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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】加工食品の乾燥状態を評価する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/62 20060101AFI20230605BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20230605BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20230605BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20230605BHJP
【FI】
G01N25/62 Z
A23L5/00 Z
A23L13/00 Z
A23L17/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019051626
(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2020153774
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000113067
【氏名又は名称】プリマハム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】加藤 重城
(72)【発明者】
【氏名】白須 直樹
(72)【発明者】
【氏名】江田 美佳
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-072250(JP,A)
【文献】特開2016-063786(JP,A)
【文献】特開平05-273168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/62
A23L 5/00
A23L 13/00
A23L 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工食品の乾燥状態を評価する評価方法であって、前記加工食品の一つの固体表面における水分蒸散量を測定し、前記水分蒸散量と水分活性値の相関関係に基づいて水分活性の推定値を算出することを特徴とする、評価方法。
【請求項2】
加工食品が、水産加工食品または食肉加工食品であることを特徴とする、請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
加工食品の製造方法であって、食品原料を加工する工程と、加工された食品の一つの固体表面における水分蒸散量を測定する工程、前記水分蒸散量と水分活性値の相関関係に基づいて水分活性の推定値を算出する工程、前記推定値に基づいて加工食品の乾燥状態を評価する工程を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項4】
加工食品が、水産加工食品または食肉加工食品であることを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
加工食品の生産管理方法であって、食品原料を加工する工程と、加工された食品の一つの固体表面における水分蒸散量を測定する工程、前記水分蒸散量と水分活性値の相関関係に基づいて水分活性の推定値を算出する工程、前記推定値に基づいて加工食品の乾燥状態を評価する工程、加工食品の品質を確認する工程を含むことを特徴とする、生産管理方法。
【請求項6】
加工食品が、水産加工食品または食肉加工食品であることを特徴とする、請求項5に記載の生産管理方法。
【請求項7】
加工食品の乾燥状態を評価するための水分測定装置であって、
前記加工食品の一つの固体表面における水分蒸散量を測定する測定部
前記水分蒸散量と水分活性値の相関関係に基づいて水分活性の推定値を算出する解析部、を備えることを特徴とする、水分測定装置。
【請求項8】
さらに、把持部を備え、ハンディタイプであることを特徴とする、請求項7に記載の水分測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品工業分野において、加工食品に含まれる水分活性量を測定することに関連するものである。更に詳しくは、加工食品の一つの固体表面における水分蒸散量を測定することにより、加工食品の乾燥状態を評価する方法、加工食品を製造する方法、加工食品の生産を管理する方法、及び加工食品の乾燥状態を評価するための水分測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品工業では、食品に含まれる水分のうち、微生物の増殖に利用可能な水分活性値を一定値以下に管理することにより、製品の安全性や保存安定性を担保している。