(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】光硬化性組成物、及び製品
(51)【国際特許分類】
C08F 2/50 20060101AFI20230605BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
C08F2/50
C09J4/02
(21)【出願番号】P 2017562941
(86)(22)【出願日】2017-01-23
(86)【国際出願番号】 JP2017002180
(87)【国際公開番号】W WO2017126704
(87)【国際公開日】2017-07-27
【審査請求日】2019-11-11
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】P 2016010824
(32)【優先日】2016-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108111
【氏名又は名称】セメダイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151688
【氏名又は名称】今 智司
(72)【発明者】
【氏名】緑川 智洋
(72)【発明者】
【氏名】山家 宏士
【合議体】
【審判長】細井 龍史
【審判官】海老原 えい子
【審判官】藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-125330(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0124134(US,A1)
【文献】特開平3-81381(JP,A)
【文献】特開平5-86149(JP,A)
【文献】特開2011-184402(JP,A)
【文献】特開2015-183139(JP,A)
【文献】特開2015-30752(JP,A)
【文献】特開2009-120686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-4/82
C08L 23/00-57/12
C08K 3/00-5/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光照射後に嫌気状態にすると硬化が進行
し、過酸化物を含まない光硬化性組成物であって、
(A)不飽和二重結合を有するモノエステル類、ヒドロキシアルキルエステル類、及び多価エステル類から選択される少なくとも1つの化合物と、
(B)下記一般式(1)、一般式(2)、及び一般式(3)からなる群から選択される少なくとも1つの化合物と、
(C)増感剤と
を含有し、
前記一般式(1)で表される化合物が、ベンジル、カンファーキノン、又はジアセチルであり、
前記一般式(2)で表される化合物が、パルミチン酸アスコルビルであり、
前記一般式(3)で表される化合物が、シクロテンであり、
前記(C)増感剤が、チオキサントン骨格を有する化合物、チオキサントン誘導体、ベンゾフェノン骨格を有する化合物、又はベンゾフェノン誘導体であ
り(ただし、下記一般式(4)の化合物を除く)、
前記光照射の光が紫外線であり、前記光照射の照射エネルギーが10mJ/cm
2
以上20,000mJ/cm
2
以下である光硬化性組成物。
【化1】
【化2】
【化3】
(一般式(1)、一般式(2)及び一般式(3)中、R
1乃至R
3はそれぞれ独立して、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アセチル基、カルボニル基、置換若しくは非置換のアリル基、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、非置換若しくは置換アリール基、非置換若しくは置換アリールオキシ基、複素環構造含有基、及び複数の環を有する基からなる群から選択される少なくとも1つの基を含む置換基である。R
1乃至R
3からなる群から選択される少なくとも2つの基は、互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に環状構造を形成していてもよい。)
【化4】
(ただし、基Q1及び基Q2は、ジアルキルアミノ基である。)
【請求項2】
前記(B)の化合物が、前記一般式(1)で示される化合物であり、
(D)金属塩、及び金属錯体からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物を更に含有する請求項
1に記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
少なくとも活性エネルギーの照射直後、被着体に貼り合わせ可能な状態を保つ請求項1
又は2に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物を含有する製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性組成物、及び製品に関する。特に、本発明は、不透明材料の接着に用いることができ、貯蔵安定性に優れた光硬化性組成物、及び製品に関する。
【背景技術】
【0002】
多種多様な接着剤の中で、加熱硬化型、2液混合型等の接着剤が知られている。加熱硬化型の接着剤は加熱処理できない部品への用途が制限され、2液混合型の接着剤は混合の計量や行程が煩雑である。
【0003】
