(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】抗がん剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/87 20060101AFI20230605BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20230605BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230605BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230605BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
A61K36/87
A61K31/704
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P15/00
(21)【出願番号】P 2021156174
(22)【出願日】2021-09-24
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】513126703
【氏名又は名称】永尾 司
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】永尾 司
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-109836(JP,A)
【文献】標準治療と併用出来る天然の抗がん物質iGS4000(前編)/(後編), [online], (2016.11.01), がんサイダー.info, [2022.12.08検索], インターネット, <前編:http://gansider.info/2016/11/01/標準治療と併用出来る天然の抗がん物質igs4000(前編/、後編:http://gansider.info/2016/11/01/http://gansider.info/2016/11/01/標準治療と併用出来る天然の抗がん物質igs4000(後編/>
【文献】抗癌剤の副作用を激減させるブドウ種子由来の特許成分「iGS4000(TM)」日本癌学会にて実験結果を発表, 伝説の営業マン, (2016.08.26), [online], [2022.12.08検索], インターネット, <https://www.topsalesman.net/press/index.php?id=114972>
【文献】iGS4000, [online], Internet Archive:Wayback Machine,2019.03.24,[2022.12.08検索], インターネット, <https://web.archive.org/web/20190324150235/https://www.physical.ink/igs4000.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00-36/9068
A23L 33/00-33/29
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳癌を処置するための抗がん剤組成物であって、ブドウ種子催芽抽出物及び
アントラサイクリン系抗がん剤
であるドキソルビシンの組み合わせを含むことを特徴とする、抗がん剤組成物。
【請求項2】
前記ブドウ種子催芽抽出物がブドウ種子催芽由来ポリフェノールからなる、請求項1に記載の抗がん剤組成物。
【請求項3】
前記ブドウ種子催芽抽出物が、粗
精製で60重量%以上のブドウ種子催芽由来ポリフェノールからなることを特徴とする、請求項1または2に記載の抗がん剤組成物。
【請求項4】
前記ブドウ種子催芽抽出物は、被験体の体重1kgあたりの有効摂取量が12~125mg/kg/日である、請求項1~3に記載の抗がん剤組成物。
【請求項5】
前記ブドウ種子催芽抽出物が、以下の(工程1)~(工程4)を含む方法によって製造される、請求項1乃至
4に記載の抗がん剤組成物。
(工程1)ヨーロッパブドウ(Vitis vinifera L.)、アメリカブドウ(Vitis labrusca L.)、ヤマブドウ(Vitis coignetiae L.)、マンシュウヤマブドウ(Vitis amurensis L.)及びシラガブドウ(Vitis shiraga L.)からなる群より選択される1種以上のブドウ種子を前処理し、催芽状態にしたブドウ種子を、35℃~60℃で乾燥させる工程、
(工程2)前記工程1において乾燥させたブドウ種子を粉末化する工程、
(工程3)前記工程2で得られたブドウ種子粉末を、水、エタノール又は水とエタノールの混合溶媒のいずれかに浸漬させてブドウ種子催芽由来ポリフェノールを含む抽出画分を得る工程、
(工程4)前記工程3で得られたブドウ種子催芽由来ポリフェノールを含む抽出画分を乾燥させ粉末化する工程。
【請求項6】
前記ブドウ種子催芽抽出物が、以下の(工程1)~(工程5)を含む方法によって製造される、請求項1乃至
4に記載の抗がん剤組成物。
(工程1)タンク内で30~60℃の温水にてブドウ種子を浸漬させる工程、
(工程2)適時にパイプ等により空気を送付して、前記工程1で浸漬したブドウ種子を催芽状態にする工程、