また、食品に含まれる水分量が適正値を下回ると食感や風味などが損なわれることから、製品に含まれる水分活性値を測定して適正範囲に管理することが、品質を維持するうえで重要である。食品に含まれる水分活性値の測定について、例えば、特許文献1には、種子、お茶、小麦粉などの乾燥状態を測定するために、検体を密閉収納する容器本体内に湿度検出部を備える水分活性測定器を用いることが記載されている。この水分活性測定器は、検体から生じる水分の蒸散に伴う容器内空間の湿度変化に基づいて、検体に含まれる水分活性値を演算することができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-273168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水産加工食品である魚肉ねり製品や丸干し魚介類など、及び食肉加工食品であるハムやソーセージなどは、製造において乾燥処理工程が必要な製品である。この乾燥処理工程は、日々の環境条件などによって食品の乾燥度合が変化することから、乾燥処理時間と加工食品に含まれる水分量の関係は必ずしも一定とはならない。したがって、加工食品に含まれる水分量を確認するためには、乾燥処理工程にある加工食品を適宜サンプリングして、水分活性測定装置などで水分量を検査しなければならない。
水分活性値は、加工食品の変敗を防止するなどの目的でJAS規格や食品衛生法などにより加工食品ごとに上限値が定められている。一方で、加工食品に含まれる水分が低すぎると歩留まりや作業効率などの低下を引き起こす。そこで、製造業者は、加工食品ごとに適切な水分活性値の範囲を設定し、乾燥処理工程にある加工食品について、水分活性値が設定範囲に収まるまで、乾燥処理、サンプリング、水分活性値の測定を繰り返し実施する必要がある。
【0005】
従来の水分活性測定装置は、例えば、特許文献1に記載の水分活性測定器にあるように、検体が2cm以上10cm以下の容器に収まるものでなくてはならず、検体の大きさに制限があることから、検査対象となる加工食品の種類が限定されたり、検体を細かく破砕したりする必要があった。
また、従来の水分活性測定装置は、測定時間が長く、例えば、1つの検体の測定に数十分を要するので、製造効率を低下させる問題がある。
【0006】
これらの問題に対して、加工食品に含まれる水分活性値の測定においては、迅速かつ簡易に行う方法が求められている。
すなわち、本発明の課題は、加工食品に含まれる水分活性量を迅速かつ簡易に測定する方法、及びそのための測定装置を提供することである。具体的には、加工食品の一つの固体表面における水分蒸散量を測定して、加工食品の乾燥状態を評価する方法、加工食品を製造する方法、加工食品の生産を管理する方法、及び加工食品の乾燥状態を評価するための水分測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、加工食品の表面の水分蒸散量を測定することによって、加工食品に含まれる水分活性量を算出できるという知見に至り、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の加工食品の乾燥状態を評価する評価方法、加工食品の製造方法、加工食品の生産管理方法、及び加工食品の乾燥状態を評価するための水分測定装置である。
【0008】
上記課題を解決するための本発明の加工食品の乾燥状態を評価する評価方法は、加工食品の一つの固体表面における水分蒸散量を測定することを特徴とするものである。
この加工食品の乾燥状態を評価する評価方法によれば、加工食品の表面における水分蒸散量を測定することにより、加工食品が有する水分活性量を算出することができるので、乾燥状態を迅速かつ簡易に評価することができる。また、加工食品の表面における水分蒸散量は、加工食品が有する水分活性値と高い相関関係が示されるので、加工食品の乾燥状態を正確に評価することができるという効果も得られる。
【0009】
さらに、本発明の加工食品の乾燥状態を評価する評価方法の一実施態様としては、加工食品が、水産加工食品または食肉加工食品であることを特徴とするものである。
この加工食品の乾燥状態を評価する方法によれば、加工食品の表面における水分蒸散量を測定することにより、加工食品が有する水分活性量を算出することができるので、様々な大きさや形状を有する広範な水産加工食品や食肉加工食品の乾燥状態を評価するために適用することができる。
【0010】
上記課題を解決するための本発明の加工食品の製造方法は、食品原料を加工する工程と、加工された食品の一つの固体表面における水分蒸散量を測定する工程、加工食品の乾燥状態を評価する工程を含むことを特徴とするものである。