加熱処理や混合処理を要さない1液性常温硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂が知られており、紫外線等の光を照射することにより瞬時に重合硬化する光硬化性樹脂が知られている。光硬化性樹脂は硬化性の早さや、1液性であるために混合行程を要さない取扱い性の良さ、貯蔵安定性の良さ等から表面の被覆やポッティング等の様々な場面で用いられている。一般的に光硬化性樹脂は、光照射により活性ラジカル等が発生し、ラジカル重合性のモノマーやオリゴマーが重合する原理を利用している。よって、光照射を停止すると、活性ラジカルの発生が停止し、重合性モノマーやオリゴマーの重合反応も停止する。また、陰影部や狭隙部等の光が到達しない部分は硬化しない。したがって、貼合わせ等の接着には被着体が透明であることを要し、紫外線等の活性エネルギーを接着組成物に直接照射することを要する。
【0004】
一方、1液性常温硬化性樹脂としては、酸素の遮断により被着体の貼合わせ等における硬化反応が進行する嫌気硬化性組成物が存在する。嫌気硬化性組成物は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを主成分として空気又は酸素(以下、単に空気という)と接触している間は長期間ゲル化せずに液状状態で安定に保たれ、空気が遮断若しくは排除されると急速に硬化する性質を有する。嫌気硬化性組成物は、かかる性質を利用して、ネジ、ボルト等の接着、固定、嵌め合い部品の固着、フランジ面間の接着、シール、鋳造部品に生じる巣孔の充填等に用いられる。
【0005】
特許文献1には一般的な嫌気硬化性組成物の組成である(A)重合可能な不飽和二重結合を有する化合物、(B)有機過酸化物、(C)o-ベンゾイックスルフィミドが開示されており、更に(D)炭素粉末が添加された嫌気硬化性組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載されている嫌気硬化性組成物は、貯蔵安定性が悪く、保存中に粘度が著しく増加したり、ゲル化が進行するという問題があった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、貯蔵安定性に優れると共に不透明材料等の接着においてすばやく硬化する光硬化性組成物、及び製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するため、(A)不飽和二重結合を有する化合物と、(B)下記一般式(1)、一般式(2)、及び一般式(3)からなる群から選択される少なくとも1つの化合物と、(C)増感剤とを含有する光硬化性組成物が提供される。
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
一般式(1)、一般式(2)及び一般式(3)中、R1乃至R3はそれぞれ独立して、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アセチル基、カルボニル基、置換若しくは非置換のアリル基、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、非置換若しくは置換アリール基、非置換若しくは置換アリールオキシ基、複素環構造含有基、及び複数の環を有する基からなる群から選択される少なくとも1つの基を含む置換基である。R1乃至R3からなる群から選択される少なくとも2つの基は、互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に環状構造を形成していてもよい。
【0014】
また、上記光硬化性組成物において、(C)増感剤が、芳香族化合物誘導体、カルバゾール誘導体、芳香族カルボニル化合物、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、及びクマリン誘導体からなる群から選択される少なくとも1つの化合物であることが好ましい。
【0015】
また、上記光硬化性組成物において、(B)の化合物が、一般式(1)で示される化合物であり、(D)金属塩、及び金属錯体からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物を更に含有することもできる。
【0016】
また、上記光硬化性組成物は、少なくとも活性エネルギーの照射直後、被着体に貼り合わせ可能な状態を保つことができる。
【0017】
また、本発明は上記目的を達成するため、上記のいずれか1つに記載の光硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物を含有する製品が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る光硬化性組成物、及び製品によれば、貯蔵安定性に優れると共に不透明材料等の接着においてすばやく硬化する光硬化性組成物、及び製品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[光硬化性組成物の概要]
