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特許7289837試験を実行するためのテストベンチ及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】試験を実行するためのテストベンチ及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 15/02 20060101AFI20230605BHJP
   G01M 15/04 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
G01M15/02
G01M15/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020529734
(86)(22)【出願日】2018-12-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2018083296
(87)【国際公開番号】W WO2019110480
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-11-30
(31)【優先権主張番号】A50999/2017
(32)【優先日】2017-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】398055255
【氏名又は名称】アー・ファウ・エル・リスト・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(72)【発明者】
【氏名】プフィスター・フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンクラー・ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】クーラル・エムレ
(72)【発明者】
【氏名】シニョール・カミッロ
(72)【発明者】
【氏名】ホーホマン・ゲラルト
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-176978(JP,A)
【文献】特開2003-057152(JP,A)
【文献】特開平05-249000(JP,A)
【文献】特表2017-522213(JP,A)
【文献】特開2012-013185(JP,A)
【文献】特開平03-233339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 15/00 - 15/14
G01M 17/00 - 17/10
B60W 10/00 - 10/00
B60W 10/02
B60W 10/04 - 10/06
B60W 10/08
B60W 10/10
B60W 10/101- 10/18
B60W 10/184- 10/26
B60W 10/28
B60W 10/30
B60W 30/00 - 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行区間(2)に沿って自動車(1)の試乗運転をシミュレートするためにテストベンチ(10)上で試験を実行するための方法であって、内燃機関エンジン(11)が、前記試験を実行するために前記テストベンチ(10)で負荷機械(12)に接続され、前記内燃機関エンジン(11)と前記負荷機械(12)との双方が、前記内燃機関エンジン(11)と前記負荷機械(12)とのための試験運転の目標値(SW)を予め設定することによって、設定された運転制御モード(R)にしたがって、テストベンチ自動化装置(13)によって制御される当該方法において、
前記内燃機関エンジン(11)の少なくとも1つのアイドリング運転時間(t)が、自動車速度(v)の時間推移とアクセルペダル位置(α)の時間推移とから算出され、及び/又は、前記内燃機関エンジン(11)の少なくとも1つの惰性運転の運転時間(t)が、エンジン回転数(N)の時間推移とアクセルペダル位置(α)の時間推移とから算出され、
前記テストベンチ自動化装置(13)内では、前記試験を実行するため、アイドリング運転時間(t)中には、予め設定されているアイドリング制御モード(R)が、運転制御モード(R)の代わりに設定され、及び/又は、惰性運転の運転時間(t)中には、予め設定されている惰性運転制御モード(R)が、運転制御モード(R)の代わりに設定されることを特徴とする方法。
【請求項2】
アイドリング制御モード(R)中に、零のトルク(T)が、目標値(SW)として前記負荷機械(12)に予め設定され、零のアクセルペダル位置(α)が、目標値(SW)として前記内燃機関エンジン(11)に予め設定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
