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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】作業装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 17/02 20060101AFI20230605BHJP
【FI】
B25J17/02 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018229687
(22)【出願日】2018-12-07
(65)【公開番号】P2020089954
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野瀬 賢蔵
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-193009(JP,A)
【文献】特開2020-091026(JP,A)
【文献】特開2016-223482(JP,A)
【文献】特開平11-287303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1直動ユニットと、
第1球面リンク作動装置を有するとともに、前記第1直動ユニットに取り付けられた第1回転ユニットと、
前記第1回転ユニットに取り付けられるとともに、ワークに対する作業を行う第1エンドエフェクタとを備え、
前記第1直動ユニットは、前記第1回転ユニットを並進3自由度で移動させるように構成されており、
前記第1球面リンク作動装置は、前記第1球面リンク作動装置の回転中心を中心とし、第1半径を有する球面上を移動可能であり、かつ前記第1半径が可変となっている第1先端部材を含むとともに、前記第1先端部材を移動させることにより前記第1エンドエフェクタの位置及び姿勢を変更可能に構成されており、
前記第1球面リンク作動装置は、第1基端部材と、第1リンク機構、第2リンク機構及び第3リンク機構とをさらに有し、
前記第1リンク機構、前記第2リンク機構及び前記第3リンク機構の各々は、第1回転対偶部において前記第1基端部材に回転可能に接続されている第1リンク部材と、第2回転対偶部において前記第1リンク部材に回転可能に接続されている第2リンク部材と、第3回転対偶部において前記第2リンク部材に回転可能に接続されている第3リンク部材と、第4回転対偶部において前記第3リンク部材に回転可能に接続されており、かつ第5回転対偶部において前記第1先端部材に回転可能に接続されている第4リンク部材とを有し、
前記第1リンク機構、前記第2リンク機構及び前記第3リンク機構において、前記第5回転対偶部の中心軸は互いに重なっており、
前記第1リンク機構、前記第2リンク機構及び前記第3リンク機構において、前記第1回転対偶部の中心軸、前記第2回転対偶部の中心軸及び前記第5回転対偶部の中心軸は、前記第1球面リンク作動装置の回転中心と交わっている、作業装置。
【請求項2】
前記第1回転ユニットは、第1回転アクチュエータをさらに有しており、
前記第1回転アクチュエータは、前記第1エンドエフェクタを第1中心軸周りに回転させるように構成されている、請求項1に記載の作業装置。
【請求項3】
前記ワークが載置される設置台をさらに備え、
前記第1直動ユニットは、前記設置台とは反対側にステージが設けられた直動アクチュエータで構成されている、請求項2に記載の作業装置。
【請求項4】
前記第1球面リンク作動装置は、前記第1先端部材の中心軸である第2中心軸が前記第1球面リンク作動装置の原点姿勢において前記第1中心軸に一致するように配置される、
請求項2又は請求項3に記載の作業装置。
【請求項5】
前記第1基端部材は、前記第1回転アクチュエータに取り付けられており
前記第1回転アクチュエータは、前記第1直動ユニットに取り付けられ、
前記第1エンドエフェクタは、前記第1先端部材に取り付けられる、請求項2~請求項4のいずれか1項に記載の作業装置。
【請求項6】
第2直動ユニットと、
第2球面リンク作動装置を有するとともに、前記第2直動ユニットに取り付けられた第2回転ユニットと、
前記第2回転ユニットに取り付けられるとともに、前記ワークに対する作業を行う第2エンドエフェクタとをさらに備え、
前記第2直動ユニットは、前記第2回転ユニットを並進3自由度で移動させるように構成されており、
前記第2球面リンク作動装置は、前記第2球面リンク作動装置の回転中心を中心とし、第2半径を有する球面上を移動可能であり、かつ前記第2半径が可変となっている第2先端部材を含むとともに、前記第2先端部材を移動させることにより前記第2エンドエフェクタの位置及び姿勢を変更可能に構成されており
