(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】気体式マッサージ具および気体式マッサージ機
(51)【国際特許分類】
A61H 7/00 20060101AFI20230605BHJP
【FI】
A61H7/00 322D
A61H7/00 322B
(21)【出願番号】P 2021196444
(22)【出願日】2021-12-02
【審査請求日】2021-12-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390006286
【氏名又は名称】株式会社テクノ高槻
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 一真
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-111082(JP,A)
【文献】国際公開第2021/225110(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧気体を使用して、人体にマッサージを施すための気体式マッサージ機であって、
前記気体式マッサージ機は、
気体式マッサージ具と、
前記気体式マッサージ具の複数の気体室に高圧気体を供給し、前記複数の気体室から高圧気体を排出する気体給排システムと
を備え、
前記気体式マッサージ具は、人体の上肢または下肢の少なくとも一部位に、前記一部位を周方向で囲繞するように、前記一部位が延伸する軸方向に沿って装着され、高圧気体を使用して、人体にマッサージを施すための気体式マッサージ具であって、前記気体式マッサージ具は、高圧気体を受容および排出することで、互いに独立して膨張および収縮可能な複数の気体室を有し、
前記複数の気体室は、前記軸方向で互いに隣接するように設けられる第1の気体室群および第2の気体室群を含み、
前記第1の気体室群は、前記周方向に沿って、第1群の第1気体室および第1群の第2気体室を有し、
前記第2の気体室群は、前記周方向に沿って、第2群の第1気体室および第2群の第2気体室を有し、
前記気体給排システムは、前記第1群の第1気体室、前記第1群の第2気体室、前記第2群の第1気体室、前記第2群の第2気体室の順に、または、前記第1群の第2気体室、前記第1群の第1気体室、前記第2群の第2気体室、前記第2群の第1気体室の順に、高圧気体を供給するように構成される、気体式マッサージ機。
【請求項2】
前記第1群の第1気体室および前記第2群の第1気体室は、前記軸方向で互いに隣接するように設けられ、
前記第1群の第2気体室および前記第2群の第2気体室は、前記軸方向で互いに隣接するように設けられる、
請求項
1記載の気体式マッサージ機。
【請求項3】
前記気体式マッサージ具は、人体の脚部の少なくとも一部に沿う形状を有し、
前記気体式マッサージ具は、人体の脚部に装着されたときに、
前記第1群の第1気体室は、人体の下腿部の外側に対応する位置に位置付けられ、
前記第1群の第2気体室は、人体の下腿部の内側に対応する位置に位置付けられ、
前記第2群の第1気体室は、人体の上腿部の外側に対応する位置に位置付けられ、
前記第2群の第2気体室は、人体の上腿部の内側に対応する位置に位置付けられる
ように構成される、請求項
1または
2記載の気体式マッサージ機。
【請求項4】
前記気体式マッサージ具は、人体の腕部の少なくとも一部に沿う形状を有し、
前記気体式マッサージ具は、人体の腕部に装着されたときに、
前記第1群の第1気体室は、人体の前腕部の前側に対応する位置に位置付けられ、
前記第1群の第2気体室は、人体の前腕部の後側に対応する位置に位置付けられ、
前記第2群の第1気体室は、人体の上腕部の前側に対応する位置に位置付けられ、
前記第2群の第2気体室は、人体の上腕部の後側に対応する位置に位置付けられる
ように構成される、請求項
1または
2記載の気体式マッサージ機。
【請求項5】
高圧気体を使用して、人体にマッサージを施すための気体式マッサージ機であって、
前記気体式マッサージ機は、
気体式マッサージ具と、
前記気体式マッサージ具の複数の気体室に高圧気体を供給し、前記複数の気体室から高圧気体を排出する気体給排システムと
を備え、
前記気体式マッサージ具は、人体の上肢または下肢の少なくとも一部位に、前記一部位を周方向で囲繞するように、前記一部位が延伸する軸方向に沿って装着され、高圧気体を使用して、人体にマッサージを施すための気体式マッサージ具であって、前記気体式マッサージ具は、高圧気体を受容および排出することで、互いに独立して膨張および収縮可能な複数の気体室を有し、
前記複数の気体室は、前記軸方向で互いに隣接するように設けられる第1の気体室群および第2の気体室群を含み、
前記第1の気体室群は、前記周方向に沿って、第1群の第1気体室、第1群の第2気体室、および第1群の第3気体室を有し、
前記第2の気体室群は、前記周方向に沿って、第2群の第1気体室、第2群の第2気体室、および第2群の第3気体室を有し、
前記気体給排システムは、前記第1群の第3気体室、前記第1群の第1気体室、前記第1群の第2気体室、前記第2群の第3気体室、前記第2群の第1気体室、前記第2群の第2気体室の順に、または、前記第1群の第3気体室、前記第1群の第2気体室、前記第1群の第1気体室、前記第2群の第3気体室、前記第2群の第2気体室、前記第2群の第1気体室の順に、高圧気体を供給するように構成される、気体式マッサージ機。
【請求項6】
前記第1群の第1気体室および前記第2群の第1気体室は、前記軸方向で互いに隣接するように設けられ、
前記第1群の第2気体室および前記第2群の第2気体室は、前記軸方向で互いに隣接するように設けられ、
前記第1群の第3気体室および前記第2群の第3気体室は、前記軸方向で互いに隣接するように設けられる、
請求項
5記載の気体式マッサージ機。
【請求項7】
前記気体式マッサージ具は、人体の脚部の少なくとも一部に沿う形状を有し、
前記気体式マッサージ具は、人体の脚部に装着されたときに、
前記第1群の第1気体室は、人体の下腿部の外側に対応する位置に位置付けられ、
前記第1群の第2気体室は、人体の下腿部の内側に対応する位置に位置付けられ、
前記第1群の第3気体室は、人体の下腿部の裏側に対応する位置に位置付けられ、
前記第2群の第1気体室は、人体の上腿部の外側に対応する位置に位置付けられ、
前記第2群の第2気体室は、人体の上腿部の内側に対応する位置に位置付けられ、
前記第2群の第3気体室は、人体の上腿部の裏側に対応する位置に位置付けられる
ように構成される、請求項
5または
6記載の気体式マッサージ機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体式マッサージ具および気体式マッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の上肢や下肢を囲繞するように装着され、高圧気体を使用して、人体の装着部位をマッサージする気体式マッサージ具が知られている。たとえば、特許文献1には、人体の腕部または脚部を囲繞するスリーブ形状のマッサージ具が開示されている。このマッサージ具は、腕部または脚部に軸方向に沿って並置されるように、複数の空気室を有している。各空気室は、圧縮空気の供給および排出によって、独立して膨張および収縮可能に構成されている。そのため、特許文献1のマッサージ具は、たとえば、人体の上肢や下肢の末端に対応する位置に位置付けられる空気室から順に圧縮空気を供給することで、人体にマッサージを施すことができる。これにより、リンパ液などの体液の胴体への流れが促進されるので、上肢や下肢での体液の滞留を抑制することができると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人体の上肢や下肢には、複数の独立したリンパ管群など脈管群が周方向に存在する。ある脈管群が損傷していると、その脈管群を経由してリンパ液などの体液を流すことが困難となる。そのため、脈管群が正常に機能せず、上肢や下肢に体液が滞留するリンパ浮腫などの疾患の治療に当たっては、損傷がない(または損傷が少ない)脈管群を経由して体液群を流せば、体液の滞留をより抑制することができると考えられる。しかし、特許文献1のマッサージ具は、空気室が上肢または下肢の周囲で一様に膨張し、脈管群の損傷の有無に関わらず、上肢や下肢を周方向で一律に圧迫する。この場合、体液が滞留しやすい脈管群から体液が胴体に流れにくいので、体液の滞留をあまり抑制することができない。したがって、特許文献1のマッサージ具は、所望のマッサージ効果が得られにくい。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、体液を胴体に向かって流しやすい気体式マッサージ具および気体式マッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る気体式マッサージ具は、人体の上肢または下肢の少なくとも一部位に、前記一部位を周方向で囲繞するように、前記一部位が延伸する軸方向に沿って装着され、高圧気体を使用して、人体にマッサージを施すための気体式マッサージ具であって、前記気体式マッサージ具は、高圧気体を受容および排出することで、互いに独立して膨張および収縮可能な複数の気体室を有し、前記複数の気体室は、前記軸方向で互いに隣接するように設けられる第1の気体室群および第2の気体室群を含み、前記第1の気体室群および前記第2の気体室群はそれぞれ、前記周方向に沿って、少なくとも2つの気体室を有する。
【0007】
前記第1の気体室群は、前記周方向に沿って、第1群の第1気体室および第1群の第2気体室を有し、前記第2の気体室群は、前記周方向に沿って、第2群の第1気体室および第2群の第2気体室を有し、前記第1群の第1気体室および前記第2群の第1気体室は、前記軸方向で互いに隣接するように設けられ、前記第1群の第2気体室および前記第2群の第2気体室は、前記軸方向で互いに隣接するように設けられてもよい。
【0008】
前記気体式マッサージ具は、人体の脚部の少なくとも一部に沿う形状を有し、前記気体式マッサージ具は、人体の脚部に装着されたときに、前記第1群の第1気体室は、人体の下腿部の外側に対応する位置に位置付けられ、前記第1群の第2気体室は、人体の下腿部の内側に対応する位置に位置付けられ、前記第2群の第1気体室は、人体の上腿部の外側に対応する位置に位置付けられ、前記第2群の第2気体室は、人体の上腿部の内側に対応する位置に位置付けられるように構成されてもよい。
【0009】
前記気体式マッサージ具は、人体の腕部の少なくとも一部に沿う形状を有し、前記気体式マッサージ具は、人体の腕部に装着されたときに、前記第1群の第1気体室は、人体の前腕部の前側に対応する位置に位置付けられ、前記第1群の第2気体室は、人体の前腕部の後側に対応する位置に位置付けられ、前記第2群の第1気体室は、人体の上腕部の前側に対応する位置に位置付けられ、前記第2群の第2気体室は、人体の上腕部の後側に対応する位置に位置付けられるように構成されてもよい。
【0010】
前記第1の気体室群は、前記周方向に沿って、前記第1群の第1気体室と前記第1群の第2気体室との間に、第1群の第3気体室をさらに有し、前記第2の気体室群は、前記周方向に沿って、前記第2群の第1気体室と前記第2群の第2気体室との間に、第2群の第3気体室をさらに有し、前記第1群の第3気体室および前記第2群の第3気体室は、前記軸方向で互いに隣接するように設けられてもよい。
【0011】
前記気体式マッサージ具は、人体の脚部の少なくとも一部に沿う形状を有し、前記気体式マッサージ具は、人体の脚部に装着されたときに、前記第1群の第1気体室は、人体の下腿部の外側に対応する位置に位置付けられ、前記第1群の第2気体室は、人体の下腿部の内側に対応する位置に位置付けられ、前記第1群の第3気体室は、人体の下腿部の裏側に対応する位置に位置付けられ、前記第2群の第1気体室は、人体の上腿部の外側に対応する位置に位置付けられ、前記第2群の第2気体室は、人体の上腿部の内側に対応する位置に位置付けられ、前記第2群の第3気体室は、人体の上腿部の裏側に対応する位置に位置付けられてもよい。
【0012】
本発明の一実施形態に係る気体式マッサージ機は、高圧気体を使用して、人体にマッサージを施すための気体式マッサージ機であって、前記気体式マッサージ機は、上記気体式マッサージ具と、前記気体式マッサージ具の複数の気体室に高圧気体を供給し、前記複数の気体室から高圧気体を排出する気体給排システムとを備え、前記気体給排システムは、前記第1の気体室群に高圧気体を供給した後に、前記第2の気体室群に高圧気体を供給するように構成されてもよい。
【0013】
前記気体給排システムは、前記第1群の第1気体室、前記第1群の第2気体室、前記第2群の第1気体室、前記第2群の第2気体室の順に、または、前記第1群の第2気体室、前記第1群の第1気体室、前記第2群の第2気体室、前記第2群の第1気体室の順に、高圧気体を供給するように構成されてもよい。
【0014】
本発明の一実施形態に係る気体式マッサージ機は、高圧気体を使用して、人体にマッサージを施すための気体式マッサージ機であって、前記気体式マッサージ機は、上記気体式マッサージ具と、前記気体式マッサージ具の複数の気体室に高圧気体を供給し、前記複数の気体室から高圧気体を排出する気体給排システムとを備え、前記気体給排システムは、前記第1群の第3気体室、前記第1群の第1気体室、前記第1群の第2気体室、前記第2群の第3気体室、前記第2群の第1気体室、前記第2群の第2気体室の順に、または、前記第1群の第3気体室、前記第1群の第2気体室、前記第1群の第1気体室、前記第2群の第3気体室、前記第2群の第2気体室、前記第2群の第1気体室の順に、高圧気体を供給するように構成されてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一実施形態に係る気体式マッサージ具および気体式マッサージ機によれば、体液を胴体に向かって流しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係る気体式マッサージ機を示す模式的な斜視図である。
【
図2】第1実施形態の変形例に係る気体式マッサージ機を示す模式的な斜視図である。
【
図3A】第1の気体式マッサージ具を示す、前方から見た模式的な斜視図である。
【
図3B】第1の気体式マッサージ具を示す、後方から見た模式的な斜視図である。
【
図5A】第2のマッサージ具を示す、前方から見た模式的な斜視図である。
【
図5B】第2のマッサージ具を示す、後方から見た模式的な斜視図である。
【
図7】気体給排システムの概略的なブロック図である。
【
図8A】人体の下腿部におけるリンパ管群の位置を示す、前方右側から見た模式図である。
【
図8B】人体の下腿部におけるリンパ管群の位置を示す、左側方から見た模式図である。
【
図8C】人体の下腿部におけるリンパ管群の位置を示す、後方から模式図である。
【
図9】(a)は、第1実施形態に係る気体式マッサージ機において、第1の気体式マッサージ具を右脚部に装着したときの模式図であり、(b)は、その際の揉みステップの一例(具体例1)を示す説明図である。
【
図10】(a)~(d)は、
図9(b)の揉みステップの主要ステップを示す模式図である。
