(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】単色光信号のエミッタ
(51)【国際特許分類】
H01S 5/062 20060101AFI20230605BHJP
【FI】
H01S5/062
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018230644
(22)【出願日】2018-12-10
【審査請求日】2021-11-11
(32)【優先日】2017-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510132347
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】メネゾ シルヴィ
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-211394(JP,A)
【文献】特開昭61-030088(JP,A)
【文献】特開2016-181688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単色光信号のエミッタ(2;130;200)であって、
該エミッタは、
-周波数vSLで光信号を放出することができる半導体レーザ光源(10;250)
と、
-光信号の線幅を減少させることができる注入電流を生成することができるフィードバックループ(20;132;202)
と、
通過帯域を含む透過スペクトルを有する光学フィルタ(30)
と、
を備え、
該レーザ光源は、周波数vSLを変更することができる注入電流を受信するための少なくとも1つの制御入力(14)と、光信号が放出される少なくとも1つの出力(18)とを備え、
該レーザ光源は、注入電流がない場合に周波数v0で光信号を放出し、
該フィードバックループは、一方では前記レーザ光源の出力(18)に接続され、他方では生成された注入電流を前記レーザ光源に注入するために前記レーザ光源の制御入力(14)に接続され
、
該光学フィルタは、光信号を受信するために前記レーザ光源の出力(18)に接続され
る入力(32)と、注入電流が生成されることに基づいてフィルタリングされた光信号が放出される出力(34)を備え、
該通過帯域は、透過スペクトルにおいて、少なくとも一方の側で、周波数v0を含む周波数
範囲にわたって連続的に変化する立ち上がり又は立ち下がりエッジ(42、48)によって境界が定められ、
該エッジは、前記エッジに沿って予め設定された位置にあり、周波数
範囲に含まれる周波数vbに対応する動作点(43、49)を含み、
-前記エミッタは、前記フィードバックループ(20;132;202)に加えて、周波数vbを周波数v0に自動的に制御するための自動制御ループ(70)を備え、
-前記フィードバックループ(20;132;202)は、生成された注入電流において、前記自動制御ループ(70)により生成された周波数成分の振幅を選択的に減衰させることができる電気フィルタ(98;154;204)を含むことを特徴とする、
エミッタ。
【請求項2】
前記電気フィルタ(98;204)はまた、電気信号のDC成分を減衰させることができ、電気信号のDC成分の減衰は-3dBより高い、
請求項1に記載のエミッタ。
【請求項3】
前記電気フィルタ(98;154;204)は、その内部で電気信号の減衰が-3dBよりも高い阻止帯域(212)を有し、
該阻止帯域は低周波数から高周波数まで連続的に広がり、
低周波数は0Hzに等しいか100Hz未満であり、高周波数は
範囲[fc70;1.3fc70]に含まれ、
ここで、fc70は前記自動制御ループ(70)の-3dBカットオフ周波数である、
請求項1、2のいずれか1項に記載のエミッタ。
【請求項4】
前記電気フィルタは、その内部で電気信号の減衰が-3dBよりも高い阻止帯域を有し、
該阻止帯域は低周波数から高周波数まで連続的に広がり、
低周波数は
範囲[0.7Flock;0.98Flock]に含まれ、
高周波数は
範囲[1.02Flock;1.3Flock]の範囲内に含まれ、
ここで、Flockは、前記自動制御ループによって生成されるフィルタリングされた光信号のスペクトルのその部分の基本周波数である、
請求項1、2のいずれか1項に記載のエミッタ。
【請求項5】
前記自動制御ループ(70)は、
制御入力(74)を含むアクチュエータ(72)
と、光検出器と、制御回路とを含み、
該アクチュエータ(72)は、その制御入力(74)によって受信された制御信号に応じて、前記光学フィルタの前記通過帯域の前記エッジ(48)の移動を引き起こすことができ、
該光検出器は、周波数vbとv0との間の差を表す電気信号を生成することができ、
該
制御回路は、周波数vbとv0との間の差を表す電気信号に基づいて、前記アクチュエータ(72)の制御入力に、前記光学フィルタの前記通過帯域の前記エッジ(48)の移動を誘導する制御信号を生成することができ、周波数vbとv0との間の差を減少させる、
請求項1~4のいずれか1項に記載のエミッタ。
【請求項6】
前記光検出器(76)は、周波数vbとv0との間の差を表す電気信号を生成するように前記光学フィルタ(30)の同じ出力(34)又は他の出力(36)に接続される、
請求項5に記載のエミッタ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のエミッタ(2;130;200)であって、
光信号の周波数を変調することがさらに可能であり、
-前記レーザ光源(10;250)は電気変調信号を受信することができ、それに応答して、受信した電気変調信号に応じて光信号の周波数を移動させることができ、
・前記エミッタは、さらに、電気変調信号を受信するように意図された制御入力(102)を含む変調器(100)
を含み、該変調器は、その制御入力(102)によって受信された電気的変調信号が前記レーザ光源(10; 250)によって受信された電気変調信号と同一であるときに、光信号の周波数vSLに適用される移動と同一である、前記光学フィルタ(30)の前記通過帯域の前記エッジ(48)の移動を誘発することができるか
、又は、
・前記電気フィルタ(204)は、生成された注入電流において、少なくとも周波数fbにおける周波数成分の振幅を選択的に減衰させることができ、ここで、周波数fbは前記電気変調信号の基本周波数である、
エミッタ。
【請求項8】
前記電気フィルタ(204)は、電気信号の減衰が-3dBよりも大きい阻止帯域(210i)によって互いに離間した複数の通過帯域(208i)を有するくし形フィルタを含み、これらの阻止帯域のそれぞれは、周波数fbのそれぞれの整数倍を含む、
請求項7に記載のエミッタ。
【請求項9】
前記光学フィルタ(30)がリング共振器を含む、
請求項1から8のいずれか1項に記載のエミッタ。
【請求項10】
予め設定された動作点(49)が、前記エッジ(48)の傾きの絶対値が最大となる透過スペクトルの前記エッジ(48)の点である、
請求項1から9のいずれか1項に記載のエミッタ。
【請求項11】
前記フィードバックループ(132)は、
-前記光学フィルタによってフィルタリングされる前の光信号のパワーを表す、「基準信号」と呼ばれる電気信号を生成することができる構成要素(136)と、
-生成された注入電流から該基準電気信号を減算することができる減算器(150)と、
を備え、
