(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】導電性接着剤層
(51)【国際特許分類】
H01B 1/22 20060101AFI20230605BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20230605BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20230605BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20230605BHJP
H05K 9/00 20060101ALN20230605BHJP
【FI】
H01B1/22 D
C09J7/30
C09J201/00
C09J9/02
H05K9/00 Q
(21)【出願番号】P 2022541243
(86)(22)【出願日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2022011981
(87)【国際公開番号】W WO2022202560
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2021052818
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】春名 裕介
(72)【発明者】
【氏名】田島 宏
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/145842(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/131904(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
C09J 7/30
C09J 201/00
C09J 9/02
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー成分および導電性粒子を含有する導電性接着剤層であり、
前記導電性粒子は、メディアン径が前記導電性接着剤層の厚さに対して100%以上である導電性粒子Aと、メディアン径が前記導電性粒子Aのメディアン径に対して1~50%である導電性粒子Bとを含み、
前記導電性粒子の含有量は、前記バインダー成分100質量部に対して、110~900質量部であり、
前記導電性粒子Aと前記導電性粒子Bとの質量比[導電性粒子A/導電性粒子B]は0.1~7.2であ
り、
前記導電性粒子Aは、170℃環境下での20%圧縮強度が1.0~25MPaである金属粒子であり、
前記導電性粒子Bのメディアン径が3~10μmである導電性接着剤層。
【請求項2】
前記導電性粒子Aの形状は球状である、請求項
1に記載の導電性接着剤層。
【請求項3】
前記導電性粒子Bの形状はフレーク状または樹枝状である、請求項
1または2に記載の導電性接着剤層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導電性接着剤層に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は、携帯電話、ビデオカメラ、ノートパソコンなどの電子機器において、機構の中に回路を組み込むために多用されている。また、プリンタヘッドのような可動部と制御部との接続にも利用されている。これらの電子機器では、電磁波シールド対策が必須となっており、装置内で使用されるプリント配線板においても、電磁波シールド対策を施したシールドプリント配線板が用いられている。
【0003】
上記シールドプリント配線板としては、例えば、プリント回路を含む基体フィルム上に、接着剤(接着剤層)、金属薄膜、および絶縁層がこの順に積層した電磁波シールドフィルムの接着剤面が密着するように上記電磁波シールドフィルムを載置し、その後加熱・加圧(熱圧着)により上記接着剤が上記基体フィルムに接着した構造を有する。
【0004】
上記プリント配線板は電子部品を実装して使用される。プリント配線板には、屈曲可能なフレキシブルプリント配線板(FPC)が知られている。FPCに使用されるプリント配線板は、電子部品を実装した部位が折れ曲がることで電子部品が脱落しやすくなるため、これを防止する目的でプリント配線板上に補強部材が設けられることがある。上記補強部材には、プリント配線板内に侵入あるいは生じた電磁波を外部に逃がすことを目的として、外部電位と接地可能な導電性を備える補強部材が用いられることがある。例えば、特許文献1には、導電性を有する補強部材と導電性接着剤を備える補強部材付きプリント配線板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
導電性を備える補強部材付きプリント配線板に用いられる導電性接着剤層(導電性接着シート)としては、等方導電性接着剤層が多用されている。
【0007】
