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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】冷蔵施設
(51)【国際特許分類】
   F25D 13/00 20060101AFI20230605BHJP
   F25D 21/08 20060101ALI20230605BHJP
   F25D 17/08 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
F25D13/00 101Z
F25D21/08 A
F25D17/08 301
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019058557
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020159619
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100097319
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100151002
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 剛之
(74)【代理人】
【識別番号】100201673
【弁理士】
【氏名又は名称】河田 良夫
(72)【発明者】
【氏名】中澤 賢
(72)【発明者】
【氏名】池亀 大輔
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-145222(JP,A)
【文献】特開昭61-036675(JP,A)
【文献】特開昭63-273775(JP,A)
【文献】特開2004-170025(JP,A)
【文献】特開平08-121932(JP,A)
【文献】特開平11-311472(JP,A)
【文献】国際公開第99/047871(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 13/00
F25D 17/04 ~ 17/08
F25D 21/00 ~ 21/02
F25D 21/06 ~ 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵物を冷蔵保管する冷蔵施設において、
施設本体の天井面との間に第1通路を設けるとともに、前記施設本体と前記第1通路とを連通させる複数の開口を有する天板と、
前記第1通路に送り込まれる空気を冷却して送風ファンにより前記第1通路に送り出す冷凍サイクルの蒸発器及び膨張弁と前記送風ファンとからなる冷却器と、
前記施設本体の内部に設けられた貯蔵領域に配置された温度検出手段と、
前記第1通路に配設され、前記温度検出手段により検出された前記貯蔵領域の温度と予め設定された前記貯蔵領域の設定温度との偏差に基づいて演算される入力信号によって、前記冷却器から前記第1通路に送り出される空気を前記冷却器の近傍で加温を制御され、給電により発熱するヒータエレメントへの給電量を、サイリスタを用いて比例制御される加温器と、
前記施設本体の側壁面との間に、前記貯蔵領域の空気を前記第1通路に向けて前記送風ファンの静圧によって還り空気として還気される第2通路を設ける通路構成部材と、
を有し、
前記冷却器は、前記施設本体の外部に配置された室外機に接続され、
前記蒸発器は、前記室外機との間で冷凍サイクルを形成しながら循環される熱交換媒体と前記第1通路に送り込まれた空気との間で熱交換を行って空気を冷却する第1の熱交換器であり、
前記室外機は、前記冷却器からの前記熱交換媒体の熱を放出する凝縮器である第2の熱交換器と、前記第2の熱交換器の放出熱量を回転数の比例制御にて可変とする室外機の送風機と、前記冷却器からの前記熱交換媒体を圧縮して前記第2の熱交換器に送り込む、モータに給電される電力の周波数を変更することで圧縮性能を変更することが可能な圧縮機と、を有し、
前記冷却器は、前記貯蔵領域を目的の温度まで冷却したときに必要となる基準負荷よりも高い高負荷で空気を冷却することが可能な冷却性能を有していて、
安定した冷凍サイクルが形成できるよう前記圧縮機を常にある仕事率で定常的に運転し、それに応じて前記室外機の送風機の周波数を調整して送風機電動機に供給して一定の冷却能力を発揮しながら、同時に、前記温度検出手段により検出された前記貯蔵領域の温度と前記貯蔵領域の設定温度との偏差に基づいて演算し、前記加温器の前記サイリスタを細かく制御して前記ヒータエレメントへの給電量を比例制御することで貯蔵領域内の温度計測位置の設定温度を実現できるようにし、
前記冷却器は、前記第1通路に、前記第2通路を形成する側壁面に沿って複数配設し、
複数の前記冷却器について、複数の前記冷却器のいずれかの蒸発器熱交換面のデフロスト動作が必要になった際、前記蒸発器のデフロストヒータを通電動作させてデフロスト制御を行う制御装置を有する
ことを特徴とする冷蔵施設。
【請求項2】
請求項1に記載の冷蔵施設において、
前記制御装置は、複数の前記冷却器について、複数の前記冷却器のいずれかの蒸発器熱交換面のデフロスト動作が必要になった際、当該冷却器の前記送風ファンは動作したまま、デフロスト制御を行
とを特徴とする冷蔵施設。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の冷蔵施設において、
前記通路構成部材は、前記施設本体の側壁面に沿って設けられ、前記貯蔵領域の床面近傍に、前記貯蔵領域の内部の空気を前記第2通路に流入させる流入口を有する仕切り板である
ことを特徴とする冷蔵施設。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の冷蔵施設において、
