(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物及び電子部品
(51)【国際特許分類】
C08F 2/44 20060101AFI20230605BHJP
C08F 265/02 20060101ALI20230605BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20230605BHJP
C08G 59/42 20060101ALI20230605BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20230605BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20230605BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
C08F2/44 C
C08F265/02
C08L63/00 A
C08G59/42
G03F7/004 512
G03F7/004 505
G03F7/027 502
G03F7/004 501
H05K3/28 C
H05K3/28 F
(21)【出願番号】P 2019018484
(22)【出願日】2019-02-05
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】310024066
【氏名又は名称】太陽インキ製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】福田 晋一朗
(72)【発明者】
【氏名】チャ ハヌル
(72)【発明者】
【氏名】槇田 昇平
(72)【発明者】
【氏名】椎名 桃子
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-307848(JP,A)
【文献】特開2010-085904(JP,A)
【文献】特開2008-287251(JP,A)
【文献】特開2013-228433(JP,A)
【文献】国際公開第2017/002964(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/098734(WO,A1)
【文献】特開2015-106160(JP,A)
【文献】特開2015-206992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60、265/02、283/01、
290/00-290/14、299/00-299/08
C08L 63/00
C08G 59/42
G03F 7/004-7/04、7/06、7/075-7/115、
7/16-7/18
H05K 3/28
G03C 3/00
C09D 1/00-13/00、101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有フッ素樹脂、
(B)ポリグリセリン系(メタ)アクリレート、
(C)光重合開始剤、及び
(D)白色着色剤
を含
み、
前記(A)カルボキシル基含有フッ素樹脂は、(メタ)アクリル酸と、炭素原子数が2~15のアルキルを有するアルキル(メタ)アクリレートのフッ素置換物との共重合体であり、かつ酸価40~150mgKOH/gの範囲にあることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(E)エポキシ樹脂を更に含む、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
(F)フッ素原子を含まないカルボキシル基含有樹脂を更に含む、請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物をフィルムに塗布乾燥してなる樹脂層を有することを特徴とするドライフィルム。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物または請求項4に記載のドライフィルムの樹脂層を硬化させた硬化物。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化物を有する電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物及びそのドライフィルム、これらの硬化物並びにその硬化物を有する電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板には、回路パターンの導体層を有する基材上にソルダーレジストが形成されている。このようなソルダーレジストに限らず、プリント配線板の層間絶縁材やフレキシブルプリント配線板のカバーレイ等の永久保護膜の材料としては、従来、種々の硬化性樹脂組成物が提案されている。種々の硬化性樹脂組成物の中でも、環境問題への配慮から、現像液として希アルカリ水溶液を用いるアルカリ現像型の硬化性樹脂組成物が広く採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような硬化性樹脂組成物としては種々の用途のものが存在するが、その一例として、発光ダイオード(LED)等の発光素子が実装されるプリント配線板の絶縁層として好適な、高反射率の白色の硬化性樹脂組成物が知られている。高反射率の絶縁層とすることでLED等の光源からの光の利用の効率化が図られる。白色の硬化性樹脂組成物とするには、二酸化チタンなどの白色着色剤を添加することが一般的である。しかしながら、白色の場合、熱により変色すると劣化が視認しやすいという問題がある。
【0005】
熱による変色を抑制するために、特許文献1では、フッ素系界面活性剤を添加することが行われているが、現像性や半田耐熱性が不十分であり、また、熱変色抑制効果の更なる向上が求められて続けている。
【0006】
