(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】コーティングされたポリマー粒子を含む組成物およびそれから形成されたTPO組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/10 20060101AFI20230605BHJP
C08L 23/18 20060101ALI20230605BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20230605BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20230605BHJP
【FI】
C08L23/10
C08L23/18
C08K5/098
C08K3/00
(21)【出願番号】P 2020514680
(86)(22)【出願日】2018-09-07
(86)【国際出願番号】 US2018049913
(87)【国際公開番号】W WO2019055304
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-08-31
(32)【優先日】2017-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ムンロ、ジェフリー シー.
(72)【発明者】
【氏名】リー、チーヒェン
(72)【発明者】
【氏名】ヒューズ、モルガン エム.
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0092631(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0100382(US,A1)
【文献】特開2002-003667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
A)コーティングされたポリマー粒子であって、前記ポリマー粒子は、0.854~0.860g/ccの密度、および4.0~15.0g/10分のメルトインデックス(I2)の特性を含むエチレン系ポリマーを含む第1の組成物から形成され、
前記ポリマー粒子は、前記ポリマー粒子の全表面の少なくとも一部分上にコーティングを含み、
前記エチレン系ポリマーは、エチレン
-オクテンコポリマーであり、
前記コーティングは、少なくとも1種の無機粉末と、金属ステアリン酸塩から
なる有機粉末とを含む粉末組成物から形成され、前記無機粉末の総量と前記有機粉末の総量との重量比は3.0~50.0である、コーティングされたポリマー粒子と、
B)プロピレン系ポリマーと、を含む、組成物。
【請求項2】
前記成分Bのプロピレン系ポリマーが、20~120g/10分のMFR、および0.880~0.920g/ccの密度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物が30g/10分以上のMFRを有する、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物が30~60g/10分のMFRを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物が、前記組成物の重量に基づいて、50重量%以上の成分Bと、50重量%以下の成分Aとを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
成分Aについて、前記第1の組成物が、前記第1の組成物の重量に基づいて、95重量%以上の前記エチレン系ポリマーを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
成分Aについて、前記無機粉末が、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、微粉シリカ、ヒュームドシリカ、石英、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
エチレン/α-オレフィンエラストマーは、数十年にわたって、ポリプロピレン、特に一般にTPOと呼ばれるタルク充填ポリプロピレンコンパウンドに対する衝撃改質剤として使用されてきた。TPOコンパウンドは、自動車産業で広く普及しており、バンパーフェイシア、内装ドアパネル、エアバッグカバー、およびその他の多くの構成要素など、内装および外装自動車部品の製造に使用されている。部品の大部分は射出成形で製造されている。自動車メーカーは、燃費を改善するために車両の重量を減らし続けているため、TPO部品の厚さを減らすことが望まれている。同時に、車両の美観を改善し、より多くの電子機器およびセンサーを組み込むために、設計の複雑さが増している。「薄肉」および設計の複雑さの両方には、特に射出成形プロセスにおいて、より高い流動性をもつTPOコンパウンドが必要である。伝統的に、例えばポリプロピレンマトリックスのメルトフローレートを増加させることにより、TPOの流動性を増加させると、衝撃性能が低下し、これは望ましくない。
【0002】
流動性が改善されるが、従来のTPO配合物と同じレベルの剛性と靭性を維持するTPO配合物が必要である。エラストマー、およびそれを含む配合物は、以下の参考文献に記載されている:WO2017/049064。US6136937およびUS5925703。しかし、上記の「改善された流動性」のTPO配合物の必要性が残っている。このニーズは、以下の組成物によって満たされた。
【発明の概要】
【0003】
組成物であって、
A)コーティングされたポリマー粒子であって、ポリマー粒子は、0.854~0.860g/ccの密度、および4.0~15.0g/10分のメルトインデックス(I2)の特性を含むエチレン系ポリマーを含む第1の組成物から形成され、
ポリマー粒子は、ポリマー粒子の全表面の少なくとも一部分上にコーティングを含み、
コーティングは、少なくとも1種の無機粉末と、金属ステアリン酸塩および/またはポリマー粉末から選択される少なくとも1種の有機粉末と、を含む粉末組成物から形成され、無機粉末の総量と有機粉末の総量との重量比は3.0~50.0である、コーティングされたポリマー粒子と、
B)任意選択の、プロピレン系ポリマーと、を含む、組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明の組成物は、経済的に製造することができ、かつ流動性、剛性、および靭性の全体的なバランスが改善されたTPO配合物に使用することができる。
【0006】
組成物であって、
A)コーティングされたポリマー粒子であって、ポリマー粒子は、0.854~0.860g/ccの密度、および4.0~15.0g/10分のメルトインデックス(I2)の特性を含むエチレン系ポリマーを含む第1の組成物から形成され、
ポリマー粒子は、ポリマー粒子の全表面の少なくとも一部分上にコーティングを含み、
コーティングは、少なくとも1種の無機粉末と、金属ステアリン酸塩および/またはポリマー粉末から選択される少なくとも1種の有機粉末と、を含む粉末組成物から形成され、無機粉末の総量と有機粉末の総量との重量比は3.0~50.0である、コーティングされたポリマー粒子と、
B)任意選択の、プロピレン系ポリマーと、を含む、組成物である。
【0007】
本発明の組成物は、本明細書において記載される2つ以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0008】
コーティングされたポリマー粒子は、ポリマー粒子と粉末組成物とを含む。コーティングされた粒子はまた、粉末組成物が粒子の表面に適用される前に、典型的にはポリマー粒子の表面に適用される油(例えば、シリコーン油)を含んでもよい。
【0009】
一実施形態では、組成物は、成分Bのプロピレン系ポリマーを含む。
【0010】
一実施形態では、成分Bのプロピレン系ポリマーは、20~120g/10分、または30~110g/10分、または40~100g/10分、50~90g/10分、60~80g/10分、60~70g/10分のMFRを有する。さらなる実施形態では、プロピレン系ポリマーはポリプロピレンホモポリマーである。
【0011】
一実施形態では、成分Bのプロピレン系ポリマーは、0.880~0.920g/cc、または0.885~0.915g/cc、または0.890~0.910g/cc、または0.895~0.905g/ccの密度を有する。さらなる実施形態では、プロピレン系ポリマーはポリプロピレンホモポリマーである。
【0012】
一実施形態では、成分Bのプロピレン系ポリマーは、20~120g/10分、または30~110g/10分、または40~100g/10分、50~90g/10分、60~80g/10分、60~70g/10分のMFRを有し、0.880~0.920g/cc、または0.885~0.915g/cc、または0.890~0.910g/cc、または0.895~0.905g/ccのMFRを有する。さらなる実施形態では、プロピレン系ポリマーはポリプロピレンホモポリマーである。
【0013】
一実施形態では、組成物は30g/10分以上のMFR、または35g/10分以上のMFRを有する。一実施形態では、組成物は、100g/10分以下のMFR、または90g/10分以下のMFR、または80g/10分以下のMFR、または70g/10分以下のMFR、または60g/10分以下のMFRを有する。
【0014】
一実施形態では、組成物は、30~60g/10分、または30~55g/10分、または30~50g/10分のMFRを有する。一実施形態では、組成物は、35~60g/10分、または35~55g/10分、または35~50g/10分のMFRを有する。
