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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】印刷装置及びその印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230605BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/01 451
B41J2/01 305
B41J2/01 401
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019056350
(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公開番号】P2020157488
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】松本 一平
(72)【発明者】
【氏名】福井 一希
(72)【発明者】
【氏名】連 国男
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-094850(JP,A)
【文献】特開2007-190862(JP,A)
【文献】特開2014-178745(JP,A)
【文献】特開2016-055570(JP,A)
【文献】特開2015-085578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体を搬送方向に搬送する搬送手段と、前記搬送方向と直交している前記印刷媒体の幅方向に配列され、前記印刷媒体に向けてインクを吐出する複数個のノズルを備えた印刷ヘッドと、を備え、前記搬送手段により前記印刷媒体を前記搬送方向に搬送させつつ、印刷のためのデータである印刷用の原画像データに基づいて前記印刷ヘッドにより前記印刷媒体に印刷を行う印刷装置において、
前記幅方向における基準線に対する前記印刷媒体の端面の位置を検出する検出部と、
前記基準線を中心として前記原画像データを前記幅方向に同じ距離だけ正負にずれた一対の位置ズレ量を想定し、前記原画像データを前記一対の位置ズレ量に応じて前記幅方向にシフトして一対のシフト画像データを生成する画像シフト部と、
前記複数個のノズルに関して、各ノズルの吐出特性に応じて濃度ムラを均一化するシェーディング補正を、前記一対のシフト画像データに対して行って前記一対のシフト画像データから一対の補正シフト画像データを生成するシェーディング補正部と、
画像の濃淡を表現するための網掛処理を、前記一対の補正シフト画像データに対して行って、一対の網掛シフト画像データを生成する網掛処理部と、
前記一対の網掛シフト画像データの各々の共通部分である網掛共通画像データを生成し、前記網掛共通画像データと前記一対の網掛シフト画像データの各々との差分である網掛正差分画像データと網掛負差分画像データとを生成し、さらに前記距離を変えて一対の位置ズレ量により前記網掛共通画像データと、前記網掛正差分画像データ及び前記網掛負差分画像データとを生成して、複数対の位置ズレ量ごとに前記網掛共通画像データと、前記網掛正差分画像データ及び前記網掛負差分画像データとを生成する差分画像生成部と、
前記複数対の位置ズレ量と対応づけて前記網掛共通画像データと、前記網掛正差分画像データ及び前記網掛負差分画像データとを記憶するメモリと、
前記検出部からの位置ズレ量に基づいて、前記印刷ヘッドの位置における位置ズレ量に対応する前記網掛正差分画像データまたは前記網掛負差分画像データと、前記網掛共通画像データとを前記メモリから読み出して合成して網掛合成画像データを生成する合成画像生成部と、
前記印刷ヘッドを操作して、前記網掛合成画像データに基づいて前記印刷媒体に印刷を行わせる制御部と、
を備えていることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
印刷媒体を搬送方向に搬送する搬送手段と、前記搬送方向と直交している前記印刷媒体の幅方向に配列され、前記印刷媒体に向けてインクを吐出する複数個のノズルを備えた印刷ヘッドと、を備え、前記搬送手段により前記印刷媒体を前記搬送方向に搬送させつつ、印刷のためのデータである印刷用の原画像データに基づいて前記印刷ヘッドにより前記印刷媒体に印刷を行う印刷装置において、
前記幅方向における基準線に対する前記印刷媒体の端面の位置を検出する検出部と、
前記基準線を中心として前記幅方向にずれた位置ズレ量を想定し、前記原画像データを前記位置ズレ量に応じて前記幅方向にシフトして複数のシフト画像データを生成する画像シフト部と、
前記複数個のノズルに関して、各ノズルの吐出特性に応じて濃度ムラを均一化するシェーディング補正を、前記原画像データおよび前記シフト画像データに対して行って補正原画像データおよび複数の補正シフト画像データを生成するシェーディング補正部と、
画像の濃淡を表現するための網掛処理を、前記補正原画像データおよび前記複数の補正シフト画像データに対して行って、網掛原画像データおよび複数の網掛シフト画像データを生成する網掛処理部と、
前記網掛原画像データおよび前記複数の網掛シフト画像データの各々の共通部分である網掛共通画像データを生成し、前記網掛原画像データと前記網掛共通画像データとの差分である網掛差分ゼロ画像データを求め、各網掛シフト画像データから前記網掛共通画像データと前記網掛差分ゼロ画像データとを差分することにより、網掛差分画像データを前記複数の網掛シフト画像データ毎に求める差分画像生成部と、
前記網掛共通画像データと前記網掛差分ゼロ画像データとを記憶すると共に、前記位置ズレ量と対応づけて複数の前記網掛差分画像データを記憶するメモリと、
前記検出部からの位置ズレ量に基づいて、前記印刷ヘッドの位置における位置ズレ量に対応する前記網掛差分画像データを前記メモリから読み出し、読み出した前記網掛差分画像データを前記網掛共通画像データおよび前記網掛差分ゼロ画像データと合成して網掛合成画像データを生成する合成画像生成部と、
前記印刷ヘッドを操作して、前記網掛合成画像データに基づいて前記印刷媒体に印刷を行わせる制御部と、を備え、
前記差分画像生成部は、相互に画像データの重複が生じないように前記複数の網掛差分画像データを生成することを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の印刷装置において、
前記検出部は、前記搬送方向における前記印刷ヘッドの上流側に配置されていることを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
印刷媒体を搬送方向に搬送する搬送手段と、前記搬送方向と直交している前記印刷媒体の幅方向に配列され、前記印刷媒体に向けてインクを吐出する複数個のノズルを備えた印刷ヘッドと、を備え、前記搬送手段により前記印刷媒体を前記搬送方向に搬送させつつ、印刷のためのデータである印刷用の原画像データに基づいて前記印刷ヘッドにより前記印刷媒体に印刷を行う印刷装置の印刷方法において、
前記原画像データを受信する受信ステップと、
前記幅方向における基準線に対する前記印刷媒体の端面の位置である位置ズレ量について、前記基準線を中心として前記幅方向に同じ距離だけ正負にずれた一対の位置ズレ量を想定し、前記原画像データを前記一対の位置ズレ量に応じて前記幅方向にシフトして前記一対のシフト画像データを生成するシフト画像生成ステップと、
前記複数個のノズルに関して、各ノズルの吐出特性に応じて濃度ムラを均一化するシェーディング補正を、前記一対のシフト画像データに対して行って前記一対のシフト画像データから一対の補正シフト画像データを生成するシェーディング補正ステップと、
画像の濃淡を表現するための網掛処理を、前記一対の補正シフト画像データに対して行って、一対の網掛シフト画像データを生成する網掛ステップと、
一対の網掛シフト画像データの各々の共通部分である網掛共通画像データを生成し、前記網掛共通画像データと前記一対の網掛シフト画像データの各々との差分である網掛正差分画像データと網掛負差分画像データとを生成し、さらに前記距離を変えて一対の位置ズレ量により前記網掛共通画像データと、前記網掛正差分画像データ及び前記網掛負差分画像データとを生成して、複数対の位置ズレ量ごとに前記網掛共通画像データと、前記網掛正差分画像データ及び前記網掛負差分画像データとを生成する差分画像生成ステップと、
