(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】データ送信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 4/44 20180101AFI20230605BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20230605BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20230605BHJP
H04W 4/38 20180101ALI20230605BHJP
H04W 84/06 20090101ALI20230605BHJP
H04W 16/26 20090101ALI20230605BHJP
H04W 88/04 20090101ALI20230605BHJP
【FI】
H04W4/44
B60R16/023 P
G08G1/09 H
H04W4/38
H04W84/06
H04W16/26
H04W88/04
(21)【出願番号】P 2019065263
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】西村 欣大郎
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 浩一
【審査官】青木 健
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-111646(JP,A)
【文献】特開2018-095049(JP,A)
【文献】特開2017-184204(JP,A)
【文献】特開2006-283651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
B60R 16/023
G08G 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載されたCAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームを当該シリアルバスから読み取る読取部、当該読取部によって読み取られた前記CANフレームに基づいて前記移動体についての予め規定された送信用データを当該読取部による当該CANフレームの読取り時刻に関連付けて生成する第1処理部、および当該第1処理部の制御に従って前記送信用データを外部装置に送信する第1無線通信部を備えて前記移動体に搭載可能に構成されたデータ処理装置と、
前記データ処理装置から送信された前記送信用データの受信および当該送信用データの予め規定された外部装置への送信が可能な第2無線通信部、並びに当該第2無線通信部による前記送信用データの受信および送信を制御する第2処理部を備えたデータ中継装置と、
前記データ中継装置を搭載可能に構成された浮遊体とを備え、
前記読取部は、前記CANフレームの伝送時に前記シリアルバスのフレーム伝送用導体に印加される電圧を当該フレーム伝送用導体に対して非接触で検出可能な非接触型電圧センサを有する電圧検出部と、当該電圧検出部によって検出された前記電圧の電圧レベルの変化に基づいて前記シリアルバスを介して伝送された前記CANフレームを特定するフレーム特定部とを備え、
前記データ中継装置を搭載した前記浮遊体を前記移動体よりも上方に浮遊させた状態で前記データ処理装置から前記外部装置に当該データ中継装置を経由して前記送信用データを送信可能に構成されているデータ送信システム。
【請求項2】
前記浮遊体としての飛行装置を備えている請求項1記載のデータ送信システム。
【請求項3】
前記飛行装置は、当該飛行装置の飛行を制御する第3処理部を備え、
前記第3処理部は、前記データ処理装置が搭載された前記移動体に追従して当該飛行装置を飛行させる追従飛行制御処理を実行可能に構成されている請求項2記載のデータ送信システム。
【請求項4】
前記浮遊体に搭載された撮像装置を備え、
前記第2処理部は、前記データ処理装置から送信された前記送信用データと前記撮像装置によって生成された撮像データとを当該送信用データが関連付けられている前記読取り時刻、および当該撮像データの生成時刻を一致させるように相互に関連付けて前記第2無線通信部から前記外部装置に送信する請求項1から3のいずれかに記載のデータ送信システム。
【請求項5】
前記データ処理装置は、前記移動体についての測定処理を実行可能な測定部を備え、
前記第1処理部は、前記測定部による測定結果を特定可能な前記送信用データを前記第1無線通信部から前記外部装置に送信させる請求項1から4のいずれかに記載のデータ送信システム。
【請求項6】
前記データ中継装置は、前記第2無線通信部から前記外部装置に送信する前記送信用データを記憶するデータ記憶部を備え、
前記第2処理部は、前記第2無線通信部から前記外部装置に送信した前記送信用データのうちの予め規定された条件を満たす当該送信用データを前記データ記憶部から消去する請求項1から5のいずれかに記載のデータ送信システム。
【請求項7】
前記データ処理装置を制御する制御データを前記データ中継装置に送信可能な遠隔制御装置を備え、
前記データ中継装置は、前記第2処理部が前記第2無線通信部によって受信された前記制御データを当該第2無線通信部から前記データ処理装置に送信可能に構成され、
前記データ処理装置は、前記第1処理部が前記第1無線通信部によって受信された前記制御データに従って当該データ処理装置の動作を制御可能に構成されている請求項1から6のいずれかに記載のデータ送信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に搭載されたCAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームに基づいて生成した移動体についての予め規定された送信用データを外部装置に送信可能に構成されたデータ処理装置を備えたデータ送信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記の特許文献には、車内LANを介して伝送されている制御データを収集可能に構成された車両データ収集装置(以下、単に「収集装置」ともいう)が開示されている。この収集装置は、対象車両における座席の下やトランク内などに搭載可能に構成されており、車内LANを介して伝送されている各種の制御データを収集すると共に、収集した制御データを外部装置(パーソナルコンピュータや分析装置など)に出力可能に構成されている。この収集装置は、ディーラー等における故障診断やメンテナンスなどのために設けられているダイアグコネクタを介して車内LANに接続可能に構成されてダイアグコネクタを介して車内LANから制御データを収集する構成が採用されている。
【0003】
また、この収集装置では、動作用の電源をダイアグコネクタから取得すると共に、ダイアグコネクタへの電源の供給状態に基づいてイグニションキースイッチの操作状態を検出し、イグニションキースイッチがON接点に操作されたときに制御データの収集を自動的に開始する構成が採用されている。さらに、この収集装置では、イグニションキースイッチがAcc接点またはOFF接点に操作されて対象車両のエンジンが停止したときに、その時点までに収集した制御データを不揮発性のデータ記憶部に記憶させた後に、制御データの収集を自動的に停止する構成が採用されている。
【0004】
これにより、この収集装置では、制御データの収集を開始/停止する操作が不要となっており、対象車両から制御データを確実に収集することが可能となっている。また、収集した制御データを外部装置に出力させて外部装置において分析することで対象車両の良否を評価することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-70133号公報(第6-11頁、第1-17図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献に開示の収集装置には、以下のような解決すべき問題点が存在する。具体的には、上記特許文献に開示の収集装置のように、車内LAN(CAN通信用のシリアルバス)を介して伝送されている制御データ(CANフレーム)の収集を行った後に、収集した制御データを外部装置に出力して分析・評価する運用形態を想定した装置(システム)では、例えば、何らかのエラーが発生して収集装置による制御データの収集が行われなかったとしても、収集装置から外部装置に制御データを出力させようとするまで、制御データが収集されていないことを特定できない。また、制御データの収集は行われたものの、収集された制御データが分析に適した制御データではないこともある。しかしながら、収集した制御データを外部装置に出力して分析するまでは、どのような制御データが収集されたかを特定することができない。
【0007】
このため、上記特許文献に開示の収集装置では、制御データの収集作業や収集した制御データの分析作業を複数回に亘って実施しなくてはならないことがあり、対象車両の状態を短時間で容易に把握するのが困難となっている現状がある。
【0008】
この場合、上記の収集装置に外部装置としてのパーソナルコンピュータや分析装置などを接続したまま対象車両を走行させ、外部装置によって制御データの内容を確認しながら制御データを取得することにより、制御データの収集が正常に行われているか否かや、収集されている制御データが分析に適したデータであるか否かをリアルタイムに判別し、所望の制御データが収集されるまで制御データの収集を継続し、所望の制御データが収集されたときに制御データの収集を終了させることが可能となる。
【0009】
しかしながら、そのような運用形態での制御データの収集時には、外部装置を参照して制御データを確認する作業者が車両の運転者とは別個に対象車両に乗車する必要がある。また、分析の内容によっては、取得されている制御データが有効であるか否かを判別する作業者を複数名乗車させなくてはならないこともある。このため、このような運用形態では、収集に際して複数名の作業者が対象車両に乗車する必要があることから、乗車定員が少数の車両における実施が困難であると共に、乗車定員が多数の車両を対象とするときでも、少数名が乗車した状態での車両の状態を分析可能な制御データの取得が困難となる。
【0010】
また、収集装置から外部装置に無線通信によって制御データを送信させることで、制御データの確認を行う作業者が対象車両に乗車しなくても、車両外に設置した外部装置に送信される制御データを確認して、分析に適した制御データが正常に収集されているか否かをリアルタイムに把握することが可能となる。しかしながら、制御データの収集時に対象車両と外部装置との間に丘陵や建物などの障害物が位置したときに、収集装置から外部装置への制御データの送信が途絶えることがある。このため、対象車両を走行させる環境によっては、車両外に設置した外部装置による制御データの内容の確認が困難となる。
【0011】
一方、上記の収集装置が接続されるダイアグコネクタは、故障診断やメンテナンスなどを目的とする外部機器、すなわち、車両の開発者(製造メーカ)が、車両の出荷後に故障診断やメンテナンスなどを目的として接続されることを想定している機器を接続するためのコネクタである。したがって、開発者が想定している診断機器等をコネクタに接続することは問題とはならないが、開発者が想定していない機器をコネクタに接続したときには、その車両において想定外のトラブルが生じる可能性がある。例えば、接続した機器の回路構成によっては、機器がノイズ源となってシリアルバス(車内LAN)にノイズが流れ込み、シリアルバスを介して伝送されるべきCANフレームの伝送が阻害されたり、シリアルバスに接続されている車両搭載機器の誤動作を招いたりするおそれがある。
