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  • 特許-構造物を構成するコンクリート壁の構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】構造物を構成するコンクリート壁の構造
(51)【国際特許分類】
   E04C 2/06 20060101AFI20230605BHJP
   E04C 2/30 20060101ALI20230605BHJP
   E21D 11/08 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
E04C2/06
E04C2/30 J
E21D11/08
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018204878
(22)【出願日】2018-10-31
(65)【公開番号】P2020070610
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】大田 真一郎
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-202217(JP,A)
【文献】特開昭54-100127(JP,A)
【文献】実開昭52-021221(JP,U)
【文献】特開平11-193578(JP,A)
【文献】特開昭63-297649(JP,A)
【文献】特開2019-085808(JP,A)
【文献】特開平07-062990(JP,A)
【文献】特開2012-207384(JP,A)
【文献】実開昭61-202512(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 2/00-2/54
E21D 11/00-19/06
E21D 23/00-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物を構成するコンクリート壁の構造であって、
前記構造物は、複数のセグメントが組み付けられた円弧状のトンネル躯体であり、
前記セグメントは、鉄筋が埋設されたプレキャストコンクリート板から構成され、
前記セグメントの内周面と外周面の少なくとも一方の面は、複数の面からなるPCCP構造で形成されている、
ことを特徴とする構造物を構成するコンクリート壁の構造。
【請求項2】
前記セグメントの内周面と外周面の両面は、前記PCCP構造で形成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の構造物を構成するコンクリート壁の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物、擁壁、トンネル躯体、橋梁などの構造物を構成するコンクリート壁の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、建物の内壁や外壁、床、天井、擁壁、トンネル躯体を構成するセグメント、橋梁の床版には鉄筋が組み込まれたコンクリート壁が用いられている。
このようなコンクリート壁の表面は平坦面で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-36574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、それら構造物を構成するコンクリート壁は、何らかの形で圧縮荷重を受けるため、所定値以上の厚さを有していることが必要となる。
その結果、コンクリート壁の厚さが大きくならざるを得ず、その結果、簡単に取り扱う上で不利となり、また、コンクリートの使用量が大きくなり、構造物のコストが上昇し工期が長引く不具合があった。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、コンクリート壁の厚さを薄くでき、簡単に取り扱う上で有利で、また、コンクリートの使用量を削減でき、構造物のコストダウンを図る上で有利な構造物を構成するコンクリート壁の構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明は、構造物を構成するコンクリート壁の構造であって、前記コンクリート壁は鉄筋が埋設されたプレキャストコンクリート板から構成され、前記プレキャストコンクリート板の厚さ方向の少なくとも一方の面は、複数の面からなるPCCP構造で形成されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記構造物は建物であり、前記コンクリート壁は、前記建物の外壁または内壁または床または天井であることを特徴とする。
また、本発明は、前記構造物は前記コンクリート壁からなる擁壁であることを特徴とする。
また、本発明は、前記構造物は前記コンクリート壁からなる複数のセグメントが組み付けられたトンネル躯体であり、前記プレキャストコンクリート板は、前記セグメントを構成していることを特徴とする。
また、本発明は、前記構造物は橋梁であり、前記コンクリート壁は、前記橋梁の床版であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、コンクリート壁の少なくとも一方の面はPCCP構造により強固に補強されており、同じ厚さの平面のみからなるコンクリート壁に比べ、より大きな圧縮荷重に耐えることが可能となる。
したがって、従来のコンクリート壁に比べて薄いコンクリート壁を使用できることから、コンクリートの使用量、重量を軽減でき、構造物のコストを削減する上で有利となる。
さらに、コンクリート壁を薄くできることから、構造物においてコンクリート壁が占めるスペースの割合を小さくでき、構造物の内部スペースや外部スペースを大きく確保する上で有利となる。
また、構造物が建物の場合には、従来のコンクリート壁に比べて薄いコンクリート壁を使用できることから、特に、コンクリート壁を大量に使用する大型の集合住宅、大型の倉庫、体育館、高層建物においてはコンクリートの使用量、重量を大幅に軽減でき、その結果、基礎や地震対策構造などの小型化、簡易化を図れ、構造物のコストを大幅に削減する上で有利となる。