N/α制御が、惰性運転制御モード(R)として設定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
N/T制御、N/α制御、N/x制御、T/n制御、T/α制御又はT/x制御が、運転制御モード(R)として設定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記自動車速度(v)と前記アクセルペダル位置(α)との双方が零である時間範囲が、アイドリング運転時間(t)として前記自動車速度(v)の時間推移中と前記アクセルペダル位置(α)の時間推移中とに検出されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記内燃機関エンジン(11)のアイドリン回転数(N)が、前記アイドリング運転時間(t)中のエンジン回転数(N)として算出されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記エンジン回転数(N)が前記アイドリン回転数(N)に相当する時間範囲が、少なくとも1つの別のアイドリング運転時間(t)としてエンジン回転数(N)の時間推移中に検出されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
アクセルペダル位置(α)が零であり、エンジン回転数(N)が予め設定されているアイドリン回転数(N)よりも大きい時間範囲が、惰性運転の運転時間(t)として前記エンジン回転数(N)の時間推移中と前記アクセルペダル位置(α)の時間推移中とに検出されることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
走行区間(2)に沿って自動車(1)の試乗運転をシミュレートするために試験を実行するためのテストベンチであって、内燃機関エンジン(11)が、前記試験を実行するために前記テストベンチ(10)で負荷機械(12)に接続されていて、テストベンチ自動化装置(13)が設けられていて、このテストベンチ自動化装置(13)は、前記内燃機関エンジン(11)と前記負荷機械(12)とのための試験運転の目標値(SW)を予め設定することによって、設定された運転制御モード(R)にしたがって、前記内燃機関エンジン(11)と前記負荷機械(12)との双方を制御する当該テストベンチにおいて、
評価装置(4)が、前記内燃機関エンジン(11)の少なくとも1つのアイドリング運転時間(t)を自動車速度(v)の時間推移とアクセルペダル位置(α)の時間推移とから算出し、及び/又は前記内燃機関エンジン(11)の少なくとも1つの惰性運転の運転時間(t)をエンジン回転数(N)の時間推移とアクセルペダル位置(α)の時間推移とから算出すること、及び
前記テストベンチ自動化装置(13)は、アイドリング運転時間(t)中は前記運転制御モード(R)の代わりにアイドリング制御モード(R)によって前記試験を実行し、及び/又は惰性運転の運転時間(t)中は前記運転制御モード(R)の代わりに惰性運転制御モード(R)によって前記試験を実行することを特徴とするテストベンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行区間に沿って自動車の試乗運転をシミュレートするためにテストベンチ上で試験を実行するための方法であって、内燃機関エンジンが、当該試験を実行するために当該テストベンチで負荷機械に接続され、当該内燃機関エンジンと当該負荷機械との双方が、当該内燃機関エンジンと当該負荷機械とのための試験運転の目標値を予め設定することによって、設定された運転制御モードにしたがって、テストベンチ自動化装置によって制御される当該方法に関し、対応するテストベンチに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関エンジン、内燃機関エンジンを有するパワートレイン、及び内燃機関エンジンを有する自動車の開発において、排気挙動及び燃焼挙動の試験は、重要な役割を果たす。エンジンテストベンチ、パワートレインテストベンチ又はローラテストベンチのようなテストベンチ上の内燃機関エンジンの排気挙動及び燃焼挙動の試験が、全ての開発段階において実行される。しかし、この試験に対する法律上の限界条件は、今日では非常に頻繁に改正される。例えば新欧州ドライビングサイクルのような、特に早期に標準化された走行サイクルは、この試験のために適用された一方で、今日では、実際の走行条件の下での試験がさらに要求される。このため、いわゆる実路走行排気(RDE)が、当該排気挙動のために使用される。当該実路走行排気の場合、所定の走行サイクルが予め設定されるのではなくて、規定された特定の限界条件だけに適合するほぼ任意の走行区間が提供される。