【
図11】(a)~(d)は、
図9(b)の揉みステップの主要ステップを示す模式図である。
【
図12】(a)~(c)は、
図9(b)の揉みステップの主要ステップを示す模式図である。
【
図13】第1実施形態に係る気体式マッサージ機において、第1の気体式マッサージ具を右脚部に装着したときの揉みステップの一例(具体例2)を示す説明図である。
【
図14】第1実施形態に係る気体式マッサージ機において、第1の気体式マッサージ具を右脚部に装着したときの揉みステップの一例(具体例3)を示す説明図である。
【
図15】(a)は、第1実施形態に係る気体式マッサージ機において、第1の気体式マッサージ具を左脚部に装着したときの模式図であり、(b)は、その際の揉みステップの一例(具体例4)を示す説明図である。
【
図16】第1実施形態に係る気体式マッサージ機において、第1の気体式マッサージ具を左脚部に装着したときの揉みステップの一例(具体例5)を示す説明図である。
【
図17】第1実施形態に係る気体式マッサージ機において、第1の気体式マッサージ具を左脚部に装着したときの揉みステップの一例(具体例6)を示す説明図である。
【
図18】(a)は、第1実施形態の変形例に係る気体式マッサージ機において、気体式マッサージ具を装着したときの模式図であり、(b)は、その際の揉みステップの一例(具体例7)を示す説明図である。
【
図19】第1実施形態の変形例に係る気体式マッサージ機において、気体式マッサージ具を装着したときの揉みステップの一例(具体例8)を示す説明図である。
【
図20】第1実施形態の変形例に係る気体式マッサージ機において、気体式マッサージ具を装着したときの揉みステップの一例(具体例9)を示す説明図である。
【
図21】第2の実施形態に係る気体式マッサージ機を示す模式的な正面図である。
【
図23】(a)第2実施形態に係る気体式マッサージ機において、気体式マッサージ具を右腕部に装着したときの模式図であり、(b)は、その際の揉みステップの一例(具体例10)を示す説明図である。
【
図24】(a)~(d)は、
図23(b)の揉みステップの主要ステップを示す模式図である。
【
図25】(a)~(b)は、
図23(b)の揉みステップの主要ステップを示す模式図である。
【
図26】第2実施形態に係る気体式マッサージ機において、気体式マッサージ具を右腕部に装着したときの揉みステップの一例(具体例11)を示す説明図である。
【
図27】第2実施形態に係る気体式マッサージ機において、気体式マッサージ具を右腕部に装着したときの揉みステップの一例(具体例12)を示す説明図である。
【
図28】(a)第2実施形態に係る気体式マッサージ機において、気体式マッサージ具を左腕部に装着したときの模式図であり、(b)が、その際の揉みステップの一例(具体例13)を示す説明図である。
【
図29】第2実施形態に係る気体式マッサージ機において、気体式マッサージ具を左腕部に装着したときの揉みステップの一例(具体例14)を示す説明図である。
【
図30】第2実施形態に係る気体式マッサージ機において、気体式マッサージ具を左腕部に装着したときの揉みステップの一例(具体例15)を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態に係る気体式マッサージ機を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで例示であり、本発明の気体式マッサージ機は、以下の例に限定されることはない。
【0018】
なお、本明細書において、「A形状」およびこれに類する表現は、完全なA形状のみを指すのではなく、見た目にA形状を連想させる形状(略A形状)を含んで指すものとする。また、本明細書において、「隣接する」およびこれに類する表現は、2以上物体の端部同士が接している状態のみならず、2以上物体の端部同士がオーバーラップしている状態や、2以上物体の端部同士が接していないが、互いに近傍に位置している状態を含んで指すものとする。
【0019】
本明細書において、「軸方向」は、気体式マッサージ具が装着される人体の上肢または下肢が胴体から延伸する方向を指し、「周方向」は、軸方向を周回する方向を指し、「径方向」は、軸方向に交差する方向(より具体的には、軸方向に垂直な方向)を指すものとする。本明細書において、「近位」およびこれに類する表現は、特に断らない限り、人体の心臓から近い側を指し、「遠位」およびこれに類する表現は、特に断らない限り、「近位」と反対側であって、人体の心臓から遠い側を指すものとする。本明細書において、「上」およびこれに類する表現は、人体において、足先部から頭部に向かう側を指し、「下」およびこれに類する表現は、「上」と反対側であって、人体において、頭部から足先部に向かう側を指すものとする。本明細書において、「前」およびこれに類する表現は、人体の腹部が向く側を指し、「後」およびこれに類する表現は、「前」と反対側であって、人体の腰部が向く側を指すものとする。本明細書において、「右」およびこれに類する表現は、人体を前側から見たときに、左側を指し、「左」およびこれに類する表現は、「右」と反対側であって、人体を前側から見たときに、右側を指すものとする。本明細書において、「内」およびこれに類する表現は、左右の脚部が向き合う側を指し、「外」およびこれに類する表現は、「内」と反対側であって、左右の脚部が向き合わない側を指すものとする。
【0020】
本明細書において、「下肢」および「脚部」は、股から足先部までの部位(胴体から遠位側の全体)を指し、「足部」は足首部から足先部までの部位(足首部から遠位側の全体)を指すものとする。本明細書において、「上肢」および「腕部」は、肩部から手先部までの部位(肩部から遠位側の全体)を指し、「手部」は手首部から手先部までの部位(手首部から遠位側の全体)を指すものとする。
【0021】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る気体式マッサージ機1を示している。本実施形態に係る気体式マッサージ機1は、高圧気体を使用して、人体Zにマッサージを施すための機器である。気体式マッサージ機1は、たとえば、被施術者の体液の滞留を改善し、その流れを促進するなど、人体Zの状態を改善することを目的に、被施術者の人体Zを「揉む」など、被施術者の人体Zに刺激を与えるために用いられる。ここで、本明細書において、「高圧気体」は、大気圧より高い気圧を有する気体を指す。本実施形態では、気体は、利便性の観点から、空気である。しかし、気体は、特に限定されることはなく、He(ヘリウム)およびN
2(窒素)などの不活性ガス、ならびにO
2(酸素)などのその他のガスであってもよい。なお、本実施形態では、気体式マッサージ機1は、被施術者のリンパ液の滞留を改善するために、被施術者の人体Zに刺激を与える。しかし、気体式マッサージ機1は、被施術者の血液などのその他の体液の滞留を改善するために、被施術者の人体Zに刺激を与えてもよい。
【0022】
本実施形態に係る気体式マッサージ機1は、
図1に示されるように、気体式マッサージ具2と、気体給排システム3とを備えている。
【0023】
気体式マッサージ具2は、高圧気体を使用して、人体Zにマッサージを施すための器具である。気体式マッサージ具2は、
図1に示されるように、ホース2hを介して気体給排システム3に流体接続される。気体式マッサージ具2は、気体給排システム3から高圧気体を受容して膨張し、気体給排システム3を介して高圧気体が排出されて収縮する。気体式マッサージ具2は、膨張によって人体Zを圧迫し、収縮によって人体Zの圧迫を解除する。気体式マッサージ具2は、人体Zへの圧迫と圧迫解除を繰り返すことで、人体Zをマッサージする。
【0024】
気体式マッサージ具2は、人体Zの上肢または下肢の少なくとも一部位を周方向Q2で囲繞するように、軸方向Q1に沿って装着される。なお、「(人体Zの上肢または下肢の少なくとも)一部位」は、四肢のうちの一肢(片腕部または片脚部)の全体であってもよく、一肢の一部であっても構わない。本実施形態では、
図1に示されるように、気体式マッサージ具2は、人体Zの脚部の少なくとも一部に沿う形状を有している。より具体的には、後述するように、気体式マッサージ具2は、人体Zの片脚部に沿うブーツ形状を有する第1の気体式マッサージ具2aと、人体Zの股上に沿う半ズボン形状を有する第2の気体式マッサージ具2bとを含み、第1の気体式マッサージ具2aおよび第2の気体式マッサージ具2bは、別体で設けられている。このように、気体式マッサージ具2を個別の第1および第2のマッサージ具2a、2bによって構成すると、第1および第2のマッサージ具2a、2bを別々に人体Zの片脚部および股上にそれぞれ装着することができるので、人体Zに気体式マッサージ具2を装着しやすくなる。また、第1の気体式マッサージ具2aを左右の脚部で入れ替えて装着することで、1つの気体式マッサージ具2を用いて、人体Zの下肢の左半身および右半身の両方にマッサージを施すことができるようになる。ただし、気体式マッサージ具2は、第1の気体式マッサージ具2aのみから構成されてもよい。また、第1の気体式マッサージ具2aは、右脚部専用の気体式マッサージ具または左脚部専用の気体式マッサージ具として、右脚部または左脚部に正確に沿うように形成されていてもよい。
【0025】
なお、気体式マッサージ具2は、
図2に示される変形例のように、第1の気体式マッサージ具2a、2aと、第2の気体式マッサージ具2bとを含んでいてもよい。このように、第1の気体式マッサージ具2a、2aを一対用意すると、人体Zの両脚部に同時に装着して、人体Zの両脚部に対して同時にマッサージを施すことができるようになる。ただし、気体式マッサージ具2は、
図1および
図2に示されるような形態に限定されない。たとえば、気体式マッサージ具2は、後述するように、人体Zの片腕部に沿う形状を有していてもよい。また、気体式マッサージ具2は、人体Zの下半身全体にマッサージを施すために、左右の両脚部および腰部に沿うように、一体となったズボン形状を有していてもよいし、人体Zの略全体をマッサージするために、左右の両脚部、腰部、および上半身に沿うように一体となった全身スーツ形状を有していてもよい。
【0026】
気体式マッサージ具2は、第1の気体式マッサージ具2aと第2の気体式マッサージ具2bとを個別に図示する
図3Aおよび
図3Bならびに
図5Aおよび
図5Bに示されるように、高圧気体を受容および排出することで、互いに独立して膨張および収縮可能な複数の気体室を有している。複数の気体室は、軸方向Q1で互いに隣接するように設けられる第1の気体室群21および第2の気体室群22を含んでいる(以下、「気体式マッサージ具2」を「気体式マッサージ具2a、2b」と表すこともある)。なお、
図3A、
図3B、
図5A、および
図5Bにおいて、図を見やすくするために、気体式マッサージ具2a、2bに挿入された人体Zは、実線で描かれている。本実施形態では、複数の気体室は、軸方向Q1(第1の気体室群21と隣接する側と反対側)で、第2の気体室群22と互いに隣接するように、第3の気体室群23をさらに含んでいる(
図5Aおよび
図5B参照)。なお、本明細書において、「気体室群」は、人体Zの特定部位に対応する位置に位置付けられる気体室または気体室の集合体を指し、気体室群に含まれる気体室の数は、1つであっても、複数であってもよい。なお、第3の気体室群23は、必ずしも設けられなくてもよい。また、複数の気体室は、4つ以上の気体室群を含んでいてもよい。
【0027】
第1の気体式マッサージ具2aおよび第2の気体式マッサージ具2bと第1~第3の気体室群21~23との対応関係は、気体式マッサージ具2a、2bの装着の容易性などを鑑みて、適宜変更され得る。本実施形態では、
図3Aおよび
図3Bに示されるように、第1の気体式マッサージ具2aが、第1の気体室群21および第2の気体室群22を有しており、
図5Aおよび
図5Bに示されるように、第2の気体式マッサージ具2bが、第3の気体室群23を有している。ただし、第1の気体式マッサージ具2aが、第1の気体室群21および第2の気体室群22の半分を有し、第2の気体式マッサージ具2bが、第2の気体室群22の残り半分および第3の気体室群23を有していてもよい。また、たとえば、気体式マッサージ具2a、2bがさらに第3のマッサージ具(図示せず)を含み、第1の気体式マッサージ具2aが、第1の気体室群21を有し、第2の気体式マッサージ具2bが、第2の気体室群22を有し、第3の気体式マッサージ具が、第3の気体室群23を有していてもよい。
【0028】
第1の気体式マッサージ具2aは、
図3Aおよび
図3Bに示されるように、人体Zの脚部を周方向Q2で囲繞するように、軸方向Q1に沿って装着される。第1の気体式マッサージ具2aの形状は、人体Zの脚部に装着可能であれば、特に限定されることはない。本実施形態では、第1の気体式マッサージ具2aは、ブーツ形状を有し、軸方向Q1の一端が、人体Zの脚部の末端の足先部まで沿うように、軸方向Q1に対して(前側に)屈曲している。そうすることで、第1の気体式マッサージ具2aは、屈曲部分を足先部に沿わせるように脚部に装着すると、人体Zに適切に位置決めされるので、気体室を人体の所望の部位に位置決めすることができる。ただし、第1の気体式マッサージ具2aは、単純な筒形状などのその他の形状を有していてもよい。
【0029】
本実施形態では、第1の気体式マッサージ具2aは、
図3Aおよび
図3Bに示されるように、複数の気体室と、複数の気体室を周方向Q2で囲繞する第1のカバー21aと、第1のカバー21aの周方向Q2の端部同士を締結する第1の締結具22a(
図3A参照)とを備えている。具体的には、第1の気体式マッサージ具2aは、複数の気体室として、第1の気体室群21および第2の気体室群22を有している。
【0030】
第1および第2の気体室群21、22はそれぞれ、
図3Aに示されるように、周方向Q2に沿って、少なくとも2つの気体室を有している。このように、第1および第2の気体室群21、22が少なくとも2つの気体室を周方向Q2に有することで、人体Zの特定の部位を避けながら、第1の気体式マッサージ具2aを周方向Q2で圧迫したい位置においてのみ膨張させることができる。本実施形態では、第1の気体室群21は、周方向Q2に沿って、第1群の第1気体室211および第1群の第2気体室212を有している。より具体的には、第1の気体室群21は、周方向Q2に沿って、第1群の第1気体室211と第1群の第2気体室212との間に、第1群の第3気体室213をさらに有している。また、本実施形態では、第2の気体室群22は、周方向Q2に沿って、第2群の第1気体室221および第2群の第2気体室222を有している。より具体的には、第2の気体室群22は、周方向Q2に沿って、第2群の第1気体室221と第2群の第2気体室222との間に、第2群の第3気体室223をさらに有している。この場合、後述するように、人体Zの内部のリンパ管群(
図8A~
図8Cのリンパ管群Z1~Z4参照)の位置に対応するように、第1および第2の気体室群21、22の各気体室を位置付けしやすくなる。ただし、第1および第2の気体室群21、22がそれぞれ有する気体室の数は、気体式マッサージ具2(第1の気体式マッサージ具2a)によるマッサージなどに差し障りがなければ、特に限定されることはない。たとえば、第1および第2の気体室群21、22はそれぞれ、周方向Q2に沿って、4つ以上の気体室を有していてもよい。
