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特許7289562抗BCMA単一ドメイン抗体及びその適用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】抗BCMA単一ドメイン抗体及びその適用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230605BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20230605BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20230605BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20230605BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230605BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230605BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230605BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230605BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230605BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20230605BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230605BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230605BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230605BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230605BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230605BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230605BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/30 ZNA
C12N15/867 Z
C12N15/85 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K19/00
C07K14/705
C07K16/46
C12N5/0783
A61K39/395 N
A61K39/395 L
A61K45/00
A61K47/68
A61P35/02
G01N33/53 D
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021534412
(86)(22)【出願日】2019-07-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 CN2019095507
(87)【国際公開番号】W WO2020038147
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-05-07
(31)【優先権主張番号】201810972054.2
(32)【優先日】2018-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521077093
【氏名又は名称】シェンチェン プレジーン バイオファルマ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ジスフアイ
(72)【発明者】
【氏名】リ、ホンジエン
(72)【発明者】
【氏名】バオ、チャオレメン
(72)【発明者】
【氏名】カイ、チンホァ
(72)【発明者】
【氏名】リ、インイン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ゾンペイ
(72)【発明者】
【氏名】ディン、イージン
(72)【発明者】
【氏名】カイ、ジーホ
【審査官】山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/025038(WO,A1)
【文献】次世代医薬開発に向けた抗体工学の最前線,2012年,p. 31-32
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
A61K
A61P
G01N
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列番号:67に示すアミノ酸配列を含む、抗BCMA単一ドメイン抗体。
【請求項2】
BCMA単一ドメイン抗体の遺伝子であって、前記単一ドメイン抗体の遺伝子が、配列番号:133に示すヌクレオチド配列を含むか、または請求項1に記載の単一ドメイン抗体をコードするヌクレオチド配列である、BCMA単一ドメイン抗体の遺伝子。
【請求項3】
請求項1に記載の1つまたは複数の単一ドメイン抗体を有する、ポリペプチド。
【請求項4】
請求項に記載の単一ドメイン抗体の遺伝子から選択される1つまたは複数の遺伝子を含む発現ベクターであって、原核生物細胞発現ベクター、真核生物細胞発現ベクター、またはレンチウイルスベクターである、発現ベクター。
【請求項5】
請求項に記載の発現ベクターを含む宿主細胞であって、前記宿主細胞が、原核生物発現細胞、真核生物発現細胞、真菌細胞、または酵母細胞である、前記宿主細胞。
【請求項6】
前記原核生物発現細胞が、Escherichia coliである、請求項に記載の宿主細胞。
【請求項7】
