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特許7290013PD-L1およびCD137に結合する結合物質ならびにその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】PD-L1およびCD137に結合する結合物質ならびにその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230606BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230606BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230606BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230606BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20230606BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230606BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230606BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230606BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230606BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230606BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230606BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
C12N15/13
A61K39/395 N
A61P35/00
C07K16/28
C07K16/30
C07K16/46 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
【請求項の数】 43
(21)【出願番号】P 2020505864
(86)(22)【出願日】2018-08-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 EP2018071002
(87)【国際公開番号】W WO2019025545
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-06-02
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2017/069839
(32)【優先日】2017-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/052946
(32)【優先日】2018-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507316398
【氏名又は名称】ジェンマブ エー/エス
(73)【特許権者】
【識別番号】519011636
【氏名又は名称】ビオンテック エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】アルトゥンタシュ イシリ
(72)【発明者】
【氏名】サテン デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ラダマーカー リック
(72)【発明者】
【氏名】ペラン ポール
(72)【発明者】
【氏名】シャヒン ウグル
(72)【発明者】
【氏名】ギーゼケ フリーデリケ
(72)【発明者】
【氏名】ミューイク アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】グルンウィッツ クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デン ブリンク エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルゼル デニス
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/123650(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/13
A61K 39/395
A61P 35/00
C07K 16/28
C07K 16/30
C07K 16/46
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C12N 15/62
C12N 15/63
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含む、完全長抗体の形をとる結合物質であって、
ヒトCD137に結合する該第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:15に示した配列を含む重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO:16に示した配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、
該第2の抗原結合領域が、ヒトPD-L1とヒトPD-1との結合を阻害し、かつSEQ ID NO:17に示した配列を含む重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO:21に示した配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、
結合物質。
【請求項2】
IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群より選択されるアイソタイプの結合物質である、請求項1に記載の結合物質。
【請求項3】
完全長IgG1抗体である、請求項1または2に記載の結合物質。
【請求項4】
a. CD137に結合する前記第1の抗原結合領域がキメラ抗体に由来し、かつ/または
b. ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域がキメラ抗体に由来する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の結合物質。
【請求項5】
a. CD137に結合する前記第1の抗原結合領域がヒト化抗体に由来し、かつ/または
b. ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域がヒト化抗体に由来する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の結合物質。
【請求項6】
a. ヒトCD137に結合する前記第1の抗原結合領域がヒト抗体に由来し、かつ/または
b. ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域がヒト抗体に由来する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の結合物質。
【請求項7】
a. ヒトCD137に結合する前記第1の抗原結合領域がヒト化抗体に由来し、かつ/または
b. ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域がヒト抗体に由来する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の結合物質。
【請求項8】
前記結合物質が、(i) SEQ ID NO:15に示した配列を含む重鎖可変領域(VH)を含みかつ第1の重鎖定常領域(CH)をさらに含むポリペプチド、および(ii) SEQ ID NO:17に示した配列を含む重鎖可変領域(VH)を含みかつ第2の重鎖定常領域(CH)をさらに含むポリペプチドを含み、前記第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)のそれぞれがCH3領域を含み、かつ2つの該CH3領域が非対称的な変異を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の結合物質。
【請求項9】
前記第1の重鎖定常領域(CH)において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸の少なくとも1つが置換されており、かつ前記第2の重鎖定常領域(CH)において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸の少なくとも1つが置換されており、かつ、第1の重鎖および第2の重鎖が同じ位置において置換されていない、請求項8に記載の結合物質。
【請求項10】
(i)EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置にあるアミノ酸が前記第1の重鎖定常領域(CH)においてLであり、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置にあるアミノ酸が前記第2の重鎖定常領域(CH)においてRである、または(ii)EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置にあるアミノ酸が前記第1の重鎖においてRであり、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置にあるアミノ酸が前記第2の重鎖においてLである、請求項9に記載の結合物質。
【請求項11】
同じ第1の抗原結合領域および第2の抗原結合領域とヒトIgG1ヒンジ、CH2領域、およびCH3領域を含む2つの重鎖定常領域(CH)とを含む別の抗体と比較してより低い程度まで、前記抗体が、Fcを介したエフェクター機能を誘導する、請求項8~10のいずれか一項に記載の結合物質。
【請求項12】
改変されていない第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)を含むこと以外は同一の抗体と比較してより低い程度まで、前記抗体が、Fcを介したエフェクター機能を誘導するように、前記第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)が改変されている、請求項11に記載の結合物質。
【請求項13】
前記Fcを介したエフェクター機能が、Fcγ受容体との結合によって、C1qとの結合によって、またはFcを介したFcγ受容体架橋結合の誘導によって測定される、請求項11または12に記載の結合物質。
【請求項14】
前記Fcを介したエフェクター機能がC1qとの結合によって測定される、請求項13に記載の結合物質。
【請求項15】
C1qと前記抗体との結合が、野生型抗体と比較して低減するように、前記第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域が改変されている、請求項8に記載の結合物質。
【請求項16】
前記第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置にある1つまたは複数のアミノ酸がそれぞれL、L、D、N、およびPではない、請求項8~15のいずれか一項に記載の結合物質。
【請求項17】
EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置がそれぞれ、前記第1の重鎖および第2の重鎖においてFおよびEである、請求項16に記載の結合物質。
【請求項18】
EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置がそれぞれ、前記第1の重鎖定常領域(HC)および第2の重鎖定常領域(HC)においてF、E、およびAである、請求項16に記載の結合物質。
【請求項19】
前記第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域の両方のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置が、それぞれF、E、およびAであり、かつ、(i)第1の重鎖定常領域のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLであり、かつ第2の重鎖定常領域のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRである、または(ii)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLである、請求項18に記載の結合物質。
【請求項20】
前記第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域の両方のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置が、それぞれFおよびEであり、かつ、(i)第1の重鎖定常領域のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRである、または(ii)第1の重鎖定常領域のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLである、請求項17に記載の結合物質。
【請求項21】
T細胞の増殖を誘導および/または増強する、請求項1~20のいずれか一項に記載の結合物質。
【請求項22】
前記T細胞がCD4+T細胞および/またはCD8+T細胞である、請求項21に記載の結合物質。
【請求項23】
前記第2の抗原結合領域がPD-L1に結合した場合のみ、前記結合物質がCD137シグナル伝達を活性化する、請求項1~22のいずれか一項に記載の結合物質。
【請求項24】
特異的なT細胞受容体(TCR)を発現するT細胞を、該TCRによって認識される対応する抗原を主要組織適合遺伝子複合体上で提示している樹状細胞(DC)と共に同時培養することによって、T細胞の増殖が測定される、請求項21または22に記載の結合物質。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか一項に記載の結合物質をコードする、核酸。
【請求項26】
請求項25に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項27】
請求項25に記載の核酸または請求項26記載の発現ベクターを含む、細胞。
【請求項28】
哺乳動物細胞である、請求項27に記載の細胞。
【請求項29】
請求項1~24のいずれか一項に記載の結合物質、請求項25に記載の核酸、請求項26に記載の発現ベクター、または請求項27もしくは28に記載の細胞を含む、薬学的組成物。
【請求項30】
薬学的に許容される担体および/または賦形剤をさらに含む、請求項29に記載の薬学的組成物。
【請求項31】
医薬としての使用のための、請求項1~24のいずれか一項に記載の結合物質、請求項25に記載の核酸、請求項26に記載の発現ベクター、請求項27もしくは28に記載の細胞、または請求項29もしくは30に記載の薬学的組成物。
【請求項32】
がんの処置における使用のための、請求項31に記載の結合物質、核酸、発現ベクター、細胞、または薬学的組成物。
【請求項33】
前記がんが、固形腫瘍の存在を特徴とする、または黒色腫、卵巣がん、肺がん、結腸がん、および頭頸部がんからなる群より選択される、請求項32に記載の使用のための結合物質、核酸、発現ベクター、細胞、または薬学的組成物。
【請求項34】
前記がんが非小細胞肺がん(NSCLC)である、請求項33に記載の使用のための結合物質、核酸、発現ベクター、細胞、または薬学的組成物。
【請求項35】
医薬の製造のための、請求項1~24のいずれか一項に記載の結合物質、請求項25に記載の核酸、請求項26に記載の発現ベクター、請求項27もしくは28に記載の細胞、または請求項29もしくは30に記載の薬学的組成物の使用。
【請求項36】
前記医薬が、がんを処置するための医薬である、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
前記がんが、固形腫瘍の存在を特徴とする、または黒色腫、卵巣がん、肺がん、結腸がん、および頭頸部がんからなる群より選択されるがんである、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
前記肺がんが非小細胞肺がん(NSCLC)である、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
1種類または複数種のさらなる治療用物質と組み合わせて用いられることを特徴とする、請求項32~34のいずれか一項に記載の結合物質、核酸、発現ベクター、細胞、または薬学的組成物。
【請求項40】
前記1種類または複数種のさらなる治療用物質が、化学療法剤である、請求項39に記載の結合物質、核酸、発現ベクター、細胞、または薬学的組成物。
【請求項41】
請求項1~24のいずれか一項に記載の結合物質を産生するための方法であって、該結合物質が二重特異性抗体であり、以下の工程を含む、方法:
a.ヒトCD137に結合する抗原結合領域を含む第1の抗体を産生する宿主細胞を培養する工程であって、該ヒトCD137に結合する抗原結合領域が、SEQ ID NO:15に示した配列を含む重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO:16に示した配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、工程;
b.ヒトPD-L1に結合する抗原結合領域を含む第2の抗体を産生する宿主細胞を培養する工程であって、該ヒトPD-L1に結合する抗原結合領域が、SEQ ID NO:17に示した配列を含む重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO:21に示した配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、工程;
c. ヒンジ領域中のシステインがジスルフィド結合異性化を受けることを可能にするのに十分な還元条件下で、該第1の抗体を該第2の抗体と一緒にインキュベートする工程;ならびに
d. CD137×PD-L1二重特異性抗体を得る工程
【請求項42】
工程aが、培養物から前記第1の抗体を精製することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
工程bが、培養物から前記第2の抗体を精製することを含む、請求項41または42に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、新規の結合物質および医学におけるその使用に関する。特に、本発明は、ヒトPD-L1に結合し、かつヒトCD137に結合する結合物質、例えば、二重特異性抗体に関する。本発明はさらに、本発明の結合物質の使用、ならびに本発明の抗体を産生するための方法、核酸構築物、および宿主細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
CD137(4-1BB、TNFRSF9)は腫瘍壊死因子(TNF)受容体(TNFR)ファミリーのメンバーである。CD137は、CD8+T細胞およびCD4+T細胞、調節性T細胞(Treg)、ナチュラルキラー(NK)細胞およびNKT細胞、B細胞、ならびに好中球の表面にある補助刺激分子である。T細胞上でCD137は構成的に発現していないが、T細胞受容体(TCR)が活性化されると誘導される。その天然リガンドである4-1BBLまたはアゴニスト抗体を介して刺激されると、アダプターとしてTNFR関連因子(TRAF)-2およびTRAF-1を用いてシグナル伝達が起こる。CD137による初期シグナル伝達は、最終的に核内因子(NF)-κBと分裂促進因子活性化タンパク質(MAP)-キナーゼ経路を活性化するK-63ポリ-ユビキチン結合反応を伴う。シグナル伝達によってT細胞補助刺激、増殖、サイトカイン産生、成熟が増加し、CD8+T細胞の生存が延長した。CD137に対するアゴニスト抗体は様々な前臨床モデルにおいてT細胞による抗腫瘍管理を促進することが示されている(Murillo et al. 2008 Clin. Cancer Res. 14(21): 6895-6906(非特許文献1))。CD137を刺激する抗体はT細胞の生存および増殖を誘導し、それによって抗腫瘍免疫応答を強化することができる。CD137を刺激する抗体は先行技術に開示されており、ヒトIgG4抗体であるウレルマブ(WO2005035584(特許文献1))およびヒトIgG2抗体であるウトミルマブ(utomilumab)を含む(Fisher et al. 2012 Cancer Immunol. Immunother. 61: 1721-1733(非特許文献2))。
【0003】
プログラム細胞死リガンド1(PD-L1、PDL1、CD274、B7H1)は33kDa1回膜貫通I型膜タンパク質である。選択的スプライシングに基づいて3種類のPD-L1アイソフォームが述べられている。PD-L1は、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーに属し、1つのIg様C2型ドメインと1つのIg様V型ドメインとを含む。新鮮に単離されたT細胞およびB細胞はごくわずかな量のPD-L1しか発現せず、CD14+単球の一部(約16%)がPD-L1を構成的に発現する。しかしながら、インターフェロン-γ(IFNγ)が腫瘍細胞上のPD-L1をアップレギュレートすることが知られている。
【0004】
PD-L1は、(1)活性化T細胞上のPD-L1受容体であるプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)(CD279)に結合することで腫瘍反応性T細胞を寛容化することによって;(2)腫瘍細胞発現PD-L1を介したPD-1シグナル伝達によりCD8+T細胞およびFasリガンド媒介性溶解に対して腫瘍細胞を耐性にすることによって;(3)T細胞発現CD80(B7.1)を介した逆向きのシグナル伝達によりT細胞を寛容化することによって;ならびに(4)誘導されたT調節細胞の発生および維持を促進することによって抗腫瘍免疫を妨げる。PD-L1は、黒色腫、卵巣がん、肺がん、および結腸がんを含む多くのヒトがんにおいて発現している(Latchman et al., 2004 Proc Natl Acad Sci USA 101, 10691-6(非特許文献3))。
【0005】
PD-L1遮断抗体は、PD-L1を過剰発現させることが知られている数種類のがん(黒色腫、NSCLCを含む)において臨床活性を示した。例えば、アテゾリズマブは、PD-L1に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体である。現在、アテゾリズマブは、様々なタイプの固形腫瘍を含む数種類の適応症の免疫療法として臨床試験されており(例えば、Rittmeyer et al., 2017 Lancet 389:255-265(非特許文献4)を参照されたい)、非小細胞肺がんおよび膀胱がん適応症に対して認可されている。PD-L1抗体であるアベルマブ(Kaufman et al Lancet Oncol. 2016;17(10):1374-1385(非特許文献5))は、転移性メルケル細胞がんを有する成人患者および12才またはそれ以上の小児患者の治療用にFDAに認可され、膀胱がん、胃がん、頭頸部がん、中皮腫、NSCLC、卵巣がん、および腎臓がんを含む数種類のがん適応症において臨床試験されている。PD-L1抗体であるデュルバルマブが局所進行性または転移性の尿路上皮がん適応症に対して認可されており、複数の固形腫瘍および血液がんにおいて臨床開発されている(例えば、Massard et al., 2016 J Clin Oncol. 34(26):3119-25(非特許文献6)を参照されたい)。さらなる抗PD-L1 抗体が、WO2004004771(特許文献2)、WO2007005874(特許文献3)、WO2010036959(特許文献4)、WO2010077634(特許文献5)、WO2013079174(特許文献6)、WO2013164694(特許文献7)、WO2013173223(特許文献8)、および WO2014022758(特許文献9)において記載されている。
【0006】
Horton et al (J Immunother Cancer. 2015; 3(Suppl 2): O10(非特許文献7))はアゴニスト4-1BB抗体とPD-L1中和抗体の組み合わせを開示する。
【0007】
現在、ウトミルマブとアベルマブの併用療法が診療所において試験されている(Chen et al., J Clin Oncol 35, 2017 suppl; abstr TPS7575(非特許文献8)、および臨床試験NCT02554812)。
【0008】
しかしながら、当技術分野における進歩にもかかわらず、PD-L1とCD137の両方に結合することができる多重特異性抗体が必要とされている。これらは、PD-L1を発現する抗原提示細胞(APC)または腫瘍細胞と、CD137を発現するT細胞とに同時結合することができ、その結果、(細胞障害性)T細胞が条件付きで活性化される。活性化T細胞上で発現しているPD1にPD-L1が結合するとT細胞が阻害される。従って、本発明の目的は、PD-L1×CD137二重特異性結合物質、例えば、PD1-(PD-L1)阻害性シグナル伝達をブロックし、同時に、活性化T細胞上で発現しているCD137分子にトランス結合することでT細胞を補助刺激し、トランス結合を介して活性化が起こる二重特異性抗体を提供することである。これは効率的な抗腫瘍免疫誘導につながる可能性がある。本発明のさらなる目的は、不活性Fc領域を有するかまたはFc結合領域を有さないPD-L1×CD137二重特異性結合物質を提供し、それによって、CD137に結合した場合に補体依存性細胞障害(CDC)もT細胞上でのFcを介した他のエフェクター機能も誘導しない二重特異性結合物質を提供することである。本発明のさらなる目的は、T細胞の活性化に適したPD-L1×CD137二重特異性結合物質を提供することである。本発明のさらなる目的は、腫瘍特異的T細胞、例えば腫瘍浸潤T細胞の活性化に適したPD-L1×CD137二重特異性結合物質を提供することである。本発明のさらなる目的は、この分野における現行の治療選択肢と比較して改善した毒物学プロファイルを有する毒物学プロファイルを有する二重特異性結合物質を提供することである。本発明のなおさらなる目的は、この分野における現行の治療選択肢と比較して改善した効力プロファイルを有する結合物質を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】WO2005035584
【文献】WO2004004771
【文献】WO2007005874
【文献】WO2010036959
【文献】WO2010077634
【文献】WO2013079174
【文献】WO2013164694
【文献】WO2013173223
【文献】WO2014022758
【非特許文献】
【0010】
【文献】Murillo et al. 2008 Clin. Cancer Res. 14(21): 6895-6906
【文献】Fisher et al. 2012 Cancer Immunol. Immunother. 61: 1721-1733
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【文献】Kaufman et al Lancet Oncol. 2016;17(10):1374-1385
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【文献】Chen et al., J Clin Oncol 35, 2017 suppl; abstr TPS7575
【発明の概要】
【0011】
第1の局面において、本発明は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含む結合物質であって、第2の抗原結合領域がヒトPD-L1とヒトPD-1との結合を阻害する、結合物質を提供する。第1の抗原結合領域および第2の抗原結合領域を含む、このような結合物質には二重の効果がある。
【0012】
第一に、結合物質は、そのPD-L1結合領域を介してPD-L1発現腫瘍細胞または抗原提示細胞(APC)に結合するのに対して、そのCD137結合領域を介してT細胞に結合してT細胞を活性化し、その結果、T細胞が条件付きで活性化される。従って、理論に拘束されるものではないが、本発明による結合物質はPD-L1とCD137の両方に同時に結合した場合にCD137クラスター化を媒介する可能性がある。この受容体が十分に活性化され、CD137を介してT細胞が補助刺激されるには、結合物質によるCD137クラスター化が必要である。第二に、このように結合物質はT細胞を腫瘍細胞に近づけ、それによって、T細胞による腫瘍細胞死滅を容易にする。さらに、特定の理論に制限されるものではないが、PD-L1発現腫瘍細胞とエフェクターT細胞、例えばCD8+T細胞が互いに近接することでインターフェロン-□放出が開始する可能性があり、次に、腫瘍細胞上でPD-L1がアップレギュレートし、従って、腫瘍への、もっと多くの結合物質の動員が容易になり、腫瘍死滅がさらに強化できるかもしれない。
【0013】
最後に、本発明の結合物質はヒトPD-L1とヒトPD-1との結合を阻害し、従って、PD-1による抗腫瘍免疫をPD-L1が妨げないようにする。従って、結合物質は、T細胞がPD-1/PD-L1相互作用を介した阻害シグナルを受け取ることを妨げる一方で、T細胞の増殖、活性化、エフェクター機能および記憶機能を強化するシグナル伝達をもたらすCD137分子への結合によってT細胞は活性化シグナルを受け取る。
【0014】
本発明のPD-L1×CD137結合物質は、T細胞に対して活性化受容体、例えば、CD137の刺激と、阻害シグナル、例えば、PD-1/PD-L1のブロッキングとを同時に行うことができる治療の場において特に有用である。これは、CD137の刺激と、PD-L1を介したPD-1/PD-L1のブロッキングとを別々に行うよりも大きい規模のT細胞増殖、活性化、および生存をもたらすことができる。
【0015】
本発明の一態様において、PD-L1×CD137結合物質は二重特異性抗体である。
【0016】
本発明の別の態様において、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を有する、二重特異性抗体であり、第2の抗原結合領域はヒトPD-L1とヒトPD-1との結合を阻害する。
【0017】
本発明のさらなる態様において、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、(a)第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:9に示したHCDR1配列、SEQ ID NO:10に示したHCDR2配列、およびSEQ ID NO:11に示したHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにSEQ ID NO:13に示したLCDR1配列、GASとして示したLCDR2配列、および14に示したLCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ(b)第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:18に示したHCDR1配列、SEQ ID NO:19に示したHCDR2配列、およびSEQ ID NO:20に示したHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにSEQ ID NO:22に示したLCDR1配列、DDNとして示したLCDR2配列、および23に示したLCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0018】
または、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、(a)第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:50に示したHCDR1配列、SEQ ID NO:51に示したHCDR2配列、およびSEQ ID NO:52に示したHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにSEQ ID NO:54に示したLCDR1配列、SASとして示したLCDR2配列、および55に示したLCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ(b)第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:18に示したHCDR1配列、SEQ ID NO:19に示したHCDR2配列、およびSEQ ID NO:20に示したHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにSEQ ID NO:22に示したLCDR1配列、DDNとして示したLCDR2配列、および23に示したLCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0019】
本発明の別の態様において、結合物質は、ヒト化抗体に由来する、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、および/またはヒト抗体に由来する、ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含む。
【0020】
さらなる局面において、本発明は、医学における本発明の結合物質の使用、特に、がんを処置するための本発明の結合物質の使用に関する。
【0021】
このような結合物質、例えば、抗体のアミノ酸配列をコードする核酸;このような核酸を含む発現ベクター;このような核酸または発現ベクターを含む細胞;このような結合物質、核酸、発現ベクター、または細胞を含む組成物;がんまたは他の疾患の処置における使用のための、このような結合物質、核酸、発現ベクター、細胞、または組成物;このような結合物質、例えば、二重特異性抗体を産生するための方法;ならびにこのような結合物質、例えば、多重特異性抗体、特に、二重特異性抗体に基づく診断方法およびキットを含む、本発明のこれらのおよび他の局面および態様が下記でさらに詳細に説明される。
[本発明1001]
ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、該第2の抗原結合領域がヒトPD-L1とヒトPD-1との結合を阻害する、結合物質。
[本発明1002]
前記第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:29に示したカニクイザル(マカカ・ファシキュラリス(Macaca fascicularis))PD-L1またはその成熟ポリペプチドに結合する、本発明1001の結合物質。
[本発明1003]
ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域が、
a. SEQ ID NO:20に示した配列またはSEQ ID NO:20において1個までのアミノ酸が改変されている配列を有する重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含む、重鎖可変領域、および
b. SEQ ID NO:23に示した配列またはSEQ ID NO:23において2個までのアミノ酸が改変されている配列を有する軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む、軽鎖可変領域
を含む抗体とヒトPD-L1結合について競合する抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、本発明1001または1002の結合物質。
[本発明1004]
ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域が、
a. SEQ ID NO:20に示した配列または SEQ ID NO:20において1個までのアミノ酸が改変されている配列を有するHCDR3を含む、重鎖可変領域、および
b. SEQ ID NO:23に示した配列またはSEQ ID NO:23において2個までのアミノ酸が改変されている配列を有するLCDR3を含む、軽鎖可変領域
を含む抗体のPD-L1に対する特異性を有する抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、本発明1001~1003のいずれかの結合物質。
[本発明1005]
ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:20に示した配列またはSEQ ID NO:20において1個までのアミノ酸が改変されている配列を有するHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)を含む、本発明1001~1004のいずれかの結合物質。
[本発明1006]
ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:19に示した配列またはSEQ ID NO:19において1個までのアミノ酸が改変されている配列を有するHCDR2を含む重鎖可変領域(VH)を含む、本発明1001~1005のいずれかの結合物質。
[本発明1007]
ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:18に示した配列またはSEQ ID NO:18において1個までのアミノ酸が改変されている配列を有するHCDR1を含む重鎖可変領域(VH)を含む、本発明1001~1006のいずれかの結合物質。
[本発明1008]
ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域が、HCDR1配列、HCDR2配列、およびHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)を含み、該HCDR1配列がSEQ ID NO:18に示した配列を含み、該HCDR2配列がSEQ ID NO:19に示した配列を含み、かつ該HCDR3配列がSEQ ID NO:20に示した配列を含む、本発明1001~1007のいずれかの結合物質。
[本発明1009]
ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域が、LCDR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、該LCDR1配列がSEQ ID NO:22に示した配列を含み、該LCDR2配列がDDNとして示した配列を含み、かつ該LCDR3配列が23に示した配列を含む、本発明1001~1008のいずれかの結合物質。
[本発明1010]
ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域が、HCDR1配列、HCDR2配列、およびHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにLCDR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、該HCDR1配列がSEQ ID NO:18に示した配列であり、該HCDR2配列がSEQ ID NO:19に示した配列であり、かつ該HCDR3配列がSEQ ID NO:20に示した配列であり、かつ、該LCDR1配列がSEQ ID NO:22に示した配列であり、該LCDR2配列がDDNとして示した配列であり、かつ該LCDR3配列が23に示した配列である、本発明1001~1009のいずれかの結合物質。
[本発明1011]
ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:17に示したVH配列のアミノ酸配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む、本発明1001~1010のいずれかの結合物質。
[本発明1012]
ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域が重鎖可変領域(VH)を含み、該VHがSEQ ID NO:17に示した配列を含む、本発明1001~1011のいずれかの結合物質。
[本発明1013]
ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:21に示したVL配列のアミノ酸配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、本発明1001~1012のいずれかの結合物質。
[本発明1014]
ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域が軽鎖可変領域(VL)を含み、該VLがSEQ ID NO:21に示した配列を含む、本発明1001~1013のいずれかの結合物質。
[本発明1015]
ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域が重鎖可変領域(VH)および可変領域(VL)を含み、該VHがSEQ ID NO:17に示した配列を含み、かつ該VLがSEQ ID NO:21に示した配列を含む、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1016]
前記第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:31に示したカニクイザル(マカカ・ファシキュラリス)CD137またはその成熟ポリペプチドに結合する、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1017]
前記第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:33に示した変異ヒトCD137またはその成熟ポリペプチドに結合するよりも高い程度まで、SEQ ID NO:30に示したヒトCD137またはその成熟ポリペプチドに結合する、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1018]
前記第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:30に示したヒトCD137またはその成熟ポリペプチドに結合するのと同じ程度まで、SEQ ID NO:34に示した変異ヒトCD137またはその成熟ポリペプチドに結合する、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1019]
ヒトCD137に結合する前記第1の抗原結合領域が、
a. SEQ ID NO:11に示した配列もしくはSEQ ID NO:11において3個までのアミノ酸が改変されている配列を有する重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含む、重鎖可変領域、および
SEQ ID NO:14に示した配列もしくはSEQ ID NO:14において4個までのアミノ酸が改変されている配列を有する軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む、軽鎖可変領域;または
b. SEQ ID NO:52に示した配列もしくはSEQ ID NO:52において3個までのアミノ酸が改変されている配列を有する重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含む、重鎖可変領域、および
SEQ ID NO:55に示した配列もしくはSEQ ID NO:55において4個までのアミノ酸が改変されている配列を有する軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む、軽鎖可変領域
を含む抗体とヒトCD137結合について競合する抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1020]
ヒトCD137に結合する前記第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:40に示したアミノ酸配列中のアミノ酸の少なくとも1つに結合する、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1021]
ヒトCD137に結合する前記第1の抗原結合領域が、
a. SEQ ID NO:15に示したVH配列およびSEQ ID NO:16に示したVL配列を含む抗体と同じヒトCD137エピトープに結合する、または
b. SEQ ID NO:49に示したVH配列およびSEQ ID NO:53に示したVL配列を含む抗体と同じヒトCD137エピトープに結合する、
前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1022]
ヒトCD137に結合する前記第1の抗原結合領域が、
a. SEQ ID NO:11に示した配列もしくはSEQ ID NO:11において3個までのアミノ酸が改変されている配列を有するHCDR3を含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:14に示した配列もしくは SEQ ID NO:14において4個までのアミノ酸が改変されている配列を有するLCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む抗体のCD137に対する特異性を有する抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域;または
b. SEQ ID NO:52に示した配列もしくはSEQ ID NO:52において3個までのアミノ酸が改変されている配列を有するHCDR3を含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:55に示した配列もしくはSEQ ID NO:55において4個までのアミノ酸が改変されている配列を有するLCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む抗体のCD137に対する特異性を有する抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域
を含む、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1023]
ヒトCD137に結合する前記第1の抗原結合領域が、
a. SEQ ID NO:11に示した配列もしくはSEQ ID NO:11において3個までのアミノ酸が改変されている配列を有するHCDR3を含む、重鎖可変領域(VH);または
b. SEQ ID NO:52に示した配列もしくはSEQ ID NO:52において3個までのアミノ酸が改変されている配列を有するHCDR3を含む、重鎖可変領域(VH)
を含む、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1024]
ヒトCD137に結合する前記第1の抗原結合領域が、
a. SEQ ID NO:10に示した配列もしくはSEQ ID NO:10において2個までのアミノ酸が改変されている配列を有する、HCDR2;
