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特許7290014活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ及び印刷物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ及び印刷物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20230606BHJP
   C09D 11/38 20140101ALI20230606BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230606BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
C09D11/322
C09D11/38
B41J2/01 127
B41J2/01 501
B41M5/00 120
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022162047
(22)【出願日】2022-10-07
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2021192636
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉川 卓視
(72)【発明者】
【氏名】菊辻 剛輔
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/152037(WO,A1)
【文献】特開2015-183147(JP,A)
【文献】特表2013-514904(JP,A)
【文献】特開2022-149204(JP,A)
【文献】特開2014-070135(JP,A)
【文献】特開2017-095531(JP,A)
【文献】国際公開第2012/172973(WO,A1)
【文献】特開2019-089961(JP,A)
【文献】特開2015-168723(JP,A)
【文献】国際公開第2013/062090(WO,A1)
【文献】特開2013-053208(JP,A)
【文献】国際公開第2017/145671(WO,A1)
【文献】特開2014-210871(JP,A)
【文献】国際公開第2017/188003(WO,A1)
【文献】特開2017-155190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/322
B41J 2/01
B41M 5/00
C09D 11/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C.I.Pigment Yellow 150、活性エネルギー線重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)、及び界面活性剤(C)を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインキであって、
前記C.I.Pigment Yellow 150が、ゲスト分子としてメラミンを含む包接化合物を含み、
前記活性エネルギー線重合性化合物(A)が、一般式1で表される化合物(A-1)と、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びアルカンジオールジ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる化合物(A-2)とを含み、
前記光重合開始剤(B)がアシルホスフィンオキサイド系開始剤(B-1)を含み、
前記界面活性剤(C)が、重量平均分子量が400~20,000であるシロキサン系界面活性剤(C-1)を含み、
前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインキの全量中における、前記シロキサン系界面活性剤(C-1)の含有量(質量%)に対する、前記ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びアルカンジオールジ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる化合物(A-2)の含有量(質量%)の比が、2~150であり、
前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ中に含まれる、下記一般式2で表される化合物の総量が100ppm以下である、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ。

一般式1:
CH2=CH-CO-(O-CH2CH2n-O-R1
(一般式1中、R1はアクリロイル基またはビニル基を表し、nは2~10の整数を表す。)

一般式2:
【化1】
(一般式2中、R2及びR3は、それぞれ独立に、アミノ基または水酸基を表す。)
【請求項2】
前記アシルホスフィンオキサイド系開始剤(B-1)が、アルコキシホスフィンオキサイド構造を有する化合物を含む、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ。
【請求項3】
前記一般式1で表される化合物(A-1)の含有量が、前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインキの全量中10~90質量%である、請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ。
【請求項4】
請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを用いて得られる印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ、及び、当該活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを用いて得られる印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の印刷業界においては、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷等の従来からの有版印刷に代わって、版を使用することなく印刷を行うデジタル印刷が急速に普及している。その理由として、製版が不要であるため低コストかつ短時間で印刷物が得られること、従来の有版印刷機と比べ印刷装置が小型かつ安価であること、印刷に従事する者の技量によらず均一な印刷物を容易に得ることができることなどが挙げられる。
【0003】
デジタル印刷方式の一種であるインクジェット印刷方式は、印刷装置のサイズ及びコスト、印刷時のランニングコスト、フルカラー化の容易性、高い印刷速度など、他のデジタル印刷方式と比べて様々な面で優れており、近年特に、産業印刷用途での利用が進んでいる。
【0004】
そのインクジェット印刷方式で使用されるインキは、水型、油型、溶剤型、活性エネルギー線硬化型等の多岐に渡る。中でも近年では、プラスチック及びガラス等の非吸収性の基材にも適用できること、乾燥(硬化)時間の速さ、印刷物の強度等の特性が優れていることなどから、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキの需要がますます高まっている。
【0005】
また近年、インクジェットヘッドの技術革新が進み、20kHz以上の高周波数で吐出することが可能なインクジェットヘッドも販売されている。更に、これらのインクジェットヘッドを1つまたは複数並べて基材の幅以上の長さになるように設置した後、当該インクジェットヘッドの下方に搬送された基材に対し、吐出操作を1回だけ行い印刷を完了させる、活性エネルギー線硬化型インクジェットラインプリンターも販売されている。
【0006】
上記活性エネルギー線硬化型インクジェットラインプリンターにおいては、インクジェットヘッドから基材上に吐出された活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを、当該インクジェットヘッドよりも下流側に設置された活性エネルギー線の発生源から照射される当該活性エネルギー線の一回の照射によって、十分に硬化させる必要がある。そのため、上記活性エネルギー線硬化型インクジェットインキには、硬化性に優れる活性エネルギー線重合性化合物、及び、上記活性エネルギー線により、当該活性エネルギー線重合性化合物の重合反応の起点となるラジカル等を有効に発生する光重合開始剤を配合することが重要となる(例えば、特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭58-52361号公報
【文献】特開2000-119544号公報
【文献】特開2006-282758号公報
【文献】特開2011-195694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば、様々な波長の活性エネルギー線に対する硬化性を確保するため、光重合開始剤としてアシルホスフィンオキサイド系開始剤が用いられる。またアシルホスフィンオキサイド系開始剤を使用した活性エネルギー線硬化型インクジェットインキは、基材密着性にも優れる傾向にある。
【0009】
一方、C.I.Pigment Yellow 150は、耐候性が非常に強いイエロー顔料として知られており、屋外で使用される物品に貼付されるラベル等の強い耐候性が求められる用途において使用される。
【0010】
しかしながら、C.I.Pigment Yellow 150は分散が困難な顔料であることもまた知られている。従来から、メラミンを包接させることで、当該C.I.Pigment Yellow 150の分散安定性の確保を図っているが(特許文献1~2参照)、必ずしも十分とはいいがたく、また一般に、分散安定性を確保するためには、メラミンをC.I.Pigment Yellow 150と同量以上添加する必要があった。
【0011】