請求項に記載の1つまたは複数の単一ドメイン抗体を有し、前記複数の単一ドメイン抗体は同じかまたは異なる、キメラ抗原受容体。
【請求項8】
キメラ抗原受容体によって修飾されたT細胞であって、請求項に記載のキメラ抗原受容体によって修飾された、T細胞。
【請求項9】
活性成分として、請求項1に記載の1つまたは複数の単一ドメイン抗体を含む、医薬組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の単一ドメイン抗体のヒト化によって得られる、ヒト化抗BCMA単一ドメイン抗体。
【請求項11】
BCMAの検出における、請求項1に記載の単一ドメイン抗体の使用。
【請求項12】
BAFFとBCMAとの間の相互作用のブロックのための、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記単一ドメイン抗体が、細胞傷害剤、酵素相、放射性同位体、蛍光化合物、または化学発光化合物のうちの1つまたは複数へ連結される、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
異常に増加したBCMA発現と関連する疾患の治療のための、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
異常に増加したBCMA発現と関連する前記疾患が、多発性骨髄腫疾患である、請求項14に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はバイオテクノロジーの分野に属する。特に、本開示は、B細胞成熟抗原(BCMA)に対する一群の単一ドメイン抗体及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
BCMA(B細胞成熟抗原、BCMA)は、B細胞活性化因子(BAFF)またはBリンパ球刺激因子(BLyS)及び分裂増殖誘導リガンド(APRIL)へ結合し得る、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバーである。正常な細胞において、BCMAは主として形質細胞及びいくつかの成熟B細胞によって発現されるが、大部分のB細胞または他の器官において発現されないことが報告されている。多発性骨髄腫(MM)は、クローン性形質細胞の大規模な分裂増殖によって特徴づけられる悪性腫瘍である。BCMAのRNAは、概して、MM細胞において検出され、BCMAタンパク質は、多発性骨髄腫に罹患した患者の形質細胞の表面上で検出され得る。したがって、MMの免疫治療のための候補標的抗原は、BCMAである。現在のところ、MM治療は寛解を誘導することができるが、ほとんどすべての患者は最終的には再発し死亡するだろう。いくつかのモノクローナル抗体候補薬物は、前臨床研究及び初期臨床試験においてMMを治療するのに有望であることを示したが、世界的なコンセンサスによって承認されず、モノクローナル抗体薬物は市販されていない。明らかに、MMのための新たな免疫学的治療法の緊急の必要性があり、この疾患のために開発された有効な抗原特異的養子T細胞療法は、重要な研究進歩であるだろう。
【0003】
ナノボディとして公知の単一ドメイン抗体(sdAb)は、軽鎖が非存在である、アルパカ血液中で見出される重鎖抗体である。ナノ粒子科学と組み合わせて分子生物学技術を使用することによって、ベルギーの科学者は、抗原へ結合し得る新規の抗体の低分子量断片を開発した。それは、一群の利点(単純な構造、強い浸透性、容易な発現及び精製、高い親和性及び安定性、ならびに毒性及び副反応がない、または同種のもの等)を有する。様々な標的抗原のための単一ドメイン抗体は、単一ドメイン抗体プラットフォーム技術の使用によって研究され、次いで生物医学の分野において使用されている。
【0004】
本開示は、BCMAを標的化する治療抗体候補薬物及びキメラ抗原受容体T細胞における使用のために有望な一群の抗BCMA単一ドメイン抗体を開発することを目的とする。
【発明の概要】
【0005】
本開示によって解決されるべき技術的問題は、良好な効果を有する新規の一群の抗BCMA単一ドメイン抗体を提供することである。
【0006】
本開示によって解決されるべき別の技術的問題は、抗BCMA単一ドメイン抗体の様々な使用を開発することである。
【0007】
上記の目的を達成するために、本開示は、以下の技術的解決を提供する。
【0008】
本開示は、フレームワーク領域及び相補性決定領域からなる一群の抗BCMA単一ドメイン抗体を提供し、相補性決定領域は、配列番号:1~66のものから選択されるアミノ酸配列(添付書類1:スクリーニングされたBCMA-sdAbの相補性決定領域のアミノ酸配列)を有する。
【0009】
いくつかの実施形態において、相補性決定領域のアミノ酸配列は、配列番号:1~66に記載されるアミノ酸配列に対して、80%超、85%超、90%超、95%超、または99%超の同一性を有する。
【0010】
好ましくは、アミノ酸中の差異は保存的置換である。
【0011】
いくつかの実施形態において、群中の単一ドメイン抗体は、配列番号:67~132から選択されるアミノ酸配列を有するか、または配列番号:67~132から選択されるアミノ酸配列(添付書類2:スクリーニングされたBCMA-sdAbのアミノ酸配列)である。
【0012】
いくつかの実施形態において、単一ドメイン抗体のアミノ酸配列は、配列番号:67~132に記載されるアミノ酸配列に対して、80%超、85%超、90%超、95%超、または99%超の同一性を有する。
【0013】
好ましくは、アミノ酸中の差異は保存的置換、より好ましくは1つまたは複数の保存的置換である。
【0014】
本開示は、配列番号:133~198のものから選択されるヌクレオチド配列(添付書類3:スクリーニングされたBCMA-sdAbのヌクレオチド配列)を有するか、もしくは配列番号:133~198のヌクレオチド配列であるか、または上記の単一ドメイン抗体をコードするヌクレオチド配列である、一群の抗BCMA単一ドメイン抗体の遺伝子を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態において、単一ドメイン抗体の核酸配列は、配列番号:133~198に記載される核酸配列に対して、80%超、85%超、90%超、95%超、または99%超の同一性を有する。
