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特許7289568ポリウレタン樹脂組成物、封止材及び電気電子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】ポリウレタン樹脂組成物、封止材及び電気電子部品
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20230605BHJP
   C08G 18/62 20060101ALI20230605BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20230605BHJP
【FI】
C08G18/00 H
C08G18/00 G
C08G18/62 004
C08G101:00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022045626
(22)【出願日】2022-03-22
【審査請求日】2022-09-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391003624
【氏名又は名称】サンユレック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】葉狩 奈津美
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-142993(JP,A)
【文献】特開2010-254915(JP,A)
【文献】特表2021-513591(JP,A)
【文献】特開2021-028357(JP,A)
【文献】特開2020-196852(JP,A)
【文献】特開2014-194009(JP,A)
【文献】特開2014-133878(JP,A)
【文献】特開2011-208051(JP,A)
【文献】特開2011-012229(JP,A)
【文献】特開2006-316198(JP,A)
【文献】特開2011-208059(JP,A)
【文献】特開2019-182901(JP,A)
【文献】特開2019-182887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C08G 71/00- 71/04
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基含有化合物、水酸基含有化合物、及び、水を含有するポリウレタン樹脂組成物であって、
前記ポリウレタン樹脂組成物中の前記水の含有量は、0.35質量%以上1.00質量%以下であり、
前記水酸基含有化合物は、ポリブタジエン骨格を有するポリオールを含み、前記ポリブタジエン骨格を有するポリオールの含有量は、前記ポリウレタン樹脂組成物を100質量%として、10質量%以上であり、
更に、シリコーン系整泡剤を含有し、前記シリコーン系整泡剤のHLBは、5以下である、
ことを特徴とするポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂組成物中の前記水の含有量は、0.60質量%以上である、請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記シリコーン系整泡剤のHLBは、3~5である、請求項1又は2に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
更に、難燃剤を含有し、前記難燃剤は、リン酸エステル化合物、メラミン化合物、リン・窒素系化合物、ハロゲン化合物、金属水和物、及び、膨張性黒鉛からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~3のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物からなる封止材。
【請求項6】
請求項に記載の封止材を用いて樹脂封止された電気電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂組成物、封止材及び電気電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気電子部品の高密度化および高集積化が進み、各部品に対して、信頼性の向上が要求されている。
【0003】
これらの電気電子部品を保護するために、封止材による封止が行われており、このような封止材として発泡ポリウレタン樹脂が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような封止材に用いられる発泡ポリウレタン樹脂には、軽量化を図り、耐衝撃性等を発揮するために、発泡倍率が十分であることが要求される。本発明者は、鋭意検討の結果、ポリウレタン樹脂組成物中の水の含有量が少ないと、発泡ポリウレタン樹脂の発泡倍率が十分でないことを見出した。特許文献1に記載の発泡ポリウレタン樹脂を製造するためのポリウレタン樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂組成物を100質量部として、水を0.35質量部以下含有しており、発泡倍率が十分でないという問題がある。
【0005】
