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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】拡張式リモコンバルブユニット
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/16 20060101AFI20230606BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
E02F9/16 H
E02F9/20 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018177351
(22)【出願日】2018-09-21
(65)【公開番号】P2020045744
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000150154
【氏名又は名称】株式会社竹内製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100117226
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】塩入 裕一
(72)【発明者】
【氏名】清水 北登
(72)【発明者】
【氏名】粂内 健吾
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-280481(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0230749(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/16
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械を操作するオペレーが着座する座席の左右に設けられ、前記建設機械を操作するための拡張式リモコンバルブユニットにおいて、
前記リモコンバルブユニットは、前記座席の左右で前記座席と隙間を空けて前記建設機械の前後方向に延びる形態をなして設けられたものであって、リモコンバルブと、該リモコンバルブを保持するスタンド部と、該スタンド部の後部を連結して該スタンド部を下から支持するベース部とで構成され、
前記ベース部は、水平方向に拡がり前記リモコンバルブユニットと一体的に回転移動する移動板と、該移動板の後部にて上側に向かって延び、前記スタンド部を連結ピンを介して連結する連結板とを有し、
前記ベース部の後部には、回転駆動体が設けられ、
前記リモコンバルブユニットは、前記回転駆動体を軸にして、前記リモコンバルブユニットの前部が該リモコンバルブユニットの後部よりも予め設定された範囲だけ外側に位置するように回転移動され、
外側に向かって回転移動された前記リモコンバルブユニットを、予め設定された位置でロックするロック機構を備えており、
前記リモコンバルブユニットにおける前部の上下方向への移動は、シリンダが前記スタンド部を前記ベース部に対して支持しながら前記連結ピンを軸にして上下に回転可能に構成され、
前記リモコンバルブユニットの前部が上側に移動された形態で、前記ロック機構が操作可能に構成されて前記リモコンバブルユニットが外側に拡張され又は元の平行形態に戻される、ことを特徴とする拡張式リモコンバルブユニット。
【請求項2】
前記ロック機構は、前記移動板と、前記リモコンバルブユニットを下から支持する支持板とを備え、
前記移動板と前記支持板とのいずれか一方にロック穴が形成され、他方に前記ロック穴に挿入されるロックピンが設けられ、
前記ロックピンが前記ロック穴に挿入されることによって、前記リモコンバルブユニットの回転移動がロックされる、請求項1に記載の拡張式リモコンバルブユニット。
【請求項3】
前記ロック穴は、前記リモコンバルブユニット同士が平行をなす平行形態から前記リモコンバルブユニットの前部を外側に拡張すること、及び拡張した形態から元の前記平行形態に戻ることに伴い前記リモコンバルブユニットの所定部分によって形成される軌跡上に複数形成され、
前記ロックピンが複数形成された前記ロック穴の中から選択された1つのロック穴に挿入されることによって、前記リモコンバルブユニットの拡張の度合いを調整可能に構成されている、請求項2に記載の拡張式リモコンバルブユニット。
【請求項4】
前記移動板の下端面と、前記支持板の表面との少なくとも一方の面には、樹脂層が設けられている、請求項2に記載の拡張式リモコンバルブユニット。
【請求項5】
前記ロックピンと、前記ロック穴が形成された前記移動板又前記支持板には、熱処理がなされている、請求項2に記載の拡張式リモコンバルブユニット。
【請求項6】
