(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】表示装置組立体
(51)【国際特許分類】
G04G 9/00 20060101AFI20230605BHJP
G04B 19/30 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
G04G9/00 308B
G04B19/30 B
(21)【出願番号】P 2021021891
(22)【出願日】2021-02-15
(62)【分割の表示】P 2018130456の分割
【原出願日】2018-07-10
【審査請求日】2021-07-12
(32)【優先日】2017-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・ブランケール
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・ティオー
(72)【発明者】
【氏名】シリル・ゲルネ
(72)【発明者】
【氏名】ピエリ・ヴュイユ
(72)【発明者】
【氏名】アリアーヌ・ガシェ-ミューラー
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-49887(JP,A)
【文献】特開2016-11856(JP,A)
【文献】特開2004-198681(JP,A)
【文献】特開2001-99952(JP,A)
【文献】特開2001-296374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04G 9/00- 9/12
G04B 19/30-19/32
G01D 7/00- 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル表示機器としての有機発光ダイオード(organic light-emitting diode、OLED)表示機器と、照明すべき2次対象物とを備える表示装置組立体であって、
前記OLED表示機器は、透明な、部分的に透明な、または半透明な基板(2)と、この基板(2)の背面の上に配置される放出スタックとして形成された少なくとも1つのOLEDタイプの光の放出層(1)とを備え、
前記透明な基板は、前記背面と、前面と、前記2次対象物(6)を照らすように構成される少なくとも1つの側面(8)とを備え、
前記OLED表示機器は、前記放出層(1)の主放出表面から放出されたのち前記前面で全反射した光が前記背面における全反射を経て前記基板(2)の中に捕獲され、この捕獲された光が前記少なくとも1つの側面(8)から抽出されるように、前記基板(2)の屈折率が前記放出層(1)の屈折率よりも大きく設定されている表示装置組立体。
【請求項2】
アナログ時間表示装置を備える、請求項1に記載の組立体。
【請求項3】
前記2次対象物(6)は、前記アナログ時間の文字板を含む、請求項2に記載の組立体
。
【請求項4】
前記2次対象物(6)は、時計開口内部に配置される、請求項1から請求項3のいずれ
かに記載の組立体。
【請求項5】
前記側面(8)は、使用中に拡散光を作り出すためにつや落としされる、請求項1から
請求項4のいずれかに記載の組立体。
【請求項6】
前記側面(8)は、前記前面に対して90°~135°の間の角度をなす、請求項1か
ら請求項5のいずれかに記載の確動組立体。
【請求項7】
前記透明な基板(2)は、少なくとも1.5~1.8の間を含む屈折率を有する、請求
項1から請求項6のいずれかに記載の組立体。
【請求項8】
前記透明な基板(2)の屈折率は、1.6~1.8の間である、請求項7に記載の組立
体。
【請求項9】
前記基板の前記前面は、一体化された装飾物、または追加された装飾物を含む、請求項
1から請求項8のいずれかに記載の組立体。
【請求項10】
前記OLED表示機器は、前記基板(2)の前記屈折率を修正することにより前記基板(2)の前記前面から放出される光の強度と前記少なくとも1つの側面(8)から放出される光の強度の割合を修正できるように構成されている、請求項1から請求項9のいずれかに記載の組立体。
【請求項11】
前記基板(2)が備える側面のうちの前記2次対象物(6)を照明しない側面に光を反射する層(9)が設けられている、請求項1から請求項10のいずれかに記載の組立体。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載の表示装置組立体を含む時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置組立体に関し、より具体的には、たとえば時計などの時計で、受動表示機器を照らすことを意図するOLED表示装置組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
