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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】無菌サンプリング装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/26 20060101AFI20230605BHJP
【FI】
C12M1/26
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019137233
(22)【出願日】2019-07-25
(65)【公開番号】P2021019519
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197169
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 潤二
(72)【発明者】
【氏名】牧野 穂高
(72)【発明者】
【氏名】久保 寛嗣
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-180594(JP,A)
【文献】特開2012-200239(JP,A)
【文献】特開平5-176752(JP,A)
【文献】特開2016-220590(JP,A)
【文献】国際公開第2012/002497(WO,A1)
【文献】特表2004-510431(JP,A)
【文献】特開平7-294534(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0128087(US,A1)
【文献】国際公開第2016/066766(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/066768(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/108091(WO,A2)
【文献】生物工学,2018年,Vol.96, No.6,pp.324-327
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
G01N1/00-1/44
C12N1/00-7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無菌サンプリング装置であって、
細胞を含む培地を収容する第1タンクと接続するための第1流路と;
緩衝液を収容する第2タンクと接続するための第2流路と;
外気と連通した第3流路と;
前記第2流路と前記第3流路とが合流する第1分岐部を有する第4流路と;
前記第1流路と前記第4流路とが合流する第2分岐部を有する第5流路と;
前記第5流路の下流にある第3分岐部から分岐する第6流路と;
前記第3分岐部から分岐する第7流路と;
前記第7流路に設けられたサンプリング部と、
を備え、ここで:
前記第6流路は、前記第6流路内の流体を送り出す第1ポンプが設けられ;
前記第7流路は、前記第7流路内の流体を送り出す第2ポンプが設けられ;
前記第2流路は第1開閉機構を有し;前記第3流路が第2開閉機構を有し;前記第4流路が第3開閉機構を有し;前記第1流路が第4開閉機構を有し;前記第6流路が第5開閉機構を有し;そして、前記第7流路が第6開閉機構を有し、
前記第1開閉機構が開く場合は前記第2開閉機構が閉じ、又は、前記第2開閉機構が開く場合は前記第1開閉機構が閉じるよう作動し;
前記第3開閉機構が開く場合は前記第4開閉機構が閉じ、又は、前記第4開閉機構が開く場合は前記第3開閉機構が閉じるよう作動し;
前記第5開閉機構が開く場合は前記第6開閉機構が閉じ、又は、前記第5開閉機構が開く場合は前記第6開閉機構が閉じるよう作動し;そして
前記第2ポンプによって流体を送り出す速度が、前記第1ポンプによって流体を送り出す速度よりも速いことを特徴とする、無菌サンプリング装置。
【請求項2】
前記第1流路は、前記第1流路内の流体の移動を、前記第1タンクから前記第2分岐部の方向へ限定するための一方向弁を備える、請求項1に記載の無菌サンプリング装置。
【請求項3】
前記第1流路は、第1無菌接続コネクタをさらに備える、請求項1又は2に記載の無菌サンプリング装置。
【請求項4】
前記第1流路は、殺菌化手段をさらに備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の無菌サンプリング装置。
【請求項5】
前記第5流路の流体を識別するための、流体識別センサをさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の無菌サンプリング装置。
【請求項6】
前記第2流路は、第2無菌接続コネクタをさらに備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の無菌サンプリング装置。
【請求項7】
前記第1開閉機構の上流にある前記第2流路はさらに分岐し、緩衝液を収容する第3タンクと連通する第8流路を備える、請求項1~6のいずれか1項に記載の無菌サンプリング装置。
【請求項8】
前記第8流路は、第3無菌接続コネクタをさらに備える、請求項7に記載の無菌サンプリング装置。
【請求項9】
前記サンプリング部は、前記サンプリング部のサンプル吐出部から吐出されるサンプルを回収する容器を設置するサンプル回収部を備える、請求項1~8のいずれか1項に記載の無菌サンプリング装置。
【請求項10】
前記サンプリング部は前記第7流路の途中に設けられ、
ここで前記サンプリング部は所定量のサンプルを溜めるサンプル貯留部を有し、
前記第7流路の末端は外気と連通し、
前記第2ポンプは、前記サンプリング部と前記第7流路の前記末端の間に設けられ、
前記サンプル貯留部とサンプル吐出部との間に第9流路が設けられ、
前記第9流路は、第7開閉機構を備える、
請求項1~9のいずれか1項に記載の無菌サンプリング装置。
【請求項11】