【0015】
一実施形態では、組成物は、50重量%以上の成分B、および50重量%以下の成分Aを含み、各重量%は組成物の重量に基づく。一実施形態では、組成物は、55重量%以上の成分B、および45重量%以下の成分Aを含み、各重量%は組成物の重量に基づく。一実施形態では、組成物は、58重量%以上の成分B、および40重量%以下の成分Aを含み、各重量%は組成物の重量に基づく。一実施形態では、組成物は、60重量%以上の成分B、および35重量%以下の成分Aを含み、各重量%は組成物の重量に基づく。
【0016】
一実施形態では、組成物は、「-10℃でのダート延性%」が50~100、または60~100、または70~100、80~100、または90~100、または95~100である。
【0017】
一実施形態では、組成物は、50~100、または60~100、または70~100、80~100、または90~100、または95~100の「-20℃でのダート延性%」を有する。
【0018】
一実施形態では、組成物は、30~90、または40~90、または50~90、または60~90、または70~90、または80~90の「-30℃でのダート延性%」を有する。
【0019】
一実施形態では、組成物は、20~50、または25~45の「23℃でのアイゾット強度、kJ/m2」を有する。
【0020】
一実施形態では、組成物は、9~40、または9~35の「0℃でのアイゾット強度、kJ/m2」を有する。
【0021】
一実施形態では、組成物は、160,000~240,000kpsi、または170,000~220,000kpsiの「曲げ弾性率、kpsi」を有する。
【0022】
一実施形態では、成分Aについて、第1の組成物は、第1の組成物の重量に基づいて、95重量%以上、96重量%以上、97重量%以上、98重量%以上、または99重量%以上のエチレン系ポリマーを含む。
【0023】
一実施形態では、成分Aについて、エチレン系ポリマーはエチレン/α-オレフィンインターポリマーであり、さらにエチレン/α-オレフィンコポリマーである。
【0024】
一実施形態では、成分Aについて、有機粉末は金属ステアリン酸塩であり、さらにステアリン酸カルシウムまたはステアリン酸亜鉛、さらにステアリン酸カルシウムである。
【0025】
一実施形態では、成分Aについて、無機粉末は、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、微粉シリカ、ヒュームドシリカ、石英、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。一実施形態では、成分Aについて、無機粉末は、タルク、マイカ、微粉シリカ、ヒュームドシリカ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。一実施形態では、成分Aについて、無機粉末はタルクである。
【0026】
一実施形態では、成分Aについて、コーティングされたポリマー粒子は結合剤をさらに含む。さらなる実施形態では、結合剤はシリコーン油(シリコーン流体)である。
【0027】
一実施形態では、コーティングされたポリマー粒子は、37℃で12週間後に、200g/秒以上、または210g/秒以上の流動性を有する。
【0028】
一実施形態では、コーティングされたポリマー粒子は、無拘束降伏強度(Unconfined Yield Strength)(37℃、6週間)、400ポンド/フィート2以下、または≦380ポンド/フィート2以下、または360ポンド/フィート2以下を有する。
【0029】
また、前述の請求項のいずれか1つの組成物から形成された少なくとも1つの構成要素を含む物品も提供される。一実施形態では、物品は射出成形品である。一実施形態では、物品は自動車部品である。
【0030】
本発明の組成物は、本明細書において記載される2つ以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0031】
構成要素Aは、本明細書に記載の2つ以上の実施形態の組み合わせを含むことができる。成分Bは、本明細書に記載の2つ以上の実施形態の組み合わせを含むことができる。
【0032】
組成物
一実施形態では、組成物は1つ以上の添加剤を含む。添加剤には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤(二酸化チタン、カーボンブラック、および顔料など)、粘度調整剤、粘着防止剤、剥離剤、摩擦係数(COF)調整剤、熱安定剤、臭気調整剤/吸収剤、およびそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
一実施形態では、組成物は充填剤を含む。さらなる実施形態では、充填剤は鉱物充填剤(例えばタルク)である。一実施形態では、組成物は、組成物の重量に基づいて、1~40重量%、または2~35重量%、または3~30重量%、または4~25重量%、または5~20重量%の充填剤(例えば、タルク)を含む。
【0034】
一実施形態では、組成物は充填剤を含む。さらなる実施形態では、充填剤は鉱物充填剤(例えば、タルク)である。一実施形態では、組成物は、組成物の重量に基づいて、4~40重量%、または5~35重量%、または6~30重量%、または7~25重量%、または8~20重量%、または8~15重量%、または8~12重量%の充填剤(例えば、タルク)を含む。
【0035】
一実施形態では、ポリマー組成物は少なくとも1種の他の熱可塑性ポリマーを含む。さらなる実施形態では、少なくとも1種の他の熱可塑性ポリマーは、ポリスチレンホモポリマーまたはポリエチレンホモポリマー(例えば、A HDPE)からなる群から選択される。
【0036】
一実施形態では、成分Bのプロピレン系ポリマーは、ポリプロピレンホモポリマー、プロピレン/α-オレフィンコポリマー、プロピレン/エチレンコポリマー、または耐衝撃性改質プロピレン系ポリマーから選択される。一実施形態では、成分Bのプロピレン系ポリマーは、ポリプロピレンホモポリマー、プロピレン/α-オレフィンコポリマー、またはプロピレン/エチレンコポリマーから選択される。一実施形態では、成分Bのプロピレン系ポリマーは、ポリプロピレンホモポリマーまたはプロピレン/エチレンコポリマーから選択される。一実施形態では、成分Bのプロピレン系ポリマーはポリプロピレンホモポリマーである。
【0037】
一実施形態では、成分Bのプロピレン系ポリマーは、1~150g/10分、または5~130g/10分、または10~120g/10分、または20~100g/10分、または30~80g/10分、または40~70g/10分、または50~60g/10分(230℃、2.16kg)のMFRを有する。さらなる実施形態では、プロピレン系ポリマーはポリプロピレンホモポリマーである。
【0038】
コーティングされたポリマー粒子
一実施形態では、ポリマー粒子は、ペレット、ビーズ、フレーク、または粉末である。ポリマー粒子のD50値は、粉末組成物のD50値よりも大きく、好ましくはポリマー粒子のD50値は、本明細書に記載の粉末組成物のD50値の2倍以上、さらに5倍以上、さらに10倍以上である。典型的なポリマー粒子は、一般に、実質的に小板、球状、円柱状、または棒状である。断面積はポリマーによって異なるが、ポリマー粒子の断面積は、好ましくは3x10-3平方インチ(1.93x10-2平方センチメートル)~0.2平方インチ(1.29平方センチメートル)であり、例えば、断面が円形の場合、直径は1/16インチ(0.15875cm)~1/2インチ(1.27cm)である。一実施形態では、粒子は、0.01平方インチ(6.45×10-2平方センチメートル)~0.05平方インチ(0.322平方センチメートル)の断面積を有する。例えば、断面が円形の場合、直径は0.125インチ(0.3175cm)~0.375インチ(0.9525cm)である。一実施形態では、粒子は直径0.25cm~0.40cmである。
【0039】
上記で議論したように、ポリマー粒子は、粉末からペレットまでのサイズの範囲の粒子状固体の形である。ペレットは粒子状の固体であり、それだけではないが、一般的には押出成形およびペレット化プロセスによって形成され、一般的な平均粒子サイズ(最長寸法の平均)は2mmを超え、通常2mm~10mm、さらに2mm~6mm、さらに2mm~4mmである。通常、マイクロペレットの平均粒子サイズは標準ペレットの粒子サイズよりも小さいが、一般的な市販のダイ機能で製造される平均粒子サイズよりも大きい。マイクロペレットの平均粒子サイズは、通常200ミクロン~2mmの範囲である。マイクロペレットは一般に半球状の形状を示す。
【0040】
第1の組成物
一実施形態では、ポリマー粒子は、エチレン系ポリマー、さらにエチレン系インターポリマー、およびさらにエチレン系コポリマーを含む第1の組成物から形成される。好適なエチレン系インターポリマーまたはコポリマーとしては、エチレン/α-オレフィンインターポリマーまたはコポリマー、これらに限定されないが、例えば、エチレン/C3~C8α-オレフィンインターポリマーもしくはコポリマーが含まれる。好ましいα-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、および1-オクテンなどの3~8個の炭素原子を有するものである。
【0041】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレン/α-オレフィン/ジエンターポリマー、例えばエチレン/プロピレン/ジエンターポリマーである。
