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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】活性ガス生成装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/24 20060101AFI20230605BHJP
   B01J 19/08 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
H05H1/24
B01J19/08 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022548153
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2021045536
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】有田 廉
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 謙資
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/055678(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/229873(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/24
B01J 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電空間に供給された原料ガスを活性化して得られる活性ガスを生成する活性ガス生成装置であって、
第1の放電場形成面を有する第1の電極構成部と
第2の放電場形成面を有する第2の電極構成部とを備え、前記第1及び第2の電極構成部は前記第1及び第2の放電場形成面が対向するように配置され、
前記第1の電極構成部は、第1の金属電極と電極用誘電体膜との積層構造を有し、前記第1の電極構成部において、前記電極用誘電体膜側の露出面が前記第1の放電場形成面となり、
前記第2の電極構成部は、第2の金属電極と放電場調整膜との積層構造を有し、前記第2の電極構成部において前記放電場調整膜側の露出面が前記第2の放電場形成面となり、
前記第1及び第2の金属電極のうち一方の金属電極に交流電圧が印加され、他方の金属電極が基準電位に設定され、
前記電極用誘電体膜と前記放電場調整膜との間が電極対向空間として規定され、
前記電極対向空間内において、前記第1の金属電極と前記第2の金属電極とが平面視して重複する領域が前記放電空間となり、前記放電空間における前記第1及び第2の放電場形成面間の距離がギャップ長として規定され、
前記放電場調整膜は、前記放電空間内において前記ギャップ長が短くなる方向に突出した少なくとも一つの突出部を有し、
前記放電場調整膜の前記少なくとも一つの突出部はそれぞれ前記第2の金属電極側に空洞領域を有することを特徴とする、
活性ガス生成装置。
【請求項2】
請求項1記載の活性ガス生成装置であって、
前記電極対向空間は平面視して矩形状であり、
前記電極対向空間は互いに対向する第1及び第2の側面を有し、前記第1及び第2の側面の間に前記放電空間が配置され、
前記原料ガスは前記電極対向空間の前記第1の側面から供給され、
前記活性ガスは前記電極対向空間の前記第2の側面から噴出され、前記第1の側面から前記第2の側面に向かう方向がガス流通方向として規定され、
前記少なくとも一つの突出部は複数の突出部を含み、
前記複数の突出部は前記ガス流通方向に沿って互いに離散して形成される、
活性ガス生成装置。
【請求項3】
請求項1記載の活性ガス生成装置であって、
前記第1及び第2の電極構成部のうち、上方に位置する電極構成部が上方電極構成部として規定され、下方に位置する電極構成部が下方電極構成部として規定され、
前記第1及び第2の金属電極のうち、上方に位置する金属電極が上方金属電極として規定され、下方に位置する金属電極が下方金属電極として規定され、
前記電極用誘電体膜及び前記放電場調整膜のうち、上方に位置する膜が上方形成膜として規定され、下方に位置する膜が下方形成膜として規定され、
前記上方金属電極に交流電圧が印加され、前記下方金属電極が基準電位に設定され、
前記電極対向空間は外周面を有し、
前記下方形成膜は少なくとも一つのガス噴出孔を有し、前記下方金属電極は開口領域を有し、前記少なくとも一つのガス噴出孔及び前記開口領域は平面視して重複し、
前記原料ガスは前記電極対向空間の前記外周面から供給され、
前記活性ガスは前記少なくとも一つのガス噴出孔及び前記開口領域を介して前記下方金属電極の下方に噴出され、前記外周面から前記少なくとも一つのガス噴出孔に至る方向がガス流通方向として規定され、
前記少なくとも一つの突出部は複数の突出部を含み、
前記複数の突出部は前記ガス流通方向に沿って互いに離散して形成される、
活性ガス生成装置。
【請求項4】
請求項3記載の活性ガス生成装置であって、
前記第1の電極構成部は前記上方電極構成部であり、前記第2の電極構成部は前記下方電極構成部であり、
前記第1の金属電極は前記上方金属電極であり、前記第2の金属電極は前記下方金属電極であり、
前記電極用誘電体膜は前記上方形成膜であり、前記放電場調整膜は前記下方形成膜であり、
前記電極用誘電体膜及び前記放電場調整膜は平面視して円状であり、前記電極対向空間は平面視して円状であり、
前記少なくとも一つのガス噴出孔は前記放電場調整膜の中心位置に形成される中央ガス噴出孔を含み、
前記原料ガスは前記電極対向空間の前記外周面から供給され、前記活性ガスは前記中央ガス噴出孔及び前記開口領域を介して前記第2の金属電極の下方に噴出される、
活性ガス生成装置。
【請求項5】
請求項3記載の活性ガス生成装置であって、
前記第1の電極構成部は前記上方電極構成部であり、前記第2の電極構成部は前記下方電極構成部であり、
前記第1の金属電極は前記上方金属電極であり、前記第2の金属電極は前記下方金属電極であり、
前記電極用誘電体膜は前記上方形成膜であり、前記放電場調整膜は前記下方形成膜であり、
前記電極用誘電体膜及び前記放電場調整膜は平面視して矩形状であり、前記電極対向空間は平面視して矩形状であり、
前記少なくとも一つのガス噴出孔は複数のガス噴出孔を含み、前記複数のガス噴出孔は噴出孔形成方向に沿って設けられ、
前記電極対向空間は互いに対向する第1及び第2の側面を有し、前記第1の側面と前記複数のガス噴出孔との間及び前記第2の側面と前記複数のガス噴出孔との間それぞれに前記放電空間が配置され、前記外周面は前記第1及び第2の側面を含み、
前記第1及び第2の側面が対向する方向が側面対向方向として規定され、前記噴出孔形成方向は前記側面対向方向と交差する方向であり、
前記原料ガスは前記電極対向空間の前記第1及び第2の側面それぞれから供給され、前記活性ガスは前記複数のガス噴出孔及び前記開口領域を介して前記第2の金属電極の下方に噴出され、
前記放電空間内において、前記第1の側面から前記複数のガス噴出孔に至る前記ガス流通方向に沿った第1のガス流通距離と、前記第2の側面から前記複数のガス噴出孔に至る前記ガス流通方向に沿った第2のガス流通距離とが等しい、
活性ガス生成装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の活性ガス生成装置であって、
前記第1の電極構成部は、前記電極用誘電体膜の前記第1の金属電極の形成面上に設けられる補助導電膜をさらに含み、前記補助導電膜は前記第1の金属電極と電気的に独立して設けられ、かつ、前記基準電位に設定され、
前記補助導電膜は前記少なくとも一つのガス噴出孔と平面視して重複していることを特徴とする、
活性ガス生成装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のうち、いずれか1項に記載の活性ガス生成装置であって、
前記放電場調整膜は、絶縁体を構成材料とした放電場調整用絶縁膜と導電性を有する放電場調整用導電膜との積層構造であり、前記放電場調整用導電膜と前記第2の金属電極とが接触関係を有する、
活性ガス生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、平行平板方式の電極構造を有し、誘電体バリア放電を利用して活性ガスを生成する活性ガス生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平行平板方式の電極構造を有し、誘電体バリア放電を採用した従来の活性ガス生成装置は、互いに対向する導電性の金属電極と誘電体膜との空隙、または、互いに対向する誘電体膜同士の空隙が放電空間となる。
【0003】
従来の活性ガス生成装置は、放電空間に誘電体バリア放電を発生させ、この放電空間によって投入された原料ガスを活性化して活性ガスを生成するという、平行平板方式誘電体バリア放電を採用している。
【0004】
平行平板方式誘電体バリア放電を採用した従来の活性ガス生成装置として例えば特許文献1に開示された活性ガス生成装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6873588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の活性ガス生成装置において、放電空間の体積が小さいと、放電空間における原料ガスの滞在時間が短くなり、活性ガスの生成濃度(ラジカル濃度)が低下する。
【0007】
図21は放電空間の一例を示す説明図である。図21では円柱形状の放電空間80が示されている。図21にXYZ直交座標系を記している。
【0008】
放電空間を大きくする方法として、以下の第1及び第2の方法が考えられる。第1の方法は、放電面積を大きくする方法であり、第2の方法はギャップ長を大きくする方法である。「ギャップ長」として、対向する金属電極と誘電体膜との距離、または対向する誘電体膜同士の距離が該当する。
【0009】
図21で示した円柱形状の放電空間80の場合、放電空間80における半径rの底面の面積を大きくすることが第1の方法となる。一方、放電空間80の高さd(ギャップ長d)を高くすることが第2の方法となる。