前記サンプリング部は、前記サンプル貯留部に貯留されるサンプルの量を検出するレベルセンサを有する、請求項10に記載の無菌サンプリング装置。
【請求項12】
前記サンプリング部は前記第7流路の途中に設けられ、
ここで前記サンプリング部は所定量のサンプルを溜めるバルブユニットであり、
前記第7流路の末端は外気と連通し、
前記第2ポンプは、前記バルブユニットと前記第7流路の前記末端の間に設けられた、
請求項1~9のいずれか1項に記載の無菌サンプリング装置。
【請求項13】
前記第6流路は、流量検出手段を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の無菌サンプリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無菌サンプリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
再生医療で用いられる細胞や、バイオ医薬品等の作製に用いられる細胞を培養する培養装置は、長期間、無菌状態を維持しながら培養を可能とする必要がある。しかしながら、細胞の性質や状態は、培養条件や細胞株の種類などによって変化してしまい、時として所望の性質を有する細胞が得られない場合がある。そのため、培養期間中の任意の時期に、細胞や培養環境の状態を調べる必要がある。しかしながら、培養容器の中には貴重なサンプルが含まれているため、培養容器内の無菌性は維持したまま、細胞を含む培地などを非無菌空間に搬出しなければならない。
【0003】
従来、開放系の細胞培養器内の培地をサンプリングする場合、無菌空間を維持したインキュベータ(例えばアイソレータ)に隣接して設けられたパスボックス等を介し、サンプルを非無菌空間に搬出していた。しかしながら、この方式ではサンプリングに手間と時間がかかるという問題があった。
【0004】
このような課題に対し、無菌状態に保たれたインキュベータ内に複数の細胞培養器を収容可能なアイソレータ方式のサンプリングシステムが提案されている(例えば、特許文献1)。当該システムには、無菌空間を保つために培養液の流れを無菌空間の内部から外部に限定する一方向弁が設けられており、それにより、アイソレータ内部の無菌性を維持している。一方で、この方式は、アイソレータシステムを必要とするものであり、大量の細胞を培養する閉鎖系タンク式の培養装置には向いていない。
【0005】
バイオ医薬品のようなタンクを用いた大量培養の場合、培養タンクの一部にサンプリング用のラインが設けられており、そこからサンプルを回収している(例えば、特許文献2)。しかしながら、この方式の場合、サンプリングに使用したラインは無菌性を保証できないため、必要なサンプル回数分のラインを事前に用意しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-200239号公報
【文献】特開2005-181336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
無菌環境下での細胞加工製品又はバイオ医薬品などの製造において、品質管理のために、分析用サンプルを任意の量・回数、簡便に取得することは困難であった。本発明は、培養環境の無菌性を維持したまま、分析用サンプルを簡便に作業者の目的・用途に応じて取得することを可能とする無菌サンプリング装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に対し、本発明者らが鋭意検討を行ったところ、培養環境の無菌性を維持したまま、分析用サンプルを簡便に作業者の目的・用途に応じて取得することを可能とする無菌サンプリング装置を開発するに至った。すわなち、本発明は、以下を含む。
【0009】
[1] 無菌サンプリング装置であって、
細胞を含む培地を収容する第1タンクと接続するための第1流路と;
緩衝液を収容する第2タンクと接続するための第2流路と;
外気と連通した第3流路と;
前記第2流路と前記第3流路とが合流する第1分岐部を有する第4流路と;
前記第1流路と前記第4流路とが合流する第2分岐部を有する第5流路と;
前記第5流路の下流にある第3分岐部から分岐する第6流路と;
前記第3分岐部から分岐する第7流路と;
前記第7流路に設けられたサンプリング部と、
を備え、ここで:
前記第6流路は、前記第6流路内の流体を送り出す第1ポンプが設けられ;
前記第7流路は、前記第7流路内の流体を送り出す第2ポンプが設けられ;
前記第2流路は第1開閉機構を有し;前記第3流路が第2開閉機構を有し;前記第4流路が第3開閉機構を有し;前記第1流路が第4開閉機構を有し;前記第6流路が第5開閉機構を有し;そして、前記第7流路が第6開閉機構を有し、
前記第1開閉機構が開く場合は前記第2開閉機構が閉じ、又は、前記第2開閉機構が開く場合は前記第1開閉機構が閉じるよう作動し;
前記第3開閉機構が開く場合は前記第4開閉機構が閉じ、又は、前記第4開閉機構が開く場合は前記第3開閉機構が閉じるよう作動し;
前記第5開閉機構が開く場合は前記第6開閉機構が閉じ、又は、前記第5開閉機構が開く場合は前記第6開閉機構が閉じるよう作動し;そして
前記第2ポンプによって流体を送り出す速度が、前記第1ポンプによって流体を送り出す速度よりも速いことを特徴とする、無菌サンプリング装置。
[2] 前記第1流路は、前記第1流路内の流体の移動を、前記第1タンクから前記第2分岐部の方向へ限定するための一方向弁を備える、項目1に記載の無菌サンプリング装置。
[3] 前記第1流路は、第1無菌接続コネクタをさらに備える、項目1又は2に記載の無菌サンプリング装置。
[4] 前記第1流路は、殺菌化手段をさらに備える、項目1~3のいずれか1項に記載の無菌サンプリング装置。
[5] 前記第5流路の流体を識別するための、流体識別センサをさらに備える、項目1~4のいずれか1項に記載の無菌サンプリング装置。
[6] 前記第2流路は、第2無菌接続コネクタをさらに備える、項目1~5のいずれか1項に記載の無菌サンプリング装置。
