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特許7289930鉄道車両のための空調システム(電気ボックス内の過圧)
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  • 特許-鉄道車両のための空調システム(電気ボックス内の過圧) 図1
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  • 特許-鉄道車両のための空調システム(電気ボックス内の過圧) 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】鉄道車両のための空調システム(電気ボックス内の過圧)
(51)【国際特許分類】
   B61D 27/00 20060101AFI20230605BHJP
【FI】
B61D27/00 N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021562020
(86)(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 DE2020100717
(87)【国際公開番号】W WO2021037308
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2021-12-14
(31)【優先権主張番号】202019104696.1
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521260053
【氏名又は名称】ファイベリー トランスポート ライプツィヒ ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ブーク,ルッツ
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ポーザー,ステッフェン
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,カイ
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-136159(JP,A)
【文献】国際公開第2013/037335(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01010599(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両のための空調制御システムであって、
1つ以上の可燃性冷却材を使用するために構成され、
車両の屋根に設置するように構成されて成ることを特徴とし、前記空調制御システムは、
空気処理ユニットと、
圧縮・液化ユニットと、
電気ボックスとを有し、
前記電気ボックスは、前記1つ以上の可燃性冷却材に対して完全に閉じたアセンブリとして設計されそして供給空気セクションに動作可能に接続され、前記空調制御システムの冷却材運搬セグメント外の領域からの空気が前記電気ボックス内に過圧が生じるように前記電気ボックス内に導かれ、前記1つ以上の可燃性冷却剤が前記電気ボックス内に流入するのを防止することを特徴とする、
空調制御システム。
【請求項2】
排気のための設備および/または消音器を有することを特徴とする、請求項1に記載の空調制御システム。
【請求項3】
前記供給空気セクションは、前記電気ボックス内に過圧を生じさせるように構成された別個のファンを含む、請求項1に記載の空調制御システム。
【請求項4】
前記供給空気セクションは、前記空気処理ユニットの前記供給空気セクションの過圧された領域から供給される空気の部分的な体積の流れを前記電気ボックス内に導くダクト構造を含む、請求項1に記載の空調制御システム。
【請求項5】
前記供給空気セクションは、前記別個のファンのうち排出空気ファンからの排出空気の部分体積流を排出空気ダクトから前記電気ボックスに導くダクト構造を含む、請求項に記載の空調制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道車両のための空調制御システムに関する発明であって、空調制御システムは可燃性の冷却材に適しており、車両の屋根に取り付けるために小型の装置として設計されており、少なくとも空気処理のための設備、圧縮・液化装置、電気スイッチボックス(電気ボックス)を含み、任意で排気のための設備、かつ/または消音器を含む。
【背景技術】
【0002】