よって、発泡倍率が十分な発泡ポリウレタン樹脂を製造することができるポリウレタン樹脂組成物の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-35640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、発泡倍率が十分な発泡ポリウレタン樹脂を製造することができるポリウレタン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、イソシアネート基含有化合物、水酸基含有化合物、及び、水を含有するポリウレタン樹脂組成物において、上記ポリウレタン樹脂組成物中の水の含有量が0.35質量%以上である構成とすれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下のポリウレタン樹脂組成物、封止材及び電気電子部品に関する。1.イソシアネート基含有化合物、水酸基含有化合物、及び、水を含有するポリウレタン樹脂組成物であって、
前記ポリウレタン樹脂組成物中の前記水の含有量は、0.35質量%以上である、
ことを特徴とするポリウレタン樹脂組成物。
2.前記ポリウレタン樹脂組成物中の前記水の含有量は、0.60質量%以上である、項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
3.更に、整泡剤を含有し、前記整泡剤のHLBは、3~11である、項1又は2に記載のポリウレタン樹脂組成物。
4.更に、難燃剤を含有し、前記難燃剤は、リン酸エステル化合物、メラミン化合物、リン・窒素系化合物、ハロゲン化合物、金属水和物、及び、膨張性黒鉛からなる群より選択される少なくとも1種である、項1~3のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物。
5.前記水酸基含有化合物は、ポリブタジエン骨格を有するポリオールを含み、前記ポリブタジエン骨格を有するポリオールの含有量は、ポリウレタン樹脂組成物を100質量%として、10質量%以上である、項1~4のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物。
6.項1~5のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物からなる封止材。
7.項6に記載の封止材を用いて樹脂封止された電気電子部品。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、発泡倍率が十分な発泡ポリウレタン樹脂を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のポリウレタン樹脂組成物、封止材及び電気電子部品について詳細に説明する。
【0011】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、イソシアネート基含有化合物、水酸基含有化合物、及び、水を含有するポリウレタン樹脂組成物であって、前記ポリウレタン樹脂組成物中の前記水の含有量は、0.35質量%以上であるポリウレタン樹脂組成物である。本発明のポリウレタン樹脂組成物は、水を0.35質量%以上含有することにより、十分に発泡することができ、発泡倍率が十分な発泡ポリウレタン樹脂を製造することができる。
【0012】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、水を含有する。本発明のポリウレタン樹脂組成物において、水は発泡剤として作用する成分である。
【0013】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、水の含有量が0.35質量%以上である。水の含有量が0.35質量%未満であると、発泡倍率が十分な発泡ポリウレタン樹脂を製造することができない。水の含有量は、0.50質量%以上が好ましく、0.60質量%以上がより好ましい。また、水の含有量は、1.00質量%以下が好ましく、0.80質量%以下がより好ましい。水の含有量の上限が上記範囲であることにより、ポリウレタン樹脂組成物は十分な発泡倍率を維持しながら、硬化性を制御することができるため、収縮が抑制される。
【0014】
(イソシアネート基含有化合物)
本発明のポリウレタン樹脂組成物において、用いられるイソシアネート基含有化合物としては、特に限定されず、ポリウレタン樹脂組成物において従来イソシアネート基含有化合物として用いられているものを各種使用することが可能である。上記イソシアネート基含有化合物としては、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物および芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0015】
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート等が挙げられる。
【0016】
脂環族ポリイソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0017】
芳香族ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0018】
芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0019】
イソシアネート基含有化合物は、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体、及び/又は、アロファネート変性体を含んでいてもよい。イソシアネート基含有化合物がポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体、及び/又は、アロファネート変性体を含むことにより、ポリウレタン樹脂組成物がより優れた耐熱性を示し、且つ、より優れた難燃性を示すことができる。
