(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】最適化緩和を制御可能とした非干渉性の閉ループステップ試験の装置および方法
(51)【国際特許分類】
G05B 13/04 20060101AFI20230605BHJP
G05B 17/02 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
G05B13/04
G05B17/02
(21)【出願番号】P 2021548510
(86)(22)【出願日】2019-10-03
(86)【国際出願番号】 US2019054465
(87)【国際公開番号】W WO2020091942
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-06-24
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500204511
【氏名又は名称】アスペンテック・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AspenTech Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】ツェン・キンシェン・クイン
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0149208(US,A1)
【文献】特表2015-507300(JP,A)
【文献】特開2004-265381(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0005889(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0099724(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0316905(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 17/02
G05B 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業プロセスの非干渉性の閉ループステップ試験実施の最適化緩和を制御する、コンピュータに実装される方法であって、
プラント又は精製所の、少なくとも1つのプロセス変数を有する前記産業プロセスを制御するMPCコントローラを設定する過程と、
前記少なくとも1つ
のプロセス変数
のそれぞれについて、
(i)当該プロセス変数の最新値と当該プロセス変数の目標値との間の許容可能な差異を定義した、ギブアウェイ許容範囲に対してユーザが指定する値を受け取る過程と、
(ii)当該プロセス変数の前記最新値が、受け取った前記ギブアウェイ許容範囲を満たしているか否かを判定する過程と、
1つ以上の前記プロセス変数が前記受け取ったギブアウェイ許容範囲を満たしていない場合、当該1つ以上のプロセス変数を前記受け取ったギブアウェイ許容範囲へと移動させるように前記MPCコントローラの設定を調節する過程と、
調節後の前記設定を用いて、前記少なくとも1つのプロセス変数の新たな目標値を算出する過程と、
前記少なくとも1つのプロセス変数を前記算出した新たな目標値へと移動させる制御変動を生成する動的変動プランを生成する過程と、
(a)前記少なくとも1つのプロセス変数の制約および(b)前記調節後の設定との関連でステップサイズを最大化することにより、摂動信号を算出する副過程、ならびに、算出した前記摂動信号を用いて、前記産業プロセスの閉ループステップ試験を実施する副過程によって、前記動的変動プランに、前記調節後の設定に基づいて算出した摂動信号を追加する過程と、
を備える、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記MPCコントローラの前記設定が目的関数を含み、前記設定を調節する過程が、さらに、
前記少なくとも1つ
のプロセス変数
のそれぞれについて、
(a)前記目的関数を用いて、当該プロセス変数の最適目標値を算出する副過程、
(b)算出した前記最適目標値を基準として前記最新値が前記ギブアウェイ許容範囲内にあるのか否かに基づいて、当該プロセス変数を最適化対象とするのか否かを決定する副過程、
(c)当該プロセス変数を最適化対象としないことを決定した場合、前記目的関数を、前記目的関数で行われる計算から当該プロセス変数を除外することによって調節し、当該プロセス変数に関して前記設定を当該プロセス変数の上限値および下限値を変更することによって調節する副過程、ならびに、
調節後の前記目的関数及び調節後の前記設定を用いて、前記新たな目標値を算出する副過程、
を含む、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、前記目的関数が、最小コストに基づく経済性最適化用に構築されている、方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法において、前記目的関数が、前記決定したプロセス変数のコスト係数を含み、前記決定したプロセス変数を除外することが、前記コスト係数をゼロに設定することを含む、方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法において、前記プロセス変数の上限値および下限値を変更する際に、前記最新値の計算が当該ギブアウェイ許容範囲を満たし、他のプロセス変数を最適化させるための余地が生まれる、方法。
【請求項6】
請求項2に記載の方法において、さらに、
前記少なくとも1つ
のプロセス変数
のそれぞれについて、
1つ以上のプロセス変数が前記ギブアウェイ許容範囲外である場合に、前記調節後の目的関数及び前記調節後の設定で最適化を再実行することにより、前記ギブアウェイ許容範囲内であるプロセス変数の前記最新値の最適化を緩和させると同時に、前記ギブアウェイ許容範囲外である前記1つ以上のプロセス変数の前記最新値を前記ギブアウェイ許容範囲内に又は前記ギブアウェイ許容範囲付近へと移動させる過程、
を備える、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、前記少なくとも1つのプロセス変数が、操作変数(MV)および制御変数(CV)の少なくとも一方を含む、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、前記動的変動プランを生成する過程が、さらに、
前記調節後の設定に基づいて、制御信号を算出する副過程、および
算出した前記制御信号を用いて、前記産業プロセスの挙動を調節する副過程、
を含む、方法。
【請求項9】
産業プロセスの非干渉性の閉ループステップ試験実施の最適化緩和を制御するコンピュータシステムであって、
ユーザが少なくとも1つ
のプロセス変数
のそれぞれのギブアウェイ許容範囲を設定するのを可能にするように構成された、ユーザインターフェースと、
プラント又は精製所の、
前記少なくとも1つのプロセス変数を有する前記産業プロセスを制御するように構成された、MPCコントローラと、
を備え、前記MPCコントローラが、
前記少なくとも1つ
のプロセス変数
のそれぞれの目標値最適化手段であって、
(i)当該プロセス変数の最新値と当該プロセス変数の目標値との間の許容可能な差異を表した、設定済みのギブアウェイ許容範囲を、前記ユーザインターフェースから受け取るように、かつ、
(ii)当該プロセス変数の前記最新値が、受け取った前記ギブアウェイ許容範囲を満たしているか否かを判定するように、かつ、
1つ以上の前記プロセス変数が前記受け取ったギブアウェイ許容範囲を満たしていない場合、当該1つ以上のプロセス変数を前記受け取ったギブアウェイ許容範囲へと移動させるよう前記MPCコントローラの設定を調節するように、かつ、
調節後の前記設定を用いて、前記少なくとも1つのプロセス変数の新たな目標値を算出するように、
構成された、目標値最適化手段、および
動的制御手段であって、
前記少なくとも1つのプロセス変数を、前記算出した新たな目標値へと移動させる制御変動を生成する動的変動プランを生成するように、かつ、
(a)前記少なくとも1つのプロセス変数の制約および(b)前記調節後の設定との関連でステップサイズを最大化することによって摂動信号を算出し、かつ、算出した前記摂動信号を用いて前記産業プロセスの閉ループステップ試験を実施することにより、前記動的変動プランに、前記調節後の設定に基づいて算出した前記摂動信号を追加するように、
構成された、動的制御手段、
を実現する、コンピュータシステム。
【請求項10】
請求項
9に記載のコンピュータシステムにおいて、前記MPCコントローラの前記設定が目的関数を含み、前記目標値最適化手段が、さらに、
前記少なくとも1つ
のプロセス変数
のそれぞれについて、
(a)前記目的関数を用いて、当該プロセス変数の最適目標値を算出するように、かつ、
(b)算出した前記最適目標値を基準として前記最新値が前記ギブアウェイ許容範囲内にあるのか否かに基づいて、当該プロセス変数を最適化対象とするのか否かを決定するように、かつ、
(c)当該プロセス変数を最適化対象としないことを決定した場合、前記目的関数を、前記目的関数で行われる計算から当該プロセス変数を除外することによって調節し、当該プロセス変数に関して前記設定を前記プロセス変数の上限値および下限値を変更することによって調節するように、かつ、
調節後の前記目的関数及び調節後の前記設定を用いて、前記新たな目標値を算出するように、
構成されている、コンピュータシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のコンピュータシステムにおいて、前記目的関数が、最小コストに基づく経済性最適化用に構築されている、コンピュータシステム。
【請求項12】
請求項10に記載のコンピュータシステムにおいて、前記目的関数が、前記決定したプロセス変数のコスト係数を含み、前記目標値最適化手段が、前記コスト係数をゼロに設定することによって、前記決定したプロセス変数を除外する、コンピュータシステム。