前記ロックピンの頭部には、ゴムが取り付けられている、請求項2~5のいずれか1項に記載の拡張式リモコンバルブユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡張式リモコンバルブユニットに関し、さらに詳しくは、オペレータが着座する座席の左右両側のリモコンバルブユニットを左右に拡張可能に構成した拡張式リモコンバルブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械は、オペレータが一定の操作を行うことによって作動する。建設機械のなかには、オペレータが着座する座席の左右両側に操作を行うための装置が配置されているものある。一例として、リモコンバルブを有するリモコンバルブボックスが座席の左右に配置された建設機械を挙げることができる。
【0003】
例えば、特許文献1で提案されている建設機械には、オペレータが着座する座席の左右両側にジョイスティックを備えている。ジョイスティックは、オペレータがジョイスティックのレバーを操作することによって建設機械の動作を制御するための構成部である。こうしたジョイスティックは、アームレストカバープレートの先端に取り付けられている。同文献で提案されている建設機械は、アームレストカバープレートの上部に設けられたアームレストを水平方向に回転移動させ、アームレストを適切な位置で固定させることができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第7878288B2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、建設機械のなかには、座席の左右に配置されたリモコンバルブユニット同士の間隔が狭く、リモコンバルブユニットがオペレータの膝から太ももの部位に接触してしまい、オペレータが窮屈な体勢で建設機械を操作しなければならないことがある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、リモコンバルブユニット同士の間隔が狭い建設機械でもオペレータが窮屈な体勢で建設機械を操作しなくてもよい拡張式リモコンバルブユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明に係る拡張式リモコンバルブユニットは、建設機械を操作するオペレーが着座する座席の左右に設けられ、前記建設機械を操作するためのものであり、前記リモコンバルブユニットは、前記座席の左右で前記座席と隙間を空けて前記建設機械の前後方向に延びる形態をなして設けられ、前記リモコンバルブユニットの後部又は後方には、回転駆動体が設けられ、前記リモコンバルブユニットは、前記回転駆動体を軸にして、前記リモコンバルブユニットの前部が該リモコンバルブユニットの後部よりも予め設定された範囲だけ外側に位置するように回転移動され、外側に向かって回転移動された前記リモコンバルブユニットを、予め設定された位置でロックするロック機構を備えている。
【0008】
この発明によれば、リモコンバルブユニットの前部が回転駆動体を軸にして、リモコンバルブユニットの後部よりも予め設定された範囲だけ外側に位置するように回転移動され、予め設定された位置でロックするロック機構を備えているので、座席の両側に設けられているリモコンバルブユニットに太ももを接触させることなく、建設機械を操作することができる。そのため、リモコンバルブユニット同士の間隔が狭い建設機械でも、オペレータが窮屈な体勢で建設機械を操作しなくてもよく、楽な姿勢で操作することができる。
【0009】
本発明に係る拡張式リモコンバルブユニットにおいて、前記ロック機構は、前記リモコンバルブユニットと一体的に回転移動する移動板と、前記リモコンバルブユニットを下から支持する支持板とを備え、前記移動板と前記支持板とのいずれか一方にロック穴が形成され、他方に前記ロック穴に挿入されるロックピンが設けられ、前記ロックピンが前記ロック穴に挿入されることによって、前記リモコンバルブユニットの回転移動がロックされる。
【0010】
この発明によれば、ロック機構は、ロックピンとロックピンが挿入されるロック穴とで構成されているので、ロックピンをロック穴から取り外すことによりロックを解除でき、ロックピンをロック穴に挿入することでロックすることができる。
【0011】
本発明に係る拡張式リモコンバルブユニットにおいて、前記ロック穴は、前記リモコンバルブユニット同士が平行をなす平行形態からリモコンバルブユニットの前部を外側に拡張すること、及び、拡張した形態から元の前記平行形態に戻ることに伴い前記リモコンバルブユニットの所定部分によって形成される軌跡上に複数形成され、前記ロックピンが複数形成された前記ロック穴の中から選択された1つのロック穴に挿入されることによって、前記リモコンバルブユニットの拡張の度合いを調整可能に構成されている。
【0012】
