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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/06 20060101AFI20230605BHJP
   B65D 47/08 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
B65D47/06
B65D47/08 100
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019057510
(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公開番号】P2020158133
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518172978
【氏名又は名称】メビウスパッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植田 浩光
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-017777(JP,U)
【文献】実開平02-080561(JP,U)
【文献】特開2015-034012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/06
B65D 47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部貫通孔が形成された頂板部と、
前記頂板部の周縁から垂下する筒状スカート壁と、を含み、
前記頂板部には、前記上部貫通孔を通過した内容物の吐出方向を傾向させるため前記上部貫通孔の一部と連通する下部貫通孔を形成する開口段部が設けられ
前記下部貫通孔は、軸方向とは直交する径方向に関し、前記吐出した内容物が傾向する方向とは逆方向へ前記上部貫通孔に対してシフトして配置され、
前記上部貫通孔および前記下部貫通孔は共に円孔であり、
前記下部貫通孔の円心は、前記径方向に関して、前記上部貫通孔の円心と前記筒状スカート壁の中心との間に配置されている、
ことを特徴とするキャップ。
【請求項2】
前記上部貫通孔および前記下部貫通孔は共に直径が互いに等しい請求項に記載のキャップ。
【請求項3】
前記頂板部の表面に、前記上部貫通孔を囲繞するように注出筒が突出形成され、
前記頂板部は、前記上部貫通孔が形成されるとともに前記注出筒の内側に設けられたロート状底板部を含み、
前記上部貫通孔から斜めに吐出された内容物が前記注出筒の内壁に接触する請求項1又は2に記載のキャップ。
【請求項4】
前記頂板部をカバーする上蓋を更に有し、
前記上蓋には、
前記注出筒の内壁に密接可能なインナーリングと、当該インナーリングの内側で少なくとも前記上部貫通孔を閉塞可能な頂部を具備する閉塞栓と、が形成されている請求項に記載のキャップ。
【請求項5】
前記上蓋はヒンジ部を介して前記筒状スカート壁の上端部に接続され、
前記ヒンジ部は、軸方向に関して前記上部貫通孔と並置される位置に配設されてなる請求項に記載のキャップ。
【請求項6】
上部貫通孔が形成された頂板部と、
前記頂板部の周縁から垂下する筒状スカート壁と、を含み、
前記頂板部には、前記上部貫通孔を通過した内容物の吐出方向を傾向させるため前記上部貫通孔の一部と連通する下部貫通孔を形成する開口段部が設けられ、
前記下部貫通孔は、軸方向とは直交する径方向に関し、前記吐出した内容物が傾向する方向とは逆方向へ前記上部貫通孔に対してシフトして配置され、
前記下部貫通孔の中心は、前記径方向に関して、前記上部貫通孔の中心と前記筒状スカート壁の中心との間に配置されている、ことを特徴とするキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出可能なキャップに関し、例えば容器の口部と係合可能であって少量で意図した箇所に吐出可能なキャップ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今において食用油やドレッシングなどの液状の内容物を収容する可撓性の容器が広く用いられている。一般的にこの可撓性の容器の口部には、上記したような種々の内容物を吐出可能なキャップが用いられている。
