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特許7290048油脂組成物、油中水型乳化物、ミンチ肉加工冷凍食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】油脂組成物、油中水型乳化物、ミンチ肉加工冷凍食品
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/01 20060101AFI20230606BHJP
   A23D 7/00 20060101ALI20230606BHJP
   A23L 13/40 20230101ALI20230606BHJP
   A23L 13/60 20160101ALI20230606BHJP
   A23L 13/00 20160101ALN20230606BHJP
   A23L 35/00 20160101ALN20230606BHJP
【FI】
A23D7/01
A23D7/00 504
A23L13/40
A23L13/60 Z
A23L13/00 A
A23L35/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019043180
(22)【出願日】2019-03-08
(65)【公開番号】P2020141645
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】宇野 秀一
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-000174(JP,A)
【文献】特開2002-000231(JP,A)
【文献】特開2005-087070(JP,A)
【文献】特開昭58-198243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油中水型乳化物を形成するための油脂組成物であって、
以下の成分(A)~(C):
(A)食用油脂
(B)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル.0~10.0質量%
(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル0.1~3.0質量%
を含み、
前記(A)、(B)、(C)の質量比は、
(A)/[(B)+(C)]が7~17.2であり、かつ、(B)/(C)が10~2であり、
前記(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンの平均重合度が2~4であり、不飽和脂肪酸のモノエステル体の含有量が50質量%以上である、ミンチ肉加工冷凍食品用の油脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の油脂組成物を10~50質量%含有する、油中水型乳化物。
【請求項3】
請求項2に記載の油中水型乳化物を含有する、ミンチ肉加工冷凍食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミンチ肉加工冷凍食品用の油脂組成物に関するものである。より詳しくは、この油脂組成物を使用した油中水型乳化物が、冷凍前には優れた耐熱性を有しながらも、冷凍後に加熱することで乳化が十分に壊れることを特徴とする油脂組成物に関する。さらには、該油脂組成物を含有する油中水型乳化物、または該油中水型乳化物を含有する冷凍食品に関する。
【背景技術】
【0002】
水と油は互いに混ざり合わないため、水に油を分散させる、または油に水を分散させる場合には、乳化剤が配合された油脂組成物が使用される。このような油脂組成物は乳化剤の界面張力低下能により、水または油を連続相に分散させる。
【0003】
油に水を分散させた油中水型乳化物を作成する場合、乳化力の高いポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルなどが使用されており、このような油中水型乳化物は畜肉加工品や麺練り込み用などに使用されている。
【0004】
ハンバーグや肉団子等のミンチ肉加工冷凍食品は、通常、食品工場において鉄板やオーブンなどを使用して焼成(一次加熱)した製品を冷凍もしくは真空包装後、冷凍状態で冷凍食品として流通している。その後、これらのミンチ肉加工冷凍食品は業務用、家庭用を問わず、使用時には、電子レンジや熱湯等で解凍したり、フライパンで焼く等の加熱処理(二次加熱)をされ、喫食される。こうして加熱処理を繰り返すとミンチ肉加工食品の肉汁が流出してしまい、食感がボソボソとしたものとなり、いわゆるジューシー感が失われてしまう。また、弁当類をコンビニエンスストアなどの店舗で電子レンジ加熱した後、自宅に持って帰って食べるなど、加熱処理後時間が経過して冷めた状態で喫食される場合も想定される。このような場合においてはなおさらジューシー感の喪失が顕著となる。
【0005】