【0016】
好ましくは、塩基中の差異は保存的置換、より好ましくは1つまたは複数の保存的置換である。
【0017】
本開示は、上記の一群の単一ドメイン抗体から選択される1つまたは複数の単一ドメイン抗体を有するポリペプチドを提供する。
【0018】
好ましくは、複数の単一ドメイン抗体は同じかまたは異なる。
【0019】
本開示は、上記の単一ドメイン抗体の遺伝子の群から選択される1つまたは複数の遺伝子を含む発現ベクターを提供する。
【0020】
好ましくは、発現ベクターは、原核生物細胞発現ベクター、真核生物細胞発現ベクター、または他の細胞発現ベクター(複数可)である。
【0021】
本開示は、上記の発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0022】
好ましくは、宿主細胞は、原核生物発現細胞、真核生物発現細胞、真菌細胞、または酵母細胞であり、原核生物発現細胞は、好ましくはEscherichia coliである。
【0023】
本開示は、単一ドメイン抗体の上記の群から選択される1つまたは複数の単一ドメイン抗体を有する、キメラ抗原受容体を提供する。
【0024】
好ましくは、複数の単一ドメイン抗体は同じかまたは異なる。
【0025】
本開示は、上記のキメラ抗原受容体によって修飾された、キメラ抗原受容体によって修飾されたT細胞を提供する。
【0026】
本開示は、活性成分として、単一ドメイン抗体の上記の群から選択される1つまたは複数の単一ドメイン抗体を含む、医薬組成物を提供する。
【0027】
本開示は、単一ドメイン抗体の上記の群から選択される単一ドメイン抗体のヒト化によって得られる、ヒト化抗BCMA単一ドメイン抗体を提供する。
【0028】
本開示は、BCMAの検出における、単一ドメイン抗体の上記の群中の単一ドメイン抗体の使用を提供する。
【0029】
本開示は、BAFFとBCMAとの間の相互作用をブロッキングするための、単一ドメイン抗体の上記の群中の単一ドメイン抗体の使用を提供する。
【0030】
いくつかの実施形態において、単一ドメイン抗体は、細胞傷害剤、酵素、放射性同位体、蛍光化合物、または化学発光化合物のうちの1つまたは複数へ連結される。
【0031】
本開示は、異常なBCMA発現と関連する疾患の治療のための薬物の調製における、単一ドメイン抗体の上記の群中の単一ドメイン抗体の使用を提供する。
【0032】
好ましくは、異常なBCMA発現と関連する疾患は、多発性骨髄腫疾患である。
【0033】
本開示は、以下の有益な技術的効果を有する。
【0034】
本開示は、一群の抗BCMA単一ドメイン抗体をスクリーニングする。既存の抗体と比較して、この群中のそれぞれの抗BCMA単一ドメイン抗体は高い活性及び強い中和能力または結合能力を有する。この群の単一ドメイン抗体は、ヒトBCMA抗原、または細胞表面上でBCMAを発現する腫瘍細胞株へ特異的に結合し、BAFF抗原のBCMAへの結合を有効にブロッキングし、対応するシグナルカスケード効果を生成し得る。一群の単一ドメイン抗体は、異常なBCMA発現と関連する複数の疾患を検出及び/または治療するために使用され得る。
【0035】
以下に、本開示は添付の図面及び実施例への参照によって詳細に記載されるだろうが、本開示の範囲はそれに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】第1ラウンドのPCRによる通常の重鎖抗体の増幅及び一本鎖抗体の遺伝子を示す。(マーカー)(1500BP、1000BP、800BP、500BP、250BP、及び100BP)を参照して、1はPCR増幅生成物であり、800BP超を有する通常の重鎖遺伝子増幅断片と、800BP未満を有する重鎖抗体遺伝子増幅断片がある。2及び3はPCR増幅生成物であり、約500BPのみを有する重鎖抗体遺伝子増幅断片である。
図2】第2ラウンドのPCR増幅において得られたVHH標的遺伝子断片を示す。マーカー(1500BP、1200BP、1000BP、800BP、700BP、600BP、500BP、250BP、及び100BP)。1~12はPCR増幅生成物であり、約500BPを有する重鎖抗体VHH遺伝子増幅断片である。
図3】精製前の発現されたBCMA-sdAbのSDS-PAGEの実例である。
図4】ニッケルカラムによって精製した後の発現されたBCMA-sdAbのSDS-PAGEの実例を示す。
図5】BCMAタンパク質へ結合する精製BCMA単一ドメイン抗体の濃度勾配を示す(ELISA)。
図6】BCMA単一ドメイン抗体が、BAFFタンパク質のBCMAタンパク質への結合を競合的に阻害できることを示す。
図7】腫瘍細胞に対するBCMA CARTの殺傷効率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本開示は、高い活性及び高い中和性または結合能力の可能性を有する一群の抗BCMA単一ドメイン抗体を、一群のステップによってスクリーニングする。これらの単一ドメイン抗体は、類似構造(フレームワーク領域及び相補性決定領域からなる)及び類似する機能効果を有する。したがって、それらは、通常の構造及び通常の特性効果を有する一群の抗BCMA単一ドメイン抗体として判断され得る。
【0038】
「BCMA」という用語は、本明細書において使用される時、B細胞活性化因子またはBリンパ球刺激物質及び分裂増殖誘導リガンド(APRIL)へ結合し得る、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバーである。多発性骨髄腫(MM)は、クローン性形質細胞の大規模な分裂増殖によって特徴づけられる悪性腫瘍である。BCMAのRNAは、概して、MM細胞において検出され、BCMAタンパク質は、多発性骨髄腫に罹患した患者において形質細胞の表面上で検出され得る。
【0039】