b. SEQ ID NO:52に示した配列もしくはSEQ ID NO:52において3個までのアミノ酸が改変されている配列を有する、HCDR2
を含む重鎖可変領域(VH)を含む、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1025]
ヒトCD137に結合する前記第1の抗原結合領域が、
a. SEQ ID NO:9に示した配列もしくはSEQ ID NO:9において3個までのアミノ酸が改変されている配列を有するHCDR1を含む、重鎖可変領域(VH);または
b. SEQ ID NO:50に示した配列もしくはSEQ ID NO:50において3個までのアミノ酸が改変されている配列を有するHCDR1を含む、重鎖可変領域(VH)
を含む、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1026]
ヒトCD137に結合する前記第1の抗原結合領域が、
a. HCDR1配列がSEQ ID NO:9に示した配列を含み、HCDR2配列がSEQ ID NO:10に示した配列を含み、かつHCDR3配列がSEQ ID NO:11に示した配列を含む、
該HCDR1配列と該HCDR2配列と該HCDR3配列とを含む重鎖可変領域(VH);または
b. HCDR1配列がSEQ ID NO:50に示した配列を含み、HCDR2配列がSEQ ID NO:51に示した配列を含み、かつHCDR3配列がSEQ ID NO:52に示した配列を含む、
該HCDR1配列と該HCDR2配列と該HCDR3配列とを含む重鎖可変領域(VH)
を含む、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1027]
ヒトCD137に結合する前記第1の抗原結合領域が、
a. LCDR1配列がSEQ ID NO:13に示した配列を含み、LCDR2配列がGASとして示した配列を含み、かつLCDR3配列が14に示した配列を含む、
該LCDR1配列と該LCDR2配列と該LCDR3配列とを含む軽鎖可変領域(VL);または
b. LCDR1配列がSEQ ID NO:54に示した配列を含み、LCDR2配列がSASとして示した配列を含み、かつLCDR3配列が55に示した配列を含む、
該LCDR1配列と該LCDR2配列と該LCDR3配列とを含む軽鎖可変領域(VL)
を含む、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1028]
ヒトCD137に結合する前記第1の抗原結合領域が、
a. HCDR1配列がSEQ ID NO:9に示した配列であり、HCDR2配列がSEQ ID NO:10に示した配列であり、かつHCDR3配列がSEQ ID NO:11に示した配列であり、かつ、LCDR1配列がSEQ ID NO:13に示した配列であり、LCDR2配列がGASとして示した配列であり、かつLCDR3配列が14に示した配列である、
該HCDR1配列と該HCDR2配列と該HCDR3配列とを含む重鎖可変領域(VH)、および該LCDR1配列と該LCDR2配列と該LCDR3配列とを含む軽鎖可変領域(VL);または
b. HCDR1配列がSEQ ID NO:50に示した配列であり、HCDR2配列がSEQ ID NO:51に示した配列であり、かつHCDR3配列がSEQ ID NO:52に示した配列であり、かつ、LCDR1配列がSEQ ID NO:54に示した配列であり、LCDR2配列がSASとして示した配列であり、かつLCDR3配列が55に示した配列である、
該HCDR1配列と該HCDR2配列と該HCDR3配列とを含む重鎖可変領域(VH)、および該LCDR1配列と該LCDR2配列と該LCDR3配列とを含む軽鎖可変領域(VL)
を含む、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1029]
ヒトCD137に結合する前記第1の抗原結合領域が、
a. SEQ ID NO:15に示したVH配列のアミノ酸配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する配列を含む、重鎖可変領域(VH);または
b. SEQ ID NO:49に示したVH配列のアミノ酸配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する配列を含む、重鎖可変領域(VH)
を含む、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1030]
ヒトCD137に結合する前記第1の抗原結合領域が、
a. SEQ ID NO:15に示した配列を含む重鎖可変領域(VH);または
b. SEQ ID NO:49に示した配列を含む重鎖可変領域(VH)
を含む、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1031]
ヒトCD137に結合する前記第1の抗原結合領域が、
a. SEQ ID NO:16に示したVL配列のアミノ酸配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する配列を含む、軽鎖可変領域(VL);または
b. SEQ ID NO:53に示したVL配列のアミノ酸配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する配列を含む、軽鎖可変領域(VL)
を含む、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1032]
ヒトCD137に結合する前記第1の抗原結合領域が、
a. SEQ ID NO:16に示した配列を含む軽鎖可変領域(VL);または
b. SEQ ID NO:53に示した配列を含む軽鎖可変領域(VL)
を含む、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1033]
ヒトCD137に結合する前記第1の抗原結合領域が、
a. 重鎖可変領域(VH)がSEQ ID NO:15に示した配列を含みかつ可変領域(VL)がSEQ ID NO:16に示した配列を含む、VHおよびVL;または
b. 重鎖可変領域(VH)がSEQ ID NO:49に示した配列を含みかつ軽鎖可変領域(VL)がSEQ ID NO:53に示した配列を含む、VHおよびVL
を含む、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1034]
ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
a. 該第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:9に示したCDR1配列、SEQ ID NO:10に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:11に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、またはSEQ ID NO:50に示したHCDR1配列、SEQ ID NO:51に示したHCDR2配列、およびSEQ ID NO:52に示したHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)を含み;かつ
b. 該第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:18に示したCDR1配列、SEQ ID NO:19に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:20に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む、
前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1035]
ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
a. 該第1の抗原結合領域が、
- SEQ ID NO:9に示したCDR1配列、SEQ ID NO:10に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:11に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:13に示したCDR1配列、GASとして示したCDR2配列、および14に示したCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)、または
- SEQ ID NO:50に示したHCDR1配列、SEQ ID NO:51に示したHCDR2配列、およびSEQ ID NO:52に示したHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:54に示したLCDR1配列、SASとして示したLCDR2配列、および55に示したLCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)
を含み;かつ
b. 該第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:18に示したCDR1配列、SEQ ID NO:19に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:20に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:22に示したCDR1配列、DDNとして示したCDR2配列、および23に示したCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、
前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1036]
ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
a. 該第1の抗原結合領域が、
- SEQ ID NO:15に示した配列を含む重鎖可変領域(VH)、または
- SEQ ID NO:49に示した配列を含む重鎖可変領域(VH)
を含み;かつ
b. 該第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:17に示した配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む、
前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1037]
ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
a. 該第1の抗原結合領域が、
- SEQ ID NO:15に示した配列を含む重鎖可変領域(VH)、およびSEQ ID NO:16に示した配列を含む軽鎖可変領域(VL)、または
- SEQ ID NO:49に示した配列を含む重鎖可変領域(VH)、およびSEQ ID NO:53に示した配列を含む軽鎖可変領域(VL)
を含み;かつ
b. 該第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:17に示した配列を含む重鎖可変領域(VH)、およびSEQ ID NO:21に示した配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、
前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1038]
多重特異性抗体である、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1039]
完全長抗体または抗体断片の形をとる、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1040]
前記第1の抗原結合領域が第1の重鎖可変領域(VH)および第1の軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ前記第2の抗原結合領域が第2の重鎖可変領域(VH)および第2の軽鎖可変領域(VL)を含む、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1041]
それぞれの可変領域が、3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)、ならびに4つのフレームワーク領域(FR1、FR2、FR3、およびFR4)を含む、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1042]
前記相補性決定領域および前記フレームワーク領域が、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置されている、本発明1041の結合物質。
[本発明1043]
(i) 前記第1の重鎖可変領域(VH)を含みかつ第1の重鎖定常領域(CH)をさらに含むポリペプチド、および(ii)前記第2の重鎖可変領域(VH)を含みかつ第2の重鎖定常領域(CH)をさらに含むポリペプチドを含む、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1044]
(i)前記第1の軽鎖可変領域(VL)を含みかつ第1の軽鎖定常領域(CL)をさらに含むポリペプチド、および(ii)前記第2の軽鎖可変領域(VL)を含みかつ第2の軽鎖定常領域(CL)をさらに含むポリペプチドを含む、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1045]
第1の結合アームおよび第2の結合アームを含む抗体であり、
a. 該第1の結合アームが、(i)前記第1の重鎖可変領域(VH)および前記第1の重鎖定常領域(CH)を含むポリペプチド、ならびに(ii)前記第1の軽鎖可変領域(VL)および前記第1の軽鎖定常領域(CL)を含むポリペプチドを含み;かつ
b. 該第2の結合アームが、(iii)前記第2の重鎖可変領域(VH)および前記第2の重鎖定常領域(CH)を含むポリペプチド、ならびに(iv)前記第2の軽鎖可変領域(VL)および前記第2の軽鎖定常領域(CL)を含むポリペプチドを含む、
本発明1043または1044の結合物質。
[本発明1046]
前記第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域(CH)のそれぞれが、定常領域ドメイン1領域(CH1領域)、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域の1つまたは複数、好ましくは少なくとも、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含む、本発明1043~1045のいずれかの結合物質。
[本発明1047]
IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群より選択されるアイソタイプの結合物質である、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1048]
完全長IgG1抗体である、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1049]
a. CD137に結合する前記第1の抗原結合領域がキメラ抗体に由来し、かつ/または
b. ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域がキメラ抗体に由来する、
前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1050]
a. CD137に結合する前記第1の抗原結合領域がヒト化抗体に由来し、かつ/または
b. ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域がヒト化抗体に由来する、
前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1051]
a. ヒトCD137に結合する前記第1の抗原結合領域がヒト抗体に由来し、かつ/または
b. ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域がヒト抗体に由来する、
前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1052]
a. ヒトCD137に結合する前記第1の抗原結合領域がヒト化抗体に由来し、かつ/または
b. ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域がヒト抗体に由来する、
前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1053]
前記第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)のそれぞれがCH3領域を含み、かつ2つの該CH3領域が非対称的な変異を含む、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1054]
前記第1の重鎖定常領域(CH)において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸の少なくとも1つが置換されており、かつ前記第2の重鎖定常領域(CH)において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸の少なくとも1つが置換されており、かつ、第1の重鎖および第2の重鎖が同じ位置において置換されていない、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1055]
(i)EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置にあるアミノ酸が前記第1の重鎖定常領域(CH)においてLであり、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置にあるアミノ酸が前記第2の重鎖定常領域(CH)においてRである、または(ii)EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置にあるアミノ酸が前記第1の重鎖においてRであり、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置にあるアミノ酸が前記第2の重鎖においてLである、本発明1054の結合物質。
[本発明1056]
同じ第1の抗原結合領域および第2の抗原結合領域とヒトIgG1ヒンジ、CH2領域、およびCH3領域を含む2つの重鎖定常領域(CH)とを含む別の抗体と比較してより低い程度まで、前記抗体が、Fcを介したエフェクター機能を誘導する、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1057]
改変されていない第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)を含むこと以外は同一の抗体と比較してより低い程度まで、前記抗体が、Fcを介したエフェクター機能を誘導するように、前記第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)が改変されている、本発明1056の結合物質。
[本発明1058]
前記Fcを介したエフェクター機能が、Fcγ受容体との結合によって、C1qとの結合によって、またはFcを介したFcγ受容体架橋結合の誘導によって測定される、本発明1056または1057の結合物質。
[本発明1059]
前記Fcを介したエフェクター機能がC1qとの結合によって測定される、本発明1058の結合物質。
[本発明1060]
C1qと前記抗体との結合が、野生型抗体と比較して低減するように、好ましくは、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%低減するように、前記第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域が改変されており、C1q結合が好ましくはELISAによって測定される、本発明1053の結合物質。
[本発明1061]
前記第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置にある1つまたは複数のアミノ酸がそれぞれL、L、D、N、およびPではない、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1062]
EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置がそれぞれ、前記第1の重鎖および第2の重鎖においてFおよびEである、本発明1061の結合物質。
[本発明1063]
EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置がそれぞれ、前記第1の重鎖定常領域(HC)および第2の重鎖定常領域(HC)においてF、E、およびAである、本発明1061の結合物質。
[本発明1064]
前記第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域の両方のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置が、それぞれF、E、およびAであり、かつ、(i)第1の重鎖定常領域のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLであり、かつ第2の重鎖定常領域のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRである、または(ii)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLである、本発明1063の結合物質。
[本発明1065]
前記第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域の両方のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置が、それぞれFおよびEであり、かつ、(i)第1の重鎖定常領域のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRである、または(ii)第1の重鎖定常領域のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1中のF405に対応する位置がLである、本発明1062の結合物質。
[本発明1066]
多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体である、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1067]
T細胞の増殖を誘導および/または増強する、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1068]
前記T細胞がCD4 + T細胞および/またはCD8 + T細胞である、本発明1067の結合物質。
[本発明1069]
前記第2の抗原結合領域がPD-L1に結合した場合のみ、前記結合物質がCD137シグナル伝達を活性化する、前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1070]
特異的なT細胞受容体(TCR)を発現するT細胞を、該TCRによって認識される対応する抗原を主要組織適合遺伝子複合体上で提示している樹状細胞(DC)と共に同時培養することによって、T細胞の増殖が測定される、本発明1067または1068の結合物質。
[本発明1071]
本発明1001~1070いずれかの結合物質またはそのポリペプチド鎖をコードする、核酸。
[本発明1072]
本発明1071の核酸を含む、発現ベクター。
[本発明1073]
本発明1071の核酸または本発明1072の発現ベクターを含む、細胞。
[本発明1074]
哺乳動物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞である、本発明1073の細胞。
[本発明1075]
本発明1001~1070いずれかの結合物質、本発明1071の核酸、本発明1072の発現ベクター、または本発明1073もしくは1074の細胞を含む、組成物。
[本発明1076]
薬学的組成物である、本発明1075の組成物。
[本発明1077]
薬学的に許容される担体および/または賦形剤をさらに含む、本発明1076の組成物。
[本発明1078]
医薬としての使用のための、本発明1001~1070いずれかの結合物質、本発明1071の核酸、本発明1072の発現ベクター、本発明1073もしくは1074の細胞、または本発明1075~1077のいずれかの組成物。
[本発明1079]
がんの処置における使用のための、本発明1078の結合物質、核酸、発現ベクター、細胞、または組成物。
[本発明1080]
それを必要とする対象に、本発明1001~1070のいずれかの結合物質、本発明1071の核酸、本発明1072の発現ベクター、本発明1073もしくは1074の細胞、または本発明1075~1077のいずれかの組成物を投与する工程を含む、疾患の処置方法。
[本発明1081]
前記疾患ががんである、本発明1080の方法。
[本発明1082]
前記がんが、固形腫瘍の存在を特徴とする、または黒色腫、卵巣がん、肺がん、結腸がん、および頭頸部がんからなる群より選択される、本発明1079の使用のための結合物質、核酸、発現ベクター、細胞、もしくは組成物または本発明1081の方法。
[本発明1083]
前記がんが非小細胞肺がん(NSCLC)である、本発明1082の使用のための結合物質、核酸、発現ベクター、細胞、もしくは組成物または本発明1081の方法。
[本発明1084]
がん、例えば、固形腫瘍の存在を特徴とするがん、または黒色腫、卵巣がん、肺がん、結腸がん、および頭頸部がんからなる群より選択されるがんを処置するための医薬などの医薬の製造のための、本発明1001~1070いずれかの結合物質、本発明1071の核酸、本発明1072の発現ベクター、本発明1073もしくは1074の細胞、または本発明1075~1077のいずれかの組成物の使用。
[本発明1085]
前記肺がんが非小細胞肺がん(NSCLC)である、本発明1084の使用。
[本発明1086]
1種類または複数種のさらなる治療用物質、例えば化学療法剤との組み合わせを含む、本発明1080もしくは1081の方法または本発明1084の使用。
[本発明1087]
a. 本発明1001および1016~1036のいずれかにおいて定義されたヒトCD137に結合する抗原結合領域を含む第1の抗体を産生する宿主細胞を培養し、かつ任意で、培養物から該第1の抗体を精製する工程;
b. 本発明1001~1015および1049~1052のいずれかにおいて定義されたヒトPD-L1に結合する抗原結合領域を含む第2の抗体を産生する宿主細胞を培養し、かつ任意で、培養物から該第2の抗体を精製する工程;
c. ヒンジ領域中のシステインがジスルフィド結合異性化を受けることを可能にするのに十分な還元条件下で、該第1の抗体を該第2の抗体と一緒にインキュベートする工程;ならびに
d. CD137×PD-L1二重特異性抗体を得る工程
を含む、本発明1066の二重特異性抗体を産生するための方法。
[本発明1088]
本発明1001~1070いずれか一項において定義された第1の抗原結合領域および/または第2の抗原結合領域に結合する、抗イディオタイプ抗体。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】ヒトCD137、アフリカゾウCD137、およびイノシシCD137の配列アラインメント。ヒト配列のアミノ酸とは異なる、アフリカゾウCD137およびイノシシCD137のアミノ酸を黒色で強調した。
図2】アフリカゾウ(シャッフル5)CD137ドメインまたはイノシシ(シャッフル1-4、6)CD137ドメインを含むCD137シャッフル構築物。
図3】HEK293-T17細胞上でのCD137シャッフル構築物の発現。HEK293-T17細胞にCD137シャッフル構築物をトランスフェクトした。構築物の細胞表面発現を、ヒトCD137、イノシシCD137、およびアフリカゾウCD137を認識するポリクローナル抗CD137抗体を用いたフローサイトメトリーによって測定した。
図4】抗体CD137-009と、HEK293-T17細胞上で発現させたCD137シャッフル構築物との結合。HEK293-T17細胞にCD137シャッフル構築物、およびヒトCD137(hCD137wt)、アフリカゾウCD137、またはイノシシCD137をトランスフェクトした。抗体CD137-009と、HEK293-T17細胞上で発現させた、これらの構築物との結合をフローサイトメトリーによって測定した。ポリクローナル抗CD137抗体による染色を対照として示した。
図5】PD-1/PD-L1相互作用に対する一価抗体b12-FEAL×PD-L1-547-FEARの効果。b12-FEAL×PD-L1-547-FEARの効果をPD-1/PD-L1阻害バイオアッセイ法において測定した。示したデータは、1回の代表的な実験の、(抗体を添加しなかった)対照に対する誘導倍率である。
図6】CD137×PD-L1二重特異性抗体の予想された作用機序の模式図。(A)PD-L1は抗原提示細胞(APC)ならびに腫瘍細胞の表面で発現している。PD-L1と、負の調節分子PD-1を発現するT細胞との結合はT細胞活性化シグナルを効果的に無効にし、最終的にT細胞を阻害する。(B)CD137×PD-L1二重特異性抗体を添加すると、阻害性のPD-1:PD-L1相互作用がPD-L1特異的アームによってブロックされると同時に、この二重特異性抗体は細胞間相互作用を介して、アゴニストシグナル伝達をT細胞上で発現しているCD137にもたらし、その結果、強力なT細胞補助刺激が生じる。
図7】活性なPD-1/PD-L1軸を用いた抗原特異的T細胞アッセイ法におけるCD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEARによる、PD-1/PD-L1を介したT細胞阻害の放出と、CD8+T細胞増殖のさらなる補助刺激。0.1μg/mLおよび0.02μg/mLのCD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEAR、b12-FEAL×PD-L1-547-FEAR、またはb12対照抗体の存在下で、クローディン-6特異的TCRおよびPD-1インビトロ翻訳(IVT)-RNAで電気穿孔したCFSE標識T細胞を、クローディン-6-IVT-RNAで電気穿孔した未熟樹状細胞と共に5日間インキュベートした。CD8+T細胞増殖をフローサイトメトリーによって測定した。示したデータは、(AおよびC)2人の異なるドナーからの代表的なCFSEヒストグラムと、(BおよびD)FlowJoソフトウェアを用いて算出した場合の対応する分裂細胞パーセントおよび増殖指数である。(B)は、(A)に示したドナー1代表からのデータの分析を示す。(D)は、(C)に示したドナー2代表からのデータの分析を示す。エラーバー(SD)は実験内でのばらつきを示す(1人のドナーからの細胞を用いた3回の繰り返し)。
図8】活性なPD-1/PD-L1軸を用いた抗原特異的T細胞アッセイ法における二重特異性抗体CD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEARのEC50値の分析。CD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEAR(1~0.00015μg/mLの3倍段階希釈度)の存在下で、クローディン-6特異的TCRおよびPD-1-IVT-RNAで電気穿孔したCFSE標識T細胞を、クローディン-6-IVT-RNAで電気穿孔した未熟樹状細胞と共に5日間インキュベートした。CD8+T細胞増殖をフローサイトメトリーによって測定した。示したデータは、抗体濃度の関数としての分裂細胞パーセント(白抜きのダイアモンド)および増殖指数(べた塗りの三角)である。エラーバー(SD)は実験内でのばらつきを示す(1人のドナーからの細胞を用いた6回の繰り返し)。曲線を非線形回帰によってフィットさせ、EC50値を、GraphPad Prismソフトウェアを用いて求めた。
図9】活性なPD-1/PD-L1軸を用いた抗原特異的T細胞アッセイ法における、CD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEARと、2種類の一価結合CD137抗体(CD137-009-FEAL×b12-FEAR+b12-FEAL×PD-L1-547-FEAR)または2種類の親抗体(CD137-009+PD-L1-547)の組み合わせの比較。0.25μg/mLの(i)CD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEAR、(ii)CD137-009-FEAL×b12+b12-FEAL×PD-L1-547-FEAR、(iii)CD137-009-FEAL×b12、(iv)b12-FEAL×PD-L1-547-FEAR、(v)CD137-009+PD-L1-547、(vi)CD137-009、(vii)PD-L1-547、または(viii)b12対照抗体の存在下で、クローディン-6特異的TCRおよびPD1-IVT-RNAで電気穿孔したCFSE標識T細胞を、クローディン-6-IVT-RNAで電気穿孔した未熟樹状細胞と共に5日間インキュベートした。CD8+T細胞増殖をフローサイトメトリーによって測定した。示したデータは、(A)代表的なCFSEヒストグラムと、(BおよびC)FlowJoソフトウェアを用いて算出した場合の分裂細胞パーセントおよび増殖指数の対応する平均値である。エラーバー(SD)は実験内でのばらつきを示す(1人のドナーからの細胞を用いた3回の繰り返し)。
図10】CD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEARによるヒト非小細胞肺がん組織切除からの腫瘍浸潤リンパ球(TIL)のエクスビボ増大。切除した組織からの腫瘍断片を、10U/mL IL-2および示された濃度のCD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEARと共に培養した。10日間培養した後に、細胞を収集し、フローサイトメトリーによって分析した。(A)未処置対照と比較した増大倍率としてのTIL数、(B)未処置対照と比較した増大倍率としてのCD3+CD8+T細胞数、(C)未処置対照と比較した増大倍率としてのCD3+CD4+T細胞数、(D)未処置対照と比較した増大倍率としてのCD3-CD56+NK細胞数。バーはn=5の個々のウェルの平均±SDを表し、出発物質として1ウェルあたり2個の腫瘍断片を用いた。
図11】OT-I養子細胞移入セットアップにおける抗原特異的T細胞増殖に対するmCD137-3H3×mPD-L1-MPDL3280Aマウス代理抗体の効果。ドナーマウスから単離したオボアルブミン(OVA)特異的OT1+Thy1.1+二重陽性細胞障害性T細胞をナイーブC57BL/6レシピエントマウスの後眼窩に(r.o.)注射した。養子細胞移入の翌日に、レシピエントマウスに抗原刺激として100μgのOVAをr.o.注射し、その後に、マウス1匹につき100μgまたは20μgのmCD137-3H3×mPD-L1-MPDL3280A、mCD137-3H3×b12、またはmPD-L1-MPDL3280A×b12抗体をr.o.注射した。PBS注射(図中のOVA単独として示した)をベースライン参照として使用し、未処置動物を陰性対照として使用した。6日後に、100μLの血液をr.o.経路を介して採取し、Thy1.1+CD8+T細胞について分析した。示したデータは、(A)OT-I養子細胞移入実験概略の模式図と、(B)6日目の各治療群のThy1.1+CD8+T細胞頻度である。四角は個々の動物を表し、エラーバー(SD)は実験内でのばらつきを示す(n=5マウス/群)。統計解析を一方向Anovaとチューキー多重比較検定を用いて行った。ns=群間で有意差なし。***=P<0.001。
図12】皮下同系CT26マウス腫瘍モデルにおけるmCD137-3H3×mPD-L1-MPDL3280Aマウス代理抗体の抗腫瘍効力。腫瘍の体積が≧30mm3に達した後に、皮下CT26腫瘍を有する雌BALB/cマウスを、マウス1匹あたり20μgの(i)mCD137-3H3×mPD-L1-MPDL3280A、(ii)mCD137-3H3×b12、もしくは(iii)mPD-L1-MPDL3280A×b12抗体、または(iv)PBSの腹腔内注射によって処置した。投与計画は、最初の8回の注射については2~3日ごとであり、その後、実験が終了するまで7日ごとの注射であった。29日目に、100μLの血液をr.o.経路を介して採取し、gp70特異的CD8+T細胞について分析した。示したデータは、(A)1本の線が1匹のマウスを表す腫瘍成長曲線、(B)結果として得られたカプラン・マイヤー生存分析、および(C)移植後29日目の各治療群のgp70特異的CD8+T細胞頻度である。PFS=無増悪生存期間。
図13】単一特異性二価PD-L1抗体および一価b12×PD-L1抗体と腫瘍細胞との結合。PD-L1-547およびb12-FEAL×PD-L1-547-FEARと、MDA-MB-231(A)、PC-3(B)、およびSK-MES-1(C)細胞との結合。示したデータは、フローサイトメトリーによって求めた蛍光強度(MFI)の平均である。単一特異性二価b12抗体を陰性対照として含めた。
図14】CD137抗体と、位置1~163にアラニン変異があるCD137変種との結合。結合を、対照抗体と比較した結合変化の尺度であるzスコア(変化倍率)で表した。zスコア(変化倍率)を、(標準化されたgMFIaa位置 - μ)/σと定義した。式中、μおよびσは、全変異体にわたる標準化されたgMFIの平均および標準偏差である。結合のzスコアが-1.5より小さい残基(点線で示した)を「結合消失変異体」とみなした。結合の正のzスコアをもつ残基は、非交差ブロッキングCD137特異的対照抗体に対する結合消失残基である。x軸上の数字はアミノ酸位置を指す。(A)標準化用の非交差ブロッキングCD137特異的対照抗体としてCD137-005-FEAR-A488を用いた、b12-FEAL×CD137-009-FEAR-A488と、位置1~163にアラニン変異またはグリシン変異があるCD137変種との結合のZスコア。(B)標準化用の非交差ブロッキングCD137特異的対照抗体としてCD137-MOR7480-FEAR-A488を用いた、CD137-005-FEAR-A488と、位置1~163にアラニン変異またはグリシン変異があるCD137変種との結合のzスコア。(C)標準化用の非交差ブロッキングCD137特異的対照抗体としてCD137-005-FEAR-A488を用いた、CD137-MOR7480-FEAR-A488と、位置1~163にアラニン変異またはグリシン変異があるCD137変種との結合のZスコア。
図15】非抗原特異的T細胞増殖アッセイ法におけるPD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEARと、2種類の一価対照の組み合わせ(b12-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEAR+b12-FEAL×PD-L1-547-FEAR)または2種類の親抗体の組み合わせ(CD137-009-HC7LC2-FEAR+PD-L1-547-FEAR)のとの比較。CFSE標識PBMCを、最適以下の濃度の抗CD3抗体(0.03μg/mLおよび0.1μg/mL)と共にインキュベートし、または(T細胞活性化の陰性対照として)抗CD3抗体無し(w/o)でインキュベートし、かつ、0.2μg/mLの(i)PD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEAR、(ii)b12-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEAR+b12-FEAL×PD-L1-547-FEAR、(iii)b12-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEAR、(iv)b12-FEAL×PD-L1-547-FEAR、(v)CD137-009-HC7LC2-FEAR+PD-L1-547-FEAR、(vi)CD137-009-HC7LC2-FEAR、(vii)PD-L1-547-FEAR、または(viii)b12-IgG-FEAL対照抗体の存在下で4日間培養した。CD4+(A)およびCD8+(B)T細胞の増殖をフローサイトメトリーによって測定した。3人のドナーからのデータを、FlowJo v10.4ソフトウェアを用いて算出した場合の3回の繰り返しの増大指数の平均として示した。エラーバー(SD)は実験内でのばらつきを示す(1人のドナーからの細胞を用いた3回の繰り返し)。
図16】非抗原特異的T細胞増殖アッセイ法におけるPD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEARxによるT細胞増殖誘導のEC50値の決定。CFSE標識PBMCを、最適以下の濃度の抗CD3抗体、およびPD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEAR(1~0.00015μg/mL)または対照抗体である1μg/mL b12 IgGの段階希釈液と共に4日間インキュベートした。2人の代表的なドナーからのデータを示した。ドナー1からのPBMCを0.03μg/mL抗CD3(A、B)で刺激し、ドナー2からのPBMCを0.09μg/mL抗CD3(C、D)で刺激した。CD4+(AおよびC)ならびにCD8+(BおよびD)T細胞増殖をフローサイトメトリーによって測定した。示したデータは、FlowJo v10.4ソフトウェアを用いて算出して、4パラメータ対数フィット(logarithmic fit)を用いてフィットさせた場合の3回の繰り返しの増大指数値の平均である。エラーバー(SD)は実験内でのばらつきを示す(1人のドナーからの細胞を用いた3回の繰り返し)。
図17】T細胞へのPD-1電気穿孔があるまたはT細胞へのPD-1電気穿孔が無い抗原特異的T細胞アッセイ法における10種類の炎症促進性サイトカインの分泌に対するPD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEARの効果。CLDN6特異的TCRおよび2μg PD1-IVT-RNAで電気穿孔したT細胞、またはCLDN6特異的TCRで電気穿孔したT細胞を、CLDN6-IVT-RNAで電気穿孔したiDCと共に、異なる濃度のCD137-009-HC7LC2-FEAL×PD-L1-547-FEAR(3倍段階希釈;1μg/mL~0.00015μg/mL)またはb12対照抗体b12-IgG-FEALの存在下でインキュベートした。抗体添加の48時間後に、上清のサイトカインレベルを、MSD V-Plex Human Proinflammatory panel 1(10-Plex)キットを用いるマルチプレックスサンドイッチイムノアッセイ法によって測定した。各データ点は3個の個々のウェルの平均±SDを表す。
図18】抗原非特異的T細胞アッセイ法における10種類の炎症促進性サイトカインの分泌に対するPD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEARの効果。異なる濃度のPD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEAR(3倍段階希釈;1μg/mL~0.00015μg/mL)またはb12対照抗体b12-IgG-FEALの存在下で、抗CD3抗体でヒトPBMCを最適以下で刺激した。抗体添加の48時間後に、上清中のサイトカインレベルを、MSD V-Plex Human Proinflammatory panel 1(10-Plex)キットを用いるマルチプレックスサンドイッチイムノアッセイ法によって測定した。各データ点は3個の個々のウェルの平均±SDを表す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
定義
「免疫グロブリン」という用語は、一対が低分子量の軽鎖(L)、一対が重鎖(H)の二対のポリペプチド鎖からなり、4本全てがジスルフィド結合で相互接続されている、構造上関連する糖タンパク質のクラスをいう。免疫グロブリンの構造ははっきりと特徴決定されている。例えば、Fundamental Immunology Ch. 7(Paul, W., ed., 2nd ed. Raven Press, N.Y. (1989))を参照されたい。簡単に述べると、それぞれの重鎖は、典型的には、重鎖可変領域(本明細書ではVHまたはVHと略す)と重鎖定常領域(本明細書ではCHまたはCHと略す)で構成される。重鎖定常領域は、典型的には、3つのドメイン、CH1、CH2、およびCH3で構成される。ヒンジ領域は重鎖のCH1ドメインとCH2ドメインの間にある領域であり、可動性が高い。ヒンジ領域におけるジスルフィド結合は、IgG分子にある2本の重鎖間の相互作用の一部である。それぞれの軽鎖は、典型的には、軽鎖可変領域(本明細書ではVLまたはVLと略す)と軽鎖定常領域(本明細書ではCLまたはCLと略す)で構成される。軽鎖定常領域は、典型的には、1つのドメインCLで構成される。VH領域およびVL領域は、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる超可変性領域(または配列が著しく変化し得る、かつ/もしくは構造が規定されたループの形をとり得る超可変領域)にさらに細分することができ、超可変性領域には、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、超可変性領域より保存された領域が点在している。それぞれのVHおよびVLは、典型的には、3つのCDRと4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置されている(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196, 901-917(1987)も参照されたい)。特別の定めのない限り、または文脈と相反しない限り、本明細書におけるCDR配列は、IMGT規則に従い、DomainGapAlignを用いて特定される(Lefranc MP., Nucleic Acids Research 1999;27:209-212およびEhrenmann F., Kaas Q. and Lefranc M.-P. Nucleic Acids Res., 38, D301-307 (2010);インターネットhttpアドレスwww.imgt.org/も参照されたい)。特別の定めのない限り、または文脈と相反しない限り、本発明における定常領域のアミノ酸位置についての記載はEUナンバリングに従う(Edelman et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1969 May;63(1):78-85; Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition. 1991 NIH Publication No. 91-3242)。例えば、本明細書においてSEQ ID NO:93は、EUナンバリングに従って、IgG1m(f)重鎖定常領域のアミノ酸位置118-447を示す。
【0024】
