(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】耐火組成物および使用中に形成される耐酸化バリア層
(51)【国際特許分類】
C04B 35/66 20060101AFI20230605BHJP
C04B 35/101 20060101ALI20230605BHJP
F27D 1/00 20060101ALI20230605BHJP
B22D 41/02 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
C04B35/66
C04B35/101
F27D1/00 N
B22D41/02 A
(21)【出願番号】P 2020542789
(86)(22)【出願日】2019-01-29
(86)【国際出願番号】 US2019015580
(87)【国際公開番号】W WO2019156845
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-12-27
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518162876
【氏名又は名称】ベスビウス ユーエスエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100162204
【氏名又は名称】齋藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(72)【発明者】
【氏名】ベダ モハンティー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ティー.シャナー
(72)【発明者】
【氏名】ロジャー エル.マッダレナ
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭47-026409(JP,A)
【文献】特開2004-142957(JP,A)
【文献】特開2003-261392(JP,A)
【文献】特開平05-185202(JP,A)
【文献】特表平07-504642(JP,A)
【文献】Yung-Chao Ko,Role of spinel composition in the slag resistance of Al2O3-spinel and Al2O3-MgO castables,Ceramics International,2002年,28,805-810
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/66
C04B 35/101
F27D 1/00
B22D 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属用容器においてワークライニングを形成するための耐火組成物であって、前記耐火組成物が、前記耐火組成物の総質量に対するパーセントで、
少なくとも150マイクロメートル(+100メッシュ)の粒径を有する少なくとも20.0%の粗粒耐火物粒子であって、
当該粗粒耐火物粒子は、アルミナ粒子、マグネシア粒子、アルミン酸マグネシウムスピネル粒子、ジルコニア粒子、もしくはドロマ粒子、またはそれらのいずれかの組み合わせを含み、
(i)少なくとも0.5%の酸化カルシウム添加剤であって、150マイクロメートルより小さい(-100メッシュ)粒径を有する微粒耐火物粒子、または
(ii)少なくとも5.0%の低酸化マグネシアであって、150マイクロメートルより小さい(-100メッシュ)粒径を有する微粒耐火物粒子、または
(iii)少なくとも0.25%の酸化カルシウム添加剤および少なくとも5.0%の低酸化マグネシアであって、150マイクロメートルより小さい(-100メッシュ)粒径を有する微粒耐火物粒子、または
(iv)少なくとも0.25%の二酸化チタン
のうちの1つまたは複数と、を含み、
さらに、前記耐火組成物の総質量に対するパーセントで、
少なくとも80.0%のアルミナと、
3.0%までのシリカと、
0.5%までの酸化鉄(III)と、
0.5~5.0%の酸化カルシウムと、
少なくとも0.1%のマグネシアと、
1.0%までのアルカリ酸化物と、
15.0%までの二酸化チタンと、
を含む、耐火組成物。
【請求項2】
前記耐火組成物の総質量に対するパーセントで、
少なくとも50.0%の粗粒耐火物粒子と、
少なくとも25.0%の低酸化マグネシアの微粒耐火物粒子と、を含む、請求項1に記載の耐火組成物。
【請求項3】
前記耐火組成物の総質量に対するパーセントで、0.25%~15.0%の二酸化チタンを含む、請求項1に記載の耐火組成物。
【請求項4】
前記耐火組成物の総質量に対するパーセントで、90.0%~99.0%の合計されたアルミナおよびチタン二酸化物を含む、請求項1に記載の耐火組成物。
【請求項5】
前記耐火組成物の総質量に対するパーセントで、25.0%~55.0%の低酸化マグネシアの、微粒耐火物粒子を含む、請求項1に記載の耐火組成物。
【請求項6】
前記耐火組成物の総質量に対するパーセントで、少なくとも80.0%のアルミナ粒子を含む、請求項1に記載の耐火組成物。
【請求項7】
前記耐火組成物の総質量に対するパーセントで、
少なくとも150マイクロメートル(+100メッシュ)の粒径を有する少なくとも20.0%の粗粒耐火物粒子であって、当該粗粒耐火物粒子は、アルミナ粒子、マグネシア粒子、アルミン酸マグネシウムスピネル粒子、ジルコニア粒子、もしくはドロマ粒子、またはそれらのいずれかの組み合わせを含み、
少なくとも0.25%の二酸化チタンと、
さらに、
(i)少なくとも1.5%の酸化カルシウム添加剤、または
(ii)少なくとも5.0%の低酸化マグネシアで、150マイクロメートルより小さい(-100メッシュ)粒径を有する微粒耐火物粒子、または
(iii)少なくとも0.25%の酸化カルシウム添加剤および少なくとも5.0%の低酸化マグネシアで、150マイクロメートルより小さい(-100メッシュ)粒径を有する微粒耐火物粒子、
のうちの1つまたは複数と、を含む、請求項1に記載の耐火組成物。
【請求項8】
溶融金属用容器の溶融接触表面の少なくとも一部に請求項1に記載の前記耐火組成物を形成することを含む溶融金属用容器において単回使用ワークライニングを形成するための方法であって、前記耐火組成物が、スプレー、吹き付け、ショットクリーチング、振動、キャスティング、こて塗り、もしくは前記耐火組成物から形成される予備成形された耐火物形状の配置、またはそれらのいずれかの組み合わせによって形成される、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の前記耐火組成物から形成される溶融金属用容器のための単回使用ワークライニングであって、
前記粗粒耐火物粒子を含む耐火物相と、
前記低酸化マグネシアの、微粒耐火物粒子を少なくとも部分的に置き換える鉄または鋼を含み、前記耐火物相の前記粗粒耐火物粒子を濡らし、かつ前記ワークライニングを浸潤する金属相と、を含む、ワークライニング。
【請求項10】
溶融金属用容器であって、
底および前記底から延びる側面と、
前記溶融金属用容器の前記底および前記側面の少なくとも一部の上に形成された、請求項
9に記載の前記単回使用のワークライニングと、を備える、溶融金属用容器。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
この背景技術の項に記載される情報は、必ずしも公認された従来技術とは限らない。
【0002】
鋳造などの冶金プロセスにおいて、溶融金属は、単位操作と単位操作との間を溶融金属用容器内に入れて運搬される。例えば、連続鋳造プロセスにおいて、溶鋼は、製鋼炉からレードルの中へと出湯される。レードルは、溶鋼をその中で製鋼炉から鋳造プラットフォームへ移動する運搬容器として機能する。鋳造プラットフォームでは、溶鋼はレードルからタンデッシュへと移される。タンデッシュは、連続した流れで鋳型の中に1つまたは複数のノズルを介して溶鋼を分配する計量装置として機能する。
【0003】
溶融金属用容器、例えばレードルおよびタンデッシュなどは、比較的高温で物理的に溶融金属を収容しないといけない。例えば製鋼プロセスでは1400℃(2552oF)以上であり、1500℃以上であり、さらに1600℃を上回る温度になることもある。そのため、溶融金属用容器は、溶融金属と容器シェルとの間を物理的にも化学的にも安定した溶融金属接触面を有する耐火材料でライニングしている。溶融シェルは、典型的には中実の鋼で作製されており、一旦溶融金属が接触した場合には過熱されやすく、また機械的強度低下しやすい。従来、溶融金属用容器における溶融物接触耐火物ライニングの組成は、容器内に収容される溶融金属に対して可能な限り化学的に不活性で、かつ物理的に安定であるように調合されている。
【0004】
多くの溶融金属や合金、特に溶銑および溶鋼は、大気中酸素(O2)などの酸素源と反応しやすい。溶鋼内の鉄は、酸素源と反応し酸化鉄を生成する。このことは、精錬後の輸送時や鋳造時に問題となり得る。つまり、溶銑および溶鋼内に形成された酸化鉄が鋳鉄および鋼材内で析出し酸化物介在物になり、それ故に清浄度を低下させるからである。この問題は、大気中酸素(O2)に対する溶融物接触耐火物ライニングの多孔性および浸透性によってさらに複雑になる可能性がある。例えば、大気中酸素(O2)は、溶融金属用容器内の溶融物接触耐火物ライニングを通して耐火物溶融物界面に向かって運搬される傾向があり、ここで鋼鉄や鋼中成分(例えば、炭素、ケイ素、クロム、マンガン、その他)が酸化されることが観察されている。