【0031】
第1および第2の気体室群21、22の各気体室211、212、221、222は、
図3Aに示されるように、互いに独立して膨張および収縮可能な複数のサブ気体室に軸方向Q1で分割されていてもよい。そうすることで、各気体室211、212、221、222の分割数に応じて、各気体室211、212、221、222を軸方向Q1に沿って徐々に膨張させて人体Zを圧迫していくと、リンパ液の流れがより促進される。具体的には、第1群の第1気体室211は、軸方向Q1で、第1群の第1遠位気体室2111と、第1群の第1近位気体室2112とに分割されていてもよい。また、第1群の第2気体室212は、軸方向Q1で、第1群の第2遠位気体室2121と、第1群の第2近位気体室2122とに分割されてもよい。さらに、第1群の第3気体室213は、軸方向Q1で、第1群の第3遠位気体室2131と、第1群の第3近位気体室2132とに分割されていてもよい。同様に、第2群の第1気体室221は、軸方向Q1で、第2群の第1遠位気体室2211と、第2群の第1近位気体室2212とに分割されていてもよい。また、第2群の第2気体室222は、軸方向Q1で、第2群の第2遠位気体室2221と、第2群の第2近位気体室2222とに分割されていてもよい。なお、
図3Aでは、第2群の第3気体室223は、軸方向Q1で分割されずに、1つの気体室のままであるが、他の第1および第2の気体室群21、22の気体室と同様に、軸方向Q1で分割されていてもよい。第1および第2の気体室群21、22の各気体室211、212、221、222の分割数は、特に限定されることはない。たとえば、第1および第2の気体室群21、22の各気体室は、3つ以上に分割されてもよく、互いに異なる数で各気体室が分割されていてもよい。
【0032】
第1および第2の気体室群21、22は、上述の気体室とは別に、軸方向Q1の任意の位置に、周方向Q2で1つのみ設けられる気体室を有していてもよい。本実施形態では、
図3Aおよび
図3Bに示されるように、第1の気体室群21は、軸方向Q1(第2の気体室群22と隣接する側と反対側)で、第1群の第1気体室211および第1群の第2気体室212(ならびに第1群の第3気体室213)と隣接するように、周方向Q2の略全周に亘る第1群の端部気体室214を有している。ただし、第2の気体室群22が、周方向Q2の略全周に亘る気体室を有していてもよい。なお、周方向Q2の略全周に亘る気体室は、必ずしも設けられなくてもよい。
【0033】
第1および第2の気体室群21、22と人体Zとの位置関係は、第1および第2の気体室群21、22が人体Zの上肢または下肢の少なくとも一部位にそれぞれ位置付けられれば、特に限定されることはない。本実施形態では、
図3Aおよび
図3Bに示されるように、第1の気体式マッサージ具2aの屈曲した部分が人体Zの足部に対応するように、第1の気体式マッサージ具2aを人体Zに装着することで、第1および第2の気体室群21、22が、軸方向Q1および周方向Q2において、人体Zの下腿部および上腿部に対して位置決めされる。そうすることで、第1群の第1気体室211が、人体Zの下腿部の外側(下腿外側部)に対応する位置に位置付けられ、第1群の第2気体室212が、人体Zの下腿部の内側(下腿内側部)に対応する位置に位置付けられ、第2群の第1気体室221が、人体Zの上腿部の外側(大腿外側部)に対応する位置に位置付けられ、第2群の第2気体室222が、人体Zの上腿部の内側(大腿内側部(鼠蹊部近傍))に対応する位置に位置付けられる。また、本実施形態では、第1群の第3気体室213が、人体Zの下腿部の裏側(下腿後面部)に対応する位置に位置付けられ、第2群の第3気体室223が、人体Zの上腿部の裏側(大腿後面部)に対応する位置に位置付けられる。さらに、本実施形態では、第1群の端部気体室214が、人体Zの足部に対応する位置に位置付けられる。ただし、第1および第2の気体室群21、22の人体Zに対する位置は、マッサージを施す人体Zの部位に応じて、適宜変更され得る。
【0034】
なお、本実施形態では、第1の気体式マッサージ具2aは、第1群の端部気体室214で人体Zの脚部に位置決めされるが、他の位置決め要素で人体Zの脚部に位置決めされてもよい。たとえば、第1の気体式マッサージ具2aは、人体Zに装着されるときに、ボタンなどの留具によって、第2の気体式マッサージ具2bと連結することで、人体Zの脚部に位置決めされてもよい。
【0035】
第1の気体室群21と第2の気体室群22との間における、気体室の周方向Q2の位置関係は、気体室が互いに隣接していれば、特に限定されることはない。本実施形態では、
図3Aに示されるように、第1群の第1気体室211および第2群の第1気体室221は、軸方向Q1で互いに隣接するように設けられており、より具体的には、軸方向Q1で互いに整列するように設けられている。また、本実施形態では、第1群の第2気体室212および第2群の第2気体室222は、軸方向Q1で互いに隣接するように設けられており、より具体的には、軸方向Q1で互いに整列するように設けられている。また、本実施形態では、第1群の第3気体室213および第2群の第3気体室223は、軸方向Q1で互いに隣接するように設けられており、より具体的には、軸方向Q1で互いに整列するように設けられている。そうすることで、第1および第2の気体室群21、22の各気体室が、軸方向Q1に沿って概略並ぶことになるので、人体Zの内部でのリンパ管群(
図8A~
図8Cのリンパ管群Z1~Z4参照)の延伸方向と対応するように、第1および第2の気体室群21、22の各気体室を人体Zに位置付けやすくなる。そのため、第1の気体式マッサージ具2aの各気体室をリンパ管群の延伸方向に沿うように膨張および収縮させることで、リンパ液が流れやすくなる。しかし、第1の気体室群21の気体室と第2の気体室群22の気体室とがいずれも、軸方向Q1で互いに整列していなくてもよく、これらの一部が整列し、他の一部が整列していなくてもよい。
【0036】
第1および第2の気体室群21、22のそれぞれにおける、気体室の周方向Q2の位置関係は、特に限定されることはない。本実施形態では、
図4に示されるように、第1の気体室群21の気体室は、周方向Q2の端部同士が互いにオーバーラップしている(
図4では、第1の気体室群21の気体室として、第1群の第1近位気体室2112、第1群の第2近位気体室2122、および第1群の第3近位気体室2132が示されている)。この場合、第1の気体室群21の気体室が周方向Q2において隙間なく配置されるので、第1の気体室群21の全ての気体室が膨張すると、人体Zを周方向Q2で漏れなく圧迫することができる。また、特に図示しないが、本実施形態では、第2の気体室群22の気体室は、第1の気体室群21の気体室と同様に、周方向Q2の端部同士が互いにオーバーラップしている。ただし、第1および第2の気体室群21、22のそれぞれにおいて、気体室は、互いにオーバーラップしていなくてもよく、互いに離間するように設けられていてもよい。
【0037】
第1のカバー21aは、本実施形態では、
図3A~
図4に示されるように、シート状の形状を有している。第1のカバー21aは、第1の気体式マッサージ具2aが人体Zに装着されたときに、第1および第2の気体室群21、22を覆うことができれば、その大きさは特に限定されることない。たとえば、第1のカバー21aは、人体Z(人体Zの脚部)の平均的な周長に対して、一回り長い周長に形成される。また、第1のカバー21aは、人体Z(人体Zの脚部)の形状に応じて変形可能であり、第1および第2の気体室群21、22が膨張したときに、第1および第2の気体室群21、22の径方向Q3の外側への拡がりを抑制可能な強度を有していれば、その材質は、特に限定されることはない。第1のカバー21aは、たとえば、合成繊維などよって構成することができる。
【0038】
第1の締結具22aは、
図4に示されるように、第1のカバー21aの周方向Q2の端部同士を締結するために設けられる。第1の締結具22aによって第1のカバー21aの端部同士が締結されることで、展開された第1の気体式マッサージ具2a(
図4の二点鎖線参照)を略筒状に閉じることができる(
図4の実線参照)。これにより、第1の気体式マッサージ具2aを展開させてから人体Z(人体Zの脚部)に装着することができるので、第1の気体式マッサージ具2aを人体Z(人体Zの脚部)に装着しやすくなる。本実施形態では、第1の締結具22aは、第1のカバー21aの周方向Q2の両端部において軸方向Q1に沿って設けられ、第1のカバー21aの周方向Q2の一端部および他端部を人体Z(人体Zの脚部)の前側で締結する。そうすることで、第1の気体式マッサージ具2aを展開した状態において、第1の気体式マッサージ具2aの左右の中央に人体Z(人体Zの脚部)を載置した後に、人体Z(人体Zの脚部)を囲繞するように装着することができる。そのため、たとえば、下肢を動かすことが困難な被施術者であっても、第1の気体式マッサージ具2aを人体Z(人体Zの脚部)に装着しやすくなる。また、本実施形態では、第1の締結具22aは、第1の気体式マッサージ具2aを展開したときに、第1群の第1気体室211(
図4では、第1群の第1気体室211のうちの第1群の第1近位気体室2112が示されている)および第1群の第2気体室212(
図4では、第1群の第2気体室212のうちの第1群の第2近位気体室2122が示されている)が第1のカバー21aの両端部より周方向Q2の外側に延在するように、第1のカバー21aに設けられている(
図4の二点鎖線参照)。そのため、第1の締結具22aは、第1群の第1気体室211および第1群の第2気体室212の周方向Q2の端部同士がオーバーラップするように、第1のカバー21aの周方向Q2の端部同士を締結することができる(
図4の実線参照)。なお、
図4では、第1の締結具22aは、線ファスナであるが、軸方向Q1に沿って並設された複数のボタンなど、その他の締結具であってもよい。
【0039】
第2の気体式マッサージ具2bは、
図5Aおよび
図5Bに示されるように、人体Zの股間部の周辺を周方向Q2で囲繞するように、軸方向Q1に沿って装着される。第2の気体式マッサージ具2bの形状は、人体Zの股上に装着可能であれば、特に限定されることはない。本実施形態では、
図5Aおよび
図5Bに示されるように、第2の気体式マッサージ具2bは、半ズボン形状を有し、人体Zの両脚部に挿通されるように、軸方向Q1の一端側に2つの開口を備え、人体Zの腰部に挿通されるように、軸方向Q1の他端側に1つの開口を備えている。ただし、第2の気体式マッサージ具2bは、単純な筒形状などのその他の形状を有していてもよい。
【0040】
本実施形態では、第2の気体式マッサージ具2bは、
図5Aおよび
図5Bに示されるように、少なくとも1つの気体室と、少なくとも1つの気体室を周方向Q2で囲繞する第2のカバー21bと、第2のカバー21bの周方向Q2の端部同士を締結する第2の締結具22bとを備えている。第2の気体式マッサージ具2bは、少なくとも1つの気体室として、第3の気体室群23をさらに有している。
【0041】
第3の気体室群23は、本実施形態では、
図5Aおよび
図5Bに示されるように、左右の中央に設けられる第3群の第1気体室231と、軸方向Q1の下方において、第3群の第1気体室231の左右の両側に隣接して設けられる第3群の第2気体室232とを有している。第3群の第1気体室231は、具体的には、半ズボン形状の軸方向Q1の一端側の2つの開口への分岐部に対応するように、前側および後側に跨る湾曲した帯状に形成されている。第3群の第2気体室232は、具体的には、半ズボン形状の軸方向Q1の一端側の2つの開口に対応するように、2つの独立した筒形状に形成されている。第3の気体室群23はさらに、軸方向Q1の上方において、第3群の第1気体室231および第3群の第2気体室232と隣接して設けられる第3群の第3気体室233を有していてもよい。第3群の第3気体室233は、具体的には、半ズボン形状の軸方向Q1の他端側の1つの開口に対応するように、1つの筒形状に形成されている。ただし、第3の気体室群23の気体室の配置は、気体式マッサージ具2(第2の気体式マッサージ具2b)によるマッサージの施術内容などに応じて、適宜変更され得る。
【0042】
第3の気体室群23の各気体室231~233は、
図5Aおよび
図5Bに示されるように、互いに独立して膨張および収縮可能な複数のサブ気体室を有していてもよい。具体的には、第3群の第2気体室232は、軸方向Q1の一端側の左右の独立した筒形状に対応する第3群の第2右側気体室2321および第3群の第2左側気体室2322を有していてもよい。また、第3群の第3気体室233は、軸方向Q1の他端側の1つの筒形状の右半分および左半分をそれぞれ構成する第3群の第3右側気体室2331および第3群の第3左側気体室2332に分割されていてもよい。ただし、第3の気体室群23の気体室の分割数は、特に限定されることはなく、気体式マッサージ具2(第2の気体式マッサージ具2b)によるマッサージの施術内容などに応じて、適宜変更され得る。
【0043】
第3の気体室群23と人体Zとの位置関係は、特に限定されることはない。本実施形態では、
図5Aおよび
図5Bに示されるように、第2の気体式マッサージ具2bの軸方向Q1の一端側の2つの開口への分岐部が人体Zの股間部と対応するように、第2の気体式マッサージ具2bを人体Zに装着することで、第3の気体室群23が、軸方向Q1および周方向Q2において、股上に対して位置決めされる。これにより、第3群の第1気体室231は、人体Zにおいて、下腹部の左右の中央から股間部を通って臀部の左右の中央に対応する位置に位置付けられ、第3群の第2気体室232は、人体Zにおいて、右脚部および左脚部の大腿上部(鼠蹊部近傍)に対応する位置に位置付けられる。また、第3群の第3気体室233は、人体Zにおいて、下腹部から左右の脇腹を通って臀部および腰部に対応する位置に位置付けられる。ただし、第3の気体室群23の人体Zに対する位置は、マッサージを施す人体Zの部位に応じて、適宜変更され得る。
【0044】
第3の気体室群23における、気体室の周方向Q2の位置関係は、特に限定されることはない。本実施形態では、
図6に示されるように、第3の気体室群23の気体室は、周方向Q2の端部同士が互いにオーバーラップしている(
図6では、第3の気体室群23の気体室として、第3群の第1気体室231、第3群の第3右側気体室2331、および第3群の第3左側気体室2332が示されている)。ただし、第3の気体室群23の気体室は、互いにオーバーラップしていなくてもよく、互いに離間するように設けられていてもよい。
【0045】
第2のカバー21bは、
図5A~
図6に示されるように、第1のカバー21aと同様に、シート状の形状を有する。第2の締結具22bは、
図6に示されるように、第2のカバー21bの周方向Q2の端部同士を締結するために設けられる。本実施形態では、第2の締結具22bは、第2のカバー21bの前方右側および前方左側において軸方向Q1に沿って一対設けられ、第2のカバー21bの前方中央部の周方向Q2の両端部と、前方右側部および前方左側部の周方向Q2の端部を人体Zの前側で締結する。また、本実施形態では、第2の締結具22bは、第2の気体式マッサージ具2bを展開したときに、第3群の第3気体室233(
