(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G09G 3/36 20060101AFI20230605BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20230605BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20230605BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20230605BHJP
G02F 1/1343 20060101ALI20230605BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20230605BHJP
G02F 1/1368 20060101ALN20230605BHJP
【FI】
G09G3/36
G06F3/041 410
G06F3/041 580
G06F3/041 500
G09G3/20 611C
G09G3/20 624C
G09G3/20 691D
G09F9/00 366A
G02F1/1343
G02F1/1333
G02F1/1368
(21)【出願番号】P 2019228761
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】藁谷 智晃
【審査官】塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0216798(US,A1)
【文献】特表2015-523656(JP,A)
【文献】特表2012-533122(JP,A)
【文献】特開2013-84196(JP,A)
【文献】特開2000-330518(JP,A)
【文献】特開2006-146895(JP,A)
【文献】特開2009-110418(JP,A)
【文献】特開2017-146719(JP,A)
【文献】国際公開第2016/059967(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0079634(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/36
G06F 3/041
G09G 3/20
G09F 9/00
G02F 1/1343
G02F 1/1333
G02F 1/1368
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示面側に設けられて表示素子から外部へのノイズの放出を防止する第1の電極層と、
前記第1の電極層よりも外側に設けられて位置検出を行う第2の電極層と、
表示面に接近する指示体の検出用に前記第1および第2の電極層に入力する検出用信号を生成する検出用信号生成部と、
共通電圧を印加して前記表示素子を駆動する共通電極と、
前記検出用信号を前記第1および第2の電極層に印加することにより前記第1の電極層から前記共通電極に漏れる信号成分を打ち消す打消し信号を生成する打消し信号生成部と、
前記共通電圧に前記打消し信号を重畳する共通電圧補正部と、
を備えることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記検出用信号は、正弦波信号であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記打消し信号生成部は、前記検出用信号生成部から出力される前記検出用信号を用いて前記打消し信号を生成することを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記打消し信号生成部は、前記検出用信号生成部から出力される前記検出用信号の位相と振幅を調整することにより前記打消し信号を生成することを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記打消し信号生成部は、前記共通電極の電圧に基づいて前記打消し信号を生成することを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記打消し信号生成部は、前記共通電極の電圧の位相と振幅を調整することにより前記打消し信号を生成することを特徴とする請求項5に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記第2の電極層は、表示面の隣接する2辺のそれぞれに平行で互いに交差する複数の電極を有しており、
