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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】樹脂成形加工機械用洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/22 20060101AFI20230605BHJP
   C11D 7/12 20060101ALI20230605BHJP
   C11D 7/14 20060101ALI20230605BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20230605BHJP
   B29C 48/25 20190101ALI20230605BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20230605BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230605BHJP
   C11D 7/20 20060101ALN20230605BHJP
【FI】
C11D7/22
C11D7/12
C11D7/14
B29C45/17
B29C48/25
C08L23/06
C08K3/013
C11D7/20
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019226753
(22)【出願日】2019-12-16
(65)【公開番号】P2020111726
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2019004833
(32)【優先日】2019-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100196298
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 高雄
(72)【発明者】
【氏名】新濱 智広
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 琢
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-095625(JP,A)
【文献】特開2007-021765(JP,A)
【文献】特開平07-278359(JP,A)
【文献】特開2001-150456(JP,A)
【文献】特開2006-256236(JP,A)
【文献】特開2001-279035(JP,A)
【文献】特開2017-177623(JP,A)
【文献】特開2011-252061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
B29C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類のポリエチレン系樹脂を含み、前記ポリエチレン系樹脂の最大の融点と最小の融点との差が15℃以上である、ことを特徴とする樹脂成形加工機械用洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記洗浄剤組成物100質量%に対して、樹脂の融点を超える温度で実質的に流動しないポリオレフィン系樹脂を1~20質量%含む、請求項1に記載の樹脂成形加工機械用洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記ポリオレフィン系樹脂が超高分子量ポリオレフィンである、請求項2に記載の樹脂成形加工機械用洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記洗浄剤組成物100質量%に対して、充填剤を1~20質量%含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂成形加工機械用洗浄剤組成物。
【請求項5】