【0010】
誘電体バリア放電において、ギャップ長dは数mm程度であるため、一般に{r>>d}の関係となる。そのため、第1の方法を採用した場合、放電面積を大きくすると装置自体が大型化してしまう第1の問題点があった。
【0011】
例えば、放電空間80に関し{r=200mm、d=1mm}の時、放電空間80の体積を4倍とするために第1の方法を採用した場合には、半径rを2倍する必要があり、半径方向に200mm、装置の形成面積を大きくする必要があった。
【0012】
一方、第2の方法を採用した場合は、ギャップ長dを4mmとするだけであるため、装置は高さ方向へ3mm高くするだけで済む。すなわち、第2の方法であれば装置の形成面積の増加はなく、放電空間80の変動量を比較的小さくすることができる。
【0013】
しかしながら、第2の方法を採用した場合、ギャップ長dの増加にともない、必要な印加電圧を増加させる必要が生じる。印加電圧の増加は、放電空間80以外の箇所、例えば、印加電圧の導入端子表面において沿面放電が発生する等の第2の問題点を生じさせる。
【0014】
一方、特許文献1で開示された活性ガス生成装置は、放電空間の近傍に意図的に凸部を設けている。しかし、この凸部は放電空間ではない領域に設けられており、放電空間に凸部は存在していない。このように、特許文献1で開示された活性ガス生成装置において、放電空間は従来と同様、ギャップ長dが一定の構造となっている。
【0015】
本開示では、上記のような問題点を解決し、必要とする印加電圧を増加させることなく放電空間の体積増加を図った活性ガス生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本開示の活性ガス生成装置は、放電空間に供給された原料ガスを活性化して得られる活性ガスを生成する活性ガス生成装置であって、第1の放電場形成面を有する第1の電極構成部と第2の放電場形成面を有する第2の電極構成部とを備え、前記第1及び第2の電極構成部は前記第1及び第2の放電場形成面が対向するように配置され、前記第1の電極構成部は、第1の金属電極と電極用誘電体膜との積層構造を有し、前記第1の電極構成部において、前記電極用誘電体膜側の露出面が前記第1の放電場形成面となり、前記第2の電極構成部は、第2の金属電極と放電場調整膜との積層構造を有し、前記第2の電極構成部において前記放電場調整膜側の露出面が前記第2の放電場形成面となり、前記第1及び第2の金属電極のうち一方の金属電極に交流電圧が印加され、他方の金属電極が基準電位に設定され、前記電極用誘電体膜と前記放電場調整膜との間が電極対向空間として規定され、前記電極対向空間内において、前記第1の金属電極と前記第2の金属電極とが平面視して重複する領域が前記放電空間となり、前記放電空間における前記第1及び第2の放電場形成面間の距離がギャップ長として規定され、前記放電場調整膜は、前記放電空間内において前記ギャップ長が短くなる方向に突出した少なくとも一つの突出部を有し、前記放電場調整膜の前記少なくとも一つの突出部はそれぞれ前記第2の金属電極側に空洞領域を有することを特徴とする。

【発明の効果】
【0017】
本開示の活性ガス生成装置において、放電場調整膜はギャップ長が短くなる方向に突出した少なくとも一つの突出部を有しているため、上記少なくとも一つの突出部と電極用誘電体膜との間に、ギャップ長が比較的短い短ギャップ長の特殊放電空間を設けることができる。
【0018】
本開示の活性ガス生成装置は、放電空間の一部に特殊放電空間を設けることにより、ギャップ長が比較的長い長ギャップ長のみの放電空間に比べて、誘電体バリア放電が生じやすくなる。
【0019】
その結果、本開示の活性ガス生成装置は、従来と比較して低い印加電圧で誘電体バリア放電を発生させることができる低電圧放電発生機能を備えることができる。
【0020】
したがって、本開示の活性ガス生成装置は、上記低電圧放電発生機能を有する分、必要とする印加電圧を増加させることなく放電空間の体積増加を図り、活性ガスの生成濃度を向上させることができる。
【0021】
本開示の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施の形態1である活性ガス生成装置の基本断面構造を示す断面図である。
図2図1の着目領域の詳細断面構造を示す断面図である。
図3図1で示した高電圧印加電極部を上方から視た平面構造を示す平面図である。
図4図1で示した接地電位電極部を上方から視た平面構造を示す平面図である。
図5】実施の形態1の活性ガス生成装置を上方から視た平面構造を示す平面図である。
図6図5のB-B断面の断面構造を示す断面図である。
図7】実施の形態1の変形例の基本断面構造を示す断面図である。
図8図7の着目領域の詳細断面構造を示す断面図である。
図9】実施の形態2である活性ガス生成装置の基本断面構造を示す断面図である。
図10図9の着目領域の詳細断面構造を示す断面図である。
図11】実施の形態2の第1の態様の高電圧印加電極部を上方から視た平面構造を示す平面図である。
図12】実施の形態2の第1の態様の接地電位電極部を上方から視た平面構造を示す平面図である。
図13】実施の形態2の第2の態様の高電圧印加電極部を上方から視た平面構造を示す平面図である。
図14】実施の形態2の第2の態様の接地電位電極部を上方から視た平面構造を示す平面図である。
図15】実施の形態2の変形例の基本断面構造を示す断面図である。
図16図15の着目領域の詳細断面構造を示す断面図である。
図17】実施の形態3である活性ガス生成装置の基本断面構造を示す断面図である。
図18図17の着目領域の詳細断面構造を示す断面図である。
図19】実施の形態3の変形例の基本断面構造を示す断面図である。
図20図19の着目領域の詳細断面構造を示す断面図である。
図21】放電空間の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施の形態1>
図1は本開示の実施の形態1である活性ガス生成装置51の基本断面構造を模式的に示す断面図である。図2図1の着目領域R30の詳細断面構造を示す断面図である。図1及び図2それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0024】
図1及び図2に示すように、実施の形態1の活性ガス生成装置51は、放電空間4に供給された原料ガス5を活性化して得られる活性ガス6を生成している。
【0025】
原料ガス5として、例えば、窒素ガス、酸素ガスまたは水素ガスが考えられる。また、原料ガス5として上述した3つのガスのいずれかにアルゴン等の希ガスを混合したガスも考えられる。さらに。原料ガス5としてアルゴンガス自体も考えられる。
【0026】
活性ガス生成装置51は高電圧印加電極部1、接地電位電極部2、及び交流電源100を主要構成要素として含んでいる。図1及び図2に示すように、下方電極構成部である接地電位電極部2の上方に上方電極構成部である高電圧印加電極部1が配置されている。
【0027】
図3は高電圧印加電極部1を上方(+Z方向)から視た平面構造を示す平面図である。図4は接地電位電極部2を上方から視た平面構造を示す平面図である。図5は活性ガス生成装置51を上方から視た平面構造を示す平面図である。図6図5のB-B断面の断面構造を示す断面図である。なお、図1図5のA-A断面の断面構造を示している。図3図6それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0028】
以下、図1図6を参照して、実施の形態1の活性ガス生成装置51の電極構造を中心に説明する。
【0029】
第1の電極構成部である高電圧印加電極部1は、電極用誘電体膜11及び金属電極10の積層構造を呈しており、電極用誘電体膜11の上面上に金属電極10が設けられる。金属電極10の構成材料は金属であり、電極用誘電体膜11の構成材料は絶縁性を有する誘電体である。
【0030】
金属電極10は第1の金属電極となり、かつ、上方金属電極となる。電極用誘電体膜11は上方形成膜となり、電極用誘電体膜11の下面が電極用誘電体膜11側の露出面となる。上方電極構成部である高電圧印加電極部1において、電極用誘電体膜11の下面が第1の放電場形成面となる。
【0031】
図3に示すように、金属電極10及び電極用誘電体膜11はそれぞれ平面視して矩形状(略正方形状)を呈している。電極用誘電体膜11は平面視して金属電極10の全てを含み、金属電極10より広い平面形状を有している。
【0032】
第2の電極構成部である接地電位電極部2は、放電場調整膜30及び金属電極20の積層構造を呈しており、放電場調整膜30の下面上に金属電極20が設けられる。金属電極20の構成材料は金属であり、放電場調整膜30の構成材料として、絶縁性を有する第1の構成材料あるいは導電性を有する第2の構成材料が考えられる。
【0033】
図4に示すように、金属電極20及び放電場調整膜30はそれぞれ平面視して矩形状(略正方形状)を呈している。放電場調整膜30は平面視して金属電極20の全てを含み、金属電極20より広い平面形状を有している。
【0034】
金属電極20が第2の金属電極となり、かつ、下方金属電極となる。接地電位電極部2において、放電場調整膜30の上面が放電場調整膜30側の露出面となる。放電場調整膜30の上面が第2の放電場形成面となる。
【0035】
したがって、高電圧印加電極部1及び接地電位電極部2は第1及び第2の放電場形成面が対向するように配置される。
【0036】
電極用誘電体膜11及び放電場調整膜30は平面視して同一サイズの矩形状を呈しており、図5に示すように、平面視して電極用誘電体膜11と放電場調整膜30とが合致するように配置される。
【0037】
第1及び第2の金属電極のうち一方の金属電極となる金属電極10に高周波電源である交流電源100から印加電圧として交流電圧が印加され、他方の金属電極となる金属電極20が基準電位となる接地電位に設定される。図5に示すように、金属電極20は平面視して金属電極10の全てを含み、金属電極10より少し広い平面形状を有している。
【0038】
