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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】試料容器
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/04 20060101AFI20230605BHJP
   B65D 77/00 20060101ALI20230605BHJP
   B65D 77/02 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
G01N1/04 J
B65D77/00 C
B65D77/02 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022198610
(22)【出願日】2022-12-13
【審査請求日】2023-01-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000154163
【氏名又は名称】三晶エムイーシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181881
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 俊一
(72)【発明者】
【氏名】一色 勝彦
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-532111(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103723362(CN,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0490214(KR,Y1)
【文献】特表2018-527261(JP,A)
【文献】特表2019-515253(JP,A)
【文献】特許第5936088(JP,B2)
【文献】特開2002-281955(JP,A)
【文献】特開2011-107080(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0140209(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
B65D 77/00
B65D 77/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を保持するための保管器を具備した保管容器と、
試料を浸す浸漬液を貯留するための貯留器及び当該貯留器の開口部を密封する封鎖膜を具備した貯留容器を備え、
前記保管容器は、前記貯留器の開口部を囲み当該貯留器から放出された浸漬液を保管器へ導く内連結部を備えると共に、当該保管器における開口部に前記貯留器の開口部の内縁部を臨む開封刃を備え、
前記貯留容器は、前記保管容器の内連結部を囲み当該内連結部とねじ待遇をもって連結する外連結部を備え、
前記ねじ待遇は、前記封鎖膜と前記開封刃とが接する手前で締め込みの進行を抑制する支障領域を備え、
前記ねじ待遇の支障領域を超える締め込みにより前記保管器の開封刃を貯留器の内側に進入させ前記封鎖膜を破断することにより貯留器と保管器との連通を確保することを特徴とする試料容器。
【請求項2】
試料を保持するための保管器を具備した保管容器と、
試料を浸す浸漬液を貯留するための貯留器及び当該貯留器の開口部を密封する封鎖膜を具備した貯留容器を備え、
前記保管容器は、前記貯留器の開口部を囲み当該貯留器から放出された浸漬液を保管器へ導く内連結部を備えると共に、当該貯留器の開口部の内縁部を臨む開封刃を当該保管器における開口部に等周期で備え、
前記貯留容器は、前記保管容器の内連結部を囲み当該内連結部とねじ待遇をもって連結する外連結部を備え、
前記ねじ待遇は、前記封鎖膜と前記開封刃とが接する手前で締め込みの進行を抑制する支障領域と、前記封鎖膜と前記開封刃とが接した後開封刃の間欠角度未満の回転をもってその回転を止める終端領域を備え、
前記ねじ待遇の支障領域を超える締め込みにより前記保管器の開封刃を貯留器の内側に進入させ前記封鎖膜を破断することにより貯留器と保管器との連通を確保することを特徴とする試料容器。
【請求項3】
前記貯留器の内面又は封鎖膜の内面に撥水性が与えられていることを特徴とする請求項1に記載の試料容器。
【請求項4】
前記貯留器の開口部の内縁をダイとし、前記保管器の開口部の開封刃をパンチとするせん断手段を備え、
前記封鎖膜は、前記せん断手段によるせん断変形をもって分離する素材から成ることを特徴とする請求項1に記載の試料容器。