【0005】
様々な耐火物製品が、溶融金属用容器ライニングのために開発されてきた。それにもかかわらず、使用中に改善された耐酸化バリア特性を有する溶融金属用容器ライニング用に強化された耐火組成物および製品は、有益である。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に記載される発明は、溶融金属用容器における溶融物接触ライニング(すなわち、ワークライニング)としての使用中に耐酸化バリア特性を発揮する耐火組成物を得ることを目的とする。また、本明細書に記載される発明は、耐火組成物から形成される耐火物ワークライニングと、耐火物ライニングを有する溶融金属用容器、耐火物ライニング、および当該耐火物ライニングを備える溶融金属用容器の製造方法、ならびに冶金プロセスにおいて耐火物ライニングを備える溶融金属用容器の使用方法の提供も目的とする。耐火物ライニングは耐酸化バリア性を向上させることにより、例えば使用中の化学エッチング的に似た効果および/または耐火物ライニング中の多孔性-浸透効果と、エッチングおよび/または多孔性の耐火物ライニングの中への溶融金属の浸潤すること、そして耐火物ライニング内に浸潤された溶融金属をトラップすることを特徴とし、これらにより耐火物-金属複合バリア層を形成し、耐火物ライニングを通した酸素の移動を抑制または遮断することができる。
【0007】
例えば、溶融金属用容器におけるワークライニングを形成するための耐火組成物は、耐火組成物の総質量に対するパーセントで、少なくとも20.0%の粗粒耐火物粒子を含む。粗粒耐火物粒子は、少なくとも150マイクロメートル(+100メッシュ)の粒径を有する。粗粒耐火物粒子は、アルミナ粒子、マグネシア粒子、アルミン酸マグネシウムスピネル粒子、ジルコニア粒子またはドロマ粒子またはそのいずれかの組み合わせを含む。耐火組成物は、少なくとも0.25%の酸化カルシウム添加剤を、また場合によっては少なくとも1.5%の酸化カルシウム添加剤をさらに含む。あるいは、またはさらに加えて、耐火組成物は、少なくとも5.0%の低酸化マグネシアの、150マイクロメートルより小さい(-100メッシュ)粒径を有する微粒耐火物粒子をさらに含む。場合によっては、耐火組成物は、少なくとも0.25%の酸化カルシウム添加剤および少なくとも5.0%の低酸化マグネシアの、150マイクロメートルより小さい(-100メッシュ)粒径を有する微粒耐火物粒子をさらに含む。また、場合によっては、耐火組成物は、少なくとも0.25%の二酸化チタンをさらに含む。
【0008】
本明細書に記載の本発明の種々の特性および特徴は、添付の図を参照することによってより完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、付着したワークライニングスカルの4つの別々の区画を示す鋼溶鋼試験試料の断面の写真である。
【
図2A】
図2Aは、
図1に示した鋼溶鋼試験試料の第1の区画(0%TiO
2)の鋼スカル界面の走査電子顕微鏡画像である。
【
図2B】
図2Bは、
図1に示した鋼溶鋼試験試料の第1の区画(0%TiO
2)の鋼スカル界面の走査電子顕微鏡画像である。
【
図3A】
図3Aは、
図1に示した鋼溶鋼試験試料の第2の区画(3%TiO
2)の鋼スカル界面の走査電子顕微鏡画像である。
【
図3B】
図3Bは、
図1に示した鋼溶鋼試験試料の第2の区画(3%TiO
2)の鋼スカル界面の走査電子顕微鏡画像である。
【
図4A】
図4Aは、
図1に示した鋼溶鋼試験試料の第3の区画(6%TiO
2)の鋼スカル界面の走査電子顕微鏡画像である。
【
図4B】
図4Bは、
図1に示した鋼溶鋼試験試料の第3の区画(6%TiO
2)の鋼スカル界面の走査電子顕微鏡画像である。
【
図5A】
図5Aは、
図1に示した鋼溶鋼試験試料の第4の区画(9%TiO
2)の鋼スカル界面の走査電子顕微鏡画像である。
【
図5B】
図5Bは、
図1に示した鋼溶鋼試験試料の第4の区画(9%TiO
2)の鋼スカル界面の走査電子顕微鏡画像である。
【
図6A】
図6Aは、
図1に示した鋼溶鋼試験試料からのワークライニングスカルの第4の区画(9%TiO
2)の走査電子顕微鏡画像である。
【
図6B】
図6Bは、
図6Aに示した画像の一部を示す拡大された走査電子顕微鏡画像であり、またワークライニングスカルの拡大された部分の上で行われたエネルギー分散分光分析の結果も示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
前述の特性、特徴などを理解するために、以下に本発明を詳細に説明する。
【0011】
本明細書に記載の耐火組成物は、溶融金属用容器中で使用している間に、耐酸化バリア特性を有するワークライニングや耐火構造物を生成する。特許請求の範囲を含む本明細書に使用される「ワークライニング」は、溶融金属用容器に収容される溶融金属に接触する最も内側の耐火層を意味する。特許請求の範囲を含む本明細書に使用される「金属」は、金属および金属合金の両方を意味する。
【0012】
鋼の連続鋳造プロセスにおいて使用されるタンデッシュは、例えば少なくとも次の2つの層を有している。(1)タンデッシュの外側金属シェルに接触する永久的または半永久的な耐火物「パーマライニング」、もしくは、外側金属シェルとパーマライニングとの間に位置した断熱ファイバーボード;および(2)パーマライニングの上に形成された最も内側で溶融物接触耐火物である「ワークライニング」である。一般に、パーマライニングは、タンデッシュの外側金属シェル(または間に挟まれた断熱ファイバーボード)に直接隣接するライニング構造の中に、キャスタブル耐火組成物や、耐火煉瓦で構築され、モルタルで接合されていてもよい。一般に、ワークライニングは、パーマライニング上に形成された一体となった耐火物層であって、その形成には常用の方法を適用できる。例えば、スプレー、吹き付け、ショットクリーチング、振動(例えば、乾燥振動)、キャスティング(例えば、プレキャスティング)、こて塗りもしくはその他の手動の塗布、または耐火組成物から形成される予め成形された耐火物形状(例えば、耐火物ボードまたは壁パネル)を配置することであり、必ずしもこれらの方法に限定されない。いくつかの実施態様において、タンデッシュは、3つまたは4つの層を備える耐火構造物を有する。即ち、(1)パーマライニング(任意選択的に下層にファイバーボード断熱層をもってもよい);(2)1回の連続鋳造操業が完了後に金属スカル除去を容易にする分離層として機能するパーマライニング上に形成される中間部耐火物である「バックアップライニング」;および(3)バックアップライニングの上に形成されるワークライニングである。
【0013】
連続鋳造操業完了後、タンデッシュから排出されずに残留する鋼は、冷却され、および凝固してスカルを形成する可能性があり、このスカルはワークライニングに付着する。スカルは、「脱スカル」といわれる操作においてタンデッシュを反転することによって取り出すことができる。重力下ではスカルの質量により、下層にあるパーマライニングからワークライニングが分離する。これによりパーマライニングは、反転されたタンデッシュ内に残されたままになり、スカルと共に出てこない。次いで、パーマライニング上に新たなワークライニングを形成するか、または新たなバックアップライニングおよび新たなワークライニングの両方を形成することによって、タンデッシュを別の連続鋳造操業のために再利用することができる。
【0014】
本明細書に記載の耐火組成物は、化学成分組成と粒径で規定され、溶融金属用容器内に収容される溶融金属によって浸潤される溶融金属用容器内のワークライニングになる。浸潤する溶融金属は、耐火組成物内の孔の中へと浸透して、耐火組成物内の粗粒耐火物粒子を濡らし、ワークライニングの表面下ワークライニングで捕捉される。孔の中への浸透、粗粒耐火物粒子の濡れ、および浸潤する溶融金属の捕捉は、使用中に耐火物-金属複合耐酸化バリアを形成し、耐火物ライニングを通した酸素の移動を抑制または遮断する。理論的に解明されている訳ではないが、溶融金属の浸潤や捕捉は、使用中の化学的エッチングに似た効果により加速され、溶融物と耐火物の界面にて、局所的に生成した酸化鉄が、耐火組成物の構成成分と化学的に反応してワークライニング相対的に低融点の化合物を生成し、それがワークライニング外に溶出し、溶融金属とエッチング的置換されると考えられる。
【0015】
耐火物ライニングを有するタンデッシュから行う連続鋳造などの操作において、大気中の酸素(O2)および水分(H2O)が、ワークライニングを含む耐火物ライニングを通して周囲環境から拡散されるか、またはそうでなければ運搬され、そしてワークライニングの表面の耐火物-溶融物界面に到達する可能性がある。この界面にて、酸素および水分は、溶鉄と反応して酸化し、酸化鉄、特に低炭素鋼では酸化鉄(II)(FeO)を生成する可能性がある。より高度に合金化した鋼では、酸素および水分は、合金元素、例えば炭素、ケイ素、クロム、マンガンなどとも反応して酸化させる可能性がある。上述のように、連続鋳造のタンデッシュにおけるFeOなどの酸化物の生成は問題がある。即ち、酸化物が鋳造された鋼製品内の非金属介在物として析出する可能性があり、これが望ましくないことに合金鋼の清浄度を低下させるからである。したがって、タンデッシュおよびその他の溶融金属用容器内の耐火物ワークライニングを通した酸素および水分の移動を遮断、またはそうでなければ抑制することが望ましい。
【0016】
