(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】車両用ガラスアッセンブリの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 4/02 20060101AFI20230605BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20230605BHJP
B23K 1/19 20060101ALI20230605BHJP
B23K 35/26 20060101ALN20230605BHJP
C22C 13/00 20060101ALN20230605BHJP
【FI】
H01R4/02 Z
B23K1/00 330D
B23K1/19 J
B23K35/26 310A
C22C13/00
(21)【出願番号】P 2020548838
(86)(22)【出願日】2019-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2019007427
(87)【国際公開番号】W WO2019181395
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-11-25
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ファレイロル,オリヴィエ
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-117638(JP,A)
【文献】特表2016-505195(JP,A)
【文献】特表2003-521093(JP,A)
【文献】特開2017-022047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/00- 4/22
B23K 1/00
B23K 1/19
B23K35/26
C22C13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)金属線と、該金属線の終端にある金属板から形成された平坦部を有するコネクタと、スズを主成分として含み、上記コネクタの上記平坦部の上にはんだ付けされた鉛フリーはんだのブロックと、を備えたハーネスを提供すること、
(B)導電性ワイヤーパターンおよび接続端子を含む導電層がその上に形成されてなるガラス基板層を提供すること、
(C)上記ブロックを上記コネクタの上記平坦部と上記導電層の上記接続端子との間に挟み、かつ、上記ブロックを溶融して上記コネクタと上記接続端子との間にはんだ接続部としての鉛フリーはんだ層を形成すること、
を含む車両用ガラスアッセンブリの製造方法であって、
上記鉛フリーはんだの量は、4.5mg~13mgの間にあり、
上記平坦部の上における上記ブロックは、
上記平坦部のすべてのエッジと上記ブロックとの境界部分に沿って隙間が残るように、当該平坦部のすべてのエッジから離れており、
上記はんだ接続部において上記鉛フリーはんだ層の鉛フリーはんだの全てが上記平坦部と上記接続端子との間に配置される、
車両用ガラスアッセンブリの製造方法。
【請求項2】
上記鉛フリーはんだの量が、4.5mg~10mgの間にある、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記平坦部の面積が、10mm
2~15mm
2の間にある、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
上記金属板の厚みが、0.2mm~0.4mmの間にある、請求項1,2または3に記載の製造方法。
【請求項5】
上記コネクタは、上記金属線をクランプするB-クリンプである、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
上記ブロックの体積が、0.6mm
3~
1.4mm
3の間にある、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
上記ブロックの厚さが、0.2mm~0.4mmの間にある、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
上記導電層が印刷熱線であり、上記ガラス基板層が非強化ガラスである、請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
上記はんだ接続部における鉛フリーはんだの全てが、上記平坦部のすべてのエッジから後退している、請求項1~8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
上記金属板は、Cu、Cu合金、または、NiないしCrを含むFe合金からなる、請求項1~9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