前記充填剤が、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、ワラストナイト、ガラスファイバー、ガラスビーズ、シリカ、アルミナ、及び硫酸バリウムから選ばれる少なくとも1種である、請求項4に記載の樹脂成形加工機械用洗浄剤組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂成形加工機械用洗浄剤組成物を用いて樹脂成形加工機械を洗浄する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系樹脂を含む樹脂成形加工機械用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、樹脂の着色、混合、成形等の作業のために押出成形機、射出成形機等の樹脂成形加工機械が用いられるが、この種の加工機械においては、所定の作業終了時に、当該樹脂そのものや成形材料中に含まれている染顔料等の添加剤のほか、樹脂等から生成される劣化物(熱分解生成物、焼け焦げ、炭化物等)が成形加工機械内に残留する場合がある。この残留物を放置すると、以降に行われる樹脂の成形加工時に残留物が成形品中に混入し、製品外観不良の原因となり得る。特に、透明樹脂の成形を行う場合、微小の炭化物等の混入でも容易に視認されるため、成形品の外観不良となり、成形品不良の発生率を増大させるという問題を生じる。そのため、残留物を成形機内から完全に除去することが望まれている。
【0003】
従来、残留物を成形加工機械内から除去するため、(1)人手により成形加工機械の分解掃除をする方法、(2)成形加工機械を停止せずにそのまま次の成形に使用する成形材料を成形加工機械に充填し、これにより残留物を徐々に排出して行く方法、(3)洗浄剤を用いる方法、等が採られている。
【0004】
上記(1)の方法は、成形加工機械を停止する必要があるため効率的でなく、且つ人手により物理的に除去作業をするため、成形加工機械を傷つけやすいという問題がある。上記(2)の方法は、残留物を除去するために多量の成形材料を必要とする場合が多く、作業が完了するまでに時間を要し、さらに廃棄物が多量に発生するという問題がある。そこで近年では上記(3)洗浄剤を用いる方法が、成形加工機械内の残留物を除去する洗浄力に優れることから、好まれて用いられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭59-124999号公報
【文献】特開昭60-139411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
洗浄剤で洗浄した後、次の成形に入る前に、通常は次の成形材料によって樹脂成形加工機械内に残留している洗浄剤の置換作業を行う。従って洗浄剤には、前の成形で使用した成形材料に対する高い洗浄力と、次の成形に使用する成形材料による易置換性とが要求される。
【0007】
洗浄剤の例として、特許文献1には無機充填剤を均一に樹脂に練りこんだ洗浄剤が記載されている。特許文献2には、直鎖低密度ポリエチレン及び炭酸カルシウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛等からなる洗浄剤が記載されている。
しかしながら、特許文献1や2に記載の洗浄剤では、洗浄性能と比較して、易置換性が低いという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、洗浄性能と洗浄後の成形材料による易置換性のバランスを改善した樹脂成形加工機械用洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、基材となる熱可塑性樹脂として融点差の大きい2種類以上のポリエチレン系樹脂を含有する洗浄剤組成物が、洗浄性能と易置換性とのバランスが良好となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0010】
(1)
少なくとも2種類のポリエチレン系樹脂を含み、前記ポリエチレン系樹脂の最大の融点と最小の融点との差が15℃以上である、ことを特徴とする樹脂成形加工機械用洗浄剤組成物。
【0011】
(2)
前記洗浄剤組成物100質量%に対して、樹脂の融点を超える温度で実質的に流動しないポリオレフィン系樹脂を1~20質量%含む、(1)に記載の樹脂成形加工機械用洗浄剤組成物。
【0012】
(3)
前記ポリオレフィン系樹脂が超高分子量ポリオレフィンである、(2)に記載の樹脂成形加工機械用洗浄剤組成物。
【0013】
(4)
前記洗浄剤組成物100質量%に対して、充填剤を1~20質量%含む、(1)~(3)のいずれか1つに記載の樹脂成形加工機械用洗浄剤組成物。
【0014】
(5)
前記充填剤が、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、ワラストナイト、ガラスファイバー、ガラスビーズ、シリカ、アルミナ、及び硫酸バリウムから選ばれる少なくとも1種である、(4)に記載の樹脂成形加工機械用洗浄剤組成物。
【0015】
(6)