【0003】
可撓性の容器から内容物を吐出する際、容器の本体を加圧するスクイズによって容器外部から加圧された内容物がキャップを介して吐出される。また、例えば特許文献1に示されるように、内容物を斜め方向へ少量注出する斜め注出ヒンジキャップが存在する。より具体的に特許文献1で提案されている斜め注出ヒンジキャップは、前方へほぼ45度の角度で注出口部が途中で傾斜する注出筒を備えており、この斜めに傾斜した注出口131の注出孔132を介して内容物を斜め方向へ注出することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-15714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たしかに上記した特許文献1に開示されたキャップにおいては、スクイズなどによって内容物である液体を斜め方向へ少量注出することは可能となっている。
しかしながらスクイズ時に容器の本体に加わる圧力は人によって様々であり、例えば男女の差異もあれば同一人物であってもその時々の体調によってもスクイズ圧は左右される。
【0006】
ここで容器に貯蔵される内容物としては、例えばドレッシングなど少量の吐出が前提となる液体もあり、上記したスクイズ圧が強かったり予想以上に弱くなってしまった場合には、いずれも意図した箇所に注出できない恐れが生じてしまう。なお、意図した箇所に注出できないという課題は容器の口部に装着される用途のキャップに限られず、容器用途以外の用途で用いられるキャップにも当てはまると言える。
【0007】
一方、かようなキャップを製造する際の成形性からすると、上記した特許文献1のごとき斜めに傾斜した注出口は、金型の固定側と可動側を真っ直ぐに引き離すだけの2方向抜き金型で品質良く成形することは困難である。したがって特許文献1に開示された構造のキャップを成形する場合、例えばスライドコアを用いると型構造は複雑となってしまい、スライドコアを用いず無理抜きをすれば品質の担保が困難となってしまう。
従って本発明の目的の1つは、シンプルな構造の射出成形型を用いて低コストで大量生産が可能であり、且つ斜めに液体を吐出可能な構造のキャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一形態におけるキャップは、(1)上部貫通孔が形成された頂板部と、前記頂板部の周縁から垂下する筒状スカート壁と、を含み、前記頂板部には、前記上部貫通孔を通過した内容物の吐出方向を傾向させるため前記上部貫通孔の一部と連通する下部貫通孔を形成する開口段部が設けられ、前記下部貫通孔は、軸方向とは直交する径方向に関し、前記吐出した内容物が傾向する方向とは逆方向へ前記上部貫通孔に対してシフトして配置され、前記上部貫通孔および前記下部貫通孔は共に円孔であり、前記下部貫通孔の円心は、前記径方向に関して、前記上部貫通孔の円心と前記筒状スカート壁の中心との間に配置されている、ことを特徴とする。
【0010】
また、上記()に記載のキャップにおいては、()前記上部貫通孔および前記下部貫通孔は共に直径が互いに等しいことが好ましい。
【0011】
また、上記(1)又は(2)に記載のキャップにおいては、()前記頂板部の表面に、前記上部貫通孔を囲繞するように注出筒が突出形成され、前記頂板部は、前記上部貫通孔が形成されるとともに前記注出筒の内側に設けられたロート状底板部を含み、前記上部貫通孔から斜めに吐出された内容物が前記注出筒の内壁に接触することが好ましい。
【0012】
また、上記()に記載のキャップにおいては、()前記頂板部をカバーする上蓋を更に有し、前記上蓋には、前記注出筒の内壁に密接可能なインナーリングと、当該インナーリングの内側で少なくとも前記上部貫通孔を閉塞可能な頂部を具備する閉塞栓と、が形成されていることが好ましい。
【0013】
また、上記()に記載のキャップにおいては、()前記上蓋はヒンジ部を介して前記筒状スカート壁の上端部に接続され、前記ヒンジ部は、軸方向に関して前記上部貫通孔と並置される位置に配設されてなることが好ましい。