特に、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキの場合、硬化性及びインクジェット印刷適性(例えば連続印刷時の吐出安定性)の向上の観点から、使用できる材料が大幅に制限される。またこの制限は、活性エネルギー線硬化型インクジェットラインプリンターで当該活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを使用しようとした場合に、より顕著なものとなる。実際に本発明者らが、アシルホスフィンオキサイド系開始剤を、C.I.Pigment Yellow 150を分散した活性エネルギー線硬化型インクジェットインキに配合したところ、C.I.Pigment Yellow 150の分散安定性の悪化(活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ中のC.I.Pigment Yellow 150の、粒子径の増加及び/または析出)が発生し、更には、活性エネルギー線を照射していないにも関わらず、経時で活性エネルギー線硬化型インクジェットインキの粘度が増加する(増粘)、吐出安定性が悪化する、といった不具合も確認された。
【0012】
従来は、例えば特許文献3に記載のように特定構造の顔料分散樹脂を使用する、特許文献4に記載のように顔料誘導体(分散助剤)を併用するなどの所作を実施することで、分散安定性、粘度安定性(経時での粘度の増加の抑制)、及び、吐出安定性の両立を図っていた。しかしながら、本発明者らが検討を進めたところ、それらの方策を行ったとしても、C.I.Pigment Yellow 150及びアシルホスフィンオキサイド系開始剤を含む活性エネルギー線硬化型インクジェットインキでは、当該C.I.Pigment Yellow 150の分散状態が破壊され、また、当該分散状態の破壊に起因すると考えられる、経時での粘度の増加、及び、吐出安定性の悪化が起こりうることがわかった。
【0013】
すなわち、C.I.Pigment Yellow 150及びアシルホスフィンオキサイド系開始剤を含み、硬化性及び基材密着性を有しながら、分散安定性、粘度安定性、吐出安定性等にも優れる活性エネルギー線硬化型インクジェットインキは、いまだ存在しない状況であった。
【0014】
本発明の実施形態は、上記課題を解決するためになされたもので、分散安定性及び粘度安定性に優れ、吐出安定性、硬化性、基材密着性も兼ね備えた、C.I.Pigment Yellow 150を含む活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ、及び前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを用いて得られる印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す活性エネルギー線硬化型インクジェットインキにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち本発明の一実施形態は、C.I.Pigment Yellow 150、活性エネルギー線重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)、及び界面活性剤(C)を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインキであって、
前記C.I.Pigment Yellow 150が、ゲスト分子としてメラミンを含む包接化合物を含み、
前記活性エネルギー線重合性化合物(A)が、一般式1で表される化合物(A-1)と、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びアルカンジオールジ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる化合物(A-2)とを含み、
前記光重合開始剤(B)がアシルホスフィンオキサイド系開始剤(B-1)を含み、
前記界面活性剤(C)が、重量平均分子量が400~20,000であるシロキサン系界面活性剤(C-1)を含み、
前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインキの全量中における、前記シロキサン系界面活性剤(C-1)の含有量(質量%)に対する、前記ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びアルカンジオールジ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる化合物(A-2)の含有量(質量%)の比が、2~150であり、
前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ中に含まれる、下記一般式2で表される化合物の総量が100ppm以下である、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキに関する。

【0017】
一般式1: CH2=CH-CO-(O-CH2CH2n-O-R1
【0018】
一般式1中、R1はアクリロイル基またはビニル基を表し、nは2~10の整数を表す。
【0019】
一般式2:
【化1】
【0020】
一般式2中、R2及びR3は、それぞれ独立に、アミノ基または水酸基を表す。
【0021】
また本発明の他の一実施形態は、上記の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを用いて得られる印刷物に関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の実施形態により、分散安定性及び粘度安定性に優れ、吐出安定性、硬化性、基材密着性も兼ね備えた、C.I.Pigment Yellow 150を含む活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ、及び前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを用いて得られる印刷物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。また、特にことわりのない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を表す。
【0024】
上述した通り、本発明の実施形態において、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ(以下、単に「インキ」ともいう)は、C.I.Pigment Yellow 150、上記一般式1で表される化合物(A-1)、アシルホスフィンオキサイド系開始剤(B-1)、及び、重量平均分子量が400~20,000であるシロキサン系界面活性剤(C-1)を含み、更に、上記一般式2で表される化合物の総量が100ppm以下であることを特徴とする。
【0025】
C.I.Pigment Yellow 150は、耐候性に優れたイエロー顔料であるが、分散が非常に難しいことが知られている。またその改善のため、上述した方策が提案されているが、分散安定性、粘度安定性、及び、吐出安定性の全ての特性を確保する観点からは、十分とは言えない状況であった。そこで、本発明者らが鋭意要因調査を進めた結果、上記一般式2で表される化合物の存在を突き止めた。
【0026】
一般式2で表される化合物は、C.I.Pigment Yellow 150が包接しているメラミンの加水分解物及び/または不純物であると考えられる。詳細な要因は不明ながら、一般式2で表される化合物中に存在する水酸基と、C.I.Pigment Yellow 150との間に強力な水素結合が形成されることで、当該C.I.Pigment Yellow 150の分散状態が不安定化し、更には当該分散状態が破壊されると考えられる。また、分散状態の不安定化及び破壊に起因して、インキの粘度が増加するとともに、インクジェットヘッド内で、分散状態が破壊され凝集したC.I.Pigment Yellow 150が析出し、吐出安定性が悪化する要因になると考えられる。
【0027】
また上述した、アシルホスフィンオキサイド系開始剤とC.I.Pigment Yellow 150とを併用した際の、分散安定性の悪化、インキの粘度の増加(増粘)や吐出安定性の悪化といった不具合の原因として、一般式2で表される化合物中に存在する水酸基が、アシルホスフィンオキサイド系開始剤中のホスフィンオキサイド部位と相互作用を起こすことで、当該アシルホスフィンオキサイド系開始剤が開裂し、ラジカルが発生することが考えられる。このように、C.I.Pigment Yellow 150とアシルホスフィンオキサイド系開始剤とを含む活性エネルギー線硬化型インクジェットインキでは、一般式2で表される化合物に起因して、分散安定性、粘度安定性、吐出安定性の確保が難しく、また、これらの特性と、硬化性及び基材密着性との両立も非常に難しいと考えられる。
【0028】
上述した状況を受け、本発明の実施形態では、一般式2で表される化合物の含有量を低減させることで、C.I.Pigment Yellow 150及びアシルホスフィンオキサイド系開始剤(B-1)を含む活性エネルギー線硬化型インクジェットインキであっても、分散安定性、粘度安定性、吐出安定性、硬化性及び基材密着性の全てを両立させることが可能となった。ただし、単純にインキ中に存在する一般式2で表される化合物の量を低減しただけでは、例えば、経時による加水分解反応で生じた、当該化合物による悪影響を完全には抑制できない。
【0029】
そこで本発明の実施形態では、一般式1で表される化合物(A-1)、及び、重量平均分子量が400~20,000であるシロキサン系界面活性剤(C-1)を併用することで、上述した問題点の抑制を図っている。その詳細な理由は不明ながら、一般式(1)で表される化合物(A-1)中のエチレンオキサイド基、及び、シロキサン系界面活性剤(C-1)中のシロキサン鎖と、一般式2で表される化合物中に存在するトリアジン環との間に相互作用が生じ、微量発生する、当該一般式2で表される化合物が捕捉されると考えられる。特に、本発明の実施形態で用いるシロキサン系界面活性剤(C-1)は、分子量が大きいため、当該一般式2で表される化合物を包接するような形となり、その影響を抑制することができると考えられる。その一方で、シロキサン系界面活性剤の本来の特性である表面張力の調整機能及びレベリング性も発現し、インクジェットインキとしての吐出安定性の確保及び基材密着性の更なる向上も実現できる。