前記複数対の位置ズレ量と対応づけて前記網掛共通画像データと、前記網掛正差分画像データ及び前記網掛負差分画像データとをメモリに記憶する記憶ステップと、
検出された位置ズレ量に基づいて、前記印刷ヘッドの位置における位置ズレ量に対応する前記網掛正差分画像データまたは前記網掛負差分画像データと、前記網掛共通画像データとを前記メモリから読み出して合成することにより網掛合成画像データを生成する網掛合成画像生成ステップと、
前記印刷ヘッドを操作して、前記網掛合成画像データに基づいて前記印刷媒体に印刷する印刷ステップと、
を備えていることを特徴とする印刷装置の印刷方法。
【請求項5】
印刷媒体を搬送方向に搬送する搬送手段と、前記搬送方向に直交している前記印刷媒体の幅方向に配列され、前記印刷媒体に向けてインクを吐出する複数個のノズルを備えた印刷ヘッドと、を備え、前記搬送手段により前記印刷媒体を前記搬送方向に搬送させつつ、印刷のためのデータである印刷用の原画像データに基づいて前記印刷ヘッドにより前記印刷媒体に印刷を行う印刷装置の印刷方法において、
前記原画像データを受信する受信ステップと、
前記幅方向における基準線に対する前記印刷媒体の端面の位置である位置ズレ量について、前記基準線を中心として前記幅方向にずれた位置ズレ量を想定し、前記原画像データを前記位置ズレ量に応じて前記幅方向にシフトして複数のシフト画像データを生成するシフト画像生成ステップと、
前記複数個のノズルに関して、各ノズルの吐出特性に応じて濃度ムラを均一化するシェーディング補正を、前記原画像データおよび前記シフト画像データに対して行って補正原画像データおよび複数の補正シフト画像データを生成するシェーディングステップと、
画像の濃淡を表現するための網掛処理を、前記補正原画像データおよび前記複数の補正シフト画像データに対して行って、網掛原画像データおよび複数の網掛シフト画像データを生成する網掛ステップと、
前記網掛原画像データおよび前記複数の網掛シフト画像データの各々の共通部分である網掛共通画像データを生成し、前記網掛原画像データと前記網掛共通画像データとの差分である網掛差分ゼロ画像データを求め、各網掛シフト画像データから前記網掛共通画像データと前記網掛差分ゼロ画像データとを差分することにより、網掛差分画像データを前記複数の網掛シフト画像データ毎に求める差分画像生成ステップと、
前記網掛共通画像データと前記網掛差分ゼロ画像データとを記憶すると共に、前記位置ズレ量と対応づけて、前記複数の網掛差分画像データをメモリに記憶する記憶ステップと、
検出された位置ズレ量に基づいて、前記印刷ヘッドの位置における位置ズレ量に対応する前記網掛差分画像データを前記メモリから読み出して、前記網掛共通画像データおよび前記網掛差分ゼロ画像データと合成して網掛合成画像データを生成する合成画像生成ステップと、
前記印刷ヘッドを操作して、前記網掛合成画像データに基づいて前記印刷媒体に印刷する印刷ステップと、を備え、
前記差分画像生成ステップでは、相互に画像データの重複が生じないように前記複数の網掛差分画像データを生成することを特徴とする印刷装置の印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送されている印刷媒体に対して印刷ヘッドにより印刷を行う印刷装置及びその印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、印刷ヘッドと、検出部と、画像生成部と、シェーディング補正部と、網掛処理部と、メモリと、制御部とを備えたものがある。
【0003】
印刷ヘッドは、連続紙が搬送される搬送方向と直交する方向である幅方向に複数個のノズルを備えている。検出部は、連続紙の幅方向に設定されている基準線に対する連続紙の端面の位置を検出する。画像生成部は、印刷用のデータである印刷用画像データを受け取り、検出部からの位置ズレ量に応じて、印刷用画像データをシフトさせたシフト画像データを生成する。シェーディング補正部は、印刷ヘッドの各ノズルの吐出特性に応じてシフト画像データを補正し、補正画像データを生成する。網掛処理部は、補正画像データに対して網掛処理を行う。メモリは、網掛処理が行われた網掛画像データを記憶する。制御部は、メモリの網掛画像データに基づいて印刷ヘッドを操作して連続紙に対して印刷を行う。このように印刷を行うことにより、連続紙が斜行しても幅方向における画像の位置ズレを抑制できる。
【0004】
上記のように位置ズレ量を補正する装置において、位置ズレ量がノズルの間に位置する場合における補正を好適に行うものも提案されている(例えば、特許文献1,2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-55518号公報
【文献】特開2017-114054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の装置は、検出部で検出された位置ズレ量に応じて画像生成部がシフト画像データを生成し、そのシフト画像データにシェーディング補正及び網掛処理を行った網掛画像データをメモリまで転送する処理を行う。したがって、位置ズレが検出されるたびにデータ処理及びデータ転送を行う必要があるので、高速にデータ処理及びデータ転送を行う必要があり、処理の負荷が大きくなるという問題がある。高速にデータ処理及びデータ転送を可能にするには装置のコストが増大するので、低コスト化のために処理負荷を軽減させることは重要な課題である。このような課題は、特に、全てのページに同じ印刷用画像データによる印刷を行う印刷方式(ノンバリアブル印刷とも呼ばれる)で顕著となる。
【0007】
なお、上記の課題を解決するために、ある一定範囲の位置ズレを想定しておき、その範囲でシフトした複数個のシフト画像データを予め用意しておき、複数個のシフト画像データをメモリに格納しておく方式も考えられる。しかしながら、この方式では、複数個のシフト画像データを格納する大容量のメモリが必要となるという別異の課題が生じるので、現実的な解決策にはならない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、位置ズレを抑制する印刷を行っても処理負荷を軽減できる印刷装置及びその印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、印刷媒体を搬送方向に搬送する搬送手段と、前記搬送方向と直交している前記印刷媒体の幅方向に配列され、前記印刷媒体に向けてインクを吐出する複数個のノズルを備えた印刷ヘッドと、を備え、前記搬送手段により前記印刷媒体を前記搬送方向に搬送させつつ、印刷のためのデータである印刷用の原画像データに基づいて前記印刷ヘッドにより前記印刷媒体に印刷を行う印刷装置において、前記幅方向における基準線に対する前記印刷媒体の端面の位置を検出する検出部と、前記基準線を中心として前記原画像データを前記幅方向に同じ距離だけ正負にずれた一対の位置ズレ量を想定し、前記原画像データを前記一対の位置ズレ量に応じて前記幅方向にシフトして一対のシフト画像データを生成する画像シフト部と、前記複数個のノズルに関して、各ノズルの吐出特性に応じて濃度ムラを均一化するシェーディング補正を、前記一対のシフト画像データに対して行って前記一対のシフト画像データから一対の補正シフト画像データを生成するシェーディング補正部と、画像の濃淡を表現するための網掛処理を、前記一対の補正シフト画像データに対して行って、一対の網掛シフト画像データを生成する網掛処理部と、前記一対の網掛シフト画像データの各々の共通部分である網掛共通画像データを生成し、前記網掛共通画像データと前記一対の網掛シフト画像データの各々との差分である網掛正差分画像データと網掛負差分画像データとを生成し、さらに前記距離を変えて一対の位置ズレ量により前記網掛共通画像データと、前記網掛正差分画像データ及び前記網掛負差分画像データとを生成して、複数対の位置ズレ量ごとに前記網掛共通画像データと、前記網掛正差分画像データ及び前記網掛負差分画像データとを生成する差分画像生成部と、前記複数対の位置ズレ量と対応づけて前記網掛共通画像データと、前記網掛正差分画像データ及び前記網掛負差分画像データとを記憶するメモリと、前記検出部からの位置ズレ量に基づいて、前記印刷ヘッドの位置における位置ズレ量に対応する前記網掛正差分画像データまたは前記網掛負差分画像データと、前記網掛共通画像データとを前記メモリから読み出して合成して網掛合成画像データを生成する合成画像生成部と、前記印刷ヘッドを操作して、前記網掛合成画像データに基づいて前記印刷媒体に印刷を行わせる制御部と、を備えているものである。
