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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】接合基板及び接合基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/38 20060101AFI20230605BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20230605BHJP
   H01L 23/13 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
H05K3/38 E
H05K1/03 610E
H01L23/12 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021505061
(86)(22)【出願日】2020-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2020009983
(87)【国際公開番号】W WO2020184510
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-08-06
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/010561
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134991
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 和樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148507
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 弘行
(72)【発明者】
【氏名】海老ヶ瀬 隆
(72)【発明者】
【氏名】増田 いづみ
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-074565(JP,A)
【文献】特表2018-506496(JP,A)
【文献】特開2001-339155(JP,A)
【文献】国際公開第2017/200004(WO,A1)
【文献】特開2017-035805(JP,A)
【文献】国際公開第2011/034075(WO,A1)
【文献】特開2005-268821(JP,A)
【文献】国際公開第2017/006661(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/38
H05K 1/03
H01L 23/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ケイ素セラミックス基板と、
前記窒化ケイ素セラミックス基板上に配置される銅板と、
前記窒化ケイ素セラミックス基板上に配置され、前記銅板を前記窒化ケイ素セラミックス基板に接合する唯一の層であり、前記窒化ケイ素セラミックス基板と前記銅板との間にある板間部、及び前記窒化ケイ素セラミックス基板と前記銅板との間からはみ出し外部に露出するはみ出し部を備える、単一層である接合層とを備え、
前記銅板が銀を含み、前記はみ出し部が銀を含まない、
接合基板。
【請求項2】
前記接合層は、0.1μm以上3μm以下の厚さを有する
請求項1の接合基板。
【請求項3】
前記はみ出し部は、チタン及びジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素と窒素及びケイ素からなる群より選択される少なくとも1種の元素との化合物のみからなる
請求項1又は2の接合基板。
【請求項4】
a) 窒化ケイ素セラミックス基板上に、銀を含む金属粉末、並びに水素化チタン粉末及び水素化ジルコニウム粉末からなる群より選択される少なくとも1種の水素化金属粉末を含む活性金属ろう材を含むろう材層を形成する工程と、
b) 前記ろう材層上に銅板を配置し、前記窒化ケイ素セラミックス基板、前記銅板及び前記ろう材層を備える中間品を得る工程と、
c) 前記中間品に対してホットプレスを行い、前記金属粉末に含まれる銀を、前記銅板に拡散させ、前記ろう材層を、前記銅板を前記窒化ケイ素セラミックス基板に接合する単一層であり銀を含まない接合層のみに変化させる工程と、