図6では、第3群の第3気体室233を構成する第3群の第3右側気体室2331および第3群の第3左側気体室2332が示されている)が第2のカバー21bの端部より周方向Q2の外側に延在するように、第2のカバー21bに設けられている(
図6の二点鎖線参照)。そのため、第2の締結具22bは、第3群の第1気体室231および第3群の第3気体室233の周方向Q2の端部同士がオーバーラップするように、第2のカバー21bの周方向Q2の端部同士を締結することができる(
図6の実線参照)。同様に、特に図示しないが、本実施形態では、第2の締結具22bは、第2の気体式マッサージ具2bを展開したときに、第3群の第2気体室232が第2のカバー21bの端部より周方向Q2の外側に延在するように、第2のカバー21bに設けられている。そのため、第2の締結具22bは、第3群の第1気体室231および第3群の第2気体室232の周方向Q2の端部同士がオーバーラップするように、第2のカバー21bの周方向Q2の端部同士を締結することができる。第2のカバー21bおよび第2の締結具22bのその他の点については、第1のカバー21aおよび第1の締結具22aと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0046】
図1を再度参照すると、気体式マッサージ機1は、気体給排システム3を備えている。気体給排システム3は、気体式マッサージ具2の複数の気体室(
図3A~
図6参照)に高圧気体を供給し、複数の気体室から高圧気体を排出する。本実施形態では、気体給排システム3は、コネクタ3aを介して気体式マッサージ具2(具体的には、気体式マッサージ具2のホース2h)と取り外し可能に流体接続されている。そうすることで、気体式マッサージ機1は、気体給排システム3と流体接続させる気体式マッサージ具2の交換によって、1つの気体給排システム3を用いて、マッサージを施す部位に対応する様々な気体式マッサージ具2を選択することできるようになる。
【0047】
気体給排システム3は、本実施形態では、
図7に示されるように、高圧気体を供給する気体供給装置31と、高圧気体の流路を切り替える流路切替装置32と、気体供給装置31および流路切替装置32を制御する制御装置33と、気体給排システム3を操作するための操作部34とを備えている。具体的には、気体給排システム3は、気体式マッサージ具2の使用者の操作部34への入力に基づいて、制御装置33が、気体供給装置31および流路切替装置32の動作を制御することで、気体式マッサージ具2の複数の気体室(
図3A~
図6参照)に高圧気体を供給し、複数の気体室から高圧気体を排出する。気体供給装置31、流路切替装置32、制御装置33、および操作部34の具体的な構成は、上述の機能を発揮することができれば、特に限定されることはない。気体供給装置31として、たとえば、公知の空気ポンプなどを用いることができる。流路切替装置32として、たとえば、分岐管と電磁弁とを組み合わせた公知の圧縮空気分配器などを用いることができる。制御装置33として、たとえば、後述するマッサージを施すための揉みステップに基づいて、気体室を所望の順番で膨張および収縮させるように記述された制御プログラムに基づいて、気体供給装置31および流路切替装置32の動作を制御可能な公知のコントローラなどを用いることができる。操作部34として、たとえば、タッチパネル式ディスプレイ装置などを用いることができる。ただし、膨張させる順番が前後する気体室間の流体接続により、気体室を膨張させる順番が気体式マッサージ具2内の流路によって決定される場合には、気体給排システム3は、流路切替装置32、制御装置33、および操作部34を必ずしも備えなくてもよい。
【0048】
気体給排システム3は、制御プログラムに基づいて、様々な順序で、気体室に高圧気体を供給し、または気体室から高圧気体を排出することができる。たとえば、人体Zの上肢や下肢から胴体に向かう体液の流れを促進させるために、気体給排システム3は、第1の気体室群21に高圧気体を供給した後に、第2の気体室群22に高圧気体を供給する。本実施形態では、気体式マッサージ機1を用いて、人体Zの下肢のリンパ浮腫の症状を緩和するために、人体Zの下肢から胴体に向かって、リンパ液を流すことを意図している。
図8A~
図8Cに示されるように、人体Zの下肢におけるリンパ管群Z1~Z4は、脚部の前方外側のリンパ管群Z1と、脚部の前方内側のリンパ管群Z2と、脚部の後方外側のリンパ管群Z3(
図8Aおよび
図8C参照)と、脚部の後方内側のリンパ管群Z4(
図8Bおよび
図8C参照)に分かれている(
図8A~
図8Cでは、各リンパ管群が内部に存在する領域に符号Z1~Z4が付されている)。下肢のリンパ浮腫の場合、初期の病態においては、脚部の前方外側のリンパ管群Z1および前方内側のリンパ管群Z2のいずれか一方が損傷している場合がよく見られる。この場合、損傷しているリンパ管群Z1、Z2が内部に存在する人体Zの領域を気体式マッサージ具2によって単純に圧迫しても、リンパ液は、リンパ管群Z1、Z2から胴体に向かって流れにくい。
【0049】
そこで、本実施形態では、第1および第2の気体室群21、22への周方向Q2での高圧気体の供給順序を適宜変更することで、人体Zにマッサージを施す。以下では、
図9~
図20を参照し、本実施形態に係る気体式マッサージ機1による、気体室への高圧気体の供給順序および気体室からの高圧気体の排出順序(以下、「揉みステップ」と呼ぶ)の例を説明する。以下の説明では、リンパ管などの脈管が損傷している状態を単に「非正常」と呼ぶことがあり、リンパ管などの脈管が正常であるか、または損傷の少ない状態を単に「正常」と呼ぶことがある。なお、以下の説明はあくまで例示であり、本発明の気体式マッサージ機による揉みステップは、以下の例に限定されることはない。
【0050】
以下の説明では、説明の便宜のため、第1の気体式マッサージ具2aを右脚部に装着したときには、第1の気体室群21に含まれる気体室の符号「214、2131、2132、2111、2112、2121、2122」(
図3Aおよび
図3B参照)は、「A1、B1、C1、D1、E1、F1、G1」(
図9(a)および
図18(a)参照)にそれぞれ置き換えられている。また、第2の気体室群22に含まれる気体室の符号「223、2211、2212、2221、2222」(
図3Aおよび
図3B参照)は、「H1、I1、J1、K1、L1」(
図9(a)および
図18(a)参照)にそれぞれ置き換えられている。第1の気体式マッサージ具2aを左脚部に装着したときには、第1の気体室群21に含まれる気体室の符号「214、2131、2132、2121、2122、2111、2112」(
図3Aおよび
図3B参照)は、「A2、B2、C2、D2、E2、F2、G2」(
図15(a)および
図18(a)参照)にそれぞれ置き換えられている。また、第2の気体室群22に含まれる気体室の符号「223、2221、2222、2211、2212」(
図3Aおよび
図3B参照)は、「H2、I2、J2、K2、L2」(
図9(a)、
図15(a)および
図18(a)参照)にそれぞれ置き換えられている。さらに、第3の気体室群23の気体室の符号「231、2321、2331、2332、2322」(
図5Aおよび
図5B参照)は、「M、N、O、O、P」(
図9(a)、
図15(a)および
図18(a)参照)にそれぞれ置き換えられている。なお、
図9(a)、
図10~
図12、
図15(a)、
図18(a)において、図を見やすくするために、第1の気体式マッサージ具2aの第1のカバー21aおよび第1の締結具22a(
図1参照)、ならびに第2の気体式マッサージ具2bの第2のカバー21bおよび第2の締結具22b(
図1参照)は、図示されていない。
【0051】
なお、本実施形態において、第1の気体式マッサージ具2aを右脚部および左脚部の一方、または右脚部および左脚部の両方に装着する。その際に、第1の気体式マッサージ具2aを右脚部に装着する場合と、第1の気体式マッサージ具2aを左脚部に装着する場合で、位置付けられる人体Zの部位に応じて、第1の気体式マッサージ具2aの各気体室の名称を変更することがある。たとえば、第1の気体式マッサージ具2aを右脚部に装着したときの第1群の第1気体室D1、E1(
図9(a)および
図18(a)参照)は、第1の気体式マッサージ具2aを左脚部に装着したときには、第1群の第2気体室F2、G2(
図15(a)および
図18(a)参照)と呼び、逆に、第1の気体式マッサージ具2aを右脚部に装着したときの第1群の第2気体室F1、G1(
図9(a)および
図18(a)参照)は、第1の気体式マッサージ具2aを左脚部に装着したときには、第1群の第1気体室D2、E2(
図15(a)および
図18(a)参照)と呼ぶ。また、第1の気体式マッサージ具2aを右脚部に装着したときの第2群の第1気体室I1、J1(
図9(a)および
図18(a)参照)は、第1の気体式マッサージ具2aを左脚部に装着したときには、第2群の第2気体室K2、L2(
図15(a)および
図18(a)参照)と呼び、逆に、第1の気体式マッサージ具2aを右脚部に装着したときの第2群の第2気体室K1、L1(
図9(a)および
図18(a)参照)は、第1の気体式マッサージ具2aを左脚部に装着したときには、第2群の第1気体室I2、J2(
図15(a)および
図18(a)参照)と呼ぶ。
【0052】
まず、第1の気体式マッサージ具2aを右脚部に装着したときについて説明する(具体例1~3)。
図9~
図14は、本実施形態において、第1の気体式マッサージ具2aを右脚部に装着したときの例(具体例1~3)を示している。
図9(a)は、第1の気体式マッサージ具2aを右脚部に装着したときの各気体室の位置を示している。
図9(b)は、第1の気体式マッサージ具2aを右脚部に装着したときの揉みステップの具体例(具体例1)を順に示しており、
図10は、
図9(b)の揉みステップの主要ステップを順に示している。
図11は、第1の気体式マッサージ具2aを右脚部に装着したときの揉みステップの別の具体例(具体例2)を順に示しており、
図12は、第1の気体式マッサージ具2aを右脚部に装着したときの揉みステップのさらに別の具体例(具体例3)を順に示している。
【0053】
たとえば、右脚部の前方外側のリンパ管群Z1(
図8A~
図8C参照)が非正常である場合、本実施形態では、
図9(a)の各気体室の符号を用いて
図9(b)および
図10~
図12に示されるように、気体給排システム3は、第1群の第1気体室D1、E1(
図9(b)のステップ11および12、ならびに
図10(b)参照)、第1群の第2気体室F1、G1(
図9(b)のステップ13および14、ならびに
図10(c)参照)、第2群の第1気体室I1、J1(
図9(b)のステップ19および20、ならびに
図11(a)参照)、第2群の第2気体室K1、L1(
図9(b)のステップ21および23、ならびに
図11(d)参照)の順に高圧気体を供給する。そうすると、まず、第1群の第1気体室D1、E1が下腿部の外側を圧迫して、非正常なリンパ管群Z1(
図8A~
図8C参照)を避けるように、リンパ液を下腿部の外側から下腿部の内側に誘導する。その後に、第1群の第2気体室F1、G1が下腿部の内側を圧迫して、正常なリンパ管群Z2(
図8A~
図8C参照)を経由して、下腿部の外側から誘導されたリンパ液を下腿部から上腿部に誘導する。次いで、第2群の第1気体室I1、J1が上腿部の外側を圧迫して、非正常なリンパ管群Z1を避けるように、リンパ液を上腿部の外側から上腿部の内側に誘導する。その後に、第2群の第2気体室K1、L1が上腿部の内側を圧迫して、正常なリンパ管群Z2を経由して、上腿部の外側から誘導されたリンパ液および下腿部から誘導されたリンパ液を上腿部から胴体に誘導する。これにより、非正常なリンパ管群Z1がある場合であっても、人体Zの下肢から胴体に向かってリンパ液が流れやすくなるので、リンパ浮腫の症状が緩和されやすくなる。
【0054】
気体給排システム3は、第1群の第3気体室B1、C1(
図9(b)のステップ9および10、ならびに
図10(a)参照)、第1群の第1気体室D1、E1(
図9(b)のステップ11および12、ならびに
図10(b)参照)、第1群の第2気体室F1、G1(
図9(b)のステップ13および14、ならびに
図10(c)参照)、第2群の第3気体室H1(
図9(b)のステップ18、ならびに
図10(d)参照)、第2群の第1気体室I1、J1(
図9(b)のステップ19および20、ならびに
図11(a)参照)、第2群の第2気体室K1、L1(
図9(b)のステップ21および23、ならびに
図11(d)参照)の順に高圧気体を供給してもよい。そうすると、まず、第1群の第3気体室B1、C1が下腿部の裏側を圧迫して、脚部の裏側のリンパ管群Z3、Z4(
図8A~
図8C参照)へのリンパ液の流入を抑制する。その後に、第1群の第1気体室D1、E1が下腿部の外側を圧迫して、非正常なリンパ管群Z1(
図8A~
図8C参照)を避けるように、リンパ液を下腿部の外側から下腿部の内側に誘導する。さらに、第1群の第2気体室F1、G1が下腿部の内側を圧迫して、正常なリンパ管群Z2(
図8A~
図8C参照)を経由して、下腿部の外側から誘導されたリンパ液を下腿部から上腿部に誘導する。次いで、第2群の第3気体室H1が上腿部の裏側を圧迫して、脚部の裏側のリンパ管群Z3、Z4へのリンパ液の流入を抑制する。次に、第2群の第1気体室I1、J1が上腿部の外側を圧迫して、非正常なリンパ管群Z1を避けるように、リンパ液を上腿部の外側から上腿部の内側に誘導する。その後に、第2群の第2気体室K1、L1が下腿部の内側を圧迫して、正常なリンパ管群Z2を経由して、上腿部の外側から誘導されたリンパ液および下腿部から誘導されたリンパ液を上腿部から胴体に誘導する。これにより、非正常なリンパ管群Z1がある場合であっても、人体Zの下肢から胴体に向かってリンパ液がさらに流れやすくなるので、リンパ浮腫の症状がさらに緩和されやすくなる。
【0055】
なお、気体室が軸方向Q1に分割されている場合、気体給排システム3は、胴体から遠位側に対応する位置に位置付けられる気体室から順に高圧気体を供給すればよい。この場合、気体室が人体Zの胴体に対して遠位側から近位側に向かって徐々に膨張し、気体式マッサージ具2が人体Zを圧迫していくので、リンパ液の流れがより促進される。具体的には、気体給排システム3は、第1群の第1気体室D1、E1に対して、第1群の第1遠位気体室D1、第1群の第1近位気体室E1の順に高圧気体を供給すればよく(
図9(b)のステップ11および12参照)、第1群の第2気体室F1、G1に対して、第1群の第2遠位気体室F1、第1群の第2近位気体室G1の順に高圧気体を供給すればよい(
図9(b)のステップ13および14参照)。また、気体給排システム3は、第2群の第1気体室I1、J1に対して、第2群の第1遠位気体室I1、第2群の第1近位気体室J1の順に高圧気体を供給すればよく(特に、
図9(b)のステップ19および20参照)、第2群の第2気体室K1、L1に対して、第2群の第2遠位気体室K1、第2群の第2近位気体室L1の順に高圧気体を供給すればよい(特に、
