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  • 特許-端子圧着装置および端子圧着方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】端子圧着装置および端子圧着方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/052 20060101AFI20230605BHJP
【FI】
H01R43/052
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019096627
(22)【出願日】2019-05-23
(65)【公開番号】P2020191251
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】尾澤 暢
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-190672(JP,A)
【文献】特開2007-035465(JP,A)
【文献】特開2006-185725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 43/048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対移動する一対の圧着部本体を有して電線に端子金具を圧着する圧着部と、
電線が収容される収容溝、及び、前記収容溝の先端から所定距離だけ離れた位置において該収容溝に交差して延びる挟持用溝を有する載置部と、
前記挟持用溝に挿入可能な一対の挟持部を有し、前記収容溝に載置された電線を挟持して前記圧着部に移送するための移送部と、を備え
前記圧着部には、前記一対の圧着部本体に対する電線導入側に、電線を挟持した前記一対の挟持部が通過可能な作業孔を有したカバー部材が設けられていることを特徴とする端子圧着装置。
【請求項2】
前記移送部は、前記一対の挟持部のそれぞれに連続するとともに該一対の挟持部のそれぞれと交差するように延びる交差部を有することを特徴とする請求項1に記載の端子圧着装置。
【請求項3】
請求項1または2の端子圧着装置を用い、
前記収容溝に収容された電線を、前記挟持用溝に前記一対の挟持部を挿入することで挟持し、前記移送部によって前記電線を前記圧着部に移送し、端子金具を圧着することを特徴とする端子圧着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子圧着装置および端子圧着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の圧着部材(圧着部本体)によって接続端子(端子金具)の加締部に押圧力を加えることにより、電線に接続端子を圧着接続する端子圧着装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された端子圧着装置では、位置決め部材の一方側の面に対して電線の先端を当接させることで電線を位置決めし、位置決め部材の他方側の面に対して接続端子の当接部を当接させることで接続端子を位置決めする構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-161938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたように一対の圧着部本体を接近させる構成では、一対の圧着部本体の間に作業者の手指が入り込まないように、一対の圧着部本体に対する電線導入側にカバー部材が設けられることがある。しかしながら、作業者が手指により電線の先端近傍を把持して一対の圧着部本体の間に導入しようとすると、電線の先端が位置決め部材に当接するよりも先に、手指がカバー部材に干渉してしまうことがあった。この場合、作業者は電線を掴み直す必要があり、作業工数が増加してしまう。このように、端子金具上の所定位置に電線を容易に位置づけることが望まれていた。
【0005】
本発明の目的は、端子金具上の所定位置に電線を容易に位置づけることができる端子圧着装置および端子圧着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の端子圧着装置は、相対移動する一対の圧着部本体を有して電線に端子金具を圧着する圧着部と、電線が収容される収容溝、及び、前記収容溝の先端から所定距離だけ離れた位置において該収容溝に交差して延びる挟持用溝を有する載置部と、前記挟持用溝に挿入可能な一対の挟持部を有し、前記収容溝に載置された電線を挟持して前記圧着部に