したがって、本発明の目的は、熱による変色を抑制することができ、現像性及び半田耐熱性に優れる硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、(A)カルボキシル基含有フッ素樹脂、(B)ポリグリセリン系(メタ)アクリレート、(C)光重合開始剤、及び(D)白色着色剤を含む硬化性樹脂組成物により達成される。
【0008】
(E)エポキシ樹脂を更に含むことが好ましい。
【0009】
(F)フッ素原子を含まないカルボキシル基含有樹脂を更に含むことが好ましい。
【0010】
本発明のドライフィルムは、前記いずれかの硬化性樹脂組成物をフィルムに塗布乾燥してなる樹脂層を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の硬化物は、上記前記いずれかの硬化性樹脂組成物、または、前記ドライフィルムの樹脂層を硬化させたことを特徴とする。
【0012】
本発明の電子部品は、前記硬化物を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、熱による変色を抑制することができ、現像性及び半田耐熱性に優れる硬化性樹脂組成物を提供することができる。したがって、生産性、外観性及び耐久性に優れる硬化性樹脂組成物の硬化物及びその硬化物を有する電子部品を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。上述したように、本発明の硬化性樹脂組成物(以下、単に「組成物」とも称する)は、(A)カルボキシル基含有フッ素樹脂、(B)ポリグリセリン系(メタ)アクリレート、(C)光重合開始剤、及び(D)白色着色剤を含む。白色着色剤を含む硬化性樹脂組成物において、カルボキシル基含有フッ素樹脂及びポリグリセリン系(メタ)アクリレートの両方を含んでいることにより、熱による変色耐性に優れ、現像性及び耐熱性に優れる硬化性樹脂組成物を提供することができることが本発明者により見出された。以下、各成分について詳細に説明する。
【0015】
[(A)カルボキシル基含有フッ素樹脂]
上記(A)カルボキシル基含有フッ素樹脂としては、公知のカルボキシル基を含むフッ素脂を用いることができる。フッ素樹脂とは、少なくとも1つのフッ素原子を有するポリマーまたはオリゴマーのことをいう。カルボキシル基の存在により、樹脂組成物をアルカリ現像性とすることができるとともに、フッ素原子の存在により、熱変色耐性を向上させることができる。また、本発明の硬化性樹脂組成物を光硬化性にすることや耐現像性の観点から、カルボキシル基及びフッ素樹脂の他に、分子内にエチレン性不飽和結合を有することが好ましいが、エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有フッ素樹脂のみを(A)成分として用いることもできる。エチレン性不飽和二重結合としては、アクリル酸もしくはメタアクリル酸またはそれらの誘導体由来のものが好ましい。
【0016】
本発明の硬化性樹脂組成物に用いることができるカルボキシル基含有フッ素樹脂の具体例としては、以下に列挙するような化合物(オリゴマー及びポリマーのいずれでもよい)が挙げられる。なお、以下に記述される「フッ素置換物」とは、所定の化合物の官能基を構成する水素原子以外の水素原子の1つ以上がフッ素で置換された化合物のことをいう。
【0017】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、アルキル(メタ)アクリレート(アルキルは、例えば、炭素原子数が2~15、好ましくは2~8のアルキルである)、イソブチレン等の不飽和基含有化合物のフッ素置換物との共重合により得られるカルボキシル基含有フッ素樹脂。
【0018】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物及びポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基及びアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂であって、記述した原料の少なくとも1つがフッ素置換物である、カルボキシル基及びウレタン結合を含有するフッ素樹脂。
【0019】
(3)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネート化合物と、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基及びアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるウレタン樹脂の末端に酸無水物を反応させてなる末端カルボキシル基含有ウレタン樹脂であって、記述した原料の少なくとも1つがフッ素置換物である、カルボキシル基及びウレタン結合を含有するフッ素樹脂。
【0020】
(4)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物及びジオール化合物の重付加反応による感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂であって、記述した原料の少なくとも1つがフッ素置換物である、カルボキシル基及びウレタン結合を含有するフッ素樹脂。
【0021】
(5)上記(2)または(4)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基及びウレタン結合を含有するフッ素樹脂。
【0022】
(6)上記(2)または(4)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基及びウレタン結合を含有するフッ素樹脂。
【0023】
(7)後述するような多官能(固形)エポキシ樹脂のフッ素置換物に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させた感光性カルボキシル基含有フッ素樹脂。