【請求項13】
請求項10に記載のコンピュータシステムにおいて、前記プロセス変数の上限値及び下限値を変更する際に、前記最新値の計算が当該ギブアウェイ許容範囲を満たし、他のプロセス変数を最適化させるための余地が生まれる、コンピュータシステム。
【請求項14】
請求項10に記載のコンピュータシステムにおいて、前記目標値最適化手段が、さらに、
前記少なくとも1つ
のプロセス変数
のそれぞれについて、
1つ以上のプロセス変数が前記ギブアウェイ許容範囲外である場合に、前記調節後の目的関数及び前記調節後の設定で最適化を再実行することにより、前記ギブアウェイ許容範囲内であるプロセス変数の前記最新値の最適化を緩和させると同時に、前記ギブアウェイ許容範囲外である1つ以上の前記プロセス変数の前記最新値を前記ギブアウェイ許容範囲内に又は前記ギブアウェイ許容範囲付近へと移動させるように、
構成されている、コンピュータシステム。
【請求項15】
請求項9に記載のコンピュータシステムにおいて、前記少なくとも1つのプロセス変数が、操作変数(MV)である、コンピュータシステム。
【請求項16】
コンピュータ読取り可能なコードが記憶されたコンピュータ読取り可能な非過渡的記憶媒体であって、前記コードは、コンピュータプロセッサによってロード及び実行されることで、当該コンピュータプロセッサに、
プラント又は精製所の、少なくとも1つのプロセス変数を有する産業プロセスを制御するMPCコントローラを設定する手順と、
前記少なくとも1つ
のプロセス変数
のそれぞれについて、
(i)当該プロセス変数の最新値と当該プロセス変数の目標値との間の許容可能な差異を定義した、ギブアウェイ許容範囲に対してユーザが指定する値を受け取る手順と、
(ii)当該プロセス変数の前記最新値が、受け取った前記ギブアウェイ許容範囲を満たしているか否かを判定する手順と、
1つ以上の前記プロセス変数が前記受け取ったギブアウェイ許容範囲を満たしていない場合、当該1つ以上のプロセス変数を前記受け取ったギブアウェイ許容範囲へと移動させるように前記MPCコントローラの設定を調節する手順と、
調節後の前記設定を用いて、前記少なくとも1つのプロセス変数の新たな目標値を算出する手順と、
前記少なくとも1つのプロセス変数を前記算出した新たな目標値へと移動させる制御変動を生成する動的変動プランを生成する手順と、
(a)前記少なくとも1つのプロセス変数の制約および(b)前記調節後の設定との関連でステップサイズを最大化することにより摂動信号を算出し、算出した前記摂動信号を用いて、前記産業プロセスの閉ループステップ試験を実施することによって、前記動的変動プランに、前記調節後の設定に基づいて算出した前記摂動信号を追加する手順と、
で前記産業プロセスの非干渉性の閉ループステップ試験実施の最適化緩和を制御する、記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2018年10月30日付出願の米国特許出願第16/174,641号の継続出願である。上記出願の全教示内容は、参照をもって本明細書に取り入れたものとする。
【背景技術】
【0002】
プロセス産業には、石油プロセス、化学プロセス、製薬プロセスなどに関与する産業が含まれており、それぞれ対応するプロセスプラントや工場や産業プロセスシステムを有している。多変数予測制御(MPC)は、プロセス産業で最も広く利用されている高度プロセス制御技術であり、全世界で5,000を超えるアプリケーションが現在稼働している。多変量制御(MVC)と称されることもあるMPCは、例えばシステム同定で得られる線形動的モデル等といった、目下のプロセスについての動的モデルを利用する。当該動的モデルは、プロセスの挙動(制御変数(CV))を予測し、操作変数(MV)を変更するものである。これにより、MPCは、目下のプロセスの操業を所定の制約集合内に維持することができる。当該制約集合内であるとき、MPCは、プロセスの挙動が目的関数に基づいて(定常状態目標値として)最適となるようMVに対してさらなる変更を行う。
【0003】
一般的かつ困難な課題は、目下の対象プロセスでの設備変更、操業戦略の変更、フィード組成の変更、機器の劣化などといった不可避の変化が原因となって、MPCのパフォーマンスが経時的に低下するという点である。制御パフォーマンスのこのような低下は、利益の損失に繋がる。大概の場合、制御パフォーマンス低下の原因として考えられ得るあらゆる原因のなかでも、モデルの正確性の低さが主な要因である。良好な制御パフォーマンスを維持するには、モデルを定期的に校正・更新する必要がある。
【0004】
しかしながら、問題のあるモデルを特定し、これに取って代わる新たなモデルをMPCアプリケーションで再同定するというタスクは、技術的に困難であると共にリソースを大量消費する。このような試みは、参照をもって全体を本明細書に取り入れたU.S. Patent No. 6,819,964(特許文献1)に開示されている。大規模なMPCアプリケーションでは、100を超えるプロセス変数(例えば、MV、CV等)が関与し得る。従来のアプローチで再試験・再同定を実施しようとすると、熟練のエンジニアであっても数週間に亘って集中的に従事することになったり、通常操業が大幅に中断されることになったりし得る。
【0005】
プロセス業界は、対象プロセスにプラント試験を実施するための自動的かつ安全な、低干渉性アプローチを長く所望している。前世代のMPCでは、目標値の一つ一つの変化が僅かなものであったとしても、各制御サイクルごとに新たな定常状態目標値をプロセス制御エンジンで算出していた。そして、新たな定常状態目標値を用いて新たな動的変動プランを算出し、最初の変動を対象プロセスに書き出していた。こうすることにより、プロセスコントローラ(例えば、MPCコントローラ)の積分動作に、測定ノイズやプロセス外乱やモデル誤差により生じた、有効CV限度値からのオフセットが確実に含まれなくなる。しかし、このアプローチでは、コントローラのモデルに存在する準共線性やプラントノイズへの根拠のない過剰反応がしばしば生じていた。このアプローチでは、さらに、回収されたデータセット内で過剰なフィードバック相関性が発生し、モデル同定目的に適さない閉ループデータセットとなってしまっていた。プロセスコントローラの電源をオンにしてから純粋な閉ループデータをずっと用いた場合には、同定したモデルに著しいバイアスが生じる(すなわち、大きな誤差が含まれることになる)。純粋な閉ループデータから同定したモデルの正確性は、非2乗型のMPCで正確な挙動を促すのにしばしば不十分なものとなっていた。
【0006】
参照をもって全体を本明細書に取り入れたU.S. Patent No. 7,209,793(特許文献2)では、プラント試験を実施するためのアプローチとして、特許文献1に開示された閉ループステップ試験を改良した革新的なアプローチが提案されている。同ステップ試験は、プロセスを特殊設計の多変数(MPC)コントローラでセーフガードしながら自動的に実施されるものである。同ステップ試験のプロセス摂動アプローチでは、プロセス変数を所定の操業制約内に維持しつつプロセス出力を最大限にするような摂動が、複数のプロセス入力変数に対して同時に加えられる。
【0007】
しかしながら、上記の自動的閉ループステップ試験を用いたとしても、変数の摂動によってプロセスの通常操業に幾らかの悪影響(主には、最適な操業パフォーマンスの犠牲)が生じることは免れられない。参照をもって全体を本明細書に取り入れたものとするU.S. Patent No. 9,513,610(特許文献3)では、最適なプロセス操業とプロセス摂動との間の調整可能なトレードオフによってこの課題に対処するという、革新的なアプローチが提供されている。特許文献3には、モデリング目的に有用なデータを生成することができるプロセス摂動を、経済性最適化を緩和させた閉ループ制御内にプロセスが位置したまま自動的に実施する装置および方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第6819964号明細書
【文献】米国特許第7209793号明細書
【文献】米国特許第9513610号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
閉ループステップ試験時の、プロセス摂動と経済性最適化との間のトレードオフは、コントローラの経済性最適化目的関数の緩和に基づいて実現され得る。典型的な経済性最適化目的関数は、重み付き操作変数(MV)と重み付き制御変数(CV)との線形的組合せからなる。目的関数では変数が異なればその重み付けも異なり得る(例えば、コスト係数が異なる)ので、全体的な目的関数トレードオフ許容範囲を違反しなかったとしても、変数によっては、理想的な定常状態目標値から(他の変数と比べて)大なり小なり離れてしまうことがある。これが起きると、一部のプロセス変数が所望の動作範囲外にドリフトする可能性があるため、ステップ試験中のプロセス操業の懸念事項といえる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態は、動的プロセスのステップ試験(例えば、非干渉性の閉ループステップ試験)を実施するアプローチとして、従来のアプローチの問題点に対処した新規のアプローチを提供する。同実施形態は、MVやCVのコスト係数のばらつきが原因でステップ試験時にMVやCVの動作範囲に偏りが生じることがないように経済性最適化を緩和させるための手法を提供する。本明細書に開示する本発明の新規のアプローチと従来のアプローチとの間には、重要な違いがある。すなわち、従来のアプローチは(特許文献3に開示されているように)プロセス摂動と最適制御との間でトレードオフを実現し得るのに対し、本発明の新規のアプローチでは、ステップ試験でプロセス摂動を実施しているあいだ各プロセス変数が所望の動作範囲に良好に維持されることになる。MPCコントローラの経済性目的関数が明確に定義されていなかったとしても、本発明の新規のアプローチは、プロセス摂動が実施されているあいだ各変数を最適目標値付近に維持することが可能である。同アプローチは、さらに、MPCコントローラの再調整やランタイム割込みの必要性を大幅に減少させることができる。