移送するための移送部と、を備え、前記圧着部には、前記一対の圧着部本体に対する電線導入側に、電線を挟持した前記一対の挟持部が通過可能な作業孔を有したカバー部材が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このような本願発明の端子圧着装置によれば、載置部に、収容溝の先端から所定距離だけ離れた位置に挟持用溝が形成されていることで、収容溝の先端に電線の先端を位置合わせし、一対の挟持部を挟持用溝に挿入して電線を挟持することにより、先端から所定距離だけ離れた位置において電線を挟持することができる。これにより、端子金具上の所定位置に電線を位置づける際に電線を掴み直す必要がなく、容易に位置づけることができる。尚、挟持用溝の形成位置(収容溝の先端からの所定距離)は、圧着部の各部の寸法や位置関係等に応じて適宜に設定されればよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る端子圧着装置の圧着部および移送部を示す側面図である。
図2】前記端子圧着装置の載置部および前記移送部を示す斜視図である。
図3】前記移送部を示す斜視図である。
図4】前記圧着部のカバー部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の端子圧着装置は、図1に示す圧着部2と、図2に示す載置部3と、図1~3に示す移送部4と、を備え、電線100に端子金具200を圧着する。
【0010】
圧着部2は、一対の圧着部本体としてのアンビル21およびクリンパ22と、位置決め部材23と、カバー部材24と、を有する。尚、図1において、上下方向をZ方向とし、水平面に沿うとともに互いに略直交する2方向をX方向およびY方向とする。
【0011】
アンビル21は、その上面に端子金具200が載置される固定台であって、クリンパ22がアンビル21に対してZ方向に接近または離隔するように構成され、これらが相対移動する。作業者が例えばフットスイッチ等の操作部を操作することにより、駆動手段がクリンパ22を下降させるようになっている。
【0012】
位置決め部材23は、YZ平面に沿って延びる板状に形成され、端子金具200の位置決め溝201内に配置されることで端子金具200を位置決めし、Y方向一面(後述する電線導入側の面)に電線100の先端が当接することで電線100を位置決めする。位置決め部材23を基準として、クリンパ22側が電線導入側(一対の導体圧着部202および一対の被覆圧着部203の間に電線100が導入される側)となる。
【0013】
カバー部材24は、アンビル21およびクリンパ22に対して電線導入側に配置され、図4に示すように、板状に形成されるとともにその両面を貫通する貫通部240を有する。貫通部240は、水平方向の一方側において開口した導入部241と、導入部241に連続した作業孔242と、導入部241と作業孔242との間からZ方向上方に延びる連通孔243と、連通孔243に連続してZ方向上方側に形成された視認孔244と、が形成されている。
【0014】
導入部241には、カバー部材24の端縁に向かって開口寸法が大きくなるようにガイド斜面241Aが形成されており、電線100を挟持した後述する一対の挟持部41、42が容易に導入可能となっている。
【0015】
視認孔244は、後述するように端子金具200上の所定位置に電線100を位置づける作業時に、電線100の先端が位置決め部材23に当接しているか否かを確認することができるように形成されている。尚、図示の例では、視認孔244はZ方向下方側(連通孔243側)を頂点とする逆三角形状に形成されているが、視認孔244は、作業を確認しやすいように適宜な形状を有していればよい。
【0016】
載置部3は、全体が板状に形成され、その上面側に、複数(図示の例では5つ)の収容溝31と、1つの挟持用溝32と、を有する。尚、載置部3に形成される収容溝31の数は任意であり、1つであってもよい。図2において、上下方向をC方向とし、水平面に沿うとともに互いに略直交する2方向をA方向およびB方向とする。
【0017】
収容溝31は、A方向に沿って延び、一方側に閉塞部311が形成されて閉塞されており、他方側が開放されて開放部312となっている。収容溝31において、閉塞部311側が先端側となる。即ち、収容溝31に電線100が収容される際、電線100の先端が閉塞部311の当接面(収容溝31側を向いた面)に当接するようになっている。
【0018】
挟持用溝32は、収容溝31の先端である閉塞部311から所定距離だけ離れた位置に形成され、B方向に沿って延びている。即ち、収容溝31と挟持用溝32とが略直交している。また、挟持用溝32は、複数の収容溝31を横断するように形成されている。
【0019】
移送部4は、例えば全体が樹脂によって構成されてピンセット300の先端に装着されるものであって、一対の挟持部41、42と、一対の交差部43、44と、を有して全体がL字状に形成されている。
【0020】
一対の挟持部41、42は、作業者がピンセット300を操作することで互いに接離可能となっており、これらの対向方向を挟持方向とし、挟持方向と略直交しつつピンセット300の長手方向に沿って延びる方向を幅方向とする。一対の挟持部41、42は、載置部3に対して幅方向をA方向に一致させるとともに挟持方向をB方向に一致させることで、挟持用溝32に挿入可能となっている。即ち、一対の挟持部41、42の幅方向寸法が、挟持用溝32の幅(A方向寸法)よりも小さくなっている。尚、一対の挟持部41、42の厚さ(挟持方向寸法)は、隣の収容溝31に収容された電線100と干渉しないような寸法に設定されていればよい。