FeOなどの酸化鉄は、溶融金属用容器における耐火物ライニング内の構成成分酸化物とも反応する可能性がある。例えば、酸化鉄は、耐火物ライニング内に存在する(例えば、結合剤材料として)、酸化カルシウムまたは酸化カルシウム含有材料(例えば、石灰、粘土、セメント、ソーダ石灰ガラスなど)と反応して、容器内に収容される溶融金属の温度より低い融点温度を有する化合物を生成する可能性がある(例えば、1400℃より低いものであり、この温度は多くの合金鋼の融点温度より低い。)。同様に、酸化鉄は、その他の耐火物構成成分(例えば、シリカおよびアルミナ)と反応して、相対的に低融点の化合物を生成する可能性がある。加えて、耐火物ライニングを形成する構成成分粒子の相対的サイズは、酸化鉄と構成成分酸化物との間の反応速度に影響を及ぼす可能性がある。一般に、構成成分耐火酸化物粒子(例えば、酸化カルシウム(カルシア)、アルミナ、シリカ、ムライトまたは類似の低酸化マグネシアを含有する粒子)がより小さいほど、これらの耐火酸化物はより速く溶融酸化鉄と反応し、そして低融点の化合物を生成する。
【0017】
使用中に生成される酸化鉄との限定的反応を促進するように耐火組成物の化学組成および粒径分布を規定することにより、耐火組成物は部分的かつ限定的に分解するようにできる。つまり、耐火組成物内の酸化カルシウム含有結合剤材料および微粒耐火物粒子に対する酸化鉄の化学エッチング的的効果によってもたらされるからである。しかし、粗粒耐火物粒子は、一般に、鉄酸化反応がこれらの粒子の完全性またはサイズに実質的に影響を及ぼさないほど十分に大きい。効率的にエッチングされた材料は、使用中に溶融金属と置き換えられ、これが残りの粗粒耐火物粒子を濡らし、かつ浸潤して、粗粒耐火物粒子を結合する金属相を形成する。したがって、粗粒耐火物粒子は、耐火物-金属複合材料内に耐火物相を形成する。耐火物設計へのこのアプローチ、すなわち溶融金属用容器における溶融物接触耐火層の中への溶融金属浸透の促進およびその部分的な破壊は、完全に直観に反しており、および本分野における従来の知識に反する。孔の中への溶融金属浸透の促進および化学エッチング的効果、ならびに金属浸潤が、耐火物ワークライニングの構造的完全性を損ない、および金属生成作業において望ましくない結果を生じることが予想されることになるため、これはそのようになる。従来の知識にも関わらず、このアプローチは、予想外に、耐火物ライニングを通した酸素運搬を減少または遮断する耐火物-金属複合耐酸化バリアを使用中に生成する。
【0018】
本明細書に記載の使用中に耐火組成物から生成される耐酸化バリア層は、溶融金属用容器、特に鋼の連続鋳造用のタンデッシュにおけるワークライニングとして使用することができる。溶融金属用容器用のワークライニングは、耐火物相および金属相を含むことができる。耐火物相は、粗粒耐火物粒子を含むことができる。粗粒耐火物粒子は、アルミナ粒子、マグネシア粒子、アルミン酸マグネシウムスピネル粒子、ジルコニア粒子、もしくはドロマ粒子またはそのいずれかの組み合わせを含むことができる。金属相は、耐火物相の粗粒耐火物粒子を濡らし、かつ浸潤する溶融金属(例えば、鉄または鋼)を含むことができる。金属相は、耐火物相に浸透し、この二相は耐火物-金属複合材料を共に形成する。ワークライニングは、耐火組成物の総質量に対するパーセントで、少なくとも20%の粗粒耐火物粒子を含む耐火組成物から形成することができる。また、耐火組成物は:(i)少なくとも1.5%の酸化カルシウム添加剤;または(ii)少なくとも5.0%の低酸化マグネシア、150マイクロメートルより小さい粒径(-100メッシュ)を有する微粒耐火物粒子;または(iii)少なくとも0.25%の酸化カルシウム添加剤および少なくとも5.0%の低酸化マグネシア、150マイクロメートルより小さい(-100メッシュ)粒径を有する微粒耐火物粒子;または(iv)少なくとも0.25%の二酸化チタン;のうちの1つまたは複数も含むことができる。
【0019】
金属相を形成する金属は、耐火組成物内の孔および耐火物相を形成する粗粒耐火物粒子の間の粒間空間に浸潤する。これらの粒間空間は、形成された耐火組成物内の酸化カルシウム含有結合剤材料もしくは微粒耐火物粒子または両方に対する酸化鉄上の化学エッチング的効果により使用中に形成される。結果としてもたらされる耐火物-金属複合バリア層は、孔および粒間空間が粗粒耐火物粒子の間に捕捉される浸潤された金属で満たされるので、ワークライニングを通した酸素運搬を抑制または遮断する。理論的に解明されてはいないが、金属相を形成する捕捉された金属は、使用している間にワークライニング内で停滞相になると考えられる(すなわち、溶融金属用容器内でのバルク流動もなければ、溶融金属のバルク部との混合もない)。孔および粒間空間内の金属の捕捉や停滞は、ワークライニングを通した酸素および水分の拡散や運搬を、遮断または抑制し、これにより溶融金属用容器内の溶融金属の酸素汚染を予防または減少する。
【0020】
耐火組成物、特に不定形吹付材、注入材、ショットクリート、キャスタブル、や乾燥振動耐火組成物であって、溶融金属用容器のワークライニングとして使用中に形成される耐火組成物は、粗粒耐火物粒子および微粒耐火物粒子の両方を含むことができる。特許請求の範囲を含む本明細書で使用される、用語「粗粒耐火物粒子」は、少なくとも150マイクロメートル(すなわち、150マイクロメートル以上)の粒径を有する粒子を意味し、および用語「微粒耐火物粒子」は、150マイクロメートルより小さい粒径を有する粒子を意味する。自由流動性粉末の粒径は、ASTM C 92-95(2015):Standard Test Methods for Sieve Analysis and Water Content of Refractory Materials(参考文献として本明細書に組み込まれる)に従って乾燥篩分け分析を使用して測定することができ、また粗粒耐火物粒子は、Tyler Standardの100メッシュ(U.S.Standard Sieve Size No.100)上に保持され、そして微粒耐火物粒子は、Tyler Standardの100メッシュ(U.S.Standard Sieve Size No.100)を通過する。本明細書において特定される全てのメッシュ値は、特に明記しない限りTyler Standardとして表現される。耐火組成物内の(例えば、形成して養生を済ませた、もしくは溶融金属用容器から取り除かれた使用済みのワークライニング内の)、または別の方法で形成された耐火製品における構成成分粒子の粒径は、ISO 13322-1:2014:Particle size analysis--Image analysis methods--Part 1:Static image analysis methods(参考文献として本明細書に組み込まれる)に従って画像粒子解析による試料平均として測定することができる。
【0021】
溶融金属用容器内にワークライニングを形成するための耐火組成物は、耐火組成物の総質量に対するパーセントで、少なくとも150マイクロメートル(+100メッシュ)の粒径を有する粗粒耐火物粒子を少なくとも20.0%含むことができ、粗粒耐火物粒子は、アルミナ粒子、マグネシア粒子、アルミン酸マグネシウムスピネル粒子、ジルコニア粒子、もしくはドロマ粒子、またはそのいずれかの組み合わせを含む。耐火組成物は:(i)少なくとも1.5%の酸化カルシウム添加剤;または(ii)少なくとも5.0%の低酸化マグネシア、150マイクロメートルより小さい(-100メッシュ)粒径を有する微粒耐火物粒子;または(iii)少なくとも0.25%の酸化カルシウム添加剤および少なくとも5.0%の低酸化マグネシア、150マイクロメートルより小さい(-100メッシュ)粒径を有する微粒耐火物粒子;または(iv)少なくとも0.25%の二酸化チタン;のうちの1つまたは複数をさらに含むことができる。特許請求の範囲を含む本明細書において、耐火組成物内の酸化物成分の質量百分率が特定されているとき、質量百分率は、ISO 12677:2011:Chemical analysis of refractory products by X-ray fluorescence(XRF)--Fused cast-bead method(参考文献として本明細書に組み込まれる)に従って行われる蛍光X線分析(XRF)によって測定される。耐火組成物内の粒子成分の特定された質量百分率は、乾燥質量に基づき(すなわち、添加水なし)、また乾燥計量操作によって測定される。
【0022】
理論によって束縛されるものではないが、調合における少なくとも0.5%の酸化カルシウム添加剤(CaO)の最小量、または少なくとも5.0%の低酸化マグネシアもしくは微粒耐火物粒子の最小量、もしくはその両方は、形成された耐火材料内の孔の内側を含む、耐火物-金属界面にて使用中に形成する酸化鉄と反応すると考えられる。使用中に形成される酸化鉄は、粗粒耐火物粒子の間の粒間材料を化学エッチングする。溶融金属(例えば、溶銑または溶鋼)が耐火組成物に初めに接触するとき、溶融金属用容器内に形成されるように、溶融金属中の鉄は、形成された耐火組成物を通して運搬された酸素と化学的に反応し、使用中に酸化鉄を生成し、またこれらの酸化鉄は、形成された耐火組成物内に存在する低酸化マグネシア、微粒耐火物粒子、もしくは粒間酸化カルシウム、またはその両方の少なくとも一部と化学的に反応する。化学反応は、少なくとも部分的に、形成された耐火組成物から溶融して出る低融点化合物を生成し、かつ最初の孔に加えて粗粒耐火物粒子の間に粒間空間を形成する。上述のように、結果としてもたらされる粒間空間および最初の孔は、形成された耐火組成物の中へと浸透する溶融金属で浸潤され、捕捉され、かつ停滞して、使用中に耐火物金属複合物耐酸化バリア層を形成する。
【0023】