そのため、ミンチ肉加工冷凍食品の加熱処理の繰り返しによるジューシー感の損失を補うためにさまざまな方法がとられてきた。例えば、原料の一部として動物油脂や植物油脂を練り込む方法があるが、一次加熱中に練り込んだ油脂が流出してしまい、ジューシー感の付与効果が得られない。また、ジューシー感が得られたとしても、油脂分の多い肉汁となるため、非常に油っぽい食感となってしまう。また、ゲル形成能を有する水溶性高分子化合物で固めたゲルを食肉加工品に付与する方法(特許文献1)、乳化油脂組成物を練り込む方法(特許文献2)、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルからなる油相と、澱粉および水溶性多糖類を含有した水相とからなる油中水滴型乳化油脂組成物を使う方法(特許文献3)などが提案されている。しかし、特許文献1に記載の方法では時間が経過して冷えたときに肉汁が再びゲル化してしまい、ジューシー感を得られなくなってしまう。特許文献2に記載の方法は、二次加熱後でも練りこんだ乳化物が乳化状態を維持するため、喫食時に白濁した乳化液が流れ出すなどして、透明感のある自然な肉汁感が得られない。また、特許文献3に記載の方法では、粘りのある食感となりジューシー感が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-237737号公報
【文献】特開平6-105667号公報
【文献】特開2005-87070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ジューシー感が強く、肉汁は透明感があり、また冷えてもジューシー感が維持されるミンチ肉加工冷凍食品を提供することであり、また、このようなミンチ肉加工冷凍食品を得るための油脂組成物又は油中水型乳化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の乳化剤を特定の割合で配合した油脂組成物を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明は以下の[1]~[3]である。
[1]
油中水型乳化物を形成するための油脂組成物であって、
以下の成分(A)~(C):
(A)食用油脂
(B)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル1.0~10.0質量%
(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル0.1~3.0質量%
を含み、
前記(A)、(B)、(C)の質量比は、
(A)/[(B)+(C)]が7~90であり、かつ、(B)/(C)が10~2である、ミンチ肉加工冷凍食品用の油脂組成物。
[2]
前記[1]に記載の油脂組成物を10~50質量%含有する、油中水型乳化物。
[3]
前記[2]に記載の油中水型乳化物を含有する、ミンチ肉加工冷凍食品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ジューシー感が強く、肉汁は透明感があり、また冷えてもジューシー感が維持されるミンチ肉加工冷凍食品を提供することができる。また、このようなミンチ肉加工冷凍食品を得るための油脂組成物又は油中水型乳化物を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の油脂組成物は、油中水型乳化物を形成するための油脂組成物であって、(A)食用油脂、(B)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル1.0~10.0質量%、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル0.1~3.0質量%を含み、前記(A)、(B)、(C)の質量比は、(A)/[(B)+(C)]が7~90であり、かつ、(B)/(C)が10~2であることを特徴とするものである。
本発明の油脂組成物は高い乳化性を有し、水分と混合することにより油中水型乳化物を作ることができる。この油中水型乳化物を含むミンチ肉加工冷凍食品は、一次加熱では油中水型乳化物の乳化が破壊されず、冷凍及び二次加熱をすると油中水型乳化物の乳化が破壊される。そのため、二次加熱後の喫食時には、強いジューシー感が得られ、また、透明感のある肉汁が流れ出すミンチ肉加工食品を提供することができる。さらに、このミンチ肉加工食品は、冷えてもジューシー感が維持することができる。
【0011】
以下に、各成分について詳細に説明する。
<油脂組成物>
[(A)食用油脂]
本発明で使用する食用油脂は、ジューシー感付与のために用いられる。
