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▶ プロバルコ ベーフェーベーアーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】取手構造の調理器具
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20230605BHJP
   A47J 45/06 20060101ALI20230605BHJP
   A47J 36/04 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
A47J27/00 101Z
A47J45/06 Z
A47J36/04
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2019521745
(86)(22)【出願日】2017-10-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-31
(86)【国際出願番号】 BE2017000046
(87)【国際公開番号】W WO2018076080
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】BE2016/5802
(32)【優先日】2016-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】516020547
【氏名又は名称】プロバルコ ベーフェーベーアー
【氏名又は名称原語表記】PROBALCO BVBA
【住所又は居所原語表記】Doornikserijksweg 12,B-8510 Bellegem,Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100175617
【弁理士】
【氏名又は名称】三崎 正輝
(72)【発明者】
【氏名】カリム レジャル
(72)【発明者】
【氏名】ポル スペリーアス
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-106719(JP,A)
【文献】特開2001-161553(JP,A)
【文献】特開平11-221160(JP,A)
【文献】特開平11-137457(JP,A)
【文献】特開2008-289856(JP,A)
【文献】特開平09-215587(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0075421(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
A47J 45/06
A47J 36/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの取り外し可能な取手構造(150)を有する調理器具(100)であって、
前記調理器具(100)は、底壁(101)と、外側(102a)を有する立ち側壁(102)とを備え、
前記少なくとも1つの取手構造(150)は、前記立ち側壁(102)の前記外側(102a)に対して取り外し可能に配置されており、
前記少なくとも1つの取手構造(150)は、ユーザーによって把持可能に構成された把持部(160)を有し、
前記少なくとも1つの取手構造は、相変化材料(170)を含み、
前記相変化材料は、前記取手構造と前記立ち側壁の前記外側との間に封入され、
前記底壁に対しては、相変化材料は配置され
前記少なくとも1つの取手構造は、リベット接合部、溶接部、クランプ接合部のうちの1つ以上によって前記立ち側壁に取り付けられている、
調理器具。
【請求項2】
前記少なくとも1つの取手構造(150)は、内側(150b)および外側(150a)を有し、前記把持部(160)は前記外側(150a)に設けられており、前記相変化材料は、前記少なくとも1つの取手構造の前記内側(150b)の凹部(155)内に設けられている、
請求項1に記載の調理器具。
【請求項3】
前記相変化材料(170)は前記底壁から距離(d)に配置され、この距離は、4cm未満である、
請求項1または2に記載の調理器具。
【請求項4】
前記凹部(155)は複数の区画を含み、前記相変化材料は前記区画に設けられている、
請求項2に記載の調理器具。
【請求項5】
前記相変化材料は、各取手構造において、この取手構造内に配置されかつ前記立ち側壁の前記外側に隣接するパウチ内に収容されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の調理器具。
【請求項6】
前記パウチは、前記取手構造により前記立ち側壁の前記外側に押し付けられている、
請求項5に記載の調理器具。
【請求項7】
前記パウチは第1の壁と第2の壁とを含み、前記第2の壁の周縁部は前記第1の壁の周縁部に取り付けられ、前記パウチ内は高真空である、
請求項5または6に記載の調理器具。
【請求項8】
前記パウチは、前記立ち側壁の前記外側に対して適合するように押し付けられるようになっている、
請求項5、6または7に記載の調理器具。
【請求項9】
前記パウチは、柔軟なストリップによって互いに分離されている複数の区画を含む、請求項5から8のいずれか1項に記載の調理器具。
【請求項10】
前記少なくとも1つの取手構造と前記立ち側壁の前記外側とが、前記相変化材料が収容される空間を取り囲んでいる、
請求項1から9のいずれか1項に記載の調理器具。
【請求項11】
取り囲まれている前記空間は、前記相変化材料が収容される複数の区画を含む、
請求項10に記載の調理器具。
【請求項12】
前記少なくとも1つの取手構造の前記相変化材料が、前記立ち側壁の前記外側の周縁の少なくとも250°の角度(α1+α2)にわたって延在する、
請求項1から11のいずれか1項に記載の調理器具。
【請求項13】
前記相変化材料は、前記立ち側壁の前記外側の実質的に全周の周りに帯状に配置されている、
請求項1から12のいずれか1項に記載の調理器具。
【請求項14】
前記底壁および前記立ち側壁は、ステンレス鋼、アルミニウム、および鋳鉄のうちの少なくとも1つで製造されている、
請求項1から13のいずれか1項に記載の調理器具。
【請求項15】
少なくとも1つの取付板が前記立ち側壁の前記外側に配置され、前記少なくとも1つの取手構造が前記少なくとも1つの取付板に取り付けられている、
請求項1から1のいずれか1項に記載の調理器具。
【請求項16】
前記取手構造は、少なくともその下部に難燃層を含み、前記難燃層は、アルミニウムまたはステンレス鋼で製造される、
