(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
G06F 1/20 20060101AFI20230605BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20230605BHJP
H04M 1/02 20060101ALI20230605BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230605BHJP
F16C 11/04 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
G06F1/20 C
G06F1/16 312F
G06F1/16 312E
G06F1/16 312G
G06F1/16 312J
H04M1/02 C
H05K7/20 D
F16C11/04 F
(21)【出願番号】P 2022023812
(22)【出願日】2022-02-18
【審査請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 大輔
(72)【発明者】
【氏名】宮本 旅人
(72)【発明者】
【氏名】木下 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】森野 貴之
【審査官】石川 亮
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0204666(US,A1)
【文献】特開2021-174913(JP,A)
【文献】特許第7175367(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/20
G06F 1/16
H04M 1/02
H05K 5/02
H05K 7/20
F16C 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
第1電子部品を搭載した第1筐体と、
前記第1筐体と隣接し、第2電子部品を搭載した第2筐体と、
潤滑剤が塗布された可動部を有し、前記第1筐体と前記第2筐体とを、互いに面方向で重なるように積層する第1姿勢と、互いに面方向と垂直する方向に並ぶ第2姿勢との間で、相対的に回動可能に連結するヒンジ装置と、
前記第2筐体と隣接する前記第1筐体の第1端部と、前記第1筐体と隣接する前記第2筐体の第2端部とに沿って延在し、前記第1姿勢時に前記第1端部と前記第2端部との間に形成される隙間を覆い、前記第2姿勢時には前記第1端部と前記第2端部とを跨ぐように配置される、熱伝導材料製の背表紙部品と、
前記第1筐体の内面に設けられ、前記第2姿勢時に前記可動部とオーバーラップしない位置で前記背表紙部品と接触する第1熱伝導部材と、
前記第2筐体の内面に設けられ、前記第2姿勢時に前記可動部とオーバーラップしない位置で前記背表紙部品と接触する第2熱伝導部材と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記第1熱伝導部材は、
第1熱伝導シートと、
前記第1熱伝導シートと前記第1筐体の内面との間に設けられ、前記第2姿勢時に前記第1熱伝導シートを前記背表紙部品に対して押し付ける第1クッション部材と、
を有し、
前記第2熱伝導部材は、
第2熱伝導シートと、
前記第2熱伝導シートと前記第2筐体の内面との間に設けられ、前記第2姿勢時に前記第2熱伝導シートを前記背表紙部品に対して押し付ける第2クッション部材と、
を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器であって、
前記第1熱伝導シートは、前記第1筐体の平面視で前記第1クッション部材よりも大きな外形を有し、
前記第2熱伝導シートは、前記第2筐体の平面視で前記第2クッション部材よりも大きな外形を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器であって、
前記第1筐体と前記第2筐体との間に亘って設けられ、前記第1筐体及び前記第2筐体が相対的に回動することに応じて折り曲げられる折曲領域を有するディスプレイをさらに備え、
前記ヒンジ装置は、前記第1端部及び前記第2端部に沿って延在し、前記第2姿勢時に前記第1端部及び前記第2端部を跨ぐように配置され、前記ディスプレイの裏面を支持するヒンジ本体を有し、
前記可動部は、前記ヒンジ本体の長手方向で一部に連結され、