該
構成要素(136)は、パワー減衰器(142)と、光検出器(144)とを含み、
・パワー減衰器(142)は、
-前記光学フィルタ(30)の上流の前記レーザ光源の出力に接続された入力(138)と、
-パワー減衰係数の範囲内で、前記入力(138)によって受信された信号と同一の光信号を送出する出力(146)とを備え、
前記減衰器の該パワー減衰係数は、前記光学フィルタの減衰係数に等しく、
・
該光検出器(144)は、前記減衰器の出力に接続され
た入力(148)と、前記減衰器の出力から送出された減衰された光信号に基づいて得られた基準電気信号を放出する出力(140)を含む、
請求項1~10のいずれか1項に記載のエミッタ。
【請求項12】
前記透過スペクトルにおいて、前記光学フィルタの前記通過帯域の前記エッジ(48)は立ち下がりエッジである、
請求項1~11のいずれか1項に記載のエミッタ。
【請求項13】
前記フィードバックループは、フィルタリングされた光信号を、該フィルタリングされた光信号のパワーに比例し、それに基づいて注入電流が生成される測定電気信号に変換することができる光検出器(90)を備え、
該光検出器は、フィルタリングされた光信号を受信するために前記光学フィルタ(30)の出力(34)に接続され、前記測定電気信号を放出する出力(94)を備える、
請求項1~12のいずれか1項に記載のエミッタ。
【請求項14】
前記レーザ光源(10)と前記光学フィルタ(30)とが同一基板内に製造され、一体化されていることを特徴とする
請求項1から13のいずれか一項に記載のエミッタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単色光信号のエミッタに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光源、特に半導体レーザ光源は、「周波数雑音」として知られるものを示す。この周波数雑音の結果として、単色レーザの周波数は、レーザ光源の放出周波数vSLにおいて、一定の周波数幅ΔvSLを有する。幅ΔvSLは「線幅」とも呼ばれる。典型的には、周波数雑音を補償するために何もしなければ、幅ΔvSLは一般に1メガヘルツより大きく、大抵の場合1MHzから5MHzの間、半導体レーザ光源の場合には1MHzから10MHzの間となる。ここで、幅ΔvSLは、パワースペクトルの線の半値全幅、すなわち、この線の最大パワーの半分の全幅であると定義される。
【0003】
そのような幅ΔvSLは、例えばFMCW(周波数変調連続波)変調技術の実装などの特定の用途と互換性がない。そのため、同じエミッタ内で半導体レーザ光源とその線幅を減少させるフィードバックループとを組み合わせることが提案されている。
【0004】
従って、単色光信号の既知のエミッタは、以下のものを含む。
-周波数vSLで光信号を放出することができる半導体レーザ光源。このレーザ光源は、周波数vSLを変更することができる注入電流を受け取るための少なくとも1つの制御入力と、光信号が放出される少なくとも1つの出力とを備えている。このレーザ光源は、注入電流が存在しない場合に周波数v0で光信号を放出する。
-光信号の線幅を減少させることができる注入電流を生成することが可能なフィードバックループ。このフィードバックループは、一方ではレーザ光源の出力に接続され、他方ではレーザ光源に生成された注入電流を注入するためにレーザ光源の制御入力に接続されている。このフィードバックループは、この目的で、通過帯域を有する光学フィルタを備えている。この通過帯域は、少なくとも片側で、周波数v0を含む周波数間隔にわたって連続的に変化する、立ち上がり又は立ち下がりエッジによって境界が定められている。このエッジは、この周波数間隔に含まれる周波数vbに対応する予め設定された動作点を含む。この光学フィルタは、注入電流がそれに基づいて生成されるフィルタリングされた光信号が放出される出力を備える。
【0005】
例えば、そのような既知の発光体は以下の非特許文献1、2の論文に開示されている。
【0006】
Vincent CROZATIERによる論文に記載されているエミッタは、周波数vSLを変調することができ、幅ΔvSLを小さくすることができるという点で有利である。この既知のエミッタでは、フィードバックループはマッハツェンダー干渉計を含み、その一方のアームは長さLの光ファイバを使用して生成される。このエミッタでは、長さLはフィードバックループの感度を最大にするためにできるだけ大きくなければならない。この長さLは、大きすぎてもいけない。具体的には、フィードバックループの通過帯域は遅延Td=n.L/cに反比例することが示されている。ここで、nは光ファイバ内の伝搬指数、cは光速、記号「.」は乗算演算を示す。減少される前のレーザの線幅に対応する、数メガヘルツの通過帯域を有するフィードバックループを得るために、遅延Tdは250nsに最大化される。これは60メートルの長さLに相当する。従って、この既知のエミッタは大型である。さらに、マッハツェンダー干渉計のアームの長さのために、このエミッタは振動及び温度変化に敏感である。そのため、温度を安定させ、振動から隔離する必要がある。また、マッハツェンダー干渉計のアームの長さのために、フィードバックループの通過帯域は2.5MHzに制限される。従って、周波数雑音のパワースペクトルが2.5MHzよりも広い幅にわたって広がる場合、後者はフィードバックループによって完全に除去することができない。しかしながら、このエミッタは、レーザ光源の周波数の変調の存在下で動作することができるという利点を有する。
【0007】
Motoich Ohtsuによる論文に記載されているエミッタはまた、レーザ光源の線幅を減少させることを可能にする。対照的に、これを行うためには、レーザ光源の温度をその線幅を減少させることができる温度設定点に自動的に制御しなければならない。レーザ光源の温度を自動的に制御するための機構は大型である。さらに、Motoichi Ohtsuによる論文に提案されているエミッタは、レーザ光源の周波数の変調と両立しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Vincent CROZATIER et al., “Phase locking of a frequency agile laser”, Applied Physics Letters 89, 261115 (2006)
【文献】Motoichi OHTSU et al.: “Linewidth Reduction of a Semiconductor Laser by Electrical Feedback”, IEEE Journal of Quantum Electronics, vol. QE-21, 12/12/1985
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、温度変化又は振動に対するそれらの感度を増加させることなく、あるいは実際には減少させることなく、単色光信号の既知のエミッタの体積を減少させることを目的とする。そのため、その主題は請求項1に記載のそのようなエミッタである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このエミッタの実施形態は、従属請求項の特徴のうちの1つ又は複数を含むことができる。
【0011】