耐火組成物は、耐火組成物の総質量に対するパーセントで、少なくとも20.0%の粗粒耐火物粒子またはその範囲中に包含される任意の範囲、例えば少なくとも25.0%、少なくとも30.0%、少なくとも35.0%、少なくとも40.0%、少なくとも45.0%、少なくとも50.0%、少なくとも55.0%、少なくとも60.0%、少なくとも65.0%、少なくとも70.0%、少なくとも75.0%、95.0%まで、90.0%まで、85.0%まで、80.0%まで、75.0%まで、70.0%まで、20.0~95.0%、45.0~95.0%、45.0~85.0%、45.0~75.0%、50.0~75.0%、50.0~65.0%、55.0~70.0%、50.0~60.0%または60.0~75.0%などの範囲で含むことができる。粗粒耐火物粒子は、冶金的使用条件下で安定である耐火物材料からなることでき、および鉄の酸化反応に対して相対的に不活性であることができる。粗粒耐火物粒子は、安定な酸化物粒子、例えばアルミナ粒子、マグネシア粒子、アルミン酸マグネシウムスピネル粒子、ジルコニア粒子、もしくはドロマ粒子、またはそのいずれかの組み合わせなどを含むことができる。適切な粗粒(+100メッシュ)耐火物粒子の例としては、板状アルミナ、仮焼アルミナ、溶融アルミナ(例えば、褐色溶融アルミナ)、死焼マグネサイト、溶融マグネサイト、焼結アルミン酸マグネシウムスピネル、溶融アルミン酸マグネシウムスピネル、溶融二酸化ジルコニウム、死焼ドロマイト、もしくは溶融ドロマ、またはそのいずれかの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの場合には、粗粒耐火物粒子は、石灰(酸化カルシウム)、橄欖石、およびシリカを実質的に含まない。いくつかの場合には、粗粒耐火物粒子は、シリカを本質的に含まない。いくつかの場合には、組成物は、シリカを本質的に含まない。特許請求の範囲を含む本明細書に使用される用語「実質的に含まない」は、たとえあったとしても、それらの成分が偶発的な不純物にすぎないレベルにて存在することを意味する。
【0024】
いくつかの場合には、耐火組成物は、少なくとも150マイクロメートル(+100メッシュ)、少なくとも180マイクロメートル(+80メッシュ)、少なくとも210マイクロメートル(+65メッシュ)、少なくとも250マイクロメートル(+60メッシュ)、少なくとも300マイクロメートル(+48メッシュ)、少なくとも350マイクロメートル(+42メッシュ)、少なくとも420マイクロメートル(+35メッシュ)、少なくとも500マイクロメートル(+32メッシュ)、少なくとも600マイクロメートル(+28メッシュ)、少なくとも700マイクロメートル(+24メッシュ)、少なくとも1000マイクロメートル(+16メッシュ)、少なくとも1.2ミリメートル(+14メッシュ)、少なくとも1.4ミリメートル(+12メッシュ)、少なくとも1.7ミリメートル(+10メッシュ)または少なくとも2.0ミリメートル(+9メッシュ)の粒径を有する粗粒耐火物粒子(例えば、アルミナ粒子またはマグネシア粒子)を含むことができる。いくつかの場合には、耐火組成物は、150マイクロメートル~4.8ミリメートル(+100メッシュ;-4メッシュ)の範囲またはその中に包含される任意のサブレンジ、例えば150~2000マイクロメートル(+100メッシュ;-9メッシュ)、150~1000マイクロメートル(+100メッシュ;-16メッシュ)、150~500マイクロメートル(+100メッシュ;-32メッシュ)、150~600マイクロメートル(+100メッシュ;-28メッシュ)、または300~600マイクロメートル(+48;-28メッシュ)などにおける粒径を有する粗粒耐火物粒子(例えば、アルミナ粒子またはマグネシア粒子)を含むことができる。
【0025】
耐火組成物は、耐火組成物の総質量に対するパーセントで、少なくとも5.0%の低酸化マグネシア、微粒耐火物粒子を含むことができ、またはその中に包含される任意のサブレンジ、例えば少なくとも10.0%、少なくとも15.0%、少なくとも25.0%、少なくとも30%、少なくとも35.0%、少なくとも40%、少なくとも45.0%、少なくとも50.0%、60.0%まで、55.0%まで、50.0%まで、45.0%まで、40.0%まで、35.0%まで、5.0~55.0%、15.0~55.0%、25.0~55.0%、25.0~50.0%、25.0~45.0%、25.0~40.0%、25.0~35.0%、30.0~45.0%または30.0~40.0%などを含むことができる。低酸化マグネシア、微粒耐火物粒子は、冶金使用条件下で酸化鉄と反応性であり、かつ低融点化合物を生成する耐火材料からなることができる。マグネシアおよび橄欖石などの高酸化マグネシアは、冶金使用条件下で酸化鉄と反応することになるが、結果としてもたらされる反応生成物は、相対的に高い融点温度(例えば、大部分の鋼の融点温度より高い1600℃よりも高い融点温度)を有し、また溶融金属に接触するときに感知できるほどは溶解しないことになる。
【0026】
例えば、マグネシアは、酸化鉄と反応して1300℃から2400℃まで、および2400℃を超える温度にて固体状態のマグネシオウスタイトを生成することになる。耐火組成物における高レベルのマグネシアを含む微粒耐火物粒子の存在は、形成された耐火組成物の表面上の溶融物-耐火物界面にてマグネシオウスタイト外皮の形成をもたらすことができる。形成された耐火組成物の表面上で形成されたマグネシオウスタイト外皮は、溶融金属が耐火組成物の中へ浸透することを遮断することができ、したがって、化学エッチング的効果を予防すること、および粗粒耐火物粒子の間の溶融金属の浸潤を止めることができる。
【0027】
したがって、いくつかの場合には、総質量で耐火組成物の少なくとも5.0%は、低酸化マグネシア、微粒耐火物粒子であるとよい。ここで、「低酸化マグネシア」は、酸化物組成物の総質量で50%より少ないマグネシアを含む酸化物を意味する。例えば、死焼マグネサイトの形態でのマグネシア粒子は、質量で少なくとも70%酸化マグネシアを含有し、残部は偶発的な不純物であり、また等級および鉱物学的出典にもよるが、99.999質量%(5N)酸化マグネシアまで含有することができる。同様に、橄欖石粒子およびドロマ粒子の大部分の等級は、約60質量%MgOと同等のものを含む。したがって、マグネシア粒子、橄欖石粒子およびドロマ粒子は、低酸化マグネシア粒子ではない。一方で、アルミン酸マグネシウムスピネル粒子(MgAl2O4/MgO・Al2O3)は、マグネシアリッチな等級においてでさえ40%までのマグネシア(例えば、マグネシアリッチなスピネルMR66等級は、35%のマグネシアを含む)しか一般には含まない。したがって、アルミン酸マグネシウムスピネル粒子は、低酸化マグネシア粒子である。
【0028】
いくつかの場合には、高酸化マグネシア、微粒耐火物粒子(すなわち、酸化物組成物の総質量で50%以上のマグネシアを含む微粒耐火物粒子、例えば、マグネシア粒子、橄欖石粒子、またはドロマ粒子)の量は、耐火組成物内では最小限にされるべきである。例えば、いくつかの場合には、高酸化マグネシア、微粒耐火物粒子は、耐火組成物内に75.0質量%まで、50.0質量%まで、25.0質量%まで、15.0質量%まで、10.0%質量まで、または5.0質量%まで存在することができる。いくつかの場合には、高酸化マグネシア、微粒耐火物粒子は、偶発的な不純物を超えないレベルで耐火組成物内に存在してもよい。また、いくつかの場合には、耐火組成物内に存在する高酸化マグネシア、微粒耐火物粒子の量は、もしあっても質量に基づく低酸化マグネシア、微粒耐火物粒子の量を超えない。
【0029】
低酸化マグネシア、微粒耐火物粒子は、酸化物粒子、例えばアルミナ粒子、シリカ粒子、ムライト粒子、酸化カルシウム粒子、二酸化チタン粒子、アルミン酸マグネシウムスピネル粒子、またはそのいずれかの組み合わせなどを含むことができる。耐火組成物に適切な微粒(-100メッシュ)耐火物粒子の例としては、板状アルミナ、仮焼アルミナ、溶融アルミナ(例えば、褐色溶融アルミナ)、反応性アルミナ、水和性アルミナ(例えば、Alphabond製品、Almatis GmbHから入手可能)、ムライト、シャモット、ケイ酸アルミニウム(例えば、カヤナイト、紅柱石、シリマナイト)、耐火粘土、フライアッシュ、焼成ボーキサイト、鋳物砂、石英、ヒュームド(発熱性)シリカ、沈降(非晶質)シリカ、シリカフューム(マイクロシリカ)、生石灰(酸化カルシウム)、粗二酸化チタン(例えば、粒状天然または合成ルチル)、アナターゼ、イルメナイト、精製されたTiO2粉末(例えば、顔料等級TiO2粉末)、焼結スピネル、もしくは溶融スピネル、またはそのいずれかの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
いくつかの場合において、耐火組成物は、低マグネシアの、150マイクロメートルより小さい(-100メッシュ)、125マイクロメートルより小さい(-115メッシュ)、105マイクロメートルより小さい(-150メッシュ)、88マイクロメートルより小さい(-170メッシュ)、74マイクロメートルより小さい(-200メッシュ)、63マイクロメートルより小さい(-250メッシュ)、53マイクロメートルより小さい(-270メッシュ)、44マイクロメートルより小さい(-325メッシュ)、または37マイクロメートルより小さい(-400メッシュ)粒径を有する微粒耐火物粒子(例えば、アルミナ粒子)を含むことができる。
【0031】