【0010】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、画像シフト部は原画像データから一対のシフト画像データを生成する。シェーディング補正部は一対のシフト画像データに対してシェーディング補正を行って一対の補正シフト画像データを生成する。網掛処理部は一対の補正シフト画像データに対して網掛処理を行って一対の網掛シフト画像データを生成する。差分画像生成部は、一対の網掛シフト画像データの各々の共通部分である網掛共通画像データを生成し、網掛共通画像データと一対の網掛シフト画像データの各々との差分である網掛正差分画像データと網掛負差分画像データとを生成する。メモリは複数対の位置ズレ量と対応付けて網掛共通画像データと網掛正差分画像データと負差分画像データとを記憶する。合成画像生成部は、検出部からの位置ズレ量に対応する網掛共通画像データと、網掛正差分画像データまたは網掛負差分画像データとをメモリから読み出して合成し、制御部は、印刷ヘッドを操作して、網掛合成画像データに基づいて印刷媒体に印刷を行わせる。したがって、印刷媒体の位置ズレが生じても、メモリから読み出した網掛正差分画像データまたは網掛負差分画像データと、網掛共通画像データとを合成するだけで網掛合成画像データが生成できるので、位置ズレを抑制する印刷を行っても処理負荷を軽減できる。
【0011】
また、本発明は、印刷媒体を搬送方向に搬送する搬送手段と、前記搬送方向と直交している前記印刷媒体の幅方向に配列され、前記印刷媒体に向けてインクを吐出する複数個のノズルを備えた印刷ヘッドと、を備え、前記搬送手段により前記印刷媒体を前記搬送方向に搬送させつつ、印刷のためのデータである印刷用の原画像データに基づいて前記印刷ヘッドにより前記印刷媒体に印刷を行う印刷装置において、前記幅方向における基準線に対する前記印刷媒体の端面の位置を検出する検出部と、前記基準線を中心として前記幅方向にずれた位置ズレ量を想定し、前記原画像データを前記位置ズレ量に応じて前記幅方向にシフトして複数のシフト画像データを生成する画像シフト部と、前記複数個のノズルに関して、各ノズルの吐出特性に応じて濃度ムラを均一化するシェーディング補正を、前記原画像データおよび前記シフト画像データに対して行って補正原画像データおよび複数の補正シフト画像データを生成するシェーディング補正部と、画像の濃淡を表現するための網掛処理を、前記補正原画像データおよび前記複数の補正シフト画像データに対して行って、網掛原画像データおよび複数の網掛シフト画像データを生成する網掛処理部と、前記網掛原画像データおよび前記複数の網掛シフト画像データの各々の共通部分である網掛共通画像データを生成し、前記網掛原画像データと前記網掛共通画像データとの差分である網掛差分ゼロ画像データを求め、各網掛シフト画像データから前記網掛共通画像データと前記網掛差分ゼロ画像データとを差分することにより、網掛差分画像データを前記複数の網掛シフト画像データ毎に求める差分画像生成部と、前記網掛共通画像データと前記網掛差分ゼロ画像データとを記憶すると共に、前記位置ズレ量と対応づけて複数の前記網掛差分画像データを記憶するメモリと、前記検出部からの位置ズレ量に基づいて、前記印刷ヘッドの位置における位置ズレ量に対応する前記網掛差分画像データを前記メモリから読み出し、読み出した前記網掛差分画像データを前記網掛共通画像データおよび前記網掛差分ゼロ画像データと合成して網掛合成画像データを生成する合成画像生成部と、前記印刷ヘッドを操作して、前記網掛合成画像データに基づいて前記印刷媒体に印刷を行わせる制御部と、を備え、前記差分画像生成部は、相互に画像データの重複が生じないように前記複数の網掛差分画像データを生成することを特徴とするものである。
【0012】
[作用・効果]請求項2に記載の発明によれば、印刷媒体の位置ズレが生じても、網掛共通画像データおよび網掛差分ゼロ画像データと、位置ズレ量に応じた網掛差分画像データとをメモリから読み出し、合成画像生成部において合成するだけで網掛合成画像データが生成できるので、位置ズレを抑制する印刷を行っても処理負荷が大きくならない。さらに、差分画像生成部は、相互に画像データの重複が生じないように複数の網掛差分画像データを生成するため、メモリに記憶すべき網掛差分画像データのデータ量を抑制することが可能である。
【0013】
また、本発明において、前記検出部は、前記搬送方向における前記印刷ヘッドの上流側に配置されていることが好ましい(請求項3)。
【0014】
上流側で検出された印刷媒体の端面の位置と印刷ヘッドとの位置関係から、印刷ヘッドにおける印刷媒体の位置ズレ量を求めることができる。したがって、その位置ズレ量に応じて印刷ヘッド位置における位置ズレを抑制できる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、印刷媒体を搬送方向に搬送する搬送手段と、前記搬送方向と直交している前記印刷媒体の幅方向に配列され、前記印刷媒体に向けてインクを吐出する複数個のノズルを備えた印刷ヘッドと、を備え、前記搬送手段により前記印刷媒体を前記搬送方向に搬送させつつ、印刷のためのデータである印刷用の原画像データに基づいて前記印刷ヘッドにより前記印刷媒体に印刷を行う印刷装置の印刷方法において、前記原画像データを受信する受信ステップと、前記幅方向における基準線に対する前記印刷媒体の端面の位置である位置ズレ量について、前記基準線を中心として前記幅方向に同じ距離だけ正負にずれた一対の位置ズレ量を想定し、前記原画像データを前記一対の位置ズレ量に応じて前記幅方向にシフトして前記一対のシフト画像データを生成するシフト画像生成ステップと、前記複数個のノズルに関して、各ノズルの吐出特性に応じて濃度ムラを均一化するシェーディング補正を、前記一対のシフト画像データに対して行って前記一対のシフト画像データから一対の補正シフト画像データを生成するシェーディング補正ステップと、画像の濃淡を表現するための網掛処理を、前記一対の補正シフト画像データに対して行って、一対の網掛シフト画像データを生成する網掛ステップと、一対の網掛シフト画像データの各々の共通部分である網掛共通画像データを生成し、前記網掛共通画像データと前記一対の網掛シフト画像データの各々との差分である網掛正差分画像データと網掛負差分画像データとを生成し、さらに前記距離を変えて一対の位置ズレ量により前記網掛共通画像データと、前記網掛正差分画像データ及び前記網掛負差分画像データとを生成して、複数対の位置ズレ量ごとに前記網掛共通画像データと、前記網掛正差分画像データ及び前記網掛負差分画像データとを生成する差分画像生成ステップと、前記複数対の位置ズレ量と対応づけて前記網掛共通画像データと、前記網掛正差分画像データ及び前記網掛負差分画像データとをメモリに記憶する記憶ステップと、検出された位置ズレ量に基づいて、前記印刷ヘッドの位置における位置ズレ量に対応する前記網掛正差分画像データまたは前記網掛負差分画像データと、前記網掛共通画像データとを前記メモリから読み出して合成することにより網掛合成画像データを生成する網掛合成画像生成ステップと、前記印刷ヘッドを操作して、前記網掛合成画像データに基づいて前記印刷媒体に印刷する印刷ステップと、を備えていることを特徴とするものである。
【0016】
[作用・効果]請求項4に記載の発明によれば、請求項1に係る印刷装置と同様の効果を奏することが可能である。
【0017】