(工程3)前記工程2で催芽状態にしたブドウ種子を、前記タンク内で機械的な圧力、および破砕するために金属スクリューにより粉砕する工程、
(工程4)前記工程3で得られたブドウ種子粉末を、水、エタノール又は水とエタノールの混合溶媒のいずれかに浸漬させてブドウ種子催芽由来ポリフェノールを含む抽出画分を得る工程、
(工程5)前記工程4で得られたブドウ種子催芽由来ポリフェノールを含む抽出画分を乾燥させ粉末化する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗がん剤組成物に係り、より詳しくは、組成物がブドウ種子催芽抽出物と抗がん剤の組み合わせを含み、抗がん剤単独よりも優れた抗腫瘍効果を備えることを特徴とする、抗がん剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、がんはDNAに変異が生じ、細胞が制御不能な異常増殖を起こす異常細胞となることによって生じる。がん細胞は正常細胞よりも増殖速度が速く、かつ際限なく増殖するという特徴があり、その特徴故に、近隣の組織へ浸潤し、他臓器に転移し,臓器不全やさまざまな病的状態をひき起こす。
【0003】
多くのがん細胞は共通してアポトーシス経路に異常を持ち、細胞死から免れることで不死化する。
非特許文献1に記載されている通り、がんに生じているアポトーシス異常経路を制御することが、がん治療の一つの糸口となっており、がん細胞のみにアポトーシス等の細胞死を誘導し、がん細胞を除去することが出来る抗がん剤が強く求められている。
【0004】
がんの治療は外科的な手術、放射線治療および化学療法の3つに大きく分けられる。中でも抗がん剤を用いた治療方法である化学療法は古くから用いられており、現在でも主な治療方法の一つである。(非特許文献2参照)
【0005】
抗がん剤は、アルキル化薬、白金化合物、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害薬、微小管阻害薬、抗生物質などの細胞傷害性抗がん剤、分子標的薬及び内分泌療法薬などに大きく分けられる。
中でも細胞傷害性抗がん剤の多くは、DNA合成や何らかのDNAの働きに作用し、細胞分裂又は細胞増殖を阻害することで、細胞を傷害するものであり、結果としてアポトーシス誘導を行い、抗腫瘍作用を示す。(非特許文献2-3参照)
【0006】
細胞傷害性抗がん剤による作用はがん細胞非特異的であり、正常な細胞のミトコンドリア機能や細胞分裂も阻害し、アポトーシスを誘導する。その特性から、代謝や分裂が盛んな正常組織及び細胞に対しても、抗がん剤が強く作用し、重大な副作用を生じることがある。
【0007】
重大な副作用を生じた場合、抗がん剤治療は継続が困難となり、抗がん剤の減量もしくは治療中止となるため、抗がん剤治療の効果(がんの縮小やがん再発リスクの低減など)が十分に得られない等の問題が生じている。
【0008】
その他にも、抗がん剤低感受性の症例及び継続的な抗がん剤投与によるがんの抗がん剤耐性獲得についても臨床上の大きな問題となっている。
【0009】
抗がん剤はその毒性故に、生涯に使用できる投与量限界が厳しく定められているものも少なくない。これを総投与量限界、生涯投与量限界と呼び、治療の継続による総投与量の増加によって、今まで使用してきた抗がん剤を使用できなくなるといった問題も発生している。
【0010】
一方で、がん患者が、抗がん剤と併用してサプリメントを摂取することは以前から行われてきた。
そのようなサプリメントの一種である、株式会社フィジカル製のカプセル製品(製品名iGS4000)はこれまでにもサプリメントとして10年以上の期間使用されてきた。前記サプリメントの主成分はブドウ種子催芽由来ポリフェノールを含む、ブドウ種子催芽抽出物である。
【0011】
特許文献1乃至3に示される通り、ブドウ種子催芽抽出物を含むことを特徴とする組成物は、正常細胞の抗老化作用などが報告されているが、抗がん剤との組み合わせによる効果については報告されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2014-073988号公報
【文献】国際公開番号 WO2019/116574号公報
【文献】特開2021-109836号公報
【非特許文献】
【0013】
【文献】吉田達士; 山崎健太; 奥田司. 細胞死とがん (特集 がん研究・診療を巡る最新トピックス). 京都府立医科大学雑誌, 2019, 128.2: 81-99.
【文献】力石秀実. 「シスプラチン化学療法における新展開」 東北大学歯学雑誌 24.1 (2005): 1-15.
【文献】水谷秀樹. 「抗がん剤による活性酸素種を介した DNA 損傷及びアポトーシス誘導機構」 YAKUGAKU ZASSHI 127.11 (2007): 1837-1842.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述の通り、抗がん剤治療に際して、副作用による抗がん剤の減量、抗がん剤低感受性のがん、継続的な抗がん剤投与によるがんの抗がん剤耐性獲得及び抗がん剤の総投与量限界などが臨床上の問題となっている。
【0015】