前記第1熱伝導シート及び前記第2熱伝導シートは、前記ヒンジ本体の長手方向に沿って延在している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか1項に記載の電子機器であって、
前記第1熱伝導シート及び前記第2熱伝導シートは、グラファイトシートである
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記第1熱伝導部材及び前記第2熱伝導部材は、前記第2姿勢時に前記可動部とはオーバーラップせず、且つ前記背表紙部品とオーバーラップする位置に設けられた突出部を有し、該突出部が前記背表紙部品に接触する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項6に記載の電子機器であって、
前記第1熱伝導部材及び前記第2熱伝導部材は、前記第2姿勢時に前記可動部とオーバーラップする位置には前記突出部を持たないことで、前記背表紙部品との間に隙間が形成される
ことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の電子機器であって、
前記第1電子部品と前記第2電子部品とを接続するフレキシブル基板をさらに備え、
前記突出部は、前記フレキシブル基板とオーバーラップしている
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の筐体をヒンジ装置で連結した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネル式の液晶ディスプレイを有し、物理的なキーボードを持たないPCやスマートフォン等の電子機器が急速に普及している。この種の電子機器のディスプレイは、使用時には大きい方が望ましい反面、非使用時には小型化できることが望まれている。そこで、例えば有機EL(Electro Luminescence)等のフレキシブルディスプレイを用いることで、筐体間を折り畳み可能に構成した電子機器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電子機器としては、例えば一方の筐体にCPU等を実装したマザーボード等を搭載し、他方の筐体にバッテリ装置等を搭載した構成がある。
【0005】
このような構成では、CPU等の処理装置を実装したマザーボード側の筐体内の発熱量がバッテリ装置側の筐体内の発熱量よりも顕著に大きくなり、筐体間に温度差を生じることがある。ところが、上記のような電子機器の筐体は、小型薄型化の影響で高い冷却能力を持った冷却装置を搭載することが難しい場合がある。その結果、電子機器は、CPU等のパフォーマンスが低下したり、或いは基板側の筐体の外面に局所的な高温部(ホットスポット)を生じたりする懸念がある。
【0006】
他方、このような筐体間の温度バランスを調整するための構造は、電子機器の外観品質に影響を及ぼすものであってはならない。
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、外観品質の低下を抑制しつつ、筐体間の温度バランスを調整することができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様に係る電子機器は、第1電子部品を搭載した第1筐体と、前記第1筐体と隣接し、第2電子部品を搭載した第2筐体と、潤滑剤が塗布された可動部を有し、前記第1筐体と前記第2筐体とを、互いに面方向で重なるように積層する第1姿勢と、互いに面方向と垂直する方向に並ぶ第2姿勢との間で、相対的に回動可能に連結するヒンジ装置と、前記第2筐体と隣接する前記第1筐体の第1端部と、前記第1筐体と隣接する前記第2筐体の第2端部とに沿って延在し、前記第1姿勢時に前記第1端部と前記第2端部との間に形成される隙間を覆い、前記第2姿勢時には前記第1端部と前記第2端部とを跨ぐように配置される、熱伝導材料製の背表紙部品と、前記第1筐体の内面に設けられ、前記第2姿勢時に前記可動部とオーバーラップしない位置で前記背表紙部品と接触する第1熱伝導部材と、前記第2筐体の内面に設けられ、前記第2姿勢時に前記可動部とオーバーラップしない位置で前記背表紙部品と接触する第2熱伝導部材と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の上記態様によれば、外観品質の低下を抑制しつつ、筐体間の温度バランスを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子機器を閉じて0度姿勢とした状態