前記第2球面リンク作動装置は、第2基端部材と、第4リンク機構、第5リンク機構及び第6リンク機構とをさらに有し、
前記第4リンク機構、前記第5リンク機構及び前記第6リンク機構の各々は、第6回転対偶部において前記第2基端部材に回転可能に接続されている第5リンク部材と、第7回転対偶部において前記第5リンク部材に回転可能に接続されている第6リンク部材と、第8回転対偶部において前記第6リンク部材に回転可能に接続されている第7リンク部材と、第9回転対偶部において前記第7リンク部材に回転可能に接続されており、かつ第10回転対偶部において前記第2先端部材に回転可能に接続されている第8リンク部材とを有し、
前記第4リンク機構、前記第5リンク機構及び前記第6リンク機構において、前記第10回転対偶部の中心軸は互いに重なっており、
前記第4リンク機構、前記第5リンク機構及び前記第6リンク機構において、前記第6回転対偶部の中心軸、前記第7回転対偶部の中心軸及び前記第10回転対偶部の中心軸は、前記第2球面リンク作動装置の回転中心と交わっている、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の作業装置。
【請求項7】
前記第2回転ユニットは、第2回転アクチュエータをさらに有しており、
前記第2回転アクチュエータは、前記第2エンドエフェクタを第3中心軸周りに回転させるように構成されている、請求項6に記載の作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2005-32951号公報)には、多関節型ロボットが記載されている。特許文献2(特許第4528321号公報)には、双腕ロボットの肩幅空間制限装置が記載されている。特許文献3(特開2017-193009号公報)には、作動装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-32951号公報
【文献】特許第4528321号公報
【文献】特開2017-193009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の多関節型ロボットの各関節は、全て回転1自由度の関節となっている。そのため、多関節型ロボットの先端に取り付けられるエンドエフェクタの位置及び姿勢を僅かに変更する場合であっても、複数のモータを協調させて駆動させる必要がある。したがって、特許文献1に記載の多関節型ロボットに細かい作業を高速に行わせることは困難である。特許文献2に記載の双腕ロボットの肩幅空間制限装置に関しても、特許文献1に記載の多関節型ロボットと同様の問題がある。
【0005】
特許文献3に記載の作動装置において、エンドエフェクタは、パラレルリンク機構を含むリンク作動装置に取り付けられており、リンク作動装置は、複数の直動アクチュエータにより、X方向、Y方向及びZ方向に沿って移動可能になっている。特許文献3に記載の作動装置においては、エンドエフェクタの先端をその軸方向に沿って移動させる場合に、複数の直動アクチュエータを動作させることが不可欠となる。その結果、特許文献3に記載の作動装置においては、振動が発生しやすく、位置決め精度が低下しやすい。
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本発明は、細かい作業を効率的かつ精度よく行うことが可能な作業装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る作業装置は、第1直動ユニットと、第1球面リンク作動装置を有する第1回転ユニットと、第1回転ユニットに取り付けられるとともにワークに対する作業を行う第1エンドエフェクタとを備える。第1直動アクチュエータは、第1回転ユニットを並進3自由度で移動させるように構成されている。第1球面リンク作動装置は、第1球面リンク作動装置の回転中心を中心とし、第1半径を有する球面上を移動可能であり、かつ第1半径が可変となっている第1先端部材を含む。第1球面リンク作動装置は、第1先端部材を移動させることにより、第1エンドエフェクタの位置及び姿勢を変更可能に構成されている。
【0008】
上記の作業装置によると、第1エンドエフェクタの大きな移動は第1直動ユニットが担い、第1エンドエフェクタの小さな移動は第1回転ユニットが担う。そのため、上記の作業装置によると、細かい作業を行う際に第1直動ユニットを駆動する必要が無いため、細かい作業を効率的かつ精度よく行うことが可能となる。
【0009】