本発明に係る光硬化性組成物は、活性エネルギー線を照射した後、被着体に貼り合わせ可能な状態を保ち、嫌気状態にすると硬化が進行する光硬化性組成物である。ここで、「貼り合わせ可能な状態」とは、嫌気状態に曝されるまで、光硬化性組成物の少なくとも一部が液状若しくは粘着状を含む状態をいう。本発明に係る光硬化性組成物は、不透明材料同士の接着に用いることができ、かつ、貯蔵安定性に優れている。従来の光硬化性組成物は光を照射した瞬間に硬化するので被着体は光を透過する材料から構成されていなければならないだけでなく、被着体に塗布された従来の光硬化性組成物の全体に光を照射しなければならない。また、従来の嫌気性接着剤組成物は、構成成分に過酸化物を含むので、高い環境温度下では安定性が低く、容器内で硬化する場合がある。本発明者は、光照射直後であって嫌気状態にする前は被着体に貼り合わせ可能な状態を保ち、かつ、貯蔵安定性に優れた光硬化性組成物について検討していたところ、特定の化合物(本発明におけるB成分)と増感剤(本発明におけるC成分)との特定の組み合わせにより、光照射後は被着体に貼り合わせ可能な状態を保つと共に貯蔵安定性に優れた光硬化性組成物が得られることを初めて見出し、本発明を創出するに至った。以下、実施の形態に沿って詳細を説明する。
【0020】
[光硬化性組成物の詳細]
本発明に係る光硬化性組成物は、(A)不飽和二重結合を有する化合物と、(B)下記一般式(1)、一般式(2)、及び一般式(3)からなる群から選択される少なくとも1つの化合物と、(C)増感剤とを含有する。また、本発明に係る光硬化性組成物は、(D)金属塩、及び金属錯体からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物を含有することもできる。
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
一般式(1)、一般式(2)及び一般式(3)中、R1~R3はそれぞれ独立して置換基を表す。置換基としては、例えば、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アセチル基、カルボニル基、置換又は非置換のアリル基、置換又は非置換のアルキル基(好ましくは炭素数が1~5のアルキル基)、置換又は非置換のアルコキシ基(好ましくは炭素数が1~5のアルコキシ基)、非置換若しくは置換アリール基、非置換若しくは置換アリールオキシ基、複素環構造含有基、複数の環を有する基やこれらの組合せ等が挙げられる。R1~R3のいずれかが互いに結合し、環状構造を形成してもよい。R1~R3からなる群から選択される少なくとも2つの基が互いに結合し、環状構造を形成する場合、複数のベンゼン環が縮合した構造、ベンゼン環と複素環や非芳香族性の環、カルボニル基等の官能基が結合した環等が縮合した構造等を形成してもよい。これらの置換基の中では、置換又は非置換の炭素数が1~5のアルキル基又はアリール基が好ましい。
【0025】
[(A)不飽和二重結合を有する化合物]
(A)不飽和二重結合を有する化合物は、構造中に不飽和二重結合を有する化合物であれば、様々なモノマー、オリゴマー、及び/又はポリマーを用いることができる。具体的に、(A)不飽和二重結合を有する化合物としては、分子中に少なくとも1つ以上のラジカル重合性の官能基(例えば、ビニル基)を含むモノマー、オリゴマー、及びポリマーが挙げられる。
【0026】
分子中に1つ以上のラジカル重合性の官能基を含むモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等のモノエステル類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキルエステル類;エチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多価エステル類等が挙げられる。これらのモノマーは、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0027】
分子中に1つ以上のラジカル重合性の官能基を含むオリゴマーとしては、例えば、マレート基、フマレート基、アリル基、(メタ)アクリレート基を有する硬化性樹脂、イソシアネート改質アクリルオリゴマー、エポキシ改質アクリルオリゴマー、ポリエステルアクリルオリゴマー、ポリエーテルアクリルオリゴマー等が挙げられる。これらのオリゴマーは、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。また、本発明に係る光硬化性組成物の粘度の調整、若しくは特性を所定の特性に調整することを目的として、これらのオリゴマーを含有することもできる。
【0028】
分子中に1つ以上のラジカル重合性の官能基を含むポリマーとしては、不飽和ポリエステル樹脂、不飽和アクリル樹脂等の重合性不飽和重合体が挙げられる。これらの重合性不飽和重合体は、分子中に少なくとも1つ以上のラジカル重合性の官能基を含むモノマーと併せて用いることが好ましい。
【0029】
[(B)成分]
(B)成分としては、上記の一般式(1)、一般式(2)、及び一般式(3)からなる群から選択される少なくとも1つの化合物が挙げられる。これら(B)成分は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。例えば、(B)成分としては、ジフェニルエタンジオン、1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジオン、2,3-ブタンジオン、3-メチル2-ヒドロキシ-2-シクロペンテン-1-オン、パルミチン酸アスコルビル等が挙げられる。特に、貯蔵安定性に優れる点から一般式(1)で表される化合物を好適に用いることができ、一般式(1)で表される化合物の中でもジフェニルエタンジオンを用いることが好ましい。