【0012】
また、自動車の分野においては、一般的には、上記のダイアグコネクタが運転席や助手席の足下に設置されているため、座席の下やトランク内に設置した収集装置をダイアグコネクタに接続するには、非常に長いハーネスを用いて接続する必要がある。このため、このハーネスが運転操作の妨げとなったり、同乗者(収集作業の補助者等)の動作の妨げとなったりするおそれがある。
【0013】
加えて、近年では、シリアルバスに接続されている各種ノードの動作を阻害する目的の悪意のCANフレームを出力する機器がコネクタに接続されたり、シリアルバスを介して伝送されているCANフレームを悪意の第三者に対して移動体通信網等を介して転送する機器がコネクタに接続されたりする事態が発生している。このため、例えば車両の開発現場等においては、セキュリティの観点から、任意の外部機器を容易に接続可能な上記のコネクタをシリアルバスに配設しない構成の採用が検討されている。このような構成が採用されたときに、上記特許文献に開示の収集装置では、シリアルバス(車内LAN)から制御データを収集することできなくなる。
【0014】
本発明は、かかる解決すべき問題点に鑑みてなされたものであり、移動体において取得したCANフレームに基づく送信用データをリアルタイムかつ確実に外部装置へ送信し得るデータ送信システムを提供することを主目的とする。また、シリアルバスに接続用コネクタが存在しなくてもCANフレームを確実に読み取ることが可能なデータ送信システムを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成すべく、請求項1記載のデータ送信システムは、移動体に搭載されたCAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームを当該シリアルバスから読み取る読取部、当該読取部によって読み取られた前記CANフレームに基づいて前記移動体についての予め規定された送信用データを当該読取部による当該CANフレームの読取り時刻に関連付けて生成する第1処理部、および当該第1処理部の制御に従って前記送信用データを外部装置に送信する第1無線通信部を備えて前記移動体に搭載可能に構成されたデータ処理装置と、前記データ処理装置から送信された前記送信用データの受信および当該送信用データの予め規定された外部装置への送信が可能な第2無線通信部、並びに当該第2無線通信部による前記送信用データの受信および送信を制御する第2処理部を備えたデータ中継装置と、前記データ中継装置を搭載可能に構成された浮遊体とを備え、前記読取部は、前記CANフレームの伝送時に前記シリアルバスのフレーム伝送用導体に印加される電圧を当該フレーム伝送用導体に対して非接触で検出可能な非接触型電圧センサを有する電圧検出部と、当該電圧検出部によって検出された前記電圧の電圧レベルの変化に基づいて前記シリアルバスを介して伝送された前記CANフレームを特定するフレーム特定部とを備え、前記データ中継装置を搭載した前記浮遊体を前記移動体よりも上方に浮遊させた状態で前記データ処理装置から前記外部装置に当該データ中継装置を経由して前記送信用データを送信可能に構成されている。
【0016】
請求項2記載のデータ送信システムは、請求項1記載のデータ送信システムにおいて、前記浮遊体としての飛行装置を備えている請求項1記載のデータ送信システム。
【0017】
請求項3記載のデータ送信システムは、請求項2記載のデータ送信システムにおいて、前記飛行装置は、当該飛行装置の飛行を制御する第3処理部を備え、前記第3処理部は、前記データ処理装置が搭載された前記移動体に追従して当該飛行装置を飛行させる追従飛行制御処理を実行可能に構成されている。
【0018】
請求項4記載のデータ送信システムは、請求項1から3のいずれかに記載のデータ送信システムにおいて、前記浮遊体に搭載された撮像装置を備え、前記第2処理部は、前記データ処理装置から送信された前記送信用データと前記撮像装置によって生成された撮像データとを当該送信用データが関連付けられている前記読取り時刻、および当該撮像データの生成時刻を一致させるように相互に関連付けて前記第2無線通信部から前記外部装置に送信する。
【0019】
請求項5記載のデータ送信システムは、請求項1から4のいずれかに記載のデータ送信システムにおいて、前記データ処理装置は、前記移動体についての測定処理を実行可能な測定部を備え、前記第1処理部は、前記測定部による測定結果を特定可能な前記送信用データを前記第1無線通信部から前記外部装置に送信させる。
【0020】
請求項6記載のデータ送信システムは、請求項1から5のいずれかに記載のデータ送信システムにおいて、前記データ中継装置は、前記第2無線通信部から前記外部装置に送信する前記送信用データを記憶するデータ記憶部を備え、前記第2処理部は、前記第2無線通信部から前記外部装置に送信した前記送信用データのうちの予め規定された条件を満たす当該送信用データを前記データ記憶部から消去する。
【0021】
請求項7記載のデータ送信システムは、請求項1から6のいずれかに記載のデータ送信システムにおいて、前記データ処理装置を制御する制御データを前記データ中継装置に送信可能な遠隔制御装置を備え、前記データ中継装置は、前記第2処理部が前記第2無線通信部によって受信された前記制御データを当該第2無線通信部から前記データ処理装置に送信可能に構成され、前記データ処理装置は、前記第1処理部が前記第1無線通信部によって受信された前記制御データに従って当該データ処理装置の動作を制御可能に構成されている。
【発明の効果】
【0023】
請求項1記載のデータ送信システムでは、移動体に搭載されたCAN通信用のシリアルバスから読み取られたCANフレームに基づいて移動体についての予め規定された送信用データを読取部によるCANフレームの読取り時刻に関連付けて生成する第1処理部、および送信用データを外部装置に送信する第1無線通信部を備えて移動体に搭載可能に構成されたデータ処理装置と、送信された送信用データの受信および送信用データの予め規定された外部装置への送信が可能な第2無線通信部、並びに第2無線通信部による送信用データの受信および送信を制御する第2処理部を備えたデータ中継装置と、データ中継装置を搭載可能に構成された浮遊体とを備え、データ中継装置を搭載した浮遊体を移動体よりも上方に浮遊させた状態でデータ処理装置から外部装置にデータ中継装置を経由して送信用データを送信可能に構成されている。
また、請求項1記載のデータ送信システムでは、CANフレームの伝送時にシリアルバスのフレーム伝送用導体に印加される電圧をフレーム伝送用導体に対して非接触で検出可能な非接触型電圧センサを有する電圧検出部と、電圧検出部によって検出された電圧の電圧レベルの変化に基づいてシリアルバスを介して伝送されたCANフレームを特定するフレーム特定部とを備えて読取部が構成されている。
【0024】
したがって、請求項1記載のデータ送信システムによれば、移動体に乗車・搭乗して送信用データを参照しなくても、データ処理装置から外部装置にリアルタイムに送信される送信用データを移動体の外で参照することで、分析に適した送信用データがデータ処理装置から正常に送信されているか否かを遅延なく特定することができる。これにより、必要に応じて少数名が乗車・搭乗した状態での移動体の状態を分析可能なデータを取得することができると共に、分析に適した送信用データの取得が完了していない状態で作業を終了させてしまったり、分析に適した送信用データの取得が完了しているにも拘わらず不要な作業を継続したりする事態を回避することができ、必要な送信用データをリアルタイムかつ確実にしかも効率良く収集することができる。また、データ処理装置を搭載した移動体の上方に位置させた浮遊体にデータ中継装置を搭載して各送信用データを中継させることで、移動体と外部装置との間に丘陵や建物などの障害物が位置したときでも、データ処理装置から外部装置に各送信用データを確実に送信することができる。
また、請求項1記載のデータ送信システムによれば、シリアルバスの信号線に非接触型電圧センサを装着する簡易な作業を行うことでシリアルバスからCANフレームを読み取ることができる。これにより、シリアルバスにコネクタが配設されていなくてもCANフレームを読み取ることができ、また、シリアルバスにコネクタが配設されている場合においても、コネクタの配設場所の近傍に限定されることなく、シリアルバスの任意の場所においてCANフレームを読み取ることができる。また、データ処理装置においてノイズが生じたとしても、このノイズがシリアルバスのフレーム伝送用導体に流れ込む事態が回避されるため、シリアルバスを介してのCANフレームの伝送や、シリアルバスに接続されている各ノードの動作が阻害される事態を招くことなく、シリアルバスからCANフレームを読み取ることができる。さらに、シリアルバスの信号線におけるフレーム伝送用導体に対して非接触の状態で非接触型電圧センサを介してCANフレームを読み取ることで、信号線から非接触型電圧センサを取り外した状態においても、非接触型電圧センサを装着する以前の状態と同様の絶縁状態を維持することができる。
【0025】
請求項2記載のデータ送信システムによれば、浮遊体としての飛行装置を備えたことにより、移動体の上方における定位置、または極く狭い範囲内に浮遊しているだけの浮遊体にデータ中継装置を搭載した場合とは異なりデータ処理装置が搭載されている移動体が移動したときに、移動体に接近させるように飛行装置を飛行させることにより、データ処理装置とデータ中継装置との間で良好な通信が可能な状態を維持することができる。これにより、データ処理装置から送信すべき送信用データをデータ中継装置によって確実に中継することができる。
【0026】
請求項3記載のデータ送信システムによれば、データ処理装置が搭載された移動体に追従して飛行装置を飛行させる追従飛行制御処理を実行可能な第3処理部を有する飛行装置を備えたことにより、飛行装置の操縦が不得意な者であっても、飛行装置の飛行を開始させる指示を行うだけで、第3処理部の制御下で飛行装置が自動的に移動体の近傍に位置した状態が維持され、移動体に搭載されたデータ処理装置と飛行装置に搭載されたデータ中継装置との間で良好な通信が可能な状態を容易に維持させることができる。
【0027】
請求項4記載のデータ送信システムによれば、第2処理部が、データ処理装置から送信された送信用データと浮遊体に搭載された撮像装置によって生成された撮像データとを送信用データが関連付けられている読取り時刻、および撮像データの生成時刻を一致させるように相互に関連付けて第2無線通信部から外部装置に送信することにより、外部装置に送信される各送信用データの値だけでなく、データ処理装置が搭載された移動体が上方から撮像されて外部装置に送信される撮像データの画像(映像)を参照することで、移動体の状態を確実かつ容易に把握することができるため、分析に適した送信用データの取得が完了していない状態で作業を終了させてしまったり、分析に適した送信用データの取得が完了しているにも拘わらず不要な作業を継続したりする事態を確実に回避することができる。また、外部装置に送信された送信用データの分析時に撮像データの画像(映像)を参照することにより、データ処理装置から送信された送信用データの値だけを分析するのと比較して、移動体の状態を容易に把握することができる。
【0028】
請求項5記載のデータ送信システムによれば、第1処理部が移動体についての測定処理を実行可能な測定部による測定結果を特定可能な送信用データを第1無線通信部から外部装置に送信するようにデータ処理装置を構成したことにより、CANフレームに基づいて生成される送信用データだけでなく、移動体についての任意の物理量を記録した送信用データを送信させることで、移動体の状態を一層確実に分析することができる。