上記課題を解決するため、本発明の一形態におけるキャップは、(6)上部貫通孔が形成された頂板部と、前記頂板部の周縁から垂下する筒状スカート壁と、を含み、前記頂板部には、前記上部貫通孔を通過した内容物の吐出方向を傾向させるため前記上部貫通孔の一部と連通する下部貫通孔を形成する開口段部が設けられ、前記下部貫通孔は、軸方向とは直交する径方向に関し、前記吐出した内容物が傾向する方向とは逆方向へ前記上部貫通孔に対してシフトして配置され、前記下部貫通孔の中心は、前記径方向に関して、前記上部貫通孔の中心と前記筒状スカート壁の中心との間に配置されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、互いの一部が連通する上部貫通孔と下部貫通孔とを用いることで、これらの貫通孔を通過する液体(容器の内容物など)の吐出方向を傾向させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態におけるキャップ100の外観をそれぞれ示す斜視図(ただし底面側から見た斜視図では上蓋40が省略)である。
図2】上蓋40が開いた開栓状態におけるキャップ100を上方側から見た上面図である。
図3】開栓状態におけるキャップ100を側方側から見た側面図である。
図4】開栓状態におけるキャップ100を底面側から見た底面図である。
図5】上蓋40が閉じた閉栓状態におけるキャップ100を側方側から見た側面図である。
図6】キャップ100が容器Bの口部Boに装着された状態を模式的に示した断面図である。
図7】容器Bを傾倒させてキャップ100を介して内容物Cを吐出した状態における模式図である。
図8】変形例1におけるキャップ101を示した上面図と斜視図である。
図9】変形例2におけるキャップ102を示した上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を好適に実施するための実施形態について説明する。
なお本実施形態においては、説明の便宜上、図を用いた説明においてX、Y及びZ方向を適宜設定したが、説明の便宜上であって本発明を何ら過度に限定するものではない。
【0017】
また、以下の実施形態では、一例として、本発明のキャップ100が容器Bの口部Boに装着される例を用いて説明する。しかしながら本発明のキャップ100は、容器用途に限られず、例えば薬剤散布に用いられる放射状に注出可能な用途のキャップなど、吐出される内容物としての液体を任意の方向に傾向可能なキャップとして種々の用途に適用できる。
【0018】
ここで本実施形態に用いられる容器B(図6など参照)としては、例えばドレッシングや醤油などの調味料あるいはお茶や水等の飲料又は薬液などが保存されるボトルの他、酒類やオリーブ油などを貯蔵するガラス製の瓶なども適用できる。なお容器Bがボトルの場合にはスクイズによって内容物を吐出可能な可撓性プラスチックボトルが好適であるが、容器Bとして可撓性は必ずしも必要ではない。
【0019】
また、本実施形態のキャップ100は、上記した容器Bに装着される形態に限られず、例えば紙やプラスチックなどの袋状容器に融着されるスパウトとして構成されていてもよい。このように本発明は、種々の容器に適用が可能な「封止部材」として捉えることができ、この封止部材の一例として、口部を予め備えた容器に装着可能なキャップ(ヒンジキャップ、プルキャップ)、注出栓や、上記した袋状容器に融着されるスパウトなどが例示できる。
【0020】
<キャップ100>
以下、一例として上記した容器Bに装着されるキャップ100について、図1~7を適宜参照しながら詳述する。なお図1(b)においては、説明の便宜上で上蓋40が省略された図示となっている点に留意されたい。
【0021】
これらの図からも明らかなとおり、本実施形態におけるキャップ100は、キャップ本体1、上蓋40およびヒンジ部50を含んで構成されている。なお、このキャップ100の材質に特に制限はないが、例えば射出成形が可能な公知の合成樹脂(例えばポリエチレンやポリプロピレンなど)で構成されることが好ましい。
【0022】
[キャップ本体1]
図1などに示されるとおり、本実施形態におけるキャップ本体1は、上部貫通孔11が形成された頂板部10と、この頂板部10の周縁から垂下する筒状スカート壁20とを含んで構成されている。