【0030】
[(C)増感剤]
(C)増感剤としては、様々な一重項増感剤、及び/又は三重項増感剤を用いることができる。具体的に(C)増感剤としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、ピレン等の芳香族化合物誘導体、カルバゾール誘導体、芳香族カルボニル化合物、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体等が挙げられる。一重項増感剤としては、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、カルバゾール誘導体が好ましく、三重項増感剤としては、チオキサントン誘導体、ベンゾフェノン誘導体が好ましい。本発明では、チオキサントン誘導体がより好ましい。
【0031】
(C)増感剤としては、例えば、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン等を用いることができる。(C)増感剤の添加量は、(A)成分100重量部に対して、0.01~10重量部であり、0.1~5重量部が好ましい。光硬化性組成物に照射される光の吸収効率を確保することを目的として、(C)増感剤は0.01重量部以上が好ましく、光硬化性組成物の全体に光を伝達させることを目的として、(C)増感剤は10重量部以下が好ましい。
【0032】
(C)増感剤としては、本発明に係る光硬化性組成に照射する光の波長に対応する吸収波長を有する化合物を用いることが好ましい。換言すれば、光硬化性組成物に照射する光の波長に応じ、(C)増感剤を選択できる。
【0033】
ここで、本発明に係る光硬化性組成物においては、上記特定の(B)成分と(C)成分との組み合わせを用いることが好ましい。本発明者は、様々な化合物の組み合わせを検討したところ、本発明に係る(B)成分と(C)成分との組み合わせを用いた場合、硬化反応にタイムラグがあることを見出した。この機構の詳細は明らかではないが、特定の(B)成分と(C)成分との組み合わせを用いた場合、(B)成分から発生するラジカルの寿命が比較的長くなること、及び/又は(B)成分からのラジカルの発生が光照射時点から所定のタイムラグがあることが推測される。これにより、本発明に係る光硬化性組成物は、光照射後、嫌気状態にするまでは被着体に貼り合わせ可能な状態を保つことができると考えられる。
【0034】
[硬化促進剤]
本発明に係る光硬化性組成は、硬化促進剤を更に含有することもできる。硬化促進剤としては様々な硬化促進剤を用いることができる。例えば、硬化促進剤としては、o-ベンゾイックスルフィミド(サッカリン)を用いることができる。硬化促進剤の添加量は、(A)成分100重量部に対して0.1~10重量部であり、0.1~5重量部が好ましい。
【0035】
[その他の添加剤]
本発明に係る光硬化性組成物には、その効果を阻害しない範囲で、(D)金属塩及び金属錯体からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物、有機過酸化物、重合促進剤、光開始剤、増粘剤、充填剤、可塑剤、着色剤、増量剤、水分吸収剤、硬化触媒、引張特性等を改善する物性調整剤、補強剤、難燃剤、タレ防止剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、溶剤、香料、顔料、染料、樹脂フィラー、及び/又はその他の添加剤を加えてもよい。
【0036】
金属塩及び金属錯体からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物としては、コバルト系、マンガン系、ジルコニウム系、スズ系、鉛系、亜鉛系、銅系、鉄系、カルシウム系等の公知の有機金属化合物が挙げられる。例えば、オクチル酸鉄(3+)、アセチルアセトンバナジウム(4+)、ナフテン酸銅(2+)等が挙げられる。これらの金属塩は、単独でも、2種以上を併用することもできる。(B)成分として、一般式(2)や一般式(3)で表される化合物を用いる場合、銅系の有機金属化合物を用いることが好ましい。
【0037】
また、金属塩及び金属錯体からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物は(A)成分100重量部に対して、0.0001重量部以上1重量部以下であり、0.0001重量部以上0.1重量部以下が好ましい。なお、金属塩及び金属錯体からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物の添加量が1重量部を超える場合、光硬化性組成物の貯蔵安定性が悪くなる場合がある。
【0038】
有機過酸化物としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ケトンパーオキサイド類、ジアリルパーオキサイド類、パーオキシエステル類等が挙げられる。
【0039】
