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<図1>
  • 特許-データ伝送システム及びデータ伝送方法 図1
  • 特許-データ伝送システム及びデータ伝送方法 図2
  • 特許-データ伝送システム及びデータ伝送方法 図3
  • 特許-データ伝送システム及びデータ伝送方法 図4A
  • 特許-データ伝送システム及びデータ伝送方法 図4B
  • 特許-データ伝送システム及びデータ伝送方法 図4C
  • 特許-データ伝送システム及びデータ伝送方法 図5A
  • 特許-データ伝送システム及びデータ伝送方法 図5B
  • 特許-データ伝送システム及びデータ伝送方法 図5C
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】データ伝送システム及びデータ伝送方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/06 20060101AFI20230605BHJP
   H04L 27/26 20060101ALI20230605BHJP
   H04W 72/0446 20230101ALI20230605BHJP
【FI】
H04B7/06 984
H04L27/26 112
H04L27/26 114
H04W72/0446
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019118919
(22)【出願日】2019-06-26
(65)【公開番号】P2021005803
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大季
(72)【発明者】
【氏名】星 大樹
【審査官】原田 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-507398(JP,A)
【文献】特開2010-219748(JP,A)
【文献】特表2006-515481(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0147761(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/06
H04L 27/26
H04W 72/0446
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データシンボル及びパイロットシンボルを含むフレームを用いてデータを伝送するデータ伝送システムにおいて、
前記フレームは、パイロットシンボルのシンボル長よりデータシンボルのシンボル長の方が大きく、かつ、パイロットシンボルのガードインターバル比率よりデータシンボルのガードインターバル比率が小さいフォーマットであり、
データシンボルのガードインターバル長及びパイロットシンボルのガードインターバル長は、いずれも、予め想定されたマルチパスの最大遅延時間以上であり、
データシンボルのシンボル長は、1シンボル時間の伝送路特性の時変動が略一定とみなせる長さであり、
パイロットシンボルのシンボル長は、前記最大遅延時間に送信アンテナの数を乗じた値以上であることを特徴とするデータ伝送システム。
【請求項2】
請求項1に記載のデータ伝送システムにおいて、
送信側の装置が、データシンボルのガードインターバル長に対応するポイント数でIFFT処理を行う第1のIFFT部と、データシンボルのガードインターバル比率でガードインターバルの付加処理を行う第1のガードインターバル付加部と、パイロットシンボルのガードインターバル長に対応するポイント数でIFFT処理を行う第2のIFFT部と、パイロットシンボルのガードインターバル比率でガードインターバルの付加処理を行う第2のガードインターバル付加部とを備え、前記第1のIFFT部及び前記第1のガードインターバル付加部を用いてデータシンボルを生成し、前記第2のIFFT部及び前記第2のガードインターバル付加部を用いてパイロットシンボルを生成することを特徴とするデータ伝送システム。
【請求項3】
請求項1に記載のデータ伝送システムにおいて、