しかしながら、等方導電性接着剤層は、厚さ方向において導電性粒子の接触抵抗が多く存在するため、厚さ方向の抵抗値が高くなる傾向がある。一方、導電性接着剤中の導電性粒子が等方導電性接着剤層と比べて少量である異方導電性接着剤層では、グランド回路と設置側との導通を確保するために電磁波シールドフィルムに設けられた開口部に充填される導電性粒子の量が不足し、グランド回路と接地側の補強部材との導電性が低下し、接続安定性が劣る傾向となる。上記開口部が小径であるほど、開口部に充填される導電性粒子の量が減少するため、接続安定性の低下がより顕著となる。また、初期の接続安定性が良好である場合であっても、リフロー工程等において高温に付された際、導電性が低下する場合があった。
【0008】
従って、本開示の目的は、導電部材である被着体同士の接続安定性に優れ、高温に付された場合であっても接続安定性が維持された導電性接着剤層を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、バインダー成分および導電性粒子を含有する導電性接着剤層であり、
上記導電性粒子は、メディアン径が上記導電性接着剤層の厚さに対して100%以上である導電性粒子Aと、メディアン径が上記導電性粒子Aのメディアン径に対して1~50%である導電性粒子Bとを含み、
上記導電性粒子の含有量は、上記バインダー成分100質量部に対して、110~900質量部であり、
上記導電性粒子Aと上記導電性粒子Bとの質量比[導電性粒子A/導電性粒子B]は0.1~7.2である、導電性接着剤層を提供する。
【0010】
上記導電性粒子Aは、170℃環境下での20%圧縮強度が1.0~25MPaである金属粒子であることが好ましい。
【0011】
上記導電性粒子Aの形状は球状であることが好ましい。
【0012】
上記導電性粒子Bの形状はフレーク状または樹枝状であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本開示の導電性接着剤層は、導電部材である被着体同士の接続安定性に優れ、高温に付された場合であっても接続安定性が維持される。このため、例えば、グランド回路と接地側の補強部材との接着に使用した際、開口部が小径である場合であっても、グランド回路と接地側の補強部材との接続安定性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の導電性接着剤層の一実施形態を示す断面図である。
【
図2】本開示の導電性接着剤層を適用した補強部材付きプリント配線板の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[導電性接着剤層]
本開示の導電性接着剤層は、バインダー成分および導電性粒子を少なくとも含む。また、上記導電性粒子は、メディアン径が上記導電性接着剤層の厚さに対して100%以上である導電性粒子(導電性粒子A)と、メディアン径が導電性粒子Aのメディアン径に対して1~50%である導電性粒子(導電性粒子B)とを含む。上記バインダー成分、導電性粒子A、および導電性粒子Bは、それぞれ、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0016】
図1に、本開示の導電性接着剤層の一実施形態を示す。導電性接着剤層(1)は、層状(シート状)であり、バインダー成分(11)および導電性粒子(12)を含む。導電性粒子(12)は、導電性粒子A(12a)および導電性粒子B(12b)を含む。導電性粒子A(12a)の少なくとも一部は、バインダー成分(11)から構成される接着剤部分の表面から突出している。
【0017】
(導電性粒子A)
上述のように、上記導電性接着剤層は、上記導電性粒子として、メディアン径(D50)が上記導電性接着剤層の厚さに対して100%以上である導電性粒子Aを含む。なお、上記導電性接着剤層の厚さは、バインダー成分が流動する状態の前における、バインダー成分から構成される接着剤部分の導電性粒子が突出していない領域における厚さ(例えば
図1に示す厚さT)をいう。また、本明細書において、導電性粒子Aのメディアン径は、導電性粒子Aが圧縮されている場合は圧縮前の状態におけるメディアン径をいうものとする。導電性粒子Aのメディアン径は、上記導電性接着剤層の厚さに対して、150%以上であることが好ましく、より好ましくは200%以上、さらに好ましくは250%以上である。導電性粒子Aのメディアン径が100%以上であることにより、導電性粒子Aの粒径が接着剤層厚さより充分に厚く、加熱等によりバインダー成分が流動して導電性粒子Aが電磁波シールドフィルムの開口部に侵入した場合においても導電性接着剤層の厚さ方向の導電性に優れる。
【0018】
導電性粒子Aのメディアン径は、上記導電性接着剤層の厚さに対して、1000%以下であることが好ましく、より好ましくは900%以下、さらに好ましくは750%以下、特に好ましくは500%以下である。上記導電性粒子Aのメディアン径が1000%以下であると、被着体に対する密着強度により優れる。
【0019】
導電性粒子Aのメディアン径は、1~90μmであることが好ましく、より好ましくは5~75μm、さらに好ましくは10~45μmである。上記メディアン径が1μm以上であると、導電性粒子Aにより厚さ方向の導電性がより発揮される。また、導電性粒子の分散性が良好で凝集が抑制できる。上記メディアン径が90μm以下であると、導電性接着剤層の被着体への密着強度により優れる。
【0020】
導電性粒子Aとしては、例えば、金属粒子、金属被覆樹脂粒子、金属繊維、カーボンフィラー、カーボンナノチューブなどが挙げられる。
【0021】