【0042】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、0.854~0.860g/cc、または0.855~0.860g/cc、または0.856~0.860g/cc、または0.857~0.860g/cc、または0.858~0.860g/ccの密度を有する(1cc=1cm3)。さらなる実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレン系インターポリマーであり、さらに、エチレン/α-オレフィンインターポリマー、および/またはエチレン/α-オレフィンコポリマーである。好ましいα-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、および1-オクテンなどの3~8個の炭素原子を有するものである。
【0043】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、4.0~14.5g/10分、または4.0~14.0g/10分、または4.5~13.5g/10分のメルトインデックス(I2、190℃および2.16kg)を有する。さらなる実施形態では、エチレン系ポリマーはエチレン系インターポリマーであり、さらにエチレン/α-オレフィンコポリマーである。好ましいα-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、および1-オクテンなどの3~8個の炭素原子を有するものである。
【0044】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、6.8~7.7、または7.0~7.5のI10/I2比を有する。さらなる実施形態では、エチレン系ポリマーはエチレン系インターポリマーであり、さらにエチレン/α-オレフィンコポリマーである。好ましいα-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、および1-オクテンなどの3~8個の炭素原子を有するものである。
【0045】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、30,000~44,000g/モル、または32,000~42,000g/モルの数平均分子量(Mn)を有する。さらなる実施形態では、エチレン系ポリマーはエチレン系インターポリマーであり、さらにエチレン/α-オレフィンコポリマーである。好ましいα-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、および1-オクテンなどの3~8個の炭素原子を有するものである。
【0046】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、1.7~3.5、または1.8~3.2、または1.8~3.0、または1.8~2.8の分子量分布(MWD)を有する。さらなる実施形態では、エチレン系ポリマーはエチレン系インターポリマーであり、さらにエチレン/α-オレフィンコポリマーである。好ましいα-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、および1-オクテンなどの3~8個の炭素原子を有するものである。
【0047】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、35~55℃、または40~50℃、または42~48℃の融解温度(Tm)を有する。さらなる実施形態では、エチレン系ポリマーはエチレン系インターポリマーであり、さらにエチレン/α-オレフィンコポリマーである。好ましいα-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、および1-オクテンなどの3~8個の炭素原子を有するものである。
【0048】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、15~35℃、または20~30℃、または22~28℃の結晶化温度(Tc)を有する。さらなる実施形態では、エチレン系ポリマーはエチレン系インターポリマーであり、さらにエチレン/α-オレフィンコポリマーである。好ましいα-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、および1-オクテンなどの3~8個の炭素原子を有するものである。
【0049】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、-65~-55℃、または-64~-60℃の融解温度(Tg)を有する。さらなる実施形態では、エチレン系ポリマーはエチレン系インターポリマーであり、さらにエチレン/α-オレフィンコポリマーである。好ましいα-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、および1-オクテンなどの3~8個の炭素原子を有するものである。
【0050】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、500~2500Pa・s、または600~2000Pa・sの溶融粘度V0.1(190℃)を有する。さらなる実施形態では、エチレン系ポリマーはエチレン系インターポリマーであり、さらにエチレン/α-オレフィンコポリマーである。好ましいα-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、および1-オクテンなどの3~8個の炭素原子を有するものである。
【0051】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、1.5~3.0、または1.5~2.8の溶融粘度比V0.1/V100(190℃での各粘度)を有する。さらなる実施形態では、エチレン系ポリマーはエチレン系インターポリマーであり、さらにエチレン/α-オレフィンコポリマーである。好ましいα-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、および1-オクテンなどの3~8個の炭素原子を有するものである。
【0052】
エチレン系ポリマーは、本明細書に記載の2つ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。エチレン系インターポリマーは、本明細書に記載の2つ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。エチレン系コポリマーは、本明細書に記載の2つ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0053】
一実施形態では、第1の組成物は、第1の組成物の重量に基づいて、90重量%以上、または91重量%以上、または92重量%以上、または93重量%以上、または94重量以上%、または95重量%以上、または96重量%以上、または97重量%以上、または98重量%以上、または99重量%以上のエチレン系ポリマーを含む。さらなる実施形態では、エチレン系ポリマーはエチレン/α-オレフィンインターポリマーであり、さらにエチレン/α-オレフィンコポリマーである。さらなる実施形態では、α-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、および1-オクテンからなる群から選択される。
【0054】
粉末組成物
無機粉末には、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、石英、微粉シリカまたはヒュームドシリカ、アルミナ三水和物、大理石粉、セメント粉、粘土、長石、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化アンチモン、亜鉛酸化物、硫酸バリウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、チタン酸塩、およびチョーク、が含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
一実施形態では、無機粉末は、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、微粉シリカ、ヒュームドシリカ、石英、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。一実施形態では、無機粉末は、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、およびそれらの組み合わせ、またはタルク、マイカ、もしくはそれらの組み合わせからなる群から選択される。一実施形態では、無機粉末はタルクである。
【0056】
一実施形態では、無機粉末は、100ミクロン以下、または50ミクロン以下、または20ミクロン以下のD50値を有する。一実施形態では、無機粉末は、0.5ミクロン以上、または1ミクロン以上、または2ミクロン以上のD50値を有する。さらなる実施形態では、ポリマー粒子のD50値は、粉末組成物のD50値の2倍以上、さらに5倍以上、さらに10倍以上である。
【0057】
本発明に有用な有機粉末には、金属ステアリン酸塩、ポリマー粉末およびそれらの組み合わせが含まれる。ポリマー粉末の例には、粉末エチレン系ポリマー(例えば粉末ポリエチレンホモポリマー)、粉末ポリスチレンおよび粉末プロピレン系ポリマー(例えば、粉末ポリプロピレンホモポリマー)が含まれる。一実施形態では、有機粉末は、金属ステアリン酸塩、さらにステアリン酸カルシウムまたはステアリン酸亜鉛、およびさらにステアリン酸カルシウムである。
【0058】