高電圧印加電極部1の電極用誘電体膜11と接地電位電極部2の放電場調整膜30との間の空間が電極対向空間として規定される。この電極対向空間内において、金属電極10と金属電極20とが平面視して重複する領域が放電空間4となり、放電空間4における電極用誘電体膜11の下面(第1の放電場形成面)と放電場調整膜30の上面(第2の放電場形成面)との間の距離がギャップ長として規定される。なお、放電空間4内の圧力は1kPa~大気圧程度の圧力に設定される。
【0039】
図1に示すように、放電場調整膜30は、放電空間4内においてギャップ長が短くなるように、上方(+Z方向)に突出した複数の凸部30t(突出部)を有することを特徴としている。このように、放電場調整膜30は、少なくとも一つの突出部として複数の凸部30tを有している。
【0040】
ここで、放電場調整膜30において複数の凸部30tが形成されていない領域を「凹部領域」と称する。図6に示すように、凹部領域30fはY方向に延びて設けられる。同様に複数の凸部30tもそれぞれY方向に延びて設けられる。
【0041】
図2に示すように、放電空間4は部分放電空間41及び42を含んでいる。部分放電空間41は放電場調整膜30の凹部領域30fの表面と電極用誘電体膜11の下面との間の空間となり、部分放電空間42は放電場調整膜30の凸部30tの上面と電極用誘電体膜11の下面との間の空間となる。
【0042】
すなわち、部分放電空間41は複数の凸部30tが形成されない場合の通常放電空間と同じ長ギャップ長G1を有している。一方、部分放電空間42は長ギャップ長G1に比べて短い短ギャップ長G2を有する特殊放電空間となる。例えば、長ギャップ長G1として2mm程度の長さが考えられ、短ギャップ長G2として0.5mm程度の長さが考えられる。長ギャップ長G1及び短ギャップ長G2は0.1mm~1cmの範囲で適宜設定される。
【0043】
以下、長ギャップ長G1及び短ギャップ長G2の設定具体例を説明する。放電場調整膜30と電極用誘電体膜11とが同じ材質の場合を想定する。すなわち、電極用誘電体膜11及び放電場調整膜30の構成材料が共に絶縁性を有する第1の構成材料である場合を想定する。
【0044】
ここで、電極用誘電体膜11及び放電場調整膜30それぞれの比誘電率が“10”であり、膜厚がともに1mmとする。なお、放電場調整膜30に関しては凹部領域30fの膜厚が1mmとなっている。そして、部分放電空間41の長ギャップ長G1が2.5mm、部分放電空間42の短ギャップ長G2が0.5mmとする。したがって、凸部30tの膜厚は3mmとなる。
【0045】
このとき、部分放電空間41と部分放電空間42とはそれぞれ大気圧に保たれており、部分放電空間41及び42を満たす原料ガス5は、比誘電率が“1”のアルゴン(Ar)ガスであるとする。そして、金属電極10と金属電極20との間にかかる印加電圧が4000Vとする。
【0046】
上述した条件下で、部分放電空間41と部分放電空間42とにかかる電圧は、部分放電空間41においては3703V、部分放電空間42においては2222Vとなる。
【0047】
パッシェンの法則を用いると、部分放電空間41の絶縁破壊閾値電圧は4900Vとなり、部分放電空間42の絶縁破壊閾値電圧は1400Vとなる。なお、「絶縁破壊閾値電圧」は、誘電体バリア放電が発生するための印加電圧の閾値電圧値を示している。
【0048】
したがって、上述した長ギャップ長G1及び短ギャップ長G2の設定であれば、部分放電空間42にかかる電圧は絶縁破壊閾値電圧よりも大きくなるため、部分放電空間42内で放電現象が発生する。一方、部分放電空間41にかかる電圧は絶縁破壊閾値電圧よりも小さいが、後述する低電圧放電発生機能によって、部分放電空間41に隣接する部分放電空間42にて発生した荷電粒子や紫外線により部分放電空間41も放電が発生する。
【0049】
上述したように、電極用誘電体膜11及び放電場調整膜30は平面視して矩形状を呈しているため、電極対向空間は平面視して矩形状となる。
【0050】
電極対向空間は互いに対向する側面S1及びS2を有している。第1の側面となる側面S1が-X方向側にある側面であり、第2の側面となる側面S2が+方向側にある側面となる。したがって、側面S1及びS2間に放電空間4が設けられることになる。
【0051】
このような構成の実施の形態1の活性ガス生成装置51において、金属電極10に交流電源100から高電圧な印加電圧となる交流電圧を印加することにより、放電空間4内で誘電体バリア放電を発生させることができる。
【0052】
原料ガス5は電極対向空間の第1の側面となる側面S1から供給され、放電空間4を通過することにより活性化され活性ガス6となり、活性ガス6は電極対向空間の第2の側面となる側面S2から噴出される。活性ガス生成装置51において、側面S1から側面S2に向かう方向(+X方向)がガス流通方向として規定される。
【0053】
図1及び図4に示すように、複数の凸部30tはそれぞれ平面視してY方向を長手方向とした矩形状に設けられ、ガス流通方向に沿って互いに離散して設けられる。同様に複数の凹部領域30fはそれぞれ平面視してY方向を長手方向とした矩形状に設けられ、ガス流通方向に沿って互いに離散して設けられることになる。
【0054】
したがって、複数の凸部30tと複数の凹部領域30fがガス流通方向に沿って交互に形成されることにより、複数の部分放電空間42がガス流通方向に沿って互いに離散して設けられることになる。なお、複数の凸部30tと複数の凹部領域30fとの面積比は例えば1:1程度に設定される。
【0055】
なお、放電場調整膜30が導電性を有する第2の構成材料のみで形成される場合、金属電極20と一体化して形成しても良い。
【0056】
また。電極用誘電体膜11の下面及び放電場調整膜30の上面に機能性膜をスパッタや溶射等により別途成膜してもよい。機能性膜としては光触媒膜や光電子放出が起こり易いシリコン膜等が考えられる。電極用誘電体膜11の下面に機能性膜が形成される場合、機能性膜の表面が高電圧印加電極部1における電極用誘電体膜11側の露出面となる。同様に、放電場調整膜30の上面に機能性膜が形成される場合、機能性膜の表面が接地電位電極部2における放電場調整膜30側の露出面となる。
【0057】
(効果)
実施の形態1の活性ガス生成装置51において、放電場調整膜30はギャップ長が短くなる方向に突出した複数の凸部30tを有しているため、複数の凸部30tの上面と電極用誘電体膜11の下面との間に、ギャップ長が比較的短い短ギャップ長G2の部分放電空間42を特殊放電空間として設けることができる。
【0058】
実施の形態1の活性ガス生成装置51は、放電空間4の一部に複数の部分放電空間42を設けることにより、ギャップ長が比較的長い長ギャップ長G1のみの部分放電空間42を有さない従来の放電空間に比べて、誘電体バリア放電が生じやすくなる。
【0059】
その結果、実施の形態1の活性ガス生成装置51は、従来と比較して低い印加電圧で誘電体バリア放電を発生させることができる低電圧放電発生機能を備えることができる。
【0060】
したがって、実施の形態1の活性ガス生成装置51は、上記低電圧放電発生機能を有する分、必要とする印加電圧を増加させることなく放電空間4の体積増加を図り、活性ガス6の生成濃度を向上させることができる。
【0061】
以下、上述した低電圧放電発生機能について詳述する。放電空間4内においては、まず特殊放電空間である部分放電空間42において誘電体バリア放電が発生する。部分放電空間42における放電により、原料ガス5のイオンや電子等の荷電粒子が発生し、原料ガス5の流れとなるガス流通方向(+X方向)に沿って隣接する部分放電空間41へと流入する。
【0062】
また、部分放電空間42内の放電によって発生した紫外線等の光が、部分放電空間41に面する凹部領域30fの上面や電極用誘電体膜11の下面に照射されると、放電場調整膜30及び電極用誘電体膜11から光電子が放出され、部分放電空間41内に電子が供給される。部分放電空間41内にイオンや電子といった荷電粒子が供給されると、部分放電空間41の絶縁破壊閾値電圧が低下し、その結果、部分放電空間41内においても放電が生じる。これらの連鎖現象によって低電圧放電発生機能が発揮されることになる。
【0063】
なお、電極用誘電体膜11の下面や放電場調整膜30の上面に光触媒膜等の機能性膜が形成されている場合は、部分放電空間42内の放電によって発生した光は機能性膜に照射され、機能性膜から光電子が放出されることになる。
【0064】
このように、実施の形態1の活性ガス生成装置51は低電圧放電発生機能を発揮することができるため、比較的小さい印加電圧により、長ギャップ長G1を有する放電空間4内においても放電現象を発生させることができる。
【0065】
したがって、実施の形態1の活性ガス生成装置51は、長ギャップ長G1を長くして放電空間4の体積増加を図っても、上述した低電圧放電発生機能が働くため、必要とする印加電圧を低く抑えることができる。
【0066】
さらに、実施の形態1の活性ガス生成装置51は、電極対向空間の第1の側面となる側面S1から原料ガス5を供給し、第2の側面となる側面S2から活性ガス6を噴出するという比較的簡単な構造で、活性ガス6の生成濃度の向上を図ることができる。
【0067】
加えて、実施の形態1の活性ガス生成装置51において、複数の凸部30tはガス流通方向(+X方向)に沿って互いに離散して形成されるため、ガス流通方向に沿って各々が短ギャップ長の複数の部分放電空間42を設けることができる分、上記低電圧放電発生機能の向上を図ることができる。
【0068】
(変形例)
図7は本開示の実施の形態1の変形例である活性ガス生成装置51Xの基本断面構造を示す断面図である。図8図7の着目領域R31の詳細断面構造を示す断面図である。図7及び図8それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0069】
以下、図1図6で示した実施の形態1の活性ガス生成装置51と同様な構成部には同一符号を付して説明を適宜省略し、変形例の活性ガス生成装置51Xの特徴部分を中心に説明する。
【0070】
図7及び図8に示すように、変形例の活性ガス生成装置51Xは、活性ガス生成装置51の接地電位電極部2を接地電位電極部2Xに置き換え、接地電位電極部2X内において放電場調整膜30を放電場調整膜30Xに置き換えたことを特徴としている。
【0071】
第2の電極構成部である接地電位電極部2Xは、放電場調整膜30X及び金属電極20の積層構造を呈しており、放電場調整膜32の下面上に金属電極20が設けられる。
