(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】熱測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 25/18 20060101AFI20230605BHJP
【FI】
G01N25/18 E
(21)【出願番号】P 2021065859
(22)【出願日】2021-04-08
【審査請求日】2022-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内記 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田鍬 幸司
(72)【発明者】
【氏名】橋本 裕之
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/256316(WO,A1)
【文献】特開2019-128154(JP,A)
【文献】国際公開第2019/123577(WO,A1)
【文献】特開2020-004529(JP,A)
【文献】国際公開第2018/131482(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/054227(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置の熱伝導率を測定する熱測定装置であって、
前記蓄電装置における第1端部上に配置された高熱部と、
前記蓄電装置における前記第1端部の反対側に位置する第2端部上に配置された低熱部と、
前記蓄電装置における前記第1端部上に設けられた第1温度センサと、
前記蓄電装置における前記第2端部上に設けられた第2温度センサと、
前記第1端部と前記第2端部との間に位置する前記蓄電装置の側面の少なくとも一部を覆うように設けられ、前記蓄電装置を保持するカバー部材とを備え、
前記カバー部材は、前記蓄電装置の前記側面と対向する内面と、前記内面から突出し前記蓄電装置の前記側面に当接するリブとを含む、熱測定装置。
【請求項2】
前記カバー部材は樹脂からなる、請求項1に記載の熱測定装置。
【請求項3】
前記蓄電装置は、電極端子と、角型の筐体とを有し、前記筐体は、電極端子が形成される上面と、前記上面に対向する底面と、前記上面および前記底面に直交する方向に延びる側面とを含み、前記側面は
、前記蓄電装置の短手方向に沿う短側面と
、前記蓄電装置の長手方向に沿う長側面とを含み、
前記リブは、前記長手方向に交差する方向に沿って前記長側面に当接する部分を有する、請求項1または請求項2に記載の熱測定装置。
【請求項4】
前記蓄電装置は、電極端子と、角型の筐体とを有し、前記筐体は、電極端子が形成される上面と、前記上面に対向する底面と、前記上面および前記底面に直交する方向に延びる側面とを含み、前記側面は
、前記蓄電装置の短手方向に沿う短側面と
、前記蓄電装置の長手方向に沿う長側面とを含み、
前記リブは、前記短手方向に沿って前記短側面に当接する部分を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の熱測定装置。
【請求項5】
前記カバー部材は、前記蓄電装置における前記第1端部から前記第2端部にまで達するように延びる、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の熱測定装置。
【請求項6】
前記カバー部材は、前記蓄電装置の前記側面の全周を覆う、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の熱測定装置。
【請求項7】
前記カバー部材は、前記蓄電装置の周方向において分割された複数の部品を含む、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の熱測定装置。
【請求項8】
前記蓄電装置と前記カバー部材の前記内面との間に設けられた断熱材をさらに備えた、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の熱測定装置。
【請求項9】
前記カバー部材の熱伝導率は、0.4W/mK以下である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の熱測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、熱測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の熱測定装置として、たとえば特開2015-102420号公報(特許文献1)に記載のものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池などの蓄電装置の全体としての熱伝導率を測定する場合、測定精度を向上させる観点から、電池セルなどの傾きを抑制しながら当該セルを保持する必要がある。従来の熱測定装置は、上記観点から必ずしも十分な構成を備えるものではない。
【0005】