前記通路構成部材は、前記天板の一端部から施設本体内部の側壁面に沿って吊設けられ、前記貯蔵領域の床面との間に所定間隔の隙間を設けた通風性のないカーテンである
ことを特徴とする冷蔵施設。
【請求項5】
貯蔵物を冷蔵保管する冷蔵施設において、
施設本体の天井面との間に第1通路を設けるとともに、前記施設本体と前記第1通路とを連通させる複数の開口を有する天板と、
前記第1通路に送り込まれる空気を冷却して送風ファンにより前記第1通路に送り出す冷凍サイクルの蒸発器及び膨張弁と前記送風ファンとからなる冷却器と、
前記施設本体の内部に設けられた貯蔵領域に配置された温度検出手段と、
前記第1通路に配設され、前記温度検出手段により検出された前記貯蔵領域の温度と予め設定された前記貯蔵領域の設定温度との偏差に基づいて演算される入力信号によって、前記冷却器から前記第1通路に送り出される空気を前記冷却器の近傍で加温を制御される加温器と、
前記施設本体の側壁面との間に、前記貯蔵領域の空気を前記第1通路に向けて前記送風ファンの静圧によって還り空気として還気される第2通路を設ける通路構成部材と、
を有し、
前記冷却器は、前記第1通路に、前記第2通路を形成する側壁面に沿って複数配設し、
複数の前記冷却器について、複数の前記冷却器のいずれかの蒸発器熱交換面のデフロスト動作が必要になった際、当該冷却器の前記送風ファンは動作したまま、前記蒸発器のデフロストヒータを通電動作させてデフロスト制御を行う制御装置をさらに有し、
複数の前記冷却器は、前記冷却器から送り出される空気の到達範囲が重畳されるように各冷却器が対面する方向に所定の角度傾いて配置される
ことを特徴とする冷蔵施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の温度範囲内での冷蔵保管が要求される医薬品等の貯蔵物を冷蔵保管する冷蔵施設に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生物由来の原料を用いる食品、化粧品、薬品などでは、HACCP、日本薬局法や、GMPなどのそれぞれの分野における管理の決まりによって、特に高付加価値になる原料、中間製品から製品までの各段階では、その保管に一定の許容範囲内での低温保持が要求され、高付加価値の商品や半製品なので小さい規模の空間での低温保管となる場合がある。
【0003】
例えば、医薬品の分野において、生物が産生する蛋白質などの生物学的製材や、医薬品を製造するための原料となる原薬は、医薬品の製造段階で温湿度管理されるだけでなく、劣化防止のため低温で冷蔵保管されている。これら生物学的製材や原薬の中には、保管時の温度精度が±2℃、また保管される施設内における温度分布が±2℃という厳密な管理条件が要求されるものもある。さらに、最終製品としても、錠剤ではなくバイアル瓶やパウチなどに詰めて出荷される、液、水溶液やゼリー状で熱変化による劣化が大きい製品では、出荷後の流通についても輸送途中の中長期保管にも同様な温度管理を要求される場合がある。
【0004】
このような医薬品等の貯蔵物を冷蔵保管する冷蔵施設では、例えば大規模な保管施設が設置できる単一種の量産工場内ならば、大規模保管をする棚状の保管エリアに均一に温度管理できるように、室の棚近傍に多数の冷却器を適切に設置し、気流を考えて前記複数の冷却器に通風するよう送風機を設置し、送風機から送り出される冷風によって複数の気流を送って施設内を冷却し、該施設内の温度を均一に形成することは、例えば冷却器に流す冷媒を空気の設定温度に近いブラインなどとして、建屋などにある程度熱負荷を備えることで、冷媒と空気とを近い温度場で熱交換すれば達成できる。ところが、このようなブラインコイルなどの冷却器を棚段ごとに多数設置する大規模設備は、単一の量産製品で自動倉庫にするような大規模保管庫でしか経済的に難しい。
【0005】
高付加価値である上記原薬や中間製品などでも、その保管は小さな容積で冷蔵保管する冷蔵施設となり、このような冷蔵施設では、それぞれ小さな容積の保管室ごとに独立して低温温度設定できるよう、冷凍サイクルを一式備えているユニットクーラを設置して冷蔵保管するスペースとの間で冷風循環する方式を用いることが一般的である。ここでのユニットクーラは、冷凍サイクルの蒸発器である直膨コイルと、そこに冷却する対象の空気を例えば軸流ファンで通風するように、直膨コイルとファンとが1台ずつ冷却対象の室側に設置されることとなる。
【0006】
このようなユニットクーラを用いる冷風循環方式では、メーカがユニットの単位として区切っている熱負荷処理能力と、小規模な冷蔵施設である実際の室側の熱負荷(特に製品を静置しているだけで熱負荷を生じない)とが、室側の熱負荷が小さくて合致しないことが多い。よって、冷蔵施設では、施設内の冷却時における要求負荷よりもはるかに大きな能力を持った冷却性能を有する冷却器が設置される場合が多い。この要求能力と冷却器側の保有能力の大きさとの乖離があまりに大きいと、ユニットクーラではたとえ制御弁で冷媒を絞ったところで、冷却器の冷媒流路であるチューブでの冷媒流速が遅くなり入口側の冷却器伝熱面積の一部しか熱交換に寄与せずに冷媒が空気温度に近くなり、結局冷却器での不均一が発生する。
【0007】
また、このようなユニットクーラを用いる冷風循環方式では、空気を循環するファンが1台なので、施設内の上層に熱だまり、下層に低温だまりが生じやすいので、施設内における温度分布が不均一となりやすい。施設内における不均一な温度分布は、冷蔵保管している生物学的製材や原薬の品質の劣化の原因となり、前述の日本薬局法やGMPなどの管理手法ではそれを規制している場合がある。
【0008】