耐火組成物は、耐火組成物の総質量に対するパーセントで、少なくとも0.25%の「酸化カルシウム添加剤」を含むことができ、またはその中に包含される任意のサブレンジ、例えば少なくとも0.5%、少なくとも0.7%、少なくとも0.9%、少なくとも1.0%、少なくとも1.5%、少なくとも2.0%、少なくとも2.5%、少なくとも3.0%、20.0%まで、15.0%まで、12.0%まで、10.0%まで、5.0%まで、3.0%まで、2.5%まで、0.25~15.0%、0.5~15.0%、0.5~10.0%、0.5~9.9%、0.5~5.0%、0.5~3.0%、0.5~2.5%、1.0~10.0%、1.0~5.0%、または1.0~3.0%などを含むことができる。特許請求の範囲を含む本明細書に使用される、用語「酸化カルシウム添加剤」は、粗粒耐火物粒子以外の供与源からの組成物内に存在する酸化カルシウムを意味する。粗粒耐火物粒子のいくつかの等級は、偶発的な不純物として、または実質的構成成分として酸化カルシウム(カルシア)またはその他のカルシウム含有酸化物を含む。例えば、死焼マグネサイトのいくつかの等級は、主に酸化マグネシア粒子内に散在された酸化カルシウムおよびその他の偶発的な不純物を3重量%まで含む可能性がある。同様に、ドロマ粒子のいくつかの等級は、70重量%までの酸化カルシウムを含む可能性がある。粗粒耐火物粒子からの耐火組成物内に存在する任意の酸化カルシウムは、「酸化カルシウム添加剤」に寄与しない。むしろ「酸化カルシウム添加剤」は、微粒耐火物粒子、結合剤成分、もしくはその他の添加剤、またはそのいずれかの組み合わせからの耐火組成物内に存在する。
【0032】
耐火組成物が、例えばタンデッシュ内のワークライニングを形成するためなどのように溶融金属用容器に形成されるとき、微粒耐火物粒子、結合剤成分、またはその他の添加剤の中に存在する酸化カルシウム添加剤は、粗粒耐火物粒子間の粒間空間に局在化され、ここで酸化カルシウム添加剤は酸化鉄と反応するために利用可能であり、そして形成された耐火組成物から溶融して出、かつ溶融金属によって置き換えられる低融点化合物を形成する。対照的に、マグネシアまたはドロマ粒子などの粗粒耐火物粒子内に存在する非酸化カルシウム添加剤は、粒子におけるマグネシアまたはその他の主な耐火酸化物成分によって酸化鉄との反応から保護される場合がある。
【0033】
したがって、耐火組成物内の少なくとも0.25%酸化カルシウム添加剤は、化学エッチング的効果、粗粒耐火物粒子を濡らすこと、および形成された耐火組成物の中への溶融金属の浸潤を促進するために有用である場合がある。酸化カルシウム添加剤は、走査電子顕微鏡、エネルギー分散分光法(SEM-EDS)と組み合わせてX線回折(XRD)解析を使用して耐火組成物内の非酸化カルシウム添加剤から区別することができる。酸化カルシウム添加剤は、酸化カルシウム含有微粒耐火物粒子、結合剤材料、もしくは添加剤、またはそのいずれかの組み合わせの形態で耐火組成物内に提供することができる。例えば、酸化カルシウムは、石灰(例えば、水和(消)石灰、生石灰(酸化カルシウム)、溶融珪酸二カルシウム、ビーライト、ヘキサアルミン酸カルシウム(例えば、ヒボナイト、SLA-92(Almatis GmbHから入手可能)、Bonite(Almatis GmbHから入手可能)、カルシウムベントナイト、カルシウムアルミナセメント(例えば、SECAR(商標登録)71セメント)、Portlandセメント、粘土(例えば、ボールクレー)、もしくはソーダ石灰ガラス、またはそのいずれかの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない供与源から耐火組成物内に提供することができる。
【0034】
耐火組成物は、耐火組成物の総質量に対するパーセントで、少なくとも0.25%二酸化チタンを含むことができ、またはその中に包含される任意のサブレンジ、例えば少なくとも0.5%、少なくとも1.0%、少なくとも2.0%、少なくとも2.5%、少なくとも3.0%、少なくとも5.0%、少なくとも7.5%、少なくとも8%、15.0%まで、12.0%まで、10.0%まで、5%まで、3%まで、0.1~15.0%、0.25~15.0%、1.0~15.0%、1.0~12.0%、1.0~10.0%、2.5~15.0%、2.5~12.0%、2.5~10.0%、3.0~15.0%、3.0~12.0%、0.1~9.5%、3.0~10.0%または3.0~9.0%などを含むことができる。微粒耐火物粒子または添加剤としての二酸化チタン含有成分(例えば、ルチルまたは顔料等級TiO2粉末)の添加は、粗粒耐火物粒子(例えば、粗粒アルミナ粒子または粗粒マグネシア粒子)に対する溶鋼の濡れ性を増加させることができる。したがって、理論によって束縛されることは意図しないが、耐火組成物内の二酸化チタンの存在は、孔およびエッチングされた粒間空間を通して、形成された耐火組成物の中への溶鋼の浸透を増加させ、したがって、粗粒耐火物粒子の中への金属浸潤の均一性、深度、および速度を増加させ、かつ使用中の耐火物-金属複合耐酸化バリア層の形成の均一性、深度、および速度を増加させると考えられる。
【0035】
二酸化チタンは、耐火組成物内に存在するときに、天然または合成のルチル粒子、アナターゼ粒子、イルメナイト粒子、顔料等級TiO2粉末またはその他のTiO2含有粒子供与源、いくつかの場合には少なくとも部分的に微粒粒子形態(すなわち、150マイクロメートルより小さいより小さい(-100メッシュ)粒径を有する)として添加することができる。いくつかの場合には、二酸化チタンは、その他の耐火物粒子から耐火組成物内に提供することができる。例えば、褐色溶融アルミナは、Al2O3粒子内に散在する約2~4質量%のTiO2を含むことができる。したがって、粗粒または微粒褐色溶融アルミナ粒子は、単独で、または天然もしくは合成のルチル粒子、アナターゼ粒子、イルメナイト粒子、顔料等級TiO2粉末、またはその他のTiO2含有粒子供与源などのさらなる二酸化チタンを提供する成分と組み合わせて、場合によっては、少なくとも部分的に微粒粒子として、二酸化チタンを耐火組成物に供給するために使用することができる。
【0036】
いくつかの場合には、耐火組成物は、耐火組成物の総質量に対するパーセントで、25%までのシリカを含むことができ、またはその中に包含される任意のサブレンジ、例えば15%まで、10%まで、5%まで、3.0%までのシリカ、2.5%まで、2.0%まで、1.5%まで、1.1%まで、1.0%まで、0.5%まで、0.1%まで、0.1~3.0%、または0.1~2.5%などを含むことができる。酸化鉄がシリカと反応し、そして冶金使用条件下で低融点化合物を形成することができるため、耐火組成物内に存在するシリカを、シリカ含有微粒耐火物粒子、結合剤材料、もしくは添加剤、またはそのいずれかの組み合わせの形態で提供することができる。
【0037】
耐火組成物は、加えてモノリン酸アルミニウム(MAP)結合剤、水和性アルミナ結合剤(例えば、Alphabond製品、Almatis GmbHから入手可能)、有機結合剤(例えば、フェノール、フルフラール、有機樹脂、またはこれに類するもの)、有機繊維(例えば、セルロース系繊維)、分散剤(例えば、リグノスルホナートまたはリグノスルホナート塩)、可塑剤(例えば、ボールクレー)、消泡剤、脱気剤、遅延剤(例えば、クエン酸またはホウ酸)、エプソン塩、酸化ホウ素、金属(例えば、アルミニウム粒子)、炭素(例えば、カーボンブラックまたはグラファイト)、またはそのいずれかの組み合わせなどのカルシウムを含まない結合剤を含むことができる。また、耐火組成物は、非酸化物耐火物またはその他の非酸化物セラミック成分、例えばカーバイド(例えば、炭化ケイ素、炭化アルミニウム、炭化チタン、セメンタイト、またはこれに類するもの)、ニトリド(例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、窒化ホウ素、またはこれに類するもの)、硫化物、ケイ化物、アルミナイド、もしくはホウ化物、またはそのいずれかの組み合わせなどを任意選択的に含むこともできる。耐火組成物はこれらの任意選択的な成分のいずれかの任意の組み合わせを含むことができる一方で、また、耐火組成物は、これらの成分のいずれかを本質的に含まない、またはこれらの成分の任意の組み合わせを本質的に含まないこともできる。
【0038】
耐火組成物は、耐火組成物の総質量に対するパーセントで、少なくとも20.0%の粗粒耐火物粒子および少なくとも5.0%の低酸化マグネシアの、微粒耐火物粒子の任意の組み合わせを含むことができる。例えば、耐火組成物は、少なくとも50.0%の粗粒耐火物粒子および少なくとも25.0%の微粒耐火物粒子;または少なくとも55.0%の粗粒耐火物粒子および少なくとも30.0%の微粒耐火物粒子;45.0~75.0%の粗粒耐火物粒子および25.0~55.0%の微粒耐火物粒子;または55.0~70.0%の粗粒耐火物粒子および30.0~45.0%の微粒耐火物粒子;または粗粒および微粒耐火物粒子の任意のその他の包含された組み合わせを含むことができる。
【0039】
耐火組成物内の粗粒耐火物粒子および微粒耐火物粒子の合わせた量は、耐火組成物の総質量の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%を含むことができる。耐火組成物内の結合剤およびその他の添加剤の合わせた量は、耐火組成物の総質量の20%未満、15%未満、10%未満、または5%未満を含むことができる。
【0040】