【0029】
請求項6記載のデータ送信システムによれば、データ中継装置が、第2無線通信部から外部装置に送信する送信用データを記憶するデータ記憶部を備えると共に、第2処理部が、第2無線通信部から外部装置に送信した送信用データのうちの予め規定された条件を満たす送信用データをデータ記憶部から消去することにより、データ中継装置と外部装置との間の通信が一時的に困難な状態となっても、その間に送信すべき送信用データがデータ記憶部に保持されるため、良好な通信が可能な状態となったときに、データ記憶部に保持されている送信用データを外部装置に送信することで、分析に必要な送信用データの欠落が生じる事態を好適に回避することができる。また、外部装置への送信が完了した送信用データを消去することで、データ記憶部として大容量の記憶媒体を搭載する必要がなくなるため、データ中継装置の製造コストを十分に低減できると共に、データ中継装置の大型化を回避することができる。
【0030】
請求項7記載のデータ送信システムによれば、データ処理装置を制御する制御データをデータ中継装置に送信可能な遠隔制御装置を備えると共に、第2無線通信部によって受信された制御データを第2無線通信部からデータ処理装置に送信可能に第2処理部を構成し、かつ、第1無線通信部によって受信された制御データに従ってデータ処理装置の動作を制御可能に第1処理部を構成したことにより、データ処理装置から外部装置への送信用データの送信時に外部装置に送信された送信用データをモニタリングしている作業者が、データ処理装置やデータ中継装置による各処理を任意に開始/終了させることができるため、一連の作業を少数人で容易に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】データ送信システム10の構成の一例を示す構成図である。
【
図2】データ取得装置1を搭載した電気自動車100の構成を示す構成図である。
【
図3】データ取得装置1の構成を示す構成図である。
【
図4】データ中継装置2の構成を示す構成図である。
【
図5】電圧検出部11aの構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、データ送信システムの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0035】
本発明に係る「データ送信システム」は、各種の移動体から外部装置への「送信用データ」の送信(外部装置における移動体からのデータの収集)を行う際に使用可能に構成されているが、以下、一例として、
図1に示す電気自動車100の評価を目的とするデータ送信(データ収集)における使用例について説明する。
【0036】
この場合、電気自動車100は、「移動体」の一例であって、
図2に示すように、駆動用バッテリ101、電圧制御部102、インバータユニット103、走行用モータ104、中継器105、主制御部106およびシリアルバスSBm,SBsを備えると共に、データ送信システム10における後述のデータ取得装置1が取り外し可能に搭載されている。なお、電気自動車100において「データ送信システムにおける送信用データの送信」とは直接的には関係のない構成要素については、図示および詳細な説明を省略する。
【0037】
この場合、シリアルバスSBm,SBsは、「移動体に搭載されたCAN通信用のシリアルバス」の一例であって、電圧制御部102、インバータユニット103および主制御部106や、各種搭載機器の動作状態を検出可能に配設された図示しない検出器(センサー)などの複数のノードが接続されると共に、各ノード間におけるCANフレームFcの伝送が可能に構成されている。また、本例の電気自動車100では、一例として、シリアルバスSBm,SBsが同一のCANプロトコルに従って各種のCANフレームFcを伝送可能に構成されると共に、各ノード間で使用されるCANフレームFcのうちの電気自動車100の走行に関する重要なCANフレームFcがシリアルバスSBmを介して伝送され、その他のCANフレームFcがシリアルバスSBsを介して伝送される構成が採用されている。
【0038】
なお、
図2では、電気自動車100およびデータ送信システム10の構成に関する理解を容易とするために、シリアルバスSBmに接続された電圧制御部102、インバータユニット103および主制御部106以外のノードや、シリアルバスSBsに接続されたノードの図示を省略している。また、シリアルバスSBm,SBsは、「CANH(CAN high)」、「CANL(CAN low )」および「SG」などの絶縁被覆された複数の信号線(フレーム伝送用導体)を備えて構成されているが、
図2、および後に参照する
図3では、電気自動車100やデータ送信システム10の構成に関する理解を容易とするために、各信号線を区別することなく1本の線で表している。さらに、シリアルバスSBm,SBsに接続された各種ノードによるCAN通信(CANフレームの伝送)については公知のため、詳細な説明を省略する。
【0039】
駆動用バッテリ101は、主として電気自動車100を走行させるための電力を蓄電可能な二次電池で構成されている。電圧制御部102は、DC/DCコンバータを備えて電圧値の変換が可能に構成されると共に、図示しない充電回路から供給される電力を駆動用バッテリ101に対して電力ラインL1を介して伝送して駆動用バッテリ101を充電する処理や、駆動用バッテリ101から電力ラインL1を介して供給される電力をインバータユニット103に電力ラインL2を介して伝送して走行用モータ104に供給させる処理などを主制御部106の制御下で実行可能に構成されている。
【0040】
インバータユニット103は、電圧制御部102から電力ラインL2を介して供給される電力をDC/AC変換して走行用モータ104に電力ラインL3を介して伝送する処理を主制御部106の制御下で実行可能に構成されている。走行用モータ104は、インバータユニット103から電力ラインL3を介して供給される電力によって電気自動車100の駆動輪を回転させる(電気自動車100を走行させる)。
【0041】
中継器105は、シリアルバスSBm,SBsと相俟って電気自動車100におけるCANフレームFcの伝送路(通信ネットワーク)を構成する。この中継器105は、シリアルバスSBmを介して伝送されているCANフレームFcのうちの予め設定された条件を満たすCANフレームFcをシリアルバスSBsに中継する処理と、シリアルバスSBsを介して伝送されているCANフレームFcのうちの予め設定された条件を満たすCANフレームFcをシリアルバスSBmに中継する処理とを実行する。なお、本例の電気自動車100とは異なり、シリアルバスSBm,SBsにおいて相違するCANプロトコルに従って各種のCANフレームFcを伝送させる構成のときには、この中継器105においてCANフレームFcを中継する際にプロトコル変換処理が実行される。
【0042】
主制御部106は、電気自動車100を総括的に制御する。具体的には、主制御部106は、シリアルバスSBm,SBsに接続された前述の各検出器による検出結果を特定可能に検出器から出力されるCANフレームFcや、主制御部106の制御に従って各種の処理を行う副制御部(電圧制御部102やインバータユニット103など)から出力されるCANフレームFcを取得して電気自動車100の各部の動作状態を特定する。また、主制御部106は、特定した動作状態に応じて、各副制御部を制御するための制御コマンドを特定可能なCANフレームFcをシリアルバスSBmに出力する。これにより、CANフレームFcに基づいて特定される制御コマンドに応じて、各副制御部による予め規定された処理が実行される。
【0043】
接続用コネクタ110は、電気自動車100の整備作業時に電気自動車100の各所の状態を診断するための診断機を接続可能なコネクタ(Data Link Connector :前述の特許文献におけるダイアグコネクタと同様のコネクタ)であって、本例の電気自動車100では、一例として、電気自動車100の安全性に関係する重要な機器が接続されているシリアルバスSBmに接続用コネクタ110が配設されず、シリアルバスSBsのみに接続用コネクタ110が配設されている。
【0044】
一方、
図1に示すデータ送信システム10は、「データ送信システム」の一例であって、データ取得装置1、データ中継装置2、ドローン3、データサーバ4および携帯端末5を備え、電気自動車100の評価に必要な各種の分析を行うためのデータをデータ取得装置1からデータサーバ4に移動体通信網6やインターネット7を介してリアルタイムに送信してデータサーバ4に記録させたり、データサーバ4に送信されたデータを携帯端末5に対してリアルタイムに転送させて内容を即時確認したりすることができるように構成されている。
【0045】
データ取得装置1は、「データ処理装置」の一例であって、電気自動車100などの「移動体」に搭載可能に構成されている。このデータ取得装置1は、
図3に示すように、電圧検出部11、測定部12、通信部13、操作部14、表示部15、処理部16および記憶部17を備えている。
【0046】
電圧検出部11は、「電圧検出部」に相当し、一例として、シリアルバスSBmの任意の部位に対して着脱自在なクランプ型の非接触型電圧センサ11s(「非接触型電圧センサ」の一例)を備えている。この電圧検出部11は、処理部16と相俟って「読取部」を構成し、後述するようにCANフレームFcの伝送時にシリアルバスSBmのフレーム伝送用導体に印加される電圧をフレーム伝送用導体に対して非接触で非接触型電圧センサ11sを介して検出し、検出した電圧の電圧レベルを特定可能な情報を処理部16に出力する。
【0047】
測定部12は、「測定部」に相当し、
図2に示すように、一例として、走行用モータ104の近傍に配設された温度センサ12sを備えると共に、電気自動車100の走行時(走行用モータ104の回転時)における走行用モータ104の温度を測定して温度データDtを生成し(「移動体についての測定処理」の一例)、生成した温度データDt(「測定部による測定結果を特定可能な送信用データ」の一例)を処理部16に出力する。
【0048】
通信部13は、「第1無線通信部」の一例であって、ブルートゥース(Bluetooth :登録商標)規格などの近距離無線通信規格に準ずる無線通信が可能な通信モジュールで構成され、後述するように「遠隔制御装置」から送信されるコマンドデータDc(「制御データ」の一例)の受信処理や、後述の電流値データDa、電圧値データDv、電力量データDeおよび温度データDtなどの「外部装置」への送信処理を処理部16の制御に従って実行する。操作部14は、データ取得装置1の動作条件の設定操作やデータ取得装置1による各種処理の開始/停止の指示操作などが可能な複数の操作スイッチを備え(図示せず)、スイッチ操作に応じた操作信号を処理部16に出力する。表示部15は、データ取得装置1の動作状態等を処理部16の制御下で表示する。
【0049】
処理部16は、「第1処理部」の一例であって、データ取得装置1を総括的に制御する。具体的には、処理部16は、操作部14に対するスイッチ操作や、後述するように携帯端末5などの「遠隔制御装置」から送信されてデータ中継装置2によって中継されたコマンドデータDcによって処理開始を指示されたときに、測定部12による上記の「測定処理」を開始させると共に、「送信用データ」の生成処理、および生成した「送信用データ」のデータ中継装置2への送信処理を実行する。
【0050】