本発明は、限定されない例として示され、図面を参照して与えられる以下の説明を読むことにより、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】フィルタを備える周波数変調された光信号のエミッタの概略図である。
【
図2】
図1のエミッタに用いられるフィルタの2つの透過スペクトルの概略図である。
【
図3】
図1のエミッタに用いられるフィルタの2つの透過スペクトルの概略図である。
【
図4】
図1のエミッタによって受信された電気変調信号の経時変化を示すグラフである。
【
図5】
図1のエミッタの他の実施形態の概略図である。
【
図6】
図1のエミッタの他の実施形態の概略図である。
【
図7】
図6の実施形態に適用される電気フィルタの通過帯域の概略図である。
【
図8】
図1のエミッタに適用することができるレーザ光源の別の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
セクションI:定義と表記
【0014】
これらの図において、同じ参照符号は、同じ要素を参照するために用いられている。この説明の残りにおいて、当業者によく知られている特徴及び機能は詳細には説明されない。
【0015】
本明細書では、用語「接続された(connected)」は、「光学的に接続された」又は「電気的に接続された」のいずれかを意味するために用いられる。以下では、接続の種類、すなわち光学的/電気的接続が文脈から明らかである場合、それが光学的接続であるか電気的接続であるかを特定することなく「接続された」という用語のみが使用される。
【0016】
光信号のパワー又は強度とは、単色光信号については、この光信号の光場Eとこの光場Eの共役との積であることを意味する。光場は電磁波やマクスウェルの方程式の中で用いられる電場Eに対応する。
【0017】
信号の周波数成分とは、所与の周波数におけるこの信号のパワースペクトルの非ゼロ成分を意味する。従って、周波数成分はパワースペクトルの線に対応する。
【0018】
「DC成分」とは、ゼロ周波数の周波数成分を意味する。
【0019】
セクションII:実施形態例
【0020】
図1は、周波数変調光信号のエミッタ2を示す。エミッタ2は、この目的のために以下を含む。
-電気変調信号SE
mを受信するための入力4。
-信号SE
mに応じて変調された光信号SO
m6が放出される出力6。
【0021】
エミッタ2は、周波数vSLで単色光信号を放出する半導体レーザ光源を含む。周波数雑音のため、そのような半導体レーザ光源のレーザ線の幅ΔvSLは一般に1MHzから10MHzの間となる。ここでは、それは数メガヘルツであり、例えば5MHzに等しい。特定のレーザ光源では、この幅ΔvSLは10MHzに達することがある。
【0022】
例えば、ここでレーザ光源10は分布ブラッグ反射器(DVR)レーザとして知られているタイプのレーザ光源である。
【0023】
レーザ光源10は、信号SEmを受信するように意図された入力12、電気注入電流を受信するように意図された入力14、有用な光信号SOm6が放出される第1出力16、及び、そこから幅ΔvSLを狭くするために使用される光信号SOm20が放出される第2出力18を有する。
【0024】
信号SOm20は、そのパワーが異なり得ることを除いて信号SOm6と同一である。例えば、信号SOm20のパワーは信号SOm6のパワーよりも低い。例示として、信号SOm20のパワーは、信号SOm6のパワーの5分の1、好ましくは10分の1である。ここで、例えば、信号SOm20のパワーは信号SOm6のパワーの10分の1である。
【0025】
入力12は入力4に直接接続され、出力16は出力6に直接接続されている。
【0026】
信号SEmは周波数vSLが変調されることを可能にする。ここで、信号SEmは入力12に印加される電流であり、その大きさは時間の関数として変調される。信号SEmのこの変調は、周波数vSLの対応する変調又は移動を引き起こす。より正確には、vSLは、レーザ光源10の自走周波数v0に対して変動する。この変動は、入力12によって受信される電流の大きさに比例する。レーザ光源10の周波数v0は、その入力12によって受信される信号がない場合にこのレーザ光源によって放出される単色信号の周波数である。この周波数v0は、レーザ光源10の固有の特性である。周波数v0は、例えば、温度変化などの外部摂動に応じてゆっくりとしか変動しない。
【0027】
信号SE
mの一例が
図4に示されている。この図において、y軸はアンペアで目盛りが付けられており、x軸は秒で目盛りが付けられている。この例では、信号SE
mは周期的であり、周期T
bのものである。周期T
bは1/f
bに等しく、ここでf
bは信号SE
mの1次の高調波周波数であり、基本周波数とも呼ばれる。
【0028】
1周期Tbにわたって、信号SEmは-Imから+Imまで直線的に変化する。このようなのこぎり波信号では、信号SEmのパワースペクトルは、周波数fb、3fb、5fb
、...、(2n + 1)fbの線で構成され、ここでnは整数である。これらの線の振幅は、nが大きくなるにつれて減少する。
【0029】
この周波数fbは任意の周波数であり得る。しかしながら、実際には、周波数fbは一般に1kHz、10kHz又は100kHzより高い。この実施形態では、周波数fbは100kHzに等しい。
【0030】
幅ΔvSLを減少させるために、エミッタ2は、フィードバックループ20を備える。このループ20は、信号SOm20を受信する入力22と、幅ΔvSLを減少させるために生成された注入電流が放出される出力24とを備える。入力22は出力18に接続されている。出力24は、それに再び注入電流を注入するために、レーザ光源10の入力14に直接接続されている。
【0031】
ループ20は、入力22に直接接続されている入力32を備えた光学フィルタ30を備えている。フィルタ30は2つの出力34及び36を備え、そこから、それぞれ入力32によって受信された信号SOm20から構築された、フィルタ処理された光信号SO34、SO36がそれぞれ放出される。
【0032】
入力32と出力36の間のフィルタ30の透過スペクトルT
2-6を
図2に示す。入力32と出力34の間のフィルタ30の透過スペクトルT
2-4を
図3に示す。
図2、
図3これらの図において、レーザ光源10のスペクトルも周波数v
SLの単一周波数成分によって概略的に示されている。これらの図において、x軸は光周波数f
optを表す。y軸は、入力32とフィルタ30の対応する出力34又は36との間の光パワーの透過率を表す。ここでは、
図2及び
図3を単純化するために、エミッタ2の動作の理解に関して重要な透過スペクトルT
2-4及びT
2-6のそれらの部分のみが示される
【0033】
スペクトルT
2-6は周波数v
fo6で最大T
max6を有する。ここで、スペクトルT
2-6は、例えば、周波数v
fo6を中心とするローレンツ関数である。この関数は、とりわけ、正弦波、ガウス関数又はゲート関数であり得る。周波数v
fo6の両側で、スペクトルT
2-6は、それぞれ42及び44の立上り及び立下りエッジを有する。エッジ42は単調関数であり、これは周波数間隔[v
min6;v
fo6]にわたって最小T
min6から最大T
max6まで連続的に増加する。エッジ44は、単調関数であり、周波数間隔[v
fo6;v
max6]にわたって最大T