「多発性骨髄腫(MM)」という用語は、本明細書において使用される時、クローン性形質細胞の大規模な分裂増殖によって特徴づけられる悪性腫瘍である。現在のところ、MM治療は寛解を誘導することができるが、ほとんどすべての患者は最終的には再発し死亡するだろう。いくつかのモノクローナル抗体は、前臨床研究及び初期臨床試験においてMMを治療するのに有望であることを示したが、世界的に承認されなかった。明らかに、MMのための新たな抗体及び新たな免疫学的療法についての緊急の必要性がある。
【0040】
BCMAに対する新たな抗体は、開発対象物及び最終的に本開示の保護対象物である。本開示の範囲は、得られた抗BCMA抗体及びその様々な形態(例えば単一ドメイン抗体)、そして、構成成分として抗体を含む物質(例えば医薬組成物、キット、ベクター、キメラ抗原受容体、キメラ抗原受容体修飾T細胞、または同種のもの)、使用(例えば診断、治療または適用のための使用など)を網羅する。しかしながら、本開示の保護対象物がこれらの例示的な内容に限定されないことは、当業者によって理解されよう。
【0041】
「単一ドメイン抗体(sdAb)」という用語は、本明細書において使用される時、抗体中に単一可変ドメインを含有する断片を指し、ナノボディとして公知である。完全な抗体と同様に、それは、特異的な抗原へ選択的に結合し得る。完全な抗体の質量(150~160kDa)と比較して、単一ドメイン抗体(約12~15kDaにすぎない)は、はるかに小さい。最初の単一ドメイン抗体は、人工的操作によってアルパカ重鎖抗体から作製され、「VHHセグメント」として公知であった。好ましい実施形態において、本開示はアルパカの単一ドメイン抗体を使用するが、当業者は、本開示が他の種に由来する単一ドメイン抗体も網羅し得ることを理解されたい。限定されずに、本開示の単一ドメイン抗体は、抗BCMA単一ドメイン抗体である。
【0042】
「フレームワーク領域」という用語は、骨格領域としても公知である。免疫グロブリンのH鎖及びL鎖のN末端付近の約110アミノ酸の配列は、大幅に変動する一方で、他の位置におけるアミノ酸配列は相対的に一定である。したがって、軽鎖及び重鎖は、可変領域00及び定常領域(C)へ分割され得る。可変領域は、HVR(超可変領域)(相補性決定領域(CDR)としても公知)及びフレーム領域(FR)を含有する。FRの変動は、CDRのものより少ない。合計で4つのFR分子(すなわちそれぞれFR1、FR2、FR3及びFR4)がある。抗体の認識の間に、4つのFR分子をひだを寄せるようにして、その結果、CDR分子は互いに接近する。本開示は具体的なフレームワーク領域(複数可)へ限定されないことが理解され、当業者は、本開示の保護範囲から逸脱せずに、実践的な要求に従って適切なフレームワーク領域(複数可)を選択するかまたは得ることができる。
【0043】
「相補性決定領域」(CDR)という用語について、抗体全体の分子は、定常領域及び可変領域へと分割され得る。可変領域において、いくつかのアミノ酸残基は高度に可変であり、これらのアミノ酸残基の構成及び配置順が変動する傾向のある領域は、超可変領域と呼ばれる。L鎖及びH鎖のV領域中に3つの超可変領域(HVR)があり、それは空間的な構造の点から抗原決定基との正確な相補性を形成することができ、したがって超可変領域は相補性決定領域とも呼ばれる。
【0044】
配列の「同一性」という用語は、本明細書において使用される時、「相同性」と互換的に使用され、配列アライメントソフトウェア(BLAST等)によって測定されるような配列間の類似度を指す。配列アライメント方法及びソフトウェアは当業者に周知である。修飾されたヌクレオチド配列は、既知の配列中の、1つまたは複数(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18またはそれ以上)のアミノ酸または塩基の置換、欠失及び/または添加によって得られ得る。例えば、従来の手段(例えば保存的置換によって)による本開示の配列の配列番号:1~198のうちの1つまたは複数に記載されるアミノ酸配列またはヌクレオチド配列の修飾によって、これらの配列へ80%超、85%超、90%超、95%超、または99%超の配列同一性を有し、実質的に同じ特性を有し、本開示の保護範囲内に網羅される、配列を得ることは実現可能である。好ましくは、本開示は保存的置換によって配列同一性を得るが、それに限定されない。
【0045】
「アミノ酸配列」という用語は、アミノ酸が互いへ連結されてペプチド鎖(またはポリペプチド)を形成し、アミノ酸配列が1つの方向においてのみを読まれ得る、アレンジを指す。100タイプを超える異なるアミノ酸があり、そのうちの20が通常は使用される。本開示は、他の物質(例えば糖類、脂質、及び他の修飾)がアミノ酸鎖へ結合される事例を除外せず、通常使用される20のアミノ酸に限定されない。
【0046】
「ヌクレオチド配列」という用語は、DNAまたはRNA中の塩基のアレンジ(すなわちDNA中のA、T、G及びCのアレンジ、またはmRNA中のA、U、G及びCのアレンジ)を指す。それは、リボソームRNA、tRNA、及びmRNA中の塩基のアレンジも包含する。本開示の抗体遺伝子に加えて、DNA配列、RNA(リボソームRNA、tRNA、及びmRNA)及びそれらの相補的な配列も網羅されることを理解されたい。本開示の抗体をコードする遺伝子が、本開示の配列番号:133~198において記載される配列に同等ではないこと、及び、本開示の抗体をコードするが、配列番号:133~198において記載されるヌクレオチド配列とは異なる遺伝子も、本開示の保護範囲内であることも、理解されたい。
【0047】
いくつかの実施形態において、本開示のポリペプチド、医薬組成物、キメラ抗体受容体、またはCARTは、1つの単一ドメイン抗体を含み、本開示はそれに限定されていないことを理解されたい。本開示の上記の物質は、2、3、または複数の単一ドメイン抗体を含有し、複数の単一ドメイン抗体は同じかまたは異なり得る。さらに、本開示の単一ドメイン抗体に加えて、他の抗体、または本開示中に含有されない単一ドメイン抗体も、本開示の範囲を越えずに包含され得る。
【0048】