本発明は上記のような問題を解決しようとするものであり、低用量の抗がん剤でもブドウ種子催芽抽出物と組み合わせることにより、抗腫瘍効果を十分に備え、がんの抗がん剤感受性を上昇又は抗がん剤の作用を増強する、抗がん剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に係る発明は、乳癌を処置するための抗がん剤組成物であって、ブドウ種子催芽抽出物及びアントラサイクリン系抗がん剤であるドキソルビシンの組み合わせを含むことを特徴とする、抗がん剤組成物に関する。
【0017】
請求項2に係る発明は、前記ブドウ種子催芽抽出物がブドウ種子催芽由来ポリフェノールからなる、請求項1に記載の抗がん剤組成物に関する。
【0018】
請求項3に係る発明は、前記ブドウ種子催芽抽出物が、粗精製で60重量%以上のブドウ種子催芽由来ポリフェノールからなることを特徴とする、請求項1または2に記載の抗がん剤組成物に関する。
【0019】
請求項4に係る発明は、前記ブドウ種子催芽抽出物は、被験体の体重1kgあたりの有効摂取量が12~125mg/kg/日である、請求項1~3に記載の抗がん剤組成物に関する。
【0020】
請求項5に係る発明は、前記ブドウ種子催芽抽出物が、以下の(工程1)~(工程4)を含む方法によって製造される、請求項1乃至4に記載の抗がん剤組成物に関し、前記工程は、
(工程1)ヨーロッパブドウ(Vitis vinifera L.)、アメリカブドウ(Vitis labrusca L.)、ヤマブドウ(Vitis coignetiae L.)、マンシュウヤマブドウ(Vitis amurensis L.)及びシラガブドウ(Vitis shiraga L.)からなる群より選択される1種以上のブドウ種子を前処理し、催芽状態にしたブドウ種子を、35℃~60℃で乾燥させる工程、
(工程2)前記工程1において乾燥させたブドウ種子を粉末化する工程
(工程3)前記工程2で得られたブドウ種子粉末を、水、エタノール又は水とエタノールの混合溶媒のいずれかに浸漬させてブドウ種子催芽由来ポリフェノールを含む抽出画分を得る工程、
(工程4)前記工程3で得られたブドウ種子催芽由来ポリフェノールを含む抽出画分を乾燥させ粉末化する工程、に関する。
【0021】
請求項6に係る発明は、前記ブドウ種子催芽抽出物が、以下の(工程1)~(工程5)を含む方法によって製造される、請求項1乃至4に記載の抗がん剤組成物に関し、前記工程は、
(工程1)タンク内で30~60℃の温水にてブドウ種子を浸漬させる工程、
(工程2)適時にパイプ等により空気を送付して、前記工程1で浸漬したブドウ種子を催芽状態にする工程、
(工程3)前記工程2で催芽状態にしたブドウ種子を、前記タンク内で機械的な圧力、および破砕するために金属スクリューにより粉砕する工程、
(工程4)前記工程3で得られたブドウ種子粉末を、水、エタノール又は水とエタノールの混合溶媒のいずれかに浸漬させてブドウ種子催芽由来ポリフェノールを含む抽出画分を得る工程、
(工程5)前記工程4で得られたブドウ種子催芽由来ポリフェノールを含む抽出画分を乾燥させ粉末化する工程、に関する。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る発明によれば、乳癌を処置するための抗がん剤組成物であって、ブドウ種子催芽抽出物及びアントラサイクリン系抗がん剤であるドキソルビシンの組み合わせを含むことを特徴とする抗がん剤組成物に関するため、乳癌に対して抗がん剤感受性を上昇または/及び抗がん剤の作用を増強することで、抗がん剤単体と比較して、抗がん剤を低用量としても抗腫瘍効果を十分に備えた組成物を提供することができる。
また、前記抗がん剤がアントラサイクリン系抗がん剤であるドキソルビシンの組み合わせを含むことを特徴とする抗がん剤組成物に関するため、該組成物はDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、トポイソメラーゼIIのうちいずれか1つ以上の作用を有し、結果としてがん細胞のアポトーシスを誘導し、抗腫瘍作用をもたらす。
加えて前記組成物は、がんのアポトーシス感受性やドキソルビシン感受性を上昇または/及びドキソルビシンの作用を増強することで、ドキソルビシン単体と比較して、ドキソルビシンを低用量としても抗腫瘍効果を十分に備えた組成物を提供することができる。
【0023】
請求項2に係る発明によれば、前記ブドウ種子催芽抽出物がブドウ種子催芽由来ポリフェノールからなる、請求項1に記載の抗がん剤組成物に関するため、既存の薬剤や一般的なブドウ種子抽出物よりも優れた効果を持つ抗がん剤組成物を提供することができる。
【0024】
請求項3に係る発明によれば、前記ブドウ種子催芽抽出物が、粗精製で60重量%以上のブドウ種子催芽由来ポリフェノールからなることを特徴とする、請求項1または2に記載の抗がん剤組成物に関するため、既存のブドウ種子抽出物よりも優れた効果を持つブドウ種子催芽抽出物及び抗がん剤の組み合わせを含むことを特徴とする抗がん剤組成物を提供することができる。
【0025】
請求項4に係る発明によれば、前記ブドウ種子催芽抽出物は、被験体の体重1kgあたりの有効摂取量が12~125mg/kg/日である、請求項1~3に記載の抗がん剤組成物であるため、有効量を摂取することにより、がんのアポトーシス感受性や抗がん剤感受性を上昇または/及び抗がん剤の作用を増強することで、抗がん剤単体と比較して、抗がん剤を低用量としても抗腫瘍効果を十分に備えた組成物を提供することができる。