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す電子機器を開いて180度姿勢とした状態を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す電子機器の内部構造を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す電子機器からヒンジ装置、マザーボード0、及びバッテリ装置等の電子部品を取り外した状態を模式的に示す平面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す筐体間の端部及びその周辺部を拡大した斜視図である。
【
図6】
図6は、
図3中のVI-VI線に沿う模式的な断面図である。
【
図7】
図7は、
図3中のVII-VII線に沿う模式的な断面図である。
【
図8】
図8は、
図6に示す電子機器を0度姿勢とした状態を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を閉じて0度姿勢とした状態を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す電子機器10を開いて180度姿勢とした状態を模式的に示す平面図である。
図3は、
図2に示す電子機器10の内部構造を模式的に示す平面図である。
【0013】
図1~
図3に示すように、電子機器10は、第1筐体12Aと、第2筐体12Bと、ヒンジ装置14と、ディスプレイ16とを備える。ディスプレイ16は、筐体12A,12B間に亘って延在している。本実施形態では、本のように折り畳み可能なタブレット型PC或いはノート型PCとして用いられる電子機器10を例示する。電子機器10は、スマートフォン又は携帯用ゲーム機等であってもよい。
【0014】
各筐体12A,12Bは、互いに隣接して配置されている。第1筐体12Aは、フレーム部材17Aと、カバー部材18Aとを備える。フレーム部材17Aは、第2筐体12Bと隣接する第1端部12Aa以外の3辺に立壁を形成した矩形の枠状部材である。カバー部材18Aは、フレーム部材17Aの裏面開口を閉じるプレート状部材である(
図6も参照)。同様に、第2筐体12Bは、第1筐体12Aと隣接する第2端部12Ba以外の3辺に立壁を形成したフレーム部材17Bと、フレーム部材17Bの裏面開口を閉じるカバー部材18Bとを備える。フレーム部材17A,17Bの表面開口は、ディスプレイ16で閉じられる。
【0015】
各部材17A,17B,18A,18Bは、例えばステンレスやマグネシウム、アルミニウム等の金属部材、或いは炭素繊維等の強化繊維を含む繊維強化樹脂板等で構成される。
【0016】
ヒンジ装置14は、筐体12A,12Bを0度姿勢と180度姿勢との間で相対的に回動可能に連結している。ヒンジ装置14は、
図1に示す0度姿勢で形成される端部12Aa,12Ba間の隙間を隠す背表紙としても機能する。
【0017】
以下、電子機器10について、筐体12A,12Bの並び方向をX方向、これと直交する端部12Aa,12Baに沿う方向をY方向、筐体12A,12Bの厚み方向をZ方向、と呼んで説明する。また、筐体12A,12B間の角度姿勢について、互いに面方向で重なるように積層された状態を0度姿勢(
図1参照)と呼び、互いに面方向と垂直する方向(X方向)に並んだ状態を180度姿勢(
図2~
図4参照)と呼んで説明する。0度と180度の間の姿勢は適宜角度を刻んで呼ぶことができ、例えば筐体12A,12Bの互いの面方向が直交した状態が90度姿勢となる。これらの角度は説明の便宜上のものであり、実際の製品では角度数字の示す正確な角度位置から多少ずれた角度位置となることも当然生じ得る。
【0018】
図3に示すように、第1筐体12Aは、マザーボード20を搭載している。マザーボード20は、例えばCPU(Central Processing Unit)20a、通信モジュール20b、SSD(Solid State Drive)20c等の電子部品が実装されている。CPU20aは、電子機器10の主たる制御や処理に関する演算を行う処理装置である。CPU20aは、電子機器10に搭載された電子部品の中で最大級の発熱体である。通信モジュール20bは、例えば第2筐体12Bに搭載されたアンテナを介して送受信される無線通信の情報処理を行う。通信モジュール20bは、例えばワイヤレスWANや第5世代移動通信システムに対応する。SSD20cは、半導体メモリを用いた記憶装置である。第1筐体12Aは、マザーボード20以外にも各種電子部品が搭載される。通信モジュール20b及びSSD20cは、CPU20aに次ぐ発熱量の発熱体である。