【0072】
放電場調整膜30Xは放電場調整用絶縁膜31と放電場調整用導電膜34との積層構造を含んでいる。放電場調整用絶縁膜31の構成材料は絶縁性を有する第1の構成材料であり、放電場調整用導電膜34の構成材料は導電性を有する第2の構成材料である。
【0073】
図7に示すように、接地電位電極部2Xにおいて、金属電極20上に放電場調整用導電膜34が設けられ、放電場調整用導電膜34上に放電場調整用絶縁膜31が設けられる。したがって、放電場調整用導電膜34が金属電極20と接触関係を有している。
【0074】
図7に示すように、放電場調整膜30Xは、放電空間4内においてギャップ長が短くなるように、上方(+Z方向)に突出した複数の凸部31t(突出部)を有することを特徴としている。このように、放電場調整膜30Xは、少なくとも一つの突出部として複数の凸部31tを有している。
【0075】
さらに、放電場調整膜30Xにおける複数の凸部31tはそれぞれ金属電極20側に空洞領域36を有している。
【0076】
図8に示すように、放電空間4は部分放電空間43及び44を含んでいる。部分放電空間43は放電場調整膜30Xの凹部領域31fの表面と電極用誘電体膜11の下面との間の空間となり、部分放電空間44は放電場調整膜30Xの凸部31tの上面と電極用誘電体膜11の下面との間の空間となる。
【0077】
すなわち、部分放電空間43は複数の凸部31tが形成されない場合の通常放電空間と同じ比較的長い長ギャップ長G3を有している。一方、部分放電空間44は長ギャップ長G3に比べ短い短ギャップ長G4を有する特殊放電空間となる。例えば、長ギャップ長G3として2mm程度の長さが考えられ、短ギャップ長G4として0.5mm程度の長さが考えられる。長ギャップ長G3及び短ギャップ長G4は0.1mm~1cmの範囲で適宜設定される。
【0078】
実施の形態1の変形例である活性ガス生成装置51Xは、活性ガス生成装置51と同様、放電場調整膜32Xはギャップ長が短くなる方向に突出した複数の凸部32tを有している。
【0079】
このため、変形例の活性ガス生成装置51Xは、活性ガス生成装置51と同様、必要とする印加電圧を増加させることなく放電空間4の体積増加を図り、活性ガス6の生成濃度を向上させることができる。
【0080】
さらに、変形例の活性ガス生成装置51Xは、放電場調整膜30Xの複数の凸部31tそれぞれが第2の金属電極となる金属電極20側に空洞領域36有する分、同一の印加電圧の印加時における特殊放電空間にかかる特殊放電電圧を高めることができる。
【0081】
以下、上記効果について説明する。活性ガス生成装置51の放電場調整膜30の構成材料が絶縁性を有する第1の構成材料である場合、凸部30tの膜厚は比較的厚くなる。凸部30tの膜厚増加に伴い部分放電空間42にかかる特殊放電電圧は低下する。
【0082】
一方、変形例の活性ガス生成装置51Xでは、放電場調整用絶縁膜31の凸部31tの膜厚を空洞領域36の形成分、薄くすることができる。凸部31tの膜厚の薄膜化に伴い部分放電空間44にかかる特殊放電電圧を上昇させることができる。
【0083】
したがって、交流電源100から同一の印加電圧が付与される際、変形例の部分放電空間44にかかる特殊放電電圧を、活性ガス生成装置51の部分放電空間42にかかる特殊放電電圧より高くすることができる。
【0084】
その結果、変形例の活性ガス生成装置51Xは、上述した低電圧放電発生機能をより一層高めることができる。
【0085】
変形例の活性ガス生成装置51Xは、放電場調整用絶縁膜31と放電場調整用導電膜34との積層構造を有する放電場調整膜30Xを用いることにより、凸部31tの膜厚の薄膜化することができ、上述した低電圧放電発生機能をより一層高めることができる。
【0086】
(拡張構成)
図1図8で示した実施の形態1(変形例を含む)では、高電圧印加電極部1が電極用誘電体膜11を有し、接地電位電極部2が放電場調整膜30(30X)を有する構造を示した。
【0087】
すなわち、電極用誘電体膜11を有する第1の電極構成部を上方電極構成部である高電圧印加電極部1に限定し、放電場調整膜30を有する第2の電極構成部を下方電極構成部である接地電位電極部2に限定していた。
【0088】
実施の形態1の上述した限定以外に電極用誘電体膜11と放電場調整膜30との上下関係を逆にした拡張構成が考えられる。すなわち、電極用誘電体膜11を有する第1の電極構成部を下方電極構成部である接地電位電極部2とし、放電場調整膜30を有する第2の電極構成部を上方電極構成部である高電圧印加電極部1とした拡張構成が考えられる。
【0089】
この拡張構成では、放電場調整膜30は、放電空間4内においてギャップ長が短くなるように、下方(-Z方向)に突出した複数の突出部を有することが特徴となる。このように、拡張構成では、少なくとも一つの突出部として下方に突出する複数の突出部を有している。
【0090】
上述した実施の形態1の拡散構成においても、活性ガス生成装置51及び活性ガス生成装置51Xと同様な効果を奏する。
【0091】
<実施の形態2>
図9は本開示の実施の形態2である活性ガス生成装置52の基本断面構造を示す断面図である。図10図9の着目領域R32の詳細断面構造を示す断面図である。図9及び図10それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0092】
以下、実施の形態1の活性ガス生成装置51と同様な構成部は同一符号を付して説明を適宜省略し、実施の形態2の特徴箇所を中心に説明する。
【0093】
図9及び図10に示すように、実施の形態2の活性ガス生成装置52の基本構造は、放電空間4の外周面から供給された原料ガス5を活性化して得られる活性ガス6を生成している。
【0094】
活性ガス生成装置52は高電圧印加電極部1B、接地電位電極部2B、及び交流電源100を主要構成要素として含んでいる。図9及び図10に示すように、下方電極構成部である接地電位電極部2Bの上方に上方電極構成部である高電圧印加電極部1Bが配置されている。
【0095】
第1の電極構成部である高電圧印加電極部1Bは、電極用誘電体膜13及び金属電極12の積層構造を呈しており、電極用誘電体膜13の上面上に金属電極12が設けられる。金属電極12の構成材料は金属であり、電極用誘電体膜13の構成材料は絶縁性を有する誘電体である。
【0096】
金属電極12が第1の金属電極、かつ、上方金属電極となり、電極用誘電体膜13が上方形成膜となる。高電圧印加電極部1Bにおいて、電極用誘電体膜13の下面は電極用誘電体膜13側の露出面となる。電極用誘電体膜13下面が第1の放電場形成面となる。金属電極12は中央部に開口部18を有している。
【0097】
第2の電極構成部であり、かつ、下方電極構成部である接地電位電極部2Bは、放電場調整膜32及び金属電極22の積層構造を呈している。下方形成膜となる放電場調整膜32の下面上に金属電極22が設けられる。金属電極22の構成材料は金属であり、放電場調整膜32の構成材料として、絶縁性を有する第1の構成材料あるいは導電性を有する第2の構成材料が考えられる。
【0098】
金属電極22が第2の金属電極となり、かつ、下方金属電極となる。放電場調整膜320は下方形成膜となり、接地電位電極部2Bにおいて、放電場調整膜32の上面が放電場調整膜32側の露出面となる。放電場調整膜32の下面が第2の放電場形成面となる。
【0099】
したがって、高電圧印加電極部1B及び接地電位電極部2Bは第1及び第2の放電場形成面が対向するように配置される。
【0100】
第1及び第2の金属電極のうち一方の金属電極となる金属電極12に交流電源100から印加電圧として交流電圧が印加され、他方の金属電極となる金属電極22が基準電位となる接地電位に設定される。
【0101】
高電圧印加電極部1Bの電極用誘電体膜13と接地電位電極部2Bの放電場調整膜32との間の空間が電極対向空間として規定される。この電極対向空間内において、金属電極12と金属電極22とが平面視して重複する領域が放電空間4となり、放電空間4における電極用誘電体膜13の下面(第1の放電場形成面)と放電場調整膜32の上面(第2の放電場形成面)との間の距離がギャップ長として規定される。なお、放電空間4内の圧力は1kPa~大気圧程度の圧力に設定される。
【0102】
図9に示すように、放電場調整膜32は、放電空間4内においてギャップ長が短くなるように、上方(+Z方向)に突出した複数の凸部32t(突出部)を有することを特徴としている。このように、放電場調整膜32は、少なくとも一つの突出部として複数の凸部32tを有している。
【0103】
一方、凹部領域32fはY方向に延びて設けられる。同様に複数の凸部32tもそれぞれY方向に延びて設けられる。
【0104】
さらに、放電場調整膜32は中央部にガス噴出孔38を有しており、金属電極22は中央に開口領域28を有している。少なくとも一つのガス噴出孔となるガス噴出孔38は、放電場調整膜32を貫通して設けられる。
【0105】
開口領域28は平面視してガス噴出孔38を含み、ガス噴出孔38より広い平面形状を有している。また、金属電極12の開口部18は平面視してガス噴出孔38及び開口領域28を含み、ガス噴出孔38より広い平面形状を有している。したがって、金属電極14はガス噴出孔38及び開口領域28と平面視して重複することはない。
【0106】
図10に示すように、放電空間4は部分放電空間41及び42を含んでいる。部分放電空間41は放電場調整膜32の凹部領域32fの表面と電極用誘電体膜13の下面との間の空間となり、部分放電空間42は放電場調整膜32の凸部32tの上面と電極用誘電体膜13の下面との間の空間となる。
【0107】
すなわち、部分放電空間41は複数の凸部32tが形成されない場合の通常放電空間と同じ比較的長い長ギャップ長G1を有している。一方、部分放電空間42は長ギャップ長G1に比べ短い短ギャップ長G2を有する特殊放電空間となる。
【0108】
なお、放電場調整膜32が導電性を有する第2の構成材料のみで形成される場合、金属電極22と一体化して形成しても良い。
【0109】
