(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】海底鉱物探査のための地震データ収集システム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01V 1/00 20060101AFI20230605BHJP
【FI】
G01V1/00 C
(21)【出願番号】P 2021552529
(86)(22)【出願日】2019-03-06
(86)【国際出願番号】 NO2019000006
(87)【国際公開番号】W WO2020180187
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】515339653
【氏名又は名称】エクイノール・エナジー・アーエス
【氏名又は名称原語表記】EQUINOR ENERGY AS
【住所又は居所原語表記】Torusbeen 50,4035 Stavanger,Norway
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】ホクスタド、ケティル
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-137320(JP,A)
【文献】国際公開第2019/035967(WO,A1)
【文献】実公昭46-031681(JP,Y1)
【文献】特開2003-084069(JP,A)
【文献】松澤進一,S波を利用した貯留槽解析技術,石油・天然ガスレビュー,石油天然ガス・金属鉱物資源機構,2007年09月,2007年9月号,pp.91-103
【文献】Eiichi Asakawa 外5名,Multi-stage Seismic Survey for Seafloor Massive Sulphide (SMS) exploration,2018 OCEANS - MTS/IEEE Kobe Techno-Oceans (OTO),2018年,pp.1-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の船であって、それに関連付けられた第1の震源及び地震検出器を有する第1の船と、第2の船であって、それに関連付けられた第2の震源を有する第2の船とを含む、海底鉱物を探鉱するための地震調査システムであって、
前記地震検出器は、前記第1の震源及び前記第2の震源の両方から放出される音響信号の海底による反射及び/又は屈折からもたらされる音響信号を受信するように構成され
、
前記第2の船は、前記第1の船の移動の方向において前記第1の船の後方に位置する、
地震調査システム。
【請求項2】
前記地震検出器は、前記第1の船によって曳航される複数のハイドロフォンを含むストリーマである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第2の船は
、水深の1.5倍を超える距離で前記第1の船の後方にある、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の震源及び前記第2の震源の作動は、同期される、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の震源及び前記第2の震源は、同時に作動する、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記地震検出器は、前記第1の震源によって放出され、且つ前記海底によって前記地震検出器に反射される音響信号を検出するように構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記地震検出器は、前記第2の震源によって放出され、且つ前記地震検出器による検出前にヘッドウェーブとして前記海底に沿って伝播される音響信号を検出するように構成される、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記ヘッドウェーブは、P波を
含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第2の震源によって放出される前記信号は、前記海底における伝播速度又はそれを示すパラメータを決定するために使用される、請求項7又は8に記載のシステム。
【請求項10】
前記決定された伝播速度は、前記海底の密度の値を決定するために、前記海底における反射係数の決定された推定値と組み合わせて使用される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記海底の前記密度の推定値と、それに応じて硫化物鉱床が存在する可能性とを決定するように構成される、請求項
10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第2の船は、掘削事前調査船である、請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
海底鉱物を探鉱するために地震調査を実施する方法であって、
a.第1の船であって、それに関連付けられた第1の震源及び地震検出器を有する第1の船を提供するステップ、
b.