送信側の装置が、データシンボルのガードインターバル長に対応するポイント数とパイロットシンボルのガードインターバル長に対応するポイント数とを切り替えてIFFT処理を行うことが可能なIFFT部と、データシンボルのガードインターバル比率とパイロットシンボルのガードインターバル比率とを切り替えてガードインターバルの付加処理を行うことが可能なガードインターバル付加部とを備え、前記IFFT部及び前記ガードインターバル付加部を共用してデータシンボル及びパイロットシンボルを生成することを特徴とするデータ伝送システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のデータ伝送システムにおいて、
受信側の装置が、受信信号に含まれるパイロットシンボルに基づいて、データシンボルと同じサブキャリア数分の伝送路特性を推定する伝送路推定部を備え、
前記伝送路推定部は、入力されたパイロットシンボルに対してシンボル方向の内挿を施す第1の内挿部と、前記第1の内挿部の結果に対してデータシンボルと同じサブキャリア数になるようにアップサンプルを施すアップサンプル部と、前記アップサンプル部の結果に対して周波数方向の内挿を施す第2の内挿部とを有し、前記第2の内挿部の結果を伝送路特性の推定値として出力することを特徴とするデータ伝送システム。
【請求項5】
データシンボル及びパイロットシンボルを含むフレームを用いてデータを伝送するデータ伝送方法において、
前記フレームは、パイロットシンボルのシンボル長よりデータシンボルのシンボル長の方が大きく、かつ、パイロットシンボルのガードインターバル比率よりデータシンボルのガードインターバル比率が小さいフォーマットであり、
データシンボルのガードインターバル長及びパイロットシンボルのガードインターバル長は、いずれも、予め想定されたマルチパスの最大遅延時間以上であり、
データシンボルのシンボル長は、1シンボル時間の伝送路特性の時変動が略一定とみなせる長さであり、
パイロットシンボルのシンボル長は、前記最大遅延時間に送信アンテナの数を乗じた値以上であることを特徴とするデータ伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データシンボル及びパイロットシンボルを含むフレームを用いてデータを伝送するデータ伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地上デジタル放送や放送番組素材の無線伝送装置(FPU:Field Pick-up Unit)では、無線伝送方式として直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)が採用されている。OFDM方式で送信された信号を受信機で復調するためには、伝送路の振幅や位相の特性を推定する必要があり、その推定結果に基づいて復調(等化)処理が行われる。
【0003】
この伝送路特性の推定のために、送信側で、振幅及び位相が既知のパイロット信号を周波数(キャリア)及び時間(シンボル)の各方向に所定の間隔で挿入し、受信側で、受信したパイロット信号を周波数及び時間の各方向で内挿補間する。これにより、受信側では、パイロットキャリアが配置されていないデータキャリア部分の伝送路特性を推定することが可能となる。
【0004】
パイロット信号は、伝送路特性に応じて配置させることが望ましい。すなわち、長遅延のマルチパスが存在するような伝送路では周波数方向のパイロット間隔を密に配置し、時間的な変動が激しい伝送路では時間方向のパイロット間隔を密に配置することで、高精度な伝送路推定が可能となる。
【0005】
近年、4×4MIMO(Multiple Input Multiple Output)を用いた固有モード伝送について検討されている(非特許文献1)。非特許文献1では、1シンボル全てがパイロットキャリアであるパイロットシンボルと、1シンボル全てがデータキャリアであるデータシンボルとでフレームを構成することが提案されている。非特許文献1の4×4MIMOシステムでは、受信側にて各送信アンテナからの伝送路を全て正しく推定するために、4つの送信アンテナそれぞれに直交したパイロットを設ける必要がある。
【0006】
非特許文献1のパイロットシンボルでは、各送信アンテナに対して、サブキャリア4本に1本の間隔でパイロットキャリアを割り当てることで、送信アンテナ毎にパイロット信号を直交させている。この場合、サンプリング定理により、1シンボルの1/4の時間に相当する遅延時間までの遅延波が混入した伝送路特性を正確に推定することができる。したがって、シンボル長の1/4時間をガードインターバルとして設ければ、1シンボルの1/4までのマルチパスであれば、大きな劣化なく正確に等化(復調)することが可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】光山和彦、外3名,“移動中継用1.2GHz/2.3GHz帯スーパーハイビジョンFPUの実現に向けた無線伝送技術”,NHK技研 R&D,No.165,pp.54-67,2017年9月