一実施形態では、有機粉末は、100ミクロン以下、または50ミクロン以下、または20ミクロン以下のD50値を有する。一実施形態では、無機粉末は、0.5ミクロン以上、または1ミクロン以上、または2ミクロン以上のD50値を有する。さらなる実施形態では、ポリマー粒子のD50値は、粉末組成物のD50値の2倍以上、さらに5倍以上、さらに10倍以上である。
【0059】
一実施形態では、粉末組成物は、100ミクロン以下、または50ミクロン以下、または20ミクロン以下のD50値を有する。一実施形態では、無機粉末は、0.5ミクロン以上、または1ミクロン以上、または2ミクロン以上のD50値を有する。さらなる実施形態では、ポリマー粒子のD50値は、粉末組成物のD50値の2倍以上、さらに5倍以上、さらに10倍以上である。
【0060】
一般に、粉末状組成物の量は、コーティングされたポリマー粒子の総重量に基づいて、5.0重量パーセント以下、または4.0重量パーセント以下、または3.0重量パーセント以下である。一実施形態では、粉末組成物の量は、コーティングされたポリマー粒子の総重量に基づいて、0.05重量パーセント以上、または0.10重量パーセント以上、または0.20重量パーセント以上である。一実施形態では、粉末組成物の量は、コーティングされたポリマー粒子の総重量に基づいて、0.25重量パーセント以上、または0.30重量パーセント以上、または0.35重量パーセント以上、または0.40重量パーセント以上、または0.45重量パーセント以上である。
【0061】
一実施形態では、コーティングされたポリマー粒子は、コーティングされたポリマー粒子の重量に基づいて、0.10~3.00重量パーセント、または0.20~2.50重量パーセント、または0.30~2.00重量パーセント、または0.30~1.50重量パーセント、または0.40~1.00重量パーセントの粉末組成物を含む。
【0062】
一実施形態では、無機粉末の総量と有機粉末の総量との重量比は、3.0~45.0、または3.0~40.0、または3.0~35.0、または3.0~25.0、または3.0~20.0である。一実施形態では、無機粉末の総量と有機粉末の総量との重量比は、3.0~15.0、または3.0~12.0、または3.0~9.0、または3.0~7.0、または3.0~5.0である。
【0063】
一実施形態では、粉末組成物は、ポリマー粒子の全表面の少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%をコーティングしている。
【0064】
ポリマー粒子の総表面積は、粒子(ペレットなど)の平均ペレット寸法とグラムあたりの粒子の重量から計算することができ、またはBET分析によって(例えば、Micromeritics ASAP 2420から入手可能なBET機器を使用して)分析することができる。粉末組成物でコーティングされたポリマー粒子の表面積の量は、典型的には拡大鏡を使用して、目視検査によって決定することができる。
【0065】
一実施形態では、コーティングされたポリマー粒子は、コーティングされたポリマー粒子重量に基づいて、0.02~3.00重量パーセント、または0.04~2.50重量パーセント、または0.06~2.00重量パーセント、または0.08~1.50重量パーセントの粉末組成物を含む。一実施形態では、コーティングされたポリマー粒子は、コーティングされたポリマー粒子の重量に基づいて、0.10~1.60重量パーセント、または0.20~1.40重量パーセント、または0.30~1.20重量パーセント、または0.40~1.00重量パーセント、または0.60~0.80重量パーセントの粉末組成物を含む。
【0066】
一実施形態では、有機粉末の総量と無機粉末の総量は、粉末組成物の総重量の、90重重量%以上、または91重量%以上、または92重量%以上、または93重量%以上、または94重量%以上、または95重量%以上、または96重量%以上、または97重量%以上、または98重量%以上、または99重量%以上を含む。
【0067】
結合剤
結合剤は、通常の取り扱いおよび出荷条件で、粉末組成物の大部分がポリマー粒子上に残るように、粉末組成物をポリマー粒子に保持または固定する薬剤である。
【0068】
一実施形態では、組成物は結合剤をさらに含む。一実施形態では、結合剤の少なくとも一部は、ポリマー粒子の全表面の少なくとも一部分をコーティングして、結合剤コーティングを形成し、その結果、結合剤コーティングは、ポリマー粒子と、粉末組成物から形成されるコーティングとの間に位置する。
【0069】
結合剤の種類とその量は、粉末組成物、ポリマー、および組成物の他の成分に応じて異なる。好ましい結合剤は、粘度がそれほど高くないため、結合剤を適用するのが難しいものである。他方、粘度は、粉末組成物からの過剰な粉塵が生じるほど低くすべきではない。一般的に、25℃で粘度が50~60,000センチストーク、または100~10,000センチストークの範囲の油が有用である。
【0070】
一実施形態では、結合剤は、シリコーン油(またはシリコーン流体)、ポリエーテルポリオール、鉱物油などの脂肪族炭化水素油、7~18個の炭素原子を有するアルカンまたはアルケン(1つ以上の炭素がOH、CO2H、またはエステルで任意に置換されている)からなる群から選択される。結合剤には、ヒマシ油、コーン油、綿実油、オリーブ油、菜種油、大豆油、ひまわり油、その他の植物油および動物油などの天然油、ならびにナフテン油、パラフィン油、芳香油、およびシリコーン油(またはシリコーン流体)および当該油のエステル、アルコール、および酸またはエマルションが含まれる。可塑剤または粘着付与剤としてしばしば使用される物質は、結合剤としても有用である。
【0071】
一実施形態では、結合剤は、構造式-Si(R1R1)-O-を有するシロキサンポリマーであり、R1基はC1~C18ヒドロカルビル基である。特に好ましいヒドロカルビル基には、脂肪族および芳香族基が含まれる。R1の特に好ましい基はメチル基である。これらの材料は、Dow Corningから市販されている。
【0072】
一実施形態では、結合剤は、ポリエーテルポリオール、脂肪族炭化水素油、7~18個の炭素原子を有し、OH、CO2H、またはエステルで任意に置換されたアルカン、7~18個の炭素原子を有し、OH、CO2H、またはエステルで任意に置換されたアルケン、天然油、ナフテン系油、パラフィン油、芳香油、シリコーン油(またはシリコーン流体)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。一実施形態では、結合剤はシリコーン油(またはシリコーン流体)である。
【0073】
一実施形態では、組成物は、コーティングされたポリマー粒子の総重量に基づいて、0.010~0.050重量パーセント、または0.015~0.04重量パーセント、または0.020~0.035重量パーセントの結合剤を含む。
【0074】
一実施形態では、結合剤は、25℃で、200~2000cSt、または250~1800cSt、または300~1500cSt、または300~1000cSt、または300~500cStの粘度を有する。
【0075】
結合剤は、精製された形態、溶液、エマルジョンまたは混合物で使用されてもよい。特に非熱可塑性結合剤を使用する場合は、粉末組成物とポリマー粒子の混合を最小限に抑える必要がある。混合が多すぎると、表面偏析が生じ、不均一な層が生じる可能性がある。
【0076】
コーティングプロセス
ブレンド装置/プロセスの例には、例えば、ジャーの単純なタンブリング、または円錐回転容器、リボンブレンダー、ドラムタンブラー、パドルブレンダー、凝集パンおよび流動層法でのブレンドなど、ポリマー粒子を動かす任意の機械的手段が含まれる。一実施形態では、コーティングプロセスは、空気または不活性ガス下での空気コンベヤーの使用を含む。中程度の攪拌、振とう、またはスクリューコンベヤでの短い距離の搬送でさえ、このような薬剤の適切な分配に十分である。使用される接触のタイプは、ポリマー粒子が結合剤および粉末組成物と別々の時間で接触される場合であれば、結合剤および粉末組成物に対して同じでも異なっていてもよい。
【0077】
薬剤(結合剤および/または粉末組成物)とポリマー粒子の接触は、薬剤が蒸発、固化、粘稠化、またはポリマー粒子と著しく反応しない任意の温度で実施できる。そのような温度は、コーティングされるポリマー粒子の成分に応じて異なることが多いが、典型的には-10℃~150℃、さらに0℃~60℃、または5℃~35℃である。
【0078】
状況によっては、結合剤を使用することが望ましくない場合がある。このような状況には、例えば、結合剤がポリマー粒子の最終用途に干渉する場合が含まれる。また、状況によっては、粉末組成物の量を最小限に抑えることが望ましい場合がある。このようにして、(粉末組成物からの)コーティングに関連しない環境ダストを最小限に抑えることができる。例えば、フィルムが最終組成物から作られており、光学特性が重要である場合、粉末組成物の量を減らすことも有利である。
【0079】
結合剤を必要としない組成物は、上記と同じ種類のポリマー粒子および粉末組成物を使用する。一実施形態では、粉末組成物の量は、コーティングされたポリマー粒子の重量に基づいて、3.0重量パーセント以下、または2.0重量パーセント以下、または1.5重量パーセント以下、または1.0重量パーセント以下、または0.5重量パーセント以下、または0.3重量パーセント以下であり得る。それに対応して、粉末組成物の有効量は、コーティングされたポリマー粒子の重量に基づいて、典型的には0.08重量パーセント以上、または0.10重量パーセント以上、または0.15重量パーセント以上である。
【0080】