また、請求項5に記載の発明は、印刷媒体を搬送方向に搬送する搬送手段と、前記搬送方向に直交している前記印刷媒体の幅方向に配列され、前記印刷媒体に向けてインクを吐出する複数個のノズルを備えた印刷ヘッドと、を備え、前記搬送手段により前記印刷媒体を前記搬送方向に搬送させつつ、印刷のためのデータである印刷用の原画像データに基づいて前記印刷ヘッドにより前記印刷媒体に印刷を行う印刷装置の印刷方法において、前記原画像データを受信する受信ステップと、前記幅方向における基準線に対する前記印刷媒体の端面の位置である位置ズレ量について、前記基準線を中心として前記幅方向にずれた位置ズレ量を想定し、前記原画像データを前記位置ズレ量に応じて前記幅方向にシフトして複数のシフト画像データを生成するシフト画像生成ステップと、前記複数個のノズルに関して、各ノズルの吐出特性に応じて濃度ムラを均一化するシェーディング補正を、前記原画像データおよび前記シフト画像データに対して行って補正原画像データおよび複数の補正シフト画像データを生成するシェーディングステップと、画像の濃淡を表現するための網掛処理を、前記補正原画像データおよび前記複数の補正シフト画像データに対して行って、網掛原画像データおよび複数の網掛シフト画像データを生成する網掛ステップと、前記網掛原画像データおよび前記複数の網掛シフト画像データの各々の共通部分である網掛共通画像データを生成し、前記網掛原画像データと前記網掛共通画像データとの差分である網掛差分ゼロ画像データを求め、各網掛シフト画像データから前記網掛共通画像データと前記網掛差分ゼロ画像データとを差分することにより、網掛差分画像データを前記複数の網掛シフト画像データ毎に求める差分画像生成ステップと、前記網掛共通画像データと前記網掛差分ゼロ画像データとを記憶すると共に、前記位置ズレ量と対応づけて、前記複数の網掛差分画像データをメモリに記憶する記憶ステップと、検出された位置ズレ量に基づいて、前記印刷ヘッドの位置における位置ズレ量に対応する前記網掛差分画像データを前記メモリから読み出して、前記網掛共通画像データおよび前記網掛差分ゼロ画像データと合成して網掛合成画像データを生成する合成画像生成ステップと、前記印刷ヘッドを操作して、前記網掛合成画像データに基づいて前記印刷媒体に印刷する印刷ステップと、を備え、前記差分画像生成ステップでは、相互に画像データの重複が生じないように前記複数の網掛差分画像データを生成することを特徴とするものである。
【0018】
[作用・効果]請求項5に記載の発明によれば、請求項2に係る印刷装置と同様の効果を奏することが可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る印刷装置によれば、印刷媒体の位置ズレが生じた際に位置ズレを抑制する印刷を行っても処理負荷を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例に係るインクジェット印刷システムの全体を示す概略構成図である。
図2】印刷ヘッドと検出部との位置関係を平面視で示した模式図である。
図3】(a)~(f)は、正差分画像データ及び負差分画像データの生成の説明に供する模式図である。
図4】(a)~(f)は、正差分画像データ及び負差分画像データの生成の説明に供する模式図である。
図5】第2メモリの記憶態様を示す模式図である。
図6】印刷処理を示すフローチャートである。
図7】変形例に係る印刷処理を示すフローチャートである。
図8】網掛共通画像データd14(±0)の生成の説明に供する模式図である。
図9】網掛正差分0画像データd15(±0)および網掛負差分0画像データd16(±0)の生成の説明に供する模式図である。
図10】網掛正差分画像データd15(+1)の生成の説明に供する模式図である。
図11】網掛負差分画像データd16(-1)の生成の説明に供する模式図である。
図12】網掛正差分画像データd15(+2)の生成の説明に供する模式図である。
図13】網掛負差分画像データd16(-2)の生成の説明に供する模式図である。
図14】網掛画像合成データの生成の説明に供する模式図である。
図15】網掛画像合成データの生成の説明に供する模式図である。
図16】網掛画像合成データの生成の説明に供する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の一実施例について説明する。
【0022】
図1は、実施例に係るインクジェット印刷システムの全体を示す概略構成図であり、図2は、印刷ヘッドと検出部との位置関係を平面視で示した模式図である。
【0023】
実施例に係るインクジェット印刷システムは、給紙部1と、インクジェット印刷装置3と、排紙部5とを備えている。
【0024】
給紙部1は、ロール状の連続紙WPを水平軸周りに回転可能に保持し、インクジェット印刷装置3に対して連続紙WPを巻き出して供給する。排紙部5は、インクジェット印刷装置3で印刷された連続紙WPを水平軸周りに巻き取る。連続紙WPの供給側を上流とし、連続紙WPの排紙側を下流とすると、給紙部1はインクジェット印刷装置3の上流側に配置されており、排紙部5はインクジェット印刷装置3の下流側に配置されている。
【0025】
インクジェット印刷装置3は、給紙部1から連続紙WPを取り込むための駆動ローラ7を上流側に備えている。駆動ローラ7によって給紙部1から巻き出された連続紙WPは、複数個の搬送ローラ9に沿って下流側の排紙部5に向かって搬送される。最下流の搬送ローラ9と排紙部5との間には、駆動ローラ11が配置されている。この駆動ローラ11は、搬送ローラ9の上面を搬送されている連続紙WPを排紙部5に向かって送り出す。なお、以下の説明においては、連続紙WPが搬送されていく搬送方向をX方向とし、搬送方向Xに対して水平方向に直交している、連続紙WPの幅方向をY方向として記載する。
【0026】
なお、上述したインクジェット印刷装置3が本発明における「印刷装置」に相当し、上記の連続紙WPが本発明における「印刷媒体」に相当し、駆動ローラ7,9及び搬送ローラ9が本発明における「搬送手段」に相当する。
【0027】
インクジェット印刷装置3は、駆動ローラ7と駆動ローラ11との間に、印刷ヘッド13と、乾燥部15と、検査部17とを上流側からその順に備えている。乾燥部15は、印刷ヘッド13によって印刷された部分に対して乾燥処理を行う。検査部17は、印刷された部分に汚れや抜け等の印刷不良がないか否かを検査する。
【0028】
印刷ヘッド13は、連続紙WPの幅を越える長さを備え、連続紙WPの全幅にわたってインク滴を吐出可能に構成されている。印刷ヘッド13は、複数個のノズル21を幅方向Yに備えている。
【0029】
印刷ヘッド13の上流側には、検出部23が配置されている。この検出部23は、例えば、駆動ローラ7等が取り付けられた搬送路フレーム(不図示)に取り付けられている。検出部23は、連続紙WPの幅方向Yの端部に配置され、幅方向Yにおける連続紙WPの側端面の位置を接触で検出する。好ましくは、検出部23は、連続紙WPの側端面に接触することなく、非接触で位置を検出する。図2に示すように、検出部23は、単に基準線RLを基準に連続紙WPの端面の位置を検出して、その位置を出力する。その位置は、位置ズレ量算出部29によって位置ズレ量として算出される。
【0030】
つまり、位置ズレ量算出部29は、予め設定されている、位置ズレが生じることなく連続紙WPが搬送される際の側端面の位置を基準線RLとし、その基準線RLからのズレ量と、印刷ヘッド13と検出部23との距離と、検出部23が時系列的に検出した連続紙WPの端面の位置とに基づいて、印刷ヘッド13のノズル21の直下における連続紙WPの側端面の位置を位置ズレ量として算出する。なお、本実施例では、便宜上、図2に示すように、搬送方向Xの下流側から見て基準線RLの右側を正方向とし、基準線RLの左側を負方向とする。
【0031】
インクジェット印刷装置3は、画像受信部31と、第1メモリ31aと、画像シフト部31bと、シェーディング補正部33と、網掛処理部35と、差分画像生成部37と、第2メモリ39と、合成画像生成部41と、駆動回路43と、制御部45とをさらに備えている。
【0032】
画像受信部31は、例えば、印刷するためのデータとして印刷用の原画像データをホストコンピュータから受信する。画像受信部31が受信した原画像データは第1メモリ31aに記憶される。画像シフト部31bは第1メモリ31aに記憶された原画像データを適宜読み出して、原画像データを正方向または負方向へ所定距離だけシフトしたシフト画像データを生成して、シェーディング補正部33に出力する。画像シフト部31bは想定される最大の位置ズレ量=±Maxになるまで位置ズレ量を1画素ずつ正方向または負方向に増分しながらシフト画像データを生成する。なお、画像シフト部31bは、原画像データをシフト量「0」のシフト画像データとしてシェーディング補正部33に出力することも可能である。
【0033】
シェーディング補正部33は、第1メモリ31aからの原画像データおよび画像シフト部31bが生成したシフト画像データに対してシェーディング補正を行い、補正原画像データおよび補正シフト画像データを生成する。シェーディング補正は、印刷ヘッド13が備えている複数個のノズル21の吐出特性のバラツキを考慮して、全ノズル21に同じ信号を与えた際に同じ濃度になるように原画像データおよびシフト画像データを補正することである。つまり、シェーディング補正は、複数個のノズル21の吐出特性に応じて濃度ムラを均一化するための処理である。