【0030】
更に、一般式2で表される化合物の含有量が少ない状態で、インキ中にC.I.Pigment Yellow 150を分散させると、粒度分布がシャープになる。その結果、印刷時のインキ塗膜中の紫外線透過度が向上し、結果として塗膜内部まで十分に紫外線が到達することで基材密着性が向上する。また、塗膜内部にまで紫外線を到達させることができるため、アシルホスフィンオキサイド系開始剤(B-1)が十分なエネルギーを受け取ることができ、硬化性の更なる向上も可能となる。加えて、粒度分布がシャープであることで、吐出安定性の更なる向上も実現できる。
【0031】
以上のように、C.I.Pigment Yellow 150及びアシルホスフィンオキサイド系開始剤を含有し、分散安定性及び粘度安定性に優れ、更に、硬化性、基材密着性、吐出安定性をも兼ね備えた活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを得るためには、本発明の実施形態に関して上述した構成は必須不可欠である。
【0032】
なお、一般式2で表される化合物は、本発明の実施形態による効果、特に分散安定性及び吐出安定性の向上を阻害する恐れがあるため、その含有量は少ないほど好ましい。上述した通り、本発明の実施形態によれば、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ中に含まれる、下記一般式2で表される化合物の総量は100ppm以下であるが、より好ましい含有量は80ppm以下であり、特に好ましくは55ppm以下である。なお上述した通り、一般式2で表される化合物は、例えば経時に伴い発生する可能性がある。そのような場合、上記経時に伴い発生した一般式2で表される化合物の量も含めて、インキ中に含まれる当該一般式2で表される化合物の総量とする。
【0033】
以下、本発明のインキに含まれる成分について具体的に説明する。
【0034】
<C.I.Pigment Yellow 150>
C.I.Pigment Yellow 150は、モノアゾ骨格をもつニッケル錯体である。
インキ中に含まれる、一般式2で表される化合物の総量が100ppm以下となるものであれば、C.I.Pigment Yellow 150として、合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。合成品を使用する場合、その合成方法に特段の制限はなく、従来既知の方法を任意に使用できる。一例として、アゾバルビツール酸と水との混合物を加熱した後、ニッケル塩及びメラミンを加え高温下で錯体化させ、得られた生成物を濾過した後、乾燥及び粉砕する方法が挙げられる。
顔料として合成されたC.I.Pigment Yellow 150、及び、顔料として市販されているC.I.Pigment Yellow 150では、C.I.Pigment Yellow 150であるアゾバルビツール酸のニッケル錯体が、メラミンをゲスト分子として包接した、包接化合物として存在している場合がある。そのため、C.I.Pigment Yellow 150を含有するインキは、C.I.Pigment Yellow 150を含む包接化合物を含有している場合がある。このようなインキは、メラミンを含有する。
【0035】
また、C.I.Pigment Yellow 150の粒度分布及びアスペクト比を調整し、分散安定性、吐出安定性、及び、粘度安定性を向上させるため、上記生成物と、水、及び、必要に応じて有機溶剤、界面活性剤等とを一定温度下で混合する工程(顔料化工程)、及び/または、篩、沈降分離装置、遠心分離機等により、上記生成物から所定の粒度分布を有するものを取り出す工程(分級工程)を実施してもよい。なお、分級工程は、湿式条件下で行ってもよいし、乾式条件下で行ってもよい。
【0036】
本発明の実施形態によれば、インキで使用されるC.I.Pigment Yellow 150は、一般式2で表される化合物の含有量を低減させる観点から、水、水溶性無機化合物の水溶液、水溶性有機化合物の水溶液、及び有機溶剤からなる群から選択される1種以上の液体(以下、総称して「洗浄用液体」とも呼ぶ)で洗浄する工程(洗浄工程)を経て製造されたものであることが好ましい。中でも、洗浄用液体として、弱アルカリ性に調整した、水溶性無機化合物及び/または水溶性有機化合物の水溶液を使用することが好適である。また、一般式2で表される化合物の含有量を低減させる観点から、洗浄工程は複数回実施することが好ましい。その際、実施回ごとに異なる洗浄用液体を使用してもよく、少なくとも1回以上、洗浄用液体として、弱アルカリ性に調整した、水溶性無機化合物及び/または水溶性有機化合物の水溶液を使用することが特に好適である。
【0037】
一方、市販品のC.I.Pigment Yellow 150を使用する場合、例えばクラリアント社の「Hostaperm Yellow HN4G」、ランクセス社の「BAYSCRIPT(登録商標) Yellow 4GF」、「BAYPLAST(登録商標) Yellow 5GN」、「Yellow Pigment E4GN」、「Yellow Pigment E4GN-GT」、BASF社の「CROMOPHTAL(登録商標) Yellow D 1085」等を使用できる。
【0038】
なお、市販品を使用する場合、インキ中の一般式(2)で表される化合物の含有量を低減させる観点から、当該市販品に対して上述した洗浄工程を施してもよい。好適な洗浄条件に関しては、上述した合成品の場合と同様である。
【0039】
本発明の実施形態によれば、インキ中に含まれるC.I.Pigment Yellow 150の含有量は、吐出安定性、硬化性、粘度安定性及び発色性の観点から、当該インキ全量中、1~10質量%であることが好ましく、1.5~8質量%であることがより好ましく、2~5質量%であることが更に好ましく、2.5~5質量%であることが特に好ましい。本発明の実施形態によれば、インキは、一般式2で表される化合物の量が一定量以下であるうえ、当該一般式2で表される化合物の影響を抑制することができる。そのため、インキ中に含まれるC.I.Pigment Yellow 150の含有量が多くても、分散安定性、粘度安定性、吐出安定性、硬化性、基材密着性の全てに優れたインキを得ることが可能となる。
【0040】
<活性エネルギー線重合性化合物(A)>
本発明の実施形態における活性エネルギー線重合性化合物(A)(以下、単に「重合性化合物」とも言う)とは、後述する光重合開始剤等から発生するラジカル等の開始種により重合または架橋反応を生起し、これらを含有する組成物を硬化させる機能を有するものである。
【0041】
本発明の実施形態のインキは、活性エネルギー線重合性化合物(A)として、一般式1で表される化合物(A-1)を含む。上述した通り、一般式(1)で表される化合物(A-1)が、一般式2で表される化合物を捕捉することで、当該化合物による、分散安定性、粘度安定性、及び、吐出安定性の悪化を防止していると考えられる。またこの捕捉により、インキを保存した際等に、一般式2で表される化合物によってアシルホスフィンオキサイド系開始剤(B-1)が開裂してしまうことを防止でき、インキの製造当初に添加した当該アシルホスフィンオキサイド系開始剤(B-1)が十分に機能できるため、硬化性及び基材密着性に優れた印刷物を得ることが可能となる。
【0042】
(一般式1で表される化合物(A-1))
上記一般式1で表される化合物(A-1)として、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、及び、4以上の連結したエチレンオキサイド基の両末端にアクリロイル基を有する化合物(ポリエチレングリコール(EO基数≧4)ジアクリレート)、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、アクリル酸2-[2-(2-ビニロキシエトキシ)エトキシ]エチル等が挙げられる。
【0043】
上記列挙した一般式1で表される化合物(A-1)の中でも、トリエチレングリコールジアクリレート、及び/または、アクリル酸2-(ビニロキシエトキシ)エチルが、分散安定性及び粘度安定性に特段に優れたインキが得られることから好ましく使用される。
【0044】
分散安定性、粘度安定性、吐出安定性の観点から、一般式1で表される化合物(A-1)の含有量は、インキ全量中10~90質量%であることが好ましく、更に密着性にも優れたインキが得られる観点から、30~90質量%であることがより好ましく、50~85質量%であることが特に好ましい。
【0045】
(化合物(A-2))
硬化性、及び、吐出安定性が一層向上する観点から、本発明の実施形態によれば、インキは、上記一般式1で表される化合物(A-1)と、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びアルカンジオールジ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる化合物(A-2)(本明細書では単に「化合物(A-2)」ともいう)とをと併用することが好ましい。また化合物(A-2)は、プロピレンオキサイド基やアルキル基といった疎水性の大きな官能基を有しており、重量平均分子量が400~20,000であるシロキサン系界面活性剤(C-1)との相溶性が高いと考えられる。このため、当該シロキサン系界面活性剤(C-1)がインキ中に均一に存在できるようになり、当該シロキサン系界面活性剤(C-1)による、一般式2で表される化合物の捕捉機能、表面張力の調整機能、及び、レベリング性が好適に発現できるようになることで、本発明の実施形態による効果が一層優れたものになると考えられる。
【0046】