d) 前記銅板及び前記接合層をパターニングし、前記銅板を、パターニングされた銅板に変化させ、前記接合層を、前記窒化ケイ素セラミックス基板と前記パターニングされた銅板との間にある板間部、及び前記窒化ケイ素セラミックス基板と前記パターニングされた銅板との間からはみ出し外部に露出するはみ出し部を備えるパターニングされた接合層に変化させる工程と、
を備える接合基板の製造方法。
【請求項5】
工程d)は、
d-1) 前記銅板をエッチングし、前記銅板を、エッチングされた銅板に変化させ、前記接合層に、前記窒化ケイ素セラミックス基板と前記エッチングされた銅板との間にある第1の部分、及び前記窒化ケイ素セラミックス基板と前記エッチングされた銅板との間にない第2の部分を形成する工程と、
d-2) 前記第2の部分をエッチングし、前記第2の部分を除去する工程と、
d-3) 前記エッチングされた銅板をソフトエッチングし、前記エッチングされた銅板を、前記パターニングされた銅板に変化させ、前記第1の部分を、前記パターニングされた接合層にする工程と、
を備える請求項4の接合基板の製造方法。
【請求項6】
前記活性金属ろう材は、40重量%以上80重量%以下の銀を含む
請求項4又は5の接合基板の製造方法。
【請求項7】
前記活性金属ろう材は、0.1μm以上10μm以下の平均粒子径を有する粉末からなる
請求項4から6までのいずれかの接合基板の製造方法。
【請求項8】
前記ろう材層は、0.1μm以上5μm以下の厚さを有する
請求項4から7までのいずれかの接合基板の製造方法。
【請求項9】
前記はみ出し部は、チタン及びジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素と窒素及びケイ素からなる群より選択される少なくとも1種の元素との化合物のみからなる
請求項4から8までのいずれかの接合基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合基板及び接合基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ケイ素セラミックスは、高い熱伝導性及び高い絶縁性を有する。このため、銅板が接合層を介して窒化ケイ素セラミックス基板に接合された接合基板は、パワー半導体素子が実装される絶縁放熱基板として好適に用いられる。
【0003】
当該接合基板は、多くの場合は、ろう材層が銅板と窒化ケイ素セラミックス基板との間にある中間品を作製し、作製した中間品を熱処理してろう材層を接合層に変化させ、銅板及び接合層をパターニングすることにより製造される。
【0004】
銅板の端部への応力の集中に起因する接合基板の不良を抑制するために、接合層に、窒化ケイ素セラミックス基板と銅板との間からはみ出すはみ出し部を形成することが提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1に記載されたセラミックス回路基板においては、銅回路板が、ろう材層を介して、窒化珪素から形成されたセラミックス基板の少なくとも一方の面に接合される(段落0013及び0020)。セラミックス回路基板は、銅回路板とセラミックス基板との間に介在されたろう材層、及び銅回路板の側面から外側にはみ出したろう材はみ出し部を備える(段落0013)。ろう材層は、Ag、Cu及びTiを含むろう材から形成される(段落0013)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6158144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたセラミックス回路基板に代表される従来の技術においては、イオンマイグレーション現象により窒化ケイ素セラミックス基板と銅板との間からはみ出すはみ出し部から銀が移動し、はみ出し部からの銀の移動に起因する接合基板の不良が発生する場合がある。例えば、85℃85%RHの環境下で数kV/mmの直流電界又は交流電界が印加された場合に、はみ出し部からの銀の移動に起因する接合基板の不良が発生する場合がある。
【0008】
本発明は、この問題を考慮してなされた。本発明が解決しようとする課題は、銅板の端部への応力の集中に起因する接合基板の不良を抑制しながら、イオンマイグレーション現象によりはみ出し部から銀が移動することを抑制し、はみ出し部からの銀の移動に起因する接合基板の不良を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、接合基板に向けられる。
【0010】
接合基板は、窒化ケイ素セラミックス基板、銅板及び接合層を備える。接合層は、銅板を窒化ケイ素セラミックス基板に接合する。