上記金属粒子および上記金属被覆樹脂粒子の被覆部を構成する金属としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、亜鉛、インジウム、錫、鉛、ビスマス、これらの2以上を含む合金などが挙げられる。上記金属は一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0022】
上記金属粒子としては、具体的には、例えば、銅粒子、銀粒子、ニッケル粒子、銀被覆銅粒子、インジウム粒子、錫粒子、鉛粒子、ビスマス粒子、金被覆銅粒子、銀被覆ニッケル粒子、金被覆ニッケル粒子、インジウム被覆銅粒子、錫被覆銅粒子、鉛被覆銅粒子、ビスマス被覆銅粒子、インジウム被覆ニッケル粒子、錫被覆ニッケル粒子、ビスマス被覆ニッケル粒子、銀被覆合金粒子などが挙げられる。上記銀被覆合金粒子としては、例えば、銅を含む合金粒子(例えば、銅とニッケルと亜鉛との合金からなる銅合金粒子)が銀により被覆された銀被覆銅合金粒子などが挙げられる。上記金属粒子は、電解法、アトマイズ法、還元法などにより作製することができる。
【0023】
導電性粒子Aとしては、中でも、170℃環境下での20%圧縮強度が1.0~25MPaである金属粒子であることが好ましい。上記圧縮強度は、より好ましくは5.0~23MPa、さらに好ましくは11~22MPaである。導電性粒子Aが上記範囲内の圧縮強度の金属粒子であると、高温環境下において高圧力を付された際に粒子が適度に圧縮され、粒子形状を維持することができ、厚さ方向の導電性をより優れたものとすることができる。上記金属粒子の20%圧縮強度は、JIS Z 8844:2019に準拠して測定される。なお、上記圧縮強度は、導電性粒子Aが圧縮されている場合は圧縮前の状態における圧縮強度をいうものとする。
【0024】
導電性粒子Aは、構成金属として少なくとも錫を含むことが好ましい。導電性粒子A中の錫の含有割合は、導電性粒子Aの総量100質量%に対して、80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは94質量%以上である。導電性粒子A中の錫は、熱圧着時に導電性を有する被着体(グランド回路や接地側の補強部材など)とで界面に合金を形成するものと推測される。このため、導電性粒子Aが錫を80質量%以上(特に、90質量%以上)含むと、リフロー工程等において高温に付された際も被着体同士の接続安定性が維持される。上記含有割合は、99.9質量%以下であることが好ましく、より好ましくは99.6質量%以下である。上記含有割合が99.9質量%以下であると、導電性粒子Aがある程度の硬さを有し、高温環境下において高圧力を付された際に導電性粒子Aが圧縮されすぎず、被着体同士の導通を確保することが容易となる。
【0025】
上記錫を含む金属粒子の構成金属として、錫以外のその他の金属を含んでいてもよい。上記その他の金属としては、金、銀、銅、白金、ニッケル、亜鉛、鉛、パラジウム、ビスマス、アンチモン、インジウムなどが挙げられる。上記錫を含む金属粒子は、接続安定性により優れる観点から、上記その他の金属として、金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウム等の錫よりも硬い金属を含むことが好ましい。上記その他の金属はそれぞれ一種のみを含んでいてもよいし、二種以上を含んでいてもよい。
【0026】
導電性粒子Aの形状としては、球状(真球状、楕球状など)、フレーク状(鱗片状、扁平状)、樹枝状(デンドライト状)、繊維状、不定形(多面体)などが挙げられる。中でも、厚さ方向の導電性により優れる観点から、球状が好ましい。
【0027】
上記導電性接着剤層中の導電性粒子Aの含有割合は、導電性接着剤層の総量100質量%に対して、10~70質量%であることが好ましく、より好ましくは15~60質量%、さらに好ましくは20~50質量%である。上記含有割合が10質量%以上であると、厚さ方向の導電性がより良好となる。上記含有割合が70質量%以下であると、導電性接着剤層の柔軟性に優れる。
【0028】
(導電性粒子B)
上述のように、上記導電性接着剤層は、上記導電性粒子として、メディアン径が導電性粒子Aのメディアン径に対して1~50%である導電性粒子Bを含む。導電性粒子Bのメディアン径は、導電性粒子Aのメディアン径に対して、5~30%であることが好ましく、より好ましくは8~20%である。導電性粒子Bのメディアン径が上記範囲内であることにより、導電性接着剤層の面方向の抵抗値を低下させ、等方導電性が発揮される。この等方導電性と導電性粒子Aによる異方導電性とを組み合わせることにより、高温に付された場合であっても被着体同士の接続安定性が優れたものとなる。
【0029】
導電性粒子Bのメディアン径は、0.5~25μmであることが好ましく、より好ましくは3~10μmである。上記メディアン径が0.5μm以上であると、等方導電性がより発揮される。また、導電性粒子の分散性が良好で凝集が抑制できる。上記メディアン径が25μm以下であると、導電性接着剤層の被着体への密着強度により優れる。
【0030】
導電性粒子Bとしては、例えば、上述の導電性粒子Aとして例示および説明されたものと同様に、金属粒子、金属被覆樹脂粒子、金属繊維、カーボンフィラー、カーボンナノチューブなどが挙げられる。