【0026】
請求項5に係る発明によれば、前記ブドウ種子催芽抽出物が、以下の(工程1)~(工程4)を含む方法によって製造される、請求項1乃至4に記載の抗がん剤組成物に関し、前記工程は、
(工程1)ヨーロッパブドウ(Vitis vinifera L.)、アメリカブドウ(Vitis labrusca L.)、ヤマブドウ(Vitis coignetiae L.)、マンシュウヤマブドウ(Vitis amurensis L.)及びシラガブドウ(Vitis shiraga L.)からなる群より選択される1種以上のブドウ種子を前処理し、催芽状態にしたブドウ種子を、35℃~60℃で乾燥させる工程、
(工程2)前記工程1において乾燥させたブドウ種子を粉末化する工程、
(工程3)前記工程2で得られたブドウ種子粉末を、水、エタノール又は水とエタノールの混合溶媒のいずれかに浸漬させてブドウ種子催芽由来ポリフェノールを含む抽出画分を得る工程、
(工程4)前記工程3で得られたブドウ種子催芽由来ポリフェノールを含む抽出画分を乾燥させ粉末化する工程、を含む方法によって製造される組成物であるため、所定の方法に沿って、ブドウ種子催芽抽出物を製造することが出来、前記抗がん剤の組み合わせを含むことを特徴とする抗がん剤組成物を製造することが出来る。
【0027】
請求項6に係る発明によれば、前記ブドウ種子催芽抽出物が、以下の(工程1)~(工程5)を含む方法によって製造される、請求項1乃至4に記載の抗がん剤組成物に関し、前記工程は、
(工程1)タンク内で30~60℃の温水にてブドウ種子を浸漬させる工程、
(工程2)適時にパイプ等により空気を送付して、前記工程1で浸漬したブドウ種子を催芽状態にする工程、
(工程3)前記工程2で催芽状態にしたブドウ種子を、前記タンク内で機械的な圧力、および破砕するために金属スクリューにより粉砕する工程、
(工程4)前記工程3で得られたブドウ種子粉末を、水、エタノール又は水とエタノールの混合溶媒のいずれかに浸漬させてブドウ種子催芽由来ポリフェノールを含む抽出画分を得る工程、
(工程5)前記工程4で得られたブドウ種子催芽由来ポリフェノールを含む抽出画分を乾燥させ粉末化する工程、を含む方法によって製造される組成物であるため、所定の方法に沿って、ブドウ種子催芽抽出物を製造することが出来、前記抗がん剤の組み合わせを含むことを特徴とする抗がん剤組成物を製造することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に係るブドウ種子催芽抽出物とドキソルビシンの組み合わせからなる組成物を添加した乳がん細胞(EMT6)における、薬物相互作用の様式を示すアイソボログラム(isobologram)プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係るブドウ種子催芽抽出物及び抗がん剤の組み合わせを含むことを特徴とする抗がん剤組成物について詳細を説明する。
【0030】
(抗がん剤の種類)
本発明に係る組成物に含まれる抗がん剤はアポトーシス誘導によって抗腫瘍作用をもたらす抗がん剤を指し、好ましくは細胞傷害性抗がん剤が用いられる。更に好ましくはアントラサイクリン系抗がん剤であり、更に具体的にはドキソルビシンから選択される。
【0031】
(ブドウ種子催芽抽出物)
本発明に係る組成物のうち、ブドウ種子催芽抽出物は、好ましくはブドウ種子催芽由来ポリフェノールからなり、より具体的には粗精製で60重量%以上のブドウ種子催芽由来ポリフェノールからなるブドウ種子催芽抽出物を含有している。
【0032】
以下の経口摂取における実施例は株式会社フィジカルより販売されているiGS4000(induced grape seed macromole 4000)を用いて実施された。iGS4000は、栄養補助食品として販売されており、主成分をブドウ種子催芽抽出物として、アルファリポ酸、アメリカニンジン抽出物、タマネギ外皮抽出物、デキストリン、黒胡椒抽出物、ニコチン酸アミド、HPMCを含み、1カプセル260mg(1カプセル内容量214mg)単位で販売されている。
【0033】
以下のインビボ及びインビトロの実験における実施例は、粗精製で50重量%~80重量%のポリフェノールを含有している粉末化したブドウ種子催芽抽出物を用い、前記抽出物を下記の処理をした上で使用した。
前記抽出物を秤量し、1%(w/v)濃度となるように基本培地に溶解し、不溶性物質を除去するために、基本培地に溶解した本発明のブドウ種子催芽抽出物を夫々遠心分離(120,000rpm(2,000s-1)、10分)した。遠心分離後、上清を回収し、滅菌フィルターを用いて濾過滅菌した。
【0034】
本明細書において、「催芽」とは、ブドウ種子を任意的に発芽を始める状態にすることをいう。より具体的には、ブドウ種子の胚芽部分が若干隆起し膨らんだ状態をいう。
この隆起の程度は特に限定されないが、好ましくは、催芽前のブドウ種子よりも胚芽部分の表面が1mm~2mm隆起した状態である。
【0035】
(ブドウ種子催芽抽出物の製造工程)
本発明に係るブドウ種子催芽抽出物及び抗がん剤の組み合わせを含むことを特徴とする抗がん剤組成物、に含まれるブドウ種子催芽抽出物は、以下の製造工程から得られる。