一実施形態では、粉末組成物は、ポリマー粒子に機械的に接着される。一実施形態では、プロセスは、有効量の粉末組成物をポリマー粒子の全表面の約40パーセント超、さらに約50パーセント超、さらに約60パーセント超に機械的に接着させることを含む。このようにして、有効量の付着粉末組成物を有するポリマー粒子は、有効量の付着粉末組成物を有さない多数のポリマー粒子が凝集またはブロッキングするのを防ぐ障壁として機能する。粒子が埋め込まれる深さ、および粉末組成の量は、ポリマー粒子上の粉末組成物層の厚さを決定する。もちろん、この厚さは、無拘束降伏強度によって決定されるように、ポリマーの種類、粒子のサイズ、粉末組成物の種類、および粉末組成物の所望の量に応じて変化する。これらのコーティングの特徴は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定できる。
【0081】
粉末組成物は、いかなる方法でもポリマー粒子に機械的に付着させることができる。これは、粒子形成と同時に、または粒子形成に続いて達成され得る。これを達成することができる1つの方法は、例えば、所望の量の粉末組成物が所望の量のポリマー粒子に付着するように、ポリマー粒子を衝撃コーティングすることによるものである。これは、水蒸気を使用することで容易にすることができる。
【0082】
粉末組成物を機械的に付着させる別の方法は、ポリマー粒子を粉末組成物と接触させる前、それと同時に、またはその後に、ポリマー粒子を柔らかくすることである。軟化は、有効量の粉末組成物をポリマー粒子の外表面に付着させるのに十分なほど表面が軟化する限り、任意の方法で行うことができる。ただし、ポリマー粒子はあまり軟化してはならず、離散した粒子が存在しないようにする必要がある。つまり、ポリマー粒子が融解したり、互いに接着したりしないようにする必要がある。一般に、通常、ポリマー粒子の表面がわずかに粘着性になり、コーティングの準備ができていることを観察することができる(例えば、目視観察)。これが発生するポイントは、ポリマーと使用する粉末組成物の種類によって異なる。軟化方法の選択は、ポリマーの種類、粉末組成の種類、および所望の結果に応じて異なる。一般に、熱風、放射(UV、IR、可視)、接触加熱、またはそれらの組み合わせによる加熱を採用することができる。一般に、ポリマー粒子の表面がわずかに粘着性になり、コーティングの準備が整うため、粒子が十分に加熱されたときを通常観察できる。説明したように、これが発生するポイントは、ポリマーの種類、粒子のサイズ、および使用する粉末組成物の種類によって異なる。
【0083】
物品
本発明はまた、本発明の組成物から形成される少なくとも1つの構成要素を含む物品も提供する。物品には、射出成形品、熱成形品、発泡体が含まれますが、これらに限定されない。追加の物品には、医療機器(圧力カフや安定化機器など)、インフレータブル用品(玩具、船舶、クッション、家具など)、シート(天幕、バナー、標識、テント、防水シート、プール、池、埋め立て用ライナーなど)、製本、キャリア(スポーツバッグ、バックパックなど)、および自動車部品が含まれる。好ましい物品には、自動車部品が含まれる。
【0084】
定義
反対の記載、文脈から暗黙的、または当技術分野で慣習的でない限り、すべての部およびパーセントは重量に基づいており、すべての試験方法は本開示の出願日現在のものである。
【0085】
本明細書で使用される「組成物」という用語は、その組成物を含む材料の混合物、ならびにその組成物の材料から形成される反応生成物および分解生成物を含む。典型的に、反応生成物または分解生成物は、微量または残留量で存在する。
【0086】
本明細書で使用される「ポリマー」という用語は、同じ種類であろうと異なる種類であろうと、モノマーを重合することにより調製されたポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという一般的な用語は、ホモポリマーという用語(微量の不純物をポリマー構造に組み込むことができるという理解を前提として、1つの種類のモノマーのみから調製されるポリマーを指すために用いられる)と、以下で定義するインターポリマーという用語とを包含する。触媒残留物などの微量の不純物が、ポリマーの中および/またはポリマー内に組み込まれる場合がある。
【0087】
本明細書で使用される「インターポリマー」という用語は、少なくとも2種の異なるタイプのモノマーの重合により調製されるポリマーを指す。したがって、インターポリマーという用語は、コポリマーという用語(2つの異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる)と、2つ超の異なる種類のモノマーから調製されるポリマーとを含む。
【0088】
本明細書で使用される「オレフィン系ポリマー」という用語は、重合形態で、50重量%または過半量のオレフィンモノマー、例えばエチレンまたはプロピレン(ポリマーの重量に基づいて)を含むポリマーを指し、任意で1種以上のコモノマーを含んでもよい。
【0089】
本明細書で使用される「オレフィン系インターポリマー」という用語は、重合形態で、50重量%または過半量のオレフィンモノマー、例えばエチレンまたはプロピレン(インターポリマーの重量に基づいて)と、1種以上のコモノマーとを含むインターポリマーを指す。
【0090】
本明細書で使用される「オレフィン系コポリマー」という用語は、重合形態で、50重量%または過半量のオレフィンモノマー、例えばエチレンまたはプロピレン(コポリマーの重量に基づいて)と、1種のコモノマーとを2種類のみのモノマーとして含むコポリマーを指す。
【0091】
本明細書で使用される「エチレン系ポリマー」という用語は、重合形態で、50重量%または過半量のエチレンモノマー(ポリマーの重量に基づいて)を含むポリマーを指し、任意に1種以上のコモノマーを含んでもよい。
【0092】
本明細書で使用される「エチレン系インターポリマー」という用語は、重合形態で、50重量%または過半量のエチレンモノマー(インターポリマーの重量に基づいて)と、1種以上のコモノマーとを含むインターポリマーを指す。
【0093】
本明細書で使用される「エチレン系コポリマー」という用語は、重合形態で、50重量%または過半量のエチレンモノマー(コポリマーの重量に基づいて)と、1種のコモノマーとを2種類のみのモノマーとして含むコポリマーを指す。
【0094】
本明細書で使用される「エチレン/α-オレフィンインターポリマーという用語は、重合形態で、50重量%または過半量のエチレンモノマー(インターポリマーの重量に基づいて)と、少なくとも1種のα-オレフィンとを含むインターポリマーを指す。
【0095】
本明細書で使用される「エチレン/α-オレフィンコポリマー」という用語は、重合形態で、50重量%または過半量のエチレンモノマー(コポリマーの重量に基づいて)と、α-オレフィンとを2種類のみのモノマーとして含むコポリマーを指す。
【0096】
本明細書で使用される「エチレン/α-オレフィン/ジエンインターポリマー」という用語は、重合形態で、エチレンモノマー、α-オレフィン、およびジエンを含むインターポリマーを指す。典型的には、「エチレン/α-オレフィン/ジエンインターポリマー」は、重合形態で、インターポリマーの重量に基づいて過半量のエチレンモノマーを含む。
【0097】
本明細書で使用される「プロピレン系ポリマー」という用語は、重合形態で、過半量のプロピレンモノマー(ポリマーの重量に基づいて)を含むポリマーを指し、任意に1種以上のコモノマーを含んでもよい。
【0098】
本明細書で使用される「プロピレン系インターポリマー」という用語は、重合形態で、過半量のプロピレンモノマー(インターポリマーの重量に基づいて)と、1種以上のコモノマーとを含むインターポリマーを指す。
【0099】
本明細書で使用される「プロピレン系コポリマー」という用語は、重合形態で、過半量のプロピレンモノマー(コポリマーの重量に基づいて)と、1種のコモノマーとを2種類のみのモノマーとして含むコポリマーを指す。
【0100】
本明細書で使用される「プロピレン/α-オレフィンインターポリマー」という用語は、重合形態で、過半量のプロピレンモノマー(インターポリマーの重量に基づいて)と、少なくとも1種のα-オレフィンとを含むインターポリマーを指す。
【0101】
本明細書で使用される「プロピレン/α-オレフィンコポリマー」という用語は、重合形態で、過半量のプロピレンモノマー(コポリマーの重量に基づいて)と、α-オレフィンとを2種類のみのモノマーとして含むコポリマーを指す。
【0102】
本明細書で使用される「プロピレン/エチレンインターポリマー」という用語は、重合形態で、過半量のプロピレンモノマー(インターポリマーの重量に基づいて)と、少なくともエチレンとを含むインターポリマーを指す。
【0103】
本明細書で使用される「プロピレン/エチレンコポリマー」という用語は、重合形態で、過半量のプロピレンモノマー(コポリマーの重量に基づいて)と、エチレンとを2種類のみのモノマーとして含むコポリマーを指す。
【0104】
本明細書で使用される「ポリマー粒子の全表面の少なくとも一部分上のコーティング」という語句は、粒子の全表面積の10%以上の表面コーティングを指す。粒子の総表面積は、粒子(例えば、ペレット)の平均ペレット寸法およびグラムあたりの粒子の重量から、またはBET分析によって(例えば、Micromeritics ASAP 2420から入手可能なBET機器を使用して)計算することができる。粉末組成物でコーティングされたポリマー粒子の表面積の量は、典型的には拡大鏡を使用して、目視検査によって決定することができる。一実施形態では、粉末組成物は、粒子の総表面積の、20%以上、または30%以上、または40%以上、または50%以上、または60%以上、または70%以上、または80%以上、または90%以上、または95%以上をコーティングする。