そして、ユニットクーラでは、単純な冷凍サイクルを形成して蒸発器である冷却器に冷媒を流すので、低温空気である空気設定温度に冷却しようとすると、冷媒はすぐに0℃よりはるかに低くなり、冷却器の伝熱フィン面で空気中の水分が凝縮した水滴が凍結し、伝熱フィン間をふさいで空気流路をふさいでしまう。よって、定期的に蒸発器にホットガスを流す(つまり一時的に蒸発器を凝縮器的にすること)デフロスト動作が必要になり、このデフロスト動作は、冷却対象空気温度を激しくに乱すこととなる。そこで、デフロスト動作の際にも冷却能力を発揮するために、ユニットクーラを2台設置し、切り替え運転し、デフロスト動作側のファンを停止する動作とする。
【0009】
上述したユニットクーラを用いる冷風循環方式において、例えば、2台設置したユニットクーラの1台がデフロスト動作になった場合にも他方のユニットクーラ1台が送風する際に、倉庫内の高さ方向に直交する平面内における温度分布が均一となるように、床面に設けた複数の吹出孔から冷風が倉庫内に送り込むことが提案されている(特許文献1参照)。また、この他に、冷媒を固体のドライアイスとし直接空気を接触させるべく内部空気を循環させる空気流通路と、空気流通路内に配置された空気循環用ファンとを設け、内部温度が、予め設定した温度又は該温度にオフセット値を加算した温度からなる設定温度よりも低い温度となるときに、冷蔵室の通風路に設けた冷風用のファンを停止させ、空気循環用ファンを駆動させることで内部空気を循環させる技術について提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】実公昭61-35908号公報
【文献】特開2004-150735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
例えば、特許文献1では、2台の冷却器に対して切替運転を行い、停止させる冷却器に対してデフロスト運転(霜取り運転)を行うことを開示している。このような2台の冷却器を用いた切替運転の場合には、片側のユニットクーラのファンが停止するため複数のユニットクーラが配置されているのに、停止している1台分は通風路を邪魔することとなって冷気が送風される領域が限定されるため、冷蔵倉庫の高さ方向に直交する平面内における温度分布が不均一となりやすいという問題を解決できるものではない。同時に、特許文献1では、床面に設けた複数の吹出孔を介して冷気を倉庫内に送り込むため、倉庫内の上層に熱だまり、下層に低温だまりが各々生じやすく、倉庫内の高さ方向における温度分布も不均一となりやすいという問題を解決できるものではない。
【0012】
また、特許文献2では、倉庫内の温度が設定温度よりも低い温度となるときに冷却器用のファンを停止させ、倉庫内の温度が設定温度よりも高い温度となるときに冷却器用のファンを駆動させるため、結局設定温度を基準としたオン/オフ動作となるので、倉庫内の温度がオーバーシュート、アンダーシュートを繰り返すハンチング現象が発生する。例えば倉庫内の必要冷却負荷よりもはるかに高い熱負荷処理能力を有する冷却器が設置されている場合には、冷却器のファンが動作したら冷却性能が大きくてすぐに倉庫内の温度が上記設定温度よりも低い温度に到達し、冷却器が停止してしまう。その結果、厳格な管理条件を必要とする貯蔵物の冷蔵保管を行うことは難しい。
【0013】
本発明は、上述した課題を解決するために発明されたもので、厳密な管理条件下が要求される貯蔵物の冷蔵保管を行えるようにした技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するために、本発明の冷蔵施設は、貯蔵物を冷蔵保管する冷蔵施設において、施設本体の天井面との間に第1通路を設けるとともに、前記施設本体と前記第1通路とを連通させる複数の開口を有する天板と、前記第1通路に送り込まれる空気を冷却して送風ファンにより前記第1通路に送り出す冷凍サイクルの蒸発器及び膨張弁と前記送風ファンとからなる冷却器と、前記施設本体の内部に設けられた貯蔵領域に配置された温度検出手段と、前記第1通路に配設され、前記温度検出手段により検出された前記貯蔵領域の温度と予め設定された前記貯蔵領域の設定温度との偏差に基づいて演算される入力信号によって、前記冷却器から前記第1通路に送り出される空気を前記冷却器の近傍で加温を制御され、給電により発熱するヒータエレメントへの給電量を、サイリスタを用いて比例制御される加温器と、前記施設本体の側壁面との間に、前記貯蔵領域の空気を前記第1通路に向けて前記送風ファンの静圧によって還り空気として還気される第2通路を設ける通路構成部材と、を有し、前記冷却器は、前記施設本体の外部に配置された室外機に接続され、前記蒸発器は、前記室外機との間で冷凍サイクルを形成しながら循環される熱交換媒体と前記第1通路に送り込まれた空気との間で熱交換を行って空気を冷却する第1の熱交換器であり、前記室外機は、前記冷却器からの前記熱交換媒体の熱を放出する凝縮器である第2の熱交換器と、前記第2の熱交換器の放出熱量を回転数の比例制御にて可変とする室外機の送風機と、前記冷却器からの前記熱交換媒体を圧縮して前記第2の熱交換器に送り込む、モータに給電される電力の周波数を変更することで圧縮性能を変更することが可能な圧縮機と、を有し、前記冷却器は、前記貯蔵領域を目的の温度まで冷却したときに必要となる基準負荷よりも高い高負荷で空気を冷却することが可能な冷却性能を有していて、安定した冷凍サイクルが形成できるよう前記圧縮機を常にある仕事率で定常的に運転し、それに応じて前記室外機の送風機の周波数を調整して送風機電動機に供給して一定の冷却能力を発揮しながら、同時に、前記温度検出手段により検出された前記貯蔵領域の温度と前記貯蔵領域の設定温度との偏差に基づいて演算し、前記加温器の前記サイリスタを細かく制御して前記ヒータエレメントへの給電量を比例制御することで貯蔵領域内の温度計測位置の設定温度を実現できるようにし、前記冷却器は、前記第1通路に、前記第2通路を形成する側壁面に沿って複数配設し、複数の前記冷却器について、複数の前記冷却器のいずれかの蒸発器熱交換面のデフロスト動作が必要になった際、前記蒸発器のデフロストヒータを通電動作させてデフロスト制御を行う制御装置を有することを特徴とする。