max6から最小T
min6まで連続的に減少する。エッジ42及び44の一方に沿って、以下で「動作点」と呼ばれる特定の点が選択される。この点は、単調関数が、この点においてエミッタ2の動作に一般的に有利な所望の幾何学的特性を有するという点で特に重要である。ここで選択された動作点は、エッジの傾きの絶対値が最大となる点に対応する。例えば、エッジ42及び44はそれぞれ変曲点を有し、傾きの絶対値はこの変曲点で最大となる。ここでは、動作点はエッジ42上で選択され、参照番号43が与えられている。点43のx軸上の周波数はv
b6で示される。この点43では、エッジ42は実質的に直線である。従って、この点43において、エッジ42は、
【数1】
の形の一次関数によって近似される。ここで、係数a
6及びb
6は、光周波数f
optから独立している。
【0034】
スペクトルT
2-4は、周波数v
fo4において最小のT
min4を有する。周波数v
fo4の両側において、スペクトルT
2-4は、それぞれ48及び50の立上り及び立下りエッジを有する。エッジ48は、周波数間隔[v
min4;v
fo4]にわたって最大T
max4から最小T
min4まで連続的に減少する単調関数である。エッジ50は、周波数間隔[v
fo4;v
max4]にわたって最小T
min4から最大T
max4まで連続的に増加する単調関数である。エッジ48及び50のそれぞれに対して、エッジの傾きの絶対値が最大となる点がある。例えば、エッジ48及び50はそれぞれ変曲点を有し、傾きの絶対値はこの変曲点で最大となる。点43について上述したのと同様に、ここでは動作点49がエッジ48に沿って選択される。点49のx軸上の周波数はv
b4で示される。点43に関しては、この点49において、エッジ48は直線で近似することができる。
従って、この点49において、エッジ48は、
【数2】
の形の一次関数によって近似される。ここで、係数a
4及びb
4は、光周波数f
optから独立している。
【0035】
周波数vb4とvb6は等しく、以下ではvbと表される。また、ここでは、周波数vfo4とvfo6も等しく、以下ではvfoと表記する。この説明の残りの部分では、周波数vbとvfoとの間の差はδvと表される。
【0036】
この実施形態では、フィルタ30は光リング共振器である。光リング共振器はよく知られている。特に、スペクトルT2-6及びT2-4の特性がリング及びリングに結合するために使用される光バスの幾何学的パラメータに依存する方法はよく知られている。従って、以下にいくつかの詳細のみを示す。フィルタ30は、リング60、第1光バス及び第2光バスを備える。リング60は閉ループを形成する導波路である。入力32及び出力34、36は、それぞれインポート、スルーポート及びドロップポートと通常呼ばれるポートに対応する。第1及び第2光バスは導波路である。それらはそれぞれ、概してそれらの中間部分を介して、リング60に光学的に結合されている。ここで、これらのバスの一方は入力32と出力34との間に延在し、これらのバスの他方は出力36をリング60に光学的に接続する。
【0037】
エミッタ2では、周波数vbは周波数v0に等しくなければならない。これを達成するために、エミッタ2は、周波数vbが周波数v0に等しくなるように、スペクトルT2-6を位置付けることを可能にする自動制御ループ70を備える。具体的には、たとえ設計段階において、等しい周波数vb及びv0を得るようにレーザ光源10及びフィルタ30を製造しようとしたとしても、製造誤差のために、これらの周波数は一般に等しくない。従って、エミッタ2がオンにされるとき、これら2つの周波数vb及びv0を一致させることが必要である。ここで、これは、フィルタ30のスペクトルT2-4及びT2-6を周波数軸に沿って平行移動させることによって行われる。
【0038】
さらに、エミッタ2の動作中、フィルタ30及びレーザ光源10は、周波数vb及びv0がもはや等しくならないようにスペクトルT2-6の位置を修正する摂動を受けることがある。レーザ光源10とフィルタ30とに異なる影響を与えるのは遅い摂動の問題である。これらの摂動は、典型的には、レーザ光源10とフィルタ30の温度の異なる変化、又は、レーザ光源10とフィルタ30に異なる影響を与える振動である。ここで、ループ70は、一般に、製造誤差及び遅い摂動にもかかわらず、周波数vb及びv0が等しいままであるように、スペクトルT2-6の位置を維持する機能も有する。
【0039】
このために、ループ70はスペクトルT2-6を周波数方向に移動させることができるアクチュエータ72を含む。フィルタ30は、リング60のような出力34と36に共通の要素を含むので、スペクトルT2-6とT2-4は、一緒に同じように周波数方向に系統的に移動することが当業者に知られている。従って、アクチュエータ72はスペクトルT2-6及びT2-4を同時に移動させる。
【0040】
アクチュエータ72は電気制御信号を受信するための入力74を含む。アクチュエータ72はこの電気制御信号に応じてスペクトルT2-6を移動させる。例えば、アクチュエータ72は、リング60のセグメントに近接して配置されたヒータである。このヒータは、このリング60を形成する材料の屈折率を変化させるために、リング60のこのセグメントを加熱することができる。導波路の屈折率を変更することを可能にする、そのようなヒータの例示的な実施形態は、例えば以下の論文に記載されている。
J. E. Cunningham et al., “Highly-efficient thermally-tuned resonant optical filters”, Optical Express, 08/2010
従って、アクチュエータ72については、ここでは詳細に説明しない。
【0041】
ループ70はまた、周波数vbとv0との間の差を表す電気信号SE78を生成することができる光検出器76を含む。光検出器76は以下を備える。
-信号SE78が放出される出力78
-フィルタ30のスペクトルT2-6によってフィルタリングされた光信号の少なくとも一部分を受信するために、出力36に接続された入力80
【0042】
例えば、光検出器76はフォトダイオードである。
【0043】
最後に、ループ70は、電気信号SE78に基づいて、周波数vbとv0を等しく保つアクチュエータ72を制御するための電気信号SE74を生成することができる制御回路82を含む。この信号SE74はアクチュエータ72の入力74に送信される。
【0044】
回路82の多くの異なる実施形態が可能である。例えば、ここでは、回路82は、予め記録された値のテーブルT82とコンパレータとを含む。テーブルT82は、信号SE74の対応する値M74にそれぞれ関連する一組の値M78を含む。値M78は、値Mb、値Mbよりも低い値Mi及び値Mbよりも高い値Msを含む。周波数vbとv0が等しいとき、値Mbは信号SE78の値に等しい。コンパレータは、信号SE78を値M78と比較し、次いで信号SE78の実際の値に最も近い値M78に関連する1つ又は複数の値M74に基づいて信号SE74を生成する。電気信号SE78が値Mbより低いとき、回路82はスペクトルT2-6を左にシフトするように寸法決めされた電気信号SE74を発生する。具体的には、周波数vbが周波数v0よりも高くなるようにフィルタ30のスペクトルT2-6が位置決めされると、フィルタ30の出力36上の光パワーはPbより低くなり、Pbは周波数vbとv0が等しいときの信号SO36のパワーに等しいパワーである。信号SE78は値Mbよりも低い値Miを有する。対照的に、信号SE78が値Mbより高いとき、回路82はスペクトルT2-6を右にシフトするように寸法決めされた信号SE74を発生する。