[7] 前記第1開閉機構の上流にある前記第2流路はさらに分岐し、緩衝液を収容する第3タンクと連通する第8流路を備える、項目1~6のいずれか1項に記載の無菌サンプリング装置。
[8] 前記第8流路は、第3無菌接続コネクタをさらに備える、項目7に記載の無菌サンプリング装置。
[9] 前記サンプリング部は、前記サンプリング部のサンプル吐出部から吐出されるサンプルを回収する容器を設置するサンプル回収部を備える、項目1~8のいずれか1項に記載の無菌サンプリング装置。
[10] 前記サンプリング部は前記第7流路の途中に設けられ、
ここで前記サンプリング部は所定量のサンプルを溜めるサンプル貯留部を有し、
前記第7流路の末端は外気と連通し、
前記第2ポンプは、前記サンプリング部と前記第7流路の前記末端の間に設けられ、
前記サンプル貯留部とサンプル吐出部との間に第9流路が設けられ、
前記第9流路は、第7開閉機構を備える、
項目1~9のいずれか1項に記載の無菌サンプリング装置。
[11] 前記サンプリング部は、前記サンプル貯留部に貯留されるサンプルの量を検出するレベルセンサを有する、項目10に記載の無菌サンプリング装置。
[12] 前記サンプリング部は前記第7流路の途中に設けられ、
ここで前記サンプリング部は所定量のサンプルを溜めるバルブユニットであり、
前記第7流路の末端は外気と連通し、
前記第2ポンプは、前記バルブユニットと前記第7流路の前記末端の間に設けられた、
項目1~8のいずれか1項に記載の無菌サンプリング装置。
[13] 前記第6流路は、流量検出手段を有する、項目1~12のいずれか1項に記載の無菌サンプリング装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、サンプル回収時以外は、常に緩衝液を、緩衝液及び気体が共通して通過する流路に流すことによって、培養期間中の培養槽内の環境の無菌性を維持することができ、一方で、培養槽内の環境の無菌性を維持しながら、必要な時に分析用サンプルを簡便かつ迅速に回収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A図1Aは、一実施形態に係る無菌サンプリング装置の概略構成図である。
図1B図1Bは、一実施形態に係る無菌サンプリング装置の概略構成図である。
図1C図1Cは、一実施形態に係る無菌サンプリング装置の概略構成図である。
図2図2は、一実施形態に係る無菌サンプリング装置の概略構成図である。
図3図3は、図2の無菌サンプリング装置におけるサンプリング部の動作を示す図である。
図4図4は、一実施形態に係る無菌サンプリング装置のサンプリング部の概略構成図である。
図5図5は、一実施形態に係る無菌サンプリング装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、必要に応じて図面を参照しながら発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
本明細書において、「第1」「第2」「第3」・・・等の用語は、1つの要素をその他の要素と区別するために用いており、例えば、第1の要素を第2の要素と表現し、同様に第2の要素を第1の要素と表現してもよく、これによって本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0014】
<無菌サンプリング装置(第1態様)>
図1A~Cは、本発明の一実施形態に係る無菌サンプリング装置1の概略構成図である。一実施形態において、無菌サンプリング装置1は、
細胞を含む培地を収容する第1タンク10と接続するための第1流路200と;
緩衝液を収容する第2タンク202と接続するための第2流路201と;
外気と連通した第3流路203と;
前記第2流路201と前記第3流路203とが合流する第1分岐部204を有する第4流路205と;
前記第1流路200と前記第4流路205とが合流する第2分岐部206を有する第5流路207と;
前記第5流路207の下流にある第3分岐部208から分岐する第6流路209と;
前記第3分岐部208から分岐する第7流路210と;
前記第7流路210に設けられたサンプリング部30と、
を備え、ここで:
前記第1流路200は、前記第1流路200内の流体の移動を、前記第1タンク10から前記第2分岐部206の方向へ限定するための一方向弁222を備え、
前記第6流路209は、前記第6流路209内の流体を送り出す第1ポンプ211が設けられ;
前記第7流路210は、前記第7流路210内の流体を送り出す第2ポンプ212が設けられ;
前記第2流路201は第1開閉機構213を有し;前記第3流路203が第2開閉機構214を有し;前記第4流路205が第3開閉機構216を有し;前記第1流路200が第4開閉機構217を有し;前記第6流路209が第5開閉機構219を有し;そして、前記第7流路210が第6開閉機構220を有し、
前記第1開閉機構213が開く場合は前記第2開閉機構214が閉じ、又は、前記第2開閉機構214が開く場合は前記第1開閉機構213が閉じるよう作動し;
前記第3開閉機構216が開く場合は前記第4開閉機構217が閉じ、又は、前記第4開閉機構217が開く場合は前記第3開閉機構216が閉じるよう作動し;
前記第5開閉機構219が開く場合は前記第6開閉機構220が閉じ、又は、前記第6開閉機構220が開く場合は前記第5開閉機構219が閉じるよう作動し;そして
前記第2ポンプ212によって流体を送り出す速度が、前記第1ポンプ211によって流体を送り出す速度よりも速いことを特徴としている。
【0015】