上記の作業装置において、第1回転ユニットは、第1回転アクチュエータをさらに有していてもよい。第1回転アクチュエータは、第1エンドエフェクタを第1中心軸周りに回転させるように構成されていてもよい。
【0010】
上記の作業装置は、ワークが載置される設置台をさらに備えていてもよい。第1直動ユニットは、設置台とは反対側にステージが設けられた直動アクチュエータで構成されていてもよい。この場合、設置台周辺の空間(作業空間)を広く確保することが可能になるとともに、作業者が作業空間内に手を入れた際等の安全性を向上させることができる。
【0011】
上記の作業装置において、第1球面リンク作動装置は、第1先端部材の中心軸である第2中心軸が第1球面リンク作動装置の原点姿勢において第1中心軸に一致するように配置されていてもよい。この場合、第1エンドエフェクタの先端位置の計算が容易になる。
【0012】
上記の作業装置において、第1球面リンク作動装置は、第1回転アクチュエータに取り付けられた第1基端部材をさらに含んでいてもよい。第1回転アクチュエータは、第1直動ユニットに取り付けられていてもよい。第1エンドエフェクタは、第1先端部材に取り付けられていてもよい。この場合、第1球面リンク作動装置の負荷を軽減することができるため、第1球面リンク作動装置をコンパクトにすることができる。
【0013】
上記の作業装置は、第2直動ユニットと、第2球面リンク作動装置を有する第2回転ユニットと、第2回転ユニットに取り付けられるとともに、ワークに対する作業を行う第2エンドエフェクタとをさらに備えていてもよい。第2直動アクチュエータは、第1回転ユニットを並進3自由度で移動させるように構成されていてもよい。第2球面リンク作動装置は、第2球面リンク作動装置の回転中心を中心とし、第2半径を有する球面上を移動可能であり、かつ第2半径が可変となっている第2先端部材を含んでいてもよい。第2球面リンク作動装置は、第2先端部材を移動させることにより第2エンドエフェクタの位置及び姿勢を変更可能に構成されていてもよい。この場合、作業者の代わりとなる作業(例えば、部品の組み立て)を行うことが可能となる。
【0014】
上記の作業装置において、第2回転ユニットは、第2回転アクチュエータをさらに有していてもよい。第2回転アクチュエータは、第2エンドエフェクタを第3中心軸周りに回転させるように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様に係る作業装置によると、細かい作業を効率的かつ精度よく行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る作業装置10の斜視図である。
図2】第1実施形態に係る作業装置10の正面図である。
図3】第1実施形態に係る作業装置10における球面リンク作動装置32の斜視図である。
図4図3のIV-IVにおける断面図である。
図5図4のV-Vにおける断面図である。
図6】第2実施形態に係る作業装置20の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さない。
【0018】
(第1実施形態)
以下に、第1実施形態に係る作業装置10に関する説明を行う。
【0019】
<第1実施形態に係る作業装置の概略構造>
図1は、第1実施形態に係る作業装置10の斜視図である。図2は、第1実施形態に係る作業装置10の正面図である。図1及び2に示されるように、作業装置10は、架台1と、直動ユニット2(第1直動ユニット)と、回転ユニット3(第1回転ユニット)と、エンドエフェクタ4(第1エンドエフェクタ)と、設置台5とを有している。設置台5上には、ワークWが載置されている(なお、図2中において、ワークWは、点線で示されている)。
【0020】
直動ユニット2は、架台1に取り付けられている。回転ユニット3は、直動ユニット2に取り付けられている。エンドエフェクタ4は、回転ユニット3に取り付けられている。直動ユニット2は、回転ユニット3を並進3自由度で移動させるように構成されている。エンドエフェクタ4は、ワークWに対する作業を行う部分である。
【0021】
<架台>
架台1は、第1部分11と、第2部分12とを有している。第1部分11は、第1方向Xに沿って延在している。なお、第1方向Xは、例えば作業装置10の設置面に平行な方向である。第2部分12は、第1部分11の一方端に接続されている。第2部分12は、第1部分11の一方端から作業装置10の設置面に向かって延在することにより、作業装置10の設置面上において第1部分11を支持している。第2部分12は、例えば第3方向Zに沿って延在している。第3方向Zは、例えば作業装置10の設置面に直交している方向である。
