(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】車両用アンダーカバー
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20230605BHJP
【FI】
B62D25/20 N
(21)【出願番号】P 2019130313
(22)【出願日】2019-07-12
【審査請求日】2022-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】509069892
【氏名又は名称】株式会社HOWA
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 裕也
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1626320(KR,B1)
【文献】特開2014-113925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体下面側を覆う車両用アンダーカバーであって、
繊維補強材と熱可塑性合成樹脂を混合した繊維層を少なくとも含んで三次元の面形状に成形された繊維成形体を有し、
前記繊維成形体は、
前記車体下面に沿って面するように配されて車両内外の騒音を吸音する吸音面と、
前記吸音面よりも相対的に厚み方向に圧縮された厚みで構成されると共に前記吸音面の外周縁から車体下面に向かって延在する延出面と、を備え、
前記延出面における車両前方側に面する位置
であって、車両走行時に、空気抵抗によって後方に向かって撓まされる力を受ける位置に配される前方延出面は、前記車体下面側に近接する近接部位よりも、前記吸音面と繋がる連結部位が車両後方側に位置するように傾斜する傾斜面が設けられており、
前記延出面には、厚み方向に貫通する線状のスリットを有し、
前記前方延出面は、前記スリットによって前記傾斜面の下端側が後方に向かって移動可能に弾性変形する車両用アンダーカバー。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用アンダーカバーであって、
前記延出面は、前記前方延出面に加えて、車両幅方向に交差する面である側方延出面を有しており、
前記スリットは、前記傾斜面よりも車両後方側の位置であって、且つ、前記前方延出面における前記連結部位と、前記側方延出面とに跨って連続して線状に設けられている車両用アンダーカバー。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両用アンダーカバーであって、
前記スリットの開口縁部は、車両前方側の前方縁部と、車両後方側の後方縁部とが互いに離間した形状である車両用アンダーカバー。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用アンダーカバーであって、
前記スリットにおける前記前方縁部と前記後方縁部の少なくともいずれかは、前記車体下面側に向かって屈曲する屈曲部を有しており、
前記傾斜面の下端側が後方に向かって移動して弾性変形するときにおいて、前記前方縁部と前記後方縁部が厚み方向に重なる関係となる車両用アンダーカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用アンダーカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の空力特性の向上による燃費向上、走行安定、操縦安定のため車両の下面側を覆う車両用アンダーカバーが適用される。車両用アンダーカバーは、合成樹脂を主体とした樹脂板アンダーカバーが採用されるものがある。例えば、樹脂板アンダーカバーはポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を射出成形等によって板状にした構成である。ところが、樹脂板アンダーカバーは、重量的に重いという問題があった。また、樹脂板アンダーカバーは、通気を遮断してしまう特性があることから車外へ漏れたエンジン音や路面側が音源となるロードノイズ等に対して効率よく吸音性能を発揮できないことが懸念されている。