前記第1の船の移動の方向において前記第1の船の後方に位置する第2の船であって、それに関連付けられた第2の震源を有する第2の船を提供する、ステップ、
c.前記第1の震源及び前記第2の震源の両方から信号を放出するステップ、
d.前記地震検出器を使用して、前記第1の震源及び前記第2の震源の両方から放出される音響信号の海底による反射及び/又は屈折からもたらされる音響信号を受信するステップ
を含む方法。
【請求項14】
前記第1の震源及び前記第2の震源は、同時信号を放出する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項に記載のシステムを使用する、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法の使用又はシステムの使用を含む、硫化物の海底鉱床を探鉱する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底鉱物鉱床、例えば硫化物及び特に金属硫化物を探査するとき、海底及び海底下の比較的浅い深度を調査するのに使用される地震調査システムに関する。本発明は、対応する方法にも及ぶ。
【背景技術】
【0002】
現在、再生可能エネルギー源及び電化に重点が置かれていることにより、金属に対する将来的な需要が高まっている。こうした金属に対する必要性により、海底鉱物に対する関心が高まっている。深海の海底又はその近くに存在することが知られている鉱物には、主に金属硫化物の形態である銅、鉛及び亜鉛等の有価金属が含まれる。
【0003】
いくつかの国々(例えば、ノルウェー、英国、ポルトガル、ブラジル、ロシア及びパプアニューギニア)は、排他的経済水域(EEZ)の内側に深海鉱物資源を有する。しかしながら、大部分の資源は、国際海底機構(ISA)によって管理されている国際水域にある。ISAライセンス供与システムにより、最大10,000km2の探査領域に対するライセンスは、7年間付与され得る。その領域の半分は、4年後に放棄しなければならない。
【0004】
探査は、(少なくとも)2つの異なるスケール:(i)地域スケール(アクセスすべき場所)、及び(ii)探鉱スケール(掘削すべき場所)で行われる。
【0005】
地域スケールでは、重要な問題は、鉱区を取得及び確保すべき場所である。探鉱スケールでは、重要な点は、探査井を掘削すべき場所である(同じ原理が石油及び海底鉱物探査の両方に適用される)。
【0006】
海底鉱物鉱床は、通常、熱水噴出孔、主にブラックスモーカーとして知られるものからの沈殿物に関連する。金属硫化物は、高温熱水が海洋の冷水と合流するときに放出される。
【0007】
熱水循環の性質及び熱水噴出孔を介したそれらの放出により、海底鉱物鉱床は、通常、小さく、典型的には半径において100~500mであり、深海域(1500~4000m水深)に位置する。
図1に一例を示す。現在、海底では約700個の熱水噴出孔が既知である。それらの大部分は、地殻プレートの境界又はその近くに位置する。
【0008】
熱水海底噴出孔に関する調査及び探査研究は、種々の地球物理学的センサを搬送する自律型無人潜水機(AUV)及び遠隔操作無人潜水機(ROV)を使用する、既知の掘削地点における詳細な研究に主に重点が置かれてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらの探査ツールは、探鉱スケールでは好適である。しかしながら、限られた範囲のAUV及びROVは、地域スケールでの探査に好適ではないことを意味する。したがって、代替的な方法、好ましくは高速且つ/又は費用効率の高いこうした方法が必要とされている。本発明者らは、こうした方法が、好ましくは、曳航される海上輸送による地球物理学的センサに基づくべきであることを特定した。しかしながら、既知の掘削事前調査船は、完全な地震探査船よりも運航するのにはるかに費用がかからない一方、水面近傍マッピングのために設計及び建造されており、短い地震ストリーマを有する。それにより、既知の掘削事前調査船は、こうした作業に適さない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、第1の船であって、それに関連付けられた第1の震源及び地震検出器を有する第1の船と、第2の船であって、それに関連付けられた第2の震源を有する第2の船とを含む、海底鉱物を探鉱するための地震調査システムであって、地震検出器は、第1の震源及び第2の震源の両方から放出される音響信号の海底による反射及び/又は屈折からもたらされる音響信号を受信するように構成される、地震調査システムが提供される。
【0011】