【0011】
本発明の実施形態は、産業プロセスのステップ試験実施のパフォーマンスを向上させる、コンピュータシステム、装置、方法およびプログラムプロダクトに向けられている。当該コンピュータシステムは、ユーザインターフェースと、目標値最適化手段および動的制御手段を含むMPCコントローラ(装置)とを備える。前記コンピュータプログラムプロダクトは、コード命令が記憶されたか又は組み込まれた、コンピュータ読取り可能な非過渡的記憶媒体を含む。当該記憶媒体は、前記コンピュータコード命令がプロセッサによって実行されることで当該プロセッサに同実施形態の構成要素を実現させることになるよう、当該プロセッサに動作可能に接続されている。
【0012】
前記コンピュータシステム、方法およびプログラムプロダクトは、プラント又は精製所の、少なくとも1つのプロセス変数を有する産業プロセスを制御するMPCコントローラを設定する。前記コンピュータシステム、方法およびプログラムプロダクトは、前記少なくとも1つの各プロセス変数について、当該プロセス変数の最新値(現在値)と当該プロセス変数の目標値との間の許容可能な範囲を表した、最適化ギブアウェイ許容範囲を(例えば、前記目標値最適化手段で)受け取る。実施形態では、前記少なくとも1つの各プロセス変数の前記ギブアウェイ許容範囲が、ユーザインターフェースを介してユーザにより設定される。前記コンピュータシステム、方法およびプログラムプロダクトは、前記少なくとも1つの各プロセス変数について、当該プロセス変数の前記最新値が、受け取った前記ギブアウェイ許容範囲を満たしているか否かを判定する。前記コンピュータシステム、方法およびプログラムプロダクトは、1つ以上の前記プロセス変数が前記受け取ったギブアウェイ許容範囲を満たしていない場合、当該1つ以上のプロセス変数を前記受け取ったギブアウェイ許容範囲へと移動させるように前記MPCコントローラの設定を調節する。前記コンピュータシステム、方法およびプログラムプロダクトは、調節後の前記設定を用いて、前記少なくとも1つのプロセス変数の新たな目標値を算出する。前記コンピュータシステム、方法およびプログラムプロダクトは、算出された前記新たな目標値から、動的変動プランを生成する。前記コンピュータシステム、方法およびプログラムプロダクトは、前記動的変動プランに、前記調節後の設定に基づいて算出した摂動信号を追加する。
【0013】
実施形態において、前記MPCコントローラの前記設定は、目的関数を含む。これらの実施形態の一部では、当該目的関数が、最小コストに基づく経済性最適化用に構築されている。同実施形態では、前記コンピュータシステム、方法およびプログラムプロダクトが、前記MPCコントローラの設定を次のように調節する。前記コンピュータシステム、方法およびプログラムプロダクトは、前記少なくとも1つの各プロセス変数について、前記目的関数を用いて当該プロセス変数の最適目標値を算出する。前記コンピュータシステム、方法およびプログラムプロダクトは、算出した前記最適目標値を基準として前記最新値が前記ギブアウェイ許容範囲内にあるのか前記ギブアウェイ許容範囲外にあるのかに基づき、当該プロセス変数を最適化対象とするのか否かを決定する。前記コンピュータシステム、方法およびプログラムプロダクトは、当該プロセス変数を最適化対象としないことを決定した場合、当該プロセス変数に関して前記目的関数及び動作限度値を調節する(当該プロセス変数の値の最適化を緩和させる)。
【0014】
一部の実施形態では、前記目的関数を調節することが、最適化対象としないことを決定した前記プロセス変数を、前記目的関数で行われる計算から除外することを含む。前記目的関数は、前記決定したプロセス変数のコスト係数を含み得て、かつ、前記コンピュータシステム、方法およびプログラムプロダクトが、前記決定したプロセス変数を、前記コスト係数をゼロに設定することによって除外する。前記コンピュータシステム、方法およびプログラムプロダクトは、既に前記ギブアウェイ許容範囲内である各プロセス変数の上限値及び下限値を、前記最新値の計算が当該ギブアウェイ許容範囲を満たすようにしながら他のプロセス変数を最適化させるための余地が生まれるように変更することによって、前記MPCコントローラの前記設定を調節し得る。前記コンピュータシステム、方法およびプログラムプロダクトは、1つ以上のプロセス変数が自身のギブアウェイ許容範囲外である場合に、前記調節後の目的関数及び前記調節後の設定で最適化を再実行し得る(新たな最適目標値を算出し得る)。当該再実行により、前記ギブアウェイ許容範囲外である前記プロセス変数の前記最新値は、前記ギブアウェイ許容範囲内に又は前記ギブアウェイ許容範囲付近へと移動する。前記コンピュータシステム、方法およびプログラムプロダクトは、前記調節後の目的関数及び前記調節後の設定(例えば、変更後のプロセス変数)を用いて、前記新たな目標値を算出する。
【0015】
一部の実施形態では、前記コンピュータシステム、方法およびプログラムプロダクトが、前記摂動信号を前記動的変動プランに次のようにして追加する。前記コンピュータシステム、方法およびプログラムプロダクトは、(a)前記少なくとも1つのプロセス変数の制約および(b)前記調節後の設定との関連でステップサイズを最大化することにより、前記摂動信号を算出する。前記動的変動プラン中のその算出された摂動信号を用いて、前記産業プロセスにステップ試験が実施される。一部の実施形態では、前記動的変動プランを生成することが、さらに、前記調節後の設定に基づいて制御信号を算出することを含み、当該動的変動プラン中のその算出された制御信号を用いて、前記産業プロセスの挙動(操業および結果)が調節される。
【0016】
前述の内容は、添付の図面に示す例示的な実施形態についての以下のより詳細な説明から明らかになる。異なる図をとおして、同一の符号は同一の構成/構成要素を指すものとする。図面は必ずしも縮尺どおりではなく、むしろ、実施形態を図示することに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】本発明の一部の実施形態を実現する多変量モデリング・制御システムの一例についての模式図である。
【
図1B】本発明の実施形態における、プラントプロセスを測定・制御するプロセスユニットの一例についての模式図である。
【
図1C】本発明の実施形態における、MPCコントローラの一例についてのブロック図である。
【
図2A】古いバージョンのMPCコントローラによる従来の実行動作を示すフロー図である。
【
図2B】本発明の実施形態における、MPCコントローラによる実行動作の一例を示すフロー図である。
【
図3】本発明の実施形態における、ステップ試験実施のパフォーマンスを向上させる方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の1つ以上の実施形態における、産業プロセスをモデリング・制御するコンピュータシステム(又はデジタル処理システム)についてのブロック図である。
【
図5】本発明の実施形態が実現され得るコンピュータネットワーク環境の一例についての概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、例示的な実施形態について説明する。
【0019】
本明細書で引用する全ての特許、特許出願公開公報及び刊行物は、その全教示内容を参照をもって取り入れたものとする。
【0020】
(多変量モデリング・制御システムの一例)
図1Aは、本発明の一部の実施形態を実現する多変量モデリング・制御システム100の一例についての模式図である。実施形態において、
図1Aのシステム100は、ステップ試験のパフォーマンスを向上させる(最適化緩和を向上させる)
図3の方法300を実行する。例示的な一実施形態において、多変量モデリング・制御システム100は、Aspen Technologies社(米国マサチューセッツ州ベドフォード)製のDMC3(登録商標)である。
図1Aの実施形態において、多変量モデリング・制御システム100は、ユーザインターフェースディスプレイ140を備える。ユーザインターフェースディスプレイ140は、MPCコントローラ105と自動データ選択・オンラインモデル同定モジュール(データモジュール)115とに通信可能に接続されている。ユーザインターフェースディスプレイ140とMPCコントローラ105及びデータモジュール115のそれぞれとの間のインターフェース接続は、有線接続、またはWi
-Fi
(登録商標)、Bluetooth
(登録商標)などの無線接続であり得る。
図1Aに示す一部の実施形態では、MPCコントローラ105とデータモジュール115とが、プラントプロセス110を制御・モデル化する1つ以上のプロセッサにおける(of)別々のサブシステムとして構成され得る。同実施形態では、MPCコントローラ105とデータモジュール115とが、有線接続、またはWi
-Fi、Bluetoothなどの無線接続で通信可能に接続され得る。他の実施形態では、データモジュール115が、プラントプロセス110を制御・モデル化する1つ以上のプロセッサとして実現されたMPCコントローラ105サブシステムのうちの一部として構成され得る。MPCコントローラ105は、さらに、(石油化学プラント、化学プロセスプラントなどの実際のプラントの)プラントプロセス110に通信可能に接続されている。
【0021】