【0036】
<工程1>
工程1は、ブドウ種子を前処理し、催芽状態にしたブドウ種子を乾燥させる工程である。
【0037】
本発明に使用するブドウ種子のブドウの種類は特に限定されないが、好ましくは、ヨーロッパブドウ(Vitis vinifera L.)、アメリカブドウ(Vitis labrusca L.)、ヤマブドウ(Vitis coignetiae L.)、マンシュウヤマブドウ(Vitis amurensis L.)およびシラガブドウ(Vitis shiragai L.)からなる群より選択される1種以上のブドウである。
【0038】
なかでも、アギオルギティコ(Agiorgitiko)、ヴィオニエ(Viognier)、カベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)、カベルネ・フラン(Cabernet Franc)、ガメ(Gamay)、カリニャン(Carignan)、カルメネール(Carmenere)、クシノマヴロ(Xinomavro)、グルナッシュ(Grenache)、ゲヴュルツトラミネール(Gewurztraminer)、ケルナー(Kerner)、コロンバール(Colombard)、甲州、サルタナ(Sultana)、サンジョベーゼ(Sangiovese)、シャルドネ(Chardonnay)、シュナン・ブラン(Chenin Blanc)、シラー(Syrah)、ジンファンデル(Zinfandel)、セミヨン(Semillon)、ソーヴィニヨン・ブラン(Sauvignon Blanc)、タナ(Tannat)、ツヴァイゲルト(Zweigelt)、テンプラニーリョ(Tempranillo)、トレッビアーノ(Trebbiano)、ネッビオーロ(Nebbiolo)、ネロ・ダヴォラ(Nero D’Avola)、バルベーラ(Barbera)、ピノタージュ(Pinotage)、ピノ・ノワール(Pinot Noir)、ピノ・グリ(Pinot Gris)、ピノ・ブラン(Pinot Blanc)、プチ・ヴェルド(Petit Verdot)、ブラック・クィーン(Black Queen)、マスカット・ベーリーA(Muscat Bailey A)、マルベック(Malbec)、ミュラー・トゥルガウ(Muller‐Thurgau)、ムールヴェードル(Mourvedre)、ムニエ(Meunier)、ムロン・ド・ブルゴーニュ(Melon de Bourgogne)、メルロー(Merlot)、モスカート(Moscato)、ヤマ・ソービニオン、リースリング(Riesling)およびルビー・カベルネ(Ruby Cabernet)等のワイン用ブドウ品種が好ましく、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シラー、ピノ・ノワールがさらに好ましい。
【0039】
本発明において、ブドウ種子を催芽状態にするためのブドウ種子の前処理方法は特に限定されず、低温処理、温浴処理、蒸気噴霧処理、水噴霧処理、浸水処理、機械的破壊等の物理的な方法、ガス(アセチレン、エーテル、水素ガス等)処理、オーキシン処理、ジベレリン処理等の化学的な方法等、従来から植物の種子を催芽状態にするために用いられている方法であればいかなる方法を用いても良い。
【0040】
本発明において、ブドウ種子を催芽状態にするための前処理方法は特に限定されないが、例えば、より具体的には以下の前処理方法によりブドウ種子を催芽状態にすることができる。
まず、ブドウ種子を30~60℃の水に浸漬させる。
浸漬時間は、限定されるものではないが、20~80時間であることが好ましい。
次いで、30~60℃の水に浸漬させたブドウ種子を引き上げ、空気中で乾燥させる。
乾燥の温度は、限定されるものではないが、10~50℃が好ましい。
乾燥の時間は、限定されるものではないが、1~10時間が好ましい。
【0041】
次に、空気中で乾燥させたブドウ種子を15~45℃の水に浸漬させる。
浸漬時間は、限定されるものではないが、10~200分であることが好ましい。
次いで、15~45℃の水に浸漬させたブドウ種子を引き上げ、空気中で乾燥させる。
乾燥の温度は、限定されるものではないが、10~50℃が好ましい。
乾燥の時間は、限定されるものではないが、3~12時間が好ましい。
【0042】
このブドウ種子を15~45℃の水に浸漬させる工程と空気中で乾燥させる工程を、乾燥させた後、ブドウ種子の胚芽部分が若干隆起し膨らんだ状態になるまで繰り返し、ブドウ種子を断続的に含水させる。
ブドウ種子を乾燥させた後、ブドウ種子の胚芽部分が若干隆起し膨らんだ状態になったら、ブドウ種子を取り出し、雑菌を殺傷する程度の温度(80℃以下)で2~5日間さらにブドウ種子を乾燥させる。
この乾燥時間は、季節や周囲の温度や湿度によって適宜変更しても良い。
【0043】
この催芽処理の刺激により、ブドウ種子内では薄いフェノール層からフェノール分子が剥離して多重結合をしてポリフェノールを生成する。
ポリフェノールの一種であるレスベラトールは分子量250ほどであるが、この新たに生成された成分は分子量4000の成分を含む大きな高分子構造を比較的に多く含む事を特徴とする。
【0044】
<工程2>
工程2は、工程1において乾燥させた催芽状態のブドウ種子を粉末化する工程である。