したがって、本発明は、ここで、「追跡ボート」とも称される第2の震源船とともに使用される、従来の(より低コストの)掘削事前調査船に基づき得る新たな調査設計を提供する。これにより、(第1の震源を使用する)オフセット距離が短い反射データと、オフセット距離が遠い屈折データ(すなわち、後に説明するように、第2の震源を使用してヘッドウェーブからもたらされるデータ)との両方の取得を可能にする有効な設計が提供される。本発明は、主に(ただし排他的にではなく)、海底から、海底のおよそ1000m下までの目標深さが存在する使用のために意図されている。
【0012】
任意の好適な地震検出器を採用することができる。しかしながら、それは、好ましくは、当技術分野において既知であるように、第1の船によって曳航される複数のハイドロフォンを含むストリーマ(地震受振ケーブル)である。上述したように、第1の船は、好ましくは、掘削事前調査船(当技術分野において周知のタイプの船)である。この目的のための掘削事前調査船の使用に対する根拠は、以下の通りである。
【0013】
・掘削事前調査船は、浅い深度での高解像度イメージングのために設計及び建造される。それらの船は、比較的短い(最大1500mの)地震ストリーマを備える。それらには、サブボトムプロファイラ、マルチビーム音響測深機及び/又はサイドスキャンソナーも設けることができる。こうした船の一例を
図2に概略的に示す。こうした船は、従来、海底近くのジオハザード(シャローガス)をマッピングするために使用される。
【0014】
・掘削事前調査船は、標準的な地震探査船よりも運航が著しく安価である(典型的には2D地震探査船のコストの約半分、3D地震探査船のコストの1/3)。
【0015】
・海底近くの且つ深海域にある目標に対して、地震速度分析は、重大な問題ではない。これは、二乗平均平方根速度が、主に、既知である水の音速によって占められるためである。多重減衰も深海域及び浅い目標の重大な問題ではない。
【0016】
・地震イメージングにおける最高空間解像度は、ゼロオフセット(垂直入射)反射データから得られる。そのため、この目的では短いストリーマで十分である。
【0017】
地震検出器は、好ましくは、第1の震源によって放出され、且つ海底によって地震検出器に反射される音響信号を検出するように構成される。同様に、地震検出器は、好ましくは、第2の震源によって放出され、且つ地震検出器による検出前に、ヘッドウェーブとして海底に沿って伝播される音響信号を検出するように構成される。
【0018】
第1の震源及び第2の震源の作動は、好ましくは、同期される。2つの震源は、交互に作動され得る(フリップフロップ動作)。しかしながら、第1の震源及び第2の震源が同時に作動することが好ましい。同時発射により、より密な震源間隔及び/又はより高い動作効率が可能になる。
【0019】
第2の船は、好ましくは、第1の船の移動の方向において第1の船の後方に位置する。ストリーマは、第1の震源が位置する第1の船の後方で曳航される。(それぞれ第1の震源及び第2の震源からもたらされる)反射事象及び屈折事象は、地震記録において反対の傾斜で到達する。そのため、震源が同時に作動する場合でも、反射データ及び屈折データの分離が容易になる。これは、反射データ及び(屈折)ヘッドウェーブデータが反対の傾きで記録され、周波数-波数(FK)領域におけるデータの分離が容易であるためである。(ここで、傾きは、地震記象に記録された事象の傾きを指し、数学的には、傾きは、dt/dxである。)
【0020】
第1の船と第2の船との間の距離は、好適な屈折した波(ヘッドウェーブ)が検出されることを確実にするように必要に応じて選択/調整され得、とりわけ水深によって決まる。しかしながら、第2の船は、好ましくは、少なくとも水深の1.5倍を超える距離で第1の船の後方にある。好ましくは、第2の船は、水深の3倍未満の距離で第1の船の後方にある。本発明は、深海域、例えば、1000m以上の深さで使用することができるので、第2の船は、少なくとも1又は2km、第1の船の後方にあり得ることになる。
【0021】
検出されるヘッドウェーブは、典型的には、少なくともP波を含み、且つS波をさらに含み得る。(こうした波タイプの両方は、後に説明するように、好適な条件下で生成される。)所与の水深に対して、S波が検出されることを可能にするために、第2の船は、通常、著しくより大きい距離で第1の船の後方になければならない。このため、第2の震源は、検出可能な信号を提供するためにより強力でなければならない。この距離は、水深の増大によって増大する。そのため、S波を検出する選択肢は、より浅い水中においてより好ましい可能性がある。
【0022】
本システムによって収集される反射データを使用して、海底の音響インピーダンスを得ることができる。屈折データを使用して、海底の地震速度を得ることができる。さらに後述するように、音響インピーダンスと速度とを組み合わせて、海底の密度を推定することができる。
【0023】