いくつかの場合には、耐火組成物は、耐火組成物の総質量に対するパーセントで(XRF解析によって測定したとき):少なくとも80.0%のアルミナ;25.0%までのシリカ;3.0%までの酸化鉄;少なくとも0.25%の酸化カルシウム;少なくとも0.1%のマグネシア;3.0%までのアルカリ酸化物;および15.0%までの二酸化チタンを含むことができる。耐火組成物は、少なくとも80.0%のアルミナを含むことができ、またはその中に包含される任意のサブレンジ、例えば少なくとも85.0%、少なくとも90.0%、少なくとも95.0%、80.0~99.0%、80.0~95.0%、85.0~95.0%、90.0~99.0%または90.0~95.0%などを含むことができる。耐火組成物は、25.0%までのシリカを含むことができ、またはその中に包含される任意のサブレンジ、例えば3.0%まで、2.5%まで、2.0%まで、1.5%まで、1.1%まで、1.0%まで、0.5%まで、0.1%まで、0.1~3.0%または0.1~2.5%などを含むことができる。耐火組成物は、3.0%までの酸化鉄、またはその中に包含される任意のサブレンジ、例えば2.0%まで、1.0%まで、0.5%まで、0.3%まで、0.2%まで、0.1%まで、または0.1~0.5%などを含むことができる。耐火組成物は、3.0%までのアルカリ酸化物、またはその中に包含される任意のサブレンジ、例えば2.0%まで、1.0%まで、0.9%まで、0.5%まで、0.2%まで、または0.1%までなどを含むことができる。いくつかの場合には、耐火組成物は、本質的に酸化鉄を含まないようにすることができ、添加された酸化鉄を含まないようにすることができ、または2.0重量%以下、1.0重量%以下、0.5重量%以下、0.3重量%以下、0.2重量%以下、または0.1重量%以下の酸化鉄含有量を有してもよい。
【0041】
上述のように、耐火組成物は、耐火組成物の総質量に対するパーセントで(XRFおよび/またはSEM-EDS解析によって測定したとき)、少なくとも0.25%の酸化カルシウムを含むことができ、またはその中に包含される任意のサブレンジ、例えば少なくとも0.7%、少なくとも0.9%、少なくとも1.0%、少なくとも1.5%、少なくとも2.0%、少なくとも2.5%、少なくとも3.0%、0.5~15.0%、0.5~10.0%、0.5~9.9%、0.5~5.0%、0.5~3.0%、0.5~2.5%、1.0~5.0%、または1.0~3.0%などを含むことができる。いくつかの場合には、耐火組成物は、2.3%より少ない酸化カルシウム、または2.5%より多い酸化カルシウムを含むことができる。いくつかの場合には、耐火組成物は、2.1%より少ない酸化カルシウム、または2.7%より多い酸化カルシウムを含むことができる。いくつかの場合には、耐火組成物は、2.0%より少ない酸化カルシウム、または2.8%より多い酸化カルシウムを含むことができる。いくつかの場合には、耐火組成物は、1.9%より少ない酸化カルシウム、または2.9%より多い酸化カルシウムを含むことができる。
【0042】
耐火組成物は、少なくとも0.1%マグネシアを含むことができ、またはその中に包含される任意のサブレンジ、例えば少なくとも1.0%、少なくとも2.0%、少なくとも5.0%、少なくとも10.0%、少なくとも15.0%、75.0%まで、50.0%まで、25.0%まで、20.0%まで、15.0%まで、10.0%まで、7.0%まで、5.0%まで、1.0%まで、0.5%まで、0.1~15.0%、または5.0~15.0%などを含むことができる。いくつかの場合には、耐火組成物は、5.9%より少ないマグネシア、または6.1%より多いマグネシアを含むことができる。いくつかの場合には、耐火組成物は、5.5%より少ないマグネシア、または6.5%より多いマグネシアを含むことができる。いくつかの場合には、耐火組成物は、5.0%より少ないマグネシアまたは7.0%より多いマグネシアを含むことができる。
【0043】
上述のように、いくつかの場合には、耐火組成物は、耐火組成物の総質量に対するパーセントで(XRFおよび/またはSEM-EDS解析によって測定したとき)、少なくとも0.25%および15.0%までの二酸化チタンを含むことができ、またはその中に包含される任意のサブレンジ、例えば12.0%まで、10.0%まで、5%まで、3%まで、少なくとも0.5%、少なくとも1.0%、少なくとも2.0%、少なくとも2.5%、少なくとも3.0%、少なくとも5.0%、0.1~15.0%、0.25~15.0%、1.0~15.0%、1.0~12.0%、1.0~10.0%、2.5~15.0%、2.5~12.0%、2.5~10.0%、3.0~15.0%、3.0~12.0%、0.1~9.5%、3.0~10.0%、または3.0~9.0%などを含むことができる。また、組成物は、微粒粒子形態(すなわち、150マイクロメートルより小さいより小さい(-100メッシュ)粒径を有する)において供給されるようにこれらの量の二酸化チタンを含んでもよい。いくつかの場合には、耐火組成物は、耐火組成物の総質量に対するパーセントで(XRFおよび/またはSEM-EDS解析によって測定したとき)、少なくとも90.0%および99.0%までの合計されたアルミナおよびチタン二酸物を含むことができ、またはその中に包含される任意のサブレンジ、例えば90.0~98.0%、92.0~99.0%、92.0~98.0%、94.0~99.0%、94.0~98.0%、95.0~99.0%、95.0~98.0%、96.0~99.0%、または96.0~98.0%などを含むことができる。
【0044】
いくつかの場合には、耐火組成物は、耐火組成物の総質量に対するパーセントで、少なくとも80.0%のアルミナ粒子(粗粒アルミナ粒子および微粒アルミナ粒子の両方を含む)を含むことができ、またはその中に包含される任意のサブレンジ、例えば少なくとも83.0%、少なくとも85.0%、少なくとも89.0%、少なくとも90.0%、少なくとも91.0%、少なくとも93.0%、少なくとも95.0%、少なくとも97.0%、80.0~98.0%、80.0~95.0%、83.0~95.0%または90.0~95.0%などを含むことができる。耐火組成物が少なくとも80.0%のアルミナ粒子を含む場合、アルミナ粒子の総質量の少なくとも35.0%は、少なくとも150マイクロメートル(+100メッシュ)の粒径を有することができ、またアルミナ粒子の総質量の少なくとも35.0%は、150マイクロメートルより小さい(-100メッシュ)粒径を有することができる。いくつかの場合には、アルミナ粒子の総質量の少なくとも30.0%は、少なくとも300マイクロメートル(+48メッシュ)の粒径を有することができ、またアルミナ粒子の総質量の少なくとも35.0%は、150マイクロメートルより小さい(-100メッシュ)粒径を有することができる。いくつかの場合には、アルミナ粒子の総質量の少なくとも30.0%は、300~600マイクロメートル(+48メッシュ;-28メッシュ)の粒径を有することができ、またアルミナ粒子の総質量の少なくとも35.0%は、150マイクロメートルより小さい(-100メッシュ)粒径を有する。
【0045】
本明細書に記載の発明は、溶融金属用容器内にワークライニングを形成するための方法を含む。本方法は、溶融金属用容器の溶融物接触表面の少なくとも一部の上に上述の耐火組成物を形成することを含む。耐火組成物は、スプレー、吹き付け、ショットクリーチング、振動(例えば、乾燥振動)、キャスティング(例えば、プレキャスティング)、こて塗り、もしくはその他の手動での形成、または耐火組成物から形成される予備成形される耐火物形状の配置(例えば、耐火物板または壁パネル)によって形成することができる。耐火組成物は:(i)上述のように、溶融金属によって浸潤される溶融金属用容器内にワークライニングを生成し;さらに(ii)任意の常法の形成技法のための加工性を有するために、化学組成物および粒径に関して規定されている。例えば、粗粒耐火物粒子、微粒耐火物粒子、結合剤成分、添加剤、および水の相対的量は、上述した形成技法を用いて加工可能である耐火組成物を提供することができ、当業者は、上述の限定の範囲内で、過度の実験を伴わずに決定することができる。加えて、当業者は、上述の限定の範囲内で、かつ過度の実験を伴わずに、常法の形成技法および冶金操作に適用できるように、乾燥条件または養生条件または予熱条件を決定することができる。
【0046】
耐火組成物は、溶融金属用容器に形成され、かつ乾燥され、養生されたとき(形成できる場合)、少なくとも20%、またはその範囲内に包含される任意の範囲、例えば少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、20~60%、25~55%、25~50%、30~55%、35~55%または45~55%などの見掛け開孔率を有する耐火物層を生成する。形成され、および乾燥され、または形成されるときに、養生された、耐火組成物の見掛け開孔率は、ASTM C830-00(2016):Standard Test Methods for Apparent Porosity,Liquid Absorption,Apparent Specific Gravity,and Bulk Density of Refractory Shapes by Vacuum Pressure(参考文献として本明細書に組み込まれる)に従って決定することができ、およびこれは本明細書に参照され援用される。
【0047】