【0024】
(8)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂のフッ素置換物に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させた感光性カルボキシル基含有フッ素樹脂。
【0025】
(9)後述するような多官能オキセタン樹脂のフッ素置換物にジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基及びエステル結合を含有するフッ素樹脂。
【0026】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物のフッ素置換物とエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性フッ素樹脂。
【0027】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物のフッ素置換物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性フッ素樹脂。
【0028】
(12)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物のフッ素置換物に、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性フッ素樹脂。
【0029】
(13)上記(1)~(12)のいずれかの樹脂にさらにグリシジル(メタ)アクリレート、α-メチルグリシジル(メタ)アクリレート等の分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなる感光性カルボキシル基含有フッ素樹脂。
【0030】
上述したフッ素置換物は、所定の化合物をフッ素化することにより得ることができる。フッ素化方法としては、公知の方法でよく、例えば、低温フッ素化、接触フッ素化、水溶液フッ素化、液相フッ素化、固相フッ素化、気相フッ素化などを採用することができる。
【0031】
上記のようなカルボキシル基含有フッ素樹脂は、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数のカルボキシル基を有するため、希アルカリ水溶液による現像が可能になる。
【0032】
また、上記カルボキシル基含有フッ素樹脂の酸価は、20~200mgKOH/gの範囲が好ましく、より好ましくは40~150mgKOH/gの範囲である。カルボキシル基含有フッ素樹脂の酸価が20mgKOH/g以上の場合、塗膜の密着性が良好となり、アルカリ現像が良好となる。一方、酸価が200mgKOH/g以下の場合には、現像液による露光部の溶解を抑制できるために、必要以上にラインが痩せたり、場合によっては、露光部と未露光部の区別なく現像液で溶解剥離したりすることを抑制して、良好にレジストパターンを描画することができる。
【0033】
また、本発明で用いるカルボキシル基含有フッ素樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、2,000~150,000、さらには5,000~100,000の範囲が好ましい。重量平均分子量が2,000以上の場合、タックフリー性能が良好であり、露光後の塗膜の耐湿性が良好で、現像時に膜減りを抑制し、解像度の低下を抑制できる。一方、重量平均分子量が150,000以下の場合、現像性が良好で、貯蔵安定性にも優れる。
【0034】
(A)カルボキシル基含有フッ素樹脂として、具体的には、新中村化学製のカルボキシル基含有フッ素樹脂(製品名:TIF-1、TIF-2)を使用することができる。
【0035】
上記したような(A)カルボキシル基含有フッ素樹脂の配合量は、全組成物中に、好ましくは5~60質量%、より好ましくは10~60質量%、さらに好ましくは20~60質量%、特に好ましくは30~50質量%である。5~60質量%の場合、塗膜強度が良好であり、組成物の粘性が適度で、塗布性等を向上できる。
【0036】
[(B)ポリグリセリン系(メタ)アクリレート]
ポリグリセリン系(メタ)アクリレートとは、ポリグリセリン骨格及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物のことをいう。好ましくは、以下の構造式(I)を有する化合物のことをいう。
【0037】
【化1】
(式中、nは
3~20、好ましくは3~12、特に4~10であり、mは1~30、好ましくは5~20であり、Rは水素原子またはメチル基である)
【0038】
上記のポリグリセリン系(メタ)アクリレートは、ポリグリセリンの水酸基にアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなど)を付加し、その末端の水酸基をアクリル酸またはメタクリル酸と反応させることにより得ることができる。具体的には、ポリグリセリン系(メタ)アクリレートとして、阪本薬品香魚右車製のSA-TE6、SA-TE60、SA-ZE12などを使用することができる。
【0039】
(B)ポリグリセリン系(メタ)アクリレートの配合量は、固形分換算で、熱変色耐性の観点から、カルボキシル基含有樹脂((A)カルボキシル基含有フッ素樹脂単独、または(A)カルボキシル基含有フッ素樹脂に加えて(F)フッ素原子を含まないカルボキシル基含有樹脂を含む場合はその合計量)100質量部に対して、例えば、1~100質量部の割合であり、好ましくは5~50質量部、より好ましくは10~40質量部、特に好ましくは20~40質量部、更に好ましくは25~40質量部である。
【0040】
[(C)光重合開始剤]
(C)光重合開始剤としては、光重合開始剤や光ラジカル発生剤として公知のものであれば、いずれのものを用いることもできる。
【0041】