(1)~(5)のいずれか1つに記載の樹脂成形加工機械用洗浄剤組成物を用いて樹脂加工機械を洗浄する方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の洗浄剤組成物は、洗浄性能と洗浄後の成形材料による易置換性のバランスを改善する効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、下記の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0018】
本実施形態の樹脂成形加工機械用洗浄剤組成物(本明細書において、単に「洗浄剤組成物」と称する場合がある。)は、少なくとも2種類のポリエチレン系樹脂を含み、上記ポリエチレン系樹脂の最大の融点と最小の融点との差が15℃以上である。さらに、樹脂の融点を超える温度で実質的に流動しないポリオレフィン系樹脂や充填剤を特定量含んでいてもよい。
【0019】
以下、詳細に説明する。
[1]洗浄剤組成物
<ポリエチレン系樹脂>
上記熱可塑性樹脂としては、一般の射出成形や押出成形等に用いられるポリエチレン系樹脂を広く用いることができ、上記ポリエチレン系樹脂は融点の異なる少なくとも2種類のポリエチレン系樹脂を含み、上記融点が異なる少なくとも2種類のポリエチレン系樹脂として、最大の融点と最小の融点との差が15℃以上となるポリエチレン系樹脂の組み合わせを少なくとも含むことが必要である。
本明細書において、融点は、JIS K7121に準拠し、示差走査熱量測定法(DSC)により求めることができる。
DSCで融点を測定する場合は、あらかじめ試料樹脂5mgの小片を作製し、重量を精秤してアルミ製パンに入れ、蓋をして封入する。試料樹脂を封入したアルミ製パンをDSC測定装置の試料台に載せ、1回目の昇温として20℃から200℃まで速度20℃/分で昇温し、200℃到達後に2分間保持する。次に200℃から20℃まで速度20℃/分で降温し、20℃到達後に2分間保持した後、2回目の昇温として20℃から200℃まで速度20℃/分で昇温する。上記の2回目の昇温時に得られたDSC曲線のピークの温度を当該試料樹脂の融点とする。
【0020】
上記洗浄剤組成物に含まれる2種以上のポリエチレン系樹脂の融点の最大と最小の差は15℃以上であることが必要であり、15℃未満であると、残留性が悪く、次の成形材料による易置換性が低下する。特に洗浄性能と易置換性に優れる観点から、好ましくは、20℃以上である。
また、上記洗浄剤組成物に含まれる2種以上のポリエチレン系樹脂の融点の最大と最小の差は、融点が最小であるポリエチレン樹脂の融点が著しく低いことが洗浄時のパージ屑の固化に要する時間が長くなり作業性を損なうため、30℃以下であることが好ましく、より好ましくは25℃以下である。
【0021】
上記融点が最大となるポリエチレン系樹脂の融点としては、一層優れた洗浄性能と、易置換性とを備える観点から、125℃以上であることが好ましく、より好ましくは130℃以上である。
上記融点が最小となるポリエチレン系樹脂の融点としては、一層優れた洗浄性能と、易置換性とを備える観点から、120℃以下であることが好ましく、より好ましくは115℃以下である。
【0022】
上記洗浄剤組成物に含まれる融点が最大であるポリエチレン系樹脂と、融点が最小であるポリエチレン系樹脂との質量割合は、10:90から90:10の範囲であると、上記効果が顕著になり好ましく、より好ましくは30:70~70:30である。
【0023】
上記洗浄剤組成物に含まれる融点が最も高いポリエチレン系樹脂の質量割合は、一層優れた洗浄性能と、易置換性とを備える観点から、上記洗浄剤組成物100質量%に対して、5~90質量%であることが好ましく、より好ましくは15~70質量%である。
また、上記洗浄剤組成物に含まれる融点が最も低いポリエチレン系樹脂の質量割合は、一層優れた洗浄性能と、易置換性とを備える観点から、上記洗浄剤組成物100質量%に対して、5~90質量%であることが好ましく、より好ましくは15~70質量%である。
また、上記洗浄剤組成物に含まれる、融点が最も高いポリエチレン系樹脂と融点が最も低いポリエチレン系樹脂との合計質量割合は、一層優れた洗浄性能と、易置換性とを備える観点から、上記洗浄剤組成物100質量%に対して、50~100質量%であることが好ましく、より好ましくは70~90質量%である。
【0024】
上記ポリエチレン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンとα-オレフィンとの共重合体、プロピレン-エチレン共重合体等の樹脂が挙げられるが、これらの中でも、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、及び直鎖状低密度ポリエチレンが、洗浄性能および易置換性に優れることから好ましい。特に、一層優れた洗浄性能と、易置換性とを備える観点から、融点が最も高いポリエチレン系樹脂として高密度ポリエチレン、融点が最も低いポリエチレン系樹脂として低密度ポリエチレンを用いることがより好ましい。