これら複数の電極の一方端に前記検出用信号を入力し、これら複数の電極の他方端から前記指示体の検出用信号を取り出すことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記共通電極の複数箇所に前記打消し信号を入力することを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記表示素子を用いた表示動作と、前記検出用信号の前記第1および第2の電極層への入力動作は並行して行われることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホバー操作が可能なタッチパネルを有する液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶表示装置の表面に設けられて、接触位置の検出とともに接近した指示体(例えば、利用者の指先)の位置検出を行うことができるタッチパネルが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このタッチパネルでは、補助電極に発生した電圧を検出することによりホバー検出を行っており、利用者によるホバー操作を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したホバー操作の検出手法の一つとして、電極に正弦波信号を印加し、指示体の接近による静電容量の変化に伴う検出信号の変化を検出して行う方法が知られている。しかし、このようなホバー操作の検出を表示動作と並行して行う場合には、ホバー操作検出用の正弦波信号が、結合容量を介して液晶表示装置の共通電極に漏れてしまい、この漏れた成分による電圧変動がノイズとなり、表示品質の低下を招くという問題があった。このノイズは、ホバー操作検出用の電極と共通電極の間にシールド層を設け、このシールド層をグランド電位に接続することにより低減することができるが、部品追加によるコスト増を招くため、望ましくない。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、ホバー操作時の表示品質の低下とそれを低減するためのコスト上昇を抑えることができる液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の液晶表示装置は、表示面側に設けられて表示素子から外部へのノイズの放出を防止する第1の電極層と、第1の電極層よりも外側に設けられて位置検出を行う第2の電極層と、表示面に接近する指示体の検出用に第1および第2の電極層に入力する検出用信号を生成する検出用信号生成部と、共通電圧を印加して表示素子を駆動する共通電極と、検出用信号を第1および第2の電極層に印加することにより第1の電極層から共通電極に漏れる信号成分を打ち消す打消し信号を生成する打消し信号生成部と、共通電圧に打消し信号を重畳する共通電圧補正部とを備えている。
【0007】
ホバー操作用に2つの電極層に検出用信号が入力されると、共通電極側に漏れる信号成分が生じるが、この成分を打消し信号で打ち消すため、共通電極に生じる電圧変動を少なくすることができ、ホバー操作時の表示品質の低下を抑えることができる。また、共通電極に生じる電圧変動を減らすために特別なシールド層などの追加の構成が不要であり、コスト上昇を抑えることができる。
【0008】
また、上述した検出用信号は、正弦波信号であることが望ましい。単純な形状の正弦波信号を用いることにより、ホバー操作の位置検出や打消し信号の生成が容易になる。
【0009】
また、上述した打消し信号生成部は、検出用信号生成部から出力される検出用信号を用いて打消し信号を生成することが望ましい。特に、上述した打消し信号生成部は、検出用信号生成部から出力される検出用信号の位相と振幅を調整することにより打消し信号を生成することが望ましい。このように、検出用信号を用いて打消し信号を生成することにより、検出用信号と相関のある打消し信号の生成が容易となる。
【0010】
また、上述した打消し信号生成部は、共通電極の電圧に基づいて打消し信号を生成することが望ましい。特に、上述した打消し信号生成部は、共通電極の電圧の位相と振幅を調整することにより打消し信号を生成することが望ましい。このように、共通電極に現れる電圧を用いて打消し信号を生成することにより、検出用信号と相関のある打消し信号の生成が容易となる。
【0011】
また、上述した第2の電極層は、表示面の隣接する2辺のそれぞれに平行で互いに交差する複数の電極を有しており、これら複数の電極の一方端に検出用信号を入力し、これら複数の電極の他方端から指示体の検出用信号を取り出すことが望ましい。このようにした各電極から取り出した検出用信号を監視することにより、ホバー操作の位置を特定することが可能となる。
【0012】
また、上述した共通電極の複数箇所に打消し信号を入力することが望ましい。これにより、共通電極の場所による電圧変化を低減することができる。
【0013】
また、上述した表示素子を用いた表示動作と、検出用信号の第1および第2の電極層への入力動作は並行して行われることが望ましい。これにより、液晶表示装置における表示動作とホバー操作とを同時に行う場合の表示品質の低下とそれを低減するためのコスト上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態の液晶表示装置の概略的な構造を示す図である。
【
図3】打消し信号が重畳された共通電圧をVCOM-ITOに印加する具体例を示す図である。