この加工食品の製造方法によれば、加工された食品の表面における水分蒸散量を測定し、加工食品が有する水分活性量を算出することにより、乾燥状態を迅速かつ簡易に評価することができるので、製造工程を効率化できるという効果を有する。また、加工食品の表面における水分蒸散量は、加工食品が有する水分活性値と高い相関関係を示すことが認められるので、加工食品の乾燥状態を正確に評価することができるという効果も得られる。
【0011】
さらに、本発明の加工食品の製造方法の一実施態様としては、加工食品が、水産加工食品または食肉加工食品であることを特徴とするものである。
この加工食品の製造方法によれば、加工食品の表面における水分蒸散量を測定することにより、加工食品が有する水分活性量を算出することができるので、様々な大きさや形状を有する広範な水産加工食品や食肉加工食品の製造に適用することができる。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の加工食品の生産管理方法は、食品原料を加工する工程と、加工された食品の一つの固体表面における水分蒸散量を測定する工程、加工食品の乾燥状態を評価する工程、加工食品の品質を確認する工程を含むことを特徴とするものである。
この加工食品の生産管理方法によれば、加工された食品の表面における水分蒸散量を測定し、加工食品が有する水分活性量を算出することにより乾燥状態を評価でき、加工食品の品質を迅速かつ簡易に確認することができるので、生産管理工程を効率化できるという効果を有する。また、加工食品の表面における水分蒸散量は、加工食品が有する水分活性値と高い相関関係を示すことが認められるので、加工食品の乾燥状態を正確に評価することができるという効果も得られる。
【0013】
さらに、本発明の加工食品の生産管理方法の一実施態様としては、加工食品が、水産加工食品または食肉加工食品であることを特徴とするものである。
この加工食品の生産管理方法によれば、加工食品の表面における水分蒸散量を測定することにより、加工食品が有する水分活性量を算出することができるので、様々な大きさや形状を有する広範な水産加工食品や食肉加工食品の生産管理に適用することができる。
【0014】
上記課題を解決するための本発明の加工食品の乾燥状態を評価するための水分測定装置は、加工食品の一つの固体表面における水分蒸散量を測定する測定部を備えることを特徴とするものである。
この水分測定装置によれば、加工食品の一つの固体表面における水分蒸散量を迅速かつ簡易に測定することができる。また、加工食品の表面における水分蒸散量は、加工食品が有する水分活性値と高い相関関係を示すことが認められるので、加工食品における乾燥状態の評価、製造、生産管理に適用することができる。
【0015】
さらに、本発明の加工食品の乾燥状態を評価するための水分測定装置の一実施態様としては、水分測定装置が、把持部を備え、ハンディタイプであることを特徴とするものである。
この水分測定装置によれば、コンパクトで携帯性に優れ、高い利便性を発揮するので、加工食品を取り扱う広範な工程で用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、加工食品に含まれる水分活性量を迅速かつ簡易に測定する方法、及び加工食品の乾燥状態を評価するための水分測定装置を提供することができる。具体的には、加工食品の一つの固体表面における水分蒸散量を測定して、加工食品の乾燥状態を評価する方法、加工食品を製造する方法、加工食品の生産を管理する方法、及び加工食品の乾燥状態を評価するための水分測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明における水分蒸散量の測定原理を示す概略説明図である。
図2】本発明の水分測定装置の構造を示す概略説明図である。(A)水分測定装置を示す模式図である。(B)検出部の平面図である。(C)検出部のc-c’断面図である。
図3】本発明の水分測定装置を用いた測定情報の中央管理に関する概略説明図である。
図4】加工食品の乾燥処理時間依存的な水分蒸散量と水分活性値の相関関係を示す図である。
図5】加工食品の種類による水分蒸散量と水分活性値の相関関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る加工食品の乾燥状態を評価するための水分測定装置、加工食品の乾燥状態を評価する評価方法、加工食品の製造方法、加工食品の生産管理方法の実施態様を詳細に説明する。
なお、実施態様に記載する水分測定装置などについては、本発明に係る加工食品の乾燥状態を評価するための水分測定装置、加工食品の乾燥状態を評価する評価方法、加工食品の製造方法、加工食品の生産管理方法を説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
【0019】
(水分蒸散量の測定原理)