【0025】
上記ポリエチレン系樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、100万未満であることが好ましく、5万以上100万未満がより好ましく、20万~30万がさらに好ましい。なお、本実施形態において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。
【0026】
上記ポリエチレン系樹脂のメルトフローレートは、優れた洗浄力、ならびに洗浄後に使用する成形材料への易置換性の観点から、0.01g/10分以上であることが好ましく、洗浄効果の点から、20g/10分以下であることがより好ましく、0.05~10g/10分であることがさらに好ましい。
ここで、ポリエチレン系樹脂のメルトフローレートは、ISO R1133に準拠して測定されるものを意味し、その測定条件は190℃、2.16kg荷重である。
複数のポリエチレン系樹脂を用いる場合は、上記メルトフロー範囲内のものや、上記メルトフローレート範囲外のものを混合して上記範囲内に調整することが好ましい。
【0027】
<融点を超える温度で実質的に流動しないポリオレフィン系樹脂>
本実施形態の洗浄剤組成物には、さらに樹脂の融点を超える温度で実質的に流動しないポリオレフィン系樹脂が1~20質量%含まれていることが好ましい。
ここで、「樹脂の融点を超える温度」とは、融点を超えるあらゆる温度をいい、融点より20~80℃高い温度としても良い。
また、「実質的に流動しない」とは、ISO R1133に準拠して、上記樹脂の融点を超える温度を満たす任意の温度、荷重21.6kgの条件で測定されるメルトフローレートの値が、0.1g/10分以下であることをいう。
実質的に流動しないポリオレフィン系樹脂を添加することにより、上記ポリエチレン系樹脂の粘度を高めることができ、洗浄力を高めることができる。また、高粘度樹脂のみでは落としきれない、樹脂の焼けの洗浄という観点からも好ましい。さらに、無機添加剤に比べ、次の成形材料へも残留しにくく易置換性に優れ、成形機内部のシリンダーやスクリューの摩耗の観点からも好ましい。
【0028】
樹脂の融点を超える温度で実質的に流動しないポリオレフィン系樹脂としては、超高分子量ポリオレフィンまたは架橋されたポリオレフィン系樹脂などが挙げられ、中でも超高分子量ポリオレフィンが洗浄性能と易置換性(残留性)の観点から好ましい。
【0029】
当該超高分子量ポリオレフィンは、エチレンを主な構成成分とするアルケンの重合物で重量平均分子量が100万以上であるものを意味する。重量平均分子量は、200万~1200万であることが好ましく、より好ましくは400万~1000万である。また、超高分子量ポリオレフィンは、超高分子量ポリエチレンであることが好ましい。なお、超高分子量ポリエチレンは、上記ポリエチレン系樹脂よりも重量平均分子量が大きいものをいい、上記ポリエチレン系樹脂に含まれない。
また、架橋されたポリオレフィンはポリオレフィン系樹脂に電子線やガンマ線を照射して架橋したもの、ポリオレフィン系樹脂に有機過酸化物などの架橋剤を配合して加熱することで架橋したものなどが挙げられる。
【0030】
樹脂の融点を超える温度で実質的に流動しないポリオレフィン系樹脂は、洗浄性能と易置換性のバランスの点で、洗浄剤組成物100質量%に対して、1~50質量%含むことが好ましく、より好ましくは1~30質量%、さらに好ましくは1~20質量%、特に好ましくは5~20質量%である。また、焼け除去の洗浄性にも優れる観点からは、20質量%以上が好ましい。
【0031】
洗浄力が弱い洗浄剤を使用した場合、前の成形材料が樹脂成形加工機内に残存して次の成形材料に異物となって混入するだけでなく、成形加工機械を休止する時には残存した成形材料が劣化し、再度成形加工機械を立ち上げる時に劣化物となって混入するという問題が生じやすくなる。そのため、この問題を回避する目的で洗浄剤の洗浄力を高める方法として、例えば、基材となる熱可塑性樹脂に、洗浄力を高めるための無機充填剤や界面活性剤、滑剤、架橋重合体、高分子量重合体、発泡剤等の添加物を配合してもよい。
また、易置換性の低い洗浄剤を樹脂成形加工機内の洗浄に使用した場合、次に使用する成形材料による置換に長時間を要し、かつ成形材料のロスが多くなり、生産の効率が低下することがある。上記の無機充填物等の添加剤配合量が過剰な場合は易置換性を低下させるので、洗浄性能と易置換性のバランスを良好にするための配合量とすることが好ましい。
【0032】
<充填剤>
本実施形態の洗浄剤組成物には、さらに充填剤が1~20質量%含まれていることが好ましい。