粉末化の方法は、限定されるものではなく、ミルで粉末化する等の通常の方法を用いることができる。
【0045】
<工程3>
工程3は、粉末化したブドウ種子を溶媒で抽出する工程である。
この工程3により、ブドウ種子催芽由来ポリフェノールからなるブドウ種子催芽抽出物を得ることができる。
溶媒としては、水、エタノール又は水とエタノールの混合溶媒を用いることができる。
抽出は、ブドウ種子粉末100重量部に対し溶媒を50~1000重量部加えて行えばよい。
上記にて説明したように、このブドウ種子催芽由来ポリフェノールからなるブドウ種子催芽抽出物は分子量4000前後(3500~4500)の高分子成分を含んでいる。
【0046】
<工程4>
工程3で得られたブドウ種子催芽由来ポリフェノールからなるブドウ種子催芽抽出物を乾燥させた後、粉末化する。
乾燥方法は、限定されるものではないが、減圧乾燥が好適に用いられる。
粉末化の方法は、限定されるものではなく、ミルで粉末化する等の通常の方法を用いることができる。
以上の工程により、粉末化したブドウ種子催芽由来ポリフェノールからなるブドウ種子催芽抽出物を得ることができる。
【0047】
叙上の工程により得られたブドウ種子催芽抽出物は、粗精製で50重量%~80重量%のポリフェノールを含有している。
優れた作用を奏するという観点から、ブドウ種子催芽抽出物は、粗精製で60重量%以上のポリフェノールを含有していることが望ましい。
ブドウ種子催芽抽出物に含まれるポリフェノールは、各品種のブドウ種子に含まれるポリフェノールであり、例えばレスベラトロールやタンニン等がある。
ブドウ種子催芽抽出物に含まれるポリフェノールの内、50重量%~80重量%はプロアントシアニジン重合体である。
本明細書において、粗精製とは、抽出したものを乾燥して粉末化しただけであり夾雑物等を含んでおり、濃縮等の加工がされていない状態を指す。上記工程1~4で得られたブドウ種子催芽抽出物は粗精製されたものである。
【0048】
(摂取方法及び投与方法)
本発明の抗がん剤組成物は、抗がん剤の投与経路が経口投与であれば、ブドウ種子催芽抽出物及び抗がん剤の組み合わせを含むことを特徴とする、抗がん剤組成物として投与することができる。経口投与以外の経路で抗がん剤が投与される場合、ブドウ種子催芽抽出物を含む食品又はサプリメントを投与し、抗がん剤を同時又は後に投与することもできる。
好ましくは、日常的にブドウ種子催芽抽出物を含む食品又はサプリメントを摂取しているものが、経路を問わずに抗がん剤を投与される組み合わせである。
【0049】
本発明のブドウ種子催芽抽出物及び抗がん剤の組み合わせを含むことを特徴とする抗がん剤組成物は、抗がん剤とともに摂取することもできる。このような組み合わせ組成物は、がんの予防および/または治療のために使用することができる。前記抗がん剤は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、植物アルカロイド、抗生物質、白金製剤、分子標的治療剤、ホルモン剤、微小管重合阻害剤、微小管脱重合阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、生物学的応答修飾物質(biological response modifier:BRM)からなる群より選択することができるが、これらに限定されない。
【0050】
本発明の一実施例で使用される抗がん剤はアントラサイクリン系抗がん剤であるドキソルビシンである。以下にドキソルビシンについて詳細に説明する。
【0051】
作用機序は、腫瘍細胞のDNAの塩基対間にドキソルビシンが挿入されて、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ及びトポイソメラーゼII反応を阻害し、DNA及びRNAの合成を阻害することであり、結果として作用した細胞のアポトーシスを誘導することで、抗腫瘍効果を示す。
適応症は、悪性リンパ腫、肺癌、消化器癌(胃癌、胆のう・胆管癌、膵臓癌、肝癌、結腸癌、直腸癌等)、乳癌、膀胱腫瘍、骨肉腫等である。
投与経路は、主に点滴静脈内投与又は膀胱内投与であるが、経口投与も用いられることがある。
【0052】
用法及び用量は、がんの種類や各個人、医療従事者の裁量によって異なるが、例として、乳癌(手術可能例における術前、あるいは術後化学療法)に対するドキソルビシン塩酸塩通常療法の場合、以下のとおりである。
【0053】
1)1日量、ドキソルビシン塩酸塩として10mg(0.2mg/kg)(力価)を日局注射用水または日局生理食塩液に溶解し、1日1回4~6日間連日静脈内ワンショット投与後、7~10日間休薬する。この方法を1クールとし、2~3クール繰り返す。
2)1日量、ドキソルビシン塩酸塩として20mg(0.4mg/kg)(力価)を日局注射用水または日局生理食塩液に溶解し、1日1回2~3日間静脈内にワンショット投与後、7~10日間休薬する。この方法を1クールとし、2~3クール繰り返す。
3)1日量、ドキソルビシン塩酸塩として20~30mg(0.4~0.6mg/kg)(力価)を日局注射用水または日局生理食塩液に溶解し、1日1回、3日間連日静脈内にワンショット投与後、18日間休薬する。この方法を1クールとし、2~3クール繰り返す。
【0054】