そこで、軽量化を図ることと、車両内外の騒音対策の改善を図ることを目的として、車両用アンダーカバー全体を繊維成形体の構成とするものが知られている(例えば、特許文献1)。係る繊維成形体の車両用アンダーカバーは、樹脂板アンダーカバーよりも軽量化が図れると共に、繊維間の微細な穴の構成により吸音性能を向上させ車両内外の騒音対策の改善を図れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述する繊維成形体の車両用アンダーカバーは、走行中における飛び石等の異物の飛散によって破損することが懸念されており更なる改善が望まれている。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、軽量化と車両内外の騒音対策の改善とを図りつつ、走行中における飛び石等の異物の飛散による破損の抑制も図ることのできる車両用アンダーカバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両用アンダーカバーの一つの特徴は、車両の車体下面側を覆う車両用アンダーカバーであって、繊維補強材と熱可塑性合成樹脂を混合した繊維層を少なくとも含んで三次元の面形状に成形された繊維成形体を有し、前記繊維成形体は、前記車体下面に沿って面するように配されて車両内外の騒音を吸音する吸音面と、前記吸音面よりも相対的に厚み方向に圧縮された厚みで構成されると共に前記吸音面の外周縁から車体下面に向かって延在する延出面と、を備え、前記延出面における車両前方側に面する位置に配される前方延出面は、前記車体下面側に近接する近接部位よりも、前記吸音面と繋がる連結部位が車両後方側に位置するように傾斜する傾斜面が設けられており、前記延出面には、厚み方向に貫通する線状のスリットを有し、前記前方延出面は、前記スリットによって前記傾斜面の下端側が後方に向かって移動可能に弾性変形する。
【0007】
上記構成の一つの特徴及び利点は、車両用アンダーカバーは、繊維成形体で構成されるため、軽量化が図れる。また、繊維成形体は、車体下面に沿って面するように配されて車両内外の騒音を吸音する吸音面を有する。これにより、車両内外の騒音対策の改善を図ることができる。また、車両用アンダーカバーは、吸音面よりも相対的に厚み方向に圧縮された厚みで構成されると共に吸音面の外周縁から車体下面に向かって延在する延出面を備えている。この延出面は、車両前方側に面する位置に配される前方延出面を有する。前方延出面は、車体下面側に近接する近接部位よりも、吸音面と繋がる連結部位が車両後方側に位置するように傾斜する傾斜面が設けられている。また、延出面は、厚み方向に貫通する線状のスリットを有する。そのため、前方延出面は、スリットによって傾斜面の下端側が後方に向かって移動可能に弾性変形する。これにより、車両用アンダーカバーは、傾斜面の弾性変形する構造によって、走行中における飛び石等の異物の飛散に伴う衝撃を吸収し易くする。もって、軽量化と車両内外の騒音対策の改善とを図りつつ、走行中における飛び石等の異物の飛散による破損の抑制も図ることのできる車両用アンダーカバーを提供することができる。
【0008】
また、係る車両用アンダーカバーの延出面は、吸音面の外周縁から車体下面に向かって延在するため吸音面から屈曲している。ここで、延出面は、吸音面よりも相対的に厚み方向に圧縮された厚みで構成される。そのため、延出面の屈曲した部位は、走行中における飛び石等の異物の飛散があるとその衝撃伝播によって脆性破壊を引き起こしやすい。特に延出面のうち前方延出面は、走行中における飛び石等の異物の飛散が当たる確率が高いことから破損する懸念が増している。そのため、前方延出面は、上端より下端が車両後方側に位置する傾斜した姿勢とすることで、走行中における飛び石等の異物の飛散を受け流す態様とされている。ここで、係る前方延出面は、その傾斜する姿勢をできる限り、路面に沿った方向とすることで走行中における飛び石等の異物の飛散を受け流し易いことが考えられるものの、前方延出面を寝かせる姿勢にするにつれて吸音面の面積を多く確保できないという問題があった。そこで、上述するスリットの構成によって、傾斜面が弾性変形する構造のため走行中における飛び石等の異物の飛散に伴う衝撃を吸収し易い。そのため、上記車両用アンダーカバーは、傾斜面を過度に寝かせることなく吸音面の面積を多く確保し得る。
【0009】