【
図4】打消し信号が重畳された共通電圧をVCOM-ITOに印加する具体例を示す図である。
【
図5】打消し信号が重畳された共通電圧をVCOM-ITOに印加する具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した一実施形態の液晶表示装置について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本実施形態の液晶表示装置の概略的な構造を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の液晶表示装置は100は、アレイガラス110、CF(カラーフィルタ)ガラス120、液晶層130、TFTアレイ140、VCOM(共通電極)-ITO150、BS(バックサイド)-ITO160、タッチITO170、ホバー信号生成部200、共通電圧生成部210、打消し信号生成部220、電圧加算部230、位置検出部240を備えている。
【0017】
図1に示すように、アレイガラス110上に、表示画素に対応する表示素子を構成するTFT(薄膜トランジスタ)アレイ140と平板状のVCOM-ITO(インジウム・ティン・オキサイド)150が配置され、VCOM-ITO150とCFガラス120の間に液晶層130が配置されている。
【0018】
CFガラス120の表面には、表示画素に対応させたRGBのフィルタ(図示せず)が形成されている。また、CFガラス120の表面(液晶層130と反対側)には、表示素子から外部へのノイズの放出を防止するための平板状のBS-ITO160が形成されている。さらに、BS-ITO160の外側には、位置検出用のタッチITO170が形成されている。
【0019】
図2は、タッチITO170の具体例を示す図である。タッチITO170には、位置検出用のタッチパネルを構成しており、X方向(例えば表示面が横長の矩形形状を有しているものとすると、その長辺に沿った向き)に延在する複数の透明電極170Aと、Y方向(上記矩形形状の短辺に沿った向き)に延在する複数の透明電極170Bを含んでいる。表面の接触位置を検出を検出する場合には、これら2種類の透明電極170A、170B間の静電容量を検出するが、本実施形態では、このような接触位置の検出とともに、あるいは、このような接触位置の検出に代えて、ホバー操作に対する位置検出(表面から離れた位置にある指等の指示体の位置検出)を行うために、ホバー信号生成部200が備わっている。
【0020】
ホバー信号生成部200は、ホバー操作時に表示面に接近する指等の指示体を検出するために用いられる検出用信号(ホバー信号)を生成する。この検出用信号としては、例えば正弦波信号が用いられる。ホバー操作時には、ホバー信号生成部200は、この検出用信号をタッチITO170に含まれる複数の透明電極170A、170Bの一方端と、BS-ITO160のそれぞれに入力する。
【0021】
位置検出部240は、タッチITO170に含まれる複数の透明電極170A、170Bの他方端からこの検出用信号を取り出して、その信号レベルに基づいて、タッチITO170に接近する指示体の位置を検出する。指示体が近づくと、一部の透明電極170A、170Bとの間に生じる静電容量を介して検出用信号の一部が指示体側に流れるため、この透明電極170A、170Bの他方端から取り出される検出用信号のレベルが小さくなる。位置検出部240は、このようなレベル変化を監視することにより、タッチITO170に近づく指示体の位置をタッチITO170に接触する前に検出することができる。
【0022】
ところで、ホバー操作の位置検出時には、ホバー信号生成部200によって生成される検出用信号は、タッチITO170と並行してBS-ITO160にも入力される。このBS-ITO160は、CFガラス120、液晶層130を介してVCOM-ITO150に対向配置されているため、BS-ITO160に正弦波の検出用信号が入力されるとBS-ITO160とVCOM-ITO150の間の結合容量を介してVCOM-ITO150側に、入力された検出用信号に対応する信号成分(電圧変動)が現れて、VCOM-ITO150に印加される共通電圧に重畳される。
【0023】
本実施形態では、この共通電圧に重畳される成分を打ち消すために、打消し信号生成部220と電圧加算部230が備わっている。
【0024】
打消し信号生成部220は、BS-ITO160からVCOM-ITO150側に漏れる信号成分を打ち消す打消し信号を生成する。このVCOM-ITO150側に漏れる信号成分は、BS-ITO160に入力される検査用信号(正弦波信号)に同期していると考えられる。このため、打消し信号生成部220は、ホバー信号生成部200によって生成された検出用信号の位相と振幅を調整することにより、検出用信号をBS-ITO160に入力したことに起因してVCOM-ITO150側に漏れる信号成分を打ち消す、すなわちこの信号成分と振幅が等しく位相が反転している打消し信号を生成している。
【0025】