【0019】
第2筐体12Bは、バッテリ装置21、ディスプレイボード22、及びサブカード23を搭載している。バッテリ装置21は、電子機器10のメイン電源となる二次電池である。なお、第1筐体12Aには、サブ電源となるバッテリ装置24が搭載されている。ディスプレイボード22は、ディスプレイ16の制御基板である。サブカード23は、例えば電源ボタンやUSB(Universal Serial Bus)規格に準拠した外部コネクタ等を実装した基板である。第2筐体12Bは、バッテリ装置21等以外にも各種電子部品が搭載される。
【0020】
バッテリ装置21、ディスプレイボード22、及びサブカード23は、それぞれ端部12Aa,12Baを跨ぐフレキシブル基板26,27,28を用いてマザーボード20と接続されている。但し、バッテリ装置21、ディスプレイボード22、及びサブカード23の発熱量は、CPU20a等に比べて小さい。このため、電子機器10は、第1筐体12A内での発熱量が第2筐体12B内の発熱量に比べて大きい。
【0021】
図4は、
図3に示す電子機器10からヒンジ装置14、マザーボード20、及びバッテリ装置21,24等の電子部品を取り外した状態を模式的に示す平面図である。
図5は、
図4に示す筐体12A,12間の端部12Aa、12Ba及びその周辺部を拡大した斜視図である。
図6は、
図3中のVI-VI線に沿う模式的な断面図である。
図7は、
図3中のVII-VII線に沿う模式的な断面図である。
図8は、
図6に示す電子機器10を0度姿勢とした状態を示す模式的な断面図である。
【0022】
図1及び
図8に示す0度姿勢において、筐体12A,12Bは、二つ折りに折り畳まれた状態となる。ディスプレイ16は、有機ELで形成されたペーパー状のフレキシブルディスプレイである。0度姿勢時、ディスプレイ16は、
図2に示す第1筐体12A側の領域R1と第2筐体12B側の領域R2とが対向するように配置され、領域R1,R2間の境界領域である折曲領域R3が円弧状に折り曲げられた状態となる。
図2に示す180度姿勢において、筐体12A,12Bは、互いに左右に並んで配置される。この際、ディスプレイ16は、領域R1,R2及び折曲領域R3がXY平面上に並んで配置され、全体として1枚の平板形状を成す(
図6も参照)。
【0023】
ディスプレイ16は、領域R1が第1筐体12Aに対して相対的に固定され、領域R2が第2筐体12Bに対して相対的に固定される。具体的には、
図6に示すように、領域R1の裏面16aが第1プレート30Aを介して第1筐体12Aと固定され、領域R2の裏面16aが第2プレート30Bを介して第2筐体12Bと固定される。
【0024】
図6及び
図7に示すように、プレート30A,30Bは、ヒンジ装置14を間に挟むように左右に配置され、それぞれの表面30Aa,30Baでディスプレイ16を支持する。ディスプレイ16の裏面16aは、領域R1が第1プレート30Aの表面30Aaに粘着固定され、領域R2が第2プレート30Bの表面30Baに粘着固定される。プレート30A,30Bは、例えば炭素繊維にエポキシ樹脂等のマトリクス樹脂を含侵させた炭素繊維強化樹脂板と、この炭素繊維強化樹脂板の裏面の外周を囲むマグネシウム合金製の金属フレームとを有する構成である。
【0025】
ディスプレイ16の折曲領域R3は、筐体12A,12Bに対して相対移動可能である。180度姿勢時、折曲領域R3の裏面16aは、ヒンジ装置14で支持される(
図6参照)。0度姿勢時、折曲領域R3は、円弧状に折り曲げられ、裏面16aの一部がヒンジ装置14で支持され、大部分はヒンジ装置14から離間する(
図8参照)。
【0026】
図3及び
図6~
図8に示すように、本実施形態のヒンジ装置14は、ヒンジ本体31と、第1サポートプレート32Aと、第2サポートプレート32Bとを有する。
【0027】
ヒンジ本体31は、筐体12A,12Bの端部12Aa,12Baを跨ぐ位置に設けられ、端部12Aa,12Baに沿ってY方向で略全長に亘って延在している。ヒンジ本体31は、アルミニウム等の金属材料で形成されたブロック状部品である。ヒンジ本体31には、180度姿勢でX方向に並ぶ2本のヒンジ軸14A,14Bが支持されている(
図7参照)。
【0028】
図3に示すように、第1ヒンジ軸14Aには、第1リンクアーム33Aの第1端部が軸周りに回転可能に支持されている。第1リンクアーム33Aの第2端部は、第1ブラケット34Aに対して回転軸を用いて相対回転可能に連結されている。第1ヒンジ軸14Aには、さらに、第1サポートアーム35Aの第1端部が軸周りに回転可能に支持されている(