データモジュール115は、プラントプロセス110の挙動を定義するために、線形モデル及び非線形モデル(MPCモデル)の少なくとも一方を生成する。データモジュール115に通信可能に接続されたMPCコントローラ105が、生成されたMPCモデル(生成MPCモデル)を用いて、プラントプロセス110の今後の挙動を予測、最適化及び制御する。例示的な実施形態において、プラントプロセス110の最適化用にデータモジュール115で生成されたMPCモデルは、プラントプロセス110の最適挙動(操業および出力)を規定した定常状態目標値をコスト係数に基づいて算出する目的関数を含み得る。データモジュール115は、ユーザ又はシステムがプラントプロセス110の挙動を生成MPCモデルとして定義するためのパラメータを提供し得る。当該パラメータには、プラントプロセス110のMVやCVを設定するためのパラメータや、各変数の最適化ギブアウェイ許容範囲を設定するためのパラメータが含まれる。これらのパラメータは、ユーザ又はシステムがプラントプロセス110の前記MPCモデルを規定することが可能になるようユーザインターフェースディスプレイ140に表示され得る。また、データモジュール115は、実際のプラントから(例えば、プラントプロセス出力135から)MPCコントローラ105が受け取ったプラント測定値130や試験データ132、(例えば、ヒストリアンデータベースからの)履歴プロセスデータなどに基づいて、プラントプロセス110の挙動を生成MPCモデルとして定義し得る。一部の実施形態では、生成MPCモデル(又は付属パラメータ)が、データモジュール115のメモリ又はデータモジュール115に通信可能に接続されたメモリに記憶され得て、かつ、プラントプロセス110の挙動を定義するために事後的にデータモジュール115へとロードされ得る。
【0022】
MPCコントローラ105は、プラントプロセスのMV値として受け取ったプラント測定値130や試験データ132やその他のプラントプロセス出力135から決まるプロセス条件の変化に応じて、プラントプロセス110の、CV値で規定される今後の挙動を予測するよう、生成MPCモデルをロードし且つその解を求める。MPCコントローラ105は、さらに、プラントプロセス出力135やモデル予測値に応じてMVを調節することによってプラントプロセス110を最適に調節する目的で、生成MPCモデルをロードし且つその解を求める。具体的に述べると、生成MPCモデルは、所定の制約集合内で考えられ得る最大の最適経済性利益をもたらしながらプラントプロセス110が確実に稼働し続けるようMVを最適に調節するために用いられ得る。
【0023】
MPCコントローラ105は、制御変動を含む制御信号120を(実際のプラントの)プラントプロセス110に送り込むことにより、設定された最適挙動へと当該プラントプロセス110を押し進める(例えば、実際のプラントのコンポーネントを調節後のMVに基づいてプログラムする)。MPCコントローラ105は、さらに、ステップ変動を含む摂動信号120をプラントプロセス110に送り込むことにより、ステップ試験(例えば、非干渉性の閉ループステップ試験)に基づくデータを生成し得る。実際のプラントは、一般的に、プラントプロセス110を前記制御信号に基づいて調節(制御変動)したりプラントプロセス110を摂動信号に基づいて試験(ステップ変動)したりする分散制御システム(DCS)またはその他のプラントプロセス制御システムで構成されている。前記DCSは、プラントプロセス110のプラント測定値130や試験データ132やその他のプロセス出力135をMPCコントローラ105に送り返して、プラントプロセス110の今後の予測や最適化を行わせる。
【0024】
(プラントプロセス制御の一例)
図1Bは、本発明の実施形態における、プラントプロセス110を測定・制御するプラント設備を備えたプロセスユニット108の一例についての模式図である。プラントプロセス110は、一般的に、プラントプロセス110を測定・制御する1つ以上のプラントプロセス制御システム(または分散制御システム(DCS)システム)170で構成された実際のプラントにて実施される。
図1Bでは、プラントプロセス制御システム170が、プラントプロセス110に関する温度、圧力、流量などのパラメータについてのプラント測定値130を取得するように構成されている(そのような装備を有している)。具体的に述べると、プラントプロセス制御システム170は、プラントプロセス110に関するプラント測定値の最新値を測定するように前記プラントにて構成された実在センサと通信する。例えば、プラントプロセス制御システム170は、プラントプロセス110に関わる蒸留塔噴流を測定する流量計150や、プラントプロセス110に関わる頂塔圧力を測定する圧力センサ152や、プラントプロセス110に関わる頂塔温度を測定する温度センサ154や、プラントプロセス110に関わるフィード流温度を測定する温度センサ156と通信し得る。さらなる例として、プラントプロセス制御システム170は、プラントプロセス110に関わるヒータフィード通過流量を測定する流量計158や、プラントプロセス110に関わる燃料ガス圧力を測定する圧力センサ160や、プラントプロセス110に関わる蒸気圧力を測定する圧力センサ162や、プラントプロセス110に関わるリフラックスドラム圧力を測定する圧力センサ164とも通信し得る。
【0025】
プラントプロセス制御システム170は、さらに、実在センサ150,152,154,156,158,160,162,164で測定されたプラント測定値130をMPCコントローラ105に送信するように構成され得る。MPCコントローラ105は、送信されたプラント測定値130を前記生成MPCモデルに用いることにより、プラントプロセス110の各MV(例えば、蒸留塔噴流、頂塔圧力、頂塔温度、フィード流温度、ヒータフィード通過流量等)や各CV(例えば、燃料ガス圧力、蒸気圧力、リフラックスドラム圧力等)に関する最新挙動を算出し得る。MPCコントローラ105は、プラント測定値130に基づいて、プラントプロセス110の今後の挙動についての予測値を更新し得るほか、プラントプロセス110の挙動を最適化するようMVを追加調節し得る。
【0026】
MPCコントローラ105は、さらに、最適挙動へとプラントプロセス110を押し進める(例えば、実際のプラントのコンポーネントを追加調節後のMVに基づいてプログラムする)ように構成された制御信号120を、(実際のプラントの)プラントプロセス110に送り込む。プラントプロセス制御システム170は、制御信号120を受信し、前記追加調節後のMVに従ってプラントのアクチュエータ142、バルブ144、ポンプ/コンプレッサ146、ゲージ148などの実在コンポーネントを調節(プログラム)するように構成されている(そのような装備を有している)。プラントプロセス制御システム170は、実在センサ150,152,154,156,158,160,162,164からプラント測定値130の最新値を取得し得るほか、調節後の前記実在コンポーネント(アクチュエータ142、バルブ144、ポンプ146およびゲージ148)の設定の最新値をプロセス出力135の一部として取得し得る。そして、プラントプロセス制御システム170は、前記MPCモデルに利用出来るようプラント測定値130の最新値およびプロセス出力135をMPCコントローラ105へと送信して、プラントプロセス110についての今後の予測および最適化を行わせ得る。
【0027】
図1Bでは、プラントプロセス制御システム(またはDCS)170が、さらに、ステップ試験をプラントプロセス110に(例えば、設備142,144,146,148に対して)実施するように構成されている(そのような装備を有している)。これを行うにあたって、MPCコントローラ105は、MV用のステップ試験系列でプログラムされた摂動信号120を算出し、これを(実際のプラントの)プラントプロセス110に送り込む。プラントプロセス制御システム170は、摂動信号120を受信し、プログラムされた前記ステップ試験系列に従ってプラントプロセス(例えば、アクチュエータ142、バルブ144、ポンプ/コンプレッサ146等)をステップ変動させてステップ試験を実施するように構成されている(そのような装備を有している)。プラントプロセス制御システム170は、プラントプロセス(アクチュエータ142、バルブ144、ポンプ146およびゲージ148)を変動させた結果を、プロセス出力135の一部として(試験データ132として)取得し得る。そして、プラントプロセス制御システム170は、前記MPCモデルに利用出来るよう試験データ132をMPCコントローラ105へと送信して、プラントプロセス110についての今後の予測および最適化を行わせ得る。
【0028】
(MPCコントローラの一例)
図1Cは、本発明の実施形態における、MPCコントローラ105の一例についてのブロック図である。一部の実施形態では、MPCコントローラ105が、
図1Aのプロセスモデリングシステム100の一サブシステムとして構成されている。実施形態において、
図1CのMPCコントローラ105は、
図3の方法300を実行してステップ試験のパフォーマンスを向上させる(最適化緩和を向上させる)。
図1Cの実施形態では、データモジュール115が、MPCコントローラ105サブシステムのうちの、プラントプロセス110を制御・モデル化する1つ以上のプロセッサとして構成されたモジュールに組み込まれている。典型的なMPCコントローラ105でMVの移動を引き起こす3つの動因は、(1)フィードバック補正、(2)定常状態目標値の最適化、および(3)動的変動プランの最適化である。
【0029】
MPCコントローラ105は、予測・フィードバック補正モジュール207を有する。予測・フィードバック補正モジュール207は、プラントプロセス110の挙動を予測するためのモデル215を含む。なお、モデル215は、
図1Cのように予測・フィードバック補正モジュール207で生成されるのではなく
図1Aのようにデータモジュール115で生成されるものとされてもよい。予測・フィードバック補正モジュール207は、さらに、モデル215で算出された計算値(解)から予測バイアスを取り除くことでフィードバック補正を行うフィルタ220を含む。一部の実施形態において、フィルタ220は、プラント測定値130とモデル予測値との差分をその後の予測値をシフトさせるバイアスとして用い得る。他の実施形態では、フィルタ220が、カルマンフィルタからなり得る。例えば、参照をもって全体を本明細書に取り入れたS. Joe Qin & Thomas A. Badgwell, “A survey of industrial model predictive control technology,” Control Engineering Practice, 11:733-764 (2003)を参照されたい。予測・フィードバック補正モジュール207は、コンピュータメモリ(例えば、ヒストリアンデータベース)から取り出された履歴値(開ループ予測値)に基づいてプラントプロセス110を予測し得る。また、予測・フィードバック補正モジュール207は、プラントのプラント測定値130や出力135(すなわち、