【請求項5】
前記開封刃は、貯留器から放出された浸漬液を保管器へ導く溝又はスリットを備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の試料容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適量の浸漬液を容器外の雰囲気に暴露することなく容器内の試料に供給することができる試料容器に関する。
【背景技術】
【0002】
疾病を診断する際、生体の細胞又は組織の一部が生検機構又は生検針等を用いて採取される。採取された検体は、組織病理学的検査に供されるまで損傷させることなく保管し移送することが求められる。そのためには、密封容器に封入しホルマリン等に浸漬することが必要となる。
ホルマリンは、ホルムアルデヒドの水溶液であって、強力な架橋反応を起こすため生物にとって有害である。刺激臭もあるため、ホルマリンが暴露し従事者が吸引する虞を伴う環境にあれば、従事者の体調及び健康を害する事ともなる。
ホルマリンの暴露に伴う諸問題を回避するため、様々な機器を設置することも考えられるものの、それでは検体採取の場で直ちに保管容器に封入することは極めて困難である。
【0003】
この様な実情を改善すべく、外部へ暴露させることなく検体や薬剤等(以下、「検体等」と記す。)を収容できる保管容器が案出されている。
特許文献1には、封止部を介して薬剤封入部とバッグとを接続し、封止部を開放することにより、バッグおよび薬剤封入部が連通し薬剤がバッグ内に投入される構成を持つ容器が開示され、特許文献2には、閉鎖体により第1の開いた端部を閉鎖した状態で可動構造物を外部から動かすことにより試料ホルダーを動かし破損し易い膜に圧力を加えることによって、第1のチャンバー、第2のチャンバー、及び試料ホルダーの間の流体的な連通を確立すべく破損可能である生体試料保管用の容器が開示され、特許文献3には、組織試料を保存する容器と、前記容器と係合するカバー部とを含み、カバー部に、保存剤を含有するように適合された貯蔵部を含む上部部材と、前記貯蔵部を密封するシールと、ばね膜を押すことによって起動される穿刺部材の移動によって前記シールを破る容器アセンブリが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-141665号公報
【文献】特許第5211170号公報
【文献】特許第5936088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1は、封止部を開放するには、検体等を封入する操作のほかに、比較的難しい操作が必要であると言う問題がある。
前記特許文献2は、可撓性エラストマーのボタンやハンドルの操作によって破損しやすい膜を破り、第1のチャンバー及び第2のチャンバーの間の流体的な連通を確立させる構成が採られているが、いずれもボタンやハンドルと連結され且つ連動する試料ホルダーへ検体等を収めると言う煩雑な作業が伴うと言う問題がある。
前記特許文献3は、シールを破る際に、上部部材を上から押しかつ同時に穿孔又は穿刺部材を下から押すのと同時に上部部材は回転させる必要がある他、構造が複雑となる。
【0006】
この様に、従来の試料容器は、いずれも、試料の封入と保存液の供給にそれぞれ異なる操作を必要とするため、保存液の供給操作の失念や不備など、検体採取の負担を無にする事態を招来する虞がある。
また、いずれも、検体等を入れるチャンバーと保存液を入れておくチャンバーを確実に連通させる破断部の形態及び位置が一様に制御できておらず、更には、浸漬液の供給不良やシールの破断屑等の異物混入によって検体等を損傷する虞があると言う問題がある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、単一の操作で外部に暴露することなく、検体等を容易に容器に封入し、且つ破断の態様が安定し浸漬液を保管容器へ確実に供給できる試料容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明による試料容器は、試料を保持するための保管器を具備した保管容器と、試料を浸す浸漬液を貯留するための貯留器及び当該貯留器の開口部を密封する封鎖膜を具備した貯留容器を備え、前記保管容器は、前記貯留器の開口部を囲み当該貯留器から放出された浸漬液を保管器へ導く内連結部を備えると共に、当該貯留器の開口部の内縁部を臨む開封刃を備え、前記貯留容器は、前記保管容器の内連結部とねじ待遇をもって連結する外連結部を備え、前記ねじ待遇は、前記封鎖膜と前記開封刃とが接する手前で締め込みの進行を抑制する支障領域を備え、前記ねじ待遇の支障領域を超える締め込みにより前記保管器の開封刃を貯留器の内側に進入させ前記封鎖膜を破断することにより貯留器と保管器との連通を確保することを特徴とする。