重合促進剤としては、アミン化合物、メルカプタン化合物、ヒドラジン誘導体等が挙げられる。アミン化合物の具体例としては、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、シクロヘキシルアミン等の脂肪族第一級アミン類;ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン等の脂肪族第二級アミン類;トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン等の脂肪族第三級アミン類;トリアリルアミン、オレイルアミン等の脂肪族不飽和アミン類;アニリン、ラウリルアニリン、ステアリルアニリン、トリフェニルアミン等の芳香族アミン類;ピリジン、2-アミノピリジン、2-(ジメチルアミノ)ピリジン、4-(ジメチルアミノピリジン)、2-ヒドロキシピリジン、イミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、モルホリン、N-メチルモルホリン、ピペリジン、2-ピペリジンメタノール、2-(2-ピペリジノ)エタノール、ピペリドン、1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7(DBU)、6-(ジブチルアミノ)-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7(DBA-DBU)、6-(2-ヒドロキシプロピル)-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン(OH-DBU)、OH-DBUの水酸基をウレタン化等で変性した化合物、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン-5(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、アジリジン等の含窒素複素環式化合物;含窒素複素環式化合物から誘導される塩、及びその他のアミン類として、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、3-ヒドロキシプロピルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N-メチル-1,3-プロパンジアミン、N,N'-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、ベンジルアミン、3-メトキシプロピルアミン、3-ラウリルオキシプロピルアミン、3-ジメチルアミノプロピルアミン、3-ジエチルアミノプロピルアミン、3-ジブチルアミノプロピルアミン、3-モルホリノプロピルアミン、2-(1-ピペラジニル)エチルアミン、キシリレンジアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどのアミン類;グアニジン、フェニルグアニジン、ジフェニルグアニジン等のグアニジン類;ブチルビグアニド、1-o-トリルビグアニドや1-フェニルビグアニド等のビグアニド類等が挙げられる。また、メルカプタン化合物としては、n-ドデシルメルカプタン、エチルメルカプタン、ブチルメルカプタン等の直鎖型メルカプタンが挙げられる。ヒドラジン誘導体としては、エチルカルバゼート、N-アミノルホダニン、アセチルフェニルヒドラジン、p-ニトロフェニルヒドラジン、p-トリスルホニルヒドラジド等が挙げられる。
【0040】
これらの重合促進剤の配合割合は、(A)不飽和二重結合を有する化合物100重量部に対して0~5重量部であり、好ましくは0.1~1重量部である。重合促進剤としての効果を発揮させることを目的として、(A)不飽和二重結合を有する化合物100重量部に対して重合促進剤の配合割合は0.1重量部以上が好ましく、適切な貯蔵安定性を確保することを目的として重合促進剤の配合割合は(A)不飽和二重結合を有する化合物100重量部に対して1重量部以下が好ましい。
【0041】
光開始剤としては、活性エネルギー線(特に紫外線)の照射によって遊離ラジカルを生成する光ラジカル開始剤、放射線照射によって塩基を発生する光塩基発生剤、放射線照射によって酸を発生する光酸発生剤等が挙げられる。
【0042】
光ラジカル開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル誘導体、アセトフェノン誘導体等のアリールアルキルケトン類、オキシムケトン類、アシルホスフィンオキシド類、チオ安息香酸S-フェニル類、チタノセン類、及びこれらを高分子量化した誘導体が挙げられる。光塩基発生剤は、放射線照射時に塩基を発生する化合物であれば特に制限は受けず用いることができる。光酸発生剤としては、イオン性化合物と非イオン性化合物とのいずれでも用いることができるが、イオン性化合物を用いるのが好ましく、例えば、アリールジアゾニウム塩類等の芳香族ジアゾニウム塩類、ジアリールヨウドニウム塩類等の芳香族ヨウドニウム塩類、トリアリールスルホニウム塩類等の芳香族スルホニウム塩類、トリアリールホスホニウム塩類等の芳香族ホスホニウム塩類よりなる群から選ばれる化合物を用いるのが好ましい。
【0043】
また、本発明に係る光硬化性組成物の貯蔵安定性を更に向上させることを目的として、ベンゾキノン、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のラジカル吸収剤、エチレンジアミン4酢酸又はその2-ナトリウム塩、シユウ酸、アセチルアセトン、o-アミノフエノール等の金属キレート化剤等を添加することもできる。
【0044】