したがって、第2の震源によって放出される信号は、好ましくは、海底における伝播速度又はそれを示すパラメータを決定するために使用される。さらに、決定された伝播速度は、好ましくは、海底の密度の値が決定するために、海底における反射係数の決定された推定値と組み合わせて使用される。
【0024】
硫化物鉱床は、それらが多くの場合に位置する玄武岩海底と著しく異なる密度を有することが知られている。したがって、さらなる態様から見て、本発明は、海底の密度の推定値と、したがって硫化物鉱床が存在する可能性とを決定するように構成される、上述したシステムを提供する。
【0025】
本発明は、対応する方法にも及ぶ。したがって、本発明のさらなる態様によれば、海底鉱物を探鉱するために地震調査を実施する方法であって、第1の船であって、それに関連付けられた第1の震源及び地震検出器を有する第1の船を提供するステップ、第2の船であって、それに関連付けられた第2の震源を有する第2の船を提供するステップ、第1の震源及び第2の震源の両方から信号を放出するステップ、地震検出器を使用して、第1の震源及び第2の震源の両方から放出される音響信号の海底による反射及び/又は屈折からもたらされる音響信号を受信するステップを含む方法が提供される。
【0026】
上述したように、第1の震源及び第2の震源は、好ましくは、同時信号を放出する。本方法は、上述したようなシステム、特にその好ましい形態の使用をさらに含むことができる。
【0027】
さらに、さらなる態様から見て、本発明は、上述した方法又はシステムの使用を含む、水和物の海底鉱床を探鉱する方法を提供する。
【0028】
ここで、添付図面を参照して、本発明のいくつかの好ましい実施形態について単に例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】パプアニューギニアのビスマルク海におけるSolwara-1硫化物鉱床及び網状鉱床の地質学的断面である(Nautilus Minerals Niugini Ltd(2018)の提供による図)。
【
図2】地球物理学的計測での従来の掘削事前調査船の概略立面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による海底鉱物探査のための地震調査システムの概略立面図である。
【
図4A】それぞれ海底から直接反射された波と、海底に沿って屈折した波との距離(x)に対する時間(t)のプロットである。
【
図4B】それぞれ海底から直接反射された波と、海底に沿って屈折した波との波数(k
x)に対する周波数(f)の対応するプロットである。
【
図5A】2つの同時発生震源による弾性2D有限差分モデリングからのスナップショットの組である。
【
図5B】2つの同時発生震源による弾性2D有限差分モデリングからのスナップショットの組である。
【
図5C】2つの同時発生震源による弾性2D有限差分モデリングからのスナップショットの組である。
【
図6】水面に到達する地震波動場のスナップショットである。
【
図7】NMO重合によって計算された地震画像である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
海底硫化物蓄積物は、主に、中央拡大海嶺に沿った海洋地殻に位置する。主要な岩質は、玄武岩であり、堆積物の被覆は、通常、薄い(例えば、0~50m)。
【0031】
図1は、本発明の実施形態によって調査することができる、こうした海底硫化物鉱床の一例を示す。この図は、海底の火山性領域の上方の海洋1の下方部分を示す。海底は、粘土変質火山岩3の領域を有する火山性岩2を含む。粘土変質火山岩3の上に、黄鉄鉱及び黄銅鉱が主流である塊状硫化物4の鉱床が位置する。塊状硫化物4の上に薄い堆積物5が重なっている。こうした硫化物4の鉱床は、通常、熱水噴出孔、典型的には「ブラックスモーカー」として知られるものからの沈殿物に関連する。領域6は、熱水噴出孔の下方の地質学的「配管」を形成する解釈網状鉱床支脈ゾーン(interpreted stockwork feeder zones)である。鉱床は、通常、比較的小さく、典型的には半径において100~500mであり、深海域(1500~4000m)に位置する。
【0032】
図2は、海底及び浅い水面下の高解像度マッピングのための既知の地震掘削事前調査システム10を示す。こうしたシステムは、従来、海底近くに(
図1に示すもの等の累層のように)位置するシャローガス等のジオハザードをマッピングするために使用される。したがって、こうしたシステムは、浅い深度での高解像度イメージングのために設計される。
【0033】
調査船11は、超高解像度(UHR)震源12及び高解像度(HR)震源13を、対応するストリーマ、すなわちUHRストリーマ14及びHRストリーマ15とともに曳航する。震源12及び13から放出される地震信号(すなわち音波)は、海底の方に向けられる。海底では、地震信号は、当技術分野において周知であるように、ストリーマ14、15に沿って搭載された検出器(ハイドロフォン)に向かって戻るように反射及び/又は屈折される。最高空間解像度は、「ゼロオフセット」反射により(すなわち垂直入射で)得られるので、これらは、比較的短く、すなわち長さが最大1500mである。この例では、UHRは、10立方インチの震源を有する。UHRストリーマは、100mの長さ及び0.75mの深さである。