【0034】
網掛処理部35は、シェーディング補正部33からの補正原画像データおよび補正シフト画像データに対して網掛処理を行う。網掛処理は、画像の濃淡を表現するために、各ノズル21からのインク滴の大きさやインク滴の配置を決める処理である。
【0035】
差分画像生成部37は、網掛処理部35からの網掛処理が施された網掛原画像データおよび網掛シフト画像データに対して次のような処理を行って、網掛共通画像データ、網掛正差分画像データ、および網掛負差分画像データを生成する。
【0036】
ここで、図3及び図4を参照する。なお、図3(a)~(f)及び図4(a)~(f)は、網掛正差分画像データ及び網掛負差分画像データの生成の説明に供する模式図であり、図3は、1画素シフトした場合を表し、図4は、2画素シフトした場合を表す。なお、図3および図4では理解を容易にするため各画像のシフト量を誇張して図示している。
【0037】
図3(a)は、印刷用の原画像データに対してシェーディング補正部33および網掛処理部35による処理が行われた後の網掛原画像データd1を示す。一方、図3(b)は、印刷用の原画像データを画像シフト部31bにより所定距離(上述した位置ズレ量に対応)、例えば、1画素だけ正方向へシフトさせた後、シェーディング補正部33および網掛処理部35による処理が行われた後の網掛シフト画像データd2(+1)を示す。図3(c)は、印刷用の原画像データを画像シフト部31bにより所定距離(上述した位置ズレ量に対応)、例えば、1画素だけ負方向へシフトさせた後、シェーディング補正部33および網掛処理部35による処理が行われた後の網掛シフト画像データd3(-1)を示す。
【0038】
差分画像生成部37は、このようにして生成された一対の網掛シフト画像データd2(+1)と網掛シフト画像データd3(-1)の各々の共通部分である網掛共通画像データd4(±1)を生成する(図3(d))。さらに、網掛共通画像データd4(±1)と、一対のシフト画像データである網掛シフト画像データd2(+1)、d3(-1)の各々との差分である網掛正差分画像データd5(+1)と網掛負差分画像データd6(-1)とを生成する。さらに、所定距離を変えて同じ処理を所定回数繰り返し行う。ここでは、距離を2画素まで変えたとして説明する。なお、以下では冗長になるのを避けるため、網掛原画像データd1を原画像データd1と、網掛シフト画像データd2をシフト画像データd2と、網掛シフト画像データd3をシフト画像データd3と、網掛共通画像データd4を共通画像データd4などと、適宜省略して説明する。
【0039】
つまり、印刷用の原画像データを、画像シフト部31bにより2画素だけ正負方向へシフトさせた後、シェーディング処理および網掛処理を施した、シフト画像データd2(+2)(図4(b))及びシフト画像データd3(-2)を生成する(図4(c))。さらに、これら一対のシフト画像データd2(+2)とシフト画像データd3(-2)の各々の共通部分である共通画像データd4(±2)を生成する(図4(d))。さらに、共通画像データd4(±2)と、一対のシフト画像データd2(+2)、d3(-2)の各々との差分である正差分画像データd5(+2)と負差分画像データd6(-2)とを生成する。
【0040】
第2メモリ39は、上述したようにして生成された位置ズレ量ごとの共通画像データd4(±1)、d4(±2)、……、d4(±Max)と、正差分画像データd5(+1)、d5(+2)、……、d5(+Max)及び負差分画像データd6(-1)、d6(-2)、……、d6(-Max)とを記憶する。その記憶の態様は、例えば、図5に示すようになる。なお、図5は、第2メモリ39の記憶態様を示す模式図である。
【0041】
すなわち、第2メモリ39は、共通画像データd4(±1)と、正差分画像データd5(+1)および負差分画像データd6(-1)とを位置ズレ量±1画素と対応づけて記憶するとともに、共通画像データd4(±2)と、正差分画像データd5(+2)及び負差分画像データd6(-2)とを位置ズレ量±2画素と対応づけて記憶する。第2メモリ39は、このように位置ズレ量を変更しつつ、共通画像データd4(±Max)、正差分画像データd5(+Max)および負差分画像データd6(-Max)まで記憶する。つまり、位置ズレ量ごとに対応する画像データを記憶する。但し、位置ズレ量が0の場合は、例えば、原画像データd1を差分0画像データとしてそのまま記憶する。つまり、位置ズレ量が0に対応する画像データだけは、原画像データd1そのままのものとなる。
【0042】
合成画像生成部41は、制御部45からの指示に基づいて第2メモリ39を参照し、位置ズレ量に応じた画像データを読み出す。さらに、合成画像生成部41は、読み出した画像データに基づいて合成画像データを生成する。
【0043】
具体的には、制御部45は、位置ズレ量算出部29で算出された位置ズレ量を合成画像生成部41に与える。合成画像生成部41は、第2メモリ39にアクセスして、正差分画像データd5及び負差分画像データd6のうち、その位置ズレ量に対応するいずれか一方と、その位置ズレ量に対応する共通画像データd4とを読み出して合成し、合成画像データを生成する。但し、合成画像生成部41は、制御部45から与えられた位置ズレ量が0である場合には、第2メモリ39にアクセスして、原画像データd1をそのまま合成画像データとして生成する。
【0044】
制御部45は、合成画像生成部41で生成された合成画像データに応じて駆動回路43を操作し、駆動回路43が印刷ヘッド13の複数個のノズル21を駆動し、合成画像データに基づいて連続紙WPに対して印刷を行わせる。つまり、制御部45は、駆動回路43を介して印刷ヘッド13を操作し、連続紙WPに印刷を行わせる。
【0045】
次に、図6を参照して、上述したインクジェット印刷システムによる処理について説明する。なお、図6は、印刷処理を示すフローチャートである。
【0046】
ステップS1
インクジェット印刷装置3の画像受信部31は、例えば、ホストコンピュータから印刷用の原画像データを受信して第1メモリ31aに記憶する。この印刷用の原画像データは、例えば、連続紙WPに設定された印刷領域の全体、あるいは、その中のうちの搬送方向Xにおける一定幅の画像に相当するデータである。
【0047】
ステップS2
画像シフト部31bは第1メモリ31aが記憶した原画像データを繰り返し読み出して、原画像データを正方向または負方向へ所定距離だけシフトしたシフト画像データを複数生成する。
【0048】
ステップS3
シェーディング補正部33は、第1メモリ31aが記憶する原画像データおよび画像シフト部31bが生成したシフト画像データを受け取って、それらの画像データに対して、濃度ムラを抑制するシェーディング補正を行う。シェーディング補正が行われた補正原画像データおよび補正シフト画像データは、補正画像データとして網掛処理部35に与えられる。
【0049】
ステップS4
網掛処理部35は、濃淡を表現するための網掛処理を補正原画像データおよびシフト画像データに対して行う。
【0050】
ステップS5
差分画像生成部37は、網掛処理が施された網掛画像データに基づいて、ある一定範囲の位置ズレ量に応じて差分画像データを生成する。ある一定範囲は、装置の動作実績に基づいて、どの程度の位置ズレ量が生じるかによって決めればよい。これにより、上述したような共通画像データd4と、正差分画像データd5及び負差分画像データd6とを生成する。但し、位置ズレ量が0に対応する画像データだけは、共通画像データd4などを含まない単一の画像データとなる。
【0051】
ステップS6
原画像データd1、上記のステップS5において生成された共通画像データd4と、正差分画像データd5及び負差分画像データd6とを、位置ズレ量で対応づけて第2メモリ39に記憶する。
【0052】
以上のステップS6までは実際に印刷を開始するまでの準備工程である。
【0053】
ステップS7
次に、作業者は図示しない入力手段から印刷用の原画像データの連続紙WPへの印刷開始を制御部45に指示する。制御部45はこの指示を受けて駆動ローラ7、9等を制御して連続紙WPの搬送を開始する。
【0054】
ステップS8
制御部45は、原画像データを印刷すべき連続紙WP上における印刷領域を特定する。
【0055】
ステップS9
位置ズレ量算出部29は上記特定した印刷領域における連続紙WPの位置ズレ量を検出部23の出力を参照して算出し、合成画像生成部41に与える。
【0056】
ステップS10