この発明によれば、ロック穴は、リモコンバルブユニット同士が平行形態からリモコンバルブユニットの前部が外側に拡張すること、及び、拡張した形態から元の平行形態に戻ることに伴いリモコンバルブユニットの所定部分によって形成される軌跡上に複数形成されているので、ロックピンを所望の位置に形成されたロック穴に挿入することによって、リモコンバルブユニットの拡張の度合いをオペレータの好みに応じた拡張の度合いに調整できる。
【0013】
本発明に係る拡張式リモコンバルブユニットにおいて、前記移動板の下端面と、前記支持板の表面との少なくとも一方の面には、樹脂層が設けられている。
【0014】
この発明によれば、リモコンバルブユニット同士を、平行形態からリモコンバルブユニットの前部を外側に拡張させたり、拡張した形態から元の平行形態に戻したりして移動板を支持板に対して移動させる際に、樹脂層が移動板と支持板とが直接こすれることを防止し、移動板を支持板に対して円滑に移動させることができる。
【0015】
本発明に係る拡張式リモコンバルブユニットにおいて、前記ロックピンと、前記ロック穴が形成された前記移動板又前記支持板には、熱処理がなされている。
【0016】
この発明によれば、ロックピン、移動板、支持板に熱処理が施されているので、ロックピンがロック穴に挿入されたり、ロック穴から抜かれたりする際に、ロックピン、移動板、支持板が摩耗してしまうことを抑制できる。
【0017】
本発明に係る拡張式リモコンバルブユニットにおいて、前記ロックピンの頭部には、ゴムが取り付けられている。
【0018】
この発明によれば、ロックピンの頭部にはゴムが取り付けられているので、人の手等を傷つけることなくリモコンバルブユニットを平行形態からリモコンバルブユニットの前部を外側に拡張させたり、拡張した形態から元の平行形態に戻したりすることができる。
【0019】
本発明に係る拡張式リモコンバルブユニットにおいて、前記リモコンバルブユニットは、その前部が、その後部又は後方を軸にして上下に回転可能に構成され、前記リモコンバルブユニットの前部が上側に移動された形態で、前記ロック機構が操作可能に構成されている。
【0020】
この発明によれば、拡張式リモコンバルブユニットが上記のように構成されているので、オペレータが建設機械を操作している最中など、リモコンバルブユニットが通常の操作位置にあるときに、リモコンバルブユニットを誤って平行形態からリモコンバルブユニットの前部を外側に拡張させたり、拡張した形態から元の平行形態に戻したりさせてしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、リモコンバルブボックス同士の間隔が狭い建設機械でもオペレータが窮屈な体勢で建設機械を操作しなくてもよい拡張式リモコンバルブユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】建設機械の側面図である。
図2】リモコンバルブユニットを拡張したり、元の形態に戻したりすることを説明するための平面図である。
図3】リモコンバルブユニットを拡張したり、元の形態に戻したりすることを説明するための斜視図である。
図4】回転駆動体、スタンド部及びベース部の位置関係を説明するための説明図である。
図5】ロックピンの位置を説明するための説明図である。
図6】ロックピンのロック穴に対する動作を説明するための説明図である。
図7】リモコンバルブユニットが上下方向に回転移動する形態を説明するための説明図である。
図8】複数形成されたロック穴にロックピンを挿入させることができることを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。本発明は、以下に説明する実施形態及び図面に記載した形態と同じ技術的思想の発明を含むものであり、本発明の技術的範囲は実施形態の記載や図面の記載のみに限定されるものでない。
【0024】
[本発明が適用される建設機械の概要]
本発明は、例えば、図1に示す建設機械1としての小型の油圧ショベルに適用される。ただし、座席9の両側にリモコンバルブユニット10が配置され、リモコンバルブユニット10とオペレータの膝から太ももの部位とが、接触してしまう建設機械1であれば、本発明は、小型の油圧ショベルに限定されずに適用される。例えば、本発明は、大型の油圧ショベル、ブルドーザ、トラックローダ等に適用することができる。
【0025】
図1に示す建設機械1としての油圧ショベルは、本体部2と、本体の下部に設けられた走行機構3と、本体部2の前部に設けられた作業機構4とを、少なくとも備えている。作業機構4は、主に、ブーム5、アーム6及びバケット7によって構成されている。本体部2には、オペレータが建設機械1に搭載し、操作するための運転室8が設けられており、運転室8には、着座するための座席9が設けられている。また、本体部2の外殻はエンジンカバー2aによって構成されていて、エンジンカバー2aの内部には、図示しない、エンジンや油圧機器等が収容されている。そして、座席9の両側には、油圧ショベルを操作するためのリモコンバルブ11を備えたリモコンバルブユニット10が設けられている。本発明は、座席9の両側に設けられたリモコンバルブユニット10を拡張するための機構に関するものである。