請求項1から1のいずれか1項に記載の調理器具。
【請求項17】
前記相変化材料は、前記立ち側壁を横切る方向に見たときに、2mm~10mmの厚さを有する層に延在する、
請求項1から1のいずれか1項に記載の調理器具。
【請求項18】
前記相変化材料は、前記立ち側壁と実質的に平行な層内に延在し、この層は表面積1平方センチメートル当たり50ジュール~200ジュールの熱エネルギーを放出する、
請求項1から1のいずれか1項に記載の調理器具。
【請求項19】
前記相変化材料は、55℃~95℃の融解温度を有する、
請求項1から1のいずれか1項に記載の調理器具。
【請求項20】
前記調理器具の体積に対する相変化材料のグラム数が、40~200g/Lである、
請求項1から19のいずれか1項に記載の調理器具。
【請求項21】
前記少なくとも1つの取手構造は、第1の取手構造および第2の取手構造を含み、前記第1の取手構造および第2の取手構造が前記立ち側壁の前記外側に対して配置され、前記第1の取手構造および前記第2の取手構造が相変化材料を含む、
請求項1から2のいずれか1項に記載の調理器具。
【請求項22】
前記第1の取手構造および前記第2の取手構造は、前記立ち側壁の前記外側に対して実質的に互いに反対側に配置されている、
請求項2に記載の調理器具。
【請求項23】
前記第1の取手構造および前記第2の取手構造は、前記立ち側壁の前記外側全体に互いに取り付けられている、
請求項2または2に記載の調理器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの取手構造を有する調理器具、および、少なくとも1つの保温構造を有する調理器具に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的短時間で熱を吸収し、この熱をより長期間にわたって放出することができる相変化材料を、蓄熱材料として使用することが知られている。このような用途の例は、熱い食品を提供するプレートにおける相変化材料の使用である。相変化材料を使用することによって、プレートはそれほど急速には冷却されず、食品はより長い間暖かいままである。相変化材料で充填されたキャビティは、通常、プレートの底部に設けられる。食器類にこの用途および類似の用途に使用される相変化材料は、室温では固体であり、これらが熱を吸収するより高い温度では液相に転移する。
【0003】
蓄熱材料としての相変化材料の使用は、参照により本明細書に含まれる、本出願人の特許出願、BE2016/5522およびBE2016/5527に記載されている。
【発明の概要】
【0004】
本発明の実施形態は、調理器具の底壁と調理コンロとの間の良好な接触が加熱中に保証され、加熱後に調理器具の内容物が、伝統的な調理器具に比べより長時間暖かいままである、調理器具を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の第1の観点は、少なくとも1つの取手構造を有する調理器具に関し、調理器具は、底壁と、外側を有する立ち側壁(upright side wall)と、を含む。少なくとも1つの取手構造は、立ち側壁の外側に対して配置されている。少なくとも1つの取手構造は、ユーザーが把持可能に構成された把持部分を含む。少なくとも1つの取手構造は相変化材料を含む。
【0006】
相変化材料は少なくとも1つの取手構造内に収容されているため、相変化材料は立ち側壁の外側の近くに位置し、調理器具の底壁は相変化材料を含まないままである。調理器具の底壁とコンロとの間の良好な接触は、これにより保証されたままである。さらに、相変化材料は調理器具が加熱されているときに熱を吸収し、相変化材料は吸収された熱を加熱後に再び調理器具に徐々に放出する。調理器具の内容物は、相変化材料によって調理器具の内容物に放出される熱のために、より長い期間にわたって温度を維持できる。最後の1つの取手構造に相変化材料を提供することで、製造プロセスに大きな変更を加えることなく、調理器具の組み立てをシンプルな態様で行うことができる。
【0007】
本発明の実施形態は、熱い食品を提供するプレートとは対照的に、調理器具がその下面に沿って加熱されるという洞察にさらに基づく。これにより、調理器具の底壁の温度は非常に高くなり得る。調理器具をできる限り効率的に加熱するために、調理中に調理器具の底壁とコンロとの間の最良の接触がさらに必要とされる。本願発明者らは、さらに、器具の側壁では温度がかなり低いことを確認した。側壁の外側の、取手構造に相変化材料を設けることによって、加熱は妨げられず、依然として調理器具の内容物が加熱後も十分に温かく保たれる。
【0008】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの取手構造は内側と外側とを有し、把持部は外側に設けられ、相変化材料は少なくとも1つの取手の内側の凹部に設けられる。
このようにして、相変化材料は調理器具の側壁に接してまたはその近くに位置し、大量の熱を失うことなく、調理中に相変化材料に熱を放出することができる。
【0009】
好ましい実施形態では、相変化材料は底壁からある距離にあり、この距離は4cm未満、好ましくは2cm未満、さらにより好ましくは1.5cm未満、最も好ましくは1cm未満である。
【0010】
このようにして、相変化材料は、コンロから調理器具の底壁に放出される熱を有利に吸収することができる。底壁は、温度が約250℃まで上昇する可能性がある。しかし、この温度は、調理器具の立ち側壁に沿って底壁から離れる方向に急速に低下する。一般に、相変化材料が調理器具の底壁のより近くに位置するほど、相変化材料は、より良好に熱を吸収することができる。相変化材料が吸収した熱を調理器具に放出する際に、調理器具の内部に下側から熱を放出できるので、相変化材料を立ち側壁の外側の下側に配置することが有利である。
【0011】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの取手構造の内側の凹部は複数の区画を含み、相変化材料は区画内に設けられている。
このようにして、相変化材料を所望の方法で凹部内に分布させることができる。したがって、例えば、凹部を互いに等しい寸法を有する多数の区画に細分することによって、相変化材料を凹部内に均一に分布させることができる。あるいは、例えば、立ち側壁の外側の上側に比べて立ち側壁の外側の下側により多くの相変化材料が配置されるように、相変化材料を異なる方法で凹部内に分配するために、異なる寸法を有する区画を設けることができる。
【0012】