車両における空調制御システムのための様々な冷却材が知られているが、そのなかで特に合成冷却材は、生態系の観点からみて問題となっている。このような理由で、R134aという冷却材が非常に広範に、自動車や鉄道車両に対して利用されてきた。しかし、この冷却材は大気に放出されると温室効果ガスとなる。したがって、EUにおいては2017年1月1日以降、新しく乗用車を作る際にR134aを用いることはなくなった。
【0003】
R134aの代用として、R1234yfという冷却材の使用が今は優勢となっている。R1234yfは温室効果が非常に少ないが可燃性で、A2Lという冷却材として位置づけられる。しかし、今やこの冷却材の使用さえ、専門家には批判されている。例えば250℃を超えた状態で放出されると、非常に毒性の高いフッ化水素酸が生成され、また分解生成物として大気中に残存するトリフルオロ酢酸が生成されて特に水中に蓄積する。こういった関連するリスクのため、R1234yfなどのHFO冷却材の使用も原則として無くなってきている。
【0004】
これに代わるのが、R744(CO2)という自然冷媒の使用である。しかし、R744(CO2)の使用は他の冷却材に比べて比較的高い圧力を必要とするため、複雑な設備技術を要する。それに加え、周囲の温度が高いと成績係数(COP)が大幅に低下し、それにより空調制御に必要なエネルギーが大幅に増加する。さらに、周囲の温度が上がると冷却能力が大幅に落ちるが、その対処法は適切なだけ部品のサイズを大きくすることである。
【0005】
したがって、結局これまで使用されてきた冷却材は様々な機能上、環境上、安全上の必要性に関して、妥協してきたことは明らかである。大気中に排出された際、批判を受けないくらい環境に優しく、全作動工程に渡って高いエネルギー効率を示し、これまでの低温蒸気技術における知恵や経験を活用できるような、車両、特に鉄道車両の空調制御システムのための冷却材の使用が必要とされている。
【0006】
これらの特定の設計にかかわらず、そのような小型の空調制御ユニットは通常、空気処理および圧縮・液化のための装置を含み、任意で排気のための設備、電気スイッチボックス、および/または消音器を含む。
【0007】
上記の必要性をみたすため、代替冷却材としてプロパン(R290)、プロピレン(R1270)、イソブタン(R600a)などの可燃性の炭化水素が注目されている。これらの冷却材は、150g未満あるいは500g未満といったように充填量が制限されている直接膨張式システムや、とりわけ定置用途で使用されている。こういった直接膨張システムは可燃性であるため、より高い冷却能力を得るためにさらに充填量が必要である場合は、間接システムが望ましい。
【0008】
鉄道車両の空調制御については、直接蒸発システムであれ間接蒸発システムであれこれまで可燃性の冷却材は使用されてこなかったが、これは冷却材に関連する爆発や火災の危険性によるものである。間接蒸発システムでは、二次回路システムを備えた空調システムを設計することにより、上記のリスクが軽減される。この場合、必要な冷却(または加熱)力は従来の圧縮冷凍回路の可燃性冷却剤を使用して一次回路に供給され、一次回路は車外に設置されているため車内とは直接関係がない。この冷却力は、熱交換器(好ましくはプレート熱交換器)によって二次回路に伝達される。二次回路は、たとえば、水とグリコールの混合物を含むブライン回路として設計される。
【0009】
この種の技術的解決策は、国際公開第2018/137 908号公報によって公知である。この文献によると、車両の外側に配置され、客室から構造的に完全に分離された一次冷却回路を有する鉄道車両について記載がある。二次冷却材回路は、少なくとも部分的に鉄道車両の内部に配置されている。一次冷却材回路と二次冷却材回路の間の熱交換は、車室外の床下に配置された中間熱交換器を介して行われる。その結果、一次冷却材回路は完全に鉄道車両内の外側につながる。この設計が意味するのは、可燃性物質を使用する場合、考慮すべき安全性は実質的に車室外であり、車室内は従来のシステムと同じくらい安全であると見なせるということである。これは、安全上の理由から、これまで車両室内の空調にほとんど使用されていなかった冷却材を使用することも可能であることを意味する。 このため、国際公開第2018/137 908号公報は、プロパンなどの可燃性冷却材の使用を提案している。これは、機能的な観点からは冷却材として適しているが、上記で説明した火災や爆発の危険性の問題から、これまでほとんど使用されていなかった。
【0010】
国際公開第2018/137 908号公報に基づく最新技術および類似の提案された解決策を考慮すると、鉄道車両の空調システムでの可燃性冷却材の使用の受け入れは、中期的に大幅に増加すると予想できる。しかしながら、間接回路は、中間熱交換器での熱損失、余分な重量および追加の設置場所が必要であることから、依然としてエネルギー使用において不利な点があることに留意されたい。したがって、可燃性冷却材の広範な使用のために、これらの不利な点を回避する直接蒸発システムが望まれる。それゆえ、運用上の不具合が発生した場合を含め、高いレベルの安全性で防火および防爆を保証できるようにするために、最終的には鉄道車両の空調システムにさらなる構造的対策が必要になる可能性がある。