【0003】
それ故に、内燃機関エンジン、パワートレイン又は自動車をテストベンチ上で開発するためには、テストベッドでの試験をこのような実際の試験によって実行することも望ましい。
【0004】
それ故に、一方では、例えばGPSデータ、エンジン回転数、アクセルペダル位置、自動車速度等のような、実際の道路上での自動車による実際の試乗運転から、当該試乗運転の測定値を取得することが必要である。このとき、他方では、当該試乗運転にとって典型的なテストベンチ用の試験運転が、当該取得された測定値から作成されなければならない。このとき、例えば、当該内燃機関エンジンの排気挙動又は燃焼挙動を検出し評価するため、当該試験運転の全体又は一部が、当該テストベンチで実行され得る。これに対する例が、独国特許出願公開第102012018359号明細書又は国際公開第2015/166069号明細書から読み取られ得る。
【0005】
内燃機関エンジンが、単独で(エンジンテストベンチ)又は他の構成要素(パワートレインテストベンチ、ローラテストベンチ)と組み合わせて、テストベンチの仕様にしたがってこのテストベッドで運転される。試験を実行するため、当該テストベンチにある内燃機関エンジンが、負荷機械(ダイナモメータ)に直接又は間接に接続され、当該負荷機械及び当該内燃機関エンジンが、当該テストベンチの仕様にしたがって制御される。
【0006】
当該負荷機械は、例えば、テストベンチ軸を介して内燃機関エンジンに直接に接続され得る。当該負荷機械は、例えば、パワートレインのハーフシャフトの駆動されるホイールハブを介して間接に接続され得る。この場合、通常は、負荷機械が、パワートレインテストベンチの駆動されるホイールハブの両側に接続される。当該負荷機械は、ローラテストベンチ上でローラを稼働させる。自動車の車輪が、このローラ上で転動する。したがって、ローラテストベンチ上でも、当該負荷機械は、(当該ローラを介して)当該内燃機関エンジンに間接に接続されている。この場合、一般に、当該内燃機関エンジン(又はパワートレイン)の回転数が、当該内燃機関エンジンのための負荷トルクを生成することによって、この回転数が、当該負荷機械によって調整される。一般に、エンジントルクが、当該内燃機関エンジンによって調整される。このため、運転者の要求又はトルクの要求が、通常はアクセルペダル位置によってエンジン制御装置に予め設定される。当該エンジン制御装置は、当該アクセルペダル位置をエンジン制御信号(噴射量、噴射時点、EGR調整、点火時点等)に変換する。したがって、試験運転をテストベンチで実行できるようにするためには、 例えばアクセルペダル位置、パワートレインの回転数等のような、エンジン回転数及びエンジントルク又はこれらと等価な変数が、試験として必要になる。これらの目標値、実際にはこれらの目標値の(場合によっては、時間離散推移としての)時間推移が、実際の試乗運転から生成される必要がある。
【0007】
試験を実行するための様々な制御モードが、テストベンチに又はテストベンチ自動化装置内に実装されてもよい。直接にアクセルペダル位置が、目標値として予め設定される場合、通常はN/α制御(Nは、回転数、αは、アクセルペダル位置)が実行される。これに対して、トルクが予め設定される場合、通常はN/T制御(Nは、回転数、Tは、トルク)が実行される。この制御モードでは、予め設定されているトルクからの実際のトルクの偏差からアクセルペダル位置を算出するため、内燃機関エンジンの当該実際のトルクも検出される必要がある。当該アクセルペダル位置は、当該偏差を相殺するために必要になり、また、当該偏差は、エンジン制御装置(ECU)に予め設定され得る。このため、一般に、当該事項を実行する適切な制御器も、当該テストベンチ自動化装置内に実装されている。さらに、試験運転を実行するために適しているさらに別の目標値が予め設定されてもよい。この場合、このような別の目標値は、特に、トルク又はアクセルペダル位置と等価な変数であるか、又は、トルク又はアクセルペダル位置が、当該別の目標値から導き出され得る。当該別の目標値の例は、噴射量、シリンダの平均実効圧力又はECUのトルクである。この場合、通常は、N/x制御(Nは、回転数、別の制御変数)が実行される。同様に、T/N制御、T/α制御又はT/x制御が、テストベンチで実行されてもよい。この場合、当該トルクが、負荷機械によって調整される。当該試験を当該テストベンチで実行するため、使用すべき制御モードが、テストベンチのドライバによって予め設定されるか又は選択される。
【0008】