耐火組成物は、溶融金属用容器の溶融物接触表面の少なくとも一部の上に形成して、厚さの範囲、例えば1ミリメートル(0.04インチ)~65ミリメートル(2.6インチ)またはその中に包含される任意のサブレンジ、例えば、10~50ミリメートル(0.4~2インチ)、15~50ミリメートル(0.6~2インチ)、20~50ミリメートル(0.8~2インチ)または25~50ミリメートル(1~2インチ)などを有する耐火層を形成することができる。本明細書に記載の耐火組成物を、2017年8月29日に出願された米国仮特許出願番号第62/551,509号に記載の耐火物ライニング構造のワークライニング部分を生成するために使用することができ、これは2018年8月21日に出願された国際出願PCT/US2018/047253(国際公開第2019/046142号)に対する優先権出願であり、これは本明細書に参考文献として組み込まれる。
【0048】
本明細書に記載の発明は、上述の耐火組成物から形成される溶融金属用容器のためのワークライニングを含む。ワークライニングは、粗粒耐火物粒子を含む耐火物相および耐火物相の粗粒耐火物粒子を濡らして浸潤する鉄または鋼を含む金属相を含む。また、本明細書に記載の発明は、底および底から延びる側面を備える溶融金属用容器、ならびに溶融金属用容器の底および側面の少なくとも一部の上に形成される上述の耐火組成物から形成されるワークライニングも含む。
【0049】
いくつかの場合には、耐火組成物は、溶融金属用容器、例えば鋼の連続鋳造のためのタンデッシュなどの中の単回使用ワークライニングを形成するために使用することができる。特許請求の範囲を含む本明細書に使用される、「単回使用ワークライニング」は、冶金操作の完了後に溶融金属用容器から除去する前に一回溶融金属に接触したワークライニングを意味する。単回使用ワークライニングは、溶融金属の全てが溶融金属用容器から排出される、またはそうでなければ取り除かれる間に複数回は溶融金属に接触しない。
【0050】
例えば、鋼を連続鋳造するためのタンデッシュ内で、単回使用ワークライニングは、一回の連続鋳造操業においてワークライニングの少なくとも一部がその間に溶融金属と一定の接触をするために形成される。その操業の完了後、タンデッシュから排出されなかった残留鋼は、冷却され、かつ固化してスカルを形成し、これは単回使用ワークライニングに付着する。金属スカルおよび付着したワークライニングは、その後の連続鋳造操業のために新たな単回使用ワークライニングを再形成する前にタンデッシュから取り除かれる。これは、例えば実質的に溶融金属の全てがレードルから排出する間に複数の、そして別々の機会に溶融金属に接触するレードルに形成されるワークライニングとは対照的である。
【0051】
また、本明細書に記載の発明は、上述の耐火組成物から形成されるワークライニングを含む溶融金属用容器を使用するための方法も含む。例えば、本方法は、溶鋼が上述の耐火組成物から形成された単回使用ワークライニングを含むタンデッシュ内に収容されるような連続鋳造プロセスに適用されてもよい。耐火組成物は、鋼の連続鋳造プロセスにおけるタンデッシュとして例示されているが、本発明に係る耐火組成物を、特に単回使用ワークライニングとして(例えば鋳造湯道などにおいて)、鉄および非鉄用途の両方の溶融金属用容器に適用してもよい。
【実施例】
【0052】
実施例I:
4つの異なる耐火組成物の溶融試験を、4つの別々の区画に分けたワークライニングを有するるつぼ内で再溶融したAISI 1018鋼の25キログラムの熱間圧延された棒を使用して行った。以下の表1に示したように(耐火組成物の総質量に対するパーセントで)、ワークライニングのそれぞれの区画は、異なる耐火組成物を有した。区画2、3および4に対応する耐火組成物において、対応する3.0%、6.0%および9.0%二酸化チタンは、同量のアルミナを置き換えられている。4つの耐火組成物は、二酸化チタン含有量およびアルミナ含有量を除いて同一であった。4つ全ての耐火組成物は、二酸化チタン含有量に応じて約54~59%の粗粒板状アルミナ粒子および約26~36%の微粒板状アルミナ粒子を含有した。区画2、3および4の組成物の成分は、88%~97%のアルミナ、0.1%~1.1%のシリカ、0.25%~2.1%の酸化カルシウム、および0.25%~9.5%の二酸化チタンの範囲内である。酸化鉄は、組成物の、その他の成分内の偶発的な不純物であり、そしてそれ自体は添加剤成分ではない。区画2、3および4の組成物におけるアルミナ対二酸化チタンの比は、それぞれ、31.4、15.3、および9.8であり、および35~8の範囲内である。
【表1】
【0053】
鋼を、アルゴン雰囲気の100キロワットのInductotherm Mark IV誘導溶融炉内に並べたるつぼ内で溶融した。凝固した鋼の塊および付着したワークライニングのスカルをるつぼから取り除き、切断した。ワークライニングスカルの4つの区画を示す、切断された試料の写真を
図1に示す。凝固した鋼の塊2は、区画1耐火組成物10、区画2耐火組成物13、区画3耐火組成物16および区画4耐火組成物19によって囲まれている。
【0054】
走査電子顕微鏡検査(SEM)を凝固した金属と付着したワークライニングスカルとの間の界面に対して行った。
図2Aおよび
図2Bは、区画1(0%TiO
2)の代表的なSEM画像を示し、
図3Aおよび
図3Bは、区画2(3%TiO
2)の代表的なSEM画像を示し、
図4Aおよび
図4Bは、区画3(6%TiO
2)の代表的なSEM画像を示し、また
図5Aおよび
図5Bは、区画4(9%TiO
2)の代表的なSEM画像を示す。4つの全ての耐火組成物は、少なくとも部分的に鋼で浸潤され、耐火物-鋼複合耐酸化バリア層を形成する。表2に下で示すように、二酸化チタン含有量の増加は、耐火組成物の中の鋼の浸透深度の増加と一様に相関する。
【表2】
【0055】
図6Aを参照して、SEM解析は、区画4(9%TiO
2)の耐火組成物における粗粒アルミナ粒子上に存在する表面コーティングを示す。エネルギー分散分光法(EDS)をこの表面コーティングに対して行いチタン-アルミニウムオキシ窒化物組成物を示す(
図6B)。これは、二酸化チタンが粗粒アルミナ粒子と反応し、かつその表面化学を適用できることが確認できた。これは、粗粒アルミナ粒子に対する鋼の濡れ性を増加させ、したがって、粗粒アルミナ粒子への鋼の浸潤の均一性や深度の増加に寄与すると考えられる。
【0056】
本発明の態様
本発明の種々の態様は、以下の番号をつけた項目を含むが、これらに限定されない。
1. 溶融金属用容器内にワークライニングを形成するための耐火組成物であって、耐火組成物の総質量に対するパーセントで、
少なくとも150マイクロメートル(+100メッシュ)の粒径を有する少なくとも20.0%の粗粒耐火物粒子であって、当該粗粒耐火物粒子は、アルミナ粒子、マグネシア粒子、アルミン酸マグネシウムスピネル粒子、ジルコニア粒子、もしくはドロマ粒子、またはそれらのいずれかの組み合わせを含み、
(i)少なくとも1.5%の酸化カルシウム添加剤、または
(ii)少なくとも5.0%の低酸化マグネシアで150マイクロメートルより小さい(-100メッシュ)粒径を有する微粒耐火物粒子、または
(iii)少なくとも0.25%の酸化カルシウム添加剤および少なくとも5.0%の低酸化マグネシアで150マイクロメートルより小さい(-100メッシュ)粒径を有する微粒耐火物粒子、または
(iv)少なくとも0.25%の二酸化チタン
のうちの1つまたは複数と、を含む、耐火組成物。
2. 耐火組成物の総質量に対するパーセントで、
少なくとも50.0%の粗粒耐火物粒子と、
少なくとも25.0%の低酸化マグネシアの微粒耐火物粒子と、を含む、項目1の耐火組成物。
3. 耐火組成物の総質量に対するパーセントで、
少なくとも55.0%の粗粒耐火物粒子と、
少なくとも30.0%の低酸化マグネシアの微粒耐火物粒子と、を含む、項目1または項目2の耐火組成物。
4. 耐火組成物の総質量に対するパーセントで、
少なくとも80.0%のアルミナと、
3.0%までのシリカと、
0.5%までの酸化鉄(III)と、
0.5~10.0%の酸化カルシウムと、
少なくとも0.1%のマグネシアと、
1.0%までのアルカリ酸化物と、
15.0%までの二酸化チタンと、を含む、項目1~3のいずれか1項の耐火組成物。
5. 耐火組成物の総質量に対するパーセントで、
少なくとも90.0%のアルミナと、
1.1%までのシリカと、
0.3%までの酸化鉄(III)と、
0.5~9.9%の酸化カルシウムと、
7.0%までのマグネシアと、
0.5%までのアルカリ酸化物と、
0.1~9.5%の二酸化チタンと、を含む、項目1~4のいずれか1項の耐火組成物。
6. 粗粒耐火物粒子が、シリカを実質的に含まない、項目1~5のいずれか1項の耐火組成物。
7. 組成物が、酸化鉄を実質的に含まない、項目1~6のいずれか1項の組成物。
8. 粗粒耐火物粒子が、酸化カルシウム、橄欖石、およびシリカを実質的に含まない、項目1~7のいずれか1項の耐火組成物。
9. 粗粒耐火物粒子が、少なくとも300マイクロメートル(+48メッシュ)の粒径を有するアルミナ粒子を含む、項目1~8のいずれか1項の耐火組成物。
10. 耐火組成物の総質量に対するパーセントで、0.25%~15.0%の二酸化チタンを含む、項目1~9のいずれか1項の耐火組成物。
11. 耐火組成物の総質量に対するパーセントで、90.0%~99.0%の合計されたアルミナおよびチタン二酸化物を含む、項目1~10のいずれか1項の耐火組成物。
12. 耐火組成物の総質量に対するパーセントで、25.0%~55.0%の低酸化マグネシアの、微粒耐火物粒子を含む、項目1~11のいずれか1項の耐火組成物。
13. 耐火組成物の総質量に対するパーセントで、30.0%~40.0%の低酸化マグネシアの、微粒耐火物粒子を含む、項目12の耐火組成物。