図1Bの実在プラントセンサのデータ)由来の調節済みMV値(閉ループ予測値)および/またはフィルタリング済みCV値(補正フィードバック値)に基づいてプラントプロセス110を予測し得る。
【0030】
図1CのMPCコントローラ105では、予測・フィードバック補正モジュール207から(フィルタリング後の)モデル解が目標値最適化手段230に供給されてMVの最適定常状態目標値が算出される。目標値最適化手段230は、外部からの目標データ235の一部としての最適化モデルを用いて、プラントプロセス110の任意の実行サイクルの(最適MV値を含む)定常状態目標値を構築する。なお、目標値最適化手段230は、
図1Cのように当該目標値最適化手段230で生成された最適化モデルではなく
図1Aのようにデータモジュール115で生成された最適化モデルを用いるものとされてもよい。目標値最適化手段230は、定常状態目標値(最適MV値)を、各変数ごとに設定されるコスト係数を用いた最小コスト用の経済性目的関数に基づいて構築し得る。
【0031】
図1CのMPCコントローラ105では、目標値最適化モジュール230で算出された定常状態目標値が、動的制御手段225に(例えば、制御信号120として)供給される。動的制御モジュール225は、定常状態目標値を用いてプラントプロセス110の変動プランを算出する。つまり、本発明のMPCコントローラ105は、プラントプロセス110を最適化するにあたって2つの別々の最適化機能を果たす。1つ目の最適化機能は、変数制約を維持しながら目的関数を最適化する定常状態目標値の構築である(目標値最適化手段230で行われる)。2つ目の最適化機能は、最適に算出された時系列で変数を前記定常状態目標値へと移動させるような制御変動を生成する動的変動プランの算出である(動的制御モジュール225で行われる)。本発明の実施形態では、さらに、各MV用のまたは所定のMV同士の組合せ用の摂動信号(ステップ変動)が動的変動プランに追加される。当該摂動信号は、プロセス110のステップ試験実施に利用される。
【0032】
(閉ループステップ試験)
MPC105のモデル215の正確性が、多変数モデリング・制御システム100で達成可能な閉ループパフォーマンスの上限を決める。しかし、達成可能なモデルの正確性には、有限な限界がある。これは、非線形である場合が多い実際のプロセスを線形モデルで表現することで起きる近似化誤差や、ノイズや外乱が通常混入している観測プロセスデータに基づいてモデルをシステム同定処理で同定するという構成が原因である。
【0033】
一般的に、大規模なプロセスユニット108についての正確なモデルを導き出す最も費用対効果の高い方法は、安全性や操業性の制約を逸脱することなく適切な試験信号(摂動信号)120でプロセスユニット108に積極的に摂動を加えることである(閉ループステップ試験と称される)。このプロセス摂動は、プロセスユニット108の全振幅範囲及び全周波数範囲をカバーしている必要がある。ステップやパルスやランダム白色雑音系列や擬似乱数バイナリ(PRBS)信号を含め、幾つかの様々な種類の試験信号が利用可能である。プロセス制御業界では、人工的に生成し易いことからステップ試験信号が広く利用されている。この手法は、ステップ試験と称される。本説明の目的上、どのような試験信号を用いるのかにかかわらず、経験的な動的モデルを同定する目的でプロセスユニット108に摂動を加えることを、ステップ試験と称することにする。
【0034】
ステップ試験は、プロセスユニット108の全てのMVに対して、直交的かつ独立した十分に大きなステップ状の変化を細心の監視下で付加することからなる。MVは、プロセスユニット108を構成する制御バルブ144、ポンプ/コンプレッサ146などに各自接続されたアクチュエータによって調節される変数であり、例えばフィード量、流量、容器温度等である。そして、ステップ試験データがシステム同定アルゴリズムに利用されることにより、観測プロセス応答値に対する動的モデル215のフィッティングが行われる。ステップ試験の時間及びそれに伴うコストを抑えるには、これらのステップ状の変化の振幅を、プロセスの動的挙動がはっきりと観測されるように且つ信号対雑音比が最大限になるように十分な振幅にする必要がある。正確なモデルを確実に同定できるように、MV間の相関性(依存性)は最小限に抑えられる必要がある。
【0035】
大きなステップ状の変化を用い、かつ、MV間の相関性やフィードバック補正が確実に最小限になるようにし、かつ、ステップ試験系列がプロセスの定常状態到達時間(TTSS)を基準として超高速ステップ~超低速ステップの周波数範囲全体に確実に及ぶようにすることにより、モデルの正確性が達成される。大きな未測定外乱の影響を抑えるにはMVに補正変動を頻繁に加えなければならず、それによって不要なフィードバック補正が生じることが、モデルの正確性低下の一因であり得る。
【0036】
プロセスユニット108のステップ試験用の摂動信号120は、動的制御手段225で生成されて動的変動プランに追加されてプロセスユニット108へと送り込まれ得る。本発明の実施形態において、ステップ試験に用いるMVへのプログラムされたステップ状の変化(変動)を含む摂動信号120は、プロセス制約および経済性制約の条件下でステップサイズが最大となるようにして算出される。本発明の実施形態では、MPCコントローラ105が、プロセス110に摂動を加えるための範囲を確保するために(すなわち、摂動を実施しているあいだ各プロセス変数を所望の動作範囲に維持するために)変数の経済性最適化を緩和させ得る。そして、動的制御手段225で算出された、信号(制御信号および摂動信号)120を含む動的変動プランが、プラントユニット108に送信される。プロセス制御システム170は、制御信号を用いてプラントプロセス110を最適挙動へと制御し/移動させ、摂動信号を用いてプラントプロセス110のステップ試験(例えば、非干渉性の閉ループステップ試験)を実施する。前記動的プランが予測・フィードバック補正モジュール207のモデル215にも受け渡されることで、プラントプロセス110の挙動についてのさらなる予測が実行される(これにより、サイクルが再開して反復状態となり得る)。
【0037】
(従来のMPCコントローラの実行動作)
図2Aは、古いバージョンのMPCコントローラ200(例えば、Aspen Technologies社(米国マサチューセッツ州ベドフォード)製のDMCplus(登録商標)の古いバージョンのもの)による従来の実行動作についてのシステム図である。MPCコントローラ200は、
図1A及び
図1CのMPCコントローラの古いバージョンのものであり得る。この古いバージョンのMPCコントローラ200は、(古いバージョンの予測モジュールにて)対象プロセス114の各プロセス制御変数(CV)についてのモデル予測値を生成する(204)。MPCコントローラ200は、各実行サイクルごとに、(古いバージョンの目標値最適化手段にて)MVの定常状態目標値を目的関数に基づいて算出する(270)。MPCコントローラ200は、対象プロセス114のプロセス変数の一つ一つの変化が僅かなものであったとしても、各サイクルごとに定常状態目標値の最新値を算出する(270)。そして、MPCコントローラ200は、(古いバージョンの動的制御手段にて)当該算出済みの定常状態目標値を用いて動的変動プランを算出する(244)。MPCコントローラ200は、当該算出済みの動的変動プランの変動(出力254)を送り出して、対象プロセス114を制御し且つ試験する。
【0038】
(MPCコントローラの改良品の実行動作)
図2Bは、本発明の実施形態における、ステップ試験のパフォーマンスを向上させるMPCコントローラ201の改良品による実行動作についてのシステム図である。MPCコントローラ201は、
図1A及び
図1CのMPCコントローラ105の一実施形態である。MPCコントローラ201(予測モジュール207)は、対象プロセス110の各CVのモデル予測値を、MPCモデル、前の入力および過去の予測誤差に基づいて生成する(214)。MPCコントローラ201(目標値最適化手段230)は、各実行サイクルごとに、対象プロセス110の制約の条件下で各MV及びCVの定常状態目標値を目的関数(J)に基づいて算出する(222)。本発明の実施形態において、MPCコントローラ201は、操業最適化(利益最大化またはコスト最小化設定;「Min Cost(最小コスト)」とも称される)に基づいて構築された目的関数を用いて、各変数の目標値(理想的な最適目標値)を算出する(222)。他の実施形態では、MPCコントローラ201が、最小変動制御(制約制御設定;「Min Move(最小変動)」とも称される)に基づいて構築された目的関数を用いて、目標値を算出し得る。
【0039】
本発明のMPCコントローラ201は、
図2Aの従来のMPCコントローラ200と違って、摂動対象の各プロセス変数の範囲を確保するため、プロセス変数の最適化の緩和を行う。MPCコントローラ201は、これを行うにあたって、各変数の最適化ギブアウェイ許容範囲を受け取るように構成されている。一部の実施形態では、最適化ギブアウェイ許容範囲が、(例えば、ユーザインターフェース140を介して)ユーザにより設定される。最適化ギブアウェイ許容範囲は、変数の最新値と当該変数の目標値との間の許容可能な範囲を表したものである。MPCコントローラ201は、最適化ギブアウェイ許容範囲に基づいて、対象プロセス内で最適化対象とする変数を選択する。選択しなかった各変数(すなわち、自身の最適化ギブアウェイ許容範囲を満たす変数)については、MPCコントローラ201(目標値最適化手段230)が、当該変数の最適化ギブアウェイ許容範囲に関する最新設定(例えば、変数の動作限度値の最新値、目的関数等)を調節する(224)。この調節224により、選択しなかった(既に自身の最適化ギブアウェイ許容範囲内にある)変数の最適化が緩和されると同時に、選択した変数を最適化させるための余地(範囲)が生まれる。そして、MPCコントローラ201(目標値最適化手段230)は、調節後の目的関数を用いて、各変数の新たな定常状態目標値を算出する(226)。