【0020】
上記イソシアネート基含有化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
本発明のポリウレタン樹脂組成物において、用いられるイソシアネート基含有化合物の量は、ポリウレタン樹脂組成物を100質量%として1~30質量%が好ましく、4~20質量%がより好ましい。イソシアネート基含有化合物の含有量の上限が上記範囲であると、ポリウレタン樹脂組成物の硬化性がより向上する。イソシアネート基含有化合物の含有量の下限が上記範囲であると、硬化したポリウレタン樹脂組成物の耐加水分解性及び硬化性がより向上する。
【0022】
(水酸基含有化合物)
本発明のポリウレタン樹脂組成物において、用いられる水酸基含有化合物としては、特に限定されず、ポリウレタン樹脂組成物において従来ポリオール成分として用いられているものを各種使用することが可能である。
【0023】
上記水酸基含有化合物としては、例えば、ポリブタジエンポリオール、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、2メチル1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、2-メチルプロパン-1、2,3-トリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリット、ポリラクトンジオール、ポリラクトントリオール、エステルグリコール、ヒマシ油系ポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、フッ素ポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリカプロラクトンポリオール、水酸基含有液状ポリイソプレンの水素化物、水酸基含有液状ポリブタジエンの水素化物等が挙げられる。
【0024】
上記水酸基含有化合物は、ポリブタジエン骨格を有するポリオールを含むことが好ましい。水酸基含有化合物がポリブタジエン骨格を有するポリオールを含むことにより、本発明のポリウレタン樹脂組成物の耐加水分解性がより向上する。
【0025】
上記ポリブタジエン骨格を有するポリオールの含有量は、ポリウレタン樹脂組成物を100質量%として、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。また、上記ポリブタジエン骨格を有するポリオールの含有量は、ポリウレタン樹脂組成物を100質量%として、35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。ポリブタジエン骨格を有するポリオールの含有量の下限が上記範囲であることにより、本発明のポリウレタン樹脂組成物の耐加水分解性がより向上する。ポリブタジエン骨格を有するポリオールの含有量の上限が上記範囲であることにより、本発明のポリウレタン樹脂組成物の耐加水分解性及び難燃性を維持することができ、且つ、硬化性がより向上する。
【0026】
上記ポリブタジエン骨格を有するポリオールの中でも、ポリブタジエンポリオールを用いることが好ましい。上記ポリブタジエンポリオールとしては、例えば、1,4結合を60~90モル%、及び1,2結合を10~40モル%有するポリブタジエンからなる繰り返し単位を有し、繰り返し数は10~100であり、両末端に水酸基を有するポリオールが挙げられる。
【0027】
本発明のポリウレタン樹脂組成物において、用いられる水酸基含有化合物の量は、ポリウレタン樹脂組成物を100質量%として、5~40質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましい。水酸基含有化合物の含有量の上限が上記範囲であることにより、本発明のポリウレタン樹脂組成物の硬化性がより向上する。水酸基含有化合物の含有量の下限が上記範囲であることにより、本発明のポリウレタン樹脂組成物の耐加水分解性がより向上する。
【0028】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、上記イソシアネート基含有化合物と、上記水酸基含有化合物とのNCO/OH比が0.6~2.0であることが好ましく、0.7~1.5であることがより好ましい。NCO/OH比の下限が上記範囲であることにより、ポリウレタン樹脂組成物の耐熱性がより向上する。NCO/OH比の上限が上記範囲であることにより、ポリウレタン樹脂組成物の硬化性がより向上する。
【0029】
(整泡剤)
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、整泡剤を含有することが好ましい。整泡剤としては、特に限定されず、ポリウレタン樹脂組成物において従来整泡剤として用いられているものを各種使用することが可能である。
【0030】
上記整泡剤としては、シリコーン系整泡剤、非シリコーン系整泡剤が挙げられる。これらの中でも、表面活性がより高い点で、シリコーン系整泡剤が好ましい。
【0031】