図9(b)のステップ21および23参照)。さらに、第1の気体室群A1~G1が第1群の端部気体室A1を含む場合、気体給排システム3は、一連の揉みステップの最初に、第1群の端部気体室A1に高圧気体を供給すればよい(
図9(b)のステップ8参照)。
【0056】
気体式マッサージ具2が第3の気体室群M~Pを含む場合、気体給排システム3は、第1の気体室群A1~G1および第2の気体室群H1~L1に高圧気体を供給した後に、第3の気体室群M~Pに高圧気体を供給する。ただし、気体給排システム3は、第1の気体室群A1~G1および第2の気体室群H1~L1の所定の気体室に高圧気体を供給した後に、第1の気体室群A1~G1および第2の気体室群H1~L1の高圧気体を供給していない気体室より先に、第3の気体室群M~Pの所定の気体室に高圧気体を供給してもよい。具体的には、気体給排システム3は、第2の気体室群H1~L1のうち、人体Zの鼠蹊部近傍に位置付けられる第2群の第2気体室K1、L1(より具体的には、第2群の第2近位気体室L1)に高圧気体を供給する前に、人体Zの股間部に位置付けられる第3群の第1気体室Mに高圧気体を供給する(
図9(b)のステップ22および23、ならびに
図11(b)~
図11(c)参照)。この場合、人体Zにおいて、鼠蹊部より前に股間部が圧迫されるので、脚部から鼠蹊部を経由して、リンパ液が滞留しやすい股間部にリンパ液が流入することが抑制される。より具体的には、気体給排システム3は、第3群の第1気体室M、第2群の第2気体室K1、L1(より具体的には、第2群の第2近位気体室L1)、第3群の第2気体室N、P(より具体的には、第3群の第2右側気体室N)の順に高圧気体を供給する(
図9(b)のステップ22、23および27、ならびに
図11(c)、
図11(d)および
図12(b)参照)。そうすることで、人体Zの股間部へのリンパ液の流入を抑制しつつ、人体Zの上方へのリンパ液の流れをさらに促進することができる。第3の気体室群M~Pが第3群の第3気体室O、Oを含む場合、気体給排システム3は、第3群の第2気体室N、P(より具体的には、第3群の第2右側気体室N)に高圧気体を供給した後に、第3群の第3気体室O、Oの順に高圧気体を供給すればよい(
図9(b)のステップ27~28、および
図12(b)~
図12(c)参照)。この場合、人体Zのさらに上方へのリンパ液の流れを促進することができる。
【0057】
なお、本具体例では、
図9(a)に示されるように、第1および第2の気体式マッサージ具2a、2bが軸方向Q1でオーバーラップするように、気体式マッサージ具2が人体Zに装着されるため、第1の気体式マッサージ具2aに含まれる第2の気体室群H1~L1の一部および第2の気体式マッサージ具2bに含まれる第3の気体室群M~Pの一部も軸方向Q1でオーバーラップしている(
図9(a)では、第2群の第1近位気体室J1および第2群の第2近位気体室L1(ならびに第2群の第3気体室H1)と、第3群の第2右側気体室Nとが、軸方向Q1でオーバーラップしている)。この場合、気体式マッサージ具2が第1および第2の気体式マッサージ具2a、2bの2つの別部材として人体Zに装着されても、人体Z(人体Zの下肢)に対して、軸方向Hで漏れなくマッサージを施すことができる。
【0058】
気体給排システム3は、一連の揉みステップ(
図9(b)のステップ8~28)の途中で、高圧気体を供給済みの気体室から高圧気体を排出し、再度当該気体室に高圧気体を供給してよい。具体的には、気体給排システム3は、正常なリンパ管群Z1~Z4(本具体例では、リンパ管群Z2(
図8A~
図8C参照))が内部に存在する人体Zの領域に位置付けられる気体室(本具体例では、第1群の第2気体室F1、G1および第2群の第2気体室K1、L1)に高圧気体を供給した後に、当該気体室から高圧気体を排出し、再度当該気体室に高圧気体を供給してもよい(
図9(b)のステップ14~17およびステップ23~26参照)。
図10~
図12の一連の揉みステップに照らして言えば、
図10(c)のステップの後、
図10(b)のステップに戻り、再度、
図10(c)のステップを行ってもよく、
図12(b)のステップの後、
図12(a)のステップに戻り、再度、
図12(b)のステップを行ってもよい。そうすることで、正常なリンパ管群Z1~Z4(本具体例では、リンパ管群Z2)が内部に存在する領域(本具体例では、人体Zの脚部の内側)に対して、圧迫および圧迫の解除が繰り返されるので、リンパ液が、当該リンパ管群Z1~Z4を経由して、人体Zの下肢から胴体に向かってさらに流れやすくなる。
【0059】
気体給排システム3は、一連の揉みステップ(
図9(b)のステップ8~28)の前に、前ステップとして、第1および第2の気体室群A1~L1の少なくとも一部の気体室に高圧気体を供給し、その後に、高圧気体を供給した気体室から高圧気体を排出してもよい(
図9(b)のステップ3~7参照)。そうすることで、人体Zが解れた状態で、一連の揉みステップが行われるので、人体Zの胴体に向かって、リンパ液がより流れやすくなる。前ステップにおける気体室への高圧気体の供給順序は、人体Zが解れれば、特に限定されることはない。本具体例では、気体給排システム3は、一連の揉みステップの前に、第1群の第1遠位気体室D1および第1群の第2遠位気体室F1、第1群の第1近位気体室E1および第1群の第2近位気体室G1、第2群の第1遠位気体室I1および第2群の第2遠位気体室K1、第2群の第1近位気体室J1および第2群の第2近位気体室L1の順に高圧気体を供給し、その後に、高圧気体を供給した気体室D1~G1、I1~L1から高圧気体を排出する(
図9(b)のステップ3~7参照)。換言すれば、人体Zの胴体から遠位の位置に位置付けられる気体室から順に高圧気体を供給し、その後に、高圧気体を供給した気体室から高圧気体を排出する。また、気体給排システム3は、たとえば、一連の揉みステップの前に、第1群の第2遠位気体室F1、第1群の第2近位気体室G1、第2群の第2遠位気体室K1、第2群の第2近位気体室L1の順に高圧気体を供給し、高圧気体を供給した気体室F1、G1、K1、L1から高圧気体を排出してもよい。そうすることで、少なくともリンパ液を流そうとする、正常なリンパ管群Z2(
図8A~
図8C参照)が内部に存在する人体Zの脚部の内側が解れるので、人体Zの下肢から胴体に向かって、リンパ液がさらに流れやすくなる。また、同様の効果を得るために、気体給排システム3は、一連の揉みステップの前に、第1群の第2気体室F1、G1、第2群の第2気体室K1、L1の順に高圧気体を供給してもよく、第1群の第2気体室F1、G1および第2群の第2気体室K1、L1に略同時に高圧気体を供給してもよい。
【0060】
気体給排システム3は、一連の揉みステップ(および前ステップ)の前に、一連の揉みステップ(および前ステップ)において供給する高圧気体の設定圧力よりも低い圧力の予圧気体を第1および第2の気体室群A1~L1に供給してもよい(
図9(b)のステップ1参照。以下、予圧気体を供給するステップを「予圧ステップ」とも呼ぶ)。この場合、第1および第2の気体室群A1~L1が膨張し、第1の気体式マッサージ具2aの内部空間が一回り小さくなることで、人体Zの脚部が膨張した第1および第2の気体室群A1~L1に挟持される。第1および第2の気体室群A1~L1による人体Zの脚部の挟持により、第1の気体式マッサージ具2aは、第1および第2の気体室群A1~L1のそれぞれが人体Zの脚部の所望の位置に位置付けられるように、人体Zの脚部に対して位置決めされる。気体給排システム3は、一連の揉みステップ(または前ステップ)を開始するまで、第1および第2の気体室群A1~L1のうちの少なくとも一部の気体室において、予圧気体の供給状態を保持してもよい(
図9(b)において、第1群の端部気体室A1についてのステップ1~7、第1群の第3遠位気体室B1についてのステップ1~8、第1群の第3近位気体室C1についてのステップ1~9、第2群の第3気体室H1についてのステップ1~17、第1群の第1遠位気体室D1についてのステップ1~2、第1群の第1近位気体室E1についてのステップ1~3、第2群の第1遠位気体室I1についてのステップ1~4、第2群の第1近位気体室J1についてのステップ1~5参照)。この場合、一連の揉みステップにおいて、上述の第1の気体式マッサージ具2aの人体Zの脚部に対する位置決め保持された状態で、第1および第2の気体室群A1~L1が高圧気体の供給によってさらに膨張するので、人体Zの意図した位置で、マッサージが適切に施される。なお、予圧気体の保持が第1および第2の気体室群A1~L1のうちの少なくとも一部で行われれば、人体Zに対する気体式マッサージ具2の位置決めの効果を十分に得ることができる。
【0061】
気体給排システム3は、前ステップを開始する前に、一旦、第1および第2の気体室群A1~L1から予圧気体を排出してもよい(
図9(b)において、第1群の第2遠位気体室F1についてのステップ2、第1群の第2近位気体室G1についてのステップ2~3、第2群の第2遠位気体室K1についてのステップ2~4、第2群の第2近位気体室L1についてのステップ2~5参照)。具体的には、リンパ液を流そうとする、正常なリンパ管群Z1~Z4(本具体例では、リンパ管群Z2(
図8A~
図8C参照))が内部に存在する人体Zの領域に位置付けられる気体室(本具体例では、第1群の第2気体室F1、G1および第2群の第2気体室K1、L1)から予圧気体を排出する。この場合、予圧ステップから前ステップに移行する時の圧迫差によって、リンパ液を流そうとするリンパ管群Z1~Z4が内部に存在する人体Zの領域(本具体例では、人体Zの脚部の内側)が解れるので、人体Zの胴体に向かって、リンパ液がさらに流れやすくなる。
【0062】
図9~
図12では、右脚部の前方外側のリンパ管群Z1(
図8A~
図8C参照)が非正常である場合に対する揉みステップを示しているが、右脚部の前方内側のリンパ管群Z2(
図8A~
図8C参照)が非正常である場合もある。この場合、
図9(a)の各気体室の符号を用いて
図13の具体例2に示されるように、気体給排システム3は、第1群の第2気体室F1、G1(
図13のステップ11および12)、第1群の第1気体室D1、E1(
図13のステップ13および14)、第2群の第2気体室K1、L1(
図13のステップ19および21)、第2群の第1気体室I1、J1(
図13のステップ22および23)の順に高圧気体を供給する。より具体的には、気体給排システム3は、第1群の第3気体室B1、C1(
図13のステップ9および10)、第1群の第2気体室F1、G1(
図13のステップ11および12)、第1群の第1気体室D1、E1(
図13のステップ13および14)、第2群の第3気体室H1(
図13のステップ18)、第2群の第2気体室K1、L1(
図13のステップ19および21)、第2群の第1気体室I1、J1(
図13のステップ22および23)の順に高圧気体を供給する。なお、本具体例においても、具体例1と同様に、気体式マッサージ具2が第3の気体室群M~Pを含む場合には、人体Zの股間部へのリンパ液の流入を抑制するために、第2群の第2気体室K1、L1(より具体的には、第2群の第2近位気体室L1)に高圧気体を供給する(
図13のステップ21参照)前に、第3群の第1気体室Mに高圧気体を供給する(
図9(b)のステップ20)。その他の点については、具体例1の揉みステップ(
図9(b)参照)と同様であるため、ここでは、詳細な説明は省略する。
【0063】
図9~
図13では、右脚部の前方外側のリンパ管群Z1および前方内側のリンパ管群Z2(
図8A~
図8C参照)のいずれか一方が非正常である場合に対する揉みステップを示しているが、いずれも非正常である場合や、いずれも正常である場合もある。この場合、
図9(a)の各気体室の符号を用いて
図14の具体例3に示されるように、気体給排システム3は、第1群の第1および第2遠位気体室D1、F1(
図14のステップ3)、第1群の第1および第2近位気体室E1、G1(
図14のステップ4)、第2群の第1および第2遠位気体室I1、K1(
図14のステップ5)、第2群の第1および第2近位気体室J1、L1(
図14のステップ7)の順に高圧気体を供給する。より具体的には、気体給排システム3は、第1群の第1~第3遠位気体室B1、D1、F1(
図14のステップ3)、第1群の第1~第3近位気体室C1、E1、G1(
図14のステップ4)、第2群の第3気体室H1ならびに第1および第2遠位気体室I1、K1(
図14のステップ5)、第2群の第1および第2近位気体室J1、L1(
図14のステップ7)の順に高圧気体を供給する。なお、本具体例においても、具体例1と同様に、気体式マッサージ具2が第3の気体室群M~Pをさらに有する場合には、人体Zの股間部へのリンパ液の流入を抑制するために、第2群の第2気体室K1、L1(より具体的には、第2群の第2近位気体室L1)に高圧気体を供給する(
図14のステップ7参照。本具体例では、上述のように、ステップ7において、第2群の第1近位気体室J1にも高圧気体を供給する)前に、第3群の第1気体室Mに高圧気体を供給する(
図14のステップ6参照)。その他の点については、具体例1の揉みステップ(
図9(b)など参照)と同様であるため、ここでは、詳細な説明は省略する。
【0064】
次に、第1の気体式マッサージ具2aを左脚部に装着したときについて説明する(具体例4~6)。
図15~
図17は、本実施形態において、第1の気体式マッサージ具2aを左脚部に装着したときの例(具体例4~6)を示している。
図15(a)は、第1の気体式マッサージ具2aを左脚部に装着したときの各気体室の位置を示している。
図15(b)は、第1の気体式マッサージ具2aを左脚部に装着したときの揉みステップの具体例(具体例4)を順に示しており、
図16は、第1の気体式マッサージ具2aを左脚部に装着したときの揉みステップの別の具体例(具体例5)を順に示しており、
図17は、第1の気体式マッサージ具2aを左脚部に装着したときの揉みステップのさらに別の具体例(具体例6)を順に示している。
【0065】
図15~
図17に示されるように、第1の気体式マッサージ具2aを左脚部に装着したときには、右脚部に装着したときの揉みステップと左右対称となるように、病態に応じて、第1および第2の気体室群A2~L2に高圧気体を順に供給する。たとえば、左脚部の前方外側のリンパ管群Z1(右脚部の前方外側のリンパ管群Z1を示す
図8A~
図8C参照)が非正常である場合、
図15(a)の各気体室の符号を用いて
図15(b)の具体例4に示されるように、気体給排システム3は、第1群の第1気体室D2、E2(
図15(b)のステップ11および12参照)、第1群の第2気体室F2、G2(
図15(b)のステップ13および14参照)、第2群の第1気体室I2、J2(
図15(b)のステップ19および20参照)、第2群の第2気体室K2、L2(
図15(b)のステップ21および23参照)の順に高圧気体を供給する。たとえば、左脚部の前方内側のリンパ管群Z2(右脚部の前方内側のリンパ管群Z2を示す
図8A~
図8C参照)が非正常である場合、
図15(a)の各気体室の符号を用いて
図16の具体例5に示されるように、気体給排システム3は、第1群の第2気体室F2、G2(