【0015】
また、前記制御装置は、複数の前記冷却器について、複数の前記冷却器のいずれかの蒸発器熱交換面のデフロスト動作が必要になった際、当該冷却器の前記送風ファンは動作したまま、デフロスト制御を行うことを特徴とする。
【0018】
ここで、前記通路構成部材は、前記施設本体の側壁面に沿って設けられ、前記貯蔵領域の床面近傍に、前記貯蔵領域の内部の空気を前記第2通路に流入させる流入口を有する仕切り板であることが好ましい。
【0019】
また、前記通路構成部材は、前記天板の一端部から施設本体内部の側壁面に沿って吊設けられ、前記貯蔵領域の床面との間に所定間隔の隙間を設けた通風性のないカーテンであることが好ましい。
【0021】
なお、本発明の別態様の冷蔵施設は、貯蔵物を冷蔵保管する冷蔵施設において、施設本体の天井面との間に第1通路を設けるとともに、前記施設本体と前記第1通路とを連通させる複数の開口を有する天板と、前記第1通路に送り込まれる空気を冷却して送風ファンにより前記第1通路に送り出す冷凍サイクルの蒸発器及び膨張弁と前記送風ファンとからなる冷却器と、前記施設本体の内部に設けられた貯蔵領域に配置された温度検出手段と、前記第1通路に配設され、前記温度検出手段により検出された前記貯蔵領域の温度と予め設定された前記貯蔵領域の設定温度との偏差に基づいて演算される入力信号によって、前記冷却器から前記第1通路に送り出される空気を前記冷却器の近傍で加温を制御される加温器と、前記施設本体の側壁面との間に、前記貯蔵領域の空気を前記第1通路に向けて前記送風ファンの静圧によって還り空気として還気される第2通路を設ける通路構成部材と、を有し、前記冷却器は、前記第1通路に、前記第2通路を形成する側壁面に沿って複数配設し、複数の前記冷却器について、複数の前記冷却器のいずれかの蒸発器熱交換面のデフロスト動作が必要になった際、当該冷却器の前記送風ファンは動作したまま、前記蒸発器のデフロストヒータを通電動作させてデフロスト制御を行う制御装置をさらに有し、複数の前記冷却器は、前記冷却器から送り出される空気の到達範囲が重畳されるように各冷却器が対面する方向に所定の角度傾いて配置されることを特徴とする
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、厳密な管理条件下が要求される貯蔵物の冷蔵保管を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態の冷蔵施設の一例を示す上面図である。
図2図1に示すA-A断面図である。
図3図1に示すB-B断面図である。
図4図2に示すC-C断面図である。
図5】本実施形態における空調システムの電気的構成の一例を示す機能ブロック図である。
図6】2台の空調装置を交互に運転させるときのタイミングチャートである。
図7】空調システムにおける負荷の関係を示す図である。
図8図8(a)は、仕切壁板の代わりに、シートを用いて貯蔵領域と循環通路とを仕切る場合の一例を示す図、図8(b)は、図8(a)に示すE-E断面図である。
図9図9(a)は2つのユニットクーラをx方向に沿って配置したときの各ユニットクーラから送り出される冷却空気の到達範囲を示す図、図9(a)は2つのユニットクーラを互いに向けて傾斜させるように配置したときの各ユニットクーラから送り出される冷却空気の到達範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本実施形態の冷蔵施設について、図面を用いて説明する。本実施形態の冷蔵施設は、生物が産生する蛋白質などの生物学的製材や、医薬品を製造するための原料となる原薬等の貯蔵物を冷蔵保管する。なお、本実施形態では、貯蔵物として生物学的製剤や原薬を挙げているが、果物類、野菜類、肉類及び魚介類などの生鮮食品など、あるいは生物由来材料を用いる再生医療等の製品や化粧品などを貯蔵物としてもよい。
【0025】
図1から図4に示すように、冷蔵施設10は、内部に配設された天板11及び仕切壁板(請求項に記載の通路構成部材、仕切り板に相当)12により、貯蔵物を冷蔵保管する貯蔵領域15と、冷風を循環させる循環通路16とに仕切られる。循環通路16は、側壁部位14に沿った通路形成部(請求項に記載の第2通路に相当)16aと、天井部位13に沿った通路形成部(請求項に記載の第1通路に相当)16bと、が組み合わされたyz平面の断面がL字形状の通路である。図1及び図3中符号17は、貯蔵領域15に出入りするための扉である。なお、図示は省略しているが、貯蔵領域15には、扉17の開口時に貯蔵領域15の冷気が外部に流出する、又は冷蔵施設10の外部の空気が貯蔵領域15の内部に流入することを防止するためのビニールシートなどの遮蔽部材が、扉17の開口部分及びその外周部分に亘って配設される。
【0026】
天板11は、冷蔵施設10の天井部位13に吊設される。なお、図2から図4においては、天板11を天井部位13に吊設する機構については省略している。天板11は、ステンレス鋼(SUS)などの金属板材を折り曲げたものである。天板11は、軽量型鋼などからなる野縁とそれに交差して上に位置する野縁受けで下地を組み、野縁受けを羽子板で吊るなどの構造で吊られ、野縁に対して折り曲げた端部を差し込んだりして天井を形成する。天板11は後述するように通風のためパンチング孔(吹出孔)を多数有していたりするので、野縁と天板とは特にシール構造でなくてよい。
【0027】