(C)光重合開始剤としては、例えば、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド類;2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のモノアシルフォスフィンオキサイド類;1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のヒドロキシアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル)-1-[4- (4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アントラキノン、クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p-ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(2-(1-ピル-1-イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン類;フェニルジスルフィド2-ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。これらの中でもモノアシルフォスフィンオキサイド類、オキシムエステル類が好ましく、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)がより好ましい。(C)光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(C)光重合開始剤の配合量は、(A)カルボキシル基含有フッ素樹脂100質量部、または、(A)カルボキシル基含有フッ素樹脂以外のカルボキシル基含有樹脂を含む場合はそれらの合計100質量部に対して、好ましくは0.01~30質量部、より好ましくは0.01~20質量部である。(C)光重合開始剤の配合量が、0.01質量部以上の場合、銅上での光硬化性が良好となり、塗膜が剥離しにくく、耐薬品性などの塗膜特性が良好となる。一方、(C)光重合開始剤の配合量が、30質量部以下の場合、(C)光重合開始剤の光吸収が良好となり、深部硬化性が向上する。
【0043】
[(D)白色着色剤]
(D)白色着色剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸カリウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、鉛白、硫化亜鉛、チタン酸鉛等が挙げられるが、熱による変色の抑制効果が高いことから、酸化チタンを用いることが好ましい。(D)白色着色剤を含有させることで、本発明の組成物を白色とすることができ、高い反射率を得ることが可能となる。
【0044】
酸化チタンとしては、ルチル型、アナターゼ型、ラムスデライト型のいずれの構造の酸化チタンであってもよく、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。このうちラムスデライト型酸化チタンは、ラムスデライト型Li0.5TiO2に化学酸化によるリチウム脱離処理を施すことで得られる。
【0045】
上記のうち、ルチル型酸化チタンを用いると、耐熱性をより向上することができるとともに、光照射に起因する変色を起こしにくくなり、厳しい使用環境下でも品質を低下しにくくすることができるので、好ましい。特に、アルミナ等のアルミニウム酸化物やシリカにより表面処理されたルチル型酸化チタンを用いることで、光に対する劣化を抑えたり、反射率や耐熱性をさらに向上することができる。また、上記表面処理した上にさらに別の表面処理をすることもできる。特に、アルミナで表面処理した上にジルコニアでさらに表面処理することで、反射率をより一層向上させることができる。(D)白色着色剤として酸化チタンを用いる場合、全酸化チタン中の、アルミニウム酸化物より表面処理されたルチル型酸化チタンの含有量は、好適には10質量%以上、より好適には30質量%以上であり、上限は100質量%以下であって、すなわち、酸化チタンの全量が、上記アルミニウム酸化物により表面処理されたルチル型酸化チタンであってもよい。上記アルミニウム酸化物により表面処理されたルチル型酸化チタンとしては、例えば、ルチル型塩素法酸化チタンである石原産業(株)製のCR-58や、ルチル型硫酸法酸化チタンである同社製のR-630等が挙げられる。また、ケイ素酸化物により表面処理されたルチル型酸化チタンを用いることも好ましく、この場合も、耐熱性をさらに向上することができる。さらに、アルミニウム酸化物とケイ素酸化物との双方で表面処理されたルチル型酸化チタンを用いることも好ましく、例えば、ルチル型塩素法酸化チタンである石原産業(株)製のCR-90等が挙げられる。
【0046】
さらに、酸化チタンに硫黄が含有されている場合があるが、その硫黄量は、100ppm以下が好ましく、60ppm以下がより好ましい。硫黄量が100ppm以下であると、発生する硫黄ガスによる周辺部の変色が生じないからである。
【0047】
このような(D)白色着色剤の配合量は、硬化性樹脂組成物中の固形分(樹脂組成物が有機溶剤を含有する場合には、有機溶剤を除く成分)に対して、好ましくは5~80質量%の範囲、より好ましくは10~70質量%の範囲である。
【0048】
[(E)エポキシ樹脂]
本発明に用いる(E)エポキシ樹脂は、従来から用いられているものを使用することができる。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂などが用いられる。これら(E)エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
