情報で、前記検出部での前記電気信号の大きさに対し、前記閾値の設定条件下で抽出される時刻tとして、先の前記基準情報に対応する第1の前記時刻tと、その次の前記基準情報に対応する第2の前記時刻tとを取得する第のステップと、
前記第1の時刻tと前記第2の時刻tとの差であるピッチ時間Tに基づいて、前記対象物の処理状況を管理するのに必要な演算処理を実行する第のステップと、
実行された前記対象物の処理に係る帳票を作成する第のステップと、
前記第のステップで取得した前記演算処理の結果を、前記第のステップで作成する前記帳票に反映させる第6のステップと、を有すること、
第6のステップでは、
前記ピッチ時間Tの基準となるピッチ時間基準値が、前記記憶手段に設定され、
実測で得た前記ピッチ時間Tであるピッチ時間実測値と、前記ピッチ時間基準値とを対比して、前記ピッチ時間基準値と前記ピッチ時間実測値とのピッチ時間差ΔTを算出した結果を、前記演算処理の結果に盛り込むと共に、
前記生産設備に対する前記対象物の処理状況に係る情報を、前記ピッチ時間差ΔTを算出した前記結果より、前記ピッチ時間基準値である生産計画と対比した態様で、前記第5のステップで作成する前記帳票に反映すること、
前記第1のステップから前記第6のステップまでを前記制御部に実行させること、
を特徴とする生産設備管理装置プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、部品の加工や組立て等、製品を製造する現場や、製造された製品を、販売向けに包装する現場等において、生産設備による製品の生産状況を把握する生産設備管理装置、及び生産設備管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、工場内に敷設され、複数の生産設備からなる生産ラインにより、複数の製造工程を経て、量産体制で製品を製造する現場では、一般的に、1つの工程で行う作業(工程処理)のサイクルタイムは、予め工程毎に設定されている。製品は、各工程のサイクルタイムを盛り込んで、製品化までのタクトタイムを算出した生産計画に基づき、製造される。そのため、工程処理に要する実際のサイクルタイムは、生産計画と対比した製品の出来高に影響を及ぼす。特に、製造工程が複数に亘る場合には、その影響は多大になることから、現場では、作業者は、生産設備で工程処理を行う上で、工程毎のサイクルタイムを厳格に管理している。このような生産設備による生産状況の管理策は、一例として、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1は、検出装置と生産管理装置を備える生産設備管理装置である。検出装置は、生産設備の動作状態を検出し、動作状態に応じて、生産設備のサイクルタイムより短い状態信号を、予め定められた周期で出力する。生産管理装置は、検出装置より状態信号を取得する取得部と、状態信号を用いて、生産設備の生産状況を示す生産情報を生成する処理部を有する。
【0004】
特許文献1によると、生産設備のサイクルタイムが長い場合でも、生産設備の生産状況の変化を迅速に発見できる。また、生産設備の停止時間が、生産設備のサイクルタイムより短い場合でも、生産管理装置により、停止情報を生成でき、生産設備の停止を見落とすことが低減できるとのことから、生産設備管理装置は、生産設備の生産状況を、適切に管理できるとされている。
【0005】
ところで、公然実施されている周知技術であるため、特に先行技術文献を開示しないが、量産体制の下、生産設備を複数配置した生産ラインにより、複数の製造工程を、順に一つずつ生産設備毎にワークの加工等(工程処理)を担って、製品を製造する大規模工場の現場には、生産状態報告システム(通称「アンドン」)が、生産ラインに設置されている。一般的なアンドンは、流れ作業で稼働する生産ラインにおいて、生産ライン全体の動きを包括的に捉え、ライン内の生産設備で発生したサイクルタイムの遅延、故障や不具合等の異常事象を、作業者に早期に発見し易くするために活用されている。これにより、異常事象を有した生産設備により、加工されたワーク等が、後工程に送出するのを防止できている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2021-26636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
大規模工場内の生産ラインで製品を製造する場合、アンドンは、設定された規則正しい定常稼働の下で、流れ作業により製品を製造中、生産ライン全体の動きを包括的に捉える上では、生産設備での異常事象を早期に発見できるとして、効果的に機能する。しかしながら、アンドンは一般的に、変則的で非定常な稼働下では、生産ラインの全生産設備に対し、それぞれの生産設備に対応した固有の工程処理情報や、特定の生産設備から一時的に採取したい詳細な工程処理情報等、生産設備毎に個別の工程処理情報を詳細に収集できる構成となっていない。
【0008】
そのため、特に生産ラインの新設、製品の製造工程変更に伴う既設の生産ラインの変更、故障していた生産設備の復旧、休暇により長期間停止していた生産ラインの再稼働等に起因して、停止していた生産ラインを立ち上げて稼働させる場合、作業者は、生産ラインに対し、生産設備毎に工程処理のサイクルタイムを収集して、製品の出来高等の指標となる生産ラインでの生産稼働効率や工程能力を確認する作業を行う。このとき、作業者は、アンドンを活用しても、この作業をスムーズに進め難く、アンドンによる作業性は良くない。また、主に小規模工場等では、大掛かりな工事と、高額な設置コストを要するアンドンを、生産ラインに設置していない現場もある。
【0009】
このような現場の実情から、前述したように、生産ラインを立ち上げて稼働させる場合には、作業者は、生産設備毎に工程処理のサイクルタイムを、ストップウォッチで計測して記録する作業を行っていた。加えて、作業者は、このサイクルタイムの測定値を基に、生産ラインの稼働により、製造される製品の時間当たりの出来高を調査して、手作業でその結果を生産管理板に記録することで、生産ラインの生産稼働効率を把握して管理する作業を行っていた。それ故に、作業者が、立ち上げ最中下の生産ラインを管理するにあたり、作業に相当な時間と手間がかかり、作業者の工数増となって、問題になっていた。しかも、サイクルタイムの記録や、製品出来高の記録が、手作業で行われているため、書き間違え・読み間違えのほか、専用端末内の帳票に対し、収集した記録の入力ミス等、人為的ミスに起因したバラツキがデータに生じ得ることから、収集したデータの信頼性が、十分に担保されていない問題もあった。
【0010】
他方、特許文献1の技術は、生産ラインにある生産設備に対し、工程処理のサイクルタイム等の工程処理情報を収集できる構成となっておらず、前述したように、立ち上げたばかりの状態にある生産ラインで、生産設備の工程管理を行うことはできない。
【0011】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、複数の生産設備を配置してなる生産ラインで、複数の製造工程を順に各生産設備で担い、工程処理を実行して製品を製造する場合でも、生産設備の稼働状況に依らず、工程処理に係る情報を、生産設備毎に簡単に把握して知得することができる生産設備管理装置、及び生産設備管理プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様における生産設備管理装置は、対象物に処理を実行する生産設備に対し、該対象物への処理状況を監視して管理する生産設備管理装置において、制御手段と、記憶手段と、検出部で、電気的なON状態とOFF状態との切替えに基づいて、前記生産設備による処理の実行に伴って変化する前記対象物の状態を判別可能な状態検知手段と、前記生産設備による前記対象物の処理状況に対応した時系列信号情報として、前記検出部から検出される電気信号を、前記ON状態である場合と前記OFF状態である場合とを含む態様で、継続的に取得して、前記記憶手段に記録する信号情報収集手段と、実行された前記対象物の処理に係る帳票を作成する帳票作成手段と、を備え、前記状態検知手段では、前記検出部が、前記ON状態と前記OFF状態とを交互に、複数のサイクルで繰り返し可能な状態にある場合、前記制御手段は、取得した前記時系列信号情報のうち、前記検出部で、前記対象物を検知できている前記ON状態にあるときの第1情報、または前記対象物を検知できていない前記OFF状態にあるときの第2情報の何れか一方の基準情報に対し、設定条件下で抽出される時刻tとして、先の前記基準情報に対応する第1の前記時刻tと、その次の前記基準情報に対応する第2の前記時刻tとの差であるピッチ時間Tに基づいて、前記対象物の処理状況を管理するのに必要な演算処理を実行する共に、その演算処理結果を、前記帳票作成手段により作成する前記帳票に反映させること、を特徴とする。
【0013】
この態様によれば、例えば、複数の生産設備を配置してなる生産ラインで、複数の製造工程を順に各生産設備で担い、対象物に処理を実行して製品を製造する場合でも、作業者は、生産ラインにおいて、生産設備による対象物の処理状況を、生産設備の態様や稼働状況に依らず、本発明に係る生産管理装置により、生産設備毎に確実に把握することができる。ひいては、作業者は、本発明に係る生産管理装置で自動的に作成される帳票により、生産ラインに対し、製品の出来高等の指標となる生産稼働効率を、各生産設備の工程処理毎に生産計画と対比させながら、より高精度に知得することができる。
【0014】
また、上記課題を解決するためになされた本発明の他態様における生産設備管理装置は、対象物に処理を実行する生産設備に、処理の実行に伴って変化する該対象物の状態を、検出部で、電気的なON状態とOFF状態との切替えに基づいて、判別可能な状態検知手段が既設された下で、該対象物の処理状況を監視して管理する生産設備管理装置において、制御手段と、記憶手段と、電気的な物理量である信号を、その大きさと共に検出可能な信号検出センサと、前記生産設備による前記対象物の処理状況に対応した時系列信号情報として、前記検出部から検出される電気信号を、前記ON状態である場合と前記OFF状態である場合とを含む態様で、継続的に取得して、前記記憶手段に記録する信号情報収集手段と、実行された前記対象物の処理に係る帳票を作成する帳票作成手段と、を備え、前記信号情報収集手段では、前記電気信号は、前記検出部、または前記検出部と電気的に接続する配線から、前記信号検出センサによって取得されること、前記状態検知手段では、前記検出部が、前記ON状態と前記OFF状態とを交互に、複数のサイクルで繰り返し可能な状態にある場合、前記制御手段は、取得した前記時系列信号情報のうち、前記検出部で、前記対象物を検知できている前記ON状態にあるときの第1情報、または前記対象物を検知できていない前記OFF状態にあるときの第2情報の何れか一方の基準情報に対し、設定条件下で抽出される時刻tとして、先の前記基準情報に対応する第1の前記時刻tと、その次の前記基準情報に対応する第2の前記時刻tとの差であるピッチ時間Tに基づいて、前記対象物の処理状況を管理するのに必要な演算処理を実行する共に、その演算処理結果を、前記帳票作成手段により作成する前記帳票に反映させること、を特徴とする。
【0015】
この態様によれば、例えば、複数の生産設備を配置してなる生産ラインで、複数の製造工程を順に各生産設備で担い、対象物に処理を実行して製品を製造する場合でも、作業者は、生産ラインにおいて、生産設備による対象物の処理状況を、生産設備の態様や稼働状況に依らず、本発明に係る生産管理装置により、生産設備毎に確実に把握することができる。ひいては、作業者は、本発明に係る生産管理装置で自動的に作成される帳票により、生産ラインに対し、製品の出来高等の指標となる生産稼働効率を、各生産設備の工程処理毎に生産計画と対比させながら、より高精度に知得することができる。
【0016】