物性調整剤としては、常温でゴム状弾性を有する高分子化合物であるエラストマーが挙げられる。このエラストマーは、引張強度を向上させること等を目的として添加できる。エラストマーとしては、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-メチルメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS)、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、線状ポリウレタン、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、及びブタジエンゴム等の各種合成ゴム、天然ゴム、スチレン-ポリブタジエン-スチレン合成ゴム等のスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエチレン-EPDM合成ゴム等のオレフィン系熱可塑性エラストマー、カプロラクトン型、アジペート型、及びPTMG型等のウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリブチレンテレフタレート-ポリテトラメチレングリコールマルチブロックポリマー等のポリエステル系熱可塑性エラストマー、ナイロン-ポリオールブロック共重合体やナイロン-ポリエステルブロック共重合体等のポリアミド系熱可塑性エラストマー、1,2-ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらのエラストマーは、単独で用いることも、相溶性が認められる範囲で2種以上を併用することもできる。
【0045】
(光硬化性組成物の製造方法)
本発明に係る光硬化性組成物を製造する方法は特に制限はなく、例えば、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を所定量配合し、また、必要に応じて他の配合物質を配合し、脱気攪拌することにより製造できる。各成分及び他の配合物質の配合順は特に制限はなく、適宜決定できる。
【0046】
本発明に係る光硬化性組成物は、必要に応じて1液型とすることもできるし、2液型とすることもできるが、特に1液型として好適に用いることができる。本発明に係る光硬化性組成物は光照射により硬化が進行する光硬化性組成物であって、常温(例えば、23℃)で硬化可能であり、常温光硬化型硬化性組成物として好適に用いられるが、必要に応じて、適宜、加熱により硬化を促進させてもよい。
【0047】
本発明に係る光硬化性組成物の硬化により光硬化性組成物の硬化物を得ることができる。光硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物を含有する製品としては、電子回路、電子部品、建材、自動車等の様々な分野における製品が挙げられる。
【0048】
本発明に係る光硬化性組成物に対し、光を照射する条件としては特に制限はないが、硬化時に活性エネルギー線を照射する場合、活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等を利用できる。硬化速度、照射装置の入手のしやすさ及び価格、太陽光や一般照明下での取扱の容易性等から紫外線又は電子線照射による硬化が好ましく、紫外線照射による硬化がより好ましい。なお、紫外線には、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)、i線(波長365nm)等も含まれる。活性エネルギー線源としては、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、電子線照射装置、ハロゲンランプ、発光ダイオード、半導体レーザー、メタルハライド等が挙げられる。
【0049】
照射エネルギーとしては、例えば紫外線の場合、10~20,000mJ/cm2が好ましく、20~10,000mJ/cm2がより好ましく、50~5,000mJ/cm2が更に好ましい。硬化性を十分に確保することを目的として、照射エネルギーは、10mJ/cm2以上が好ましく、照射時間及びコストを抑えることを目的として、照射エネルギーは、20,000mJ/cm2以下が好ましい。
【0050】
本発明に係る光硬化性組成物の被着体への塗布方法は特に制限はないが、スクリーン印刷、ステンシル印刷、ロール印刷、ディスペンサー塗布、スピンコート等の塗布方法が好適に用いられる。
【0051】
また、光硬化性組成物の被着体への塗布及び光照射の時期に制限はない。例えば、光硬化性組成物に光を照射させた後、被着体に塗布し、製品を製造できる。また、光硬化性組成物を被着体に塗布し、光を照射することにより光硬化性組成物を硬化させて製品を製造できる。
【0052】
[製品の製造]
本発明に係る製品は、上記において説明した光硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物を含有して製造される。まず、本発明に係る光硬化性組成物を準備する(組成物準備工程)。すなわち、所定量の(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び/又はその他の所定の添加剤を秤量し、混合することで硬化性組成物を準備する。
【0053】
次に、準備した光硬化性組成物を被着体の予め定められた領域に塗布する(塗布工程)。なお、被着体の表面には、印刷等の手法を用いて光硬化性組成物を塗布する。そして、被着体に塗布した光硬化性組成物に光照射する(照射工程)。なお、少なくとも光照射直後は、光硬化性組成物は被着体に貼り合わせ可能な状態である。次に、光硬化性組成物が塗布された被着体を、光硬化性組成物が塗布された領域を挟むように他の被着体に貼り合わせる(貼り合わせ工程)。これにより、本発明に係る硬化物が形成される。なお、硬化物の形状は、薄膜状、又は薄膜よりも厚い平板状(シート状)等にすることができる。また、硬化工程後に、硬化して得られる硬化物を所定の雰囲気下に放置することにより、硬化をより強固に進行させてもよい。例えば、一の部材を他の部材に接着する場合に本発明に係る光硬化性組成物を用いることで、本発明に係る光硬化性組成物が硬化した硬化物を含む製品が製造される。