【0011】
この点で高感度な部品の一つが、小型の空調ユニットの電気スイッチボックス(電気ボックス)である。 このような電気ボックスは通常、インターフェースを備えた空調ユニットの独立した部分として設計されており、空調ユニットの制御または監視に必要なすべての部品を収容する。危険を回避するために、特に可燃性冷却材を使用する場合は、発火性混合物が電気ボックスに入らないようにする必要がある。これは、基本的に内部に過圧をかけることで防ぐことができる。独国出願公開第10 2014 101 184号公報には、ファンを使用して内部に過圧を発生させ、有害な粒子などが流入するのを防ぐ電気スイッチボックスに関して記載がある。ただし、この設計は可燃性冷却剤には適していない。同様に、可燃性冷却材を使用する場合、汚染のリスクが非常に高いため、過圧に必要な空気を空調システムに隣接した外部環境から得ることは許容されない。あるいは、非常に大量の流れを供給して、汚染されている可能性のある空気を薄めることも可能である。 ただしこれにはかなり高いファンの出力が必要であり、非常に大量の流れがさらなる汚染を引き起こす可能性があり、その結果、追加の濾過が必要になるという欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって本発明の課題は、直接蒸発システムを実装することであり、鉄道車両用の小型の温度調節ユニット内の電気スイッチボックス(電気ボックス)は、冷却材運搬アセンブリからの関連する漏れが発生した場合に、このアセンブリが可燃性冷却材と接触できないように閉じられるため、これらの領域では発火性混合物は発生しない。具体的には、漏れに続いて可燃性冷却材が電気ボックスに流入するのを防ぐことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、電気スイッチボックス/電気ボックスが、アセンブリに動作可能に接続され、それによって冷却材運搬セグメントの外側の領域または空調制御システムの外側の領域からの空気が電気ボックスに導かれ、可燃性冷却材の蓄積を防ぐために十分に閉じられた電気ボックス内に過圧を発生させることで達成される。電気ボックスに空気を供給するためのこのアセンブリは、別個のファンとして設計されており、これにより、空調システムの周囲から空気が引き込まれ、電気ボックス内に過圧を発生させることができる。あるいは、空気を供給するためのこのアセンブリは、空調システムの空気処理ユニットの供給空気セクションの過圧領域から始まり、供給される空気の部分的な体積の流れを電気ボックスに導くダクト構造として設計される。さらなる代替案では、空気を供給するためのこのアセンブリは、排出空気ファンを備えた空調制御システムの排出空気ダクトの過圧接続から始まり、排出空気の部分体積流を電気ボックスに導くダクト構造として設計される。
【0014】
これらの特定の設計とは関係なく、冷却材運搬セグメントの外側の領域から、または空調システムの外側の領域から電気ボックスに空気を供給するためのアセンブリは、電気ボックス内に過圧が発生するように設計される。これを実現するために、電気ボックスは十分に閉じたアセンブリとして設計される。あるいは電気ボックスは、ダクトなしまたは電気ボックスに取り付けられた電気部品の対象を絞った通気および/または熱放散のために、排気開口部まで通貫する排気ダクトを備えて設計することができる。
【発明の効果】
【0015】
したがって、既知の従来技術と比較した新規性は、電気ボックスが閉じたボックスとして設計されていることにある。これにより、停止中に発火性混合物による汚染が発生しない。ファンは温度調節ユニットまたはそのかわりに車両のどちらかにあって、給気ファンまたは排気ファンとして追加の機能を果たす。さらに、必要に応じて、個別のファンを設計に組み込むことも可能である。空気は、空調制御ユニット内の領域、または潜在的に発火の可能性のない車両から取り出す。これは、冷却材を運搬する部品のない領域から空気を吸引することによって行われる。電気ボックスへの空気の排気は、別個のダクトまたはダクトセクションによって行われ、電気ボックスの換気は、確実に周囲に対して少なくともわずかに過圧する。
【0016】