【0031】
導電性粒子Bとしては、中でも、金属粒子が好ましく、銀粒子、銀被覆銅粒子、銀被覆銅合金粒子が好ましい。導電性に優れ、導電性粒子の酸化および凝集を抑制し、且つ導電性粒子のコストを下げることができる観点から、特に、銀被覆銅粒子、銀被覆銅合金粒子が好ましい。
【0032】
導電性粒子Bの形状としては、球状(真球状、楕球状など)、フレーク状(鱗片状、扁平状)、樹枝状(デンドライト状)、繊維状、不定形(多面体)などが挙げられる。中でも、フレーク状、樹枝状が好ましい。この理由は、次のためである。導電性粒子Bの形状を、フレーク状、樹枝状にすることで、導電性粒子Bどうしが重なり合った姿勢をとりやすく、これによって、導電性粒子Bどうしの接触が増え、平面方向の導電性が向上する。この平面方向の導電性の向上と、導電性粒子Aによる厚さ方向の導電性が相まって、導電性接着剤層全体の導電性が向上(電気的に安定)し、被着体同士の接続安定性をより向上させることができる。
【0033】
上記導電性接着剤層中の導電性粒子Bの含有割合は、導電性接着剤層の総量100質量%に対して、10~70質量%であることが好ましく、より好ましくは15~60質量%、さらに好ましくは20~50質量%である。上記含有割合が10質量%以上であると、等方導電性がより発揮され、異方導電性をより充分に発揮させることができる。上記含有割合が70質量%以下であると、導電性接着剤層の柔軟性に優れる。
【0034】
導電性粒子Aと導電性粒子Bとの質量比[導電性粒子A/導電性粒子B]は、0.1~7.2であり、好ましくは0.2~5.2、より好ましくは0.3~4.0、さらに好ましくは0.5~2.7である。上記質量比が上記範囲内であることにより、導電性粒子Aによる異方導電性と導電性粒子Bによる等方導電性とがバランス良く発揮されることで導電性接着剤層として厚さ方向の導電性に優れ、高温に付された場合であっても接続抵抗値の上昇が起こりにくく、導電部材である被着体同士の接続安定性が優れたものとなる。
【0035】
上記導電性接着剤層中の上記導電性粒子の含有量(総量)は、上記バインダー成分の総量100質量部に対して、110~900質量部であり、好ましくは120~700質量部、より好ましくは150~500質量部、さらに好ましくは150~300質量部である。上記含有量が110質量部以上であることにより、導電性粒子の含有量が充分となり、高温に付された場合であっても接続抵抗値の上昇が起こりにくく、導電部材である被着体同士の接続安定性が優れたものとなる。上記含有量が900質量部以下であることにより、導電性粒子同士の接触機会を抑制して抵抗値の上昇を抑制し、厚さ方向の導電性に優れる。また、導電性接着剤層の柔軟性、成形性に優れる。
【0036】
(バインダー成分)
上記バインダー成分としては、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、活性エネルギー線硬化型化合物などが挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂組成物等)、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0037】
上記熱硬化型樹脂としては、熱硬化性を有する樹脂(熱硬化性樹脂)および上記熱硬化性樹脂を硬化して得られる樹脂の両方が挙げられる。上記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂などが挙げられる。上記熱硬化型樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0038】
上記エポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ系樹脂、スピロ環型エポキシ系樹脂、ナフタレン型エポキシ系樹脂、ビフェニル型エポキシ系樹脂、テルペン型エポキシ系樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ系樹脂、グリシジルアミン型エポキシ系樹脂、ノボラック型エポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0039】
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂などが挙げられる。上記グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタンなどが挙げられる。上記グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えばテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。上記ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0040】
上記活性エネルギー線硬化型化合物は、活性エネルギー線照射により硬化し得る化合物(活性エネルギー線硬化性化合物)および上記活性エネルギー線硬化性化合物を硬化して得られる化合物の両方が挙げられる。活性エネルギー線硬化性化合物としては、特に限定されないが、例えば、分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のラジカル反応性基(例えば、(メタ)アクリロイル基)を有する重合性化合物などが挙げられる。上記活性エネルギー線硬化型化合物は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0041】