本明細書において「細胞を含む培地を収容する第1タンク10」とは、細胞を培養する際に用いられる任意の培養槽を意味するものであり、第1タンク10としては、公知の筐体型又は可撓性のバック型の培養槽を用いることができる。本発明に適用される第1タンク10の容量は、用途に応じて選択することができ、特に限定されない。第1タンク10は、その一部に、本発明の無菌サンプリング装置にサンプルを送るための第1タンク排出ライン101が設けられたものであってもよく、無菌的に第1流路200が接続されるものであってもよく、第1流路200と連通したものであってもよい。好ましくは、第1タンク10は、無菌接続コネクタ(図1A~Cでは、第1無菌接続コネクタ224)を介して、第1流路200と無菌的に接続される。第1タンク10は、第1無菌接続コネクタ224を介して第1流路200と無菌的に接続できることにより、第1タンク10と、無菌サンプリング装置1とを別々に提供することができ、任意の時に組み合わせて使用することが可能となる。また、第1無菌接続コネクタ224を介して第1流路200と無菌的に接続することにより、無菌サンプリング装置を使用する度に第1タンク10と第1流路200との間で滅菌処理を行う必要がなくなるものとなる。
【0016】
一実施形態において、第1流路200は、第1流路200内の流体の移動を、第1タンク10から第2分岐部206の方向へ限定するための一方向弁222をさらに備えている。これにより、第1タンク10の内部へ流体が逆流することを防止することができ、第1タンク10の内部をコンタミネーションのリスクを低減させることができる。
【0017】
一実施形態において、第1流路200は殺菌化手段223を備えてもよい。本発明において、第1流路200の周囲に殺菌化手段223が適用されることにより、サンプルを第1タンク10から非無菌空間へ送出する機構に異常が生じた場合であっても、殺菌化手段223によって菌を死滅させることで、第1タンク10の内部が汚染することを防止することが可能となる。
【0018】
本明細書において、殺菌化手段223とは、生存微生物を除去し、又は予め指定されたレベルまで減少させることができる手段をいい、例えば、放射線(例えば、ガンマ線)、電子線、紫外線又は熱を用いる殺菌化手段223を採用することができる。ガンマ線は、60Coや137Csなどがガンマ崩壊するときに放出されるものであり、ガンマ線を用いる殺菌化手段223は、生体高分子(特にDNA)に損傷を与え、微生物を殺菌することができる。電子線を用いる殺菌化手段223も、生体高分子(特にDNA)に損傷を与え、微生物を殺菌することができる手段である。殺菌化手段223が、熱を与えて殺菌する手段である場合、例えば、80℃以上、90℃以上、100℃以上、110℃以上、120℃以上、130℃以上、140℃以上、又は150℃以上に加熱し、殺菌することができる。殺菌化手段223が、紫外線を与えて殺菌する手段である場合、紫外線が微生物の生体高分子(特にDNA)に損傷を与え、微生物を殺菌することができる。本発明の殺菌化手段223において用いることができる紫外線の波長は、好ましくは、深紫外波長であり、200nm~350nm、より好ましくは230nm~330nm、さらに好ましくは250nm~300nmである。殺菌化手段223で使用される紫外線は、公知の光源を用いて発生させることができ、例えば、深紫外波長にて発光する発光ダイオード(LED)を用いて発生させることができる。本発明において、殺菌化手段223は、小型化可能であり、容易に着脱可能であることが好ましく、例えば、深紫外波長にて発光するLEDを用いる殺菌化手段223が好ましい。
【0019】
殺菌化手段223が適用される第1流路200の部分は、殺菌化手段223を適用した場合、第1流路200内に殺菌効果を発揮することを妨げず、かつ、生体物質が吸着され難い素材により形成されるものがよく、使用する殺菌化手段223に応じて適宜選択することができる。例えば、ガンマ線又は電子線を用いる殺菌化手段223を用いる場合は、ガンマ線又は電子線の透過を妨げず、ガンマ線又は電子線により劣化が少ない第1流路200を用いることができ、医療用チューブとして従来用いられているチューブを使用可能である(例えば、シリコーンゴムチューブ、ポリエチレンチューブ、ポリイミドチューブ、など)。殺菌化手段223が、熱を与えて殺菌する手段である場合は、第1流路200としては、シリコーンゴムチューブや、金属製チューブ、ポリイミドチューブ、フッ素系樹脂チューブなどを用いることができる。例えば、殺菌化手段223が、紫外線を用いる殺菌化手段223である場合は、第1流路200として、紫外線の透過を妨げず、生体物質が吸着され難い素材からなるチューブであって、例えば、フッ素系樹脂チューブ(PTFEチューブ、FEPチューブ、THVチューブ、PFAチューブ、ETFEチューブ、又はPVDFチューブ)を用いることができ、好ましくは、FEPチューブである。
【0020】
本発明の無菌サンプリング装置1は、緩衝液を収容する第2タンク202と接続するための第2流路201を有する。第2タンク202に注入される緩衝液としては、回収されるサンプル(例えば、第1タンク10に含まれる、細胞を含む培地)に含まれる物質の性質を変化させないように、pHの変動を最小限に抑える性質を有する溶液を使用することができ、例えば、細胞の培養に用いられる液体培地(例えば、DMEM、RPMI-1640等)の他、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、HEPES緩衝液、HEPPS緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液などを用いることができる。緩衝液は、回収するサンプルの種類や目的に応じて適宜選択することができる。また、緩衝液の代わりに、水や生理食塩水を使用してもよい。
【0021】
第2タンク202は、予め無菌的に第2流路201と連通されたものが提供されてもよく、無菌接続コネクタ(図1A~Cでは、第2無菌接続コネクタ226)を介して無菌的に接続するものであってもよい。第2流路201が第2無菌接続コネクタ226を有する場合、第2タンク202と、無菌サンプリング装置1とを別々に提供することができ、任意の時に組み合わせて使用することが可能となり好ましい。
【0022】