本明細書で使用する「位置…に対応するアミノ酸」という用語は、ヒトIgG1重鎖のアミノ酸位置番号をいう。他の免疫グロブリンにおける対応するアミノ酸位置はヒトIgG1とアラインメントすることによって見出されることがある。従って、別の配列中のアミノ酸またはセグメント「に対応する」、1つの配列中のアミノ酸またはセグメントは、標準的な配列アラインメントプログラム、例えば、ALIGN、ClustalW、または類似物を用いて、典型的にはデフォルト設定を用いて他方のアミノ酸またはセグメントと一列に並び、かつヒトIgG1重鎖との少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸またはセグメントである。配列内の配列またはセグメントをアラインメントし、それによって、本発明によるアミノ酸位置と対応する、配列内の位置を決定する手法は当技術分野において周知であるとみなされる。
【0025】
本発明の文脈において「結合物質」という用語は、望ましい抗原に結合することができる任意の作用物質を指す。本発明のある特定の態様では、結合物質は、抗体、抗体断片、またはその構築物である。結合物質はまた、合成部分、改変された部分、または非天然部分、特に、非ペプチド部分も含んでよい。このような部分は、例えば、望ましい抗原結合機能性または抗原結合領域、例えば、抗体または抗体断片を連結し得る。一態様において、結合物質は、抗原結合CDRまたは可変領域を含む合成構築物である。
【0026】
本発明の文脈において「抗体」(Ab)という用語は、免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の断片、またはそのいずれかの誘導体を指し、これらは、代表的な生理学的条件下で、かなり長い時間の半減期、例えば、少なくとも約30分、少なくとも約45分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、約24時間またはそれ以上、約48時間またはそれ以上、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、またはそれ以上など、あるいは他の任意の関連する、機能によって規定された期間(例えば、抗体と抗原との結合に関連する生理学的応答を誘導、促進、増強、および/もしくは調節するのに十分な時間、ならびに/または抗体がエフェクター活性を高めるのに十分な時間)で抗原に特異的に結合する能力を有する。免疫グロブリン分子の重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。本明細書で使用する「抗原抗体結合領域」という用語は、抗原と相互作用する領域をいい、VH領域とVL領域を両方とも含む。抗体という用語が本明細書で使用する場合、単一特異性抗体だけでなく、複数の、例えば、2つまたはそれ以上の、例えば、3つまたはそれ以上の、異なる抗原結合領域を含む多重特異性抗体も含む。抗体(Ab)の定常領域は、免疫グロブリンと、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および補体系成分、例えば、補体活性化の古典経路の第1の成分であるC1qを含む宿主組織または宿主因子との結合を媒介し得る。前記のように、本明細書において抗体という用語は、特に定めのない限り、または文脈と明らかに相反しない限り、抗原結合断片である、すなわち、抗原に特異的に結合する能力を保持している抗体断片を含む。抗体の抗原結合機能は完全長抗体の断片によって果たされ得ることが示されている。「抗体」という用語の中に含まれる抗原結合断片の例には、(i)Fab'またはFab断片、VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価断片、またはWO2007059782(Genmab)に記載の一価抗体;(ii)F(ab')2断片、2つのFab断片がヒンジ領域でのジスルフィド架橋によって連結された二価断片;(iii)VHおよびCH1ドメインから本質的になるFd断片;(iv)抗体のシングルアームのVLおよびVHドメインから本質的になるFv断片、(v)VHドメインから本質的になり、ドメイン抗体(Holt et al; Trends Biotechnol. 2003 Nov; 21(11):484-90)とも呼ばれる、dAb断片(Ward et al., Nature 341, 544-546(1989));(vi)キャメリド(camelid)またはナノボディ分子(Revets et al; Expert Opin Biol Ther. 2005 Jan; 5(1):111-24)、ならびに(vii)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLおよびVHは別々の遺伝子によってコードされるが、VLおよびVH領域が対形成して一価分子(単鎖抗体または単鎖Fv(scFv)と知られる。例えば、Bird et al., Science 242, 423-426(1988)およびHuston et al., PNAS USA 85, 5879-5883(1988)を参照されたい)を形成する1本のタンパク質鎖として作られるのを可能にする合成リンカーによって組換え法を用いて接続されてもよい。このような単鎖抗体は、特に定めのない限り、または文脈によって明らかに示されない限り、抗体という用語の中に含まれる。このような断片は、一般的に、抗体の意味の中に含まれるが、ひとまとめにして、およびそれぞれ独立して、異なる生物学的な特性および有用性を示す本発明の独特の特徴である。本発明の文脈における、これらの抗体断片および他の有用な抗体断片ならびにこのような断片の二重特異性型が本明細書においてさらに議論される。抗体という用語は、特に定めのない限り、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、抗体様ポリペプチド、例えば、キメラ抗体およびヒト化抗体、ならびに任意の公知の技法、例えば、酵素的切断、ペプチド合成、および組換え技法によって提供される、抗原に特異的に結合する能力を保持している抗体断片(抗原結合断片)も含むことも理解されるはずである。作製される抗体は任意のアイソタイプを有してよい。本明細書で使用する「アイソタイプ」という用語は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリンクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、またはIgM)をいう。特定のアイソタイプ、例えば、IgG1が本明細書において言及される場合、この用語は、特定のアイソタイプ配列、例えば、特定のIgG1配列に限定されないが、抗体の配列が、他のアイソタイプよりも、そのアイソタイプ、例えば、IgG1に似ていることを示すために用いられる。従って、例えば、本発明のIgG1抗体は、定常領域の変化を含む、天然IgG1抗体の配列変種でもよい。
【0027】
本明細書で使用する「モノクローナル抗体」という用語は、分子組成が1種類しかない抗体分子の調製物をいう。モノクローナル抗体組成物は、ある特定のエピトープに対して結合特異性および親和性を1つしか示さない。従って、「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する、結合特異性を1つしか示さない抗体をいう。ヒトモノクローナル抗体は、トランスジェニック非ヒト動物またはトランスクロモソーム非ヒト動物、例えば、ヒト重鎖トランスジーンおよび軽鎖トランスジーンを含むゲノムを有するトランスジェニックマウスから得られたB細胞が不死化細胞と融合したハイブリドーマによって生成され得る。
【0028】
本発明の文脈において「二重特異性抗体」または「bs」という用語は、異なる抗体配列によって規定される2つの異なる抗原結合領域を有する抗体をいう。一部の態様において、前記の異なる抗原結合領域は同じ抗原上の異なるエピトープに結合する。しかしながら、好ましい態様では、前記の異なる抗原結合領域は異なる標的抗原に結合する。二重特異性抗体は、本明細書において以下で説明される任意の二重特異性抗体型を含む任意の型の二重特異性抗体でよい。
【0029】
本明細書において使用する場合、文脈と矛盾しない限り、「Fabアーム」または「アーム」という用語は1つの重鎖-軽鎖ペアを含み、本明細書において「半分子(half molecule)」と同義で用いられる。
【0030】
二重特異性抗体が、第1の抗体「に由来する」半分子抗体と、第2の抗体「に由来する」半分子抗体とを含むと述べられた場合、「に由来する」という用語は、任意の公知の方法によって、前記第1の抗体および第2の抗体のそれぞれに由来する半分子を組み換えて、結果として生じる二重特異性抗体にすることによって二重特異性抗体が作製されたことを示す。これに関連して、「組み換える」とは、特定の組み換え方法によって限定されることが意図されず、従って、例えば、半分子交換による組み換え、ならびに核酸レベルでの組み換え、および/または2種類の半分子を同じ細胞内で同時発現することによる組み換えを含む本明細書において以下で説明される二重特異性抗体を産生するための方法の全てを含む。
【0031】
「一価抗体」という用語は、本発明の文脈では、抗体分子が1種類の抗原分子にしか結合できない、従って、抗原または細胞を架橋できないことを意味する。
【0032】
「完全長」という用語は、抗体の文脈で用いられる場合、抗体が断片ではなく、特定のアイソタイプについて天然で通常見られる、特定のアイソタイプのドメインの全て、例えば、IgG1抗体の場合、VH、CH1、CH2、CH3、ヒンジ、VL、およびCLドメインを含有することを示す。
【0033】
本明細書で使用する場合、文脈と相反しない限り、「Fc領域」という用語は、免疫グロブリンの重鎖の2つのFc配列からなる抗体領域をいい、前記Fc配列は、少なくとも、ヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含む。
【0034】
本明細書で使用する場合、「第1のCH3領域と第2のCH3領域との間のヘテロ二量体相互作用」という用語は、第1のCH3/第2のCH3ヘテロ二量体タンパク質における第1のCH3領域と第2のCH3領域との間の相互作用をいう。
【0035】
本明細書で使用する場合、「第1のCH3領域および第2のCH3領域のホモ二量体相互作用」という用語は、第1のCH3/第1のCH3ホモ二量体タンパク質における第1のCH3領域と、別の第1のCH3領域との間の相互作用、および第2のCH3/第2のCH3ホモ二量体タンパク質における第2のCH3領域と、別の第2のCH3領域との間の相互作用をいう。
【0036】
抗体と所定の抗原またはエピトープとの結合に関して、本明細書で使用する「結合」または「結合することができる」という用語は典型的には、バイオレイヤー干渉法(BLI)を用いて測定した場合に、または、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)技術を用いてBIAcore 3000機器において、リガンドとして抗原を使用し、分析物として抗体を使用して測定した場合に、約10-7Mもしくはそれ未満、例えば、約10-8Mもしくはそれ未満、例えば、約10-9Mもしくはそれ未満、約10-10Mもしくはそれ未満、もしくは約10-11M、またはさらにそれ未満のKDに対応する親和性での結合である。前記抗体は、所定の抗原または密接に関連する抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)との結合に関するそのKDの少なくとも1/10、例えば、少なくとも1/100、例えば、少なくとも1/1,000、例えば、少なくとも1/10,000、例えば、少なくとも1/100,000であるKDに対応する親和性で所定の抗原に結合する。親和性がより高い量は抗体のKDに依存し、その結果、抗体のKDが非常に低い(すなわち、前記抗体が高特異性である)場合、抗原に対する親和性が非特異的抗原に対する親和性よりも低い程度は少なくとも1/10,000である場合がある。
【0037】
本明細書で使用する「kd」(sec-1)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数をいう。この値はkoff値とも呼ばれる。
【0038】
本明細書で使用する「KD」(M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数をいう。
【0039】
好ましい態様において、本発明の抗体は単離されている。本明細書で使用する「単離された抗体」は、抗原特異性の異なる他の抗体を実質的に含まない抗体をいうことが意図される。好ましい態様において、PD-L1とCD137に特異的に結合する単離された二重特異性抗体は、PD-L1またはCD137に特異的に結合する単一特異性抗体を実質的に含まない。別の好ましい態様において、前記抗体、または前記抗体を含む薬学的組成物は、PD-L1に結合することができない、天然に生じる抗体を実質的に含まない。さらに好ましい態様において、本発明の抗体は、天然の抗PD-L1抗体の構造と比べてアミノ酸配列の構造が変化し、この構造変化により前記抗体は、前記天然の抗PD-L1抗体によって示される機能性と比べて変化した機能性を示し、前記機能性は、(i)PD-L1結合親和性、(ii)PD-1へのPD-L1の結合を阻害する能力、(iii)Fcを介したエフェクター機能を誘導する能力、および(iv)Fcを介したエフェクター機能を誘導しない能力からなる群より選択される。
【0040】
「PD-L1」という用語は、本明細書で使用する場合、プログラム死リガンド1タンパク質をいう。PD-L1はヒトおよび他の種において見出され、従って、「PD-L1」という用語は、文脈と相反しない限り、ヒトPD-L1に限定されない。ヒトPD-L1配列、マカク(カニクイザル)PD-L1配列、アフリカゾウPD-L1配列、イノシシPD-L1配列、およびマウスPD-L1配列はそれぞれ、Genbankアクセッション番号NP_054862.1、XP_005581836、XP_003413533、XP_005665023、およびNP_068693によって見出される。ヒトPD-L1の配列もSEQ ID NO:28に示した。アミノ酸1~18はシグナルペプチドであると予測される。マカク(カニクイザル)PD-L1の配列もSEQ ID NO:29に示した。アミノ酸1~18はシグナルペプチドであると予測される。
【0041】
「PD-L2」という用語は、本明細書で使用する場合、ヒトプログラム死1-リガンド2タンパク質(Genbankアクセッション番号NP_079515)をいう。
【0042】
「PD-1」という用語は、本明細書で使用する場合、CD279とも知られるヒトプログラム死-1タンパク質をいう。
【0043】
本明細書で使用する「CD137」という用語はヒト表面抗原分類137タンパク質を指す。CD137(4-1BB)はTNFRSF9とも呼ばれ、リガンドTNFSF9/4-1BBLの受容体である。CD137はT細胞活性化に関与すると考えられている。一態様では、CD137は、UniProtアクセッション番号Q07011を有するヒトCD137である。ヒトCD137の配列をSEQ ID NO:30にも示した。アミノ酸1~23はシグナルペプチドであると予測される。一態様において、CD137は、UniProtアクセッション番号A9YYE7-1を有するカニクイザル(マカカ・ファシキュラリス(Macaca fascicularis))CD137である。カニクイザルCD137の配列をSEQ ID NO:31に示した。アミノ酸1~23はaaシグナルペプチドであると予測される。イノシシ(サス スクロファ (Sus scrofa))CD137をSEQ ID NO:38に示した。アミノ酸1~23はaaシグナルペプチドであると予測される。アフリカゾウ(ロクソドンタ アフリカーナ(Loxodonta africana))CD137をSEQ ID NO:39に示した。アミノ酸1~23はaaシグナルペプチドであると予測される。
【0044】
「PD-L1抗体」または「抗PD-L1抗体」は、抗原PD-L1、特にヒトPD-L1に特異的に結合する、上記で説明した抗体である。
【0045】
「CD137抗体」または「抗CD137抗体」は、抗原CD137に特異的に結合する上記で説明した抗体である。
【0046】
「CD137×PD-L1抗体」、「抗CD137×PD-L1抗体」、「PD-L1×CD137抗体」、または「抗PD-L1×CD137抗体」は、2つの異なる抗原結合領域を含む二重特異性抗体であり、該抗原結合領域の1つは抗原PD-L1に特異的に結合し、かつ該抗原結合領域の1つはCD137に特異的に結合する。
【0047】
本発明はまた、実施例の抗体のVL領域、VH領域、または1つもしくは複数のCDRの機能的変種を含む抗体も提供する。抗体に関して用いられるVL、VH、またはCDRの機能的変種であっても、前記抗体は、依然として、少なくとも、「参照」または「親」抗体の親和性および/または特異性/選択性のかなりの割合(少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、またはそれより大きい割合)を保持しており、場合によっては、このような抗体は親抗体より大きい親和性、選択性、および/または特異性と関連していることがある。
【0048】
このような機能的変種は、典型的には、親抗体との有意な配列同一性を保持している。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適アラインメントのために導入される必要のある、ギャップの数およびそれぞれのギャップの長さを考慮に入れた、これらの配列が共有する同一の位置の数の関数(すなわち、相同性% = 同一の位置の数/位置の総数×100)である。2つのヌクレオチド配列間またはアミノ酸配列間の同一性パーセントは、例えば、ALIGNプログラム(バージョン2.0)の中に組み込まれている、E. Meyers and W. Miller, Comput. Appl. Biosci 4, 11-17(1988)のアルゴリズムを使用し、PAM120ウエイト残基表、12のギャップレングスペナルティ、および4のギャップペナルティを用いて決定され得る。さらに、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48, 444-453(1970))アルゴリズムを用いて決定され得る。
【0049】
例示的な変種には、主に保存的置換の点で親抗体配列のVH領域および/またはVL領域および/またはCDR領域とは異なる変種が含まれる。例えば、変種にある置換のうち10個、例えば、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、または1個は保存的なアミノ酸残基交換である。
【0050】
本発明の文脈において、保存的置換は、以下の表に反映されるアミノ酸クラスの中の置換によって定義され得る。
【0051】
保存的置換のためのアミノ酸残基クラス
【0052】
本発明の文脈において、特別の定めのない限り、変異を説明するために以下の表記法が用いられる。(i)ある特定の位置にあるアミノ酸の置換は、例えば、タンパク質の位置409にあるリジンがアルギニンに置換されることを意味するK409Rと書かれる。(ii)特定の変種については、任意のアミノ酸残基を示す符号XaaおよびXを含む特定の三文字表記または一文字表記が用いられる。従って、位置409におけるリジンからアルギニンへの置換はK409Rで示され、位置409におけるリジンから任意のアミノ酸残基への置換はK409Xで示される。位置409におけるリジンの欠失の場合、これはK409*で示される。
【0053】
本発明の文脈において、「PD-L1とPD-1との結合の阻害」は、PD-L1とPD-1との結合が、PD-L1に結合することができる抗体の存在下では検出可能に有意に低減することをいう。典型的には、阻害とは、抗PD-L1抗体の存在によって引き起こされる、PD-L1とPD-1との間の結合の少なくとも約10%の低減、例えば、少なくとも約15%、例えば、少なくとも約20%、例えば、少なくとも40%の低減を意味する。PD-L1とPD-1との結合の阻害は任意の適切な技法によって測定されることができる。一態様において、阻害は本明細書中の実施例6に記載の通りに測定される。
【0054】
本明細書で使用する「特異性」という用語は、文脈と矛盾しない限り、以下の意味を有すると意図される。2種類の抗体は、同じ抗原および同じエピトープに結合するなら「同じ特異性」を有する。
【0055】
「エピトープ」という用語は、抗体に特異的結合することができるタンパク質決定基を意味する。エピトープは、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の表面グループからなり、通常、特定の三次元構造特性ならびに特定の電荷特性を有する。コンホメーションエピトープおよび非コンホメーションエピトープは、変性溶媒の存在下では前者への結合が失われるが、後者への結合が失われない点で区別される。エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基、および結合に直接関与しない他のアミノ酸残基、例えば、特異的に抗原に結合するペプチドによって効果的にブロックまたはカバーされるアミノ酸残基(言い換えると、このアミノ酸残基は、特異的に抗原に結合するペプチドのフットプリントの中にある)を含むことがある。
【0056】
本明細書で使用する「キメラ抗体」という用語は、可変領域が非ヒト種に由来し(例えば、げっ歯類に由来し)、定常領域がヒトなどの異なる種に由来する抗体をいう。抗体免疫原性を低減するために、治療用途のキメラモノクローナル抗体が開発されている。キメラ抗体に関して用いられる「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖両方のCDRおよびフレームワーク領域を含む領域をいう。キメラ抗体は、Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning: A laboratory Manual, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, Ch.15に記載の通りの標準的なDNA技法を用いることによって作製され得る。キメラ抗体は遺伝子操作された組換え抗体でもよく、酵素的に操作された組換え抗体でもよい。キメラ抗体を作製することは当業者の知識の範囲内であり、従って、本発明によるキメラ抗体の作製は、本明細書に記載の方法以外の方法によって行われ得る。
【0057】
本明細書で使用する「ヒト化抗体」という用語は、ヒト抗体定常ドメインと、ヒト可変ドメインに対して高レベルの配列相同性を含むように改変された非ヒト可変ドメインとを含む、遺伝子操作された非ヒト抗体をいう。これは、一緒になって抗原結合部位を形成する6つの非ヒト抗体相補性決定領域(CDR)を、相同ヒトアクセプターフレームワーク領域(FR)につなぐことによって実現することができる(WO92/22653およびEP0629240を参照されたい)。親抗体の結合親和性および特異性を完全に再構成するために、親抗体(すなわち、非ヒト抗体)に由来するフレームワーク残基をヒトフレームワークに置換(逆突然変異)することが必要な場合がある。構造相同性モデリングが、前記抗体の結合特性に重要なフレームワーク領域内のアミノ酸残基を特定するのに役立つ場合がある。従って、ヒト化抗体は、非ヒトCDR配列、主に、非ヒトアミノ酸配列への1つまたは複数のアミノ酸逆突然変異を任意で含むヒトフレームワーク領域と、完全ヒト定常領域とを含んでもよい。任意で、必ずしも逆突然変異ではない、さらなるアミノ酸改変が、好ましい特徴、例えば、親和性および生化学的特性を有するヒト化抗体を得るのに適用される場合がある。
【0058】
本明細書で使用する「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体をいう。ヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム変異誘発もしくは部位特異的変異誘発によって導入された変異、またはインビボで体細胞変異によって導入された変異)を含んでもよい。しかしながら、本明細書で使用する「ヒト抗体」という用語は、マウスまたはラットなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことが意図されない。ヒトモノクローナル抗体は、従来のモノクローナル抗体法、例えば、Kohler and Milstein, Nature 256: 495 (1975)の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技法を含む様々な技法によって産生することができる。原則的に、体細胞ハイブリダイゼーション法が好ましいが、モノクローナル抗体を産生するための他の技法、例えば、Bリンパ球のウイルス形質転換もしくはがん化またはヒト抗体遺伝子ライブラリーを用いたファージディスプレイ技法を使用することができる。ヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製するのに適した動物システムはマウスシステムである。マウスにおけるハイブリドーマ作製は、十分に確立した手法である。免疫化プロトコールおよび融合用の免疫化された脾細胞の単離法は当技術分野において公知である。融合パートナー(例えば、マウスのミエローマ細胞)および融合手法も公知である。従って、ヒトモノクローナル抗体は、例えば、マウスシステムでもラットシステムではなくヒト免疫系の一部を有するトランスジェニックまたはトランスクロモゾームのマウスまたはラットを用いて作製することができる。従って、一態様では、ヒト抗体は、動物免疫グロブリン配列の代わりにヒト生殖系列免疫グロブリン配列を有するトランスジェニック動物、例えば、マウスまたはラットから得られる。このような態様では、前記抗体は、動物に導入されたヒト生殖系列免疫グロブリン配列に起源をもつが、この最終抗体配列は、前記ヒト生殖系列免疫グロブリン配列が、内在性の動物抗体機構による体細胞超変異および親和性成熟によってさらに改変された結果である。例えば、Mendez et al. 1997 Nat Genet.15(2):146-56を参照されたい。「還元条件」または「還元環境」という用語は、基質、ここでは、抗体のヒンジ領域のシステイン残基が、酸化されるより還元される可能性が高い条件または環境をいう。
【0059】
本明細書で使用する「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)という用語は、発現ベクター、例えば、本発明の抗体をコードする発現ベクターが導入されている細胞をいうことが意図される。組換え宿主細胞には、例えば、トランスフェクトーマ、例えば、CHO、CHO-S、HEK、HEK293、HEK-293F、Expi293F、PER.C6、またはNS0細胞、およびリンパ球細胞が含まれる。
【0060】
「治療」という用語は、症状または疾患状態を緩和する目的、改善させる目的、抑止する目的、または根絶する(治癒する)目的で、治療活性のある有効量の本発明の抗体を投与するこという。
【0061】
「有効量」または「治療的有効量」という用語は、望ましい治療結果を得るために必要な投薬および時間で、望ましい治療結果を得るために有効な効果を示す量をいう。抗体の治療的有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに個体において前記抗体が望ましい応答を誘発する能力などの要因に応じて変わることがある。治療的有効量はまた、抗体または抗体部分の治療に有益な作用が毒性作用または有害作用を上回る量でもある。
【0062】
「抗イディオタイプ抗体」という用語は、抗体の抗原結合部位と一般的に関連する独特な決定基を認識する抗体をいう。
【0063】
「競合する」および「競合」という用語は、第1の抗体および第2の抗体と同じ抗原との間での競合を指す。または、「競合する」および「競合」とは、内因性リガンドの対応する受容体との結合についての抗体と内因性リガンドとの間での競合も指すことがある。抗体が内因性リガンドとその受容体との結合を妨げる場合には、このような抗体は、リガンドとその受容体との内因性相互作用をブロックするといわれ、従って、内因性リガンドと競合する。標的抗原との結合についての抗体の競合を試験するやり方は当業者に周知である。このような方法の一例は、いわゆる交差競合アッセイ法であり、例えば、ELISAとしてまたはフローサイトメトリーによって行われ得る。または、競合はバイオレイヤー干渉法を用いて測定され得る。
【0064】
本発明のさらなる局面および態様
前記のように、第1の局面において、本発明は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含む結合物質であって、第2の抗原結合領域がヒトPD-L1とヒトPD-1との結合を阻害する、結合物質に関する。
【0065】
従って、このような結合物質は2つの異なる抗原結合領域を含み、一方の抗原結合領域はPD-L1に結合することができ、他方の抗原結合領域はCD137に結合することができる。
【0066】
本発明の発明者によって示されるように、本発明による結合物質は、ある細胞にあるCD137に結合すると同時に、別の細胞の表面にあるPD-L1に同時に結合することで増殖を活性化および/または誘導し得る。ヒトでは、CD137は活性化T細胞、例えばCD8+T細胞およびCD4+T細胞の表面に発現しているのに対して、PD-L1は、主に、抗原提示細胞(APC)、例えば、樹状細胞または腫瘍細胞の表面に発現している。従って、CD137とPD-L1の両方に結合することができる本発明による結合物質、例えば、二重特異性抗体はT細胞とAPCまたはT細胞と腫瘍細胞に同時結合することができる。従って、本発明による結合物質、例えば、二重特異性抗体は、APCとT細胞との間の細胞間相互作用を、これらの細胞の表面にあるPD-L1とCD137に同時結合することによって媒介する可能性がある。従って、これにより抗原特異的T細胞が増殖する可能性がある。さらに、本発明による結合物質、例えば、二重特異性抗体は、腫瘍細胞とT細胞との間の細胞間相互作用を、腫瘍細胞の表面にあるPD-L1とT細胞の表面にあるCD137の同時結合によって媒介する可能性がある。従って、これにより、T細胞の表面にあるCD137に結合することで腫瘍細胞の存在下でT細胞がさらに活性化される可能性があり、その一方で、腫瘍細胞の表面にあるPD-L1に結合することでT細胞と腫瘍細胞は近接する。従って、腫瘍細胞の存在下でT細胞が活性化されるとT細胞による腫瘍細胞の死滅が増加する可能性がある。さらに、本発明による結合物質のPD-L1抗原結合領域が、腫瘍細胞の表面にあるPD-L1とT細胞の表面にあるPD-1との結合を阻害する能力により、腫瘍細胞はT細胞阻害を誘導し、それによって、活性化T細胞の抗腫瘍作用から逃げることができなくなる。
【0067】
従って、本発明の結合物質、例えば二重特異性抗体は、T細胞の再活性化から利益を得ることができる疾患、例えばがんの処置に用いられてもよい。
【0068】
本発明の一態様において、第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:28に示したヒトPD-L1またはその成熟ポリペプチドに結合する。
【0069】
本発明の一態様において、第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:29に示したカニクイザル(マカカ・ファシキュラリス)PD-L1またはその成熟ポリペプチドに結合する。従って、ヒトPD-L1およびカニクイザルPD-L1に交差特異的(cross-specific)な抗原結合領域を有する結合物質はカニクイザルにおける前臨床試験に適している。
【0070】
同じ抗原、例えばPD-L1に結合することができる異なる結合物質、例えば、抗体は、前記抗原の異なる領域に結合する可能性がある。場合によっては、あるPD-L1抗体とPD-L1が結合しても、依然として、異なるPD-L1抗体とPD-L1が結合する可能性がある。しかしながら、他の場合では、あるPD-L1抗体とPD-L1との結合は異なるPD-L1抗体とPD-L1との結合と競合する(ブロックする)可能性がある。従って、競合実験によって、抗体結合の機能作用に影響を及ぼす可能性がある、標的抗原上に抗体が結合する場所についての情報が得られる。
【0071】
本発明の一態様において、ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域はヒトPD-L2に結合しない。
【0072】
本発明の一態様において、前記ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域は、
a. SEQ ID NO:20に示した配列またはSEQ ID NO:20において1個までのアミノ酸、例えば1個のアミノ酸が改変されている配列を有する重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含む、重鎖可変領域、および
b. SEQ ID NO:23に示した配列またはSEQ ID NO:23において2個までのアミノ酸、例えば2個のアミノ酸、例えば1個のアミノ酸が改変されている配列を有する軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む、軽鎖可変領域
を含む抗体とヒトPD-L1結合について競合する抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。
【0073】
本発明の一態様において、前記改変されるアミノ酸はアミノ酸置換、例えば、保存的アミノ酸置換でもよい。本発明の一態様において、SEQ ID NO:20において1個までのアミノ酸、例えばSEQ ID NO:20において1個までの保存的アミノ酸置換が改変されている。本発明の一態様において、SEQ ID NO:23において2個までのアミノ酸、例えばSEQ ID NO:23において1個、例えば2個の保存的アミノ酸置換が改変されている。
【0074】
本発明の一態様において、前記ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域は、
a. SEQ ID NO:18に示した配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、SEQ ID NO:19に示した配列を有する重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、およびSEQ ID NO:20に示した配列を有する重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含む重鎖可変領域、ならびに
b. SEQ ID NO:22に示した配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、DDNとして示した配列を有する軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および23に示した配列を有する軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む軽鎖可変領域
を含む抗体とヒトPD-L1結合について競合する抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。
【0075】
本発明の一態様において、前記ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域は、ヒトPD-L1との結合について重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む抗原結合領域と競合する抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、VHは、SEQ ID NO:17に示した配列を含み、かつVLは、SEQ ID NO:21に示した配列を含む。標的抗原結合との結合について競合する抗体は、抗原上の異なるエピトープに結合する可能性があり、エピトープは互いにとても近接しているので、あるエピトープに結合する第1の抗体は第2の抗体と他のエピトープとの結合を阻止する。しかしながら、他の状況では、2つの異なる抗体は抗原上の同じエピトープに結合することがあり、競合結合アッセイ法において結合について競合すると考えられる。
【0076】
本発明の一態様において、前記ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:20に示した配列またはSEQ ID NO:20において1個までのアミノ酸が改変されている配列を有するHCDR3を含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:23に示した配列またはSEQ ID NO:23において2個までのアミノ酸が改変されている配列を有するLCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む抗体のPD-L1に対する特異性を有する抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。
【0077】
本発明の一態様において、前記ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:18に示した配列を有するHCDR1、SEQ ID NO:19に示した配列を有するHCDR2、およびSEQ ID NO:20に示した配列を有するHCDR3、またはSEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19、およびSEQ ID NO:20に示したHCDR配列全体にわたって全体として1個までのアミノ酸が改変されている配列を含む重鎖可変領域ならびにSEQ ID NO:22に示した配列を有するLCDR1、DDNとして示した配列を有するLCDR2、および23に示した配列を有するLCDR3、またはSEQ ID NO:22に示したLCDR配列、DDNとして示したLCDR配列、および23に示したLCDR配列の全体にわたって全体で2個までのアミノ酸が改変されている配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と同じ、PD-L1上のエピトープに結合する抗体の重鎖可変領域ならびに軽鎖可変領域を含む。ここで、VHの3つのHCDR配列全体にわたって1個までのアミノ酸の改変と、VLの3つのLCDR配列全体にわたって2個までのアミノ酸の改変とを可能にする態様が説明される。
【0078】
本発明の一態様において、前記ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:17に示した配列を含むVHおよびSEQ ID NO:21に示した配列を含むVLを含む抗体と同じヒトPD-L1エピトープに結合する。従って、一態様において、特定のVH配列およびVL配列を含む抗体と同じエピトープに結合する、ヒトPD-L1に結合する抗原結合領域は本発明の結合物質として理解され、この抗体はPD-L1分子上の同じアミノ酸に結合する。結合物質および抗体が標的抗原上の同じエピトープに結合することは、当業者に公知の標準的なアラニンスキャニング実験または抗体-抗原結晶化実験によって確認され得る。
【0079】
本発明の一態様において、前記ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:20に示した配列またはSEQ ID NO:20において1個までのアミノ酸が改変されている配列を有するHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)を含む。
【0080】
本発明の一態様において、前記ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:19に示した配列またはSEQ ID NO:19において1個までのアミノ酸が改変されている配列を有するHCDR2を含む重鎖可変領域(VH)を含む。
【0081】
本発明の一態様において、前記ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:18に示した配列またはSEQ ID NO:18において1個までのアミノ酸が改変されている配列を有するHCDR1を含む重鎖可変領域(VH)を含む。
【0082】
本発明の一態様において、前記ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域は、HCDR1配列、HCDR2配列、およびHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)を含み、HCDR1配列、HCDR2配列、およびHCDR3配列はそれぞれ、SEQ ID NO:18に示した配列、SEQ ID NO:19に示した配列、およびSEQ ID NO:20に示した配列を含み、3つのHCDR配列全体にわたって全体として3個までのアミノ酸、例えば、2個のアミノ酸、例えば、1個のアミノ酸が改変されている。本発明の一態様において、3つのHCDR配列全体にわたって全体として1個までのアミノ酸が改変されている。本発明の一態様において、3つのHCDR配列全体にわたって全体として2個までのアミノ酸が改変されている。一態様において、同じHCDR配列において2個までのアミノ酸が改変されている。一態様において、異なるHCDR配列において2個までのアミノ酸が改変されている。一態様において、3つのHCDR配列全体にわたって全体として3個までのアミノ酸、例えば、3個のアミノ酸、例えば、2個のアミノ酸、例えば、1個のアミノ酸が改変されている。一態様において、同じHCDR配列において3個までのアミノ酸、例えば、3個のアミノ酸、例えば、2個のアミノ酸、例えば、1個のアミノ酸が改変されている。一態様において、異なるHCDR配列において3個までのアミノ酸、例えば、3個のアミノ酸、例えば、2個のアミノ酸、例えば、1個のアミノ酸が改変されている。
【0083】
本発明の一態様において、前記ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域は、HCDR1配列、HCDR2配列、およびHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)を含み、HCDR1配列、HCDR2配列、およびHCDR3配列はそれぞれ、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19、およびSEQ ID NO:20に示した配列を含む。
【0084】
本発明の一態様において、前記ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:23に示した配列またはSEQ ID NO:23において2個までのアミノ酸、例えば2個のアミノ酸、例えば1個のアミノ酸が改変されている配列を有するLCDR3を含む、軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0085】
本発明の一態様において、前記ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域は、DDNの配列またはDDNにおいて1個までのアミノ酸、例えば1個のアミノ酸が改変されている配列を有するLCDR2を含む、軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0086】
本発明の一態様において、前記ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:22に示した配列またはSEQ ID NO:22において2個までのアミノ酸、例えば2個のアミノ酸、例えば1個のアミノ酸が改変されている配列を有するLCDR1を含む、重鎖可変領域(VL)を含む。
【0087】
本発明の一態様において、前記ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域は、LCDR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、LCDR1配列はSEQ ID NO:22に示した配列を含み、LCDR2配列はDDNとして示した配列を含み、かつLCDR3配列は23に示した配列を含み、3つのLCDR配列全体にわたって全体で2個までのアミノ酸、例えば2個のアミノ酸、例えば1個のアミノ酸が改変されている。
【0088】
本発明の一態様において、前記ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域は、LCDR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、LCDR1配列はSEQ ID NO:22に示した配列を含み、LCDR2配列はDDNとして示した配列を含み、かつLCDR3配列は23に示した配列を含む。
【0089】
本発明の一態様において、前記ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域は、HCDR1配列、HCDR2配列、およびHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにLCDR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、HCDR1配列はSEQ ID NO:18に示した配列であり、HCDR2配列はSEQ ID NO:19に示した配列であり、かつHCDR3配列はSEQ ID NO:20に示した配列であり、かつ、LCDR1配列はSEQ ID NO:22に示した配列を含み、LCDR2配列はDDNとして示した配列を含み、かつLCDR3配列は23に示した配列である。
【0090】
本発明の一態様において、前記ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:17に示したVH配列のアミノ酸配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む。
【0091】
本発明の一態様において、前記ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:21に示したVL配列のアミノ酸配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0092】
従って、例えば、前記ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域は、
SEQ ID NO:17に示したVH配列との少なくとも70%アミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:21に示したVL配列との少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
SEQ ID NO:17に示したVH配列との少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:21に示したVL配列との少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
SEQ ID NO:17に示したVH配列との少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:21に示したVL配列との少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
SEQ ID NO:17に示したVH配列との少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:21に示したVL配列との少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