【0026】
[本発明の基本構成]
本発明は、建設機械1を操作するオペレーが着座する座席9の左右に設けられ、建設機械1を操作するためのリモコンバルブユニット10の拡張機構に関するものである。このリモコンバルブユニット10の拡張機構において、リモコンバルブユニット10は、図2に示すように、座席9の左右で座席9と隙間を空けて建設機械1の前後方向に延びる形態をなして設けられている。また、リモコンバルブユニット10の後部又は後方には、図4に示すように、回転駆動体40が設けられおり、リモコンバルブユニット10は、回転駆動体40を軸にして、リモコンバルブユニット10の前部がリモコンバルブユニット10の後部よりも予め設定された範囲だけ外側に位置するように回転移動されるように構成されている。なお、図2は、回転駆動体40がリモコンバルブユニット10の後部に設けられた形態を例として示している。また、リモコンバルブユニット10の拡張機構は、外側に向かって回転移動されたリモコンバルブユニット10を、予め設定された位置でロックするロック機構60を備えている。
【0027】
本発明に係るリモコンバルブユニット10の拡張機構によれば、リモコンバルブユニット10同士の間隔が狭い建設機械1でもオペレータが窮屈な体勢で建設機械1を操作しなくてもよいリモコンバルブユニット10の拡張機構を提供することができる。以下では、リモコンバルブユニット10の拡張機構の各構成を具体的に説明する。
【0028】
[リモコンバルブユニット]
リモコンバルブユニット10は、上述したように、オペレータが着座する座席9の左右両側に配置されている。各リモコンバルブユニット10は、図2及び図3に示すように、建設機械1の作業機構4を操作するためのリモコンバルブ11と、リモコンバルブ11を保持するためのスタンド部12と、スタンド部12を下から支持するベース部30とで構成されている。リモコンバルブユニット10は、その前部が、その後部又は後方を軸にして上下に回転可能に構成され、前部が上側に移動された形態で、ロック機構60が操作可能に構成されている。こうしたリモコンバルブユニット10は、ボックス20の内部に収容されている。
【0029】
(スタンド部)
スタンド部12の前部には、リモコンバルブ11を保持するための保持穴13が形成されている。リモコンバルブ11は、この保持穴13に挿入されることによってスタンド部12に保持される。リモコンバルブユニット10は、その本体がボックス20の内部に収容され、ジョイスティック11aが、図1及び図2に示すように、ボックス20の上面から外側に向かって延びている。また、スタンド部12には、リモコンバルブユニット10を上下に回転移動させるためのレバー14が取り付けられている。さらに、スタンド部12の上面には、アームレスト15が取り付けられている。
【0030】
(ベース部)
一方、スタンド部12の後部は、図3及び図4に示すように、ベース部30に連結されている。ベース部30は、後述する支持板50に対して回転移動する移動板31を備えている。ベース部30は、図3に示すように、水平方向に拡がる移動板31と、移動板31の後部にて上側に向かって延び、スタンド部12を連結するための連結板32とを有している。ベース部30とスタンド部12とは、連結板32にて、連結ピン33で連結されている。また、ベース部30の後部には、リモコンバルブユニット10の前部を後部よりも外側に回転移動させるための回転駆動体40が設けられている。
【0031】
(回転駆動体)
回転駆動体40は、例えば、ベース部30の移動板31とエンジンカバー2aとを上下方向に貫く回転軸で構成されている。図4は、回転駆動体40、ベース部30及びエンジンカバー2aの位置関係をモデル的に示している。回転駆動体40としての回転軸は、軸部41と頭部42とからなり、頭部42を下側に向け、軸部41が頭部42から上側に向けて延びる形態で配置されている。軸部41は、エンジンカバー2aとベース部30の移動板31とを貫いていて、エンジンカバー2aと移動板31とを連結している。そして、軸部41の先端部は、ベース部30に固定されたナット72にねじ込まれている。ナット72のベース部30に対する固定方法は特に限定されないが、溶接などが利用される。なお、上述したように、ベース部30にはスタンド部12が連結ピン33を介して連結されている。
【0032】
[ロック機構]
ロック機構60について図5図6及び図8を参照して説明する。ロック機構60は、建設機械1の前後方向において、回転駆動体40とリモコンバルブユニット10との間に設けられている(図5参照)。このロック機構60は、移動板31と支持板50とのいずれか一方に形成されたロック穴61と、移動板31と支持板50との他方に設けられ、ロック穴61に挿入されるロックピン62とで構成されている。こうしたロック機構60は、ロックピン62がロック穴61に挿入されることによって、リモコンバルブユニット10の回転移動をロックする。なお、図6に示すように、移動板31と支持板50との間には、エンジンカバー2aが介在している。