【文献】標準規格ARIB STD-B57 2.1版 「1.2GHz/2.3GHz帯テレビジョン放送番組素材伝送用可搬形OFDM方式デジタル無線伝送システム」,一般社団法人電波産業会,平成28年7月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の技術では、図5Aに示すように、1シンボル時間の1/4に相当するガードインターバルをシンボル毎に付加するので、伝送効率が低下してしまうという問題がある。この問題に対し、非特許文献2には、シンボル長を長くし、同じガードインターバル時間でガードインターバル比率を低減させることで、伝送効率を高めることが開示されている。例えば、図5Bに示すように、シンボル長を2倍にすることで、同等のガードインターバル時間を有するためのガードインターバル比率は1/8となり、伝送効率を向上させることができる。しかしながら、非特許文献1のフォーマットでは、伝送路の時変動に対しての耐性を同等にするためにパイロットシンボルの間隔を一定にすると、図5Bに示すように、伝送効率が向上しない。
【0009】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、マルチパス耐性の向上と伝送効率の向上を共に実現することが可能な技術を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明では、データ伝送システムを以下のように構成した。
すなわち、データシンボル及びパイロットシンボルを含むフレームを用いてデータを伝送するデータ伝送システムにおいて、前記フレームは、パイロットシンボルのシンボル長よりデータシンボルのシンボル長の方が大きく、かつ、パイロットシンボルのガードインターバル比率よりデータシンボルのガードインターバル比率が小さいフォーマットであることを特徴とする。
【0011】
ここで、一構成例として、データシンボルのガードインターバル長及びパイロットシンボルのガードインターバル長を、いずれも、予め想定されたマルチパスの最大遅延時間以上とし、データシンボルのシンボル長を、1シンボル時間の伝送路特性の時変動が略一定とみなせる長さとし、パイロットシンボルのシンボル長を、前記最大遅延時間に送信アンテナの数を乗じた値以上としてもよい。
【0012】
なお、上記のシステムにおける送信側の装置は、種々の構成により実現することが可能である。
例えば、送信側の装置が、データシンボルのガードインターバル長に対応するポイント数でIFFT処理を行う第1のIFFT部と、データシンボルのガードインターバル比率でガードインターバルの付加処理を行う第1のガードインターバル付加部と、パイロットシンボルのガードインターバル長に対応するポイント数でIFFT処理を行う第2のIFFT部と、パイロットシンボルのガードインターバル比率でガードインターバルの付加処理を行う第2のガードインターバル付加部とを備え、前記第1のIFFT部及び前記第1のガードインターバル付加部を用いてデータシンボルを生成し、前記第2のIFFT部及び前記第2のガードインターバル付加部を用いてパイロットシンボルを生成する構成にしてもよい。
【0013】
または、送信側の装置が、データシンボルのガードインターバル長に対応するポイント数とパイロットシンボルのガードインターバル長に対応するポイント数とを切り替えてIFFT処理を行うことが可能なIFFT部と、データシンボルのガードインターバル比率とパイロットシンボルのガードインターバル比率とを切り替えてガードインターバルの付加処理を行うことが可能なガードインターバル付加部とを備え、前記IFFT部及び前記ガードインターバル付加部を共用してデータシンボル及びパイロットシンボルを生成する構成にしてもよい。
【0014】
また、上記のシステムにおける受信側の装置は、種々の構成により実現することが可能である。