【0022】
<直動ユニット>
直動ユニット2は、第1直動アクチュエータ21と、第2直動アクチュエータ22と、第3直動アクチュエータ23とを有している。
【0023】
第1直動アクチュエータ21は、架台1(具体的には、第1部分11)に取り付けられている。第1直動アクチュエータ21は、ステージ21aと、駆動部21bとを有している。駆動部21bは、例えばモータで構成されている。駆動部21bは、ステージ21aを第1方向Xに沿って移動させる。
【0024】
第2直動アクチュエータ22は、第1直動アクチュエータ21(具体的には、ステージ21a)に取り付けられている。第2直動アクチュエータ22は、ステージ22aと、駆動部22bとを有している。駆動部22bは、例えばモータで構成されている。駆動部22bは、ステージ22aを第2方向Yに沿って移動させる。なお、第2方向Yは、第1方向X及び第3方向Zに直交する方向である。
【0025】
第3直動アクチュエータ23は、第2直動アクチュエータ22(具体的には、ステージ22a)に取り付けられている。第3直動アクチュエータ23は、ステージ23aと、駆動部23bとを有している。駆動部23bは、例えばモータで構成されている。駆動部23bは、ステージ23aを第3方向Zに沿って移動させる。なお、第3方向Zは、第1方向X及び第2方向Yに直交している。
【0026】
第1直動アクチュエータ21は、第2直動アクチュエータ22及び第3直動アクチュエータ23を第1方向Xに沿って移動させる。第2直動アクチュエータ22は、第3直動アクチュエータ23を第2方向Yに沿って移動させる。第3直動アクチュエータ23は、ステージ23aを第3方向Zに沿って移動させる。そのため、ステージ23aは、第1方向X、第2方向Y及び第3方向Zの3方向に沿って移動することになる(並進3自由度を有している)。後述のとおり、ステージ23aには回転ユニット3が取り付けられるため、直動ユニット2は、回転ユニット3を並進3自由度で移動させることができる。
【0027】
ステージ21a、ステージ22a及びステージ23aは、作業装置10の作業空間の外側を向くように配置されていることが好ましい。すなわち、ステージ21a、ステージ22a及びステージ23aは、第1直動アクチュエータ21、第2直動アクチュエータ22及び第3直動アクチュエータ23の設置台5とは反対側の面に設けられていることが好ましい。
【0028】
<回転ユニット>
回転ユニット3は、回転アクチュエータ31(第1回転アクチュエータ)と、球面リンク作動装置32(第1球面リンク作動装置)とを有している。なお、回転ユニット3は、回転アクチュエータ31を有していなくてもよい。
【0029】
[回転アクチュエータ]
回転アクチュエータ31は、例えば、第1中心軸周りに回転する回転軸を有するモータで構成されている。回転アクチュエータ31は、直動ユニット2(より具体的には、ステージ23a)に、取り付け部材33を介して取り付けられている。
【0030】
[球面リンク作動装置]
図3は、第1実施形態に係る作業装置10における球面リンク作動装置32の斜視図である。図4は、図3のIV-IVにおける断面図である。図5は、図4のV-Vにおける断面図である。図3~5に示されるように、球面リンク作動装置32は、基端部材32a(第1基端部材)と、先端部材32b(第1先端部材)と、リンク機構32c、リンク機構32d及びリンク機構32eとを有している。
【0031】
基端部材32aは、板状の部材である。基端部材32aの平面形状は、例えば、円形である。但し、基端部材32aの平面形状はこれに限られない。基端部材32aは、外周部において、固定部32aaと、固定部32abと、固定部32acとを有している。固定部32aa~固定部32acは、板状の形状を有している。固定部32aa~固定部32acには、それぞれ、貫通穴32adが形成されている。貫通穴32adは、固定部32aa~固定部32acを厚さ方向に貫通している。
【0032】
姿勢制御用駆動源32ae、姿勢制御用駆動源32af及び姿勢制御用駆動源32agは、それぞれ、回転軸32ahを有している。姿勢制御用駆動源32ae~姿勢制御用駆動源32agの回転軸32ahは、それぞれ、固定部32aa~固定部32acの貫通穴32adに挿入されている。姿勢制御用駆動源32ae~姿勢制御用駆動源32agは、回転軸32ahを中心軸周りに回転させる。
【0033】
リンク機構32c~リンク機構32eは、それぞれ、第1リンク部材32fと、第2リンク部材32gと、第3リンク部材32hと、第4リンク部材32iとを有している。