14. 低酸化マグネシア、微粒耐火物粒子が、150マイクロメートルより小さい(-100メッシュ)平均粒子径を有するアルミナ粒子を含む、項目1~13のいずれか1項の耐火組成物。
15. 耐火組成物の総質量に対するパーセントで、少なくとも80.0の%アルミナ粒子、好ましくは少なくとも90%のアルミナ粒子を含む、項目1~14のいずれか1項の耐火組成物。
16. アルミナ粒子の総質量の少なくとも35.0%が、少なくとも150マイクロメートル(+100メッシュ)の粒径を有し、好ましくはアルミナ粒子の総質量の少なくとも30.0%が、少なくとも300マイクロメートル(+48メッシュ)の粒径を有し、かつアルミナ粒子の総質量の少なくとも35.0%が、150マイクロメートルより小さい(-100メッシュ)粒径を有する、項目15の耐火組成物。
17. アルミナ粒子の総質量の少なくとも30.0%が、300~600マイクロメートル(+48メッシュ;-28メッシュ)の粒径を有し、かつアルミナ粒子の総質量の少なくとも35.0%が、150マイクロメートルより小さい(-100メッシュ)粒径を有する、項目15~16のいずれか1項の耐火組成物。
18. 耐火組成物の総質量に対するパーセントで:
少なくとも25.0%の低酸化マグネシアの、微粒耐火物粒子と、
0.5~10.0%の酸化カルシウム添加剤と、を含む、項目1~17のいずれか1項の耐火組成物。
19. 耐火組成物の総質量に対するパーセントで:
少なくとも25.0~55.0%の低酸化マグネシアの、微粒耐火物粒子と、
1.0~5.0%の酸化カルシウム添加剤と、を含む、項目1~18のいずれか1項の耐火組成物。
20. 耐火組成物の総質量に対するパーセントで、45~75%の粗粒耐火物粒子を含む、項目1~19のいずれか1項の耐火組成物。
21. 溶融金属用容器の溶融接触表面の少なくとも一部の上に項目1~20のいずれか1項の耐火組成物を形成することを含む溶融金属用容器内に単回使用ワークライニングを形成するための方法であって、耐火組成物が、スプレー、吹き付け、ショットクリーチング、振動、キャスティング、こて塗り、もしくは耐火組成物から形成される予備成形された耐火物形状の配置、またはそのいずれかの組み合わせによって形成される、方法。
22. 項目1~20のいずれか1項の耐火組成物から形成される溶融金属用容器用のワークライニングであって、
粗粒耐火物粒子を含む耐火物相と、
耐火物相の粗粒耐火物粒子を濡らし、かつ浸潤する鉄または鋼を含む金属相と、を含む、ワークライニング。
23. ワークライニングが、単回使用ワークライニングである、項目22のワークライニング。
24. 溶融金属用容器であって、
底および底から延びる側面と、
溶融金属用容器の底および側面の少なくとも一部の上に形成された、項目22または項目23のワークライニングと、を備える、溶融金属用容器。
25. 溶融金属用容器が、連続鋳造タンデッシュを備える、項目24の溶融金属用容器。
26. 溶融金属用容器用のワークライニングであって、
少なくとも150マイクロメートル(+100メッシュ)の粒径を有する粗粒耐火物粒子を含む耐火物相であって、粗粒耐火物粒子が、アルミナ粒子、マグネシア粒子、アルミン酸マグネシウムスピネル粒子、ジルコニア粒子、もしくはドロマ粒子、またはそのいずれかの組み合わせを含む、耐火物相と、
耐火物相の粗粒耐火物粒子を濡らし、かつ浸潤する鉄または鋼を含む金属相と、を含む、ワークライニングであって、
耐火組成物の総質量に対するパーセントで、
少なくとも20.0%の粗粒耐火物粒子と、
(i)少なくとも1.5%の酸化カルシウム添加剤、または
(ii)少なくとも5.0%の低酸化マグネシアの、150マイクロメートルより小さい(-100メッシュ)粒径を有する微粒耐火物粒子、または
(iii)少なくとも0.25%の酸化カルシウム添加剤および少なくとも5.0%の低酸化マグネシアの、150マイクロメートルより小さい(-100メッシュ)粒径を有する微粒耐火物粒子、または
(iv)少なくとも0.25%の二酸化チタンのうちの1つまたは複数と、を含む耐火組成物から形成される、ワークライニング。
27. 溶融金属用容器の溶融接触表面の少なくとも一部の上に耐火組成物を形成することを含む方法であって、耐火組成物が、スプレー、吹き付け、ショットクリーチング、振動、キャスティング、こて塗り、もしくは耐火組成物から形成される予備成形された耐火物形状の配置、またはそのいずれかの組み合わせによって形成される、項目26のワークライニングを形成するための方法。
28. 耐火組成物が、少なくとも22%の見掛けの開孔率を有する形成された耐火層を形成する、項目27の方法。
29. 耐火層が、25~55%の見掛けの開孔率を有する、項目28の方法。
30. 耐火層が、スプレーによって形成される、項目27~29のいずれか1項の方法。
31. 溶融金属用容器であって、
底および底から延びる側面と、
溶融金属用容器の底および側面の少なくとも一部の上に形成された項目26のワークライニングと、を備える、溶融金属用容器。
32. 溶融金属用容器が、連続鋳造タンデッシュを備える、項目31の溶融金属用容器。
* * * *
【0057】
種々の特性および特徴が、本明細書に記載され、かつ図面に図示されて、本発明の全体的な理解を提供する。このような特性および特徴が本明細書内に組み合わせられて明示的に記載または図示されているかどうかにかかわらず、本明細書に記載され、かつ図面内に図示された種々の特性および特徴を任意の動作可能な形式において組み合わせることができることが理解される。発明者および出願人は、明示的に本明細書の範囲内に含まれる特性および特徴のこのような組み合わせを意図し、かつ特性および特徴のこのような組み合わせの請求が出願に新たな主題を付加しないことをさらに意図する。このように、請求項は、任意の組み合わせで、明示的もしくは実質的に本明細書に記載の、または別途明示的もしくは実質的に本明細書によって支持された、任意の特性および特徴を列挙するように補正することができる。さらにまた、出願人は、これらの特性および特徴が本明細書において明示的に記載されない場合であっても、請求項を補正して従来技術において存在し得る特性および特徴を積極的に放棄する権利を保有する。したがって、任意のそのような補正書は、明細書または請求項に新たな主題を付加しないものとし、また書面による記載、記載の充足、および付加された事項の要件に従うものとする(例えば、米国特許法§112(a)および第123条(2)EPC)。本発明は、本明細書に記載の種々の特性および特徴を含むこと、それからなること、または実質的にそれからなることができる。いくつかの場合には、また、本発明は、本明細書に記載の任意の構成要素またはその他の特性もしくは特徴を実質的に含まない。
【0058】
また、本明細書に列挙した任意の数値の範囲は、列挙された終点を含み、かつ列挙された範囲内に包含される同じ数値精度の全てのサブレンジを記載する(すなわち、特定された桁の同じ数を有する)。例えば、「1.0~10.0」の列挙された範囲は、1.0の列挙された最小値と10.0の列挙された最大値との間(およびこれらを含む)の全てのサブレンジ(範囲)、例えば「2.4~7.6」の範囲が明細書のテキストにおいて明示的に列挙されない場合であっても、「2.4~7.6」なども含む。したがって、出願人は、請求項を含む本明細書を補正して、本明細書において明示的に詳述された範囲内に包含される同じ数値精度の任意のサブレンジを明示的に列挙する権利を保有する。全てのこのような範囲は、本明細書において実質的に記載され、その結果、明示的に任意のそのようなサブレンジを列挙するように補正することは、書面による記載、記載の充足、および付加された事項の要件に従うものとする(例えば、米国特許法§112(a)および第123条(2)EPC)。
【0059】
本明細書に使用される文法上の冠詞「1つの(one)」、「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈によって別途示される、または必要とされない限り、「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」を含むことが意図される。したがって、冠詞は、本明細書に使用される、冠詞の文法上の目的の1つまたは複数(すなわち、「少なくとも1つ」)を指す。例として、「1つの構成要素」は、1つまたは複数の構成要素を意味し、それ故に、おそらく2つ以上の構成要素が本発明の実施において想定され、および採用することができ、または使用することができる。さらに、使用の文脈が別途要求しない限り、単数名詞の使用は、複数を含み、および複数名詞の使用は、単数を含む。
【0060】
本明細書において特定される任意の特許、特許出願、公開またはその他の外部文書は、特に明記しない限り、その全体が、しかし組み込まれた材料が、本明細書に明示的に示される記載、定義、記述、図表などと矛盾をしない範囲でのみが、参考文献として本明細書に組み込まれる。このように、また必要な範囲で、本明細書に示される明示的な記載は、参照して組み込まれる任意の矛盾する材料に取って代わる。参照され本明細書に組み込まれるが、本明細書において示された明示的な記載と矛盾する任意の材料、またはその部分は、矛盾がその組み込まれた材料と明示的な記載との間に生じない範囲で組み込まれるだけである。出願人は、本明細書を、参照され組み込まれた任意の主題またはその部分を明示的に列挙するように補正する権利を保有する。このような組み込まれた主題を付加するための本明細書の補正は、書面による記載および記載要件の充足に従うものとする(例えば、米国特許法§112(a)および第123条(2)EPC)。