本技術の目的は、測定精度の高い熱測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術に係る熱測定装置は、蓄電装置の熱伝導率を測定する熱測定装置であって、蓄電装置における第1端部上に配置された高熱部と、蓄電装置における第1端部の反対側に位置する第2端部上に配置された低熱部と、蓄電装置における第1端部上に設けられた第1温度センサと、蓄電装置における第2端部上に設けられた第2温度センサと、第1端部と第2端部との間に位置する蓄電装置の側面の少なくとも一部を覆うように設けられ、蓄電装置を保持するカバー部材とを備える。カバー部材は、蓄電装置の側面と対向する内面と、内面から突出し蓄電装置の側面に当接するリブとを含む。
【発明の効果】
【0007】
本技術によれば、測定精度の高い熱測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】
図2に示す熱測定装置のIII-III断面図である。
【
図5】
図4に示す熱測定装置の使用状態を例示する図である。
【
図11】カバー部材の他の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0010】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。また、本技術は、本実施の形態において言及する作用効果を必ずしもすべて奏するものに限定されない。
【0011】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含む場合に、当該構成以外の他の構成を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0012】
また、本明細書において幾何学的な文言および位置・方向関係を表す文言、たとえば「平行」、「直交」、「斜め45°」、「同軸」、「沿って」などの文言が用いられる場合、それらの文言は、製造誤差ないし若干の変動を許容する。本明細書において「上側」、「下側」などの相対的な位置関係を表す文言が用いられる場合、それらの文言は、1つの状態における相対的な位置関係を示すものとして用いられるものであり、各機構の設置方向(たとえば機構全体を上下反転させる等)により、相対的な位置関係は反転ないし任意の角度に回動し得る。
【0013】
本明細書において、「電池」は、リチウムイオン電池に限定されず、ニッケル水素電池など他の電池を含み得る。本明細書において、「電極」は正極および負極を総称し得る。また、「電極板」は正極板および負極板を総称し得る。
【0014】
本明細書において、「蓄電装置」、「蓄電セル」、「蓄電モジュール」、および「蓄電パック」なる用語が用いられる場合、「蓄電装置」、「蓄電セル」、「蓄電モジュール」、および「蓄電パック」は、電池、電池セル、電池モジュール、および電池パックに限定されず、キャパシタ等を含み得る。
【0015】
図1は、「蓄電装置」としての電池セル100を示す図である。
図1に示すように、電池セル100は、平坦面状の直方体形状に形成されている。電極端子110は、正極端子111と、負極端子112とを含む。電極端子110は、角型の筐体120上に形成されている。筐体120は、電極端子110が形成される上面と、上面に対向する底面と、X-Z平面方向に延びる長側面と、Y-Z平面方向に延びる短側面とを含む。筐体120には、電極体および電解液が収容されている。電池セル100がY軸方向に積層されることにより組電池が形成される。
【0016】
図2は、熱測定装置の構成を示す図である。
図3は、
図2に示す熱測定装置のIII-III断面図である。熱測定装置は、電池セル100の熱伝導率を測定する熱測定装置であって、
図2,
図3に示すように、電池セル100の上面(第1端部)上に設けられた加熱用ヒータ200(高熱部)と、電池セル100の底面(第2端部)上に熱伝導シート300を介して設けられた冷却用プレート400(低熱部)と、電池セル100の上面および底面に設けられた温度センサ500と、電池セル100の側面を覆うように設けられたセルカバー600(カバー部材)とを含む。
【0017】
温度センサ500は、電池セル100の上面に設けられる第1センサ510(第1温度センサ)と、電池セル100の底面に設けられる第2センサ520(第2温度センサ)とを含む。セルカバー600は、電池セル100を保持し、電池セル100の位置および方向を安定させる。
【0018】
電池セル100の熱伝導特性を評価するにあたり、電池セル100の全体としての熱伝導率が測定される。測定された結果は、電池セル100を含む電池モジュールの放熱特性を評価するための解析などに用いられる。この解析を行うために、3方向(X軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向)の熱伝導率の実測値が必要とされる。
【0019】
このため、
図2、
図3に示すように、電池セル100を立てた状態でZ軸方向の熱伝導率を測定する必要性が生じる。加熱用ヒータ200は、加熱用ヒータ200の上方に設けられた押しブロック(図示せず)と締結されることにより固定されている。Z軸方向の熱伝導率を測定するとき、加熱用ヒータ200の上方から押しブロックを介して下向き(冷却用プレート400に向かう方向)に所定の荷重が加えられる。この荷重の大きさは、ロードセル(図示せず)を用いて管理される。
【0020】
図3に示すように、セルカバー600の内面から突出するリブ610が設けられ、リブ610が電池セル100に当接する。加熱用ヒータ200とセルカバー600とは、リブ610の高さ分だけ離間する。このように、加熱用ヒータ200とセルカバー600とが離間し、両者が空気断熱されることにより、加熱用ヒータ200からセルカバー600に熱が逃げることを抑制することができる。