【0054】
(実施の形態の効果)
本実施の形態に係る光硬化性組成物は、特定の(B)成分を用いて(C)成分と組み合わせ、(A)成分と共に用いることにより、光照射後は被着体に貼り合わせ可能な状態を保ち、嫌気状態にすることで硬化が進行する不透明材料の接着に用いることができる組成物を実現できるだけでなく、貯蔵安定性に優れた組成物を実現できる。
【0055】
更に、本実施形態に係る光硬化性組成物は、光照射後に嫌気状態にすることで硬化が進行するので、硬化工程において光照射を続けることを要さない。したがって、本実施形態に係る光硬化性組成物によれば、貼り合わせ作業等の作業性を大幅に改善できる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明に係る光硬化性組成物について、実施例を用いて詳細に説明する。
【0057】
(実施例1)
実施例1に係る光硬化性組成物は、各配合物質を表1に示す配合割合で混合、撹拌して調製した。なお、表1において各配合物質の配合量は「g」で示している。また、配合物質の詳細は以下のとおりである。
(A成分:A1)イソボニルアクリレート(IBXA、大阪有機化学工業株式会社製)
(A成分:A2)4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA、大阪有機化学工業株式会社製)
(B成分:B1)ジフェニルエタンジオン(ベンジル、東京化成工業株式会社製)
(B成分:B2)1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジオン(カンファーキノン、和光純薬工業株式会社製)
(B成分:B3)2,3-ブタンジオン(ジアセチル、東京化成工業株式会社製)
(B成分:B4)3-メチル―2-ヒドロキシ-2-シクロペンテン-1-オン(シクロテン、東京化成工業株式会社製)
(B成分:B5)パルミチン酸アスコルビル(東京化成工業株式会社製)
(B’成分:B’1)3-ヒドロキシ-2-ブタノン(アセトイン、東京化成工業株式会社製)
(B’成分:B’2)2,3-ジヒドロキシブタン(東京化成工業株式会社製)
(B’成分:B’3)p-ジメチルアミノ安息香酸エチル(東京化成工業株式会社製)
(B’成分:B’4)クメンハイドロパーオキサイド(製品名パークミルH-80、日油株式会社製)
(C成分:C1)2,4-ジエチルチオキサントン(製品名カヤキュアDETX-S、日本化薬株式会社製)
(C成分:C2)ベンゾフェノン(東京化成工業株式会社製)
(硬化促進剤)o-ベンゾイックスルフィミド(サッカリン)
【0058】
【0059】
(SPCC固着性試験)
被着体としての冷間圧延鋼板(SPCC)を2枚準備し、各被着体表面をアセトンにより脱脂した。脱脂した第1の被着体表面に、厚さが約1mmになるように実施例1に係る光硬化性組成物を均一に塗布した。次に、第1の被着体に塗布された実施例1に係る光硬化性組成物に紫外線(UV)を照射した[照射条件1:UV-LEDランプ(波長365nm、照度:1000mW/cm2)、積算光量:2000mJ/cm2]。UV光照射後、1分以内に、脱脂済みの第2の被着体を、UV光が照射された光硬化性組成物を挟むように第1の被着体に貼り合わせ、試験片を作製した。続いて、この試験片を23℃50%RHの環境下で養生し、所定の時間経過後に試験片を指で押して一方の被着体に対し、他方の被着体がずれるか否かを評価した。
【0060】
固着性試験の評価基準は以下のとおりである。
「◎」:1時間経過後に被着体がずれ動かない(硬化)。
「○」:1時間経過後は被着体がずれ動くが、24時間経過後には被着体がずれ動かない(硬化)。
「×」:24時間経過後であっても被着体がずれ動く(未硬化)。
また、貼合不可ではUV光を照射直後に光硬化組成物が硬化してしまい、第2の被着体が貼り合せられなかった。
【0061】
(貯蔵安定性試験)
実施例1に係る光硬化性組成物10gをガラス瓶に密閉した。そして、当該ガラス瓶を80℃の環境下に静置し、内容物の変化を評価した。貯蔵安定性試験の評価基準は以下のとおりである。
「○」:12時間経過後に内容物に変化がない。
「×」:12時間経過後に内容物の粘度の著しい増加、又はゲル化が観察される。
【0062】
(実施例2~7及び比較例1~6)
表1に示すように、配合物質を変更した以外は実施例1と同様の方法で光硬化性組成物を得た後、得られた光硬化性組成物の特性を実施例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。ただし、実施例3におけるUV光の照射条件は以下のとおりである。
照射条件2:メタルハライドランプ コールドカットフィルタ装着、照度:140mW/cm2、積算光量:400mJ/cm2
【0063】