テストベンチの試験時間は長く、テストベンチの収容能力は一般に制限されていて、テストベンチの試験は面倒であるので、一般的な目的は、当該試験の実行を簡略化することである。しかし、この場合、当該簡略化にもかかわらず、試験は、例えば法律上の予め設定された値又は限界条件に非常に適合して実行されなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】独国特許出願公開第102012018359号明細書
【文献】国際公開第2015/166069号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
それ故に、本発明の課題は、走行区間に沿って自動車の試乗運転をシミュレートするために試験を実行するためのテストベンチ及び方法によってこの課題を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の課題は、当該内燃機関エンジンの少なくとも1つのアイドリング運転時間及び/又は当該内燃機関エンジンの少なくとも1つの惰性運転の運転時間が、自動車速度の時間推移とアクセルペダル位置の時間推移とから算出され、当該テストベンチ自動化装置内では、当該試験を実行するため、アイドリング運転時間中には、予め設定されているアイドリング制御モードが、運転制御モードの代わりに設定され、及び/又は、惰性運転の運転時間中には、予め設定されている惰性運転制御モードが、運転制御モードの代わりに設定されることによって解決される。したがって、現実により近い試験が、アイドリング運転時間及び/又は惰性運転の運転時間中に当該テストベンチで簡単に達成され得る。これにより、特に、当該内燃機関エンジンの排気挙動又は燃焼が、このような運転時間中に当該テストベンチで実現により近くシミュレートされる。
【0012】
特に、アイドリング制御モード中に、零のトルクが、目標値として当該負荷機械に予め設定され、零のアクセルペダル位置が、目標値として当該内燃機関エンジンに予め設定される。
【0013】
特に、N/α制御が、惰性運転制御モードとして惰性運転の運転時間中に設定される。何故なら、内燃機関エンジンのエンジン制御装置が、当該内燃機関エンジンのトルクだけを制御することが保証され得るからである。
【0014】
自動車速度の時間推移中とアクセルペダル位置の時間推移中とに、当該自動車速度と当該アクセルペダル位置との双方が零である時間範囲として、アイドリング運転時間が、試乗運転の測定値から検出される場合、試験の簡単で自動化された実行が可能になる。内燃機関エンジンのアイドリン回転数も、当該アイドリング運転時間中のエンジン回転数として算出され得る。この場合、温間アイドリング回転数と冷間アイドリング回転数とが区別されてもよい。
【0015】
エンジン回転数が、アイドリング回転数に相当する時間範囲として、別のアイドリング運転時間が簡単に見つけ出され得る。
【0016】
エンジン回転数とアクセルペダル位置との時間推移中に、当該アクセルペダル位置が零であり、当該エンジン回転数が、予め設定されているアイドリング運転時間よりも大きい時間範囲として、惰性運転の運転時間が、試乗運転の測定値から検出される場合、試験の簡単で自動化された実行が可能になる。
【0017】
以下に、本発明を、例示的に、概略的に且つ限定しないで本発明の好適な構成を示す図1~7を参照して詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】走行区間に沿った自動車による試乗運転を示す。
図2】走行区間に沿った自動車による試乗運転のシミュレーションを示す。
図3】内燃機関エンジンのアイドリング運転時間の算出を示す。
図4】内燃機関エンジンの惰性運転の運転時間の算出を示す。
図5】試験の実行中のテストベンチ自動化装置の異なる複数の制御モードを示す。
図6】テストベンチでのN/α制御を示す。
図7】テストベンチでのN/T制御を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の基礎となるものは、予め設定されている走行区間2に沿った自動車1による試乗運転である(図1)。この場合、実際の自動車1が、ドライバによって実際の道路上で(試験場の区間でも)移動される。しかし、道路に沿った試乗運転がシミュレートされること(図2)も考えられ、又は、ローラテストベンチ上での自動車1による試乗運転が考えられる。当該シミュレーションは、例えば、適切なソフトウェアを有する適切なハードウェア(コンピュータ)上で実行される。当該シミュレーションのため、例えばデジタル地図3内で、走行区間2が選択され得て、この走行区間2に沿った自動車1の走行がシミュレートされ得る。当該シミュレーションは、例えば周知の方法で、道路状況(高度、上り坂、カーブ半径、路面等)を示す道路モデルMを、ドライバの特性(シフト挙動、走行挙動等)を示すドライバモデルM及び自動車の動特性を示す自動車モデルMがと組み合わせることによって実行される。このため、当然に、さらに別のモデルが、実装され、例えばタイヤモデルのようなモデルが、当該シミュレーションに組み込まれてもよい。このようなシミュレーションでは、例えば交通標識、信号、その他の道路利用者、道路交通等のようなイベントが考慮されてもよい。このために必要なシミュレーションモデルは、公知であり且つ入手可能であるので、ここではこれに関してより詳しく説明する必要はない。希望した試乗運転が、この試乗運転をローラテストベンチ上で実行するために予め設定される。