また、本発明において、(E)エポキシ樹脂は、常温(20℃)で液状であるものを用いることが好ましい。現像性には組成物の軟化点が影響することから、常温で液状である(E)エポキシ樹脂を用いることで、現像性を補助する効果を得ることができる。20℃で液状のエポキシ樹脂としては、例えば、jER828(三菱ケミカル(株)製)、YD-128(新日鉄住金(株)製)、EPICRON840,850(DIC(株)製)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、jER806,807(三菱ケミカル(株)製)、YDF-170(新日鉄住金(株)製)、EPICRON830,835,N-730A(DIC(株)製)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、ZX-1059(新日鉄住金(株)製)等のビスフェノールA,F混合物、YX-8000,8034(三菱ケミカル(株)製)、ST-3000(新日鉄住金(株)製)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0050】
本発明の硬化性樹脂組成物中の(E)エポキシ樹脂の配合量は、(A)成分のカルボン酸当量、または任意成分である(F)成分が含まれる場合は(A)成分と(F)成分の合計のカルボン酸当量に対するエポキシ当量の比率が、好ましくは0.2~3.0、より好ましくは0.5~2.0の範囲となる量である。
【0051】
[(F)フッ素原子を含まないカルボキシル基含有樹脂]
本発明の硬化性樹脂組成物には、上述した成分に加えて、フッ素原子を含まないカルボキシル基含有樹脂を含んでいてもよい。フッ素原子を含まないカルボキシル基含有樹脂を配合することにより、現像性が更に向上する。
【0052】
(F)フッ素原子を含まないカルボキシル基含有樹脂としては、公知のカルボキシル基を含む樹脂を用いることができる。本発明の硬化性樹脂組成物を光硬化性にすることや耐現像性の観点から、カルボキシル基の他に、分子内にエチレン性不飽和結合を有することが好ましいが、エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のみを(F)成分として用いることもできる。エチレン性不飽和二重結合としては、アクリル酸もしくはメタアクリル酸またはそれらの誘導体由来のものが好ましい。
【0053】
本発明の硬化性樹脂組成物に用いることができるカルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下に列挙するような化合物(オリゴマー及びポリマーのいずれでもよい)が挙げられる。
【0054】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0055】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物及びポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基及びアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0056】
(3)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネート化合物と、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基及びアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるウレタン樹脂の末端に酸無水物を反応させてなる末端カルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0057】
(4)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物及びジオール化合物の重付加反応による感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0058】
(5)上記(2)または(4)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0059】
(6)上記(2)または(4)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0060】
(7)後述するような多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させた感光性カルボキシル基含有樹脂。
【0061】
(8)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させた感光性カルボキシル基含有樹脂。
【0062】
(9)後述するような多官能オキセタン樹脂にジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0063】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0064】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0065】
(12)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0066】
(13)上記(1)~(12)のいずれかの樹脂にさらにグリシジル(メタ)アクリレート、α-メチルグリシジル(メタ)アクリレート等の分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなる感光性カルボキシル基含有樹脂。
【0067】
上記のようなカルボキシル基含有樹脂は、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数のカルボキシル基を有するため、希アルカリ水溶液による現像が可能になる。
【0068】