【0009】
上記試料容器は、前記開封刃を当該保管器における開口部に等周期で備え、前記ねじ待遇に、前記封鎖膜と前記開封刃とが接した後開封刃の間欠角度未満の回転をもってその回転を止める終端領域を備える構成を採ることができる。
ここで、開封刃の間欠角度とは、前記開封刃を備える保管器の開口部の、開封刃の配置一周期分の範囲のなかで、封鎖膜に接することが無く、又は接した時点で封鎖膜を破断することなく留まり、貯留器の内側に進入しない様に設定された部分の位相(角度)範囲である。
【0010】
前記封鎖膜は、前記開封刃による加圧変形をもって分離する素材から成る構成を採る。
例えば、前記貯留器の開口部の内縁をダイとし、前記保管器の開口部の開封刃をパンチとするせん断手段を備え、前記封鎖膜は、前記せん断手段によるせん断変形をもって分離する(切断される)素材から成る構成を採ることができる。
また、フッ素系の撥液レジスト薄膜を形成する等により前記貯留器の内面又は封鎖膜の内面に撥水性が与えられている構成、又は前記開封刃は、貯留器から放出された浸漬液を保管器へ導く溝又はスリットを備える構成を採ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明による試料容器によれば、ねじ蓋を開いて試料容器に試料を封入し、同ねじ蓋を閉鎖する締め込み操作を強めに行うだけで、貯留部に封入された浸漬液を外部に暴露することなく検体等を容易に容器に封入し、同時に、当該検体等が入れられた保管器に浸漬液を確実に供給することができる。そのため、浸漬液の供給操作を失念し試料を損なう恐れを回避することができる。
【0012】
また、本発明による試料容器のねじ待遇に、前記封鎖膜と前記開封刃とが接する手前で締め込みの進行を抑制する支障領域と、前記封鎖膜と前記開封刃とが接した後開封刃の間欠角度未満の回転をもってその回転を止める終端領域を備えることによって、貯留器と保管器を連通させる破断部の形態及び位置を一様に制御でき、連通不良や封鎖膜の破断による異物混入によって検体等の試料を損傷する虞も回避することができる。
保管器の側壁開口部の端縁に、貯留器を密封する封鎖膜を破断するための開封刃を配置する構成を採ること等により、保管器の内部に障害物が存在しないため、試料の出し入れがし易く、試料に傷などへの悪影響を防止することができる。
【0013】
封鎖膜は、前記開封刃による加圧変形をもって分離する素材から成るものを採用することにより連通させる破断部の形態及び位置の制御はより確実なものとなる。
更に、例えば、前記貯留器の開口部の内縁をダイとし、前記保管器の開口部の開封刃をパンチとするせん断手段を備え、前記封鎖膜は、前記せん断手段によるせん断変形をもって分離する(切断される)素材から成る構成を採ることによってその精度はより高められることとなる。
【0014】
浸漬液の粘度や性状等に応じて、前記貯留器の内面又は封鎖膜の内面に撥水性が与えられている構成、又は前記開封刃に、貯留器から放出された浸漬液を保管器へ導く溝又はスリットを備える構成を採用すれば、保管器から試料を取り出す際に貯留器内の残留浸漬液が零れ落ちる等の不都合を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による試料容器の(A)未使用状態及び(B)使用状態を例示した縦断面図である。
図2】本発明による試料容器の(A)未使用状態及び(B)使用状態を例示したねじ待遇の一例を示す縦断面図である。
図3】本発明による試料容器の保管容器の(A)平面図及び(B)底面図である。
図4】本発明による試料容器の貯留容器の(A)縦断面図及び及び(B)貯留器の一部を切欠した縦断面図である。
図5】本発明による試料容器の貯留容器の(A)平面図及び(B)底面図である。
図6】本発明による試料容器の(A)開放状態、(B)未使用状態及び(C)使用状態の一例を示す側面図である。
図7】本発明による試料容器の(A)未使用状態及び(B)使用状態を例示した縦断面図である。
図8】本発明による試料容器の(A)未使用状態及び(B)使用状態を例示したねじ待遇の一例を示す縦断面図である。
図9】本発明による試料容器の保管容器の(A)平面図及び(B)底面図である。
図10】本発明による試料容器の貯留容器の(A)縦断面図及び(B)貯留器の一部を切欠した縦断面図である。
図11】本発明による試料容器の貯留容器の(A)平面図及び(B)底面図である。
図12】本発明による試料容器の(A)開放状態、(B)未使用状態及び(C)使用状態の一例を示す側面図である。