上記の態様においては、前記ピッチ時間Tの基準となるピッチ時間基準値が、前記記憶手段に設定可能であり、前記制御手段は、実測で得た前記ピッチ時間であるピッチ時間実測値と、前記ピッチ時間基準値とを対比して、前記ピッチ時間基準値と前記ピッチ時間実測値とのピッチ時間差ΔTを算出した結果を、前記演算処理結果に盛り込むと共に、前記帳票作成手段を介して、前記帳票に反映させること、が好ましい。
【0017】
この態様によれば、作業者は、生産設備で製造した全対象物に対し、例えば、予め設定されたサイクルタイムを基準にその許容範囲内の時間で、適切に処理されている否かの生産状況について、帳票により、個々の対象物毎に、より正確に確認することができる。
【0018】
上記の態様においては、前記制御手段は、繰り返された複数の前記基準情報に対し、前記検出部で前記ON状態または前記OFF状態となった回数を算出し、その算出結果を、前記演算処理結果に盛り込むと共に、前記帳票作成手段を介して、前記帳票に反映させること、が好ましい。
【0019】
この態様によれば、作業者は、生産設備で処理した対象物の数量を、帳票により、例えば、日・時間・時間帯あたりに区分けする等して、より確実に確認することができる。
【0020】
上記の態様においては、前記状態検知手段は、光を発光可能である共に、発光した光を、前記対象物での反射により受光可能な光電センサであること、が好ましい。
【0021】
この態様によれば、生産設備において、対象物の状態を判別する状態検知手段を既設していない場合や、既設されていても利用しない場合、本発明に係る生産管理装置は、後付けで装着された、例えば、赤外線センサ等の光電センサにより、搬送されてくる対象物の検知時に、光電センサから検出される電気信号に基づいて、対象物の処理状況を、生産設備毎に把握・管理することができる。
【0022】
上記の態様においては、電気的な信号に対し、少なくともA/D変換(Analog-to-digital)を行う信号変換手段を備え、前記信号情報収集手段は、取得した前記電気信号を、前記信号変換手段により、デジタル信号に変換させた変換後の前記電気信号を収集すること、が好ましい。
【0023】
この態様によれば、生産設備に設置された既設の状態検知手段から取得される電気信号が、たとえアナログ信号であっても、この既設の状態検知手段より取得される電気信号を利用して、本発明に係る生産管理装置の稼働を行うことができる。
【0024】
上記の態様においては、前記信号検出センサは、前記電気信号である電流、または電圧を計測可能なセンサであり、前記信号変換手段は、前記電気信号である電流、または電圧に対し、増幅を行うこと、が好ましい。
【0025】
この態様によれば、生産設備に設置された既設の状態検知手段の検出部から、本発明に係る生産設備管理装置の装置本体までの伝送距離の増大化に起因して、検出部の出力電流等が、この装置本体に到達するまでに低下(減衰)を招く虞がある場合でも、装置本体は、検出部の電気信号に対し、信号変換手段で増幅することにより、検出部で検出された電流値等の状態で、取得することができる。
【0026】
上記の態様においては、前記信号検出センサは、前記配線の被覆を信号取得部で包囲した態様で、前記電気信号である電流の大きさを取得可能な電流センサであり、前記信号情報収集手段は、前記配線に装着した前記信号取得部を通じて取得された前記電気信号を、前記信号変換手段で変換させた前記変換後の電気信号を収集すること、が好ましい。
【0027】
この態様によれば、作業者は、生産設備に設置された既設の状態検知手段の検出部の出力電流を検出するにあたり、配線の被覆を剥がさず、配線内の電線と非接触で、検出部の出力電流を検出すれば、出力電流の検出を、短時間、かつ簡単に行うことができ、作業性も良い。
【0028】
上記の態様においては、個々に特性が異なる複数種の前記電気信号のうち、前記信号情報収集手段で取得可能な適合対象となる前記電気信号の信号種が複数、前記記憶手段に登録されていること、が好ましい。
【0029】
この態様によれば、本発明に係る生産設備管理装置は、信号検出センサにより検出する電気信号や、状態検知センサにより検出する電気信号に対し、幅広いバリエーションで対応できていることから、使用する現場の設備状況に応じて、汎用性の高い装置となる。
【0030】
上記の態様においては、取得した前記電気信号を伝送する外部ケーブルの端子を、着脱自在に接続可能な入力ポートが、複数設けられていること、前記入力ポートを通じて入力された前記電気信号に対し、信号種を判別する信号種判別手段と、前記信号種判別手段で判別した前記電気信号の信号種と、前記適合対象の前記電気信号の信号種との照合に基づき、前記信号情報収集手段で取得される前記電気信号の信号種を特定する信号種特定手段と、を備えること、が好ましい。
【0031】
この態様によれば、電気信号の信号種毎に、それぞれ独立したハードウエアを、本発明に係る生産設備管理装置の装置本体に設ける必要がないため、この装置本体の構成を簡素化することができる。これにより、本発明に係る生産設備管理装置の装置本体を小型化することができているため、生産設備周辺のスペースが比較的狭い場所でも、本発明に係る生産設備管理装置の装置本体を配置することができる。加えて、装置本体に掛かるコストを抑制することができる。
【0032】
上記の態様においては、前記時系列信号情報に対し、閾値を設定する閾値設定手段と、前記閾値に基づき、取得した前記時系列信号情報に、異常事象を含むか否かを判断する異常事象判断手段と、取得した前記時系列信号情報に前記異常事象が含まれている場合、前記異常事象に係る警告を発する異常事象報知手段と、を備え、前記制御手段は、前記警告を、前記演算処理結果に盛り込むと共に、前記帳票作成手段を介して、前記帳票に反映させること、が好ましい。
【0033】
この態様によれば、作業者は、生産設備で製造される全対象物に対し、工程処理を順調に経て製造されている正常な事象と、工程トラブルで遅延を生じて製造されている異常な事象とを、自動的に作成される帳票を通じて、判断し易い。
【0034】
上記の態様においては、通信回線により接続された状態にある端末の画面に、前記帳票が表示可能な帳票表示手段を備えていること、が好ましい。
【0035】
この態様によれば、作業者は、製品(対象物)の出来高等の指標となる生産設備の生産稼働効率等、生産設備の生産状況に係る情報を、端末の画面に表示された帳票により、精度良く、一目で簡単に確認できるようになる。しかも、この帳票は、信頼性に優れた内容で構成することができている。
【0036】
上記課題を解決するためになされた本発明の他の態様は、対象物に処理を実行する生産設備に対し、該対象物への処理状況を監視して管理する生産設備管理装置の制御部に格納された生産設備管理プログラムにおいて、検出部で、電気的なON状態とOFF状態に切替えることにより、前記生産設備による処理の実行に伴って変化する前記対象物の状態を判別可能な状態検知手段を、前記生産設備に配設した下、前記状態検知手段では、前記検出部が、前記ON状態と前記OFF状態とを交互に、複数のサイクルで繰り返し可能な状態にある場合に、前記生産設備による前記対象物の処理状況に対応した時系列信号情報として、前記検出部から検出される電気信号を、前記ON状態である場合と前記OFF状態である場合とを含む態様で、継続的に取得して、記憶手段に記録する第1のステップと、取得した前記時系列信号情報のうち、前記検出部で、前記対象物を検知できている前記ON状態にあるときの第1情報、または前記対象物を検知できていない前記OFF状態にあるときの第2情報の何れか一方の基準情報に対し、設定条件下で抽出される時刻tとして、先の前記基準情報に対応する第1の前記時刻tと、その次の前記基準情報に対応する第2の前記時刻tとを取得する第2のステップと、前記第1の時刻tと前記第2の時刻tとの差であるピッチ時間Tに基づいて、前記対象物の処理状況を管理するのに必要な演算処理を実行する第3のステップと、実行された前記対象物の処理に係る帳票を作成する第4のステップと、前記第3のステップで取得した前記演算処理の結果を、前記第4のステップで作成する前記帳票に反映させる第5のステップと、を有すること、を特徴とする。
【0037】
この態様によれば、例えば、複数の生産設備を配置してなる生産ラインで、複数の製造工程を順に各生産設備で担い、対象物に処理を実行して製品を製造する場合でも、作業者は、生産ラインにおいて、生産設備による対象物の処理状況を、生産設備の態様や稼働状況に依らず、生産管理装置により、生産設備毎に確実に把握することが実現できる。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係る生産設備管理装置、及び生産設備管理プログラムによれば、複数の生産設備を配置してなる生産ラインで、複数の製造工程を順に各生産設備で担い、工程処理を実行して製品を製造する場合でも、生産設備の態様や稼働状況に依らず、生産設備による工程処理の情報を、簡単に把握できると共に、生産設備の生産稼働効率をより高精度に知得することができる、という優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】実施形態に係る生産管理装置の装置本体を示す斜視図である。
図2図1中、矢視A側から示した装置本体の正面図である。
図3図1中、矢視B側から示した装置本体の背面図である。
図4】実施形態に係る生産管理装置の使用時の様子を模式的に示す説明図であり、信号検出センサを電流センサとした場合を示す図である。
図5図4に示す説明図内の要部を示す図であり、(a)は信号検出センサを電圧センサとした場合の図、(b)は状態検知センサを赤外線センサとした場合の図である。
図6】実施形態に係る生産管理装置の制御部の構成を示す模式図である。
図7】実施形態に係る生産管理装置に対し、電流センサで検出される時系列信号情報の一例として、移動中の対象物が既設センサを通過する場合に生じる電流の挙動を示すグラフであり、(a)は対象物通過時に既設センサの電流が上昇する場合、(b)は対象物通過時に既設センサの電流が下降する場合を、それぞれ模式的に示す図である。
図8】実施形態に係る生産管理装置で、基準情報に基づく演算処理の内容について、模式的に示す説明図である。
図9】実施形態に係る生産管理装置の帳票作成手段により作成された帳票の一例として、ワークの生産管理板を、処理端末の画面に表示した様子を示す図である。
図10図9中、X部の拡大図であり、生産管理板内のグラフについての説明図である。
図11】実施形態に係る生産管理装置の帳票作成手段で、帳票の作成にあたり、生産設備情報を入力する設定画面が、処理端末の画面に表示されている様子を示す図である。
図12】実施形態に係る生産管理装置で、使用に必要な初期設定を行うまでの一連の過程の流れを示すフローチャート図である。
図13】実施形態に係る生産管理装置により、生産設備での対象物の処理状況の監視時に、状態検知センサまたは既設センサで検出される電気信号の時系列信号情報を信号情報収集手段に記録までの一連の過程の流れを示すフローチャート図である。
図14図13に示すフローチャートで、第1の外付け記憶手段にCSVファイルで保存した時系列信号情報の処理データに基づき、帳票作成手段で帳票を作成するまでの一連の過程の流れを示すフローチャート図である。
図15】複数の生産設備に分けて、複数の製造工程を順に担う生産ラインで、実施形態に係る生産管理装置の活用事例を紹介した図であり、自工程に対し、IN側またはOUT側の片側に信号検出センサを設けた場合、信号検出センサによる検出の判定と、生じた工程遅延の原因との関係を示す説明図である。
図16図15と同様、実施形態に係る生産管理装置の活用事例を紹介した図であり、自工程に対し、IN側とOUT側の両側に信号検出センサを設けた場合、信号検出センサによる検出の判定と、生じた工程遅延の原因との関係を示す説明図である。
図17図16に示す生産ラインで、ワークの処理を行う工程と、ワークの移動時間との関係より、工程遅延の判定基準となる概念を模式的に示す説明図であり、自工程を挟む前後の工程が、正常な状態で稼働している場合を示す図である。
図18図17と同様の説明図であり、自工程が、遅延要因となって異常な状態で稼働している場合を示す図である。
図19図17と同様の説明図であり、前工程が、遅延要因となって異常な状態で稼働している場合を示す図である。