【0020】
したがって、自動車による試乗運転に関して言及すると、実際の道路上の走行区間2での実際の自動車1による実際の走行が当然に含まれ、仮想走行区間2に沿った仮想自動車1によるシミュレート走行も含まれ、ローラテストベンチ上での試乗運転も含まれる。
【0021】
測定値MWが、当該試乗運転中に検出される。したがって、測定値MWは、走行区間2に沿った自動車1による試乗運転を表す。当該測定値MWは、適切なセンサS、特に自動車1内に必ず存在するセンサによって検出され得る。このような自動車センサSの測定値MWは、例えばオン・ボード・ダイアグノーシス(OBD)・インターフェースを介して直接に読み取られ得る。しかし、当然に、当該試乗運転用の自動車1は、別の測定値MW、例えば排ガス値(NOx、HC(CO、CO等))を検出するためにシリアル式の自動車センサを装備してもよい。当該シミュレーションでは、任意のシミュレーション変数が、実装された様々なシミュレーションモデルの「測定値」MWとして使用され得る。このため、追加のシミュレーションモデル、例えば排気値のシミュレーションのための排気モデルが、所定の変数をシミュレートするために実装されてもよい。
【0022】
同様に、別の測定値MWを、検出された他の測定値MWから算出することが可能である。当該算出は、試乗運転中に実行され得るか又は試乗運転後に初めて実行されてもよい。当該算出のための一例は、内燃機関エンジンのトルク、又は多くの場合に実際の試乗運転中に測定され得ないか若しくは簡単に測定されないギヤ段シフト時点、場合によってはクラッチシフト時点を有するギヤ段情報である。このとき、当該トルクは、例えば既知の特性図(例えば、回転数、アクセルペダル位置、トルク用の特性図)から取り出され得るか、又はモデル若しくは物理的な関係から算出されてもよい。例えば当該トルクは、道路の勾配と自動車の重量と抵抗係数(転がり抵抗、空気抵抗)と自動車の動特性(速度、加速度)とから算出され得る。エンジン出力が、当該自動車の速度と自動車の抵抗力(道路の勾配、転がり抵抗、空気抵抗等)とから算出され得る。このとき、当該トルクは、当該回転数を用いて当該エンジン出力から算出され得る。直接に測定されない変数を算定するための多くの可能性があることは明らかである。
【0023】
しかし、測定値MWは、例えば、以前に実行された試乗運転若しくはシミュレーションから、又は走行区間2に沿った自動車1による試乗運転を表す任意に作成された測定値として簡単に入手できる。
【0024】
それ故に、以下で測定値MWと記される場合、直接に測定される変数と、シミュレーションからの変数と、(測定又はシミュレートされた)既知の別の複数の変数から算出される変数と、別の方法で入手可能な測定値とが含まれている。
【0025】
本発明の方法を実行するためには、試乗運転の自動車1の少なくとも自動車速度v、アクセルペダル位置α及びエンジン回転数Nの時間推移(又は等価な変位に基づく推移)が必要になる。当該時間推移(又は等価な変位に基づく推移)は、測定値MWとして予め設定されるか又は上記のような測定値MWとして取得される。当然に、測定値MWに対して等価な変数が使用されてもよい。例えば、パワートレインの任意の回転数が、エンジン回転数Nとして使用され得る。時間推移と記される場合、通常の時間連続的な推移と時間離散的な推移との双方が含まれる。
【0026】
テストベンチ10での試験の目的は、テストベンチ10での試乗運転の可能な限り現実に近いシミュレーションである。一般に、自動車1は、試乗運転中に様々な運転状況の影響下にある。自動車1の停止フェーズでは、内燃機関エンジンが、アイドリング状態にある。この場合、自動車速度vが零であり、アクセルペダルが操作されない。この運転は、実際の自動車1では通常はエンジン制御装置ECUの固有のアイドリングモードによって制御される。惰性運転では、アクセルペダルが操作されず、内燃機関エンジンが制動作用する(エンジンブレーキ)。すなわち、当該内燃機関エンジンは、負のトルクを生成する。多くの場合、これらの運転状況は、非常に高い排気又は燃焼値を生成する。当該非常に高い排気又は燃焼値は、法律上の高まる要求を考慮した試験にとって非常に重要である。それ故に、現実に非常に近い結果を当該試験によって取得できるようにするためには、内燃機関エンジン11を有する試験対象物、例えば自動車又は自動車構成要素(内燃機関エンジン、パワートレイン)によるテストベンチ10での試験は、特にこれらの運転状況も反映させなければならない。