上記鉛フリーはんだは、Sn-Ag系はんだ、あるいは、Sn-Ag-Cu系はんだ、である、請求項1~10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
上記鉛フリーはんだは、95~99質量%のSn、1~5質量%のAg、0~1.5質量%のCu、を含む請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
上記鉛フリーはんだ層は、上記ブロックよりも厚さが薄い、請求項1~12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
上記ステップ(C)において上記ブロックは、はんだごてを使用するか、コネクタの電気的加熱によって溶融される、請求項1~13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
上記はんだ接続部における上記鉛フリーはんだ層は、0.1mm~0.3mmの間の厚さを有する、請求項1~14のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガラス基板層と、ガラス基板層上の導電層と、鉛フリーはんだによって導電層に接続されたハーネスと、を含む車両用ガラスアッセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板層と、このウィンドウガラスの上に付加された導電層と、この導電層に接続されたハーネスと、を含む車両用ガラスアセンブリが、車両用ガラスウィンドウとして使用されてきた。ハーネスは、鉛含有はんだによって当該ハーネスの電気コネクタを導電層にはんだ付けすることにより導電層に接続されていたが、「End of Life Vehicles Directive 2000/53/EC」(使用済み車両に関する指令2000/53/EC)では、鉛フリーはんだの代替使用を推奨している。
【0003】
鉛フリーはんだの使用は、ガラス基板層と電気コネクタとの間の機械的応力の補償を困難とし、その結果、車両用ガラスアッセンブリのクラックを引き起こす。機械的応力は、はんだと導電層と電気コネクタとからなる接合構造の影響を受け得る。この問題を解決するために、米国特許出願公開第2015/0236431号および第2015/0264800号は、ガラス基板層と、クロム含有鋼からなる接続要素を使用した電気接続部と、を有するガラスアセンブリを開示している。接続要素は、ワイヤケーブルの周りにクリンプされ、かつ、ガラス基板層上の導電層に鉛フリーはんだを用いて接続される領域を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
米国特許出願公開第2015/0236431号および第2015/0264800号は、接続要素の形状および材料が、熱履歴による機械的応力を回避することに関して非常に重要であると想定している。これらの先行技術文献によれば、クロム含有鋼からなるコネクタは、ガラス基板層とコネクタとの間の熱膨張に、銅ベースのコネクタよりも適合し、その結果、機械的応力が減少すると思われる。クロム含有鋼製のコネクタは、銅ベースのコネクタよりも機械的応力を少なくし得るかもしれないが、ウィンドウガラスのクラック発生を低減する要因はまだ明らかではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書の目的は、ガラス基板層上の導電層を含み、この導電層の上に電気コネクタが鉛フリーはんだによってはんだ付けされる車両用ガラスアセンブリを製造する新規かつ有用な方法を提供することである。
【0006】
本発明の一つの態様によれば、下記のステップを含む車両用ガラスアッセンブリの製造方法が提供される。
【0007】
金属線とコネクタと鉛フリーはんだのブロックとを含むハーネスを提供するステップ(A)。上記コネクタは、金属板から形成された平坦部を有し、上記金属線の終端に配置されている。上記鉛フリーはんだのブロックは、スズを主成分として含み、上記平坦部の上にはんだ付けされている。
【0008】
導電性ワイヤーパターンおよび接続端子を含む導電層がその上に形成されてなるガラス基板層を提供するステップ(B)。
【0009】
上記ブロックを上記コネクタの上記平坦部と上記導電層の上記接続端子との間に挟み、かつ、上記ブロックを溶融して上記コネクタと上記接続端子との間にはんだ接続部を形成するステップ(C)。
【0010】
ここで、上記鉛フリーはんだの量は、4mg~13mgの間にあり、
上記平坦部の上における上記ブロックは、当該平坦部のすべてのエッジから離れており、
上記はんだ接続部において鉛フリーはんだの全てが上記平坦部と上記接続端子との間に配置される。
【発明の効果】
【0011】