図7参照)。第1サポートアーム35Aの第2端部は、第1ブラケット34Aに対して回転軸を用いて相対回転可能に連結されている。第1サポートアーム35Aは、第1リンクアーム33AとY方向に並んでいる。第1ブラケット34Aは、ねじ等で第1筐体12Aの内面12Abに固定されている。
【0029】
第2ヒンジ軸14Bには、第2リンクアーム33Bの第1端部が軸周りに回転可能に支持されている。第2リンクアーム33Bの第2端部は、第2ブラケット34Bに対して回転軸を用いて相対回転可能に連結されている。第2ヒンジ軸14Bには、さらに、第2サポートアーム35Bの第1端部が軸周りに回転可能に支持されている(
図7参照)。第2サポートアーム35Bの第2端部は、第2ブラケット34Bに対して回転軸を用いて相対回転可能に連結されている。第2サポートアーム35Bは、第2リンクアーム33BとY方向に並んでいる。第2ブラケット34Bは、ねじ等で第2筐体12Bの内面12Bbに固定されている。
【0030】
図3に示すように、ヒンジ装置14は、1枚の第1ブラケット34Aに第1リンクアーム33A及び第1サポートアーム35Aを1本ずつ連結した可動部14Cを複数有する。各可動部14Cは、ヒンジ本体31の長手方向であるY方向に沿って互いに間隙Gを空けて複数並んでいる。つまり可動部14Cは、ヒンジ本体31の長手方向に沿って断続的に連結されている。第2ブラケット34B、第1リンクアーム33A、及び第1サポートアーム35Aも同様な可動部14Cを構成している。これによりヒンジ本体31は、筐体12A,12B間を相対的に回動可能に連結している。ヒンジ本体31内には、筐体12A,12B間の回動動作を同期させるギヤ機構や、筐体12A,12B間の回動動作に所定の回動トルクを付与するトルク機構等も設けられている。
【0031】
可動部14Cでは、リンクアーム33A,33B及びサポートアーム35A,35Bがブラケット34A,34Bに対して回転し、或いはスライドする。このように、可動部14Cは、金属部品同士が摺動するため、グリース等の潤滑剤38を塗布している(
図7参照)。本実施形態では、特にサポートアーム35A,35Bは、
図7に示すように、金属シャフト35Aa,35Baがブラケット34A,34Bに形成されたスライダ溝34Aa,34Ba内をスライドしながら回転する。このため、金属シャフト35Aa,35Baとスライダ溝34Aa,34Baとの摺動部には、潤滑剤38が必須となっている。
【0032】
図1及び
図6に示すように、ヒンジ本体31の外面には、背表紙部品36が取り付けられている。背表紙部品36は、ヒンジ本体31の外面形状に合わせた略U字状のプレートである。背表紙部品36は、例えばアルミニウム合金やステンレス等の熱伝導材料で形成されている。背表紙部品36は、外面品質を高めるための化粧カバーである。フレキシブル基板26~28は、端部12Aa,12Baを跨ぐ位置では、ヒンジ本体31と背表紙部品36との間を通過している。
【0033】
図6及び
図7に示す180度姿勢時、ヒンジ本体31は、筐体12A,12B内に収納され、互いに近接した端部12Aa,12BaをX方向に跨ぐ。
図8に示す0度姿勢時、ヒンジ本体31は、大きく離間した端部12Aa,12Ba間に形成される隙間を塞ぐように配置される。この際、背表紙部品36が最外面に配置されることで、折り畳まれた電子機器10の外観意匠の低下を防止している(
図1参照)。
【0034】
すなわち背表紙部品36は、180度以外(例えば0度姿勢又は90度姿勢)の角度姿勢において、筐体12A,12B間に形成される隙間を覆う(
図1及び
図8参照)。これにより背表紙部品36は、この隙間から筐体12A,12Bの内部部品が外観に露呈することを防止する。背表紙部品36は、180度姿勢時には互いに近接した端部12Aa,12BaをX方向に跨ぐように配置され、筐体12A,12B内に収納される(
図6参照)。
【0035】
例えば、ヒンジ本体31が
図3に示すようにY方向に延在した構成ではなく、1又は複数の小型のピース部品等で構成されている場合、背表紙部品36は、ヒンジ装置14とは別に各筐体12A,12Bに支持されてもよい。つまり背表紙部品36は、必ずしもヒンジ装置14の構成要素でなくてもよく、要は180度以外の角度姿勢で端部12Aa,12Ba間の隙間を覆うことができれば、その構成や取付態様は限定されない。但し、本実施形態では、背表紙部品36がヒンジ装置14の構成部品であることで、背表紙部品36を筐体12A,12Bに取り付けるための個別の構成や機構が不要であり、構成の簡素化が図られている。