【0045】
ループ70は、周波数範囲[0Hz、fc70]において有効であるように寸法設定され、ここで、fc70は、ループ70の-3dBカットオフ周波数である。ループ70によって補償される摂動が遅いと仮定すると、摂動が温度変化又は振動である場合、周波数fc70は低く、すなわちこの場合5kHzより低い。ここで、周波数fc70は1kHzである。
【0046】
レーザ光源10の周波数雑音を減少させるために、ループ20はフィルタ30の出力34を用いる。それは、フィルタ30に加えて、光検出器90を含む。光検出器90は、出力34に伝送される光信号SO34のパワーを測定し、光信号SO34のパワーに比例する電気信号SE94を出力94に生成する。光検出器90は、この目的のために、出力34に直接接続されている入力92を含む。例えば、光検出器90はフォトダイオードである。
【0047】
この実施形態では、出力94は、電気フィルタ98及び増幅器96を介してのみループ20の出力24に接続されている。
【0048】
フィルタ98は、信号SE94のDC成分を除去又は減衰する少なくとも1つの阻止帯域を含む。従って、この阻止帯域は周波数0Hzを含む。さらに、フィルタ98は、光信号SO34においてループ70によって生成された周波数成分の振幅を選択的に除去又は減衰することができる。具体的には、ループ70はスペクトルT2-6、従ってスペクトルT2-4を移動させ、その結果、周波数vbは現在の周波数v0に等しいままである。ループ70による周波数vbの移動は、周波数雑音によって引き起こされない光信号SO34のパワーにおける修正を生成する。周波数vbのこれらの移動は、周波数fc70より低い周波数で起こる。従って、ループ70によって生成された周波数成分は、本質的に範囲[0Hz;fc70]に含まれる。この実施形態では、主にループ70によって生成された信号SO34の周波数スペクトルの部分は、この範囲[0Hz;fc70]にわたって連続的に広がると考えられる。これらの条件下では、例示として、フィルタ98はハイパス電気フィルタであり、その-3dBカットオフ周波数fc98は周波数fc70以上である。一般に、周波数fc98は1メガヘルツ及び/又は周波数fbより低い。好ましくは、この周波数fc98は、fc70と1.3fc70との間、又はfc70と1.1fc70との間に含まれる。ここで、フィルタ98は、信号SO34においてループ70によって生成された周波数成分を減衰させるために、出力94と出力24との間の増幅器96の前に配置されている。
【0049】
フィルタ98のおかげで、ループ70によって引き起こされる光検出器90によって測定されるパワーの修正は、ループ20によって補償されない。従って、ループ20は、ループ70の動作を無効にしない。さらに、ループ20は、周波数雑音によって生成された信号SO34のパワースペクトルの部分が主に周波数fc70を超えて位置するため、幅ΔvSLを減少させることができるままである。従って、フィルタ98は、幅ΔvSLが小さくなるのを妨げない。
【0050】
増幅器96は、フィルタ98から出力された電気信号にゲインG2を乗算する。ここで、エッジ48が立ち下がりエッジであると仮定すると、負のフィードバックを得るために、ゲインG2は正である。
【0051】
ループ20は、周波数範囲[fc98、fc20]において効果的であるように寸法決めされ、ここでfc20はループ20のカットオフ周波数である。典型的には、幅ΔvSLを効果的に減少させるために、周波数fc20は、ΔvSL0/2又はΔvSL0以上になるように選択される。ここでΔvSL0は、ループ20がない場合のレーザ光源10の線の幅ΔvSLである。好ましくは、周波数fc20は1.2ΔvSL0/2又は1.2ΔvSL0以下になるように選択される。従って、周波数fc20は一般に0.5MHzと10MHz又は12MHzの間に含まれる。ここで、幅ΔvSL0が5MHzであると考えられる場合、周波数fc20は例えば5MHzに等しくなるように選択される。
【0052】
これらの条件下で、1kHzと5MHzとの間に含まれるレーザ光源10の周波数雑音は、以下のメカニズムを介して打ち消される。周波数vbに対する周波数v0の増加は、光検出器90によって受信される信号SO34の光パワーの減少をもたらす。従って、光検出器90から出力される電流は減少する。入力14に注入される注入電流も減少する。注入電流のこの減少は周波数v0の減少を生じ、それは周波数vbに接近することを可能にする。周波数vbに対して周波数v0が減少すると、光検出器90によって受信される信号SO34の光パワーが増加する。従って、光検出器90から出力される電流が増加する。注入電流もまた増加する。注入電流のこの増加は、レーザ周波数v0の増加を引き起こし、それは周波数vbに接近することを可能にする。
【0053】
特に何もしなければ、周波数変調によって引き起こされる信号SOm6の少なくとも特定の周波数成分は、レーザ光源10の周波数雑音と同じ理由でループ20によって除去されるか又は大きく減衰される。具体的には、信号SEmの基本周波数fb、ここでは周波数3fb、5fb・・・等も周波数範囲[fc98、fc20]に含まれる。従って、それを回避するために何もしなければ、周波数fc20より低い周波数における信号SEmの周波数成分は、ループ20によって相殺されるので、周波数vSLを変調することができない。
【0054】
この実施形態では、周波数v0の変調と幅ΔvSLの減少の両方を達成するために、信号SEmがレーザ光源10の周波数vSLを変調するのと同じ方法で、エミッタ2は、フィルタ30のスペクトルT2-4、従ってスペクトルT2-6を変調することができる変調器100を備える。「同じ方法で」とは、周波数vbが、レーザ光源10の周波数vSLと同じ速度で、同じ振幅で、同時に移動することを意味する。
【0055】
この目的のために、変調器100は信号SEmを受信する制御入力102を含む。入力102はエミッタ2の入力4に直接接続されている。変調器100は以下を備える。
-電気制御信号SE106に応答してフィルタ30のスペクトルT2-4及びT2-6を動かすことができるアクチュエータ104。
-信号SEmに基づいて、周波数vSLが移動されるのと同じ方法で、スペクトルT2-4及びT2-6を移動させることを可能にする信号SE106を生成することができる制御回路106。
【0056】
例えば、アクチュエータ104は、リング60の一部に形成されたp-nジャンクションと、このp-nジャンクションによって電荷キャリア密度レベルを変化させることができる電極とを含む。p-nジャンクションによる電荷キャリア密度レベルの変化は、リング60の屈折率を急速に変化させることを可能にし、従ってスペクトルT2-4及びT2-6を急速に移動させることを可能にする。この技術は、例えば以下の記事に記載されている。
Giovanni Beninca de Farias et al. “Up to 64-QAM Modulation of a Silicon-Ring-Resonator-Modulator”, OSA 2014.