【0033】
(ロック穴)
ロック機構60を構成するロック穴61は、図8に示したように、前記リモコンバルブユニット10が平行をなす平行形態からリモコンバルブユニットの前部を外側に拡張させたり、拡張した形態から元の平行形態に戻したりすることに伴いリモコンバルブユニット10の所定部分によって形成される軌跡上70に複数形成されており、ロックピン62が、複数形成されたロック穴61の中から選択された1つのロック穴61に挿入されることによって、リモコンバルブユニット10の拡張の度合いを調整可能に構成されている。実施形態では、ロック穴61が3ヶ所に形成されている。また、隣り合うロック穴61同士は、図8に示すように、通路75によって連絡されている。通路75は、ロックピン62を所望のロック穴61の位置まで移動させる際に、後述する胴部64を通すための構成部である。
【0034】
(ロックピン)
本実施形態では、図5に示すように、ロックピン62は、その頭部63を上側に位置させ、胴部64を頭部63から下側に延びる形態で設けられている。ロックピン62は移動板31と一体化されており、頭部63は移動板31の表面から一定の距離だけ上側の位置に配置されている。こうしたロックピン62の具体的な構造について、図6を参照して説明する。
【0035】
ロックピン62は、円柱状の胴部64、胴部64の長手方向の一端側に設けられた頭部63、胴部64の長手方向の他端側に設けられた挿入部65、及び突き当て部66とで構成されている。さらに、ロックピン62は、その外周部にスプリング67を備えている。そして、ロックピン62は、頭部63の下側にワッシャー71を有している。
【0036】
頭部63は、図6において上側に設けられた構成部であって、胴部64の上部(胴部64の長手方向の一端側)で、胴部64の外周面から径方向の外側に張り出して構成されている。頭部63は、ロックを解除するときに、頭部63の上端面を人の手で押し下げるために利用される。頭部63の外表面には、人の手を保護するための保護部材で覆うとよい。保護部材としてはゴム材を用いるとよいが、人の手を保護することができれば、ゴムに限定する必要は無い。胴部64は円柱状をなし、一定の長さを有している。胴部64は、頭部63の上端面を人の手で押し下げたときに頭部63が移動板31に接触することがない長さに形成されている。
【0037】
挿入部65及び突き当て部66は、図6において、下側にそれぞれ設けられた構成部であって、胴部64の下部(胴部64の長手方向の他端側)で、胴部64の外周面から径方向の外側に張り出して構成されている。挿入部65は、支持板50に複数形成されたロック穴61の1つに挿入されて、リモコンバルブユニット10の拡張動作をロックするための構成部である。突き当て部66は、挿入部65よりも、さらに、径方向の外側に張り出している。この突き当て部66は、挿入部65と一体に形成されていて、支持板50の下端面に突き当てることによって、ロックピン62全体が、上側に向かってロック穴61から抜き出てしまうことを防止している。
【0038】
こうしたロックピン62の外側にはスプリング67が設けられている。スプリング67の一端(図6の上側)はロックピン62の頭部63を支持し、スプリング67の他端(図6の下側)は移動板31に支持されている。このスプリング67は、ロックピン62を押し下げてロックを解除する際に、ロックピン62を押し下げた長さに応じて縮む。一方、ロックピン62の位置が所望のロック穴61の位置に一致し、ロックピン62の挿入部65をロック穴61に挿入する際、縮んでいたスプリング67は、その反発力によって、ロックピン62全体を上側に向かって押し上げる。なお、こうしたロックピン62には、必要に応じてカラー68をロックピン62の上側の外周部と下側の外周部とに設けるとよい。ロックピン62の上側の外周部と下側の外周部とにカラー68を設けた場合、上下のカラー68同士が突き当たるまでスプリング67を縮めることができる。すなわち、カラー68は、スプリング67を縮める際に、ストッパーとして機能している。カラー68は、ロックピン62が上下に移動する際に、ロックピン62のがたつきを防止する。なお、カラー68は、ロックピン62の上側の外周部だけに設けたり、下側の外周部だけに設けたりすることができる。
【0039】
ロックピン62の頭部63の下面側にはワッシャー71が、さらに設けられている。ワッシャー71は、スプリング67がロックピン62の頭部63側から飛び出してしまうことを防止し、スプリング67をロックピン62の外周部に止めておく作用を奏している。
【0040】