【0034】
第1リンク部材32fは、例えば、円弧状に延びる棒状の部材である。第1リンク部材32fは、第1回転対偶部において、基端部材32aに回転可能に接続されている。より具体的には、第1リンク部材32fの一方端には、貫通穴32faが形成されている。第1リンク部材32fは、貫通穴32faに回転軸32ahが挿入されることにより、基端部材32aに接続されている。なお、第1リンク部材32fは、回転軸32ahにナット等が取り付けられることにより、回転軸32ahからの脱落が抑制されている。
【0035】
第1リンク部材32fと基端部材32aとの接続は、回転軸32ahの中心軸周りに回転可能になっている。すなわち、第1回転対偶部は、第1リンク部材32fの一方端に形成された貫通穴32faと回転軸32ahとで構成されており、その中心軸は、回転軸32ahの中心軸に一致している。
【0036】
第1リンク部材32fの他方端には、軸部32fbが形成されている。例えば、軸部32fbは、第1リンク部材32fの外周側側面(ここで、第1リンク部材32fの外周側側面とは、第1リンク部材32fの内周側側面(基端部材32aの中心側を向いている側面)の反対面である)に形成されている。軸部32fbは、基端部材32aの径方向に沿って基端部材32aの外側へと突出している。
【0037】
第2リンク部材32gは、直線状に延びている棒状の部材である。第2リンク部材32gは、第2回転対偶部において、第1リンク部材32fにそれぞれ回転可能に接続されている。より具体的には、第2リンク部材32gの一方端には、貫通穴32gaが形成されている。第2リンク部材32gは、貫通穴32gaに軸部32fbが挿入されることにより、第1リンク部材32fに接続されている。第2リンク部材32gは、軸部32fbにナット等が取り付けられることにより、軸部32fbからの脱落が抑制されている。
【0038】
第1リンク部材32fと第2リンク部材32gとの接続は、軸部32fbの中心軸周りに回転可能となっている。すなわち、第2回転対偶部は、第2リンク部材32gの一方端に形成された32gaと軸部32fbとで構成されており、その中心軸は、軸部32fbの中心軸に一致している。
【0039】
第1回転対偶部の中心軸及び第2回転対偶部の中心軸は、球面リンク作動装置32の球面リンク中心点32jにおいて交差している。すなわち、回転軸32ah及び軸部32fbの中心軸は、球面リンク中心点32jにおいて交差している。
【0040】
第3リンク部材32hは、直線状に延びている棒状の部材である。第3リンク部材32hは、第3回転対偶部において、第2リンク部材32gに回転可能に接続されている。より具体的には、第2リンク部材32gの他方端には、第3リンク部材32hの一方端を受け入れる凹部が形成されている。第2リンク部材32gの他方端には、貫通穴が形成されている。当該貫通穴は、上記の凹部に面する位置に形成されている。第3リンク部材32hの一方端には、貫通穴32haが形成されている。
【0041】
第2リンク部材32gの他方端に形成された貫通穴と第3リンク部材32hの一方端に形成された貫通穴32haは、第3リンク部材32hの一方端が上記の凹部に受け入れられた状態において、直線状に並んでいる。第2リンク部材32gの他方端に形成された貫通穴及び第3リンク部材32hの一方端に形成された貫通穴32haに連結部材32hbを挿入することにより、第3リンク部材32hは、第2リンク部材32gに回転可能に接続されている。なお、連結部材32hbは、例えばボルト及びナットである。
【0042】
第2リンク部材32gと第3リンク部材32hとの接続は、連結部材32hbの中心軸周りに回転可能となっている。すなわち、第3回転対偶部は、第3リンク部材32hの一方端に形成された貫通穴32haと、第2リンク部材32gの他方端に形成された貫通穴と、連結部材32hbとで構成されており、その中心軸は、連結部材32hbの中心軸に一致している。第3回転対偶部の中心軸(すなわち、連結部材32hbの中心軸)は、第2回転対偶部の中心軸(すなわち、軸部32fbの中心軸)と直交していることが好ましい。
【0043】
第3リンク部材32hの他方端には、貫通穴32hcが形成されている。第4リンク部材32iには、第3リンク部材32hの他方端を受け入れる凹部が形成されている。第4リンク部材32iは、当該凹部に面する壁部32iaを有している。壁部32iaには、当該凹部につながる貫通穴が形成されている。
【0044】