また、上記カルボキシル基含有樹脂の酸価は、20~200mgKOH/gの範囲が好ましく、より好ましくは40~150mgKOH/gの範囲である。カルボキシル基含有樹脂の酸価が20mgKOH/g以上の場合、塗膜の密着性が良好となり、アルカリ現像が良好となる。一方、酸価が200mgKOH/g以下の場合には、現像液による露光部の溶解を抑制できるために、必要以上にラインが痩せたり、場合によっては、露光部と未露光部の区別なく現像液で溶解剥離したりすることを抑制して、良好にレジストパターンを描画することができる。
【0069】
また、本発明で用いるカルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、2,000~150,000、さらには5,000~100,000の範囲が好ましい。重量平均分子量が2,000以上の場合、タックフリー性能が良好であり、露光後の塗膜の耐湿性が良好で、現像時に膜減りを抑制し、解像度の低下を抑制できる。一方、重量平均分子量が150,000以下の場合、現像性が良好で、貯蔵安定性にも優れる。
【0070】
上記のカルボキシル基含有樹脂の中でも、上記樹脂の合成に用いられる多官能エポキシ樹脂が、ビスフェノールA構造、ビスフェノールF構造、ビフェノール構造、ビフェノールノボラック構造、ビスキシレノール構造、ビフェニルノボラック構造及びウレタン構造からなる群から選ばれる1種以上の部分構造を有する多官能エポキシ樹脂またはその水添化合物であるカルボキシル基含有樹脂が、得られる硬化物の低反り、折り曲げ耐性の観点から好ましい。
【0071】
また、ウレタン構造を有するカルボキシル基含有樹脂の中でも、イソシアネート基を有する成分(ジイソシアネートも含む)として、イソシアネート基が直接ベンゼン環に結合していないジイソシアネートを用いて得られるカルボキシル基含有ウレタン樹脂が、黄変がなく、隠蔽性に有効で、かつ紫外線吸収が少ないため、アルカリ現像性組成物とした際に解像性に優れる特徴があり、好ましい。尚、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0072】
(F)フッ素原子を含まないカルボキシル基含有樹脂が含まれる場合、その配合量は、(A)成分と同じかまたはそれより少ない量で添加されることが好ましい。具体的には、(A)成分:(F)成分の比が、例えば95:5~50:50、好ましくは90:10~60:40である。
【0073】
[その他の成分]
本発明の硬化性樹脂組成物は、消泡剤を配合してもよい。消泡剤としては、例えば、シリコン系消泡剤、非シリコン系消泡剤等が挙げられるが、中でも、現像液の汚染を低減できることや、シルク(マーキングインキ)の密着性不良を引き起こしにくいとの観点から、非シリコン系消泡剤を用いることが好ましい。消泡剤は、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
シリコン系消泡剤としては、例えば、KS-66(信越化学工業(株)製)等が挙げられる。非シリコン系消泡剤としては、FOAMKILLER NSI-0.00(青木油脂工業(株)製)等が挙げられる。
【0075】
消泡剤の配合量は、固形分換算で、カルボキシル基含有樹脂((A)カルボキシル基含有フッ素樹脂単独、または(A)カルボキシル基含有フッ素樹脂に加えて(F)フッ素原子を含まないカルボキシル基含有樹脂を含む場合はその合計量)100質量部に対して、0.01~30.00質量部であることが好ましい。
【0076】
本発明の硬化性樹脂組成物は、着色剤を配合してもよい。着色剤の具体例としては、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、ロイコクリスタルバイオレット、カーボンブラック、ナフタレンブラック、ソルベント・ブルー等が挙げられる。着色剤は、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
また、本発明の硬化性樹脂組成物には、組成物の調製や、基板やキャリアフィルムに塗布する際の粘度調整等の目的で、有機溶剤を含有させることができる。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤など、公知慣用の有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、単独で、または二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0078】
本発明の硬化性樹脂組成物には、更に、電子材料の分野において公知慣用の他の添加剤を配合してもよい。他の添加剤としては、熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、老化防止剤、抗菌・防黴剤、レベリング剤、増粘剤、密着性付与剤、チキソ性付与剤、光開始助剤、増感剤、光塩基発生剤、熱可塑性樹脂、エラストマー、ウレタンビーズなどの有機フィラー、硫酸バリウム、タルク、シリカ等の無機フィラー、離型剤、表面処理剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、安定剤、蛍光体、セルロース樹脂等が挙げられる。
【0079】
本発明の硬化性樹脂組成物は、ドライフィルム化して用いても液状として用いてもよい。液状として用いる場合は、1液性でも2液性以上でもよい。
【0080】
本発明のドライフィルムは、キャリアフィルム上に、本発明の硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥させることにより得られる樹脂層を有する。ドライフィルムを形成する際には、まず、本発明の硬化性樹脂組成物を上記有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整した上で、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等により、キャリアフィルム上に均一な厚さに塗布する。その後、塗布された組成物を、通常、50~130℃の温度で1~30分間乾燥することで、樹脂層を形成することができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、10~150μm、好ましくは20~60μmの範囲で適宜選択される。