この場合、本例のデータ取得装置1では、処理部16が「フレーム特定部」を構成し、電気自動車100のシリアルバスSBmにおけるCANフレームFcの伝送時に電圧検出部11によって検出される電圧の「電圧レベル」の変化、および記憶部17に記憶されているフレーム特定用データに基づき、シリアルバスSBmを介して伝送されているCANフレームFcを特定する処理(電圧検出部11による電圧の検出と相俟ってシリアルバスSBmからCANフレームFcを読み取る処理)を実行する。
【0051】
また、処理部16は、特定した(読み取った)CANフレームFcに基づき、電気自動車100についての「予め規定された送信用データ」をCANフレームFcの読取り時刻に関連付けて生成する。この場合、本例では、一例として、処理部16が、電圧制御部102から出力されるCANフレームFcに基づき、電力ラインL2を流れている電流の電流値を特定可能な電流値データDa、電力ラインL2に印加されている電圧の電圧値を特定可能な電圧値データDv、および電圧制御部102から電力ラインL2を介してインバータユニット103に供給される電力量を特定可能な電力量データDeを「送信用データ」として生成するものとする。
【0052】
さらに、処理部16は、生成した電流値データDa、電圧値データDvおよび電力量データDeと、測定部12から出力された温度データDtとを「送信用データ」として通信部13から送信させる処理を実行する。以下、電流値データDa、電圧値データDv、電力量データDeおよび温度データDtを総称して「データD1」ともいう。なお、処理部16による上記の各処理の内容については、後に詳細に説明する。記憶部17は、処理部16の動作プログラム、処理部16の演算結果、CANフレームFcを特定するための上記のフレーム特定用データ、および上記の各データD1などを記憶する。
【0053】
データ中継装置2は、「データ中継装置」の一例であって、本例では、ドローン3に搭載された状態において、データ取得装置1から送信される上記の各「送信用データ」を受信して、移動体通信網6およびインターネット7を介してデータサーバ4に送信する処理(「送信用データ」を中継する処理)を実行可能に構成されていている。このデータ中継装置2は、
図4に示すように、カメラ21、通信部22、通信部23、操作部24、表示部25、処理部26および記憶部27を備えている。
【0054】
カメラ21は、「撮像装置」の一例であって、データ中継装置2の構成要素としてドローン3に搭載された状態で処理部26の制御下で電気自動車100などを撮像して撮像データDpを生成する。なお、データ中継装置2の構成要素としてのドローン3を「撮像装置」として使用する構成に代えて、「浮遊体(飛行装置)」の構成要素としてのカメラを使用する構成や、「データ中継装置」および「浮遊体(飛行装置)」の構成要素ではないカメラを「撮像装置」として「浮遊体(飛行装置)」に搭載して使用する構成を採用することもできる。
【0055】
通信部22は、通信部23と相俟って「第2無線通信部」を構成する無線通信モジュールであって、前述のデータ取得装置1における通信部13との通信が可能に構成され、携帯端末5などから送信されるコマンドデータDcの送信処理や、前述のデータD1などの受信処理を処理部26の制御に従って実行する。この場合、データ取得装置1の通信部13がブルートゥース(Bluetooth :登録商標)規格などの近距離無線通信規格に準ずる無線通信が可能な通信モジュールで構成されている本例では、この通信部13との通信を行う通信部22も通信部13と同様の通信モジュールで構成されている。
【0056】
通信部23は、一例として、移動体通信網6の基地局6aと通信可能な移動体通信モジュールで構成され、基地局6aから送信されるコマンドデータDcの受信処理や、上記の各データD1および後述の撮像データDpなどの基地局6aに対する送信処理を処理部26の制御に従って実行する。操作部24は、データ中継装置2の動作条件の設定操作やデータ中継装置2による各種処理の開始/停止の指示操作などが可能な複数の操作スイッチを備え(図示せず)、スイッチ操作に応じた操作信号を処理部26に出力する。表示部25は、データ中継装置2の動作状態等を処理部26の制御下で表示する。
【0057】
処理部26は、「第2処理部」の一例であって、データ中継装置2を総括的に制御する。具体的には、処理部26は、操作部24に対するスイッチ操作や、通信部23によって受信されたコマンドデータDcによって処理開始を指示されたときに、カメラ21による撮像処理を開始させると共に、データ取得装置1から送信されるデータD1の受信処理や、受信されたデータD1およびカメラ21から出力される撮像データDp(以下、データD1に撮像データDpを加えたデータを総称して「データD2」ともいう)などの送信処理を実行する。なお、処理部26による上記の各処理の内容については、後に詳細に説明する。記憶部27は、「データ記憶部」の一例であって、処理部26の動作プログラムや処理部26の演算結果、および上記の各データD2などを記憶する。
【0058】
ドローン3は、「データ中継装置を搭載可能に構成された浮遊体」としての「飛行装置」の一例であって、データ中継装置2を搭載可能に構成されている。なお、本明細書では、遠隔操縦型または自律飛行型のクワッドコプターやマルチコプターなどの飛行装置を「ドローン」と称する。この場合、本例のデータ送信システム10では、このドローン3の飛行を制御する飛行制御部31(
図4参照)が「第3処理部」に相当し、この飛行制御部31によって、データ取得装置1が搭載された「移動体(本例では電気自動車100)」に追従してドローン3を飛行させる「追従飛行制御処理」が実行されることにより、データ中継装置2を搭載したドローン3が電気自動車100よりも上方に浮遊させられた状態でデータ取得装置1からデータサーバ4にデータ中継装置2を経由して「送信用データ」を送信することが可能となっている。なお、ドローン3の各部の構成については公知のため、図示および詳細な説明を省略するが、本例では、一例として、データ取得装置1の通信部13から送信される飛行制御用のコマンドデータに従って飛行制御部31がドローン3の各部を制御するものとする。
【0059】
データサーバ4は、「外部装置」の一例であって、インターネット7に常時接続されており、携帯端末5がデータ取得装置1やデータ中継装置2に対して送信したコマンドデータDcを移動体通信網6およびインターネット7を介して受信すると共に、受信したコマンドデータDcをインターネット7および移動体通信網6を介してデータ中継装置2に送信する処理(携帯端末5からのコマンドデータDcをデータ中継装置2に中継する処理)を実行可能に構成されている。
【0060】
また、データサーバ4は、データ取得装置1から送信されてデータ中継装置2によって中継されたデータD1やデータ中継装置2から送信された撮像データDpなど(すなわち、データ中継装置2から送信されたデータD2)を移動体通信網6およびインターネット7を介して受信して記録する処理を実行可能に構成されている。さらに、データサーバ4は、受信したデータD2などをインターネット7および移動体通信網6を介して携帯端末5に送信する処理を実行可能に構成されている。
【0061】
携帯端末5は、「遠隔制御装置」に相当すると共に、上記のデータサーバ4と相俟って「外部装置」を構成する端末であって、一例として、データ送信システム10用のプログラムがインストールされたタブレット型やノート型の小型情報処理端末で構成されている。この携帯端末5は、上記のプログラムの実行により、データ取得装置1やデータ中継装置2による各処理の開始/停止の指示や、データ送信システム10(データ取得装置1、データ中継装置2およびデータサーバ4など)の動作状態の確認などを行うことが可能となっている。
【0062】
この場合、本例のデータ送信システム10では、一例として、移動体通信網6を介してインターネット7に接続可能な端末で携帯端末5が構成されている。これにより、本例のデータ送信システム10では、電気自動車100から分析用のデータ(上記の各「送信用データ」)を収集する作業現場(例えば、走行試験用コース)に携帯端末5を携行してデータ取得装置1から送信される「送信用データ」の内容を確認したり、作業現場から遠く離れた場所において「送信用データ」の内容を確認したりすることが可能となっている。
【0063】
次に、データ送信システム10の使用方法の一例について説明する。
【0064】
最初に、電気自動車100へのデータ取得装置1の搭載作業(シリアルバスSBmへの非接触型電圧センサ11sの装着、および走行用モータ104への温度センサ12sの装着や、本体部の設置など)、およびドローン3へのデータ中継装置2の搭載作業を実施する。
【0065】
この場合、前述したように、本例のデータ送信システム10では、電気自動車100に搭載されたデータ取得装置1が、電気自動車100の動作に伴って伝送されるCANフレームFcを読み取って電流値データDa、電圧値データDvおよび電力量データDeを生成する構成が採用されている。一方、評価対象の電気自動車100には、中継器105によってCANフレームFcが相互に中継されるシリアルバスSBm,SBsの2つが配設されている。このような評価対象(移動体)からのCANフレームFcの読み取りに際しては、両シリアルバスSBm,SBsのうちの「読み取るべきCANフレームFcを出力するノード(CANフレーム出力機器)が接続されたシリアルバス」であるシリアルバスSBmに非接触型電圧センサ11sを装着してCANフレームFcを読み取るのが好ましい。
【0066】
具体的には、データ取得装置1において電流値データDa、電圧値データDvおよび電力量データDeを「送信用データ」として生成してデータサーバ4に送信する本例では、電力ラインL2を流れる電流値を示すCANフレームFc(電流値データフレーム)、および電力ラインL2に印加される電圧値を示すCANフレームFc(電圧値データフレーム)を読み取る必要がある。これらのCANフレームFcは、電圧制御部102から出力されるものであり、この電圧制御部102は、シリアルバスSBmに接続されている。
【0067】
この場合、電圧制御部102から出力されてシリアルバスSBmを介して伝送されるCANフレームFcのうちの一部は、中継器105によってシリアルバスSBsに中継されてシリアルバスSBsを介して伝送される。しかしながら、電圧制御部102から出力されるCANフレームFcのように出力頻度が高いCANフレームFcや、劣化や改竄が生じたときに電気自動車100の安全性が損なわれるおそれのあるCANフレームFcについては、シリアルバスSBmにおいて予め規定された数のCANフレームFcが伝送される度に1つのCANフレームFcが抽出されてシリアルバスSBsに中継される構成、または、規定された条件が満たされたときだけシリアルバスSBmからシリアルバスSBsに中継される構成が採用されている。このため、シリアルバスSBsから読み取ることができるCANフレームFcだけでは、電力ラインL2を流れる電流値や電力ラインL2に印加される電圧値の変化を詳細に把握することができず、また、正確な電力量を演算するのも困難となっている。
【0068】
また、シリアルバスSBmからシリアルバスSBsに中継されていないCANフレームFcをシリアルバスSBmからシリアルバスSBsに中継させるように中継器105に対して制御コマンドを送信して、必要なCANフレームFcのすべてを中継させることにより、シリアルバスSBsから読み取ったCANフレームFcに基づいて電力ラインL2を流れる電流値や電力ラインL2に印加される電圧値の変化を詳細に把握し、かつ正確な電力量を演算することできる可能性がある。しかしながら、中継器105によるCANフレームFcの中継に要する時間に起因して、必要なCANフレームFcの取得に遅延が生じたり、シリアルバスSBmからシリアルバスSBsに中継されるCANフレームFcの増加に伴って、シリアルバスSBsを介して伝送されるべき他のCANフレームFcの伝送が妨げられたりするおそれがある。