上記バインダー成分としては、中でも、熱硬化型樹脂が好ましい。この場合、導電性接着剤層をプリント配線板や、電磁波シールド対策を施したシールドプリント配線板などの被着体上に配置した後、加圧および加熱によりバインダー成分を硬化させることができ、貼り付け部の接着性が良好となる。例えば、バインダー成分を熱硬化性樹脂とした場合、熱圧着後におけるバインダー成分は、上記熱硬化性樹脂が硬化した熱硬化型樹脂となる。
【0042】
上記バインダー成分が熱硬化型樹脂を含む場合、上記バインダー成分を構成する成分として、熱硬化反応を促進するための硬化剤を含んでいてもよい。上記硬化剤は、上記熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。上記硬化剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0043】
上記導電性接着剤層中のバインダー成分の含有割合は、特に限定されないが、導電性接着剤層の総量100質量%に対して、5~50質量%であることが好ましく、より好ましくは10~45質量%、さらに好ましくは15~40質量%である。上記含有割合が5質量%以上であると、被着体に対する密着性がより良好となる。上記含有割合が50質量%以下であると、導電性粒子を充分に配合することができ、厚さ方向の導電性により優れる。
【0044】
上記導電性接着剤層は、本開示が目的とする効果を損なわない範囲内において、上記の各成分以外のその他の成分を含有していてもよい。上記その他の成分としては、公知乃至慣用の接着剤に含まれる成分が挙げられる。上記その他の成分としては、例えば、硬化促進剤、可塑剤、難燃剤、消泡剤、粘度調整剤、酸化防止剤、希釈剤、沈降防止剤、充填剤、着色剤、レベリング剤、カップリング剤、紫外線吸収剤、粘着付与樹脂、ブロッキング防止剤などが挙げられる。上記その他の成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。また、上記導電性接着剤層は、導電性粒子Aおよび導電性粒子B以外の導電性粒子を含んでいてもよいが、その割合は、導電性粒子Aおよび導電性粒子Bの合計100質量部に対して、例えば10質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。
【0045】
上記導電性接着剤層の厚さは、1~40μmであることが好ましく、より好ましくは5~30μmである。上記厚さが1μm以上であると、被着体に対する密着強度がより良好となる。上記厚さが40μm以下であると、コストを抑えることができ、また上記導電性接着剤層を備えた製品を薄く設計することができる。なお、上記導電性接着剤層の厚さは、導電性粒子が突出していない領域における厚さ(例えば
図1に示す厚さT)である。また、加熱等により導電性接着剤層を構成する接着剤成分(バインダー成分)が流動して被着体に形成された開口部に侵入した場合などにおける導電性接着剤層の厚さは、上記開口部に侵入していない領域における接着剤層の厚さである。
【0046】
上記導電性接着剤層について、下記導電性試験により求められる抵抗値(初期抵抗値)は、特に限定されないが、200mΩ以下であることが好ましく、より好ましくは150mΩ以下、さらに好ましくは100mΩ以下である。上記初期抵抗値が200mΩ以下であると、上記導電性接着剤層を介した被着体同士の導通が良好となる。
[導電性試験]
導電性接着剤層を、SUS板(厚さ:200μm)に、温度:120℃、圧力:0.5MPaの条件で5秒間加熱加圧して貼り合わせ、導電性接着剤層側の面を評価用のプリント配線板上に貼り合わせ、プレス機を用いて、60秒間真空引きした後、温度:170℃、圧力:3.0MPaの条件で30分間加熱加圧して、評価用基板を準備する。プリント配線板として、厚さ12.5μmのポリイミドフィルムからなるベース部材の上に、グランド回路を疑似した2本の銅箔パターン(厚さ:18μm、線幅:3mm)が形成され、その上に絶縁性の接着剤(厚さ:13μm)および厚さ25μmのポリイミドフィルムからなるカバーレイが形成されたプリント配線板を用いる。カバーレイには、直径1mmのグランド接続部を模擬した円形開口部が形成されている。上記評価用基板について、銅箔パターンとSUS板の間の電気抵抗値を抵抗計で測定して抵抗値とする。
【0047】
上記導電性接着剤層について、265℃の熱風に5秒間曝されるような温度プロファイルに設定したリフロー工程を5サイクル通過させた後の、導電性試験により求められる抵抗値(リフロー後抵抗値)は、特に限定されないが、200mΩ以下であることが好ましく、より好ましくは150mΩ以下、さらに好ましくは100mΩ以下である。上記抵抗値が200mΩ以下であると、上記導電性接着剤層を介した被着体同士の導通が良好となる。なお、上記リフロー後抵抗値は、上記リフロー工程を5サイクル通過させた後の上記評価用基板について、上記初期抵抗値の導電性試験と同様にして測定される。
【0048】