天板11は、多数の吹出孔(請求項に記載の開口に相当)20を有する。図4においては、図の煩雑さを解消するために、多数の吹出孔の一部に対してのみ符号20を付している。吹出孔20は、後述するユニットクーラ31から送り出され、電気ヒータ33によって加温された冷却空気を貯蔵領域15に向けて送り出す。ここで、天板11に多数の吹出孔20を設けることで、天板11の全体面の吹出孔20の通風抵抗がある程度大きく、天板11の上部の気流による下向きの風速不均一、つまり動圧不均一を一度静圧にして天井内でならして吹出孔20から下向き動圧に転換されるので、冷却空気は貯蔵領域15に均一に送り出される。
【0028】
なお、図4において示した吹出孔20の形状は円形状としているが、吹出孔20の形状は円形状に限定する必要はなく、楕円形状、多角形状、星形状、十字形状であってもよい。また、吹出孔20の大きさや、天板11に対する吹出孔20の配置状態、また、天板11の表面積に対する吹出孔20の総面積の割合は、吹出孔20の通風抵抗と天板11全体の下向き風速の均一度合いとの兼合いでのユニットクーラ送風ファンの保有全圧のコストや消費エネルギー、冷蔵施設10の内部における冷却効率等を考慮した上で設定される。
【0029】
仕切壁板12は、天井部位13に吊設される天板11の側壁部位14に沿って配置される。仕切壁板12の上端部は、天板11の側壁部位14側の一端部に固着され、その下端部は、床面FLに固着される。天板野縁に強度がない場合は、仕切壁板12の上端部と天井部位13との間にチャンネル材などで枠組みを回し、天井部位13から仕切壁板12を吊りながら仕切壁板12の上端より上に開口を設けるようにしてもよい。仕切壁板12は、天板11と同様に、ステンレス鋼(SUS)などの金属板材で、側壁部位14側に軽量型鋼などで胴縁を備えて強度を確保している。仕切壁板12は、その下端部で、且つ仕切壁板12の幅方向に沿って4箇所に流入口22を有する(図2及び図3参照)。流入口22は、貯蔵領域15の冷却空気を循環通路16の通路形成部16aに流入させる。つまり、冷却空気は、貯蔵領域15と循環通路16との間で循環される。ここで、仕切壁板12は、天板11と同様に、1枚の金属板材から形成してもよいし、複数枚の金属板材を胴縁にビス止めすることで連続して立設したものであってもよい。
【0030】
上述した循環通路16の通路形成部16a及び通路形成部16bの連結部分の近傍に、空調装置30を構成するユニットクーラ(請求項に記載の冷却器に相当)31が天井部位13に対して図1中x方向に沿って2箇所に吊設される。ここで、図1図3及び図4における符号32は、ユニットクーラ31の各々に接続される室外機である。なお、ユニットクーラ31及び室外機32は、これらの間で冷凍サイクルを形成する冷媒を循環させる配管により接続されるが、図1図3及び図4においては、配管については省略している。
【0031】
電気ヒータ33は、ユニットクーラ31から送り出される冷却空気を加温する。電気ヒータ33は、その電源を供給される2次盤の中にサイリスタを介して商用電力と接続され、貯蔵領域15に設けた温度センサ35から出力される現状の室温である温度計測信号を、温度調節計へ入力し、温度調節計に入力された温度設定値との偏差に基づいて、PID制御の値として演算された信号をサイリスタへ出力し、電気ヒータ33は比例制御される。ここで、貯蔵領域15に配置される温度センサ35の位置は、特に限定されるものではない。
【0032】
以下、2つの空調装置30のうち、図1中左側に配置される空調装置に対して符号30Aを、図1中右側に配置される空調装置に対して符号30Bを付して説明する。また、同時に、空調装置30Aに対応して設けられる電気ヒータに対して符号33Aを、空調装置30Bに対応して設けられる電気ヒータに対して符号33Bを付して説明する。
【0033】
図5は、冷蔵施設10における空調システム100の電気的構成の一例を示す機能ブロック図である。空調装置30A及び空調装置30Bの構成は同一の構成であり、また、電気ヒータ33A及び電気ヒータ33Bの構成は同一の構成であることから、図5においては、空調装置30B及び電気ヒータ33Bの構成については省略している。また、以下の説明においても、空調装置30A及び電気ヒータ33Aの構成についてのみ説明し、空調装置30B及び電気ヒータ33Bの構成については、その説明を省略する。
【0034】
図5に示すように、空調システム100は、空調装置30Aのなかに、室内機であるユニットクーラ31、室外機32の他に、サイリスタ61、ヒータエレメント62を有する電気ヒータ33Aを有し、さらに、温度センサ35及びコントロールユニット(請求項に記載の制御装置に相当)36を有する。
【0035】
ユニットクーラ31は、送風ファン40、膨張弁41、蒸発器である熱交換器(請求項に記載の第1の熱交換器に相当)42、除霜のためのデフロストヒータ43、制御回路44、温度検出部45などを有する。ここで、符号50は、ユニットクーラ31及び室外機32との間で冷媒を循環させる冷媒循環路である。
【0036】
送風ファン40は、モータ46の駆動により回転して、蒸発器である熱交換器42により冷却された空気を、後流にある別体の電気ヒータ33Aに向けて送り出す。
【0037】
膨張弁41は、室外機32が有するコンプレッサ52で圧縮されたガス冷媒を、凝縮器である熱交換器53で冷却して送り出された冷媒を膨張させて、冷媒を低温低圧の液体にする。
【0038】
蒸発器である熱交換器42は、詳細は図示を省略するが、冷却管とフィンとを有する。熱交換器42は、送り込まれた低温低圧の液体の状態である冷媒と、通過する空気との間で熱交換を行う。この熱交換により、熱交換器42を通過する空気が冷却される一方で、熱交換器42の内部の冷媒は加温される。なお、熱交換器42の内部の冷媒は加温されることで気体状となる。その後、冷凍サイクルの循環として、圧縮機へ吸い込まれ、高温高圧のガス冷媒として再び凝縮器へ送られる。一方、熱交換器42を通過する空気は、上述したユニットクーラ31の送風ファン40により冷却空気として循環通路16の通路形成部16bへ向けて電気ヒータ33Aを通過するように送り出される。