好ましい実施形態では、相変化材料は、パウチに収容された少なくとも1つの取手構造の各取手構造用であり、パウチは、関連する取手構造内に配置され、かつ立ち側壁の外側に隣接している。
【0013】
相変化材料をパウチに入れることによって、相変化材料の移動の自由度がパウチによって制限される。パウチ内に相変化材料を収容することで、相変化材料が液相にあるときに、相変化材料の粒子が取手構造から漏れる危険性を低減がされる。パウチ内に相変化材料を収容することで、調理器具の動きの影響下で、液相の相変化材料が取手構造の凹部内を自由に動くことを抑制できる。言い換えれば、相変化材料はこのようにしてより適切な位置に保持され、これにより、通常、相変化材料の熱の吸収および放出はより効率的になる。さらに、パウチ内の相変化材料は、可能性のある汚染物質から保護され、相変化材料の起こりうる劣化から保護され、相変化材料の発火は回避される。しかしながら、本発明の他の実施形態では、相変化材料を取手構造の内部の密閉キャビティ内に収容することも可能である。
【0014】
好ましい実施形態では、パウチは取手構造により立ち側壁の外側に押し付けられる。
このようにして、相変化材料を立ち側壁の外側と可能な限り最良に接触させることが可能であり、これにより、相変化材料は、効率的で有利な態様で、調理器具から熱を吸収し、調理器具に熱を放出することができる。
【0015】
例示的な実施形態では、パウチは第1の壁と第2の壁とを含み、第2の壁の周縁部は第1の壁の周縁部に取り付けられ、パウチ内は高真空である。
このようにして、パウチ内の相変化材料は、可能性のある汚染物質から保護され、相変化材料の起こりうる劣化から保護され、相変化材料の発火は真空パウチによって回避される。
【0016】
好ましい実施形態では、パウチは、立ち側壁の外側に対して適合するように押し付けられるようになっている。パウチは、例えば、立ち側壁の湾曲に適合するように予備成形することができる。これにより、調理器具とパウチとの間でより効率的な熱伝達が可能となり、またその逆も可能である。代替の実施形態では、パウチは、柔軟なストリップによって互いに分離されている複数の区画を含む。これによりパウチは可撓性を得て、パウチは立ち側壁の外側に対してぴったり合うように押圧および/または配置することができる。柔軟なストリップは、パウチの異なる区画を調理器具の立ち側壁の湾曲に従って形成することができるように、調理器具の高さ方向に対応する方向に配置されることが好ましい。区画は、棒、帯、球、梁および/または立方体の形態をとることが好ましい。しかしながら、パウチの改善された柔軟性および/または可撓性が得られる限り、区画が他の形態をとってもよいことは当業者には明らかであろう。さらに、当業者には明らかなように、複数の区画を有するパウチの代替として、調理器具の立ち側壁の湾曲に従い、より効率的な熱交換が得られるように、互いに連結されていてもいなくてもよい独立のパウチを使用することができる。相変化材料のより均一な分布は、区画化されたパウチを使用することおよび/または異なる独立したパウチを使用することによって、さらに得ることができる。例えば、調理器具の側壁の高さ方向に異なる区画を配置することによって、相変化材料が下方に沈む、または別の方向に移動するのを防ぐことが可能である。
【0017】
好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの取手構造および立ち側壁の外側は、相変化材料が収容される空間を取り囲む。
このようにして、相変化材料が立ち側壁の外側に接近して配置されて良好な熱の吸収および放出が保証され、同時に、取手構造は調理器具のユーザーが相変化材料に触れることを防止する。
【0018】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの取手構造の相変化材料は、立ち側壁の外側の周囲の少なくとも250°、好ましくは少なくとも300°の角度にわたって延設される。
【0019】
このようにして、立ち側壁の外側の円周の大部分の周りに相変化材料を設けることが可能である。相変化材料が周囲に提供される円周の部分が大きいほど、一般に、相変化材料によってより多くの熱を吸収および放出することができる。
【0020】
好ましい実施形態では、相変化材料は、立ち側壁の外側の実質的に全周の周りに帯状に配置される。
このように、熱は、バンドの位置で相変化材料と接触せずに調理器具から出ていくことができない。側壁に対して相変化材料が配置されない何もない表面(clear surface)が立ち側壁の周囲の全周にわたって存在する態様に比べて、立ち側壁の周囲の外側の周りに実質的に全周に亘って相変化材料のバンドを提供することで、典型的には、相変化材料がより多くの熱を吸収および放出できる。
【0021】
例示的な実施形態では、底壁および立ち側壁は、ステンレス鋼、アルミニウム、および鋳鉄のうちの少なくとも1つで製造される。
これらの材料はそれらの熱伝導性および難燃性の性質で知られており、それゆえに、これらの材料は調理器具の底壁および立ち側壁を製造するのに非常に適している。
【0022】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの取手構造は、リベット接合部、溶接部、クランプ接合部のうちの1つまたは複数によって側壁に取り付けられている。
このようにして、取手構造を十分に確実な方法で調理器具上に配置でき、取手構造内の相変化材料を有利に配置できる。
【0023】
例示的実施形態では、少なくとも1つの取り付け板が側壁の外側に配置され、少なくとも1つの取手構造が少なくとも1つの取り付け板に取り付けられる。
このように、取手構造全体ではなく、取り付けプレートだけが調理器具上に直接配置されればよい。したがって、取手構造は、さらに、任意選択的に、調理器具上に取り外し可能に配置することができる。これにより、取手構造を複数の取付板および複数の調理器具に連結することができる。
【0024】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの取手構造は、少なくともその下部に難燃層を含み、難燃層は、好ましくはアルミニウムまたはステンレス鋼で製造される。
このようにして、取手構造の他の部分は、加熱中に調理器具が置かれるコンロからの熱および炎から保護される。難燃層は、取手構造の他の部分の発火を防止する。例示的実施形態では、難燃層は、取手構造の外側に沿って延びる。
【0025】
好ましい実施形態では、相変化材料は、側壁を横切る方向に見たときに、2mm~10mm、好ましくは3mm~8mmの厚さを有する層に延設される。