例えば、受信側の装置が、受信信号に含まれるパイロットシンボルに基づいて、データシンボルと同じサブキャリア数分の伝送路特性を推定する伝送路推定部を備え、前記伝送路推定部は、入力されたパイロットシンボルに対してシンボル方向の内挿を施す第1の内挿部と、前記第1の内挿部の結果に対してデータシンボルと同じサブキャリア数になるようにアップサンプルを施すアップサンプル部と、前記アップサンプル部の結果に対して周波数方向の内挿を施す第2の内挿部とを有し、前記第2の内挿部の結果を伝送路特性の推定値として出力する構成にしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、マルチパス耐性の向上と伝送効率の向上を共に実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るデータ伝送システムにおける送信側装置の構成例を示す図である。
図2図1の送信側装置に対応した受信側装置の構成例を示す図である。
図3図2の受信側装置における伝送路推定部の構成例を示す図である。
図4A図3の伝送路推定部のシンボル方向1次内挿部の出力例を示す図である。
図4B図3の伝送路推定部の0挿入アップサンプル部の出力例を示す図である。
図4C図3の伝送路推定部の周波数内挿フィルタ部の出力例を示す図である。
図5A】従来方式のフレームフォーマットの伝送効率を説明する図である。
図5B】従来方式のフレームフォーマットの伝送効率を説明する図である。
図5C】本発明方式のフレームフォーマットの伝送効率を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係るデータ伝送システムについて、図面を参照して説明する。
ここで、本例のデータ伝送システムの具体的な構成の説明に先立ち、本発明方式のフレームフォーマットについて説明しておく。
【0018】
先に説明した通り、サブキャリア4本に1本の間隔でパイロットキャリアが配置されている場合、パイロットシンボルのシンボル長が1倍のままであっても、シンボル長の1/4の遅延時間までは伝送路特性を正しく推定することができる。そこで、例えば、図5Cに示すように、パイロットシンボルについては、シンボル長を1倍、ガードインターバル比率を1/4とし、データシンボルについては、シンボル長を2倍、ガードインターバル比率を1/8とすることで、マルチパス耐性の向上と伝送効率の向上を共に実現することが可能となる。
【0019】
以下、フレームフォーマットの最適化について、数式を用いて一般的に表現する。
まず、システムが対応可能なマルチパスの最大遅延時間Tdelay と、1シンボル時間の伝送路特性の時変動が一定とみなせる長さとなるようなデータシンボル長TDSを決定する。
【0020】
この場合、データシンボル、パイロットシンボルそれぞれのシンボル間干渉を避けるため、データシンボルのガードインターバル長TDS_GI と、パイロットシンボルのガードインターバル長TPS_GI は、下記(式1)、(式2)に示すように、Tdelay 以上とする。
DS_GI ≧Tdelay ・・・(式1)
PS_GI ≧Tdelay ・・・(式2)
【0021】
従って、データシンボルのガードインターバル比率RDS_GI は、下記(式3)に示す通りとなる。
DS_GI =TDS_GI /TDS ・・・(式3)
【0022】
次に、下記(式4)に示すように、パイロットシンボル長TPSをTdelay 以上にすることで、Tdelay 以下の遅延時間のマルチパスによるチャネル変動であれば正確に推定することが可能となる。
なお、複数の送信アンテナを用いるシステムでは、送信アンテナそれぞれに直交したパイロット信号を設ける必要がある。このため、パイロット信号の分離にサブキャリアを用いる場合は、アンテナ数をNとすると、下記(式5)に示すように、パイロットシンボル長TPSをTdelay のN倍以上にすることで、同様に推定することが可能となる。
【0023】
[単一アンテナ時]
PS≧Tdelay ・・・(式4)
[複数アンテナ時]
PS≧N×Tdelay ・・・(式5)
【0024】
従って、パイロットシンボルのガードインターバル比率RPS_GI は、下記(式6)に示す通りとなる。
PS_GI =TPS_GI /TPS ・・・(式6)
【0025】
以上の数式に従って、パイロットシンボル、データシンボルそれぞれのシンボル長及びガードインターバル長を決定することで、伝送効率の高いフレームフォーマットを求めることができる。
【0026】
例えば、パイロットシンボル長を1024サンプル、データシンボル長を2048サンプル、パイロットシンボルのガードインターバル比率を1/4、データシンボルのガードインターバル比率を1/8とすることで、256サンプルに相当する遅延波まで正しく復調することが可能となる。その結果、図5Cのフレームフォーマット(本発明方式)は、図5Bのフレームフォーマット(従来方式)と同等の長遅延マルチパス耐性を有する一方で、伝送効率を約12%向上させることができる。