【0039】
デフロストヒータ43は、特に蒸発器である熱交換器42の空気を取り込む側により伝熱するように熱交換器42やユニットクーラ31の下部のドレンパンなどに取り付けられ、通電時に発熱し、絶対湿度の高い空気を通風したときに凝縮し冷媒の低い温度により凍結することで、熱交換器42が有する冷却管やフィンに付着した霜を取り除くための部材である。なお、図5においては、1つのデフロストヒータ43を設けた場合を説明しているが、熱交換器42の霜取りを行うヒータの他、送風ファン40のフェースガードの霜取りを行うヒータ、図示を省略したドレンに残留し、冷却時に凍結した水分を溶解するためのヒータなど、同じ機能のヒータをまとめてデフロストヒータとして備えていてもよい。
【0040】
制御回路44は、ユニットクーラ31Aと室外機32とを統合して制御する機側盤内の制御回路である。制御回路44は、外部信号としてのコントロールユニット36からの冷却開始信号や冷却停止信号の他、室外機を含めたユニットクーラ全体での自立制御として、デフロスト運転(霜取り運転)開始信号や停止信号を内部で送受信し、送風ファン40の回転、回転停止、コンプレッサ52のモータ57の回転数制御、デフロストヒータの運転停止、ホットガスの蒸発器流入のための四方弁54の制御などの制御を行う。また、制御回路44は、内部でのデフロスト運転(霜取り運転)開始信号や停止信号を受けたときには、従来よく行われる送風ファン40の回転、回転停止の制御をせずに、デフロストヒータ43に対する給電、給電停止があっても送風ファン40の運転は継続するよう制御を組み替える。したがって、空調装置30がデフロスト運転するときには、送風のみが行われる。
【0041】
また、コントロールユニット36からの冷却開始信号や冷却停止信号を受けると、制御回路44は、室外機32の制御回路55に向けて、冷却開始信号や冷却停止信号を出力する。また、制御回路44は、蒸発器である熱交換器42の配管出口などに備わる温度検出部45からの検出信号を受けて、温度検出部45では空気との熱交換ができず配管周囲が凍結していることを示す温度を検出するのだが、ユニットクーラ30Aが内蔵する制御回路44により、温度検出部45の温度が制御回路44に設定された蒸発器の着霜を示す設定温度に到達しているか否かを判定する。例えば温度検出部45にて検出された温度が蒸発器の着霜を示す設定温度に到達している場合には、制御回路44は室外機32の制御回路55に向けて冷却停止信号を出力し、圧縮機を停止して冷凍サイクルを止めるか、四方弁54を切り替えてホットガスを一時的に熱交換器42に通過させる。その上でデフロストヒータ43に通電する。なお、温度検出部45にて検出された温度が制御回路44にて設定された蒸発器の着霜を示す設定温度に到達していない場合には、制御回路44は室外機32の制御回路55に向けて冷却停止信号を出力しない。
【0042】
温度検出部45は、例えば蒸発器である熱交換器42の配管出口などに備わる温度計で蒸発器の着霜の有無を表示する温度を検出する温度センサである。
【0043】
室外機32は、ファン51、コンプレッサ(請求項に記載の圧縮機に相当)52、凝縮器である熱交換器(請求項に記載の第2の熱交換器に相当)53、四方弁54及び制御回路55を有する。
【0044】
ファン51は、モータ56の駆動により回転し、外気を吸い込んで熱交換器53に通風し、熱交換器53により熱交換した後の加熱された外気を室外機32の外部に送り出す。
【0045】
コンプレッサ52は、モータ57の駆動により回転し、コンプレッサ52の内部に送り込まれる冷媒を圧縮して送り出す。その結果、コンプレッサ52から送り出された冷媒は、高温高圧の気体となる。
【0046】
凝縮器である熱交換器53は、コンプレッサ52から送り出された高圧高温の気体である冷媒と、室外機32の内部に送り込まれる外気との間で熱交換を行う。この熱交換により、冷媒の温度が下がる。その一方で、室外機32の内部に送り込まれた外気は高温の空気となり、ファンの回転により室外機32の外部に排出される。
【0047】
四方弁54は、上述した貯蔵領域15を冷却する場合と、着霜した蒸発器に一時的にホットガスである圧縮機出口の高温高圧ガスを流す場合とで、上述した冷媒循環路50における冷媒の流路を切り替える。例えば貯蔵領域15を冷却する場合には、四方弁54は、図5中実線で示す状態に保持され、着霜した蒸発器に一時的にホットガスを流す場合には、図5中点線で示す状態に保持される。なお、除霜についてデフロストヒータだけを用いるのであれば、四方弁54を用いる必要はない。
【0048】
制御回路55は、ユニットクーラ31の制御回路44から出力された信号に基づいて、ファン51やコンプレッサ52の駆動制御を行う。図示は省略するが、制御回路55は、インバータ回路を有しており、インバータ回路により、モータ56,57の回転数を各々制御する。モータ56,57の回転数の制御としては、詳細には、モータ56,57に供給する交流電力の周波数に対する制御である。一例としては、上述したコンプレッサ52を駆動する際にモータ57に供給される交流電力を、一端、直流電力に変換し交流波の周波数を変える(コンバータ/インバータ)変換して、該インバータでの周波数を変えてそれに応じてコンプレッサ52を駆動してガスを圧縮する仕事量を可変することで、圧縮圧力を変えて、制御回路55はモータ57に供給する電力を制御し、圧縮仕事を制御することで冷凍サイクルが必要十分な冷却能力を獲得する。
【0049】