他の態様において、第1開閉機構213(後述)の上流にある第2流路201は、さらに分岐し、緩衝液を収容する第3タンク227と連通する第8流路228を備えてもよい。これにより、第2タンク202内の緩衝液等が全て排出された場合に、緩衝液を含む第3タンク227を追加的に無菌サンプリング装置1に接続することができる。第8流路228は、好ましくは無菌接続コネクタ(図1A~Cでは、第3無菌接続コネクタ(オス型)229a)を備えている。これにより、第3無菌接続コネクタ(メス型)229bを有する第3タンク227と無菌的、かつ、任意の時に接続することができる。その際、第2流路201において、第8流路228と第2流路201とに分岐した箇所を無菌的に切断可能な装置(例えば、鉗子、ピンチバルブ等)を用いて切断してもよい。さらに他の態様において、第2流路201は、2以上分岐した流路を備えて、2以上の追加の緩衝液を収容するタンクと接続されるものであってもよい。
【0023】
本発明において適用され得る無菌接続コネクタ(例えば、第1無菌接続コネクタ224、第2無菌接続コネクタ226、及び第3無菌接続コネクタ229)は、オス型の無菌接続コネクタ(例えば、図1A~Cの第3無菌接続コネクタ(オス型)229a)とメス型の無菌接続コネクタ(例えば、図1A~Cの第3無菌接続コネクタ(メス型)229b)とを接合し、それぞれの開口部を密閉するメンブレンストリップ(図示しない)を引っ張って剥がすことにより、無菌的に連結することができる。無菌接続コネクタは市販されているものを利用することができ、例えば、ポール社(米国)、ザルトリウス社(ドイツ)又はコールダー・プロダクツ・カンパニー社(米国)などから入手することができる。オス型又はメス型の無菌接続コネクタは、入れ替えて利用してもよい。
【0024】
外気と連通した第3流路203は、第1分岐部204で第2流路201と合流し、第4流路205と連通している。第3流路203の末端は、通気フィルタ230を有しており、流路内が汚染されることを防ぐと同時に、流路内への気体の取り込みは妨げない。
【0025】
第1流路200と第4流路205は、第2分岐部206で合流し、第5流路207と連通している。すなわち、第5流路207は、第1タンク10の培地、第2タンク202(又は第3タンク227)の緩衝液、及び気体が共通して通過する。
【0026】
第5流路207は、その下流にある第3分岐部208から第6流路209と第7流路210へ分岐している。第6流路209の末端は、通気フィルタ230を有する第1廃液ボトル232と接続され得る。第7流路210には、サンプリング部30が設けられている。サンプリング部30は、サンプル吐出部300から、採取されたサンプルを吐出する。一実施態様において、サンプル吐出部300は、例えば、第7流路210と流体連通された、ピペットに取り付けられるディスポーザブルチップ301であってもよい。一実施態様において、サンプリング部30は、上下、前後、及び/又は左右に移動する機構によって任意の座標に移動可能に構成されるものであってもよい。
【0027】
一実施態様において、無菌サンプリング装置1は、サンプリング部30のサンプル吐出部300から吐出されるサンプルを回収する容器を設置するサンプル回収部31が備えられていてもよい。サンプル回収部31は、例えば、第2廃液ボトル310が備えている。第2廃液ボトル310は、サンプリング部30内の流路を緩衝液で洗浄した後の廃液を回収する。第2廃液ボトル310を設置するサンプル回収部31には、例えば第1流体検出手段320が設けられており、第2廃液ボトル310に排出された廃液の量をモニタリングすることができる。第1流体検出手段320(及び後述の第2流体検出手段321)は、第2廃液ボトル310に排出された廃液の量をモニタリングすることができる手段であればよく、例えば、重量センサ、レベルセンサ又はCCDカメラ等であってもよい。
【0028】
一実施態様において、サンプル回収部31には、任意のサンプル回収用の容器、例えば、15mL遠心管311、50mL遠心管312及び/又は1.5mL遠心チューブ313を設置することができる。任意のサンプル回収用の容器を設置するために、サンプル回収部31には、例えば、15mL遠心管ホルダ3110、50mL遠心管ホルダ3120及び/又は1.5mL遠心チューブホルダ3130が設置されている。これによって、市販の15mL遠心管311、50mL遠心管312及び/又は1.5mL遠心チューブ313をサンプル回収部31に設置することができる。15mL遠心管311、50mL遠心管312及び/又は1.5mL遠心チューブ313を設置するサンプル回収部31には、例えば第2流体検出手段321が設けられており、15mL遠心管311、50mL遠心管312及び/又は1.5mL遠心チューブ313に排出されたサンプルの量をモニタリングすることができる。一実施態様において、サンプル回収部31は、上下、前後、及び/又は左右に移動する機構によって任意の座標に移動可能に構成されるものであってもよい。これにより、サンプル吐出部300から排出されるサンプルを確実に回収することができる。サンプル回収部31に設置可能なサンプル回収用の容器は、上記に限定されず、用途に応じて適宜選択することが可能である。
【0029】
第6流路209は、第6流路209内の流体を送り出す第1ポンプ211が設けられており、第7流路210は、前記第7流路210内の流体を送り出す第2ポンプ212が設けられている。第1ポンプ211が駆動することにより、サンプリング部30にサンプル、緩衝液又は気体を送り出すことができる。また、第2ポンプ212が駆動することにより、第6流路209にサンプル、緩衝液又は気体を送り出すことができる。第1ポンプ211及び第2ポンプ212は、例えば、チューブポンプ(ペリスタポンプ)であってもよく、ピエゾポンプであってもよく、流体を送り出すことができるポンプであれば使用することができる。
【0030】