このようにして、これにより取手構造が大きな寸法を取ることなく、単位面積当たり十分な相変化材料を設けることができる。このように、取手構造を調理器具に近接して配置でき、これにより取扱い易いユーザーフレンドリーな調理器具が保証される。
【0026】
好ましい実施形態では、相変化材料は側壁と実質的に平行な層に延在し、この層は表面積1平方センチメートル当たり50ジュール~200ジュールの間の熱エネルギーを放出する。
【0027】
このようにして、相変化材料は十分な熱エネルギーを効率的な方法で放出するので、より長い期間、調理器具および調理器具の内容物の温度を維持できる。
例示的な実施形態では、相変化材料は、55℃~95℃の間、好ましくは65℃~85℃の間の融解温度を有する。
【0028】
このようにして、調理器具が底壁を介して加熱されているとき、相変化材料は効率的な方法で熱を吸収することができる。調理器具が冷却されるおそれが生じると、相変化材料は吸収された熱を徐々に再放出する。
【0029】
好ましい実施形態では、調理器具の体積に対する相変化材料のグラム数は、40~200g/L、好ましくは50~160g/Lである。
このようにして、相変化材料の良好な熱作用は、異なる大きさおよび容積の調理器具に対して保証され得る。
【0030】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの取手構造は第1の取手構造および第2の取手構造を含み、第1の取手構造および第2の取手構造は立ち側壁の外側に対して配置され、第1の取手構造および第2の取手構造は相変化材料を有する。
【0031】
このように、ユーザーは、調理器具を両手で容易に把持できる。このように、相変化材料を効率的な方法で立ち側壁の周囲に沿って分配することができる。
例示的な実施形態では、第1の取手構造および第2の取手構造は、立ち側壁の外側に対して実質的に互いに反対側に配置されている。
【0032】
このようにして、ユーザーは、調理器具を例えばコンロ又はテーブルに置くために、両手で容易に調理器具を把持できる。2つの取手構造のそれぞれは、相変化材料を含み、第1の取手構造の相変化材料は、第1の取手構造に対応する立ち側壁の外側の円周の半分にわたって延設される。第2の取手構造の相変化材料は、第2の取手構造に対応する立ち側壁の外側の外周の半分の長さにわたって延設される。このようにして、相変化材料は、立ち側壁の外側の全周にわたって延在する。
【0033】
例示的な実施形態では、第1の取手構造および第2の取手構造は、立ち側壁の外側の全体の周りに互いに取り付けられている。
このようにして、調理器具をこの目的に適合させる必要なく、調理器具の立ち側壁の外側の全体に第1および第2の取手構造を配置できる。取手構造は、互いに固定的にまたは取り外し可能に取り付けることができる。取手構造が互いに取り外し可能に取り付け可能であるとき、取手構造は異なる調理器具上に配置することができる。
【0034】
本発明の第2の態様は、保温構造を備えた調理器具に関し、調理器具は底壁と立ち側壁とを備える。保温構造は立ち側壁の外側の周りに配置され、保温構造は相変化材料を含む。このようにして、相変化材料は立ち側壁の外側に近接して配置され、調理器具の底壁は相変化材料を含まないままである。これにより調理器具の底壁とコンロとの間の良好な接触が保証され得る。相変化材料はさらに調理器具が加熱されているときに熱を吸収し、相変化材料は加熱後に吸収された熱を再び調理器具に徐々に放出する。相変化材料によって調理器具の内容物に放出される熱により、調理器具の内容物は、より長い間温度を維持することができる。立ち側壁の外側の周りに配置された保温構造内に相変化材料を設けることによって、製造工程に大きな変更を加えることなく、調理器具の組み立ては簡単な方法で行うことができる。保温構造は、任意選択的に、立ち側壁の外側の周りに取り外し可能に配置することができる。
【0035】
保温構造は、相変化材料が収容される少なくとも1つの区画を含むことが好ましい。これにより、調理器具に対して相変化材料を良好に位置決めできる。相変化材料は複数の区画に収容することもでき、その場合、保温構造が調理器具の立ち側壁に対して配置された時、区画は、調理器具の立ち側壁に対して異なる位置に配置される。
【0036】
好ましくは、調理器具は、側壁に取り付けられた取手を備え、保温構造は取手の下に配置される。取手の存在により、ユーザーが調理器具を握りやすくなる。取手の下に保温構造を配置することによって、取手はユーザーにとって容易にアクセス可能なままである。取手と底壁との間の調理器具上に保温構造を配置することによって、相変化材料は、コンロから調理器具の底壁に放出される熱を有利に吸収することができる。一般に、相変化材料が調理器具の底壁により近く位置するほど、相変化材料はより良好に熱を吸収できる。
【0037】
保温構造は、好ましくは、立ち側壁の外側の周りに締め付けられるベルト要素を含む。このようにして、調理器具自体の製造工程に大きな変更を加える必要なく、調理器具の立ち側壁に対しておよびその周囲に保温構造を配置することができる。ベルト要素は、任意選択的に、立ち側壁の外側の周りに取り外し可能に締め付けることができる。
【0038】
保温構造は少なくとも2つの保温部を含み、各保温部は相変化材料を含み、少なくとも2つの保温部は、側壁の周囲に互いに隣接して配置され、互いに接していることが好ましい。このようにして、保温構造を例えば調理器具の側壁に簡単な方法で配置することができ、保温部が2つの場合には、各保温部は調理器具の立ち側壁の周囲の半分にわたって延びる。調理器具の周りに異なる保温部品を互いに取り付けることによって、調理器具の立ち側壁の周囲に保温構造をしっかりと固定することが可能である。別の実施形態では、保温構造の異なる保温部を、調理器具の立ち側壁の外側に、互いに独立して配置できる。
【0039】
さらなる実施形態では、保温構造を有する調理器具は、以下の項目のうちの1つ以上に従って提供される。
1.保温構造を有する調理器具であって、調理器具は底壁と立ち側壁とを含む。保温構造は、立ち側壁の外側の周りに配置されている。保温構造は、相変化材料を含む。
2.項目1に記載の調理器具であって、保温構造は、相変化材料が収容される少なくとも1つの区画を備える。
3.項目1又は2に記載の調理器具であって、調理器具は、側壁に取り付けられている取手を備え、保温構造は、取手の下に配置されている。
4.前記の項目のいずれかに記載の調理器具であって、保温構造は、立ち側壁の外側の周りに締め付けられたベルト要素を有する。