【0033】
上記充填剤としては、従来の樹脂フィルム、樹脂シートにおいて使用される公知のものが特に制限なく使用され、天然物および人工合成物のいずれも使用することができる。無機充填物を含有すると、成形機内部に残っている樹脂を物理的に掻き落とす効果が得られる。
【0034】
上記無機充填剤の具体例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムなどの金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属の硫酸塩、カオリン、クレー、珪藻土などの珪酸塩、その他に酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ゼオライト、タルク、マイカ、ワラストナイト、ゾノトライト、モンモリロナイト、ベントナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ローソナイト、スメクタイト、ガラスファイバー、ガラスビーズ、シリカ、アルミナなどが挙げられ、特に炭酸カルシウム、硫酸バリウムタルク、マイカ、ワラストナイト、ガラスファイバー、ガラスビーズ、シリカ、アルミナが好ましい。中でも、最大融点と最小融点との差が15℃以上(特に20℃以上)である少なくとも2種類のポリエチレン系樹脂と組み合わせて用いると、特に優れた洗浄性能と、易置換性とが得られる観点から、炭酸カルシウム又はガラスファイバーがより好ましく、洗浄性能に特に優れる観点からはガラスファイバーが特に好ましく、洗浄性能と易置換性とのバランスに特に優れる観点からは炭酸カルシウムが特に好ましい。
これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0035】
上記充填剤の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1~100μmであり、より好ましくは0.5~50μm、特に好ましくは1~30μmである。この平均粒子径は、レーザー回折法により(例えば、島津製作所製SALD-2000を使用して)求めることができる。
【0036】
樹脂成形加工機械内部に残っている樹脂を物理的に掻き落とす効果を充分に得る観点、易置換性の観点、ならびに洗浄剤組成物の安定した押出加工性の観点から、上記充填剤の質量割合は、洗浄剤組成物100質量%に対して、1~50質量%を含むことが好ましく、より好ましくは1~30質量%、さらに好ましくは1~20質量%、特に好ましくは5~20質量%である。例えば、炭酸カルシウムを用いる場合、易置換性に特に優れる観点から、2~8質量%が好ましい。
【0037】
<その他添加剤>
本実施形態の洗浄剤組成物は、用途等に応じて、滑剤、ミネラルオイル、界面活性剤、フッ素化化合物からなる群より選択された少なくとも一種の添加剤をさらに含有することができる。
【0038】
-滑剤-
本実施形態の洗浄剤組成物には滑剤を含有してもよい。滑剤の例としては前述のプラスチック材料用途に使用される滑剤が挙げられる。滑剤の具体例としては、脂肪酸アルカリ金属塩、脂肪酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等が挙げられ、特にモンタン酸エステルワックスが好ましい。また、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスや低分子量のポリエチレン、低分子量のポリプロピレンも滑剤として用いることができる。低分子量のポリエチレン、低分子量のポリプロピレンとは、重量平均分子量が50,000未満のものをいう。これらは用途に応じて他の樹脂や酸、塩基等で変性されたものでもよい。上述の滑剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上併用してもよい。
なお、上記ポリエチレン系樹脂に、上記滑剤のポリエチレンは含まれないものとする。
【0039】
-ミネラルオイル-
上記ミネラルオイルとは、石油を精製して得られる油であり、鉱物油、潤滑油、流動パラフィンなどとも呼ばれるナフテン、イソパラフィンなども含む飽和炭化水素系のオイルである。広い粘度範囲のミネラルオイルが使用可能であり、例えば、流動パラフィンの場合、JIS K2283により測定した粘度が50~500であるもの、レッドウッド法(日本油化学協会基準油脂分析試験法2.2.10.4-1996)により測定した粘度が30~2000の範囲のものを用いてもよい。
【0040】
-界面活性剤-