SEQ ID NO:17に示したVH配列との少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:21に示したVL配列との少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
SEQ ID NO:17に示したVH配列との少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:21に示したVL配列との少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
SEQ ID NO:17に示したVH配列との少なくとも97%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:21に示したVL配列との少なくとも97%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
SEQ ID NO:17に示したVH配列との少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:21に示したVL配列との少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
SEQ ID NO:17に示したVH配列との少なくとも100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:21に示したVL配列との少なくとも100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列
を含む。
【0093】
本発明の一態様において、前記ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域は重鎖可変領域(VH)を含み、VHは、SEQ ID NO:17に示した配列を含む。
【0094】
本発明の一態様において、前記ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域は軽鎖可変領域(VL)を含み、VLは、SEQ ID NO:21に示した配列を含む。
【0095】
本発明の好ましい態様において、前記ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域は重鎖可変領域(VH)および可変領域(VL)を含み、VHは、SEQ ID NO:17に示した配列を含み、VLは、SEQ ID NO:21に示した配列を含む。
【0096】
さらなる態様において、前記VH配列およびVL配列はそれぞれ、3つのCDR配列、それぞれCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに4つのフレームワーク配列、それぞれFR1、FR2、FR3、およびFR4を含み、VHのそれぞれの組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列は、前記VH配列のそれぞれの組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し、VH CDR配列は変異しておらず、VLのそれぞれの組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列は、前記VL配列のそれぞれの組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し、VL CDR配列は変異していない。この態様の文脈において、同一性%は、フレームワーク配列が、中間CDR配列の無い1つの連続配列としてまとめられた場合に得られるパーセント同一性を指す。
【0097】
CD137
前記のように、本発明の上記の結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合を含む。従って、本発明による結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を有する、二重特異性抗体でもよく、第2の抗原結合領域はヒトPD-L1とヒトPD-1との結合を阻害する。
【0098】
本発明の一態様において、第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:30に示したヒトCD137またはその成熟ポリペプチドに結合する。
【0099】
本発明の一態様において、第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:31に示したカニクイザル(マカカ・ファシキュラリス)CD137またはその成熟ポリペプチドに結合する。従って、ヒトCD137とカニクイザルCD137の両方に交差特異的な抗原結合領域を有する結合物質はカニクイザルにおける前臨床試験に適している。
【0100】
本発明の一態様において、第1の抗原結合領域は、以下の構築物をトランスフェクトした細胞との細胞結合によって測定された、SEQ ID NO:33に示した変異ヒトCD137またはその成熟ポリペプチドに結合するよりも高い程度まで、SEQ ID NO:30に示したヒトCD137またはその成熟ポリペプチドに結合する。SEQ ID NO:33に示した変異ヒトCD137(シャッフル5/ゾウ)は、アミノ酸48-88が、ゾウCD137に由来する対応するアミノ酸と交換されたヒトCD137のアミノ酸配列に対応する。本発明の一態様において、第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:30に示したヒトCD137またはその成熟ポリペプチドと比較して、SEQ ID NO:33に示した変異ヒトCD137(シャッフル5/ゾウ)またはその成熟ポリペプチドとの結合が低下している。本発明の一態様において、第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:33に示した変異ヒトCD137またはその成熟ポリペプチド(シャッフル5/ゾウ)に結合しない。従って、本発明の一態様において、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域はヒトCD137エピトープに結合し、ヒトCD137エピトープは、SEQ ID NO:41の位置25-65に対応する、SEQ ID NO:30の位置48-88によって規定されるアミノ酸配列の中にあり、例えば、SEQ ID NO:41の位置25-65に対応する、SEQ ID NO:30の位置48-88にある、アミノ酸C、P、P、N、S、F、S、S、A、G、G、Q、R、T、C、D、I、C、R、Q、C、K、G、V、F、R、T、R、K、E、C、S、S、T、S、N、A、E、C、D、Cの1つまたは複数を含むかまたは必要とするエピトープである。第1の抗原結合領域とヒトCD137との結合は、SEQ ID NO:41の位置25-65に対応する、SEQ ID NO:30の位置48-88によって規定されるアミノ酸配列の中にある任意のアミノ酸残基、例えば、SEQ ID NO:41の位置25-65に対応する、SEQ ID NO:30の位置48-88にある、アミノ酸C、P、P、N、S、F、S、S、A、G、G、Q、R、T、C、D、I、C、R、Q、C、K、G、V、F、R、T、R、K、E、C、S、S、T、S、N、A、E、C、D、Cの1つまたは複数に依存し得る。
【0101】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:40に示したアミノ酸配列中のアミノ酸の少なくとも1つ、例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つに結合する。特に、例えば、アラニンスキャニングによって確認された場合に、例えば、下記および実施例13に記載の通りにアラニンスキャニングによって確認された場合に、本発明による抗体とヒトCD137との結合は、SEQ ID NO:30中のF36、F53、T61、D63、およびN83に対応する、SEQ ID NO:41中にある以下のアミノ酸残基:位置13のPhe(F)、位置30のPhe(F)、位置38のThr(T)、位置40のAsp(D)、および位置60のAsn(N)の1つまたは複数に依存し得る。
【0102】
この態様によれば、前記抗体と、SEQ ID NO:41の位置13、30、38、40、および60に対応する位置にあるアミノ酸残基のいずれか1つまたは複数がアラニンで置換されている変異CD137との結合は、SEQ ID NO:41に示したアミノ酸配列を有する野生型CD137と比較して低減している。好ましくは、結合の低減は、前記抗体のzスコア(変化倍率)が-1.5未満であると決定され、前記抗体と変異CD137との結合のzスコア(変化倍率)は実施例13に示した通りに算出される。
【0103】
位置13のPhe(F)および/または位置30のPhe(F)は、抗体結合に直接関与することはないが、エピトープに構造上の影響を及ぼすことがある。従って、本発明による抗体はヒトCD137上のエピトープに結合することがあり、SEQ ID NO:41中の位置38のThr(T)、位置40のAsp(D)、および/または位置60のAsn(N)が抗体結合に直接関与する。
【0104】
別の態様において、本発明による抗体とヒトCD137との結合は、SEQ ID NO:30の位置に対応する、SEQ ID NO:41の以下のアミノ酸残基:位置1にあるLeu(L)、位置2にあるGln(Q)、位置4にあるPro(P)、位置11にあるGly(G)、位置12にあるThr(T)、位置15にあるAsp(D)、位置20にあるGln(Q)の1つまたは複数に依存することがあり、SEQ ID NO:41の位置1にあるLeu(L)、位置2にあるGln(Q)、位置4にあるPro(P)、位置11にあるGly(G)、位置12にあるThr(T)、位置15にあるAsp(D)、位置20にあるGln(Q)はそれぞれ、SEQ ID NO:30のL24、Q25、P27、G34、T35、D38、およびQ43に対応する。
【0105】
この態様によれば、前記抗体と、SEQ ID NO:41の位置1、2、4、11、12、15、および20に対応する位置にあるアミノ酸残基のいずれか1つまたは複数がアラニンで置換されている変異CD137との結合は、SEQ ID NO:41に示したアミノ酸配列を有する野生型CD137と比較して低減している。好ましくは、結合の低減は、前記抗体のzスコア(変化倍率)が-1.5未満であると決定され、前記抗体と変異CD137との結合のzスコア(変化倍率)は実施例13に示した通りに算出される。
【0106】
野生型CD137とアラニン置換CD137との結合を比較するための手法は、
(i)適切な細胞株、例えばHEK293細胞において野生型CD137およびアラニン置換CD137を発現させる工程;
(ii)トランスフェクションの1日後に前記細胞を採取する工程、および各データポイントについて、100.000個の細胞からなる試料を式Iによる化合物(A488)などで標識された本発明による抗体と共に、FACS緩衝液(リン酸緩衝食塩水(PBS)、1%ウシ血清アルブミン、0.02%アジ化ナトリウム)中、室温で30分間インキュベートする工程;
(iii)FACS緩衝液で各試料を洗浄し、試料をフローサイトメトリーによる分析に供する工程、および抗体結合について蛍光強度(gMFI)の幾何平均を求める工程;ならびに
(iv)実施例13に記載の通りに非交差ブロック(non-crossblocking)CD137特異的抗体の結合強度に対してデータを標準化する工程、およびzスコア(変化倍率)を算出する工程
を含んでもよい。
【0107】
実施例13に記載の通りに、データは、以下の式:
を用いて、非交差ブロックCD137特異的対照抗体の結合強度に対して標準化することができ、式中、「aa位置」とはアラニンまたはグリシンに変異した位置を指す。
【0108】
zスコアは、以下の計算式:
に従って算出することができ、式中、μおよびσは、全変異体から算出した標準化されたgMFIの平均および標準偏差である。
【0109】
本発明の一態様において、第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:34およびSEQ ID NO:30に示した構築物をトランスフェクトした細胞との細胞結合によって測定された場合に、SEQ ID:NO 30に示したヒトCD137またはその成熟ポリペプチドに結合する程度と同じ程度まで、SEQ ID NO:34に示した変異ヒトCD137(シャッフル4/イノシシ)またはその成熟ポリペプチドに結合する。SEQ ID NO:34に示した変異ヒトCD137(シャッフル4/イノシシ)は、アミノ酸89-114が、イノシシCD137に由来する対応するアミノ酸と交換されたヒトCD137アミノ酸配列に対応する。従って、本発明の一態様において、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、SEQ ID:30の位置89~114にあるアミノ酸の1つまたは複数を含むかまたは必要とするヒトCD137エピトープに結合しない。
【0110】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、ヒトCD137との結合について、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む抗原結合領域と競合し、VHは、SEQ ID NO:8に示した配列を含み、VLは、SEQ ID NO:12に示した配列を含む。
【0111】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、ヒトCD137との結合について、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む抗原結合領域と競合し、VHは、SEQ ID NO:15に示した配列を含み、VLは、SEQ ID NO:16に示した配列を含む。
【0112】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、ヒトCD137との結合について、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む抗原結合領域と競合し、VHは、SEQ ID NO:49に示した配列を含み、VLは、SEQ ID NO:53に示した配列を含む。
【0113】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、
a. SEQ ID NO:11に示した配列またはSEQ ID NO:11において3個までのアミノ酸、例えば3個のアミノ酸、例えば2個のアミノ酸、例えば1個のアミノ酸が改変されている配列を有する重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含む、重鎖可変領域、および
b. SEQ ID NO:14に示した配列またはSEQ ID NO:14において4個までのアミノ酸、例えば4個のアミノ酸、例えば3個のアミノ酸、例えば2個のアミノ酸、例えば1個のアミノ酸が改変されている配列を有する軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む、軽鎖可変領域
を含む抗体とヒトCD137結合について競合する抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。
【0114】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、
a. SEQ ID NO:52に示した配列またはSEQ ID NO:52において3個までのアミノ酸、例えば3個のアミノ酸、例えば2個のアミノ酸、例えば1個のアミノ酸が改変されている配列を有する重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含む、重鎖可変領域、および
b. SEQ ID NO:55に示した配列またはSEQ ID NO:55において4個までのアミノ酸、例えば4個のアミノ酸、例えば3個のアミノ酸、例えば2個のアミノ酸、例えば1個のアミノ酸が改変されている配列を有する軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む、軽鎖可変領域
を含む抗体とヒトCD137結合について競合する抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。
【0115】
本発明の一態様において、HCDR3配列において1個までのアミノ酸、例えば、1個のアミノ酸が改変されている。本発明の一態様において、HCDR3配列において2個までのアミノ酸、例えば、2個のアミノ酸、例えば、1個のアミノ酸が改変されている。一態様において、HCDR3配列において3個までのアミノ酸、例えば、3個のアミノ酸、例えば、2個のアミノ酸、例えば、1個のアミノ酸が改変されている。本発明の一態様において、LCDR3配列において1個までのアミノ酸、例えば、1個のアミノ酸が改変されている。本発明の一態様において、LCDR3配列において2個までのアミノ酸、例えば、2個のアミノ酸、例えば、1個のアミノ酸が改変されている。一態様において、LCDR3配列において3個までのアミノ酸、例えば、3個のアミノ酸、例えば、2個のアミノ酸、例えば、1個のアミノ酸が改変されている。一態様において、LCDR3配列において4個までのアミノ酸、例えば、4個のアミノ酸、例えば、3個のアミノ酸、例えば、2個のアミノ酸、例えば、1個のアミノ酸が改変されている。
【0116】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、
a. SEQ ID NO:9に示した配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、SEQ ID NO:10に示した配列を有する重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、およびSEQ ID NO:11に示した配列を有する重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含む、重鎖可変領域、ならびに
b. SEQ ID NO:13に示した配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、GASを有する軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、およびSEQ ID NO:14に示した配列を有する軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む、軽鎖可変領域
を含む抗体とヒトCD137結合について競合する抗体の重鎖可変領域ならびに軽鎖可変領域を含む。
【0117】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、
a. SEQ ID NO:50に示した配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、SEQ ID NO:51に示した配列を有する重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、およびSEQ ID NO:52に示した配列を有する重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含む、重鎖可変領域、ならびに
b. SEQ ID NO:54に示した配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、SASを有する軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、およびSEQ ID NO:55に示した配列を有する軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む、軽鎖可変領域
を含む抗体とヒトCD137結合について競合する抗体の重鎖可変領域ならびに軽鎖可変領域を含む。
【0118】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:15に示したVH配列およびSEQ ID NO:16に示したVL配列を含む抗体を含む抗体と同じヒトCD137エピトープに結合する。
【0119】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:49に示したVH配列およびSEQ ID NO:53に示したVL配列を含む抗体と同じヒトCD137エピトープに結合する。
【0120】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:11に示した配列またはSEQ ID NO:11において3個までのアミノ酸、例えば3個のアミノ酸、例えば2個のアミノ酸、例えば1個のアミノ酸が改変されている配列を有するHCDR3を含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:14に示した配列またはSEQ ID NO:14において4個までのアミノ酸、例えば3個のアミノ酸、例えば2個のアミノ酸、例えば1個のアミノ酸が改変されている配列を有するLCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む抗体のCD137に対する特異性を有する抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。
【0121】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:52に示した配列またはSEQ ID NO:52において3個までのアミノ酸、例えば3個のアミノ酸、例えば2個のアミノ酸、例えば1個のアミノ酸が改変されている配列を有するHCDR3を含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:55に示した配列またはSEQ ID NO:55において4個までのアミノ酸、例えば3個のアミノ酸、例えば2個のアミノ酸、例えば1個のアミノ酸が改変されている配列を有するLCDR3を含む軽鎖可変領域とを含む抗体のCD137に対する特異性を有する抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。
【0122】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:11に示した配列またはSEQ ID NO:11において3個までのアミノ酸、例えば3個のアミノ酸、例えば2個のアミノ酸、例えば1個のアミノ酸が改変されている配列を有するHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)を含む。本発明の一態様において、HCDR3配列において1個までのアミノ酸が改変されている。本発明の一態様において、HCDR3配列において2個までのアミノ酸が改変されている。一態様において、HCDR3配列において3個までのアミノ酸が改変されている。
【0123】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:52に示した配列またはSEQ ID NO:52において3個までのアミノ酸、例えば3個のアミノ酸、例えば2個のアミノ酸、例えば1個のアミノ酸が改変されている配列を有するHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)を含む。本発明の一態様において、HCDR3配列において1個までのアミノ酸が改変されている。本発明の一態様において、HCDR3配列において2個までのアミノ酸が改変されている。一態様において、HCDR3配列において3個までのアミノ酸が改変されている。
【0124】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:10に示した配列またはSEQ ID NO:10において3個まで、例えば3個のアミノ酸、例えば2個のアミノ酸、例えば1個のアミノ酸のアミノ酸が改変されている配列を有するHCDR2を含む重鎖可変領域(VH)を含む。本発明の一態様において、HCDR2配列において1個までのアミノ酸が改変されている。本発明の一態様において、HCDR2配列において2個までのアミノ酸が改変されている。一態様において、HCDR2配列において3個までのアミノ酸が改変されている。
【0125】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:51に示した配列またはSEQ ID NO:51において3個まで、例えば3個のアミノ酸、例えば2個のアミノ酸、例えば1個のアミノ酸のアミノ酸が改変されている配列を有するHCDR2を含む重鎖可変領域(VH)を含む。本発明の一態様において、HCDR2配列において1個までのアミノ酸が改変されている。本発明の一態様において、HCDR2配列において2個までのアミノ酸が改変されている。一態様において、HCDR2配列において3個までのアミノ酸が改変されている。
【0126】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:9に示した配列またはSEQ ID NO:9において3個まで、例えば3個のアミノ酸、例えば2個のアミノ酸、例えば1個のアミノ酸のアミノ酸が改変されている配列を有するHCDR1を含む、重鎖可変領域(VH)を含む。本発明の一態様において、HCDR1配列において1個までのアミノ酸が改変されている。本発明の一態様において、HCDR1配列において2個までのアミノ酸が改変されている。一態様において、HCDR1配列において3個までのアミノ酸が改変されている。
【0127】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:50に示した配列またはSEQ ID NO:50において3個まで、例えば3個のアミノ酸、例えば2個のアミノ酸、例えば1個のアミノ酸のアミノ酸が改変されている配列を有するHCDR1を含む、重鎖可変領域(VH)を含む。本発明の一態様において、HCDR1配列において1個までのアミノ酸が改変されている。本発明の一態様において、HCDR1配列において2個までのアミノ酸が改変されている。一態様において、HCDR1配列において3個までのアミノ酸が改変されている。
【0128】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、HCDR1配列、HCDR2配列、およびHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)を含み、HCDR1配列、HCDR2配列、およびHCDR3配列はそれぞれSEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、およびSEQ ID NO:11に示した配列を含み、3つのHCDR配列全体にわたって全体として3個までのアミノ酸が改変されている。
【0129】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、HCDR1配列、HCDR2配列、およびHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)を含み、HCDR1配列、HCDR2配列、およびHCDR3配列はそれぞれSEQ ID NO:50、SEQ ID NO:51、およびSEQ ID NO:52に示した配列を含み、3つのHCDR配列全体にわたって全体として3個までのアミノ酸が改変されている。
【0130】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、HCDR1配列、HCDR2配列、およびHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)を含み、HCDR1配列、HCDR2配列、およびHCDR3配列はそれぞれSEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、およびSEQ ID NO:11に示した配列を含む。
【0131】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、HCDR1配列、HCDR2配列、およびHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)を含み、HCDR1配列、HCDR2配列、およびHCDR3配列はそれぞれSEQ ID NO:50、SEQ ID NO:51、およびSEQ ID NO:52に示した配列を含む。
【0132】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:14に示した配列またはSEQ ID NO:14において4個までのアミノ酸、例えば4個のアミノ酸、例えば3個のアミノ酸、例えば2個のアミノ酸、例えば1個のアミノ酸が改変されている配列を有するLCDR3を含む、軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0133】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:55に示した配列またはSEQ ID NO:55において4個までのアミノ酸、例えば4個のアミノ酸、例えば3個のアミノ酸、例えば2個のアミノ酸、例えば1個のアミノ酸が改変されている配列を有するLCDR3を含む、軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0134】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、配列GAS、またはGAS配列において2個までのアミノ酸が改変されている配列を有するLCDR2を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。本発明の一態様において、GAS配列において1個までのアミノ酸が改変されている。
【0135】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、配列SAS、またはSAS配列において2個までのアミノ酸が改変されている配列を有するLCDR2を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。本発明の一態様において、SAS配列において1個までのアミノ酸が改変されている。
【0136】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:13に示した配列またはSEQ ID NO:13において4個までのアミノ酸、例えば4個のアミノ酸、例えば3個のアミノ酸、例えば2個のアミノ酸、例えば1個のアミノ酸が改変されている配列を有するLCDR1を含む、軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0137】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:54に示した配列またはSEQ ID NO:54において4個までのアミノ酸、例えば4個のアミノ酸、例えば3個のアミノ酸、例えば2個のアミノ酸、例えば1個のアミノ酸が改変されている配列を有するLCDR1を含む、軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0138】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、LCDR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、LCDR1配列はSEQ ID NO:13に示した配列を含み、LCDR2配列はGASとして示した配列を含み、かつLCDR3配列は14に示した配列を含み、3つのLCDR配列全体にわたって全体で4個までのアミノ酸、例えば4個のアミノ酸、例えば3個のアミノ酸、例え、2個のアミノ酸、例えば1個のアミノ酸が改変されている。
【0139】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、LCDR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、LCDR1配列はSEQ ID NO:54に示した配列を含み、LCDR2配列はSASとして示した配列を含み、かつLCDR3配列は55に示した配列を含み、3つのLCDR配列全体にわたって全体で4個までのアミノ酸、例えば、4個のアミノ酸、例えば、3個のアミノ酸、例えば、2個のアミノ酸、例えば1個のアミノ酸が改変されている。
【0140】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、LCDR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、LCDR1配列はSEQ ID NO:13に示した配列を含み、LCDR2配列はGASとして示した配列を含み、かつLCDR3配列は14に示した配列を含む。
【0141】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、LCDR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、LCDR1配列はSEQ ID NO:54に示した配列を含み、LCDR2配列はSASとして示した配列を含み、かつLCDR3配列は55に示した配列を含む。
【0142】
本発明の好ましい態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、HCDR1配列、HCDR2配列、およびHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにLCDR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、HCDR1配列はSEQ ID NO:9に示した配列であり、HCDR2配列はSEQ ID NO:10に示した配列であり、かつHCDR3配列はSEQ ID NO:11に示した配列であり、かつ、LCDR1配列はSEQ ID NO:13に示した配列であり、LCDR2配列はGASとして示した配列であり、かつLCDR3配列は14に示した配列である。
【0143】
本発明の好ましい態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、HCDR1配列、HCDR2配列、およびHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにLCDR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、HCDR1配列はSEQ ID NO:50に示した配列であり、HCDR2配列はSEQ ID NO:51に示した配列であり、かつHCDR3配列はSEQ ID NO:52に示した配列であり、かつ、LCDR1配列はSEQ ID NO:54として示した配列であり、LCDR2配列はSASとして示した配列であり、かつLCDR3配列は55に示した配列である。
【0144】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:15に示したVH配列のアミノ酸配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む。本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:8に示したVH配列のアミノ酸配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む。
【0145】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:49に示したVH配列のアミノ酸配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む。
【0146】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:16に示したVL配列のアミノ酸配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0147】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:12に示したVL配列のアミノ酸配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0148】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:53に示したVL配列のアミノ酸配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0149】
従って、例えば、前記ヒトCD137に結合することができる第1の抗原結合領域は、
SEQ ID NO:15に示したVH配列との少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:16に示したVL配列との少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
SEQ ID NO:15に示したVH配列との少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:16に示したVL配列との少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
SEQ ID NO:15に示したVH配列との少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:16に示したVL配列との少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
SEQ ID NO:15に示したVH配列との少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:16に示したVL配列との少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
SEQ ID NO:15に示したVH配列との少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:16に示したVL配列との少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
SEQ ID NO:15に示したVH配列との少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:16に示したVL配列との少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
SEQ ID NO:15に示したVH配列との少なくとも97%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:16に示したVL配列との少なくとも97%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
SEQ ID NO:15に示したVH配列との少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:16に示したVL配列との少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
SEQ ID NO:15に示したVH配列との少なくとも100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、およびSEQ ID NO:16に示したVL配列との少なくとも100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列
を含む。
【0150】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は重鎖可変領域(VH)を含み、VHは、SEQ ID NO:15に示した配列を含む。
【0151】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は軽鎖可変領域(VL)を含み、VLは、SEQ ID NO:16に示した配列を含む。
【0152】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は重鎖可変領域(VH)および可変領域(VL)を含み、VH配列は、SEQ ID NO:15に示した配列を含み、VL配列は、SEQ ID NO:16に示した配列を含む。
【0153】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は重鎖可変領域(VH)を含み、VHは、SEQ ID NO:8に示した配列を含む。
【0154】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は軽鎖可変領域(VL)を含み、VLは、SEQ ID NO:12に示した配列を含む。
【0155】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は重鎖可変領域(VH)および可変領域(VL)を含み、VH配列は、SEQ ID NO:8に示した配列を含み、VL配列は、SEQ ID NO:12に示した配列を含む。
【0156】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は重鎖可変領域(VH)を含み、VHは、SEQ ID NO:49に示した配列を含む。
【0157】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は軽鎖可変領域(VL)を含み、VLは、SEQ ID NO:53に示した配列を含む。
【0158】
本発明の一態様において、前記ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域は重鎖可変領域(VH)および可変領域(VL)を含み、VH配列は、SEQ ID NO:49に示した配列を含み、VL配列は、SEQ ID NO:53に示した配列を含む。
【0159】
二重特異性結合物質
前記のように、本発明による結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含む。従って、本発明による結合物質は多重特異性結合物質、例えば、多重特異性抗体または二重特異性抗体でもよい。
【0160】
本発明の一態様において、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
a. 第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:11に示したHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)を含み、かつ
b. 第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:20に示したHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む。
【0161】
本発明の一態様において、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
a. 第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:10に示したHCDR2配列を含む重鎖可変領域(VH)を含み、かつ
b. 第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:19に示したHCDR2配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む。
【0162】
本発明の一態様において、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
a. 第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:9に示したHCDR1配列を含む重鎖可変領域(VH)を含み、かつ
b. 第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:18に示したHCDR1配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む。
【0163】
本発明の一態様において、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
c. 第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:52に示したHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)を含み、かつ
d. 第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:20に示したHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む。
【0164】
本発明の一態様において、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
c. 第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:51に示したHCDR2配列を含む重鎖可変領域(VH)を含み、かつ
d. 第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:19に示したHCDR2配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む。
【0165】
本発明の一態様において、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
a. 第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:50に示したHCDR1配列を含む重鎖可変領域(VH)を含み、かつ
b. 第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:18に示したHCDR1配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む。
【0166】
本発明の一態様において、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
a. 第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:9に示したHCDR1配列、SEQ ID NO:10に示したHCDR2配列、およびSEQ ID NO:11に示したHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)を含み、かつ
b. 第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:18に示したHCDR1配列、SEQ ID NO:19に示したHCDR2配列、およびSEQ ID NO:20に示したHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む。
【0167】