図20図17と同様の説明図であり、後工程が、遅延要因となって異常な状態で稼働している場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係る生産設備管理装置、及び生産設備管理プログラムについて、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本発明に係る生産設備管理装置は、対象物に処理を実行する生産設備に対し、対象物への処理状況を監視して管理する装置であり、本発明に係る生産設備管理プログラムは、この生産設備管理装置の制御部に格納されたプログラムである。以下、本発明に係る生産設備管理装置(以下、「生産管理装置」と称する。)を、本実施形態では、例えば、部品の加工や製品の組立て等、所定の処理を行って対象物を製造する工場内の現場で使用する場合を挙げて、説明する。
【0041】
<生産管理装置を使用する現場の概要>
はじめに、生産管理装置を使用する現場の概要について、図1及び図4を用いて説明する。図1は、実施形態に係る生産管理装置の装置本体を示す斜視図である。図4は、実施形態に係る生産管理装置の使用時の様子を模式的に示す説明図であり、信号検出センサを電流センサとした場合を示す図である。
【0042】
図1及び図4に示すように、生産管理装置1は、工場内に敷設されている生産ライン90に、装置本体2を配置して使用される。生産ライン90は、一例として、複数の生産設備91と搬送コンベア92を配置してなり、搬送コンベア92は、複数の生産設備91に隣接して設置されている。生産ライン90では、複数の製造工程を順に経て、対象物Mを製造するにあたり、それぞれの生産設備91が、担当する製造工程を担い、所定の処理を対象物Mに施す。搬送コンベア92は、先の生産設備91A(91)で前工程の処理を終えた対象物Mを、上流側から断続的に次の生産設備91に搬送する。次の生産設備91B(91)は、搬送コンベア92から供給された対象物Mに、後工程の処理を行う。後工程の処理を終えた対象物Mは、再び搬送コンベア92に載せられ、その下流側にある次の生産設備(図4に図示せず)に向けて搬送される。対象物Mは、このように隣接する生産設備91間の移動を繰り返しながら、全ての製造工程の処理が完了する。
【0043】
図4に示すように、生産ライン90には、既設センサ10の一例として、光電センサ、金属検出センサ、超音波センサ、リミットスイッチ等の近接センサである対象物通過検出センサ93(状態検知手段)が、搬送コンベア92に設置されている。対象物通過検出センサ93は、その検出部94において、電気信号によるON状態とOFF状態とに切替えることにより、生産設備91で処理の実行に伴って変化する対象物Mの状態を、判別することができる周知技術のセンサである。具体的には、次の生産設備91B(91)で前工程の処理を終えた対象物Mが、搬送コンベア92上に載置され、その次の生産設備(不図示)に向けて、対象物通過検出センサ93を通過して送出される。このとき、対象物通過検出センサ93は、通過する対象物Mを検出すると、その次の生産設備に向けて搬送されている対象物Mの状況が、確認できる。
【0044】
<生産管理装置の概要>
次に、生産管理装置の概要について、図1図6を用いて説明する。図2は、図1中、矢視A側から示した装置本体の正面図であり、図1中、矢視B側から示した装置本体の背面図を、図3に示す。図5は、図4に示す説明図内の要部を示す図であり、(a)は信号検出センサを電圧センサとした場合の図、(b)は状態検知センサを赤外線センサとした場合の図である。図6は、実施形態に係る生産管理装置の制御部の構成を示す模式図である。
【0045】
図4に示すように、生産管理装置1は、装置本体2と、信号検出センサ10Xと、状態検知センサ10Y(必要に応じて使用する場合)と、接続端子16(端子)付きのセンサケーブル15(外部ケーブル)と、処理端末50(端末)に設けた端末側制御部60等からなる。なお、状態検知センサ10Yは、生産管理装置1を使用する現場の設備状況に応じて用いられる。
【0046】
<処理端末の概要>
次に、処理端末の概要について、説明する。処理端末50は、図示しないCPU(マイクロプロセッサ)や記憶部等を構成した制御ユニットを有し、通信回線により、インターネット接続を可能としたパーソナルコンピュータ(通称「パソコン」)や、ワークステーション等、周知技術で構成された端末である。処理端末50は、制御ユニットにWebコンソール機能を搭載している。
【0047】
Webコンソールは、ウェブページに関する情報、ネットワークリクエスト、JavaScript(登録商標)、CSS、セキュリティのエラーや警告のほか、ページ内で実行されている JavaScript コードによって記録されたエラー、警告、情報メッセージを記録する機能や、ページコンテキスト内でJavaScript の式を実行することにより、ウェブページとの対話等の機能を有している。端末側制御部60は、後述する複数のアプリケーションからなり、処理端末50の制御ユニットの記憶部に格納されている。
【0048】
処理端末50は、生産管理装置1の稼働に伴い、後述する帳票80等をはじめ、必要な情報を表示するための画面52を、ディスプレイ51に有している。なお、一例として、デスクトップタイプの処理端末50が、図4に図示されているが、端末がラップトップタイプの場合には、画面52は、端末本体の画面である。
【0049】
<信号検出センサについて>
信号検出センサ10Xは、電気的な物理量である電気信号を、その大きさと共に検出可能なセンサとして、本実施形態では、対象物通過検出センサ93の検出部94で出力される電気信号を検出すると共に、その大きさを把握できるセンサである。信号検出センサ10Xは、センサケーブル15と、電気的に接続されている。
【0050】
具体的には、電気信号が電流の場合、信号検出センサ10Xは、ON状態にある検出部94の出力電流を検出可能な電流センサ11であり、電流センサ11は、対象物通過検出センサ93の配線95の被覆を信号取得部11Aで包囲した態様で、検出部94の出力電流の大きさを取得可能なセンサである。この電流センサ11は、例えば、1mAを大きく下回る極微小な電流値から数百mA程までの微小電流値帯域や、数百mA~数A程の小電流値帯域等、対象物通過検出センサ93の仕様に応じて選択される。
【0051】
作業者は、検出部94の出力電流を検出するにあたり、配線95の被覆を剥がさず、配線95内の電線と非接触で、検出部94の出力電流を検出すれば、出力電流の検出を、短時間、かつ簡単に行うことができ、作業性も良い。他方、対象物通過検出センサ93の中には、検出部94におけるON状態の出力電流値が、微小電流値帯域に該当するセンサもある。このような電流値帯域に相当する対象物通過検出センサ93に対し、電流センサにより、配線95内の電線と非接触で出力電流を検出ことは、困難となる場合も生じ得る。
【0052】
そこで、本実施形態では、図4に示すように、電流センサ11は、一例として、30mA以下の微小電流でも、信号取得部11Aにより精緻に検出可能なセンサであり、微小電流で出力する対象物通過検出センサ93にも対応できている。対象物通過検出センサ93での入力・出力に係る信号は、アナログ信号である。そのため、電流センサ11は、A/D変換器14(信号変換手段)とセットで用いられ、A/D変換器14は、対象物通過検出センサ93の検出部94で検出されるアナログ信号に、A/D変換(Analog-to-digital)を行ってデジタル化し、装置本体2に出力する。また、A/D変換器14は、検出部94の出力電流の増幅も行う。これにより、検出部94から装置本体2までの伝送距離の増大化に起因して、検出部94の出力電流が装置本体2に到達するまでに低下(減衰)を招く虞がある場合でも、装置本体2は、検出部94の出力電流に対し、A/D変換器14で増幅することにより、検出部94で検出された電流値の状態で、取得することができている。
【0053】
また、電気信号が電圧の場合、図5(a)に示すように、信号検出センサ10Xは、ON状態にある検出部94の出力電圧を検出可能な電圧センサ12である。作業者は、電圧センサ12を、配線95の被覆の一部を剥がした検出部位96で、電線に直接接触させる等により、検出部94の出力電圧を検出する。
【0054】
<状態検知センサについて>
ところで、前述したように、対象物通過検出センサ93は、生産設備91による処理の実行に伴って変化する対象物Mの状態について、検出部94で判別する役割を果たす既設センサ10である。電流センサ11と電圧センサ12は、この対象物通過検出センサ93の検出部94から出力される電気信号を検出する役割を果たす。本実施形態では、図5(b)に示すように、生産ライン90の既設センサ10を利用しない場合や、既設センサ10がそもそも生産ライン90に設置されていない場合には、状態検知センサ10Y(状態検知手段)が、用いられる。
【0055】
状態検知センサ10Yは、検出部13Aで、電気的なON状態とOFF状態との切替えに基づいて、生産設備91による処理の実行に伴って変化する対象物Mの状態を判別可能なセンサである。状態検知センサ10Yは、例えば、光電センサ、金属検出センサ、超音波センサ、リミットスイッチ等の近接センサであり、本実施形態では、赤外線を発光可能である共に、発光した赤外線を、対象物Mでの反射により受光可能な赤外線センサ13(光電センサ)である。赤外線センサ13は、受光した赤外線の有無により、電気的なON状態(受光状態)となったときに生ずる電気信号と、OFF状態(非受光状態)となったときに生ずる電気信号を検出可能な検出部13Aを有している。赤外線センサ13の場合、検出部13Aで検出できる電気信号は、電流や電圧等である。赤外線センサ13は、センサケーブル15と、電気的に接続されている。
【0056】
<装置本体の概要>
次に、装置本体2について、説明する。装置本体2は、図1図3、及び図6に示すように、扁平した略直方体形状に形成されたアルミニウム製の筐体内に、本体側制御部20を有している。装置本体2の筐体は、その上方側にフィン3を有し、本体側制御部20で発熱した熱は、フィン3を通じて外部に放熱される。図2に示すように、装置本体2の筐体の正面2aには、入力ポート4が、本実施形態では、上段に4つ、下段に4つ、合計8つ(複数)設けられている。なお、入力ポート4の数量は、実施形態に限定されるものではなく、例えば、4つ等、種々変更可能である。
【0057】
入力ポート4では、センサケーブル15の接続端子16が、着脱自在に接続可能となっており、信号検出センサ10Xは、入力ポート4に接続端子16を接続したセンサケーブル15を介して、生産管理装置1の装置本体2と接続される。入力ポート4は、8つとも、適合対象の範囲内であれば、接続する電気信号の信号種を限定せず、信号種に汎用性を有した接続ポートである。また、8つの入力ポート4は、それぞれ独立した系統に構成されており、信号検出センサ10Xで検出した電気信号や、状態検知センサ10Yの検出部13Aから伝送される電気信号に対し、最大8種の電気信号を、互いに干渉することなく同時に入力可能となっている。また、入力ポート4は、信号検出センサ10Xとの接続以外にも、接点の入力、アナログ信号の入力、デジタルI/Oの装着等、様々な用途で使用される。
【0058】
図1及び図3に示すように、装置本体2の筐体の背面2bには、USBコネクタレセプタクル5が4つ、LANケーブルコネクタレセプタクル6が1つ、それぞれ設けられている。USBコネクタレセプタクル5には、取得した電気信号のデータを保存するUSBメモリ等の第1の外付け記憶手段21(記憶手段)が装着可能である。また、第1の外付け記憶手段21に保存した電気信号の取得データを、処理端末50の端末側制御部60に転送するにあたり、装置本体2と処理端末50とを有線で接続する場合には、LANケーブル55が、LANケーブルコネクタレセプタクル6に接続される。
【0059】
<装置本体内の本体側制御部について>