【0011】
銅板及び接合層は、窒化ケイ素セラミックス基板上に配置される。接合層は、窒化ケイ素セラミックス基板と銅板との間にある板間部、及び窒化ケイ素セラミックス基板と銅板との間からはみ出し外部に露出するはみ出し部を備える単一層である
【0012】
銅板が銀を含む一方、はみ出し部は、銀を含まない。
【0013】
本発明は、接合基板の製造方法にも向けられる。
【0014】
接合基板の製造方法においては、窒化ケイ素セラミックス基板上に、ろう材層が形成される。ろう材層は、銀を含む金属粉末、並びに水素化チタン粉末及び水素化ジルコニウム粉末からなる群より選択される少なくとも1種の水素化金属粉末を含む活性金属ろう材を含む。
【0015】
続いて、ろう材層上に銅板が配置される。これにより、窒化ケイ素セラミックス基板、銅板及びろう材層を備える中間品が得られる。
【0016】
続いて、中間品に対してホットプレスが行われる。これにより、金属粉末に含まれる銀が、銅板に拡散する。また、ろう材層が、銅板を窒化ケイ素セラミックス基板に接合する単一層であり銀を含まない接合層に変化する。
【0017】
続いて、銅板及び接合層がパターニングされる。これにより、銅板が、パターニングされた銅板に変化する。また、接合層が、パターニングされた接合層に変化する。パターニングされた接合層は、窒化ケイ素セラミックス基板とパターニングされた銅板との間にある板間部、及び窒化ケイ素セラミックス基板とパターニングされた銅板との間からはみ出し外部に露出するはみ出し部を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、銅板の端部への応力の集中がはみ出し部により緩和される。これにより、銅板の端部への応力の集中に起因する接合基板の不良を抑制することができる。
【0019】
また、本発明によれば、はみ出し部が、銀を含まない。このため、イオンマイグレーション現象によりはみ出し部から銀が移動することを抑制することができる。これにより、はみ出し部からの銀の移動に起因する接合基板の不良を抑制することができる。
【0020】
この発明の目的、特徴、局面及び利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1合基板を模式的に示す断面図である。
図2合基板の一部を模式的に示す拡大断面図である。
図3合基板の製造の流れを示すフローチャートである。
図4合基板の製造の途上で得られる中間品を模式的に示す断面図である。
図5合基板の製造の途上で得られる中間品を模式的に示す断面図である。
図6合基板の製造の途上で得られる中間品を模式的に示す断面図である。
図7合基板の製造における銅板及び接合層のパターニングの流れを示すフローチャートである。
図8合基板の製造における銅板及び接合層のパターニングの途上で得られる中間品を模式的に示す断面図である。
図9合基板の製造における銅板及び接合層のパターニングの途上で得られる中間品を模式的に示す断面図である。
図10】実施形に係る接合基板と対比される接合基板を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1 接合基板
図1は、実施形態に係る接合基板100を模式的に示す断面図である。図2、接合基板100の一部を模式的に示す拡大断面図である。図2は、図1の一部Aの拡大図である
【0023】
合基板100は、図1及び図2に図示されるように、窒化ケイ素セラミックス基板110、銅板111、接合層112、銅板113及び接合層114を備える。接合基板100がこれらの要素以外の要素を備えてもよい。銅板111及び接合層112の組、並びに銅板113及び接合層114の組の片方の組が省略されてもよい。
【0024】
銅板111及び113は、それぞれ接合層112及び114を介して窒化ケイ素セラミックス基板110に接合されている。銅板111及び113は、それぞれ接合層112及び114により窒化ケイ素セラミックス基板110の主面1101及び1102に活性金属ろう付け法によりろう付けされている。
【0025】
接合基板100は、どのように用いられてもよいが、例えばパワー半導体素子が実装される絶縁放熱基板として用いられる。
【0026】
2 銅板の端部への応力の集中の緩和
銅板111及び接合層112は、図1及び図2に図示されるように、窒化ケイ素セラミックス基板110の主面1101上に配置される。銅板113及び接合層114は、図1に図示されるように、窒化ケイ素セラミックス基板110の主面1102上に配置される。
【0027】