本発明の一態様において、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
a. 第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:50に示したHCDR1配列、SEQ ID NO:51に示したHCDR2配列、およびSEQ ID NO:52に示したHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)を含み、かつ
b. 第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:18に示したHCDR1配列、SEQ ID NO:19に示したHCDR2配列、およびにSEQ ID NO:20示したHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む。
【0168】
本発明の一態様において、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
a. 第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:14に示したLCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ
b. 第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:23に示したLCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0169】
本発明の一態様において、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
a. 第1の抗原結合領域は、配列GASを有するLCDR2を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ
b. 第2の抗原結合領域は、配列DDNを有するLCDR2を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0170】
本発明の一態様において、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
a. 第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:13に示したLCDR1配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ
b. 第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:22に示したLCDR1配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0171】
本発明の一態様において、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
c. 第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:55に示したLCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ
d. 第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:23に示したLCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0172】
本発明の一態様において、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
c. 第1の抗原結合領域は、配列SASを有するLCDR2を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ
d. 第2の抗原結合領域は、配列DDNを有するLCDR2を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0173】
本発明の一態様において、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
c. 第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:54に示したLCDR1配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ
d. 第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:22に示したLCDR1配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0174】
本発明の一態様において、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
a. 第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:13に示したLCDR1配列、GASとして示したLCDR2配列、および14に示したLCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ
b. 第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:22に示したLCDR1配列、DDNとして示したLCDR2配列、および23に示したLCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0175】
本発明の一態様において、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
a. 第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:54に示したLCDR1配列、SASとして示したLCDR2配列、および55に示したLCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ
b. 第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:22に示したLCDR1配列、DDNとして示したLCDR2配列、および23に示したLCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0176】
本発明の一態様において、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
a. 第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:9に示したHCDR1配列、SEQ ID NO:10に示したHCDR2配列、およびSEQ ID NO:11に示したHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにSEQ ID NO:13に示したLCDR1配列、GASとして示したLCDR2配列、および14に示したLCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ
b. 第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:18に示したHCDR1配列、SEQ ID NO:19に示したHCDR2配列、およびSEQ ID NO:20に示したHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびSEQ ID NO:22に示したLCDR1配列、DDNとして示したLCDR2配列、および23に示したLCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0177】
本発明の一態様において、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
a. 第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:50に示したHCDR1配列、SEQ ID NO:51に示したHCDR2配列、およびSEQ ID NO:52に示したHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにSEQ ID NO:54に示したLCDR1配列、SASとして示したLCDR2配列、および55に示したLCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ
b. 第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:18に示したHCDR1配列、SEQ ID NO:19に示したHCDR2配列、およびSEQ ID NO:20に示したHCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにSEQ ID NO:22に示したLCDR1配列、DDNとして示したLCDR2配列、および23に示したLCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0178】
本発明の一態様において、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
a. 第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:8に示した配列を含む重鎖可変領域(VH)を含み、かつ
b. 第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:17に示した配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む。
【0179】
本発明の一態様において、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
a. 第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:15に示した配列を含む重鎖可変領域(VH)を含み、かつ
b. 第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:17に示した配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む。
【0180】
本発明の一態様において、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
a. 第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:49に示した配列を含む重鎖可変領域(VH)を含み、かつ
b. 第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:17に示した配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む。
【0181】
本発明の一態様において、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
a. 第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:12に示した配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ
b. 第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:21に示した配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0182】
本発明の一態様において、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
a. 第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:16に示した配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ
b. 第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:21に示した配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0183】
本発明の一態様において、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
a. 第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:53に示した配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ
b. 第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:21に示した配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0184】
本発明の一態様において、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
a. 第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:8に示した配列を含む重鎖可変領域(VH)、およびSEQ ID NO:12に示した配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ
b. 第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:17に示した配列を含む重鎖可変領域(VH)、およびSEQ ID NO:21に示した配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0185】
本発明の一態様において、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
a. 第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:15に示した配列を含む重鎖可変領域(VH)、およびSEQ ID NO:16に示した配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ
b. 第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:17に示した配列を含む重鎖可変領域(VH)、およびSEQ ID NO:21に示した配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0186】
本発明の一態様において、結合物質は、ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域、およびヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域を含み、
a. 第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:49に示した配列を含む重鎖可変領域(VH)、およびSEQ ID NO:53に示した配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ
b. 第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:17に示した配列を含む重鎖可変領域(VH)、およびSEQ ID NO:21に示した配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0187】
本発明のさらなる態様において、結合物質は多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体である。
【0188】
本発明の好ましい態様において、結合物質は二重特異性抗体である。
【0189】
本発明の一態様において、結合物質は完全長抗体または抗体断片の形をとる。
【0190】
本発明の一態様において、結合物質、特に、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体の形をとる結合物質は第1の抗原結合領域および第2の抗原結合領域を含み、抗原結合領域はそれぞれ重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)を含み、好ましくは、前記可変領域はそれぞれ、3つのCDR配列、それぞれCDR1、CDR2、およびCDR3、ならび4つのフレームワーク配列、それぞれFR1、FR2、FR3、およびFR4を含む。従って、重鎖可変領域中のCDRはそれぞれ、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3として表わされることがあり、軽鎖可変領域中のCDRはそれぞれ、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3として表わされることがある。さらに、重鎖可変領域中のフレームワーク配列はそれぞれ、HFR1、HFR2、HFR3、およびHFR4として表わされることがあり、軽鎖可変領域中のフレームワーク配列はそれぞれ、LFR1、LFR2、LFR3、およびLFR4として表わされることがある。
【0191】
従って、本発明の多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体の一態様において、抗原結合領域はそれぞれ重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)を含み、前記可変領域はそれぞれ3つのCDR配列、それぞれCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに4つのフレームワーク配列、それぞれFR1、FR2、FR3、およびFR4を含む。本発明の二重特異性抗体のさらに好ましい態様において、前記抗体は2つの重鎖定常領域(CH))と2つの軽鎖定常領域(CL)を含む。
【0192】
本発明の一態様において、結合物質、特に、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体の形をとる結合物質は、第1の重鎖可変領域(VH)および第1の軽鎖可変領域(VL)を含む前記第1の抗原結合領域、ならびに第2の重鎖可変領域(VH)および第2の軽鎖可変領域(VL)を含む前記第2の抗原結合領域を含む。
【0193】
本発明の一態様において、結合物質、特に、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体の形をとる結合物質は重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、それぞれの可変領域は3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)、ならびに4つのフレームワーク領域(FR1、FR2、FR3、およびFR4)を含む。
【0194】
本発明の一態様において、結合物質、特に、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体の形をとる結合物質は、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置された前記相補性決定領域および前記フレームワーク領域を含む。
【0195】
本発明の一態様において、結合物質、特に、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体の形をとる結合物質は、相補性決定領域およびフレームワーク領域がアミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:HFR1、HCDR1、HFR2、HCDR2、HFR3、HCDR3、HFR4で配置された重鎖可変領域を含む。
【0196】
本発明の一態様において、結合物質、特に、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体の形をとる結合物質は、相補性決定領域領域およびフレームワーク領域がアミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:LFR1、LCDR1、LFR2、LCDR2、LFR3、LCDR3、LFR4で配置された軽鎖可変領域を含む。
【0197】
本発明の一態様において、結合物質は、重鎖(HC)であるポリペプチドを含む。本発明の一態様において、重鎖(HC)は可変重鎖領域(VH)と重鎖定常領域(CH)を含む。
【0198】
本発明の一態様において、重鎖定常領域(CH)は、定常領域ドメイン1領域(CH1)、ヒンジ領域、定常領域ドメイン2領域(CH2)、および定常領域ドメイン3領域(CH3)を含む。
【0199】
本発明の一態様において、結合物質、特に、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体の形をとる結合物質は、(i)前記第1の重鎖可変領域(VH)を含みかつ第1の重鎖定常領域(CH)をさらに含むポリペプチド、および(ii)前記第2の重鎖可変領域(VH)を含みかつ第2の重鎖定常領域(CH)をさらに含むポリペプチドを含む。
【0200】
本発明の一態様において、結合物質、特に、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体の形をとる結合物質は、(i)前記第1の軽鎖可変領域(VL)を含みかつ第1の軽鎖定常領域(CL)をさらに含むポリペプチド、および(ii)前記第2の軽鎖可変領域(VL)を含みかつ第2の軽鎖定常領域(CL)をさらに含むポリペプチドを含む。
【0201】
本発明の一態様において、結合物質は、第1の結合アームと第2の結合アームを含む抗体、例えば、多重特異性抗体、好ましくは二重特異性抗体であり、
a. 第1の結合アームは、(i)前記第1の重鎖可変領域(VH)および第1の重鎖定常領域(CH)を含むポリペプチド、ならびに(ii)前記第1の軽鎖可変領域(VL)および第1の軽鎖定常領域(CL)を含むポリペプチドを含み;かつ
b. 第2の結合アームは、(iii)前記第2の重鎖可変領域(VH)および第2の重鎖定常領域(CH)を含むポリペプチド、ならびに(iv)前記第2の軽鎖可変領域(VL)および第2の軽鎖定常領域(CL)を含むポリペプチドを含む。
【0202】
本発明の一態様において、結合物質、特に、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体の形をとる結合物質は、定常領域ドメイン1領域(CH1領域)、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域の1つまたは複数、好ましくは、少なくともヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含む、第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)を含む。
【0203】
本発明の一態様において、結合物質、特に、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体の形をとる結合物質は、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群より選択されるアイソタイプの結合物質である。本発明の一態様において、前記アイソタイプは、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、およびヒトIgG4からなる群より選択される。
【0204】
本発明の一態様において、第1の抗原結合領域はウサギ抗体に由来する。本発明の一態様において、第1の抗原結合領域がヒト化抗体に由来する。本発明の一態様において、第1の結合アームは完全長抗体に由来する。本発明の一態様において、第1の結合アームはモノクローナル抗体に由来する。本発明の一態様において、第1の結合アームは完全長IgG1、λ(ラムダ)またはIgG1、κ(カッパ)抗体に由来する。本発明の一態様において、第2の抗原結合領域はラット抗体に由来する。本発明の一態様において、第2の抗原結合領域はヒトである。本発明の一態様において、第2の抗原結合領域がヒト化抗体に由来する。本発明の一態様において、第2の結合アームは完全長抗体に由来する。本発明の一態様において、第2の結合アームはモノクローナル抗体に由来する。本発明の一態様において、第2の結合アームは完全長IgG1、λ(ラムダ)またはIgG1、κ(カッパ)抗体に由来する。本発明の一態様において、第1の抗原結合領域および第2の抗原結合領域はヒト化抗体に由来する。本発明の一態様において、第1の抗原結合領域および第2の抗原結合領域はヒト抗体である。本発明の一態様において、第1の結合アームおよび第2の結合アームは、完全長抗体、例えば、完全長IgG1、λ(ラムダ)またはIgG1、κ(カッパ)抗体に由来する。本発明の一態様において、第1の結合アームおよび第2の結合アームはモノクローナル抗体に由来する。
【0205】
本発明の一態様において、第1の抗原結合領域はIgG1λに由来し、第2の抗原結合領域はIgG1κに由来する。
【0206】
本明細書に記載の抗体には、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4抗体、ならびにその組み合わせが含まれ、重鎖は異なるアイソタイプおよび/またはサブクラスの重鎖である。様々な態様において、前記抗体はIgG1抗体であり、さらに具体的には、IgG1、κまたはIgG1、λアイソタイプ(すなわち、IgG1、κ、λ)、IgG2a抗体(例えば、IgG2a、κ、λ)、IgG2b抗体(例えば、IgG2b、κ、λ)、IgG3抗体(例えば、IgG3、κ、λ)、またはIgG4抗体(例えば、IgG4、κ、λ)である。
【0207】
本発明の一態様において、結合物質は多重特異性結合物質、例えば、二重特異性結合物質である。本発明の一態様において、結合物質は、抗体(特に、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体)、例えば、キメラ抗体またはヒト化抗体またはヒト抗体である。本発明の一態様において、結合物質は完全長抗体または抗体断片の形をとる。本発明の一態様において、第1の抗原結合領域はモノクローナル抗体に由来する。本発明の一態様において、第2の抗原結合領域はモノクローナル抗体に由来する。本発明の一態様において、第1の抗原結合領域はモノクローナル抗体に由来し、第2の抗原結合領域はモノクローナル抗体に由来する。
【0208】
本発明の一態様において、結合物質は完全長IgG1抗体である。本発明の一態様において、結合物質は完全長ヒトIgG1抗体である。本発明の一態様において、結合物質は、定常領域に1つまたは複数の変異がある完全長ヒトIgG1抗体である。
【0209】
本発明の一態様において、結合物質はキメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体である。結合物質が二重特異性抗体である本発明の態様において、半分子は両方ともヒト、ヒト化、またはキメラでもよいか、または半分子は配列の起源に関して特徴の点で異なってもよい。
【0210】
本発明の一態様において、結合物質は第1の抗原結合領域および第2の抗原結合領域を含み、
a. CD137に結合する第1の抗原結合領域はキメラ抗体に由来し、かつ/または
b. ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域はキメラ抗体に由来する。
【0211】
本発明の一態様において、結合物質は第1の抗原結合領域および第2の抗原結合領域を含み、
a. CD137に結合する第1の抗原結合領域はヒト化抗体に由来し、かつ/または
b. ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域はヒト化抗体に由来する。
【0212】
本発明の一態様において、結合物質は第1の抗原結合領域および第2の抗原結合領域を含み、
a. ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域はヒト抗体に由来し、かつ/または
b. ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域はヒト抗体に由来する。
【0213】
本発明の好ましい態様において、結合物質は第1の抗原結合領域および第2の抗原結合領域を含み、
a. ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域がヒト化抗体に由来し、かつ/または
b. ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域はヒト抗体に由来する。
【0214】
本発明の一態様において、結合物質、特に、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体の形をとる結合物質は、CH3領域を含む第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)を含み、かつ2つのCH3領域は非対称的な変異を含む。
【0215】
本発明の好ましい態様において、結合物質、特に、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体の形をとる結合物質は第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)を含み、前記第1の重鎖および第2の重鎖のそれぞれは、少なくともヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含み、前記第1の重鎖定常領域(CH)において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸の少なくとも1つは置換されており、かつ前記第2の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸の少なくとも1つは置換されており、かつ、前記第1の重鎖および前記第2の重鎖は同じ位置において置換されていない。
【0216】
最も好ましくは、(i)EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置にあるアミノ酸は前記第1の重鎖定常領域(CH)においてLであり、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置にあるアミノ酸は第2の重鎖定常領域(CH)においてRであるか、または、(ii)EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置にあるアミノ酸は前記第1の重鎖においてRであり、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置にあるアミノ酸は前記第2の重鎖においてLである。
【0217】
本発明の一態様において、結合物質は、抗体、例えば、多重特異性抗体、好ましくは二重特異性抗体であり、前記抗体は、同じ第1の抗原結合領域および第2の抗原結合領域と、ヒトIgG1ヒンジ、CH2領域、およびCH3領域を含む2つの重鎖定常領域(CH)とを含む別の抗体と比較してより低い程度まで、Fcを介したエフェクター機能を誘導する。本発明の一態様において、改変されていない第1の重鎖および第2の重鎖を含むこと以外は同一の抗体と比較してより低い程度まで、前記抗体が、Fcを介したエフェクター機能を誘導するように、前記第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域は改変されている。
【0218】
本発明の一態様において、前記Fcを介したエフェクター機能は、IgG Fc(Fcγ)受容体との結合によって、C1qとの結合によって、またはFcを介したFcR架橋結合の誘導によって測定される。
【0219】
本発明の好ましい態様において、前記Fcを介したエフェクター機能はC1qとの結合によって測定される。
【0220】
本発明の一態様において、野生型抗体と比較してC1qと前記抗体との結合が低減するように、好ましくは、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%低減するように前記第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域は改変されており、C1q結合は好ましくはELISAによって測定される。
【0221】
本発明の一態様において、前記第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置にある1つまたは複数のアミノ酸はそれぞれ、L、L、D、N、およびPでない。本発明の一態様において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置は、前記第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域において、それぞれFおよびEである。本発明の一態様において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置は、前記第1の重鎖および第2の重鎖において、それぞ、F、E、およびAである。
【0222】
さらに特に好ましい態様において、結合物質は、第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域を含むPD-L1×CD137二重特異性抗体であり、第1の重鎖定常領域と第2の重鎖定常領域の両方の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置はそれぞれF、E、およびAであり、かつ、(i)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置はLであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置はRであるか、または(ii)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置はRであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置はLである。
【0223】
本発明の一態様において、結合物質はT細胞の増殖を誘導および/または強化する。本発明の一態様において、前記T細胞はCD4+T細胞および/またはCD8+T細胞である。
【0224】
本発明の一態様において、第2の抗原結合領域がPD-L1に結合した場合のみ、結合物質はCD137シグナル伝達を活性化する。
【0225】
本発明の一態様において、特定のT細胞受容体(TCR)を発現するT細胞を、TCRによって認識される対応する抗原を主要組織適合遺伝子複合体上で提示している樹状細胞(DC)と共に同時培養することによって、T細胞の増殖は測定される。
【0226】
一態様において、前記のT細胞増殖の誘導または強化は抗原特異的アッセイ法によって判定される。この抗原特異的アッセイ法では、DCにクローディン-6抗原をトランスフェクトし、T細胞に、DC上のHLA-A2において提示されたクローディン-6由来エピトープを認識するTCRをトランスフェクトする。このアッセイ法を実施例7において説明する。
【0227】
本発明の二重特異性結合物質はヒト腫瘍組織のエクスビボ培養において腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の増大を媒介できる可能性がある。TILの増大は、1.5倍もしくはそれ以上、2倍もしくはそれ以上、3倍もしくはそれ以上、4倍もしくはそれ以上、5倍もしくはそれ以上、6倍もしくはそれ以上、7倍もしくはそれ以上、8倍もしくはそれ以上、9倍もしくはそれ以上、または10倍もしくはそれ以上になり得る。CD3-CD56+ナチュラルキラー(NK)細胞の増大は、少なくとも10倍、例えば、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、または例えば、少なくとも50倍になり得る。CD3+CD8+細胞障害性Tリンパ球(CTL)の増大は、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、または例えば、少なくとも7倍になり得る。好ましくは、TILの増大は、0.01μg/mL、0.1μg/mL、および1μg/mLに対応する濃度の二重特異性結合物質とのインキュベーションに応答した、例えば、0.1μg/mLに対応する濃度の二重特異性結合物質とのインキュベーションに応答したヒト非小細胞肺がん組織標本からのTILの増大として判定された。
【0228】
TILの増大は、
(i)腫瘍組織の切除標本、例えば、新鮮な切除標本を提供する工程、および造血細胞培地で標本を洗浄する工程、
(ii)腫瘍組織を、直径1~2mmの断片に切断する工程、および2つの腫瘍組織断片を含む試料を提供する工程、
(iii)10%ヒト血清アルブミン、抗生物質、およびProleukin(登録商標)S(組換えヒトIL-2類似体;SEQ ID NO:56)を含む造血細胞培地、例えば、Lonza(商標)X-VIVO(商標)15が入っている組織培養プレートウェルの中で、試料を、濃度0.1μg/mlの本発明の二重特異性結合物質と共に37℃、5%CO2で72時間インキュベートする工程であって、試料中に25個より多いTILマイクロクラスター(microcluster)が観察された場合に、前記試料中の細胞が6つの試料、または組織培養プレート中で6ウェルに分割および移動される、工程、
(iv)10~14日の全インキュベーション期間後にTILを収集する工程、およびヒトCD3、ヒトCD4、ヒトCD56、およびヒトCD8に対する標識された抗体と、非生細胞を染色する色素、例えばアミノアクチマイシンDとを用いてTILを染色に供する工程、ならびに
(v)各試料をフローサイトメトリーによって分析する工程
を含むアッセイ法において判定され得る。
【0229】
本発明の二重特異性結合物質は、特に、末梢血単核球(PBMC)集団の中でCD40+およびCD8+T細胞の増大を誘導することができる可能性があり、T細胞は、好ましくは、0.03~0.1μg/mLの濃度の、抗CD3抗体、例えば、クローンUCHT1)と共にインキュベートすることによって活性化され、例えば最適以下で活性化され、好ましくは、0.2μg/mLに対応する濃度の本発明による二重特異性結合物質と共にインキュベートされる。特に、T細胞増大を判定するための方法は、
(i)健常ドナーのバフィーコートから、例えば、Ficoll勾配を単離することでPBMCを得る工程、
(ii)PBMCを、PBSに溶解したカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)で標識する工程、
(iii)75000個のCFSE標識PBMCを含む試料を提供する工程、ならびにグルタミンを含み、ヒトAB血清を加えたIscove's Modified Dulbecco's Medium中で、前記試料を、抗CD3抗体、好ましくは、各ドナーに対して最適以下のT細胞増殖を誘導する濃度であると予め決定された0.03~0.1μg/mLの濃度の抗CD3抗体、および0.2μg/mLの濃度の本発明の二重特異性結合物質と共に37℃、5%CO2で4日間インキュベートする工程、
(iv)ヒトCD4、ヒトCD8、ヒトCD56に対する標識された抗体と、非生細胞を染色する色素、例えば、7-アミノアクチマイシンDとを用いてPBMCを染色に供する工程、ならびに
(v)試料中にある様々な亜集団(CD4+およびCD8+T細胞)のCSFEをフローサイトメトリーによって分析する工程
を含んでもよい。
【0230】
抗体型
前記のように、様々な抗体型が当技術分野において説明されている。本発明の結合物質は、原則的に、任意のアイソタイプの抗体でよい。アイソタイプの選択は、典型的には、望ましい、Fcを介したエフェクター機能、例えば、ADCC誘導、またはFcを介したエフェクター機能を欠く抗体(「不活性(inert)」抗体)に要求される要件によって左右される。例示的なアイソタイプはIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4である。ヒト軽鎖定常領域、κまたはλのいずれかが用いられ得る。本発明の抗体のエフェクター機能は、様々な治療的使用のためにアイソタイプスイッチ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、またはIgM抗体へのアイソタイプスイッチによって変えられてもよい。一態様において、本発明の抗体の両重鎖は、IgG1アイソタイプの重鎖、例えば、IgG1,κである。任意で、重鎖は、本明細書中の他の箇所に記載の通りにヒンジおよび/またはCH3領域において改変されてもよい。
【0231】
好ましくは、抗原結合領域のそれぞれは、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ前記可変領域はそれぞれ、3つのCDR配列、それぞれCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、4つのフレームワーク配列、それぞれFR1、FR2、FR3、およびFR4を含む。さらに、好ましくは、前記抗体は2つの重鎖定常領域(CH)と2つの軽鎖定常領域(CL)とを含む。
【0232】
本発明の一態様において、前記結合物質は、完全長抗体、例えば、完全長IgG1抗体である。別の態様において、前記抗体は、完全長IgG4抗体、好ましくは、安定化ヒンジ領域を有する完全長IgG4抗体である。IgG4ヒンジ領域を安定化する改変、例えば、コアヒンジにあるS228P変異が当技術分野において説明されている。例えば、Labrijn et al., 2009 Nat Biotechnol.27(8):767-71を参照されたい。
【0233】
本発明の他の態様において、前記結合物質は、抗体断片、例えば、Fab’またはFab断片、VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価断片、WO2007059782(Genmab)に記載の一価抗体、F(ab')2断片、Fd断片、Fv断片、dAb断片、キャメリドもしくはナノボディ、または単離された相補性決定領域(CDR)を含む。
【0234】
本発明の結合物質は、好ましくは、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である。前記抗体が二重特異性抗体である態様では、両方の半分子がヒトでもよく、ヒト化されていてもよく、キメラでもよい。または、半分子は、配列の起源について特徴が異なってもよい。
【0235】
例えば、一態様において、結合物質、例えば二重特異性抗体は、それぞれが抗原結合領域を含む2つの半分子を含み、
(i)ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む半分子はキメラであり、かつ/または
(ii)ヒトCD137に結合することができる抗原結合領域を含む半分子は、存在する場合にはキメラである。
【0236】
例えば、別の態様において、二重特異性抗体は、抗原結合領域をそれぞれが含む2つの半分子を含み、
(i)ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む半分子はヒト化されており、かつ/または
(ii)ヒトCD137に結合することができる抗原結合領域を含む半分子は、存在する場合にはヒト化されている。
【0237】
例えば、さらなる態様において、二重特異性抗体は、抗原結合領域をそれぞれが含む2つの半分子を含み、
(i)ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む半分子はヒトであり、かつ/または
(ii)ヒトCD137に結合することができる抗原結合領域を含む半分子は、存在する場合にはヒトである。
【0238】
従って、例えば、一態様では、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域はヒト化されており、ヒトCD137に結合することができる抗原結合領域は、存在する場合にはヒト化されている。
【0239】
本発明の異なる態様において、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域はヒトであり、ヒトCD137に結合することができる抗原結合領域は、存在する場合にはヒトである。
【0240】
さらなる態様において、前記結合物質は、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域およびヒトCD137に結合することができる抗原結合領域とを含む、二重特異性抗体であり、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む半分子は、ヒトであるか、ヒト化されているか、またはキメラであり、ヒトCD137に結合することができる抗原結合領域を含む半分子はヒト化されている。
【0241】
好ましくは、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む半分子はヒトであり、ヒトCD137に結合することができる抗原結合領域を含む半分子はヒト化されている。
【0242】
二重特異性抗体型
二重特異性抗体の多くの異なる型および使用が当技術分野において公知であり、Kontermann; Drug Discov Today, 2015 Jul;20(7):838-47およびMAbs, 2012 Mar-Apr;4(2):182-97によって概説された。
【0243】
本発明に従う二重特異性抗体は、任意の特定の二重特異性型または二重特異性型を生成する方法に限定されない。
【0244】
本発明において用いられ得る二重特異性抗体分子の例は、(i)異なる抗原結合領域を含む2つのアームを有する単一抗体;(ii)例えば、余分なペプチドリンカーによって直列に連結された2つのscFvを介して、2つの異なるエピトープに対する特異性を有する単鎖抗体;(iii)それぞれの軽鎖および重鎖が、短いペプチド結合を介して2つの可変ドメインを直列に含む、二重-可変-ドメイン抗体(DVD-Ig)(Wu et al., Generation and Characterization of a Dual Variable Domain Immunoglobulin (DVD-Ig(商標)) Molecule, In:Antibody Engineering, Springer Berlin Heidelberg(2010));(iv)化学的に連結された二重特異性(Fab')2断片;(v)2つの単鎖ダイアボディが融合して、標的抗原のそれぞれに対して2つの結合部位を有する四価二重特異性抗体となった、Tandab;(vi)scFvとダイアボディとが組み合わされて多価分子となった、フレキシボディ;(vii)プロテインキナーゼAにある「二量体化・ドッキングドメイン」に基づく、いわゆる「ドック・ロック(dock and lock)」分子。これをFabに適用すると、2つ同一のFab断片が異なる1つのFab断片と連結した三価二重特異性結合タンパク質を得ることができる;(viii)いわゆる、スコーピオン分子。例えば、2つのscFvがヒトFabアームの両末端と融合しているスコーピオン分子;ならびに(ix)ダイアボディを含む。
【0245】