「発現ベクター」という用語は、標的遺伝子が発現され得るように、クローニングベクターの基本的な骨格上に発現エレメント(プロモーター、RBS、またはターミナー(terminor)等)を取り込む、ベクターを指す。発現ベクターは、4つの部分:標的遺伝子、プロモーター、ターミネーター、及びマーカー遺伝子を含む。本開示は、原核生物細胞発現ベクター、真核生物細胞発現ベクター、または他の細胞発現ベクターを包含するがこれらに限定されない。
【0049】
「キメラ抗原受容体(CAR)」は、「キメラ抗原受容体T細胞(CART)」のコアの構成要素であり、天然のT細胞表面受容体と比較して、CARによって修飾されたT細胞が広範囲の標的を認識することができるように、非依存的様式で腫瘍抗原を認識する能力をT細胞に付与する。CARの基本的なデザインは、腫瘍関連抗原結合領域、細胞外ヒンジ領域、膜貫通領域、及び細胞内シグナル領域を含む。
【0050】
本開示の一実施形態において、本開示のキメラ抗原受容体またはキメラ抗原受容体T細胞は、本開示の1つ、2つ、またはそれ以上の単一ドメイン抗体を含有し、それは同じかまたは異なり得る。
【0051】
本開示の一実施形態において、本開示の「医薬組成物」は、本開示の1つ、2つ、またはそれ以上の単一ドメイン抗体を含有し、それは同じかまたは異なり得る。
【0052】
「ヒト化」抗体という用語は、抗体の定常領域(すなわちCH領域及びCL領域)、または抗体全体が、ヒト抗体遺伝子によってコードされる抗体を指す。ヒト化抗体は、人体における異種抗体の免疫副反応を大幅に低減させ得る。ヒト化抗体としては、キメラ抗体、修飾された抗体、及び完全なヒト抗体を包含する複数のタイプが挙げられる。当業者は、本開示の範囲内である本開示の単一ドメイン抗体の好適なヒト化された形態を、実践的な要求に従って調製し得ることが認識されよう。
【0053】
「レンチウイルス」という用語は、本明細書において使用される時、ヒト及び脊椎動物に感染し得る8つのウイルスを包含するRetroviridaeの1つの属であり、一次感染細胞は主としてリンパ球及びマクロファージであり、感染した個体は最終的には疾患を発症するだろう。レンチウイルスのタイプとしては、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ウマ伝染性貧血(EIA)、及びネコ免疫不全ウイルス(FIV)が挙げられる。レンチウイルスベクター研究の進歩は、急速且つ集中的である。このベクターは、持続的発現を達成するように宿主染色体の中へ外来遺伝子を有効に組み込むことができる。感染力の点から、それはニューロン、肝細胞、心筋細胞、腫瘍細胞、内皮細胞、幹細胞、及び他のタイプの細胞に有効に感染することができ、その結果、良好な遺伝子治療有効性を達成する。加えて、当業者は、レンチウイルス以外の他の好適なベクターも選択することができ、それは本開示の保護範囲内である。
【0054】
以後で、本開示は、以下の実施例への参照によって詳細に記載されるだろう。しかしながら、当業者に対して、他の変動が、十分に確立されているか、または直接的な開示及び添付の請求項に従って自明であるので、本開示はこれらの実施例の具体的な細部に限定されない。したがって、本開示の上の記載に基づいて達成されるすべての技術は、本開示の範囲以内にあるものとする。
【0055】
別段の定めのない限り、以下の実施例において記載されるすべての実験方法は従来の方法であり、すべての試薬及び生体材料は別段の定めのない限り市販で入手可能である。
【0056】
実施例1:抗BCMA抗原特異的単一ドメイン抗体ライブラリーの構築
1)BCMA抗原によるアルパカの免疫
従来の免疫方法に従って遂行される。簡潔には、成体の健康なアルパカに、BCMA抗原(Beijing Yiqiao Shenzhouから購入したヒトTNFRSF17/BCMA/CD269タンパク質、製品番号10620-H15H)を、約2mgの全重量(その中で等体積の抗原及びフロイントアジュバントを添加した)で首及び背中の複数点で皮下注射した。免疫を4~6回実行した。注射部位での質量の吸収を追跡して、正確な免疫を確認した。免疫の時間的間隔は7~15日であった。第4の免疫後に、血清を収集して、抗原の免疫力価を決定した。力価が10000倍(ELISA法)以上に到達した場合に、約100mlの全血液を収集し、リンパ球を分離し、後続の使用のために-80℃で保存した。
【0057】
2)アルパカの末梢血リンパ球の分離及びRNA抽出
アルパカの末梢血リンパ球を、QIAGENキット(QIAamp RNA Blood Mini Kit(50)、製品番号52304)の指示書に従った使用によって分離した。簡潔には、1mlの全血液へ5~10mlの赤血球溶解液を添加した。混合物を均一に混合し、30分間氷浴中に置いた。赤血球を溶解した後に、2000rpmで10分間遠心分離した。上清を廃棄し、追加の1~2mlの赤血球溶解液を添加し、均一に混合した。混合物を10分間氷浴中に置いて残存する赤血球を溶解し、次いで2000rpmで10分間遠心分離した。上清を廃棄し、0.3mlの溶解液を添加して白血球と均一に混合した。もたらされた混合物を後続の使用のために-80℃で保存した。
【0058】
RNA精製を、QIAGENキット(QIAamp RNA Blood Mini Kit(50)、製品番号52304)の指示書に従った使用によって実行した。簡潔には、0.3mlの分離したアルパカリンパ球へ0.3mlの緩衝液RLTを添加し、混合物を振盪により良く混合した。最後のステップからの混合液を、吸着カラム(QIAshredderSpinColumn)を装備した収集チューブへ移し、14,000rpmで2分間遠心分離した。収集チューブ中の濾液を新たな遠心分離チューブへ移した。0.5mlの70%のエタノールを濾液の中へ添加し、上下逆さまにして均一に混合した。混合物を10000rmpで15秒間遠心分離し、収集チューブ中の廃液を廃棄し、吸着カラムを収集チューブの中へ再度置いた。吸着カラムを新たな2mlの収集チューブへ移し、0.7mlの緩衝液RW1を添加し、混合物を10000rmpで15秒間遠心分離した。吸着カラムを新たな2mlの収集チューブへ移し、0.5mlの緩衝液RPEを添加し、混合物を10000rmpで15秒間遠心分離した。0.5mlの緩衝液RPEを添加し、混合物を14000rmpで3分間遠心分離した。吸着カラムを新たな1.5mlの遠心チューブへ移し、30~50μlのRNase不含水を、大気中の吸着膜の真中へ滴加した。混合物を室温で2~5分間置き、12,000rpmで1分間遠心分離した。プラスミド溶液を遠心チューブの中へ収集し、RNA濃度について測定した。