合成画像生成部41は、位置ズレ量に応じた画像データを第2メモリ39から読み出して、合成画像データを生成する。例えば、位置ズレ量が-1であった場合には、図5に示す第2メモリ39の画像データのうち、位置ズレ量±1に対応する画像データを選択する。さらに、その画像データのうち、共通画像データd4(±1)と、負差分画像データd6(-1)とを読み出して、それらの画像データを合成して合成画像データを生成する。但し、位置ズレ量が0であった場合には、合成画像生成部41は、図5に示す第2メモリ39の画像データのうち、位置ズレ量±0に対応する原画像データd1をそのまま合成画像データとして生成する。
【0057】
ステップS11
制御部45は、合成画像データに基づいて駆動回路43を介して印刷ヘッド13を操作し、連続紙WPに対して印刷を行わせる。これにより、連続紙WPの斜行に伴う位置ズレが生じていても連続紙WPにおける印刷画像の位置ズレを抑制できる。
【0058】
ステップS12
制御部45は、印刷用の原画像データの印刷を継続する場合にはステップS8に移行し、継続する必要が無い場合には印刷を終了する。
【0059】
なお、上述したステップS1が本発明における「受信ステップ」に相当し、ステップS2が本発明における「シフト画像生成ステップ」に相当し、ステップS3が本発明における「シェーディング補正ステップ」に相当し、ステップS4が本発明における「網掛ステップ」に相当し、ステップS5が本発明における「差分画像生成ステップ」に相当し、ステップS6が本発明における「記憶ステップ」に相当し、ステップS10が本発明における「網掛合成画像生成ステップ」に相当し、ステップS11が本発明における「印刷ステップ」に相当する。
【0060】
本実施例によると、画像シフト部31bは、第1メモリ31aが記憶する印刷用の原画像データを幅方向Yにシフトして、複数対のシフト画像データd2(-1)及びd3(+1)、d2(-2)及びd3(+2)、……、d2(-x)及びd3(+x)を生成する。さらに、シェーディング補正部33および網掛処理部35により原画像データおよび複数のシフト画像データの網掛画像データが生成される。
【0061】
また、差分画像生成部37は、一対のシフト画像データd2(-1)及びd3(+1)、d2(-2)及びd3(+2)、……、d2(-x)及びd3(+x)の各々の共通部分である共通画像データd4(±1)、d4(±2)、……、d4(±x)を生成し、共通画像データd4(±1)、d4(±2)、……、d4(±x)と一対のシフト画像データの各々との差分である正差分画像データd5(+1)、d5(+2)、……、d5(+x)と負差分画像データd6(-1)、d6(-2)、……、d6(-x)とを生成する。合成画像生成部41は、検出部23からの位置ズレ量に対応する共通画像データd4(±x)と、正差分画像データd5(+x)または負差分画像データd6(-x)とを第2メモリ39から読み出して合成し、制御部45は、駆動回路43を介して印刷ヘッド13を操作して、合成画像データに基づいて連続紙WPに印刷を行わせる。したがって、連続紙WPの位置ズレが生じても、第2メモリ39から読み出した正差分画像データd5(+x)または負差分画像データd6(-x)と、共通画像データd4(±x)とを合成するだけであるので、位置ズレを抑制する印刷を行っても処理負荷を軽減できる。
【0062】
また、仮に、ある基準線RLから幅方向に同じ距離だけ正負方向にずれた複数対のシフト画像データを予め第2メモリ39に記憶しておき、連続紙WPのずれ方向および位置ズレ量に応じてそれらを選択的に読み出して使用しようとすると、同一の位置ずれ量に対して正方向のシフト画像データおよび負方向のシフト画像データの2つの画像データを第2メモリ39に予め記憶しておく必要がある。これに対して、本実施形態では、正方向のシフト画像データと負方向のシフト画像データの各々の共通部分を算出して第2メモリ39に予め記憶するため、共通部分の分だけ第2メモリ39の記憶容量を節約することができる。
【0063】
また、位置ズレを生じていない位置ズレ量が0である場合には、合成画像生成部41は、差分0画像データをそのまま網掛合成画像データとして生成する。したがって、合成処理を省略できるので、合成画像生成部41の負荷を軽減できる。
【0064】
また、印刷ヘッド13の上流側で検出された検出部23による連続紙WPの端面の位置と印刷ヘッド13との位置関係から、印刷ヘッド13の位置における連続紙WPの位置ズレ量を求めることができる。したがって、その位置ズレ量に応じて印刷ヘッド13の位置における位置ズレを抑制できる。
【0065】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0066】
(1)上述した実施例では、ノンバリアブル印刷の場合を例にとって説明したが、ページごとに異なる印刷画像データによる印刷を行うバリアブル印刷であっても、同じページ中において同じ印刷用画像データによる印刷を行う場合があり、その場合にはバリアブル印刷であっても本発明を適用できる。
【0067】
(2)上述した実施例では、第2メモリ39における記憶態様を図5に示す態様としているが、本発明はこの形態に限定されない。以下に説明する。
【0068】
つまり、図5の記憶形態では、異なる位置ズレ量(+1、+2、-1、-2等)毎に共通画像データd4(±1、±2)、正差分画像データd5(+1、+2等)、および負差分画像データd6(-1、-2等)を記憶していた。この場合、位置ずれ量が大きくなるに従って、正差分画像データd5および負差分画像データd6のサイズが大きくなり、第2メモリ39のデータ記憶量が増える問題がある。
【0069】
以下では、正差分画像データd5および負差分画像データd6のサイズを抑制する手法を説明する。
【0070】
具体的には、まず全ての位置ズレ量(+1、+2、-1、-2等)のシフト画像に共通する共通画像データd14(±0)、正差分0画像データd15(±0)、および負差分0画像データd16(±0)を作成する。次に、これらの共通画像データd14(±0)、正差分0画像データd15(±0)と、正シフト画像データd12(+1、+2等)との差分を正差分画像データd15(+1、+2等)として求める。このとき、複数の正差分画像データd15間で画像データの重複が生じないようにする。同様に、共通画像データd14(±0)、負差分0画像データd16(±0)と、負シフト画像データd13(-1、-2等)との差分を負差分画像データd16(-1、-2等)として求める。このとき、複数の負差分画像データd16間で画像データの重複が生じないようにする。
【0071】
図7は変形例において第2メモリ39に記憶すべき画像データの生成過程を示すフローチャートである。図8は全ての位置ズレ量の網掛シフト画像に共通する網掛共通画像データd14(±0)の生成の説明に供する模式図である。図9は全ての位置ズレ量のシフト画像に共通する網掛正差分0画像データd15(±0)および網掛負差分0画像データd16(±0)の生成の説明に供する模式図である。図10は正方向に1画素シフトした網掛正シフト画像データd12(+1)から網掛共通画像データd14(±0)および網掛正差分0画像データd15(±0)を差分することにより網掛正差分画像データd15(+1)を生成する過程を説明する模式図である。図11は負方向に1画素シフトした網掛負シフト画像データd13(-1)から網掛共通画像データd14(±0)および網掛正差分0画像データd16(±0)を差分することにより網掛負差分画像データd16(-1)を生成する過程を説明する模式図である。図12は正方向に2画素シフトした網掛正シフト画像データd12(+2)から網掛共通画像データd14(±0)、網掛正差分0画像データd15(±0)および網掛正差分画像データd15(+1)を差分することにより網掛正差分画像データd15(+2)を生成する過程を説明する模式図である。図13は負方向に2画素シフトした網掛負シフト画像データd13(-2)から網掛共通画像データd14(±0)、網掛負差分0画像データd16(±0)、網掛負差分画像データd16(-1)を差分することにより網掛負差分画像データd16(-2)を生成する過程を説明する模式図である。
【0072】
