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特許7289852半導体パッケージの製造方法及びそれに用いられる粘着シート
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  • 特許-半導体パッケージの製造方法及びそれに用いられる粘着シート 図1A
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  • 特許-半導体パッケージの製造方法及びそれに用いられる粘着シート 図2A
  • 特許-半導体パッケージの製造方法及びそれに用いられる粘着シート 図2B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】半導体パッケージの製造方法及びそれに用いられる粘着シート
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20230605BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230605BHJP
   B32B 3/10 20060101ALI20230605BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230605BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
H01L23/12 501P
B32B27/00 M
B32B3/10
C09J7/38
C09J201/00
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020558282
(86)(22)【出願日】2019-11-11
(86)【国際出願番号】 JP2019044081
(87)【国際公開番号】W WO2020105482
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2018218363
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100218800
【弁理士】
【氏名又は名称】河内 亮
(72)【発明者】
【氏名】中村 利美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲朗
【審査官】高橋 優斗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/097266(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/097264(WO,A1)
【文献】特開2002-206078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C09J1/00-201/10
H01L23/12-23/15
H05K3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体パッケージの製造方法であって、
(a)基材シートと、該基材シートの少なくとも一方の面に間欠パターンで設けられた可溶性粘着層と、前記面において前記可溶性粘着層が存在する領域の周囲を取り囲む線状の築堤粘着層とを備えた、粘着シートを用意する工程と、
(b)第1支持基板上に再配線層を備えた第1積層体を作製する工程と、
(c)前記粘着シートを用いて、前記第1積層体の前記再配線層側の表面に、第2支持基板が前記可溶性粘着層及び前記築堤粘着層を介して結合された第2積層体を得る工程と、
(d)前記第2積層体から前記第1支持基板を剥離して、前記再配線層の前記第2支持基板から離れた側の表面が露出した第3積層体を得る工程と、
(e)前記第3積層体をドライフィルムレジストの現像液及び/若しくは剥離液、並びに/又は硫酸銅めっき液に浸漬させて、前記再配線層の前記第2支持基板から離れた側の表面にチップ実装のための前処理を行う工程と、
(f)前記前処理が施された前記再配線層の表面に半導体チップを実装する工程と、
(g)前記半導体チップが実装された第3積層体を溶液に浸漬して、前記可溶性粘着層のみ、又は前記可溶性粘着層及び前記築堤粘着層の両方を溶解又は軟化させる工程と、
(h)前記可溶性粘着層のみ、又は前記可溶性粘着層及び前記築堤粘着層の両方が溶解又は軟化された状態で、前記第3積層体から前記第2支持基板を剥離して、半導体パッケージを得る工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記粘着シートが接着型粘着シートであり、前記工程(c)が、前記第1積層体の前記再配線層側の表面に前記粘着シートを貼り付けて、前記基材シート自体を前記第2支持基板として用いる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粘着シートが転写型粘着シートであり、前記工程(c)が、前記第1積層体と前記第2支持基板との結合に先立ち、前記第2支持基板、又は前記第1積層体に前記粘着シートを貼り付けて、前記可溶性粘着層及び前記築堤粘着層を前記第2支持基板、又は前記第1積層体に転写するとともに、前記基材シートを剥離する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記築堤粘着層の一部が欠損して、前記築堤粘着層で取り囲まれる領域からその外部へのガス抜きをするための隙間を形成している、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記隙間を区画する前記築堤粘着層の両端の離間距離が1mm以上50mm以下である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記隙間の数が1個以上10個以下である、請求項4又は請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(c)において、前記築堤粘着層が、前記第2支持基板の端部から0mm以上20mm以下の範囲内の領域に位置する、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(c)において、前記築堤粘着層が、前記再配線層の端部から0mm以上20mm以下の範囲内の領域に位置する、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記工程(c)において、前記築堤粘着層の全長にわたって、前記築堤粘着層の幅方向の50%以上100%以下の領域が前記再配線層と接している、請