従って、当業者は、アクチュエータ104及び回路106を製造することができるであろう。従って、前記アクチュエータ及び回路は、ここでは詳細には説明されない。
【0057】
ここで、ループ70と同じように、変調器100はスペクトルT2-4とT2-6を同時に移動させる。
【0058】
周波数vbは周波数vSLと同じ方法で変調されるので、ループ20は周波数変調によって引き起こされる周波数vSLの変動を除去しない。従って、エミッタ2は同時に周波数vSLを変調し、幅ΔvSL恒久的に減少させることができる。
【0059】
好ましくは、エミッタ2のコンパクト性をさらに増大させ、同時にその振動に対する感度を減少させるために、エミッタ2の前述の光学部品の全てがここでは同じ基板上に製造される。例えば、これらの光学部品は、フォトニック部品をシリコン上に製造するために使用されるものと同じ従来の製造プロセスを使用して製造される。従って、レーザ光源10、フィルタ30及び光検出器76及び90は同じチップ又はダイに一体化されている。例えば、使用される製造プロセスは、以下の記事に記載されているものである。
S. Menezo et al: “Advances on III-V on Silicon DBR and DFB Lasers for WDM Optical Interconnects and Associated Heterogeneous Integration 200mm-Wafer-Scale Technology”, Compound Semiconductor Integrated Circuit Symposium (CSICs), 2014 IEEE
【0060】
図5は、ループ20がループ132によって置き換えられていることを除いて、エミッタ2と同一であるエミッタ130を示す。ループ132は、ループ132が信号SO34の光パワーのDC成分を除去し、周波数雑音の寄与のみを保存するための他の構成要素を含むことを除いて、ループ20と同一である。さらに、幅Δv
SLをもたらす周波数雑音が存在するとき、同時にレーザ光源の線の強度を周波数v
SLで変化させる強度雑音が存在する。さらに、レーザ光源の周波数が変調されると、その光強度の残留変調が存在する。何もしなければ、この強度雑音及びレーザ強度の残留変調は注入電流の大きさを変更し、注入電流のこの変更は幅Δv
SLの減少に寄与しない。この実施形態では、ループ132はさらに、強度雑音及び残留強度変調を減衰させるか、さらには除去するように設計されている。
【0061】
この目的のために、ループ132は、レーザ光パワー、強度雑音及び残留強度変調を表す電気的基準信号SE140を供給する構成要素136を含む。この構成要素136は、信号SOm20を受信するために入力22に接続されている入力138と、電気信号SE140が放出される出力140とを備える。信号SE140の大きさは、レーザ線の出力、その強度雑音及び信号SEm20の影響下での強度の残留変調に依存し、好ましくはそれに等しい。例えば、構成要素136は、この目的のために以下を含む。
-可変光減衰器142又はVOA。
-光検出器144。
【0062】
減衰器142は、信号SOm20のパワーを減衰させる。それは、信号SOm20を受信するために入力138に直接接続されている入力を含む。入力138は、信号SOm20がフィルタ30を通過する前の点で入力22に接続されている。ここで、従来、光信号SO34のパワーは、入力32によって受信される光信号SOm20のパワーに対して減衰していることを思い出されたい。
【0063】
減衰器142はまた、出力146を含み、そこからパワーが減衰された減衰光信号SO146が放出される。ここで、減衰器142は、減衰器142の減衰係数がフィルタ30の減衰係数と等しくなるように調整される。光学部品の減衰係数は、ここでは、この光学部品から出力される光信号の測定されたパワーを同じ光学部品に入力された光信号の測定されたパワーで除算したものに等しいと定義される。
【0064】
出力146は、光検出器144の入力148に接続されている。光検出器144は、信号SO146のパワーを、上述した「信号SE140」と呼ばれる電気信号に変換する。信号SE140は、出力140を介して放出される。信号SE140は、信号SE94とは異なり、フィルタ30の周波数vbの変動とは無関係である。言い換えれば、信号SE94は、信号SE140と等しい電気信号と、レーザ光源の周波数雑音及びループ70に関連する変動に依存する電気信号との和である。
【0065】
この実施形態では、フィルタ98はフィルタ154によって置き換えられている。フィルタ154は、ループ70によって生成される誘導電流の周波数成分の振幅のみを除去又は減衰させる。例えば、フィルタ154は、フィルタ98とは異なり、生成された誘導電流のDC成分を必ずしもほとんど減衰又は減衰させない。この実施形態では、DC成分は、後述する減算器によって除去される。
【0066】
この目的のために、例えば、フィルタ154は、阻止帯域によって互いに分離されているローパス通過帯域とハイパス通過帯域とを含む。阻止帯域内では、生成された注入電流の周波数成分の減衰は-3dBよりも大きい。例えば、ハイパス通過帯域は、フィルタ98の通過帯域と同一である。ローパス通過帯域は、100Hz又は50Hzより低い-3dBカットオフ周波数を有する。
【0067】
出力140及びフィルタ154の出力は減算器150のそれぞれの入力に接続されている。
【0068】
減算器150は、光検出器144によって生成された電流の大きさをフィルタ154によって生成された電流の大きさから減算し、その大きさがこの減算の結果である注入電流を出力152から放出する。出力152は増幅器96を介してループ132の出力24に接続されている。このように構成された注入電流はレーザ光源の周波数雑音を補償するのみである。
【0069】
図6は、フィードバックループが周波数v
SLの変調によって生成された周波数成分を補償するのを防ぐために上記以外の方法を実施するエミッタ200を示す。より正確には、この実施形態で実施される方法は、電気フィルタを使用して、周波数v
SLの変調によって引き起こされる生成された注入電流の周波数成分の振幅を選択的に除去又は減衰することからなる。
【0070】
ここで、エミッタ200は、ループ20がループ202に置き換えられ、変調器100が省略されていることを除いて、エミッタ2と同一である。ループ202は、フィルタ98が電気フィルタ204によって置き換えられていることを除いて、ループ20と同一である。
【0071】
フィルタ204は、基本周波数f
b及び信号SE
mの高調波において注入電流の周波数成分の振幅を選択的に減衰させるように設計されている。
図4を参照して説明した信号SE
mの特定の場合には、信号SE
mの高調波は基本周波数f
bの奇数の整数倍(uneven integer multiples)である。従って、フィルタ204はくし形フィルタである。フィルタ204の透過スペクトル206を
図7に示す。
【0072】
図7において、x軸はヘルツで目盛りがつけられており、y軸はフィルタ204の入力と出力との間のパワーの伝達比を表している。スペクトル206は最小値T
min204と最大値T
max204との間で変化する。
図7において、スペクトル206を終了させる破線は、このスペクトルの始まりのみが示されていることを示す。スペクトル206は、阻止帯域210
iによって互いに離間している多数の通過帯域208
iを含む。インデックスiは順番を示す番号である。阻止帯域210
iの内部では、電気信号の減衰は-3dBより高い。阻止帯域210