電圧加算部230は、打消し信号生成部220によって生成した打消し信号を、共通電圧生成部210によって生成された共通電圧に加算する。この打消し信号が重畳された共通電圧がVCOM-ITO150に印加される。
【0026】
図3~
図5は、打消し信号が重畳された共通電圧をVCOM-ITO150に印加する具体例を示す図である。
図3に示す例では、電圧加算部230から出力される共通電圧がVCOM-ITO150の2箇所に印加される。
図4に示す例では、共通電圧が2箇所に印加される点は
図3に示した例と同じであるが、それぞれの箇所に対応して2つの電圧加算部230A、230Bが設けられている。2つの電圧加算部230A、230Bの動作自体は電圧加算部230と同じであるが、電圧加算部230A、230Bのそれぞれの出力端から共通電圧の印加箇所までの配線の長さを短くすることができる。これにより、配線に重畳するノイズを低減することができる。
図5に示す例では、
図4に示した構成に加えて打消し信号生成部220も2つに分けている(打消し信号生成部220A、220B)。BS-ITO160からVCOM-ITO150側に漏れる信号成分の分布は、VCOM-ITO150において均一ではないため、共通電圧を印加する箇所ごとに打消し信号の位相や振幅を調整することにより、さらに電圧変動を抑制することが可能となる。なお、共通電圧の印加は、3箇所以上において行うようにしてもよい。
【0027】
上述したBS(バックサイド)-ITO160が第1の電極層に、タッチITO170が第2の電極層に、ホバー信号生成部180が検出用信号生成部に、電圧加算部230が共通電圧補正部にそれぞれ対応する。
【0028】
このように、本実施形態の液晶表示装置100では、ホバー操作用にタッチITO170とBS-ITO160に検出用信号(ホバー信号)が入力されると、VCOM-ITO150側に漏れる信号成分が生じるが、この成分を打消し信号で打ち消すため、VCOM-ITO150に生じる電圧変動を少なくすることができ、表示素子を用いた表示動作と並行して行われるホバー操作時の表示品質の低下を抑えることができる。また、VCOM-ITO150に生じる電圧変動を減らすために特別なシールド層などの追加の構成が不要であり、コスト上昇を抑えることができる。
【0029】
特に、検出用信号として単純な形状の正弦波信号を用いることにより、ホバー操作の位置検出や打消し信号の生成が容易になる。
【0030】
また、検出用信号を用いて、その位相や振幅を調整して打消し信号を生成することにより、検出用信号と相関のある打消し信号の生成が容易となる。
【0031】
また、VCOM-ITO150の複数箇所に打消し信号を入力することにより(
図3~
図5)、VCOM-ITO150の場所による電圧変化を低減することができる。
【0032】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、ホバー信号生成部220によって生成された検査用信号を用いて打消し信号を生成したが、VCOM-ITO150に現れる電圧に基づいて打消し信号を生成するようにしてもよい。
【0033】
図6は、打消し信号生成部の変形例を示す図である。
図6に示す打消し信号生成部320は、VCOM-ITO150に現れる電圧の位相と振幅を調整することにより、検出用信号をBS-ITO160に入力したことに起因してVCOM-ITO150側に漏れる信号成分を打ち消す、すなわちこの信号成分と振幅が等しく位相が反転している打消し信号を生成している。VCOM-ITO150に現れる電圧自体が、BS-ITO160に入力される検査用信号(正弦波信号)に同期していると考えられるため、検査用信号の代わりに、VCOM-ITO150に現れる電圧を用いても打消し信号を生成することが可能となる。このようにした場合であっても、検出用信号と相関のある打消し信号の生成が容易となる。
【0034】
また、上述した実施形態の
図2には、IPS(インプレイン・スイッチング)型の構造が示されているが、表示素子駆動用に共通電極が用いられている構造であれば、他の方式であっても本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
上述したように、本発明によれば、ホバー操作用に2つの電極層に検出用信号が入力されると、共通電極側に漏れる信号成分が生じるが、この成分を打消し信号で打ち消すため、共通電極に生じる電圧変動を少なくすることができ、ホバー操作時の表示品質の低下を抑えることができる。また、共通電極に生じる電圧変動を減らすために特別なシールド層などの追加の構成が不要であり、コスト上昇を抑えることができる。
【符号の説明】
【0036】
100 液晶表示装置
110 アレイガラス
120 CF(カラーフィルタ)ガラス
130 液晶層
140 TFTアレイ
150 VCOM(共通電極)-ITO
160 BS(バックサイド)-ITO
170 タッチITO
200 ホバー信号生成部
210 共通電圧生成部
220、320 打消し信号生成部
230 電圧加算部
240 位置検出部