また、電極用誘電体膜13の下面及び放電場調整膜32の上面に機能性膜をスパッタや溶射等により別途成膜してもよい。電極用誘電体膜13の下面に機能性膜が形成される場合、機能性膜の表面が高電圧印加電極部1Bにおける電極用誘電体膜13側の露出面となる。同様に、放電場調整膜32の上面に機能性膜が形成される場合、機能性膜の表面が接地電位電極部2Bにおける放電場調整膜32側の露出面となる。
【0110】
図9及び図10で示す基本構造において、原料ガス5は電極対向空間の外周面から供給され、放電空間4を通過することにより活性化され活性ガス6となる。活性ガス6はガス噴出孔38及び開口領域28を介して接地電位電極部2Bにおける金属電極22の下方に噴出される。
【0111】
活性ガス生成装置52において、電極対向空間の外周面からガス噴出孔38に向かう方向がガス流通方向として規定される。複数の凸部32tはガス流通方向に沿って互いに離散して形成される。
【0112】
(第1の態様)
高電圧印加電極部1Bとして高電圧印加電極部1B1を採用し、接地電位電極部2Bとして接地電位電極部2B1を採用したのが、実施の形態2の第1の態様である。
【0113】
図11は第1の態様の高電圧印加電極部1B1を上方(+Z方向)から視た平面構造を示す平面図である。図12は第1の態様の接地電位電極部2B1を上方から視た平面構造を示す平面図である。図11及び図12それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0114】
以下、図9図12を参照して、実施の形態2の活性ガス生成装置52の第1の態様の電極構造を説明する。なお、図11及び図12それぞれのC-C断面が図9で示す基本構造の断面構造となる。
【0115】
図11に示すように、高電圧印加電極部1B1は、金属電極12として金属電極121を用い、電極用誘電体膜13として電極用誘電体膜131を用いている。そして、金属電極121は開口部18として開口部181を有している。
【0116】
金属電極121及び電極用誘電体膜131はそれぞれ平面視して円状を呈している。電極用誘電体膜131は平面視して金属電極121の全てを含み、金属電極121より広い平面形状を有している。図11に示すように、金属電極121は中心部に円状の開口部181を有している。
【0117】
図12に示すように、接地電位電極部2B1は、金属電極22として金属電極221を用い、放電場調整膜32として放電場調整膜321を用いている。そして、金属電極221は開口領域28として開口領域281を有しており、放電場調整膜321はガス噴出孔38としてガス噴出孔381を有している。
【0118】
金属電極221及び放電場調整膜321はそれぞれ平面視して円状を呈している。放電場調整膜321は平面視して金属電極221の全てを含み、金属電極221より広い平面形状を有している。
【0119】
高電圧印加電極部1B1の電極用誘電体膜131と接地電位電極部2B1の放電場調整膜321とは平面視して同一サイズの円状を呈しており、平面視して電極用誘電体膜131と放電場調整膜321とが合致するように配置される。
【0120】
上述したように、電極用誘電体膜131及び放電場調整膜321は平面視して円状を呈しているため、電極対向空間は平面視して円状となる。
【0121】
図12に示すように、平面視して円状の放電場調整膜321は中心位置にガス噴出孔381(中央ガス噴出孔)を有しており、金属電極221は中央に開口領域281を有している。開口領域281は平面視してガス噴出孔381を含み、ガス噴出孔381より広い形状を有している。
【0122】
また、図11で示した開口部181は平面視して開口領域281及びガス噴出孔381を含み、開口領域281及びガス噴出孔381より広い形状を有している。したがって、金属電極121は平面視して開口領域281及びガス噴出孔381と重複することはない。
【0123】
電極対向空間は側面に円周状の外周面を有している。したがって、第1の態様では円周状の外周面内に放電空間4が設けられることになる。
【0124】
このような構成の実施の形態2の活性ガス生成装置52の第1の態様において、金属電極121に交流電源100から高電圧な印加電圧となる交流電圧を印加することにより、放電空間4内で誘電体バリア放電を発生させることができる。
【0125】
原料ガス5は電極対向空間の外周面全体から供給され、放電空間4を通過することにより活性化され活性ガス6となる。活性ガス6はガス噴出孔381及び開口領域281を介して接地電位電極部2B1における金属電極221の下方に噴出される。活性ガス生成装置52の第1の態様において、電極対向空間の外周面全体からガス噴出孔381に向かう方向がガス流通方向として規定される。すなわち、ガス流通方向は、円状の電極対向空間においてガス噴出孔381に向かう半径方向となる。
【0126】
図12に示すように、複数の凸部32tはそれぞれ円環状に設けられ、ガス流通方向に沿って互いに離散して設けられる。したがって、複数の凸部32tの円環の大きさ(径)はガス噴出孔381に近づくに従い小さくなる。
【0127】
したがって、放電場調整膜321において、複数の凸部32tと複数の凹部領域32fとがガス流通方向に沿って交互に設けられることにより、複数の部分放電空間42がガス流通方向に沿って互いに離散して設けられることになる。複数の凸部32tと複数の凹部領域32fとの面積比は例えば1:1程度に設定される。
【0128】
(第2の態様)
高電圧印加電極部1Bとして高電圧印加電極部1B2を採用し、接地電位電極部2Bとして接地電位電極部2B2を採用したのが、実施の形態2の第2の態様である。
【0129】
図13は第2の態様の高電圧印加電極部1B2を上方(+Z方向)から視た平面構造を示す平面図である。図14は第2の態様の接地電位電極部2B2を上方から視た平面構造を示す平面図である。図13及び図14それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0130】
以下、図9図10図13及び図14を参照して、実施の形態2の活性ガス生成装置52の第2の態様の電極構造を説明する。なお、図13及び図14それぞれのD-D断面が図9で示す断面構造となる。
【0131】
図13に示すように、高電圧印加電極部1B2は、金属電極12として一対の金属電極122を用い、電極用誘電体膜13として電極用誘電体膜132を用いている。そして、一対の金属電極122は開口部18として開口部182を有している。
【0132】
一対の金属電極122は互いに離散して設けられており、一対の金属電極122,122間の金属電極122上の領域が開口部182となる。開口部182はY方向に延びて設けられる。
【0133】
一対の金属電極122はそれぞれ平面視して矩形状を呈している。電極用誘電体膜132は平面視して矩形状(略正方形状)を呈している。電極用誘電体膜132は平面視して一対の金属電極122の全てを含み、一対の金属電極122より広い平面形状を有している。
【0134】
図14に示すように、接地電位電極部2B2は、金属電極22として一対の金属電極222を用い、放電場調整膜32として放電場調整膜322を用いている。
【0135】
そして、金属電極222は開口領域28として開口領域282を有しており、一対の金属電極222,222間に開口領域282は設けられる。開口領域282はY方向に延びて形成される。
【0136】
放電場調整膜322はガス噴出孔38として複数のガス噴出孔381を有している。複数のガス噴出孔382はY方向に沿って互いに離散して設けられる。Y方向が噴出孔形成方向となる。
【0137】
一対の金属電極222はそれぞれ平面視して矩形状を呈している。放電場調整膜322は平面視して矩形状(正方形状)を呈している。放電場調整膜322は平面視して一対の金属電極222の全てを含み、一対の金属電極222より広い平面形状を有している。
【0138】
高電圧印加電極部1B2の電極用誘電体膜132と接地電位電極部2B2の放電場調整膜322とは平面視して同一サイズの矩形状を呈しており、平面視して電極用誘電体膜132と放電場調整膜322とが合致するように配置される。
【0139】
上述したように、電極用誘電体膜132及び放電場調整膜322は平面視して矩形状を呈しているため、電極対向空間は平面視して矩形状となる。
【0140】
図14に示すように、放電場調整膜322は中央に複数のガス噴出孔381を有しており、金属電極222は中央に開口領域282を有している。開口領域282は平面視して複数のガス噴出孔381の全てを含み、複数のガス噴出孔381より広い形状を有している。
【0141】
また、図13で示した開口部182は平面視して開口領域282及び複数のガス噴出孔381を含み、開口領域282及び複数のガス噴出孔381より広い形状を有している。したがって、一対の金属電極122が開口領域282及び複数のガス噴出孔381と平面視して重複することはない。
【0142】
電極対向空間は、外周面の一部として互いに対向する側面S1及びS2を有している。第1の側面となる側面S1は-X方向側にある側面であり、第2の側面となる側面S2は+方向側にある側面となる。したがって、側面S1及びS2間に放電空間4が設けられることになる。
【0143】
ここで、側面S1及びS2が対向するX方向が側面対向方向として規定される。したがって、側面形成方向(X方向)は噴出孔形成方向(Y方向)と直角に交差する方向となる。
【0144】
このような構成の実施の形態2の活性ガス生成装置52の第2の態様において、一対の金属電極122に交流電源100から交流電圧を印加することにより、放電空間4内で誘電体バリア放電を発生させることができる。
【0145】
図14に示すように、原料ガス5は電極対向空間の側面S1及びS2それぞれから供給され、放電空間4を通過することにより活性化され活性ガス6となる。活性ガス6は複数のガス噴出孔381及び開口領域282を介して接地電位電極部2B2における金属電極222の下方に噴出される。活性ガス生成装置52の第2の態様において、電極対向空間の側面S1及びS2それぞれから複数のガス噴出孔381に向かう方向(±X方向)がガス流通方向として規定される。
【0146】
図14に示すように、複数の凸部32tはそれぞれ平面視してY方向を長手方向とした矩形状に設けられ、ガス流通方向(X方向)に沿って互いに離散して設けられる。
【0147】