【0027】
次に、本例のデータ伝送システムの具体的な構成について説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係るデータ伝送システムにおける送信側装置(送信側の無線伝送装置)の構成例を示してあり、図2には、同システムにおける受信側装置(受信側の無線伝送装置)の構成例を示してある。
【0028】
図1に示す送信側装置は、伝送符号生成部101と、マッピング部102と、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform;逆高速フーリエ変換)部103と、ガードインターバル付加部104と、パイロットシンボル生成部105と、IFFT部106と、ガードインターバル付加部107と、信号選択部108と、フレームタイミング生成部109と、周波数変換部110と、送信アンテナ111とを備える。
【0029】
まず、データシンボルの生成について説明する。
送信側装置では、外部から入力された情報ビットに対し、伝送符号生成部101にて誤り訂正符号化等の処理を行い、伝送符号系列を生成する。生成された伝送符号系列はマッピング部102に入力され、マッピング部102にて64QAM(Quadrature Amplitude Modulation;直角位相振幅変調)や1024QAM等の変調方式で複素平面にマッピングし、IFFT部103に入力する。
【0030】
IFFT部103では、入力された周波数領域の信号にIFFT処理を施して時間領域の信号に変換し、ガードインターバル付加部104に入力する。IFFTに用いるポイント数は、先に説明したデータシンボル長TDSが得られるポイント数とする。ガードインターバル付加部104では、入力された時間領域の信号の後半部分を前側に巡回付加し、信号選択部108に入力する。巡回付加する信号比率は、先に説明したガードインターバル比率RDS_GI とする。以上の処理が、データシンボルの生成に関わる処理である。
【0031】
次に、パイロットシンボルの生成について説明する。
パイロットシンボルは、振幅及び位相を既知とした複素信号をキャリアとしてパイロットシンボル生成部105により生成される。生成されたパイロット信号はIFFT部106に入力され、IFFT部106にて周波数領域の信号から時間領域の信号に変換するIFFT処理が施される。IFFTに用いるポイント数は、先に説明したパイロットシンボル長TPSが得られるポイント数とする。ガードインターバル付加部107では、入力された時間領域の信号の後半部分を前側に巡回付加し、信号選択部108に入力する。巡回付加する信号比率は、先に説明したガードインターバル比率RPS_GI とする。以上の処理が、パイロットシンボルの生成に関わる処理である。
【0032】
信号選択部108には、データシンボルとパイロットシンボルの入力に加え、データシンボルかパイロットシンボルかを選択するタイミング信号がフレームタイミング生成部109から入力される。信号選択部108は、タイミング信号に従ってデータシンボル又はパイロットシンボルの信号を選択し、周波数変換部110へ出力する。
【0033】
ここで、上記の説明では、それぞれ異なるポイント数を使用する2種類のIFFT部103,106と、それぞれ異なるガードインターバル比率を使用する2種類のガードインターバル付加部104,107とを設け、それぞれの系統の出力を信号選択部108で切り替える構成としたが、これに限定されない。すなわち、例えば、ポイント数を切り替える機能を持つIFFT部と、ガードインターバル比率を切り替える機能を持つガードインターバル付加部とを備え、データシンボルの生成かパイロットシンボルの生成かに応じてポイント数及びガードインターバル比率を切り替えるように構成してもよい。
【0034】
以上の処理によって生成されたOFDM信号は、周波数変換部110にてRF(Radio Frequency)帯の周波数に変換され、送信アンテナ111から電波として空間に送出される。
【0035】
図2に示す受信側装置は、受信アンテナ201と、周波数逆変換部202と、フレームタイミング検出部203と、信号選択部204と、FFT(Fast Fourier Transform;高速フーリエ変換)部205と、遅延部206と、FFT部207と、伝送路推定部208と、等化部209と、復号部210とを備える。