次に、本体側制御部20について、図6を用いて説明する。前述したように、本体側制御部20は、装置本体2の筐体内に内蔵されている。図6に示すように、本体側制御部20は、第1の外付け記憶手段21と、第2の外付け記憶手段22(記憶手段)と、マイクロプロセッサ等を具備する制御手段23と、信号情報収集手段24と、信号種判別手段25、信号種特定手段26、第1の閾値設定手段27(閾値設定手段)と、通信手段28と、図示しない電源として、二次電池によるバッテリ及びAC電源等を有している。8つの入力ポート4と、第2の外付け記憶手段22と、USBコネクタレセプタクル5と、LANケーブルコネクタレセプタクル6は、いずれも本体側制御部20の回路と電気的に接続されている。
【0060】
第2の外付け記憶手段22は、例えば、SDメモリーカード等、大容量のデータを書き換え可能に記憶する小型のユニットである。第2の外付け記憶手段22には、信号情報収集手段24、信号種判別手段25、信号種特定手段26、及び第1の閾値設定手段27等に係るアプリケーションのプログラムや、電気信号の信号種に係る固有信号情報、監視に必要なパラメータ等が格納されている。
【0061】
制御手段23は、処理端末50において、その制御ユニットと共に、ウエブブラウザを立上げて、端末側制御部60内のアプリケーションを起動させる。また、制御手段23は、Webコンソール機能によるパラメータの設定や、信号検出センサ10Xで検出し、取得される電気信号の取得データと、状態検知センサ10Y(例えば、赤外線センサ13)から出力される電気信号の取得データ(時系列信号情報)を、起動した端末側制御部60内のアプリケーションに取り込むことや、端末側制御部60内のアプリケーションの実行等、処理端末50側との間で、相互に連携して情報交換を行う。
【0062】
<信号情報収集手段について>
信号情報収集手段24は、生産ライン90において、生産設備91による対象物Mの処理状況に対応した時系列信号情報として、対象物通過検出センサ93の検出部94や、赤外線センサ13の検出部13Aから検出される電気信号を、ON状態である場合とOFF状態である場合とを含む態様で、継続的に取得し、取得データとして、USBメモリ等の第1の外付け記憶手段21に記録する機能である。
【0063】
具体的には、信号情報収集手段24では、図4に示すように、既設センサ10である対象物通過検出センサ93から出力される電気信号の場合、この電気信号は、信号検出センサ10X(電流センサ11、電圧センサ12)により、対象物通過検出センサ93の検出部94、または検出部94と電気的に接続する配線から、センサケーブル15、及び接続端子16と接続された入力ポート4を通じて伝送され、装置本体2側に収集される。このとき、電気信号が電流で、検出部94におけるON状態の出力電流値が、特に微小電流値帯域に該当した対象物通過検出センサ93の場合には、信号情報収集手段24は、対象物通過検出センサ93の配線95に装着した信号取得部11Aを通じて、検出した電流の信号に対し、A/D変換器14により、デジタル信号の変換と共に、増幅を行って、変換後の電流を取得する。信号情報収集手段24で取得した電気信号のデータは、第1の外付け記憶手段21に記録される。
【0064】
また、図5(b)に示すように、既設センサ10を利用せず、状態検知センサ10Yの一種である赤外線センサ13を、生産ライン90の搬送コンベア92に配設して、赤外線センサ13の検出部13Aから出力される電気信号を用いる場合、検出部13Aで検出した電気信号が、センサケーブル15、及び接続端子16と接続された入力ポート4を通じて、装置本体2側に伝送され、第1の外付け記憶手段21に記録される。
【0065】
<信号種判別手段について>
信号種判別手段25は、入力ポート4を通じて入力された電気信号に対し、その信号種を判別する機能である。具体的には、信号情報収集手段24により取得された電気信号は、電気的な物理量として、例えば、電流、電圧、電力等、種々の信号種であり、物理量毎に固有な信号態様を有している。生産管理装置1において、適合対象である電気信号の信号種として、電気信号の信号態様毎に対応した固有信号情報が、それぞれの信号種に設定され、予め本体側制御部20の第2の外付け記憶手段22に登録されている。固有信号情報は、信号態様毎に固有の係数を乗算して策定されている。制御手段23は、信号種判別手段25により、第2の外付け記憶手段22に登録された電気信号の固有信号情報に基づいて、入力ポート4に入ってきた電気信号の信号種を特定し、信号検出センサ10X、状態検知センサ10Yにより検出した電気信号の種類を判別する。
【0066】
前述したように、第2の外付け記憶手段22には、個々に特性が異なる複数種の電気信号のうち、信号情報収集手段24により取得可能で、適合対象となる電気信号の信号種(例えば、電流、電圧、電力等)に対応した固有信号情報が複数種、予め登録されている。信号種特定手段26は、信号種判別手段25で判別した電気信号の信号種(固有信号情報)と、第2の外付け記憶手段22に登録された適合対象の電気信号の信号種(固有信号情報)との照合に基づき、信号情報収集手段24で取得した電気信号の信号種を特定する機能である。信号種特定手段26は、制御手段23によって実行される。
【0067】
生産管理装置1は、既設センサ10である対象物通過検出センサ93の検出部94、信号検出センサ10Xである赤外線センサ13の検出部13Aから検出される電気信号を、継続的に取得した時系列信号情報に対し、閾値を設定する閾値設定手段を備えている。閾値設定手段は、本実施形態では、図6に示すように、装置本体2の本体側制御部20に有する第1の閾値設定手段27と、後述するように、処理端末50の端末側制御部60に有する第2の閾値設定手段62とからなる。
【0068】
生産ライン90において、生産設備91が対象物Mの処理を実行し、対象物通過検出センサ93(既設センサ10)の検出部94や、赤外線センサ13の検出部13Aが、ON状態とOFF状態とを交互に、複数のサイクルで繰り返し可能な状態の下で、生産管理装置1は、信号情報収集手段24により、時系列信号情報を取得する。
【0069】
図7は、実施形態に係る生産管理装置に対し、電流センサで検出される時系列信号情報の一例として、移動中の対象物が既設センサを通過する場合に生じる電流の挙動を示すグラフであり、(a)は対象物通過時に既設センサの電流が上昇する場合、(b)は対象物通過時に既設センサの電流が下降する場合を、それぞれ模式的に示す図である。なお、図7は、図を見易くするため、電流値を示すグラフで、最小値と最大値との間で変化する電流の挙動に対し、より大きな傾きを付して図示されている。
【0070】
信号情報収集手段24により、取得した時系列信号情報は、図4図5、及び図7に示すように、対象物通過検出センサ93の検出部94や、赤外線センサ13の検出部13Aで、対象物Mを検知できているON状態にあるときの第1情報と、対象物Mを検知できていないOFF状態にあるときの第2情報を含んでいる。生産管理装置1は、第1情報による断続的な基準情報に基づいて、対象物Mへの処理状況を監視して管理する。なお、基準情報は、説明の都合上、本実施形態では、図4に示すように、対象物の検知時に出力電流が上昇する仕様の対象物通過検出センサ93により、対象物Mを監視する場合を挙げて、説明するが、出力電流が下降する仕様の対象物通過検出センサ93についても、基本的な監視手法は、同じである。また、電圧センサ12で取得する電気信号(電圧)や、赤外線センサ13を使用する場合に取得する電気信号(電流、電圧)についても、基本的な監視手法は、同じである。
【0071】
図8は、実施形態に係る生産管理装置で、基準情報に基づく演算処理の内容について、模式的に示す説明図である。制御手段23が、図7及び図8に示すように、先の基準情報に対応する第1の時刻t1aと、その次の基準情報に対応する第2の時刻t2aとの差であるピッチ時間Tに基づいて、対象物Mの処理状況を管理するのに必要な演算処理を実行する。ピッチ時間Tの基準となるピッチ時間基準値Tpは、第2の外付け記憶手段22に設定可能となっている。ピッチ時間基準値Tpは、図4に示すように生産設備91(生産ライン90)で、予め設定されたサイクルタイムを基準に許容範囲とした上限側のピッチ時間Tである。
【0072】
制御手段23が、このような演算処理を実行する前に、第1の閾値設定手段27は、基準情報に対応する時刻tを特定条件下で抽出するにあたり、変化する電流値の大きさに閾値を設定する機能である。なお、信号検出センサ10Xが電圧センサ12の場合には、変化する電圧値の大きさに閾値を設定する。
【0073】
具体的には、図4及び図7(a)に示すように、搬送コンベア92上の対象物Mが、検知されながら対象物通過検出センサ93の検出部94を通過するとき、検出部94の出力電流は、上昇する。検出部94は常時、例えば、数msの間隔で、対象物Mの通過有無を監視している。検出部94では、対象物Mの通過により生じる出力電流は、対象物Mを捉え始めた時点から、まさに対象物Mの通過最中、安定した略定常的な電流値に落ち着くまでの間、電流値に変動を伴った不安定な挙動を呈する。
【0074】
そのため、検出部94の出力電流に対し、対象物Mを検知できていないOFF状態で呈している最小値から、対象物Mを検知しているON状態で呈する最大値との間で、例えば、対象物Mを捉えた状態と、より確実に判断し得る電流値等、すなわち特定条件(A)を満たす電流値が、第1の閾値設定手段27により設定される閾値である。同様に、図7(b)に示すように、搬送コンベア92上の対象物Mが、検知されながら対象物通過検出センサ93の検出部94を通過するときに、検出部94の出力電流が下降する場合、検出部94の出力電流に対し、対象物Mを検知しているON状態で呈する最大値から、対象物Mを検知できていないOFF状態で呈している最小値との間で、例えば、対象物Mが通過した状態と、より確実に判断し得る電流値等、すなわち特定条件(B)を満たす電流値が、第1の閾値設定手段27により設定される閾値である。
【0075】
特定条件(A)・特定条件(B)とも、検出部94の出力電流が、特定条件を満たす電流値に到達した時点を、時刻tと定義している。すなわち、図7に示すように、検出部94が、対象物Mを検知しているON状態に切り替わった場合での時刻tは、時刻t1a、時刻t2a等である。対象物Mを検知できていないOFF状態に切り替わった場合での時刻tは、時刻t1b、時刻t2b等である。このように、ON状態となった時刻t1a、時刻t2aと、OFF状態となった時刻t1b、時刻t2bは、第1の外付け記憶手段21に記録される。そして、先の基準情報に対応する第1の時刻t1aと、その次の基準情報に対応する第2の時刻t2aとの差によるピッチ時間Tが、対象物Mの処理状況を管理するのに必要な演算処理の要素として用いられる。
【0076】
通信手段28は、本実施形態では、無線LANの規格の一つとして、いわゆるWi-Fi(登録商標)に相当した通信機能を有するほか、装置本体2自体にも、通信可能な無線を発する機能を具備している。
【0077】
<処理端末内の端末側制御部について>
次に、端末側制御部60について、説明する。端末側制御部60は、図6に示すように、データ演算処理手段61と、第2の閾値設定手段62(閾値設定手段)と、異常事象判断手段63と、異常事象報知手段64と、帳票作成手段65と、帳票表示手段66等のアプリケーションを備えている。
【0078】
<データ演算処理手段による演算処理>
信号情報収集手段24により収集された取得データは、データ演算処理手段61に取り込まれ、生産設備91による対象物Mの処理状況を管理するのに必要な演算処理を実行する。
【0079】
具体的には、図7及び図8に示すように、制御手段23は、データ演算処理手段61により、実測で得たピッチ時間Tであるピッチ時間実測値Tqと、ピッチ時間基準値Tpを対比して、ピッチ時間基準値Tpとピッチ時間実測値Tqとのピッチ時間差ΔTを算出した結果を、演算処理結果として盛り込む。また、制御手段23は、データ演算処理手段61により、繰り返された複数の基準情報に対し、対象物通過検出センサ93の検出部94で、ON状態となったカウント数Cを算出し、その算出結果を、演算処理結果として盛り込む。
【0080】