本発明の一態様において、本発明の結合物質は、ダイアボディまたはクロスボディである。一態様において、本発明の結合物質は、制御されたFabアーム交換を介して得られた二重特異性抗体(例えば、WO2011131746(Genmab)に記載)である。
【0246】
本発明による結合物質の異なるクラスの例には、(i)ヘテロ二量体化を強制する相補的CH3ドメイン分子を有するIgG様分子;(ii)組換えIgG様二重標的化分子。この分子の両側はそれぞれ、少なくとも2つの異なる抗体のFab断片またはFab断片の一部を含む;(iii)完全長IgG抗体が余分なFab断片またはFab断片の一部と融合した、IgG融合分子;(iv)単鎖Fv分子または安定化ダイアボディが重鎖定常ドメイン、Fc領域、またはその一部と融合した、Fc融合分子;(v)異なるFab断片が一緒に融合し、重鎖定常ドメイン、Fc領域、またはその一部と融合した、Fab融合分子;ならびに(vi)異なる単鎖Fv分子または異なるダイアボディまたは異なる重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、ナノボディ)が互いに融合しているか、または重鎖定常ドメイン、Fc領域もしくはその一部と融合した別のタンパク質もしくは担体分子と融合している、ScFvベースおよびダイアボディベースの抗体および重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、ナノボディ)が含まれるが、これに限定されない。
【0247】
相補的CH3ドメイン分子を有するIgG様分子の例には、トリオマブ(Triomab)/ クアドロマ(Quadroma)分子(Trion Pharma/Fresenius Biotech; Roche, WO2011069104)、いわゆる、ノブイントゥホール(Knob-into-Hole)分子(Genentech, WO9850431)、CrossMAb(Roche, WO2011117329)および静電気的にマッチした分子(electrostatically-matched molecule)(Amgen, EP1870459およびWO2009089004; Chugai, US201000155133; Oncomed, WO2010129304)、LUZ-Y分子(Genentech, Wranik et al. J. Biol. Chem. 2012, 287(52): 43331-9, doi: 10.1074/jbc.M112.397869. Epub 2012 Nov 1)、DIG ボディおよびPIGボディ分子(Pharmabcine, WO2010134666, WO2014081202)、鎖交換操作ドメインボディ(Strand Exchange Engineered Domain body: SEEDbody)分子(EMD Serono, WO2007110205)、Biclonics分子(Merus, WO2013157953)、FcΔAdp分子(Regeneron, WO201015792)、二重特異性IgG1分子およびIgG2分子(Pfizer/Rinat, WO11143545)、Azymetricスキャフォールド分子(Zymeworks/Merck, WO2012058768)、mAb-Fv分子(Xencor, WO2011028952)、二価二重特異性抗体(WO2009080254)、ならびにデュオボディ(DuoBody)(登録商標)分子(Genmab, WO2011131746)が含まれるが、これに限定されない。
【0248】
組換えIgG様二重標的化分子の例には、二重標的化(Dual Targeting)(DT)-Ig分子(WO2009058383)、トゥーインワン抗体(Two-in-one Antibody)(Genentech; Bostrom, et al 2009. Science 323, 1610-1614.)、クロスリンクドMab (Cross-linked Mab)(Karmanos Cancer Center)、mAb2(F-Star, WO2008003116)、Zybody分子(Zyngenia; LaFleur et al. MAbs. 2013 Mar-Apr;5(2):208-18)、共通軽鎖を用いるアプローチ(Crucell/Merus, US7,262,028)、κλボディ(NovImmune, WO2012023053)、およびCovXボディ(CovX/Pfizer; Doppalapudi, V.R., et al 2007. Bioorg. Med. Chem. Lett. 17,501-506.)が含まれるが、これに限定されない。
【0249】
IgG融合分子の例には、二重可変ドメイン(Dual Variable Domain)(DVD)-Ig分子(Abbott, US7,612,181)、デュアルドメインダブルヘッド(Dual domain double head)抗体(Unilever; Sanofi Aventis, WO20100226923)、IgG様二重特異性分子(ImClone/Eli Lilly, Lewis et al. Nat Biotechnol. 2014 Feb;32(2):191-8)、Ts2Ab(MedImmune/AZ; Dimasi et al.J Mol Biol. 2009 Oct 30;393(3):672-92)、およびBsAb分子(Zymogenetics, WO2010111625)、ヘラクレス(HERCULES)分子(Biogen Idec, US007951918)、scFv融合分子(Novartis)、scFv融合分子(Changzhou Adam Biotech Inc, CN 102250246)、およびTvAb分子(Roche, WO2012025525, WO2012025530)が含まれるが、これに限定されない。
【0250】
Fc融合分子の例には、ScFv/Fc融合(Pearce et al., Biochem Mol Biol Int. 1997 Sep;42(6):1179-88)、スコーピオン分子(Emergent BioSolutions/Trubion, Blankenship JW, et al. AACR 100th Annual meeting 2009 (Abstract # 5465); Zymogenetics/BMS, WO2010111625)、デュアルアフィニティリターゲティングテクノロジー(Dual Affinity Retargeting Technology)(Fc-DART)分子(MacroGenics, WO2008157379, WO2010080538)、およびデュアル(ScFv)2-Fab分子(National Research Center for Antibody Medicine-China)が含まれるが、これに限定されない。
【0251】
Fab融合二重特異性抗体の例には、F(ab)2分子(Medarex/AMGEN; Deo et al J Immunol. 1998 Feb 15;160(4):1677-86.)、デュアルアクション(Dual-Action)またはBis-Fab分子(Genentech, Bostrom, et al 2009. Science 323, 1610-1614.)、ドックアンドロック(Dock-and-Lock)(DNL)分子(ImmunoMedics, WO2003074569, WO2005004809)、二価二重特異性分子(Biotecnol, Schoonjans, J Immunol. 2000 Dec 15;165(12):7050-7.)、およびFab-Fv分子(UCB-Celltech, WO2009040562A1)が含まれるが、これに限定されない。
【0252】
ScFv抗体、ダイアボディベースの抗体、およびドメイン抗体の例には、二重特異性T細胞エンゲージャー(Bispecific T Cell Engager)(BiTE)分子(Micromet, WO2005061547)、タンデムダイアボディ分子(TandAb)(Affimed) Le Gall et al., Protein Eng Des Sel. 2004 Apr;17(4):357-66.)、デュアルアフィニティリターゲティングテクノロジー(DART)分子(MacroGenics, WO2008157379, WO2010080538)、単鎖ダイアボディ分子(Lawrence, FEBS Lett. 1998 Apr 3;425(3):479-84)、TCR様抗体(AIT, ReceptorLogics)、ヒト血清アルブミンScFv融合(Human Serum Albumin ScFv Fusion)(Merrimack, WO2010059315)、およびコムボディ(COMBODY)分子(Epigen Biotech, Zhu et al. Immunol Cell Biol. 2010 Aug;88(6):667-75.)、二重標的化分子(Ablynx, Hmila et al., FASEB J. 2010)、ならびに二重標的化重鎖のみのドメイン抗体(dual targeting heavy chain only domain antibody)が含まれるが、これに限定されない。
【0253】
一局面において、本発明の二重特異性抗体は、第1のCH3領域を含む第1のFc配列、および第2のCH3領域を含む第2のFc配列を含み、第1のCH3領域および第2のCH3領域の配列は異なり、かつ前記第1のCH3領域と第2のCH3領域との間のヘテロ二量体相互作用が前記第1のCH3領域および第2のCH3領域のホモ二量体相互作用のそれぞれより強くなるような配列である。これらの相互作用、およびこれらの相互作用をどうやって実現できるかについてのさらに詳しい内容は、参照により本明細書に組み入れられるWO2011131746およびWO2013060867(Genmab)に示される。
【0254】
本明細書においてさらに説明されるように、安定した二重特異性抗体PD-L1×CD137抗体は、CH3領域にごく少数の保存的非対称変異を含有し、1種類のホモ二量体出発PD-L1抗体と、1種類のホモ二量体出発CD137抗体とをベースにした特定の方法を用いて高収率で得ることができる。非対称変異とは、前記第1のCH3領域および第2のCH3領域の配列が、同一でない位置にアミノ酸置換を含有することを意味する。
【0255】
一態様において、本明細書において開示される任意の態様において定義された本発明の二重特異性抗体は、ヒトIgG1重鎖中の366、368、370、399、405、407、および409からなる群より選択される位置においてアミノ酸置換を有する第1のCH3領域、ならびに、ヒトIgG1重鎖中の366、368、370、399、405、407、および409からなる群より選択される位置においてアミノ酸置換を有する第2のCH3領域を含み、かつ第1のCH3領域および第2のCH3領域は同じ位置において置換されていない。
【0256】
一態様において、本明細書において開示される任意の態様において定義された本発明の二重特異性抗体は、ヒトIgG1重鎖中の位置366にアミノ酸置換を有する第1のCH3領域、ならびに、ヒトIgG1重鎖中の368、370、399、405、407、および409からなる群より選択される位置においてアミノ酸置換を有する第2のCH3領域を含む。一態様において、ヒトIgG1重鎖中の位置366にあるアミノ酸は、Ala、Asp、Glu、His、Asn、Val、またはGlnより選択される。
【0257】
一態様において、本明細書において開示される任意の態様において定義された本発明の二重特異性抗体は、ヒトIgG1重鎖中の位置368にアミノ酸置換を有する第1のCH3領域、ならびに、ヒトIgG1重鎖中の366、370、399、405、407、および409からなる群より選択される位置においてアミノ酸置換を有する第2のCH3領域を含む。
【0258】
一態様において、本明細書において開示される任意の態様において定義された本発明の二重特異性抗体は、ヒトIgG1重鎖中の位置370にアミノ酸置換を有する第1のCH3領域、ならびに、ヒトIgG1重鎖中の366、368、399、405、407、および409からなる群より選択される位置においてアミノ酸置換を有する第2のCH3領域を含む。
【0259】
一態様において、本明細書において開示される任意の態様において定義された本発明の二重特異性抗体は、ヒトIgG1重鎖中の位置399にアミノ酸置換を有する第1のCH3領域、ならびに、ヒトIgG1重鎖中の366、368、370、405、407、および409からなる群より選択される位置においてアミノ酸置換を有する第2のCH3領域を含む。
【0260】
一態様において、本明細書において開示される任意の態様において定義された本発明の二重特異性抗体は、ヒトIgG1重鎖中の位置405にアミノ酸置換を有する第1のCH3領域、ならびに、ヒトIgG1重鎖中の366、368、370、399、407、および409からなる群より選択される位置においてアミノ酸置換を有する第2のCH3領域を含む。
【0261】
一態様において、本明細書において開示される任意の態様において定義された本発明の二重特異性抗体は、ヒトIgG1重鎖中の位置407にアミノ酸置換を有する第1のCH3領域、ならびに、ヒトIgG1重鎖中の366、368、370、399、405、および409からなる群より選択される位置においてアミノ酸置換を有する第2のCH3領域を含む。
【0262】
一態様において、本明細書において開示される任意の態様において定義された本発明の二重特異性抗体は、ヒトIgG1重鎖中の位置409にアミノ酸置換を有する第1のCH3領域、ならびに、ヒトIgG1重鎖中の366、368、370、399、405、および407からなる群より選択される位置においてアミノ酸置換を有する第2のCH3領域を含む。
【0263】
従って、一態様において、本明細書において開示される任意の態様において定義された本発明の二重特異性抗体は、非対称変異、すなわち、2つのCH3領域の異なる位置にある変異、例えば、一方のCH3領域において位置405に変異、他方のCH3領域において位置409に変異を含有する、第1のCH3領域および第2のCH3領域の配列を含む。
【0264】
一態様において、本発明の二重特異性抗体は本明細書において開示される任意の態様において定義され、第1のCH3領域は、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有し、前記第2のCH3領域は、位置366、368、370、399、405、および407からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有する。1つのこのような態様において、前記第1のCH3領域は、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有し、前記第2のCH3領域は、位置405に、Phe以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Lys、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、Cys、Lys、またはLeuを有する。そのさらなる態様において、前記第1のCH3領域は、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有し、前記第2のCH3領域は、位置405に、Phe、Arg、またはGly以外のアミノ酸、例えば、Leu、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Met、Lys、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有する。
【0265】
別の態様において、本発明の二重特異性抗体は本明細書において開示される任意の態様において定義され、前記第1のCH3領域は位置405にPheを含み、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを含み、前記第2のCH3領域は位置405に、Phe以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Lys、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、Leu、Met、またはCysを含み、位置409にLysを含む。そのさらなる態様において、前記第1のCH3領域は位置405にPheを含み、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを含み、前記第2のCH3領域は、位置405に、Phe、Arg、またはGly以外のアミノ酸、例えば、Leu、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Met、Lys、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを含み、位置409にLysを含む。
【0266】
別の態様において、本発明の二重特異性抗体は本明細書において開示される任意の態様において定義され、前記第1のCH3領域は位置405にPheを含み、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを含み、前記第2のCH3領域は、位置405にLeuを含み、位置409にLysを含む。そのさらなる態様において、前記第1のCH3領域は位置405にPheを含み、位置409にArgを含み、前記第2のCH3領域は、位置405に、Phe、Arg、またはGly以外のアミノ酸、例えば、Leu、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Lys、Met、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを含み、位置409にLysを含む。別の態様において、前記第1のCH3領域は位置405にPheを含み、位置409にArgを含み、前記第2のCH3領域は位置405にLeuを含み、位置409にLysを含む。
【0267】
さらなる態様において、本発明の二重特異性抗体は本明細書において開示される任意の態様において定義され、前記第1のCH3領域は、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを含み、前記第2のCH3領域は位置409にLysを含み、位置370にThrを含み、位置405にLeuを含む。さらなる態様において、前記第1のCH3領域は位置409にArgを含み、前記第2のCH3領域は位置409にLysを含み、位置370にThrを含み、位置405にLeuを含む。
【0268】
なおさらなる態様において、本発明の二重特異性抗体は本明細書において開示される任意の態様において定義され、前記第1のCH3領域は位置370にLys、位置405にPhe、位置409にArgを含み、前記第2のCH3領域は位置409にLys、位置370にThr、位置405にLeuを含む。
【0269】
別の態様において、本発明の二重特異性抗体は本明細書において開示される任意の態様において定義され、前記第1のCH3領域は、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを含み、前記第2のCH3領域は位置409にLysを含み、(a)位置350にIle、位置405にLeuを含むか、または(b)位置370にThr、位置405にLeuを含む。
【0270】
別の態様において、本発明の二重特異性抗体は本明細書において開示される任意の態様において定義され、前記第1のCH3領域は位置409にArgを含み、前記第2のCH3領域は位置409にLysを含み、(a)位置350にIle、位置405にLeuを含むか、または(b)位置370にThr、位置405にLeuを含む。
【0271】
別の態様において、本発明の二重特異性抗体は本明細書において開示される任意の態様において定義され、前記第1のCH3領域は位置350にThrを含み、位置370にLysを含み、位置405にPheを含み、位置409にArgを含み、前記第2のCH3領域は位置409にLysを含み、(a)位置350にIle、位置405にLeuを含むか、または(b)位置370にThr、位置405にLeuを含む。
【0272】
別の態様において、本発明の二重特異性抗体は本明細書において開示される任意の態様において定義され、前記第1のCH3領域は位置350にThrを含み、位置370にLysを含み、位置405にPheを含み、位置409にArgを含み、前記第2のCH3領域は、位置350にIleを含み、位置370にThrを含み、位置405にLeuを含み、位置409にLysを含む。
【0273】
一態様において、本発明の二重特異性抗体は本明細書において開示される任意の態様において定義され、前記第1のCH3領域は、位置409にLys、Leu、もしくはMet以外のアミノ酸を有し、前記第2のCH3領域は、位置405にPhe以外のアミノ酸を有し、例えば、位置405にPhe、Arg、もしくはGly以外のアミノ酸を有するか、または前記第1のCH3領域は位置409にLys、Leu、もしくはMet以外のアミノ酸を有し、前記第2のCH3領域は、位置407にTyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、Ser、もしくはThr以外のアミノ酸を有する。
【0274】
一態様において、本明細書において開示される任意の態様において定義された本発明の二重特異性抗体は、位置409にLys、Leu、またはMet以外のアミノ酸を有する第1のCH3領域、および、位置407にTyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、Ser、もしくはThr以外のアミノ酸を有する第2のCH3領域を含む。
【0275】
一態様において、本明細書において開示される任意の態様において定義された本発明の二重特異性抗体は、位置407にTyrを有しかつ位置409にLys、Leu、またはMet以外のアミノ酸を有する、第1のCH3領域、および、位置407にTyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、Ser、もしくはThr以外のアミノ酸を有しかつ位置409にLysを有する、第2のCH3領域を含む。
【0276】
本発明の一態様において、本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体は、位置407にTyrを有しかつ位置409にArgを有する、第1のCH3領域、および、位置407にTyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、Ser、もしくはThr以外のアミノ酸を有しかつ位置409にLysを有する、第2のCH3領域を含む。
【0277】
本発明の別の態様において、前記第1のCH3領域は、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有し、前記第2のCH3領域は、位置407に、Tyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、Ser、またはThr以外のアミノ酸、例えば、Leu、Met、Gly、Ala、Val、Ile、His、Asn、Pro、Trp、またはCysを有する。本発明の別の態様において、前記第1のCH3領域は、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有し、前記第2のCH3領域は、位置407に、Ala、Gly、His、Ile、Leu、Met、Asn、Val、またはTrpを有する。
【0278】
別の態様において、本発明の二重特異性抗体は本明細書において開示される任意の態様において定義され、前記第1のCH3領域は、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有し、前記第2のCH3領域は位置407にGly、Leu、Met、Asn、またはTrpを有する。
【0279】
別の態様において、本発明の二重特異性抗体は本明細書において開示される任意の態様において定義され、前記第1のCH3領域は位置407にTyrを有し、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有し、前記第2のCH3領域は、位置407に、Tyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、Ser、またはThr以外のアミノ酸、例えば、Leu、Met、Gly、Ala、Val、Ile、His、Asn、Pro、Trp、またはCysを有し、位置409にLysを有する。
【0280】
別の態様において、本発明の二重特異性抗体は本明細書において開示される任意の態様において定義され、前記第1のCH3領域は位置407にTyrを有し、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有し、前記第2のCH3領域は位置407にAla、Gly、His、Ile、Leu、Met、Asn、Val、またはTrpを有し、位置409にLysを有する。
【0281】
別の態様において、本発明の二重特異性抗体は本明細書において開示される任意の態様において定義され、前記第1のCH3領域は位置407にTyrを有し、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有し、前記第2のCH3領域は、位置407にGly、Leu、Met、Asn、またはTrpを有し、409にLysを有する。
【0282】
別の態様において、本発明の二重特異性抗体は本明細書において開示される任意の態様において定義され、前記第1のCH3領域は位置407にTyrを有し、位置409にArgを有し、前記第2のCH3領域は、位置407に、Tyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、Ser、またはThr以外のアミノ酸、例えば、Leu、Met、Gly、Ala、Val、Ile、His、Asn、Pro、Trp、またはCysを有し、位置409にLysを有する。
【0283】
別の態様において、本発明の二重特異性抗体は本明細書において開示される任意の態様において定義され、前記第1のCH3領域は位置407にTyrを有し、位置409にArgを有し、前記第2のCH3領域は、位置407にAla、Gly、His、Ile、Leu、Met、Asn、Val、またはTrpを有し、位置409にLysを有する。
【0284】
別の態様において、本発明の二重特異性抗体は本明細書において開示される任意の態様において定義され、前記第1のCH3領域は位置407にTyrを有し、位置409にArgを有し、前記第2のCH3領域は、位置407にGly、Leu、Met、Asn、またはTrpを有し、位置409にLysを有する。
【0285】
別の態様において、本発明の二重特異性抗体は本明細書において開示される任意の態様において定義され、第1のCH3領域は、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有し、第2のCH3領域は、
(i)位置368に、Phe、Leu、およびMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Lys、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、もしくはCysを有するか、または
(ii)位置370にTrpを有するか、または
(iii)位置399にAsp、Cys、Pro、Glu、もしくはGln以外のアミノ酸、例えば、Phe、Leu、Met、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Lys、Arg、His、Asn、Trp、Tyr、もしくはCysを有するか、または
(iv)位置366に、Lys、Arg、Ser、Thr、もしくはTrp以外のアミノ酸、例えば、Phe、Leu、Met、Ala、Val、Gly、Ile、Asn、His、Asp、Glu、Gln、Pro、Tyr、もしくはCysを有する。
【0286】
一態様において、第1のCH3領域は位置409にArg、Ala、His、またはGlyを有し、第2のCH3領域は、
(i)位置368に、Lys、Gln、Ala、Asp、Glu、Gly、His、Ile、Asn、Arg、Ser、Thr、Val、もしくはTrpを有するか、または
(ii)位置370にTrpを有するか、または
(iii)位置399に、Ala、Gly、Ile、Leu、Met、Asn、Ser、Thr、Trp、Phe、His、Lys、Arg、もしくはTyrを有するか、または
(iv)位置366に、Ala、Asp、Glu、His、Asn、Val、Gln、Phe、Gly、Ile、Leu、Met、もしくはTyrを有する。
【0287】
一態様において、第1のCH3領域は位置409にArgを有し、第2のCH3領域は、
(i)位置368に、Asp、Glu、Gly、Asn、Arg、Ser、Thr、Val、もしくはTrpを有するか、または
(ii)位置370にTrpを有するか、または
(iii)位置399に、Phe、His、Lys、Arg、もしくはTyrを有するか、または
(iv)位置366に、Ala、Asp、Glu、His、Asn、Val、Glnを有する。
【0288】
本発明の好ましい態様において、二重特異性抗体は第1の重鎖および第2の重鎖を含み、前記第1の重鎖および第2の重鎖のそれぞれは、少なくとも、ヒンジ領域、CH2、およびCH3領域を含み、(i)前記第1の重鎖において、ヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置にあるアミノ酸はLであり、かつ、前記第2の重鎖において、ヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置にあるアミノ酸はRであるか、または(ii)第1の重鎖において、ヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置にあるアミノ酸はRであり、かつ、第2の重鎖において、ヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置にあるアミノ酸はLである。
【0289】
前記のアミノ酸置換に加えて、前記第1の重鎖および第2の重鎖は、野生型重鎖配列と比べてアミノ酸置換、欠失、または挿入をさらに含有してもよい。
【0290】
本発明の一態様において、前記第1のFc配列も前記第2のFc配列も(コア)ヒンジ領域にCys-Pro-Ser-Cys配列を含まない。
【0291】
本発明のさらなる態様において、前記第1のFc配列および前記第2のFc配列は両方とも(コア)ヒンジ領域にCys-Pro-Pro-Cys配列を含む。
【0292】
二重特異性抗体を調製する方法
本発明の二重特異性抗体の調製では、ハイブリッドハイブリドーマおよび化学結合法(Marvin and Zhu (2005) Acta Pharmacol Sin 26:649)などの従来法を使用することができる。異なる重鎖および軽鎖からなる2種類の抗体を宿主細胞において同時発現させると、望ましい二重特異性抗体の他に、可能性のある抗体産物の混合物が生じる。次いで、望ましい二重特異性抗体を、例えば、アフィニティクロマトグラフィーまたは同様の方法によって単離することができる。
【0293】
異なる抗体構築物が同時発現された場合に、機能的な二重特異性産物の形成に有利に働く戦略、例えば、Lindhofer et al. (1995 J Immunol 155:219)に記載の方法も使用することができる。異なる抗体を産生するラットハイブリドーマとマウスハイブリドーマを融合すると、種に限定された優先的な重鎖/軽鎖対形成のために、限られた数のヘテロ二量体タンパク質が生じる。ホモ二量体を上回ってヘテロ二量体形成を促進する別の戦略が「ノブイントゥホール」戦略である。この戦略では、ヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二量体形成を妨げる目的で、突起が第1の重鎖ポリペプチド上に、対応する空洞が第2の重鎖ポリペプチドに、これらの2本の重鎖の境界面にある空洞内に突起を配置できるように導入される。「突起」は、第1のポリペプチドの境界面に由来する小さいアミノ酸側鎖を、さらに大きい側鎖と交換することによって構築される。突起と同一または類似のサイズの、埋め合わせとなる「空洞」は、大きいアミノ酸側鎖を小さいアミノ酸側鎖と交換することによって第2のポリペプチドの境界面に作り出される(米国特許第5,731,168号)。EP1870459(Chugai)およびWO2009089004(Amgen)は、宿主細胞における異なる抗体ドメインが同時発現された場合にヘテロ二量体形成に有利に働く他の戦略について説明している。これらの方法では、ホモ二量体形成が静電気的に不利であり、ヘテロ二量体化が静電気的に有利になるように、両CH3ドメインにあるCH3-CH3境界面を構成する1つまたは複数の残基が荷電アミノ酸と交換される。WO2007110205(Merck)は、ヘテロ二量体化を促進するためにIgAとIgG CH3ドメインとの間の相違点が利用される、さらに別の戦略について説明している。
【0294】
二重特異性抗体を産生するための別のインビトロ方法はWO2008119353(Genmab)に記載されており、ここでは、二重特異性抗体は、還元条件下でインキュベートされた場合の2種類の単一特異性IgG4抗体間またはIgG4様抗体間での「Fabアーム」交換または「半分子」交換(重鎖と、取り付けられている軽鎖の入れ替え)によって形成される。結果として生じた産物は、異なる配列を含み得る2つのFabアームを有する二重特異性抗体である。
【0295】
二重特異性PD-L1×CD137抗体を調製するための好ましい方法は、
(a)Fc領域を含む第1の抗体を提供する工程であって、前記Fc領域が第1のCH3領域を含む、工程;
(b)第2のFc領域を含む第2の抗体を提供する工程であって、前記Fc領域が第2のCH3領域を含み、第1の抗体が、CD137抗体であり、第2の抗体が、PD-L1抗体であるか、または逆も同じであり、前記第1のCH3領域および第2のCH3領域の配列が異なり、かつ前記第1のCH3領域と第2のCH3領域との間のヘテロ二量体相互作用が前記第1のCH3領域および第2のCH3領域のホモ二量体相互作用のそれぞれより強くなるような配列である、工程;
(c)還元条件下で、前記第1の抗体を前記第2の抗体と一緒にインキュベートする工程;ならびに
(d)前記二重特異性PD-L1×CD137抗体を得る工程
を含む、WO2011131746およびWO2013060867(Genmab)に記載の方法を含む。
【0296】
同様に、
(a)本明細書において定義されたヒトCD137に結合することができる抗原結合領域を含む第1の抗体を産生する宿主細胞を培養し、かつ培養物から前記第1の抗体を精製する工程;
(b)本明細書において定義されたヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む第2の抗体を産生する宿主細胞を培養し、培養物から前記第2の抗体を精製する工程;
(c)ヒンジ領域におけるシステインがジスルフィド結合異性化を受けることを可能にするのに十分な還元条件下で、前記第1の抗体を前記第2の抗体と一緒にインキュベートする工程;ならびに
(d)前記二重特異性抗体を得る工程
を含む、本発明による抗体を産生するための方法が提供される。
【0297】
本発明の一態様において、前記第1の抗体と前記第2の抗体は、ヒンジ領域におけるシステインがジスルフィド結合異性化を受けることを可能にするのに十分な還元条件下でインキュベートされ、結果として生じたヘテロ二量体抗体における前記第1の抗体と第2の抗体との間のヘテロ二量体相互作用は、0.5mM GSHで、37℃で24時間後にFabアーム交換が起こらないようなヘテロ二量体相互作用である。
【0298】
理論に限定されないが、工程(c)では、親抗体のヒンジ領域における重鎖ジスルフィド結合は還元され、次いで、結果として生じたシステインは、(初めから、異なる特異性を有する)別の親抗体分子のシステイン残基と重鎖間ジスルフィド結合を形成することができる。この方法の一態様において、工程(c)における還元条件は、還元剤、例えば、2-メルカプトエチルアミン(2-MEA)、ジチオスレイトール(DTT)、ジチオエリスリトール(DTE)、グルタチオン、tris(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、L-システイン、およびβ-メルカプト-エタノールからなる群より選択される還元剤、好ましくは、2-メルカプトエチルアミン、ジチオスレイトール、およびtris(2-カルボキシエチル)ホスフィンからなる群より選択される還元剤の添加を含む。さらなる態様において、工程(c)は、例えば、還元剤を除去することで、例えば、脱塩することで、条件を非還元条件または弱還元(less reducing)条件に回復させることを含む。
【0299】
この方法のために、前記のCD137抗体およびPD-L1抗体のいずれかを、それぞれ、第1のFc領域および/または第2のFc領域を含む、第1および第2のCD137抗体およびPD-L1抗体を含めて使用することができる。このような第1のFc領域および第2のFc領域の例は、このような第1のFc領域および第2のFc領域の組み合わせを含めて、前記の任意のものを含んでよい。特定の態様において、第1および第2のCD137抗体およびPD-L1抗体はそれぞれ、本明細書に記載の通りに二重特異性抗体を得るように選択されてもよい。
【0300】
この方法の一態様において、前記第1の抗体および/または第2の抗体は完全長抗体である。
【0301】
第1の抗体および第2の抗体のFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4を含むが、これに限定されない任意のアイソタイプのものでよい。この方法の一態様において、前記第1の抗体および前記第2の抗体両方のFc領域はIgG1アイソタイプのFc領域である。別の態様において、前記抗体のFc領域の一方はIgG1アイソタイプのFc領域であり、他方はIgG4アイソタイプのFc領域である。後者の態様では、結果として生じた二重特異性抗体はIgG1のFc配列とIgG4のFc配列を含み、従って、エフェクター機能の活性化に関して興味深い中間特性を有する可能性がある。
【0302】
さらなる態様において、抗体出発タンパク質の1つは、プロテインAに結合しないように操作されており、従って、産物をプロテインAカラム上に通過させることで前記ホモ二量体出発タンパク質からヘテロ二量体タンパク質を分離することが可能になる。
【0303】
前記のように、ホモ二量体出発抗体の第1のCH3領域および第2のCH3領域の配列は異なり、かつ前記第1のCH3領域と第2のCH3領域との間のヘテロ二量体相互作用が前記第1のCH3領域および第2のCH3領域のホモ二量体相互作用のそれぞれより強くなるような配列である。これらの相互作用、およびこれらの相互作用をどうやって成し遂げるかについてのさらに詳しい内容は、WO2011131746およびWO2013060867(Genmab)に示される。WO2011131746およびWO2013060867(Genmab)は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0304】
特に、安定した二重特異性PD-L1×CD137抗体は、CD137およびPD-L1にそれぞれ結合する2種類のホモ二量体出発抗体をベースにして本発明の上記の方法を用いて高収率で得ることができ、CH3領域にごく少数の保存的非対称変異を含有する。非対称変異とは、前記第1のCH3領域および第2のCH3領域の配列が、同一でない位置にアミノ酸置換を含有することを意味する。
【0305】
本発明の二重特異性抗体はまた、単一細胞において第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドをコードする構築物を同時発現させることによって得られてもよい。従って、さらなる局面において、本発明は、
(a)第1の抗体重鎖の第1のFc配列および第1の抗原結合領域を含む第1のポリペプチドをコードする第1の核酸構築物を提供する工程であって、前記第1のFc配列が第1のCH3領域を含む、工程、
(b)第2の抗体重鎖の第2のFc配列および第2の抗原結合領域を含む第2のポリペプチドをコードする第2の核酸構築物を提供する工程であって、前記第2のFc配列が第2のCH3領域を含み、
前記第1のCH3領域および第2のCH3領域の配列が異なり、かつ前記第1のCH3領域と第2のCH3領域との間のヘテロ二量体相互作用が前記第1のCH3領域および第2のCH3領域のホモ二量体相互作用のそれぞれより強くなるような配列であり、前記第1のホモ二量体タンパク質が位置409にLys、Leu、またはMet以外のアミノ酸を有し、前記第2のホモ二量体タンパク質が、位置366、368、370、399、405、および407からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有し、
任意で、前記第1の核酸構築物および第2の核酸構築物が、前記第1の抗体および第2の抗体の軽鎖配列をコードする、工程、
(c)前記第1の核酸構築物および第2の核酸構築物を宿主細胞において同時発現させる工程、ならびに
(d)細胞培養物から前記ヘテロ二量体タンパク質を得る工程
を含む、二重特異性抗体を産生するための方法に関する。
【0306】
本発明の抗体を産生するための材料および方法
さらなる局面において、本発明は、本発明による抗体の組換え産生のための材料および方法に関する。プロモーター、エンハンサーなどを含む適切な発現ベクター、および抗体を産生するための適切な宿主細胞が当技術分野において周知である。
【0307】
従って、一局面において、
(i)本明細書において定義された、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体の重鎖配列をコードする核酸配列、および/または
(ii)本明細書において定義された、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体の軽鎖配列をコードする核酸配列
を含む、核酸構築物が提供される。
【0308】
一態様において、前記核酸構築物は、
(i)本明細書において定義された、ヒトCD137に結合することができる抗原結合領域を含む抗体の重鎖配列をコードする核酸配列、および
(ii)本明細書において定義された、ヒトCD137に結合することができる抗原結合領域を含む抗体の軽鎖配列をコードする核酸配列
をさらに含む。
【0309】
なおさらなる局面において、本発明は、本明細書において上記で定義された核酸構築物を含む、発現ベクターに関する。
【0310】
別の局面において、本発明は、本明細書に記載の任意の局面または態様に記載の結合物質またはそのポリペプチド鎖をコードする、核酸に関する。別の局面において、本発明は、核酸を含む発現ベクターに関する。
【0311】
本発明の文脈において発現ベクターは、染色体核酸ベクター、非染色体核酸ベクター、および合成核酸ベクター(適切な一組の発現制御エレメントを含む核酸配列)を含む任意の適切なベクターでよい。このようなベクターの例には、SV40の誘導体、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドおよびファージDNAの組み合わせに由来するベクター、ならびにウイルス核酸(RNAまたはDNA)ベクターが含まれる。一態様において、PD-L1抗体コード核酸またはCD137抗体コード核酸は、例えば、直鎖発現エレメントを含む、裸のDNAベクターもしくはRNAベクター(例えば、Sykes and Johnston, Nat Biotech 17, 355-59(1997)に記載)、圧縮された核酸ベクター(例えば、US6,077,835および/もしくはWO00/70087に記載)、プラスミドベクター、例えば、pBR322、pUC19/18、もしくはpUC118/119、「midge」最小サイズ核酸ベクター(例えば、Schakowski et al., Mol Ther 3, 793-800(2001)に記載)、または沈殿された核酸ベクター構築物、例えば、Ca3(P04)2によって沈殿された構築物(例えば、WO200046147、Benvenisty and Reshef, PNAS USA 83, 9551-55(1986)、Wigler et al., Cell 14, 725(1978)、およびCoraro and Pearson, Somatic Cell Genetics 7, 603(1981)に記載)の中に含まれる。このような核酸ベクターおよびその利用は当技術分野において周知である(例えば、US5,589,466およびUS5,973,972を参照されたい)。
【0312】
一態様において、前記ベクターは、細菌細胞におけるPD-L1抗体および/またはCD137抗体の発現に適している。このようなベクターの例には、発現ベクター、例えば、BlueScript(Stratagene)、pINベクター(Van Heeke & Schuster, J Biol Chem 264, 5503-5509(1989)、pETベクター(Novagen, Madison WI)など)が含まれる。
【0313】
発現ベクターは同様にまたは代わりに、酵母システムにおける発現に適したベクターでもよい。酵母システムにおける発現に適した任意のベクターを使用することができる。適切なベクターには、例えば、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーター、例えば、α因子、アルコールオキシダーゼ、およびPGHを含むベクターが含まれる(F. Ausubel et al., ed. Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley InterScience New York(1987)、およびGrant et al., Methods in Enzymol 153, 516-544(1987)に概説)。
【0314】
発現ベクターは同様にまたは代わりに、哺乳動物細胞における発現に適したベクター、例えば、選択マーカーとしてグルタミン合成酵素を含むベクター、例えば、Bebbington(1992) Biotechnology(NY)10:169-175に記載のベクターでもよい。
【0315】
核酸および/またはベクターはまた、分泌配列/局在化配列をコードする核酸配列も含んでよい。分泌配列/局在化配列は、ポリペプチド、例えば、新生ポリペプチド鎖を細胞周辺腔に、または細胞培地中に標的化することができる。このような配列は当技術分野において公知であり、分泌リーダーまたはシグナルペプチドを含む。
【0316】
発現ベクターは、任意の適切なプロモーター、エンハンサー、および他の発現促進エレメントを含んでもよく、これらと結合してもよい。このようなエレメントの例には、強発現プロモーター(例えば、ヒトCMV IEプロモーター/エンハンサーならびにRSV、SV40、SL3-3、MMTV、およびHIV LTRプロモーター)、有効なポリ(A)終結配列、大腸菌(E. coli)におけるプラスミド産物用の複製起点、選択マーカーとしての抗生物質耐性遺伝子、ならびに/または便利なクローニングサイト(例えば、ポリリンカー)が含まれる。核酸はまた、構成的プロモーターと相対する誘導性プロモーター、例えば、CMV IEも含んでよい。
【0317】
一態様において、PD-L1抗体コード発現ベクターおよび/またはCD137抗体コード発現ベクターは、ウイルスベクターを介して、宿主細胞中もしくは宿主動物中に配置されてもよく、および/または宿主細胞もしくは宿主動物に送達されてもよい。
【0318】
なおさらなる局面において、本発明は、本明細書において上記で指定された核酸構築物または発現ベクターの1つまたは複数を含む、宿主細胞に関する。