接合層112及び114は、それぞれ銅板111及び113を窒化ケイ素セラミックス基板110の主面1101及び1102に接合する。
【0028】
接合層112は、板間部120及びはみ出し部121を備える。板間部120は、窒化ケイ素セラミックス基板110と銅板111との間にある。はみ出し部121は、窒化ケイ素セラミックス基板110と銅板111との間からはみ出す。接合層114は、板間部122及びはみ出し部123を備える。板間部122は、窒化ケイ素セラミックス基板110と銅板113との間にある。はみ出し部123は、窒化ケイ素セラミックス基板110と銅板113との間からはみ出す。接合基板100においては、銅板111及び113の端部への応力の集中が、それぞれはみ出し部121及び123により緩和される。これにより、銅板111及び113の端部への応力の集中に起因する接合基板100の不良を抑制することができる。
【0029】
接合層112及び114は、望ましくは0.1μm以上3μm以下の厚さを有する。接合層112及び114がこのようにわずかな厚さしか有しないことにより、銅板111及び113の端部への応力の集中がそれぞれはみ出し部121及び123により効果的に緩和される。
【0030】
3 はみ出し部からの銀の移動の抑制
図1及び図2に図示される接合層112及び114は、チタン(Ti)及びジルコニウム(Zr)からなる群(第1の群)より選択される少なくとも1種の元素と窒素(N)及びケイ素(Si)からなる群(第2の群)より選択される少なくとも1種の元素との化合物を含むが、銀(Ag)を含まない。このため、はみ出し部121及び123も、第1の群より選択される少なくとも1種の元素と第2の群より選択される少なくとも1種の元素との化合物を含むが、銀を含まない。このため、イオンマイグレーション現象によりはみ出し部121及び123から銀が移動することを抑制することができる。これにより、はみ出し部121及び123からの銀の移動に起因する接合基板100の不良を抑制することができる。ここでいうはみ出し部121及び123が銀を含まないことは、はみ出し部121及び123がイオンマイグレーション現象を発生させる濃度を有する銀を含まないことを意味し、痕跡量の銀を含むことを除外しない。接合層112及び114は、望ましくは第1の群より選択される少なくとも1種の元素と第2の群より選択される少なくとも1種の元素との化合物のみからなる。このため、はみ出し部121及び123も、望ましくは第1の群より選択される少なくとも1種の元素と第2の群より選択される少なくとも1種の元素との化合物のみからなる。また、接合層112及び114は、スズ(Sn)、リン(P)等の上述したイオンマイグレーション現象を促進する元素を含まない。
【0031】
4 はみ出し部による空隙の防止
図10は、本実施形態に係る接合基板100と対比される接合基板900を模式的に図示する断面図である。
【0032】
図10に図示される接合基板900は、はみ出し部121及び123を備えない。これに起因して、接合基板900は、窒化ケイ素セラミックス基板110と銅板111との間に形成される空隙921を有し、窒化ケイ素セラミックス基板110と銅板113との間に形成される空隙923を有する。
【0033】
はみ出し部121を設けることは、空隙921が形成されることを防止する。また、はみ出し部123を設けることは、空隙923が形成されることを防止する。これにより、パワー半導体素子、及びボンディングワイヤー等の配線が接合基板100に実装され、パワー半導体素子、配線及び接合基板100からなる複合体が耐湿性を有するゲルにより封止された場合に当該ゲルが侵入しにくい空隙921及び923が形成されることを防止することができ、絶縁不良の原因となるボイドが空隙921及び923に起因して残ることを防止することができる。また、当該複合体が樹脂でモールドされた場合に当該樹脂が侵入しにくい空隙921及び923が形成されることを防止することができ、絶縁不良の原因となるボイドが空隙921及び923に起因して残ることを防止することができる。
【0034】
5 接合基板の製造方法
図3、接合基板100の製造の流れを示すフローチャートである。図4図5及び図6、接合基板100の製造の途上で得られる中間品を模式的に示す断面図である。
【0035】
合基板100の製造においては、図3に示される工程S101からS104までが順次に実行される。
【0036】