具体的に説明する。図4に示すように、生産設備91Aによる処理の実行を終えた第1の対象物Mが、搬送コンベア92上の下流側に送出され、対象物通過検出センサ93の検出部94を通過しようとする。このとき、対象物通過検出センサ93の検出部94は、その検知エリアに第1の対象物Mを検知して捉え、電気的なON状態となり、図8に示すように、先の基準情報が得られる。この基準情報に対応する第1の時刻t1aが、ピッチ時間Tの計測起点になり、ON状態となったカウント数Cは、第1の時刻t1aで基準情報を確認できた回数(図8では、C1)となる。そして、第1の対象物Mが、検出部94による検知エリアを完全に通過するタイミングで、対象物通過検出センサ93の検出部94は、電気的なOFF状態に切り替わり、第1の対象物Mに続いて、供給される第2の対象物Mの検知を待つ。
【0081】
次に、第1の対象物Mに続く、第2の対象物Mが、生産設備91Aによる処理の実行後に、搬送コンベア92上の下流側に送出され、対象物通過検出センサ93の検出部94を通過しようとする。このとき、対象物通過検出センサ93の検出部94は、その検知エリアに第2の対象物Mを検知して捉え、電気的なON状態となり、図8に示すように、次の基準情報が得られる。この基準情報に対応する第2の時刻t2aが、第1の対象物Mに対するピッチ時間Tの計測終点となり、第2の時刻t2aと第1の時刻t1aとに時間差であるピッチ時間実測値Tqが取得される。また、この第2の時刻t2aが、次のピッチ時間Tの計測起点となり、ON状態となったカウント数Cは、第2の時刻t2aで基準情報を確認できた回数(図8では、C2)となる。そして、第2の対象物Mが、検出部94による検知エリアを完全に通過するタイミングで、対象物通過検出センサ93の検出部94は、電気的なOFF状態に切り替わり、第2の対象物Mに続く対象物Mの検知を待つ。
【0082】
このように、制御手段23は、データ演算処理手段61により、前後に続く対象物Mを、実際に検出部94で検知したピッチ時間実測値Tqと、それぞれの基準情報でON状態となったカウント数Cを、繰り返される基準情報毎に算出する。また、制御手段23は、ピッチ時間基準値Tpとピッチ時間実測値Tqとのピッチ時間差ΔTを、繰り返される基準情報毎に算出する。
【0083】
ピッチ時間実測値Tq<ピッチ時間基準値Tpとなる場合には、第2の対象物Mが、第1の対象物Mに続いて、設定されたサイクルタイムに対する許容範囲の上限とした目標のピッチ時間基準値Tpより、ピッチ時間差ΔTm分だけ早く送出できており、生産ライン90では、対象物Mの製造工程が、順調に行われていることを意味する。その反対に、ピッチ時間実測値Tq>ピッチ時間基準値Tpとなる場合には、第2の対象物Mが、第1の対象物Mに続いて、目標のピッチ時間基準値Tpより、ピッチ時間差ΔTn分だけ遅れて送出されており、生産ライン90では、対象物Mの製造工程が、遅延していることを意味する。
【0084】
また、データ演算処理手段61は、信号情報収集手段24で取り込んだ電気信号の時系列信号情報のデータを基に、演算処理された記録用データを、所定のサンプリング時間毎に第1の外付け記憶手段21に保存し、表計算、スプレッドシート等の作成が可能なエクセル下で、データ分析を可能としたCSV形式に変換する機能を有する。
【0085】
<第2の閾値設定手段等について>
第2の閾値設定手段62は、信号情報収集手段24に取得され、本体側制御部20から端末側制御部60に転送された時系列信号情報や、データ演算処理手段61によるピッチ時間差ΔTの算出結果、対象物通過検出センサ93の検出部94でON状態となったカウントC数の結果等の演算処理結果に対し、複数種の閾値を設定する機能である。異常事象判断手段63は、第2の閾値設定手段62により設定された複数種の閾値に基づき、取得した時系列信号情報や、前述の演算処理結果等に、異常事象を含むか否かを、閾値毎に判断する機能である。異常事象報知手段64は、取得した時系列信号情報や演算処理結果に異常事象が含まれている場合、異常事象に係る警告を発する機能である。
【0086】
第2の閾値設定手段62は、信号情報収集手段24に取得された時系列信号情報の中で、図7に示すように、1つの基準情報における特定条件(A)または(B)の下、ON-OFF間での検知持続時間sに対し、生産設備91による対象物Mの処理状況とは関連せず、何らかの理由により、著しく小さくなっている取得データを排除する上で、その排除の判別に必要な閾値を、第1の閾値として設定する。生産ライン90が正常な稼働状況下で通常、対象物Mが対象物通過検出センサ93を通過するときに要する平均的な検知持続時間sに対し、例えば、その50%に相当する時間が、第1の閾値となる。なお、標準的な検知持続時間sに対し、閾値に適用する割合は、50%に限定されるものではなく、生産設備91による処理内容に応じて、適宜変更可能である。
【0087】
異常事象判断手段63は、取得された全ての検知持続時間sに対し、第1の閾値を下回る取得データの有無を判断する。第1の閾値を下回る取得データは、異常事象判断手段63により、無効データとして排除される。
【0088】
また、第2の閾値設定手段62は、前述したピッチ時間基準値Tpを、第2の閾値として設定する。異常事象判断手段63は、第2の閾値設定手段62により設定された第2の閾値(ピッチ時間基準値Tp)より、図8に示すように、ピッチ時間差ΔTn分だけ超えたピッチ時間実測値Tqを対象とした対象物Mの処理に対し、異常事象であると判断する。
【0089】
<帳票作成手段について>
図9は、実施形態に係る生産管理装置の帳票作成手段により作成された帳票の一例として、ワークの生産管理板を、処理端末の画面に表示した様子を示す図であり、図9中、X部の拡大図で、生産管理板内のグラフについての説明図を、図10に示す。
【0090】
帳票作成手段65は、生産ライン90において、生産設備91により実行された対象物Mの処理に係る帳票80を作成する機能である。制御手段23は、ピッチ時間基準値Tpとピッチ時間実測値Tqとのピッチ時間差ΔTを算出した結果と、対象物通過検出センサ93の検出部94で、ON状態となったカウント数Cの結果と、異常事象判断手段63で異常事象とされ、異常事象報知手段64で警告する内容を、帳票作成手段65で作成される帳票80に反映させる。
【0091】
具体的には、本実施形態では、帳票80として、図9及び図10に例示する生産管理板80が、帳票作成手段65により作成される。生産管理板80は、生産ライン90において、例えば、図4に示す対象物通過検出センサ93の検出部94により、生産設備91で実行した対象物Mの処理状況を監視した結果(ピッチ時間差ΔTの結果、検出部94でON状態となったカウントC数の結果等)に基づいて、作成される。
【0092】
すなわち、生産管理板80は、対象物通過検出センサ93の検出部94で検知した対象物Mに基づいて、図9及び図10に示すように、生産ライン90の稼働状況を単位時間帯毎に、生産設備91で処理を終えた対象物Mの数量(図9では「生産数」と表記)及びその累計数と、対象物M毎のピッチ時間実測値Tq(図9では「生産ピッチ」と表記)と、単位時間帯毎のピッチ時間実測値Tqの平均(図9では「時間平均ピッチ」と表記)と、日あたりのピッチ時間実測値Tqの平均のほか、生産ライン90の停止情報や、対象物Mの品質不良情報等を含む内容である。また、生産管理板80では、図8図9、及び図10に示すように、対象物通過検出センサ93の検出部94により、単位時間内に検知した全ての対象物Mの生産ピッチの推移として、個々のピッチ時間実測値Tq(生産ピッチ)が、グラフで表示される。
【0093】
このグラフには、生産設備91で設定されている製造工程のサイクルタイムと、サイクルタイムを基準に許容範囲の上限を示すピッチ時間基準値Tp(図9では「ピッチタイム閾値」と表記)が、表示されている。加えて、グラフでは、生産ピッチは、ピッチタイム閾値(目標のピッチ時間基準値Tp)を境に、そのピッチ時間基準値Tpよりピッチ時間差ΔTm分だけ下回った正常な処理状況の場合(図9では、「薄い塗り潰し」)と区別し、異常事象報知手段64により、ピッチ時間差ΔTn分だけ上回った異常な処理状況の場合(図9では、「濃い塗り潰し」)を、強調した色(例えば、赤色等)で色分けして表示される。これにより、対象物Mの製造工程では、順調に行われている事象と、工程のトラブルで遅延を生じている事象が、作業者にとって、判断し易くなっている。
【0094】
図11は、実施形態に係る生産管理装置の帳票作成手段で、帳票の作成にあたり、生産設備情報を入力する設定画面が処理端末の画面に表示されている様子を示す図である。生産管理板80の作成にあたり、生産設備91(生産ライン90)に係る設備情報の条件や、生産設備91での対象物Mの処理状況を管理するのに必要な演算処理の前提条件、生産管理板80の表示条件等は、図4及び図11に示すように、処理端末50のディスプレイ51に表示される設定画面81を用いて入力し、設定される。
【0095】
<帳票表示手段について>
帳票表示手段66は、通信回線により接続された状態にある処理端末50のディスプレイ51の画面52に、帳票作成手段65で作成された帳票80である生産管理板を表示させる機能である。帳票表示手段66は、制御手段23によって実行される。
【0096】
<生産管理装置の使い方について>
次に、生産管理装置1の使い方について、図13図14を用いて説明する。はじめに、生産ライン90に対し、生産設備91による対象物Mへの処理状況を監視して管理するにあたり、装置本体2は、通信回線により、処理端末50と接続され、相互に連携して情報交換可能な状態である。図4及び図5(a)に示すように、既設センサ10(対象物通過検出センサ93等)を利用する場合には、A/D変換器14と共に、信号検出センサ10X(電流センサ11、電圧センサ12)を、対象物通過検出センサ93の検出部94の配線95に装着する。また、この対象物通過検出センサ93と導通するセンサケーブル15の接続端子16を、8つのうちの何れかの入力ポート4に接続し、検出部94から電気信号を装置本体2で取得できる状態にしておく。
【0097】
他方、図5(b)に示すように、既設センサ10を利用しない場合には、状態検知センサ10Y(赤外線センサ13)を、生産ライン90の所定場所に設置すると共に、この赤外線センサ13と導通するセンサケーブル15の接続端子16を、8つのうちの何れかの入力ポート4に接続し、検出部13Aから電気信号を装置本体2で取得できる状態にしておく。
【0098】
<生産管理装置の初期設定>
図12は、実施形態に係る生産管理装置で、使用に必要な初期設定を行うまでの一連の過程の流れを示すフローチャート図である。図12に示すように、S1では、まず生産管理装置1で行うセンサの条件設定として、用いる信号検出センサ10X、状態検知センサ10Y(以下、「信号検出センサ10X等」と称する)に係る情報、装置本体2の入力ポート4に伝送される電気信号に係る情報等、用いるセンサの条件を、処理端末50を通じて生産管理装置1に設定する。
【0099】
次に、S2では、信号情報収集手段24が、検出部94、検出部13A(以下、「検出部94等」と称する)の電気信号を収集し、信号種判別手段25が、収集された電気信号の信号種を判別する。次に、S3では、信号種判別手段25で判別した電気信号の信号種が、S1で設定されたセンサ条件と一致しているか否かについて、制御手段23は、信号種特定手段26と共に、判断する。一致していない場合(NO)は、信号情報収集手段24により、収集された電気信号の信号種は、S1で行ったセンサの設定条件と異なっているため、S4に進む。
【0100】
S4では、作業者は、入力ポート4に接続されている信号検出センサ10X等の種別確認や、S1で設定したセンサ条件の内容確認を行い、接続されている信号検出センサ10X等を別の信号種に変更、または再度S1に戻り、入力ポート4に接続した信号検出センサ10X等の信号種に対応した内容で、センサ条件を設定し直す。一致している場合(YES)は、信号情報収集手段24で収集された電気信号の信号種が特定できたため、S5に進む。
【0101】