【0059】
3)重鎖抗体の可変領域-VHH
cDNAの第1鎖の合成:cDNA合成キット(MiniBESTAgarose Gel DNA Extraction Kitバージョン4.0、TAKARA Company)を、指示書に従って使用した。この鋳型により、2セットのプライマーを使用して、重鎖抗体のVHH遺伝子断片のPCR増幅を遂行した。ネステッドPCR法の使用によって、第1のPCR増幅における800bp超の断片は通常の重鎖遺伝子断片であり、800bp~500bpの間の断片は軽鎖を欠失した重鎖抗体遺伝子断片である(図1を参照)。軽鎖を欠失した重鎖抗体の遺伝子断片をゲル切断によって回収し、鋳型として使用して、VHH特異的プライマーによるPCR増幅によって、VHH標的遺伝子(~500bp)を得た(図2を参照)。
【0060】
プライマーの合成:
第1ラウンドのPCRFd5’プライマー:
YF-1:CGC CAT CAA GGT ACC AGT TGA(配列番号:199)
YF-2:GGG GTA CCT GTC ATC CAC GGA CCA GCT GA(配列番号:200)
第1ラウンドのPCR Bd3’プライマー:
YBN:CAG CCG GCC ATG GCC SMK GTR CAG CTG GTG GAK TCT GGG GGA G(配列番号:201)
第2ラウンドのPCRプライマー:
YV-BACK:CAT GTG CATGGCCTA GAC TCG CGG CCCAGC CGG CCA TGG CC(配列番号:202)
YV-FOR:CAT GTG TAG ATT CCT GGC CGG CCT GGC CTG AGG AGA CGG TGA CCT GG(配列番号:203)
【0061】
4)VHH断片とファージディスプレイベクターのライゲーション及びTG1コンピテントセルの電気形質転換
VHH断片及びpHEN6ベクタープラスミドのSfIによる単一消化を行った後に、VHH断片及びpHEN6ベクター(Conrath,KEM other.Antimicrob Agents Chemother(Antimicrobial Chemotherapy)2001,45:(10)2807-12、中国特許ZL20111028003.1)を、リガーゼによってライゲーションし、次いでTG1コンピテントセルに電気的に形質転換しそれを使用してプレートをコートし、抗体挿入率の確認についてコロニーPCRによって検出した。組換え遺伝子クローニング効率の検出:LB/アンピシリンプレートを電気的に形質転換した細菌溶液によりコートし、32℃で一晩培養し、翌日に抗体のライゲーション効率の確認についてコロニーPCRによって検出した。ファージ抗体ライブラリーのライゲーション効率は90%超であった。LB/アンピシリンプレートを電気的に形質転換した細菌溶液によりコーティングし、32℃で一晩培養した。培養を2YT培養培地により洗浄し、15%のグリセロールを添加した。混合物を-80℃で保存した。
【0062】
5)VHHファージ抗体ライブラリーの調製
ヘルパーファージM13K07(Invitrogen)をレスキューのために抗体ライブラリーの中へ添加した。ファージ抗体ライブラリーを従来の方法に従って調製し、後続の使用のために-80℃で保存した。
【0063】
実施例2:BCMAの単一ドメイン抗体の調製
BCMA特異的単一ドメイン抗体のスクリーニング
第1ラウンド:BCMAタンパク質濃度150μg/mlで150μl/ウェル(1つのマイクロポア)を、4℃で一晩インキュベーションする。
【0064】
第2ラウンド:BCMAタンパク質濃度10~100μg/mlで150μl/ウェル(5つのマイクロポア)を、4℃で一晩インキュベーションする。
【0065】
第3ラウンド:BCMAタンパク質濃度10~50μg/mlで150μl/ウェル(5つのマイクロポア)を、4℃で一晩インキュベーションする。
【0066】
ブロッキング:1%のCPBSで300μl/ウェルを、37℃で2時間インキュベーションする。
【表1】
【0067】
2.ファージELISAによる陽性クローンの拾い上げ
単一コロニーを、第3ラウンドにおいて増殖させたコロニーについてスクリーニングした寒天プレートからランダムに拾い上げ、アンピシリン2YT液体培地を含有する96ウェル培養プレート中に接種及び培養し、ヘルパーファージの重複感染を行ってファージ抗体の発現を誘導した。発現上清を収穫し、次いでELISAアッセイを、抗原としてBCMAにより実行した。BCMA陽性ウェルを選択し、DNAシーケンシングを行って、抗BCMA単一ドメイン抗体クローンの遺伝子配列を同定した。添付書類3中のものを包含する一連の単一ドメイン抗体遺伝子配列を得て、高特異性及び高活性を備えた単一ドメイン抗体のさらなる発現及びスクリーニングのために使用した。
【0068】
実施例3:特異的BCMA単一ドメイン抗体の発現プラスミドの構築
実施例3において得られた特異的BCMA単一ドメイン抗体遺伝子を、PCRによって増幅して、制限酵素BbsI部位及びBamHI部位を備えたPCR産物を得た。PCR産物及びベクター(pSJF2ベクター)(kim ls.Biosic Biochem.2002,66(5):1148-51、中国特許ZL201110280031)を、制限酵素BbsI及びBamHIによりそれぞれ処理し、T4リガーゼによるライゲーションによって組換えて、Escherichia coliにおいて効率的に発現することができるプラスミドsdAb-pSJF2を得て、遺伝子シーケンシングを行って配列の正確さを決定した。
【0069】
1)VHH標的遺伝子を得るために要求されるPCR増幅条件、及び50μlのPCR系の組成物。
混合物 25μl
陽性コロニークローン 1μl
5‘プライマー 1μl(lmol/l)
3‘プライマー 1μl(lmol/l)
DEPC処理脱イオン蒸留水 22μl
【表2】