アントラサイクリン系抗がん剤は慢性毒性により、生涯総投与量上限が定められていることが多く、ドキソルビシンの生涯総投与量上限は500mg(力価)/m2(体表面積)である。
前記抽出物と低用量のドキソルビシンの抗がん剤組成物の投与で十分な治療効果を与えることを可能にすることで、総投与量を抑制し、治療を継続出来る期間を延長することが可能となる。
【0055】
本発明のブドウ種子催芽抽出物及び抗がん剤の組み合わせを含むことを特徴とする抗がん剤組成物における成分の摂取量は限定されるものではないが、抗がん剤の効果を増強するという優れた効果を奏するという観点から、ブドウ種子催芽抽出物の摂取量が少なくとも1日720mg以上(体重60キログラムあたり)であることが望ましい。
また、本発明のブドウ種子催芽抽出物及び抗がん剤の組み合わせを含むことを特徴とする抗がん剤組成物におけるブドウ種子催芽抽出物を、1日あたり7500mg(体重60キログラムあたり)を超えて摂取しても効果の上昇率は小さい。
それゆえに、本発明のブドウ種子催芽抽出物及び抗がん剤の組み合わせを含むことを特徴とする抗がん剤組成物におけるブドウ種子催芽抽出物は、1日あたり720mg~7500mg(体重60キログラムあたり)摂取することが望ましい。
【0056】
本発明のブドウ種子催芽抽出物及び抗がん剤の組み合わせを含むことを特徴とする抗がん剤組成物に含まれるブドウ種子催芽抽出物の体重1kgあたりの摂取量は、特に限定されないが、抗がん剤の効果を増強する優れた作用を奏するという観点から、例えば、12~125mg/kg/日であることが望ましい。
本発明のブドウ種子催芽抽出物及び抗がん剤の組み合わせを含むことを特徴とする抗がん剤組成物におけるブドウ種子催芽抽出物の体重1kgあたりの摂取量が12mg/kg/日未満であると、抗がん剤の効果を増強する作用を十分に発揮できない虞があるため望ましくない。
また、本発明のブドウ種子催芽抽出物及び抗がん剤の組み合わせを含むことを特徴とする抗がん剤組成物におけるブドウ種子催芽抽出物を、125mg/kg/日を超えて摂取してもそれ以上効果が変わらない。
それゆえに、本発明のブドウ種子催芽抽出物及び抗がん剤の組み合わせを含むことを特徴とする抗がん剤組成物におけるブドウ種子催芽抽出物は、12~125mg/kg/日で摂取することが望ましい。
【0057】
本発明は、抗がん剤組成物に係り、より詳しくは、前記ブドウ種子催芽抽出物がブドウ種子催芽由来ポリフェノールからなり、抗がん剤単独よりも優れた抗腫瘍効果を備えることを特徴とする抗がん剤組成物に関する。
【実施例】
【0058】
本発明に係るブドウ種子催芽抽出物及び抗がん剤の組み合わせを含むことを特徴とする抗がん剤組成物について、以下の実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明に係るブドウ種子催芽抽出物及び抗がん剤の組み合わせを含むことを特徴とする抗がん剤組成物の製造方法は、実施例に限定されるものではない。
【0059】
<ブドウ種子催芽抽出物の製造>
(製造方法1)
ブドウの種子を40℃前後の水に45~60時間浸漬させ、次いでこのブドウ種子を引き上げて室温(25℃前後)で空気中に3~5時間自然乾燥(室内保管)させた。
自然乾燥させたブドウ種子を、25~30℃の水に60~80分浸漬させ、次いでこのブドウ種子を引き上げて室温(約25℃)で空気中に3時間自然乾燥(室内保管)させた。
この30℃の水への浸漬と3時間の自然乾燥を3回繰り返し、乾燥させたブドウ種子を観察すると、約5~15%のブドウ種子の胚芽部分が、約1mm隆起していることを確認した。尚、上記手順を催芽処理と称する。
ブドウ種子の胚芽部分の隆起を確認した時点で催芽処理を終了し、遠赤外線乾燥機にて45℃から90℃の任意の温度で3日間ブドウ種子をさらに乾燥させた。
3日間ブドウ種子を乾燥させた後、ミルを用いてブドウ種子を粉末化し、ブドウ種子粉末を得た。
【0060】
次いで、水100重量部に対しブドウ種子粉末を50重量部添加し、水に溶解した画分を抽出し、ブドウ種子催芽抽出物を得た。
得られたブドウ種子催芽抽出物を減圧乾燥させた後、ミルにて粉末化し、粉末化したブドウ種子催芽抽出物を得た。
【0061】
粉末化したブドウ種子催芽抽出物に含まれるポリフェノール類の総量を定量した。
ポリフェノールの総量は、AOAC Internationalの公定法(AOAC official method 952.03、15th Ed)(フォーリン・デニス(Folin・Denis)法とも称す)を用いて定量した。
フォーリン・デニス法は、アルカリ性においてフェノール性水酸基がリンタングステン酸、モリブデン酸を還元して生ずる青色(700~770nmの波長)を分光光度計で測定することにより、ポリフェノール類の総量を定量する。
定量の結果、ブドウ種子催芽抽出物は、ポリフェノールを69重量%含有していることがわかった。
また、ブドウ種子催芽抽出物に含まれるポリフェノールの内の71重量%(すなわち、ブドウ種子催芽抽出物の49重量%)がプロアントシアニジン重合体であることを確認した。
【0062】
(製造方法2)
カベルネ・ソーヴィニヨンの種子を温度(18~50℃)の水に浸漬させ、24~120時間の間保持する。この際に適時にパイプ等により空気を浸水層に送付してブドウ種子に酸素を供給する。