【0069】
さらに、同一のCANプロトコルに従って各種のCANフレームFcを伝送可能なシリアルバスSBm,SBsが中継器105によって相互に接続された電気自動車100とは異なり、互いに相違するCANプロトコルに従って各種のCANフレームを各々伝送可能な複数のシリアルバス(すなわち、いずれかのシリアルバスから他のシリアルバスにCANフレームを中継する際に、「中継器(ゲートウェイ)」においてプロトコル変換を行う必要があるシリアルバス)が「移動体」に配設されていることもある。そのような「移動体」において、読み取るべきCANフレームを出力するノード(CANフレーム出力機器)が接続されているシリアルバス以外のシリアルバスから「送信用データ」の演算に必要なCANフレームを読み取る構成を採用したときには、「中継器」におけるプロトコル変換処理に長い時間を要するため、必要なCANフレームを迅速に読み取るのが困難となるおそれがある。また、「中継器(ゲートウェイ)」の処理能力が低いときには、必要なCANフレームのすべてを中継(プロトコル変換)すること自体が困難となる。
【0070】
また、本例の電気自動車100のようにシリアルバスSBsに接続用コネクタ110が配設されているときには、データ取得装置1における非接触型電圧センサ11sに代えて接続用コネクタ110に接続可能な接続用コネクタ(図示せず)を電圧検出部11に接続して、シリアルバスSBsのフレーム伝送用導体に対して直接接触(直接接続)した信号線を介してCANフレームFcを読み取ることもできる。しかしながら、電圧制御部102から出力されたCANフレームFcのすべてをシリアルバスSBmからシリアルバスSBsに中継させることができないときには、接続用コネクタ110から読み取ったCANフレームFcだけでは電力ラインL2を流れる電流値や電力ラインL2に印加される電圧値の変化を詳細に把握することができず、また、正確な電力量を演算するのが困難となる。
【0071】
このため、フレーム伝送用導体に対して直接接触(直接接続)した信号線を介してCANフレームFcを読み取るには、必要なCANフレームFcをシリアルバスSBmから読み取る必要が生じるが、その場合には、シリアルバスSBmの各信号線におけるフレーム伝送用導体を覆っている絶縁被覆を剥がすなどして、フレーム伝送用導体からCANフレームに対応する電圧信号を読み取り可能とする必要が生じる。この結果、フレーム伝送用導体の絶縁性が低下し、シリアルバスSBmにノイズが混入してCANフレームFcの伝送が阻害されるおそれが生じる。したがって、読み取るべきCANフレームFcを出力する電圧制御部102が接続されているシリアルバスSBmに非接触型電圧センサ11sを装着して、シリアルバスSBmのフレーム伝送用導体に対して非接触で(フレーム伝送用導体の絶縁性を低下させずに)シリアルバスSBmからCANフレームFcを読み取るのが好ましい。
【0072】
この場合、非接触型電圧センサ11sの装着時には、シリアルバスSBmの信号線におけるフレーム伝送用導体と非接触型電圧センサ11sの電極とが信号線の絶縁被覆を介して近接した状態となり、フレーム伝送用導体と非接触型電圧センサ11sの電極とが容量結合した状態となる。なお、
図2,3では、シリアルバスSBmに対して1つの非接触型電圧センサ11sを装着した状態を図示しているが、実際には、シリアルバスSBmにおける「CANH」および「CANL」毎の電圧値を検出するために両信号線毎に別個の非接触型電圧センサ11sを装着する。以下、データ送信システム10(データ取得装置1)の動作原理についての理解を容易とするために、「CANH」および「CANL」を区別することなく説明する。
【0073】
この際に、本例のようにシリアルバスSBmに非接触型電圧センサ11sを装着してCANフレームFcを読み取ることにより、シリアルバスSBmに接続用コネクタ110が配設されていなくても、シリアルバスSBmの信号線自体を加工する(絶縁被覆を剥がす)ことなく、シリアルバスSBmからCANフレームFcを読み取ることができる。また、シリアルバスSBmに対するデータ取得装置1の接続場所(非接触型電圧センサ11sによってクランプする場所)が限定されず、電気自動車100の各所に引き回されているシリアルバスSBmの任意の場所に非接触型電圧センサ11sを装着してCANフレームFcを読み取ることが可能となっている。
【0074】
なお、後述するようにデータサーバ4を介して各種の作業を実施すると共に、データの送受信に際して移動体通信網6を利用する本例では、データサーバ4を使用する権限を有する者のユーザ登録(認証用のIDおよびパスワードの発行)や、移動体通信網6への接続を許容するデータ中継装置2(データ中継装置2に装着される図示しないSIMカード等)の登録を行うが、データ送信システム10の構成に関する理解を容易とするために、これらの登録作業や、登録結果に基づく認証処理に関する説明を省略する。
【0075】
また、ドローン3の飛行制御部31による前述の追従飛行制御処理(データ取得装置1が搭載されている電気自動車100に追従して飛行させる処理)についても公知のため、事前の設定作業や、飛行時の制御に関する詳細な説明を省略する。さらに、電気自動車100からのデータの取得の作業については、公道上で実施することもできるが、データ送信システム10の構成に関する理解を容易とするために、以下、走行試験用のテストコースにおいて電気自動車100を走行させつつ、評価用のデータを取得する例について説明する。
【0076】
最初に、データ取得装置1を搭載した電気自動車100、およびデータ中継装置2を搭載したドローン3と共に、携帯端末5をテストコースに携行して、データ取得装置1およびデータ中継装置2等の動作確認を実施する。具体的には、電気自動車100のメインスイッチをオン状態に操作して走行が可能な状態に移行させると共に、データ取得装置1、データ中継装置2およびドローン3を起動させた状態で、携帯端末5から処理開始を指示するコマンドデータDcを送信する。この際には、携帯端末5が送信したコマンドデータDcが基地局6aによって受信されて移動体通信網6およびインターネット7を介してデータサーバ4に送信され、データサーバ4からインターネット7および移動体通信網6を介して基地局6aからデータ中継装置2にコマンドデータDcが送信される(携帯端末5から送信されたコマンドデータDcがデータサーバ4によって中継される)。
【0077】
また、データ中継装置2では、携帯端末5から送信された(データサーバ4によって中継された)上記のコマンドデータDcが通信部23によって受信されたときに、処理部26が、まず、通信部22からデータ取得装置1にコマンドデータDcを送信させる(携帯端末5からのコマンドデータDcを中継する)。次いで、処理部26は、データ取得装置1から送信されるデータD1をデータサーバ4に送信する処理(データD1を中継する処理)を開始する。なお、データ取得装置1に対して上記のコマンドデータDcを送信した直後のこの時点では、データ取得装置1からのデータD1の送信が開始されていないため、処理部26は、データ取得装置1からデータD1が送信されたか否かの監視を開始する。
【0078】
また、処理部26は、カメラ21を制御して撮像処理を開始させると共に、カメラ21によって生成される撮像データDpを通信部23からデータサーバ4に送信させる。この際に、データサーバ4は、データ中継装置2から移動体通信網6およびインターネット7を介して送信された撮像データDpを受信して記録すると共に、インターネット7および移動体通信網6を介して携帯端末5に送信する。これにより、データ中継装置2のカメラ21によって生成された撮像データDpの画像(映像)を携帯端末5の表示部に表示させることで、カメラ21による撮像処理、データ中継装置2からデータサーバ4へのデータの送信処理、およびデータサーバ4から携帯端末5へのデータの送信処理が正常に実行されていることが確認される。
【0079】
また、データ取得装置1では、携帯端末5から送信された(データサーバ4およびデータ中継装置2によって中継された)上記のコマンドデータDcが通信部13によって受信されたときに、処理部16が、まず、測定部12を制御して測定処理を開始させる。この際に、測定部12は、温度センサ12sからのセンサ信号に基づき、温度センサ12sが配設されている走行用モータ104の温度を測定し、その測定値を測定時刻に関連付けて記録して温度データDtを生成して処理部16に出力する。また、処理部16は、測定部12から出力された温度データDtを記憶部17に記憶させる。なお、この温度データDtについては、データ中継装置2を介してデータサーバ4(携帯端末5)に送信されるが、この送信処理については後に説明する。
【0080】
また、処理部16は、電圧検出部11による検出結果に基づくシリアルバスSBmからのCANフレームFcの読み取り、および読み取ったCANフレームFcに基づく「送信用データ」の生成処理を開始する。この場合、この電気自動車100では、インバータユニット103が、電圧制御部102から電力ラインL2を介して供給される電力をDC/AC変換して走行用モータ104に伝送することで走行用モータ104を回転させ、これにより、電気自動車100の駆動輪が回転させられる構成が採用されている。したがって、電力ラインL2に印加される電圧の電圧値、および電力ラインL2を流れる電流の電流値に基づき、電気自動車100の走行によって消費される電力(以下、「走行時消費電力」ともいう)の「電力値」を特定することができる。
【0081】
また、電気自動車100のメインスイッチがオン操作されている状態では、データ取得装置1が接続されたシリアルバスSBmを介して各種のCANフレームFcが伝送されている。さらに、運転者によってアクセルペダルが操作されたときには、電圧制御部102が、電力ラインL1を介して駆動用バッテリ101から供給される電力を電圧変換してインバータユニット103に電力ラインL2を介して供給すると共に、電力ラインL2を流れる電流の電流値を特定可能なCANフレームFc(電流値データフレーム)および電力ラインL2に印加される電圧の電圧値を特定可能なCANフレームFc(電圧値データフレーム)を所定の周期でシリアルバスSBmに出力する。したがって、処理部16は、シリアルバスSBmを介して電圧制御部102から主制御部106に伝送されるこれらのCANフレームFcを読み取る。
【0082】
この場合、シリアルバスSBm,SBsを介して伝送されているCANフレームFcは、「CANH」に対応する信号線のフレーム伝送用導体に印加される電圧(「SG」に対応する信号線のフレーム伝送用導体の電位に対する「CANH」に対応する信号線のフレーム伝送用導体の電位)の変動、および「CANL」に対応する信号線のフレーム伝送用導体に印加される電圧(「SG」に対応する信号線のフレーム伝送用導体の電位に対する「CANL」に対応する信号線のフレーム伝送用導体の電位)の変動に基づく「2線差動電圧方式」で伝送される。このCANフレームFcの伝送方式については公知のため詳細な説明を省略するが、以下、理解を容易とするために、主として「CANH」に対応する信号線のフレーム伝送用導体の電圧に着目してCANフレームFc(電圧値データフレームおよび電流値データフレーム)の読取りについて説明する。
【0083】