上記車両用アンダーカバーについて、前記延出面は、前記前方延出面に加えて、車両幅方向に交差する面である側方延出面を有しており、前記スリットは、前記傾斜面よりも車両後方側の位置であって、且つ、前記前方延出面における前記連結部位と、前記側方延出面とに跨って連続して線状に設けられていることが好ましい。
【0010】
上記構成の一つの特徴及び利点は、スリットは、傾斜面よりも車両後方側の位置であって、且つ、前方延出面における連結部位と、側方延出面とに跨って連続して線状に設けられている。これにより、傾斜面がより一層弾性変形し易い構造となり、走行中における飛び石等の異物の飛散に伴う衝撃を吸収し易くすることができる。
【0011】
上記車両用アンダーカバーについて、前記スリットの開口縁部は、車両前方側の前方縁部と、車両後方側の後方縁部とが互いに離間した形状であることが好ましい。
【0012】
上記構成の一つの特徴及び利点は、スリットの開口縁部は、車両前方側の前方縁部と、車両後方側の後方縁部とが互いに離間した形状であることにより、傾斜面の弾性変形量を増加することができる。
【0013】
上記車両用アンダーカバーについて、前記スリットにおける前記前方縁部と前記後方縁部の少なくともいずれかは、前記車体下面側に向かって屈曲する屈曲部を有しており、前記傾斜面の下端側が後方に向かって移動して弾性変形するときにおいて、前記前方縁部と前記後方縁部が厚み方向に重なる関係となることが好ましい。
【0014】
上記構成の一つの特徴及び利点は、傾斜面の下端側が後方に向かって移動して弾性変形するときにおいて、前方縁部と後方縁部が厚み方向に重なる関係となる構成を有する。これにより、走行中における飛び石等の異物の飛散に伴う衝撃を吸収し易くすることと、走行時においてスリットの開口を小さくして異物の進入を抑制することの両立を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上記各発明の手段をとることにより、軽量化と車両内外の騒音対策の改善とを図りつつ、走行中における飛び石等の異物の飛散による破損の抑制も図ることのできる車両用アンダーカバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】車両に搭載される車両用アンダーカバーを模式的に示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態について
図1から
図5を用いて説明する。
【0018】
本実施形態の車両用アンダーカバーは、
図1に示すように車両の車体下面B側を覆うボディアンダーカバー1を例示して説明する。ボディアンダーカバー1は、車両の下方を流通する気流の空気抵抗を抑制するために車両の下面側を覆うように車両の下部に装着されている。このボディアンダーカバー1は、車体下面Bを流通する空気流の流れを良くすることにより空気抵抗値を抑制して燃費向上を図る。更には、走行安定、操縦安定を図れると共に走行中における飛び石等の異物の飛散から車体構成品を守る役目も果たしている。なお車両用アンダーカバーは、車両の車体下面Bを覆うボディアンダーカバー1など以外にも車両のエンジン下面を覆うエンジンアンダーカバーがある。
【0019】
本実施形態のボディアンダーカバー1は、
図1、5に示すように、基材層として繊維補強材と熱可塑性合成樹脂を混合した第1繊維層10を少なくとも含んで三次元の面形状に成形された繊維成形体20を有する。係る繊維成形体20は、第1繊維層10の一方面又は両面に適宜、熱可塑性合成樹脂等による不織布が積層されていてもよい。
【0020】
第1繊維層10は、熱可塑性合成樹脂と、無機繊維又は/及び有機繊維よりなる繊維補強材を含んだ繊維層である。すなわち、第1繊維層10は、繊維補強材と熱可塑性合成樹脂を有する繊維マットである。第1繊維層10は、クロスレイヤー、エアレイ等に代表される乾式法、または抄紙法に代表される湿式法のいずれの製法を選択しても形成できる。
【0021】
クロスレイヤー、エアレイ等に代表される乾式法を用いた場合の第1繊維層10は、繊維補強材と熱可塑性合成樹脂の繊維体を所定繊維長にカットした上で開繊機または、エアレイと呼ばれる空気流でよく混ぜ合わせ(混綿)たものを積層し所定目付けのフリースと呼ばれる繊維の集積層(繊維ウェブ)とする。その上で、フリースをニードルパンチによって繊維同士を交絡させたり、熱を加えて繊維間結合させる態様が例示される。なお、上記乾式法における熱可塑性合成樹脂は、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維等の熱可塑性合成繊維が選択され得る。