図16のステップ11および12)、第1群の第1気体室D2、E2(
図16のステップ13および14)、第2群の第2気体室K2、L2(
図16のステップ19および21)、第2群の第1気体室I2、J2(
図16のステップ22および23)の順に高圧気体を供給する。たとえば、左脚部の前方外側のリンパ管群Z1および前方内側のリンパ管群Z2のいずれも非正常である場合や、いずれも正常である場合、
図15(a)の各気体室の符号を用いて
図17の具体例6に示されるように、気体給排システム3は、第1群の第1および第2遠位気体室D2、F2(
図17のステップ3)、第1群の第1および第2近位気体室E2、G2(
図17のステップ4)、第2群の第1および第2遠位気体室I2、K2(
図17のステップ5)、第2群の第1および第2近位気体室J2、L2(
図17のステップ7)の順に高圧気体を供給する。
【0066】
気体式マッサージ具2が第3の気体室群M~Pをさらに有する場合についても、右脚部に装着したときの揉みステップと左右対称となるように、病態に応じて、第1~第3の気体室群A2~L2、M~Pの気体室に高圧気体を順に供給する(
図16参照)。その他の点についても、第1の気体式マッサージ具2aを左脚部に装着したときの揉みステップは、第1の気体式マッサージ具2aを右脚部に装着したときの揉みステップに準ずるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0067】
次に、第1の気体式マッサージ具2a、2aを両脚部に装着したときについて説明する(具体例7~9)。
図18~
図20は、本実施形態において、第1の気体式マッサージ具2a、2aを両脚部に装着したときの例(具体例7~9)を示している。
図18(a)は、第1の気体式マッサージ具2a、2aを両脚部に装着したときの各気体室の位置を示している。
図18(b)は、第1の気体式マッサージ具2a、2aを両脚部に装着したときの揉みステップの具体例(具体例7)を順に示しており、
図19は、第1の気体式マッサージ具2a、2aを両脚部に装着したときの揉みステップの別の具体例(具体例8)を順に示しており、
図20は、第1の気体式マッサージ具2a、2aを両脚部に装着したときの揉みステップのさらに別の具体例(具体例9)を順に示している。
【0068】
図18~
図20に示されるように、第1の気体式マッサージ具2a、2aを両脚部に装着したときには、右脚部および左脚部に装着したときの揉みステップを組み合わせて、病態に応じて、第1および第2の気体室群A1~L1、A2~L2に高圧気体を順に供給する。たとえば、両脚部の前方外側のリンパ管群Z1(右脚部の前方外側のリンパ管群Z1を示す
図8A~
図8C参照)が非正常である場合、
図18(a)の各気体室の符号を用いて
図18(b)の具体例7に示されるように、気体給排システム3は、第1群の第1気体室D1、E1、D2、E2(
図18(b)のステップ11および12参照)、第1群の第2気体室F1、G1、F2、G2(
図18(b)のステップ13および14参照)、第2群の第1気体室I1、J1、I2、J2(
図18(b)のステップ19および20参照)、第2群の第2気体室K1、L1、K2、L2(
図18(b)のステップ21および23参照)の順に高圧気体を供給する。たとえば、両脚部の前方内側のリンパ管群Z2(右脚部の前方内側のリンパ管群Z2を示す
図8A~
図8C参照)が非正常である場合、
図18(a)の各気体室の符号を用いて
図19の具体例8に示されるように、気体給排システム3は、第1群の第2気体室F1、G1、F2、G2(
図19のステップ11および12)、第1群の第1気体室D1、E1、D2、E2(
図19のステップ13および14)、第2群の第2気体室K1、L1、K2、L2(
図19のステップ19および21)、第2群の第1気体室I1、J1、I2、J2(
図19のステップ22および23)の順に高圧気体を供給する。たとえば、両脚部の前方外側のリンパ管群Z1および前方内側のリンパ管群Z2のいずれも非正常である場合や、いずれも正常である場合、
図18(a)の各気体室の符号を用いて
図20の具体例9に示されるように、気体給排システム3は、第1群の第1および第2遠位気体室D1、F1、D2、F2(
図20のステップ3)、第1群の第1および第2近位気体室E1、G1、E2、G2(
図20のステップ4)、第2群の第1および第2遠位気体室I1、K1、I2、K2(
図20のステップ5)、第2群の第1および第2近位気体室J1、L1、J2、L2(
図20のステップ7)の順に高圧気体を供給する。
【0069】
気体式マッサージ具2が第3の気体室群M~Pをさらに有する場合についても、右脚部および左脚部に装着したときの揉みステップと組み合わせて、病態に応じて、第1~第3の気体室群A1~L1、A2~L2、M~Pに高圧気体を順に供給する。その他の点についても、第1の気体式マッサージ具2aを右脚部および左脚部に装着したときの揉みステップは、第1の気体式マッサージ具2aを左脚部に装着したときの揉みステップに準ずるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0070】
なお、上記説明では、リンパ管群Z1~Z4が非正常である場合について言及したが、血管などの他の脈管が非正常である場合に、その病態を緩和するために、気体式マッサージ機1および気体式マッサージ具2が適用されてもよい。
【0071】
以上のように、本実施形態に係る気体式マッサージ具2は、高圧気体を受容および排出することで、互いに独立して膨張および収縮可能な複数の気体室を有しており、複数の気体室は、軸方向Q1で互いに隣接する位置に設けられる第1および第2の気体室群21、22(A1~L1、A2~L2)を含んでいる。本実施形態では、第1および第2の気体室群21、22(A1~L1、A2~L2)はそれぞれ、周方向Q2に沿って、少なくとも2つの気体室を有している。そのため、人体Zの特定の部位を避けながら、気体式マッサージ具2を周方向Q2で圧迫したい位置においてのみ膨張させることができる。そのため、人体Zの正常なリンパ管群Z1~Z4などの脈管群を通じて、人体Zの胴体に向かって、リンパ液などの体液を流しやすくなる。
【0072】
本実施形態では、第1の気体室群21(A1~G1、A2~G2)は、周方向Q2に沿って、第1群の第1気体室211(D1、E1、D2、E2)および第1群の第2気体室212(F1、G1、F2、G2)を有し、より具体的には、周方向Q2に沿って、第1群の第1気体室211(D1、E1、D2、E2)と第1群の第2気体室212(F1、G1、F2、G2)との間に、第1群の第3気体室213(B1、C1、B2、C2)をさらに有している。同様に、第2の気体室群22(H1~L1、H2~L2)は、周方向Q2に沿って、第2群の第1気体室221(I1、J1、I2、J2)および第2群の第2気体室222(K1、L1、K2、L2)を有し、より具体的には、周方向Q2に沿って、第2群の第1気体室221(I1、J1、I2、J2)と第2群の第2気体室222(K1、L1、K2、L2)との間に、第2群の第3気体室223(H1、H2)をさらに有している。本実施形態において、第1群の第1気体室211(D1、E1、D2、E2)および第2群の第1気体室221(I1、J1、I2、J2)は、軸方向Q1で互いに隣接するように設けられ、第1群の第2気体室212(F1、G1、F2、G2)および第2群の第2気体室222(K1、L1、K2、L2)は、軸方向Q1で互いに隣接するように設けられている。第1および第2の気体室群21、22(A1~L1、A2~L2)がそれぞれ第1群の第3気体室213(B1、C1、B2、C2)および第2群の第3気体室223(H1、H2)をさらに有する場合には、第1群の第3気体室213(B1、C1、B2、C2)および第2群の第3気体室223(H1、H2)は、軸方向Q1で互いに隣接するように設けられる。そうすることで、リンパ管群Z1~Z4などの脈管群に沿って、気体室を位置付けやすくなるので、人体Zの胴体に向かって、リンパ液などの体液をさらに流しやすくなる。
【0073】
また、本実施形態に係る気体式マッサージ機1によれば、上述の気体式マッサージ具2と、気体式マッサージ具2の複数の気体室に高圧気体を供給し、複数の気体室から高圧気体を排出する気体給排システム3とを備えている。本実施形態では、気体給排システム3は、第1の気体室群21(A1~G1、A2~G2)に高圧気体を供給した後に、第2の気体室群22(H1~L1、H2~L2)に高圧気体を供給するように構成されている。この場合、人体Zの胴体から遠位側に対応する位置に位置付けられる気体室から近位側に対応する位置に位置付けられる気体室の順に、高圧気体が供給されるので、人体Zの上肢や下肢の末端側から胴体に向かって、リンパ液などの体液をさらに流しやすくなる。
【0074】
本実施形態では、気体式マッサージ具2は、人体Zの脚部の少なくとも一部に沿う形状を有している。本実施形態において、第1群の第1気体室211(D1、E1、D2、E2)は、人体Zの下腿部の外側に対応する位置に位置付けられ、第1群の第2気体室212(F1、G1、F2、G2)は、人体Zの下腿部の内側に対応する位置に位置付けられる。また、第2群の第1気体室221(I1、J1、I2、J2)は、人体Zの上腿部の外側に対応する位置に位置付けられ、第2群の第2気体室222(K1、L1、K2、L2)は、人体Zの上腿部の内側に対応する位置に位置付けられる。第1および第2の気体室群21、22(A1~L1、A2~L2)がそれぞれ第1群の第3気体室213(B1、C1、B2、C2)および第2群の第3気体室223(H1、H2)をさらに有する場合には、第1群の第3気体室213(B1、C1、B2、C2)は、人体Zの下腿部の裏側に対応する位置に位置付けられ、第2群の第3気体室223(H1、H2)は、人体Zの上腿部の裏側に対応する位置に位置付けられる。このように気体式マッサージ具2を人体Zに対して位置付けることで、気体式マッサージ機1は、人体Zの脚部に滞留するリンパ液などの体液を胴体に向かって適切に流すことができる。
【0075】
人体Zの脚部に脈管疾患(リンパ浮腫など)が存在する場合に、病態によっては、脚部の外側の脈管群(リンパ管群Z1など)が非正常であっても、脚部の内側の脈管群(リンパ管群Z2など)は、正常であることがある。そのような場合に、気体給排システム3は、第1群の第1気体室211(D1、E1、D2、E2)、第1群の第2気体室212(F1、G1、F2、G2)、第2群の第1気体室221(I1、J1、I2、J2)、第2群の第2気体室222(K1、L1、K2、L2)の順に、高圧気体を供給する。このような揉みステップで、人体Zの脚部の部位毎に、外側を圧迫した後に内側を圧迫することで、非正常な脚部の外側の脈管群(リンパ管群Z1など)を避けて、正常な脚部の内側の脈管群(リンパ管群Z2など)を経由して、胴体に向かって、体液(リンパ液など)を流しやすくなる。そのため、非正常な脈管群(リンパ管群Z1など)が脚部の外側に存在しても、脚部から胴体に向かって体液(リンパ液など)を流しやすくなるので、脈管疾患(リンパ浮腫など)の症状が緩和されやすくなる。
【0076】
第1および第2の気体室群21、22(A1~L1、A2~L2)がそれぞれ第1群の第3気体室213(B1、C1、B2、C2)および第2群の第3気体室223(H1、H2)をさらに有する場合には、気体給排システム3は、第1群の第3気体室213(B1、C1、B2、C2)、第1群の第1気体室211(D1、E1、D2、E2)、第1群の第2気体室212(F1、G1、F2、G2)、第2群の第3気体室223(H1、H2)、第2群の第1気体室221(I1、J1、I2、J2)、第2群の第2気体室222(K1、L1、K2、L2)の順に高圧気体を供給する。このような揉みステップで、人体Zの脚部の部位毎に、裏側、外側、内側の順に圧迫することで、脚部の裏側の脈管群(リンパ管群Z3、Z4など)に、体液(リンパ液など)が流れ込むことが抑制されるので、脚部から胴体に向かって、体液(リンパ液など)をさらに流しやすくなる。そのため、脈管疾患(リンパ浮腫など)の症状がさらに緩和されやすくなる。
【0077】
逆に、人体Zの脚部に脈管疾患(リンパ浮腫など)が存在する場合に、病態によっては、脚部の内側の脈管群(リンパ管群Z2など)が非正常であっても、脚部の外側の脈管群(リンパ管群Z1など)は、正常である場合がある。そのような場合に、気体給排システム3は、第1群の第2気体室212(F1、G1、F2、G2)、第1群の第1気体室211(D1、E1、D2、E2)、第2群の第2気体室222(K1、L1、K2、L2)、第2群の第1気体室221(I1、J1、I2、J2)の順に、高圧気体を供給する。このような揉みステップで、人体Zの脚部の部位毎に、内側を圧迫した後に外側を圧迫することで、非正常な脚部の内側の脈管群(リンパ管群Z2など)を避けて、正常な脚部の外側の脈管群(リンパ管群Z1など)を経由して、胴体に向かって、体液(リンパ液など)を流しやすくなる。そのため、非正常な脈管群(リンパ管群Z2など)が脚部の内側に存在しても、脚部から胴体に向かって体液(リンパ液など)を流しやすくなるので、脈管疾患(リンパ浮腫など)の症状が緩和されやすくなる。
【0078】
第1および第2の気体室群21、22(A1~L1、A2~L2)がそれぞれ第1群の第3気体室213(B1、C1、B2、C2)および第2群の第3気体室223(H1、H2)をさらに有する場合には、気体給排システム3は、第1群の第3気体室213(B1、C1、B2、C2)、第1群の第2気体室212(F1、G1、F2、G2)、第1群の第1気体室211(D1、E1、D2、E2)、第2群の第3気体室223(H1、H2)、第2群の第2気体室222(K1、L1、K2、L2)、第2群の第1気体室221(I1、J1、I2、J2)の順に高圧気体を供給する。このような揉みステップで、人体Zの脚部の部位毎に、裏側、内側、外側の順に圧迫することで、脚部の裏側の脈管群(リンパ管群Z3、Z4など)に、体液(リンパ液など)が流れ込むことが抑制されるので、脚部から胴体に向かって、体液(リンパ液など)をさらに流しやすくなる。そのため、脈管疾患(リンパ浮腫など)の症状がさらに緩和されやすくなる。
【0079】
[第2実施形態]
図21は、第2実施形態に係る気体式マッサージ具4および気体式マッサージ機10を示している。第2実施形態と第1実施形態との主要な相違点は、第1実施形態では、気体式マッサージ具2が人体Zの脚部の少なくとも一部に沿う形状を有しているのに対し、第2実施形態では、気体式マッサージ具4が人体Zの腕部の少なくとも一部に沿う形状を有している点にある。以下では、第1実施形態で説明した点については省略し、相違点を中心に説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで例示であり、本発明の気体式マッサージ機は、以下の例に限定されることはない。
【0080】
本実施形態に係る気体式マッサージ機10は、
図21に示されるように、第1実施形態と同様に、気体式マッサージ具4と、気体給排システム3とを備えている。本実施形態においても、気体式マッサージ具4は、第1実施形態と同様に、コネクタ3aによって、ホース20hを介して、気体給排システム3と取り外し可能に流体接続されている。なお、