時計業界では、ますます多くの機器が、たとえば、スマートホンに、または通信手段を具備する任意の他の対象物に接続する用途のために、針を使用する従来の機械的表示装置をデジタル表示装置と組み合わせる。
【0003】
そのような機器では、デジタル表示装置は、バックライト付き表示装置であるとき、システムの電力消費を低減するために、要求に応じてだけオンに切り替えられ、一方、機械的表示装置は、全く受動的であり、したがって、スーパールミノバ(Superluminova)(登録商標)タイプのコーティングがなければ暗がりで読み取ることはできない。これらの燐光性コーティングは、コートされる面積が狭いためだけではなく、過剰な厚さが作り出されるために、(たとえば、日付盤用の)一部の用途に十分うまく機能しない。
【0004】
しかしながら、従来技術のデジタル表示装置では、光は前方に放出され、同一平面内の他の対象物、または表示装置の前面から少し引っ込んだ他の対象物を照らさない。
【0005】
さらに、これらの表示装置を照らすために一般に使用される有機活性層を有するLED(英語でOLED、フランス語でDELo)を含む発光ダイオード(light emitting diode、LED)機器の効率は、高屈折媒体から低屈折媒体に光を抽出するのが困難なために、光学効率により大きく制限されることは、公知である。この低い効率は主に、活性層により放出される光が内部全反射するためである。実際には、コヒーレント光が共振空洞により高度に向きを合わせられるレーザとは異なり、光は、LED内で等方的に放出される。この等方性の結果として、抽出面法線に対して臨界角よりも大きな角度で放出される光は、全反射を受け、これにより、この光はLEDの基板内に捕獲される。この捕獲された光は、最適化されていない基板については、放出される光の最大80%に相当する可能性がある。
【0006】
デジタル表示装置の光学効率を高めるために、抽出面にテクスチャ付けするためのさまざまな戦略が、従来技術の、面のつや落とし、光抽出のために最適化された「光学」膜の規則的構造物、活性ゾーン(画素)の上方の半円筒形「ドーム」の形で提案されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、今日まで、抽出の工夫にもかかわらず、LED接合部で放出される光のうち無視できない割合は、捕獲されたままであり、基板により形成された、および該当する場合には、OLEDを構成する異なる層内に形成された、光ガイド内部で失われる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、有機発光ダイオード(organic light-emitting diode、OLED)表示機器を含む表示装置組立体に関し、この表示装置組立体は、背面がOLEDの主放出表面上に配置された透明な(または部分的に透明な、または半透明な)基板上に配置された放出スタックから形成された少なくとも1つのOLEDと、照らすべき2次対象物とを備え、前記基板は、前面と、2次対象物を照らすように構成された
少なくとも1つの側面とを含む。
【0009】
表示装置組立体は、詳細には時計内に組み込まれるのに適しており、時計では、一体化された装飾物または追加された装飾物を含んでもよく、かつさまざまな公知の技法(パッド印刷、シルクスクリーン印刷、デジタル印刷、転写印刷など)により作り出すことができる主表面は、ユーザに伝送される情報を表示することができる時計文字板の面を形成し、2次対象物は、基板の前面の間に捕獲された光が基板の側面を通って出るときに、その光によって照明することができる側面の近傍に配置される。典型的には、この回収された光を、有利には、側面の近傍に配置された受動アナログ表示装置を照らすために使用することができる。OLED表示機器が、時計文字板を形成するとき、開口を形成するために前記文字板の厚さの中に貫通開口部を配置することができ、有利には、OLED表示機器をデータ表示型の受動アナログ表示機器と組み合わせることができ、そこでは、日付盤は、開口の真下で動き、そこでは、開口を通して見える日付盤が担う情報を、開口の側壁から抽出された光により照明することができる。表示機器はまた、側面の近傍に、かつ実質的に基板と同一平面内に配置された2次対象物を照らすことができる。
【0010】
好ましくは、使用中に拡散光を作り出すために、前記側面をつや消しにする。
【0011】
有利には、前記側面は、前面に対して90°~135°の間の角度をなす。
【0012】
有利には、透明な基板は、光を基板内部に制限するために、OLED層の屈折率よりも高い屈折率を有する。
【0013】
有利には、2次対象物を照らさない側面上に、不透明なカバーを配置する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明による表示装置組立体を含む時計の透視図を示す。