また、図1図3から明らかなとおり頂板部10の表面10aに、上記した上部貫通孔11を囲繞するように注出筒30が突出形成されるとともに、周縁には後述する上蓋40と係合可能な上蓋係合突起16が形成されている。
【0023】
注出筒30は、図3に示すように、ロート状底板部31、注出口32及びこれらロート状底板部31と注出口32を繋ぐ注出誘導部33を有し、頂板部10の表面10a側から突出形成されている。なお図2及び図3から理解できるとおり、本実施形態の注出筒30は、軸方向(Z方向)における頂板部10の中心(筒状スカート壁20の中心20sと一致)に対してヒンジ部50とは反対側(容器を傾倒して内容物を注出する際に下方となる側)にシフトするように配置されている。これにより内容物の注出時に注出口32が目的箇所へより近接することが可能となり、意図しない液跳ねなどが抑制できる。
【0024】
ロート状底板部31は、本実施形態では注出筒30の内側に位置しており、上記した上部貫通孔11が形成されている。また図3に示すとおり、本実施形態のロート状底板部31は、この上部貫通孔11が底となるように中央へ向かうにつれて窪んだ凹状を呈している。これにより、内容物Cの吐出後で注出筒30内や上部貫通孔11内に内容物が残存した場合でも、この残存物を効率的に上部貫通孔11まで導くことができる。なお図2図3からも明らかなとおり、上部貫通孔11はロート状底板部31の中心に形成される必要は必ずしもなく、例えば注出筒30と同様にヒンジ部50とは反対側にシフトして配置されていることが好ましい。
【0025】
また、本実施形態におけるロート状底板部31は、頂板部10とは面一に形成されておらず、底面側(容器Bの内部側)は上面側にあわせて傾斜面となるようにバッファ空間14が形成されている。これにより、ロート状底板部31の板厚が他部に比して厚くなってしまうことが抑制されるとともに、キャップ100の材料費も低減することが可能となっている。
なお本実施形態においては、上記したロート状底板部31は、頂板部10と一体となって形成されていてもよい。かような意味からも、このロート状底板部31は、頂板部10に含まれる構成要素であると定義する。
【0026】
注出口32は、注出筒30の頂部に位置しており、液切れなどを目的として頂点がカール状に巻かれた外向きカール形状となっている。図7を用いて後述するとおり、本実施形態では、上部貫通孔11を通過した内容物Cを積極的に注出誘導部33へ接触させて注出が制御されることから、この注出筒30を従来に比して大径とすることが可能となっている。これにより、注出口32のカール形状も従来に比して大きな弧状とすることができ、成形性が高まるばかりでなく液切れ性も高めることが実現されている。
【0027】
なお、本実施形態では、上蓋40とキャップ本体1とはヒンジ部50を介して連結されているが、後に例示するようにヒンジ部50が省略される場合には注出口32は周方向で一様なカール形状となるように形成することが好ましい。
【0028】
また図1(b)及び図3に示すとおり、頂板部10の底面側10bのうち上記したバッファ空間14の外側には、容器Bの口部Boの内周側と嵌合可能な嵌合壁部15が形成されている。この嵌合壁部15は、頂板部10の底面側10bからリング状に垂下するように立設しており、容器Bへの装着時に口部Boと密着することで容器の密封性が確保されることになる。
【0029】
筒状スカート壁20は、上方視が円状である頂板部10の周縁から垂下するように設けられた筒状の部位である。本実施形態においては、この筒状スカート壁20の中心20sがキャップ100の中心とほぼ一致するように構成されている。
【0030】
また図3及び図6から理解されるとおり、容器Bにおける口部Boの外側には係止突条Bpが形成されており、この係止突条Bpが筒状スカート壁20の係止リブ21に係止することで容器Bにキャップ100が装着される。なお本実施形態では、容器Bに対するキャップ100の装着態様を係止突条Bpと係止リブ21との係止構造としたが、この装着態様に限られず、例えばネジ構造とするなど公知の種々の装着態様を適用してもよい。
【0031】
[上蓋40]