【0036】
受信側装置では、受信アンテナ201にて受信した信号を、周波数逆変換部202によるRF周波数から低周波数への変換を経由して、アナログ信号からデジタル信号に変換する。得られた受信デジタル信号は、フレームタイミング検出部203と信号選択部204とに入力される。
【0037】
フレームタイミング検出部203では、相互相関や自己相関等を用いてフレームタイミングを検出し、現在の受信信号のシンボル種別(データシンボルであるのかパイロットシンボルであるのか)を示すタイミング信号を信号選択部204へ出力する。信号選択部204は、周波数変換部202から入力された受信信号を、フレームタイミング検出部203から入力されたシンボル種別を示すタイミング信号に従って、シンボル種別に応じた出力先に出力する。また、シンボル間干渉が生じないように、適切な時間位置にFFT時間窓を設けて出力する。
【0038】
データシンボルは、信号選択部204からFFT部205へ出力され、FFT部205にてIFFT部103のIFFT処理のポイント数と同じポイント数でFFT処理が施され、時間領域の信号から周波数領域の信号に変換される。変換された信号は、後述するFFT部207及び伝送路推定部208によるパイロットシンボルの遅延時間と同じタイミングになるように遅延部206で遅延され、等化部209へ出力される。
【0039】
一方、パイロットシンボルは、信号選択部204からFFT部207へ出力され、FFT部207にてIFFT部106のIFFT処理のポイント数と同じポイント数でFFT処理が施され、時間領域の信号から周波数領域の信号に変換された後に、伝送路推定部208へ出力される。伝送路推定部208の詳細は後述するが、FFT部207から入力された信号に対して周波数方向及び時間方向の内挿を行って伝送路を推定し、等化部209へ伝送路推定の結果を出力する。
【0040】
等化部209では、伝送路推定の結果に基づいて受信信号の復調(等化)処理を行い、その結果の信号を復号部210へ出力する。復号部210は、入力された信号に対して復号処理を行い、復号結果を出力する。
【0041】
次に、伝送路推定部208の内部構成について、図3を参照して説明する。図3に示すように、伝送路推定部208は、シンボル方向1次内挿部301と、0挿入アップサンプル部302と、周波数内挿フィルタ部303とを有する。
【0042】
シンボル方向1次内挿部301には、FFT部207からパイロットシンボルが入力される。シンボル方向1次内挿部301は、入力されたパイロットシンボルに対してシンボル間の1次内挿を行う。図4Aには、シンボル方向1次内挿部301の出力例(シンボル方向の内挿の結果)を示してある。ここでは1次内挿としたが、これに限定されず、他の手法によりシンボル方向の内挿を行ってもよい。
【0043】
1次内挿された信号はデータシンボルに対してサブキャリア数が少ないので、パイロットシンボルのサブキャリア数をデータシンボルのサブキャリア数と同一にするために、0挿入アップサンプル部302にて0挿入によるアップサンプルを行う。図4Bには、0挿入アップサンプル部302の出力例(0挿入アップサンプルの結果)を示してある。
【0044】
その後、アップサンプルされた信号に対し、周波数内挿フィルタ部303にて周波数方向の内挿を行うことで、データシンボルと同じサブキャリア数分の伝送路推定結果が得られる。図4Cには、周波数内挿フィルタ部303の出力例(周波数方向の内挿の結果)を示してある。このようにして得られた伝送路推定結果は、等化部209へ出力される。
【0045】
以上の処理により、データシンボルと同じサブキャリア数分の伝送路特性を推定することができる。したがって、この伝送路特性に基づいて受信信号の復調(等化)処理を行うことで、送信側装置からの伝送データを適切に復元することが可能となる。
【0046】
以上のように、本例では、データの伝送に使用するフレームのフォーマットとして、パイロットシンボルのシンボル長(TPS)よりデータシンボルのシンボル長(TDS)の方が大きく、かつ、パイロットシンボルのガードインターバル比率(RPS_GI )よりデータシンボルのガードインターバル比率(RDS_GI )が小さいフォーマットを用いることを特徴としている。
【0047】