上記界面活性剤の例としては、陰イオン活性剤、陽イオン活性剤、非イオン活性剤、両性表面活性剤が挙げられる。その中でも常温で液状の界面活性剤が好ましい。陰イオン活性剤としては、高級脂肪酸アルカリ塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩等が例示できる。陽イオン活性剤としては、具体的に高級アミンハロゲン酸塩、ハロゲン化アルキルピリジニウム、第四アンモニウム塩等が例示できる。非イオン活性剤としては、具体的にポリエチレングリコールアルキルエ-テル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド等が例示できる。両性表面活性剤としては、具体的にアミノ酸等を例示する事ができる。
上述の界面活性剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上併用してもよい。
【0041】
-フッ素化化合物-
上記フッ素化化合物とは、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等を用いることができるが、より好ましくはアクリル変性した上記化合物であり、特に好ましいのはアクリル樹脂で変性したポリテトラフルオロエチレンおよびその共重合体である。
上述のフッ素化化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上併用してもよい。
【0042】
本実施形態の洗浄剤組成物は、樹脂成形加工機械用途に特に適している。中でも、一層優れた効果が得られる観点から、ポリエチレンを含む成形品(特に、高密度ポリエチレンを50質量%以上含む成形品)の加工後の洗浄に好適である。
【0043】
[2]洗浄剤組成物の製造方法
本実施態様の洗浄剤組成物の製造方法は、特に限定されない。好ましい製法としては、上述したポリエチレン系樹脂及び必要に応じて配合される他の成分を含有する樹脂組成物を、ニーダー、押出機あるいはバンバリーミキサー等の溶融混練装置を用いて溶融混練し、得られた溶融混練物をストランド状に押し出した後、粒状に成形する工程を有する製法が挙げられる。ここで用いる溶融混練装置としては、ポリエチレン系樹脂と無機充填物を十分に混練することができる観点から、押出機が好ましく、より好ましくは2軸押出機である。このように2軸押出機を使用することで、ポリエチレン系樹脂及び超高分子量ポリオレフィン並びに無機充填物を溶融混練する過程で無機化合物が凝集しにくく、またポリオレフィン系熱可塑性樹脂中に均一に分散しやすくなるので、押出性が安定し、押出機から吐出されるストランドの脈動等が抑えられる傾向にある。
【0044】
各種構成成分の配合及び溶融混練の際に、一般に使用されている装置、例えば、タンブラー、リボンブレンダ―、スーパーミキサー等の予備混合装置、重量式供給機、単軸押出機や二軸押出機、コニーダー等の溶融混練装置を使用することができる。また、溶融混練する際は、常圧で開放口(ベント)から脱気分を除去する開放脱気を、必要に応じて減圧して開放口(ベント)から脱気分を除去する減圧脱気を行うことが望ましい。
【0045】
なお、押出機で溶融混練する際のシリンダー温度は、300℃以下に設定することが好ましく、280℃以下がより好ましく、260℃以下が更に好ましく、240℃以下が特に好ましい。押出機内における溶融樹脂の滞留時間は、できるだけ短くすることが望ましいので、かかる観点を考慮して、シリンダー温度を設定する。
【0046】
本実施形態の洗浄剤組成物の製造方法において、上記ポリエチレン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂粒としてから用いてもよい。
上記ポリエチレン系樹脂粒は、ポリエチレン系樹脂を含む原料を押出機等で成形したストランドを切断することにより得ることができる。
ポリエチレン系樹脂粒の形状は、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されないが、例えば、円柱状、球状、フレーク状、パウダー状などの形状が挙げられる。
ポリエチレン系樹脂粒の形状が円柱状の場合、短径が2~3mm、長径が3~5mm、長さが3~5mmの範囲が好ましい。本実施形態において、短径、長径および長さは、ノギス等により測定した値である。
上記ポリエチレン系樹脂粒は表面にオイル層を有してもよい。ポリエチレン系樹脂粒の表面に上述したミネラルオイルや界面活性剤を付着させることでオイル層を形成することが出来る。当該オイル層はポリエチレン系樹脂粒の表面全体に形成されている必要は無く、少なくとも一部に形成されていればよいが、洗浄剤組成物の易置換性の観点からは、表面全体に形成されていることが好ましい。取扱を容易にする観点で、上記オイル層に滑剤が付着していることが好ましい。ここで滑剤としては、上述した滑剤を用いることができる。オイル層を有し滑剤を付着させたポリエチレン系樹脂粒を含む洗浄剤組成物は、易置換性が高くなる傾向にある。