特に、硬化性に優れる点から、化合物(A-2)として、ポリプロピレングリコールジアクリレート及びアルカンジオールジアクリレートからなる群から選ばれる化合物を使用することが好適である。
【0047】
なお、本明細書における「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリロイル」といった記載は、それぞれ、「アクリレート及び/またはメタクリレート」及び「アクリロイル及び/またはメタクリロイル」を意味する。
【0048】
ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートとして、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び、4個以上連結したプロピレンオキサイド基の両末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物(ポリプロピレングリコール(PO基数≧4)ジ(メタ)アクリレート)等が挙げられる。これらの中でも、硬化性及び吐出安定性の観点から、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び/または、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートを使用することが好適であり、硬化性の観点から、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び/または、トリプロピレングリコールジアクリレートを使用することが特に好適である。
【0049】
また、アルカンジオールジ(メタ)アクリレートは、分岐を有しないものであってもよいし、分岐を有するものであってもよい。分岐を有しないアルカンジオールジ(メタ)アクリレートとして、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート等が例示でき、分岐を有するアルカンジオールジアクリレートとして、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-エチル-2-ブチルブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-エチル-2-ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート等が例示できる。これらの中でも、硬化性及び吐出安定性の観点から、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、及び、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上を使用することが好適であり、硬化性の観点から、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレートからなる群から選択される1種以上を使用することが特に好適である。
【0050】
本発明の実施形態によれば、インキが化合物(A-2)を含む場合、その量は、硬化性及び吐出安定性の観点から、インキ全量中5~70質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましく、15~50質量%であることが特に好ましい。
【0051】
また、上述した重量平均分子量が400~20,000であるシロキサン系界面活性剤(C-1)との相溶性を好適に高め、本発明の実施形態による効果を一層好適に発現させる観点から、本発明の実施形態のインキが化合物(A-2)を含む場合、当該インキ中のシロキサン系界面活性剤(C-1)の含有量(質量%)に対する、化合物(A-2)の含有量(質量%)の比は、2~150であることが好ましく、4~50であることが特に好ましい。
【0052】
(その他重合性化合物)
本発明の実施形態のインキは、上述した化合物以外の重合性化合物(本明細書では「その他重合性化合物」ともいう)を含んでいてもよい。その他重合性化合物として、従来既知のモノマー、オリゴマー、ポリマーを使用することができる。なお「オリゴマー」及び「ポリマー」とは、モノマーが複数個結合した重合体であり、両者は重合度によって分類される。すなわち本明細書では、重合度が2~5であるものを「オリゴマー」と呼び、6以上であるものを「ポリマー」と呼ぶ。
【0053】
ラジカル重合性モノマーが有する重合性基として、例えば、(メタ)アクリロイル基、N-ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基、不飽和カルボン酸基等が挙げられる。また、ラジカル重合性モノマーは、単官能モノマーであっても、多官能モノマーであってもよい。更に、反応速度、印刷物の物性、インキの物性等を調整する観点から、その他重合性化合物を使用する場合、1種の化合物のみを使用してもよいし、複数の重合性化合物を混合して用いてもよい。
【0054】
なお、本明細書における「単官能」とは、1分子中に重合性基を1つのみ有する化合物を指し、「二官能」及び「三官能」は、それぞれ、1分子中に重合性基を2つ及び3つ有する化合物を指す。なお本明細書では、二官能以上を総称して「多官能」とも呼称する。
【0055】
本発明の実施形態によれば、インキが、その他重合性化合物として多官能モノマーを含む場合、基材密着性及び吐出安定性の向上の観点から、当該多官能モノマーとして二官能モノマーを使用することが好適である。
【0056】
また本発明の実施形態によれば、インキが、その他重合性化合物として単官能モノマーを含む場合、硬化性及び基材密着性の向上の観点から、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上となる単官能モノマーを、インキ中に含まれる単官能モノマーの全量中50質量%以上使用することが好適である。
【0057】
一方、一般に、単官能モノマーは、多官能モノマーと比較して硬化性に劣ることが知られている。また、単官能モノマーは分子量が小さいものが多いため、インキ中に大量に存在すると、上述した、一般式1で表される化合物(A-1)による、一般式2で表される化合物の捕捉効果を阻害する恐れがある。以上の観点から、インキが単官能モノマーを含む場合、その総量は、一般式1で表される化合物(A-1)の含有量の総量に対して、85質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。単官能モノマーの総量を、一般式1で表される化合物(A-1)の含有量の総量に対して85質量%以下とすることで、インキの分散安定性、粘度安定性、及び、吐出安定性、並びに、印刷物の硬化性の全てを同時に向上させることが可能となる。
【0058】
なお単官能モノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、当該単官能モノマーのカタログ情報から入手できる場合はその値を使用し、当該カタログ情報が入手できない場合は、重量平均分子量が10,000以上になるように作製した単官能モノマーのホモポリマーを試料として示差走査熱量測定(DSC)を行い、得られた値を使用する。なおホモポリマーの重量平均分子量は、後述するシロキサン系界面活性剤(C-1)の重量平均分子量と同様の方法により測定できる。
【0059】
その他重合性化合物として使用できる単官能モノマーを例示すると、単官能(メタ)アクリレート化合物(重合性基として、1分子中に(メタ)アクリロイル基を1個のみ有する化合物)として、ジシクロペンテニル(オキシエチル)(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルEO変性(メタ)アクリレート、β-カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノールEO変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールPO変性(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート1,4-シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等;
単官能N-ビニル化合物(重合性基として、1分子中にN-ビニル基を1個のみ有する化合物)として、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルピロリドン、N-ビニルオキサゾリジノン、N-ビニルメチルオキサゾリジノン等;が、それぞれ挙げられる。
【0060】
また、その他重合性化合物として使用できる二官能モノマーのうち、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個有する化合物(「二官能(メタ)アクリレート化合物」)として、EO変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、PO変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO・PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0061】
また、その他重合性化合物として使用できる、1分子中に(メタ)アクリロイル基とアリル基とを1個ずつ有する二官能モノマーとして、2-(アリルオキシメチル)メチルアクリレート、2-(アリルオキシメチル)エチルアクリレート等が挙げられる。
【0062】
また、その他重合性化合物として使用できる三官能モノマーのうち、三官能(メタ)アクリレート化合物(重合性基として、1分子中に(メタ)アクリロイル基を3個有する化合物)として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセリルトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0063】
また、その他重合性化合物として使用できる四官能モノマーのうち、四官能(メタ)アクリレート化合物(重合性基として、1分子中に(メタ)アクリロイル基を4個有する化合物)として、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0064】