ロック穴61を支持板50に形成した形態では、図6に示すように、頭部63は、胴部64の上側に位置し、挿入部65及び突き当て部66は胴部64の下側に位置する。また、移動板31には、ロックピン62の胴部64が通される貫通穴69が形成される。これに対し、ロック穴61を移動板31に形成した形態では、頭部63は、胴部64の下側に位置し、挿入部65及び突き当て部66はピンの上側に位置する。また、支持板50には、ロックピン62の胴部64が通される貫通穴69が形成される。この形態では、スプリング67は、下側がピンの頭部63に支持され、上側が支持板50の下端面に接触される。
【0041】
以上に説明したロックピン62と、ロック穴61が形成された移動板31又は支持板50には、摩耗を抑制するための熱処理がなされている。ロックピン62、移動板31及び支持板50の摩耗を効果的に防止することができるのであれば、熱処理の種類は限定されない。熱処理としては、例えば、ガス軟窒化、浸炭焼き入れ、高周波焼き入れ等を挙げることができる。本実施形態では、ガス軟窒化がロックピン62及び支持板50に施されている。
【0042】
[拡張式リモコンバルブユニットの作用]
リモコンバルブユニット10をボックス20ごと平行形態からリモコンバルブユニットの前部を外側に拡張させたり、拡張した形態から元の平行形態に戻したりする作用について説明する。なお、説明の際には、これまでにリモコンバルブユニット10の拡張機構の構成の説明に利用した図面を適宜に参照する。
【0043】
リモコンバルブユニット10をボックス20ごと平行形態からリモコンバルブユニットの前部を外側に拡張させたり、拡張した形態から元の平行形態に戻したりするには、最初に、図7に示すように、リモコンバルブユニット10を上側に向けて回転移動させる。具体的に、図7に示すように、リモコンバルブユニット10の後部又は後方を軸として、リモコンバルブユニット10の前部を上側に移動させる。リモコンバルブユニット10の前部を図7に示すように、上側に移動させることによって、ロック機構60が現れ、ロック機構60を操作することができるようになる。なお、リモコンバルブユニット10における前部の上下方向への移動は、シリンダ34がスタンド部12をベース部30に対して支持しながら行われるので、上側に移動されたリモコンバルブユニット10の前部が下側に向かって急激に落下することが防止される。
【0044】
次いで、ロックを解除して、リモコンバルブユニット10をボックス20ごと平行形態からリモコンバルブユニットの前部を外側に拡張させたり、拡張した形態から元の平行形態に戻したりする操作を行う。まず、ロックを解除する。ロック解除の操作は、図6(A)の状態にあるロックピン62を図6(B)の状態になるまで下側に押し下げる。ロックピン62が図6(B)の状態にあるとき、ロックが解除される。次に、図2に示すように、リモコンバルブユニット10をボックス20ごと平行形態からリモコンバルブユニットの前部を外側に拡張させたり、拡張した形態から元の平行形態に戻したりする。その際、図8に示すように、ロックピン62の位置を所望のロック穴61の位置に一致させる。所望のロック穴61の位置に一致させるとき、ロックピン62の胴部64は、ロック穴61同士を連絡している通路75に通される。リモコンバルブユニット10の拡張の度合いは、ロックピン62の位置を所望のロック穴61の位置に一致させることによって調整される。ロックピン62の位置を所望のロック穴61の位置に一致させると、ロックピン62は、スプリング67の反発力によって自動的に上側に向かって移動し、挿入部65がロック穴61に挿入される。
【0045】
最後に、上側に回転移動されていたリモコンバルブユニット10の前部を下側に向けて移動させ、リモコンバルブユニット10の上下方向の位置を元に戻す。こうした操作を行うことによって、オペレータが、建設機械1を操作しやすい拡張の度合いにリモコンバルブユニット10を平行形態からリモコンバルブユニットの前部を外側に拡張させたり、拡張した形態から元の平行形態に戻したりすることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 建設機械
2 本体部
2a エンジンカバー
3 走行機構
4 作業機構
5 ブーム
6 アーム
7 バケット
8 運転室
9 座席
10 リモコンバルブユニット
11 リモコンバルブ
11a ジョイスティック
12 スタンド部
13 保持穴
14 レバー
15 アームレスト
20 ボックス
30 ベース部
31 移動板
32 連結板
33 連結ピン
34 シリンダ
40 回転駆動体
41 軸部
42 頭部
50 支持板
60 ロック機構
61 ロック穴
62 ロックピン
63 頭部
64 胴部
65 挿入部
66 突き当て部
67 スプリング
68 カラー
69 貫通穴
70 軌跡
71 ワッシャー
72 ナット
75 通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8