図1および図3などに示すとおり、本実施形態のキャップ100は、上記した頂板部10をカバー可能な上蓋40を更に有して構成されている。またこれらの図からも明らかなとおり、上蓋40は、ヒンジ部50を介して筒状スカート壁20の上端部に接続されている。このようにキャップ100ではヒンジ部50によってキャップ本体1と上蓋40とが連結された構造となっているため、注出筒30のうちヒンジ部50側における注出誘導部33は形成されておらず切り欠いた構造となっている。
【0032】
かような上蓋40は、注出筒30の内壁(注出誘導部33)に密接可能なインナーリング41と、当該インナーリング41の内側で少なくとも上部貫通孔11を閉塞可能な頂部42aを具備する閉塞栓42と、を含むように形成されている。
したがって図5及び図6(a)に示すとおり、上蓋40が上蓋係合突起16と係合してキャップ本体1をカバーする閉栓時には、インナーリング41が注出筒30の内壁に密着するとともに、これと並行して閉塞栓42の頂部42aが上部貫通孔11を閉塞する。
【0033】
このように上部貫通孔11を閉塞栓42で閉塞するとともにインナーリング41で密封することにより、キャップ100としての密封性が着実に確保されることとなる。また、閉塞栓42が上部貫通孔11を閉塞するため、例えば注出後で上部貫通孔11内に内容物Cが残存する場合でも、この閉塞栓42の頂部42aによって容器内部まで上記の残存物を押し戻すことが可能となる。
【0034】
なお本実施形態の閉塞栓42は、上記した閉栓時において、頂部42aが少なくとも上部貫通孔11を閉塞する形態としたがこの態様には限られない。すなわち、要部のみ一部拡大した図6(b)で例示するように、閉塞栓42の頂部42aに対して更に閉塞突起42bを形成し、上記した閉栓時においてこの閉塞突起42bが下部貫通孔12(後述)も閉塞するように構成してもよい。これにより、さらに優れた密封性を確保するとともに、この閉塞突起42bによって下部貫通孔12に残存する内容物Cまでも容器内部まで押し戻すことが可能となる。
【0035】
また、これらの図に示すように、本実施形態では、上記したヒンジ部50は、軸方向(Z方向)に関して上部貫通孔11と並置される位置に配設されてなることが好ましい。より具体的には、本実施形態では頂板部10に対してロート状底板部31を底上げすることで、ヒンジ部50の配置を上部貫通孔11の底部と軸方向において同じ高さとしている。こうすることで、上蓋40がヒンジ部50を介して旋回を完了したとき(換言すれば上蓋係合突起16と係合するとき)に、ちょうど閉塞栓42の頂部42aの軌跡が上部貫通孔11の底部と一致して閉塞することとなって密封性が向上する。
【0036】
<液体(内容物)吐出における吐出方向の傾向>
次に図1~4および7を適宜参照しつつ、容器Bに装着可能な本実施形態のキャップ100における液体吐出における吐出方向の調整態様について説明する。
まず図7から明らかなとおり、本実施形態のキャップ100においては、上部貫通孔11を通過した液体(本例では容器Bに貯蔵された内容物C)が容器の吐出方向(図中のDD方向)へ直進せずに、前記上部貫通孔11から斜めに吐出(傾向)されることに特徴がある。
【0037】
より具体的な構造としては、図1~4に示すとおり、本実施形態のキャップ100における頂板部10には、上部貫通孔11を通過した内容物Cの吐出方向を傾向させる下部貫通孔12を形成する開口段部13が設けられてなる。
そして図7(b)も合わせて参照するとおり、この開口段部13によって形成される下部貫通孔12は、上部貫通孔11の一部と連通する連通孔部OPを形成する機能を有して構成されている。
【0038】
また、図1~4および7から理解されるとおり、本実施形態の上部貫通孔11は、上記連通孔部OP以外の部位は開口段部13によって塞がれて非貫通領域CPとなっている。一方で本実施形態の下部貫通孔12についても、連通孔部OP以外の部位はロート状底板部31によって塞がれて非貫通領域CPとなっている。
【0039】
ここで、吐出される液体の傾向度合いは、上部貫通孔11の断面積に対する連通孔部OPの割合にも依存する。この点については、傾向させたい角度に応じて適宜調整可能であるが、例えば上部貫通孔11の断面積に対して連通孔部OPの割合が70%以下であると吐出液体が傾向しやすくなる点において好ましいと言える。
【0040】