表1を参照すると分かるように、実施例に係る光硬化性組成物はいずれも、UV照射後に金属製の被着体で挟むことですばやく硬化するという優れた固着性を示した。また、実施例に係る光硬化性組成物はいずれも、80℃の高温下であっても少なくとも12時間は変化がなく、貯蔵安定性が優れていることが示された。なお、嫌気性接着剤に通常用いるクメンハイドロパーオキサイドを含有している比較例6は、光照射が不要であるものの、貯蔵安定性が「×」で悪い結果を示した。以上より、実施例に係る光硬化性組成物は、不透明材料同士の貼り合わせができると共に貯蔵安定性に非常に優れていることが示された。
【0064】
(実施例8)
実施例8に係る光硬化性組成物は、各配合物質を表2に示す配合割合で混合、撹拌して調製した。なお、表2において各配合物質の配合量は「g」で示している。また、配合物質の詳細は以下のとおりである。
(A成分:A1)イソボニルアクリレート(IBXA、大阪有機化学工業株式会社製)
(A成分:A2)4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA、大阪有機化学工業株式会社製)
(A成分:A3)2-ヒドロキシエチルメタアクリレート(HEMA)
(B成分:B1)ジフェニルエタンジオン(ベンジル、東京化成工業株式会社製)
(B成分:B2)1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジオン(カンファーキノン、和光純薬工業株式会社製)
(B成分:B3)2,3-ブタンジオン(ジアセチル、東京化成工業株式会社製)
(B成分:B4)3-メチル―2-ヒドロキシ-2-シクロペンテン-1-オン(シクロテン、東京化成工業株式会社製)
(B成分:B5)パルミチン酸アスコルビル(東京化成工業株式会社製)
(C成分)2,4-ジエチルチオキサントン(製品名カヤキュアDETX-S、日本化薬株式会社製)
(D成分:D1)オクチル酸鉄(3+)(製品名ニッカオクチックス鉄、日本化学産業株式会社製)
(D成分:D2)アセチルアセトンバナジウム(4+)(製品名ナーセムバナジウム、日本化学産業株式会社製)
(D成分:D3)ナフテン酸銅(2+)(製品名ナフテックス銅、日本化学産業株式会社製)
(D成分:D4)フェロセン(東京化成工業株式会社製)
(硬化促進剤)o-ベンゾイックスルフィミド(サッカリン)
(重合促進剤)オクチルアミン(n-オクチルアミン)(東京化成工業株式会社製)
(重合促進剤)ベンゾチアゾール(東京化成工業株式会社製)
【0065】
【0066】
(PVC×PVC固着性試験)
不透明材料である被着体としてのポリ塩化ビニル(PVC)板を2枚準備し、各被着体表面をイソプロピルアルコールにより脱脂した。脱脂した第1の被着体表面に、厚さが約1mmになるように実施例8に係る光硬化性組成物を均一に塗布した。次に、第1の被着体に塗布された実施例8に係る光硬化性組成物に紫外線(UV)を照射した[照射条件1:UV-LEDランプ(波長365nm、照度:1000mW/cm2)、積算光量:2000mJ/cm2]。UV光照射後、1分以内に、脱脂済みの第2の被着体を、UV光が照射された光硬化性組成物を挟むように第1の被着体に貼り合わせ、試験片を作製した。続いて、この試験片を23℃50%RHの環境下で養生し、所定の時間経過後に試験片を指で押して一方の被着体に対し、他方の被着体がずれるか否かを評価した。
【0067】
固着性試験の評価基準は以下のとおりである。
「◎」:1時間経過後に被着体がずれ動かない(硬化)。
「○」:1時間経過後は被着体がずれ動くが、24時間経過後には被着体がずれ動かない(硬化)。
「×」:24時間経過後であっても被着体がずれ動く(未硬化)。
【0068】
(貯蔵安定性試験)
調製した実施例8に係る光硬化性組成物10gを遮光容器に密閉した。そして、当該遮光容器を23℃の環境下に翌日まで(具体的には、12時間)静置し、内容物の外観を観察した。貯蔵安定性試験の評価基準は以下のとおりである。
「○」:光硬化性組成物の調製直後から変化なし。
「×」:著しい変色、又は遮光容器内でのゲル化が観察された。
【0069】
(実施例8~17、及び参考例)
表2に示すように、配合物質を変更した以外は実施例8と同様の方法で光硬化性組成物を得た後、得られた光硬化性組成物の特性を実施例8と同様に評価した。その結果を表2に示す。ただし、参考例におけるUV光の照射条件は以下のとおりである。
照射条件2:メタルハライドランプ コールドカットフィルタ装着、照度:330mW/cm2、積算光量:1100mJ/cm2、3パス照射
【0070】
表2を参照すると分かるように、実施例に係る光硬化性組成物はいずれも、UV照射後に被着体で挟むことですばやく硬化するという優れた固着性を示した。また、実施例に係る光硬化性組成物は、金属塩や金属錯体含有しているものの、調製直後から長時間変化がなく、貯蔵安定性が優れていることが示された。なお、参考例に係る硬化性組成物は、貯蔵安定性が優れているものの固着性は「×」で悪い結果を示した。すなわち、実施例に係る光硬化性組成物は、硬化速度が速いと共に貯蔵安定性に非常に優れていることが示された。
【0071】
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、上記に記載した実施の形態及び実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び実施例の中で説明した特徴の組合せのすべてが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点、及び本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能である点に留意すべきである。