上記導電性接着剤層について、抵抗値変化率[(リフロー後抵抗値-初期抵抗値)/初期抵抗値×100]は、特に限定されないが、50%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは0%以下である。上記抵抗値変化率が50%以下であると、高温に付された場合であっても接続抵抗値の上昇が起こりにくく、導電部材である被着体同士の接続安定性がより優れたものとなる。
【0049】
上記導電性接着剤層について、常温における、引張速度50mm/分、剥離角度90°の条件でのピール剥離試験により求められる、金めっき銅箔積層フィルムに対する密着強度(剥離力)は、特に限定されないが、4.5N/cm以上であることが好ましく、より好ましくは10N/cm以上、さらに好ましくは15N/cm以上である。上記密着強度が4.5N/cm以上であると、上記導電性接着剤層の被着体に対する密着性により優れる。上記金めっき銅箔積層フィルムは、ピール剥離試験時に破れないようにプラスチックフィルム等で補強されていてもよい。上記ピール剥離試験の具体的な方法は、例えば後述の実施例に記載の通りである。
【0050】
上記導電性接着剤層は、プリント配線板用途であることが好ましく、フレキシブルプリント配線板(FPC)用途であることが特に好ましい。上記導電性接着剤層は、経済的に優れながら、導電部材である被着体同士の接続安定性に優れ、高温に付された場合であっても接続安定性が維持される。従って、上記導電性接着剤層は、プリント配線板用(特に、FPC用)の電磁波シールドフィルム、導電性ボンディングフィルムとして好ましく使用することができる。上記導電性ボンディングフィルムは、プリント配線板への導電性(金属)補強板の取付けを目的としたものであり、プリント配線板内に侵入あるいは生じた電磁波を外部に逃がすことを目的としたグランド接続引き出しフィルムも挙げられる。
【0051】
上記導電性接着剤層は、少なくとも一方の面にセパレートフィルムが積層されていてもよい。すなわち、上記導電性接着剤層は、セパレートフィルムと、当該セパレートフィルムの離型面に形成された上記導電性接着剤層とを備える積層体として提供されてもよい。上記セパレートフィルムは使用時に剥離される。
【0052】
上記導電性接着剤層は、公知乃至慣用の製造方法により製造することができる。例えば、セパレートフィルムなどの仮基材または基材上に、導電性接着剤層を形成する接着剤組成物を塗布(塗工)し、必要に応じて、脱溶媒および/または一部硬化させて形成することが挙げられる。
【0053】
上記接着剤組成物は、例えば、上述の導電性接着剤層に含まれる各成分に加え、溶剤(溶媒)を含む。溶剤としては、例えば、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。接着剤組成物の固形分濃度は、形成する導電性接着剤層の厚さなどに応じて適宜設定される。
【0054】
上記接着剤組成物の塗布には、公知のコーティング法が用いられてもよい。例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、リップコーターディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーター、スロットダイコーターなどのコーターが用いられてもよい。
【0055】
[補強部材付きプリント配線板]
図2に、上記導電性接着剤層を補強部材付きプリント配線板に適用した例を示す。
図2に示すように、補強部材付きプリント配線板の一実施形態である補強部材付きプリント配線板(X)は、プリント配線板(3)と、プリント配線板(3)上に設けられた導電性接着剤層(1’)と、導電性接着剤層(1’)上に設けられた、導電性を有する補強部材(2)と、を備える。
【0056】
プリント配線板(3)は、ベース部材(31)と、ベース部材(31)の表面に部分的に設けられた回路パターン(32)と、回路パターン(32)を覆い絶縁保護する絶縁保護層(33)と、回路パターン(32)を覆い且つ回路パターン(32)およびベース部材(31)と絶縁保護層(33)とを接着するための接着剤(34)と、を有する。回路パターン(32)は、複数の信号回路(32a)およびグランド回路(32b)を含む。グランド回路(32b)上の接着剤(34)および絶縁保護層(33)には、接着剤(34)および絶縁保護層(33)を厚さ方向に貫通する開口部(スルーホール)(3a)が形成されている。
【0057】
導電性接着剤層(1’)はプリント配線板(3)の絶縁保護層(33)表面に、開口部(3a)を覆い塞ぐように接着されており、バインダー成分(接着剤成分)(11’)は開口部(3a)を充填している。導電性接着剤層(1’)は導電性粒子A(12a),(12a’)と導電性粒子B(12b)とバインダー成分(接着剤成分)(11’)とから形成されている。導電性接着剤層(1’)は、接着剤層の厚さが比較的厚い厚膜部と、接着剤層の厚さが比較的薄い薄膜部とを有する。厚膜部は開口部(3a)を充填している部分と一致し、薄膜部は絶縁保護層(33)と補強部材(2)との間に位置する部分と一致する。厚膜部における導電性粒子A(12a)は、補強部材(2)とグランド回路(32b)の間に位置し、補強部材(2)とグランド回路(32b)とを好ましくは接触して導通する。