【0034】
船には、マルチビーム音響測深機16(70~100kHz)、サブボトムプロファイラ17(ピーク周波数3850kHz)も搭載されている。船は、サイドスキャンソナーユニット18(120~410kHz)を曳航する。
【0035】
図3は、本発明の一実施形態によるシステム20を示す。システム20は、(第1の)震源22及び(第1の)ストリーマ23を曳航する第1の調査船21を含む。この船は、
図2の掘削事前調査船11に対応することができる。そのため、さらなる震源、ストリーマ及び/又はその図に示すような他の調査装置が設けられ得る。
【0036】
システム20は、さらなる(第2の)震源25を曳航する第2の船(「追跡ボート」)24をさらに含む。しかしながら、この第2の船24は、ストリーマを設けられる必要はなく、図示する実施形態ではそのように設けられていない。第2の船24は、第2の船24から著しい距離引き離されている第1の船21に追従する。その距離を決定する基準は、その距離が、第2の震源25がストリーマ23によって記録されるヘッドウェーブをもたらすのに十分遠くなければならない(後述を参照されたい)というものである。この距離は、水深及び海底における臨界角によって決まる。
【0037】
使用時、第1の震源22は、(図では放射線として示す)信号26を放出する。信号26は、海底27から反射される。その後、反射された波28は、ストリーマ23に沿って配置された音響検出器(図示せず)によって検出される。
【0038】
さらに、第2の震源25は、(図では放射線として示す)信号27を放出する。これらは、部分的に海底28によって反射されるが、ストリーマ23から第2の船まで距離があることにより、到達するのが非常に遅いため、いかなる有意な程度にも検出されない。しかしながら、音波27が、関連する入射臨界角で海底28に突き当たる場合(後述を参照されたい)、ヘッドウェーブ30は、幾分かの距離を海底に沿って伝播し、その後、戻り波31をもたらす。戻り波31は、海底から「漏れ」て、ストリーマ23の検出器によって検出される。
【0039】
2つの震源は、交互に作動され得るか(フリップフロップ)、又は同時に作動され得る。フリップフロップ作動の場合、2つの震源からの信号は、作動のタイミングに基づいて引き離すことができる。しかしながら、同時発射により、より密な震源間隔及び/又はより高い動作効率が可能になる。この場合、反射された波28からのデータ及びヘッドウェーブデータ31からのデータは、反対の傾きで記録される。そのため、周波数-波数(FK)領域におけるデータの分離が容易である。(ここで、傾きは、地震記象に記録された事象の傾きを指し、数学的には、傾きは、dt/dxである。)これは、
図4に見ることができる。
図4は、空間-時間領域(a)及び周波数-波数領域(b)を示す。x方向は、典型的には、ボートの船首方向である。変数(t,x)及び(f,k)の2つの対は、2次元フーリエ変換によって関連付けられる。波数は、波長に対して反比例する(すなわちk=2π/λ)。
【0040】
音響信号は、水中では縦波としてのみ伝播することができ、地中では縦「P波」及び横(せん断)「S波」の両方として伝播し得ることが周知である。また、波は、ある一定の「臨界」角よりも小さい(垂線に対する)入射角で異なる媒質間の境界に突き当たる場合、ある程度反射されることも周知である。しかしながら、波は、臨界角で突き当たると、その境界に沿って伝播する。地震調査の状況では、こうした波は、海底に沿って伝播し、ヘッドウェーブと称される(
図3の参照番号30を参照されたい)。
【0041】
臨界角は、2つの媒質における波伝播速度の比によって決まる。P波及びS波は、異なる伝播速度を有するので、水中でS波速度が地震波伝播速度よりも高いとすれば、2つのヘッドウェーブが伝播することがあり得る。これらは、震源からの音波の異なる入射角に対応する。
【0042】
図3を参照すると、第1の震源22は、音波26を放出する。音波26は、小さい入射角で海底30に突き当たり、ストリーマ23に戻るように反射される。対照的に、震源25によって放出される音波は、それぞれの臨界角で海底30に突き当たり、P波及びS波ヘッドウェーブ30の伝播をもたらす。このヘッドウェーブ30は、海底に沿って移動し、その後、ストリーマ23によって検出される音波31をもたらす。
【0043】
S波の検出は、任意選択的である。所与の第2の震源25に対して、(より深い水深で必要とされるように)船間の距離が過度に大きくなると、第1のヘッドウェーブは、ストリーマ23において検出されないほど、非常に弱くなる。