5’プライマー - GAA GAAGAA GAC AA CAG GCC SVK GTG MAG CTG GWG GAK TCT(配列番号:204)
3’プライマー - gaagatctccggatccTGAGGAGACGGTGACCTGGGT(配列番号:205)
【0070】
2)標的遺伝子及びベクターを消化し、ライゲーションし、TG1細胞の中へ形質転換した。標的断片を含有するクローンの同定のために、生成物にPCRを行い、遺伝子シーケンシングを行い、その結果、正確な遺伝子配列を備えたBCMA単一ドメイン抗体発現プラスミドを得た。
【0071】
実施例4:抗BCMA単一ドメイン抗体の発現及び精製
実施例3におけるプラスミドBCMAsdAb-pSJF2を含有する株を、アンピシリンを含有しているLB培養プレート上で37℃で一晩接種した。単一コロニーを拾い上げ、アンピシリンを含有する15mlのLB培地溶液中に接種し、37℃の振盪機中で一晩培養した。10mlの培養物をアンピシリンを含有する1Lの2YT培養液へ移し240rpm/分で37℃で振盪機中で培養した。OD値が0.4~0.6に到達した後に、0.5~1.0mMのIPTGを添加し、追加で一晩インキュベーションした。上記の溶液を細菌の収集のために遠心分離した。細菌をリゾチーム(lysozym)の添加によって溶解し、遠心分離し、上清中の可溶性の単一ドメイン抗体タンパク質を収集した。95%超の純度のタンパク質を、Niイオン親和性クロマトグラフィーによって得た。図3は、発現された抗BCMA単一ドメイン抗体タンパク質を示し、図4は、ニッケルカラムによって精製した、発現されたBCMA-sdAbのSDS-PAGE電気泳動結果を示す。
【0072】
実施例5:BCMA単一ドメイン抗体の親和性アッセイ試験
1)サンプルの調製
抗原:Bio-BCMAを、1×ダイナミック緩衝液(0.05%のTween 20、0.1%のBSA、pH7.2を含有する、1×PBS)により10μg/mlへ希釈した。
【0073】
単一ドメイン抗体を、1×キネティック緩衝液により、400nM、200nM、100nM、50nM、25nM、12.5nM、及び6.25nMへ段階的に希釈した。
【0074】
2)サンプルの試験
試験する抗原をSAセンサーを介してロードした。抗原を5つの勾配によって希釈し、すべてのBCMA単一ドメイン抗体は、50nm、20nm、10nm、1nm、0.1nm、及び0.01nmの親和性を有していた。
【0075】
実施例6:精製BCMA単一ドメイン抗体とBCMA抗原の結合試験(ELISA)
BCMA-FC抗原を、0.05MのNaHCO(pH9.5)により1μg/mlへ希釈した。96ウェルの位置を、100μlの抗原により4℃で一晩コーティングした。96ウェルプレートを、300μlの0.5%のBSA-PBSにより37℃で2時間ブロッキングした。異なる希釈濃度の精製BCMA単一ドメイン抗体を、100μl/ウェルで37℃で1時間添加した。プレートを、0.05%のPBSTにより3回洗浄した。1:5000倍で希釈したマウス抗His-HRPを、100μl/ウェルで37℃で1時間添加した。プレートを、0.05%のPBSTにより3回洗浄した。100μlのTMBを添加し、室温で20分間暗所で維持した。100μlの1mol/LのHClを添加し、反応をクエンチした。450nmのサンプルのOD値を、マイクロプレートリーダーによって測定した。図5は、BCMAタンパク質へ結合する精製BCMA単一ドメイン抗体の濃度勾配を示す(ELISA)。B35(13)及びB92(6-1)の2つの抗体のBCMA抗原へ結合する能力が、比較的低かったとことを除いて、残りの11の抗体のBCMA抗原へ結合する能力は、非常に高かった。
【0076】
実施例7:BAFF及びBCMAに対するBCMA単一ドメイン抗体の結合競合阻害試験
BCMAがBAFFへ結合することができるので、機能的なBCMA単一ドメイン抗体は、BAFFのBCMAへの結合を競合的に阻害することができるに違いない。BAFFタンパク質を1μg/ml(100μl/ウェル)で脱着可能なELISAプレートにコートし、4℃で一晩インキュベーションした。2%のBSAを300μl/ウェルでブロッキングのために添加し、37℃で2時間インキュベーションした。BCMA単一ドメイン抗体を10μg/mlの最終的な濃度へ希釈した。100μlのBCMA(10μg/ml)単一ドメイン抗体を添加し、2μlのBAFF(5μg/ml)タンパク質を各々のウェル中に添加して、均一に混合した。ヤギ抗ウサギIgG HRP(1:5000)を希釈し、100μl/ウェルにし、37℃で1時間インキュベーションした。TMB発色溶液を100μl/ウェルで添加し、10分間暗所で反応させた。反応を2MのHSOを、50μl/ウェルで添加することによってクエンチした。OD値を450nmで測定した。図6は、BCMA単一ドメイン抗体が、BAFFタンパク質のBCMAタンパク質への結合を競合的に阻害できることを示す。異なるBCMA単一ドメイン抗体は、BAFFタンパク質のBCMAタンパク質への結合を競合的に阻害することができ、阻害率は34%~92%の範囲であった。