5.前記の項目のいずれかに記載の調理器具であって、保温構造は少なくとも2つの保温部を含み、各保温部は相変化材料を含み、少なくとも2つの保温部は、側壁の周縁部の周りに互いに隣接して配置され、互いに接している。
6.前記の項目のいずれかに記載の調理器具であって、保温構造は内側と外側とを有し、相変化材料は少なくとも1つの保温構造の内側の少なくとも1つの凹部内に設けられている。
7.前記の項目のいずれかに記載の調理器具であって、相変化材料が底壁から距離dの位置にあり、この距離は、4cmより小さく、好ましくは2cmより小さく、より好ましくは1.5cmより小さく、最も好ましくは1cmより小さい。
8.前記の項目のいずれかに記載の調理器具であって、相変化材料は、保温構造内に配置されておりかつ立ち側壁の外側に隣接している少なくとも1つのパウチ内に収容されている。
9.前記の項目に記載の調理器具であって、パウチは第1の壁と第2の壁とを含み、第2の壁の周縁部が第1の壁の周縁部に取り付けられ、パウチ内は高真空である。
10.前記の項目のいずれかに記載の調理器具であって、保温構造および立ち側壁の外側が、相変化材料が収容される空間を取り囲む。
11.前記の項目のいずれかに記載の調理器具であって、保温構造の相変化材料が、立ち側壁の外側の外周の少なくとも250°、好ましくは少なくとも300°の角度にわたって延在する。
12.前記の項目のいずれかに記載の調理器具であって、相変化材料は、立ち側壁の外側の実質的に全周の周りに帯状に配置されている。
13.前記の項目のいずれかに記載の調理器具であって、底壁および立ち側壁が、ステンレス鋼、アルミニウムおよび鋳鉄のうちの少なくとも1つで製造される。
14.前記の項目のいずれかに記載の調理器具であって、取手および/または保温構造は、リベット接合部、溶接部、クランプ接合部のうちの1つ以上によって側壁に取り付けられている。
15.前記の項目のいずれかに記載の調理器具であって、少なくとも1つの取付板が側壁の外側に配置され、保温構造が少なくとも1つの取付板に取り付けられている。
16.前記の項目のいずれかに記載の調理器具であって、保温構造は、少なくともその下部に難燃層を含み、難燃層が好ましくはアルミニウムまたはステンレス鋼で製造される。
17.前記の項目のいずれかに記載の調理器具であって、相変化材料は、側壁を横切る方向に見たときに2mm~10mm、好ましくは3mm~8mmの厚さを有する層に延在される。
18.前記の項目のいずれかに記載の調理器具であって、相変化材料は側壁と実質的に平行な層に延在し、この層は表面積1平方センチメートル当たり50ジュール~200ジュールの熱エネルギーを放出する。
19.前記の項目のいずれかに記載の調理器具であって、相変化材料は、55℃~95℃の間、好ましくは65℃~85℃の間の融解温度を有する。
20.前記の項目のいずれかに記載の調理器具であって、調理器具の体積に対する相変化材料のグラム数は、40~200g/L、好ましくは50~160g/Lである。
21.前記の項目のいずれかに記載の調理器具に利用される保温構造であって、保温構造は調理器具の立ち側壁の外側の周りに配置されるように構成されており、保温構造は相変化材料を含む。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本発明の上記および他の有利な特性および目的は、添付の図面と組み合わせて読まれるとき、以下の詳細な説明に基づき、より明白になり、より良く理解されるであろう。
図1】本発明に係る2つの取手構造を有する調理器具の例示的実施形態であり、両方の取手構造が相変化材料を有する。
図1A】本発明に係る相変化材料を有する取手構造の例示的実施形態である。
図1B図1に示す2つの取手構造を有する調理器具の上面断面図である。
図2A】本発明に係る2つの取手構造を有する調理器具の例示的実施形態であり、両方の取手構造が相変化材料を有する。
図2B図2Aの例示的実施形態の断面である。
図3A】本発明に係る1つの取手構造を有する調理器具の代替の例示的実施形態の上面図であり、取手構造が相変化材料を有する。
図3B図3Aに示す例示的実施形態の側面図である。
図4】保温構造を有する調理器具の一実施形態であり、保温構造は相変化材料を有する。
図4A】本発明に係る相変化材料を有する保温構造の例示的実施形態である。
図4B図4に示す保温構造を有する調理器具の上面断面図である。
図5】保温構造を有する調理器具の代替実施形態であり、保温構造が相変化材料を有する。
【発明を実施するための形態】
【0041】
少なくとも1つの取手構造150を有する調理器具100の第1の実施形態を図1に示す。調理器具100は、底壁101と、外側102aを有する立ち側壁102とを有する。図示の底壁101は円形ディスクの形状をしており、図示の立ち側壁102はシリンダジャケットの形状をしている。しかしながら、本発明が、異なるように形成された底壁101と立ち側壁102とを有する調理器具に適用され得ることは当業者に明らかであろう。2つの取手構造150は、立ち側壁102の外側102aに対して配置され、2つの取手構造150の各々は、調理器具100のユーザーによって把持可能に構成される把持部160を有する。示された2つの取手構造150の各々は相変化材料170を含む。同様に、1つの取手構造150のみを立ち側壁102の外側102aに配置することができ、取手構造150は2つ以上の把持部160を有することができる。図1は、また、調理器具100上に取り外し可能に配置可能な蓋500も示す。調理器具100は、通常、コンロによって底壁101を介して加熱され、それによって調理器具100内に熱が発生する。蓋500を調理器具100の上に置くことによって、熱が調理器具100から逃げにくくなる。そして、調理器具100の内容物、典型的には食品は、発生した熱と共に、調理器具100の底壁101、立ち側壁102および蓋500によって包まれる。
【0042】