図13】本発明による試料容器の貯留容器の(A)平面図及び(B)底面図及び(C)斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、試料容器の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。
図1に示す試料容器は、試料を保持するための保管器1を備える保管容器Aと、試料を浸す浸漬液Xを貯留するための貯留器2を備える貯留容器Bを備える。
【0017】
前記保管容器Aは、前記保管器1と、前記貯留器2の開口部を囲み当該貯留器2から放出された浸漬液Xを受け保管器1へ導く内連結部3と、当該貯留器2の開口部の内縁部を臨む(内縁部に倣う)開封刃5を備える。
この例の前記保管器1は、有底円筒状の合成樹脂製容器であり、前記内連結部3は、保管器1の開口部から外筒として上位へ連続した同心円筒状の部位であり、その外側面にねじ待遇の雄ねじが穿設されている(図2又は図8参照)。
【0018】
前記貯留容器Bは、前記貯留器2と、前記内連結部3を囲む外連結部4を備える。
この例の貯留器2は、有底筒状の合成樹脂容器であり、前記外連結部4は、貯留器2の基部から当該貯留器2の外側へ膨出し当該貯留器2の側壁に沿って外筒として連続する同心円筒状の部位であり、その内側面に前記ねじ待遇の(前記内連結部3の雄ねじと螺合する)雌ねじが穿設されている。
前記貯留器2は、定められた量の浸漬液Xが充填され、当該貯留器2の開口部はヒートシール等により封鎖膜6で密封されている。
前記封鎖膜6は、ポリプロピレンフィルムの様に易開封性の高い素材、金属箔の様な前記せん断手段によるせん断変形をもって分離する素材、又はそれらを重ね合わせた素材を用いることが望ましい。
更に、貯留器2の内部に、開封時にこぼれの原因となる浸漬液Xを残存させないためには、封鎖膜6の内面及び貯留器2の内面に撥水性を付与することが望ましく、例えば、フッ素系ポリマー等の薄膜を撥液性レジスト薄膜として被着する手法を採用することができる。
【0019】
試料容器は、垂直に切り立った貯留器2の開口部の内縁をダイのブレードとして成形し、前記保管器1の開口部(外壁の端縁)から前方へ突出した開封刃5の外縁をパンチのブレードとして成形することによって、前記ねじ待遇の締め込みにより封鎖膜6を破断するためのせん断手段を構成することができる。
開封刃5は、ねじ待遇のピッチ等に応じて単数又は複数設けることができ、複数設ける場合には、保管器1の開口部の全周にわたって等周期(この例では等角度間隔)で配置することが望ましい。
【0020】
図1に示す例(以下、「実施例1」と記す。)は、開封刃5の各々が雄ねじの傾斜に倣って高さに差が設けられた複数のパンチを具備するものであって、個々の開封刃5が具備するパンチが、各々の略全長にわたるスリットを挟んで直角三角形状に配置されたものである。スリットは、開封後貯留器2から放出された浸漬液Xを保管器1へ導くための切欠きであるが、スリットを溝に置換した構成を採ることもできる。
図7に示す例(以下、「実施例2」と記す。)は、開封刃5の各々が、一様の高さを持つ長方形状に成形されたものである。この例は、120度間隔(120度周期)で3つの開封刃5を具備する。この例にあっても、各開封刃5について単数又は複数のスリット又は溝を設けることができる。
【0021】
前記せん断手段は、上記構成により、封鎖膜6を目的とする切断面に沿ってずらすように互いに反対方向へ加圧し、当該切断面における組織の結合を破壊することをもって破断部位を分離する。
尚、封鎖膜6として伸縮性の高い素材などを用いる場合には、せん断手段としての構成に替えて前記開封刃5として鋭利な切断刃を採用することもできる(図7参照)。
【0022】
保管容器Aの雄ねじと貯留容器Bの雌ねじとが螺合されることにより、保管器1の開口部と貯留器2の開口部が密封される。
前記ねじ待遇は、前記封鎖膜6と前記開封刃5とが接する手前で締め込みの進行を抑制する支障領域と、前記封鎖膜6と前記開封刃5とが接した後、保管器1と貯留器2との間の十分な連通を確保し、且つ封鎖膜6の一部又は全部が貯留器2の開口部から脱離しない角度の回転(例えば、開封刃5の間欠角度未満の回転)をもって回転を止める終端領域を備える。
前記支障領域は、外連結部4の先部内面と内連結部3の基部外面との組み合わせ、又は外連結部4の基部内面と内連結部3の先部との組み合わせ等において、意図的にねじ込む操作を行わなければねじ待遇による進退又は相対的な回転が得られない程度の締め抵抗又は緩め抵抗を与えるための相互干渉形状が与えられた領域である(図1(A)、図2(A)若しくは図6(B)、又は図7(A)、図8(A)若しくは図12(B)参照)。
【0023】