我々は、上記の方法を使用して車両用ガラスアッセンブリを製造すれば、ガラス基板層と電気コネクタとの間の機械的応力を緩和ないし低減でき、ガラス基板層におけるクラックの発生を低減できることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本方法により製造された車両用ガラスアッセンブリの主要な構成要素を示す概略図。
【
図3】ステップ(A)の後の提供された電気コネクタを示す概略図。
【
図4】ステップ(C)の前の状態におけるハーネスおよびガラス基板層を示す断面図であって、
図1のX-Y断面図に対応する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明では、限定ではなく説明の目的で、本発明の特定の実施形態の理解を与えるために特定の詳細が示されている。しかしながら、本発明がこれらの特定の詳細から離れた他の実施形態において実施されてもよいことは当業者には明らかであろう。他の例については、不必要な詳細で説明が不明瞭とならないように、よく知られているデバイス、プロセス、技術、方法、の詳しい説明は省略した。ここで、添付図面をより具体的に参照する。図においては、いくつかの図を通して同じ参照番号は同じ部品/要素を示している。
【0014】
本発明のより良い理解のために、本発明を図を用いて説明する。
図1は、本発明による車両用ガラスアッセンブリの概略図を示す。
図2は、
図1のX-Y断面を示す。本発明の典型的な実施形態によれば、車両用ガラスアッセンブリ1は、ガラス基板層2と、ガラス基板層2の周辺部分の上に焼成された任意選択的な着色セラミックバンド6と、ガラス基板2および/または着色セラミックバンド6の上に焼成された接続端子3aおよび導電性ワイヤーパターン3bを含む導電層3と、導電層3の上の鉛フリーはんだ層4と、ハーネス5と、を備える。ハーネス5は、金属板からなるコネクタ5aと、銅線などの金属線5bと、この金属線を覆うエンベロープないしシース5cと、を含む。鉛フリーはんだ層4を介して、はんだ接続部がコネクタ5aと導電層3との間に形成される。
図3および
図4は、本方法のステップ(A),(B),(C)に関し、以下、詳細に説明する。
【0015】
車両用ガラスアッセンブリ1は、下記を含む製造方法によって製造される。
【0016】
(A)金属線5bと、該金属線5bの終端に配置されかつ金属板から形成された平坦部5dを有するコネクタ5aと、スズを主成分として含み、上記平坦部5dの上にはんだ付けされた鉛フリーはんだのブロック4pと、を備えたハーネス5を提供すること、
(B)導電性ワイヤーパターン3bおよび接続端子3aを含む導電層3がその上に形成されてなるガラス基板層2を提供すること、
(C)上記はんだブロック4pを上記平坦部5dと上記接続端子3aとの間に挟み、かつ、上記ブロック4pを溶融して上記コネクタ5aと上記接続端子3aとの間に鉛フリーはんだ層4を形成してはんだ接続部を形成すること。
【0017】
ここで、上記鉛フリーはんだの量は、4mg~13mgの間にあり、
上記平坦部5dの上における上記ブロック4pは、当該平坦部5dのすべてのエッジから離れており、
上記はんだ接続部において鉛フリーはんだの全てが上記平坦部5dと上記接続端子3aとの間に配置される。
【0018】
鉛フリーはんだの量が4mgより少ないと、接続端子3aのはんだ付け面積を十分に確保することが難しくなり、はんだ接続部が弱くなる。一方、その量が13mgより多いと、ガラス基板層2とコネクタ5aとの間の機械的応力の補償が不十分となり、その結果、ガラス基板層2、導電層3および/または着色セラミックバンド6に、クラックが発生する。これらの要因に照らして、上記の量は、典型的には4mg~11mg、好ましくは4.5mg~10mgであり得る。
【0019】
はんだ接続部において、もし鉛フリーはんだが平坦部5dと接続端子3aとの間の空間から溢れ出ると、このような構造は、ガラス基板層と電気コネクタとの間に機械的応力を与えることがある。従って、ブロックの量のみならず、ステップ(A)における平坦部5d上のはんだ付けの位置も重要である。そのため、ステップ(A)では、平坦部5dの全てのエッジから離れているように当該平坦部5d上にブロック4pをはんだ付けしてなるハーネス5が使用される。以上の工程を通して、車両用ガラスアッセンブリ1は、平坦部5dと接続端子3aとの間に鉛フリーはんだの全てが配置されたはんだ接続部を備えることとなる。さらに、車両用ガラスアッセンブリ1は、鉛フリーはんだが空間から確実に溢れ出ないようにするために、全ての鉛フリーはんだが平坦部5dの全てのエッジから後退したはんだ接続部を含んでいてもよい。
【0020】