【0105】
本明細書で使用される「無機粉末」という用語は、炭素の酸化物、例えば炭酸カルシウムおよび炭素の硫化物、例えば二硫化炭素を除いて、元素炭素を含まない化合物を指す。
【0106】
本明細書で使用される「有機粉末」という用語は、炭素の酸化物、例えば炭酸カルシウムおよび炭素の硫化物、例えば二硫化炭素を除いて、元素炭素を含む化合物を指す。
【0107】
粉末組成物に関して本明細書で使用される「ポリマー粉末」という用語は、ポリマー粒子のD50値より小さいD50値を有する微細ポリマー粒子を指す。通常、ポリマー粉末のD50値は200ミクロン以下、さらにD50値は150ミクロン以下、さらにD50値は100ミクロン以下である。
【0108】
本明細書で使用される「機械的に付着した」とは、本明細書で使用するとき、ポリマー粒子上に粉末組成物が物理的に結合した粒子を指す。例えば、粉末組成物の粒子は、ポリマー粒子の表面に埋め込まれている。
【0109】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語、およびそれらの派生語は、任意の追加の構成要素、ステップ、または手順の存在を、それらが具体的に開示されているか否かにかかわらず、除外することを意図するものではない。任意の疑義を避けるために、「備える」という用語の使用を通して請求されるすべての組成物は、相反する記載がない限り、ポリマーであるかないかに関わらずに、任意の追加の添加剤、アジュバント、または化合物を含んでもよい。対照的に、「から本質的になる」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、任意の以降の記述の範囲から任意の他の構成要素、ステップ、または手順を除外する。「からなる」という用語は、特に記載または一覧表に記載されていない任意の構成要素、ステップ、または手順を除外する。
【0110】
試験方法
密度は、ASTM D792(ASTM D4703、A1 Proc C、1時間以内のテスト)に従って測定される。
【0111】
エチレン系ポリマーのメルトインデックス(I2)は、ASTM D-1238に従って、2.16kgの荷重下、190℃で測定される。メルトインデックス(I5)は、ASTM D-1238に従って、190℃、5kgの荷重で測定される。メルトインデックス(I10)は、ASTM D-1238に従って、190℃、10kgの荷重で測定される。メルトインデックス(I21)は、ASTM D-1238に従って、190℃、21.6kgの荷重で測定される。プロピレン系ポリマーのメルトフローレート(MFR)は、ASTM D-1238、条件230℃/2.16kgに従って測定される。TPOコンパウンドのメルトフローレート(MFR)は、ASTM D-1238、条件230℃/2.16kgに従って、乾燥ペレットで測定された。
【0112】
示差走査熱量測定(DSC)は、RCS冷却ユニットとオートサンプラーを備えたTA Instruments Discovery DSCを使用して示差走査熱量測定(DSC)を実行した。50mL/分の窒素パージガス流量を使用した。サンプルは、Carver Hydraulicプレスで190℃、圧力20,000psiで4分間、薄いフィルムにプレス成形され、その後、23℃の温度で、20,000psiの圧力で1分間冷却された。約3~10mgの材料をプレスフィルムから切り取り、重量を測定し、軽いアルミニウムのパンに入れ、圧着して閉じた。サンプルの熱挙動は、次の温度プロファイルを使用して調査した。サンプルは急速に180℃に加熱され、5分間等温で保持された。次に、サンプルを10℃/分で-90℃に冷却し、5分間等温で保持した。次に、サンプルを10℃/分で150℃に加熱した。分析には、冷却曲線と2番目の加熱曲線を使用した。ガラス転移温度(Tg)、融解温度(Tm)、およびエンタルピー熱(ΔHm)は、2番目の熱データから取得された。結晶化温度(Tc)は、最初のクールデータから取得された。Tgは、半値高法(half-height method)を使用して決定された。TmおよびTcは、それぞれ融解吸熱および結晶化発熱のピークとして決定された。結晶化度パーセントは、第2の熱曲線から決定される融解熱(Hf)をPEについて292J/g(PPについて165J/g)の理論融解熱で除算し、この量に100を掛ける(例えば、%cryst=(Hf/292J/g)×100(PEの場合)。
【0113】
動的機械分光法(DMS)レオロジーについて、本発明および比較のコポリマーのレオロジーは、「25mm」ステンレス鋼平行板を装備したAdvanced Rheometric Expansion System(ARES)で測定した。0.1~100rad/sの周波数範囲での一定温度の動的周波数掃引は、190℃の窒素パージ下で実行された。約「直径25.4mm」および「厚さ3.2mm」のサンプルを、Carver油圧式ホットプレスで、温度190℃、圧力20,000psiで4分間圧縮成形し、その後、温度23℃、圧力20,000psi、1分間冷却した。サンプルを下部プレートに置き、5分間融解させた。次に、プレートを2.0mmのギャップまで閉じ、サンプルを「直径25mm」にトリミングした。テストを開始する前に、サンプルを190℃で5分間平衡化させた。複素粘度は、10%の一定の歪み振幅で測定された。0.1rad/s(V0.1)および100rad/s(V100)での粘度と、2つの粘度値の比(V0.1/V100)が報告されている。
【0114】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC):PolymerChar Inc(バレンシア、スペイン)の赤外線濃度検出器(IR-5)で構成される高温ゲル浸透クロマトグラフィーシステム(GPC IR)を分子量(MW)および分子量分布(MWD)の決定に使用した。担体溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)であった。オートサンプラーコンパートメントは、160℃で稼働され、カラムコンパートメントは、150℃で稼働された。使用したカラムは、4つのPolymer Laboratories Mixed A LS、20ミクロンカラムであった。クロマトグラフィー溶媒(TCB)とサンプル調製溶媒は、同じ溶媒源からのもので、250ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を使用し、窒素を注入した。サンプルを、TCBで2mg/mLの濃度で調製した。ポリエチレンサンプルを160℃で2時間穏やかに振盪した。注入量は200μLで、流量は1.0mL/分であった。
【0115】
GPCカラムセットの較正は、21の狭い分子量分布のポリスチレン標準物を用いて行った。標準物の分子量は580~8,400,000g/molの範囲であり、個々の分子量の間に少なくとも10桁の隔たりを有した6つの「カクテル」混合物に配置された。
【0116】
ポリスチレン標準ピーク分子量は、以下の式を使用してポリエチレン分子量に変換された(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に記載されているように)。
M
ポリエチレン=A(M
ポリスチレン)
B (1)
ここで、Bの値は1.0であり、Aの実験的に決定された値は約0.41である。3次多項式を使用して、式(1)から得られたそれぞれのポリエチレン相当キャリブレーションポイントを、ポリスチレン標準の観察された溶出体積に適合させた。数平均、重量平均、およびz平均分子量は、以下の式に従って計算した。
【数1】
式中、Wf
iは、i番目の成分の重量分率であり、M
iは、i番目の成分の分子量である。MWDは、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比として表した。
【0117】
正確なA値は、式(3)を使用して計算されたMwおよび対応する保持体積多項式が、標準の直鎖ポリエチレンホモポリマー参照の120,000g/molの既知のMw値と一致するまで、式(1)のA値を調整して、決定された。
【0118】
粒度分布(D50、D10、D90)
粒度分布は、汎用液体モジュールを装備したBeckman Coulter LS 13 320レーザー回折式粒度分布測定装置を使用して測定できる。この機器は、光散乱の原理を使用しており、粒子によって散乱された光の角度パターンが測定される。この散乱光パターンは、デコンボリューションアルゴリズムに送られ、サイズ分布が取得される。この装置は物理学の第一原理で動作するため、較正されていない。散乱パターンは、粒子の複素屈折率と周囲の媒質の屈折率の影響を受ける可能性がある。そのため、最大限の精度を得るために、粒子と懸濁媒質の複素屈折率がモデルによって考慮される。複素屈折率は実部と虚部で構成される。実数部は、ある媒体から別の媒体に伝播する際の光の曲がりによって特徴付けられ、虚数部または複合部は材料の吸収係数を表す。粒度分布測定で使用される屈折率は、ステアリン酸カルシウムでは「1.46+0.05i」、タルクでは「1.57+0.05」であった。屈折率の選択に関するガイドラインは、Beckman Coulter(フロリダ州、米国)が提供するLS 13 320操作マニュアルに記載されている。
【0119】