【0040】
そして、MPCコントローラ201(動的制御手段225)は、算出された定常状態目標値を用いて(制御信号を含んだ)動的変動プランを算出する(240)。MPCコントローラ201は、さらに、摂動信号を算出して、これをステップ試験(例えば、非干渉性の閉ループステップ試験)用の動的変動プランに追加する。MPCコントローラ201は、算出した動的変動プランの出力250を信号(制御信号および摂動信号)120の形態でプロセス制御システム(またはDCS)170に送信して対象プロセス110を制御/試験する。プロセス制御システム170は、当該信号を用いて、プラントのアクチュエータ142などの実在コンポーネントに制御変動および/またはステップ変動を加える。
【0041】
(ステップ試験のパフォーマンスを向上させる方法)
図3は、本発明の実施形態における、産業プロセスへのステップ試験(例えば、非干渉性の閉ループステップ試験)のパフォーマンスを向上させる方法300の一例である。方法300の本例により、最適化緩和を向上させながら産業プロセスのステップ試験を実施することができる。これを行うにあたって、方法300の本例は、産業プロセスのプロセス変数(MVおよびCV)を最適値付近に維持したまま、ステップ試験で当該プロセス変数に摂動を加える。
【0042】
方法300は、(ステップ305にて)MPCコントローラの初期設定を開始する。実施形態において、方法300のMPCコントローラは、
図2BのMPCコントローラ201であり得る。設定済みのMPCコントローラにより制御されるプロセス全般は、次のように記述することができる:
【0043】
Y=G×U (1)
(式中、Gは伝達関数またはゲイン行列であり、Uはプロセス入力変数であり、Yはプロセス出力変数である。)
【0044】
U=[u1,u2,……,um]、 m≧1
【0045】
Y=[y1,y2,……,yn]、 n≧1
【0046】
同プロセスの操業制約は、次のように記述することができる:
【0047】
UL≦U≦UH (2)
【0048】
YL≦Y≦YH (3)
【0049】
(式中、ULは入力変数の下限値であり、UHは入力変数の上限値であり、YLは出力変数の下限値であり、YHは出力変数の上限値である。)
【0050】
J(x)は、任意の変数xに関する特定の算出値を表す目的関数である。
【0051】
実際には、式(1)、(2)及び(3)を同時に満足する実行可能解が見つからない場合がある。これは、一部のCV変数が限度値外にならざるを得ないことを意味する。MV目標値及びCV目標値の算出に先立って、まず、達成可能なCV限度値の集合を特定することが常套手段となっている:
【0052】
【0053】
但し、Y=G×U+E、さらには、式(2)及び(3)を条件とする。
【0054】
(式中、Eは緩和ベクトルである。)
そして、達成可能なCV限度値YL*,YH*は、次のように定義される:
【0055】
ei<0の場合、yl*
i=yli+ei
ei>0の場合、yh*
i=yhi+ei
i=1,2,…,n (4)
【0056】
以降の説明では、一般性を犠牲にせずに説明を簡素化するために、ノミナルCV限度値ではなく達成可能なCV限度値(YL*およびYH*)を目標値の算出に利用するものとする。
【0057】
方法300は、ステップ310にて、各プロセス変数(MVおよびCV)の理想的な最適定常状態目標値を最小コスト(「Min Cost」)設定を用いて算出する。実施形態では、
図1Cの目標値最適化手段230で、これらの理想的な最適目標値が算出される。方法300では、Min Cost用のコントローラ目標値の計算が、MV限度値やCV限度値などのプロセス制約を条件とした、各MV及びCV(あるいは、それ以外のもの)に関するコスト係数からなる目的関数で記述される:
【0058】
【0059】
(式中、
【0060】
【0061】
であり、ciはi番目の操作変数のコスト係数であり、cjはj番目の制御変数のコスト係数である。)
【0062】
方法300は、式(1)~(5)により定まる最適化問題の解を求めることにより、理想的な最適目標値を算出する(ステップ310)。通常、Min Cost目標値計算から得られた理想的な最適目標値は、プロセス変数同士をそれらの有効限度値へと移動させるものである(あらゆる自由度が消費し尽くされる。算出された動的変動プラン240は、プロセス変数を当該有効限度値に維持しようとする)。各プロセス変数に摂動を加えられるようにするには、そのための範囲(余地)を確保することが必要となるので、方法300は、この範囲を確保するために変数の最適化を次のようにして緩和させる。
【0063】
方法300は、ステップ315にて、各MV及びCVに対して設定された最適化ギブアウェイ許容範囲に基づいて、最適化対象とするMV及びCVの集合を決定する。最適化ギブアウェイ許容範囲は、MV又はCVの最新値と当該MV又はCVの理想的な最適目標値との間の許容可能な範囲を表したものである。各MV及びCVの最適化ギブアウェイ許容範囲は、(例えば、
図1Aのユーザインターフェース140を介して)ユーザにより指定され得る。MV同士及びCV同士は、各MV及びCVの最適化ギブアウェイ許容範囲に基づいて2種類の集合に分別される。第1の集合には、自身の最適化ギブアウェイ許容範囲を満たすMVやCVが含まれる。すなわち、第1の集合のMVやCVの最新値は、(ステップ310にて算出された)各々の理想的な最適目標値を基準として各々の最適化ギブアウェイ許容範囲内にある。第2の集合には、自身の最適化ギブアウェイ許容範囲を満たさない(方法300の最適化対象となる)MVやCVが含まれる。すなわち、第2の集合のMVやCVの最新値は、(ステップ310にて算出された)各々の理想的な最適目標値を基準として各々の最適化ギブアウェイ許容範囲外にある。
【0064】
第2の集合のMVやCVについては、方法300が、ステップ315にて、目的関数(式5)内でのこれらのMV及びCVの設定をそのままに維持する(例えば、コスト係数を変えずに維持する)。第1の集合の変数については、方法300が、ステップ320にて、(それらの最適化を緩和させるよう)MPCコントローラの設定を変更する。これを行うにあたって、方法300(ステップ320)は、第1の集合の各MV及びCVの上限値及び下限値(MVの場合はUH,UL、CVの場合はYH,YL)を、同集合内の任意のMV又はCVの値の計算が当該MV又はCVの(its)理想的な最適目標値を基準として当該MV又はCVの(its)最適化ギブアウェイ許容範囲を満たすようにしながら最適化対象の第2の集合のプロセス変数については余地(範囲)が生じることになるように変更する。方法300(ステップ320)は、さらに、第1の集合のMVやCVを目的関数(式5)から除外することによって当該目的変数(式5)を調節する。これを行うにあたって、方法300(ステップ320)は、目的関数(式5)内における第1の集合の各MV及びCVのコスト係数をゼロに設定し得る。
【0065】
方法300は、ステップ325にて、ステップ320で変更した設定を用いて、MV及びCVの新たな定常状態目標値を算出する(最適化を再実行する)。実施形態において、これらの新たな目標値は、
図1Cの目標値最適化手段230によって算出される。方法300(ステップ325)は、これらの新たな目標値を算出するために、式(1)~(5)により定まる最適化問題の解を、調節後の目的関数(式5)並びに第1の集合の変更後のMV限度値及びCV限度値を含む変更後の前記設定を用いて再び求める。第1の集合の変数は前記調節後の目的関数から除外されていることから第2の集合の変数と競合しないので、新たな目標値を算出した際には、第2の集合内の出来る限り多くのMVやCVがそれらの各々の最適化ギブアウェイ許容範囲内(又はその付近)へと移動する(押し進められる)ことになる。
【0066】
方法300は、ステップ330にて、MV及びCVの前記新たな目標値に基づいて動的変動プランを算出する。実施形態において、動的変動プランは、
図1Cの動的制御手段225によって算出される。この変動プランは、式(1)~(4)により定まるプロセス制約の条件下で変数同士を前記新たな目標値へと最大限高速に到達させるように設計されている。当該変動プランには、プロセスの挙動を前記新たな目標値へと調節する(制御変動を組み込んでなる)制御信号が含まれている。方法300は、ステップ335にて、各MV用のまたは所定のMV同士の組合せ用の摂動信号を算出し、これを前記動的変動プランに追加する。当該摂動信号は、式(1)~(4)により定まるプロセス制約およびステップ320で得られた前記変更後の設定の条件下でMVのステップサイズを最大化することによって算出される。(ステップ変動を組み込んでなる)当該摂動信号を用いて、産業プロセスにステップ試験が実施される。
【0067】
前記摂動信号は、次のようにして算出される。方法300では、ステップ325で算出される新たな目標値を(U*,Y*)、{dui}をMVの最適化ギブアウェイ許容範囲、{dyj}をCVの最適化ギブアウェイ許容範囲と表記する。k番目の操作変数ukをステップ変動させるには、方法300が、
【0068】
【0069】
によってそのステップサイズを決定する。
但し、u*
k-duk≦uk≦u*
k+duk、 u*
k⊂U*
i≠kの場合はui=u*
i、 i=1,…,m、 u*
i⊂U*
y*
j-dyj≦yj≦y*
j+dyj、 j=1,…,n、 y*
j⊂Y*
式(1)、(2)、(3)および(4)を条件とする。
【0070】
そして、方法300は、k番目の操作変数のステップサイズ(uk-u*
k)を前記動的変動プランに重畳する。
【0071】
方法300は、ステップ340にて、(制御信号および摂動信号を含んだ)実施すべき動的変動プランをMPCコントローラから出力し、プロセス制御システム(DCS)にプロセスを動的制御/ステップ変動させる。実施形態において、プロセス制御システム(DCS)は、