電気ヒータ33Aは、2次盤に内蔵される温度制御のためのサイリスタ61、ユニットクーラ出口側に設置されるヒータエレメント62を有する。サイリスタ61は、コントロールユニット36からの冷却開始信号や冷却停止信号を受けて通電されたのち、温度センサ35からの温度計測信号を温度調節計であるコントロールユニット36にて設定された設定温度値との偏差に基づいて演算されたコントロールユニット36からの出力信号に応じてヒータエレメント62への電力量の可変制御を行う。なお、サイリスタ61に出力される出力信号の演算は、例えばPID制御としての演算結果であることが挙げられる。ヒータエレメント62は、供給される電力によって発熱し、ユニットクーラ31から送り出された冷却空気を加温する。
【0050】
温度センサ35は、電気ヒータ33A,33Bを制御するコントロールユニット36に向けて、貯蔵領域15の内部温度に係る計測信号を出力する。
【0051】
コントロールユニット36は、空調装置30A,30Bの駆動制御、及び、温度調節計として電気ヒータ33A,33Bの比例制御を行う。コントロールユニット36は、制御回路65、入力部66、表示部67を有する。制御回路65は、入力部66により入力された入力信号に基づいて、表示部67の表示制御を行う他、空調装置30A,30Bの駆動制御、及び、温度調節計として電気ヒータ33A,33Bの比例制御を行う。入力部66は例えばタッチパネルであり、冷蔵施設10の貯蔵領域15の冷却温度の設定や、空調装置の駆動方法の設定を行うためのものである。表示部67は例えば液晶表示パネルであり、冷蔵施設10の貯蔵領域15の冷却温度の設定や、空調装置30の駆動方法の設定を行う際の各種設定画面を表示する。
【0052】
図6に示すように、上述した空調システム100を構成する空調装置30A,30Bは、交互に冷却運転を切り替えながら駆動する。例えば空調装置30Aが冷却運転を開始すると、空調装置30Bはデフロスト運転を期間T1行った後、停止される。ここで、空調装置30Aにおいては、デフロスト運転が行われる期間T1よりも長い期間T2、冷却運転される。
【0053】
空調装置30Aによる冷却運転が期間T2行われると、空調装置30Aは、冷却運転からデフロスト運転に切り替える。そして、デフロスト運転を開始してから期間T1経過すると空調装置30Aは停止する。一方、空調装置30Aにおいてデフロスト運転が開始されると同時に、空調装置30Bによる冷却運転が開始される。空調装置30Bによる冷却運転が期間T2行われると、空調装置30Bは、冷却運転からデフロスト運転に切り替える。そして、デフロスト運転を開始してから期間T1経過すると空調装置30Bは停止する。一方、空調装置30Bにおいてデフロスト運転が開始されると同時に、空調装置30Aによる冷却運転が開始される。このように、一定時間経過する毎に、空調装置30A又は空調装置30Bが交互に冷却運転を行う。
【0054】
空調装置30A及び空調装置30Bが交互に冷却運転を行う際には、冷却運転を行う空調装置30に対応する電気ヒータ33が比例制御を開始する。つまり、空調装置30Aが冷却運転を開始すると電気ヒータ33Aが比例制御をはじめ、空調装置30Aが冷却運転を停止すると、電気ヒータ33Aは比例制御を停止する。同様にして、空調装置30Bが冷却運転を開始すると電気ヒータ33Bが比例制御をはじめ、空調装置30Bが冷却運転を停止すると、電気ヒータ33Bは比例制御を停止する。
【0055】
例えばコントロールユニット36にて貯蔵領域15の温度を設定した場合、空調装置30A,30Bは、圧縮機の回転数や室外機32のファン51の回転数を通常インバータ制御にて比例制御される。
【0056】
例えば、空調装置30A,30Bがインバータ回路を有していない場合には、空調装置の圧縮機の制御方式としては、オン-オフ制御方式が用いられる。オン-オフ制御方式は、例えば設定温度以下となるときに駆動を停止し、設定温度以上となるときに駆動を再開する制御である。このオン-オフ制御方式では、冷媒圧力ひいては冷媒の各要素での温度が想定された温度を一定範囲で温度保持することができず、例えば貯蔵領域15の内部の温度において、オーバーシュート、アンダーシュートを繰り返すハンチング現象が発生する。
【0057】
一方、インバータ制御方式は、制御回路55が有するインバータ回路により直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力の周波数を変更し、周波数が変更された交流電力を直流電力に変換してモータ57に供給することで、モータ57の回転数を制御する方式である。詳細には、制御回路55は、制御回路44から出力されたコントロールユニット36にて設定された貯蔵領域15の設定温度と、温度検出部45により検出された温度との温度差の情報を用いて、モータ57に供給される直流電力を変換した交流電力の周波数を変更する。そして、制御回路55は、周波数を変更した交流電力を直流電力に再変換して、モータ57に供給する。これにより、コンプレッサ52の回転数を制御する。したがって、インバータ制御方式を用いた場合には、上述したハンチング現象の発生を低減することができる。
【0058】
しかしながら、インバータ制御方式を用いた空調装置でも、前述のようにユニットクーラを用いる冷風循環方式では、メーカがユニットの単位として区切っている熱負荷処理能力と、小規模な冷蔵施設である実際の室側の熱負荷(特に製品を静置しているだけで熱負荷を生じない)とが、室側の熱負荷が小さくて合致しないことが多く、施設内の冷却時における要求負荷よりもはるかに大きな能力を持った冷却性能を有する冷却器が設置されることとなり、要求能力と冷却器側の保有能力の大きさとの乖離があまりに大きいと、インバータ制御で圧縮機の能力を絞ったり室外機ファンの風量を絞ったところで能力が出すぎることとなり、結果オーバーシュートを起こしてオンーオフ制御的になってしまう。オンーオフ制御的になってしまうので、冷媒圧力ひいては冷媒の各要素での温度が想定された温度を一定範囲で温度保持することができず、例えば貯蔵領域15の内部の温度において、オーバーシュート、アンダーシュートを繰り返すハンチング現象が発生する。