S5では、サンプリングで電気信号のデータを取得するにあたり、検出部94等において、対象物Mを検知できているON状態である場合と、対象物Mを検知できていないOFF状態である場合とを含む態様で、信号情報収集手段24により継続的に収集される電気信号を、一時的に取得して、対象物Mの処理状況に対応した時系列信号情報に係る取得データを、第1の外付け記憶手段21に記録する。次に、S6では、取得した電気信号のサンプリングデータに対し、第1の閾値設定手段27では、基準情報に対応する時刻tを抽出するための特定条件(特定条件(A)・(B)等)を設定する。また、第2の閾値設定手段62では、検知持続時間sに対する第1の閾値を設定すると共に、第2の閾値であるピッチ時間基準値Tpを設定する。かくして、生産管理装置1の初期設定は終了する。
【0102】
<対象物監視時における電気信号の時系列信号情報の収集について>
図13は、実施形態に係る生産管理装置により、生産設備による対象物の処理状況の監視時に、状態検知センサまたは既設センサで検出される電気信号の時系列信号情報を信号情報収集手段に記録までの一連の過程の流れを示すフローチャート図である。はじめに、生産管理装置1では、前述した生産管理装置の初期設定が完了した状態にある。また、通信回線により、装置本体2と処理端末50とを接続して連携させ、情報交換が相互に可能な状態になっていると共に、信号検出センサ10X等と導通したセンサケーブル15の接続端子16が、初期設定に合わせた入力ポート4に接続された状態にある。
【0103】
S21では、作業者は、生産設備91(生産ライン90)による対象物Mへの処理状況の監視を開始するにあたり、処理端末50側の所定操作で、生産管理装置1を起動する。次に、S22では、信号情報収集手段24により、信号検出センサ10X等の検出部94等の電気信号を継続的に取得する。次に、S23では、制御手段23は、信号情報収集手段24により取得した電気信号に、検出部94等で対象物Mを検知できているON状態の電気信号(第1情報)を含んでいるか否かについて、判別する。
【0104】
ON状態の電気信号が含まれている場合(YES)は、S24に進む。S24では、第1情報に係る取得データとその時刻t(図8等に示す時刻t1a、時刻t2a、…、時刻tka)(kは自然数、2≦k)は、第1の外付け記憶手段21内の所定ファイルに記録される。一方、第1情報が含まれていない場合(NO)は、S25に進む。S25では、制御手段23は、信号情報収集手段24により取得した電気信号に、検出部94等で対象物Mを検知できていないOFF状態の電気信号(第2情報)を含んでいるか否かについて、判別する。
【0105】
第2情報が含まれている場合(YES)は、S26に進む。S26では、第2情報に係る取得データとその時刻t(図8等に示す時刻t1b、時刻t2b、…、時刻tkb)(kは自然数、2≦k)は、第1の外付け記憶手段21内の所定ファイルに記録される。次に、S27では、制御手段23は、S24及びS25で、第1の外付け記憶手段21により、所定ファイル内に記録した、「第1情報に係る取得データとその時刻t」と、「第2情報に係る取得データとその時刻t」に係る全データを、データ演算処理手段61によりCSV形式に変換させ、CSV変換後のデータを収容したCSVファイルを第1の外付け記憶手段21に記録させる。また、第2情報が含まれていない場合(NO)は、S28に進む。
【0106】
S28では、制御手段23は、生産管理装置1により、対象物Mへの処理状況の監視を終了するか否について、判断する。監視を行う場合(NO)は、再度S1に戻り、処理状況の監視を開始するのに必要な所定操作を、処理端末50で行う。監視を行わない場合(YES)は、生産管理装置1の動作を停止して監視を終了させる。かくして、生産管理装置1は、生産設備91での対象物Mの処理状況を監視する。
【0107】
<取得した時系列信号情報に基づく演算処理・帳票作成について>
図14は、図13に示すフローチャートで、第1の外付け記憶手段にCSVファイルで記録した時系列信号情報の処理データに基づき、帳票作成手段で帳票を作成するまでの一連の過程の流れを示すフローチャート図である。はじめに、生産管理装置1では、図13に示すフローチャートのS27の処理が、完了した状態である。
【0108】
S41では、処理端末50の制御ユニットと共に、制御手段23は、帳票作成手段65で帳票80の作成にあたり、データ演算処理手段61により、収集した電気信号の時系列信号情報のデータ処理を開始する。次に、S42では、作業者は、主に帳票80に盛り込む内容として、生産ライン90、生産設備91に関する諸情報を、図11に示すように、帳票作成手段65の設定画面81等を通じて入力し、帳票作成手段65及びデータ演算処理手段61で活用する。
【0109】
次に、S43では、制御手段23は、処理端末50の制御ユニットと共に、第1の外付け記憶手段21に記録されているCSVファイルを、通信回線により、装置本体2から処理端末50に送り、制御ユニットの記憶部に取り込む。次に、このCSVファイルには、「第1情報に係る取得データとその時刻t」と、「第2情報に係る取得データとその時刻t」に関するCSV変換後のデータが収容されているため、S44では、制御手段23は、「第1情報に係る取得データとその時刻t」に関するCSV変換後のデータを、基準情報として選択する。
【0110】
次に、S45では、制御手段23は、データ演算処理手段61により、繰り返された複数の基準情報で、基準情報毎に時刻t(図8等に示す時刻t1a、時刻t2a、…、時刻tka)(kは自然数、2≦k)で、ON状態と判別されたカウント数Cを算出する演算を行う。次に、S46では、制御手段23は、データ演算処理手段61により、繰り返された複数の基準情報のうち、前後の基準情報で、先の基準情報に対応する第1の前記時刻t1aと、その次の基準情報に対応する第2の時刻t2aとの差であるピッチ時間Tとして、実測で得たピッチ時間実測値Tqを、基準情報毎に算出する演算を行う。
【0111】
次に、S47では、制御手段23は、データ演算処理手段61により、ピッチ時間基準値Tpとの対比で、算出したピッチ時間実測値Tqとのピッチ時間差ΔTm、ΔTnを算出する演算を行う。ピッチ時間差ΔTmは、ピッチ時間実測値Tq<ピッチ時間基準値Tpとなる場合の差であり、ピッチ時間差ΔTnは、ピッチ時間実測値Tq>ピッチ時間基準値Tpとなる場合の差である。
【0112】
次に、S48では、制御手段23は、帳票作成手段65により、データ演算処理手段61の演算結果に含むピッチ時間基準値Tp、ピッチ時間実測値Tq、ピッチ時間差ΔTm、ΔTn、及びカウント数Cの結果ほか、異常事象判断手段63で異常事象とされ、異常事象報知手段64で警告する内容を反映させた帳票80を作成させる。次に、S49では、制御手段23は、作成された帳票80を、帳票表示手段65により、処理端末50のディスプレイ51に出力して画面52に表示可能な状態とするか否かについて、判別する。
【0113】
帳票80を処理端末50のディスプレイ51の画面52に表示可能な状態とする場合(YES)は、S50に進み、S50では、制御手段23は、帳票作成手段65により、図9及び図10に示すように、帳票80の構成内容のうち、特に重要項目(例えば、対象物Mの処理数量、対象物M毎のピッチ時間実測値Tq「生産ピッチ」等)の結果をグラフ化した後、帳票表示手段65により、グラフを含む帳票80をディスプレイ51の画面52に表示可能な状態にする。
【0114】
その反対に、作成された帳票80を処理端末50のディスプレイ51の画面52に表示可能な状態にしない場合(NO)は、S51に進む。S51では、制御手段23は、帳票作成手段65で帳票80の作成にあたり、これまで行ってきた時系列信号情報のデータ処理を終了するか否かについて、判別する。データ処理を終了する場合は、YESに進み、帳票80の作成作業は終了する。データ処理を終了しない場合は、NOに進み、再びS43に戻り、S43以降のステップを実施して、帳票80の作成作業をやり直す。かくして、帳票80は作成される。
【0115】
<生産管理装置の活用事例(1)について>
次に、複数の製造工程を順に経て、ワークを製造する生産ラインに、生産管理装置1を設置した場合、製造工程の遅延原因を判定できる生産管理装置1の活用方法について、図15図20を用いて説明する。図15は、複数の生産設備に分けて、複数の製造工程を順に担う生産ラインで、実施形態に係る生産管理装置の活用事例を紹介した図であり、自工程に対し、IN側またはOUT側の片側に信号検出センサを設けた場合、信号検出センサによる検出の判定と、生じた工程遅延の原因との関係を示す説明図である。
【0116】
図15(a)に例示するように、複数の生産設備により、複数の製造工程(前工程、自工程、後工程等)をこの順に経て、ワークを移動させて製造する生産ラインに、生産管理装置1の装置本体2が設置される。センサケーブル15を介して、装置本体2と導通した信号検出センサ10Xは、自工程の生産設備を基準に、そのIN側にある場所A、またはそのOUT側にある場所Bの何れかに配設される。
【0117】
信号検出センサ10XがIN側の場所Aに設けられている場合、信号検出センサ10Xが、図示しない既設の状態検知手段(図4中、対象物通過検出センサ93に相当)の検出部(図4中、検出部94)から出力される電気信号で、ワークを検知できているON状態の持続時間(図15では、「ワーク在籍時間」と表記)を検知する。通常、正常な生産ライン稼働下での平均的なワーク在籍時間に比べ、場所Aでの信号検出センサ10Xのワーク在籍時間が長くなると、図15(b)、(c)に示すように、何らかの工程トラブルが、自工程または後工程を行う生産設備で起きているものと判定できる。
【0118】
図9及び図10に例示するような帳票には、図15(c)に示すように、生産設備で処理を終えたワークの数量と、その処理に係るワークピッチ時間(ピッチ時間実測値Tq)等が、グラフで表示される。ワークピッチ時間は、ピッチ時間基準値Tpを下回る正常な場合(図15(c)は「白抜き表示」)と区別して、ピッチ時間基準値Tpを上回る異常な場合(図15(c)は「斜線表示」)を、強調した色で表示される。
【0119】
一方、場所Aでワーク在籍時間が短いと、何らかの工程トラブルが、前工程行う生産設備で起きているものと判定できる。帳票には、図15(c)に示すように、生産設備で処理を終えたワークの数量と、その処理に係るワークピッチ時間(ピッチ時間実測値Tq)等が、グラフで表示される。ワークピッチ時間は、ピッチ時間基準値Tpを下回る正常な場合(図15(c)は「白抜き表示」)と区別して、ピッチ時間基準値Tpを上回る異常な場合(図15(c)は「ドット表示」)を、強調した色で表示される。
【0120】
また、信号検出センサ10XがOUT側の場所Bに設けられている場合、通常、正常な生産ライン稼働下での平均的な在籍時間に比べ、場所Bでの信号検出センサ10Xのワーク在籍時間が長くなると、図15(b)、(d)に示すように、何らかの工程トラブルが、後工程を行う生産設備で起きているものと判定できる。帳票には、図15(d)に示すように、生産設備で処理を終えたワークの数量と、その処理に係るワークピッチ時間(ピッチ時間実測値Tq)等が、グラフで表示される。ワークピッチ時間は、ピッチ時間基準値Tpを下回る正常な場合(図15(d)は「白抜き表示」)と区別して、ピッチ時間基準値Tpを上回る異常な場合(図15(d)は「斜線表示」)を、強調した色で表示される。
【0121】
一方、場所Bでの信号検出センサ10Xのワーク在籍時間が短いと、何らかの工程トラブルが、自工程または前工程を行う生産設備で起きているものと判定できる。帳票には、図15(d)に示すように、生産設備で処理を終えたワークの数量と、その処理に係るワークピッチ時間(ピッチ時間実測値Tq)等が、グラフで表示され、ワークピッチ時間は、ピッチ時間基準値Tpを下回る正常な場合(図15(d)は「白抜き表示」)と区別して、ピッチ時間基準値Tpを上回る異常な場合(図15(d)は「ドット表示」)を、強調した色で表示される。
【0122】
<生産管理装置の活用事例(2)について>