シリコーン系整泡剤としては、ジメチルシロキサン系化合物、ポリエーテルジメチルシロキサン系化合物、フェニルメチルシロキサン系化合物等が挙げられ、これらのブロックポリマーを用いてもよい。このようなブロックポリマーとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル等のジメチルポリシロキサン系化合物と、ポリエーテルのブロックポリマーである、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。
【0032】
上記整泡剤は、1種単独で、又は、2種以上を混合して用いることができる。
【0033】
上記整泡剤のHLBは、3~11が好ましく、3~10がより好ましく、3~8が更に好ましい。整泡剤のHLBが上記範囲であることにより、ポリウレタン樹脂組成物の硬化不良をより抑制することができる。一般に、ポリウレタン樹脂組成物に難燃性を付与するために粉体の難燃剤を添加すると、ポリウレタン樹脂組成物の硬度が高くなるため、配合量を多くすることができない。このため、ポリウレタン樹脂組成物に難燃性を付与するためには、難燃剤として、液体の難燃剤を多く配合する必要がある。しかし、液体の難燃剤を多く配合すると、樹脂骨格が弱くなり硬化不良(収縮)が発生する。本発明のポリウレタン樹脂組成物では、上記特定の範囲のHLBの整泡剤を用いることで、ポリウレタン樹脂組成物の硬化不良をより抑制することができる。
【0034】
上記整泡剤としては、市販品を用いることができる。このような市販品としては、例えば、ダウ・東レ株式会社製 SH-192(HLB=7)、PRX-609(HLB=5)、SZ-1333(HLB=3)等が挙げられる。
【0035】
整泡剤の含有量は、ポリウレタン樹脂組成物100質量%に対して0.1~5質量%が好ましく、0.1~3質量%がより好ましく、0.2~1質量%が更に好ましい。整泡剤の含有量の上限が上記範囲であることにより、ポリウレタン樹脂組成物の硬化不良をより抑制することができる。
【0036】
(難燃剤)
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、難燃剤を含有していてもよい。難燃剤としては特に限定されず、ポリウレタン樹脂組成物において従来難燃剤として用いられているものを各種使用することが可能である。
【0037】
難燃剤としては、例えば、リン酸エステル化合物、メラミン化合物、リン・窒素系化合物、ハロゲン化合物、金属水和物、膨張性黒鉛等が挙げられる。
【0038】
難燃剤の含有量は、ポリウレタン樹脂組成物100質量%に対して30~80質量%が好ましく、50~70質量%がより好ましい。難燃剤の含有量の上限が上記範囲であることにより、ポリウレタン樹脂組成物の耐加水分解性がより向上する。難燃剤の含有量の下限が上記範囲であることにより、ポリウレタン樹脂組成物の難燃性がより向上する。
【0039】
(その他の添加剤)
本発明のポリウレタン樹脂組成物には、触媒、酸化防止剤、吸湿剤、防黴剤、シランカップリング剤等、必要に応じて各種の添加剤を添加することができる。
【0040】
触媒としては特に限定されないが、ウレタン樹脂組成物に用いられる従来公知の触媒を用いることができる。このような触媒としては、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジアセテート等の錫触媒;オクチル酸鉛、オクテン酸鉛、ナフテン酸鉛等の鉛触媒;オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス等のビスマス触媒、ジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン等のアミン系触媒等が挙げられる。また、上記触媒としては、有機金属化合物、金属錯体化合物等を用いてもよい。
【0041】
これらの添加剤の使用量は、その使用目的に応じて、ポリウレタン樹脂組成物の所望の特性を阻害することのないように、通常の添加量と同定の範囲から適宜決定すればよい。
【0042】
(ポリウレタン樹脂組成物の製造方法)
本発明のポリウレタン樹脂組成物を製造する方法としては特に限定されず、ポリウレタン樹脂組成物を製造する方法として用いられる従来公知の方法により製造することができる。
【0043】
このような製造方法としては、例えば、イソシアネート基含有化合物を含む成分を調製してA剤、水酸基含有化合物を含む成分を調製してB剤とし、A剤とB剤とを混合することにより反応させてポリウレタン樹脂として、当該ポリウレタン樹脂を含有するポリウレタン樹脂組成物を製造する方法が挙げられる。
【0044】
上記A剤がイソシアネート基含有化合物を含有し、上記B剤が水酸基含有化合物を含有していれば、他の成分は、A剤又はB剤のどちらに含有されていてもよい。また、A剤に水酸基含有化合物を添加し、プレポリマーとしてもよい。
【0045】
ポリウレタン樹脂組成物は、硬化前の液状であってもよいし、硬化していてもよい。ポリウレタン樹脂組成物を硬化させる方法としては、上記A成分及びB成分を混合することにより、イソシアネート基含有化合物と水酸基含有化合物とを反応させてポリウレタン樹脂とすることによりポリウレタン樹脂組成物を経時的に硬化させる方法が挙げられるが、加熱により硬化させてもよい。この場合、加熱温度は20~120℃程度が好ましく、加熱時間は、0.1~24時間程度が好ましい。
【0046】
本発明は、また、上記ポリウレタン樹脂組成物からなる封止材でもある。上記ポリウレタン樹脂組成物からなる封止材は、電気電子部品や、発熱を伴う電気電子部品等に好適に使用することができる。このような電気電子部品としては、トランスコイル、チョークコイル及びリアクトルコイル等の変圧器や機器制御基盤、各種センサー等が挙げられる。このような電気電子部品も、本発明の一つである。本発明の電気電子部品は、電気洗濯機、便座、湯沸し器、浄水器、風呂、食器洗浄機、電動工具、自動車、バイク、電池パック等に用いることができる。