本発明で使用する食用油脂としては特に限定されないが、ナタネ油、大豆油、ヒマワリ油、綿実油、落花生油、米油、トウモロコシ油、サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油、月見草油、パーム油、シア油、サル脂、イリッペ脂、ボルネオタロー脂、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油等の植物油脂ならびに乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の動物性油脂、更には、原料に応じて硬化、分別、エステル交換等の処理を施したものが使用できる。また、これらの油脂を各々単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明においては、肉汁の透明感が向上するという観点から、常温(25℃)で液状の油脂を使用することが好ましい。
【0012】
[(B)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル]
本発明に使用するポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは、ひまし油を原料とするリシノレイン酸を縮合したポリリシノレイン酸をポリグリセリンに結合させた油溶性乳化剤である。親油性が強いことから、油中水型乳化に適している。また、乳化力が強いことから、一次加熱における油水分離を抑制し、肉汁がドリップとして喪失することを抑制する。
【0013】
本発明に使用するポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは、ポリグリセリンの平均重合度が2~16、リシノレイン酸の縮合度が2~16のものが好ましく用いられる。この範囲であれば、優れた乳化性が得られ、肉汁の喪失抑制効果が得られる。ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは、リシノレイン酸を脱水縮合した縮合リシノレイン酸とポリグリセリンとのエステル化により得られるが、実際的には市販品を使用するのが簡便で経済的である。ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの市販品としては、阪本薬品工業(株)のSYグリスターCR-310、CR-500、CR-ED、CRS-75、太陽化学(株)のサンソフトNo.818DG、818SK、818R、理研ビタミン(株)のポエムPR-100、PR-300等が適宜使用できる。
【0014】
油脂組成物中におけるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの含有量は、1.0~10.0質量%であり、好ましくは2.0~5.0質量%である。1.0質量%未満では十分な乳化力を得ることができず、10.0質量%を超えて配合しても、乳化力に著しい向上は望めない上に、肉汁が白濁してしまう。
【0015】
[(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル]
本発明に使用するポリグリセリン脂肪酸エステルは、油中水型乳化物を含有した冷凍食品において、二次加熱時の乳化を不安定化するために用いられる。乳化を不安定化することで二次加熱中に油水分離を起こし、白濁感のない透明な肉汁が得られる。本来、油脂の自己乳化性付与に効果的な乳化剤ではあるが、(B)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとの特定比率の配合により、冷凍後の再加熱において、乳化破壊を引き起こす。
【0016】
本発明に使用するポリグリセリン脂肪酸エステルにおいて、ポリグリセリンの平均重合度は好ましくは2~4であり、特に好ましくは2(ジグリセリン)である。脂肪酸は、特に制限されないが、食用可能な動植物油脂を起源とし、炭素原子間の間に二重結合を含む不飽和脂肪酸が好ましい。不飽和脂肪酸としては、例えば、パルミトオレイン酸、オレイン酸エライジン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、α-リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸などが挙げられる。これらの不飽和脂肪酸のモノエステル体の含有量が50質量%以上であるものが特に好ましい。これらを用いることで、二次加熱時における乳化破壊を引き起こし、透明な肉汁が得られる。
【0017】
油脂組成物中におけるポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は0.1~3.0質量%、好ましくは0.3~1.5質量%である。0.1質量%未満では、二次加熱時に乳化が安定なままであり、透明感のある肉汁を得ることができず、3.0質量%を超えて配合すると、一次加熱時に乳化が不安定となり、肉汁がドリップとして喪失してしまい、ジューシー感が得られなくなる。
【0018】
本発明において、(A)食用油脂、(B)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルの質量比は、(A)/[(B)+(C)]は7~90である。(A)/[(B)+(C)]が90を超えると充分な乳化力を得ることができず、7未満にしても乳化力に著しい向上は望めない上に、最終食品の風味に悪影響を与えてしまう。
【0019】