図21において、図を見やすくするために、気体式マッサージ具4に挿入された人体Z(
図21では、人体Zの腕部)は、実線で描かれている。また、本実施形態において、気体給排システム3は、第1実施形態で用いた気体給排システム3と同様であるため、第1実施形態と同じ符号が付されている。
【0081】
本実施形態に係る気体式マッサージ具4は、
図21に示されるように、人体Zの腕部を周方向Q2で囲繞するように、軸方向Q1に沿って装着される。気体式マッサージ具4の形状は、人体Zの腕部に装着可能であれば、特に限定されることはない。本実施形態では、気体式マッサージ具4は、人体Zの腕部に沿うように、L字形状を有している。そうすることで、気体式マッサージ具4は、L字形状の屈曲部分を人体Zの肩部に沿わせるように、気体式マッサージ具4を人体Zに装着すると、気体式マッサージ具4が人体Zの腕部に適切に位置決めされる。ただし、気体式マッサージ具4は、単純な筒形状などのその他の形状を有していてもよい。
【0082】
本実施形態では、気体式マッサージ具4は、
図21に示されるように、第1実施形態と同様に、互いに独立して膨張および収縮可能な複数の気体室と、複数の気体室を周方向Q2で囲繞するカバー4aとを備えている。気体式マッサージ具4は、複数の気体室として、第1の気体室群41および第2の気体室群42を有している。気体式マッサージ具4は、複数の気体室として、軸方向Q1(第1の気体室群41と隣接する側と反対側)で、第2の気体室群42と互いに隣接するように、第3の気体室群43をさらに有していてもよい。なお、本実施形態では、気体式マッサージ具4は、第1実施形態のように、カバー4aの周方向Q2の端部同士を締結する締結具を備えていないが、締結具を備えていてもよい。
【0083】
本実施形態では、
図21に示されるように、第1の気体室群41は、第1実施形態と同様に、周方向Q2に沿って、少なくとも2つの気体室を有している。具体的には、第1の気体室群41は、周方向Q2に沿って、第1群の第1気体室411および第1群の第2気体室412を有している。また、本実施形態では、第2の気体室群42は、第1実施形態と同様に、周方向Q2に沿って、少なくとも2つの気体室を有している。具体的には、第2の気体室群42は、周方向Q2に沿って、第2群の第1気体室421および第2群の第2気体室422を有している。
【0084】
本実施形態では、
図21に示されるように、第1群の第1気体室411は、軸方向Q1で、第1群の第1遠位気体室4111と、第1群の第1近位気体室4112とに分割されており、第1群の第2気体室412は、軸方向Q1で、第1群の第2遠位気体室4121と、第1群の第2近位気体室4122とに分割されている。同様に、本実施形態では、第2群の第1気体室421は、軸方向Q1で、第2群の第1遠位気体室4211と、第2群の第1近位気体室4212とに分割されており、第2群の第2気体室422は、軸方向Q1で、第2群の第2遠位気体室4221と、第2群の第2近位気体室4222とに分割されている。同様に、本実施形態では、第3の気体室群43は、軸方向Q1で、第3群の遠位気体室431と、第3群の近位気体室432とに分割されている。
【0085】
第1の気体室群41は、
図21に示されるように、軸方向Q1(第2の気体室群42と隣接する側と反対側)で、第1群の第1気体室411および第1群の第2気体室412と隣接するように、周方向Q2の略全周に亘る第1群の端部気体室413を有していてもよい。この場合、第1群の端部気体室413は、軸方向Q1で、第1群の端部遠位気体室4131と、第1群の端部近位気体室4132とに分割されていてもよい。
【0086】
第1および第2の気体室群41、42のそれぞれにおける、気体室の周方向Q2の位置関係は、特に限定されることはない。本実施形態では、
図22Aに示されるように、第1の気体室群41の気体室(
図22Aでは、気体室として、第1群の第1遠位気体室4111および第1群の第2遠位気体室4121が示されている)は、周方向Q2の端部同士が互いにオーバーラップしている。この場合、第1の気体室群41の気体室が周方向Q2において隙間なく配置されるので、第1の気体室群41の全ての気体室が膨張すると、人体Z(人体Zの腕部)を周方向Q2で漏れなく圧迫することができる。また、特に図示しないが、本実施形態では、第2の気体室群42の気体室は、第1の気体室群41の気体室と同様に、周方向Q2の端部同士が互いにオーバーラップしている。ただし、第1および第2の気体室群41、42のそれぞれにおいて、気体室は、互いにオーバーラップしていなくてもよく、互いに離間するように設けられていてもよい。
【0087】
本実施形態では、
図22Aおよび
図22Bに示されるように、第1の気体室群41の気体室(
図22Aでは、気体室として、第1群の第1遠位気体室4111および第1群の第2遠位気体室4121が示されており、
図22Bでは、気体室として、第1群の端部近位気体室4132が示されている)は、径方向Q3のうちの一方向(図中の上下方向)を軸として線対称となるように、周方向Q2で分割されている。同様に、特に図示しないが、第2の気体室群42の気体室は、径方向Q3のうちの一方向(図中の上下方向)を軸として線対称となるように、周方向Q2で分割されている。そうすることで、分割された気体室の割れ目に沿って、人体Zの扁平な手部を気体式マッサージ具4に挿入すると、気体式マッサージ具4を人体Zの腕部に装着しやすくなる。分割された第1および第2の気体室群41、42の気体室は、独立して膨張および収縮可能であってもよく、一体的に膨張および収縮可能であってもよい。ただし、第1および第2の気体室群41、42の気体室は、必ずしも分割されていなくてもよい。
【0088】
本実施形態において、気体式マッサージ具4が人体Zの上肢(片腕部)に装着されると、第1群の第1気体室411は、人体Zの前腕部の前側(前腕橈側部(
図21中の上側)。以下、上肢に関して向きを指すときに同様に表現する)に対応する位置に位置付けられ、第1群の第2気体室412は、人体Zの前腕部の後側(前腕尺側部(
図21中の下側)。以下、上肢に関して向きを指すときに同様に表現する)に対応する位置に位置付けられる。また、本実施形態において、気体式マッサージ具4が人体Zの上肢(片腕部)に装着されると、第2群の第1気体室421は、人体Zの上腕部の前側(上腕橈側部)に対応する位置に位置付けられ、第2群の第2気体室422は、人体Zの上腕部の後側(上腕尺側部)に対応する位置に位置付けられる。この場合、第1群の端部気体室413は、人体Zの手部に対応する位置に位置付けられ、第3の気体室群43は、人体Zの肩部に対応する位置に位置付けられる。
【0089】
次に、本実施形態に係る気体式マッサージ機10による、揉みステップの例を説明する。なお、以下の説明はあくまで例示であり、本発明の気体式マッサージ機による揉みステップは、以下の例に限定されることはない。
【0090】
以下の説明では、説明の便宜のため、第1の気体室群41に含まれる気体室の符号「4131、4132、4111、4112、4121、4122」(
図21参照)は、「A3、B3、C3、D3、E3、F3」(
図23(a)および
図28(a)参照)にそれぞれ置き換えられている。また、第2の気体室群42に含まれる気体室の符号「4211、4212、4221、4222」(
図21参照)は、「G3、H3、I3、J3」(
図23(a)および
図28(a)参照)にそれぞれ置き換えられている。さらに、第3の気体室群43の気体室の符号「431、432」(
図21参照)は、「K3、L3」(
図23(a)および
図28(a)参照)にそれぞれ置き換えられている。なお、
図23(a)、
図24~
図25、
図28において、図を見やすくするために、気体式マッサージ具4のカバー4aは、図示されていない。
【0091】
まず、気体式マッサージ具4を右腕部に装着したときについて説明する(具体例10~12)。
図23~
図27は、本実施形態において、気体式マッサージ具4を右腕部に装着したときの例(具体例10~12)を示している。
図23(a)は、気体式マッサージ具4を右腕部に装着したときの各気体室の位置を示している。
図23(b)は、気体式マッサージ具4を右腕部に装着したときの揉みステップの具体例(具体例10)を順に示しており、
図24~25は、
図23(b)の揉みステップの主要ステップを順に示している。
図26は、気体式マッサージ具4を右腕部に装着したときの揉みステップの別の具体例(具体例11)を順に示しており、
図27は、気体式マッサージ具4を右腕部に装着したときの揉みステップのさらに別の具体例(具体例12)を順に示している。
【0092】
本実施形態では、気体式マッサージ機10を用いて、人体Zの上肢のリンパ浮腫の症状を緩和するために、人体Zの上肢から胴体に向かって、リンパ液を流すことを意図している。特に図示しないが、人体Zの上肢におけるリンパ管群は、腕部の前側のリンパ管群と、腕部の後側のリンパ管群に分かれている。上肢のリンパ浮腫の場合、初期の病態においては、腕部の前側のリンパ管群および後側のリンパ管群のいずれか一方が非正常である場合がよく見られる。この場合、非正常なリンパ管群が内部に存在する人体Zの領域を気体式マッサージ具4によって単純に圧迫しても、リンパ液は、当該リンパ管群から胴体に向かって流れにくい。
【0093】
たとえば、右腕部の前側のリンパ管群が非正常である場合、
図23(a)の各気体室の符号を用いて
図23(b)および
図24~
図25の具体例10に示されるように、気体給排システム3は、第1群の第1気体室C3、D3(
図23(b)のステップ10および11、ならびに
図24(b)参照)、第1群の第2気体室E3、F3(
図23(b)のステップ12および13、ならびに
図24(c)参照)、第2群の第1気体室G3、H3(
図23(b)のステップ17および18、ならびに
図24(d)参照)、第2群の第2気体室I3、J3(
図23(b)のステップ19および20、ならびに
図25(a)参照)の順に高圧気体を供給する。そうすると、まず、第1群の第1気体室C3、D3が前腕部の前側を圧迫して、非正常な腕部の前側のリンパ管群を避けるように、リンパ液を前腕部の前側から前腕部の後側に誘導する。その後に、第1群の第2気体室E3、F3が前腕部の後側を圧迫して、正常な腕部の後側のリンパ管群を経由して、前腕部の前側から誘導されたリンパ液を前腕部から上腕部に誘導する。次いで、第2群の第1気体室G3、H3が上腿部の前側を圧迫して、非正常な腕部の前側のリンパ管群を避けるように、リンパ液を上腿部の前側から上腿部の後側に誘導する。その後に、第2群の第2気体室I3、J3が上腕部の後側を圧迫して、正常な腕部の後側のリンパ管群を経由して、上腕部の前側から誘導されたリンパ液および前腕部から誘導されたリンパ液を上腕部から胴体に誘導する。これにより、非正常なリンパ管群がある場合であっても、上肢から胴体に向かってリンパ液が流れやすくなるので、リンパ浮腫の症状が緩和されやすくなる。
【0094】
気体式マッサージ具4が第1群の端部気体室A3、B3を含む場合、気体給排システム3は、一連の揉みステップの最初に、第1群の端部気体室A3、B3に高圧気体を供給する(
図23(b)のステップ8および9、ならびに
図24(a)参照)。そうすることで、人体Zの腕部の末端部のリンパ液が胴体に向かって流れやすくなる。また、気体式マッサージ具4が第3の気体室群K3、L3を含む場合、第2群の第2気体室I3、J3に高圧気体を供給した後に、第3の気体室群K3、L3に高圧気体を供給する(
図23(b)のステップ24および25、ならびに
図25(b)参照)。そうすることで、上肢から胴体に向かってリンパ液がさらに流れやすくなる。
【0095】
なお、各気体室が軸方向Q1に分割されている場合、気体給排システム3は、胴体から遠位側に対応する位置に位置付けられる気体室から順に高圧気体を供給すればよい。具体的には、気体給排システム3は、第1群の第1気体室C3、D3に対して、第1群の第1遠位気体室C3、第1群の第1近位気体室D3の順に高圧気体を供給すればよく(
図23(b)のステップ10および11)、第1群の第2気体室E3、F3に対して、第1群の第2遠位気体室E3、第1群の第2近位気体室F3の順に高圧気体を供給すればよく(
図23(b)のステップ12および13)、第1群の端部気体室A3、B3に対して、第1群の端部遠位気体室A3、第1群の端部近位気体室B3の順に高圧気体を供給すればよい(
図23(b)のステップ8および9)。また、気体給排システム3は、第2群の第1気体室G3、H3に対して、第2群の第1遠位気体室G3、第2群の第1近位気体室H3の順に高圧気体を供給すればよく(
図23(b)のステップ17および18)、第2群の第2気体室I3、J3に対して、第2群の第2遠位気体室I3、第2群の第2近位気体室J3の順に高圧気体を供給すればよい(
図23(b)のステップ19および20)。さらに、気体給排システム3は、第3の気体室群K3、L3に対して、第3群の遠位気体室K3、第3群の近位気体室L3の順に高圧気体を供給すればよい(
図23(b)のステップ24および25)。
【0096】
気体給排システム3は、第1実施形態と同様に、一連の揉みステップの途中で、高圧気体を供給済みの気体室から高圧気体を排出し、再度当該気体室に高圧気体を供給してよい。具体的には、気体給排システム3は、正常なリンパ管群(本具体例では、右腕部の後側のリンパ管群)が内部に存在する領域に位置付けられる気体室(本具体例では、第1群の第2気体室E3、F3、第2群の第2気体室I3、J3)に高圧気体を供給した後に、当該気体室から高圧気体を排出し、再度当該気体室に高圧気体を供給してもよい(
図23(b)のステップ12~16および19~23参照)。
図24~
図25の一連の揉みステップに照らして言えば、
図24(c)のステップの後、
図24(b)のステップに戻り、再度、
図24(c)のステップを行ってもよく、
図25(a)のステップの後、
図24(d)のステップに戻り、再度、
図25(a)のステップを行ってもよい。そうすることで、正常なリンパ管群が内部に存在する領域(本具体例では、右腕部の後側のリンパ管群)に対して、圧迫および圧迫の解除が繰り返されるので、リンパ液が、当該リンパ管群を経由して、人体Zの上肢から胴体に向かってさらに流れやすくなる。
【0097】
気体給排システム3は、第1実施形態と同様に、人体Zを解すために、一連の揉みステップ(
図23(b)のステップ8~25)の前に、前ステップとして、第1および第2の気体室群A3~J3の少なくとも一部の気体室に高圧気体を供給し、その後に、高圧気体を供給した気体室から高圧気体を排出してもよい(
図23(b)のステップ3~7参照)。本具体例では、気体給排システム3は、一連の揉みステップの前に、第1群の第2遠位気体室E3、第1群の第2近位気体室F3、第2群の第2遠位気体室I3、第2群の第2近位気体室J3の順に高圧気体を供給し、その後に、高圧気体を供給した気体室E3、F3、I3、J3から高圧気体を排出する(