【0319】
従って、本発明はまた、本発明の抗体を産生する、組換え真核生物宿主細胞または原核生物宿主細胞、例えば、トランスフェクトーマにも関する。
【0320】
宿主細胞の例には、酵母、細菌細胞、植物細胞、および哺乳動物細胞、例えば、CHO、CHO-S、HEK、HEK293、HEK-293F、Expi293F、PER.C6、もしくはNS0細胞、またはリンパ球細胞が含まれる。好ましい宿主細胞はCHO-K1細胞である。
【0321】
本発明の一態様において、細胞は、哺乳動物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞である。
【0322】
例えば、一態様において、宿主細胞は、細胞ゲノムに安定に組み込まれた第1の核酸構築物および第2の核酸構築物を含んでもよい。別の態様において、本発明は、上記で指定した第1の核酸構築物および第2の核酸構築物を含む、非組み込み型核酸、例えば、プラスミド、コスミド、ファージミド、または直鎖発現エレメントを含む、細胞を提供する。
【0323】
さらなる局面において、本発明は、本明細書において定義されたPD-L1抗体を産生するハイブリドーマに関する。
【0324】
Fc領域
本発明の一部の態様において、本発明による結合物質は、抗原結合領域に加えて、2つの重鎖のFc配列からなるFc領域を含む。
【0325】
第1のFc配列および第2のFc配列はそれぞれ、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含むが、これに限定されない任意のアイソタイプのものでよく、1つまたは複数の変異または改変を含んでもよい。一態様において、第1のFc配列および第2のFc配列のそれぞれは、IgG4アイソタイプのものでもよく、それに由来してもよく、任意で、1つまたは複数の変異または改変を有する。別の態様において、第1のFc配列および第2のFc配列のそれぞれは、IgG1アイソタイプのものでもよく、それに由来してもよく、任意で、1つまたは複数の変異または改変を有する。別の態様において、Fc配列の一方はIgG1アイソタイプのFc配列であり、他方はIgG4アイソタイプのFc配列であるか、または、このようなそれぞれのアイソタイプに由来し、任意で、1つまたは複数の変異または改変を有する。
【0326】
本発明の一態様において、一方または両方のFc配列はエフェクター機能が欠損している。例えば、Fc配列は、エフェクター機能、例えば、ADCCを媒介する能力が低減されるかようにまたはさらには無くなるように変異している、IgG4アイソタイプのFc配列でもよく、非IgG4タイプ、例えば、IgG1、IgG2、またはIgG3のFc配列でもよい。このような変異は、例えば、Dall'Acqua WF et al., J Immunol. 177(2):1129-1138 (2006)および Hezareh M, J Virol.; 75(24):12161-12168 (2001)において説明されている。別の態様において、一方または両方のFc配列はIgG1野生型配列を含む。
【0327】
本発明による抗体はFc領域に改変を含んでもよい。抗体が、このような改変を含む時、不活性抗体または非活性化抗体になる場合がある。本明細書で使用する「不活性」、「不活性な」、または「非活性化」という用語は、少なくとも、どのFcγ受容体にも結合することができないか、Fcを介したFcR架橋結合を誘導することができないか、または個々の抗体の2つのFc領域を介して、FcRを介した標的抗原の架橋結合を誘導することができないか、またはC1qに結合することができないFc領域をいう。抗体、例えば、ヒト化またはキメラCD137またはPD-L1抗体のFc領域の不活性は単一特異性型の前記抗体を用いて有利に試験される。
【0328】
治療用抗体開発のために抗体のFc領域を、Fcγ(ガンマ)受容体とC1qとの相互作用に不活性になるように、いくつかの変種を構築することができる。このような変種の例は本明細書に記載されている。
【0329】
従って、本発明の抗体の一態様において、前記抗体は第1の重鎖および第2の重鎖を含み、一方の重鎖または両方の重鎖は、前記抗体が、改変されていない第1の重鎖および第2の重鎖を含む以外は同一の抗体と比べてより少ない程度までFcを介したエフェクター機能を誘導するように、改変されている。前記Fcを介したエフェクター機能は、判定することによって、Fcγ受容体への結合によって、C1qへの結合によって、またはFcを介したFcR架橋結合の誘導によって測定されてもよい。
【0330】
別のこのような態様において、重鎖定常配列および軽鎖定常配列は、前記抗体へのC1qの結合が非改変抗体と比較して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%低減するように改変されており、C1q結合はELISAによって測定される。
【0331】
従って、C1qおよびFcγ受容体との相互作用において中心的な役割を持っている、Fc領域内のアミノ酸が改変され得る。
【0332】
例えば、IgG1アイソタイプ抗体において改変され得るアミノ酸位置の例には、位置L234、L235、およびP331が含まれる。その組み合わせ、例えば、L234F/L235E/P331Sは、ヒトCD64、CD32、CD16、およびC1qへの結合を著しく減らすことができる。
【0333】
従って、一態様では、L234、L235、およびP331に対応する少なくとも1つの位置にあるアミノ酸は、それぞれA、A、およびSでもよい(Xu et al., 2000, Cell Immunol. 200(1):16-26; Oganesyan et al., 2008, Acta Cryst.(D64):700-4)。また、L234FおよびL235Eアミノ酸置換があるとFcγ受容体およびC1qとの相互作用が抑制されたFc領域を得ることができる(Canfield et al., 1991, J. Exp. Med. (173):1483-91; Duncan et al., 1988, Nature (332):738-40)。従って、一態様では、L234およびL235に対応する位置にあるアミノ酸は、それぞれFおよびEでもよい。D265Aアミノ酸置換は全てのFcγ受容体への結合を減らし、ADCCを阻止することができる(Shields et al., 2001、J. Biol. Chem. (276):6591-604)。従って、一態様では、D265に対応する位置にあるアミノ酸はAでもよい。C1qへの結合は位置D270、K322、P329、およびP331を変異させることによって抑制することができる。これらの位置をD270AまたはK322AまたはP329AまたはP331Aのいずれかに変異させると前記抗体をCDC活性欠損にすることができる。(Idusogie EE, et al., 2000, J Immunol. 164: 4178-84)。従って、一態様では、D270、K322、P329、およびP331に対応する少なくとも1つの位置にあるアミノ酸は、それぞれA、A、A、およびAでもよい。
【0334】
Fc領域とFcγ受容体およびC1qとの相互作用を最小にする代替アプローチは抗体のグリコシル化部位を除去することによるものである。位置N297を、例えば、Q、A、またはEに変異させると、IgG-Fcγ受容体相互作用にとって重大な意味を持つグリコシル化部位が除去される。従って、一態様では、N297に対応する位置にあるアミノ酸はG、Q、A、またはEでもよい。(Leabman et al., 2013, MAbs; 5(6):896-903)。Fc領域とFcγ受容体との相互作用を最小にする別の代替アプローチは、以下の変異; P238A、A327Q、P329A、またはE233P/L234V/L235A/G236delによって得られる可能性がある(Shields et al., 2001, J. Biol. Chem. (276):6591-604)。
【0335】
または、ヒトIgG2およびIgG4サブクラスはC1qおよびFcγ受容体との相互作用が天然では損なわれていると考えられているが、Fcγ受容体との相互作用が報告された(Parren et al., 1992, J. Clin Invest. 90: 1537-1546; Bruhns et al., 2009, Blood 113: 3716-3725)。両アイソタイプにおいて、これらの残存する相互作用を抑制する変異を加えると、FcR結合に関連する望ましくない副作用を低減することができる。IgG2の場合、これらはL234AおよびG237Aを含み、IgG4の場合、L235Eを含む。従って、一態様では、ヒトIgG2重鎖にあるL234およびG237に対応する位置にあるアミノ酸は、それぞれAおよびAでもよい。一態様において、ヒトIgG4重鎖にあるL235に対応する位置にあるアミノ酸はEでもよい。
【0336】
IgG2抗体においてFcγ受容体およびC1qとの相互作用をさらに最小にする他のアプローチは、WO2011066501およびLightle, S., et al., 2010, Protein Science (19):753-62に記載のアプローチを含む。
【0337】
前記抗体のヒンジ領域もFcγ受容体および補体との相互作用に関して重要な場合がある(Brekke et al., 2006, J Immunol 177:1129-1138; Dall’Acqua WF, et al., 2006, J Immunol 177:1129-1138)。従って、ヒンジ領域内での変異またはヒンジ領域の欠失が抗体のエフェクター機能に影響を及ぼすことがある。
【0338】
従って、一態様では、前記抗体は第1の免疫グロブリン重鎖および第2の免疫グロブリン重鎖を含み、第1の免疫グロブリン重鎖および第2の免疫グロブリン重鎖の少なくとも1つにおいて、ヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置にある1つまたは複数のアミノ酸は、それぞれL、L、D、N、およびPでない。
【0339】
一態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置にある1つまたは複数のアミノ酸は、それぞれL、L、D、N、およびPでない。
【0340】
本発明の一態様において、前記第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置にあるアミノ酸はDでない。
【0341】
従って、本発明の一態様では、前記第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置にあるアミノ酸はAおよびEからなる群より選択される。
【0342】
本発明のさらなる態様において、前記第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、ヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置にあるアミノ酸は、それぞれLおよびLでない。
【0343】
本発明の特定の態様において、前記第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、ヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置にあるアミノ酸は、それぞれFおよびEである。
【0344】
本発明の一態様において、前記第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置にあるアミノ酸は、それぞれFおよびEである。
【0345】
本発明の特定の態様において、前記第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、ヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置にあるアミノ酸は、それぞれF、E、およびAである。
【0346】
本発明の特に好ましい態様において、前記第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置にあるアミノ酸は、それぞれF、E、およびAである。
【0347】
本発明のさらに特に好ましい態様において、前記結合物質は、第1の重鎖および第2の重鎖を含む二重特異性抗体であり、第1の重鎖および第2の重鎖両方の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置が、それぞれFおよびEであり、かつ、(i)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであるか、または(ii)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLである。
【0348】
本発明のさらに特に好ましい態様において、前記結合物質は、第1の重鎖および第2の重鎖を含む二重特異性抗体であり、第1の重鎖および第2の重鎖両方の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置が、それぞれF、E、およびAであり、かつ、(i)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであるか、または(ii)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLである。
【0349】
3つのアミノ酸置換L234F、L235E、およびD265Aの組み合わせを有し、さらに、K409RまたはF405L変異を有する抗体変種を、それぞれ、本明細書中では接尾文字「FEAR」または「FEAL」を付けて命名する。
【0350】
好ましい態様において、本発明の二重特異性抗体は、
(i)IgG1-CD137-FEALに由来する半分子抗体、ならびにIgG1-PDL1-547-FEARに由来する半分子抗体、または
(ii)IgG1-CD137-FEARに由来する半分子抗体、ならびにIgG1-PD-L1-547-FEALに由来する半分子抗体および半分子抗体
を含む。
【0351】
本発明のさらなる態様において、二重特異性抗体の血清半減期を操作するために、二重特異性抗体の一方または両方の抗体形成部分は、胎児性Fc受容体(FcRn)との結合を低減または増加するように操作されている。血清半減期を増加または低減するための技法は当技術分野において周知である。例えば、Dall’Acqua et al. 2006, J. Biol. Chem., 281:23514-24; Hinton et al. 2006, J. Immunol., 176:346-56;およびZalevsky et al. 2010 Nat. Biotechnol., 28:157-9を参照されたい。
【0352】
結合体
さらなる局面において、本発明は、1つまたは複数の治療的部分、例えば、サイトカイン、免疫抑制剤、免疫刺激分子、および/または放射性同位体と連結または結合体化された抗体を提供する。このような結合体は本明細書において「免疫結合体」または「薬物結合体」と呼ばれる。1つまたは複数の細胞毒を含む免疫結合体は「免疫毒素」と呼ばれる。
【0353】
一態様において、第1のFc配列および/または第2のFc配列は薬物もしくはプロドラッグと結合体化されるか、または薬物もしくはプロドラッグのアクセプター基を含有する。このようなアクセプター基は、例えば、非天然アミノ酸でもよい。
【0354】
組成物
一局面において、本発明は、本明細書において開示される態様または局面のいずれか一つに従う結合物質(例えば二重特異性抗体)、核酸、発現ベクター、または細胞を含む組成物に関する。本発明の一態様において、前記組成物は薬学的組成物である。本発明の一態様において、前記組成物は、許容可能な薬学的担体および/または賦形剤をさらに含む。
【0355】
さらなる局面において、本発明は、本明細書において開示される態様のいずれか一つに従う結合物質(例えば多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体)、核酸、発現ベクター、または宿主細胞と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物に関する。
【0356】
本発明の薬学的組成物は、本発明の1種類の結合物質(例えば、1種類の多重特異性抗体、好ましくは、二重特異性抗体)、または本発明の異なる結合物質(例えば多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体)の組み合わせを含んでもよい。
【0357】
前記薬学的組成物は、従来の技法、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th Edition, Gennaro, Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, 1995に開示される技法に従って処方することができる。本発明の薬学的組成物は、例えば、希釈剤、増量剤、塩、緩衝液、界面活性剤(例えば、非イオン性界面活性剤、例えば、Tween-20もしくはTween-80)、安定剤(例えば、糖もしくはタンパク質を含まないアミノ酸)、防腐剤、組織固定液、可溶化剤、および/または薬学的組成物に含めるのに適した他の材料を含んでもよい。
【0358】
薬学的に許容される担体には、本発明の結合物質(例えば多重特異性、例えば二重特異性抗体)、核酸、発現ベクター、または宿主細胞と生理学的に適合する、任意のおよび全ての適切な溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、酸化防止剤および吸収遅延剤などが含まれる。本発明の薬学的組成物において使用することができる適切な水性および非水性の担体の例には、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、エタノール、デキストロース、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、および適切なその混合物、植物油、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、トラガカントゴムおよび注射用有機エステル、例えば、オレイン酸エチル、ならびに/または様々な緩衝液が含まれる。薬学的に許容される担体には、滅菌した水溶液または分散液、および滅菌した注射液または分散液を即時調製するための滅菌した散剤が含まれる。適切な流動性は、例えば、コーティング材料、例えば、レシチンを使用することによって、分散液の場合、必要な粒径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって維持することができる。
【0359】
本発明の薬学的組成物はまた、薬学的に許容される酸化防止剤、例えば、(1)水溶性の酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性の酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸パルミテート、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど;および(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸なども含んでよい。
【0360】
本発明の薬学的組成物はまた、等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、または塩化ナトリウムも組成物中に含んでよい。
【0361】
本発明の薬学的組成物はまた、薬学的組成物の貯蔵寿命または有効性を増強することができる、選択された投与経路に適した1種類または複数種類の補助剤、例えば、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、防腐剤、または緩衝液を含んでもよい。本発明の結合物質(例えば多重特異性、例えば二重特異性抗体)は、急速に放出されないように結合物質を保護する担体、例えば、移植片、経皮パッチ、およびマイクロカプセルに閉じ込めた送達システムを含む徐放製剤を用いて調製されてもよい。このような担体は、ゼラチン、モノステアリン酸グリセリン、ジステアリン酸グリセリン、生分解性生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸のみもしくはポリ乳酸とろう、または当技術分野において周知の他の材料を含んでもよい。このような製剤を調製するための方法は一般的に当業者に公知である。
【0362】
滅菌注射液は、必要とされる量の活性化合物を、必要に応じて、例えば、前記で列挙された成分の1つまたは組み合わせと共に適切な溶媒中に組み込んだ後に、滅菌精密濾過を行うことによって調製することができる。一般的に、分散液は、活性化合物を、基本分散媒、および必要とされる他の成分、例えば、前記で列挙されたものを含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことによって調製される。滅菌注射液を調製するための滅菌散剤の場合、調製方法の例は、活性成分+任意のさらなる望ましい成分の予め濾過滅菌した溶液から、活性成分と任意のさらなる望ましい成分の散剤とを生じさせる真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0363】
前記薬学的組成物における活性成分の実際の投与量レベルは、患者への毒性無く、特定の患者、組成物、および投与方法について望ましい治療応答を実現するのに有効な活性成分量を得るように変えることができる。選択される投与量レベルは、使用される本発明の特定の組成物またはそのアミドの活性を含む様々な薬物動態学的要因、投与経路、投与時間、使用されている特定の化合物の排出速度、治療期間、使用される特定の組成物と併用される他の薬物、化合物、および/または材料、治療されている患者の年齢、性別、体重、状態、身体全体の健康、および前病歴、ならびに医学分野において周知の同様の要因に依存する。
【0364】
前記薬学的組成物は任意の適切な経路および方法によって投与することができる。一態様において、本発明の薬学的組成物は非経口投与される。本明細書で使用する「非経口投与される」とは、経腸投与および局所投与以外の投与方法、通常、注射による投与方法を意味し、表皮、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、腱内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、頭蓋内、胸腔内、硬膜外、および胸骨内への注射および注入を含む。
【0365】
一態様において、薬学的組成物は静脈内または皮下への注射または注入によって投与される。
【0366】
使用
一局面において、本発明は、医薬としての使用のための、本明細書において開示される態様のいずれか一つに従う結合物質、または本明細書において開示される核酸、発現ベクター、宿主細胞、もしくは薬学的組成物に関する。
【0367】
さらなる局面において、本発明は、疾患、例えば、がんの処置における使用のための、本明細書において開示される態様のいずれか一つに従う結合物質、または本明細書において開示される核酸、発現ベクター、宿主細胞、もしくは薬学的組成物に関する。
【0368】
さらなる局面において、本発明は、それを必要とする対象に、有効量の、本明細書において開示される態様のいずれか一つに従う結合物質または本明細書において開示される核酸、発現ベクター、宿主細胞、もしくは薬学的組成物を投与する工程を含む、疾患の処置方法に関する。
【0369】
特に、本発明による結合物質は、特異的標的化およびT細胞によるPD-L1発現細胞の死滅が望ましい治療状況において特に有用な場合があり、ある特定のこのような適応症および状況において通常の抗PD-L1抗体と比較して効率的な場合がある。
【0370】
本発明の結合物質はまた、様々なPD-L1関連疾患の療法および診断において、さらなる有用性も有する。例えば、結合物質(特に、抗体)を用いて、インビボまたはインビトロで、以下の生物学的活性:PD-L1発現細胞の成長および/または分化の阻害;PD-L1発現細胞の死滅;ヒトエフェクター細胞の存在下でのPD-L1発現細胞の食作用またはADCCの媒介;補体の存在下でのPD-L1発現細胞のCDCの媒介;PD-L1発現細胞のアポトーシスの媒介;および/またはPD-L1に結合した際の脂質ラフトへの移動の誘導の1つまたは複数を誘発するのに使用することができる。別の局面において、本発明は、それを必要とする対象に、本明細書において開示される任意の態様に記載の結合物質、核酸、発現ベクター、細胞、または組成物を投与する工程を含む、疾患の処置方法に関する。本発明の一態様において、前記方法は、がんである疾患の処置に関する。
【0371】
一局面において、本発明は、がんの処置における使用のための、本明細書において開示される態様のいずれか一つに従う結合物質、または本明細書において開示される核酸、発現ベクター、宿主細胞、もしくは薬学的組成物に関する。
【0372】
さらなる局面において、本発明は、固形腫瘍の存在を特徴とするがん疾患の処置における使用のための、本明細書において開示される態様のいずれか一つに従う結合物質、または本明細書において開示される核酸、発現ベクター、宿主細胞、もしくは薬学的組成物に関する。
【0373】
本発明の一態様において、本明細書において開示される結合物質、核酸、発現ベクター、細胞、または組成物は、がんの処置またはがんの処置方法における使用のためのものであり、がんは、固形腫瘍の存在を特徴とするか、または黒色腫、卵巣がん、肺がん、結腸がん、および頭頸部がんからなる群より選択される。
【0374】
さらなる局面において、本発明は、黒色腫、卵巣がん、肺がん、結腸直腸がん、頭頸部がん、胃がん、乳がん、腎臓がん、膀胱がん、食道がん、膵臓がん、肝臓がん、胸腺腫および胸腺がん、脳がん、神経膠腫、副腎皮質がん、甲状腺がん、他の皮膚がん、肉腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、卵巣がん、子宮内膜症がん、前立腺がん、陰茎がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、メルケル細胞がん、ならびに中皮腫からなる群より選択されるがん疾患の処置における使用のための、本明細書において開示される態様のいずれか一つに従う結合物質、または本明細書において開示される核酸、発現ベクター、宿主細胞、もしくは薬学的組成物に関する。
【0375】
特定の態様において、肺がんは非小細胞肺がん(NSCLC)である。
【0376】
さらなる局面において、本発明は、がん、例えば、固形腫瘍の存在を特徴とするがん疾患、または黒色腫、卵巣がん、肺がん、結腸がん、および頭頸部がんからなる群より選択されるがん疾患を処置するための医薬などの医薬の製造のための、本明細書において開示される態様のいずれか一つに従う結合物質、または本明細書において開示される核酸、発現ベクター、宿主細胞、もしくは薬学的組成物の使用に関する。
【0377】
本発明の一態様において、本明細書において開示される任意の態様に記載の方法または使用は、1種類または複数種のさらなる治療用物質、例えば化学療法剤との組み合わせを含む。
【0378】
一局面において、本発明は、
a. ヒトCD137に結合する抗原結合領域を含む第1の抗体を産生する宿主細胞を培養し、かつ任意で、培養物から前記第1の抗体を精製する工程;
b. ヒトPD-L1に結合する抗原結合領域を含む第2の抗体を産生する宿主細胞を培養し、かつ任意で、培養物から前記第2の抗体を精製する工程;
c. ヒンジ領域中のシステインがジスルフィド結合異性化を受けることを可能にするのに十分な還元条件下で、前記第1の抗体を前記第2の抗体と一緒にインキュベートする工程;ならびに
d. 前記CD137×PD-L1二重特異性抗体を得る工程
を含む、本明細書において開示される任意の態様に記載の二重特異性抗体を産生するための方法に関する。
【0379】
本発明はまた、それを必要とする個体に、本発明の結合物質(例えば、二重特異性抗体)または本発明の組成物を投与する工程を含む、1つもしくは複数のPD-L1発現腫瘍細胞の成長および/もしくは増殖を阻害するための方法ならびに/または1つもしくは複数のPD-L1発現腫瘍細胞の死滅および/もしくは排除を誘導するための方法にも関する。
【0380】
本発明はまた、
(a)PD-L1発現腫瘍細胞を含むがんに罹患している対象を選択する工程、および
(b)本発明の結合物質(例えば二重特異性抗体)または本発明の薬学的組成物を対象に投与する工程
を含む、がんを処置するための方法にも関する。
【0381】
前記の治療方法および使用における投与レジメンは最適な望ましい応答(例えば、治療応答)をもたらすように調節される。例えば、単一ボーラスを投与してもよく、いくつかの分割量を、ある期間にわたって投与してもよく、その用量は、治療状況の難局により示されるように比例して減少または増加されてもよい。投与の容易さおよび投薬の均一性のために単位剤形で非経口組成物が処方されてもよい。
【0382】
前記結合物質の効率的な投与量および投与レジメンは、治療しようとする疾患または状態に左右され、当業者によって決定することができる。本発明の化合物の治療的有効量の例示的で非限定的な範囲は、約0.001~10mg/kg、例えば、約0.001~5mg/kg、例えば、約0.001~2mg/kg、例えば、約0.001~1mg/kg、例えば、約0.001mg/kg、約0.01mg/kg、約0.1mg/kg、約1mg/kg、または約10mg/kgである。本発明の結合物質(例えば二重特異性抗体)の治療的有効量の別の例示的で非限定的な範囲は、約0.1~100mg/kg、例えば、約0.1~50mg/kg、例えば、約0.1~20mg/kg、例えば、約0.1~10mg/kg、例えば、約0.5mg/kg、例えば、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、または約8mg/kgである。
【0383】
当技術分野において通常の知識を有する医師または獣医師は、必要とされる薬学的組成物の有効量を容易に決定および処方することができる。例えば、医師または獣医師は、薬学的組成物において用いられる前記結合物質(例えば二重特異性抗体)の用量を、望ましい治療効果を達成するのに必要とされる用量よりも低いレベルで開始し、望ましい効果が達成されるまで投与量を段々と増やすことができる。一般的に、本発明の結合物質(例えば二重特異性抗体)の適切な一日量は、治療効果を生じるのに有効な最小用量である化合物量である。投与は、例えば、非経口、例えば、静脈内、筋肉内、または皮下でもよい。一態様において、前記結合物質(例えば二重特異性抗体)は、mg/m2単位で算出された毎週投与量で注入されることによって投与されてもよい。このような投与量は、例えば、用量(mg/kg)×70:1.8に従う、上記で示されたmg/kg投与量に基づいてもよい。このような投与は、例えば、1~8回、例えば、3~5回繰り返されてもよい。投与は、2~24時間、例えば、2~12時間の期間にわたる連続注入によって行われてもよい。一態様において、毒性副作用を弱めるために、前記結合物質(例えば二重特異性抗体)は、長期間にわたる、例えば、24時間を超える、ゆっくりとした連続注入によって投与されてもよい。
【0384】
一態様において、前記結合物質は、1週間に1回与えられる場合、8回まで、例えば、4~6回の、ある決まった用量として算出された、毎週投与量で投与されてもよい。このようなレジメンは、例えば、6ヶ月後または12ヶ月後に、必要に応じて1回または複数回、繰り返されてもよい。このような、ある決まった投与量は、70kgの体重推定量で、上記で示されたmg/kg投与量に基づいてもよい。投与量は、投与時に本発明の結合物質(例えば二重特異性抗体)の血中量を測定することによって、例えば、生物学的試料を採取し、本発明の抗体のPD-L1抗原抗原結合領域を標的とする抗イディオタイプ抗体を使用することによって決定または調節されてもよい。
【0385】
一態様において、前記結合物質は維持療法として、例えば、6ヶ月またはそれ以上にわたって1週間に1回、投与されてもよい。
【0386】
結合物質はまた、がんを発症するリスクを下げるために、がん進行における事象の発生の開始を遅延するために、および/またはがんが寛解している場合には再発リスクを下げるために予防的に投与されてもよい。
【0387】
本発明の結合物質はまた併用療法で投与されてもよい、すなわち、治療しようとする疾患または状態に関連する他の治療用物質と組み合わせて投与されてもよい。従って、一態様では、結合物質(例えば二重特異性抗体)を含有する医薬は、1種類または複数種類のさらなる治療用物質と、例えば、細胞障害剤、化学療法剤、または抗血管新生剤と併用するためのものである。
【0388】
一局面において、本発明は、本明細書において開示される態様のいずれか一つにおいて定義された第1の抗原結合領域および/または第2の抗原結合領域に結合する抗イディオタイプ抗体に関する。
【0389】
さらなる局面において、本発明は、本明細書において開示される態様のいずれか一つにおいて定義されたCD137結合領域に結合する抗イディオタイプ抗体に関する。さらなる局面において、本発明は、本明細書において開示される態様のいずれか一つにおいて定義されたPD-L1結合領域に結合する抗イディオタイプ抗体に関する。
【0390】
本発明は以下の実施例によってさらに例示され、以下の実施例は本発明の範囲を限定すると解釈してはならない。
【0391】
配列
(表1)
【実施例
【0392】
実施例1: CD137抗体の作製
WO2016/110584の実施例1に記載の通りに、抗体CD137-005およびCD137-009を作製した。手短に言うと、ウサギを、ヒトCD137-Fc融合タンパク質を含有するタンパク質混合物で免疫した。単一B細胞を血液から選別し、CD137特異的抗体が産生されたかどうかELISAおよびフローサイトメトリーによってスクリーニングした。スクリーニング陽性B細胞からRNAを抽出し、配列決定を行った。重鎖および軽鎖の可変領域を遺伝子合成し、以下のアミノ酸変異:L234F、L235E、D265AおよびF405L(FEAL)またはF405L(FEAL)を含むヒトIgG1重鎖を含むヒトIgG1κ発現ベクターまたはヒトIgG1λ発現ベクターにクローニングした。アミノ酸位置の数字はEUナンバリングに従う(SEQ ID NO:25に対応する)。キメラCD137抗体(CD137-009)の可変領域配列を本明細書中の配列表SEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:12に示した。
【0393】
実施例2: ウサギ(キメラ)CD137抗体のヒト化
ウサギ抗CD137-009からのヒト化抗体配列をAntitope(Cambridge, UK)において作製した。ヒト化抗体配列を、生殖系列ヒト化(CDRグラフティング)技術を用いて作製した。ヒト化V領域遺伝子は、ウサギ抗体のVHおよびVκアミノ酸配列との最も近い相同性をもつヒト生殖系列配列に基づいて設計した。一連の7つのVHおよび3つのVκ(VL)生殖系列ヒト化V領域遺伝子を設計した。非ヒト親抗体V領域の構造モデルをSwiss PDBを用いて作成し、抗体の結合特性に重要な可能性があるV領域フレームワーク中のアミノ酸を特定する目的で分析した。1つまたは複数の変種CDRがグラフトされた抗体に組み込むために、これらのアミノ酸に注目した。ヒト化設計の土台として使用した生殖系列配列を表2に示した。
【0394】
(表2)最もよくマッチしているヒト生殖系列VセグメントおよびJセグメントの配列
【0395】
次いで、潜在的なT細胞エピトープの発生率が最も低い変種配列を、Antitopeの知的財産権下にあるインシリコ技術、iTope(商標)およびTCED(商標)(T Cell Epitope Database)を用いて選択した(Perry, L.C.A, Jones, T.D. and Baker, M.P. New Approaches to Prediction of Immune Responses to Therapeutic Proteins during Preclinical Development (2008). Drugs in R&D 9 (6): 385-396; 20 Bryson, C.J., Jones, T.D. and Baker, M.P. Prediction of Immunogenicity of Therapeutic Proteins (2010). Biodrugs 24 (1):1-8)。最後に、設計された変種のヌクレオチド配列はコドン最適化されている。
【0396】
ヒト化CD137抗体(CD137-009-HC7LC2)の可変領域配列を本明細書中の配列表SEQ ID NO:15およびSEQ ID NO:16に示した。
【0397】
実施例3: CD137抗体の結合に重要なドメインを決定するための、イノシシCD137またはゾウCD137とヒトCD137との間のDNAシャフリング
CD137抗体とヒトCD137との結合に重要なドメインを決定するために、DNAシャフリングをヒトCD137とイノシシCD137(イノシシ(サス スクロファ); XP_005665023)との間で、またはヒトCD137とアフリカゾウCD137(アフリカゾウ(ロクソドンタ アフリカーナ); XP_003413533)との間で行った。シャッフル構築物を、ヒトドメインをイノシシ(シャッフル構築物1-4、6)ドメインまたはゾウ(シャッフル構築物5)ドメインと交換することによって、ヒトCD137をコードするDNAから調製した。シャッフル構築のアミノ酸配列を表1に示した。
【0398】
ヒトCD137中のドメインが抗CD137抗体の結合に重要である場合には、このドメインとイノシシドメインまたはアフリカゾウドメインが交換されたら結合は失われる。
【0399】
ヒトCD137とイノシシCD137との間の相同性およびヒトCD137とアフリカゾウCD137との間の相同性はそれぞれ70.2%および74.5%である。これらの2種が選択される必要条件は、アフリカゾウおよびイノシシの関心対象のドメインがヒトと比較して十分な差があり、その結果、ミスフォールディングまたは発現消失のリスクを最小化するのに必要な重大な構造上の相互作用を残しながら結合消失が起こることであった。図1は、ヒトCD137、イノシシCD137、およびアフリカゾウCD137の配列アラインメントを示す。図2は、示されたような、イノシシCD137ドメインまたはアフリカゾウCD137ドメインを含有するヒトCD137の構築物を示す。
【0400】
3×106個のHEK293T-17細胞を、10%FCS(Biochrom,カタログ番号S0115)を含有する20 mL RPMI 1640 GlutaMAX培地が入っているT75培養フラスコ(Greiner Bio-One,カタログ番号658175)に播種した。O/Nインキュベーション後に、細胞に、構成的に活性なヒト伸長因子-1α(EF-1α)プロモーターの下流にシャッフル構築物またはイノシシCD137、アフリカゾウCD137、もしくはヒトCD137をコードする発現ベクターを、TransIT(登録商標)-LT1トランスフェクション試薬, Mirus Bio(VWR International,カタログ番号731-0029)を用いて製造業者の説明書に従って一過的に形質導入した。翌日、細胞を1.5mL Accutase(Sigma Aldrich,カタログ番号A6964)(37℃で5分間のインキュベーション)を用いて収集し、シャッフル構築物ならびにヒトCD137、アフリカゾウCD137、およびイノシシCD137の表面発現を測定するために、ならびに抗体クローンと様々なシャッフル構築物との結合を測定するために、フローサイトメトリーを本質的に前記のように行った。前記構築物の細胞表面発現を測定するために、形質導入された細胞を、FACS緩衝液(4℃、20分)中で1μg/mLヤギポリクローナル抗ヒトCD137(R&D Systems,カタログ番号AF838)と共にインキュベートした後に、APC標識抗ヤギIgG(H+L)(R&D Systems,カタログ番号F0108)(4℃、20分)と共にインキュベートした。様々なCD137抗体クローンとシャッフル構築物発現細胞との結合を、形質導入された細胞を1μg/mLの抗体クローンと共にインキュベートし、その後にAPC標識AffiniPureF(ab')2断片(1:50最終希釈;Jackson,カタログ番号109-136-127)と共にインキュベートすることによって測定した。
【0401】
全てのCD137シャッフル構築物ならびにヒトCD137、アフリカゾウCD137、およびイノシシCD137を細胞表面上で発現させた。発現レベルは似ていた(図3)。
【0402】
図4は、CD137-009がアフリカゾウCD137およびイノシシCD137に対して結合消失を示したことを示す。CD137-009はまた、ヒトCD137との結合と比較してシャッフル構築物5に対して結合消失も示した。
【0403】
実施例4: PD-L1抗体の作製
免疫化およびハイブリドーマ作製をAldevron GmbH(Freiburg, Germany)において行った。ヒトPD-L1のアミノ酸19-238をコードするcDNAをAldevronの知的財産権下にある発現プラスミドにクローニングした。抗体PD-L1-547は、手持ち式パーティクルボンバードメント装置(「遺伝子銃」)を用いたヒトPD-L1 cDNAコーティング金粒子の皮内適用を用いてOmniRat動物(完全ヒトイディオタイプをもつ多様な抗体レパートリーを発現するトランスジェニックラット; Ligand Pharmaceuticals Inc., San Diego, USA)を免疫することによって作製した。一連の免疫後に血清試料を収集し、ヒトPD-L1を発現させるために上記の発現プラスミドを一過的にトランスフェクトしたHEK細胞に対してフローサイトメトリーにおいて試験した。抗体産生細胞を単離し、標準的な手法に従ってマウスミエローマ細胞(Ag8)と融合させた。PD-L1特異的抗体を産生するハイブリドーマに由来するRNAを抽出し、配列決定を行った。重鎖および軽鎖の可変領域(SEQ ID NO:17および21)を遺伝子合成し、以下のアミノ酸変異:L234F、L235E、D265AおよびK409R(FEAR)を含むヒトIgG1重鎖を含むヒトIgG1λ発現ベクターにクローニングした。アミノ酸位置の番号はEUナンバリングに従う(SEQ ID NO:24に対応する)。
【0404】
実施例5: 2-MEA誘導性Fabアーム交換による二重特異性抗体の作製
二重特異性IgG1抗体を、管理された還元条件下でのFabアーム交換によって作製した。この方法の基盤は、WO2011/131746に記載の通りに特定のアッセイ条件下でヘテロ二量体形成を促進する相補的CH3ドメインの使用である。相補的CH3ドメインを有する抗体ペアを生成するために、F405LおよびK409R(EUナンバリング)変異を関連抗体に導入した。
【0405】
二重特異性抗体を作製するために、各抗体の最終濃度が0.5mg/mLである2種類の親相補的抗体を、総体積100μLのPBS中で、75mM 2-メルカプトエチルアミン-HCl(2-MEA)と共に31℃で5時間インキュベートした。スピンカラム(Microcon遠心フィルター,30k,Millipore)を用いて製造業者のプロトコールに従って還元剤2-MEAを除去することによって還元反応を止めた。二重特異性抗体を、実施例1および4からの以下の抗体を組み合わせることによって作製した。
- PD-L1-547-FEAR抗体と組み合わせたCD137-009-FEAL抗体、
- CD137-009-FEARと組み合わせたPD-L1-547-FEAL抗体、
- CD137-009-HC7LC2-FEAR抗体と組み合わせたPD-L1-547-FEAL抗体、
- 第1のアームとしてgp120特異的抗体である抗体b12(Barbas,CF.J Mol Biol.1993 Apr 5;230(3):812-23)を用いて、PD-L1-547-FEAR抗体、CD137-009-FEAR、またはCD137-009-HC7LC2-FEAR抗体と組み合わせたb12-FEAL抗体、
- PD-L1-547-FEALまたはCD137-009-FEALとb12-FEAR抗体。
【0406】
実施例6: PD-1/PD-L1相互作用に対するPD-L1抗体の効果
PD-1およびPD-L1の相互作用に対する一価PD-L1b12-FEAL×PD-L1-547-FEAR抗体の効果を、Promega(Madison,USA)が開発したPD-1/PD-L1阻害バイオアッセイ法において測定した。これは、2種類の遺伝子操作された細胞株:ヒトPD-1と、NFAT応答エレメント(NFAT-RE)によって動かされるルシフェラーゼレポーターとを発現するジャーカットT細胞であるPD-1エフェクター細胞、およびヒトPD-L1と、抗原非依存的にコグネイトTCRを活性化するように設計された操作された細胞表面タンパク質とを発現するCHO-K1細胞であるPD-L1 aAPC/CHO-K1細胞からなる生物発光細胞アッセイ法である。2種類の細胞タイプが同時培養されると、PD-1/PD-L1相互作用によって、TCRシグナル伝達、および、NFAT-REを介したルミネセンスが阻害される。PD-1/PD-L1相互作用をブロックする抗体を添加すると阻害シグナルが放出されて、TCR活性化、および、NFAT-REを介したルミネセンスが生じる。
【0407】
PD-L1 aAPC/CHO-K1細胞(Promega,カタログ番号J109A)を製造業者のプロトコールに従って解凍し、10%胎仔ウシ血清(FBS; Promega, カタログ番号J121A)を含有するHam’s F12培地(Promega, カタログ番号J123A)に再懸濁し、96ウェル平底培養プレート(CulturPlate-96, Perkin Elmer, カタログ番号6005680)にプレートした。プレートを、5%CO2、37℃で16時間インキュベートした。上清を除去し、抗体の段階希釈液(5~0.001μg/mLの最終濃度;1%胎仔ウシ血清[FBS; Promega、カタログ番号J121A]を含有するRPMI1640[Lonza、カタログ番号BE12-115F]で4倍希釈)を添加した。PD-1エフェクター細胞(Promega, カタログ番号J115A; 製造業者のプロトコールに従って解凍し、RPMI/1%FBSに再懸濁した)を添加した。プレートを、5%CO2、37℃で6時間インキュベートした。室温まで平衡化した後に、40μl Bio-Glo試薬(製造業者のプロトコールに従ってBio-Gloルシフェラーゼアッセイ緩衝液[Promega, カタログ番号G7198]で再構成したBio-Gloルシフェラーゼアッセイ基質[Promegaカタログ番号G720B])を各ウェルに添加した。プレートを室温で5~10分間インキュベートし、ルミネセンスを、EnVision Multilabel Reader(PerkinElmer)を用いて測定した。対照(抗体を添加していない)と比べたPD1-PD-L1相互作用に対する効果を以下の通りに算出した。
誘導倍率 = RLU(誘導 - バックグラウンド)/RLU(抗体なし対照 - バックグラウンド)
RLUは相対光量(relative light unit)である。
【0408】
図5は、一価抗体b12-FEAL×PD-L1-547-FEARがPD1-PD-L1相互作用を効率的に阻害したことを示す。
【0409】
実施例7: PD-L1およびCD137に結合する二重特異性抗体による効果を測定するための抗原特異的CD8+T細胞増殖アッセイ法
CD137×PD-L1二重特異性抗体の予想された作用機序の模式図を図6に示した。
【0410】