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記再配線層の外周長さが、前記築堤粘着層の内周長さ(但し、前記隙間が存在する場合には当該隙間の距離を算入するものとする)の80%以上100%以下である、請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記築堤粘着層の線幅が0.5mm以上10.0mm以下である、請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記築堤粘着層の厚さが0.5μm以上50μm以下であり、かつ、前記可溶性粘着層の厚さが0.5μm以上50μm以下である、請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記築堤粘着層によって取り囲まれる区画が、縦10mm以上600mm以下及び横10mm以上600mm以下のサイズの矩形状領域であり、前記粘着シートは、前記矩形状領域を1つ又は複数個備えている、請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記可溶性粘着層が溶液可溶型樹脂を含む、請求項1から請求項13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記溶液可溶型樹脂がアルカリ可溶型樹脂である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記間欠パターンが島状又はストライプ状のパターンである、請求項1から請求項15までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記島状のパターンがドットパターンである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記工程(f)の後で、かつ、前記工程(h)の前に、前記築堤粘着層が存在する領域を切除する工程をさらに含む、請求項1から請求項17までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
基材シートと、該基材シートの少なくとも一方の面に間欠パターンで設けられた可溶性粘着層と、前記面において前記可溶性粘着層が存在する領域の周囲を取り囲む線状の築堤粘着層とを備えた、請求項1から請求項18までのいずれか一項に記載の方法に用いる、粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージの製造方法及びそれに用いられる粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板の実装密度を上げて小型化するために、プリント配線板の多層化が広く行われるようになってきている。このような多層プリント配線板は、携帯用電子機器の多くで、軽量化や小型化を目的として利用されている。そして、この多層プリント配線板には、層間絶縁層の更なる厚みの低減、及び配線板としてのより一層の軽量化が要求されている。
【0003】
このような要求を満たす技術として、コアレスビルドアップ法を用いた多層プリント配線板の製造方法が採用されている。コアレスビルドアップ法とは、いわゆるコア(芯材)上にビルドアップ法と呼ばれる手法で絶縁層と配線層とを交互に積層(ビルドアップ)して多層化した後、コア(芯材)を除去してビルドアップ層のみで配線板を形成する方法である。コアレスビルドアップ法においては、支持体と多層プリント配線板との剥離を容易に行えるように、キャリア付銅箔を使用することが提案されている。例えば、特許文献1(特開2005-101137号公報)には、キャリア付銅箔のキャリア面に絶縁樹脂層を貼り付けて支持体とし、キャリア付銅箔の極薄銅層側にフォトレジスト加工、パターン電解銅めっき、レジスト除去等の工程により第一の配線導体を形成した後、ビルドアップ配線層を形成し、キャリア付支持基板を剥離し、極薄銅層を除去することを含む、半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法が開示されている。
【0004】
とりわけ、電子デバイスのより一層の小型化及び省電力化に伴い、半導体チップ及びプリント配線板の高集積化及び薄型化へのニーズが高まっている。かかるニーズを満たす次世代パッケージング技術として、FO-WLP(Fan-Out Wafer Level Packaging)やPLP(Panel Level Packaging)の採用が近年検討されている。そして、FO-WLPやPLPにおいても、コアレスビルドアップ法の採用が検討されている。そのような工法の一つとして、コアレス支持体表面に配線層及び必要に応じてビルドアップ配線層を形成し、さらに必要に応じて支持体を剥離した後に、チップの実装を行う、RDL-First(Redistribution Layer-First)法と呼ばれる工法がある。例えば、特許文献2(特開2015-35551号公報)には、ガラス又はシリコンウエハからなる支持体の主面への金属剥離層の形成、その上への絶縁樹脂層の形成、その上へのビルドアップ層を含む再配線層(Redistribution Layer)の形成、その上への半導体集積回路の実装及び封止、支持体の除去による剥離層の露出、剥離層の除去による2次実装パッドの露出、並びに2次実装パッドの表面への半田バンプの形成、並びに2次実装を含む、半導体装置の製造方法が開示されている。
【0005】
FO-WLPやPLPの採用が検討される近年の技術動向を受けて、ビルドアップ層の薄型化が求められている。しかしながら、ビルドアップ層が薄い場合、コアレスビルドアップ法を用いて作製したビルドアップ層付基材から、基材を剥離する際、ビルドアップ層が局部的に大きく湾曲することがある。かかるビルドアップ層の大きな湾曲は、ビルドアップ層内部の配線層の断線や剥離を引き起こし、その結果、配線層の接続信頼性を低下させうる。かかる問題に対処すべく、多層積層体に補強シートを積層してハンドリング性を向上させることが提案されている。例えば、特許文献3(国際公開第2018/097265号)には、多層積層体に可溶性粘着層を介して補強シートを積層させることにより、多層配線層を局部的に大きく湾曲させないように補強することが開示されており、それにより多層配線層の接続信頼性と多層配線層表面の平坦性(コプラナリティ)を向上できるとされている。また、特許文献4(国際公開第2018/097266号)には、島状又はストライプ状等の間欠パターンで構成された可溶性粘着層を備えた粘着シートが開示されている。特許文献4には、かかる粘着シートをプリント配線板等の被着体に貼り付けて補強した後、当該粘着シートを剥離する際に、剥離液を可溶性粘着層の上記パターンの隙間に効果的に浸透させて、可溶性粘着層の溶解又は軟化を促進させることができることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-101137号公報