図16は、図15と同様、実施形態に係る生産管理装置の活用事例を紹介した図であり、自工程に対し、IN側とOUT側の両側に信号検出センサを設けた場合、信号検出センサによる検出の判定と、生じた工程遅延の原因との関係を示す説明図である。前述した生産管理装置1の活用方法で、工程トラブルを起こしている生産設備の製造工程を、さらに特定したい場合、図16に例示する生産ラインに、装置本体2が1つ設置される。装置本体2と導通した信号検出センサ10Xは、2つ用いられ、自工程の生産設備を基準に、そのIN側にある場所Aと、OUT側にある場所Bの両方に、それぞれ独立系統で配設される。
【0123】
工程トラブルを起こした製造工程を特定させる場合、装置本体2では、場所BでOUT側に配設した信号検出センサ10Xが、主となり、工程トラブルを起こした製造工程の判定を行う。すなわち、場所AでIN側に配設した信号検出センサ10Xは、図示しない既設の状態検知手段(図4中、対象物通過検出センサ93に相当)の検出部(図4中、検出部94)から出力されるON状態の電気信号を取得し、前工程から自工程へ搬送されるワークを検知することができている。
【0124】
図17は、図16に示す生産ラインで、ワークの処理を行う工程と、ワークの移動時間との関係より、工程遅延の判定基準となる概念を模式的に示す説明図であり、自工程を挟む前後の工程が、正常な状態で稼働している場合を示す図である。
【0125】
図16(a)及び図17に示すように、通常、正常な生産ライン稼働下での平均的なワーク在籍時間に比べ、場所Aで、IN側の信号検出センサ10Xのワーク在籍時間が短く、場所Bでも、OUT側の信号検出センサ10Xのワーク在籍時間が短い場合には、断続的に製造されるワークMの一つであるワークMx(M)は、正常な稼働状況として、ピッチ時間基準値Tpを下回る正常なワークピッチ時間(ピッチ時間実測値Tq)で、場所Aと場所Bを通過することができている。
【0126】
図18は、図17と同様の説明図であり、自工程が、遅延要因となって異常な状態で稼働している場合を示す図である。図19は、図17と同様の説明図であり、前工程が、遅延要因となって異常な状態で稼働している場合を示す図である。図20は、図17と同様の説明図であり、後工程が、遅延要因となって異常な状態で稼働している場合を示す図である。
【0127】
前述した正常な稼働状況に対し、場所Bでは、OUT側の信号検出センサ10Xは、通常、正常な生産ライン稼働下で平均的なワーク在籍時間である一方で、場所Aでは、正常な生産ライン稼働下で平均的なワーク在籍時間に比べ、IN側の信号検出センサ10Xの在籍時間が、長くなっている場合がある。この場合、何らかの工程トラブルが、図16(b)、(c)に示すように、自工程を行う生産設備で生じているものと判定できる。
【0128】
すなわち、図18に示すように、図17に示す正常な稼働状況である場合と比べ、自工程の工程トラブルにより、ワークMの処理が自工程で遅延していることに起因して、製造されるワークMの一つであるワークMx(M)を含むワークMのほとんどが、自工程から先の後工程に移動し難くなっており、このワークMxに続く他のワークMが、場所Aで滞留していることを意味する。帳票には、図16(c)に示すように、自工程において、生産設備で処理を終えたワークの数量と、その処理に係るワークピッチ時間(ピッチ時間実測値Tq)等が、グラフで表示される。ワークピッチ時間は、ピッチ時間基準値Tpを下回る正常な場合(図16(c)は「白抜き表示」)と区別して、ピッチ時間基準値Tpを上回る異常な場合(図16(c)は「クロス線表示」)を、強調した色で表示される。
【0129】
また、場所Bでは、OUT側の信号検出センサ10Xが、通常、正常な生産ライン稼働下で平均的なワーク在籍時間である一方で、場所Aでは、通常、正常な生産ライン稼働下で平均的なワーク在籍時間に比べ、IN側の信号検出センサ10Xのワーク在籍時間が、短い場合がある。この場合、何らかの工程トラブルが、図16(b)、(c)に示すように、前工程を行う生産設備で起きているものと判定できる。
【0130】
すなわち、図19に示すように、図17に示す正常な稼働状況である場合と比べ、前工程の工程トラブルにより、ワークMの処理が前工程で遅延していることに起因して、製造されるワークMが、前工程から自工程に移動し難くなっている。そのため、既に場所Aに到達できているワークMx(M)は、自工程以降でスムーズに処理を行うことができているが、場所Aまで到達できるワークMは、正常な稼働状況時より少なくなっていることを意味する。帳票には、図16(c)に示すように、前工程において、生産設備で処理を終えたワークの数量と、その処理に係るワークピッチ時間(ピッチ時間実測値Tq)等が、グラフで表示される。ワークピッチ時間は、ピッチ時間基準値Tpを下回る正常な場合(図16(c)は「白抜き表示」)と区別して、ピッチ時間基準値Tpを上回る異常な場合(図16(c)は「ドット表示」)を、強調した色で表示される。
【0131】
また、場所Bで、通常、正常な生産ライン稼働下で平均的なワーク在籍時間に比べ、OUT側の信号検出センサ10Xのワーク在籍時間が、長くなっている場合がある。この場合、何らかの工程トラブルが、図16(b)、(c)に示すように、後工程を行う生産設備で起きているものと判定できる。
【0132】
すなわち、図20に示すように、図17に示す正常な稼働状況である場合と比べ、後工程の工程トラブルにより、ワークMの処理が後工程で遅延していることに起因して、製造されるワークMの一つであるワークMx(M)を含むワークMのほとんどが、自工程から先の後工程以降で移動し難くなっており、このワークMxに続く他のワークMが、場所Bで滞留していることを意味する。帳票には、図16(c)に示すように、後工程において、生産設備で処理を終えたワークの数量と、その処理に係るワークピッチ時間(ピッチ時間実測値Tq)等が、グラフで表示される。ワークピッチ時間は、ピッチ時間基準値Tpを下回る正常な場合(図16(c)は「白抜き表示」)と区別して、ピッチ時間基準値Tpを上回る異常な場合(図16(c)は「斜線表示」)を、強調した色で表示される。
【0133】
次に、本実施形態の生産管理装置1、及び生産設備管理プログラムの作用・効果について説明する。
【0134】
本実施形態の生産管理装置1は、対象物Mに処理を実行する生産設備91に対し、対象物Mへの処理状況を監視して管理する生産設備管理装置において、制御手段23と、第1の外付け記憶手段21及び第2の外付け記憶手段22と、検出部13Aで、電気的なON状態とOFF状態との切替えに基づいて、生産設備91による処理の実行に伴って変化する対象物Mの状態を判別可能な状態検知センサ10Yと、生産設備91での対象物Mの処理状況に対応した時系列信号情報として、検出部13Aから検出される電気信号を、ON状態である場合とOFF状態である場合とを含む態様で、継続的に取得して、第1の外付け記憶手段21に記録する信号情報収集手段24と、実行された対象物Mの処理に係る帳票80を作成する帳票作成手段65と、を備え、状態検知センサ10Yでは、検出部13Aが、ON状態とOFF状態とを交互に、複数のサイクルで繰り返し可能な状態にある場合、制御手段23は、取得した時系列信号情報のうち、検出部13Aで、対象物Mを検知できているON状態にあるときの第1情報、または対象物Mを検知できていないOFF状態にあるときの第2情報の何れか一方の基準情報に対し、特定条件(A)または(B)下で抽出される時刻tとして、先の基準情報に対応する第1の時刻t1aと、その次の基準情報に対応する第2の時刻t2aとの差によるピッチ時間Tに基づいて、対象物Mの処理状況を管理するのに必要な演算処理を実行する共に、その演算処理結果を、帳票作成手段65により作成する帳票80に反映させること、を特徴とする。
【0135】
また、本実施形態の生産管理装置1は、対象物Mに処理を実行する生産設備91に、処理の実行に伴って変化する対象物Mの状態を、検出部94で、電気的なON状態とOFF状態との切替えに基づいて、判別可能な既設センサ10(対象物通過検出センサ93)が既設された下で、対象物Mの処理状況を監視して管理する生産設備管理装置において、制御手段23と、第1の外付け記憶手段21及び第2の外付け記憶手段22と、電気的な物理量である信号を、その大きさと共に検出可能な信号検出センサ10Xと、生産設備91での対象物Mの処理状況に対応した時系列信号情報として、検出部94から検出される電気信号を、ON状態である場合とOFF状態である場合とを含む態様で、継続的に取得して、第1の外付け記憶手段21に記録する信号情報収集手段24と、実行された対象物Mの処理に係る帳票80を作成する帳票作成手段65と、を備え、信号情報収集手段24では、電気信号は、検出部94、または検出部94と電気的に接続する配線95から、信号検出センサ10Xによって取得されること、対象物通過検出センサ93では、検出部94が、ON状態とOFF状態とを交互に、複数のサイクルで繰り返し可能な状態にある場合、制御手段23は、取得した時系列信号情報のうち、検出部94で、対象物Mを検知できているON状態にあるときの第1情報、または対象物Mを検知できていないOFF状態にあるときの第2情報の何れか一方の基準情報に対し、特定条件(A)または(B)下で抽出される時刻tとして、先の基準情報に対応する第1の時刻t1aと、その次の基準情報に対応する第2の時刻t2aとの差によるピッチ時間Tに基づいて、対象物Mの処理状況を管理するのに必要な演算処理を実行する共に、その演算処理結果を、帳票作成手段65により作成する帳票80に反映させること、を特徴とする。
【0136】
また、本実施形態に係る生産設備管理プログラムは、対象物Mに処理を実行する生産設備91に対し、対象物Mへの処理状況を監視して管理する生産管理装置1の本体側制御部20の第2の外付け記憶手段22に格納された生産設備管理プログラムにおいて、検出部94、検出部13Aで、電気的なON状態とOFF状態に切替えることにより、生産設備91による処理の実行に伴って変化する対象物Mの状態を判別可能な信号検出センサ10X、状態検知センサ10Yを、生産設備91に配設した下、信号検出センサ10X、状態検知センサ10Yでは、検出部94、検出部13Aが、ON状態とOFF状態とを交互に、複数のサイクルで繰り返し可能な状態にある場合に、生産設備91による対象物Mの処理状況に対応した時系列信号情報として、検出部94、検出部13Aから検出される電気信号を、ON状態である場合とOFF状態である場合とを含む態様で、継続的に取得して、第1の外付け記憶手段21に記録する第1のステップと、取得した時系列信号情報のうち、検出部94、検出部13Aで、対象物Mを検知できているON状態にあるときの第1情報、または対象物Mを検知できていないOFF状態にあるときの第2情報の何れか一方の基準情報に対し、設定された特定条件(A)または(B)下で抽出される時刻tとして、先の基準情報に対応する第1の時刻t1aと、その次の基準情報に対応する第2の時刻t2aとを取得する第2のステップと、第1の時刻t1aと第2の時刻t2aとの差であるピッチ時間Tに基づいて、対象物Mの処理状況を管理するのに必要な演算処理を実行する第3のステップと、実行された対象物Mの処理に係る帳票80を作成する第4のステップと、第3のステップで取得した演算処理の結果を、第4のステップで作成する帳票80に反映させる第5のステップと、を有すること、を特徴とする。
【0137】
これらの特徴により、複数の生産設備91を配置してなる生産ライン90で、複数の製造工程を順に各生産設備91で担い、対象物Mに処理を実行して製品を製造する場合でも、作業者は、生産ライン90において、生産設備91による対象物Mの処理状況を、生産設備91の態様や稼働状況に依らず、生産管理装置1により、生産設備91毎に確実に把握することができる。しかも、生産ライン90が、変則的で非定常な稼働下にあっても、生産管理装置1は、生産ライン90の各生産設備91に対し、それぞれの生産設備91に対応した固有の工程処理情報や、特定の生産設備91から一時的に採取したい詳細な工程処理情報等、生産設備91毎に個別の工程処理情報を詳細に収集することができる。
【0138】