図3は、ステップ(A)の後の状態におけるハーネスを示す概略図である。コネクタ5aの平坦部5dの上には、鉛フリーはんだからなるブロック4pがはんだ付けされている。平坦部5dは金属板からなり、好ましくは、一般に、コネクタの全体が単一の金属板で形成され得る。コネクタ5aは、金属線5bの終端に配置されており、金属線5bは少なくとも平坦部5dに接続されている。金属線5bは、好ましくはB-クリンプであるコネクタ5aによって、クリンプされ得る。金属線5bは、実際には複数のワイヤの束であり得るが、典型的には、エンベロープないしシース5cによって覆われている。エンベロープないしシース5cは、例えば、PVC、PE、ゴム材、フッ素樹脂、などから形成され得る。一般に、アンプ、オーディオ機器、ラジオ機器、テレビ、ナビゲーションシステムなどの機器に接続される。
【0021】
平坦部5dの面積は、典型的には、10mm2~15mm2の間であり得る。面積が10mm2より小さい場合には、はんだ接続部が弱くなることがある。一方、面積が15mm2より大きいほど、ガラス基板層2に伝わる機械的応力がより大きくなりやすい(鉛フリーはんだの脆性と、ガラス基板層2と鉛フリーはんだ層4とコネクタ3aとの間の熱膨張係数の差と、による)。これらの要因に照らして、第1,第2面のそれぞれの面積は、望ましくは10mm2~15mm2の間、より好ましくは11mm2~14mm2の間であり得る。
【0022】
金属板の厚さは、ステップ(C)におけるブロック4pの溶融プロセスにも影響し得る。金属板が厚いほど、溶融プロセスの実行時により多くの加熱エネルギーが必要となり、この結果、はんだ接続部における機械的応力が大きくなることがある。一方、金属板の厚みが薄いと、コネクタ3aの取り扱いや製造がより困難になる。これらの要因に照らして、金属板の厚さは、好ましくは0.2mm~0.4mmの間、より好ましくは0.25mm~0.35mmの間、さらにより好ましくは約0.3mm、であり得る。
【0023】
平坦部5dの形状は、長方形、正方形、楕円形、円形、などであり得る。金属板の材料の例としては、CuまたはCu合金、INVAR48(FeNi48、48%のニッケルを含む鉄合金)などのNiないしCrを含むFe合金、を挙げることができる。これらの材料の中でも、Fe合金が好ましく、INVAR48が最も好ましい。
【0024】
ステップ(A)では、ブロック4pを形成するように、コネクタ平坦部5dの上に鉛フリーはんだがはんだ付けされる。ブロック4pの体積は、典型的には0.6mm3~2mm3の間であり得る。体積が0.6mm3より小さいと、ときどき、はんだ接続部が弱くなり得る。一方、体積が2mm3より大きいと、ときどき、ガラス基板2とコネクタ5aとの間の機械的応力の補償が不十分となることがあり、その結果、ガラス基板層2、導電層3および/または着色セラミックバンド6に、クラックが発生する。これらの要因に照らして、体積は、望ましくは0.6mm3~1.8mm3の間、より好ましくは0.6mm3~1.4mm3の間であり得る。
【0025】
ブロック4pの厚さも、鉛フリーはんだ層4の品質に影響を与えることがある。鉛フリーはんだの量が限られている場合、ブロック4pの不適切な厚さは、多孔性の不均一な層4を招来することがあり、これがガラス基板層2における機械的応力の原因となり得る。これらの要因を考慮すると、厚さは、典型的には0.2mm~0.4mmの間、好ましくは0.2mm~0.35mmの間であり得る。
【0026】
鉛フリーはんだは、主成分としてスズを含有する。鉛フリーはんだの例としては、Sn-Ag系はんだ、Sn-Ag-Cu系はんだ、などを挙げることができる。Snの含有量は、例えば、95質量%~99質量%、好ましくは96質量%~98質量%、であり得る。Agの含有量は、例えば、1質量%~5質量%、好ましくは2質量%~4質量%、であり得る。Cuの含有量は、例えば、0質量%~1.5質量%、好ましくは0.1質量%~1質量%、であり得る。
【0027】
図4は、ステップ(C)の前のハーネスおよびガラス基板層を示す断面図であって、
図1のX-Yにおける断面図である。ステップ(B)によって、導電層3を含むガラス基板層2が提供される。ガラス基板は、ガラス基板層2と導電層3との間に、任意選択的に着色セラミックバンド6を含む。ガラス基板層2は、好ましくは湾曲形状を有し、例えば、平坦なガラスシートを既知のプロセスで曲げることにより得られる湾曲形状を有する。ガラス基板層2は、例えば、非強化ガラス、熱強化ガラス、化学強化ガラス、または合わせガラス、であり得る。本発明は、特に、ガラス基板層2が2以上の非強化ガラス(すなわち、全てのガラスが非強化ガラスである)を含む合わせガラスであり、導電層3が印刷熱線である場合に適用することができる。ガラス基板層2の材料としては、ISO16293-1に規定されているソーダライムシリケートガラスを用いることができる。ソーダライムシリケートガラスは、淡緑色、濃緑色、淡灰色、濃灰色、淡青色または濃青色などの色を呈するように、酸化鉄および酸化コバルトなどの着色料を含むことができる。
【0028】