また、その他重合性化合物として使用できる五官能モノマーのうち、五官能(メタ)アクリレート化合物(重合性基として、1分子中に(メタ)アクリロイル基を5個有する化合物)として、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0065】
また、その他重合性化合物として使用できる六官能モノマーのうち、六官能(メタ)アクリレート化合物(重合性基として、1分子中に(メタ)アクリロイル基を6個有する化合物)として、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、ε-カプトラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0066】
なお、上記「EO」は「エチレンオキサイド」を指し、「PO」は「プロピレンオキサイド」を指す。
【0067】
上述したその他重合性化合物の含有量は、インキ全量中0~50質量%であることが好ましく、0~30質量%であることがより好ましい。なお「0質量%」とは、インキ中にその材料が含まれないことを表す。
【0068】
<光重合開始剤(B)>
本発明の実施形態のインキは、光重合開始剤(B)として、アシルホスフィンオキサイド系開始剤(B-1)を含む。当該アシルホスフィンオキサイド系開始剤(B-1)として、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド、エチル(3-ベンゾイル-2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィネート等を挙げることができ、特表2016-535131号公報に開示された化合物等を使用することもできる。また市販品を使用する場合、IGM RESINS社製「OMNIRAD TPO」、「OMNIRAD 819」、「OMNIRAD 380」、「OMNIRAD TPO-L」、「OMNIPOL TP」、並びに、Lambson社製「Speedcure BPO」、「Speedcure TPO」、「Speedcure TPO-L」、「Speedcure XKm」等を好適に使用できる。これらのアシルホスフィンオキサイド系開始剤(B-1)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。ある好ましい実施形態では、硬化性及び基材密着性が向上できる観点から、アシルホスフィンオキサイド系開始剤(B-1)を2種以上使用することができる。
【0069】
中でも本発明の実施形態では、アシルホスフィンオキサイド系開始剤(B-1)として、アルコキシホスフィンオキサイド構造を有する化合物が好適に使用できる。このような化合物を使用すると、特に、インキの分散安定性、並びに、印刷物の硬化性及び基材密着性が向上する。推測ではあるがその理由として、アルコキシ基が、一般式2で表される化合物の接近を防止する一方、エチレンオキサイド基を有している一般式1で表される化合物(A-1)と親和しやすいことが考えられる。なおこの観点から、上記アルコキシ基の炭素数は、2以上であることが好適であり、2または3であることが特に好適である。
【0070】
上記列挙した化合物のうち、アルコキシホスフィンオキサイド構造を有する化合物として、エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド、及び、エチル(3-ベンゾイル-2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィネートが挙げられる。また市販品として例示したもののうち、IGM RESINS社製「OMNIRAD TPO-L」、「OMNIPOL TP」、並びに、Lambson社製「Speedcure TPO-L」、「Speedcure XKm」が、アルコキシホスフィンオキサイド構造を有する化合物である。
【0071】
なお本発明の実施形態では、アシルホスフィンオキサイド系開始剤(B-1)として、アルコキシホスフィンオキサイド構造を有する化合物と、アルコキシホスフィンオキサイド構造を有しない化合物とを併用することもできる。その場合、上述した効果が好適に発現され、インキの分散安定性、並びに、印刷物の硬化性及び基材密着性が同時に向上するという観点から、アシルホスフィンオキサイド系開始剤(B-1)全量に対する、アルコキシホスフィンオキサイド構造を有する化合物の含有量は、30質量%以上100質量%未満であることが好ましく、50質量%以上100質量%未満であることが特に好ましい。
【0072】
更に本発明の実施形態では、光重合開始剤(B)として、上記アシルホスフィンオキサイド系開始剤(B-1)に加えてα-ヒドロキシケトン系開始剤を使用することが、分散安定性、粘度安定性、硬化性、及び、吐出安定性の観点から好ましい。この理由は定かではないが、α-ヒドロキシケトン系開始剤中の水酸基が、一般式(2)で表される化合物と相互作用することで、当該α-ヒドロキシケトン系開始剤が、一般式1で表される化合物(A-1)や重量平均分子量が400~20,000であるシロキサン系界面活性剤(C-1)と同様の機能を発現するとともに、一般式(2)で表される化合物と、アシルホスフィンオキサイド系開始剤(B-1)中のホスフィンオキサイド部分との相互作用が抑制されるためと推測される。
【0073】
α-ヒドロキシケトン系開始剤として、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IGM RESINS社製「OMNIRAD 184」)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(IGM RESINS社製「OMNIRAD 1173」)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(IGM RESINS社製「OMNIRAD 659」)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(IGM RESINS社製「OMNIRAD 127」)、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]}プロパノン(IGM RESINS社製、「ESACUREONE」「ESACUREKIP150」)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプポパノイル)フェノキシ]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン(IGM RESINS社製「ESACUREKIP160」)等が挙げられる。
【0074】
(その他光重合開始剤)
本発明の実施形態によれば、インキは、上述した化合物以外にも、従来既知の光重合開始剤を更に含んでいてもよい。例えば、分子開裂型及び/または水素引き抜き型の光重合開始剤を使用することが好ましい。また、ラジカルを発生させる光重合開始剤と、カチオンを発生させる光重合開始剤とを併用してもよい。
【0075】
一方本発明の実施形態では、光重合開始剤として、α-アミノアルキルフェノン系開始剤の配合量を制限することが好適である。詳細なメカニズムは不明ながら、α-アミノアルキルフェノン系開始剤を大量に添加すると、一般式2で表される化合物のみならず、C.I.Pigment Yellow 150に包接されているメラミンとも相互作用を起こしてしまい、分散安定性、粘度安定性、及び、粘度安定性が悪化する恐れがあるためである。
【0076】
具体的には、本発明の実施形態によれば、インキに含まれるα-アミノアルキルフェノン系開始剤の含有量は、3質量%以下である(0質量%でもよい)ことが好ましく、2質量%以下である(0質量%でもよい)ことがより好ましく、1質量%以下である(0質量%でもよい)ことが更に好ましく、0.5質量%以下である(0質量%でもよい)ことが特に好ましい。
【0077】
なお、α-アミノアルキルフェノン系開始剤として、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(IGM RESINS社製「OMNIRAD907」)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1(IGM RESINS社製「OMNIRAD369」)、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン(IGM RESINS社製「OMNIRAD379」)等が挙げられる。
【0078】
<界面活性剤(C)>
(シロキサン系界面活性剤(C-1))
本発明の実施形態によれば、インキは、界面活性剤(C)として、重量平均分子量が400~20,000であるシロキサン系界面活性剤(C-1)を含む。上述した通り、シロキサン系界面活性剤(C-1)は、インキを保存した際等に微量発生する一般式2で表される化合物を捕捉することで、長期に渡って、分散安定性及び粘度安定性に優れ、更に、硬化性、基材密着性、吐出安定性をも兼ね備えたインキとすることができる。またシロキサン系界面活性剤(C-1)の有する表面張力調整機能及びレベリング性付与機能に基づき、吐出安定性の確保及び基材密着性の更なる向上も可能となる。
【0079】
上記シロキサン系界面活性剤(C-1)の重量平均分子量は、550~18,000のであることがより好ましく、1,000~14,000であることが更に好ましい。また、詳細は不明ながら、一般式2で表される化合物の捕捉効果が高い点から、シロキサン系界面活性剤(C-1)として、ポリエーテル変性シロキサン系界面活性剤を使用することが好適である。
【0080】
シロキサン系界面活性剤(C-1)は、従来既知の方法により合成したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。市販品の例としては、ビックケミー社製のBYK(登録商標)-348、349、378、BYK-UV3500、UV3510、エボニックデグサ社製のTEGO(登録商標) Glide 450、440、435、432、410、406;TEGO(登録商標) Rad 2100、2200N、2250、2300、2500、2650、2700等が挙げられる。