iはそれぞれ、基本周波数f
bの奇数の整数倍(uneven integer multiple)を中心とする。例えば、各阻止帯域210
iは、0.8(2k+1)f
bと1.2(2k+1)f
bの間、好ましくは0.9(2k+1)f
bと1.1(2k+1)f
bの間に含まれる。ここで、kは、i-1に等しい整数である。
【0073】
ここで、フィルタ204は、さらに、フィルタ98と同じ役割を果たすように設計されている。この目的のために、スペクトル206は、0Hzと周波数fc70以上のカットオフ周波数との間に広がる阻止帯域212をさらに含む。
【0074】
この実施形態では、周波数vSLの変調によって生成された周波数成分は、ループ202によって生成された注入電流から除去されるので、このループ202はこの変調を補償しない。従って、この実施形態はまた、周波数vSLを変調することを可能にし、同時に周波数vSLにおける線の幅ΔvSLを永続的に減少させる。
【0075】
レーザ光源はDBRレーザ光源でもよいがDFB(分布フィードバック)レーザ光源でもよい。これら2つのレーザ光源は単一の光出力のみを有し得る。
図8は、単一の光出力、すなわちここでは出力16のみを含むこのようなレーザ光源250を示す。このレーザ光源250は、同じ入力12及び14を含む。この場合、ここに記載のエミッタのいずれかにおいてレーザ光源10の代わりにレーザ光源250を使用するために、光パワースプリッタ252がレーザ光源250の出力16に接続される。スプリッタ250は、出力16から放出された光信号SO
m16を同一であるが任意には異なるパワーの2つの光信号に分割する。これらの光信号の一方は、出力254によって放出され、他方は、スプリッタ252の出力256によって放出される。出力254及び256によって放出された光信号間のパワー比は、要件に応じて、0.0001~0.9999となるように選択される。例えば、パワー比は、信号SO
m6及び信号SO
m20について説明したものと同じである。従って、レーザ光源250及び分周器252がレーザ光源10を置き換えるとき、フィードバックループの入力22に接続されるのは出力256である。
【0076】
レーザ光源の変形例:
【0077】
ここに記載されたすべては、ここに記載された注入電流のような電流を用いて、その周波数を変調することが可能である限り、DBR又はDFBレーザ光源以外の半導体レーザ光源に適用可能である。例えば、レーザ光源は、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)であり得る。
【0078】
入力12及び14は、これまで、レーザ光源の別々の入力として説明された。しかしながら、これらの入力12及び14は、信号SEm及び生成された注入電流が同じ入力を介してレーザ光源に注入されるように併合することができる。この場合、エミッタは、例えば、この合計の結果がレーザ光源の入力に注入される前に、生成された注入電流を信号SEmに加えることができる加算器を備える。
【0079】
他の実施形態では、信号SOm20のパワーは信号SOm6のパワーより高い。例えば、信号SOm20のパワーは信号SOm6のパワーの5倍又は10倍高い。これにより、幅ΔvSLをさらに小さくすることができる。より一般的には、信号SOm6とSOm20との間のパワー比は、要件に応じて0.0001から0.9999の間になるように選択される。
【0080】
自動制御ループの変形例:
【0081】
アクチュエータ72の他の実施形態も可能である。例えば、他の技術は、リング60を形成する導波路内の電荷キャリア密度、従って導波路の屈折率を修正することにある。この技術は、例えば以下の記事に記載されている。
Giovanni Beninca de Farias et al. “Up to 64-QAM Modulation of a Silicon-Ring-Resonator-Modulator”, OSA 2014
【0082】
他の変形例では、ループ70は、アクチュエータ72ではなく変調器100と同じアクチュエータを使用する。この場合、変調器100は、この合計の結果をアクチュエータ104の入力に送信する前に、回路82及び106によってそれぞれ生成された電気信号を加算する加算器又は増幅器加算器(amplifier-summer)を含む。この場合、アクチュエータ72は省略されてもよい。
【0083】
ループ70は、フィルタ30の立ち上がりエッジの代わりに立ち下がりエッジを使用してフィルタリングされた光信号を用いて動作することができる。この場合、ループ70は、光検出器76によって測定された電気信号を反転するインバータをさらに含む。
【0084】
ループ70は、フィルタ30とは独立した追加の光学フィルタを使用して、そのパワーが周波数vbとv0との間の差を表す光信号を生成することができる。例えば、この追加のフィルタはフィルタ30と同一であり、出力18に並列に接続されている。この場合、ループ70はフィルタ30の出力36に接続されておらず、この追加のフィルタの出力に接続されている。追加のフィルタは、アクチュエータ72と同一の追加のアクチュエータに関連付けられている。回路82によって生成された信号SE74は、アクチュエータ72の入力74と追加のアクチュエータの制御入力の両方に送信される。
【0085】
変形として、光検出器76は、出力36に接続されるのではなく、フィルタ30の出力34に接続される。この場合、例えば、テーブルT82はそれに応じて修正されなければならない。具体的には、信号SO34と信号SO36とは相補的である。通常、信号SO36は信号SO34の反転信号である。従って、ループ70を入力信号のこの反転に適応させることが必要である。
【0086】
フィードバックループの変形例:
【0087】
ループ20は、その周波数fc20が幅ΔvSL0よりも低くなるように寸法設定することができる。
【0088】
変形例として、光信号SO34を得るために光学フィルタ30の立ち下がりエッジを使用する代わりに、光学フィルタの立ち上がりエッジが使用される。この場合、例えば、負のフィードバックを得るために、フィードバックループは、光検出器90によって測定された電気信号の符号を反転する電気インバータをさらに含む。例えば、この目的のために、増幅器96は増幅器反転器(amplifier-inverter)によって置き換えられる。
【0089】
フィルタ98、154、又は204は、フィードバックループ内の他の場所に配置することができる。例えば、増幅器96の後に配置することができる。
【0090】
各電気フィルタは、単一の電気フィルタ又は直列に接続された複数の電気フィルタから構成することができる。
【0091】
ループ70の実施形態に応じて、このループ70によって主に生成される信号SO34のパワースペクトルの部分は、分離されて0Hzとfc70との間に含まれる1つの線又は一連の線の形態をとり得る。ループ70によって生成されるスペクトルの部分の基本成分はFlockと表され、スペクトルのこの部分の1つより高い次数の高調波はkFlockと表される。ここで、kは次数を示す1より厳密に高い整数である。この場合、フィルタ98は、通過帯域によって互いに隔てられている少なくとも第1及び第2阻止帯域を含む、くし形フィルタによって置き換えられてもよい。第1阻止帯域は周波数0Hzを含み、第2阻止帯域は周波数Flockを含む。このくし形フィルタはさらに、特定の高調波kFlockを中心とする追加の阻止帯域を含むことができる。同じ場合、同様に、フィルタ154も、第1阻止帯域が省略され得ることを除いて、同じくし形フィルタと置き換えられ得る。この場合もやはり、阻止帯域212は、0Hz及びFlockを中心とし、任意に、複数の高調波kFlockを中心とする複数の別々の阻止帯域で置き換えることができる。