第3リンク部材32hの他方端に形成された貫通穴32hc及び壁部32iaに形成された貫通穴は、直線状に並んでいるとともに、連結部材32ibが挿入されている。連結部材32ibは、例えばボルト及びナットである。これにより、第3リンク部材32hと第4リンク部材32iとの接続は、連結部材32ibの中心軸周りに回転可能となっている。
【0045】
すなわち、第4リンク部材32iは、第4回転対偶部において、第3リンク部材32hに回転可能に接続されている。そして、第4回転対偶部は、第3リンク部材32hの他方端に形成された貫通穴32hcと、壁部32iaに形成された貫通穴と、連結部材32ibとで構成されており、その中心軸は、連結部材32ibの中心軸に一致している。第4回転対偶部の中心軸(すなわち、連結部材32ibの中心軸)は、第3回転対偶部の中心軸(すなわち、連結部材32hbの中心軸)と平行になっていることが好ましい。
【0046】
第4リンク部材32iは、ベース部32icを有している。ベース部32icの平面形状は、円形である。ベース部32icの中央には、貫通穴が形成されている。リンク機構32c~リンク機構32eのベース部32icは、当該貫通穴が互いに重なるように、積層されている。ベース部32icは、合わせて先端部材32bを構成している。当該貫通穴には、連結部材32idが挿入されている。連結部材32idは、例えばボルト及びナットである。
【0047】
第4リンク部材32iは、連結部材32idの中心軸(第2中心軸)に回転可能に先端部材32bに接続されている。すなわち、ベース部32icに形成された貫通穴及び連結部材32idで第5回転対偶部が構成されており、リンク機構32c~リンク機構32eの第5回転対偶部は、一カ所に重なるように配置されていることになる。第5回転対偶部の中心軸(すなわち、連結部材32idの中心軸)は、第1回転対偶部の中心軸及び第2回転対偶部の中心軸と球面リンク中心点32jにおいて交差している。第5回転対偶部の中心軸は、第3回転対偶部の中心軸及び第4回転対偶部の中心軸とねじれた配置になっている。例えば、第5回転対偶部の中心軸は、第3回転対偶部の中心軸及び第4回転対偶部の中心軸と直交している。
【0048】
リンク機構32c~リンク機構32eの第1リンク部材32fにおいて、第1回転対偶部の中心軸周りの回転角度をそれぞれ変更することにより、先端部材32bの位置を任意に変更することができる。より具体的には、球面リンク作動装置32においては、上述のような構成とすることにより、球面リンク中心点32jを中心とする球面上を先端部材32bが移動する。すなわち、先端部材32bの位置は、球面リンク中心点32jを原点とする極座標(r,θ,φ)で表すことができる。
【0049】
ここで、中心間距離r(第1半径)は、球面リンク中心点32jと先端部材32bの中心との距離である。折れ角θは、先端部材32bの中心から垂直方向に降ろした直線が基端部材32aとリンク機構32c~リンク機構32eの第1回転対偶部の中心軸を含む平面と交わる点と球面リンク中心点32jとを通る直線と第5回転対偶部の中心軸とがなす角度である。旋回角φは、先端部材32bの中心から垂直方向に降ろした直線がリンク機構32c~リンク機構32eの第1回転対偶部の中心軸を含む平面と交わる点と球面リンク中心点32jとを通る直線とリンク機構32cの第1回転対偶部の中心軸とがなす角度である。
【0050】
以上のように、球面リンク作動装置32において、先端部材32bは、球面リンク中心点32jを中心とする半径が中心間距離rの球面上を移動可能であるとともに、当該移動とは独立して第5回転対偶部の中心軸に沿って先端部材32bを移動させて中心間距離rを可変とすることができる。このように、球面リンク作動装置32は、先端部材32bを合計3自由度で移動させることができる。
【0051】
球面リンク作動装置32は、基端部材32aにおいて、回転アクチュエータ31に取り付けられている。また、エンドエフェクタ4は、先端部材32bにおいて、球面リンク作動装置32に取り付けられている。なお、図示されていないが、球面リンク作動装置32は、基端部材32aにおいて直動ユニット2(ステージ23a)に取り付けられていてもよく、回転アクチュエータ31は、先端部材32bにおいて球面リンク作動装置32に取り付けられていてもよい。この場合、エンドエフェクタ4は、回転アクチュエータ31に取り付けられる。いずれの場合においても、エンドエフェクタ4は、直動ユニット2の動作及び回転ユニット3の動作により、合計7自由度の移動が可能となる。なお、回転ユニット3が回転アクチュエータ31を有していない場合は、直動ユニット2の動作及び回転ユニット3の動作により、合計6自由度の移動が可能となる。
【0052】