このように本実施形態では、軸方向において上部貫通孔11と下部貫通孔12とが隣り合うように併設されることで、上部貫通孔11から吐出される液体を任意の方向に傾向させることが可能となっている。より具体的に本実施形態では、容器Bを傾向した際に鉛直方向下方に向けて液体が傾向吐出されるように、下部貫通孔12は、軸方向とは直交する径方向RDに関し、吐出した内容物Cが傾向する方向とは逆方向へ上部貫通孔11に対してシフトして配置されている。
【0041】
すなわち図7(a)に示すとおり、吐出方向DDに対して角度αだけ傾向して容器Bから内容物Cが上部貫通孔11と下部貫通孔12を介して吐出されることになる。さらに本実施形態では、この上部貫通孔11を囲繞する注出筒30をキャップ100が具備しているため、この上部貫通孔11から斜めに吐出された内容物Cが注出筒30の内壁(注出誘導部33)に接触することになる。
【0042】
これにより、斜めに吐出した内容物Cは、目標へ直接到達せずに注出筒30の内壁に当たることで、注出筒30に沿って当該内容物Cを吐出することができる。このため、例えば何らかの要因で使用者が容器Bを意図せず強くスクイズしてしまったとしても、上部貫通孔11から吐出される内容物Cは、結局のところ注出筒30の内壁に接触して液量が調整されるため狙った目標に注ぎやすくなる。
【0043】
なお図2、4および図7(b)などに示すとおり、本実施形態においては、上部貫通孔11および下部貫通孔12は共に直径が互いに等しい円孔となっており、下部貫通孔12の円心(貫通孔の中心)は、径方向(図2図4におけるX方向、図7ではRD方向)に関して、上部貫通孔11の円心(貫通孔の中心)と筒状スカート壁20の中心20sとの間に配置されている。
【0044】
しかしながら本実施形態は上記に限定されず、例えば以下の表1に示すような上部貫通孔11および下部貫通孔12の組み合わせを採用してもよい。このとき、それぞれの組み合わせにおいて上部貫通孔11および下部貫通孔12は、互いに大きさが等しくなくともよい。さらには、それぞれの組み合わせにおいて上部貫通孔11の深さと下部貫通孔12の深さは、互いに等しくともよく、あるいは互いに異なる深さで形成されていてもよい。
【0045】
【表1】
【0046】
以上説明した本実施形態のキャップ100においては、以下に述べる効果を奏することができる。
すなわち、まず従来のタイプでは狙った箇所に注出できず例えば皿(注出先となる目標)の外に内容物Cが飛び出してしまう場合もあった。これに対して本実施形態によれば、上部貫通孔11を通過した液体(内容物C)が直進せずに斜めに傾向できるため任意の方向へ吐出方向を傾向できる。
【0047】
これに加え、本実施形態ではキャップ100が注出筒30を備えるため、上部貫通孔11を通過して斜めに吐出された内容物Cが注出筒30の内壁に接触した後に注出口32を介して目標へ注出される。これにより、この内容物Cが少量吐出することが好ましい場合であっても、スクイズの強弱の影響をあまり受けずに意図した場所に安定して注出することができる。
【0048】
また、本実施形態の注出筒30は、従来に比して大径の注出口32を備えることができるため、注出口32の形状として液戻し用のカールを大きく形成することができる。これにより、注出後の液切れ性も格段に向上させることが可能となり、さらには射出成形によってキャップ100を製造する際には型抜け性を向上させることが可能となる。
【0049】
ここで、本実施形態のごとく上蓋に設けた閉塞栓で注出筒の密封性を確保しようとする場合、例えば特許文献1のように斜めに傾斜した注出口131では、ヒンジの可動域に制限があるため上蓋の開閉軌道に基づいて閉塞栓が注出孔132を密閉して閉塞することは困難となってしまう。これに加え、斜めに傾斜した注出口を射出成形によって形成する場合には、斜め孔形成用の内側型の離型が困難であって複雑な金型構造となって製造コストが増加してしまう。
一方で本実施形態によれば、上記した上部貫通孔11と下部貫通孔12の並設構成によって液体を斜め方向に注出できるため、上蓋40の開閉軌跡にあわせて閉塞栓42を少なくとも上部貫通孔11内に挿入でき、従来に比して優れた密封性を維持しつつ射出成形性にも優れることから低コストの大量生産が可能となっている。
【0050】
上記した実施形態は一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