【0092】
フィルタ204の単純化された変形例では、阻止帯域2101を除いて、他の阻止帯域210iを省略することができる。具体的には、基本周波数以外の、高調波における信号SEmのスペクトルの周波数成分の振幅は、一般的にはるかに低い。従って、ループ20によるそれらの除去は必ずしも問題ではない。
【0093】
自動制御とフィードバックループに共通の変形例:
【0094】
光学フィルタの他の実施形態も可能である。例えば、光学フィルタは、リング共振器ベースフィルタ以外の形態をとってもよい。従って、例示として、フィルタ30は、グレーティング支援型反方向性結合器(grating-assisted contra-directional coupler:GACC)として知られているタイプのフィルタに置き換えることができる。そのようなGACCフィルタは当業者にはよく知られている。それらは、例えば次の論文に記載されている。
Wei Shi, et al.: “Silicon photonic grating-assisted, contra-directional couplers” Vol. 21, No. 3, OPTICS EXPRESS 3633, 11/02/2013
GACCフィルタの入力及び出力は、フィルタ30について説明したものと同じ名前を有し、同じ方法で使用される。
【0095】
他の実施形態では、フィルタ30は複数のリングを適用したフィルタによって置き換えられる。複数のリングを含むそのようなフィルタは、次の論文に記載されている。
Mattia Mancinelli, et al.: “Optical characterization of a SCISSOR device”, Vol. 19, No. 14, Optics EXPRESS 13664, 4/07/2011
また、使用されるポートは、フィルタ30について説明したものと同じ名前を有し、同じ方法で使用される。
【0096】
通過帯域が単一の立ち上がりエッジ又は単一の立ち下がりエッジを含む光学フィルタを用いることも可能である。例えば、この場合、光学フィルタはハイパス又はローパス光学フィルタである。単一の立ち上がり又は立ち下がりエッジのみであることを除いて、エミッタは上記のように動作する。
【0097】
変形例として、動作点は、透過スペクトルのエッジの傾きの絶対値が最大になる点に対応しない。例えば、動作点は異なるように選択され、傾きが最大ではない立ち上がり又は立ち下がりエッジの他の点に対応する。他の変形例として、動作点が立ち上がり又は立ち下がりエッジの変曲点に対応する必要はない。
【0098】
エミッタ130の場合で説明したように、信号SO34のDC成分、強度雑音及び残留強度変調を除去することは、ここで説明する他のすべての実施形態で実施することができる。
【0099】
図6を参照して説明した実施形態は、変調器100を備える他の実施形態のいずれとも組み合わせることができる。この場合、得られた実施形態は、変調器100及びフィルタ204の両方を用いて基本周波数f
bの整数倍で生成された誘導電流の周波数成分を除去する。
【0100】
他の変形例:
【0101】
変形例として、エミッタ2は、入力4と、それ自体が信号SEmを受信することも意図されている追加の入力とを備える。この場合、例えば、レーザ光源10の入力12は入力4にのみ接続され、変調器100の入力102はこの追加の入力にのみ接続される。このエミッタが正しく動作するために、電気信号SEmは入力4と同時にこの追加の入力に伝送される。
【0102】
実施形態は、周波数変調された光信号のエミッタの特定の場合において説明された。しかしながら、ここで説明したことは全て、周波数変調されていない光信号のエミッタの場合にも当てはまる。周波数vSLが変調されていない場合、変調器100及びフィルタ204の阻止帯域210iを省略することができる。周波数vSLが変調されていない場合、ループ70を間欠的にのみ動作させることが可能である。例えば、ループ70はエミッタの初期化段階中にのみ作動される。その後、ループ70がオフにされる。それがオフにされると、それはもはや光学フィルタ30に作用しない。
【0103】
構成要素136及び減算器150は、ループ70とは無関係に幅Δv
SLを減少させるように設計されたフィードバックループにおいて実現され得る。例えば、この構成要素136及びこの減算器150は、
図5のものと同一であるが、ループ70は省略されているエミッタにおいて実施され得る。これは、例えば、レーザ光源10及びフィルタ30の温度が、それを一定に保つ冷却回路によって安定化される場合に可能である。ループ70が省略される場合、フィードバックループが、このループ70によって生成された周波数成分を選択的に減衰又は除去するフィルタを備える必要はない。
【0104】
フィルタ204及び/又は変調器100は、ループ70とは無関係に実施されても得る。例えば、ここに記載のすべての実施形態において、ループ70は省略されて得る。上述したように、これは、フィルタ30に影響を及ぼす遅い摂動が無視できる場合に全く可能である。
【0105】
記載された実施形態の利点:
【0106】
ループ70を用いて、温度変化又は振動などの遅い摂動による周波数vbとv0との間の差を補償することにより、これらの摂動を減衰させるためのより複雑で大きな手段に頼ることなくエミッタの動作を安定化させることができる。例えば、光学フィルタの温度をレーザ光源の温度と等しく保つために冷却器を使用する必要はない。
【0107】
さらに、通過帯域が周波数v0上に位置するエッジを含む光学フィルタを用いるという事実は、一方のアームの長さが60mであるマッハツェンダ格子よりもはるかにコンパクトな光学要素を用いて、周波数vbとv0との間の差を表す物理量を抽出することを可能にする。
【0108】
所与のフィルタを用いて、注入電流からDC成分及び周波数fc70以下の周波数成分を除去するという事実は、エミッタの製造を単純化することを可能にする。
【0109】
パワーが光検出器76及び90によってそれぞれ測定される光信号を生成するために同じフィルタ30を用いるという事実は、エミッタの構成要素の数を制限する。
【0110】
変調器100及び/又は電気フィルタ204を用いることによって、周波数変調によって生成された周波数成分を生成された注入電流から引き出すことが可能になる。従って、フィードバックループは、相殺されず、信号SEmによって引き起こされる周波数vSLの変調を補償しない。従って、周波数vSLを変調しながら幅ΔvSLを減少させることが可能である。さらに、これは、信号SEmの基本周波数がフィードバックループのカットオフ周波数fc20より低い場合でも機能する。
【0111】
リング共振器を使用すると、エミッタの大部分をさらに制限することができる。具体的には、リング共振器は、同等の性能を提供するにもかかわらず、例えばGACCフィルタよりも小さい。
【0112】
構成要素136及び減算器150を用いることによって、その大きさが、周波数雑音と並列に存在しがちな、強度雑音及び残留強度変調とは実質的に無関係である注入電流を生成することが可能になる。これはエミッタの動作を改善し、特に幅ΔvSLをさらに減少させることを可能にする。
【0113】
傾きの絶対値が最大となる光学フィルタのエッジの点を動作点として選択することにより、ループ20及び70の感度を高めることができる。