図1Bのプロセス制御システム170である。当該プロセス制御システムは、MPCコントローラの所定数の実行サイクルに亘って前記動的変動プランをプロセスの動的制約の条件下で実施する。通常、前記プロセス制御システムは、プロセス操業を混乱させないように、前記動的変動プランに含まれる大規模な変動(制御変動やステップ変動)を所定時間における複数の小規模な変動へと分割する必要がある。
【0072】
(ステップ325にて算出された)新たな目標値に基づいて算出された動的変動プランを用いることにより、ステップ試験でプロセス摂動を実施しているあいだ、各プロセス変数を所望の動作範囲に維持することができる。MPCコントローラの経済性目的関数(式5)が明確に定義されていなかったとしても、変更後の設定から構築された動的変動プランを用いることにより、プロセス摂動が実施されているあいだプロセス変数同士を最適な目標値付近に維持することが可能である。これにより、さらに、MPCコントローラの再調整やランタイム割込みの必要性を大幅に減少させることができる。
【0073】
(デジタル処理環境)
図4は、本発明の一実施形態における、プラントプロセスをモデリング・制御するのに用いられ得るコンピュータベースのシステム420についての簡略化ブロック図である。コンピュータベースのシステム420は、
図1Aのシステム100、
図1Bのシステム170、
図1Cのシステム105などであり得る。システム420は、バス425を備える。バス425は、システム420の各種コンポーネント間のインターコネクタとして機能する。バス425には、キーボード、マウス、ディスプレイ(例えば、
図1Aのユーザインターフェース140)、スピーカなどの様々な入出力装置をシステム420に接続するための入出力装置インターフェース428が接続されている。バス425には、コンピュータ命令を実行する中央演算処理装置(CPU)422が接続されている。メモリ427は、コンピュータ命令を実行するのに用いられるデータを記憶する揮発性の記憶部である。ストレージ436は、オペレーティングシステム(図示せず)などのソフトウェア命令を記憶する不揮発性の記憶部である。具体的に述べると、メモリ427および/またはストレージ436は、プロセスユニットを制御し且つ試験するための
図1Aや
図1Bや
図1Cや
図2Bや
図3で詳述したような方法および/またはモジュール105,115,201,207,215,220,225,230,300を実現するプログラム命令で構成されている。システム420は、さらに、当該技術分野で知られているクラウドやワイドエリアネットワーク(WAN)やローカルエリアネットワーク(LAN)を含む任意の種類のネットワークに接続するためのネットワークインターフェース421を備える。
【0074】
バス425には、さらに、インターフェースモジュール423(例えば、
図1Aのユーザインターフェースディスプレイ140)が接続されている。インターフェースモジュール423は、ユーザがプロセス変数の最適化ギブアウェイ許容範囲を指定することを可能にするように構成されている。インターフェースモジュール423は、当該技術分野で知られている任意の手段によってユーザに入出力機能を提供し得る。例えば、インターフェースモジュール423は、ストレージ装置436やメモリ427に記憶されたMVパラメータを表示することにより、ユーザが最適化ギブアウェイ許容範囲の値に関して決定を行うのを可能にし得る。さらなる例において、インターフェースモジュール423は、システム420にネットワークインターエース421及び/又は入出力装置インターフェース428を介して通信可能に接続されている任意の場所へと送り込まれた入力データ(例えば、最適化ギブアウェイ許容範囲の値)を、ユーザが指定出来るようにするものであり得る。
【0075】
システム420は、さらに、インターフェースモジュール423に通信可能/動作可能に接続されたコントローラモジュール424(例えば、
図1A、
図1B及び
図1CのMPCコントローラ105、
図2BのMPCコントローラ201等)を備える。コントローラモジュール424は、最小コストに基づいて構成された目的関数を用いて最適定常状態目標値を構築するように、かつ、最適化対象のプロセス変数を最適化ギブアウェイ許容範囲の値に基づいて決定するように、かつ、最適化後のプロセス変数に基づいて新たな定常状態目標値を算出するように構成されている。コントローラ(最適化)モジュール424は、定常状態目標値を当該技術分野で知られている任意の手段によって構築し得る。例えば、最適化モジュール424は、プロセス変数の値および目的関数をストレージ装置436やメモリ427に例えば配列等として記憶し得る。他の例では、最適化モジュール424が、バス425を介してCPU422で定常状態値を構築し得る。さらなる他の例では、最適化モジュール424が、システム420にネットワークインターエース421及び/又は入出力装置インターフェース428を介して通信可能に接続されている任意の場所から最適化ギブアウェイ許容範囲の値を取得し得る。
【0076】
本明細書で説明した例示的な実施形態は、数多くの様々な方法で実現されてもよいことを理解されたい。一部の例において、本明細書で説明した各種方法およびマシンは、コンピュータシステム420のような物理コンピュータ、仮想コンピュータまたはハイブリッド型の汎用コンピュータで各自実現され得る。例えば、CPU422で実行出来るようソフトウェア命令をメモリ427または不揮発性のストレージ436にロードすることにより、コンピュータシステム420は、本明細書で説明した方法を実行するマシンへと変換され得る。また、インターフェースモジュール423と最適化モジュール424は別個のモジュールとして図示されているが、例示的な一実施形態ではこれらのモジュールが様々な構成で実現されてもよい。
【0077】
システム420及びその各種コンポーネントは、本明細書で説明した本発明の任意の実施形態を実現するように構成され得る。例えば、システム420は、
図1A、
図1B、
図1C、
図2B及び
図3との関連で前述した方法及び/又はモジュール105,115,201,207,215,220,225,230,300を実現するように構成され得る。例示的な一実施形態では、インターフェースモジュール423およびコントローラモジュール424が、メモリ427および/またはストレージ装置436に記憶されたソフトウェアで実現され得る。このような例示的な実施形態では、CPU422およびメモリ427が、当該メモリ427および/またはストレージ装置436に記憶されたコンピュータコード命令により、ユーザがシステムに対して最適化ギブアウェイ許容範囲を指定出来るようにするインターフェースモジュールを実現する。同システムは、それに応答して定常状態目標値を自動的に最適化する。また、コントローラモジュール424は、当該定常状態目標値に基づいて(例えば、制御変動および/またはステップ変動を含んだ)動的プランを自動的に算出し、これを実施し得る。
【0078】
図5に、本発明の一実施形態が実現され得るコンピュータネットワーク環境560を示す。コンピュータネットワーク環境560では、サーバ531が通信ネットワーク532を介してクライアント533a~533nに接続されている。環境560は、クライアント533a~533nが単独で又はサーバ531との協働で、前述した任意のモジュールおよび/または方法(例えば、
図1A、
図1B、
図1C、
図2B及び
図3との関連で前述したモジュール105,115,201,207,215,220,225,230,300)を実現するのを可能にするように用いられ得る。前述した例示的な実施形態は、数多くの様々な方法で実現されてもよいことを理解されたい。一部の例では、本明細書で説明した各種方法およびマシンが、物理コンピュータ、仮想コンピュータ、ハイブリッド型の汎用コンピュータ、またはコンピュータ環境560のようなコンピュータネットワーク環境で各自実現され得る。
【0079】
その実施形態または態様は、ハードウェアの形態、ファームウェアの形態、およびソフトウェアの形態のいずれによって実現されてもよい。ソフトウェアで実現された場合、当該ソフトウェアは、プロセッサに当該ソフトウェア又は当該ソフトウェアの命令の一部をロードさせることが可能であるように構成された任意のコンピュータ読取り可能な非過渡的媒体に記憶されたものとされ得る。そして、プロセッサがこれらの命令を実行することにより、本明細書で説明した様式で装置が動作することになるか又は装置をそのように動作させる構成となっている。
【0080】
また、本明細書では、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチンまたは命令が、データプロセッサの特定の動作および/または機能を実行するかの如く説明しているかもしれない。しかしながら、本明細書に含まれるこのような説明はあくまでも便宜上のものに過ぎず、実際には、コンピューティングデバイス、プロセッサ、コントローラまたはその他の装置が当該ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令などを実行することによってそのような動作が生じるという点を理解されたい。
【0081】
フロー図、ブロック図およびネットワーク図は、構成要素の数が増えても減ってもよいし、配置が異なってもよいし、表現が異なってもよいと理解されたい。ただし、実施の方法によってはブロック図やネットワーク図が決まっており、実施形態の実施を描いたブロック図やネットワーク図の数も特定の数になり得るという点も理解されたい。
【0082】
つまり、様々なコンピュータアーキテクチャ及び/又は物理コンピュータ及び/又は仮想コンピュータ及び/又はクラウドコンピュータ及び/又はこれらの所与の組合せにより、さらなる実施形態が実現し得る。したがって、本明細書で説明したデータプロセッサは、あくまでも例示目的に意図されたものであり、実施形態を限定するものではない。
【0083】
例示的な実施形態について具体的に図示・説明したが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲に包含された実施形態の範囲を逸脱しない範疇で形態や細部に様々な変更が施されてもよいことが分かるであろう。
なお、本発明は、態様として以下の内容を含む。