オイル層はタンブラーブレンダー、スーパーミキサー等の樹脂加工用ブレンダーを使用し、ポリエチレン系樹脂粒と、オイルとを同時に投入してブレンドすることにより形成することができる。滑剤を付着させる場合は、ポリエチレン系樹脂粒の表面にオイル層を形成した後、タンブラーブレンダー、スーパーミキサー等の樹脂加工用ブレンダーに滑剤を投入してブレンドすることにより付着させることができる。
【0047】
上記ポリエチレン系樹脂粒はそのまま洗浄剤組成物として使用しても良いし、適当なポリオレフィン系樹脂、すなわち高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、またはポリプロピレンの樹脂ペレットと適当な割合で混合したものを洗浄剤組成物として使用しても良い。
【0048】
[3]樹脂成形加工機械の洗浄方法
本実施形態に係る樹脂成形加工機械の洗浄方法は、上述の洗浄剤組成物を用いる。
また、本実施形態に係る樹脂成形加工機械の洗浄方法は、上述の洗浄剤組成物を樹脂成形加工機械内に滞留させる工程を有してもよい。
上記樹脂成形加工機械の具体例としては、射出成形機、押出成形機などが挙げられる。
本実施形態に係る樹脂成形加工機械の洗浄方法は、洗浄前に成形加工した材料を効率的に排出させることができるだけでなく、洗浄後に樹脂成形加工機械を休止する場合、洗浄剤組成物を樹脂成形加工機械内に充満させた状態で滞留させることにより、万が一洗浄不足で洗浄前に成形加工した材料が樹脂成形加工機械内に残っている場合でも、残った材料の熱劣化を防止できる利点がある。
【0049】
[4]洗浄剤組成物の使用方法
本実施形態の樹脂成形加工機械用洗浄剤組成物は、そのまま洗浄剤組成物として使用することができるが、後続材料への易置換性の観点から、本実施形態の樹脂成形加工機械用洗浄剤組成物を後続材料に混合して使用することができる。その混合比率は、樹脂成形加工機械用洗浄剤組成物100重量部に対し、後続材料100~900重量部が好ましく、より好ましくは樹脂成形加工機械用洗浄剤組成物100重量部に対し、後続材料200~750重量であり、更に好ましくは樹脂成形加工機械用洗浄剤組成物100重量部に対し、後続材料300~600重量部である。後続材料は、オレフィン系樹脂が好ましく、中でも高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンが特に好ましい。
【実施例
【0050】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明する。実施例あるいは比較例において使用する各成分は、以下のとおりである。本実施形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
(1)成分(A):ポリエチレン系樹脂
ポリエチレン系樹脂として以下の成分(A1~A4)を用いた。
本実施例において、各熱可塑性樹脂のメルトフローレートはISO R1133に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgの条件下で測定した。
密度はJIS K7112に準拠して測定した。
融点はJIS K7121に準拠し、示差走査熱量測定法(DSC)により求めた。試料樹脂5mgの小片をアルミ製パンに封入してDSC測定装置の試料台に載せ、1回目の昇温として20℃から200℃まで速度20℃/分で昇温し、200℃到達後に2分間保持した。次に200℃から20℃まで速度20℃/分で降温し、20℃到達後に2分間保持した後、2回目の昇温として20℃から200℃まで速度20℃/分で昇温し、2回目の昇温時に得られたDSC曲線のピークの温度を当該試料樹脂の融点とした。
・ポリエチレン系樹脂(A1)(高密度ポリエチレン)としてハイゼックス5100B(株式会社プライムポリマー製)を用いた。ポリエチレン系樹脂(A1)は、メルトフローレートが0.27g/10分、密度は0.944kg/m3、融点は126℃であった。
・ポリエチレン系樹脂(A2)(高密度ポリエチレン)としてサンテックB770(旭化成株式会社製)を用いた。ポリエチレン系樹脂(A2)は、メルトフローレートが0.16g/10分、密度は0.953kg/m3、融点は132℃であった。
・ポリエチレン系樹脂(A3)(低密度ポリエチレン)としてサンテックM2206(旭化成株式会社製)を用いた。ポリエチレン系樹脂(A3)は、メルトフローレートが0.6g/10分、密度は0.923kg/m3、融点は111℃であった。