この保持工程の間、種子内の発芽する部分である胚芽部分が膨満して種子表面が膨らみ始めた。種子表面が膨らんだブドウ種子が全体の5%~85%であるときに、種子が浸漬した状態のままで、機械的な圧力や粉砕スクリューにて種子を粉末化して、細密フィルターを通して種子の水溶性成分を抽出した。その際は浸漬している水に高圧をかけるものとする。得られたブドウ種子催芽抽出物を減圧乾燥させた後、ミルにて粉末化し、粉末化したブドウ種子催芽抽出物を得た。
【0063】
(製剤の調製)
上記のように製造されたブドウ種子催芽抽出物は、粉末または液体の製剤として調製することができる。また、ブドウ種子催芽抽出物の効果を妨害しない範囲内で、各種賦形剤や添加物を加えて、サプリメントの形態とすることもできる。このようなサプリメントの一例として、株式会社フィジカルから販売されている、iGS4000を、ブドウ種子催芽抽出物として好適に使用することができる。
【0064】
次に、上記のように調製したブドウ種子催芽抽出物を含む製剤を用いて、本発明に係る抗がん剤組成物を調製し、各試験を行った。
【0065】
<EMT6細胞の調製>
各試験に使用するマウス乳癌EMT6細胞を調製した。
EMT6細胞(金沢大学がん進展制御研究所細胞バンクより供与)を起眠後に基本培地(E-MEM(富士フイルム和光純薬(株)製、製品番号:051-07615)、10%FBS(シグマアルドリッチ社製、製品番号:F7524、Lot No.BCBX4446)、1%抗生物質(ペニシリン-ストレプトマイシン混合溶液(富士フイルム和光純薬(株)製、製品番号:168-23191)))中で、CO2インキューベーター内(5%CO2、37℃)で必要細胞数に達するまで培養した。
培養後、EMT6細胞をトリプシン/EDTA(2.5グラム/1-トリプシン/1mmol/l-EDTA溶液(ナカライテスク社製、製品番号:32777-44))を用いて剥離し、細胞数を計測した後、細胞を各試験に使用した。
【0066】
<ブドウ種子催芽抽出物の調製>
粉末化したブドウ種子催芽抽出物を調製した。
ブドウ種子催芽抽出物を秤量し、1%(w/v)濃度となるように基本培地に溶解した。
溶解後、不溶性物質を除去するために、基本培地に溶解した本発明のブドウ種子催芽抽出物を夫々遠心分離(120,000rpm(2,000s-1)、10分)した。
遠心分離後、上清を回収し、滅菌フィルターを用いて濾過滅菌したものを各試験に使用した。
【0067】
<抗がん剤組成物による抗腫瘍活性比較(ドキソルビシン)>
図1はブドウ種子催芽抽出物とドキソルビシンの組み合わせからなる組成物を添加した乳がん細胞(EMT6)における、薬物相互作用の様式を示す図である。
本発明に係る抗がん剤組成物の一実施例である、ブドウ種子催芽抽出物及びドキソルビシンをマウス乳がん細胞(EMT6)に添加、培養し、一定時間後の細胞数を細胞染色し、吸光度により生細胞を計測した。
【0068】
本発明における抗がん剤組成物による抗腫瘍活性比較は以下の手順で行った。
調製したEMT6細胞を1.5×103cells/wellの濃度で96wellプレートに播種し、細胞をプレートに定着させ、細胞の定着後、ドキソルビシン、調整したブドウ種子催芽抽出物の順でそれぞれ添加し、本発明に係る抗がん剤組成物とした。それぞれの終濃度は以下の通りである。
ブドウ種子催芽抽出物の終濃度は0、0.001、0.003%のいずれかであり、ドキソルビシンの終濃度は0、0.01、0.02、0.03、0.04μMとした。
CO2インキューベーター内(5%CO2、37℃)で24時間インキュベートし、PBSで2回ウォッシュし、クリスタルバイオレットを添加して15分静置し、水道水で4回ウォッシュした後に、乾燥させ、1%SDS溶液100μLで溶出し、吸光度を測定した(Abs 570nm, Reference 720nm)
吸光度から細胞の生存率を算出した。
ブドウ種子催芽抽出物単体およびドキソルビシン単体でのIC50となる濃度はそれぞれ、0.0049%、0.055μMであった。
上記の結果をアイソボログラム法(isobologram法)によって、IC50値をプロットした。
【0069】
前記のアイソボログラム法(isobologram法)のプロットから、ブドウ種子催芽抽出物およびドキソルビシンの同時投与によって、ブドウ種子催芽抽出物はドキソルビシンの抗腫瘍作用を相乗的に増強することが示された。
より具体的には、ブドウ種子催芽抽出物の終濃度が0.003%の時、IC50となるドキソルビシンの終濃度は0.005μMであり、ドキソルビシン単体でIC50となる終濃度である0.055μMの1/11という結果が得られた。
【0070】
アイソボログラム法(isobologram法)は一定の作用を発現するのに必要な各薬物の用量もしくは濃度を指標として、相互作用の様式を判別する方法として用いられている方法である。相乗効果、相加効果、拮抗効果については、グラフ中に記載の通りである。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の抗がん剤組成物は、抗がん剤感受性を上昇または/及び抗がん剤の作用を増強することで、低用量の抗がん剤投与でも十分な抗腫瘍効果を付与することを可能とし、抗がん剤の総投与量を抑制することから、医薬品、健康食品やサプリメントなどの分野での利用価値が高い。