【文献】特開2015-35551号公報
【文献】国際公開第2018/097265号
【文献】国際公開第2018/097266号
【発明の概要】
【0007】
補強シートを再配線層に貼り付けるための粘着層として、特許文献4に開示されるような間欠パターンで構成された可溶性粘着層を採用することは、当該補強シートの迅速な剥離が可能となる点で好ましい。しかしながら、かかる構成とした場合には、補強シートの剥離工程以前の工程で用いられる薬液が可溶性粘着層のパターン間に浸透することにより次の工程に持ち込まれ、当該次の工程で用いられる薬液が汚染される等の問題が生じうる。さらに、補強シートの剥離工程以前の工程で用いられる薬液によって可溶性粘着層が溶解又は軟化し、製造プロセスの途中で補強シートが意図せず剥離してしまうおそれもある。
【0008】
本発明者らは、今般、第1支持基板上に再配線層を備えた積層体に補強シートとしての第2支持基板を貼り付ける際、間欠パターンで設けられた可溶性粘着層と、可溶性粘着層の周囲を取り囲む線状の築堤粘着層とを備えた粘着シートを用いることにより、半導体パッケージの製造において、前処理工程等で用いられる薬液の汚染及び補強シートの意図せぬ剥離を効果的に抑制できるとの知見を得た。
【0009】
したがって、本発明の目的は、前処理工程等で用いられる薬液の汚染及び補強シートの意図せぬ剥離を効果的に抑制可能な、半導体パッケージの製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の一態様によれば、半導体パッケージの製造方法であって、
(a)基材シートと、該基材シートの少なくとも一方の面に間欠パターンで設けられた可溶性粘着層と、前記面において前記可溶性粘着層が存在する領域の周囲を取り囲む線状の築堤粘着層とを備えた、粘着シートを用意する工程と、
(b)第1支持基板上に再配線層を備えた第1積層体を作製する工程と、
(c)前記粘着シートを用いて、前記第1積層体の前記再配線層側の表面に、第2支持基板が前記可溶性粘着層及び前記築堤粘着層を介して結合された第2積層体を得る工程と、
(d)前記第2積層体から前記第1支持基板を剥離して、前記再配線層の前記第2支持基板から離れた側の表面が露出した第3積層体を得る工程と、
(e)前記第3積層体をドライフィルムレジストの現像液及び/若しくは剥離液、並びに/又は硫酸銅めっき液に浸漬させて、前記再配線層の前記第2支持基板から離れた側の表面にチップ実装のための前処理を行う工程と、
(f)前記前処理が施された前記再配線層の表面に半導体チップを実装する工程と、
(g)前記半導体チップが実装された第3積層体を溶液に浸漬して、前記可溶性粘着層のみ、又は前記可溶性粘着層及び前記築堤粘着層の両方を溶解又は軟化させる工程と、
(h)前記可溶性粘着層のみ、又は前記可溶性粘着層及び前記築堤粘着層の両方が溶解又は軟化された状態で、前記第3積層体から前記第2支持基板を剥離して、半導体パッケージを得る工程と、
を含む、方法が提供される。
【0011】
本発明の他の一態様によれば、基材シートと、該基材シートの少なくとも一方の面に間欠パターンで設けられた可溶性粘着層と、前記面において前記可溶性粘着層が存在する領域の周囲を取り囲む線状の築堤粘着層とを備えた、前記方法に用いる、粘着シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本発明による半導体パッケージの製造方法の一例における、初期の工程を示す工程流れ図である。
図1B】本発明による半導体パッケージの製造方法の一例における、図1Aに示される工程に続く工程を示す工程流れ図である。
図2A】本発明で用意する粘着シートの一例の模式上面図である。
図2B図2Aに示される粘着シートの2B-2B’線断面における層構成を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明による半導体パッケージの製造方法は、(a)粘着シートの用意、(b)第1積層体の作製、(c)補強シートの積層、(d)第1支持基板の剥離、(e)チップ実装用前処理、(f)チップ実装、(g)粘着層の溶解又は軟化、及び(h)補強シートの剥離の各工程を含む。
【0014】
以下、図面を参照しながら、工程(a)から工程(h)までの各々について説明する。
【0015】
(a)粘着シートの用意
図2A及び図2Bに示されるように、基材シート15と、基材シート15の少なくとも一方の面に間欠パターンで設けられた可溶性粘着層16aと、当該面において可溶性粘着層16aが存在する領域の周囲を取り囲む線状の築堤粘着層16bとを備えた、粘着シート17を用意する。以下の説明において、可溶性粘着層16aと築堤粘着層16bとを併せて「粘着層16」と称することがある。また、粘着シート17の詳細については後述するものとする。なお、粘着シートには、粘着層を介して基材シート自体を被着体に接着させるために用いられる「接着型粘着シート」と、粘着層を被着体又は第二の基材シートに転写させて当初の基材シートを剥離することで、被着体又は第二の基材シートに粘着性を付与するために用いられる「転写型粘着シート」の2つのタイプが存在する。この点、本発明で用意する粘着シート17は接着型粘着シート及び転写型粘着シートのいずれであってもよい。
【0016】
(b)第1積層体の作製
図1A(i)に示されるように、第1支持基板10上に再配線層12を備えた第1積層体14を作製する。第1支持基板10は再配線層12を形成するためのベースとなるものである。第1支持基板10は、いわゆるキャリア付金属箔の形態であってもよく、公知の層構成が採用可能である。例えば、第1支持基板10は、基材、剥離層及び金属層を順に備えるものであってもよく、例えば特許文献3(国際公開第2018/097265号)に開示される積層シートを好ましく用いることができる(この積層シートの基材は樹脂フィルム、ガラス又はセラミックスで構成されうる)。この場合、再配線層12が第1支持基板10の金属層表面に作製されるのが好ましい。
【0017】
本発明において、再配線層とは、絶縁層と当該絶縁層の内部及び/又は表面に形成された配線層とを含む層を意味する。この再配線層を介して、例えば半導体チップ上に配置されたチップ電極と、プリント配線板上にチップ電極よりも大きいピッチで配置された端子とを電気的に接続することができる。再配線層12の形成は、公知の手法に従って行えばよく、特に限定されない。例えば、前述したビルドアップ法により、絶縁層と配線層とを交互に積層して多層化することで再配線層12を形成することができる。
【0018】