したがって、放電場調整膜322において、複数の凸部32tと複数の凹部領域32fとがガス流通方向に沿って交互に設けられることにより、複数の部分放電空間42がガス流通方向に沿って互いに離散して設けられることになる。複数の凸部32tと複数の凹部領域32fとの面積比は例えば1:1程度に設定される。
【0148】
図14に示すように、放電空間4内において、第1の側面となる側面S1からガス噴出孔381に至るガス流通方向(+X方向)に沿った第1のガス流通距離がガス流通距離D1となる。同様に、放電空間4において、第2の側面となる側面S2からガス噴出孔381に至るガス流通方向(-X方向)に沿った第2のガス流通距離がガス流通距離D2となる。
【0149】
実施の形態2の第2の態様では、ガス流通距離D1とガス流通距離D2とが等しくなるように設定されている。
【0150】
(効果)
実施の形態2の活性ガス生成装置52(第1及び第2の態様)において、放電場調整膜32はギャップ長が短くなる方向に突出した複数の凸部32tを有している。
【0151】
このため、実施の形態2の活性ガス生成装置52は、実施の形態1と同様、必要とする印加電圧を増加させることなく放電空間4の体積増加を図り、活性ガス6の生成濃度を向上させることができる。
【0152】
実施の形態2の活性ガス生成装置52は、電極対向空間の外周面から原料ガス5を供給し、ガス噴出孔38(少なくとも一つのガス噴出孔)から活性ガス6を下方に噴出するため、ガス噴出孔38の直下にウェハー等の処理対象基板を配置することができる。
【0153】
なお、ガス噴出孔38は、第1の態様では一の中央ガス噴出孔であるガス噴出孔381となり、第2の態様では複数のガス噴出孔382となる。
【0154】
したがって、実施の形態2の活性ガス生成装置52を、処理対象基板から比較的近い位置に設けることができるため、ラジカル濃度を劣化させることなく効率的に活性ガス6を噴出することができる。
【0155】
なぜなら、活性ガス6は比較的短時間で失活するため、活性ガス6を有効利用するためには、処理対象基板を収容した活性ガス利用空間に生成した活性ガス6を短時間にて供給する必要性があるからである。
【0156】
加えて、実施の形態2の活性ガス生成装置52において、複数の凸部32tはガス流通方向に沿って互いに離散して形成されるため、ガス流通方向に沿って各々が短ギャップ長の複数の特殊放電空間を設けることができる分、上記低電圧放電発生機能の向上を図ることができる。
【0157】
また、実施の形態2の活性ガス生成装置52(第1及び第2の態様)において、ガス噴出孔38(ガス噴出孔381及び複数のガス噴出孔382)の上方に金属電極12(一対の金属電極121及び一対の金属電極122)は設けられていない一部開口電極構造を呈している。すなわち、金属電極12はガス噴出孔38及び開口領域28と平面視して重複していない一部開口電極構造を呈している。
【0158】
一部開口電極構造を採用した理由は異常放電を回避するためである。ここで、「異常放電」とは、金属電極12がガス噴出孔38の上方を覆って形成された場合、ガス噴出孔38及び開口領域28の近傍領域、例えば、金属電極22の周辺領域において発生する可能性がある放電を意味する。
【0159】
金属製の金属電極22は、絶縁体と比べて放電によって構成元素が容易にイオン化する。金属電極22の構成元素がイオン化すると、活性ガス6の中に金属コンタミとして混入したり、金属電極22自体が放電場調整膜32からが剥がれたりするといった問題が生じてしまう。
【0160】
開口領域28の近傍における異常放電を防ぐためには、開口領域28と金属電極22との距離を長くする必要がある。このため、図9図11及び図13に示すように、金属電極12(121,122)が開口領域28(281,282)及びガス噴出孔38(381,382)と平面視重複しないようにして、金属電極22と開口領域28との距離を長くすることにより、開口領域28の近辺における異常放電を防いでいる。
【0161】
さらに、実施の形態2の活性ガス生成装置52の第1の態様は、平面形状が円状の電極用誘電体膜131及び放電場調整膜321を用いて、ラジカル濃度を劣化させることなく効率的に活性ガス6を噴出することができる。
【0162】
加えて、第1の態様において、平面視円状の放電場調整膜321の中心位置にガス噴出孔381(中央ガス噴出孔)が形成されている。このため、電極対向空間の外周面全体からガス噴出孔38に至る距離の均一化を図ることができ、ガス噴出孔38から安定したラジカル濃度の活性ガス6を噴出することができる。
【0163】
活性ガス生成装置52の第2の態様は、平面形状が矩形状の電極用誘電体膜132及び放電場調整膜322を用いて、ラジカル濃度を劣化させることなく効率的に活性ガス6を噴出することができる。
【0164】
加えて、第2の態様において、第1の側面となる側面S1から複数のガス噴出孔382に至るガス流通距離D1(第1のガス流通距離)と、第2の側面となる側面S2から複数のガス噴出孔382に至るガス流通距離D2(第2のガス流通距離)とが等しくなるように複数のガス噴出孔381が設けられている。
【0165】
このため、第2の態様は、側面S1及びS2それぞれから複数のガス噴出孔38に至るガス流通距離D1及びD2の均一化を図ることができ、複数のガス噴出孔それぞれから同一のラジカル濃度の活性ガス6を噴出することができる。
【0166】
(変形例)
図15は本開示の実施の形態2の変形例である活性ガス生成装置52Xの基本断面構造を示す断面図である。図16図15の着目領域R33の詳細断面構造を示す断面図である。図15及び図16それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0167】
以下、図9図14で示した実施の形態2の活性ガス生成装置52と同様な構成部には同一符号を付して説明を適宜省略し、変形例の活性ガス生成装置52Xの特徴部分を中心に説明する。
【0168】
図15及び図16に示すように、変形例の活性ガス生成装置52Xは、活性ガス生成装置52の接地電位電極部2Bを接地電位電極部2Yに置き換え、接地電位電極部2Y内において放電場調整膜32を放電場調整膜32Xに置き換えたことを特徴としている。
【0169】
第2の電極構成部である接地電位電極部2Yは、放電場調整膜32X及び金属電極22の積層構造を呈しており、放電場調整膜32Xの下面上に金属電極20が設けられる。
【0170】
放電場調整膜32Xは放電場調整用絶縁膜33と放電場調整用導電膜35との積層構造を含んでいる。放電場調整用絶縁膜33の構成材料は絶縁性を有する第1の構成材料であり、放電場調整用導電膜35の構成材料は導電性を有する第2の構成材料である。
【0171】
図15に示すように、接地電位電極部2Yにおいて、金属電極22上に放電場調整用導電膜35が設けられ、放電場調整用導電膜35上に放電場調整用絶縁膜33が設けられる。したがって、放電場調整用導電膜35は金属電極22と接触関係を有している。
【0172】
図15に示すように、放電場調整膜32Xは、放電空間4内においてギャップ長が短くなるように、上方(+Z方向)に突出した複数の凸部33t(突出部)を有することを特徴としている。このように、放電場調整膜32Xは、少なくとも一つの突出部として複数の凸部33tを有している。
【0173】
放電場調整膜32Xにおける複数の凸部33tはそれぞれ金属電極22側に空洞領域36を有している。さらに、放電場調整膜32Xは放電場調整膜32のガス噴出孔38と同様なガス噴出孔48を有している。
【0174】
接地電位電極部2Yの第1の態様となる接地電位電極部2Y1における放電場調整膜32Xは、図12で示す放電場調整膜321と同様な平面形状を呈し、ガス噴出孔381と同様なガス噴出孔481をガス噴出孔48として有している。
【0175】
さらに、接地電位電極部2Y1の放電場調整膜32Xは、図12で示した複数の凸部32tと同様な複数の凸部33tを有し、複数の凸部33tはそれぞれ平面視して円環状に設けられる。
【0176】
接地電位電極部2Yの第2の態様となる接地電位電極部2Y2における放電場調整膜32Xは、図14で示す放電場調整膜322と同様な平面形状を呈し、ガス噴出孔382と同様なガス噴出孔482をガス噴出孔48として有している。
【0177】
さらに、接地電位電極部2Y2の放電場調整膜32Xは、図14で示した複数の凸部32tと同様な複数の凸部33tを有し、複数の凸部33tはそれぞれ平面視してY方向を長手方向とした矩形状に設けられる。
【0178】
図16に示すように、放電空間4は部分放電空間43及び44を含んでいる。部分放電空間43は放電場調整膜32Xの凹部領域33fの表面と電極用誘電体膜13の下面との間の空間となり、部分放電空間44は放電場調整膜32Xの凸部33tの上面と電極用誘電体膜13の下面との間の空間となる。
【0179】
すなわち、部分放電空間43は複数の凸部33tが形成されない場合の通常放電空間と同じ比較的長い長ギャップ長G3を有している。一方、部分放電空間44は長ギャップ長G3に比べ短い短ギャップ長G4を有する特殊放電空間となる。
【0180】
実施の形態2の変形例である活性ガス生成装置52Xは、活性ガス生成装置52と同様、放電場調整膜32Xはギャップ長が短くなる方向に突出した複数の凸部33tを有している。
【0181】
このため、変形例の活性ガス生成装置52Xは、活性ガス生成装置52と同様、必要とする印加電圧を増加させることなく放電空間4の体積増加を図り、活性ガス6の生成濃度を向上させることができる。
【0182】
さらに、変形例の活性ガス生成装置52Xは、放電場調整膜32Xの複数の凸部33tそれぞれが第2の金属電極となる金属電極22側に空洞領域36を有する分、図7及び図8で示した実施の形態1の変形例と同様、同一の印加電圧の印加時における特殊放電空間にかかる特殊放電電圧を高めることができる。
【0183】
その結果、実施の形態2の変形例である活性ガス生成装置52Xは、上述した低電圧放電発生機能をより一層高めることができる。
【0184】
変形例の活性ガス生成装置52Xは、放電場調整用絶縁膜33と放電場調整用導電膜35との積層構造を有する放電場調整膜32Xを用いることにより、凸部33tの膜厚の薄膜化することができ、上述した低電圧放電発生機能をより一層高めることができる。
【0185】
(拡張構成)