工程S101においては、図4に図示されるように、窒化ケイ素セラミックス基板110の主面1101及び1102上に、それぞれろう材層132及び134が形成される。接合基板100から銅板111及び接合層112が省略される場合は、ろう材層132を形成することが省略される。接合基板100から銅板113及び接合層114が省略される場合は、ろう材層134を形成することが省略される。
【0037】
ろう材層132及び134が形成される際には、活性金属ろう材及び溶剤を含むペーストが調製される。ペーストがバインダ、分散剤、消泡剤等をさらに含んでもよい。続いて、調製されたペーストが窒化ケイ素セラミックス基板110の主面1101及び1102上にスクリーン印刷され、窒化ケイ素セラミックス基板110の主面1101及び1102上にそれぞれ第1及び第2のスクリーン印刷膜が形成される。続いて、形成された第1及び第2のスクリーン印刷膜に含まれる溶剤が揮発させられる。これにより、第1及び第2のスクリーン印刷膜が、それぞれろう材層132及び134に変化する。ろう材層132及び134は、活性金属ろう材を含む。ろう材層132及び134がこの方法とは異なる方法により形成されてもよい。
【0038】
活性金属ろう材は、銀(Ag)、銅(Cu)及びインジウム(In)を含む金属粉末、並びに水素化チタン(TiH)粉末及び水素化ジルコニウム(ZrH)粉末からなる群より選択される少なくとも1種の水素化金属粉末を含む。活性金属ろう材の組成が変更されてもよい。例えば、銅及びインジウムの両方又は片方が金属粉末に含まれなくてもよく、銅及びインジウム以外の金属元素が金属粉末に含まれてもよい。
【0039】
活性金属ろう材は、望ましくは40重量%以上80重量%以下の銀を含む。係る場合、下述する工程S103において銀を銅板111A及び113Aに拡散させ接合層112B及び114B銀を含まないようにすることが容易になる。
【0040】
活性金属ろう材は、望ましくは0.1μm以上10μm以下の平均粒子径を有する粉末からなる。平均粒子径は、市販のレーザー回折式の粒度分布測定装置により粒度分布を測定し、測定した粒度分布からD50を算出することにより得ることができる。活性金属ろう材がこのように小さい平均粒子径を有する粉末からなることにより、ろう材層132及び134を薄くすることができる。
【0041】
ろう材層132及び134は、望ましくは0.1μm以上5μm以下の厚さを有する。ろう材層132及び134がこのようにわずかな厚さしか有しないことにより、ろう材層132及び134に含まれる銀が少なくなり、下述する工程S103において銀を銅板111A及び113Aに拡散させ接合層112B及び114B銀を含まないようにすることが容易になる。
【0042】
工程S102においては、図5に図示されるように、形成されたろう材層132及び134上にそれぞれ銅板111A及び113Aが配置される。これにより、窒化ケイ素セラミックス基板110、銅板111A、ろう材層132、銅板113A及びろう材層134を備える中間品100Aが得られる。接合基板100から銅板111及び接合層112が省略される場合は、銅板111Aを配置することが省略される。接合基板100から銅板113及び接合層114が省略される場合は、銅板113Aを配置することが省略される。
【0043】
工程S103においては、得られた中間品100Aに対してホットプレスが行われる。これにより、ろう材層132及び134が、図6に図示されるように、それぞれ接合層112B及び114Bに変化する。接合層112B及び114Bは、それぞれ銅板111A及び113Aを窒化ケイ素セラミックス基板110に接合する。ろう材層132及び134に含まれる銀及びインジウムそれぞれ、ろう材層132及び134がそれぞれ接合層112B及び114Bに変化する過程で銅板111A及び113Aに拡散する。これにより、最終的に得られる接合層112B及び114B銀及びインジウムを含まなくなるすなわち、熱処理後に得られる中間体100Bの接合層112B及び114Bは、第1の群より選択される少なくとも1種の元素と第2の群より選択される少なくとも1種の元素との化合物を含むが、銀を含まない。第2の群より選択される少なくとも1種の元素は、窒化ケイ素セラミックス基板110から供給される。
【0044】