【0027】
当該運転状況の反映を可能にするため、まず、試乗運転中に取得された測定値MWが、評価装置4内で分析されて、当該試乗運転中のアイドリング及び/又は惰性運転を認識する。当該事項を図3に基づいて説明する。
【0028】
図3は、測定値MWとして入手できる自動車速度v、アクセルペダル位置α及びエンジン回転数Nの時間推移を示す。アイドリングフェーズを試乗運転中に、すなわち測定値MWにおいて検出するため、自動車速度v及びアクセルペダル位置αの時間推移が検査されて、アクセルペダル位置αが零であり、自動車速度vが零である時間範囲を見つけ出す。実際に実現するためには、特にほぼ零の窓が予め設定される。例えば、自動車速度v<0.5m/sが、「零」とみなされる。この場合、当然に、測定値変動及び不正確さを考慮して、それぞれの状況を表す時間範囲だけが取得されるように、1つの窓が狭く選択される。両条件が合致すると、アイドリング運転とみなされ得る。したがって、全てのアイドリング運転時間tが、試乗運転中に算出され得る。
【0029】
アイドリング回転数Nを算出するため、アイドリング運転時間t中のエンジン回転数Nが、特にアイドリング運転時間tにわたる平均値として算出されてもよい。この場合、温間アイドリング回転数Nと冷間アイドリング回転数N′とが区別されてもよい。アイドリング回転数N,N′が算出されると、これらの回転数を成す(場合によっては、同様に、ほぼこの回転数の予め設定されている窓内の)エンジン回転数Nの全ての時間範囲が、アイドリング運転時間tとして確認され得る。したがって、同様に、全ての時間範囲tが、アイドリング運転による試乗運転中に算出され得る。
【0030】
惰性運転による惰性運転の運転時間を算定するためには、内燃機関エンジンの、場合によっては温間及び冷間に対するアイドリング回転数Nの知得から開始される。この場合、アイドリング回転数Nは、当該内燃機関エンジンの既知のパラメータであるか、又は上記のように試乗運転の測定値MWから算出され得る。したがって、アクセルペダル位置αが(場合によっては、同様にほぼ零の窓内で)零であるか又はほぼ零である惰性運転の運転時間が確認され得て、エンジン回転数Nは、アイドリング回転数Nよりも大きい。当該事項は、図4に示されている。
【0031】
特に好ましくは、まず、(場合によっては、温間及び冷間に対する)アイドリング回転数Nが、上記のように算出され、アイドリングによるアイドリング運転時間tと、惰性運転による惰性運転の運転時間とが、当該算出されたアイドリング回転数Nから導き出される。当該事項は、評価装置4内での測定値MWの全自動処理を可能にする。
【0032】
当然に、アイドリング運転時間t又は惰性運転の運転時間tだけを試験のために確認することも可能である。
【0033】
テストベンチ10での試験を実行するためには、図5に基づいて説明されるように、テストベンチ10に対する制御モードRが、惰性運転に対する確認された惰性運転の運転時間及び/又はアイドリングに対するアイドリング運転時間tに基づいて変更される。
【0034】
アイドリング運転に対しては、固有のアイドリング制御モードRが、テストベンチ自動化装置13内に実装されている。この制御モードRの場合、零のトルクが、目標値として負荷機械12に対して予め設定される。アクセルペダル位置αに対する目標値は、同様に零である。したがって、任意のアイドリング回転数が、テストベンチ10で発生する。
【0035】
惰性運転に対しては、エンジン制御装置ECUが、内燃機関エンジンのトルクTだけを制御すること、及び、テストベンチ自動化装置13が、エンジン制御装置ECUの当該制御に介入しないことが、試験をテストベンチ10で実行するために重要である。それ故に、N/α制御が、惰性運転制御モードRとしてテストベンチ自動化装置13内に設定される。当該N/α制御の場合、アクセルペダル位置α=零が、制御変数STとしてエンジン制御装置ECUに渡される。したがって、惰性運転中の試乗運転の燃焼値及び排気値が現実に近くなり、最適にシミュレートされることが、テストベンチ10で保証され得る。
【0036】
アイドリング運転も惰性運転も存在しない期間では、任意の制御モードR、例えばN/T制御、N/x制御、N/α制御又はT/n制御、T/α制御若しくはT/x制御が、テストベンチ自動化装置13内に設定され得る。
【0037】