【0021】
一方の挟持部41には、電線100外周形状に応じた凹部411が形成されている。これにより、電線100を挟持する際に電線100が凹部411に位置付けられる。尚、一対の挟持部の両方に凹部が形成されていてもよい。
【0022】
交差部43、44は、幅方向に沿って延びることにより、一対の挟持部41、42と交差している。交差部43、44は、ピンセット300の先端に取り付け可能に構成されている。
【0023】
ここで、本実施形態の端子圧着装置によって電線100に端子金具200を圧着する具体的な手順について説明する。
【0024】
予め、載置部3の各収容溝31に電線100が収容された状態としておく。このとき、電線100の先端が閉塞部311に当接するように、電線100の先端と収容溝31の先端とを位置合わせする。電線100は、導体部101と被覆部102とを有し、先端部において所定長さだけ被覆部102が除去され、導体部101が露出している。また、挟持用溝32において電線100の導体部101は露出していない。尚、複数の収容溝31の全てに電線100を収容してもよいし、一部のみに電線100を収容してもよい。
【0025】
アンビル21上に端子金具200を載置し、位置決め部材23により所定位置に位置決めする。端子金具200は、一対の導体圧着部202と、一対の被覆圧着部203と、を有し、電線導入側から順に被覆圧着部203と導体圧着部202と位置決め溝201とが並ぶように配置される。
【0026】
次に、移送部4の一対の挟持部41、42を挟持用溝32に挿入し、電線100を挟持(把持)する。電線100を挟持した状態を維持し、移送部4によって電線100を圧着部2に移送する。
【0027】
電線100を挟持した一対の挟持部41、42を、カバー部材24の導入部241から作業孔242内に導入する。このとき、電線100を挟持した一対の挟持部41、42が、カバー部材24の板厚方向において作業孔242を通過可能となっている。作業者は、移送部4を操作する(ピンセット300を動かす)ことにより、電線100の位置を調節し、電線100の先端を位置決め部材23に当接させ、電線100を端子金具200上の所定位置に位置付ける。このとき、作業者は、視認孔244を通して電線100の先端および位置決め部材23を視認しつつ作業を実施すればよい。
【0028】
作業者が例えばフットスイッチ等の操作部を操作することによりクリンパ22が下降し、端子金具200がアンビル21とクリンパ22とによって挟み込まれる。これにより、導体圧着部202および被覆圧着部203が変形し、一対の導体圧着部202が導体部101に加締められ、一対の被覆圧着部203が被覆部102に加締められる。
【0029】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。即ち、載置部3に、収容溝31の先端から所定距離だけ離れた位置に挟持用溝32が形成されていることで、収容溝31の先端に電線100の先端を位置合わせし、一対の挟持部41、42を挟持用溝32に挿入して電線100を挟持することにより、先端から所定距離だけ離れた位置において電線100を挟持することができる。これにより、アンビル21の上面に載置された端子金具200上の所定位置に電線100を位置づける際に電線100を掴み直す必要がなく、容易に位置づけることができる。
【0030】
また、移送部4が挟持部41、42と交差するように延びる交差部43、44を有することで、交差部43、44をピンセット300に装着し、電線100を挟持しやすくすることができる。
【0031】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0032】
例えば、前記実施形態では、作業孔242を有するカバー部材24が設けられる構成としたが、他の構成により、作業者の手指がアンビル21とクリンパ22との間に入り込まないようにしてもよい。即ち、上下や左右に分割された複数のカバー部材同士の隙間に電線を挿通する構成としてもよいし、電線導入側において電線用の入口を狭くする構成としてもよい。
【0033】
また、前記実施形態では、移送部4が交差部43、44を有してピンセット300に装着されるものとしたが、一対の挟持部がそれぞれピンセットの先端に装着される構成としてもよい。また、移送部が、一対の挟持部と、作業者が把持する部分と、を一体に有してピンセットに装着されない構成であってもよい。
【0034】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0035】
2 圧着部
21 アンビル(圧着部本体)
22 クリンパ(圧着部本体)
24 カバー部材
242 作業孔
3 載置部
31 収容溝
32 挟持用溝
4 移送部
41、42 挟持部
43、44 交差部
100 電線
200 端子金具
図1
図2
図3
図4