本発明の水分測定装置は、検体表面の水分蒸散量を測定することにより、水産加工食品または食肉加工食品などの加工食品に含まれる水分活性量の情報を提供するものである。まず、水分蒸散量の測定原理について、図1の概略説明図を用いて説明する。
加工食品の表面から蒸散する水分量は、検出部1に所定の間隔で配置される2対の湿度センサ2aと温度センサ3a、湿度センサ2bと温度センサ3bにおいて、それぞれのセンサを通過する水分の湿度差と温度差を測定して、水分蒸散量(g/h/m)として算出する。このとき、蒸散する水分が、以下の式(1)で表されるフィックの法則に従って拡散すると仮定し、各測定地点における拡散流量の密度勾配を利用する。
式(1)dm/dt=-D・A・dp/dx
ここで、A=面積[m]、m=輸送される水の量[g]、t=時間[h]、D=拡散係数[0.0877g/m(h(mmHg))]、p=大気中の蒸気圧[mmHg]、x=加工食品の表面から湿度センサ2までの距離である。拡散流量dm/dtは、単位時間あたりに輸送される1cmあたりの質量を表し、面積Aと距離あたりの濃度変化dc/dxに比例する。Dは、空気中での水蒸気の拡散係数である。
【0020】
(水分測定装置)
図2(A)は、水分測定装置の一例を示す模式図である。水分測定装置4は、解析部5と表示部6を備え、ケーブル7を介して検出部1に接する把持部8と連結して構成される。また、検出部1は、検体との接触部9を有する。
なお、検体となる加工食品は、特に制限されないが、水産加工食品や食肉加工食品、乾燥野菜、乾燥果実などが挙げられる。例えば、ほっけの干物やあじの干物などの水産加工食品、ビーフジャーキーやソーセージなどの食肉加工食品、干し芋や切り干し大根などの乾燥野菜、干し柿や干しぶどうなどの乾燥果実が挙げられる。また、フリーズドライ製品のような乾燥加工食品でもよい。
【0021】
また、加工食品における測定部位は、未処理の表面部位であってもよいし、切断処理された断面の表面部位であってもよい。なお、未処理の表面部位を非破壊的に測定することが好ましい。
加工食品の厚さは、水分蒸散量に基づいて水分活性量を測定できるのであれば特に限定されるものではない。例えば、1mm以上100mm以下であってもよい。下限値としては、好ましくは5mm以上、更に好ましくは7mm以上、特に好ましくは10mm以上である。一方、上限値としては、好ましくは50mm以下、更に好ましくは30mm以下、特に好ましくは20mm以下である。
【0022】
検出部1は、図2(B)に示すように、筒状の構造を有して内側に湿度センサ2と温度センサ3を備える。さらに、図2(C)に示すように、湿度センサ2と温度センサ3は、測定する検体からの距離が異なるように2組(湿度センサ2aと温度センサ3a、湿度センサ2bと温度センサ3b)設置される。なお、湿度センサ2と温度センサ3の設置数は、検体からの距離が異なる部位にそれぞれが配置されていればよく、3組以上であってもよい。
【0023】
検出部1は、筒状の一方の断面部を検体と密着させることにより、検体表面から蒸散される水分を、検体からの距離が異なる2つの湿度センサ2aと湿度センサ2bが各測定地点における湿度として測定する。同時に、温度センサ3aと温度センサ3bが、各湿度センサ2の測定地点における温度をそれぞれ測定する。これにより、検体の水分蒸散量は、検体からの距離が異なる2点の測定地点における拡散流量の密度勾配に基づいて演算することができる。
【0024】
検出部1の形状は、筒状であれば特に限定されるものではない。例えば、図2(B)に示したように円柱形であってもよいし、四角柱や五角柱などの角柱形であってもよい。
なお、検出部1の形状が円筒形であるものは、水分蒸散量の測定原理を適用するうえで重要な水分の均質な拡散領域を提供できる。さらに、検出部の断面を検体と密着しやすく、検体を傷つけないためにも角の無い円筒形が好ましい。
また、筒状の検出部1は、湿度センサと温度センサの測定環境において、周囲の気流の影響を避けることができれば、検体と接する筒状断面部と反対側の断面部を閉鎖してもよいし、開放したオープンチャンバー型としてもよい。
【0025】
筒状の検出部1の大きさは、気体中の水分を測定できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、断面の空洞部分の面積の下限値としては、好ましくは5mm以上、更に好ましくは30mm以上、特に好ましくは50mm以上である。一方、断面の空洞部分の面積の上限値としては、好ましくは1000mm以下、更に好ましくは300mm以下、特に好ましくは100mm以下である。また、高さの下限値としては、好ましくは5mm以上、更に好ましくは7mm以上、特に好ましくは10mm以上である。一方、高さの上限値としては、好ましくは100mm以下、更に好ましくは50mm以下、特に好ましくは30mm以下である。