以下、図8及び図9を用いて上記実施形態に適用が可能な変形例について説明する。なおこれらの変形例においては、上記した実施形態のキャップ100と異なる部分を中心に説明し、キャップ100と機能が共通する構成要素については同じ番号を付してその説明は適宜省略する。
【0051】
<変形例1>
まず図8を用いて変形例1におけるキャップ101について説明する。
本変形例1のキャップ101は、上記した実施形態のキャップ100に比して、下部貫通孔12の形状が異なっている点に特徴がある。
【0052】
同図に示すとおり、変形例1のキャップ101は、上記した開口段部13に代えて第2開口段部13´を有して構成されている。この第2開口段部13´は、上部貫通孔11の連通孔部OP以外の部位を塞いで非貫通領域CPを形成する機能を備える点においては開口段部13と共通するものの、下部貫通孔12を形成する形状が筒状でない点において差異がある。
【0053】
このように本発明において、下部貫通孔12は、必ずしも円孔である必要はなく、連通孔部OPと非貫通領域CPを形成可能であれば非貫通領域CPの形状は特に制限はないと言える。したがって変形例1の第2開口段部13´は、上部貫通孔11と協働して連通孔部OPを形成する下部貫通孔12を形成可能であるとともに、上部貫通孔11の連通孔部OP以外の部位を塞いで非貫通領域CPを形成する機能を有していればよいと言える。
【0054】
以上説明した変形例1におけるキャップ101においても、上記した実施形態と同様の効果を奏することができる。これに加え、容器内部から一様に連通孔部OPへ流入するのではなく非貫通領域CP側に偏在させて流入させることができ、より効率的に上部貫通孔11から吐出される内容物Cを傾向させることが可能となっている。
【0055】
<変形例2>
次に図9を用いて変形例2におけるキャップ102について説明する。
本変形例2のキャップ102は、上記したキャップ100やキャップ101に比して、上蓋40がキャップ本体1に対してヒンジ接続されていない点や、バッファ空間14を有しない点などに特徴がある。
【0056】
すなわち、同図に示すとおり、変形例2のキャップ102においては、バッファ空間14が省略されて上記したロート状底板部31と頂板部10とが一体的に形成されている。このように本発明において、ロート状底板部31と頂板部10との位置関係は、実施形態のごとく軸方向に関して配置高さを異ならせる態様に限られず同じ高さとなっていてもよいと言える。したがって、変形例2のキャップ102においては、注出筒30が頂板部10の表面10aに立設されるとともに、この頂板部10に上部貫通孔11と下部貫通孔12が共に形成された形態となっている。
【0057】
なお、図示は省略するが、注出筒30内における頂板部10(実施形態においてはロート状底板部31とされていた部位)は必ずしも平坦となっている必要はなく、上部貫通孔11が底となるように円錐面状となっていてもよい。
また、変形例2ではヒンジ部50は省略したが、上蓋40がキャップ本体1に対してヒンジ接続する構造としてもよい。
【0058】
以上説明した変形例2におけるキャップ102においても、上記した実施形態と同様の効果を奏することができる。これに加え、キャップ本体1の構造をよりシンプルに構成することが可能となっている。
なお上記説明において筒状スカート壁20は外形が円筒状のものを例示したが、必ずしも円筒である必要はなく断面が楕円又は矩形などの非円形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、容器用途またはそれ以外の用途において、二種の貫通孔を用いて液体の吐出方向を任意に傾向させることが可能なキャップを提供するのに適している。
【符号の説明】
【0060】
1:キャップ本体
10:頂板部
11:上部貫通孔
12:下部貫通孔
13:開口段部
13´:第2開口段部
14:バッファ空間
15:嵌合壁部
16:上蓋係合突起
20:筒状スカート壁
21:係止リブ
30:注出筒
31:ロート状底板部
32:注出口
33:注出誘導部
40:上蓋
41:インナーリング
42:閉塞栓
50:ヒンジ部
100~102:キャップ
B:容器
Bo:口部
Bp:係止突条
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9