第1ポンプ211は、主に第2タンク202(又は第3タンク227等)に含まれる緩衝液を流路に流し続けるために使用されるものであり、これによって、第1流路200が細菌などによって汚染されることを防止するために使用される。そのため、使用する緩衝液の量を節約する観点から、第1ポンプ211は、できるだけ低速のポンプが使用されることが好ましい。一方、第2ポンプ212は、主に第1タンク10内のサンプルをサンプリング部30へと送りだすために使用されるものであり、サンプルの性質が損なわない程度の速度であることが好ましい。第1ポンプ211及び第2ポンプ212の流速は、流路の径、取り扱うサンプルの量、第1タンク10内の培地の量、第2タンク202(又は第3タンク227等)の緩衝液の量などによって適宜調整されるため、具体的に限定されないが、一実施形態において、第2ポンプ212によって流体を送り出す速度が、第1ポンプ211によって流体を送り出す速度よりも速いことが好ましい。
【0031】
第2流路201は第1開閉機構213を有し、第3流路203は第2開閉機構214を有している。第1開閉機構213が開く場合は、前記第2開閉機構214が閉じ、又は、第2開閉機構214が開く場合は第1開閉機構213が閉じるよう作動する。これにより、第2流路201と第3流路203に含まれるそれぞれの流体が、同時に第4流路205へと送り込まれることが防止される。一実施態様において、第1開閉機構213及び第2開閉機構214は、第1開閉切り替えデバイス215によって、交互に開閉する。
【0032】
第4流路205は第3開閉機構216を有し、第1流路200は第4開閉機構217を有している。第3開閉機構216が開く場合は第4開閉機構217が閉じ、又は、第4開閉機構217が開く場合は第3開閉機構216が閉じるよう作動する。これにより、第4流路205と第1流路200に含まれるそれぞれの流体が、同時に第5流路207へと送り込まれることが防止される。一実施態様において、第3開閉機構216及び第4開閉機構217は、第2開閉切り替えデバイス218によって、交互に開閉する。
【0033】
第6流路209は、第5開閉機構219を有し、第7流路210が第6開閉機構220を有している。第5開閉機構219が開く場合は第6開閉機構220が閉じ、又は、第6開閉機構220が開く場合は第5開閉機構219が閉じるよう作動する。これにより、第6流路209と第7流路210のいずれかの所望の流路に流体を選択的に送り出すことができる。一実施態様において、第5開閉機構219及び第6開閉機構220は、第3開閉切り替えデバイス221によって、交互に開閉する。
【0034】
第1~第6開閉機構(及び後述の第7開閉機構)は、流路を開閉する機構であればよく、例えば、開閉弁、好ましくはピンチバルブである。ピンチバルブであれば、流路を挟むことで、流路内の流体の流れを遮断することができる。一実施態様において、第1~第6開閉機構(及び後述の第7開閉機構)が、ピンチバルブである場合、流路(第1~第9流路)は、滅菌可能であり、可撓性を有するチューブを用いることが好ましく、例えば、医療用チューブを採用することができる(例えば、シリコーンゴムチューブ、ポリエチレンチューブ、ポリイミドチューブ、フッ素系樹脂チューブなど)。
【0035】
一実施態様において、無菌サンプリング装置1は、第5流路207の流体を識別するための、流体識別センサ225を備えてもよい。流体識別センサ225により、第5流路207内を流れている流体の種類、例えば、サンプルを含む培地、緩衝液、又は気体(例えば空気)を識別することができる。流体識別センサ225は、公知のセンサ、例えば光学式センサや近接センサを用いることができる。例えば、光学式センサを用いる場合、所定の波長の光を第5流路207に垂直に照射し、反射光又は透過光を検出することによって、流体の種類を識別することができる。特に、第5流路207内を流れる流体の種類が変わる場合(例えば、緩衝液から空気に変わる場合など)、検出される信号が大きく変化するので、流体の種類が変わったことを識別することが可能となる。
【0036】
一実施態様において、第6流路209は、流量検出手段231(例えば、流量計)を有してもよい。流量検出手段231によって、第6流路209を通過する流体(例えば、緩衝液)の流量をモニタリングすることができ、流体(特に、緩衝液等)の流れが、確実に流路(特に、第5流路207)内で維持されていることを確認することができ、第1タンク10の内部が汚染されることを予防することができる。
【0037】
<無菌サンプリング装置(第2態様)>
図2は、本発明の他の実施形態に係る無菌サンプリング装置1aの概略構成図を示し、図3は、サンプリング部30aの動作を示している。ここでは、無菌サンプリング装置1と共通する部材についての説明は省略する。一実施態様において、無菌サンプリング装置1aのサンプリング部30aは、第7流路210aの途中に設けられ、
ここで前記サンプリング部30aは所定量のサンプルを溜めるサンプル貯留部302aを有し、
前記第7流路210aの末端は外気と連通し、
前記第2ポンプ212aは、前記サンプリング部30aと前記第7流路210aの前記末端の間に設けられ、
前記サンプル貯留部302aとサンプル吐出部300aとの間に第9流路303aが設けられ、
前記第9流路303aは、第7開閉機構304aを備えている。
【0038】
一実施態様において、第2ポンプ212aが、サンプリング部30aと第7流路210aの末端の間、すなわち、サンプリング部30aの下流に設けられることにより、例えば細胞を含むサンプルは、ポンプを備えた流路を通過しないで回収することができ、細胞に与えられる物理的ストレスを軽減することができる。第7流路210aの末端は、好ましくは、通気フィルタ230aを備えている。
【0039】
サンプリング部30aは所定量のサンプルを溜める、サンプル貯留部302aを有している。サンプル貯留部302aの容量は、用途や目的等によって適宜決定すればよく、特に限定されない。
【0040】
サンプル貯留部302aとサンプル吐出部300aとの間には、第9流路303aが設けられており、第9流路303aは、第7開閉機構304aを備えている。第7開閉機構304aを閉じ、第2ポンプ212aを図3(A)に示される方向に駆動することにより、サンプル貯留部302aの内部が陰圧となり、サンプルをサンプル貯留部302aへと溜めることができる(図3(A)参照)。