【0026】
検出部1の材質は、筒状内側の空気の湿度や温度に影響を与えず、外部からの放射熱や湿度を遮蔽するものであれば特に限定されるものではない。例えば、樹脂や金属などが挙げられる。湿度センサや温度センサが電気式である場合は、絶縁性の熱硬化性樹脂などが好ましい。
また、検出部1の検体との接触部9は、検体を傷つけることなく密着するために、ゴムやシリコンなどの弾性部材を配置することが好ましい。
【0027】
湿度センサ2aと湿度センサ2b、温度センサ3aと温度センサ3bの距離や配置場所は、水分蒸散量を算出するために各測定地点における拡散流量の密度勾配を正確に得られるのであれば特に限定されない。
【0028】
湿度センサ2は、気体中の水分を測定できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、電解質センサ、高分子センサ、セラミックスセンサなどが挙げられる。
温度センサ3は、湿度センサの測定地点周囲の気体温度を測定できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、サーミスタセンサ、測温抵抗体センサ、熱電対センサなどの接触式温度センサや、サーモパイル型赤外線センサなどの非接触型温度センサなどが挙げられる。
また、湿度センサ2と温度センサ3は、図2(B)や図2(C)に示したように一体型の形態であってもよいし、湿度センサ2により湿度が測定される周囲の気体温度を測定できるのであれば、湿度センサ2と温度センサ3は独立して配置してもよい。
【0029】
解析部5は、検出部1からの送信される測定情報に基づいて水分蒸散量を算出し、その結果を表示部6に表示する。これにより、検体の水分蒸散量の測定結果を迅速に入手することができる。
また、解析部5は、検出部1で測定された2点の測定地点における湿度、温度、検体からの距離の値から、水分蒸散量を算出するだけでなく、水分蒸散量と水分活性値の相関関係に基づいて水分活性の推定値を算出してもよい。
【0030】
表示部6は、水分蒸散量を可視表示するものであればよく、デジタル式でもアナログ式でもよい。また、表示部6は、水分蒸散量だけでなく、温度、湿度、時間、水分活性の推定値などを表示することも可能である。
【0031】
また、解析部5と表示部6は、把持部8の内部や表面に設置してもよい。これにより、コンパクトで携帯性に優れた水分測定装置とすることができる。好ましくは、ハンディタイプの水分測定装置である。
【0032】
さらに、解析部5と表示部6は、検出部1で測定された2点の湿度、温度、検体からの距離の値から水分蒸散量や水分活性値の推定値を算出して表示出力できるのであればソフトウェアとしてもよい。水分蒸散量などを算出する演算プログラムや、その結果を表示するプログラムをインストールする装置としては、例えば、パソコンやタブレット端末などが挙げられる。
【0033】
水分測定装置4は、水分蒸散量と水分活性値の相関関係から得られる換算係数や、測定情報や解析結果などの保管のために、それらを記録するための記憶部を有していることが望ましい。
【0034】
水分測定装置4は、測定情報や解析結果などを出力する外部出力部位を有してもよい。水分測定装置4の外部出力部位に接続する装置としては、例えば、測定情報や解析結果などを紙媒体で出力する印刷装置、CD-Rなどのコンピュータで読み取り可能な電子記録媒体に記録するデータ記録装置などが挙げられる。
【0035】
検出部1、把持部8と解析部5、表示部6との連絡は、図2(A)に示すように、ケーブル7で直接接続されるものでもよいし、無線等の通信技術を介して間接的に接続されるものであってもよい。
検出部1、把持部8と解析部5、表示部6の接続を無線で行うことにより、例えば、図3に示したように、検査室において各検出部1と把持部8を用いて測定した情報を、中央管理室のパソコンなどで一元管理する態様を実施することが可能となる。
【0036】
以上の特徴により、本発明の水分測定装置4は、加工食品の一つの固体表面における水分蒸散量を迅速かつ簡易に測定することができる。これにより、加工食品の生産ラインにおいて、加工食品に含まれる水分活性量を定量的に検出することができるので、予め設定された規格値と比較することにより、乾燥処理工程の終了のタイミングを決定したり、各製造工程の品質基準に対する良否を判定したりすることができる。したがって、水分測定装置4は、加工食品における製造、生産管理、品質管理の効率を向上させることができる。
【0037】
また、本発明の水分測定装置4は、水分蒸散量を測定することにより、検体となる加工食品として、水産加工食品や食肉加工食品、乾燥野菜、乾燥果実など様々な種類の加工食品に適用することができるという効果を奏する。
【0038】
(加工食品の乾燥状態を評価する評価方法)