【0081】
なお、シロキサン系界面活性剤(C-1)の重量平均分子量は常法によって測定できる、ポリスチレン換算値である。測定方法の例としては、TSKgelカラム(東ソー社製)及びRI検出器を装備したGPC(例えば東ソー社製HLC-8320GPC)を用い、展開溶媒にTHFを用いて測定する方法が挙げられる。
【0082】
分散安定性、吐出安定性とレベリング性との両立の観点から、シロキサン系界面活性剤(C-1)の含有量は、インキ全量中0.1~3質量%であることが好ましく、0.2~2.5質量%であることがより好ましい。
【0083】
(その他界面活性剤)
また本発明の実施形態によれば、インキは、上記シロキサン系界面活性剤(C-1)以外の界面活性剤(本明細書では「その他界面活性剤」ともいう)を含んでいてもよい。その他界面活性剤として、例えば、シロキサン系界面活性剤(ただし、重量平均分子量が400未満または20,000超であるもの)、フッ素系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤等を使用できる。これらの中でも、シロキサン系界面活性剤(C-1)を阻害することなく、基材密着性、吐出安定性等に優れたインキが得られる観点から、シロキサン系界面活性剤(ただし、重量平均分子量が400未満または20,000超であるもの)、及び/または、アクリル系表面調整剤が好ましく使用できる。
【0084】
<その他成分>
本発明の実施形態によれば、インキは必要に応じて、上記成分以外に、顔料分散樹脂、重合禁止剤、有機溶剤等を含有することができる。
【0085】
(顔料分散樹脂)
そのうち顔料分散樹脂は、市販されているものを使用することもできるし、従来既知の方法により合成したものを使用することもできる。市販品の具体的な例として、ビックケミー社製「Disperbyk(登録商標)-106」、「Disperbyk-145」、並びに、ルーブリゾール社製「ソルスパース(登録商標)J-180」、「ソルスパース32000」、「ソルスパース39000」等が挙げられる。
【0086】
(重合禁止剤)
また、長期に渡って、分散安定性、粘度安定性、及び、吐出安定性を高めるため、重合禁止剤を使用することができる。当該重合禁止剤として、ヒンダードフェノール系化合物、フェノチアジン系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物が好適に使用でき、具体例として、4-メトキシフェノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、t-ブチルハイドロキノン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、フェノチアジン、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアルミニウム塩、等が挙げられる。硬化性を維持しつつ、分散安定性、粘度安定性、及び、吐出安定性を高める点から、インキ全体に対する重合禁止剤の配合量は、0.01~2質量%であることが好ましく、0.1~1質量%であることがより好ましい。
【0087】
<インキの製造方法>
本発明の実施形態によれば、インキは従来既知の方法によって製造することができる。具体例を挙げると、始めに、C.I.Pigment Yellow 150、重合性化合物、及び、必要に応じ顔料分散樹脂、重合禁止剤等を混合した後、ペイントシェーカー、サンドミル、ロールミル、メディアレス分散機等によって分散処理を行い、顔料分散体を得る(顔料分散体の調製工程)。
【0088】
次いで、得られた顔料分散体に対して、所望のインキ特性となるように、シロキサン系界面活性剤(C-1)、重合性化合物の残部、アシルホスフィンオキサイド系開始剤(B-1)、及び、必要に応じその他光重合開始剤、その他成分を添加し、よく混合する(インキの調製工程)。そして、フィルター等で粗大粒子を濾別する(インキの濾過工程)ことで、本発明の実施形態のインキが得られる。
【0089】
なお、一般式1で表される化合物(A-1)は、上述した顔料分散体の調製工程で添加してもよいし、その後のインキの調製工程で添加してもよい。ただし、上述した本発明の実施形態による効果を好適に発現させ、インキの分散安定性、粘度安定性、吐出安定性を一層向上できる観点から、シロキサン系界面活性剤(C-1)を添加する工程で添加することが好適である。
【0090】
<印刷物、及び印刷物の製造方法>
本発明の一実施形態である印刷物は、上述した活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを基材に印刷することによって得ることができる。また、印刷物を製造する方法の例として、インクジェットヘッドのノズルから活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを吐出し基材に付与する工程(印刷工程)と、当該基材上に付与した活性エネルギー線硬化型インクジェットインキに、活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを硬化させる工程(硬化工程)とを含む方法が挙げられる。
【0091】
(印刷工程)
インキを基材に印刷する方法として、当該インキの液滴をインクジェットヘッドから吐出し、基材上に付着させる方法が用いられる。なお、基材上のある領域に同一のインキの液滴を付着させる回数は1回であっても、複数回であってもよい。当該付着させる回数が1回である印刷工程の例として、インクジェットヘッドを固定したまま基材を搬送し、当該インクジェットヘッドの下方を通過する際に、当該インクジェットヘッドから吐出を行う工程(ラインヘッド型ワンパス印刷工程)が挙げられる。また、当該付着させる回数が複数回である印刷工程の例として、基材の搬送方向と垂直な方向にインクジェットヘッドを走査させ、基材上の同一領域に複数回インキを吐出する工程(シャトルヘッド型マルチパス印刷工程)が挙げられる。
【0092】
(硬化工程)
活性エネルギー線の発生源には特に制限はなく、従来既知のものを用いることができる。具体的には、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーレーザーランプ、キセノンランプ等の紫外線ランプ;紫外線発光ダイオード(UV-LED);及び、紫外線レーザーダイオード(UV-LD)等が挙げられる。これら活性エネルギー線の発生源は単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0093】
<基材>
上述した印刷物の製造方法で使用される基材として、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ポリスチレン、アクリル(PMMA等)等のプラスチック基材;アートコート紙、セミグロスコート紙、キャストコート紙などの紙基材;アルミニウム蒸着紙などの金属基材等;が例示できる。
【0094】
基材は、その表面が滑らかであっても、凹凸の形状を有していてもよく、透明、半透明、または不透明のいずれであってもよい。また、基材は、上記多種の基材の2種以上を互いに貼り合わせたものでもよい。更に、基材は、印字面の反対側に剥離粘着層などの機能層を有していてもよい。
【0095】
<実施形態の例>
本発明の実施形態の好ましい例を以下に挙げる。本発明の実施形態は以下の例に限定されない。
【0096】
(1) C.I.Pigment Yellow 150、活性エネルギー線重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)、及び界面活性剤(C)を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインキであって、
前記活性エネルギー線重合性化合物(A)が、一般式1で表される化合物(A-1)と、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びアルカンジオールジ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる化合物(A-2)とを含み、
前記光重合開始剤(B)がアシルホスフィンオキサイド系開始剤(B-1)を含み、
前記界面活性剤(C)が、重量平均分子量が400~20,000であるシロキサン系界面活性剤(C-1)を含み、
前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインキの全量中における、前記シロキサン系界面活性剤(C-1)の含有量(質量%)に対する、前記ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びアルカンジオールジ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる化合物(A-2)の含有量(質量%)の比が、2~150であり、
前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ中に含まれる、下記一般式2で表される化合物の総量が100ppm以下である、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ。

一般式1:
CH2=CH-CO-(O-CH2CH2n-O-R1
(一般式1中、R1はアクリロイル基またはビニル基を表し、nは2~10の整数を表す。)

一般式2:
【化2】
(一般式2中、R2及びR3は、それぞれ独立に、アミノ基または水酸基を表す。)
(2) 前記アシルホスフィンオキサイド系開始剤(B-1)が、アルコキシホスフィンオキサイド構造を有する化合物を含む、上記(1)記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ。