厚膜部における接着剤層の厚さは当該厚膜部における導電性粒子A(12a)の接着剤層厚さ方向の最大粒子径に対して例えば50%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上)である。薄膜部における導電性粒子A(12a’)は、補強部材(2)と絶縁保護層(33)の間に位置し、圧力によって圧縮変形しており、好ましくは補強部材(2)と絶縁保護層(33)とに接触している。薄膜部における接着剤層の厚さは当該薄膜部における導電性粒子A(12a’)の接着剤層厚さ方向の最大粒子径に対して例えば50%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上)である。このような構造を有することにより、導電性粒子(12)を介してグランド部材(32b)と補強部材(2)とが導通し、補強部材(2)は外部接続導電層として機能し、補強部材(2)表面は外部の接地部材と電気的に接続される。
【0058】
導電性接着剤層(1’)を形成するために熱圧着を行った際、導電性粒子A(12a)が開口部(3a)に侵入して厚さ方向の導電性(異方導電性)を充分に発揮する。開口部(3a)に侵入せず薄膜部に存在する導電性粒子A(12a’)も、導電性粒子A(12a)と同様に、厚さ方向の導電性(異方導電性)を充分に発揮する。一方、導電性粒子B(12b)は、等方導電性を発揮する。この等方導電性により、導電性粒子A(12a)、導電性粒子A(12a’)、および導電性粒子B(12b)の各粒子間の面方向および厚さ方向に導電性を発揮することができる。このように、導電性接着剤層(1’)では、導電性粒子A(12a),(12a’)の異方導電性と導電性粒子B(12b)の等方導電性とが組み合わせて発揮させることで、導電性接着剤層として厚さ方向の導電性に優れ、導電部材である被着体同士の接続安定性に優れ、高温に付された場合であっても接続安定性が維持される。また、このような効果は、開口部(3a)の径が小さい場合であっても発揮される。
【0059】
導電性接着剤層(1’)は、例えば、導電性接着剤層(1’)を形成する流動前あるいは硬化前の導電性接着剤層(1)を、必要に応じて補強部材(2)の表面に貼り合わせた後、プリント配線板(3)における絶縁保護層(33)上に貼り合わせ、その後に加熱によりバインダー成分(11)を流動あるいは硬化して熱圧着することにより、導電性粒子A(12a)が補強部材(2)と絶縁保護層(33)との間に挟まれて圧縮変形して導電性粒子A(12a’)となるとともに、バインダー成分(接着剤成分)(11)を絶縁保護層(33)に接着させつつ、バインダー成分(11)を流動させてバインダー成分(11)、導電性粒子A(12a)、および導電性粒子B(12b)が開口部(3a)内を充填し、必要に応じて硬化してバインダー成分(11’)を形成して得ることができる。
【0060】
プリント配線板(3)の補強部材(2)に対する反対面に設けられた実装部位には電子部品(4)が接続されるようになっている。補強部材(2)は、電子部品(4)が接続される実装部位に対向配置されている。これにより、補強部材(2)は、電子部品(4)の実装部位を補強している。導電性を有する補強部材(2)は、プリント配線板(3)におけるグランド回路(32b)と、導電性接着剤層(1’)を介して電気的に接続されている。これにより、補強部材(2)がグランド回路(32)と同電位に保たれるため、電子部品(4)の実装部位に対する外部からの電磁波などのノイズを遮蔽している。
【実施例】
【0061】
以下に、実施例に基づいて本開示の導電性接着剤層の一実施形態についてより詳細に説明するが、本開示の導電性接着剤層はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0062】
実施例1
固形分量が20質量%となるように、トルエンにビスフェノールA型エポキシ系樹脂(商品名「jER1256」、三菱ケミカル株式会社製)を45.5質量部、硬化剤(商品名「ST14」、三菱ケミカル株式会社製)を0.05質量部、金属粒子(組成:Ag3.5/Cu0.75/Sn95.75(数値は質量比を示す)、170℃での20%圧縮強度:20.0MPa、導電性粒子1、球状)を24.5質量部、および銀被覆銅粉(導電性粒子2、樹枝状)を30.0質量部配合し、撹拌混合して接着剤組成物を調製した。なお、使用した導電性粒子1および2のメディアン径(D50)は表1に示す通りである。得られた接着剤組成物を、表面を離型処理したPETフィルムの離型処理面に塗布し、加熱により脱溶媒することで、導電性接着剤層を形成した。なお、実施例1において、導電性粒子1は導電性粒子Aに、導電性粒子2は導電性粒子Bに、それぞれ相当する。
【0063】
実施例2~7および比較例1~4
導電性接着剤層における導電性粒子のメディアン径、導電性粒子の含有量、導電性接着剤層の厚さなどを表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして導電性接着剤層を作製した。なお、各例において使用した導電性粒子のメディアン径(D50)は表1に示す通りである。また、実施例2~7において、導電性粒子1は導電性粒子Aに、導電性粒子2は導電性粒子Bに、それぞれ相当する。
【0064】
(評価)