(c)補強シートの積層
図1A(ii)に示されるように、粘着シート17を用いて、第1積層体14の再配線層12側の表面に、第2支持基板18が可溶性粘着層16a及び築堤粘着層16bを介して結合された第2積層体20を得る。例えば、第1積層体14の再配線層12側の表面に粘着シート17を用いて第2支持基板18を貼り付けることにより、第2積層体20を得ることができる。こうすることで、再配線層12は第2支持基板18によって局部的に大きく湾曲されないように補強されることができる。すなわち、第2支持基板18が補強シートとして機能するため、再配線層12の表面及び/又は内部の配線層の断線や剥離を回避して、再配線層12の接続信頼性を向上することができる。また、湾曲が効果的に防止ないし抑制されることで、再配線層12表面の平坦性(コプラナリティ)を向上することができる。
【0019】
後述する第2支持基板18の剥離工程を迅速に行うべく、第2支持基板18を再配線層12に密着させる粘着層16として間欠パターンで設けられた可溶性粘着層16aを採用することが考えられる。こうすることで、可溶性粘着層16aを溶解可能な溶液を間欠パターンの隙間に効果的に浸透させて、可溶性粘着層16aの溶解又は軟化を促進させることが可能となる。一方、かかる構成とした場合には、第2支持基板18の剥離工程以前に用いられる薬液に起因する問題が生じうる。すなわち、本発明の製造方法では、後述するように、第2支持基板18の剥離工程以前に行われる前処理工程(例えばフォトリソプロセス)において、ドライフィルムレジストの現像液や剥離液、硫酸銅めっき液等の薬液が用いられる。ここで、粘着層16を可溶性粘着層16aのみで構成した場合には、当該薬液が可溶性粘着層16aのパターン間に浸透することで次の工程に持ち込まれ、結果として後の工程で用いられる薬液が汚染されるとの問題が生じうる。さらに、第2支持基板18の剥離工程以前の工程で用いられる薬液によって可溶性粘着層16aが溶解又は軟化してしまい、製造プロセスの途中で第2支持基板18が意図せず剥離してしまうおそれもある。かかる問題に対処すべく、本発明で用意する粘着シート17は、粘着層16として可溶性粘着層16aのみならず築堤粘着層16bも採用している。すなわち、本発明の方法においては、再配線層12と第2支持基板18を密着させる粘着層16の一つとして、可溶性粘着層16aが存在する領域の周囲を取り囲む線状の築堤粘着層16bが存在するため、第2支持基板18の剥離工程以前の工程で用いられる薬液が築堤粘着層16bによってせき止められる。そのため、薬液が可溶性粘着層16aの存在する領域まで到達する時間を遅らせる(又は場合によっては到達させない)ことができ、薬液が可溶性粘着層16aのパターンの隙間に浸透するのを防止ないし抑制することができる。その結果、前処理工程等で用いられる薬液の汚染及び補強シートである第2支持基板18の意図せぬ剥離を効果的に抑制することが可能となる。
【0020】
築堤粘着層16bは、第2支持基板18の端部から0mm以上20mm以下の範囲内の領域に位置することが好ましく、より好ましくは0mm以上10mm以下、さらに好ましくは0mm以上2mm以下である。また、築堤粘着層16bは、再配線層12の端部から0mm以上20mm以下の範囲内の領域に位置することが好ましく、より好ましくは10mm以上20mm以下、さらに好ましくは15mm以上20mm以下である。こうすることで、薬液を再配線層12及び/又は第2支持基板18の端部付近でせき止めることができ、薬液が可溶性粘着層16aの存在する領域まで到達する時間をより一層遅らせることが可能となる。また、後述するように、築堤粘着層16bが存在する領域を切除する工程をさらに含む場合には、上記構成とすることにより使用可能な再配線層12の領域を最大限広げることができる。
【0021】
築堤粘着層16bの全長にわたって、築堤粘着層16bの幅方向の50%以上100%以下の領域が再配線層12と接しているのが好ましく、より好ましくは70%以上100%以下、さらに好ましくは90%以上100%以下である。こうすることで、可溶性粘着層16aが存在する領域の周囲を築堤粘着層16bで十分に取り囲むことができ、薬液をより効果的にせき止めることができる。なお、築堤粘着層16bの幅方向における、再配線層12と接している領域が100%未満の場合には、築堤粘着層16bの一部が再配線層12の端部からはみ出す状態も想定している。この点、築堤粘着層16bの幅方向の一部が再配線層12と接していれば、当該部分から薬液が浸入することを防止ないし抑制できるため、本発明にはこのような態様も包含されるものとする。
【0022】
粘着シート17が接着型粘着シートである場合には、第1積層体14の再配線層12側の表面に粘着シート17を貼り付けて、基材シート15自体を第2支持基板18として用いるのが好ましい。一方、粘着シート17が転写型粘着シートである場合には、第1積層体14と第2支持基板18との結合に先立ち、第2支持基板18、又は第1積層体14に粘着シート17を貼り付けて、粘着層16を第2支持基板18、又は第1積層体14に転写するとともに、基材シート15を剥離するのが好ましい。転写方法は特に限定されるものではなく、例えばロールラミネーション等の公知の手法が採用可能である。
【0023】
第2支持基板18は第1支持基板10よりもビッカース硬度が低いものであるのが好ましい。これにより、第2支持基板18自体が撓むことで、積層又は剥離時に発生しうる応力を上手く逃がすことができ、その結果、再配線層12の湾曲を効果的に防止ないし抑制することができる。第2支持基板18のビッカース硬度は再配線層12のビッカース硬度の2%以上99%以下であるのが好ましく、より好ましくは6%以上90%以下、さらに好ましくは10%以上85%以下である。第2支持基板18のビッカース硬度が50HV以上700HV以下であるのが好ましく、より好ましくは150HV以上550HV以下、さらに好ましくは170HV以上500HV以下である。なお、本明細書においてビッカース硬度はJIS Z 2244-2009に記載される「ビッカース硬さ試験」に準拠して測定されるものである。
【0024】
参考のため、候補となりうる各種材料のビッカース硬度HVを以下に例示する:サファイアガラス(2300HV)、超硬合金(1700HV)、サーメット(1650HV)、石英(水晶)(1103HV)、SKH56(高速度工具鋼鋼材、ハイス)(722HV)、強化ガラス(640HV)、SUS440C(ステンレス鋼)(615HV)、SUS630(ステンレス鋼)(375HV)、チタン合金60種(64合金)(280HV前後)、インコネル(耐熱ニッケル合金)(150HV以上280HV以下)、S45C(機械構造用炭素鋼)(201HV以上269HV以下)、ハステロイ合金(耐食ニッケル合金)(100HV以上230HV以下)、SUS304(ステンレス鋼)(187HV)、SUS430(ステンレス鋼)(183HV)、鋳鉄(160HV以上180HV以下)、チタン合金(110HV以上150HV以下)、黄銅(80HV以上150HV以下)、及び青銅(50HV以上100HV以下)。