【0036】
次に、サポートプレート32A,32Bは、アルミニウム等の金属材料で形成されたプレートであり、左右対称形状である。サポートプレート32A,32Bは、筐体12A,12Bの内面12Ab,12Bb側に設けられ、端部12Aa,12Baに沿ってY方向で略全長に亘って延在している。
【0037】
第1サポートプレート32Aは、第1プレート30Aとヒンジ本体31との間に配置される。第1サポートプレート32Aは、第1プレート30A側の縁部が第1ブラケット31Aに対して回転軸を介して相対回転可能に連結されている。第1サポートプレート32Aは、ヒンジ本体31側の縁部がヒンジ本体31に対して相対移動可能である。第2サポートプレート32Bの構成及び取付構造等は、第1サポートプレート32Aと左右対称であるため、詳細な説明を省略する。
【0038】
サポートプレート32A,32Bは、筐体12A,12Bの回動動作に応じて揺動する。180度姿勢時、サポートプレート32A,32Bは、その表面でディスプレイ16の折曲領域R3の裏面16aを支持する。180度以外の角度姿勢では、サポートプレート32A,32Bは、ディスプレイ16との間に隙間を設けた状態、又はディスプレイ16を変形させない程度の僅かな力でディスプレイ16に接触する(
図8参照)。サポートプレート32A,32Bは、180度以外の角度姿勢でもディスプレイ16の折曲領域R3を支持し、その形状を矯正する構成としてもよい。このように、サポートプレート32A,32Bは、180度姿勢時にはディスプレイ16の折曲領域R3を平面で安定して支持する一方、折曲領域R3の折曲動作を阻害することはない。
【0039】
ところで、本実施形態の電子機器10は、上記したようにマザーボード20を搭載した第1筐体12A内での発熱量が、バッテリ装置21等を搭載した第2筐体12B内での発熱量よりも大きい。そこで、電子機器10は、左右の筐体12A,12B間での熱移動を促進し、各筐体12A,12Bの熱を均等化するための構成として、熱伝導部材40A,40Bを備える。
【0040】
図4~
図8に示すように、第1熱伝導部材40Aは第1筐体12A内に設けられ、第1熱伝導シート42Aと、第1クッション部材43Aとを有する。第2熱伝導部材40Bは、第2筐体12B内に設けられ、第2熱伝導シート42Bと、第2クッション部材43Bとを有する。熱伝導部材40A,40Bは、略左右対称に配置されている。
【0041】
熱伝導シート42A,42Bは、グラファイトシート、銅シート又はアルミニウムシート等の熱伝導材料で形成されたシート状部材である。本実施形態の熱伝導シート42A,42Bは、グラファイトシートである。グラファイトシートは、炭素の同素体であるグラファイト(黒鉛)をシート状に加工したものであり、高い熱伝導率を有する。熱伝導シート42A,42Bは、例えば10μm~1mm程度の厚みを有し、薄く柔軟なシートである。熱伝導シート42A,42Bは、筐体12A,12Bの内面12Ab,12Bbに粘着固定されている。
図4及び
図5中の熱伝導シート42A,42Bは、ドットパターンを付して明示している。
【0042】
図4及び
図5に示すように、第1熱伝導シート42Aは、Y方向に延在する第1シート42Aaと、第1シート42Aaと直交するようにX方向に延びた第2シート42Abとを有する。
【0043】
第1シート42Aaは、第1筐体12Aの内面12Abのうち、第1端部12Aaに沿う帯状の領域に設けられ、ヒンジ本体31とZ方向にオーバーラップしている。
【0044】
第2シート42Abは、第1筐体12Aの内面12Abのうち、ヒンジ装置14の可動部14C,14C間の間隙Gに設けられている。本実施形態では、第2シート42Abは、3つの間隙Gにそれぞれ配置されており、合計で3枚設けられている。第2シート42Abは、可動部14Cを構成する第1ブラケット34Aとはオーバーラップしない位置にある。つまり第2シート42Abは、内面14Abのうち、第1ブラケット34Aが取り付けられるスペースSを避けた位置に設けられている(
図5参照)。
図5中の参照符号44は、ブラケット34A,34Bをねじ止めするための取付台であり、スペースSに配置されている。
【0045】
ところで、フレキシブル基板26~28は、可動部14Cを通過させることはできないため、これを避けて端部12Aa,12Baを通過させる必要がある。このため、フレキシブル基板26~28は、スペースSを避けるように3つの間隙Gをそれぞれ通過しており、必然的に第2シート42AbとZ方向にオーバーラップする(