シリアルバスSBm,SBsを介してのCANフレームFcの伝送時に、「CANH」に対応する信号線のフレーム伝送用導体の電圧と、「SG」に対応する信号線のフレーム伝送用導体の電圧(すなわち、電圧検出部11内の基準電位の電圧)との電位差が増加しているときには、フレーム伝送用導体から非接触型電圧センサ11sの電極に容量結合を介して流れ込む電流信号の電流量が増加する。また、CANフレームFcの伝送時に、「CANH」に対応するフレーム伝送用導体の電圧と、「SG」に対応するフレーム伝送用導体の電圧(電圧検出部11内の基準電位の電圧)との電位差が減少しているときには、フレーム伝送用導体から非接触型電圧センサ11sの電極に容量結合を介して流れ込む電流信号の電流量が減少する。
【0084】
したがって、本例のデータ送信システム10におけるデータ取得装置1では、一例として、電圧検出部11が、非接触型電圧センサ11sの電極が「CANH」のフレーム伝送用導体と同電位となって上記の電流値が「0」となるように、電極の電位をフィードバック制御する処理を行い、その状態において電極の電位を測定することで、「CANH」のフレーム伝送用導体に印加されている電圧の「電圧レベル」を特定(測定)する処理を予め規定された周期で繰り返し実行する。また、電圧検出部11は、特定結果(電圧レベル)示す電圧データを処理部16に順次出力する。
【0085】
これに応じて、処理部16は、電圧検出部11から出力される電圧データによって示される電圧値に基づき、シリアルバスSBmを介して伝送されているCANフレームFcの内容を特定して記憶部17に記憶させる。具体的には、「CANH」に対応するフレーム伝送用導体に容量結合している電極の電圧が予め規定された電圧レベルを超え、かつ「CANL」に対応するフレーム伝送用導体に容量結合している電極の電圧が予め規定された電圧レベルを下回っているとき(「CANH」と「CANL」との電位差が予め規定されたレベルを超えているとき)に、デジタル信号の「0」が伝送されていると判別する。また、「CANH」に対応するフレーム伝送用導体に容量結合している電極の電圧が予め規定された電圧レベル以下で、かつ「CANL」に対応するフレーム伝送用導体に容量結合している電極の電圧が予め規定された電圧レベル以上のとき(「CANH」と「CANL」との電位差が予め規定されたレベル以下のとき)に、デジタル信号の「1」が伝送されていると判別する。
【0086】
このように、非接触型電圧センサ11sにおける電極の電圧に基づいてデジタル信号の「0」および「1」のいずれが伝送されているかを逐次判定することにより、非接触型電圧センサ11sが装着されているシリアルバスSBmを介して伝送されているCANフレームFc(電流値データフレームや電圧値データフレームなど)が特定される。
【0087】
また、処理部16は、「電流値データフレーム」のCANフレームFcに基づいて電力ラインL2の供給用導体を流れている電流の電流値を特定して電流値データDaを生成すると共に、「電圧値データフレーム」のCANフレームFcに基づいて電力ラインL2の供給用導体に印加されている電圧の電圧値を特定して電圧値データDvを生成し、生成した電流値データDaおよび電圧値データDvを記憶部17に記憶させる。さらに、処理部16は、特定した電流値および電圧値に基づいて電力ラインL2を介して供給されている電力の電力量を演算し、演算結果を示す電力量データDeを生成して記憶部17に記憶させる。
【0088】
この場合、処理部16は、電流値データDa、電圧値データDvおよび電力量データDeについては、対応するCANフレームFcのシリアルバスSBmからの読取り時刻(すなわち、電圧制御部102がシリアルバスSBmにCANフレームFcを出力した時刻であり、電力ラインL2を流れる電流の電流値や電力ラインL2に印加される電圧の電圧値が読み取られたCANフレームFcの値となった時点の時刻)に関連付けた状態で生成する。
【0089】
また、処理部16は、記憶部17に記憶されている電流値データDa、電圧値データDvおよび電力量データDeと、これらに関連付けられている時刻(対応するCANフレームFcの読取り時刻)に生成された温度データDtとを相互に関連付けた状態で通信部13から「送信用データ」として送信させる。この際に、データ中継装置2では、処理部26が、データ取得装置1から送信されたデータD1が通信部22によって受信されたときに、データ取得装置1から「送信用データ」が送信されたと判別し、それらのデータD1を記憶部27に記憶させる。
【0090】
また、処理部26は、記憶させた各データD1と、データ取得装置1においてそれらのデータD1に関連付けられた時刻と同時刻に生成されて(撮像されて)記憶部27に記憶さた撮像データDpとを相互に関連付けた状態で通信部23から送信させる。さらに、処理部26は、記憶部27に記憶されているデータD2(各電流値データDa、電圧値データDv、電力量データDe、温度データDtおよび撮像データDp)のうちの最新の所定時間分のデータを保持させつつ、通信部23からの送信が完了したデータD2のうちの最先のデータ(「予め規定された条件を満たす送信用データ」の一例)から順に記憶部27から消去する。
【0091】
また、データサーバ4では、移動体通信網6およびインターネット7を介してデータ中継装置2から送信された上記の各データD2を受信して記録すると共に、インターネット7および移動体通信網6を介して携帯端末5に送信する。これにより、携帯端末5において、電流値データDaに基づいて特定される電流値、電圧値データDvに基づいて特定される電圧値、電力量データDeに基づいて特定される電力量、および温度データDtに基づいて特定される温度を撮像データDpの画像(映像)と共に表示させることが可能となる。また、携帯端末5において上記の各情報を正常に表示させることができたときには、カメラ21による撮像処理、データ中継装置2からデータサーバ4へのデータの送信処理、およびデータサーバ4から携帯端末5へのデータの送信処理だけでなく、データ取得装置1による「送信用データ」の生成、およびデータ取得装置1からデータ中継装置2へのデータの送信についても正常に実行されていると確認することができる。
【0092】
この後、携帯端末5から処理の停止を指示するコマンドデータDcを送信するか、データ取得装置1の操作部14および/またはデータ中継装置2の操作部24の操作によって処理の停止を指示するまで、データ取得装置1による各データD1の生成および送信の処理、データ中継装置2による撮像データDpの生成および各データD2の送信の処理、データサーバ4による各データD2の記録および携帯端末5への送信の処理、並びに携帯端末5による各データD2に基づく情報の表示の処理が繰り返し継続的に実行される。以上により、データ送信システム10を使用して電気自動車100から評価用のデータを取得する準備作業が完了する。
【0093】
なお、ドローン3が正常に飛行可能であるか否かの確認作業については、データ中継装置2の搭載に先立って完了しているものとする。また、上記の各データD2に基づく情報のうちのいずれか、またはすべてが携帯端末5に表示されないときには、データ取得装置1(通信部13)とデータ中継装置2(通信部22)との間の通信、データ中継装置2(通信部23)とデータサーバ4との間の通信、およびデータサーバ4と携帯端末5との間の通信の処理や、データ取得装置1(処理部16および測定部12)による各データD1の生成、およびデータ中継装置2(処理部26およびカメラ21)による撮像データDpの生成の処理のいずれかが正常に実行されていないため、データ取得装置1、データ中継装置2およびデータサーバ4の動作状態を確認して異常箇所を復旧させる。これにより、本例のデータ送信システム10では、データ取得装置1において電気自動車100から取得した(電気自動車100について生成した)データがデータサーバ4に正常に送信されない状態で電気自動車100のテスト走行が開始される事態を好適に回避することが可能となっている。
【0094】
一方、電気自動車100を走行させて評価用データを取得する際には、ドローン3を起動させて電気自動車100に追従して飛行する追従飛行モードでの飛行を開始させる。具体的には、一例として、携帯端末5を操作してドローン3の飛行を開始させるコマンドデータDcを送信させる。この際には、携帯端末5からのコマンドデータDcが、移動体通信網6およびインターネット7を介してデータサーバ4に送信され、データサーバ4からインターネット7および移動体通信網6を介してデータ中継装置2に送信され、データ中継装置2からデータ取得装置1に転送される。また、このコマンドデータDcを受信したデータ取得装置1では、処理部16が通信部13からドローン3に飛行開始を指示するコマンドデータを送信する。
【0095】
この際に、ドローン3の飛行制御部31は、予め設定された条件に従ってドローン3を飛行させて電気自動車100の上方に位置させる。これにより、ドローン3に搭載されているデータ中継装置2の通信部22が、電気自動車100に搭載されているデータ取得装置1の通信部13の上方に位置した状態となり、データ取得装置1およびデータ中継装置2の間に通信の妨げになる丘陵や建物が存在しない状態となって、通信部13,22間の好適な通信が可能な状態となる。また、データ中継装置2の通信部23が電気自動車100の上方(走行路の上空)に位置した状態となり、これにより、移動体通信網6の基地局6aと通信部23との間についても好適な通信が可能な状態となる。
【0096】
また、ドローン3の飛行開始により、飛行条件に合わせて撮像方向等が事前に調整されているカメラ21によって電気自動車100およびその周囲の路面等が撮像されてデータ中継装置2から他のデータと共に撮像データDpが送信され、撮像データDpに基づく画像(映像)が携帯端末5に表示される。したがって、電気自動車100の上空を飛行させられているドローン3を目視によって確認するのが困難であったとしても、携帯端末5に表示された映像を参照することで、ドローン3に搭載されているデータ中継装置2が電気自動車100の上空に配置されたことを確実かつ容易に確認することができる。
【0097】
次いで、携帯端末5に表示される各情報に基づいてデータ送信システム10の各構成要素1~5のすべてが正常に動作していることを確認した作業者が、電気自動車100の運転者に対してテストコースでの走行を指示する。なお、携帯端末5に表示される情報の確認については、1名、または複数名で行うことができる。また、確認作業を行う者から運転者に対する指示については、例えば、各種の無線通話器を介して伝達することができるが、伝達手段については任意に選択することができるため、詳細な説明を省略する。
【0098】
この場合、電気自動車100の走行が開始されたときには、ドローン3の飛行制御部31が、電気自動車100との位置関係が設定された条件を満たすように電気自動車100に追従してドローン3を飛行させる。これにより、データ取得装置1およびデータ中継装置2間の通信状態や、データ中継装置2および基地局6a間の通信状態が良好な状態が維持されてデータ取得装置1からデータ中継装置2に各データD1が途切れることなく送信される。この結果、データ中継装置2からデータサーバ4に各データD2が途切れることなく送信される。
【0099】