【0025】
第2支持基板18の材質は特に限定されないが、樹脂、金属、ガラス、又はそれらの組合せが好ましい。樹脂の例としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、及びフェノール樹脂が挙げられ、このような樹脂と繊維補強材とからなるプリプレグであってもよい。金属の例としては、上記ビッカース硬度やばね限界値Kb0.1の観点から、ステンレス鋼、銅合金(例えば青銅、リン青銅、銅ニッケル合金、銅チタン合金)が挙げられるが、耐薬品性の観点からステンレス鋼が特に好ましい。第2支持基板18の形態は、再配線層12の湾曲を防止ないし抑制できるかぎり、シート状に限らず、フィルム、板、及び箔の他の形態であってもよく、好ましくはシート又は板の形態である。第2支持基板18はこれらのシート、フィルム、板、及び箔等が積層されたものであってもよい。第2支持基板18の典型例としては、金属シート、樹脂シート(特に硬質樹脂シート)、ガラスシートが挙げられる。第2支持基板18の厚さは、第2支持基板18の強度保持及び第2支持基板18のハンドリング容易性の観点から、好ましくは10μm以上1mm以下であり、より好ましくは50μm以上800μm以下、さらに好ましくは100μm以上600μm以下である。第2支持基板18が金属シート(例えばステンレス鋼シート)である場合、金属シートにおける、粘着層16と密着する側の表面の十点平均粗さRz-jis(JIS B 0601-2001に準拠して測定される)は0.05μm以上500μm以下であるのが好ましく、より好ましくは0.5μm以上400μm以下、さらに好ましくは1μm以上300μm以下である。このような表面粗さであると、表面の凹凸に起因するアンカー効果によって、粘着層16との密着性が高まり、粘着層16における適度な剥離強度が実現すると考えられる。
【0026】
(d)第1支持基板の剥離
図1A(iii)に示されるように、第2積層体20から第1支持基板10を剥離して、再配線層12の第2支持基板18から離れた側の表面が露出した第3積層体22を得る。こうすることで、例えば第1支持基板10を構成する基材及び剥離層等が再配線層12から剥離除去される。この剥離除去は物理的な剥離により行われるのが好ましい。物理的剥離法は、手や治工具、機械等で第1支持基板10を再配線層12から引き剥がすことにより分離する手法である。このとき、粘着層16を介して密着した第2支持基板18が再配線層12を補強していることで、再配線層12が局部的に大きく湾曲するのを防止することができる。すなわち、第2支持基板18は、第1支持基板10が剥離される間、引き剥がし力に抗すべく再配線層12を補強し、湾曲をより一層効果的に防止ないし抑制することができる。こうして湾曲により引き起こされることがある再配線層12の内部及び/又は表面の配線層の断線や剥離を回避して、再配線層12の接続信頼性を向上することができる。また、湾曲が効果的に防止ないし抑制されることで、再配線層12表面の平坦性(コプラナリティ)を向上することができる。なお、第1支持基板10が金属層を含む場合には、後述するチップ実装用の前処理工程の前に、第3積層体22の表面に残留しうる金属層をエッチングにより除去するのが好ましい。金属層のエッチングはフラッシュエッチング等の公知の手法に基づき行えばよい。
【0027】
(e)チップ実装用前処理
図1B(iv)に示されるように、第3積層体22をドライフィルムレジストの現像液及び/若しくは剥離液、並びに/又は硫酸銅めっき液に浸漬させて、再配線層12の第2支持基板18から離れた側の表面にチップ実装のための前処理を行う。この前処理は、例えば以下のような手順で行うことができる。まず、再配線層12の第2支持基板18から離れた側の表面にドライフィルムを貼り付け、露光及び現像を行い、ドライフィルムレジストを形成する。そして、第3積層体22を硫酸銅めっき液に浸漬させて、再配線層12のドライフィルムレジストが形成されていない表面に電解銅めっきを形成する。次に、第3積層体22を剥離液に浸漬させることにより、形成したドライフィルムレジストを剥離する。こうすることで、半導体チップ上に配置されたチップ電極と接続するための電極(例えば柱状電極)等を再配線層12の第2支持基板18から離れた側の表面に形成することができる。いずれにしても、本工程の前処理は、第3積層体22をドライフィルムレジストの現像液及び/若しくは剥離液、並びに/又は硫酸銅めっき液に浸漬させる処理を含んでいればよく、再配線層12の表面を半導体チップが実装可能な状態にできる限り、その処理方法は特に限定されない。ドライフィルムレジストの現像液及び剥離液は、ドライフィルムレジストを現像ないし除去するために用いられる公知の溶液が採用可能である。好ましいドライフィルムレジストの現像液の例としては、炭酸ナトリウム水溶液が挙げられ、好ましいドライフィルムレジストの剥離液の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アミノエタノール、水酸化テトラメチルアンモニウム等の水溶液が挙げられる。また、硫酸銅めっき液は、少なくとも硫酸銅及び硫酸を含む溶液であればよい。ドライフィルムレジストの現像液及び剥離液、並びに硫酸銅めっき液には、公知の添加剤が含まれていてもよい。
【0028】
(f)チップ実装
図1B(v)に示されるように、前処理が施された再配線層12の表面に半導体チップ24を実装する。本発明の製造方法においては、再配線層12の表面に粘着層16を介して第2支持基板18を積層することで半導体チップ24の実装に有利となる優れた表面平坦性(コプラナリティ)を再配線層12の第2支持基板18から離れた側の表面において実現することができる。すなわち、半導体チップ24の実装時においても、再配線層12は第2支持基板18によって局部的に大きく湾曲されずに済む。その結果、半導体チップ24の接続歩留まりを高くすることができる。
【0029】