より具体的には、データシンボルのガードインターバル長(TDS_GI )及びパイロットシンボルのガードインターバル長(TPS_GI)を、いずれも、予め想定されたマルチパスの最大遅延時間(Tdelay )以上とし、データシンボルのシンボル長(TDS)を、1シンボル時間の伝送路特性の時変動が略一定とみなせる長さとし、パイロットシンボルのシンボル長(TPS)を、最大遅延時間(Tdelay )に送信アンテナの数(N)を乗じた値以上としてある。
【0048】
このように、パイロットシンボルとデータシンボルでシンボル長の異なるフォーマットのフレームを用いて伝送を行うことで、マルチパス耐性の向上と伝送効率の向上を両立することが可能となる。
【0049】
なお、上記の実施例(図1)では、送信側装置が、データシンボルのガードインターバル長に対応するポイント数(例えば、2048サンプル)でIFFT処理を行うIFFT部103と、データシンボルのガードインターバル比率(例えば、1/8)でガードインターバルの付加処理を行うガードインターバル付加部104と、パイロットシンボルのガードインターバル長に対応するポイント数(例えば、1024サンプル)でIFFT処理を行うIFFT部106と、パイロットシンボルのガードインターバル比率(例えば、1/4)でガードインターバルの付加処理を行うガードインターバル付加部107とを備えている。そして、IFFT部103及びガードインターバル付加部104を用いてデータシンボルを生成し、IFFT部106及びガードインターバル付加部107を用いてパイロットシンボルを生成する構成となっている。なお、この構成は一例に過ぎず、他の構成により送信側装置を実現してもよい。
【0050】
例えば、送信側装置が、データシンボルのガードインターバル長に対応するポイント数とパイロットシンボルのガードインターバル長に対応するポイント数とを切り替えてIFFT処理を行うことが可能なIFFT部と、データシンボルのガードインターバル比率とパイロットシンボルのガードインターバル比率とを切り替えてガードインターバルの付加処理を行うことが可能なガードインターバル付加部とを備える。そして、これらIFFT部とガードインターバル付加部を、データシンボルの生成及びパイロットシンボルの生成で共用する構成であってもよい。
【0051】
また、上記の実施例(図2図3)では、受信側装置が、受信信号に含まれるパイロットシンボルに基づいて、データシンボルと同じサブキャリア数分の伝送路特性を推定する伝送路推定部208を備える。そして、伝送路推定部208は、入力されたパイロットシンボルに対してシンボル方向の内挿を施すシンボル方向1次内挿部301と、その結果に対してデータシンボルと同じサブキャリア数になるようにアップサンプルを施す0挿入アップサンプル部302と、その結果に対して周波数方向の内挿を施す周波数内挿フィルタ部303とを有し、周波数内挿フィルタ部303の結果を伝送路特性の推定値として出力する構成となっている。なお、この構成は一例に過ぎず、他の構成により受信側装置を実現してもよい。
【0052】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、上記以外にも広く適用することができることは言うまでもない。
また、本発明は、例えば、上記のような処理を実行する方法や方式、そのような方法や方式を実現するためのプログラム、そのプログラムを記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、データシンボル及びパイロットシンボルを含むフレームを用いてデータを伝送するデータ伝送システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
101:伝送符号生成部、 102:マッピング部、 103:IFFT部、 104:ガードインターバル付加部、 105:パイロットシンボル生成部、 106:IFFT部106、 107:ガードインターバル付加部、 108:信号選択部、 109:フレームタイミング生成部、 110:周波数変換部、 111:送信アンテナ、
201:受信アンテナ、 202:周波数逆変換部、 203:フレームタイミング検出部、 204:信号選択部、 205:FFT部、 206:遅延部、 207:FFT部、 208:伝送路推定部、 209:等化部、 210:復号部、
301:シンボル方向1次内挿部、 302:0挿入アップサンプル部、 303:周波数内挿フィルタ部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C