【
図2】
図1に示す、本発明による表示装置組立体を含む時計の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の目的は、要求に応じてユーザに情報を表示するために使用される有機発光ダイオード(OLED)表示機器Aと、照らすべき2次対象物6とを備える表示装置組立体を提案することであり、この表示装置組立体は、OLED表示機器Aの1つまたは複数のOLEDにより放出され、かつ機器の基板の面の間で捕獲され、かつ回収された光を最もよく利用して、OLED機器に関連する2次対象物6を照明する。
【0016】
図1~
図3に示す、本発明の一実施形態によれば、ユーザの方を向く面上に装飾することができる能動点灯画面A(バックライト付き、LEDまたはOLED)と、針11と協働する時間文字板、および文字板内に配置される開口7を通して見ることができる受動表示部材6を備える受動表示装置とを備える複合表示機器を組み入れる時計Mが示されている。
文字板は、例えば部分的に透明であり、基板の上に載置されている。
【0017】
図3に示すように、本発明の表示装置組立体は、主表面に実質的に垂直な、すなわち前面に対して90°~135°の間を包含する角度αの、側面8を通して光を抽出することにより、能動表示装置の透明な層2内の全反射により捕獲された光を使用する。本発明の能動表示機器は、透明な基板2の背面上に配置されたOLEDタイプの放出層1を備える。この能動表示機器は、能動マトリックスOLED画面であっても、詳細にはOLEDまたはLEDを備えるバックライト機器に関連するTFTタイプの液晶画面(LCD)であってもよい。液晶画面の場合、光は、バックライト機器の光ガイドの側面から回収される
。この説明では、この画面は、主表示装置であると仮定される。
【0018】
そのような機器では、臨界角よりも小さな、表示ガラスの表面の垂線に対して一定の角度を形成するOLEDにより放出される光4だけは、透明な基板の前面から出現することができる。
【0019】
本発明によれば、全反射により透明な基板2の平行な面の間に捕獲された光5の一部は、選択された領域内に作られた少なくとも1つの側面8を通して抽出される。次いで、この光を使用して、アナログ時間表示装置、または開口7を通して見ることができる表示部材、たとえば、日付盤6などの、2次要素と呼ばれる他の要素6を照らすことができる。
【0020】
基板の屈折率を修正することにより、基板の前面により放出される光と、基板の縁部または側面により放出される光との間の比を修正することが可能であり、すなわち、基板の屈折率が高くなるほど、それだけ多くの光が、透明な層2内に捕獲される。この観点から、屈折率が1.768であるサファイアなどの、屈折率の高い基板2を使用することが、有利な場合がある。
【0021】
透明な基板2の表面に、1つまたは複数の付加層3を追加してもよい。これらの層は、たとえば抗かき傷層、反射防止層、または装飾層の役割を果たすことができる。
【0022】
基板2の側面8は、好ましくは、光抽出を最適化するための、内面反射を低減するテクスチャを有する。詳細には、ウォータージェット、研削、または超音波切断の技法は、基板2の側面8のつや落としに対してつや消しにする有利な効果があり、それにより、拡散を、したがって、光抽出の一様性を改善する。
【0023】
照明すべき2次対象物6の場所に応じて、照らす側8を傾けることが有利な場合がある。詳細には、
図1に示すように、機械的に駆動される日付盤(
図2または
図3参照)を介する、従来の日付表示装置の場合のように、主表示装置から少し引っ込んだ対象物は、好ましくは、この2次対象物の方を向く側面により照明され、これは、ユーザに対する直接視界を低減し、したがって、まぶしい光を低減する利点をさらに有する。
【0024】
望ましくない照明を防止するために、2次対象物を照明しない側面を、有利には、不透明な、好ましくは、反射する層9で覆うことができる。
【0025】
図2および
図3に示すように、本発明の有機発光ダイオード(OLED)表示機器は、有利には、針11、および下で日付盤6が駆動される開口7を含む、従来の時間表示装置を備える複合時計に組み込まれる。そのような場合、針は、針の背後に位置する文字板を形成する主OLED表示機器によりバックライトで照らされ、一方、開口部7は、本発明の有機発光ダイオード(OLED)表示機器の基板2内に配置された開口7の側面8により照らされる。
【符号の説明】
【0026】
1 OLEDタイプの放出層
2 基板
3 付加層
4 光
5 平行な面の間に捕獲された光
6 2次対象物、日付盤、受動表示部材
7 開口
8 側面
9 不透明なカバー
10 領域
11 針
A OLED表示機器、能動点灯画面
M 時計