【0022】
湿式法を用いた場合の第1繊維層10は、繊維補強材と熱可塑性合成樹脂を水中に分散し網状のネット等ですき上げてフリースを形成し、加熱機で乾燥及び繊維間結合させて繊維マットとする。なお、湿式法における熱可塑性合成樹脂は、熱可塑性合成樹脂の粉末体を用いる。湿式法(抄紙法)を用いる場合の熱可塑性合成樹脂は、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等の粉末が選択され得る。
【0023】
ここで、繊維補強材は、チヨツプドストランド等の無機繊維であるガラス繊維や、有機繊維であるジュート(黄麻)、ケナフ(洋麻)、ラミー、ヘンプ(麻)、サイザル麻、竹等の天然繊維等が適宜選択され得る。例えば、第1繊維層10における繊維補強材は、安価で強度向上を図るうえで無機繊維としてのガラス繊維で構成されている。
【0024】
ボディアンダーカバー1は、第1繊維層10や他の不織布が積層された積層体を加熱軟化処理する加熱工程と、加熱工程で加熱された積層体をプレス型により両面から挟んで冷却しながら加圧するプレス成形工程を経て、車両下面に沿った三次元の面形状に成形された繊維成形体20とする。また、ボディアンダーカバー1は、第1繊維層10と他の不織布以外に、それらの間に通気遮断層などの非通気性樹脂フィルムを積層してもよい。これにより、ボディアンダーカバー1は、繊維成形体20の繊維間の微細な穴の構成により吸音性能を向上させることができる。
【0025】
次にボディアンダーカバー1の構造について説明する。
図2~5に示すように、ボディアンダーカバー1における繊維成形体20は、吸音面30と、延出面40を有する。吸音面30は、車体下面Bに沿って面するように配されて車両内外の騒音を吸音する面である。延出面40は、吸音面30の外周縁から車体下面Bに向かって延在する面である。ここで、吸音面30と延出面40は、上述したプレス成型工程において厚みを異ならせるものであり、延出面40の方が吸音面30よりも相対的に厚み方向に圧縮された厚みで構成されている(延出面40の厚み<吸音面30の厚みの関係)。
【0026】
延出面40には、側方延出面41と前方延出面42を有している。側方延出面41は、
図2~4に示すように延出面40のうち車両幅方向に交差する面である。前方延出面42は、
図5に示すように、延出面40のうち車両前方側に面する位置に配される面である。前方延出面42は、車体下面B側に近接する近接部位44よりも、吸音面30と繋がる連結部位46が車両後方側に位置するように傾斜する傾斜面48が設けられている。
【0027】
延出面40には、
図2~5に示すように、厚み方向に貫通する線状のスリット50を有している。スリット50は、前方延出面42における連結部位46及び側方延出面41との間に跨って連続した線状に設けられている。また、スリット50は、傾斜面48よりも車両後方側であって連結部位46の位置に設けられる。さらに、傾斜面48よりも車両後方側の位置の連結部位46及び側方延出面41は、内方に向かって凹んだ凹状部60を有する。スリット50は、係る凹状部60の部位において厚み方向に貫通する線状に設けられる。これにより、スリット50の開口縁部52は、車両前方側の前方縁部54と、車両後方側の後方縁部56とが互いに離間した形状である。また、スリット50における前方縁部54と後方縁部56は、車体下面B側に向かって屈曲する屈曲部54a、屈曲部56aを有する。これにより、例えば車両走行時に伴い前方延出面42が空気抵抗によって撓むと、傾斜面48の下端側が後方に向かって移動して弾性変形し、前方縁部54と後方縁部56が厚み方向に重なる関係となる(
図5の仮想線で示した状態)。
【0028】