図1では、相変化材料170は、取手構造150と立ち側壁102の外側102aとの間に封入されている。図示の相変化材料170は、立ち側壁102の外側102aの円周に沿って底壁101の平面と実質的に平行な方向に延びる湾曲した長方形のスラブの形態をしている。図1に示す取手構造150は、互いに接触しない。したがって、取手構造150の間には調理器具100の立ち側壁102の外側102aの何もない部分(clear part)があり、何もない部分には、取手構造150は延在せず、その結果、そこには相変化材料170は延在しない。好ましい実施形態では、立ち側壁102の外側102aのこの何もない部分は可能な限り小さい。さらなる好ましい実施形態では、2つ以上の取手構造150が完全に互いまで延び、これによって、2つ以上の取手構造150と立ち側壁102の外側102aとの間に囲まれている相変化材料170の連続帯を得ることができる。取手構造150は、複数の部分から構成され、これらの部分が立ち側壁102の外側102aの実質的に全周に亘って集合的に延在してもよいことは当業者には明らかであろう。決定された実施形態では、相変化材料170をその内部に受ける目的で、少なくとも1つの取手構造150に異なる区画をさらに設けることができる。区画は、互いに隣接する区画にすることも、区画を互いに離すこともできる。図1に示す取手構造150では、把持部160は調理器具100の開口部に近い調理器具100の上部に位置している。しかしながら、本発明の原理は、把持部が、異なる、下方位置に配置されている取手構造にも同様に適用できることが当業者には明らかであろう。把持部160が異なる形態、例えばハンドグリップ、細長い取手、ラッチ、ノブ、耳またはレバーの形態、をとることができること、把持部160を異なる方法で配向させることができること、把持部160を、取手構造上に配置できること、または、異なる方法で取手構造に組み込むことができること、が、当業者にはさらに明らかであろう。
【0043】
相変化材料170は、少なくとも1つの取手構造150と立ち側壁102の外側102aとの間の凹部155内に包装されずに存在するか、または、マイクロカプセルまたはマクロカプセルに封入されている。好ましい実施形態では、相変化材料170は、少なくとも1つの取手構造150と立ち側壁102の外側102aとの間のパウチ内に配置されている。パウチは、例えば少なくとも1つの取手構造150内に配置され、立ち側壁102の外側102aに隣接している。
【0044】
例示的な実施形態では、パウチは、取手構造150によって、立ち側壁102の外側102aに対して押し付けられる。パウチは、例えば、それぞれが周縁部を有する第1の壁と第2の壁とを有し、第2の壁の周縁部は第1の壁の周縁部に取り付けられ、パウチ内は高真空である。パウチは、相変化材料が一方の相から他方の相への移行中に膨張するときにパウチも伸張することができ、逆の相変化の際に相変化材料が収縮するときにパウチが再び緊張するように、ある程度、弾性および可撓性であることが好ましい。パウチ内の高真空と組み合わせられて、パウチの可撓性は、相変化材料を逃がすことなく、パウチ内の相変化材料と立ち側壁102の外側102aとの間に、最大のかつ最も効率的な接触可能面を提供する。
【0045】
図1において、文字dは、相変化材料170と調理器具100の底壁101との間の距離を示す。調理器具100が底壁101に沿って加熱されたときに相変化材料170が調理器具100からできるだけ多くの熱を吸収し、その後この器具が加熱されなくなったときに、この熱を調理器具100に再び放出することができるように、距離dは、できるだけ小さく保たれることが好ましい。調理器具100の加熱中、底壁101の温度は250℃以上に上昇する可能性がある。この温度は、底壁101から次第に遠くなるに連れて見られるように、通常、立ち側壁102に沿って急速に低下する。立ち側壁102の外側102aにおいて、底壁101の数mm上では、温度は典型的にはおおよそ85℃と100℃との間である。したがって、好ましい実施形態では、相変化材料170は、上壁101から2cm未満の距離に配置されている。さらに好ましい実施形態では、相変化材料170は、底壁101から1cm未満の距離に配置されている。
【0046】
図1Aは、相変化材料170を含む取手構造150をより詳細に示す。取手構造150は、内側150b、外側150a、および外側150aに配置された把持部160を有する。図1Aでは、相変化材料170は、取手構造150の内側150bの凹部155内に配置されている。取手構造150は、開いた管の半分として示されており、取手160が外側150aに配置されている。図1を参照して上述したように、取手構造150は、取手構造150が、意図される調理器具100に応じて異なる形態をとることができることが当業者には明らかであろう。
【0047】
図1Bは、図1に示されるような取手構造150を有する調理器具100の上面断面図を示す。図1Bは、相変化材料170が、取手構造150の内側150bと立ち側壁102の外側102aとの間に位置していることを明確に示している。相変化材料170は、取手構造150自体の凹部155内に配置することができ、または取手構造150と立ち側壁102とによって囲まれた空間内に配置することができる。調理器具100の底壁101の中心から見ると、図1Bの右側に示される取手構造150の相変化材料170は、角度α1にわたって延びる。調理器具100の底壁101の中心から見ると、図1Bの左側に示される取手構造150の相変化材料170は、角度α2にわたって延びる。2つの取手構造150を有する好ましい実施形態では、相変化材料は、好ましくは、360°の角度α1+α2にわたって延びる。したがって、一方の取手構造150の相変化材料170はほぼ180°の角度α1にわたって延びることができ、他方の取手構造150の相変化材料170はほぼ180°の角度α2にわたって延びることができ、または、2つの相変化材料は、異なる角度α1およびα2にわたって延びることができる。代替の実施形態では、2つより多い取手構造を立ち側壁の外側に対して配置することができ、相変化材料は2つより多い取手構造のそれぞれに配置される。例えば3つの取手構造が配置されるとき、相変化材料は1つの取手構造当たり90°~120°の角度αにわたって延びることができ、それによって3つの取手構造の相変化材料は実質的に270°~360°の全体角度にわたって延びる。
【0048】
図1Bでは、相変化材料170は、取手構造150内の1つの凹部155内または取手構造150と立ち側壁102の外側102aとの間に囲まれた1つの空間内に、取手構造150ごとに配置されている。代替の実施形態では、相変化材料170は、取手構造150ごとに複数の凹部155に収容されるか、または、相変化材料170は、取手構造150と立ち側壁102の外側102aとの間に形成される複数の任意の隣接するスペースに配置される。相変化材料170は、好ましくは、凹部155または取手構造150と立ち側壁102の外側102aとの間に囲まれた空間の少なくとも下部に配置される。調理器具100の特定の形態に応じて、凹部155または取手構造150と立ち側壁102の外側102aとの間に囲まれた空間を、相変化材料170でより高いレベルまで満たすことが有利となり得る。
【0049】