・ポリエチレン系樹脂(A4)(低密度ポリエチレン)としてUBEポリエチレンB028(宇部丸善ポリエチレン株式会社製)を用いた。ポリエチレン系樹脂(A4)は、メルトフローレートが0.4g/10分、密度は0.927kg/m3、融点は114℃であった。
【0052】
(2)成分(B):超高分子量ポリオレフィン
超高分子量ポリオレフィンとして、サンファインUH950(旭化成株式会社製)を用いた。超高分子量ポリエチレンは分子量が450万であった。
なお、サンファインUH950を3g用いて、メルトフローレート測定装置により、融点である136℃より54℃高い温度における流動性を測定したところ、メルトフローレートの値は0.1g/10分以下であり、実質的に流動しないポリオレフィン系樹脂であった。
【0053】
(3)成分(C):充填剤
無機充填剤として、以下の成分(C1~C2)を用いた。
・無機充填剤(C1)(炭酸カルシウム、CC)として炭酸カルシウムKK3000(矢橋工業株式会社製)を用いた。
・無機充填剤(C2)(ガラスファイバー、GF)として、ECS03T-351(日本電気硝子株式会社製、収束剤、カップリング剤を含み、平均繊維径が13μm、平均繊維長が3000μm、カップリング剤2000ppm)を用いた。
【0054】
[洗浄剤組成物(実施例1~7、比較例1~3)の作製]
各成分を表1に示す割合で含む樹脂組成物を、予めタンブラーブレンダーを用いて5分間予備混合し、得られた混合物は溶融混練した。溶融混練は二軸押出機(池貝株式会社製、機器使用:PCM30)を使用し、シリンダー設定温度を210℃、供給量15kg/hの条件で行った。押出機から吐出された溶融混練物をストランド状に押し出し、水冷してからストランドカッターにて切断しペレット状の各洗浄剤組成物試料を得た。
【0055】
【表1】
【0056】
洗浄剤組成物の評価
得られた洗浄剤組成物試料について、以下の洗浄性および残留性の評価を行った。当該評価結果を表1に示す。
【0057】
<洗浄性評価(色換え性評価)>
青色に着色された低密度ポリエチレン(旭化成株式会社製サンテックM1920)を着色マスターバッチとし、着色マスターバッチ10質量部と高密度ポリエチレン(旭化成株式会社製サンテックB161)90質量部を混合し、射出成形機(東芝機械製IS-60B)に1kg投入して、スクリュー位置を前進限にしてスクリューを回転させて当該樹脂混合物をノズルから排出して射出成形機内に疑似的な汚れを付着させた。
その後、当該射出成形機に洗浄剤組成物試料を1kg投入し、シリンダー温度220℃の条件でスクリュー回転により洗浄した際に、ノズルから排出されるパージ屑の色調を目視にて観察しながら、洗浄が完了するまでパージ屑を排出し、排出されたパージ屑量(kg)を天秤で測定した。
当該排出されたパージ屑量が少ないほど、洗浄性に優れる。なお、洗浄した際にノズルから排出されるパージ屑を室温まで冷却して固化させたものの色調が、青色から白色に変わった時点を洗浄完了とした。
【0058】
<易置換性評価(残留性評価)>
上記の洗浄性の評価後、高密度ポリエチレン(旭化成株式会社製サンテックB161)を当該射出成形機に1kg投入し、シリンダー温度220℃の条件でスクリュー回転により置換し、ノズルから排出されるパージ屑の溶融状態での混濁の程度を目視にて観察した。
パージ屑の溶融状態での外観が完全に透明になるまでに排出されたパージ屑量(kg)を天秤で測定した。当該排出されたパージ屑量が少ないほど、易置換性に優れる。
【0059】
<洗浄力評価(焼け除去性能評価)>
280℃に昇温した小型押出機(ブラベンダー社製プラスチコーダ)にナイロン66樹脂(旭化成株式会社製レオナ14G33)を、100g投入し、スクリューを回転させ、当該ナイロン66樹脂をノズルから排出して小型押出機内にナイロン66樹脂を付着させた。280℃のまま1時間滞留させ、押出機内部に付着して残ったナイロン66樹脂の焼けを作製した。その後、設定温度を220℃に下げ、当該小型押出機に洗浄剤組成物試料を150g投入し、ノズルから排出されるパージ屑の色調を目視にて観察しながら、洗浄が完了するまでパージ屑を排出し、排出されたパージ屑量(g)を天秤で測定した。
当該排出されたパージ屑量が少ないほど、洗浄性に優れる。なお、焼けたナイロン66樹脂(茶色変色樹脂)が全て排出され、投入した試料の色に変わった時点を洗浄完了とした。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上の結果から明らかなように、本発明の樹脂成形加工機械用洗浄剤組成物は、優れた洗浄性能を発揮するほか、洗浄性能と易置換性とのバランスに優れており、熱可塑性樹脂(特に、高密度ポリエチレンを含む成形材料)の成形加工機械用洗浄剤組成物として有用である。