半導体チップ24の例としては、半導体素子、チップコンデンサ、抵抗体等が挙げられる。チップ実装の方式の例としては、フリップチップ実装方式、ダイボンディング方式等が挙げられる。フリップチップ実装方式は、半導体チップ24の実装パッドと、再配線層12の配線層との接合を行う方式である。この実装パッド上には柱状電極(ピラー)やはんだバンプ等が形成されてもよく、実装前に再配線層12の表面に封止樹脂膜であるNCF(Non-Conductive Film)等を貼り付けてもよい。接合は、はんだ等の低融点金属を用いて行われるのが好ましいが、異方導電性フィルム等を用いてもよい。ダイボンディング接着方式は、配線層に対して、半導体チップ24の実装パッド面と反対側の面を接着する方式である。この接着には、熱硬化樹脂と熱伝導性の無機フィラーを含む樹脂組成物である、ペーストやフィルムを用いるのが好ましい。いずれの方式にしても、半導体チップ24は図1B(v)に示されるように封止材26で封止されるのが再配線層12と半導体チップ24との積層体全体の剛性をさらに向上できる点で好ましい。
【0030】
(g)粘着層の溶解又は軟化
図1B(vi)に示されるように、半導体チップ24が実装された第3積層体22を溶液に浸漬して、粘着層16を溶解又は軟化させる。粘着層16の溶解又は軟化は、可溶性粘着層16aのみを溶解又は軟化させるものであってもよいし、可溶性粘着層16a及び築堤粘着層16bの両方を溶解又は軟化させるものであってもよい。すなわち、本工程で用いられる溶液は、少なくとも可溶性粘着層16aを溶解可能な溶液(以下、溶解液という)であればよい。可溶性粘着層16aのみを溶解又は軟化させるものである場合は、薬液の浸入経路を確保するため、築堤粘着層16bに後述する隙間Gを形成することが好ましい。第3積層体22を溶解液に浸漬することにより、可溶性粘着層16aが溶解液と接触して溶解又は軟化する。このとき、可溶性粘着層16aが間欠パターンで構成されているので、溶解液が可溶性粘着層16aの隅々まで効果的に浸透して、可溶性粘着層16aの溶解又は軟化を促進させることが可能となる。これは、第3積層体22を溶解液に浸漬した際、溶解液が可溶性粘着層16aのパターンの隙間に効果的に浸透して、個々の粘着性領域との接触が促進されることによるものと考えられる。第3積層体22は、必ずしも全体を溶液に浸漬させる必要はなく、一部を溶液に浸漬させてもよい。一方、本発明では粘着層16として可溶性粘着層16aだけでなく築堤粘着層16bも採用している。この点、築堤粘着層16bを可溶性粘着層16aと同一又は類似の成分(同じ溶解液で溶解又は軟化させることができる成分)で構成するのが好ましい。こうすることで、第3積層体22を溶解液に浸漬させることにより、可溶性粘着層16a及び築堤粘着層16bの両方を速やかに溶解又は軟化させることができる。
【0031】
また、上述した(f)チップ実装工程の後で、かつ、後述する(h)剥離シートの剥離工程の前に、築堤粘着層16bが存在する領域を切除する工程を加えてもよい。こうすることで、第3積層体22における築堤粘着層16bを介して密着している部分を除去することができるため、築堤粘着層16bを溶解又は軟化させることを要さずに、再配線層12からの第2支持基板18の剥離を容易に行うことが可能となる。また、溶解液の浸漬前に築堤粘着層16bが存在する領域を切除する場合には、溶解液が築堤粘着層16bでせき止められることなく可溶性粘着層16aが存在する領域に到達するため、可溶性粘着層16aの溶解又は軟化をより一層迅速に行うことが可能となる。築堤粘着層16bが存在する領域の切除は、カッター等の切断工具を用いて手動で行ってもよいし、切断機等を用いて機械的に行ってもよい。
【0032】
溶解液は、可溶性粘着層16aの材質に合わせて所望の溶解力を有する溶液を適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、可溶性粘着層16aがアルカリ可溶型樹脂を含む場合には、溶解液はアルカリ性溶液を用いればよい。そのようなアルカリ溶液の例としては、水酸化ナトリウム溶液及び/又は水酸化カリウム溶液が挙げられる。これらの溶液の好ましい濃度は0.5重量%以上50重量%以下である。この範囲内であると、アルカリ性が高くなり、溶解力が向上するとともに、溶解液使用時の室温が低い場合であっても水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムが析出しにくくなる。また、水溶液がアルカリ性を示す有機物(例えばエタノールアミン)を単独又は上記溶液と共に用いてもよい。なお、後述するように、可溶性粘着層16aに予めアルカリを添加しておく場合には、水又は水溶液を溶解液として用いてもよい。
【0033】
可溶性粘着層16a及び/又は築堤粘着層16bの溶解時間の短縮のため、アルカリ性溶液に、アクリル樹脂及び/又はノボラック樹脂を溶解可能な有機溶媒(例えば2-プロパノール)を添加してもよい。この有機溶媒の好ましい添加量は、アルカリ性溶液100重量%に対して、5重量%以上50重量%以下である。この範囲内であると、溶解時間の短縮を望ましく実現しながら、作業中における揮散量が低減するため、アルカリ性物質の濃度管理がしやすくなり、安全性も向上する。好ましい有機溶媒はアルコールであり、アルコールの好ましい例としては2-プロパノール、メタノール、エタノール、及び2-ブタノールが挙げられる。
【0034】
アルカリ性溶液に適量の界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤の添加によって樹脂に対する溶液の浸透性や濡れ性が向上するため、可溶性粘着層16a及び/又は築堤粘着層16bの溶解時間の更なる短縮を図ることができる。界面活性剤の種類は特に限定されるものではなく、いかなるものであってもよい。例えば、水溶性の界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系及びノニオン系のいずれも使用することができる。
【0035】
(h)補強シートの剥離
図1B(vii)に示されるように、可溶性粘着層16aのみ、又は可溶性粘着層16a及び築堤粘着層16bの両方が溶解又は軟化された状態で、第3積層体22から第2支持基板18を剥離して、半導体パッケージ28を得る。第2支持基板18は粘着層16の溶解、軟化又は切除に起因して容易に剥離することができる。なお、第3積層体22からの第2支持基板18の剥離は、粘着層16の溶解又は切除によって自動的に剥がれるものであってもよいし、粘着層16の溶解又は軟化によって粘着力が有意に低下した状態で物理的に引き剥がすものであってもよい。いずれにしても、第2支持基板18は粘着層16の溶解、軟化及び/又は切除に起因して極めて剥離しやすい状態となっている(又は場合によっては自然剥離している)ため、再配線層12に与える応力を最小化しながら極めて短時間で第2支持基板18の剥離を行うことができる。こうして再配線層12に加わる応力が最小化されることで、再配線層12における配線の断線や実装部の断線を効果的に回避することができる。
【0036】
粘着シート