実施例および比較例で使用した各導電性粒子ならびに実施例および比較例で得られた各導電性接着剤層について以下の通り評価した。評価結果は表1に記載した。
【0065】
(1)メディアン径
導電性粒子のメディアン径について、フロー式粒子像分析装置(商品名「FPIA-3000」、シスメックス株式会社製)を用いて測定した。具体的には、対物レンズ10倍を用い、明視野の光学システムで、LPF測定モードにて4000~20000個/μlの濃度に調整した導電性粒子分散液で計測した。上記導電性粒子分散液は、0.2質量%に調整したヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に界面活性剤を0.1~0.5ml加え、測定試料である導電性粒子を0.1±0.01g加えて調製した。導電性粒子が分散した懸濁液は超音波分散器にて1~3分の分散処理を行い測定に供した。測定により得られた導電性粒子のメディアン径を表1に示した。
【0066】
(2)導電性試験
実施例および比較例で作製した導電性接着剤層を、補強部材であるSUS板(厚さ:200μm)に、温度:120℃、圧力:0.5MPaの条件で5秒間加熱加圧して貼り合わせ、導電性接着剤層上のPETフィルムを剥離し、導電性接着剤層側の面を評価用のプリント配線板上に貼り合わせ、プレス機を用いて、60秒間真空引きした後、温度:170℃、圧力:3.0MPaの条件で30分間加熱加圧して、評価用基板を作製した。なお、上記プリント配線板は、厚さ12.5μmのポリイミドフィルムからなるベース部材の上に、互いに間隔をおいて平行に延びる2本の銅箔パターン(厚さ:18μm、線幅:3mm)と、上記銅箔パターンを覆うとともに、絶縁性の接着剤(厚さ:13μm)および厚さ25μmのポリイミドからなる絶縁保護層(厚さ:25μm)を有しており、上記絶縁保護層には、各銅箔パターンを露出する円柱形状の開口部が設けられている。導電性接着剤層とプリント配線板とを重ね合わせる際に、この開口部が導電性接着剤層により完全に覆われるようにした。そして、得られた評価用基板の銅箔パターンとSUS板の間の電気抵抗値を、抵抗計を用いて測定し、リフロー前のプリント配線板とSUS板との間の抵抗値(初期抵抗値)とした。なお、測定は、開口部が直径0.8mm、1mm、1.4mm、および1.8mmの4種類の場合についてそれぞれ行った。
【0067】
次に、リフロー処理を想定した熱処理を行い、リフロー後の電気抵抗値を測定した(リフロー後抵抗値)。この熱処理および電気抵抗値の測定を5回繰り返した。熱処理は鉛フリーハンダの使用を想定し、評価用基板における導電性接着剤層が265℃に5秒間曝されるような温度プロファイルを設定した。そして、初期抵抗値を「接続抵抗値(初期)」およびリフロー後抵抗値を「接続抵抗値(リフロー5回)」としてそれぞれ表1に示した。
【0068】
(3)密着強度
実施例および比較例で作製した導電性接着剤層とSUS製金属補強板(厚さ:200μm)とを、プレス機を用いて温度:120℃、時間:5秒、圧力:0.5MPaの条件で加熱加圧し、さらに150℃で1時間加熱した後、PETフィルムを剥離して導電性接着剤層付き金属補強板を作製した。
次に、ポリイミドからなるベース基板と、ベース基板の表面上に形成された銅箔と、銅箔の表面に形成された金めっき層とを備えた銅箔積層フィルムの金めっき層と、導電性接着剤層付き金属補強板とを、上記熱圧着と同じ条件で接着した後、さらにプレス機で温度:170℃、時間:30分、圧力:3MPaの条件で接着して、金属補強板付き銅箔積層フィルムを作製した。次いで、金属補強板付き銅箔積層フィルムを両面粘着シートで測定台に固定し、銅箔積層フィルムを、常温で引張試験機(商品名「AGS-X50S」、株式会社島津製作所製)で引張速度50mm/分、剥離角度90°にて、導電性接着剤層から剥離し、破断時のピール強度の最大値を測定した。なお、ピール強度が4.5N/cm以上の場合を密着性に優れるものとして評価した。
【0069】
【0070】
実施例の導電性接着剤層は、初期抵抗値が小さく、導電部材である被着体同士の接続安定性に優れていると評価された。また、リフロー後抵抗値も小さく、高温に付された際も良好な導電性が維持されていると評価された。一方、導電性粒子1のメディアン径が導電性接着剤層の厚さに対して100%未満である場合(比較例1,3)、開口部の直径が1mm以下において、リフロー前後のいずれにおいても抵抗値が高く、接続安定性に劣っていると評価された。また、導電性粒子1のメディアン径が導電性接着剤層の厚さに対して100%以上であっても、導電性粒子2のメディアン径が導電性粒子1のメディアン径に対して50%を超える場合(比較例2,4)、リフロー後抵抗率が高く、高温に付された場合は接続安定性に劣っていると評価された。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本開示の導電性接着剤層は電子部品の導電部材の接続に使用することができる。
【符号の説明】
【0072】
X 補強部材付きプリント配線板
1,1’ 導電性接着剤層
11,11’ バインダー成分(接着剤成分)
12 導電性粒子
12a,12a’ 導電性粒子A
12b 導電性粒子B
2 補強部材
3 プリント配線板
31 ベース部材
32 回路パターン
32a 信号回路
32b グランド回路
33 絶縁保護層
34 接着剤
4 電子部品