図9図16で示した実施の形態2(変形例を含む)では、高電圧印加電極部1Bが電極用誘電体膜13を有し、接地電位電極部2B(2Y)が放電場調整膜32(32X)を有する構造を示した。
【0186】
すなわち、電極用誘電体膜13を有する第1の電極構成部を上方電極構成部である高電圧印加電極部1Bに限定し、放電場調整膜32を有する第2の電極構成部を下方電極構成部である接地電位電極部2Bに限定していた。
【0187】
実施の形態2の上述した限定以外に電極用誘電体膜13と放電場調整膜32との上下関係を逆にした拡張構成が考えられる。すなわち、電極用誘電体膜13を有する第1の電極構成部を下方電極構成部である接地電位電極部2B(2Y)とし、放電場調整膜32を有する第2の電極構成部を上方電極構成部である高電圧印加電極部1Bとした拡張構成が考えられる。
【0188】
この拡張構成では、放電場調整膜32(32X)は、放電空間4内においてギャップ長が短くなるように、下方(-Z方向)に突出した複数の突出部を有することを特徴としている。このように、拡張構成では、少なくとも一つの突出部として下方に突出する複数の突出部を有している。
【0189】
さらに、下方電極構成部に設けられる電極用誘電体膜13には、放電場調整膜32(32X)に設けられたガス噴出孔38(48)に相当するガス噴出孔が形成されることになる。
【0190】
上述した実施の形態2の拡散構成においても、活性ガス生成装置52及び活性ガス生成装置52Xと同様な効果を奏する。
【0191】
<実施の形態3>
図17は本開示の実施の形態3である活性ガス生成装置53の基本断面構造を示す断面図である。図18図17の着目領域R34の詳細断面構造を示す断面図である。図17及び図18それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0192】
以下、図9図14で示した実施の形態2の活性ガス生成装置52と同様な構成部は同一符号を付して説明を適宜省略し、実施の形態3の特徴箇所を中心に説明する。
【0193】
図17及び図18に示すように、実施の形態3の活性ガス生成装置53の基本構造は、放電空間4の外周面から供給された原料ガス5を活性化して得られる活性ガス6を生成している。
【0194】
活性ガス生成装置53は高電圧印加電極部1C、接地電位電極部2B、及び交流電源100を主要構成要素として含んでいる。図17及び図18に示すように、下方電極構成部である接地電位電極部2Bの上方に上方電極構成部である高電圧印加電極部1Cが配置されている。
【0195】
第1の電極構成部である高電圧印加電極部1Cは、電極用誘電体膜13と金属電極14及び高圧側接地用金属電極17との積層構造を呈している。電極用誘電体膜13の上面上に金属電極14及び高圧側接地用金属電極17が設けられる。金属電極14及び高圧側接地用金属電極17それぞれの構成材料は金属であり、電極用誘電体膜13の構成材料は誘電体である。
【0196】
金属電極14が上方金属電極となり、かつ、第1の金属電極となり、電極用誘電体膜13が上方形成膜となる。高電圧印加電極部1Cにおいて、電極用誘電体膜13の下面が電極用誘電体膜13側の露出面となる。電極用誘電体膜13の下面が第1の放電場形成面となる。金属電極14は中央部に開口部19を有している。
【0197】
補助導電膜である高圧側接地用金属電極17は電極用誘電体膜13上の開口部19内に形成され、金属電極14とは電気的に独立して設けられる。
【0198】
第2の電極構成部である接地電位電極部2Bは、放電場調整膜32及び金属電極22の積層構造を呈している。下方形成膜となる放電場調整膜32の下面上に金属電極22が設けられる。金属電極22の構成材料は金属であり、放電場調整膜32の構成材料として、絶縁性を有する第1の構成材料あるいは導電性を有する第2の構成材料が考えられる。
【0199】
金属電極22が第2の金属電極となり、かつ、下方金属電極となる。放電場調整膜32は下方形成膜となる。接地電位電極部2Bにおいて、放電場調整膜32の上面が放電場調整膜32側の露出面となる。放電場調整膜32の下面が第2の放電場形成面となる。
【0200】
したがって、高電圧印加電極部1C及び接地電位電極部2Bは第1及び第2の放電場形成面が対向するように配置される。
【0201】
第1及び第2の金属電極のうち一方の金属電極となる金属電極14に交流電源100から交流電圧(印加電圧)が印加され、他方の金属電極となる金属電極22が基準電位となる接地電位に設定される。さらに、高圧側接地用金属電極17は接地電位に設定される。
【0202】
高電圧印加電極部1Cの電極用誘電体膜13と接地電位電極部2Bの放電場調整膜32との間の空間が電極対向空間として規定される。この電極対向空間内において、金属電極14と金属電極22とが平面視して重複する領域が放電空間4となり、放電空間4における電極用誘電体膜13の下面(第1の放電場形成面)と放電場調整膜32の上面(第2の放電場形成面)との間の距離がギャップ長として規定される。なお、放電空間4内の圧力は1kPa~大気圧程度の圧力に設定される。
【0203】
図17に示すように、放電場調整膜32は、放電空間4内においてギャップ長が短くなるように、上方(+Z方向)に突出した複数の凸部32t(突出部)を有することを特徴としている。このように、放電場調整膜32は、少なくとも一つの突出部として複数の凸部32tを有している。
【0204】
一方、凹部領域32fはY方向に延びて設けられる。同様に複数の凸部32tもそれぞれY方向に延びて設けられる。
【0205】
さらに、放電場調整膜32は中央部にガス噴出孔38を有しており、金属電極22中央に開口領域28を有している。ガス噴出孔38が少なくとも一つのガス噴出孔となる。
【0206】
開口領域28は平面視してガス噴出孔38を含み、ガス噴出孔38より広い平面形状を有している。また、金属電極14の開口部19は平面視してガス噴出孔38及び開口領域28を含み、ガス噴出孔38より広い平面形状を有している。したがって、金属電極14がガス噴出孔38及び開口領域28と平面視して重複することはない。
【0207】
さらに、高圧側接地用金属電極17は平面視してガス噴出孔38及び開口領域28を含み、ガス噴出孔38より広い平面形状を有している。すなわち、高圧側接地用金属電極17はガス噴出孔38及び開口領域28と平面視して重複している。したがって、活性ガス6が通過する活性ガス流通経路上に高圧側接地用金属電極17が存在することになる。
【0208】
図18に示すように、放電空間4は部分放電空間41及び42を含んでいる。部分放電空間41は放電場調整膜32の凹部領域32fの表面と電極用誘電体膜13の下面との間の空間となり、部分放電空間42は放電場調整膜32の凸部32tの上面と電極用誘電体膜13の下面との間の空間となる。
【0209】
すなわち、部分放電空間41は複数の凸部32tが形成されない場合の通常放電空間と同じ比較的長い長ギャップ長G1を有している。一方、部分放電空間42は長ギャップ長G1に比べ短い短ギャップ長G2を有する特殊放電空間となる。
【0210】
なお、放電場調整膜32が導電性を有する第2の構成材料で形成される場合、金属電極22と一体化して形成しても良い。
【0211】
また、実施の形態2と同様、電極用誘電体膜13の下面及び放電場調整膜32の上面に機能性膜をスパッタや溶射等により別途成膜してもよい。
【0212】
図17及び図18で示す基本構造において、原料ガス5は電極対向空間の外周面から供給され、放電空間4を通過することにより活性化され活性ガス6となる。活性ガス6はガス噴出孔38及び開口領域28を介して接地電位電極部2Bにおける金属電極22の下方に噴出される。
【0213】
実施の形態3の活性ガス生成装置53において、実施の形態2と同様、電極対向空間の外周面からガス噴出孔38に向かう方向がガス流通方向として規定される。複数の凸部32tはガス流通方向に沿って互いに離散して形成される。
【0214】
(第1の態様)
高電圧印加電極部1Cの金属電極14は、実施の形態2の第1の態様である金属電極121と同様、平面視して円状に形成し、開口部19は開口部181のように中央に平面視円状に形成しても良い。ただし、開口部19内に高圧側接地用金属電極17を設ける必要があるため、開口部181より広い形状を有することが望ましい。
【0215】
また、電極用誘電体膜13は、実施の形態2の第1の態様である電極用誘電体膜131と同様、平面視して円状に形成しても良い。この場合、電極用誘電体膜13は平面視して金属電極14の全てを含み、金属電極14より広い円状の平面形状を有することになる。
【0216】
また、接地電位電極部2Bの第1の態様として、図12で示した実施の形態2の第1の態様と同様な構成を採用しても良い。
【0217】
第1の態様の場合、高電圧印加電極部1Cの電極用誘電体膜13と接地電位電極部2Bの放電場調整膜32とは平面視して同一サイズの円状を呈しており、平面視して電極用誘電体膜13と放電場調整膜32とが合致するように配置される。
【0218】
実施の形態3の第1の態様において、金属電極14に交流電源100から高電圧となる交流電圧(印加電圧)を印加することにより、放電空間4内で誘電体バリア放電を発生させることができる。
【0219】
原料ガス5は電極対向空間の外周面全体から供給され、放電空間4を通過することにより活性化され活性ガス6となる。活性ガス6はガス噴出孔38及び開口領域28を介して接地電位電極部2Bにおける金属電極22の下方に噴出される。活性ガス生成装置53の第1の態様において、電極対向空間の外周面全体からガス噴出孔38に向かう方向がガス流通方向として規定される。
【0220】
(第2の態様)
高電圧印加電極部1Cの金属電極14は、実施の形態2の第2の態様である一対の金属電極122と同様、それぞれ平面視して矩形状に形成しても良い、開口部19は実施の形態2の第2の態様の開口部182のように、Y方向に延びて設けられても良い。ただし、開口部19内に高圧側接地用金属電極17を設ける必要があるため、開口部182より広い形状を有することが望ましい。
【0221】
また、電極用誘電体膜13は、実施の形態2の第2の態様である電極用誘電体膜132と同様、平面視して矩形状(略正方形状)に形成しても良い。この場合、電極用誘電体膜13は平面視して金属電極14の全てを含み、金属電極14より広い矩形状の平面形状を有することになる。