抗原特異的アッセイ法においてPD-L1とCD137を標的とする二重特異性抗体によるT細胞増殖の誘導を測定するために、樹状細胞(DC)にクローディン-6インビトロ転写RNA(IVT-RNA)をトランスフェクトした。T細胞にPD-1 IVT-RNAおよびクローディン-6特異的HLA-A2制約(restricted)T細胞受容体(TCR)をトランスフェクトして、クローディン-6抗原を発現させた。このTCRは、DC上のHLA-A2において提示されたクローディン-6由来エピトープを認識することができる。CD137×PD-L1二重特異性抗体は、単球由来樹状細胞または腫瘍細胞上で内因的に発現させたPD-L1とT細胞上のCD137を架橋して、阻害性PD-1/PD-L1相互作用を阻害すると同時にCD137をクラスター化し、その結果としてT細胞を増殖することができる。T細胞上で発現させたCD137受容体がクラスター化するとCD137受容体が活性化され、それによって補助刺激シグナルがT細胞に送達される。
【0411】
HLA-A2+末梢血単核球(PBMC)を健常ドナー(Transfusionszentrale, University Hospital, Mainz, Germany)から得た。単球を、磁気活性化細胞選別(MACS)技術によって、抗CD14マイクロビーズ(Miltenyi;カタログ番号130-050-201)を用いて製造業者の説明書に従ってPBMCから単離した。末梢血リンパ球(PBL, CD14陰性画分)を、将来のT細胞単離のために凍結した。未熟DC(iDC)に分化させるために、1×106単球/mlを、5%ヒトAB血清(Sigma-Aldrich Chemie GmbH,カタログ番号H4522-100ML)、ピルビン酸ナトリウム(Life technologies GmbH,カタログ番号11360-039)、非必須アミノ酸(Life technologies GmbH,カタログ番号11140-035)、100IU/mLペニシリン-ストレプトマイシン(Life technologies GmbH,カタログ番号15140-122)、1000IU/mL顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF; Miltenyi,カタログ番号130-093-868)、および1,000IU/mLインターロイキン-4(IL-4; Miltenyi,カタログ番号130-093-924)を含有するRPMI GlutaMAX(Life technologies GmbH,カタログ番号61870-044)の中で5日間培養した。これらの5日の間に1回、培地の半分を新鮮な培地と交換した。非付着細胞を収集することでiDCを採取し、2mM EDTAを含有するPBSと共に37℃で10分間インキュベートすることによって付着細胞を剥離した。洗浄後に、将来の抗原特異的T細胞アッセイ法のために、iDCを、10%v/v DMSO(AppliChem GmbH, カタログ番号A3672,0050)+50%v/vヒトAB血清を含有するRPMI GlutaMAXに入れて凍結した。
【0412】
抗原特異的CD8+T細胞増殖アッセイ法を開始する1日前に、同じドナーに由来する凍結したPBLおよびiDCを解凍した。CD8+T細胞を、抗CD8マイクロビーズ(Miltenyi、カタログ番号130-045-201)を用いたMACS技術によって製造業者の説明書に従ってPBLから単離した。BTX ECM(登録商標)830 Electroporation System装置(BTX; 500V、1×3msパルス)を用いて、250μL X-Vivo15(Biozym Scientific GmbH,カタログ番号881026)が入っている4mmエレクトロポレーションキュベット(VWR International GmbH,カタログ番号732-0023)の中で、約10~15×106個のCD8+T細胞をクローディン-6特異的マウスTCRのα鎖コードインビトロ翻訳(IVT)-RNA 10μgとβ鎖コードIVT-RNA 10μg(HLA-A2制約; WO2015150327A1に記載)と10μgのPD-1コードIVT-RNAで電気穿孔した。電気穿孔の直後に、細胞を、5%ヒトAB血清を加えた新鮮なIMDM培地(Life Technologies GmbH,カタログ番号12440-061)に移し、37℃、5%CO2で少なくとも1時間休ませた。T細胞を、PBSに溶解した1.6μMカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE; Invitrogen,カタログ番号C34564)を用いて、製造業者の説明書に従って標識し、5%ヒトAB血清を加えたIMDM培地中でO/Nインキュベートした。
【0413】
250μL X-Vivo15培地中で前記(300V、1×12msパルス)のようにエレクトロポレーションシステムを用いて、5×106個までの解凍したiDCを5μgの完全長クローディン-6コードIVT-RNAで電気穿孔し、5%ヒトAB血清を加えたIMDM培地中でO/Nインキュベートした。
【0414】
翌日、細胞を収集した。DC上でのクローディン-6およびPD-L1の細胞表面発現と、T細胞上でのTCRおよびPD-1の細胞表面発現とをフローサイトメトリーによってチェックした。DCをAlexa647結合CLDN6特異的抗体(非市販品; 社内で作製)および抗ヒトCD274抗体(PD-L1, eBioscienes,カタログ番号12-5983)で染色し、T細胞を抗マウスTCRβ鎖抗体(Becton Dickinson GmbH,カタログ番号553174)および抗ヒトCD279抗体(PD-1, eBioscienes,カタログ番号17-2799)で染色した。5%ヒトAB血清を加えたIMDM GlutaMAXが入っている96ウェル丸底プレートの中で、二重特異性抗体または対照抗体の存在下で5,000個の電気穿孔したDCを50,000個の電気穿孔したCFSE標識T細胞と共にインキュベートした。5日後にT細胞増殖をフローサイトメトリーによって測定した。細胞分裂を示すCFSEピークに基づくT細胞増殖の詳細な分析をFlowJoソフトウェアで行った。結果において、「分裂細胞%」は、分裂した細胞のパーセントを示し、「増殖指数」は、分裂した細胞の分裂回数の平均を示す。
【0415】
1つの無関係の結合アームを有する一価PD-L1-対照抗体、b12-FEAL×PD-L1-547-FEARは、(通常のIgG1として)b12とのインキュベーションと比較してT細胞増殖をある程度まで強化し、二重特異性抗体CD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEARは強力なCD8+T細胞増殖を誘導した(図7)。これは分裂細胞パーセントの増加(図7BおよびD左パネル)と増殖指数の増加(図7BおよびD右パネル)によって反映された。
【0416】
さらに、このアッセイ法では、CD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEARのEC50値を求めた。この目標に向かって、二重特異性抗体を1~0.00015μg/mLの3倍段階希釈で分析した(図8)。分裂細胞パーセントおよび増殖指数をFlowJoソフトウェアで求めた。曲線を、GraphPad Prism 5ソフトウェア(GraphPad Software, San Diego, CA, USA)を用いて非線形回帰(勾配変化のあるシグモイド用量反応)によって分析した。CD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEARの抗原特異的T細胞増殖の誘導のEC50値は「分裂細胞%」については0.003492μg/mL、「増殖指数」については0.005388μg/mLであった。
【0417】
実施例8: 活性なPD-1/PD-L1軸を用いた抗原特異的T細胞アッセイ法における、PD-L1とCD137を標的とする二重特異性抗体と、2種類の一価結合CD137抗体およびPD-L1抗体の組み合わせまたは2種類の親抗体の組み合わせ(PD-L1-547+CD137-009)との比較
PD-L1とCD137を標的とする二重特異性抗体によるT細胞増殖の誘導を測定するために、活性なPD-1/PD-L1軸を用いた抗原特異的T細胞増殖アッセイ法を行った(実施例7に類似した一般的なアッセイセットアップ)。手短に言うと、5%ヒトAB血清を加えたIMDM GlutaMAXが入っている96ウェル丸底プレートの中で、二重特異性抗体または対照抗体の存在下で、クローディン-6-IVT-RNAで電気穿孔した5,000個のDCを、クローディン-6特異的TCRおよびPD1-IVT-RNAで電気穿孔した50,000個のCFSE標識T細胞と共にインキュベートした。5日後にT細胞増殖をフローサイトメトリーによって測定した。細胞分裂を示すCFSEピークに基づくT細胞増殖の詳細な分析をFlowJoソフトウェアを用いて行った。結果において、「分裂細胞%」は、分裂した細胞のパーセントを示し、「増殖指数」は、分裂した細胞の分裂回数の平均を示す。
【0418】
1つの無関係の結合アームを有する一価CD137対照抗体であるCD137-009-FEAL×b12-FEARも、対応する二価親抗体CD137-009もIgG1-b12と比較した場合にT細胞増殖に影響を及ぼさなかった。対照的に、一価PD-L1-対照抗体ならびに二価親抗体(それぞれ、b12-FEAL×PD-L1-547-FEARおよびPD-L1-547)とのインキュベーションは、IgG1-b12対照抗体とのインキュベーションと比較してT細胞増殖を中程度に高めた。組み合わされた一価対照抗体(CD137-009-FEAL×b12-FEAR+b12-FEAL×PD-L1-547-FEAR)および組み合わされた対応する親抗体(CD137-009+PD-L1-547)と共にインキュベートすると、同等のレベルのT細胞増殖を検出することができた。対照的に、二重特異性抗体CD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEARは強力なCD8+T細胞増殖を誘導し、これは両方の組み合わされた対照(一価および二価)より優れていた(図9)。これは分裂細胞パーセントの増加(図9B)ならびに増殖指数の増加(図9C)によって反映された。
【0419】
実施例9: 腫瘍浸潤リンパ球に対するCD137×PD-L1二重特異性抗体の効果を評価するためのエクスビボTIL増大アッセイ法
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)に対するCD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEARの効果を評価するために、ヒト腫瘍組織のエクスビボ培養を以下の通りに行った。新鮮なヒト腫瘍組織切除標本を、スパチュラまたはセロロジカルピペットを用いて、洗浄培地を含む6ウェルプレート(Fisher Scientificカタログ番号10110151)の1個のウェルから単離した腫瘍塊を次のウェルに移すことによって3回洗浄した。洗浄培地は、1%Pen/Strep(Thermo Fisher,カタログ番号15140-122)および1%Fungizone(Thermo Fisher,カタログ番号15290-026)を加えたX-VIVO 15(Biozym, カタログ番号881024)で構成された。次に、腫瘍を外科手術刀(Braun/Roth, カタログ番号5518091 BA223)で解剖し、直径が約1~2mmの断片に切断した。2つの断片を、それぞれ、1mL TIL培地(X-VIVO 15, 10%ヒト血清アルブミン(HSA, CSL Behring,カタログ番号PZN-6446518)1%Pen/Strep、1%Fungizoneを含有し、10U/mL IL-2(Proleukin(登録商標)S, Novartis Pharma,カタログ番号02238131))を加えた24ウェルプレート(VWR international,カタログ番号701605)の1個のウェルに入れた。CD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEARを、示された最終濃度で添加した。培養プレートを37℃および5%CO2でインキュベートした。72時間後に、示された濃度の二重特異性抗体を含有する新鮮なTIL培地1mLを各ウェルに添加した。TILクラスターが発生したかどうか1日おきにウェルを顕微鏡によってモニタリングした。それぞれのウェルに25個より多いTILマイクロクラスターが検出された場合にウェルを1つ1つ移した。TIL培養物を分割するために、24ウェルプレートのウェル中の細胞を2mL培地に再懸濁し、6ウェルプレートのウェルに移した。その上、さらに2mLのTIL培地を各ウェルに加えた。
【0420】
10~14日の全培養期間後に、TILをフローサイトメトリーによって収集および分析した。細胞を以下の試薬で染色した。全ての試薬を染色用緩衝液(staining-buffer)、(5%FCSおよび5mM EDTAを含有するD-PBS)、抗ヒトCD4-FITC(Miltenyi Biotec,カタログ番号130-080-501)、抗ヒトCD3-PE-Cy7(BD Pharmingen,カタログ番号563423)、7-アミノアクチマイシンD(7-AAD, Beckman Coulter,カタログ番号A07704)、抗ヒトCD56-APC(eBioscience,カタログ番号17-0567-42)、および抗ヒトCD8-PE(TONBO,カタログ50-0088)で1:50に希釈した。異なる治療群間で、得られた細胞を定量的に比較するために、BD(商標)CompBeads(BD biosciences,カタログ番号51-90-9001291)を加えたFACS緩衝液での最後の洗浄工程後に細胞ペレットを再懸濁した。フローサイトメトリー分析をBD FACSCanto(商標)IIフローサイトメーター(Becton Dickinson)によって行い、得られたデータを、FlowJo 7.6.5ソフトウェアを用いて分析した。得られたビーズ数に対して得られた7AAD陰性細胞画分を標準化することによって、6ウェルプレートの対応するウェルに関係する1,000個のビーズあたりの相対的な生TIL数、CD3+CD8+T細胞数、CD3+CD4+T細胞数、およびCD3-CD56+NK細胞数を算出した。
【0421】
図10は、ヒト非小細胞肺がん組織標本からのTIL増大の分析を示す。ここでは、以下の濃度:0.01μg/mL、0.1μg/mL、および1μg/mLのCD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEARを添加した。抗体を添加しなかった同じ患者に由来する組織標本は陰性対照として役立った。10日間培養した後に、TILを収集し、フローサイトメトリーによって分析した。24ウェルプレートの異なるウェルに由来する各抗体濃度について5つの試料(5つの最初のウェルに由来する)を測定した。二重特異性抗体と共に培養した全ての試料において、生TIL数は、抗体が無い対照試料と比較して著しく増加した。全体的に見て、0.1μg/mL CD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEARを培養物に添加した場合に、生TILの10倍までの増大が観察された(図10A)。CD3+CD4+Tヘルパー細胞はわずかにしか増大しなかったのに対して(図10C; 2.8倍増大)、対照的に、CD3-CD56+NK細胞については最も顕著なTIL増大が認められた(図10D; 対照と比較して64倍までの増大)。CD3+CD8+細胞障害性Tリンパ球(CTL)に対する強力な効果も観察された(図10B; 対照と比較して7.4倍の増大)。
【0422】
実施例10: OT-I CD8+養子T細胞移入後のC57BL/6マウスにおけるオボアルブミン特異的T細胞増殖に対する、mPD-L1およびmCD137に結合する代理二重特異性マウス抗体の効果
代理マウス二重特異性抗体mCD137-3H3×mPD-L1-MPDL3280A、mCD137-3H3×b12、およびmPD-L1-MPDL3280A×b12を、管理されたFabアーム交換に基づいてマウス二重特異性抗体を作製する方法(Labrijn et al, 2017 Sci Rep. 7(1): 2476およびWO2016097300)を用いて作製した。
【0423】
マウス4-1BBに結合するモノクローナル抗体3H3をBioXcell(カタログ番号BE0239)から得て、タンパク質をProtTechにおいて配列決定した。特定されたcDNA配列を、知的財産権下にある方法を用いて推定した。重鎖および軽鎖の可変領域を遺伝子合成し、以下のアミノ酸変異:L234A、L235A、F405L、およびR411Tを含むマウスIgG2a定常領域を含むマウスIgG2a発現ベクターにクローニングした。同様に、b12可変領域を、この発現ベクターにクローニングした。
【0424】
抗体MPDL3280A(重鎖可変配列および軽鎖可変配列をそれぞれSEQ ID NO:57 および58に示した)はヒトPD-L1とマウスPD-L1の両方に結合すると述べられている。この抗体の重鎖および軽鎖の可変領域を、以下のアミノ酸変異:L234A、L235A、T370K、およびK409Rを含むマウスIgG2a定常領域を含むマウスIgG2a発現ベクターにクローニングした。
【0425】
前記のように管理された還元条件下で、二重特異性マウス(本質的にはラット-ヒト-マウスキメラ)抗体をFabアーム交換によって作製した。
【0426】
雌C57BL/6JOlaHsdマウス(Envigo RMS GmbH, Rossdorf, Germany)、6~8週齢、体重17~24gを、試験登録前に少なくとも6日間にわたって動物施設に順化した。これらのマウスをレシピエントとして使用した。OT-1およびThy1.1対立遺伝子の両方についてホモ接合性の雌または雄C57BL/6 Thy1.1×C57BL/6J OT-1マウスを社内で交配させ(C57BL/6-Tg(TcraTcrb)1100Mjb/CrlおよびB6.PL-Thy1a/CyJマウスから異種交配させた)、ドナーとして使用した。マウスは食物(ssniff M-Z autoclavable Soest, Germany)と滅菌水を自由に摂取することができ、12時間明/暗サイクル、22℃±2℃、55%±15%の相対湿度で飼育した。
【0427】
試験開始日に、C57BL/6 Thy1.1×C57BL/6J OT-1ドナーマウスを屠殺し、脾臓を単離した。脾臓を機械的に解離し、脾細胞ペレットを赤血球溶解緩衝液(8.25g/L NH4Cl, 1g/L KHCO3, 0.1 mM EDTA, pH7)に再懸濁することによって赤血球を溶解した。その後に、脾細胞をDulbecco’s PBS(DPBS)で洗浄し、CD8+T細胞を、autoMACS Pro Separator (both Miltenyi Biotec GmbH, Bergisch Gladbach, Germany)と組み合わせたCD8a (Ly-2)マイクロビーズ, マウスを用いて単離した。CD8+/OT-1+/Thy1.1+T細胞(2.5~5×105個の細胞)を、C57BL/6JOlaHsdレシピエントマウス1匹につき総体積200μLで後眼窩に注射した。養子細胞移入の翌日に、レシピエントマウスの後眼窩に抗原刺激として100μgオボアルブミン/200μL PBSを「ワクチン接種した」。6時間後に、マウスの後眼窩を、それぞれの二重特異性抗体で処置した。詳しくは、マウス1匹につき100μgまたは20μgのmCD137-3H3×mPD-L1-MPDL3280A、mCD137-3H3×b12、またはmPD-L1-MPDL3280A×b12抗体を注射した。普通のPBSの注射をベースライン参照として使用し、未処置動物(ドナー細胞のみを与えたマウス)を陰性対照として使用した。6日後に、100μLの血液を後眼窩経路を介して採取し、BD FACSCanto IIサイトメーター(Becton Dickinson GmbH)によってV500ラット抗マウスCD45(Becton Dickinson GmbH, カタログ番号561487)、FITCラット抗マウスCD8a(Life technologies, カタログ番号MCD0801)、およびAlexa Fluor 647抗ラットCD90/マウスCD90.1(BioLegend Europe, カタログ番号202508)抗体を用いてThy1.1+CD8+T細胞があるかどうか分析した。Thy1.1(CD90.1)陽性をOT-1特異的T細胞の代わりとして使用した。
【0428】
図11Aは、OT-1養子T細胞移入アッセイ法概略の模式図である。Bは、フローサイトメトリーによって測定された場合のThy1.1+CD8+T細胞頻度の分析を示す。それぞれの二重特異性抗体治療モダリティーについてn=5マウスを使用した。オボアルブミン抗原刺激単独で、未処置動物と比較してThy1.1+CD8+T細胞頻度が検出可能に増加した。興味深いことに、1つの無関係のb12結合アームを有する一価対照抗体であるmCD137-3H3-×b12とmPD-L1-MPDL3280A×b12は両方とも、オボアルブミンのみで処置した動物と比較してオボアルブミン特異的OT-1 T細胞増大を増やすことができなかった。対照的に、二重特異性抗体mCD137-3H3×mPD-L1-MPDL3280Aは、試験した用量レベル(20μgおよび100μgの抗体)で、10~20%のCD8+/OT-1+/Thy1.1+T細胞(全T細胞集団に対する%)のT細胞頻度につながる強力なOT-1 T細胞増殖を誘導することができた。
【0429】
実施例11: 皮下同系CT26マウス腫瘍モデルにおける腫瘍成長に対する、mPD-L1およびmCD137に結合する代理二重特異性マウス抗体の効果
雌BALB/c Rjマウス(Janvier, Genest-St.-Isle, France)、6~8週齢、体重17~24gを試験登録前に少なくとも6日間にわたって順化した。マウスは食物(ssniff M-Z autoclavable Soest, Germany)と滅菌水を自由に摂取することができ、12時間明/暗サイクル、22℃±2℃、55%±10%の相対湿度で飼育した。CT26細胞をATCC(登録商標)(カタログ番号CRL-2638(商標))から得て、10%胎仔ウシ血清(FBS)(Biochrom, カタログ番号S0115)を加えたRoswell Park Memorial Institute培地(RPMI)1640培地、GlutaMAX(商標)(Life technologies, カタログ番号61870-044)に入れて5%CO2、37℃で培養した。前記細胞をStemPro(登録商標)Accutase(登録商標)細胞解離試薬(Life technologies, カタログ番号A1110501)を用いて収集し、DPBS(Life technologies, カタログ番号14190-169)に再懸濁し、マウス1匹につき0.5×106個の細胞/100μlを雌BALB/c Rjマウスの剪毛した右側腹部に皮下(SC)移植した。腫瘍量を2~3日ごとにカリパス測定によって評価し、式: a2×b/2を用いて垂直直径(perpendicular diameter)の積として表した。式中、bは2つの直径のうち長い方の直径である(a<b)。30mm3の平均腫瘍量に達すると動物を4群に層別化した。翌日、mPD-L1とmCD137に結合する20μgの二重特異性抗体(mCD137-3H3×mPD-L1-MPDL3280A)の腹腔内注射、1つの無関係の結合アームを有する一価mCD137対照抗体またはmPD-L1対照抗体(mCD137-3H3×b12およびmPD-L1-MPDL3280A×b12)、または陰性対照であるPBSを用いて処置を開始した。投与計画は最初の8回の注射については2~3日ごとであり、その後に、実験が終了するまで7日ごとの注射であった。腫瘍細胞接種後29日目に、後眼窩経路を介して100μLの血液を採取し、BD FACSCanto IIサイトメーター(Becton Dickinson GmbH)によってV500ラット抗マウスCD45(Becton Dickinson GmbH, カタログ番号561487)、FITCラット抗マウスCD8α(Life technologies, カタログ番号MCD0801)抗体、およびT-Select H-2Ld MuLV gp70四量体-SPSYVYHQF-APC(MBL Ltd. Corp., カタログ番号TS-M521-2)を用いてgp70特異的CD8+T細胞について分析した(gp70は、CT26腫瘍細胞上で発現しているエンベロープタンパク質である)。
【0430】
図12Aは、4つ全ての治療群の腫瘍成長曲線を示す。個々の線は1個の腫瘍/マウスを表している。それぞれの治療群の無増悪生存期間(PFS)頻度を各プロットの下部に示した。図12Bは、腫瘍細胞接種後71日目に実験が終了するまでの、対応するカプラン・マイヤー生存曲線を示す。図12Cは、フローサイトメトリーによって測定された場合のgp70四量体+CD8+T細胞頻度の分析を示す。それぞれの治療モダリティーについて、腫瘍細胞移植後29日目でもまだ生存しているマウスを全て分析した。要約すると、mPD-L1とmCD137に結合する二重特異性抗体(mCD137-3H3×mPD-L1-MPDL3280A)によって最も効率的に腫瘍が管理され、10匹のうち5匹の(すなわち、50%)動物が完全に腫瘍退縮した。比較すると、mCD137-3H3×b12対照については、わずかに弱いが依然として目立つ抗腫瘍効果が観察された。処置によって、11匹のうち3匹の(すなわち、27%)動物が腫瘍を拒絶することができた。両症例とも、完全寛解したマウスは全て実験終了まで腫瘍が無いままであった。著しい対照をなして、mPD-L1-MPDL3280A×b12処置コホートとPBS対照は両方とも腫瘍量を管理することができず、mPD-L1-MPDL3280A×b12処置によって、腫瘍細胞接種後15日目~30日目の間に11匹のうち2匹(すなわち、18%)の動物において少なくともいくらかの断続的な腫瘍成長阻害が起こった。gp70四量体に結合することができたCD8+T細胞の頻度に注目すると、mCD137-3H3×mPD-L1-MPDL3280A処置動物において最も高いgp70特異的CD8+T細胞頻度を検出することができた(2.14%±1.52%)。比較すると、mCD137-3H3×b12(0.90%±0.46%)、mPD-L1-MPDL3280A×b12(0.94%±1.06%)、およびPBS処置対照動物(0.66%±0.49%)におけるgp70四量体+CD8-T細胞頻度はかなり低く、これらの3つの治療モダリティー間では、わずかな差しかなかった。
【0431】
実施例12: PD-L1抗体またはb12×PD-L1二重特異性抗体と腫瘍細胞との結合
PD-L1抗体およびb12×PD-L1二重特異性抗体と、ヒト腫瘍細胞株MDA-MB-231(乳房腺がん;ATCC;カタログ番号HTB-26)、PC-3(前立腺腺がん;ATCC;カタログ番号CRL-1435)、およびSK-MES-1(肺扁平上皮がん;ATCC;カタログ番号HTB-58)との結合をフローサイトメトリーによって分析した。
【0432】
細胞(3~5×104個の細胞/ウェル)を、ポリスチレン96ウェル丸底プレート(Greiner bio-one,カタログ番号650101)の中で、50μL PBS/0.1%BSA/0.02%アジド(FACS緩衝液)で溶解した抗体段階希釈液(5倍希釈段階で範囲0.0001~10μg/mL)と共に4℃で30分間インキュベートした。FACS緩衝液で2回洗浄した後に、細胞を二次抗体と共に4℃で30分間インキュベートした。二次抗体として、50μL FACS緩衝液で1:500に希釈したR-フィコエリトリン(PE)結合ヤギ-抗ヒトIgG F(ab’)2(カタログ番号109-116-098, Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc., West Grove, PA)を全実験に使用した。次に、細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し、20μL FACS緩衝液に再懸濁し、iQueスクリーナー(Intellicyt Corporation, USA)で分析した。結合曲線を、GraphPad Prism V75.04ソフトウェア(GraphPad Software, San Diego, CA, USA)を用いて非線形回帰(勾配変化のあるシグモイド用量反応)を用いて分析した。
【0433】
MDA-MB-231細胞、PC-3細胞、およびSK-MES-1細胞の原形質膜上の抗原密度を定量するために、(Poncelet and Carayon, 1985, J. Immunol. Meth. 85: 65-74)に記載のように、MPDL3280A(重鎖可変配列および軽鎖可変配列をそれぞれSEQ ID NO:57および58に示した)を用いて、定量フローサイトメトリー(QIFIKIT(登録商標), Dako; カタログ番号K0078)を行った。細胞株は、以下のPD-L1抗原密度(ABC、抗体結合能力):
●MDA-MB-231: 約21,000 ABC/細胞、
●PC-3: 約6,000 ABC/細胞、
●SK-MES-1: 約30,000 ABC/細胞、
を有することが確認された。
【0434】
MDA-MB-231細胞への結合
図13(A)は、b12-FEAL×PD-L1-547-FEARとMDA-MB-231細胞の用量依存性結合を示す。最大結合は単一特異性二価PD-L1-547-FEARより大きい。
【0435】
PC-3細胞への結合
図13(B)は、b12-FEAL×PD-L1-547-FEARとPC3細胞の用量依存性結合を示す。最大結合は単一特異性二価PD-L1-547-FEARより大きい。
【0436】
SK-MES-1細胞への結合
図13(C)は、b12-FEAL×PD-L1-547-FEARとSK-MES-1細胞の用量依存性結合を示す。最大結合は単一特異性二価PD-L1-547-FEARより大きい。
【0437】
実施例13. アラニンスキャニングを用いた、抗体結合へのCD137アミノ酸残基の寄与に関する判定
ライブラリー設計
アラニンまたはシステインを既に含んでいる位置以外はヒトCD137の細胞外ドメインにある全アミノ酸残基が個々にアラニンに変異したCD137(Uniprot Q07011)一残基アラニンライブラリーを合成した(Geneart)。抗原の構造が破壊される機会を最小限にするために、システインは変異しなかった。アラニンがある位置をグリシンに変異させた。ライブラリーを、CMV/TK-ポリA発現カセット、Amp耐性遺伝子、およびpBR322複製起点を含むpMAC発現ベクターにクローニングした。
【0438】
ライブラリー作製およびスクリーニング
野生型CD137およびアラニン変異体をFreeStyle HEK293細胞において製造業者(Thermo Scientific)の説明書に従って個々に発現させた。トランスフェクションの1日後に細胞を収集した。約100,000個の細胞をFACS緩衝液中で関心対象のAlexa Fluor(登録商標)488-(A488-)結合抗体20μLと共にインキュベートした(表3)。細胞を室温で30分間インキュベートした。その後に、細胞を150~200μLのFACS緩衝液を用いて遠心分離によって2回洗浄した。細胞を30μL FACS緩衝液に懸濁し、iQueスクリーナーを用いてフローサイトメトリーによる分析まで4℃で保管した。
【0439】
全実験を3回繰り返して行った。
【0440】
(表3)アラニンスキャニングを用いた抗体結合におけるCD137アミノ酸残基の寄与に関する判定において使用した抗体。実験を行う前に、抗体をAlexa488(Invitrogen, カタログ番号A20000)で製造業者の説明書に従って標識した。CD137-MOR7480-FEARは、FEAR変異を含むヒトIgG1バックボーンにクローニングした代理MOR7480抗体である。
【0441】
データ分析
全ての試料について、1個の細胞に結合した抗体量の平均を単一生細胞集団の蛍光強度の幾何平均(gMFI)として求めた。gMFIは、CD137変異体に対する前記抗体の親和性と、細胞1個あたりのCD137変異体の発現レベルとの影響を受ける。特定のアラニン変異は変異CD137の表面発現レベルに影響を及ぼし、それぞれのCD137変異体の発現差全般を補正することがあるので、以下の式:
を用いて、非交差ブロッキングCD137特異的対照抗体の結合強度に対してデータを標準化した。
【0442】
「aa位置」は、アラニンまたはグリシンに変異した位置を指す。抗体の結合消失または結合獲得を表すために、zスコアを、以下の計算式:
に従って算出した。式中、μおよびσは、全変異体から算出した標準化されたgMFIの平均および標準偏差である。
【0443】
zスコア0は、参照抗体の結合と比較して特定の抗体による結合消失または結合獲得がないことを示す。zスコア>0は、参照抗体の結合を比較した場合の結合獲得を示す。zスコア<0は、参照抗体の結合を比較した場合の結合消失を示す。ほとんどの場合、結合獲得がzスコアによって求められた場合には、参照抗体と特定のアラニン変異体またはグリシン変異体との結合消失によって引き起こされる。試料のばらつきを補正するために、結合のzスコアが-1.5未満のCD137アミノ酸残基のみを「結合消失変異体」とみなした。
【0444】
特定のCD137変異体に対する対照抗体のgMFIがgMFI aa位置の平均より小さい場合には2.5×gMFI対照Ab平均のSD、データを分析から除外した(CD137変異体の発現レベルは結論を出すのに十分でなかったと考えられた)。
【0445】
図14は、位置1-163(SEQ ID 41に従う)にアラニン変異またはグリシン変異のあるCD137変種に対するCD137抗体の結合消失を示す。結果から以下のことが分かる。
●抗体CD137-005-FEARは、aa L1、Q2、P4、G11、T12、D15、またはQ20がアラニンに変異した場合に結合消失を示した。このことから、抗体CD137-005-FEARの結合は、少なくともヒトCD137のaa L1、Q2、P4、G11、T12、D15、Q20に依存することが示唆される。
●抗体b12-FEAL×CD137-009-FEARは、aa F13、F30、T38、D40、またはN60がアラニンに変異した場合に結合消失を示した。このことから、抗体b12-FEAL×CD137-009-FEARの結合は少なくともヒトCD137のaa F13、F30、T38、D40、およびN60に依存することが示唆される。F13およびF30はエピトープ相互作用に構造上の影響を及ぼす可能性がとても高いので、抗体b12-FEAL×CD137-009-FEARは少なくともaa T38、D40、およびN60に依存する。
●抗体CD137-MOR7048-FEARは、aa L72、G93、F102、N103、I109、R111、またはW113がアラニンに変異した場合に結合消失を示した。このことから、抗体MOR7048の結合は、少なくともヒトCD137のaa L72、G93、F102、N103、I109、R111、およびW113に依存することが示唆される。
【0446】
実施例14: PD-L1およびCD137に結合する二重特異性抗体の効果を測定するための非抗原特異的T細胞増殖アッセイ法
PD-L1×CD137二重特異性抗体の予想された作用機序の模式図を図6に示した。
【0447】
ポリクローナル的に活性化されたT細胞におけるT細胞増殖の誘導を測定するために、T細胞を活性化する目的で、PBMCを、PD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEAR二重特異性抗体または対照抗体と組み合わせて最適以下の濃度の抗CD3抗体(クローンUCHT1)と共にインキュベートした。PBMC集団内でPD-L1発現細胞は二重特異性抗体のPD-L1特異的アームに結合できるのに対して、この集団内のT細胞はCD137特異的アームに結合することができる。このアッセイ法において、T細胞増殖は、二重特異性抗体を介したPD-L1発現細胞との架橋結合によって誘導され、PD-L1:PD-1相互作用の遮断によって誘導された、CD137特異的アームを介したT細胞トランス活性化の尺度であり、T細胞増殖として測定した。
【0448】
PBMCを、健常ドナー(Transfusionszentrale, University Hospital, Mainz, Germany)のバフィーコートからFicoll勾配(VWR、カタログ番号17-5446-02)を用いて得た。PBMCを、PBSに溶解した1.6μMカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)(Thermo Fisher, カタログ番号C34564)を用いて製造業者の説明書に従って標識した。1ウェルにつき75,000個のCFSE標識PBMCを96ウェル丸底プレート(Sigma Aldrich, CLS3799-50EA)に播種し、5%ヒトAB血清を加えたIMDM GlutaMAX 150μL中で、各ドナーに対して最適以下のT細胞増殖を誘導すると予め決定された最適以下の濃度の抗CD3抗体(R&D Systems, クローンUCHT1, カタログ番号MAB100; 0.03~0.1μg/mL最終濃度)および二重特異性抗体または対照抗体と共に37℃、5%CO2で4日間インキュベートした。CD4+T細胞およびCD8+T細胞の増殖を、本質的に前記のようにフローサイトメトリーによって分析した。FACS緩衝液にPE標識CD4抗体(BD Biosciences, カタログ番号555347; 1:80最終希釈度)、PE-Cy7標識CD8α抗体(クローンRPA-T8, eBioscience, カタログ番号25-0088-41; 1:80最終希釈度)、APC標識CD56抗体(eBiosciences, カタログ番号17-0567; 1:80最終希釈度)、および7-AAD(Beckman Coulter, カタログ番号A07704; 1:80最終希釈度)を含有する30μLを用いて、前記細胞を染色し、CD56+ナチュラルキラー(NK)細胞および7-AAD+死細胞を分析から排除した。試料をBD FACSCanto IIフローサイトメーター(BD Biosciences)によって増殖読み取り測定値として測定した。細胞分裂を示すCFSEピークに基づいたT細胞増殖の詳細な分析をFlowJo 10.4ソフトウェアによって行い、エクスポートされた増大指数値を用いてGraphPad Prismバージョン6.04(GraphPad Software, Inc)で用量反応曲線をプロットした。増大指数は全培養物の増大倍率を規定する。2.0の増大指数は細胞数が2倍になったことを表し、1.0の増大指数は全細胞数が変わらなかったことを表す。
【0449】
3人の異なるドナーからのPBMCは、刺激のために2つの異なる抗CD3濃度と、対照として抗CD3無しとを試験して分析された。図15は、二重特異性抗体PD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEARが、CD4+T細胞およびCD8+T細胞の両方の強力な増大を誘導したことを示す。1つの無関係のアームを有する一価CD137-対照抗体であるb12-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEAR、および対応する二価親抗体CD137-009-HC7LC2-FEARは、アイソタイプ対照抗体b12 IgGとのインキュベーションと比較した場合にCD4+(A)またはCD8+(B)T細胞増殖に影響を及ぼさなかった。(培地のみの対照群における高い増大指数によって観察された[0.1μg/ml抗CD3刺激でのドナー1を参照されたい])抗CD3によるPBMC刺激が既に強力にT細胞を活性化している場合のみ、一価PD-L1対照抗体ならびに二価親抗体(それぞれ、b12-FEAL×PD-L1-547-FEARおよびPD-L1-547-FEAR)はb12 IgGと比較してT細胞増殖をわずかに強化した。一価および二価PD-L1対照抗体に匹敵するT細胞増殖レベルは、組み合わされた一価対照抗体(b12-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEAR+b12-FEAL×PD-L1-547-FEAR)について、および組み合わされた対応する親抗体(CD137-009-HC7LC2-FEAR+PD-L1-547-FEAR)についても検出可能であった。しかしながら、二重特異性PD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEAR抗体によって誘導された増殖の強化は両方の組み合わされた対照(一価および二価)よりも優れていた(図15)。
【0450】
別の独立した研究において、PD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEARのEC50値を、0.03μg/mLおよび0.09μg/mLの抗CD3を用いて最適以下で刺激した、2人のドナーから得たPBMCを用いて求めた。PD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEARを、1μg/mLから開始して、0.15ng/mLで終了した段階希釈液を用いてアッセイし、1μg/mLのb12-IgG-FEALをアイソタイプ対照抗体として含めた。CD4+T細胞およびCD8+T細胞の増殖については用量反応曲線を作製し(図16)、CD8+T細胞増殖については表4に示したようにEC20、EC50、およびEC90値も求めた。
【0451】
(表4)非抗原特異的T細胞増殖アッセイ法によって測定したCD8+T細胞増大データに基づくPD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEARのEC20、EC50、およびEC90値の決定。示したデータは、4パラメータ対数フィットに基づいて算出した値である(図16)。
【0452】
実施例15: PD-L1およびCD137に結合する二重特異性抗体によって誘導されたサイトカイン放出を測定するための抗原特異的CD8+T細胞増殖アッセイ法
PD-L1およびCD137を標的とする二重特異性抗体PD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEARによるサイトカイン放出の誘導を、本質的に実施例7に記載のように行った抗原特異的アッセイ法において測定した。
【0453】
T細胞を、2μgのPD-1コードIVT RNAと共にまたは2μgのPD-1コードIVT RNAなしで10μgのTCRα鎖コードRNAおよび10μgのβ鎖コードRNAを用いて電気穿孔した。電気穿孔したT細胞を(前記のように)CFSE標識しなかったが、電気穿孔の直後に、5%ヒトAB血清を加えた新鮮なIMDM培地(Life Technologies GmbH, カタログ番号12440-061)に移した。iDCを、前記のように5μgのクローディン-6(CLDN6)コードRNAで電気穿孔した。O/Nインキュベーション後に、前記のように、DCをAlexa647結合CLDN6特異的抗体で染色し、T細胞を抗マウスTCRβ鎖抗体および抗ヒトCD279抗体で染色した。
【0454】
5%ヒトAB血清を加えたIMDM GlutaMAXが入っている96ウェル丸底プレートの中で、様々な濃度のPD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEAR二重特異性抗体または対照抗体b12×IgG-FEALの存在下で、5,000個の電気穿孔したDCを50,000個の電気穿孔したT細胞と共にインキュベートした。48時間のインキュベーション期間後に、プレートを500×gで5分間遠心分離し、上清を各ウェルから新鮮な96ウェル丸底プレートに注意深く移し、MSD(登録商標)プラットフォームによるサイトカイン分析まで80℃で保管した。抗原特異的増殖アッセイ法から収集した上清を、10の異なるサイトカインのサイトカインレベルについて、MESO QuickPlex SQ 120装置(Meso Scale Diagnostics, LLC.,カタログ番号R31QQ-3)においてMSD V-Plex Human Proinflammatory panel 1(10-Plex)キット(Meso Scale Diagnostics, LLC., カタログ番号K15049D-2)によって製造業者の説明書に従って分析した。
【0455】
PD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEARを添加すると、主としてIFN-γ、TNF-α、IL-13、およびIL-8の分泌が濃度依存的に増加した(図17)。他の全てのサイトカイン(IL-10、IL-12p70、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-6)のサイトカインレベルは、対照抗体b12-IgG-FEALで処理した同時培養物について検出されたレベルを超えて上昇しなかった。T細胞をPD-1 RNAで電気穿孔しなかったT細胞:DC同時培養物を、T細胞を2μgのPD-1 RNAで電気穿孔したT細胞:DC同時培養を比較すると、PD-1 RNA電気穿孔がない同時培養物の方がわずかに高いサイトカインレベルを検出することができた。これは、PD-L1-547-FEAL×CD137-009-FEAR用量反応曲線ならびにb12-IgG-FEAL対照抗体値の両方について観察された。
【0456】
実施例16: PD-L1およびCD137に結合する二重特異性抗体によって誘導されたサイトカイン放出を測定するための抗原非特異的インビトロT細胞増殖アッセイ法
PD-L1およびCD137を標的とする二重特異性抗体PD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEARによるサイトカイン放出の誘導を、本質的に前記(実施例14)のように行った抗原非特異的インビトロT細胞増殖アッセイ法において測定した。10種類の炎症促進性サイトカイン(IFN-γ、TNF-α、IL-13、IL-8、IL-10、IL-12p70、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-6)のサイトカイン放出に対するトランス結合、すなわち、両アームと、両アームのそれぞれの標的との同時結合の効果を、抗体添加の48時間後に収集した上清のマルチプレックスサンドイッチイムノアッセイ法によって分析した。
【0457】
PBMCを(前記のように)CFSE標識しなかったが、単離した直後に播種し、1種類の抗CD3抗体濃度(0.03μg/mL最終濃度)だけを使用した。
【0458】
48時間のインキュベーション期間後に、前記細胞を500×gで5分間遠心分離することによって収集し、上清を各ウェルから新鮮な96ウェル丸底プレートに注意深く移し、MSD(登録商標)プラットフォームによるサイトカイン分析まで-80℃で保管した。収集した上清を、MESO QuickPlex SQ 120装置(Meso Scale Diagnostics, LLC.,カタログ番号R31QQ-3)においてMSD V-Plex Human Proinflammatory panel 1(10-Plex)キット(Meso Scale Diagnostics, LLC., カタログ番号K15049D-2)によって製造業者の説明書に従って10の異なるサイトカインのサイトカインレベルについて分析した。
【0459】
PD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEARの添加は、主としてIFN-γ、TNF-α、IL-2、およびIL-13の分泌の濃度依存的増加を誘導した(図18)。IL-10、IL-12p70、ならびにIL-4については、レベルがわずかにしか上昇しなかった用量反応曲線も検出することができた。IL-1β、IL-6、およびIL-8のサイトカインレベルはベースラインレベルのままであり、従って、対照抗体b12-IgG-FEALで処理した同時培養物について検出されたレベルと同等であった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
【配列表】
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