【0081】
キャリアフィルムとしては、プラスチックフィルムが用いられ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等を用いることができる。キャリアフィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10~150μmの範囲で適宜選択される。
【0082】
キャリアフィルム上に本発明の硬化性樹脂組成物からなる樹脂層を形成した後、膜の表面に塵が付着することを防ぐ等の目的で、さらに、膜の表面に、剥離可能なカバーフィルムを積層することが好ましい。剥離可能なカバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルムやポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができる。カバーフィルムとしては、カバーフィルムを剥離するときに、樹脂層とキャリアフィルムとの接着力よりも小さいものであればよい。
【0083】
なお、本発明においては、上記カバーフィルム上に本発明の硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥させることにより樹脂層を形成して、その表面にキャリアフィルムを積層するものであってもよい。すなわち、本発明においてドライフィルムを製造する際に本発明の硬化性樹脂組成物を塗布するフィルムとしては、キャリアフィルム及びカバーフィルムのいずれを用いてもよい。
【0084】
本発明の硬化性樹脂組成物を用いて硬化物を形成するには、その組成物を基板上に塗布し、溶剤を揮発乾燥した後に得られた樹脂層に対し、露光(光照射)を行うことにより、露光部(光照射された部分)が硬化する。具体的には、接触式または非接触方式により、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光、もしくは、レーザーダイレクト露光機により直接パターン露光して、未露光部をアルカリ水溶液(例えば、0.3~3質量%炭酸ソーダ水溶液)により現像することにより、レジストパターンが形成される。さらに約100~180℃の温度に加熱して熱硬化(ポストキュア)させることにより、耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、密着性、電気特性等の諸特性に優れた硬化皮膜(硬化物)を形成することができる。
【0085】
本発明の硬化性樹脂組成物は、例えば、上記有機溶剤を用いて塗布方法に適した粘度に調整して、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布した後、約60~100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることで、タックフリーの樹脂層を形成することができる。また、上記組成物をキャリアフィルムまたはカバーフィルム上に塗布し、乾燥させてフィルムとして巻き取ったドライフィルムの場合、ラミネーター等により本発明の組成物の層が基材と接触するように基材上に貼り合わせた後、キャリアフィルムを剥がすことにより、基材上に樹脂層を形成することができる。
【0086】
上記基材としては、あらかじめ銅等により回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキシド・シアネート等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR-4等)の銅張積層板、その他、金属基板、ポリイミドフィルム、PETフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0087】
上記揮発乾燥または熱硬化は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法及びノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0088】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のランプ光源またはレーザー光源としては、最大波長が350~410nmの範囲にあるものでよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には20~1000mJ/cm2、好ましくは20~800mJ/cm2の範囲内とすることができる。
【0089】
上記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液が使用できる。
【0090】
本発明の硬化性樹脂組成物は、パッケージ基板などのプリント配線板上に硬化被膜(硬化物)を形成するために好適に使用され、より好適には、永久皮膜を形成するために使用され、さらに好適には、ソルダーレジスト、層間絶縁層、カバーレイを形成するために、特に好適にはソルダーレジストを形成するために使用される。また、車載用途等の高温状態に晒されるプリント配線板のソルダーレジスト等の永久被膜の形成に好適に使用できる。
【0091】
また、本発明は、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物、及びその硬化物を有する電子部品も提供する。本発明の硬化性樹脂組成物を用いることで、外観性、耐久性、生産性の高い電子部品が提供される。なお、本発明において電子部品とは、電子回路に使用する部品を意味し、プリント配線板、トランジスタ、発光ダイオード、レーザーダイオード等の能動部品の他抵抗、コンデンサ、インダクタ、コネクタ等の受動部品も含まれ、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物がこれらの絶縁性硬化塗膜として、本発明の効果を奏するものである。