図2A及び図2Bを参照しつつ上述したとおり、本発明の方法に用いられる粘着シート17は、基材シート15と、基材シート15の少なくとも一方の面に間欠パターンで設けられた可溶性粘着層16aと、当該面において可溶性粘着層16aが存在する領域の周囲を取り囲む線状の築堤粘着層16bとを備える。可溶性粘着層16a及び築堤粘着層16bは基材シート15の両面に設けられてもよい。間欠パターンとは、可溶性粘着層16aが間欠的(途切れ途切れ)に存在する形状を意味し、可溶性粘着層16aが存在する粘着性領域と、可溶性粘着層16aが存在しない非粘着性領域とによって形成される。間欠パターンは島状又はストライプ状のパターンであるのが好ましく、より好ましくは島状のパターンである。島状のパターンとは、個々の粘着性領域が、その周りに存在する非粘着性領域(例えば空間)によって取り囲まれた形状を意味する。島状のパターンを構成する個々の粘着性領域の具体的形状としては、多角形、円形等の様々な形状が挙げられ、星形多角形のような直線の輪郭線が入り組んだ多角形、曲線の輪郭線が入り組んだ異形状であってもよい。
【0037】
可溶性粘着層16aが島状のパターンを構成する場合、個々の粘着性領域の外接円の直径が0.1mm以上10mm以下であるのが好ましく、より好ましくは0.1mm以上5.0mm以下、さらに好ましくは0.1mm以上2.0mm以下である。また、可溶性粘着層16aがストライプ状のパターンを構成する場合、個々の粘着性領域のストライプ幅が0.1mm以上10mm以下であるのが好ましく、より好ましくは0.1mm以上5.0mm以下、さらに好ましくは0.1mm以上2.0mm以下である。このような範囲内であると、溶解液浸漬前における可溶性粘着層16aによる粘着力を十分に確保しながらも、可溶性粘着層16aのパターンの隙間への溶解液の浸透を促進させて溶解剥離等による再配線層12からの第2支持基板18の剥離を容易にすることができる。島状のパターンはドットパターンであるのが好ましく、個々のドットの形状は典型的には円であるが、円に近い形状であってもよい。ドットパターンを構成する個々のドットの外接円の直径として定義される、ドット径は10mm以下であるのが好ましく、より好ましくは0.1mm以上5.0mm以下、さらに好ましくは0.1mm以上2.0mm以下である。こうすることで可溶性粘着層16aの表面積が増加して溶解性が向上する結果、剥離性が向上する。
【0038】
可溶性粘着層16aは、厚さが0.5μm以上50μm以下であるのが好ましく、より好ましくは1.0μm以上30μm未満、さらに好ましくは1.0μm以上20μm以下、特に好ましくは2.0μm以上15μm以下、最も好ましくは3.0μm以上10μm以下である。上記範囲内の厚さであると、溶解液が可溶性粘着層16aのパターンの隙間に速やかに浸透するため、可溶性粘着層16aの溶解又は軟化が促進されると同時に、間欠パターンの再配線層12への圧痕を低減することができる。特に、半導体パッケージ製造において、粘着層16を介して第2支持基板18を貼り付けて再配線層12を補強した上で、チップ実装、はんだリフロー及び圧縮成型を行った場合に、粘着層16に起因する圧痕が再配線層12に残ることがあるが、可溶性粘着層16aの厚さが7.0μm以下であると圧縮成型後の再配線層12に圧痕が残りにくくなるとの利点がある。この点、可溶性粘着層16aをドットパターンとする場合、ドット径が0.7mm以下であり、かつ、可溶性粘着層16aの厚さが1.0μm以上7.0μm以下であると、圧痕の低減と剥離性の両方をより効果的に実現できるため特に好ましい。
【0039】
粘着性領域の外接円の中心間の間隔は、外接円の直径の平均値よりも大きいことが個々の粘着性領域の間に十分な隙間を確保できる点で好ましい。かかる観点から、粘着性領域の外接円の中心間の間隔は0.1mm超20mm以下であるのが好ましく、より好ましくは0.2mm以上10mm以下、さらに好ましくは0.3mm以上5.0mm以下、特に好ましくは0.4mm以上2.0mm以下である。このような範囲とすることで、溶解液が可溶性粘着層16aのパターンの隙間に速やかに浸透するため、剥離性が向上する。
【0040】
島状のパターンは、全体として、多角形、円、円環状、帯状又は格子状の模様をもたらす1又は複数個のクラスターで構成されてもよく、クラスターの各々は、3つ以上の粘着性領域の集合体で構成されうる。
【0041】
可溶性粘着層16aは、室温で粘着性を呈するのは勿論のこと、溶解液に接触して溶解又は軟化可能な層である。したがって、可溶性粘着層16aは溶液可溶型樹脂を含むのが好ましく、例えば酸可溶型樹脂又はアルカリ可溶型樹脂を含む。この溶液可溶型樹脂は、溶解液との接触により効率的に溶解又は軟化することができるので、再配線層12からの第2支持基板18の剥離をより効果的に行うことが可能となる。
【0042】
好ましい溶液可溶型樹脂はアルカリ可溶型樹脂である。アルカリ可溶型樹脂はカルボキシル基及びフェノール性水酸基の少なくとも一方を含有するポリマーを含むのが特に好ましい。このようなポリマーはアルカリ性溶液に特に溶解しやすいため、可溶性粘着層16aの溶解を促進し、再配線層12からの第2支持基板18の剥離をより短時間で行うことを可能にする。カルボキシル基及びフェノール性水酸基の少なくとも一方を含有するポリマーの例としては、カルボキシル基を含有するアクリル樹脂、及びフェノール性水酸基を含有するフェノールノボラック樹脂が挙げられる。アクリル樹脂系粘着剤は、カルボキシル基を有し、かつ、分子内に不飽和二重結合を有するアクリル系モノマー(例えばアクリル酸やメタクリル酸)と、アクリル酸エチル又はアクリル酸ブチルとを共重合させることにより合成することができる。合成の際に、アクリル系モノマーの種類及び比率を調整することにより、可溶性粘着層16aの粘着力及びアルカリ性溶液に対する溶解性の制御が可能となる。また、可溶性粘着層16aの粘着力及びアルカリ性溶液に対する溶解性の制御はカルボキシル基を含有するアクリル樹脂に対して、カルボキシル基の架橋反応を起こす樹脂(例えばエポキシ樹脂)を添加することによっても行うことができる。すなわち、アクリル樹脂中の一部のカルボキシル基がエポキシ樹脂等の樹脂により架橋されることにより分子量が増大するため、耐熱性が向上する反面、粘着力が低下するとともに、アルカリ性溶液に対する溶解性が低下する。一方、アルカリ可溶型樹脂としてフェノール性水酸基を含有するフェノールノボラック樹脂を用いる場合は、この樹脂単独では可溶性粘着層16aの粘着力が弱くなるため、ロジン等の粘着性付与剤を混入することにより適度な粘着性を付与することが好ましい。
【0043】