本発明による技術的解決策は、鉄道車両の空調制御システムにおける可燃性冷却剤の使用の受け入れを増大させる。これは、この点で高感度なアセンブリである電気スイッチボックス (電気ボックス) での防火・防爆を大幅に改善することが可能である限り、小型の空調制御システムに隣接する領域で可燃性冷却材が流出した場合であっても同様である。電気ボックス内に恒久的に過圧が発生するため、可燃性冷却材の流入が効果的に防止される。
【0017】
以下、本発明の実施例を図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、各セクションの配置とそれらの電気ボックスへの配置のさまざまなバリエーションを含む、鉄道車両用の小型の空調制御ユニットの典型的な例を上面図で示している。
【0019】
図2図2は内部に過圧があり、さまざまな流れのパターンがある電気ボックスの典型的な例を示す。
【0020】
図3図3は、小型の空調制御ユニットの一部分である電気ボックスの基本的な配置の典型的な例を示す。
【0021】
図4図4は、図3の実施例の補足図の典型的な例を示す。
【0022】
図5図5は、図3の実施例のさらなる補足図の典型的な例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面に示されている鉄道車両の空調制御システムは、車両の屋根に設置するための小型の装置として設計されており、好ましくは、カテゴリA2、A2L、およびA3の可燃性冷却材、たとえばR290での操作を目的とする。電気ボックスへの可燃性冷却材の流入を防ぐために、電気スイッチボックス/電気ボックスに過圧を発生させることができるアセンブリが提供される。定義された過圧を発生させるために必要な、冷却材運搬セグメントの外側の領域、または外側の領域からの空気の吸入によって、発火性混合物に到達するまで、電気ボックス内で可燃性冷却材の蓄積が発生しないことが保証される。
【0024】
図1は、空調制御ユニットの各セクションの配置およびそれらの電気ボックスへの配置のための様々なバリエーションを含む、そのような小型の空調制御ユニットの上面図を示している。aは、別個のファンを使用して周囲の空気を吸引することによる過圧の発生を示す。このファンは、電気ボックス内に過圧を発生させるためにのみ使用される。
bは、空気処理ユニットから電気ボックスへのダクトによる過圧の発生を示す。この場合、調整された空気または混合空気は、空気処理ユニットの電気ヒーターの上流の過圧領域から取り出され、ダクトを介して電気ボックスに供給される。cは、排気ダクトから電気ボックスにダクトを接続することによる過圧の発生を示す。ここでは、外向きの空気ファンが電気ボックス内に過圧を発生させる。gからjは、過圧を発生させるためのさらなる実施例を示しており、空調制御システムの個々のセクションの代替的な配置を示す。
【0025】
図2は、内部に過圧がある電気ボックスの、空気の流出の様々なバリエーションを示す。dは、空気の集中的な流出のない、密に構築された電気ボックスを示す。これは、熱源から空気が流出せず、したがって電気部品の熱放散がないことを意味する。過圧は、設計された耐圧性の範囲内で、一定な過圧が達成されるまで、上記で説明したバリエーションの一つによって蓄積される。eは、電気ボックス内の空気の漏れは中程度であるが、集中的な流出がないことを示している。過圧の発生および維持は、上記で説明したバリエーションの一つによる空気の流入によって達成される。空気処理ユニットの非耐圧セグメントの隙間からの流出や漏れが発生する可能性があるが、特に空気処理ユニットへの、大きな流出はない。これは、給気のオゾン汚染を防ぐためである。空気ボックス内の空気交換により無向の熱放散が起きる。
fは、電気ボックスからのダクトによる流出と電気部品の集中的な熱放散を示す。ここで、過圧の発生および維持も、上記で説明したバリエーションの一つを用いて空気を流入させる工程により実行される。このように、電気ボックス内の空気交換はさらに電気部品の熱放散を引き起こす。ここで、例えば、冷却される電気部品に沿って、吐出口へダクトによって流出させることで、目標とする熱放散をもたらすことができる。
【0026】
図3は、小型の空調ユニットの一部である電気ボックスの配置を示す。ここで、過圧の発生は例えばファンによって達成され、その吸気口の格子は典型的には、互いに平行であるいくつかの線と直角によって形成される。
【0027】
この基本的な設計は図4で再び詳細に示され、空気の流れの過程も示される。ここで、別個のファンを使用して周囲の空気を吸引することにより、電気ボックスの内部に過圧が発生する。この周囲の空気は、特別に設計された耐水プレートを介してファンによって吸引される。任意で、ファンの前に周囲の空気を浄化するためのエアフィルターがあってもよい。
【0028】
図5は特に周囲の環境へのインターフェースを備えた電気ボックス内のファンを示す、詳細な図である。
図1
図2
図3
図4
図5