図2Aは、2つの取手構造150を備えた調理器具100の実施形態を示しており、取手構造150と立ち側壁102の外側102aとは相変化材料170が収容される空間を取り囲んでいる。相変化材料170は、取手構造150の内側150bと立ち側壁102の外側との間に収容されている。内側150bおよび外側150aが示されている取手構造150は、描画のため、調理器具100とは別に示されている。相変化材料170は、調理器具100の立ち側壁102の輪郭に沿う、湾曲した長方形のスラブとして示されている。好ましい実施形態では、相変化材料170は可撓性の袋に収容されており、袋内は高真空である。次いで、パウチは、取手構造150の内側150bによって調理器具100の立ち側壁102に押し付けられる。可能な実施形態では、取手構造150の内側150bと相変化材料170で充填されたパウチとの間に断熱層および/または熱反射層が設けられる。これにより、相変化材料170によって吸収された熱を効率的に調理器具100に再び放出することができ、調理器具100から離れる方向への熱損失が制限される。さらに、このようにすることで、取手構造150自体の温度が高くなり過ぎず、ユーザーは、取手構造の把持部160を火傷する危険性なしに掴んで取り扱うことができることが保証される。
【0050】
図2Aに示す実施形態では、取手構造150は、底壁101の方向に、ほぼ底壁101まで延びている。そして、相変化材料170を取手構造150の下側に設けることによって、相変化材料170を底壁101から数mmに配置することができる。
【0051】
図2Aでは、立ち側壁102の外側の周囲の大部分には何もなく(clear)、すなわち相変化材料170が設けられておらず、熱は、何もない部分(clear part)を介して調理器具100から逃げることができる。立ち側壁102の周囲の何もない部分を制限することによって、失われる熱は少なくなる。これは、例えば、取手構造150がより大きな角度α1+α2にわたって延在し、取手構造150内の相変化材料170が立ち側壁102の周囲の大部分を覆うように、取手構造150を構成または配置することによってなすことができる。あるいは、相変化材料170を有する追加の取手構造または取手構造の一部を立ち側壁の外側に配置することができ、これによって直立部の外側の外周の何もない部分の大部分を覆うことができる。
【0052】
図2Bは、図2Aに示す調理器具100の一部の概略断面図を示し、これは、本発明の一実施形態による取手構造150が、立ち側壁102の外側にどのように配置されるかを示している。取手構造150は、把持部160と取手構造150の内側150bとを含むプラスチック部分を有する。プラスチックを保護する目的で、難燃性保護層が取手構造150の外側150bに設けられている。保護層は、調理器具100の底壁101と取手構造150のプラスチックとの間に保護層が位置するように、取手構造の少なくとも外側150bの下側に設けることが好ましい。この保護層は、好ましくはアルミニウムまたはステンレス鋼板を含む。しかしながら、同様の特性を有する材料を保護層および/または取手構造の材料に使用できることは当業者には明らかであろう。
【0053】
取手構造150および立ち側壁102の外側が、相変化材料170が収容される空間を囲むように、取手構造150は立ち側壁102に配置される。相変化材料は、好ましくは、高真空の可撓性パウチ内に収容される。
【0054】
底壁101および立ち側壁102は、ステンレス鋼、アルミニウムおよび/または鋳鉄から製造されるのが好ましい。取手構造150は、溶接部、リベット接合部またはクランプ接合部によって、立ち側壁102に取り付けることができる。あるいは、1つまたは複数の取付板を立ち側壁102の外側に配置し、1つまたは複数の取手構造を1つまたは複数の取付板に取り付けてもよい。
【0055】
図3Aおよび図3Bは、取手構造150を有する低い調理器具(low cooking utensil)の一実施形態を示す。図3Aは平面図で低い調理器具を示し、図3Bは側面図で低い調理器具を示す。取手構造150は、2つの取手構造部150'および150''を含み、それぞれが立ち側壁102の半周の周りに延び、全体として立ち側壁102の全周を囲む。相変化材料170は、取手構造部150'および150''のそれぞれの凹部155内に設けられている。凹部は、同様に、取手構造部150'および150''と立ち側壁102の外側とによって囲まれる空間であってもよい。図3Aおよび図3Bでは、2つの取手構造部150'および150''は、調理器具の底壁に垂直な2つの直線の接触線に沿って互いに接触する。取手構造部150'および150''は、任意選択的に取り外し可能に接触線の近くで互いに例えばスナップ接続部(図示せず)によって取り付けることができる。取手構造部150'および150''はそれらの外側端部が互いに嵌合するようにさらに形成することができ、それによって、それらは直線状の接触線ではなく、例えば凹凸のあるまたは鋸歯状の接触線を有し、取手構造部150'および150''はちょうど2つのパズルのピースのように互いにフィットする。別の実施形態では、取手構造部150'および150''は互いに取り付けられていないが、それらが立ち側壁102のほぼ全周を囲むように立ち側壁102の外側に配置されている。ここでは、相変化材料がいくつかの任意選択的に相互に隣接する区画の凹部155の内側に位置する実施形態を想定することも可能である。取手構造150は、細長い取手の形態のハンドグリップ160を有する。
【0056】
取手構造150は、調理器具のほぼ全高にわたって底壁に対して垂直方向に延びている。これは、低い調理器具に有利である。低い調理器具では、底壁101に十分に近い立ち側壁102の利用可能な表面積はさらに制限される。取手構造150、そしてこの場合に相変化材料170は、低い調理器具の全高にわたって延びているので、可能な最も効率的な熱作用を得ることができる。
【0057】