球面リンク作動装置32は、原点姿勢にある状態において連結部材32idの中心軸が回転アクチュエータの中心軸と一致するように配置されていることが好ましい。球面リンク作動装置32は、先端部材32bの位置が極座標(r,θ,φ)=(r,0,0)で表される状態にある際、原点姿勢にあることになる。
【0053】
以上をまとめると、球面リンク作動装置32は、パラレルリンク機構を有している。このパラレルリンク機構は、基端部材32aと、先端部材32bと、リンク機構32c~リンク機構32eとを有している。リンク機構32c~リンク機構32eは、基端部材32aと先端部材32bとを接続するように構成されている。リンク機構32c~リンク機構32eは、先端部材32bの基端部材32aに対する姿勢を変更可能に構成されている。リンク機構32c~リンク機構32eのそれぞれは、第1リンク部材32fと、第2リンク部材32gと、第3リンク部材32hと、第4リンク部材32iとを有している。第1リンク部材32fは、第1回転対偶部において基端部材32aに回転可能に接続されている。第2リンク部材32gは、第1リンク部材32fに第2回転対偶部において回転可能に接続されている。第3リンク部材32hは、第2リンク部材32gに第3回転対偶部において回転可能に接続されている。第4リンク部材32iは、第3リンク部材32hに第4回転対偶部において回転可能に接続されている。第4リンク部材32iは、先端部材32bに第5回転対偶部において回転可能に接続されている。リンク機構32c~リンク機構32eにおいては、第1回転対偶部の中心軸と第2回転対偶部の中心軸とが、球面リンク中心点32jにおいて交わっている。リンク機構32c~リンク機構32eの第5回転対偶部の中心軸は、互いに重なり合っているとともに、球面リンク中心点32jと交わっている。
【0054】
このパラレルリンク機構において、第3回転対偶部の中心軸及び第4回転対偶部の中心軸は、互いに平行であるとともに、第2回転対偶部の中心軸と交差していてもよい。このパラレルリンク機構において、第3回転対偶部の中心軸及び第4回転対偶部の中心軸は、第2回転対偶部の中心軸に直交していてもよい。
【0055】
球面リンク作動装置32は、さらに、姿勢制御用駆動源32ae~姿勢制御用駆動源32agを有している。姿勢制御用駆動源32ae~姿勢制御用駆動源32agは、リンク機構32c~リンク機構32eにそれぞれ設置されている。姿勢制御用駆動源32ae~姿勢制御用駆動源32agは、基端部材32aに対する先端部材32bの姿勢を任意に変更することができるように構成されている。
【0056】
<第1実施形態に係る作業装置の効果>
作業装置10においては、エンドエフェクタ4の大きな移動は直動ユニット2が担い、エンドエフェクタ4の小さな移動(エンドエフェクタ4先端の姿勢制御等)は回転ユニット3が担う。直動ユニット2を駆動させると、当該駆動に伴って振動等が発生するとともに、エンドエフェクタ4の移動に必要な時間も増加する。しかしながら、作業装置10においては、細かい作業を行う際に直動ユニット2を駆動する必要が無いため、細かい作業を効率的かつ精度よく行うことが可能となる。
【0057】
また、作業装置10においては、直動ユニット2が第1方向X、第2方向Y及び第3方向Zにおけるエンドエフェクタ4の位置の決定に寄与し、回転アクチュエータ31がθ(θは、回転アクチュエータ31の回転軸周りの回転角度)の決定に寄与し、球面リンク作動装置32がθ(θは、回転アクチュエータ31の回転軸に直交する平面をxy平面とした場合のx軸周りの回転角度)及びθ(θは、回転アクチュエータ31の回転軸に直交する平面をxy平面とした場合のy軸周りの回転角度)の決定に寄与する。したがって、エンドエフェクタ4の位置及び姿勢に関する各パラメータと各構成要素(直動ユニット2、回転アクチュエータ31及び球面リンク作動装置32)との対応関係が理解しやすく、姿勢教示作業などの動作パターンの設定が容易となる。
【0058】
さらに、作業装置10においては、先端部材32bの中心軸(すなわち、第5回転対偶部の中心軸)に沿う方向での細かい作業を行う場合に、折れ角θ及び旋回角φを固定して中心間距離rのみを調整すればよいため、作業装置全体の移動量を小さくすることができる。
【0059】
作業装置10において、ステージ21a、ステージ22a及びステージ23aが設置台5とは反対側に設けられている場合、作業空間を広げることができるとともに、作業空間に作業者が手を入れるような場合でも、安全性を確保しやすくなる。
【0060】
作業装置10において、球面リンク作動装置32が、原点姿勢にある状態において連結部材32idの中心軸が回転アクチュエータ31の中心軸と一致するように配置されている場合、エンドエフェクタ4の位置に関する座標計算が簡単になり、作業者が作業装置の動作をイメージしやすくなる。