まず、画像受信部31(図1)は印刷用の原画像データをホストコンピュータから受信して第1メモリ31aに記憶させる(図7のS101)。画像シフト部31bは第1メモリ31aに記憶された原画像データを適宜読み出して原画像データを正方向または負方向へ所定距離だけシフトしたシフト画像データを生成しシェーディング補正部33に出力する(図7のS102)。画像データシフト部31bは想定される最大の位置ズレ量=±Maxになるまで位置ずれ量を1画素ずつ正方向または負方向に増分しながらシフト画像データを生成する。なお、画像シフト部31bは、原画像データをシフト量「0」のシフト画像データとしてシェーディング補正部33に出力することも可能である。
【0073】
次に、シェーディング補正部33は、第1メモリ31aからの原画像データおよび画像シフト部31bが生成したシフト画像データに対してシェーディング補正を行い、補正原画像データおよび補正シフト画像データを生成する(図7のS103)。
【0074】
網掛処理部35は、シェーディング補正部33からの補正原画像データおよび補正シフト画像データに対して網掛処理を行う(図7のS104)。これにより網掛原画像データd11および網掛シフト画像データd12、d13が生成される。なお、以下では、冗長になるのを避けるため、網掛原画像データd11を原画像データd11と、網掛シフト画像データd12、d13をシフト画像データd12、d13などと適宜省略して説明する。
【0075】
差分画像生成部37は、原画像データd11と、正方向における異なる位置ズレ量(+1、+2、……、+Max)の正シフト画像d12(+1、+2、……、+Max)と、負方向における異なる位置ずれ量(-1、-2、……、-Max)の負シフト画像d13(-1、-2、……、-Max)との、共通部分を検出し網掛共通画像データd14(±0)として作成する。図8はこの処理を概念的に示している。ここでは、最大位置ズレ量が正負方向それぞれに2画素であるものとする。図8(a)に示す原画像データd11から正シフト画像データd12(+1)、d12(+2)がそれぞれ生成される(図8(b)、(c))。同様に、原画像データd11から負シフト画像データd13(-1)、d13(-2)がそれぞれ生成される(図8(d)、(e))。これらの原画像データd11、正シフト画像データd12(+1)、d12(+2)、負シフト画像データd13(-1)、d13(-2)の共通部分が検出され、共通画像データd14(±0)として生成される(図8(f)、図7のS105)。
【0076】
次に、差分画像生成部37は、正差分0画像データd15(±0)および負差分0画像データd16(±0)を生成する(図7のS106)。すなわち、図9(a)に示す原画像データd11からステップS105で生成した共通画像データd14(±0)を差分することにより、共通画像データd14の正方向側に正差分0画像データd15(±0)が生成され、共通画像データd14の負方向側に負差分0画像データd16(±0)が生成される(図9(c))。
【0077】
次に、差分画像生成部37は、異なる正位置ズレ量(+1画素、+2画素等)毎に正差分画像データd15(+1、+2、等)を作成し、異なる負位置ずれ量(-1画素、-2画素等)毎に負差分画像データd16(-1、-2、等)を作成する(図7のS107)。図10は位置ズレ量「+1画素」の正シフト画像データd12(+1)から正差分画像データd15(+1)を生成する過程を説明する模式図である。図11は位置ズレ量「-1画素」の負シフト画像データd13(-1)から負差分画像データd16(-1)を生成する過程を説明する模式図である。図12は位置ズレ量「+2画素」の正シフト画像データd12(+2)から正差分画像データd15(+2)を生成する過程を説明する模式図である。図13は位置ズレ量「-2画素」の負シフト画像データd13(-2)から負差分画像データd16(-2)を生成する過程を説明する模式図である。
【0078】
図10(a)に示す正シフト画像データd12(+1)から共通画像データd14(±0)および正差分0画像データd15(±0)を差分することにより、図10(d)に示す正差分画像データd15(+1)が生成される。図10(d)に示すように、正差分画像データd15(+1)は共通画像データd14(±0)の正方向側と負方向側とに1つずつ生成される。識別の必要があるときは、正方向側の正差分画像データd15(+1)の末尾に「R」(right)を、負方向側の正差分画像データd15(+1)の末尾に「L」(left)を付して説明する。これら一対の正差分画像データd15(+1)は位置ズレ量「+1画素」と対応付けられて第2メモリ39に記憶される(図7のS108)。
【0079】
また、図11(a)に示す負シフト画像データd13(-1)から共通画像データd14(±0)および負差分0画像データd16(±0)を差分することにより、図11(d)に示す負差分画像データd16(-1)が生成される。図11(d)に示すように、負差分画像データd16(-1)は共通画像データd14(±0)の正方向側と負方向側とに1つずつ生成される。識別の必要があるときは、正方向側の正差分画像データd16(-1)の末尾に「R」(right)を、負方向側の負差分画像データd16(-1)の末尾に「L」(left)を付して説明する。これら一対の負差分画像データd16(-1)は位置ズレ量「-1画素」と対応付けられて第2メモリ39に記憶される(図7のS108)。
【0080】
ここで、図12(d)に示すように、正差分画像データd15(+2)を生成する際に、正シフト画像データd12(+2)から正差分画像データd15(+1)を差分している。正差分画像データd15(+1)の画像シフト量は「+1画素」であり、正差分画像データd15(+2)の画像シフト量「+2画素」よりも相対的に小さい。このように、正差分画像データd15(+2)を生成する際に、画像シフト量が相対的に小さい正差分画像データd15(+1)を差分するため、画像シフト量が相対的に大きい正差分画像データd15(+2)と画像シフト量が相対的に小さい正差分画像データd15(+1)との間で画像データが重複することがない。これにより、正差分画像データd15のデータ量が抑制されている。
【0081】
また、図12(e)に示すように、正差分画像データd15(+2)は正差分画像データd15(+1)の正方向側に1つ生成される(正差分画像データd15(+2)R)。正シフト画像データd12(+2)から共通画像データd14(±0)を差分しても、負方向側には実データが残らないため、負方向側の正差分画像データd15(+2)Lは空データとなる。正差分画像データd15(+2)は位置ズレ量「+2画素」と対応付けられて第2メモリ39に記憶される(図7のS108)。
【0082】
以上を一般化したのが、下記の(式1)である。
【0083】
(式1)
正差分画像データd15(+n)=正シフト画像データd12(+n)-共通画像データd14(±0)-正差分0画像データd15(±0)-正差分画像データd15(+1)-正差分画像データd15(+2)……-正差分画像データd15(+(n-1))
【0084】
また、図13(a)に示す負シフト画像データd13(-2)から共通画像データd14(±0)、負差分0画像データd16(±0)、および負差分画像データd16(-1)を差分することにより、図13(e)に示す負差分画像データd16(-2)が生成される。
【0085】
ここで、図13(d)に示すように、負差分画像データd16(-2)を生成する際に、負シフト画像データd13(-2)から負差分画像データd16(-1)を差分している。負差分画像データd16(-1)の画像シフト量は「-1画素」であり、負差分画像データd16(-2)の画像シフト量「-2画素」よりも相対的に小さい。このように、負差分画像データd16(-2)を生成する際に、画像シフト量が相対的に小さい負差分画像データd16(-1)を差分しているため、画像シフト量が相対的に大きい負差分画像データd16(-2)と画像シフト量が相対的に小さい負差分画像データd16(-1)との間で画像データが重複することがない。これにより、負差分画像データd16のデータ量が抑制されている。
【0086】
また、図13(e)に示すように、負差分画像データd16(-2)は負差分画像データd16(-1)の負方向側に1つ生成される(負差分画像データd16(-2)L)。負シフト画像データd13(-2)から、共通画像データd14(±0)・負差分画像データd16(±0)・負差分画像データd16(-1)を差分しても、正方向側には実データが残らないため、正方向側の負差分画像データd16(-2)Rは空データとなる。負差分画像データd16(-2)は位置ズレ量「-2画素」と対応付けられて第2メモリ39に記憶される(図7のS108)。