水分測定装置4を用いて加工食品の乾燥状態を評価する評価方法は、水分測定装置4を用いて加工食品の一つの固体表面における水分蒸散量を測定し、乾燥状態を確認する工程を含む評価方法に適用するのであれば特に限定されるものではない。例えば、加工食品の乾燥状態を評価する工程を含む、加工食品の製造、生産管理、品質管理への適用が挙げられる。
【0039】
また、事前に準備した水分測定装置4と検体の種類に対する標準曲線などに基づいて、測定された水分蒸散量から水分活性量の推定値を算出することができるので、加工食品における乾燥状態の評価は、水分測定装置4を用いて測定された水分蒸散量や水分活性量の推定値に基づいて行うことができる。
【0040】
以上の特徴により、本発明の加工食品の乾燥状態を評価する方法は、加工食品の乾燥状態を確認することが必要な様々な工程において、加工食品の水分蒸散量や水分活性値を迅速かつ簡易に定量し、加工食品の乾燥状態を評価することができるので、加工食品における製造、生産管理、品質管理などの効率を向上させることができる。
【0041】
(加工食品の製造方法)
水分測定装置4を用いて加工食品を製造する方法は、水分測定装置4を用いて加工食品の一つの固体表面における水分蒸散量を測定し、乾燥状態を確認する工程を含む製造方法に適用するのであれば特に限定されるものではない。例えば、食品原料を加工する工程と、加工された食品の一つの固体表面における水分蒸散量を測定する工程、加工食品の乾燥状態を評価する工程を含む製造方法などが挙げられる。
【0042】
食品原料を加工する工程は、乾燥処理を含むものであれば特に限定されるものではない。乾燥処理としては、例えば、自然乾燥、人工乾燥、熱風乾燥などが挙げられる。
加工された食品の一つの固体表面における水分蒸散量を測定する工程は、水分測定装置4を用いて加工食品の水分蒸散量を測定するものであれば特に限定されるものではない。例えば、水分蒸散量を測定する工程は、加工食品を乾燥処理する前、乾燥処理中、乾燥処理後に行ってもよい。また、最終製品における出荷判定の工程に適用してもよい。
【0043】
加工食品の乾燥状態を評価する工程は、水分測定装置4を用いて測定された水分蒸散量に基づいて乾燥状態を評価するものであれば特に限定されるものではない。例えば、事前に準備した水分測定装置4と検体の種類に対する標準曲線などに基づいて、測定された水分蒸散量から水分活性量の推定値を算出することができるので、加工食品における乾燥状態の評価は、水分測定装置4を用いて測定された水分蒸散量や水分活性量の推定値に基づいて行うことができる。
【0044】
以上の特徴により、本発明の加工食品を製造する方法は、加工食品の乾燥状態を確認することが必要な工程を含む製造において、加工食品の水分蒸散量や水分活性値を迅速かつ簡易に定量し、加工食品の乾燥状態を評価することができるので、加工食品における製造、生産管理、品質管理などの効率を向上させることができる。
【0045】
(加工食品の生産管理方法)
水分測定装置4を用いて加工食品の生産を管理する方法は、水分測定装置4を用いて加工食品の一つの固体表面における水分蒸散量を測定し、乾燥状態を確認する工程を含む生産管理方法に適用するのであれば特に限定されるものではない。例えば、食品原料を加工する工程と、加工された食品の一つの固体表面における水分蒸散量を測定する工程、加工食品の乾燥状態を評価する工程、加工食品の品質を確認する工程を含む生産管理方法などが挙げられる。
【0046】
食品原料を加工する工程とは、乾燥処理を含むものであれば特に限定されるものではない。乾燥処理としては、例えば、自然乾燥、人工乾燥、熱風乾燥などが挙げられる。
加工された食品の一つの固体表面における水分蒸散量を測定する工程は、水分測定装置4を用いて加工食品の水分蒸散量を測定するものであれば特に限定されるものではない。例えば、水分蒸散量を測定する工程は、加工食品を乾燥処理する前、乾燥処理中、乾燥処理後に行ってもよい。また、加工食品の最終製品における出荷判定の工程などに適用してもよい。
【0047】
加工食品の乾燥状態を評価する工程は、水分測定装置4を用いて測定された水分蒸散量に基づいて乾燥状態を評価するものであれば特に限定されるものではない。例えば、事前に準備した水分測定装置4と検体の種類に対する標準曲線などに基づいて、測定された水分蒸散量から水分活性量の推定値を算出することができるので、加工食品における乾燥状態の評価は、水分測定装置4を用いて測定された水分蒸散量や水分活性量の推定値に基づいて行うことができる。
加工食品の品質を確認する工程は、水分測定装置4を用いて測定された水分蒸散量に基づいて判断するものであれば特に限定されない。例えば、乾燥処理工程が終了した中間製品の品質を確認する工程や、最終製品における出荷判定の工程などに適用してもよい。
【0048】