【0041】
第7開閉機構304aを開き、第6開閉機構220を閉じ、そして、第2ポンプ212aを図3(B)に示される方向に駆動することにより、サンプル貯留部302aの内部が陽圧となり、サンプルをサンプル吐出部300aから排出することができる(図3(B)参照)。
【0042】
一実施態様において、サンプリング部30aは、サンプル貯留部302aに貯留されるサンプルの量を検出するレベルセンサ305aを備えている。レベルセンサ305aによって、サンプル貯留部302aに貯留されたサンプル量を検出することができ、所望の量のサンプルがサンプル貯留部302aに貯留されたかどうかを判定することができる。
【0043】
<無菌サンプリング装置(第3態様)>
図4は、本発明の他の実施形態に係る無菌サンプリング装置のサンプリング部30bの概略構成図概略構成図を示している。
【0044】
一実施態様において、サンプリング部30bは第7流路210bの途中に設けられ、
ここで前記サンプリング部30bは所定量のサンプルを溜めるバルブユニット306bであり、
前記第7流路210bの末端は外気と連通し、
前記第2ポンプ212bは、前記バルブユニット306bと前記第7流路210bの前記末端の間に設けられている。
【0045】
バルブユニット306bは、流路を切り替えてサンプルを回収することができる公知のバルブユニットを使用することができる。また、さらに、バルブユニット306bに連結された計測器307bによって、サンプルの所望の成分を測定することが可能となる。
【0046】
本発明の一実施態様において、無菌サンプリング装置(1、1a)は、上記の記載の各構成要素と通信して、制御するための制御部(例えば、CPUユニット)、入力部(例えば、キーボード、マウス及び/又はタッチパネルなど)及び出力部(例えば、モニタ又はタッチパネルなど)を備えてもよい(図示しない)。
【0047】
<無菌サンプリング装置を使用したサンプルの回収方法>
図1A~Cは、一実施態様の無菌サンプリング装置1の動作を示す模式図である。また、図5は、無菌サンプリング装置1の動作を示すフローチャートである。
【0048】
無菌サンプリング装置1を使用したサンプルの回収方法を図面及び以下の表を参照しながら説明する。
【0049】
【表1】
【0050】
表1において、「作動対象部材」とは、各工程で作動させる無菌サンプリング装置1の各部材をいい、表1では略称として示している。各部材の参照部材番号は、「作動対象部材」の下に記載された番号に相当し、上記で説明した参照部材番号と一致する。
【0051】
表1において、「ポンプ(1)」及び「ポンプ(2)」は、それぞれ、「第1ポンプ211」及び「第2ポンプ212」を示す。「ON」は、対象のポンプが作動中であることを示す。「OFF」は、対象のポンプが停止中であることを示す。
【0052】
表1において、「バルブ(1)」、「バルブ(2)」及び「バルブ(3)」は、それぞれ「第1開閉切り替えデバイス215」、「第2開閉切り替えデバイス218」及び「第3開閉切り替えデバイス221」に相当する。表1に表記される「上」及び「下」は、図1A~Cの配管図において開放されている開閉機構の位置を示す。例えば、「バルブ(1)」が「上」であれば、第1開閉機構213が「開」で、第2開閉機構214が「閉」の状態であることを示す。
【0053】
表1において、「センサ(1)」、「センサ(2)」、「センサ(3)」及び「センサ(4)」は、それぞれ、「流体識別センサ225」、「流量検出手段231」、「第1流体検出手段320」及び「第2流体検出手段321」に相当する。
【0054】
「センサ(1)」は、緩衝液、空気又はサンプルの種別を判別する。表1の「L」は「液体」が検出されたことを示し、「A」は「空気」が検出されたことを示す。
【0055】
センサ(2)は、第6流路209を流れる液体の流速を計測する。表1の「Y」は液体の流れを検出したことを示し、「N」は液体の流れを検出しなかったことを示す。
【0056】
センサ(3)は、第2廃液ボトル310及に吐出されたサンプルの量を検出する。表1の「Y」は、サンプル吐出部300から吐出された緩衝液又はサンプルによって、量が増加したことを検出したことを示す。「Y→N」は、サンプル吐出部300から吐出された緩衝液又はサンプルによって量が増加し、その後、量の増加の停止を検出したことを示す。
【0057】
センサ(4)は、サンプル回収容器(例えば、15mL遠心管311、50mL遠心管312、1.5mL遠心チューブ313)に吐出されたサンプルの量を検出する。表1の「Y」は、サンプル吐出部300から吐出された緩衝液又はサンプルの量が、所定の量に達したことを示す。
【0058】
基本的な工程を、表1に記載の工程1~8に分けて説明する。
【0059】
工程1.緩衝液モード:
緩衝液を、継続的に第5流路207へと供給し、第6流路209を通って、第1廃液ボトル232へと排出させる(図1A参照)。長期間培養中の第1タンク10に連通する第1流路200から汚染物質(例えば細菌など)が侵入することを防止することができ、第1タンク10の内部が汚染されることを防止する。
【0060】
工程2.空気充填:
通気フィルタ230を介して外気と連通した第3流路203から空気を導入する。
【0061】
工程3.空気検知:
工程2で導入した空気層を、センサ(1)によって検出する。
【0062】
工程4.流路液入替:
第2ポンプ212を作動させ、陰圧によって、第1タンク10内のサンプルを第1流路200、第5流路207及び第7流路210へと取り込み、第2廃液ボトル310へとサンプルが吐出されるまでサンプルを吸引する。これにより、各流路に残存していた緩衝液が、サンプルを構成する溶液へと交換される。第1流体検出手段320が、サンプル量の増加を検知することにより、サンプルがサンプル吐出部300から吐出され所定の量にまで吐出された後、吐出が停止したことを検知することができる(図1B参照)。
【0063】
工程5.サンプル回収:
工程5の後、第2ポンプ212は一旦停止し、サンプリング部30又はサンプル回収部31を移動させて、サンプル吐出部300を所望のサンプル回収容器に挿入し、サンプルを吐出する準備を行う。サンプリング部30又はサンプル回収部31が移動する間、第1ポンプは動作し、第5開閉機構219が解放される。その後、サンプリング部30又はサンプル回収部31が移動を終えると、第1ポンプは停止し、第6開閉機構220が解放されるとともに、第2ポンプ212を作動させて、サンプル回収容器にサンプルを回収する。第2流体検出手段321によって検出されたサンプル量が、所定の閾値を超えた時に第2ポンプ212が停止する(図1C)。
【0064】
工程6.サンプリング部の洗浄(1):
サンプリング部30又はサンプル回収部31を移動させて、サンプル吐出部300を第2廃液ボトル310の上に移動させる。サンプリング部30又はサンプル回収部31が移動する間、第1ポンプは動作し、第5開閉機構219が解放される。その後、サンプリング部30又はサンプル回収部31が移動を終えると、第1ポンプは停止し、第6開閉機構220が解放されるとともに、バルブ(1)及びバルブ(2)を切り替え、第2ポンプ212を作動させて、緩衝液を第2流路201、第5流路207及び第7流路210へと取り込み、第2廃液ボトル310へと緩衝液を所定の量に達するまで排出させる。
【0065】
工程7.サンプリング部の洗浄(2):
バルブ(1)を切り替え、第2ポンプ212を作動させることで、第3流路203から空気を導入し、第5流路207及び第7流路210を通ってサンプル吐出部300から空気を排出させる。第1流体検出手段320が、重量の増加の停止を検知することにより、緩衝液が第5流路207、第7流路210及びサンプリング部30から全て排出されたことを検知することができる。その後、ディスポーザブルチップ301を新しいディスポーザブルチップ301と交換する。
【0066】
工程8.緩衝液モード:
基本的には、上記工程1と同様の工程を実施する。
【0067】
工程1~8を実施することにより、サンプル回収時以外は、常に緩衝液をサンプル回収用流路に流すことによって、培養期間中の培養槽内の環境の無菌性を維持することができ、一方で、培養槽内の環境の無菌性を維持しながら、必要な時に分析用サンプルを簡便かつ迅速に回収することが可能となる。上記工程1~8は、任意の工程を繰り返してもよく、例えば、工程6及び7を所望の回数繰り返すことにより、第5流路207、第7流路210及びサンプリング部30に残存したサンプルを十分に洗い流すことができる。
【0068】
上記工程1~8は、上述の制御部によってプログラミング制御され、自動でサンプリング可能な無菌サンプリング装置として具現化することもできる。本発明の無菌サンプリング装置は、例えば、図5に記載のフローチャートに沿って作動させることができる。
【0069】
例えば、緩衝液モード(図5の40、工程1)の時に、サンプル回収指示(図5の41)が命令された場合、流路液の入替が行われる(図5の43、上記の工程2~4)。サンプルの回収量及びサンプル数(サンプルの容器の数)は、予め、入力部より入力されている(図5の42)。サンプル吐出部300が所望のサンプル回収容器に挿入され、サンプルを吐出する準備が整えられる(図5の44)。サンプルがサンプル回収容器に吐出され(図5の45、工程5)、回収されたサンプルが規定量に達するとサンプルの吐出が停止する(図5の46及び47、工程5)。回収されたサンプル数が、設定されたサンプルの容器の数に達していない場合(図5の48)、予め、入力部より入力されているサンプルの回収量に従い(図5の49)、さらにサンプルが回収容器に吐出される。回収されたサンプル数が、設定されたサンプルの容器の数に達した場合(図5の48)、洗浄工程(工程6~7)が実施され(図5の50)、それが終了すると緩衝液モードへと復帰する(図5の51、工程8)。
【0070】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることができることは当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0071】
1、1a 無菌サンプリング装置
10 第1タンク
100 攪拌翼
101 第1タンク排出ライン
200 第1流路
201 第2流路
202 第2タンク
203 第3流路
204 第1分岐部
205 第4流路
206 第2分岐部
207 第5流路
208 第3分岐部
209 第6流路
210、210a、210b 第7流路
211 第1ポンプ
212、212a、212b 第2ポンプ
213 第1開閉機構
214 第2開閉機構
215 第1開閉切り替えデバイス
216 第3開閉機構
217 第4開閉機構
218 第2開閉切り替えデバイス
219 第5開閉機構
220 第6開閉機構
221 第3開閉切り替えデバイス
222 一方向弁
223 殺菌化手段
224 第1無菌接続コネクタ
225 流体識別センサ
226 第2無菌接続コネクタ
227 第3タンク
228 第8流路
229a 第3無菌接続コネクタ(オス型)
229b 第3無菌接続コネクタ(メス型)
230、230a 通気フィルタ
231 流量検出手段
232 第1廃液ボトル
30、30a、30b サンプリング部
300、300a サンプル吐出部
301、301a ディスポーザブルチップ
302a サンプル貯留部
303a 第9流路
304a 第7開閉機構
305a レベルセンサ
306b バルブユニット
307b 計測器
31 サンプル回収部
310 第2廃液ボトル
311 15mL遠心管
3110 15mL遠心管ホルダ
312 50mL遠心管
3120 50mL遠心管ホルダ
313 1.5mL遠心チューブ
3130 1.5mL遠心チューブホルダ
320 第1流体検出手段
321 第2流体検出手段
CM 培地
BF 緩衝液
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5