特に、生産ライン90の新設、製品の製造工程変更に伴う既設の生産ライン90の変更、故障していた生産設備91の復旧、休暇により長期間停止していた生産ライン90の再稼働等に起因して、停止していた生産ライン90を立ち上げて稼働させる場合、作業者は、生産ライン90に対し、生産設備91毎に工程処理(対象物Mに施す処理)のサイクルタイムを収集する。そして、作業者は、生産設備91で処理を施す対象物Mに対し、予め工程毎に設定されたサイクルタイムを盛り込み、製品化までのタクトタイムを算出した生産計画を考慮した上で、実際に対象物Mに処理を施した製品の出来高等を指標とする生産ライン90の生産稼働効率を確認する作業を行う。このとき、作業者は、生産管理装置1で自動的に作成される帳票80により、生産ライン90に対し、製品の出来高等の指標である生産稼働効率を、各生産設備91の工程処理毎に生産計画と対比させながら、より高精度に知得することができる。
【0139】
従って、本実施形態に係る生産管理装置1やその生産設備管理プログラムによれば、複数の生産設備91を配置してなる生産ライン90で、複数の製造工程を順に各生産設備91で担い、対象物Mに処理を実行して製品を製造する場合でも、生産設備91の態様や稼働状況に依らず、工程処理に係る情報を、生産設備91毎に簡単に把握することができる、という優れた効果を奏する。
【0140】
また、本実施形態に係る生産管理装置1では、ピッチ時間Tの基準となるピッチ時間基準値Tpが、第2の外付け記憶手段22に設定可能であり、制御手段23は、実測で得たピッチ時間Tであるピッチ時間実測値Tqと、ピッチ時間基準値Tpとを対比して、ピッチ時間基準値Tpとピッチ時間実測値Tqとのピッチ時間差ΔTを算出した結果を、演算処理結果に盛り込むと共に、帳票作成手段65を介して、帳票80に反映させること、を特徴とする。
【0141】
この特徴により、作業者は、生産設備91(生産ライン90)で製造した全対象物Mに対し、予め設定されたサイクルタイムを基準にその許容範囲内の時間で、適切に処理されている否かの生産状況について、帳票80により、個々の対象物M毎に、より正確に確認することができる。特に、ピッチ時間基準値Tpと比べ、ピッチ時間実測値Tqが、どの程度遅延しているかについて、作業者は、対象物M毎に明確に把握することができる。
【0142】
また、本実施形態に係る生産管理装置1では、制御手段23は、繰り返された複数の基準情報に対し、検出部94、検出部13AでON状態またはOFF状態となったカウント数Cを算出し、その算出結果を、演算処理結果に盛り込むと共に、帳票作成手段65を介して、帳票80に反映させること、を特徴とする。
【0143】
この特徴により、作業者は、生産設備91(生産ライン90)で処理した対象物Mの数量を、帳票80により、例えば、日・時間(本実施形態では、時間帯)あたりに区分けする等して、より確実に確認することができる。
【0144】
また、本実施形態に係る生産管理装置1では、状態検知センサ10Yは、赤外線を発光可能である共に、発光した赤外線を、対象物Mでの反射により受光可能な赤外線センサ13であること、を特徴とする。
【0145】
この特徴により、生産ライン90や生産設備91において、対象物Mの状態を判別する対象物通過検出センサ93(既設センサ10)を既設していない場合や、既設されていても利用しない場合、生産管理装置1は、後付けで装着された赤外線センサ13により、搬送コンベア92に載せられた対象物Mの検知時に、赤外線センサ13から検出される電気信号に基づいて、対象物Mの処理状況を、生産設備91毎に把握・管理することができる。
【0146】
また、本実施形態に係る生産管理装置1では、電気的な信号に対し、少なくともA/D変換(Analog-to-digital)を行うA/D変換器14を備え、信号情報収集手段24は、取得した電気信号を、A/D変換器14により、デジタル信号に変換させた変換後の電気信号を収集すること、を特徴とする。
【0147】
この特徴により、生産ライン90や生産設備91に設置された対象物通過検出センサ93(既設センサ10)から取得される電気信号が、たとえアナログ信号であっても、既設センサ10より取得される電気信号を利用して、生産管理装置1の稼働を行うことができる。
【0148】
また、本実施形態に係る生産管理装置1では、信号検出センサ10Xは、電気信号である電流、または電圧を計測可能なセンサであり、A/D変換器14は、電気信号である電流、または電圧に対し、増幅を行うこと、を特徴とする。
【0149】
この特徴により、対象物通過検出センサ93(既設センサ10)の検出部94から装置本体2までの伝送距離の増大化に起因して、検出部94の出力電流等が、装置本体2に到達するまでに低下(減衰)を招く虞がある場合でも、装置本体2は、検出部94の電気信号に対し、A/D変換器14で増幅することにより、検出部94で検出された電流値等の状態で、取得することができる。
【0150】
また、本実施形態に係る生産管理装置1では、信号検出センサ10Xは、配線95の被覆を信号取得部11Aで包囲した態様で、電気信号である電流の大きさを取得可能な電流センサであり、信号情報収集手段24は、配線95に装着した信号取得部11Aを通じて取得された電気信号を、A/D変換器14で変換させた変換後の電気信号を収集すること、を特徴とする。
【0151】
この特徴により、作業者は、検出部94の出力電流を検出するにあたり、配線95の被覆を剥がさず、配線95内の電線と非接触で、検出部94の出力電流を検出すれば、出力電流の検出を、短時間、かつ簡単に行うことができ、作業性も良い。しかも、対象物通過検出センサ93(既設センサ10)の検出部94から取得される電気信号が、アナログ信号で、かつ装置本体2までの伝送距離の増大化に起因して、装置本体2に到達するまでに低下(減衰)を招く虞がある場合でも、装置本体2は、検出部94の電気信号に対し、A/D変換器14により、デジタル信号に変換すると共に、増幅することで、検出部94で検出された電流値等の状態で、取得することができる。
【0152】
また、本実施形態に係る生産管理装置1では、個々に特性が異なる複数種の電気信号のうち、信号情報収集手段24で取得可能な適合対象となる電気信号の信号種が複数、第2の外付け記憶手段22に登録されていること、を特徴とする。
【0153】
この特徴により、生産管理装置1は、信号検出センサ10Xにより検出する電気信号や、状態検知センサ10Yにより検出する電気信号に対し、幅広いバリエーションで対応できている。それ故に、生産管理装置1は、使用する現場の設備状況に応じて、汎用性の高い装置となっている。
【0154】
また、本実施形態に係る生産管理装置1では、取得した電気信号を伝送するセンサケーブル15の接続端子16を、着脱自在に接続可能な入力ポート4が、複数設けられていること、入力ポート4を通じて入力された電気信号に対し、信号種を判別する信号種判別手段25と、信号種判別手段25で判別した電気信号の信号種と、適合対象の電気信号の信号種との照合に基づき、信号情報収集手段24で取得される電気信号の信号種を特定する信号種特定手段26と、を備えること、を特徴とする。
【0155】
この特徴により、電気信号の信号種毎に、それぞれ独立したハードウエアを、本体側制御部20に設ける必要がないため、本体側制御部20の構成を簡素化することができる。これにより、装置本体2を小型化することができているため、生産設備91(生産ライン90)周辺のスペースが比較的狭い場所でも、装置本体2を配置することができる。加えて、装置本体2に掛かるコストを抑制することができている。
【0156】
また、本実施形態に係る生産管理装置1では、時系列信号情報に対し、閾値を設定する第1の閾値設定手段27及び第2の閾値設定手段62と、閾値に基づき、取得した時系列信号情報に、異常事象を含むか否かを判断する異常事象判断手段63と、取得した時系列信号情報に異常事象が含まれている場合、異常事象に係る警告を発する異常事象報知手段64と、を備え、制御手段23は、警告を、演算処理結果に盛り込むと共に、帳票作成手段65を介して、帳票80に反映させること、を特徴とする。
【0157】
この特徴により、作業者は、生産設備91(生産ライン90)で製造される全対象物Mに対し、工程処理を順調に経て製造されている正常な事象と、工程トラブルで遅延を生じて製造されている異常な事象とを、自動的に作成される帳票80を通じて、判断し易い。そのため、作業者は、このような異常な事象を早期発見し易く、必要な対策を、生産ライン90にいち早く講じることができるようになる。
【0158】
また、本実施形態に係る生産管理装置1では、通信回線により接続された状態にある処理端末50の画面52に、帳票80が表示可能な帳票表示手段65を備えていること、を特徴とする。
【0159】
この特徴により、作業者は、立ち上げ最中下にある生産ライン90に対し、製品(対象物M)の出来高等の指標となる生産ライン90の生産稼働効率等、生産ライン90の生産状況に係る情報を、図9及び図10に示すように、処理端末50の画面52に表示された帳票80により、一目で簡単に確認できるようになる。特に、帳票80は、このような生産状況に係る情報を、信号検出センサ10X、状態検知センサ10Yより検出された電気信号に基づき、制御手段23で演算処理されて作成されたものである。そのため、段落[0009]で前述したように、作業者が、手作業で取得したサイクルタイムの記録や、製品出来高の記録を専用端末に入力して作成され、作業者による人為的ミスを含む蓋然性の高かった従来の帳票と異なり、帳票80は、信頼性に優れた内容で構成できている。
【0160】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
【0161】
(1)例えば、実施形態では、図16に示すように、1つの装置本体2に、2つの信号検出センサ10Xを接続した生産管理装置1の事例を例示した。しかしながら、本発明に係る生産管理装置1台に付き、信号検出センサ、または状態検知手段である赤外線センサ等を、それぞれ独立系統で各入力ポートに同時に接続できる数は、最大で入力ポートの数分であり、実施形態に限定されるものではなく、種々変更可能である。
【0162】
(2)また、実施形態では、図5には、電圧センサ12と装置本体2を繋ぐセンサケーブル15や、赤外線センサ13と装置本体2を繋ぐセンサケーブル15に、A/D変換器14は接続されていないが、図5に示す装置本体2の活用事例の場合でも、必要に応じて、A/D変換器14等の信号変換手段を装着することは可能である。また、状態検知手段は、赤外線センサ以外にも、赤外線に代えて、例えば、レーザー光等を用いた状態検知センサであっても良い。
【0163】
(3)また、実施形態では、帳票の一例である生産管理板80を、図9及び図10に示したが、生産管理板80の構成内容、書式、グラフの配置等、帳票の内容は、実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0164】
1 生産管理装置(生産設備管理装置)
4 入力ポート
10X 信号検出センサ
11 電流センサ(信号検出センサ)
11A 信号取得部
12 電圧センサ(信号検出センサ)
13 赤外線センサ(状態検知手段、光電センサ)
14 A/D変換器(信号変換手段)
15 センサケーブル(外部ケーブル)
16 接続端子(端子)
21 第1の外付け記憶手段(記憶手段)
22 第2の外付け記憶手段(記憶手段)
23 制御手段
24 信号情報収集手段
25 信号種判別手段
26 信号種特定手段
27 第1の閾値設定手段(閾値設定手段)
50 処理端末(端末)
52 画面
62 第2の閾値設定手段(閾値設定手段)
63 異常事象判断手段
64 異常事象報知手段
65 帳票作成手段
66 帳票表示手段
80 帳票
91 生産設備
93 対象物通過検出センサ(既設の状態検知手段)
94 検出部
95 配線
T ピッチ時間
Tp ピッチ時間基準値
Tq ピッチ時間実測値
ΔT ピッチ時間差
C カウント数C(ON状態またはOFF状態となった回数)
M 対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20