(3) 前記一般式1で表される化合物(A-1)の含有量が、前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインキの全量中10~90質量%である、上記(1)または(2)に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ。
(4) 上記(1)~(3)のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを用いて得られる印刷物。

【実施例
【0097】
以下に、本発明を更に詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。また特に断らない限り、部は質量部を、%は質量%を表す。
【0098】
なお、以下において、インキ中に存在する、一般式(2)で表される化合物の定量には、アジレント・テクノロジー社製ガスクロマトグラフ6890N+5973を使用した。検量線は標準アンメリン試薬、標準アンメリド試薬、及び、標準シアヌル酸試薬により作成した。また、インキ中の成分の抽出にはピリジンを、カラムにはアジレント・テクノロジー社製HP-5 19091J-413を用いた。更に、測定時の注入量は1.0μLとし、カラム温度280℃とした。なお、以下では、上述した方法により3回測定を行い、その平均値を、「インキ中の、一般式(2)で表される化合物の総量」とした。
【0099】
また、以下において、重量平均分子量は、カラムとしてTSKgel SuperHM-M(東ソー(株)製)3本を備えた、東ソー社製GPC(HLC-8320)を用いて測定した。なお、展開溶媒はTHF(テトラヒドロフラン)を使用し、流速0.6mL/分、注入量10μL、カラム温度40℃として測定を行った。なお、検量線は標準ポリスチレンサンプルにより作成した。
【0100】
<顔料A~Eの調製>
特開2014-012838号公報の例2に記載の方法により、C.I.Pigment Yellow 150(以下「顔料E」とする)を調製した。次いで、上記顔料E100部を、pH8.0に調整した水酸化ナトリウム水溶液1Lが入った容器に投入し、25℃下で1時間撹拌した。撹拌後、吸引濾過により濾別した顔料を、更に精製水によって洗浄し、80℃下で乾燥した後、実験室用ミル(卓上粉砕機)にて粉砕することで、C.I.Pigment Yellow 150洗浄品(以下「顔料D」とする)を得た。
また、上記の洗浄操作を複数回繰り返し、C.I.Pigment Yellow 150の2回洗浄品(以下「顔料C」とする)、C.I.Pigment Yellow 150の3回洗浄品(以下「顔料B」とする)、及び、C.I.Pigment Yellow 150の4回洗浄品(以下「顔料A」とする)を、それぞれ調製した。
【0101】
<シロキサン系界面活性剤1~8の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、撹拌機を備えた反応容器に、ポリエチレングリコールアリルメチルエーテル(平均分子量750)100部と、塩化白金酸の0.5質量%トルエン溶液0.5部とを仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を70℃に加熱した後、メチルハイドロジェンシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー(平均ケイ素数88、水素原子量約0.04質量%)200部を30分かけて滴下した。反応容器内を110℃まで加熱し、撹拌しながら3時間保持することで、シロキサン系界面活性剤1を得た。なお、シロキサン系界面活性剤1の重量平均分子量は13,000であった。
また、ポリエチレングリコールアリルメチルエーテル(アリルエーテル化合物)の種類及び添加量、並びに、メチルハイドロジェンシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー(シロキサンポリマー)の種類を、下表1のように変えた以外は、シロキサン系界面活性剤1と同様にして、シロキサン系界面活性剤2~8を得た。
【0102】
【表1】
【0103】
<顔料分散体A~Gの作製>
次に、得られた顔料A~Eを使用し、顔料分散体を作製した。顔料Aを15部と、顔料分散樹脂としてソルスパースJ180(ルーブリゾール社製)を7.5部と、トリエチレングリコールジアクリレートを77.5部とを、順次タンクへ投入し、ハイスピードミキサーで均一になるまで撹拌した後、横型サンドミルで約1時間分散することによって、顔料分散体Aを作製した。
また、トリエチレングリコールジアクリレートの代わりに、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルを用いた以外は、顔料分散体Aと同様の製造方法によって、顔料分散体Bを作製した。同様に、トリエチレングリコールジアクリレートの代わりに、ジプロピレングリコールジアクリレートを用いた以外は、顔料分散体Aと同様の製造方法によって、顔料分散体Cを作製した。
また、顔料Aの代わりに、顔料B、顔料C、顔料D、顔料Eをそれぞれ使用した以外は、顔料分散体Aと同様の製造方法によって、顔料分散体D~Gを作製した。
【0104】
<活性エネルギー線硬化型インクジェットインキの作製>
表2の実施例1の列に記載した配合量となるよう、混合容器内に、顔料分散体A、重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)、シロキサン系界面活性剤、その他成分(詳細は後述)を、順次、撹拌しながら仕込み、光重合開始剤(B)中の固体成分が溶解するまで、40~50℃に維持しながら混合した。そして、孔径1μmのデプスタイプフィルターを用いて濾過を行い、粗大粒子を除去することで、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ1を得た。
【0105】
また、上記活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ1と同様の操作にて、表2に示す配合組成を有する、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ2~45を得た。そして上述した方法により、得られた活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ1~45について、インキ中に存在する、一般式2で表される化合物の定量を行った。
【0106】
【表2】
【0107】
【表2】
【0108】
【表2】
【0109】
【表2】
【0110】
なお、表2に記載した材料の略称の詳細は、それぞれ以下のとおりである。
(重合性化合物(A))
TEGDA:トリエチレングリコールジアクリレート(一般式1において、R1=アクリロイル基、n=3)
PEG200DA:ポリエチレングリコール200ジアクリレート(一般式1において、R1=アクリロイル基、n≒4)
PEG400DA:ポリエチレングリコール400ジアクリレート(一般式1において、R1=アクリロイル基、n≒9)
PEG600DA:ポリエチレングリコール600ジアクリレート(一般式1において、R1=アクリロイル基、n≒14)
VEEA:アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(一般式1において、R1=ビニル基、n=2)
DPGDA:ジプロピレングリコールジアクリレート
TPGDA:トリプロピレングリコールジアクリレート
HDDA:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート
NDDA:1,9-ノナンジオールジアクリレート
PEA:フェノキシエチルアクリレート
THFA:テトラヒドロフルフリルアクリレート
VMOX:N-ビニルメチルオキサゾリジノン
IBXA:イソボルニルアクリレート
NPG(PO)2DA:PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート(PO基数=2)
BPA(EO)2DA:EO変性ビスフェノールAジアクリレート(EO基数=2)
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
(光重合開始剤(B))
TPO:OMNIRAD TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド、IGM RESINS社製)
TPO-L:OMNIRAD TPO-L(エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド、IGM RESINS社製)
BAPO:OMNIRAD 380(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、IGM RESINS社製)
BAPO-L:特表2016-535131号公報の実施例4に記載された材料及び方法によって製造した、液状のビスアシルホスフィンオキサイド系開始剤
OMN184:OMNIRAD 184(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、IGM RESINS社製)
ESACUREONE:オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]}プロパノン(IGM RESINS社製)
KIP150:ESACUREKIP150(オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]}プロパノン、IGM RESINS社製)
KIP160:ESACUREKIP160(2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプポパノイル)フェノキシ]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、IGM RESINS社製)
OMN369:OMNIRAD 369(2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4’-(モルホリノ)フェニル]-1-ブタノン、IGM RESINS社製)