図23(b)のステップ3~7参照)。換言すれば、前ステップにおいて、リンパ液を流そうとする、正常なリンパ管群が内部に存在する人体Zの腕部の後側に対応する位置に位置付けられる気体室を、人体Zの胴体から見て、遠位側から順に高圧気体を供給する。そうすることで、人体Zの腕部の後側が解れるので、正常なリンパ管群を経由して、リンパ液がさらに流れやすくなる。同様に、人体Zの腕部の後側を解すために、気体給排システム3は、一連の揉みステップの前に、第1群の第2遠位気体室E3および第1群の第2近位気体室F3、第2群の第2遠位気体室I3および第2群の第2近位気体室J3の順に高圧気体を供給し、その後に、高圧気体を供給した気体室E3、F3、I3、J3から高圧気体を排出してもよく、第1群の第2遠位気体室E3、第1群の第2近位気体室F3、第2群の第2遠位気体室I3、および第2群の第2近位気体室J3に略同時に高圧気体を供給し、その後に、高圧気体を供給した気体室E3、F3、I3、J3から高圧気体を排出してもよい。また、気体給排システム3は、たとえば、第1実施形態と同様に、一連の揉みステップの前に、第1群の第1遠位気体室C3および第1群の第2遠位気体室E3、第1群の第1近位気体室D3および第1群の第2近位気体室F3、第2群の第1遠位気体室G3および第2群の第2遠位気体室I3、第2群の第1近位気体室H3、第2群の第2近位気体室J3の順に高圧気体を供給し、その後に、高圧気体を供給した気体室C3~J3から高圧気体を排出してもよい。
【0098】
気体給排システム3は、気体室の膨張による人体Zの腕部の挟持により、気体式マッサージ具4を人体Zの腕部に位置決めするために、一連の揉みステップ(および前ステップ)の前に、第1実施形態と同様に、予圧気体を第1および第2の気体室群A3~J3に供給してもよい(
図23(b)のステップ1参照)。また、気体給排システム3は、気体式マッサージ具4の腕部への位置決めを保持するために、第1実施形態と同様に、第1および第2の気体室群A3~J3のうちの少なくとも一部の気体室において、一連の揉みステップ(または前ステップ)を開始するまで、予圧気体の供給状態を保持してもよい(
図23(b)において、第1群の端部遠位気体室A3についてのステップ1~7、第1群の端部近位気体室B3についてのステップ1~8、第1群の第1遠位気体室C3についてのステップ1~9、第1群の第1近位気体室D3についてのステップ1~10、第2群の第1遠位気体室G3についてのステップ1~16、第2群の第1近位気体室H3についてのステップ1~17参照)。また、気体給排システム3は、第1実施形態と同様に、リンパ液を流そうとするリンパ管群の近傍を解すために、前ステップを開始する前に、一旦、第1および第2の気体室群A3~J3から予圧気体を排出してもよい(
図23(b)において、第1群の第2遠位気体室E3についてのステップ2、第1群の第2近位気体室F3についてのステップ2および3、第2群の第2遠位気体室I3についてのステップ2~4、第2群の第2近位気体室J3についてのステップ2~5参照)。
【0099】
図23~
図25では、右腕部の前側のリンパ管群が非正常である場合に対する揉みステップを示しているが、右腕部の後側のリンパ管群が非正常である場合もある。この場合、
図23(a)の各気体室の符号を用いて
図26の具体例11に示されるように、気体給排システム3は、第1群の第2気体室E3、F3(
図26のステップ10および11)、第1群の第1気体室C3、D3(
図26のステップ12および13)、第2群の第2気体室I3、J3(
図26のステップ17および18)、第2群の第1気体室G3、H3(
図26のステップ19および20)の順に高圧気体を供給する。気体式マッサージ具4が第3の気体室群K3、L3を含む場合には、第2群の第1気体室G3、H3に高圧気体を供給した後に、第3の気体室群K3、L3に高圧気体を供給する(
図26のステップ24および25)。その他の点については、具体例10の揉みステップ(
図23(b)など参照)と同様であるため、ここでは、詳細な説明は省略する。
【0100】
図23~
図26では、右腕部の前側のリンパ管群および後側のリンパ管群のいずれか一方が非正常である場合に対する揉みステップを示しているが、いずれも非正常である場合や、いずれも正常である場合もある。この場合、
図23(a)の各気体室の符号を用いて
図27の具体例12に示されるように、気体給排システム3は、第1群の第1および第2遠位気体室C3、E3(
図27のステップ4)、第1群の第1および第2近位気体室D3、F3(
図27のステップ5)、第2群の第1および第2遠位気体室G3、I3(
図27のステップ6)、第2群の第1および第2近位気体室H3、J3(
図27のステップ7)の順に高圧気体を供給する。気体式マッサージ具4が第3の気体室群K3、L3を含む場合には、第2群の第1および第2近位気体室H3、J3に高圧気体を供給した後に、第3の気体室群K3、L3に高圧気体を供給する(
図27のステップ8および9)。また、気体給排システム3は、一連の揉みステップの前に、予圧気体を第1および第2の気体室群A3~J3に供給してもよく、気体式マッサージ具4が第3の気体室群K3、L3を含む場合、一連の揉みステップの前に、予圧気体を第3の気体室群K3、L3にも供給してもよい。また、予圧気体を第1および第2の気体室群A3~J3(ならびに第3の気体室群K3、L3)に供給する場合、一連の揉みステップを開始するまで、予圧気体の供給状態を保持してもよい。
【0101】
次に、気体式マッサージ具4を左腕部に装着したときについて説明する(具体例13~15)。
図28~
図30は、本実施形態において、気体式マッサージ具4を左腕部に装着したときの例(具体例13~15)を示している。
図28(a)は、気体式マッサージ具4を左腕部に装着したときの各気体室の位置を示している。
図28(b)は、気体式マッサージ具4を左腕部に装着したときの揉みステップの具体例(具体例13)を順に示しており、
図29は、気体式マッサージ具4を左腕部に装着したときの揉みステップの別の具体例(具体例14)を順に示しており、
図30は、気体式マッサージ具4を左腕部に装着したときの揉みステップのさらに別の具体例(具体例15)を順に示している。
【0102】
図28~
図30に示されるように、気体式マッサージ具4を左腕部に装着したときには、右腕部に装着したときの揉みステップと左右対称となるように、病態に応じて、第1および第2の気体室群A3~J3に高圧気体を順に供給する。たとえば、左腕部の前側のリンパ管群が非正常である場合、
図28(a)の各気体室の符号を用いて
図28(b)の具体例13に示されるように、気体給排システム3は、第1群の第1気体室C3、D3(
図28(b)のステップ10および11)、第1群の第2気体室E3、F3(
図28(b)のステップ12および13)、第2群の第1気体室G3、H3(
図28(b)のステップ17および18)、第2群の第2気体室I3、J3(
図28(b)のステップ19および20)の順に高圧気体を供給する。たとえば、左腕部の後側のリンパ管群が非正常である場合、
図28(a)の各気体室の符号を用いて
図29の具体例14に示されるように、気体給排システム3は、第1群の第2気体室E3、F3(
図29のステップ10および11)、第1群の第1気体室C3、D3(
図29のステップ12および13)、第2群の第2気体室I3、J3(
図29のステップ17および18)、第2群の第1気体室G3、H3(
図29のステップ19および20)の順に高圧気体を供給する。たとえば、左腕部の前側のリンパ管群および後側のリンパ管群の両方が非正常である場合や、いずれも正常である場合、
図28(a)の各気体室の符号を用いて
図30の具体例15に示されるように、第1群の第1および第2遠位気体室C3、E3(
図30のステップ4)、第1群の第1および第2近位気体室D3、F3(
図30のステップ5)、第2群の第1および第2遠位気体室G3、I3(
図30のステップ6)、第2群の第1および第2近位気体室H3、J3(
図30のステップ7)の順に高圧気体を供給する。気体式マッサージ具4が第3の気体室群K3、L3をさらに有する場合についても、気体式マッサージ具4を右腕部に装着したときの揉みステップと左右対称となるように、病態に応じて、第1~第3の気体室群A3~L3に高圧気体を順に供給する。その他の点についても、気体式マッサージ具4を左腕部に装着したときの揉みステップは、気体式マッサージ具4を右腕部に装着したときの揉みステップに準ずるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0103】
なお、
図23~
図30では、気体式マッサージ具4を右腕部または左腕部に装着し、人体Zにマッサージを施したが、気体式マッサージ具4を2つ用意し、右腕部および左腕部のそれぞれに気体式マッサージ具4、4を装着し、人体Zにマッサージを施してもよい。この場合、特に図示しないが、右腕部および左腕部に装着したときの揉みステップを組み合わせて、病態に応じて、2つの気体式マッサージ具4、4のそれぞれの第1および第2の気体室群A3~L3、A3~L3に高圧気体を順に供給すればよい。
【0104】
以上のように、本実施形態に係る気体式マッサージ具4は、人体Zの腕部の少なくとも一部に沿う形状を有している。本実施形態では、第1群の第1気体室411(C3、D3)は、人体Zの前腕部の前側に対応する位置に位置付けられ、第1群の第2気体室412(E3、F3)は、人体Zの前腕部の後側に対応する位置に位置付けられ、第2群の第1気体室421(G3、H3)は、人体Zの上腕部の前側に対応する位置に位置付けられ、第2群の第2気体室422(I3、J3)は、人体Zの上腕部の後側に対応する位置に位置付けられる。このように気体式マッサージ具4を人体Zに対して位置付けることで、気体式マッサージ機10は、人体Zの腕部に滞留するリンパ液などの体液を胴体に向かって適切に流すことができる。
【0105】
人体Zの腕部に脈管疾患(リンパ浮腫など)が存在する場合に、病態によっては、腕部の前側の脈管群(リンパ管群など)が非正常であっても、腕部の後側の脈管群(リンパ管群など)は、正常であることがある。そのような場合に、気体給排システム3は、第1実施形態の具体例1などと同様に、第1群の第1気体室411(C3、D3)、第1群の第2気体室412(E3、F3)、第2群の第1気体室421(G3、H3)、第2群の第2気体室422(I3、J3)の順に、高圧気体を供給する。このような揉みステップで、人体Zの腕部の部位毎に、前側を圧迫した後に後側を圧迫することで、非正常な腕部の前側の脈管群(リンパ管群など)を避けて、正常な腕部の後側の脈管群(リンパ管群など)を経由して、胴体に向かって、体液(リンパ液など)を流しやすくなる。そのため、非正常な脈管群(リンパ管群など)が腕部の前側に存在しても、腕部から胴体に向かって体液(リンパ液など)を流しやすくなるので、脈管疾患(リンパ浮腫など)の症状が緩和されやすくなる。
【0106】
逆に、病態によっては、腕部の後側の脈管群(リンパ管群など)が非正常であっても、腕部の前側の脈管群(リンパ管群など)は、正常である場合がある。そのような場合に、気体給排システム3は、第1実施形態の具体例2などと同様に、第1群の第2気体室412(E3、F3)、第1群の第1気体室411(C3、D3)、第2群の第2気体室422(I3、J3)、第2群の第1気体室421(G3、H3)の順に、高圧気体を供給する。このような揉みステップで、人体Zの腕部の部位毎に、後側を圧迫した後に前側を圧迫することで、非正常な腕部の後側の脈管群(リンパ管群など)を避けて、正常な腕部の前側の脈管群(リンパ管群など)を経由して、胴体に向かって、体液(リンパ液など)を流しやすくなる。そのため、非正常な脈管群(リンパ管群など)が腕部の後側に存在しても、腕部から胴体に向かって体液(リンパ液など)を流しやすくなるので、脈管疾患(リンパ浮腫など)の症状が緩和されやすくなる。
【0107】
なお、上記実施形態では、気体式マッサージ具2、4を人体Zの上肢および下肢のいずれか一方に装着し、上肢および下肢のいずれか一方にマッサージを施している。しかし、気体式マッサージ具2、4を人体Zの上肢および下肢にそれぞれ装着し、上肢および下肢の両方に同時にマッサージを施してもよい。
【符号の説明】
【0108】
1、10 気体式マッサージ機
2、4 気体式マッサージ具
21(A1~G1、A2~G2)、41(A3~F3) 第1の気体室群
211(D1、E1、D2、E2)、411(C3、D3) 第1群の第1気体室
2111(D1、D2)、4111(C3) 第1群の第1遠位気体室
2112(E1、E2)、4112(D3) 第1群の第1近位気体室
212(F1、G1、F2、G2)、412(E3、F3) 第1群の第2気体室
2121(F1、F2)、4121(E3) 第1群の第2遠位気体室
2122(G1、G2)、4122(F3) 第1群の第2近位気体室
213(B1、C1、B2、C2) 第1群の第3気体室
2131(B1、B2) 第1群の第3遠位気体室
2132(C1、C2) 第1群の第3近位気体室
214(A1、A2)、413(A3、B3) 第1群の端部気体室
21a 第1のカバー
21b 第2のカバー
22(H1~L1、H2~L2)、42(G3~J3) 第2の気体室群
221(I1、J1、I2、J2)、421(G3、H3) 第2群の第1気体室
2211(I1、I2)、4211(G3) 第2群の第1遠位気体室
2212(J1、J2)、4212(H3) 第2群の第1近位気体室
222(K1、L1、K2、L2)、422(I3、J3) 第2群の第2気体室
2221(K1、K2)、4221(I3) 第2群の第2遠位気体室
2222(L1、L2)、4222(J3) 第2群の第2近位気体室
223(H1、H2) 第2群の第3気体室
22a 第1の締結具
22b 第2の締結具
23(M~P)、43(K3、L3) 第3の気体室群
231(M) 第3群の第1気体室
232(N、P) 第3群の第2気体室
2321(N) 第3群の第2右側気体室
2322(P) 第3群の第2左側気体室
233(O、O) 第3群の第3気体室
2331(O) 第3群の第3右側気体室
2332(O) 第3群の第3左側気体室
2a 第1の気体式マッサージ具
2b 第2の気体式マッサージ具
2h、20h ホース
3 気体給排システム
31 気体供給装置
32 流路切替装置
33 制御装置
34 操作部
3a コネクタ
4131(A3) 第1群の端部遠位気体室
4132(B3) 第1群の端部近位気体室
431(K3) 第3群の遠位気体室
432(L3) 第3群の近位気体室
4a カバー
Q1 軸方向
Q2 周方向
Q3 径方向
Z 人体
Z1~Z4 リンパ管群
【要約】
【課題】体液を胴体に向かって流しやすい気体式マッサージ具および気体式マッサージ機を提供することを目的とする。
【解決手段】気体式マッサージ具2は、人体Zの上肢または下肢の少なくとも一部位に、一部位を周方向に囲繞するように、一部位が延伸する軸方向Q1に沿って装着され、高圧気体を使用して、人体Zにマッサージを施す気体式マッサージ具2であって、気体式マッサージ具2は、高圧気体を受容して膨張し、高圧気体を排出して収縮するように、互いに独立して膨張および収縮する複数の気体室を有し、複数の気体室は、軸方向Q1で互いに隣接する位置に設けられる第1の気体室群および第2の気体室群を含み、第1の気体室群および第2の気体室群はそれぞれ、周方向Q2に沿って、少なくとも2つの気体室を有する。
【選択図】
図1