【0087】
以上を一般化したのが、下記の(式2)である。
【0088】
(式2)
負差分画像データd16(-n)=負シフト画像データd13(-n)-共通画像データd14(±0)-負差分0画像データd16(±0)-負差分画像データd16(-1)-負差分画像データd16(-2)……-負差分画像データd16(-(n-1))
【0089】
以上のステップS108までは実際に印刷を開始するまでの準備工程である。
【0090】
次に、作業者は図示しない入力手段から印刷用の原画像データの連続紙WPへの印刷開始を制御部45に指示する。制御部45はこの指示を受けて駆動ローラ7、9等を制御して連続紙WPの搬送を開始する(図7のS109)
【0091】
制御部45は、原画像データを印刷すべき連続紙WP上の印刷領域を特定する(図7のS110)。
【0092】
位置ズレ量算出部29は、上記特定した印刷領域における連続紙WPの位置ズレ量を検出部23の出力を参照して算出し、合成画像生成部41に与える(図7のS111)。
【0093】
合成画像生成部41は、位置ズレ量に応じた画像データを第2メモリ39から読み出して、読み出した画像データを用いて網掛合成画像データを生成する(図7のS112)。
【0094】
上述した変形例においては、以下のようにして合成画像データが生成される。ここで、図14を参照する。図14は位置ズレ量が「+1画素」の場合の画像合成方法である。合成画像生成部41は、図14(a)、(b)、および(c)に示す共通画像データd14(±0)、正差分0画像データd15(±0)、および正差分画像データd15(+1)を第2メモリ39からそれぞれ読み出して合成することにより、正シフト画像データd12(+1)に相当する網掛合成画像データを合成する(図14(d))。
【0095】
次に図15を参照する。図15は位置ズレ量が「+2画素」の場合の画像合成方法である。合成画像生成部41は、図15(a)、(b)、(c)、および(d)に示す共通画像データd14(±0)、正差分0画像データd15(±0)、正差分画像データd15(+1)、および正差分画像データd15(+2)を第2メモリ39からそれぞれ読み出して合成することにより、正シフト画像データd12(+2)に相当する網掛合成画像データを合成する(図15(e))。
【0096】
ここで、合成画像生成部41は、位置ズレ量が最も大きい負方向側の正差分画像データd15Lが空データである場合、共通画像データd14(±0)の負方向側に位置する差分画像データd15Lを無視してデータ合成を行う。図15の例では、位置ズレ量が最も大きい負方向側の正差分画像データd15(+2)Lは空データである。したがって、合成画像生成部41は、共通画像データd14(±0)の負方向側に位置する正差分画像データd15、すなわち、d15(+1)Lおよびd15(+2)Lを無視してデータ合成を行う。これにより、図15(e)に示すように正シフト画像データd12(+2)が合成される。
【0097】
以上を一般化したのが、下記の(式3)である。
【0098】
(式3)
正シフト画像データd12(+n)=共通画像データd14(±0)+正差分0画像データd15(±0)+正差分画像データd15(+1)+正差分画像データd15(+2)……+正差分画像データd15(+n)
【0099】
※但し、負方向側の正差分画像データd15(+n)Lが空データの場合、負方向側の正差分画像データd15(+1)L,d15(+2)L、……、およびd15(+n)Lを無視して画像データを合成する。
【0100】
次に図16を参照する。図16は位置ズレ量が「-2画素」の場合の画像合成方法である。合成画像生成部41は、図16(a)、(b)、(c)、および(d)に示す共通画像データd14(±0)、負差分0画像データd16(±0)、負差分画像データd16(-1)、および負差分画像データd16(-2)を第2メモリ39からそれぞれ読み出して合成することにより、負シフト画像データd13(-2)に相当する網掛合成画像データを合成する(図16(e))。
【0101】
ここで、合成画像生成部41は、位置ズレ量が最も大きい正方向側の負差分画像データd16Rが空データである場合、共通画像データd14(±0)の正方向側に位置する差分画像データd16Rを無視してデータ合成を行う。図16の例では、位置ズレ量が最も大きい正方向側の負差分画像データd16(-2)Rは空データである。したがって、合成画像生成部41は、共通画像データd14(±0)の正方向側に位置する負差分画像データd16、すなわち、d16(-1)Rおよびd16(-2)Rを無視してデータ合成を行う。これにより、図16(e)に示すように負シフト画像データd13(-2)に相当する網掛合成画像データが合成される。
【0102】
以上を一般化したのが、下記の(式4)である。
【0103】
(式4)
負シフト画像データd13(-n)=共通画像データd14(±0)+負差分0画像データd16(±0)+負差分画像データd16(-1)+負差分画像データd16(-2)……+負差分画像データd16(-n)
【0104】
※但し、正方向側の負差分画像データd16(-n)Rが空データの場合、正方向側の正差分画像データd16(-1)R,d16(-2)R、……、およびd16(-n)Rを無視して画像データを合成する。
【0105】
図7のフローチャートに戻り、制御部45は、合成画像データに基づいて駆動回路43を介して印刷ヘッド13を操作し、連続紙WPに対して印刷を行わせる(図7のS113)。これにより、連続紙WPの斜行に伴う位置ズレが生じていても連続紙WPにおける印刷画像の位置ズレを抑制できる。
【0106】
制御部45は、印刷用の原画像データの印刷を継続する場合にはステップS110に移行し、継続する必要がない場合には印刷を終了する(図7のS114)。
【0107】
本変形例は以下の2つの特徴を有するため、差分画像データd15、d16のデータサイズをさらに節約することができる。
【0108】
(A)位置ズレ量毎に共通画像データを記憶する代わりに、全ての位置ズレ量に共通する共通画像データを記憶している(図8参照)。
【0109】
(B)また、正差分画像データd15同士、あるいは負差分画像データd16同士で同一データを重複保持しないようにしている(図12(d)(e)、図13(d)(e)参照)。
【0110】
その結果、各位置ズレ量における網掛正差分画像データd15(+x)及び網掛負差分画像データd16(-x)を小さくできるので、第2メモリ39の容量を節約することができる。
【0111】
(3)上述した実施例では、画像を1画素単位でシフトしたが、画像のシフト単位は1画素単位でなくてもよい。例えば、複数画素または1画素未満を1単位にして画像をシフトしてもよい。
【0112】
(4)上述した実施例では、検出部23を印刷ヘッド13の上流側だけに配置しているが、下流側にも配置してもよい。また、印刷ヘッド13をひとつだけ備える構成としているが、印刷ヘッド13は複数個配置されている構成であっても本発明を適用できる。
【0113】
(5)上述した実施例では、印刷媒体として連続紙WPを例にとって説明したが、本発明における印刷媒体は連続紙WPに限定されない。例えば、連続的な紙ではない枚葉紙(単票紙)であってもよく、また、紙に限らずプラスチックフィルムなどであっても本発明を適用できる。
【0114】
(6)上述した実施例では、印刷用画像データが二値画像であるか階調画像であるか等については記載していないが、本発明はいずれであっても適用できる。
【符号の説明】
【0115】
1 … 給紙部
3 … インクジェット印刷装置
5 … 排紙部
WP … 連続紙
7,11 … 駆動ローラ
9 … 搬送ローラ
X … 搬送方向
Y … 幅方向
13 … 印刷ヘッド
21 … ノズル
23 … 検出部
RL … 基準線
29 … 位置ズレ量算出部
31 … 画像受信部
31a … 第1メモリ
31b … 画像シフト部
33 … シェーディング補正部
35 … 網掛処理部
37 … 差分画像生成部
39 … 第2メモリ
41 … 合成画像生成部
43 … 駆動回路
45 … 制御部
d1 … 網掛原補正画像データ
d2(+x)、d3(-x) … 網掛シフト画像データ
d4(±x) … 網掛共通画像データ
d5(+x) … 網掛正差分画像データ
d6(-x) … 網掛負差分画像データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16