ITX:Speedcure ITX(イソプロピルチオキサントン、LAMBSON社製)
BMS:OMNIRAD BMS([4-(メチルフェニルチオ)フェニル]-フェニルメタン、IGM RESINS社製)
(界面活性剤(C))
BYK-350:ビックケミー社製アクリル系界面活性剤
【0111】
また表2記載の「その他成分」として、下記材料の混合物を用いた。
2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール:0.5部
ジエチレングリコールジエチルエーテル:残部(混合容器内に仕込んだ成分の総量が100部となるまでの量)
【0112】
[実施例1~38、比較例1~7]
上記で得た活性エネルギー線硬化型インクジェットインキについて、下記の方法で評価を行った。評価結果は表2に示した通りであった。
【0113】
<分散安定性評価>
上記で作製した活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを、容量20mLのガラス容器中に、容器容量の90%の充填率になるようそれぞれ充填した後、密閉及び遮光した状態で、60℃の環境下に7日間保管した。その後、目開き3μmの金網を用いて加圧濾過し、当該金網上の残渣をメチルエチルケトンで洗浄した。そして、洗浄後の金網を顕微鏡500倍にて観察し、金網上に残った析出物の数をカウントした。評価基準は下記の通りとし、3以上を実用可能域とした。
5:析出物がなかった
4:析出物が1個~3個
3:析出物が4個~5個
2:析出物が6個~9個
1:析出物が10個以上
【0114】
<粘度安定性評価>
上記で作製した活性エネルギー線硬化型インクジェットインキについて、作製後に粘度を測定した後、容量20mLのガラス容器中に、容器容量の90%の充填率になるようそれぞれ充填し、密閉及び遮光した状態で、60℃の環境下に7日間保管した。そして保管後、再度粘度を測定し、その変化率を求めた。粘度の測定には、アントンパール社製Lovis 2000 MEを用い、測定時の温度は25℃とした。評価基準は下記の通りとし、3以上を実用可能域とした。
5:粘度変化率が1%未満
4:粘度変化率が1%以上、3%未満
3:粘度変化率が3%以上、5%未満
2:粘度変化率が5%以上、10%未満
1:粘度変化率が10%以上
【0115】
<ベタ印刷物の作製>
基材を搬送できるコンベアの上方に、京セラ社製インクジェットヘッドKJ4A-AA(解像度600dpi×600dpi)と、後述するメタルハライドランプとを設置したインクジェット吐出装置(トライテック社製「OnePassJET」)を用い、上記で作製した活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを、それぞれ、液滴量14pL、印字率100%の条件で、リンテック社製PET基材(PET25(A) PLシン 8LK)上へ印刷した。そして、GEW社製240W/cmメタルハライドランプを用い、積算光量が200mJ/cm2となるように印刷物に照射し、インキを硬化させることで、ベタ印刷物を作製した。なお、印刷から硬化までの一連の工程は、50m/分の印刷速度の下に行った。
【0116】
<硬化性評価>
上記方法で得たベタ印刷物の表面を爪でこすり、また当該印刷物表面のタック感を確認することで硬化性を評価した。評価基準は下記の通りとし、3以上を実用可能域とした。
5:爪で強くこすっても硬化膜が剥がれず、また、表面にタック感がなかった
4:爪で強くこすると硬化膜が一部剥がれるが、表面にタック感がなかった
3:爪でこすると硬化膜が一部剥がれるが、表面にタック感がなかった
2:爪でこすると硬化膜が一部剥がれ、また、表面に少しタック感があった
1:爪をあてると簡単に硬化膜が剥がれ、また、表面にタック感があった
【0117】
<基材密着性評価>
以下に示した各種基材に対して、上記方法でベタ印刷物を作製した後、2.5mm間隔で縦横それぞれ6本ずつ切り込みを入れた。更に、切り込みの上からセロハンテープを貼り付け、上面から消しゴムでこすり、セロハンテープを十分に当該ベタ印刷物に密着させた後、当該ベタ印刷物の印刷面と前記セロハンテープとが90°になるようにしながら、当該セロハンテープを剥離させた。そして、セロハンテープを密着させた面積に対する、当該セロハンテープとともに剥離したベタ印刷物の面積の割合から、密着性を評価した。評価基準は下記の通りとし、3以上を実用可能域とした。
5:剥離したベタ印刷物の面積が5%未満
4:剥離したベタ印刷物の面積が5%以上15%未満
3:剥離したベタ印刷物の面積が15%以上25%未満
2:剥離したベタ印刷物の面積が25%以上50%未満
1:剥離したベタ印刷物の面積が50%以上
【0118】
なお、上記密着性評価に使用した基材は以下の通りであり、表2に記載した評価結果は、最も評価結果の悪かった基材についてのものである。
・PP:UPM Raflatac社製PP TOP WHITE
・PET:リンテック社製PET50 K2411
・コート紙:UPM Rafratac社製Raflacoat
【0119】
<吐出安定性評価>
上記ベタ印刷物の作製に使用したインクジェット吐出装置に、上記で作製した活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを、それぞれ充填した後、UPM Rafratac社製コート紙(Raflacoat)上にノズルチェックパターンを印刷した。ノズル抜けがないことを確認した後、各ノズルからそれぞれ10万発の液滴を吐出させた後、再度上記コート紙上にノズルチェックパターンを印刷し、ノズル抜けの個数を数えることで、吐出安定性を評価した。評価基準は下記の通りとし、3以上を実用可能域とした。
5:10万発印字後のノズル抜けなし
4:10万発印字後のノズル抜け1~2個
3:10万発印字後のノズル抜け3~5個
2:10万発印字後のノズル抜け6~10個
1:10万発印字後のノズル抜け10個以上
【0120】
表2に示した通り、本発明の実施形態を満たす活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ1~38は、分散安定性、粘度安定性、硬化性、基材密着性、吐出安定性の全てに優れることが確認された。
【0121】
なかでも実施例33~38のように、光重合開始剤(B)として、アシルホスフィンオキサイド系開始剤(B-1)と、α-ヒドロキシケトン系開始剤とを併用することで、品質が特段に優れるインキが得られることが確認された。
【0122】
また、例えば実施例8と29とを比較すると、重合性化合物(A)として、(ポリ)プロピレングリコールジアクリレートまたはアルカンジオールジアクリレートからなる群から選ばれる化合物(A-2)を併用することで、硬化性、及び吐出安定性が一層向上することが明らかとなった。
【0123】
更に、実施例10と13とを比較したところ、インキ中の材料種及び量はほぼ同一であるにもかかわらず、分散安定性及び吐出安定性に差が見られた。当該一般式1で表される化合物(A-1)とシロキサン系界面活性剤(C-1)とを同じタイミングで添加、混合した実施例10において、上記品質の一層の向上が実現できたものと考えられる。
【0124】
また、実施例1、1a及び1bの比較によれば、光重合開始剤において、α-アミノアルキルフェノン系開始剤の含有量を低く抑えることで、分散安定性、粘度安定性、及び、粘度安定性において良好な結果が得られることがわかる。
【0125】
実施例3、3a及び3bを比較すると、一般式(1)で表される化合物(A-1)の総量に対する単官能モノマーの総量の比を小さくすることで、インキの分散安定性、粘度安定性、及び、吐出安定性、並びに、印刷物の硬化性の全てを同時により向上させることができると考えられる。
【0126】
実施例4、5及び5aの比較により、アシルホスフィンオキサイド系開始剤(B-1)として、アルコキシホスフィンオキサイド構造を有する化合物と、アルコキシホスフィンオキサイド構造を有しない化合物とを併用すると、硬化性がより優れることがわかる。更に、併用する場合にアルコキシホスフィンオキサイド構造を有する化合物の含有量が大きいほど、インキの分散安定性、並びに、印刷物の硬化性及び基材密着性が同時に向上するという効果が得られることがわかる。
【0127】
一方、比較例1、2からわかる通り、一般式(2)で表される化合物の量が活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ中100ppmを超えた場合、分散安定性や吐出安定性が悪化し、実用可能レベルとはならなかった。
【0128】
また比較例3、5~7から、一般式1で表される化合物(A-1)や重量平均分子量が400~20,000シロキサン系界面活性剤(C-1)を含まない場合、分散安定性、粘度安定性、吐出安定性のいずれか一つ以上の項目で実用可能レベルを下回ることが確認された。
【0129】
以上より、本発明の実施形態である活性エネルギー線硬化型インクジェットインキが、分散安定性に優れ、硬化性、基材密着性、吐出安定性、透明性にも優れることが確認された。
【0130】
本願の開示は、2021年11月29日に出願された特願2021-192636号に記載の主題と関連しており、その開示内容は、参照によりここに援用される。
【要約】      (修正有)
【課題】分散安定性及び粘度安定性に優れ、吐出安定性、硬化性、基材密着性も兼ね備えた、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを提供する。
【解決手段】C.I.Pigment Yellow 150、複数のエチレンオキサイド基を有し特定の構造を有する活性エネルギー線重合性化合物(A-1)、アシルホスフィンオキサイド系開始剤(B-1)、及び重量平均分子量が400~20,000であるシロキサン系界面活性剤(C-1)を含み、下記一般式で表される化合物の総量が100ppm以下である、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ。

(一般式中、R2及びR3は、それぞれ独立に、アミノ基または水酸基を表す。)
【選択図】なし