また、データサーバ4から携帯端末5に各データD2が遅延なく送信されるため、電気自動車100に乗車していなくても、携帯端末5に表示される各情報をモニタリングすることで、データ送信システム10の各構成要素の動作状態や、電気自動車100の走行状態を確実かつ容易に遅延なく把握することができる。これにより、携帯端末5に表示される各データD2の値や画像(映像)等をモニタリングしている作業者が、電気自動車100の評価に適した各データD1が取得された(送信された)と判別したときには、不要な作業を継続することなく、電気自動車100の走行(電気自動車100からの各種データの取得)を直ちに終了させることができる。また、携帯端末5をモニタリングしている作業者が、取得されている(送信されている)各データD1が電気自動車100の評価に適したものではないと判別したときには、必要なデータが取得される(送信される)まで作業を継続させることができる。
【0100】
さらに、データ取得装置1における電気自動車100(シリアルバスSBm)からのCANフレームFcの読取り、読み取ったCANフレームFcに基づく各電流値データDa、電圧値データDvおよび電力量データDeの生成、測定部12による温度の測定(温度データDtの生成)、および各データD1の送信の各処理と、データ中継装置2における各データD1の受信、カメラ21による撮像(撮像データDpの生成)、および各データD2の送信の各処理と、データサーバ4による各データD2の受信および送信の各処理と、携帯端末5による各データD2の受信の処理とのいずれかが正常に実行されていないときには、携帯端末5に表示される情報をモニタリングすることで、そのような異常状態となったことを直ちに認識することができる。
【0101】
この場合、本例のデータ送信システム10では、ドローン3に搭載されているカメラ21(データ中継装置2)によってデータ取得装置1が搭載されている電気自動車100が継続的に撮像されて、その撮像データDpがデータ中継装置2から逐次送信される構成が採用されている。これにより、本例のデータ送信システム10では、携帯端末5においてモニタリングしている各データD1の値に想定外の変化が生じたときなどに、携帯端末5において撮像データDpに基づく画像(映像)を参照することにより、実際に電気自動車100において発生している事象に起因する変化が生じたのか、実際にはそのような変化が確認されるような事象が生じていない(上記のような異常状態に起因して実状とは異なる変化が確認された)のかを短時間で容易に原因を特定することができる。
【0102】
例えば、電力量データDeに基づいて特定される電力量が急激に減少したときに、実際に電気自動車100が停車した(走行用モータ104が停止した)のか、電気自動車100が継続して走行している(走行用モータ104が動作している)にも拘わらず送信されたデータに基づく値が減少したのかを撮像データDpに基づいて特定することができる。前者の場合には、一連の作業を継続し、後者の場合には、誤った電力量データDeが送信された原因を特定して一連の作業を再開することができる。これにより、本例の電気自動車100では、正確なデータを取得できない異常状態において一連の作業が継続して実行される事態が回避される。
【0103】
また、本例のデータ送信システム10におけるデータ中継装置2では、処理部26が、データサーバ4に対する各データD2の送信ができない状態になったと判別したときに、それらのデータを記憶部27に保持させる構成が採用されている。これにより、例えば、データ取得装置1に追従しているドローン3が移動体通信網6の基地局6aから離れ過ぎるなどしてデータ中継装置2の通信部23と移動体通信網6の基地局6aとの間の通信が困難な状態となったときに、データサーバ4に送信すべき各データD2が記憶部27に保持され、通信部23と基地局6aとの間の通信が良好な状態に復帰したときに、それらの各データD2をデータ中継装置2からデータサーバ4に順次送信させることができる。
【0104】
この場合、本例のデータ送信システム10では、データ中継装置2からデータサーバ4に送信すべき各データD2がデータ中継装置2の記憶部27に記憶された後に送信される構成が採用されている。したがって、ある程度の時間に亘ってデータ中継装置2と基地局6aとの間の通信が困難な状態となっても、データサーバ4に送信されるべき各データD2が記憶部27に保持されるため、通信が可能となった時点でこれらをデータ中継装置2から送信させることで、電気自動車100の評価に必要なデータD2のすべてをデータサーバ4に記録させることが可能となっている。
【0105】
一方、一例として、携帯端末5に表示される各種情報をモニタリングしている作業者が、電気自動車100の評価に適したデータD2のデータサーバ4への記録が完了したと判別したときには、まず、電気自動車100の運転者にその旨を伝えて走行を終了させる。次いで、携帯端末5を操作してドローン3の飛行を停止させるコマンドデータDcを送信させる。この際には、飛行開始を指示させるコマンドデータDcの送信時と同様にデータ取得装置1からドローン3のコントロラーにコマンドデータが送信され、これにより、ドローン3が予め規定された手順に従って飛行を停止する(着地する)。
【0106】
次いで、携帯端末5を操作してデータ取得装置1およびデータ中継装置2による上記の一連の処理を終了させるコマンドデータDcを送信する。これにより、データ取得装置1における電気自動車100(シリアルバスSBm)からのCANフレームFcの読取り、読み取ったCANフレームFcに基づく各データ電流値データDa、電圧値データDvおよび電力量データDeの生成、測定部12による温度の測定(温度データDtの生成)、および各データD1の送信の各処理や、データ中継装置2における各データD1の受信、カメラ21による撮像(撮像データDpの生成)、および各データD2の送信の各処理が停止させられる。
【0107】
この後、一例として、インターネット7を介してデータサーバ4に接続可能なパーソナルコンピュータ等を用いて、任意の場所において任意のタイミングでデータサーバ4から各データD2をダウンロードして分析することにより、電気自動車100の走行時における電圧制御部102からインバータユニット103への電力ラインL2を介しての電力供給の状態が評価される。なお、このデータ送信システム10では、データ取得装置1から送信されたデータD1(電流値データDa、電圧値データDv、電力量データDeおよび温度データDt)に加えて、それらのデータD1の生成時に撮像された撮像データDpがデータ中継装置2から送信されてデータD1と共にデータサーバ4に記録されているため、データD1の分析と併せて撮像データDpを参照することで、電気自動車100の走行状態と電力ラインL2を介しての電力供給の状態とを対比しつつ評価することができる。
【0108】
また、上記のような一連の作業を完了し、データ送信システム10による上記の各種処理(評価用のデータの収集)を継続する必要がなくなったときには、電気自動車100から、データ取得装置1を取り外す。この際に、本例のデータ送信システム10では、前述のように、データ取得装置1における電圧検出部11の非接触型電圧センサ11sをシリアルバスSBmのフレーム伝送用導体に対して非接触の状態(信号線を非接触型電圧センサ11sによってクランプした状態)でCANフレームFcの伝送に伴う「電圧レベル」の変化を特定する構成を採用している。したがって、シリアルバスSBmから非接触型電圧センサ11sを取り外した状態において、非接触型電圧センサ11sの装着前の状態からシリアルバスSBmにおける信号線の絶縁性が低下する事態が回避される。したがって、本例のデータ送信システム10では、シリアルバスSBmにおけるフレーム伝送用導体の絶縁被覆を修復する作業が不要となっており、電気自動車100からデータ取得装置1を短時間で容易に取り外すことができる。
【0109】
このように、このデータ送信システム10では、電気自動車100に搭載されたCAN通信用のシリアルバスSBmから読み取られたCANフレームFcに基づいて電気自動車100についての予め規定された「送信用データ(本例では、電流値データDa、電圧値データDvおよび電力量データDe)」を「読取部(本例では、電圧検出部11および処理部16)」によるCANフレームFcの読取り時刻に関連付けて生成する処理部16、および「送信用データ」を外部装置(データ中継装置2)に送信する通信部13を備えて電気自動車100に搭載可能に構成されたデータ取得装置1と、送信された「送信用データ」の受信が可能な通信部22および「送信用データ」のデータサーバ4への送信が可能な通信部23、並びに通信部22,23による「送信用データ」の受信および送信を制御する処理部26を備えたデータ中継装置2と、データ中継装置2を搭載可能に構成されたドローン3とを備え、データ中継装置2を搭載したドローン3を電気自動車100よりも上方に浮遊させた状態(飛行させた状態)でデータ取得装置1からデータサーバ4にデータ中継装置2を経由して「送信用データ」を送信可能に構成されている。
【0110】
したがって、このデータ送信システム10によれば、電気自動車100に乗車して「送信用データ」を参照しなくても、データ取得装置1からデータサーバ4にリアルタイムに送信される「送信用データ」を電気自動車100の外で参照することで、分析に適した「送信用データ」がデータ取得装置1から正常に送信されているか否かを遅延なく特定することができる。これにより、必要に応じて少数名が乗車した状態での電気自動車100の状態を分析可能なデータを取得することができると共に、分析に適した「送信用データ」の取得が完了していない状態で作業を終了させてしまったり、分析に適した「送信用データ」の取得が完了しているにも拘わらず不要な作業を継続したりする事態を回避することができ、必要な「送信用データ」をリアルタイムかつ確実にしかも効率良く収集することができる。また、データ取得装置1を搭載した電気自動車100の上方に位置させたドローン3にデータ中継装置2を搭載して各「送信用データ」を中継させることで、電気自動車100とデータサーバ4(インターネット7および移動体通信網6を介してデータサーバ4に接続されている基地局6a)との間に丘陵や建物などの障害物が位置したときでも、データ取得装置1からデータサーバ4に各「送信用データ」を確実に送信することができる。
【0111】
また、このデータ送信システム10によれば、「浮遊体」としてのドローン3(飛行装置)を備えたことにより、電気自動車100の上方における定位置、または極く狭い範囲内に浮遊しているだけの「浮遊体」にデータ中継装置2を搭載した場合とは異なりデータ取得装置1が搭載されている電気自動車100が移動したときに、電気自動車100に接近させるようにドローン3を飛行させることにより、データ取得装置1とデータ中継装置2との間で良好な通信が可能な状態を維持することができる。これにより、データ取得装置1から送信すべき「送信用データ」をデータ中継装置2によって確実に中継することができる。
【0112】
さらに、このデータ送信システム10によれば、データ取得装置1が搭載された電気自動車100に追従してドローン3を飛行させる「追従飛行制御処理」を実行可能な飛行制御部31を有するドローン3を備えたことにより、ドローン3などの「飛行装置」の操縦が不得意な者であっても、ドローン3の飛行を開始させる指示を行うだけで、飛行制御部31の制御下でドローン3が自動的に電気自動車100の近傍に位置した状態が維持され、電気自動車100に搭載されたデータ取得装置1とドローン3に搭載されたデータ中継装置2との間で良好な通信が可能な状態を容易に維持させることができる。
【0113】