工程S103においては、望ましくは、中間品100Aが、真空中又は不活性ガス中で、最高面圧が5MPa以上25MPa以下となる面圧プロファイルにしたがって窒化ケイ素セラミックス基板110の厚さ方向に加圧され、最高温度が800℃以上900℃以下となる温度プロファイルにしたがって加熱される。係る場合、ろう材層132及び134の厚さが0.1μm以上5μm以下と小さい場合においても、ボイド形成なしに銅板111A及び113Aを窒化ケイ素セラミックス基板110に接合することができる。また、当該範囲のようなボイドが形成されない範囲でろう材層132及び134を薄くすることによってろう材層132及び134に含まれる銀を少なくした場合には、熱処理によって銀を銅板111A及び113Aに拡散させ接合層112B及び114Bが銀を含まないようにすることが容易になる。また、活性金属ろう材を構成する粒子の形状が層状の形状に変化すること、並びに銅板111A及び113Aに銀等が拡散することにより、接合層112B及び114Bが実質的に0.1μm以上3μm以下の厚さを有するようになる。
【0045】
工程S104においては、銅板111A、接合層112B、銅板113A及び接合層114Bがパターニングされる。これにより、銅板111A及び113Aが、それぞれ図1に図示されるパターニングされた銅板111及び113に変化する。また、接合層112B及び114Bが、それぞれ図1に図示されるパターニングされた接合層112及び114に変化する。
【0046】
6 銅板及び接合層のパターニング
図7、接合基板100の製造における銅板及び接合層のパターニングの流れを示すフローチャートである。図8及び図9、接合基板100の製造における銅板及び接合層のパターニングの途上で得られる中間品を模式的に図示する断面図である。
【0047】
合基板100の製造における銅板111A、接合層112B、銅板113A及び接合層114Bのパターニングにおいては、図7に図示される工程S111からS113までが順次に実行される。
【0048】
工程S111においては、銅板111A及び113Aがエッチングされる。これにより、銅板111A及び113Aの一部が除去されることで、銅板111A及び113Aが、図8に図示される銅板111C及び113C(エッチング済み銅板111C及び113C)に変化する。これに伴い、接合層112B、窒化ケイ素セラミックス基板110とエッチング済み銅板111Cとの間にある第1の部分140と、窒化ケイ素セラミックス基板110とエッチング済み銅板111Cとの間以外にある第2の部分141とを、有するようになる。また、接合層114B、窒化ケイ素セラミックス基板110とエッチング済み銅板113Cとの間にある第1の部分142と、窒化ケイ素セラミックス基板110とエッチング済み銅板113Cとの間以外にある第2の部分143とを、有するようになる。銅板111A及び113Aのエッチングには、塩化鉄水溶液系、塩化銅水溶液系等のエッチング液を用いることができる。
【0049】
工程S112においては、接合層112Bおよび114Bの第2の部分141及び143がエッチングされる。これにより、図9に図示されるように、第2の部分141及び143が除去され、第1の部分140及び142が残る。残った第1の部分140及び142それぞれ図1に示す接合基板100における接合層112及び114に該当する。第2の部分141及び143のエッチングには、フッ化アンモニウム水溶液系等のエッチング液を用いることができる。工程S112において、第1の部分140及び142の両端部がエッチングにより除去される場合もある。
【0050】
工程S113においては、エッチング済み銅板111C及び113Cがさらにソフトエッチングされる。これにより、エッチング済み銅板111C及び113Cの端部が除去されることで、エッチングされた銅板111C及び113Cが、それぞれ図1に図示される銅板(パターニング済み銅板)111及び113に変化する。これに伴い、接合層112及び114(第1の部分140及び142)に、それぞれ図1に図示される板間部120及び122、それぞれ図1に図示されるはみ出し部121及び123とが、形成される。エッチング済み銅板111C及び113Cのソフトエッチングには、塩化鉄水溶液系、塩化銅水溶液系等のエッチング液を用いることができる。工程S113により、工程S112において第1の部分140及び142の両端部がエッチングにより除去された場合であっても、はみ出し部121及び123を確実に形成することができる。
【0051】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0052】
100 接合基板
110 窒化ケイ素セラミックス基板
111,113,111A,113A 銅板
112,114,112B,114B 接合層
120,122 板間部
121,123 はみ出し部
132,134 ろう材層
100A 中間品
140 第1の部分
141 第2の部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10