【0059】
そこで、本実施形態では、まず、空調装置30Aを常に安定した冷凍サイクルが形成できる蒸発器内圧力や凝縮器内圧力になるよう運転し、言い換えると、空調装置30Aのコンプレッサ52を常にある仕事率で定常的に運転し、制御回路55は、それに応じて室外機ファン周波数を調整し、モータ56に供給する。つまり、本実施形態では、空調装置30Aは、インバータ制御をある一定範囲で運転し、一定の冷却能力を発揮させて安定運転させる。そして、同時に、電気ヒータ33Aの動作により、空調装置30Aのユニットクーラ31から送り出される冷却空気を、サイリスタ61を細かく制御するように比例制御して電気ヒータ33A出口の空気温度を、貯蔵領域15内の温度センサ35の位置の設定温度を実現できる温度になるよう加温を行う。
【0060】
上述したように、電気ヒータ33Aの駆動制御は、貯蔵領域15に設けた温度センサ35からの出力信号(詳細には、貯蔵領域の温度を示す信号)に基づいた比例制御である。つまり、電気ヒータ33Aの温度制御回路62は、貯蔵領域15の温度と設定温度との偏差に基づいて、ヒータエレメント62に給電する電力値を調整する。例えば、貯蔵領域15の温度と設定温度との差が大きい場合には、サイリスタ61は、電気ヒータ33Aのヒータエレメント62への給電量を上げ、貯蔵領域15の温度と設定温度との差が小さい場合には、電気ヒータ33Aのヒータエレメント62への給電量を下げる。その結果、空調装置30Aのユニットクーラ31から送り出された冷却空気が電気ヒータ33Aによって加温されて、貯蔵領域15に送り出される。
【0061】
したがって、図7に示すように、本実施形態における空調システム100における実負荷は、空調装置30Aの定率冷却による負荷と、電気ヒータ33Aによる比例制御による負荷との差となる。なお、上述したように、空調装置30Aと空調装置30Bは、交互に切り替えながらの冷却運転を行うので、空調装置30Bが冷却運転を行った場合も、本実施形態における空調システム100における実負荷は、空調装置30Bの定率冷却による負荷と、電気ヒータ33Bによる比例制御による負荷との差となる。
【0062】
また、電気ヒータ33A及び電気ヒータ33Bにおいては、比例制御を行うことで、対応する空調装置30のユニットクーラ31から送り出された冷却空気を加温することになるので、空調装置30のユニットクーラ31による冷却運転を停止することがない。その結果、貯蔵領域15の温度において、ハンチング現象の発生を抑制でき、設定温度に対する温度精度を所定の温度範囲内に収めることができる。
【0063】
また、電気ヒータ33Aにより加温された冷却空気は、天板11に設けた多数の吹出孔20から貯蔵領域15の内部に流入する。吹出孔20は天板11の全体に亘って設けられていることから、冷却空気は貯蔵領域15の高さ方向に直交する平面(図1中xy平面)において、均一に貯蔵領域15に流入させることが可能となる。したがって、空調装置30A及び空調装置30Bを交互に切り替えながら冷却運転することによって、貯蔵領域15の温度分布が均一となり、また、温度精度も向上する。
【0064】
本実施形態では、天板11の他に仕切壁板12を設けて、冷蔵施設10の内部を、貯蔵領域15と循環通路16とに仕切る場合を例に挙げて説明しているが、図8に示すように、仕切壁板12の代わりに、例えばポリ塩化ビニル(PVC)や、ポリオレフィン系(PO)などの合成樹脂を用いた下端に重りを付けたカーテンやシートを使用することも可能である。なお、図8(a)、図8(b)においては、幅方向の両端部を重畳させて配置した5枚のカーテン70を仕切壁板12の代わりに用いた場合を示す。仕切壁板12の代わりにカーテンやシートを用いる場合、カーテンやシートの下端部と床面FLとの間に間隔Dの隙間を設けることで、貯蔵領域15の内部の空気を、循環通路16に流入させることが可能となる。なお、間隔Dとしては、一例として20cmである。
【0065】
本実施形態では、空調装置30A及び空調装置30Bのユニットクーラ31をx方向に沿って配置している。このとき、図9(a)に示すように、空調装置30Aのユニットクーラ31から送り出される冷却空気の到達領域は、符号80で示される領域となる。空調装置30Bのユニットクーラ31から送り出される冷却空気の到達領域は、符号81で示される領域となる。つまり、空調装置30Aのユニットクーラ31及び空調装置30Bのユニットクーラ31の各々から送り出される冷却空気の到達領域が重畳される領域(符号82)が狭い。つまり、貯蔵領域15内の温度は、図9(a)に示すxy平面において、不均一な温度分布になりやすい。したがって、図9(b)に示すように、空調装置30Aのユニットクーラ31及び空調装置30Bのユニットクーラ31を互いに傾斜させて、空調装置30Aのユニットクーラ31及び空調装置30Bのユニットクーラ31から各々送り出される冷却空気の到達領域80’、81’を重畳させる領域(符号82’に示す領域)を確保する。これにより、貯蔵領域15内の温度は、図9(b)に示すxy平面において、均一な温度分布にすることが可能となる。
【符号の説明】
【0066】
10…冷蔵施設、11…天板、12…仕切壁板(通路構成部材)、15…貯蔵領域、16…循環通路、30,30A,30B…空調装置、31…ユニットクーラ(冷却器)、32…室外機、33,33A,33B…電気ヒータ(加器)、35…温度センサ、36…コントロールユニット(制御装置)、61・・・サイリスタ、62…ヒータエレメント、70…カーテン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9