【実施例】
【0092】
以下、実施例、比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例、比較例により制限されるものではない。なお、配合量を表す部は、特に記載が無い限り、質量部である。
【0093】
<組成物の調製>
表1に示す成分を攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで混練し、硬化性樹脂組成物を調製した。
【0094】
【0095】
*1:カルボキシル基含有フッ素樹脂、酸価100mgKOH/g、新中村化学社製TIF-1
*2:カルボキシル基含有フッ素樹脂、酸価130mgKOH/g、新中村化学社製TIF-2
*3:カルボキシル基を含まないフッ素樹脂、ダイキン社製GK-570
*4:フッ素原子を含まないカルボキシル基含有樹脂、ダイセルオルネクス社製サイクロマーZ250
*5:フッ素原子を含まないカルボキシル基含有アクリレート樹脂(詳細は次段落参照)
*6:ポリグリセリン系アクリレート、6官能、分子量900、阪本薬品社製
*7:ポリグリセリン系アクリレート、12官能、分子量3300、阪本薬品社製
*8:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
*9:ルチル型二酸化チタン
*10:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド、IGMResins社製Omnirad TPO H
*11:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、IGMResins社製Omnirad819
*12:フェノールノボラック型エポキシ樹脂、DIC社製N-870
*13:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、JER社製828
【0096】
上記*5カルボキシル基含有アクリレート樹脂の製法は次の通りである。ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート600gにオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔大日本インキ化学工業株式会社製、EPICLON N-695、軟化点95℃、エポキシ当量214、平均官能基数7.6〕1070g(グリシジル基数(芳香環総数):5.0モル)、アクリル酸360g(5.0モル)、及びハイドロキノン1.5gを仕込み、100℃に加熱攪拌し、均一溶解した。次いで、トリフェニルホスフィン4.3gを仕込み、110℃に加熱して2時間反応後、120℃に昇温してさらに12時間反応を行った。得られた反応液に、芳香族系炭化水素(ソルベッソ150)415g、テトラヒドロ無水フタル酸456.0g(3.0モル)を仕込み、110℃で4時間反応を行い、冷却し、感光性のカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。このようにして得られた樹脂溶液の固形分は65%、固形分の酸価は89mgKOH/gであった。
【0097】
<評価方法>
(1)現像性
上記で作製した硬化性樹脂組成物をアプリケーターを用いて基板に塗布し、80℃×30分の乾燥処理を行った後、メタルハライドランプ光源を用いて露光量600mjを照射した後に、1wt%の炭酸ナトリウム水溶液に浸漬し、現像性を評価した。
現像時間が90秒未満であったものを◎とし、90秒以上120秒未満であったものを○とし、120秒以上であったものを×とした。
【0098】
(2)半田耐熱性
上記で作製した硬化性樹脂組成物をアプリケーターを用いて基板に塗布し、80℃×30分の乾燥処理を行った後、パターニングを有するネガを介してメタルハライドランプ光源を用いて露光量600mJ/cm2を照射した後に、1wt%の炭酸ナトリウム水溶液に浸漬して現像し、次いで150℃で60分間加熱して硬化処理を行った。硬化処理が行われた基板について、260℃のはんだ槽で処理を行った後、テープピールを行い、剥がれの有無を評価した。
処理時間10秒で剥がれが生じなかったものを○とし、処理時間10秒で剥がれが生じたものを×とした。
【0099】
(3)熱処理ΔE(熱変色耐性)
(2)と同様に硬化性樹脂組成物の塗布、乾燥、露光、現像及び硬化処理を行った基板について、ピークトップ温度を285℃として10秒の熱処理を1回行った。初期値からの色の変化量ΔE(色差)を算出した。
ΔEが1.0以下であったものを◎とし、ΔEが1.5以下であったものを○とし、ΔEが2.0以上であったものを×とした。
【0100】
(4)250μm開口評価
上記で作製した硬化性樹脂組成物をアプリケーターを用いて基板に塗布し、80℃×30分の乾燥処理を行った後、250μm×250μmの開口部が複数形成されたパターニングを有するネガを介してメタルハライドランプ光源を用いて露光量600mJを照射した後に、1wt%の炭酸ナトリウム水溶液に浸漬して現像し、次いで150℃で60分間加熱して硬化処理を行った。
210μm以上の開口が形成可能であったものを◎とし、180μm以上210μm未満の開口が形成可能であったものを○とし、180μm未満の開口が形成されたものを×とした。
【0101】
<評価結果>
カルボキシル基含有フッ素樹脂とポリグリセリン系アクリレートの両方を含んでいる場合(実施例1~6)は、熱変色耐性に優れているとともに、現像性及び半田耐熱性も優れており、また、設定されたサイズ(250μm)に対してより近い開口の形成が可能であることが認められた。
一方、比較例1~3では、カルボキシル基含有フッ素樹脂とポリグリセリン系アクリレートのいずれか一方または両方を含んでいないために、上記評価の一部に劣ることが認められた。