【0061】
作業装置10において、回転アクチュエータ31が直動ユニット2に取り付けられ、球面リンク作動装置32が回転アクチュエータ31に取り付けられ、かつエンドエフェクタ4が球面リンク作動装置32に取り付けられている場合、球面リンク作動装置32は、エンドエフェクタ4のみを駆動すればよい。そのため、この場合には、球面リンク作動装置32の駆動負荷が小さくなり、球面リンク作動装置32をコンパクト化することが可能となる。
【0062】
(第2実施形態)
以下に、第2実施形態に係る作業装置20に関する説明を行う。なお、第1実施形態に係る作業装置10と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
<第2実施形態に係る作業装置の構成>
図6は、第2実施形態に係る作業装置20の正面図である。図6に示されるように、作業装置20において、架台1は、第1部分11及び第2部分12に加え、第3部分13を有している。第3部分13は、第1部分11の他方端から作業装置20の設置面に向かって延在することで、作業装置20の設置面上において第1部分11を支持している。第3部分13は、例えば第3方向Zに沿って延在している。このことを別の観点からいえば、作業装置20においては、架台1は、門型の形状を有している。
【0063】
作業装置20は、直動ユニット2に加えて、直動ユニット6(第2直動ユニット)を有している。直動ユニット6の構成は直動ユニット2の構成と同様であるため、その詳細な説明は省略する。作業装置20は、回転ユニット3に加えて、回転ユニット7(第2回転ユニット)を有している。回転ユニット7の構成は回転ユニット3の構成と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0064】
作業装置20は、エンドエフェクタ4に加えて、エンドエフェクタ8(第2エンドエフェクタ)を有している。エンドエフェクタ8は、エンドエフェクタ4と同一のエンドエフェクタであってもよく、エンドエフェクタ4と異なるエンドエフェクタであってもよい。具体例としては、エンドエフェクタ4がピン等の挿入を行うハンドであり、エンドエフェクタ8がラベルの貼付等を行う真空パッドである。
【0065】
エンドエフェクタ8は、エンドエフェクタ4との間でワークWを挟み込むように配置されている。すなわち、作業装置20は、双腕型の構成となっている。
【0066】
<第2実施形態に係る作業装置の効果>
作業装置20は、上記のとおり、双腕型の構成となっている。そのため、作業者の代わりとなる作業(例えば、部品の組み立て)を行うことが可能となる。
【0067】
作業装置20においては、架台1が門型の構造を有している。そのため、作業装置20によると、架台1の剛性が向上するとともに、当該門型の構造の内側にコンベアを通すことにより、ライン作業を容易に行うことが可能となる。
【0068】
以上のように本発明の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むことが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0069】
上記の実施形態は、作業装置に特に有利に適用される。
【符号の説明】
【0070】
10 作業装置、1 架台、11 第1部分、12 第2部分、13 第3部分、2 直動ユニット、21 第1直動アクチュエータ、22 第2直動アクチュエータ、23 第3直動アクチュエータ、21a,22a,23a ステージ、21b,22b,23b 駆動部、3 回転ユニット、31 回転アクチュエータ、32 球面リンク作動装置、32a 基端部材、32aa,32ab,32ac 固定部、32ad 貫通穴、32ae,32af,32ag 姿勢制御用駆動源、32ah 回転軸、32b 先端部材、32c,32d,32e リンク機構、32f 第1リンク部材、32fa 貫通穴、32fb 軸部、32g 第2リンク部材、32ga 貫通穴、32h 第3リンク部材、32ha 貫通穴、32hb 連結部材、32hc 貫通穴、32i 第4リンク部材、32ia 壁部、32ib 連結部材、32ic ベース部、32id 連結部材、32j 球面リンク中心点、33 取り付け部材、4 エンドエフェクタ、5 設置台、6 直動ユニット、7 回転ユニット、8 エンドエフェクタ、20 作業装置、W ワーク、X 第1方向、Y 第2方向、Z 第3方向、r 中心間距離。
図1
図2
図3
図4
図5
図6