例えば、図2(A)又は図8(A)によれば、前記封鎖膜6と前記開封刃5とが接する手前では、外連結部4における先部内面の一部又は全部に設けられたせり出し部7と、内連結部3の基部外面にフランジ状に形成された突条8とが干渉し、相互の締めの進行を抑制する支障領域が形成されている。更に締め込み、外連結部4の先部に設けられたせり出し部7が突条8を乗り越えると抵抗が減少するが(図2(B)又は図8(B)参照)、更に締め込み前記封鎖膜6と前記開封刃5とが接した後開封刃5の間欠角度未満(図3の例では60度未満(好ましくは40度未満)、図9の例では90度未満(好ましくは60度未満)。)の回転をもって外連結部4の基部内面に形成された突き当り部と、内連結部3の先部とが干渉し、相互の回転を止める終端領域が形成されている(図1(B)又は図7(B)参照)。
外連結部4における先部内面の一部にせり出し部7を設ける場合には、当該せり出し部7を具備する領域と具備しない領域との境界に切欠き9を介在する構成を採ることができる(図13参照)。
終端領域は、上記構成に替えて、外連結部4の先部と、内連結部3の基部外面にフランジ状に形成された高い突条とが干渉し相互の回転を止める構成を採用しても良い(図示省略)。
【0024】
上記のごとく構成された試料容器は、未使用の輸送時において、保管容器Aの蓋となる貯留容器Bの外連結部4の先部内面が、内連結部3の基部外面にフランジ状に形成された突条8と相互に干渉する位置(以下、「待機位置」と記す。)に置かれている(図6(B)又は図12(B)参照)。
待機位置にあっては、当該外連結部4の先部が僅かに押し広げられ、締めの進行を抑制する状態で一体化されている。この時、貯留容器Bが緩む方向へ押し戻されることにより、その雌ねじと保管容器Aの雄ねじとが密着し、相互にガタツキや回転の無い安定した連結状態を形作る。
使用前の状態では、待機位置において貯留器2に浸漬液Xが封入されており、封鎖膜6は貯留器2の端縁に密着した状態で当該貯留器2の開口部を封じている。
【0025】
試料を保管器1に入れる作業は、貯留容器Bを緩めて保管容器Aから外し(図6(A)又は図12(A)参照)、試料を保管器1に入れて再び貯留容器Bを保管容器Aに連結することで達成される。保管容器Aに対して貯留容器Bを締め入れると、再び待機位置に達し締めの進行を抑制する感覚が手に伝わるが、この待機位置で締め込みを止めることなく強引に締め込みを継続し、終端領域に達して外連結部4の基部内面に形成された突き当り部と内連結部3の先部とが干渉し相互の回転を止める感覚が手に伝わることをもって締め込みを終了する(図6(C)又は図12(C)参照)。
この時、貯留容器Bが緩む方向へ押し戻されることにより、その雌ねじと保管容器Aの雄ねじとが密着し、相互にガタツキや回転の無い安定した連結状態及び比較的気密性の高い状態を形作る。
【0026】
この時、試料容器の内部では、待機位置から終端領域の間での締め込み操作により封鎖膜6は設定された軌道で破断され、破断部位の近傍は開封刃5による加圧をもって貯留器2の内側へ押し入れられ、貯留器2と保管器1との連通を確保する。
この際、実施例1は点又は短線に近い加圧で加圧作用又はせん断作用を及ぼし、実施例2は線に近い加圧で加圧作用又はせん断作用を及ぼすこととなる。
貯留容器Bが保管容器Aの上位にあることを条件として、貯留容器Bの浸漬液Xは封鎖膜6の破断部位に生じた孔から保管器1内に流入する。開封刃5にスリット又は溝を備える場合には、併せてスリット又は溝を介して浸漬液Xが流入する。
更に、前記貯留器2の内面又は封鎖膜6の内面に撥水性が与えられている場合には、貯留器2内の浸漬液Xは略滞ることなく保管器1内に落下する。
【符号の説明】
【0027】
A 保管容器,B 貯留容器,X 浸漬液,
1 保管器,2 貯留器,3 内連結部,4 外連結部,5 開封刃,6 封鎖膜,
7 せり出し部,8 突条,9 切欠き,
【要約】
【課題】 単一の操作で外界に暴露することなく、検体等を容易に容器に封入し、且つ開封の態様が安定し浸漬液を保管容器へ滞りなく供給できる試料容器の提供。
【解決手段】 試料を保持する保管器を具備した保管容器と、試料を浸す浸漬液を貯留する貯留器及び当該貯留容器の開口部を密封する封鎖膜を具備した貯留容器を備え、保管容器は、貯留器から放出された浸漬液を保管器へ導く内連結部及び貯留器の開口部の内縁部を臨む開封刃を備え、貯留容器は保管容器の内連結部とねじ待遇をもって連結する外連結部を備え、前記ねじ待遇は、封鎖膜と開封刃とが接する手前で締め込みの進行を抑制する支障領域と、封鎖膜と開封刃とが接した後開封刃の間欠角度未満の回転をもって回転を止める終端領域を備え、前記ねじ待遇の支障領域を超えた締め込みにより保管器の開封刃で封鎖膜を破断し貯留器と保管器との連通を確保する試料容器。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13