図4は、保温構造250を有する調理器具200を示し、調理器具200は、底壁201と、立ち側壁202とを有する。保温構造は、任意選択的に、立ち側壁202の外側の周りに取り外し可能に配置され、保温構造250は、相変化材料270を含む。調理器具は、さらに、立ち側壁202の外側に配置された2つの取手260を有する。保温構造270は、保温構造が立ち側壁202の外側の実質的に全周の周りに延びるように、立ち側壁202の周りに配置される。相変化材料270は、保温構造250内に設けられている。相変化材料270は、保温構造250の、凹部または区画255内に配置されている。図4は1つの大きな凹部255を示しているが、保温構造は、相変化材料270が収容される複数の凹部または区画を含むことができる。区画は、互いに隣接していてもよく、または互いに間隔をあけて保温構造250内に分散して配置されていてもよい。図4において、保温構造250は、調理器具200の立ち側壁202の周りにかつ立ち側壁202に対して固定されている。保温構造250の2つの外側端部は、スナップ接続部180によって、任意選択的に取り外し可能に、互いに接続することができる。例示的実施形態では、保温構造250は2つの保温部251および252を含む。2つの保温部251、252は、それぞれ相変化材料270a、270bを含み(図4B参照)、2つの保温部251、252は、側壁202の周囲に互いに隣接して配置されている。保温部251および252は、例えばスナップ接続部180によって互いに取り付けることができる。図4において、文字dは、保温構造250内に収容された相変化材料270と調理器具200の底壁201との間の距離を示す。調理器具200が底壁201に沿って加熱されるときに相変化材料270が調理器具200からできるだけ多くの熱を吸収することができ、そしてこの器具が加熱されなくなるとこの熱を調理器具200に再び放出することができるように、距離dはできるだけ小さく保たれることが好ましい。調理器具200の加熱中、底壁201の温度は250℃以上に上昇する可能性がある。この温度は、立ち側壁202に沿って底壁201から離れる方向に低下する。底壁201から数mm上の立ち側壁202の外側202aの温度は、通常、おおよそ85℃~100℃の間である。したがって、好ましい実施形態では、相変化材料270は、上壁201から2cm未満の距離に配置されている。さらに好ましい実施形態では、相変化材料270は底壁201から1cm未満の距離に配置されている。
【0058】
図4Aは、上述のような保温構造250の一部251、252をより詳細に示す。保温構造250は、内側250bと外側250aとを有し、相変化材料270は、保温構造250の内側250bの少なくとも1つの凹部255内に設けられている。凹部は複数の区画を含むことができる。保温構造250の図示部分251、252の一方の外端には、スナップ凹部180bが設けられており、スナップ凹部180bは、保温構造250の図示部分251、252の他方の外端にある突出スナップ部分180と一緒に、スナップ接続部180を形成する。保温構造250の第2の部分251、252が同様のスナップ凹部および突出スナップ部分を備えている場合、保温構造250の2つの部分251、252は、立ち側壁202の周囲全体の周りに、2つのスナップ接続部180により互いに取り付けることができる。保温構造250の様々な部分251、252を互いに取り付けるために、異なるスナップ接続部および代替の接続技術を適用できることが当業者には明らかであろう。
【0059】
図4Bは、図4に示されるような保温構造250を有する調理器具200の上面断面図を示す。図4Bは、保温構造250の部分251の内側と立ち側壁202の外側との間に、保温構造250の部分251の相変化材料270aが位置していることを明確に示している。同様に、保温構造250の部分252の相変化材料270bは、保温構造250の部分252の内側と立ち側壁202の外側との間に位置している。相変化材料270は、保温構造250自体の凹部255内に配置することができ、または保温構造250と立ち側壁202とによって囲まれた空間内に配置することができる。調理器具200の底壁201の中心から見たときに、保温構造250の部分251の相変化材料270aは角度α1にわたって延びる。調理器具200の底壁201の中心から見たときに、保温構造250の部分252の相変化材料270bは角度α2にわたって延びる。2つの部分251、252を有する好ましい実施形態では、相変化材料270a、270bは、360°の角度α1+α2にわたって延びることが好ましい。したがって、部分251の相変化材料270aは、ほぼ180°の角度α1にわたって延びることができ、他の部分252の相変化材料270bは、ほぼ180°の角度α2にわたって延びることができる。代替の実施形態では、2つの相変化材料は、異なる角度α1およびα2にわたって延びる。
【0060】
図4Bでは、相変化材料270a、270bは、部分251、252ごとに、1つの凹部255内、または、保温構造250のそれぞれの部分251、252と立ち側壁202の外側との間に囲まれた1つの空間内に配置されている。代替実施形態では、相変化材料270a、270bは、部分251、252ごとにいくつかの凹部255内に受容されるか、または、相変化材料270a、270bは、保温構造250のそれぞれの部分251、252と立ち側壁202の外側との間に形成される、いくつかの任意的に隣接する空間に配置される。好ましくは、相変化材料270は、凹部255または保温構造250と立ち側壁202の外側との間に囲まれた空間の、少なくとも下部に配置される。調理器具200の特定の形態に応じて、凹部255または保温構造250と立ち側壁202の外側との間に囲まれた空間を、相変化材料270でより高いレベルまで満たすことが有利となり得る。相変化材料270a、270bは、高真空のパウチに収容されるのが好ましい。そして、パウチは保温構造250の凹部255内に配置され、立ち側壁202の外側に隣接する。
【0061】
図5は、保温構造250を備えた調理器具200の実施形態を示しており、保温構造は、立ち側壁の外側の周りに延びるベルト要素を備える。ベルト要素は、それぞれの相変化材料271、272、273が収容される、いくつかの保温部251、252、253を有する。保温部251、252、253は、図4Aに示す保温構造250の部分の小型版と見なすことができる。保温部同士は、ベルトまたはストラップによって互いに連結されている。好ましい実施形態では、ベルトの長さは調整可能である。これにより、保温構造250を異なるサイズおよび形態の調理器具の周りに配置することができる。代替実施形態では、ストラップまたはベルトは弾性または伸縮性材料から製造される。このようにして、保温構造は、追加の補助的手段なしに、立ち側壁の外側の周りに締め付けることができる。
【0062】
当業者は、本発明が上述の実施形態に限定されず、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲内で、多くの修正および変形が可能なことを理解するであろう。
図1
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図4A
図4B
図5