サンプル(粒子)をイソプロピルアルコールに懸濁し、ソニックバス(Fisher ScientificモデルFS-14)で5分間超音波処理した後、50の排気速度で動作するユニバーサル液体モジュールに注入する。体積メジアン径(D50、通常ミクロン)は、粒子径として定義される。体積分布の半分はこの点より上にあり、半分はこの点より下にある。D10は、体積分布の10%がこのポイント(D10)の下にある粒子直径として定義される。D90は粒子直径として定義され、体積分布の90%がこのポイント(D90)の下にある。質量分布は、粒子の密度を掛けることで計算できる。
【0120】
流動性試験:標準試験漏斗は、直径1.25インチの排出口を備えた急角度のガラス漏斗で構成されている。漏斗に2,500gmのペレットを装填し、ストップウォッチを使用して吐出時間を正確に計時することにより、吐出速度を測定した。輸送中または保管中に予想される最も暖かい温度をシミュレートするために、サンプルを37℃で硬化させた。硬化は最大12週間行われた。流量測定は常に21℃のペレット温度で行われた。各測定の前に、各フロー測定の前に、ペレットを室温で24時間置いた。
【0121】
ブロッキング力
試験方法-無拘束降伏強度
十分な量のコーティングされたペレットまたはコーティングされていないペレットを、高さ対直径の比が2.5の直径2インチ(ID)シリンダーに装填し、ペレットのレベルがシリンダーの上部と同じ高さになるようにした(通常100~120グラムのペレット)。シリンダーは、ホースクランプによって垂直方向に固定された2つの半分で構成されていた。ペレットは、37℃(静的オーブン、周囲雰囲気)で195lb/ft2の圧密応力にさらされた。ペレットは、この圧密応力下で6週間保持される。21℃で非拘束降伏強度(UYS)を測定するために、シリンダーをオーブンから取り出した。圧密負荷を取り除き、ペレット(シリンダー内)を周囲温度(21℃)および大気で一晩冷却して、圧密ペレットの最終サンプルを得た。0℃での非拘束降伏強度(UYS)を測定するために、シリンダーをオーブンから取り出した。圧密荷重を取り除き、ペレットを(シリンダー内で)周囲温度0℃に設定した環境チャンバーで一晩冷却して、圧密ペレットの最終サンプルを得た。シリンダーは、インストロンの試験機のプラットフォームに配置した。ホースクランプを取り外した後、分割シリンダーの2つの半分を分離した。圧密したサンプルのペレットが完全に自由流動性である場合、ペレットは円柱の形を保持せず、単純に山に集まる。圧密したペレットの塊がシリンダーの形を保持している場合、INSTRONマシンを使用して、シリンダーを押しつぶすのに必要な最大力を測定した。INSTRON 5543フレームを使用して圧密ペレットを粉砕し、圧密ペレットの「シリンダー形状」を破壊するのに必要な最大力を測定した。圧密したペレットは、INSTRONの垂直方向に配置された-長い寸法が垂直方向である。このテストでは、2mm/分の一定のひずみ速度(室温)が使用された。データの一貫性を確保するために、各組成物(コーティングされたペレット)を2回測定し、平均を報告した。
【0122】
非拘束降伏強度(UYS)は、次のように計算された。
UYS(lb/ft2)=ピーク力/シリンダーの断面積。
【0123】
UYSはブロック力の指標である(非拘束降伏強度が大きいほど、ブロック力が大きくなる)。ゼロの値は、自由に流れるペレットに対応する。
【0124】
曲げ弾性率について、曲げ弾性率(1%割線弾性率)は、ASTM D790、射出成形、ASTM D638、タイプ1引張試験片を使用して測定した(以下の実験セクションを参照)。0.05インチ/分の試験速度を使用した。各サンプルについて5個の試験片をテストし、平均1%割線弾性率を報告した。
【0125】
アイゾット衝撃強度について、ノッチ付きアイゾット試験は、ASTM D256、射出成形、ASTM D638、タイプ1引張試験片を使用して実施した(以下の実験セクションを参照)。試験は、23℃、0℃、および-40℃の温度で実施した。各サンプルに対して、各温度で5個の試験片を試験し、各温度での各サンプルの平均衝撃強度を報告した。
【0126】
ダート衝撃試験について、多軸ダート衝撃試験は、ASTM D3763に基づいて、環境チャンバーを備え、スプリングアシストのINSTRON CEAST 9350ドロップタワー衝撃システム(Dynatup)で実施した。直径4インチの「厚さ0.125インチ」の射出成形ディスクを試験した(以下の実験セクションを参照する)。ディスクは、テスト前に少なくとも4時間、テスト温度で状態調整した。試験片を冷凍庫から取り出し、指定された試験温度の環境チャンバーに入れた。6.7m/sの試験速度を使用し、総試験質量は29.131kg、「直径12.7mm」タップであった。多軸ダート衝撃試験各温度で各サンプルについて5個の試験片を試験した。多軸ダート衝撃試験サンプルは、-10℃、-20℃、および-30℃で試験した。試験された試験片は、それぞれ、延性がある(試験された部品に割れや欠けがない);ひび割れ(試験された部品のひび割れが観察されたが、試験された部品の材料が欠落していない);脆い(試験された部品から材料破損がある、または部品が複数の個別の部品に破損した)に特徴づけられた。次に、以下の式Aに従って延性率を計算した。
延性%=(Nd*1+Nc*0.5)/(Nd+Nc+Nb)*100(式A)、
Nd=延性試験片の数、Nc=割れた試験片の数、およびNb=脆性試験片の数。
【0127】
以下の実施例は、本発明を例証するが、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0128】
A)材料
ENGAGE8842(I2=1.0g/10分、密度=0.857g/cc)、The Dow Chemical Companyから入手可能。
ENGAGE8100(I2=1.0g/10分、密度=0.870g/cc)、The Dow Chemical Companyから入手可能。
ENGAGE8200(I2=5.0g/10分、密度=0 0.870g/cc)、The Dow Chemical Companyから入手可能。
ENGAGE8137(I2=11.8g/10分、密度=0.865g/cc)、The Dow Chemical Companyから入手可能。
コーティング用無機粉末:タルク:Speciality Mineralsから入手可能なTALCRON MP 10-52。
コーティング用有機粉末:ステアリン酸カルシウム(CaSt):SYNPRO CaSt 500B、Valerusから入手可能。
コーティング用結合剤:ポリジメチルシロキサン(XIAMETER PMX-200シリコーン流体-25℃で350cSt)、ダウコーニングから入手可能。
各TPO配合物用のポリプロピレン(PP):ADSTIF HA801U(MFR=65g/10分;密度=0.898g/cc)は、LyondellBasell Industriesから入手可能な有核ポリプロピレンホモポリマーである。
TPOコンパウンド用のタルク:Imerysから入手可能なJETFIL 700Cタルク。
TPOコンパウンド用の酸化防止剤:BASFから入手可能なIRGANOX B 225酸化防止剤粉末。
【0129】
B)重合(コポリマー1および2)
本発明のコポリマーは、定常状態条件で運転される単一ループ反応器を使用して調製した。触媒と共触媒は次のとおりであった。触媒は、ジルコニウム、[2,2’’’-[1,3-プロパンジイルビス(オキシ-κO)]ビス[3’’,5,5’’-トリス(1,1-ジメチルエチル)-5’-メチル[1,1’:3’、1’’-テルフェニル]-2’-オラート-κO]]ジメチル-、(OC-6-33)-(Boulder Scientificから供給)であり、共触媒-1は、長鎖トリアルキルアミン(ARMEEN M2HT、Akzo-Nobel、Inc.から入手可能)の反応によって調製された、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのメチルジ(C14~18アルキル)アンモニウム塩の混合物、Boulder Scientificから供給された、USP5,919,983、実施例2(さらなる精製は実施されていない)に実質的に開示されている、HClおよびLi[B(C6F5)4]であり、共触媒-2は、Akzo Nobelから供給された修飾メチルアルモキサン(MMAO)タイプ3A(さらなる精製は行われていない)であった。
【0130】
すべての材料(エチレン、1-オクテン)およびプロセス溶媒(狭い沸点範囲、高純度、イソパラフィン溶媒、Exxon Mobil Corporationから市販されているISOPAR E)は、反応環境に導入する前にモレキュラーシーブで精製した。水素は高純度グレードとして加圧シリンダー内に供給され、それ以上精製されなかった。反応器モノマー供給(エチレン)流を525psigで反応圧力より上に加圧した。溶媒とコモノマー(1-オクテン)の供給は、525psigで反応圧力以上に加圧した。個々の触媒成分を精製溶媒(ISOPAR E)で指定の成分濃度に希釈し、525psigで反応圧力以上に加圧した。
【0131】
すべての反応フィード流量は、質量流量計で測定され、独立して制御した。連続溶液重合反応器は制御ループであった。反応器は、すべての新鮮な溶媒、モノマー、コモノマー、水素、および触媒成分の供給を独立して制御した。反応器への組み合わせ溶媒、モノマー、コモノマー、および水素は、供給ストリームを熱交換器に通すことにより、5℃~50℃、典型的には30℃に温度制御した。重合反応器への新鮮なコモノマーフィードは、溶媒フィードとともに供給した。
【0132】