図4及び
図6参照)。
【0046】
図4及び
図5に示すように、第2熱伝導シート42Bは、Y方向に延在し、第2端部12Baに沿う帯状の領域に設けられた第1シート42Baと、第1シート42Baと直交するようにX方向に延びた第2シート42Bbとを有する。第2熱伝導シート42Bは、第1熱伝導シート42Aに対して左右対称構造でよいため、詳細な説明は省略する。
【0047】
クッション部材43A,43Bは、ゴムやスポンジ等のように、柔軟性及びある程度の反発力を有する材料で形成される。本実施形態のクッション部材43A,43Bは、スポンジである。クッション部材43A,43Bは、熱伝導シート42A,42BよりもZ方向の厚みが大きく、例えば1~2mm程度である。
【0048】
図4~
図6及び
図8に示すように、第1クッション部材43Aは、第1熱伝導シート42Aと第1筐体12Aの内面12Abとの間に設けられている。第1クッション部材43Aは、第1シート42Aaと第2シート42Abの交差点にそれぞれ配置されている。本実施形態では、第1クッション部材43Aは、第1シート42Aaと3枚の第2シート42Abとの3つの交差点にそれぞれ配置されており、合計で3枚設けられている。これにより第1熱伝導部材40Aは、第1クッション部材43Aが配置された各位置に第1熱伝導シート42Aが盛り上がった土手状の突出部46が形成されている。
【0049】
第1クッション部材43Aは、X方向に幅狭でY方向に長尺な直方体形状を有する。本実施形態の第1クッション部材43Aは、X方向寸法が第1シート42Aaよりも小さく、Y方向寸法が第2シート42Aaと略同一である。つまり第1熱伝導シート42Aは、第1筐体12Aの平面視で第1クッション部材43Aよりも大きな外形を有する。
【0050】
図4~
図6に示すように、第2クッション部材43Bは、第2熱伝導シート42Bと第2筐体12Bの内面12Bbとの間に設けられ、突出部46を形成している。第2クッション部材43Bは、第1クッション部材43Aに対して左右対称構造でよいため、詳細な説明は省略する。
【0051】
図6に示すように、クッション部材43A,43Bは、180姿勢度時に熱伝導シート42A、42Bを背表紙部品36に対して押し付ける。従って、突出部46がある部分では、熱伝導部材40A,40Bが背表紙部品36に接触する。
図7に示すように、熱伝導シート42A,42Bは、0度姿勢時には背表紙部品36から離間する。
【0052】
図5及び
図7に示すように、クッション部材43A,43Bは、可動部14CとZ方向にオーバーラップする位置には配置されていない。つまり突出部46h、180度姿勢時に可動部14Cとオーバーラップする位置には設けられていない。このため、
図7に示す180度姿勢時であっても、熱伝導シート42A,42Bは、可動部14Cとオーバーラップする位置では背表紙部品36との間に隙間Cが形成される。従って、この部分では、熱伝導部材40A,40Bは背表紙部品36に接触しない。
【0053】
以上のように、本実施形態に係る電子機器10は、熱伝導材料製の背表紙部品36と、潤滑剤38が塗布された可動部14Cを有するヒンジ装置14とを備える。さらに電子機器10は、第1筐体12Aの内面12Abに設けられ、180度姿勢時に可動部14Cとオーバーラップしない位置で背表紙部品36と接触する第1熱伝導部材40Aと、第2筐体12Bの内面12Bbに設けられ、180度姿勢時に可動部14Cとオーバーラップしない位置で背表紙部品36と接触する第2熱伝導部材40Bとを備える。
【0054】
従って、電子機器10は、180度姿勢時に、CPU20a等が発生した第1筐体12A内の熱が第1熱伝導部材40A及び背表紙部品36へと伝達され、さらに第2熱伝導部材40Bを介して第2筐体12Bへと伝達され、適宜放熱される。その結果、電子機器10は、左右の筐体12A,12B間の熱バランスが均等化され、CPU20aを効率的に冷却でき、さらにこれを搭載した第1筐体12Aの背面にホットスポットを生じることを抑制できる。つまり第1熱伝導部材40Aは、第1筐体12A内の熱及び第1カバー部材18Aの熱を背表紙部品36まで輸送する熱輸送部材として機能する。また、第2熱伝導部材40Bは、第1熱伝導部材40Aから背表紙部品36へと輸送された熱を受け取り、第2筐体12B内及び第2カバー部材18Bに放熱する熱拡散部材として機能する。
【0055】
ところで、電子機器10では、
図5及び