【0044】
反射係数は、それぞれの媒質における密度及び波の伝播速度によって決まり、臨界角は、それぞれの伝播速度のみによって決まる。そのため、反射係数が反射地震データから推定され、且つP波(及び任意選択的にS波)速度が第1のヘッドウェーブから計算される場合、上記密度を計算できることになる。海底の金属硫化物鉱床は、通常、より低いP波速度及びS波速度のアノマリーとして現れ、並びに多くの場合に(金属含有量に応じて)背景の玄武岩岩質よりも高い密度として現れる。したがって、上述したパラメータを使用して、(金属)硫化物の鉱床の存在を予測することができる。典型的な応用では、それらパラメータは、マルチジオフィジカルインバージョンで使用される。
【0045】
上述したように、海底硫化物蓄積物は、主に、薄い堆積物の被覆がある主に玄武岩の岩質内に位置する。その結果、海底の海水間の音響コントラストが大きくなる。ここで、関連パラメータを決定するための本発明の使用についてより詳細に考察する。
【0046】
海水の地震P波速度及び密度は、およそ以下の通りである。
V0=1480m/s
ρ0=1030kg/m3
【0047】
せん断波は、水中を伝播することができないので、水のS波速度は、ゼロである。玄武岩の地震P波速度及びS波速度並びに密度は、およそ以下の通りである。
vP=6000m/s
vS=3000m/s
ρ=2900kg/m3
【0048】
海底の垂直入射P波反射係数は、およそ以下の通りである。
【数1】
【0049】
第1のヘッドウェーブは、以下の式によって与えられる臨界角θ
C1で励起される。
【数2】
【0050】
第1のヘッドウェーブの傾き(上述した定義を参照されたい)は、海底のP波速度に反比例する。v
S>v
0である場合、第2のヘッドウェーブは、以下の式によって与えられる臨界角θ
C2で励起される。
【数3】
【0051】
第2のヘッドウェーブの傾きは、海底のS波速度に反比例する。
【0052】
P波速度及びS波速度の逆数1/vP及び1/vSは、それぞれのヘッドウェーブの傾きから計算することができる。R0、すなわち垂直入射反射係数は、標準的な地震処理からの小アングル重合画像におよそ等しいため、反射データから推定することができる。この情報を使用して、海底の関連部分の密度のための値を計算することができる。したがって、この値の玄武岩に対する値ρとの比較を使用して、(金属)硫化物が存在する可能性があるか否かの兆候を提供することができる。
【0053】
シミュレーション
本実施形態の使用を、合成モデリング研究を使用して分析した。ブラックスモーカーの「オルガンパイプ」は、非常に小さく、DX=DZ=5mの選択された格子間隔の有限差分格子で正確に表すことができない。簡単にするために、且つ格子回折を回避するために、海底は、水平であった。水深は、1500mである。合成地震データは、2D弾性有限差分モデリングによって取得した。2D地震測線は、10mの震源間隔及び5m受振器間隔で1200mの受振器測線でシミュレートした。これにより、2.5mのCDP間隔及び60のCMP重合数が得られる。同時の震源は、第1の震源が受振器測線の正面に位置し、第2の震源が、第1の震源の4km後方に、且つオフセット距離が遠い受振器位置の2.8km後方に位置するようにシミュレートした。震源の時間関数は、掘削事前調査データで典型的な範囲である230Hzの最大周波数でのリッカーウェーブレットであった。
【0054】
異なる時間ステップで記録されたスナップショットは、海底及びシミュレートされた目標金属硫化物に突き当たる直前及び直後の波動場を示す(
図5)。スナップショットは、海底からの単純なP波反射と、海底下の変換されたS波を含む、目標からの回折とを示す。波動場が海底下を伝播するときの波長の増大を観察することができる。
【0055】
水面に到達する地震波動場は、反射されたP波及び回折したP波と、空間-時間(XT)領域における線形傾きを有する2つの異なるヘッドウェーブとからなる(
図6)。プロットにおける赤色の矩形は、上述したように、2つの同時震源での発射記録に対して、1200m受振器測線において記録される波動場の部分を示す。
【0056】
地震処理及びイメージングは、以下のように、SeisSpace処理ソフトウェアにおける単純な処理シーケンスを使用して実施した。
1.CMPソート及びNMO補正
2.CMP重合
3.重合後のキルヒホッフ時間マイグレーション
4.バーティカルストレッチ法による深度変換
【0057】
地震画像は、海底及び目標を示す。目標の内部構造は、部分的にのみ解像されている(
図7)。画像の画質は、より高性能のイメージング、例えば重合前深度マイグレーションにより向上させることができる。しかしながら、最大周波数及び目標のサイズによって与えられる解像度に基本がある。