【0077】
実施例8:特異的BCMA抗原をCART細胞に対して標的化する認識抗体としてのBCMA単一ドメイン抗体についての研究
1)ベクターの構築
BCMA単一ドメイン抗体遺伝子及び第二世代CAR構造遺伝子を合成した。2つの遺伝子をオーバーラップPCRによってスプライスして、BCMA CAR遺伝子を得た。合成遺伝子を得た後に、分子クローニングを実行した。最初に、2つの遺伝子断片のPCR産物を得た。次いでオーバーラップPCRを実行して、2つの断片が連結された、第2世代CAR構造を備えたBCMA CAR遺伝子を得た。プレベクター及びBCMA CAR遺伝子の酵素消化、ライゲーション、形質転換、クローニング、プラスミドアップグレード、及びシーケンシングを介して、正確な配列を備えたBCMA CAR発現レンチウイルスベクターのプレ-レンチ-EF1BCMAを得た。
【0078】
2)レンチウイルスのパッケージング
ウイルスパッケージングの前日に、293T細胞をトリプシンによって消化し、150cmの培養ディッシュ中で伸展させた。細胞を、5%のCO培養ボックス中で8~24時間インキュベーションした。接着細胞が培養ディッシュの全面積の80%に達した時に、293T細胞をトランスフェクションした。プレ-レンチ-EF1BCMACAR:psPAX2:pMD2G=4:3:1を、リポフェクタミン2000によりコトランスフェクションした。ウイルス上清を48時間後に収集し、1250rpmで4℃で5分間遠心分離して死んだ293T細胞及び細胞残屑を除去した。次いで、ウイルス上清を濾過し、濃縮し、サブパッケージングし、-80℃の冷蔵庫中で保存した。
【0079】
3)CART細胞の調製
10mlの新鮮血液を健康なボランティアから採取した。末梢血単核細胞(PBMC)を、リンパ球単離溶液により単離し、次いでT細胞を磁気ビーズによって単離及び精製した。2×10のT細胞/ウェルを6ウェルプレートの中へ播種し、IL-2(1000U/ml)を含有するx-vivo 15培養培地中で培養し、抗CD3により24時間刺激した。24時間の刺激後に、BCMAウイルス溶液を添加し、一晩感染させた。2mlの培養培地を2日目に添加した。感染の6~7日後に、CARの発現をフローサイトメトリーによって評価した。トランスフェクションしたT細胞が抗BCMA-CARを発現する陽性率を、フローサイトメトリーにより、ビオチン化BCMAを使用して分析した。
【0080】
4)殺傷存続性の決定
細胞殺傷性試験において、LDH検出キット(Promega)を検出のために使用した。CART細胞/T細胞:標的細胞を、4つの勾配(それは0.5:1、1:1、2:1及び4:1であった)によりそれぞれ設定した。Daudi細胞は3×10/ウェルであり、残りのウェルを、X-VIVO含有培養培地/1640培養培地により200μLまで補足した。96ウェルプレートを、5%のCOインキュベーター中で37℃で培養した。17時間後に、20μlの溶解液を最大放出ウェルの中へ添加し、細胞を均一に混合して完全に破裂させた。96ウェルプレートを、COインキュベーター中で2時間インキュベーションした。2時間後に、最大放出ウェルが観察された。標的細胞が完全に溶解された後に、50μLの上清を平底の各々のウェルから96ウェルプレートへ吸引し、次いでの50μLの基質溶液を各々のウェルへ添加し、顕色を暗所で30分間実行した。30分後に、混合物を色変化について観察し、そこで、MM.1Sのウェル最大放出であり、CART細胞ウェルの色はより暗い色であるだろう。マイクロプレートリーダーを、490nmの波長での測定のために使用した。殺傷結果を図7中に示した。BCMAキメラ抗原受容体修飾T細胞は、20%超の非常に高い殺傷活性によりBCMA陽性細胞を特異的に殺傷することができ、BCMA陰性細胞に対する殺傷効果を有していない。
添付書類1:
【表3-1】

【表3-2】

【表3-3】

添付書類2
【表4-1】

【表4-2】

【表4-3】

【表4-4】

【表4-5】

添付書類3
【表5-1】

【表5-2】

【表5-3】

【表5-4】

【表5-5】

【表5-6】

【表5-7】

【表5-8】

【表5-9】

【表5-10】

【表5-11】

【表5-12】

【表5-13】

【表5-14】

【表5-15】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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