着色セラミックバンド6は、好ましくは、無機耐熱顔料と、ガラス基板層2よりも低い軟化点を有するガラスフリットと、を含む着色セラミック組成物である。このような周縁バンドはよく知られており、しばしば、フリット層、セラミックバンド、ペイントバンド、と呼ばれる。着色セラミックバンド6は、車両用ガラスアッセンブリ1と車両の車体フランジとの間の接着領域を覆うために使用される。接着領域の耐候性の向上や接着領域を覆って見えないようにすることができ、従って、着色セラミックバンド層6の色としては黒色が好ましい。着色セラミックバンドの厚さは、例えば、5μm~25μm、好ましくは5μm~15μmであり得る。
【0029】
着色セラミックバンド6は、例えば以下のプロセスにより得ることができる。すなわち、ガラス基板層2の周縁部に、無機耐熱顔料とガラスフリットと有機溶剤とを含むセラミックペーストをスクリーン印刷法等により塗布し、次いで加熱して、有機溶剤を蒸発させる。続いて、この無機耐熱顔料とガラスフリットとを含む組成物をガラス基板層上で焼成することで、着色セラミックバンド6を形成する。
【0030】
無機耐熱顔料は、所望の色を得るように着色セラミック中に配合される。無機耐熱顔料の粒径は、D50値として表して、例えば、0.1μm~10μm、好ましくは0.2μm~5μmであり得る。無機耐熱顔料としては、公知のものを使用することができる。黒色顔料の例として、銅-クロム複合酸化物、鉄-マンガン複合酸化物、コバルト-鉄-マンガン複合酸化物、銅-クロム-マンガン複合酸化物、マグネタイト、などを挙げることができる。
【0031】
青色顔料の例としては、コバルトブルー、クロムグリーン、コバルト-亜鉛-ニッケル-チタン複合酸化物、コバルト-アルミニウム-クロム複合酸化物、などを挙げることができる。
【0032】
上記のものに加えて、白色顔料(例えば、チタンホワイト、酸化亜鉛、等)、赤色顔料(例えば、ルージュ等)、黄色顔料(例えば、チタンイエロー、チタン-バリウム-ニッケル複合酸化物、チタン-アンチモン-ニッケル複合酸化物、チタン-アンチモン-クロム複合酸化物、等)、および当業者の知識に沿った他の顔料、を用いることができる。
【0033】
ガラスフリットは、加熱プロセスによって溶融し、着色セラミックバンド6を形成する。ガラスフリットとしては、通常のものを使用し得る。ガラスフリットの例としては、ホウケイ酸ガラス、ホウ素-亜鉛-ケイ酸塩ガラス、ビスマス基ガラス、などを挙げることができる。ガラスフリットの軟化点は、ガラス基板層2の曲げ成形温度よりも低い温度、例えば、300~600℃、好ましくは350~580℃であり得る。ガラスフリットの粒径は、0.1μm~10μm、好ましくは0.2μm~5μm、さらに好ましくは1μm~4μm(D50として測定)、であり得る。着色セラミックバンド6におけるガラスフリットからなるガラス材料の含有量は、通常、60質量%~80質量%であり得る。
【0034】
着色セラミックバンド6は、上述のプロセス以外の方法でも得ることができる。このような他のプロセスの例として、デジタル印刷プロセスを挙げることができる。
【0035】
導電層3は、好ましくはガラス基板層2上および/または着色セラミックバンド6上に焼成されたもので、導電性ワイヤーパターン3bおよび接続端子3aを含む。導電層3は、好ましくは、銀金属(銀または銀合金)とガラスフリットとから形成され、ガラスフリットとしては、上に例示したものから選択され得る。導電層3の厚さは、例えば、3μm~20μm、好ましくは5μm~15μm、より好ましくは12μm~17μmであり得る。
【0036】
導電層3は、例えば、次のプロセスによって得ることができる。すなわち、銀金属とガラスフリットと有機溶剤とを含む銀ペーストを、ガラス基板層2上、または、塗布・乾燥された着色セラミックペースト上に、スクリーン印刷法等により塗布し、次いで、加熱して有機溶剤を蒸発させる。続いて、この銀金属およびガラスフリットを含む組成物をガラス基板層2上または着色セラミックバンド6上で焼成することで、導電層3を形成する。周知のように、導電層3は、デフォッガおよびデフロスタなどの印刷熱線として、あるいはアンテナとして、使用することができる。
【0037】
銀金属の粒径は、例えば、0.1μm~10μm、好ましくは0.2μm~7μm(D50として測定)であり得る。導電層3における銀金属の含有量は、例えば、65質量%~99質量%、好ましくは75質量%~98質量%であり得る。
【0038】
導電層3は、上述のプロセス以外の方法でも得ることができる。このような他のプロセスの例として、デジタル印刷プロセスを挙げることができる。
【0039】