さらに、コンクリート壁を薄くできることから、居住スペースやオフィススペースに対してコンクリート壁が占めるスペースの割合を小さくでき、居住スペースやオフィススペースを大きく確保する上で有利となる。
また、構造物がコンクリート壁からなる擁壁である場合には、従来のコンクリート壁に比べて薄いコンクリート壁を使用でき、コンクリートの使用量、重量を軽減でき、その結果、擁壁の小型化、簡易化を図れ、擁壁のコストを削減する上で有利となる。
さらに、コンクリート壁を薄くできることから、擁壁が占めるスペースの割合を小さくでき、擁壁に対面する道路などのスペースを大きく確保する上で有利となる。
また、構造物がコンクリート壁をなす複数のセグメントが組み付けられたトンネル躯体である場合には、従来のセグメントに比べて薄いセグメントを使用でき、コンクリートの使用量を軽減でき、トンネル工事のコストを削減する上で有利となる。
さらに、従来のセグメントに比べて薄いセグメントを使用できることから、掘削穴内でセグメントの占める割合を小さくでき、従来と同じ内径の掘削穴内において大きなトンネル空間を確保する上で有利となる。
また、構造物が橋梁である場合には、従来のプレキャストコンクリート床版に比べて薄い床版を使用でき、コンクリートの使用量を軽減でき、橋梁工事のコストを削減する上で有利となる。
さらに、従来のプレキャストコンクリート床版に比べて薄い床版を使用できることから、桁や支承、橋脚、橋台などの小型化を図れ、橋梁工事のコストを削減する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施の形態のコンクリート壁の表面の一部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、図1を参照して第1の実施の形態から説明する。
第1の実施の形態では、構造物は建物であり、建物には一般柱宅や集合住宅、倉庫、体育館、高層建物などが含まれる。
それら建物の外壁または内壁または床または天井はコンクリート壁で構成されている。
コンクリート壁は、それら建物の柱や梁に組み付けられ、外壁または内壁または床または天井を構成する複数のプレキャストコンクリート板10で構成されている。
プレキャストコンクリート板10の内部には鉄筋が埋設され、図1に示すように、プレキャストコンクリート板10の厚さ方向の両面または一方の面は、複数の面1202からなるPCCP構造12で形成されている。
【0009】
本実施の形態のプレキャストコンクリート板10からなるコンクリート壁によれば、コンクリート壁の少なくとも一方に面は、平坦面ではなく、複数の面1202からなるPCCP構造12で構成されている。
そのため、コンクリート壁の少なくとも一方の面はPCCP構造12により強固に補強されており、同じ厚さの平面のみからなるコンクリート壁に比べ、より大きな圧縮荷重に耐えることが可能となる。
したがって、従来のコンクリート壁に比べて薄いコンクリート壁を使用できる。
したがって、特に、コンクリート壁を大量に使用する大型の集合住宅、大型の倉庫、体育館、高層建物においてはコンクリート壁の使用量、重量を軽減でき、その結果、基礎や地震対策構造などの小型化、簡易化を図れ、構造物のコストを削減する上で有利となる。
また、コンクリート壁を薄くできることから、居住スペースやオフィススペースに対してコンクリート壁が占めるスペースの割合を小さくでき、居住スペースやオフィススペースを大きく確保する上で有利となる。
【0010】
なお、前記実施の形態では、建物の外壁または内壁または床または天井を構成するコンクリート壁に本発明を適用した場合について説明したが、本発明は、コンクリート製の擁壁、コンクリート製のトンネル躯体、橋梁のコンクリート製の床版などにも無論適用される。
構造物がコンクリート製の擁壁である場合には、本発明のプレキャストコンクリート板10は、コンクリート壁をなす擁壁に適用される。
この場合にも、第1の実施例と同様な効果が奏される。
すなわち、擁壁の少なくとも一方の面はPCCP構造12により強固に補強されており、従来のコンクリート壁に比べて薄いコンクリート壁を使用でき、擁壁に用いるコンクリートの使用量、重量を軽減でき、その結果、擁壁の小型化、簡易化を図れ、擁壁のコストを削減する上で有利となる。
また、コンクリート壁を薄くできることから、擁壁が占めるスペースの割合を小さくでき、擁壁に対面する道路などのスペースを大きく確保する上で有利となる。
【0011】
また、構造物がシールド工法などで用いられるコンクリート壁をなす複数のセグメントが組み付けられたトンネル躯体である場合には、本発明のプレキャストコンクリート板10はセグメントに適用され、第1の実施例と同様な効果が奏される。
すなわち、セグメントの内周面と外周面の少なくとも一方の面はPCCP構造12により強固に補強されており、従来のセグメントに比べて薄いセグメントを使用でき、セグメントに用いるコンクリートの使用量を軽減でき、トンネル工事のコストを削減する上で有利となる。
また、従来のセグメントに比べて薄いセグメントを使用できることから、掘削穴内でセグメントの占める割合を小さくでき、従来と同じ内径の掘削穴内において大きなトンネル空間を確保する上で有利となる。
【0012】
また、構造物が橋梁である場合には、本発明のプレキャストコンクリート板10は、橋梁のコンクリート製の床版に適用され、第1の実施例と同様な効果が奏される。
すなわち、プレキャストコンクリート床版の少なくとも一方の面はPCCP構造12により強固に補強されており、従来のプレキャストコンクリート床版に比べて薄い床版を使用でき、プレキャストコンクリート床版に用いるコンクリートの使用量を軽減でき、橋梁工事のコストを削減する上で有利となる。
また、従来のプレキャストコンクリート床版に比べて薄い床版を使用できることから、桁や支承、橋脚などの小型化を図れ、橋梁工事のコストを削減する上で有利となる。
なお、本発明のプレキャストコンクリート板10の用途は、上述の建物、擁壁、トンネル躯体、橋梁に限定されず、様々な構造物に用いられるプレキャストコンクリート板に広く適用される。
【符号の説明】
【0013】
10 プレキャストコンクリート板
12 PCCP構造
図1