〔態様1〕
産業プロセスのステップ試験実施のパフォーマンスを向上させる、コンピュータに実装される方法であって、
プラント又は精製所の、少なくとも1つのプロセス変数を有する産業プロセスを制御するMPCコントローラを設定する過程と、
前記少なくとも1つの各プロセス変数について、
(i)当該プロセス変数の最新値と当該プロセス変数の目標値との間の許容可能な範囲を表した、ギブアウェイ許容範囲を受け取る過程と、
(ii)当該プロセス変数の前記最新値が、受け取った前記ギブアウェイ許容範囲を満たしているか否かを判定する過程と、
1つ以上の前記プロセス変数が前記受け取ったギブアウェイ許容範囲を満たしていない場合、当該1つ以上のプロセス変数を前記受け取ったギブアウェイ許容範囲へと移動させるように前記MPCコントローラの設定を調節する過程と、
調節後の前記設定を用いて、前記少なくとも1つのプロセス変数の新たな目標値を算出する過程と、
算出された前記新たな目標値から、動的変動プランを生成する過程と、
前記動的変動プランに、前記調節後の設定に基づいて算出した摂動信号を追加する過程と、
を備える、方法。
〔態様2〕
態様1に記載の方法において、前記MPCコントローラの前記設定が目的関数を含み、前記設定を調節する過程が、さらに、
前記少なくとも1つの各プロセス変数について、
(a)前記目的関数を用いて、当該プロセス変数の最適目標値を算出する副過程、
(b)算出した前記最適目標値を基準として前記最新値が前記ギブアウェイ許容範囲内にあるのか否か に基づいて、当該プロセス変数を最適化対象とするのか否かを決定する副過程、
(c)当該プロセス変数を最適化対象としないことを決定した場合、当該プロセス変数に関して前記目的関数及び前記設定を調節する副過程、ならびに
調節後の前記目的関数及び調節後の前記設定を用いて、前記新たな目標値を算出する副過程、
を含む、方法。
〔態様3〕
態様2に記載の方法において、前記目的関数が、最小コストに基づく経済性最適化用に構築されている、方法。
〔態様4〕
態様2に記載の方法において、前記目的関数を調節する副過程が、最適化対象としないことを決定した前記プロセス変数を、前記目的関数で行われる計算から除外することを有する、方法。
〔態様5〕
態様4に記載の方法において、前記目的関数が、前記決定したプロセス変数のコスト係数を含み、前記決定したプロセス変数を除外することが、前記コスト係数をゼロに設定することを含む、方法。
〔態様6〕
態様5に記載の方法において、前記設定を調節する過程が、
既に各自の前記ギブアウェイ許容範囲内である各プロセス変数の上限値及び下限値を、前記最新値の計算が当該ギブアウェイ許容範囲を満たすようにしながら他のプロセス変数を最適化させるための余地が生まれるように変更する副過程、
を含む、方法。
〔態様7〕
態様2に記載の方法において、さらに、
前記少なくとも1つの各プロセス変数について、
1つ以上のプロセス変数が前記ギブアウェイ許容範囲外である場合に、前記調節後の目的関数及び前記調節後の設定で最 適化を再実行することにより、前記ギブアウェイ許容範囲内であるプロセス変数の前記最新値の最適化を緩和させると同時に、前記ギブアウェイ許容範囲外である前記1つ以上のプロセス変数の前記最新値を前記ギブアウェイ許容範囲内に又は前記ギブアウェイ許容範囲付近へと移動させる過程、
を備える、方法。
〔態様8〕
態様1に記載の方法において、前記少なくとも1つのプロセス変数が、操作変数(MV)および制御変数(CV)の少なくとも一方を含む、方法。
〔態様9〕
態様1に記載の方法において、前記摂動信号を追加する過程が、さらに、
(a)前記少なくとも1つのプロセス変数の制約および(b)前記調節後の設定との関連でステップサイズを最大化することにより、前記摂動信号を算出する副過程、ならびに
算出した前記摂動信号を用いて、前記産業プロセスの閉ループステップ試験を実施する副過程、
を含む、方法。
〔態様10〕
態様1に記載の方法において、前記動的変動プランを生成する過程が、さらに、
前記調節後の設定に基づいて、制御信号を算出する副過程、および
算出した前記制御信号を用いて、前記産業プロセスの挙動を調節する副過程、
を含む、方法。
〔態様11〕
産業プロセスのステップ試験実施のパフォーマンスを向上させるコンピュータシステムであって、
ユーザが少なくとも1つの各プロセス変数のギブアウェイ許容範囲を設定するのを可能にするように構成された、ユーザインターフェースと、
プラント又は精製所の、少なくとも1つのプロセス変数を有する産業プロセスを制御するように構成された、MPCコントローラと、
を備え、前記MPCコントローラが、
前記少なくとも1つの各プロセス変数の目標値最適化手段であって、
(i)当該プロセス変数の最新値と当該プロセス変数の目標値との間の許容可能な範囲を表した、設定済みのギブアウェイ許容範囲を、前記ユーザインターフェースから受け取るように、かつ、
(ii)当該プロセス変数の前記最新値が、受け取った前記ギブアウェイ許容範囲を満たしているか否かを判定するように、かつ、
1つ以上の前記プロセス変数が前記受け取ったギブアウェイ許容範囲を満たしていない場合、当該1つ以上のプロセス変数を前記受け取ったギブアウェイ許容範囲へと移動させるよう前記MPCコントローラの設定を調節するように、かつ、
調節後の前記設定を用いて、前記少なくとも1つのプロセス変数の新たな目標値を算出するように、
構成された、目標値最適化手段、および
動的制御手段であって、
算出された前記新たな目標値から、動的変動プランを生成するように、かつ、
前記動的変動プランに、前記調節後の設定に基づいて算出した摂動信号を追加するように、
構成された、動的制御手段、
を実現する、コンピュータシステム。
〔態様12〕
態様11に記載のコンピュータシステムにおいて、前記MPCコントローラの前記設定が目的関数を含み、前記目標値最適化手段が、さらに、
前記少なくとも1つの各プロセス変数について、
(a)前記目的関数を用いて、当該プロセス変数の最適目標値を算出するように、かつ、
(b)算出した前記最適目標値を基準として前記最新値が前記ギブアウェイ許容範囲内にあるのか否か に基づいて、当該プロセス変数を最適化対象とするのか否かを決定するように、かつ、
(c)当該プロセス変数を最適化対象としないことを決定した場合、当該プロセス変数に関して前記目的関数及び前記設定を調節するように、かつ、
調節後の前記目的関数及び調節後の前記設定を用いて、前記新たな目標値を算出するように、
構成されている、コンピュータシステム。
〔態様13〕
態様12に記載のコンピュータシステムにおいて、前記目的関数が、最小コストに基づく経済性最適化用に構築されている、コンピュータシステム。
〔態様14〕
態様12に記載のコンピュータシステムにおいて、目標値最適化手段が、最適化対象としないことを決定した前記プロセス変数を、前記目的関数で行われる計算から除外することによって、前記目的関数を調節する、コンピュータシステム。
〔態様15〕
態様12に記載のコンピュータシステムにおいて、前記目的関数が、前記決定したプロセス変数のコスト係数を含み、前記目標値最適化手段が、前記コスト係数をゼロに設定することによって、前記決定したプロセス変数を除外する、コンピュータシステム。
〔態様16〕
態様12に記載のコンピュータシステムにおいて、前記設定を調節することが、
既に前記ギブアウェイ許容範囲内である各プロセス変数の上限値及び下限値を、前記最新値の計算が当該ギブアウェイ許容範囲を満たすようにしながら他のプロセス変数を最適化させるための余地が生まれるように変更すること、
を含む、コンピュータシステム。
〔態様17〕
態様12に記載のコンピュータシステムにおいて、前記目標値最適化手段が、さらに、
前記少なくとも1つの各プロセス変数について、
1つ以上のプロセス変数が前記ギブアウェイ許容範囲外である場合に、前記調節後の目的関数及び前記調節後の設定で最 適化を再実行することにより、前記ギブアウェイ許容範囲内であるプロセス変数の前記最新値の最適化を緩和させると同時に、前記ギブアウェイ許容範囲外である前記 プロセス変数の前記最新値を前記ギブアウェイ許容範囲内に又は前記ギブアウェイ許容範囲付近へと移動させるように、
構成されている、コンピュータシステム。
〔態様18〕
態様11に記載のコンピュータシステムにおいて、前記少なくとも1つのプロセス変数が、操作変数(MV)である、コンピュータシステム。
〔態様19〕
態様11に記載のコンピュータシステムにおいて、前記動的制御手段が、さらに、
(a)前記少なくとも1つのプロセス変数の制約および(b)前記調節後の設定との関連でステップサイズを最大化することによって前記摂動信号を算出し、かつ、
算出した前記摂動信号を用いて、前記産業プロセスの閉ループステップ試験を実施することにより、
前記摂動信号を追加するように構成されている、コンピュータシステム。
〔態様20〕
コンピュータ読取り可能なコードが記憶されたコンピュータ読取り可能な非過渡的記憶媒体であって、前記コードは、コンピュータプロセッサによってロード及び実行されることで、当該コンピュータプロセッサに、
プラント又は精製所の、少なくとも1つのプロセス変数を有する産業プロセスを制御するMPCコントローラを設定する手順と、
前記少なくとも1つの各プロセス変数について、
(i)当該プロセス変数の最新値と当該プロセス変数の目標値との間の許容可能な範囲を表した、ギブアウェイ許容範囲を受け取る手順と、
(ii)当該プロセス変数の前記最新値が、受け取った前記ギブアウェイ許容範囲を満たしているか否かを判定する手順と、
1つ以上の前記プロセス変数が前記受け取ったギブアウェイ許容範囲を満たしていない場合、当該1つ以上のプロセス変数を前記受け取ったギブアウェイ許容範囲へと移動させるように前記MPCコントローラの設定を調節する手順と、
調節後の前記設定を用いて、前記少なくとも1つのプロセス変数の新たな目標値を算出する手順と、
算出された前記新たな目標値から、動的変動プランを生成する手順と、
前記動的変動プランに、前記調節後の設定に基づいて算出した摂動信号を追加する手順と、
で産業プロセスのステップ試験実施のパフォーマンスを向上させる、記憶媒体。