アルカリ可溶型樹脂に予めアルカリを添加しておいてもよい。こうすることで、水又は水溶液を溶解液として用いて可溶性粘着層16aを溶解又は軟化させることが可能となる。すなわち、可溶性粘着層16aが水又は水溶液に接触することで、予め添加したアルカリによって当該水等の液性がアルカリ性へと変化し、それによりアルカリ可溶型樹脂を含む可溶性粘着層16aを溶解又は軟化させることが可能となる。半導体パッケージの製造では、洗浄工程等において中性又は酸性の溶液を用いることが想定されるため、本来的には可溶性粘着層16aが中性又は酸性の溶液に溶解しないことが望まれる。この点、本発明では、築堤粘着層16bが製造工程における薬液と可溶性粘着層16aとの接触を効果的に防止ないし抑制するため、アルカリ可溶型樹脂に予めアルカリを添加した態様とすることが許容される。
【0044】
築堤粘着層16bは室温で粘着性を呈するものであればよく、公知の材料を適宜使用して構成することができる。築堤粘着層16bは溶解液に接触して溶解又は軟化するものであってもよい。この場合、築堤粘着層16bの材質は可溶性粘着層16aに準じたものとすればよく、上述した可溶性粘着層16aの好ましい態様は築堤粘着層16bにもそのまま当てはまる。
【0045】
築堤粘着層16bは、剥離工程以前の工程で用いられる薬液との接触により、その一部が溶解又は軟化するものであってもよいが、薬液を確実にせき止めるために、線幅方向に向かって完全に溶解することがないように構成するのが望ましい。一方、築堤粘着層16bを溶解液で溶解又は軟化させる場合には、溶解液との接触により築堤粘着層16bが速やかに溶解又は軟化する程度の線幅であるのが好ましい。これらのバランスを図る観点から、築堤粘着層16bは、線幅が0.5mm以上10.0mm以下であるのが好ましく、より好ましくは1.0mm以上5.0mm以下、さらに好ましくは1.0mm以上3.0mm以下、特に好ましくは1.0mm以上2.0mm以下である。また、築堤粘着層16bは、厚さが0.5μm以上50μm以下であるのが好ましく、より好ましくは1.0μm以上30μm未満、さらに好ましくは1.0μm以上20μm以下、特に好ましくは2.0μm以上15μm以下、最も好ましくは3.0μm以上10μm以下である。特に、可溶性粘着層16a及び築堤粘着層16bの両方を介して再配線層12及び第2支持基板18を密着させる観点から、築堤粘着層16bの厚さは、可溶性粘着層16aの厚さと一致又は近似(例えば±10%の範囲内)させることが好ましい。
【0046】
図2Aに示されるように、築堤粘着層16bは、その一部が欠損して、築堤粘着層16bで取り囲まれる領域からその外部へのガス抜きをするための隙間Gを形成しているのが好ましい。こうすることで、可溶性粘着層16aに由来して生じるガス等を隙間Gから築堤粘着層16bの外部に排出することができ、それにより内部圧力の上昇に起因する築堤粘着層16bの予期せぬ剥離や変形等を防止することが可能となる。隙間Gを区画する築堤粘着層16bの両端の離間距離は1mm以上50mm以下であるのが好ましく、より好ましくは1mm以上30mm以下、さらに好ましくは1mm以上10mm以下、特に好ましくは1mm以上5mm以下である。築堤粘着層16bに形成される隙間Gの数は1個以上10個以下であるのが好ましく、より好ましくは1個以上6個以下、さらに好ましくは1個以上2個以下である。こうすることで、築堤粘着層16b外部へのガス抜きと、築堤粘着層16b内部への薬液の浸入抑制とをバランス良く実現することができる。また、再配線層12の外周長さが、築堤粘着層16bの内周長さの80%以上100%以下であるのが好ましく、より好ましくは85%以上100%以下、さらに好ましくは90%以上100%以下である。この点、再配線層12の周囲には余白領域として配線が形成されていない基材部分が存在するが、上記構成とすることにより、当該基材部分の表面に築堤粘着層16bが配置され、結果として築堤粘着層16bを再配線層12の端部周辺で上記基材部分と密着させることができる。ここで、築堤粘着層16bに隙間Gが存在する場合には、築堤粘着層16bの内周長さに隙間Gの距離(すなわち隙間Gを区画する築堤粘着層16bの両端の離間距離)を算入するものとする。例えば、隙間Gが2個形成された築堤粘着層16bに関して、隙間Gを含まない築堤粘着層16b自体の内周長さが2000mmであり、隙間Gの距離が10mmである場合、築堤粘着層16bの内周長さは2020mm(2000mm+10mm×2)となる。また、築堤粘着層16bの内周長さ(mm)に対する、隙間Gの距離(mm)の比率を隙間率と定義すると、築堤粘着層16b外部へのガス抜きと、築堤粘着層16b内部への薬液の浸入抑制とをバランス良く実現する観点から、隙間率は0.3%以上20%以下が好ましく、より好ましくは0.5%以上12%以下、さらに好ましくは0.7%以上7%以下である。
【0047】
築堤粘着層16bによって取り囲まれる区画は、典型的には縦10mm以上600mm以下及び横10mm以上600mm以下のサイズである。区画は矩形状領域であってもよい。粘着シート17は、上記矩形状領域を1つ備えているものであってもよいし、複数個備えているものであってもよい。
【0048】
基材シート15の形態は、一般的にシートと称されるものに限らず、フィルム、板、箔等の他の形態であってもよい。基材シート15はこれらのシート、フィルム、板、及び箔等が積層されたものであってもよい。また、基材シート15と粘着層16との間の接着力を調整するために、基材シート15の粘着層16が塗布されることになる表面に、研磨処理、離型剤塗布、プラズマ処理等の公知の手法で表面処理を予め施してもよい。
【0049】
本発明の好ましい態様によれば、基材シート15はポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレン(PE)の少なくとも一方の樹脂で構成されるのが好ましく、より好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)である。特に、粘着シート17が転写型粘着シートとして用いられる場合、基材シート15は粘着層16を保持する機能及び別に用意する第2支持基板18に粘着層16を転写する機能を有することが望まれるが、かかる用途に本態様の基材シート15は適している。転写型粘着シートとして用いられる場合の基材シート15の好ましい厚さは10μm以上200μm以下であり、より好ましくは20μm以上150μm以下、さらに好ましくは25μm以上75μm以下である。一方、粘着シート17を接着型粘着シートとして用いる場合には、基材シート15は第2支持基板18に準じたものとすればよく、上述した第2支持基板18の好ましい態様は基材シート15にもそのまま当てはまる。すなわち、粘着シート17が接着型粘着シートとして用いられる場合、基材シート15は粘着層16を保持する機能に加え、半導体パッケージの製造工程における、再配線層12のハンドリング性向上及び湾曲を防止ないし抑制する補強シートとしての機能が望まれるが、かかる用途に本態様の基材シート15は適している。
図1A
図1B
図2A
図2B