主要な触媒成分の供給は、反応器モノマー濃度を特定の目標に維持するように制御した。主要な触媒成分に対する指定されたモル比に基づいて、2つの共触媒成分を供給した。各新鮮な注入位置(供給または触媒)の直後に、供給流を循環重合反応器の内容物と混合した。各反応器の内容物は、熱交換器を通して連続的に循環され、特定の温度で等温反応環境を維持した。最初の重合反応器からの流出物(溶媒、モノマー、コモノマー、水素、触媒成分、および溶融ポリマーを含む)は反応器ループを出て、水と接触させて反応を停止させた。さらに、酸化防止剤などの様々な添加剤を、この時点で添加することができる。次に、このストリームは2段階の分離および脱揮システムに入り、そこで溶媒、水素、未反応のモノマーおよびコモノマーからポリマーを取り出した。溶媒(および溶解成分)がリサイクルされた。リサイクルされた流れは、再び反応器に入る前に精製された。分離され揮発分が除去されたポリマー溶融物を、ダイを通してポンプで送り、ペレット化した。ペレットはほぼ球形で、直径は約3~6mmであった。
【0133】
本発明のコポリマーを製造するためのプロセス条件を表1に提供する。本発明のコポリマー(実施例1および2)および比較コポリマー(実施例A~D)の特性は表2に記載されている。
【表1】
【表2】
【0134】
C)粉体コーティングと粉体のポリマーペレットへの適用
2種の粉末(80重量%のタルクと20重量%のCaSt)を、室温で、容器内で、タービンインペラーを備えたハンドヘルド高速ミキサーで少なくとも15分間乾式混合して、均一な混合物(粉末組成物)を形成した。混合作用は対流と高せん断の両方であった。バッチサイズは100グラムであった。スプレーでペレット(2500グラム、コポリマー1またはコポリマー2)に最初に上記ポリジメチルシロキサン油(結合剤)をスプレーし、ペレットを室温でバッチドラムミキサー(直径25 1/2インチ、長さ6 1/4インチ)内でタンブリング(RPM=8)させながらコーティングした。ペレットが結合剤で実質的にコーティングされるまで、噴霧されたペレットをタンブリングさせた。次いで、油でコーティングされたペレットを大きなバッグ(5ガロン)に移し、粉末組成物の目標コーティングレベルの総重量に基づいて、「25重量%の粉末組成物」の増分で粉末組成物を加えた。バッグの内容物を各添加の間に1分間混合した。バッグ内の混合動作は、対流およびせん断混合を伴うパドルミキサーと機構的に類似していた。結合剤および粉末組成物は、結合剤でコーティングされたペレットに適用された。ポリジメチルシロキサンの量は、コーティングされていないポリマー粒子の重量に基づいて「250ppm」であった。粉末組成物の量は、コーティングされていないポリマー粒子の重量に基づいて6,000ppmであった。コーティングされたポリマー粒子の流動性とブロッキングをテストした。
【0135】
コーティングされたポリマー粒子の流動性とブロッキングを表3に示す。150g/sを超える流動性は、例えば、ペレットをツインスクリュー押出機に適切に供給するための十分なペレットの流れと見なされる。
【表3】
【0136】
D)TPO
上記のコーティングされた粒子を使用して、TPO配合物を形成した。TPO配合物を表4に示す。すべてのTPO配合物に同じPP、タルク、および酸化防止剤を使用した。以下に説明する方法を使用して、TPO配合物を調製し試験した。
【表4】
【0137】
コンパウンド製造
TPO配合物は、2穴ダイ、ウォーターバス、ストランドカッターを備えたCoperion ZSK-25mm、二軸スクリュー押出機で調製した。全ての構成成分が主供給口を介して添加された。ポリマー成分は、IRGANOX B225酸化防止剤とともにドライブレンドされ、重量検出方式連続定量供給フィーダー(ロスインウエイトフィーダ)から供給された。酸化防止剤粉末がペレットに付着するのを助けるために、数滴の油がペレットに加えられた。タルクは、別の粉末フィーダーを介してメインフィードスロートに供給された。コンパウンドをストランドとして押し出し、ウォーターバスで冷却し、エアナイフの下を通過させ、ストランドカッターを使用してペレット化した。窒素流で一晩パージすることにより、すべてのコンパウンドを乾燥させた。すべてのコンパウンドに使用されるプロセス条件を表5に示す。
【表5】
【0138】
射出成形:ペレット状のTPOコンパウンドを、射出成形により機械的試験のために試験サンプルに変換した。射出成形部品は、Axxicon型ベースを備えた「Krauss-Maffei KM 110-390/390 CL」射出成形機で作製した。ASTM D638タイプI引張棒、直径4インチ、厚さ0.125インチのディスクを作製した。同じ成形条件が、表6にリストされた射出成形条件を使用して、表4にリストされた本発明および比較例のすべてに使用された。ASMT D638 Type I引張試験片を使用して、曲げ弾性率とノッチ付きアイゾット衝撃強度を測定した。射出成形ディスクを使用して、多軸ダート衝撃を測定した。本発明および比較のTPOコンパウンドの機械的特性を表7に示す。
【表6】
【表7】
【0139】
E)結果の要約
本発明のTPO 1およびTPO 3は、より低い密度のエチレン-オクテンコポリマー(本発明コポリマー1)と、TPO CおよびTPO Gで使用されるエラストマー(比較コポリマーC)と同様のメルトインデックスとを含む。TPO 1およびTPO 3は、それぞれ曲げ弾性率がわずかに低く、TPO CおよびTPO Gと同様のMFRを持っていることが発見されたが、テストされた温度範囲でアイゾット衝撃強度とダート延性が高いため、衝撃靭性において有利であった。スクリュー押出装置さらに、TPO 1およびTPO 3で使用される本発明のコポリマー 1が低密度および高MIであるにもにもかかわらず、本発明のコポリマー1のペレットは自由流動性のペレットであり、それにより一般的な二軸スクリュー押出装置でTPOコンパウンドを容易に製造できることが発見された。同様に、本発明のTPO 2およびTPO 4は、より低い低密度のエチレン-オクテンコポリマー(本発明コポリマー2)と、TPO DおよびTPO Hで使用されるエラストマー(比較コポリマーD)と同様のメルトインデックスとを含む。TPO 2とTPO 4は、それぞれ曲げ弾性率が低く、TPO DとTPO Hと同様のMFRを持っているが、テストされた温度範囲にわたってより高いアイゾット衝撃強度およびより高いダート延性を有しており、衝撃靭性において有利であることが発見された。さらに、TPO 2およびTPO 4で使用される本発明のコポリマー2が低密度および高MIであるにもかかわらず、本発明のコポリマー2のペレットは自由流動性のペレットであり、それにより一般的な二軸スクリュー押出装置でTPOコンパウンドを容易に製造することができた。
【0140】
本発明のTPO 1およびTPO 3は、高いメルトインデックスのエチレン-オクテンコポリマー(本発明のコポリマー1)と、TPO AおよびTPO Eで使用されるエラストマー(比較例A)と類似の密度とを含む。TPO1およびTPO 3はそれぞれTPO AおよびTPO Eと比較して、わずかに低いアイゾット衝撃強度および同様の曲げ弾性率を有するが、-10℃~-30℃の温度範囲にわたって同様のダート延性を有し、MFRがはるかに高くなっている。TPOコンパウンドのMFRが高ければ高いほど、より薄くて大きな射出成形部品を充填するのに有利である。また、比較例Aと比較して、本発明のコポリマー1のMIが高いにもかかわらず、本発明のコポリマー1のペレットは自由流動性ペレットであり、それにより一般的な二軸スクリュー押出装置でTPOコンパウンドを容易製造することができた。本発明のTPO配合物は、驚くべきことに、優れた流動性、剛性、および靭性を提供することが発見された。
なお、本発明は次の態様にも関する。
(1)組成物であって、
A)コーティングされたポリマー粒子であって、前記ポリマー粒子は、0.854~0.860g/ccの密度、および4.0~15.0g/10分のメルトインデックス(I2)の特性を含むエチレン系ポリマーを含む第1の組成物から形成され、
前記ポリマー粒子は、前記ポリマー粒子の全表面の少なくとも一部分上にコーティングを含み、
前記コーティングは、少なくとも1種の無機粉末と、金属ステアリン酸塩および/またはポリマー粉末から選択される少なくとも1種の有機粉末とを含む粉末組成物から形成され、前記無機粉末の総量と前記有機粉末の総量との重量比は3.0~50.0である、コーティングされたポリマー粒子と、
B)任意選択の、プロピレン系ポリマーと、を含む、組成物。
(2)前記成分Bのプロピレン系ポリマーを含む、上記(1)に記載の組成物。
(3)前記成分Bのプロピレン系ポリマーが、20~120g/10分のMFR、および0.880~0.920g/ccの密度を有する、上記(2)に記載の組成物。
(4)組成物が30g/10分以上のMFRを有する、上記(2)または(3)に記載の組成物。
(5)組成物が30~60g/10分のMFRを有する、上記(2)~(4)のいずれか一項に記載の組成物。
(6)組成物が、前記組成物の重量に基づいて、50重量%以上の成分Bと、50重量%以下の成分Aとを含む、上記(2)~(5)のいずれか一項に記載の組成物。
(7)成分Aについて、前記第1の組成物が、前記第1の組成物の重量に基づいて、95重量%以上の前記エチレン系ポリマーを含む、上記(1)~(6)のいずれか一項に記載の組成物。
(8)成分Aについて、前記エチレン系ポリマーがエチレン/α-オレフィンインターポリマーである、上記(1)~(7)のいずれか一項に記載の組成物。
(9)成分Aについて、前記有機粉末が金属ステアリン酸塩である、上記(1)~(8)のいずれか一項に記載の組成物。
(10)成分Aについて、前記無機粉末が、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、微粉シリカ、ヒュームドシリカ、石英、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記(1)~(9)のいずれか一項に記載の組成物。