【実施例
【0047】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0048】
実施例、及び比較例に使用する原料を下記表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
(ポリウレタン樹脂組成物の調製)
表2に示すB剤の配合の原料を反応釜に投入し、常温、常圧下で1時間攪拌し、ポリオール成分(B剤)を調製した。
【0051】
ポリイソシアネート成分を調製する原料として、イソシアネート基含有化合物(MR-200)を用意し、イソシアネートa-1とした。難燃剤c-1(TCP)を加熱、冷却、減圧装置を備えた反応釜に投入し、60℃、10mmHg以下の圧力下で1時間かけて脱水した後、イソシアネートa-1を投入し、60℃、10mmHg以下の圧力下で1時間かけて脱水・反応を行い、イソシアネートa-1を用いたポリイソシアネート成分(A剤)を調製した。
【0052】
また、表1に示すように、プレポリマーであるイソシアネートa-2及びイソシアネートa-3を調製するためのポリオールとしてR-45HT、及び、PL-2100を用意した。R-45HT又はPL-2100、及び、難燃剤c-1(TCP)を加熱、冷却、減圧装置を備えた反応釜に投入し、100℃、10mmHg以下の圧力下で1時間かけて脱水した後、イソシアネートa-1を投入し、60℃、10mmHg以下の圧力下で1時間かけて脱水・反応を行い、イソシアネートa-2、又は、イソシアネートa-3を用いたポリイソシアネート成分(A剤)を調製した。
【0053】
表2に示す配合で、B剤にA剤を加えて撹拌し、脱泡して混合することによりポリウレタン樹脂組成物を得た。B剤とA剤との混合は、ポリオール成分(B剤)を23℃に調整し、続いて23℃に調整したポリイソシアネート成分(A剤)を添加し、電動ハンドミキサー(ミラクルズNo.1123、パール金属)を用いて回転数1000rpmで1分間撹拌することにより行った。
【0054】
(試験片の作成)
130×130×5mmの成型用型A、130×130×10mmの成型用型Bおよび内径30mm、高さ20mmの成型用型Cに、調製したポリウレタン樹脂組成物を注入した。それぞれを室温で16時間放置して硬化させ、試験片A、B及びCを調製した。調製した試験片A、B及びCを用い、以下に示す方法で硬化物外観、難燃性、及び、耐加水分解性の試験を行った。
【0055】
以上のように調製した実施例及び比較例のポリウレタン樹脂組成物、及び、試験片を用いて、下記の試験を行った。
【0056】
発泡倍率
鋳込型(15×15×43mm)を用いて、撹拌混合後の樹脂3.0gを注型し、23℃、16時間後、型からはみ出した発泡体上面を、カッターナイフを用いて面一で切り取り、発泡倍率算出用の試験片を調製した。電子ノギスを用いて試験片の縦、横、高さを測定し、体積(V)を計算した後、電子天秤を用いて試験片の重さ(W)を測定した。計算測定した値を次式に代入し、硬化物の発泡倍率として比体積を算出した。
(発泡倍率)(cm3/g)=[V:試験片の体積(cm3)]/[W:試験片の重さ(g)]
【0057】
硬化物外観(硬化性):指触硬化後
混合撹拌後の樹脂組成物を内径30mm、高さ20mmの成型用型Cに20g測り取り、23℃下で放置し、硬化物の表面にマッチ棒の端を押し付けて引き上げたときに、マッチ棒に樹脂が付着しなくなったことを確認後(指触硬化後)のポリウレタン樹脂組成物である試験片Cの外観を目視で観察し、硬化性を評価した。収縮していなければ「良好」とし、収縮していれば「収縮」とした。
【0058】
硬化物外観(硬化性):23℃/16h後
混合撹拌後23℃で16時間放置したポリウレタン樹脂組成物である試験片Cの外観を目視で観察し、硬化性を評価した。収縮していなければ「良好」とし、収縮していれば「収縮」とした。
【0059】
難燃性
硬化後のポリウレタン樹脂組成物である試験片A及びBを用いて難燃性試験を行った。試験は、米国のUnderwriters Laboratories,Inc.により制定された燃焼試験規格(UL94)に基づいて行った。下記評価基準に従って難燃性を評価した。
○:V-0を満たす
×:V-0を満たさない(V-1、V-2またはHB)
【0060】
耐加水分解性
硬化後のポリウレタン樹脂組成物である試験片Cを用いて、121℃、100%RH 2気圧の条件でプレッシャークッカー試験を行い、試験片Cが溶解するまでの時間を測定した。下記評価基準に従って耐加水分解性を評価した。
○:溶解するまでの時間が80時間以上である
×:溶解するまでの時間が80時間未満である
【0061】
結果を表2に示す。
【0062】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、十分な発泡倍率を示すことができる。このため、電気製品等の分野で利用が可能である。
【要約】
【課題】発泡倍率が十分な発泡ポリウレタン樹脂を製造することができるポリウレタン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】イソシアネート基含有化合物、水酸基含有化合物、及び、水を含有するポリウレタン樹脂組成物であって、
前記ポリウレタン樹脂組成物中の前記水の含有量は、0.35質量%以上である、
ことを特徴とするポリウレタン樹脂組成物。
【選択図】 なし