また、このデータ送信システム10によれば、処理部26が、データ取得装置1から送信された「送信用データ」とドローン3に搭載されたカメラ21によって生成された撮像データDpとを「送信用データ」が関連付けられている読取り時刻、および撮像データDpの生成時刻を一致させるように相互に関連付けて通信部23からデータサーバ4に送信することにより、データサーバ4に送信される各「送信用データ」の値だけでなく、データ取得装置1が搭載された電気自動車100が上方から撮像されてデータサーバ4に送信される撮像データDpの画像(映像)を参照することで、電気自動車100の状態を確実かつ容易に把握することができるため、分析に適した「送信用データ」の取得が完了していない状態で作業を終了させてしまったり、分析に適した「送信用データ」の取得が完了しているにも拘わらず不要な作業を継続したりする事態を確実に回避することができる。また、データサーバ4に送信された「送信用データ」の分析時に撮像データDpの画像(映像)を参照することにより、データ取得装置1から送信された「送信用データ」の値だけを分析するのと比較して、電気自動車100の状態を容易に把握することができる。
【0114】
また、このデータ送信システム10によれば、処理部16が電気自動車100についての測定処理(本例では、走行用モータ104の温度の測定)を実行可能な測定部12による測定結果を特定可能な温度データDtを「送信用データ」として通信部13から外部装置(データ中継装置2)に送信するようにデータ取得装置1を構成したことにより、CANフレームFcに基づいて生成される「送信用データ」だけでなく、電気自動車100についての任意の物理量を記録した「送信用データ(本例では、温度データDt)」を送信させることで、電気自動車100の状態を一層確実に分析することができる。
【0115】
また、このデータ送信システム10によれば、データ中継装置2が、通信部23からデータサーバ4に送信する「送信用データ」を記憶する記憶部27を備えると共に、処理部26が、通信部23からデータサーバ4に送信した「送信用データ」のうちの予め規定された条件を満たす「送信用データ」を記憶部27から消去することにより、データ中継装置2とデータサーバ4(インターネット7および移動体通信網6を介してデータサーバ4に接続されている基地局6a)との間の通信が一時的に困難な状態となっても、その間に送信すべき「送信用データ」が記憶部27に保持されるため、良好な通信が可能な状態となったときに、記憶部27に保持されている「送信用データ」をデータサーバ4に送信することで、分析に必要な「送信用データ」の欠落が生じる事態を好適に回避することができる。また、データサーバ4への送信が完了したデータD2を消去することで、記憶部27として大容量の記憶媒体を搭載する必要がなくなるため、データ中継装置2の製造コストを十分に低減できると共に、データ中継装置2の大型化を回避することができる。
【0116】
また、このデータ送信システム10によれば、データ取得装置1を制御するコマンドデータDcをデータ中継装置2に送信可能な携帯端末5を備えると共に、通信部23によって受信されたコマンドデータDcを通信部22からデータ取得装置1に送信可能に処理部26を構成し、かつ、通信部13によって受信されたコマンドデータDcに従ってデータ取得装置1の動作を制御可能に処理部16を構成したことにより、データ取得装置1からデータサーバ4への「送信用データ」の送信時にデータサーバ4に送信された「送信用データ」をモニタリングしている作業者が、データ取得装置1やデータ中継装置2による各処理を任意に開始/終了させることができるため、一連の作業を少数人で容易に実施することができる。
【0117】
さらに、このデータ送信システム10では、CANフレームFcの伝送時にシリアルバスSBmのフレーム伝送用導体に印加される電圧をフレーム伝送用導体に対して非接触で検出可能な非接触型電圧センサ11sを有する電圧検出部11と、電圧検出部11によって検出された電圧の電圧レベルの変化に基づいてシリアルバスSBmを介して伝送されたCANフレームFcを特定する処理部16とを備えて「読取部」が構成されている。
【0118】
したがって、このデータ送信システム10によれば、シリアルバスSBmの信号線に非接触型電圧センサ11sを装着する簡易な作業を行うことでシリアルバスSBmからCANフレームFcを読み取ることができる。これにより、シリアルバスSBmにコネクタが配設されていなくてもCANフレームFcを読み取ることができ、また、シリアルバスSBmにコネクタが配設されている場合においても、コネクタの配設場所の近傍に限定されることなく、シリアルバスSBmの任意の場所においてCANフレームFcを読み取ることができる。また、データ取得装置1においてノイズが生じたとしても、このノイズがシリアルバスSBmのフレーム伝送用導体に流れ込む事態が回避されるため、シリアルバスSBmを介してのCANフレームFcの伝送や、シリアルバスSBmに接続されている各ノードの動作が阻害される事態を招くことなく、シリアルバスSBmからCANフレームFcを読み取ることができる。さらに、シリアルバスSBmの信号線におけるフレーム伝送用導体に対して非接触の状態で非接触型電圧センサ11sを介してCANフレームFcを読み取ることで、信号線から非接触型電圧センサ11sを取り外した状態においても、非接触型電圧センサ11sを装着する以前の状態と同様の絶縁状態を維持することができる。
【0119】
なお、「データ送信システム」の構成は、上記のデータ送信システム10の構成の例に限定されない。
【0120】
例えば、電気自動車100のシリアルバスSBmからの非接触型電圧センサ11sを介してのCANフレームFcの読み取りに際して、「CANH」に対応する信号線のフレーム伝送用導体の電圧、および「CANL」に対応する信号線のフレーム伝送用導体の電圧を電圧検出部11によってそれぞれ検出し、処理部16が、検出された両フレーム伝送用導体の電圧の差に基づいて、シリアルバスSBmを介して伝送されているCANフレームFcの内容を特定する構成を例に挙げて説明したが、このような構成に代えて、次の構成を採用することもできる。
【0121】
具体的には、「2線差動電圧方式」で伝送されるCANフレームFcの読み取りに際しては、前述の例のデータ中継装置2における電圧検出部11に代えて、
図5に示す電圧検出部11aを備えてデータ取得装置1を構成することにより、処理部16によるCANフレームFcの読み取り(内容の特定)を正確かつ容易に行うことが可能となる。この電圧検出部11aは、同図に示すように、増幅器51h,51l、差分回路(一例として、トランス)52、増幅器53およびA/D変換器54を備えて構成されている。
【0122】
前述の電圧検出部11に代えて上記の電圧検出部11aを備えたデータ取得装置1によってシリアルバスSBmからCANフレームFcを読み取る際には、「CANH」に対応する信号線、および「CANL」に対応する信号線に非接触型電圧センサ11sをそれぞれ装着する。この状態においてシリアルバスSBmにCANフレームFcが伝送されたときには、「CANH」に対応する信号線のフレーム伝送用導体(以下、「「CANH」のフレーム伝送用導体」ともいう)と非接触型電圧センサ11sの検出用電極との間の結合容量を介して、「CANH」のフレーム伝送用導体の電位に応じて流れる電流に応じた電圧が増幅器51hによって増幅されると共に、「CANL」に対応する信号線のフレーム伝送用導体(以下、「「CANL」のフレーム伝送用導体」ともいう)と非接触型電圧センサ11sの検出用電極との間の結合容量を介して、「CANL」のフレーム伝送用導体の電位に応じて流れる電流に応じた電圧が増幅器51lによって増幅される。
【0123】
また、増幅器51hからの出力電圧と増幅器51lからの出力電圧の差分に対応する差分電圧が差分回路52から出力され、この差分電圧が増幅器53によって増幅されてA/D変換器54によってA/D変換されて電圧値データとして処理部16に出力される。一方、処理部16は、A/D変換器54から出力された電圧値データの値が予め規定された電圧値レベル以上のときに、デジタル信号の「0」が伝送されていると判別する。また、処理部16は、A/D変換器54から出力された電圧値データの値が予め規定された電圧値レベルを下回っているときに、デジタル信号の「1」が伝送されていると判別する。これにより、前述した電圧検出部11を備えたデータ取得装置1におけるCANフレームFcの読み取り時と同様にして、シリアルバスSBmを伝送されているCANフレームFcの内容が特定される。
【0124】
また、「浮遊体」としての「飛行装置」の一例であるドローン3を備えた構成を例に挙げて説明したが、「ドローン」以外の各種の「飛行装置」に「データ中継装置」を搭載して「データ送信システム」を構成することができる。この場合、「データ中継装置」を搭載する「飛行装置」については、前述のデータ送信システム10におけるドローン3のような「追従飛行制御処理を実行する第3処理部」を備えた装置に限定されず、例えば、オペレータの遠隔操作に従って飛行する「飛行装置」や、予め設定された飛行ルートを自動飛行する「飛行装置」などを採用することもできる。さらに、「バルーン」などの「飛行しない浮遊体」に「データ中継装置」を搭載して「データ送信システム」を構成することもできる。また、データ中継装置2の構成要素の1つとして「撮像装置」としてのカメラ21をドローン3に搭載して電気自動車100を上空から撮像する構成を例に挙げて説明したが、「撮像装置」を備えることなく「データ送信システム」を構成することもできる。
【0125】
また、温度を測定する「測定処理」を実行する測定部12を「測定部」として備えた構成を例に挙げて説明したが、「移動体についての測定処理」として温度の測定処理以外の各種の測定処理を実行可能な「測定部」を備えて「データ処理装置」を構成することができる。さらに、データ取得装置1(通信部13)とデータ中継装置2(通信部22)との間でブルートゥース規格に準ずる無線通信による通信が可能に構成した例について説明したが、このような構成に代えて、「データ処理装置(第1無線通信部)」と「データ中継装置(第2無線通信部)」との間で、各種の無線LAN規格に準ずる無線通信や、移動体通信網を利用した移動体通信による通信が可能に構成することもできる。また、移動体通信網6の基地局6aとの移動体通信が可能な通信部23を「第2無線通信部」としてデータ中継装置2に搭載した構成を例に挙げて説明したが、このような構成に代えて、インターネット7に接続された無線LANアクセスポイントとの無線LAN通信が可能な無線LAN通信モジュールや、インターネット7に接続可能な情報処理端末との間でブルートゥース規格に準ずる無線通信による通信が可能な通信モジュールなどを「第2無線通信部」として「データ中継装置」に搭載することもできる。
【0126】
加えて、「シリアルバス」から読み取る「CANフレーム」は、上記の例におけるCANフレームFcに限定されず、「CAN FD」、「FlexRay(登録商標)」および「LIN」などの各種通信規格に準ずるフレーム(デジタルデータ)や、「LVDS」による小振幅低消費電力通信が可能な各種通信規格に準ずるフレーム(デジタルデータ)を読み取ることができる。
【符号の説明】
【0127】
10 データ送信システム
1 データ取得装置
2 データ中継装置
3 ドローン
4 データサーバ
5 携帯端末
6 移動体通信網
6a 基地局
7 インターネット
11,11a 電圧検出部
11s 非接触型電圧センサ
12 測定部
12s 温度センサ
13,22,23 通信部
16,26 処理部
17,27 記憶部
21 カメラ
31 飛行制御部
100 電気自動車
102 電圧制御部
103 インバータユニット
104 走行用モータ
106 主制御部
110 接続用コネクタ
Da 電流値データ
Dc コマンドデータ
De 電力量データ
Dp 撮像データ
Dt 温度データ
Dv 電圧値データ
Fc CANフレーム
L2 電力ライン
SBm シリアルバスSBm