図7中に破線の矢印Aで示すように、ヒンジ装置14の可動部14Cに塗布した潤滑剤38が漏れ出し、筐体12A,12Bの内面12Ab,12Bbに貼り付けた熱伝導シート42A,42Bの表面に付着する可能性がある。仮に、熱伝導シート42A,42Bの表面に付着した潤滑剤38が背表紙部品36に付着すると、
図8に示す0度姿勢時に潤滑剤38が外部に露出し、外観品質を損なうだけでなく、ユーザが触れて不快感を懸念がある。
【0056】
この点、本実施形態の電子機器10は、上記したように、各熱伝導部材40A,40Bは、180度姿勢時に可動部14Cとオーバーラップしない位置で背表紙部品36と接触するように構成されている(
図6参照)。具体的には、クッション部材43A,43Bによって形成した突出部46は、可動部14Cとオーバーラップしない位置のみに設けられている。換言すれば、熱伝導部材40A、40Bは、180度姿勢時に可動部14CとはZ方向にオーバーラップせず、且つ背表紙部品36とオーバーラップする位置に設けられた突出部46を有する。そして、この突出部46が背表紙部品36に接触する。
【0057】
このため、電子機器10は、
図5及び
図7中の矢印Aで示すように、可動部14Cから潤滑剤38が漏れ出して熱伝導シート42A,42Bの表面、より具体的には第1シート42Aa,42Baに付着した場合であっても、これが背表紙部品36に付着することが抑制される。この部分の第1シート42Aa,42Baは、0度姿勢から180度姿勢の間、常に背表紙部品36との間に隙間C以上離間しているためである。その結果、電子機器10は、
図8に示す0度姿勢時に潤滑剤38が外部に露出することがなく、外観品質の低下やユーザの不快感を抑制できる。
【0058】
電子機器10では、熱伝導シート42A,42Bは、平面視でクッション部材43A,43Bよりも大きな外形を有する。このため、熱伝導部材40A,40Bは、背表紙部品36に接触するクッション部材43A,43Bを設けた部分以外に広がった熱伝導シート42A,42Bにより、一層大きな熱拡散効果が得られる。
【0059】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0060】
例えば上記では、熱伝導部材40A,40Bが可動部14Cとオーバーラップしない位置で背表紙部品36と接触するとした。しかしながら、これは突出部46と可動部14Cとが微小にオーバーラップすることをも排除する意図ではなく、可動部14Cから漏れ出した潤滑剤38が容易には突出部46の表面に到達できない態様であれば微小なオーバーラップは妨げない。
【0061】
電子機器10は、CPU20aを冷却するための冷却装置を別途搭載してもよい。この冷却装置としては、銅板やアルミニウム板等のヒートスプレッダやベーパーチャンバ等、さらにこれらと接続される冷却フィンや送風ファン等を例示できる。
【0062】
上記では、本のように二つ折りに折り畳み可能な電子機器10を例示したが、本発明は、同形の筐体同士を二つ折りに折り畳む構成以外、例えば大形の筐体の左右縁部にそれぞれ小形の筐体を折り畳み可能に連結した観音開きの構成、1つの筐体の左右縁部にそれぞれ折り畳み方向の異なる筐体を連結したS型の折り畳み構成、大形の筐体の左右一方の縁部に小形の筐体を折り畳み可能に連結したJ型の折り畳み構成等、各種構成に適用可能であり、筐体の連結数は4以上としてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 電子機器
12A 第1筐体
12B 第2筐体
14 ヒンジ装置
14C 可動部
16 ディスプレイ
20 マザーボード
21,24 バッテリ装置
26~28 フレキシブル基板
31 ヒンジ本体
36 背表紙部品
38 潤滑剤
40A 第1熱伝導部材
40B 第2熱伝導部材
42A 第1熱伝導シート
42B 第2熱伝導シート
43A 第1クッション部材
43B 第2クッション部材
46 突出部
【要約】
【課題】外観品質の低下を抑制しつつ、筐体間の温度バランスを調整することができる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器は、第1筐体と、第2筐体と、潤滑剤が塗布された可動部を有し、前記第1筐体と前記第2筐体とを相対的に回動可能に連結するヒンジ装置と、熱伝導材料製の背表紙部品と、前記第1筐体の内面に設けられ、前記第2姿勢時に前記可動部とオーバーラップしない位置で前記背表紙部品と接触する第1熱伝導部材と、前記第2筐体の内面に設けられ、前記第2姿勢時に前記可動部とオーバーラップしない位置で前記背表紙部品と接触する第2熱伝導部材と、を備える。
【選択図】
図5