試験を実行するためには、当該設定された制御モードRにしたがう複数の目標値SWが必要になる。上記のように、これらの目標値SWは、試乗運転から取得される。このため、当該試乗運転の所定の測定値MW、例えばアクセルペダル位置α又はエンジン回転数Nが、目標値SWとして使用され得る。しかし、同様に上記のように、目標値SWが、測定値MW、例えばトルクT又はギヤ段情報から取得されてもよい。
【0038】
テストベンチ10には、内燃機関エンジン11が、例えばテストベンチ軸14を介して負荷機械12に接続されている。テストベンチ自動化装置13が、制御すべき変数に対する所定の目標値SWとしての試験の予め設定された値と制御モードRとにしたがって内燃機関エンジン11と負荷機械12との双方を制御する。テストベンチ自動化装置13は、予め設定されている目標値SWから制御変数を算出する。内燃機関エンジン11及び負荷機械12は、当該制御変数によって制御される。負荷機械12の場合、制御変数STは、(特にN/T制御、N/x制御又はN/α制御の場合は)例えば回転数である。内燃機関エンジン11のエンジン回転数Nが、制御変数STによって制御される。このため、適切な回転数制御器Rが、テストベンチ自動化装置13内に実装されてもよい。当該回転数制御器Rは、例えば負荷機械12にある回転数センサ15によって検出される回転数Nistの実際値を含んでもよい。内燃機関エンジン11は、適切な制御変数ST、例えば上記のようにアクセルペダル位置αに基づいて制御される。
【0039】
テストベンチ自動化装置13は、試験を実行するために目標値SWに対応する目標値SWの時間推移を(場合によっては時間離散な推移として)例えば評価装置4から受け取る。この場合、当該時間推移の全体が、試験運転を実行するために受け渡されるのか否か、又は、制御すべきそれぞれの目標値SWが、制御のそれぞれの時間ステップに対して受け渡されるのか否かは重要でない。同様に、制御モードRが、例えば評価装置4によってテストベンチ自動化装置13に予め設定される。試験をテストベンチ10で実行するため、希望した運転制御モードRが、例えばテストベンチのドライバによって構築され得る。図5にしめされているように、この運転制御モードRは、アイドリング運転及び/又は惰性運転を制御するための制御モードRの予め設定された値によって断続的に変更され得る。ここでは、制御モードRは、アイドリング運転中は予め設定されているアイドリング制御モードRに変更され、惰性運転中は予め設定されている惰性運転制御モードR(N/α制御)に変更される。そうでなければ、希望して構築した運転制御モードR(例えば、N/T制御、N/α制御、N/x制御又はT/n制御、T/α制御若しくはT/x制御)が使用される。
【0040】
図6には、N/α制御が示されている。このため、テストベンチ自動化装置13が、目標値SWとしてエンジン回転数N及びアクセルペダル位置α(エンジン回転数N及びアクセルペダル位置αの実際の時間推移)を受け取る。アクセルペダル位置αは、制御変数STとしてテストベンチ自動化装置13からエンジン制御装置ECUに受け渡され得る。
【0041】
N/T制御(図7)に対しては、トルクTの時間推移及びエンジン回転数Nの時間推移が、試験を実行するための目標値SWとして例えば評価装置4からテストベンチ自動化装置13に受け渡される。例えばトルク制御器Rが、テストベンチ自動化装置13内に実装されている。このトルク制御器Rは、例えばテストベンチ軸14にあるトルクセンサ16によって測定され得るか又は測定される別の変数から(監視装置によって)評価され得るトルクTistの実際値と予め設定されている目標値SWとからアクセルペダル位置αと算出する。このアクセルペダル位置αは、内燃機関エンジン11を制御するためにエンジン制御装置ECUに受け渡される。図7には、負荷機械12を制御するための回転数制御器Rも示されている。
【0042】
当然に、評価装置4は、アクセルペダル位置αの時間推移と内燃機関エンジン11のトルクTの時間推移との双方を常時算出でき、エンジン回転数N及び制御モードRと一緒にテストベンチ自動化装置13に受け渡しできる。評価装置4は、ハードウェア及び/又はソフトウェアとしてテストベンチ自動化装置13内に実装され得る。
【符号の説明】
【0043】
1 自動車
2 走行区間
3 デジタル地図
4 評価装置
10 テストベンチ
11 内燃機関エンジン
12 負荷機械
13 テストベンチ自動化装置
14 テストベンチ軸
15 回転数センサ
16 トルクセンサ
S センサ
v 自動車速度
N エンジン回転数
MW 測定値
α アクセルペダル位置
SW 目標値
T トルク
ST 制御変数
回転数制御器
トルク制御器
ECU エンジン制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7