以上の特徴により、本発明の加工食品の生産を管理する方法は、加工食品の乾燥状態を確認することが必要な工程を含む生産管理において、加工食品の水分蒸散量や水分活性値を迅速かつ簡易に定量し、加工食品の乾燥状態を評価することができるので、加工食品における生産管理、品質管理などの効率を向上させることができる。
【実施例
【0049】
(加工食品の乾燥処理)
乾燥処理を行う加工食品としては、塩漬け肉を用いた。塩漬け肉は、鶏肉と豚肉を混合した挽肉に食塩、亜硝酸ナトリウムを添加してコラーゲンケーシングに充填し、所定の長さで結紮したものを燻製処理した。その後、燻製処理した塩漬け肉は、水分活性値が0.87未満になるまで12日間、10~20℃、相対湿度50~70℃の条件で乾燥処理した。
【0050】
(市販品の検体)
試験で用いた市販品の加工食品は、ほっけの干物、あじの干物、2種類のビーフジャーキー、2種類の干し芋、あんぽ柿の干し柿、市田柿の干し柿、早煮の乾燥昆布、未処理の乾燥昆布である。
【0051】
(水分蒸散量の測定)
乾燥処理した加工食品の水分蒸散量は、本発明の水分測定装置を用いて測定した。水分測定装置を用いた測定は、水分測定装置の検出部を乾燥処理した加工食品の表面に密着させて30秒間行った。
なお、水分蒸散量の測定は、単一の乾燥処理された加工食品において10箇所の表面部分で非破壊的に行った。
【0052】
(水分活性値の測定)
乾燥処理した加工食品の水分活性値は、水分活性測定装置(AquaLab Series4TE,METER Group,Inc.,USA)を用いて測定した。水分活性測定装置を用いた測定は、乾燥処理した加工食品を破砕処理した後に、検体を水分活性測定装置にセットして約40分間行った。
なお、水分活性値の測定は、上記水分蒸散量の測定で用いたものと同一の乾燥処理された各加工食品から調製した10検体について行った。
【0053】
(結果1:水分蒸散量と水分活性値の相関関係)
加工食品の表面で測定される水分蒸散量と水分活性値の相関関係を明らかにするために、塩漬けした挽肉における乾燥処理による水分蒸散量と水分活性値の経時的変化を測定した。
【0054】
図4は、加工食品の乾燥処理時間ごとの水分蒸散量と水分活性値の相関関係を示す図である。塩漬けした挽肉を各時間、乾燥処理した際の水分蒸散量を白棒、水分活性値を黒丸で示し、エラーバーは標準偏差を表す。
【0055】
塩漬けした挽肉の乾燥状態は、水分蒸散量と水分活性値の各測定値が相関をもって乾燥処理時間依存的に推移した。
したがって、加工食品表面の水分蒸散量は、加工食品に含まれる水分活性と相関関係にあることが示された。
【0056】
以上のことから、本発明の水分測定装置は、加工食品に含まれる水分活性量と相関する限局した表面の水分蒸散量を迅速かつ簡易に測定することができる。これにより、水分活性の推定値を算出することも可能となる。また、加工食品における製品の生産管理や品質管理、製造効率を向上させることができる。
【0057】
(結果2:加工食品の種類による水分蒸散量と水分活性値の相関関係)
加工食品の種類による水分蒸散量と水分活性値の相関関係の差異を明らかにするために、市販のほっけの干物、あじの干物、2種類のビーフジャーキー、2種類の干し芋、あんぽ柿の干し柿、市田柿の干し柿、早煮の乾燥昆布、未処理の乾燥昆布における水分蒸散量と水分活性値を測定した。
【0058】
図5は、加工食品の種類による水分蒸散量と水分活性値の相関関係を示す図である。乾燥処理した各加工食品の水分蒸散量を白棒、水分活性値を黒丸で示し、エラーバーは標準偏差を表す。
【0059】
水分蒸散量と水分活性値は、加工食品の種類によらずに一定の比率を維持した。したがって、加工食品表面の水分蒸散量は、加工食品の種類によらずに水分活性値と相関関係にあることが示された。
なお、水分測定装置としては、水分蒸散量を測定するもの以外にも、簡易的な方法としては、固体表面の静電容量を測定するものなどが挙げられるが、静電容量を測定する方法では、検体の種類によって、水分量の測定値と水分活性値との間に相関関係が認められなかった。
【0060】
以上のことから、本発明の水分測定装置は、加工食品の種類によらず含まれる水分活性量を算出するために利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の水分測定装置は、食品工業分野において、加工食品に含まれる水分活性量を確認するために利用することができる。具体的には、迅速かつ簡易に水分活性値と相関する水分蒸散量を測定することができる。これにより、加工食品における製品の生産管理や品質管理、製造効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0062】
1…検出部、2,2a,2b…湿度センサ、3,3a,3b…温度センサ、4…水分測定装置、5…解析部、6…表示部、7…ケーブル、8…把持部、9…接触部
図1
図2
図3
図4
図5