ステップ(C)によって所望の車両用ガラスアッセンブリ1が得られる。ステップ(C)において、ブロック4pが平坦部5dと接続端子3aとの間に挟まれ、次いでブロック4pが溶融され、かつそれらの間で加圧してもよく、鉛フリーはんだ層4を形成しつつコネクタ5aと接続端子3aとの間にはんだ接続部が形成される。このプロセスにより、鉛フリーはんだ層4は、ブロック4pよりも厚さが薄くなり得る。ブロック4pが溶融するプロセス(リフロー工程)では、ブロック4pは、鉛フリーはんだの溶融温度から当該溶融温度よりも50℃高い温度まで加熱され得る。このリフロー工程は、例えば、はんだごてを使用するか、コネクタ5aの電気的加熱によって実施され得る。リフロー工程は、コネクタ5aの電気的加熱によって実施することが好ましい。
【0040】
鉛フリーはんだ層4の厚さは、望ましくは0.1mm~0.3mmの間である。厚さが0.3mmよりも厚いと、溶融プロセス中もしくは車両に取り付けたウィンドウガラス1の使用中に、ガラス基板層2とはんだ層4との熱膨張挙動の違いにより、ガラス基板層2ないし導電層3の界面で機械的応力が発生することがある。この機械的応力は、ガラス基板層2における永久引張応力のリスクを高めることがあり、ガラス基板層2のクラック発生を引き起こす。一方、厚みが0.1mm未満であると、リフロー工程中に当該はんだ層にホットスポットが発生するリスクが高くなり得る。ホットスポットの発生は、ガラス基板層2に残留応力を生じさせることがあり、この残留応力はガラス基板層2のクラックを引き起こす。
【0041】
これらのすべての要因を考慮すると、鉛フリーはんだ層4の厚さは、好ましくは0.15mm~0.25mmの間である。
[実験]
[実施例1]
基本の試験片が提供された。試験片は、厚さ3mmのISO16293-1で規定されたソーダライムシリケートガラスからなる非強化ガラス基板層2と、
図1,2,4に示すように導電性ワイヤーパターン3bおよび接続端子3aを含む導電層3と、を備えている。接続端子3aの形状は長方形、面積は15mm
2であった。これは、本方法のステップ(B)に対応する。
【0042】
図1~
図4に示すように、コネクタ5aと、金属(銅)線5bと、この線5bを覆うPVCシース5cと、を含むハーネス5が提供された。コネクタ5aは、厚さ0.3mmのInvar48(FeNi48合金)の金属板からなり、金属線5bをクランプするB-クリンプであった。コネクタ5aは、長方形でかつ面積が11.25mm
2の平坦部5dを有していた。Sn(96.5質量%)-Ag(3.0質量%)-Cu(0.5質量%)からなる鉛フリーはんだを、平坦部5dの上にはんだ付けし、ブロック4pを形成した。平坦部5d上のブロック4pは、平坦部5dの全てのエッジから離れていた。この例では、はんだ付けした量は、7.5mgであり、ブロック4pの体積および厚さは、それぞれ1.012mm
3および0.2mmであった。これは、本方法のステップ(A)に対応する。
【0043】
ブロック4pは、平坦部5dと接続端子3aとの間に挟まれるように、接続端子3a上に配置された。ブロック4pが溶融してコネクタと接続端子との間にはんだ接続部を形成するように、接続端子3aが電気的に加熱された。これは、本方法のステップ(C)に対応する。ステップ(C)を通して、鉛フリーはんだは、平坦部5dと接続端子3aとの間の空間から溢れ出ることはなかった。この実験では、はんだ付けされた試験片は車両用ガラスアッセンブリ1として用いられた。
【0044】
以下の熱サイクルテストが、実施例1に従って作成された10個のサンプルに対して実行された。
【0045】
(1)12時間に亘って、-40℃から+80℃への交互のサイクルを20回繰り返す。
【0046】
(2)各サンプルを-40℃で4時間保持しかつ+80℃で4時間保持する。正の温度では湿度を80%に制御し、負の温度では湿度は制御しない状態とした。
【0047】
この熱サイクルテストにおいて、10個のサンプルのいずれについても、ガラス基板層2にクラックは観察されなかった。
[実施例2]
実施例1の手順を繰り返した。但し、鉛フリーはんだの量は8.8mgであり、ブロック4pの体積および厚さは、それぞれ1.196mm3および0.2mmであった。熱サイクル試験において、いずれのサンプルでもガラス基板層2にクラックは観察されなかった。
[実施例3]
実施例1の手順を繰り返した。但し、鉛フリーはんだの量は4.8mgであり、ブロック4pの体積および厚さは、それぞれ0.65mm3および0.2mmであった。熱サイクル試験において、いずれのサンプルでもガラス基板層2にクラックは観察されなかった。
[比較例1]
実施例1の手順を繰り返した。但し、鉛フリーはんだの量は32.5mgであり、ブロック4pの体積および厚さは、それぞれ4.4mm3および0.5mmであった。熱サイクル試験において、この比較例の10個のサンプル中7個についてクラックが観察された。
[比較例2]
実施例1の手順を繰り返した。但し、鉛フリーはんだの量は14mgであり、ブロック4pの体積および厚さは、それぞれ1.9mm3および0.2mmであった。熱サイクル試験において、この比較例の10個のサンプル中4個についてクラックが観察された。