【0222】
また、接地電位電極部2Bの第2の態様として、図14で示した実施の形態2の第2の態様と同様な構成を採用しても良い。
【0223】
第2の態様の場合、高電圧印加電極部1Cの電極用誘電体膜13と接地電位電極部2Bの放電場調整膜32とは平面視して同一サイズの矩形状を呈しており、平面視して電極用誘電体膜13と放電場調整膜32とが合致するように配置される。
【0224】
実施の形態3の活性ガス生成装置53の第2の態様において、金属電極14に交流電源100から交流電圧を印加することにより、放電空間4内で誘電体バリア放電を発生させることができる。
【0225】
原料ガス5は、実施の形態2の第2の態様と同様、電極対向空間の第1及び第2の側面(側面S1及びS2)それぞれから供給され、放電空間4を通過することにより活性化され活性ガス6となる。活性ガス6はガス噴出孔38及び開口領域28を介して接地電位電極部2Bにおける金属電極22の下方に噴出される。活性ガス生成装置53の第2の態様において、電極対向空間の第1及び第2の側面それぞれガス噴出孔38に向かう方向(±X方向)がガス流通方向として規定される。
【0226】
(効果)
実施の形態3の活性ガス生成装置53(第1及び第2の態様)において、放電場調整膜32はギャップ長が短くなる方向に突出した複数の凸部32tを有している。
【0227】
このため、実施の形態3の活性ガス生成装置53は、実施の形態1及び実施の形態2と同様、必要とする印加電圧を増加させることなく放電空間4の体積増加を図り、活性ガス6の生成濃度を向上させることができる。
【0228】
実施の形態3の活性ガス生成装置53は、実施の形態2の活性ガス生成装置52と同様、電極対向空間の外周面から原料ガス5を供給し、ガス噴出孔38(少なくとも一つのガス噴出孔)から活性ガス6を下方に噴出するため、ガス噴出孔38の直下にウェハー等の処理対象基板を配置することができる。
【0229】
したがって、実施の形態3の活性ガス生成装置53を処理対象基板から比較的近い位置に設けることができるため、実施の形態2と同様、ラジカル濃度を劣化させることなく効率的に活性ガス6を噴出することができる。
【0230】
さらに、実施の形態3の活性ガス生成装置53において、第1の電極構成部となる高電圧印加電極部1Cは、電極用誘電体膜13の上面、すなわち、第1の金属電極である金属電極14の形成面上に補助導電膜となる高圧側接地用金属電極17をさらに有している。この高圧側接地用金属電極17は金属電極14と電気的に独立して設けられ、かつ、接地電位に設定されている。
【0231】
さらに、高圧側接地用金属電極17はガス噴出孔38及び開口領域28と平面視して重複して設けられる。
【0232】
したがって、実施の形態3の活性ガス生成装置53は、接地電位に設定された高圧側接地用金属電極17によって、ガス噴出孔38の上方の活性ガス6が流通する活性ガス流通経路における電界強度を緩和することができる。
【0233】
その結果、実施の形態3の活性ガス生成装置53は、ガス噴出孔38の近傍の電界強度を格段に減少させることにより、活性ガス6以外のガスの絶縁破壊を防止することができる。
【0234】
以下、この点を詳述する。例えば、活性ガス6を半導体等の成膜に用いる場合、活性ガス6以外に成膜の原料となるガス(プリカーサと呼ばれるガス)がガス噴出孔38の下方に存在する。プリカーサとして、例えば、シラン(SiH)等が考えられる。この状況下で、ガス噴出孔38近傍の電界が比較的高い場合、活性ガス6以外のプリカーサ(ガス)が絶縁破壊する可能性がある。
【0235】
実施の形態3の活性ガス生成装置53では、高圧側接地用金属電極17によって活性ガス流通経路の電界強度を緩和しているため、プリカーサ等の活性ガス6以外のガスの絶縁破壊を防止することができる。
【0236】
(変形例)
図19は本開示の実施の形態3の変形例である活性ガス生成装置53Xの基本断面構造を示す断面図である。図20図19の着目領域R33の詳細断面構造を示す断面図である。図19及び図20それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0237】
以下、図17及び図18で示した実施の形態3の活性ガス生成装置53、または図15及び図16で示した実施の形態2の変形例である活性ガス生成装置52Xと同様な構成部には同一符号を付して説明を適宜省略し、実施の形態3の変形例の活性ガス生成装置53Xの特徴部分を中心に説明する。
【0238】
図19及び図20に示すように、実施の形態3の変形例である活性ガス生成装置53Xは、活性ガス生成装置53の接地電位電極部2Bを接地電位電極部2Yに置き換え、接地電位電極部2Y内において放電場調整膜32を放電場調整膜32Xに置き換えたことを特徴としている。
【0239】
第2の電極構成部である接地電位電極部2Yは、放電場調整膜32X及び金属電極22の積層構造を呈しており、放電場調整膜32Xの下面上に金属電極20が設けられる。
【0240】
放電場調整膜32Xは、実施の形態2の変形例と同様、放電場調整用絶縁膜33と放電場調整用導電膜35との積層構造を含んでいる。
【0241】
図20に示すように、実施の形態3の変形例は、図16で示した実施の形態2の変形例と同様に、放電空間4は部分放電空間43及び44を含んでいる。
【0242】
部分放電空間43は複数の凸部33tが形成されない場合の通常放電空間と同じ比較的長い長ギャップ長G3を有している。一方、部分放電空間44は長ギャップ長G3に比べ短い短ギャップ長G4を有する特殊放電空間となる。
【0243】
実施の形態3の変形例である活性ガス生成装置53Xは、活性ガス生成装置53と同様、放電場調整膜32Xはギャップ長が短くなる方向に突出した複数の凸部33tを有している。
【0244】
このため、変形例の活性ガス生成装置53Xは、活性ガス生成装置53と同様、必要とする印加電圧を増加させることなく放電空間4の体積増加を図り、活性ガス6の生成濃度を向上させることができる。
【0245】
加えて、実施の形態3の変形例である活性ガス生成装置53Xは、放電場調整膜32Xの複数の凸部33tそれぞれが第2の金属電極となる金属電極22側に空洞領域36有する分、実施の形態1の変形例及び実施の形態2の変形例と同様、同一の印加電圧の印加時における特殊放電空間にかかる特殊放電電圧を高めることができる。
【0246】
その結果、実施の形態3の変形例である活性ガス生成装置53Xは、上述した低電圧放電発生機能をより一層高めることができる。
【0247】
変形例の活性ガス生成装置53Xは、放電場調整用絶縁膜33と放電場調整用導電膜35との積層構造を有する放電場調整膜32Xを用いることにより、凸部33tの膜厚の薄膜化することができ、上述した低電圧放電発生機能をより一層高めることができる。
【0248】
(拡張構成)
図17図20で示した実施の形態3(変形例を含む)では、高電圧印加電極部1Cが電極用誘電体膜13を有し、接地電位電極部2B(2Y)が放電場調整膜32(32X)を有する構造を示した。
【0249】
すなわち、電極用誘電体膜13を有する第1の電極構成部を上方電極構成部である高電圧印加電極部1Cに限定し、放電場調整膜32を有する第2の電極構成部を下方電極構成部である接地電位電極部2B(2Y)に限定していた。
【0250】
実施の形態3の上述した限定以外に電極用誘電体膜13と放電場調整膜32との上下関係を逆にした拡張構成が考えられる。すなわち、電極用誘電体膜13を有する第1の電極構成部を下方電極構成部である接地電位電極部2B(2Y)とし、放電場調整膜32を有する第2の電極構成部を上方電極構成部である高電圧印加電極部1Cとした拡張構成が考えられる。
【0251】
この拡張構成では、放電場調整膜32(32X)は、放電空間4内においてギャップ長が短くなるように、下方(-Z方向)に突出した複数の突出部を有することを特徴としている。このように、拡張構成では、少なくとも一つの突出部として下方に突出する複数の突出部を有している。
【0252】
さらに、下方電極構成部に設けられる電極用誘電体膜13には、ガス噴出孔38に相当するガス噴出孔が形成されることになる。
【0253】
上述した実施の形態3の拡散構成においても、活性ガス生成装置53及び活性ガス生成装置53Xと同様な効果を奏する。
【0254】
本開示は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、本開示がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、本開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0255】
1,1B,1C 高電圧印加電極部
2,2B,2X,2Y 接地電位電極部
4 放電空間
5 原料ガス
6 活性ガス
10、12,14,20,22,121,122,221,222 金属電極
11,13,131,132 電極用誘電体膜
17 高圧側接地用金属電極
28,281,282 開口領域
30,30X、32,32X,321,322 放電場調整膜
30t~33t 凸部
31,33 放電場調整用絶縁膜
34,35 放電場調整用導電膜
38,381,382 ガス噴出孔
41~44 部分放電空間
【要約】
本開示は、必要とする印加電圧を増加させることなく放電空間の体積増加を図った活性ガス生成装置を提供することを目的とする。そして、本開示の活性ガス生成装置(51)において、高電圧印加電極部(1)は電極用誘電体膜(11)と金属電極(10)との積層構造を有しており、接地電位電極部(2)は放電場調整膜(30)と金属電極(20)との積層構造を有している。高電圧印加電極部(1)の電極用誘電体膜(11)と接地電位電極部(2)の放電場調整膜(30)との間の空間が電極対向空間として規定され、この電極対向空間内において、金属電極(10)と金属電極(20)とが平面視して重複する領域が放電空間(4)となる。放電場調整膜(30)は、放電空間(4)内においてギャップ長が短くなるように、上方に突出した複数の凸部(30t)を有している。
図1
図2
図3
図4
図5
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