【0021】
図4は、比較例に係る熱測定装置を示す図である。
図5は、
図4に示す熱測定装置の使用状態を例示する図である。
図4,
図5に示すように、比較例に係る熱測定装置においては、セルカバー600が設けられていない。したがって、加熱用ヒータ200の上方から荷重を加えたときに、
図5に示すように電池セル100がZ軸方向に対して傾く場合がある。これにより、被測定物である電池セル100を通過する熱流が一様にならず、熱伝導率の測定を正確に行えない場合が生じ得る。
【0022】
これに対し、本実施の形態に係る熱測定装置においては、セルカバー600により電池セル100を直立状態(Z軸に対して平行に立つ状態)に保持した状態で熱伝導率の測定を行うことができる。この結果、被測定物である電池セル100を通過する熱流が一様になる。またセルカバー600を設けることにより、加熱用ヒータ200からの熱が電池セル100に伝わりやすい。したがって、熱伝導率の測定を正確に行うことができる。
【0023】
セルカバー600は、たとえばポリカーボネート、より具体的にはガラス繊維ポリカーボネートなどの樹脂からなることが好ましいが、セルカバー600の材質はこれらに限定されない。また、セルカバー600の熱伝導率は、0.4W/mK以下程度であることが好ましく、0.2W/mK以下程度であることがさらに好ましいが、セルカバー600の熱伝導率は上記の範囲に限定されない。
【0024】
セルカバー600の熱伝導率を所定の範囲に設定することにより、熱伝導率の測定時における電池セル100の側面からの放熱を抑制することができ、より正確な熱伝導率の測定を行うことが可能となる。
【0025】
空気よりも熱伝導率の低い断熱材を電池セル100とセルカバー600の内面との間に設けてもよい。
【0026】
セルカバー600は、
図3に示すように、Z軸方向に沿って電池セル100の上面から底面にまで達するように延びるように設けられることが好ましいが、電池セル100のZ軸方向の一部においてセルカバー600が設けられてもよい。
【0027】
図6は、一例としてのセルカバー600Aを示す斜視図である。
図7は、セルカバー600Aの正面図である。2つのセルカバー600Aを組み合わせることにより、電池セル100の側面の全周を覆うことができる。
【0028】
図6,
図7に示すように、セルカバー600Aは、電池セル100の側面と対向する内面から突出し、電池セル100の側面に当接するリブ610A,620Aを含む。リブ610Aは、Z軸方向に沿って電池セル100の長側面に当接する。リブ620Aは、Y軸方向に沿って電池セル100の短側面に当接する。リブ610A,620Aの配置および本数については、適宜変更が可能である。
【0029】
リブ610A,620Aは、帯状ないし線状に形成されている。このようなリブ610A,620Aを設けることにより、セルカバー600Aと電池セル100との接触面積を減らしながら、電池セル100の傾きを抑制することができる。この結果、電池セル100からセルカバー600Aを介した放熱を抑制することができ、より正確な熱伝導率の測定を行うことが可能となる。
【0030】
図8は、変形例としてのセルカバー600Bを示す斜視図である。
図9は、セルカバー600Bの正面図である。セルカバー600Bは、電池セル100の側面に当接するリブ610B,620Bを含む。リブ610B,620Bの配置および本数については、適宜変更が可能である。
【0031】
図10は、リブ610B周辺の部分拡大図である。
図10に示すように、リブ610Bは円環状に形成されている。このようなリブ610Bであっても、セルカバー600Aと電池セル100との接触面積を減らしながら、電池セル100の傾きを抑制することができる。またリブ610Bを円環状として、その中央部分に空洞を設けることにより、断熱性のさらなる向上を図ることができる。
【0032】
図11は、他の変形例としてのセルカバー600Cを示す斜視図である。
図12は、セルカバー600Cの正面図である。セルカバー600Cは、電池セル100の側面に当接するリブ610C,620Cを含む。リブ610C,620Cの配置および本数については、適宜変更が可能である。
【0033】
図13は、リブ610C周辺の部分拡大図である。
図13に示すように、リブ610Cは曲面突起状に形成されている。このようなリブ610Cを用いることにより、セルカバー600Cと電池セル100との接触を点接触とすることができるので、セルカバー600Cと電池セル100との接触面積を減らしながら、電池セル100の傾きを抑制することができる。
【0034】
上述の例では、分割された2つの部品を組み合わせることにより電池セル100の側面の全周を覆うセルカバー600が形成されているが、セルカバー600は3つ以上に分割されていてもよいし、単一の部材から構成されてもよい。
【0035】
以上、本技術の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0036】
100 電池セル、110 電極端子、111 正極端子、112 負極端子、120 筐体、200 加熱用ヒータ、300 熱伝導シート、400 冷却用プレート、500 温度センサ、510 第1センサ、520 第2センサ、600,600A,600B,600C セルカバー、610,610A,610B,610C,620A,620B,620C リブ。