このように、実施形態に係るボディアンダーカバー1によれば、繊維成形体20で構成されるため、軽量化が図れる。また、繊維成形体20は、車体下面Bに沿って面するように配されて車両内外の騒音を吸音する吸音面30を有する。これにより、車両内外の騒音対策の改善を図ることができる。また、ボディアンダーカバー1は、吸音面30よりも相対的に厚み方向に圧縮された厚みで構成されると共に吸音面30の外周縁から車体下面Bに向かって延在する延出面40を備えている。この延出面40は、車両前方側に面する位置に配される前方延出面42を有する。前方延出面42は、車体下面B側に近接する近接部位44よりも、吸音面30と繋がる連結部位46が車両後方側に位置するように傾斜する傾斜面48が設けられている。また、延出面40は、厚み方向に貫通する線状のスリット50を有する。そのため、前方延出面42は、スリット50によって傾斜面48の下端側が後方に向かって移動可能に弾性変形する。これにより、ボディアンダーカバー1は、傾斜面48の弾性変形する構造によって、走行中における飛び石等の異物の飛散に伴う衝撃を吸収し易くする。もって、軽量化と車両内外の騒音対策の改善とを図りつつ、走行中における飛び石等の異物の飛散による破損の抑制も図ることのできるボディアンダーカバー1を提供することができる。
【0029】
また、係るボディアンダーカバー1の延出面40は、吸音面30の外周縁から車体下面Bに向かって延在するため吸音面30から屈曲している。ここで、延出面40は、吸音面30よりも相対的に厚み方向に圧縮された厚みで構成される。そのため、延出面40の屈曲した部位は、走行中における飛び石等の異物の飛散があるとその衝撃伝播によって脆性破壊を引き起こしやすい。特に延出面40のうち前方延出面42は、走行中における飛び石等の異物の飛散が当たる確率が高いことから破損する懸念が増している。そのため、前方延出面42は、上端より下端が車両後方側に位置する傾斜した姿勢とすることで、走行中における飛び石等の異物の飛散を受け流す態様とされている。ここで、係る前方延出面42は、その傾斜する姿勢をできる限り、路面に沿った方向とする(換言すれば、
図5の傾斜角度θを小さくする)ことで走行中における飛び石等の異物の飛散を受け流し易いことが考えられるものの、前方延出面42を寝かせる姿勢にするにつれて吸音面30の面積を多く確保できないという問題があった。そこで、上述するスリット50の構成によって、傾斜面48が弾性変形する構造のため走行中における飛び石等の異物の飛散に伴う衝撃を吸収し易い。そのため、上記ボディアンダーカバー1は、傾斜面48を過度に寝かせることなく吸音面30の面積を多く確保し得る(換言すれば、
図5の傾斜角度θを大きくすることができるため、全体として吸音面30の面積をより多く確保できる)。
【0030】
また、スリット50は、傾斜面48よりも車両後方側の位置であって、且つ、前方延出面42における連結部位46と、側方延出面41とに跨って連続して線状に設けられている。これにより、傾斜面48がより一層弾性変形し易い構造となり、走行中における飛び石等の異物の飛散に伴う衝撃を吸収し易くすることができる。
【0031】
また、スリット50の開口縁部52における車両前方側の前方縁部54と、車両後方側の後方縁部56とが互いに離間した形状であることにより、傾斜面48の弾性変形量を増加することができる。
【0032】
また、傾斜面48の下端側が後方に向かって移動して弾性変形するときにおいて、前方縁部54と後方縁部56が厚み方向に重なる関係となる構成を有する。これにより、走行中における飛び石等の異物の飛散に伴う衝撃を吸収し易くすることと、走行時においてスリット50の開口を小さくして異物の進入を抑制することの両立を図ることができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の車両用アンダーカバーは、本実施の形態に限定されず、その他各種の形態で実施することができるものである。例えば、本実施形態の車両用アンダーカバーは、ボディアンダーカバーを例示したが、これ以外に車両床下のアンダーカバーであれば、エンジンアンダーカバー、フロアカバー、などに適用し得る。
【符号の説明】
【0034】
1 ボディアンダーカバー(車両用アンダーカバー)
10 第1繊維層
20 繊維成形体
30 吸音面
40 延出面
41 側方延出面
42 前方延出面
44 近接部位
46 連結部位
48 傾斜面
50 スリット
52 開口縁部
54 前方縁部
54a 屈曲部
56 後方縁部
56a 屈曲部
60 凹状部
B 車体下面
θ 傾斜角度