本発明において、(B)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルの質量比は、(B)/(C)が10~2であることが好ましい。さらに好ましくは8~4である。10より多いと、二次加熱時に乳化が十分に壊れず、肉汁が白濁してしまう。2より少ないと、一次加熱時に乳化が不安定となり、一次加熱中に乳化が壊れ、肉汁がドリップとして喪失してしまい、ジューシー感が得られなくなる。
【0020】
本発明においては、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル以外の公知の乳化剤、例えばレシチン、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどを本発明の効果を損ねない程度に併用してもよい。
【0021】
<油中水型乳化物>
本発明の油中水型乳化物は、油相部として前記の油脂組成物を10~50質量%、水相部を50~90質量%含有する。水相部としては特に限定されず、水、水溶性調味料などの混合物を用いることができる。油脂組成物が10~50質量%とすることにより、本発明の効果を得ることができる。
油中水型乳化物は、前記の油相部と水相部を混合することにより得ることができる。水相部と油相部の混合様式は特に限定されず、プロペラ攪拌のような簡便な攪拌、あるいは均質機などを用いて製造することができる。混合後、冷却の方法としては、放冷、公知の熱交換器、公知の急冷混練装置などを使用する方法がある。
【0022】
本発明の油中水型乳化物に用いる水相部は、水以外に、水に溶解する物質を水と混合して用いることができる。例えば食塩やアミノ酸などの水溶性調味料、ブイヨンなどの動物および植物から抽出したエキスを混合して用いることができる。
【0023】
<ミンチ肉加工冷凍食品>
本発明のミンチ肉加工冷凍食品は、前記の油中水型乳化物を含有する。油中水型乳化物は、特に、ハンバーグ、ミートボール、餃子、小籠包、肉まん、シューマイ、メンチカツ、ロールキャベツ、魚肉つみれなど、畜肉、魚肉などのミンチ肉加工冷凍食品に5~20質量%練り込むことによりその効果を発揮することができる。
本発明のミンチ肉加工冷凍食品は、一次加熱後、冷凍することにより得ることができ、喫食時に二次加熱を行い、二次加熱直後、あるいは、弁当容器などに入れ室温保管後、喫食することができる。
【0024】
<ミンチ肉加工食品>
ミンチ肉加工食品は、前記の冷凍食品を加熱調理したものである。ミンチ肉加工食品は、加熱調理するだけで、簡単にジューシーで、透明感のある肉汁が流れ出るミンチ肉加工食品を提供することができる。加熱調理の方法は特に制限されず、例えば、電子レンジや熱湯等で加熱したり、オーブンやフライパンで焼いたりすればよい。
【実施例
【0025】
次に実施例をあげて本発明を具体的に説明する。
[油脂組成物の製造]
(実施例1)
表1の配合組成(質量%)で以下の方法により油脂組成物を製造した。すなわち、油相部として食用油脂(A)988g、ポリグリセリン縮合リシノイン酸エステル(B)10gおよびポリグリセリン脂肪酸エステル(C)2gを計量し、食用油脂(A)に(B)および(C)を添加し、プロペラ攪拌にて撹拌しながら70℃に加熱し5分間保持して溶解させたのち、その後リアクテーターを用いて冷却することで本発明の油脂組成物を得た。
【0026】
(実施例2~6、比較例1~6)
実施例2~6および比較例1~6は表1および表2に示した配合で、実施例1に準じて油脂組成物を製造した。
【0027】
[油中水型乳化物の製造]
(実施例1~6および比較例1~6)
上記の方法で作製した実施例1~6および比較例1~6の油脂組成物を、ミキサーを用いて撹拌しながら水を加えることで油中水型乳化物を得た。混合比率は、油脂組成物100部に対し水600部とした。
(実施例7)
実施例1の油脂組成物を、ミキサーを用いて撹拌しながら水を加えることで油中水型乳化物を得た。混合比率は油脂組成物100部に対し水100部とした。
(実施例8)
実施例2の油脂組成物を、ミキサーを用いて撹拌しながら水を加えることで油中水型乳化物を得た。混合比率は油脂組成物100部に対し水900部とした。
【0028】
(比較例7)
[水中油型乳化物の製造]
表3に示した配合で以下の方法にて水中油型乳化物を製造した。水にカゼインナトリウム、乳化剤を加えて撹拌しながら70℃まで加熱し、食用油脂を加えて撹拌した後、高圧ホモジナイザーを用いて、水中油型乳化物を得た。
【0029】
(比較例8)
[練り込み用ゲルの製造]
表4に示した配合で以下の方法にて練り込み用ゲルを作製した。水に増粘剤を加えて85℃まで昇温し、増粘剤を溶解させた。その後、10℃まで冷却してゲル状に固化させた後、3~5mm角にカットして練り込み用ゲルを得た。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】
[ミンチ肉加工冷凍食品(ハンバーグ)の製造]
表5に示した配合にて、挽肉、たまねぎソテー、パン粉、全卵、食塩を混合し、さらに油中水型乳化物、水中油型乳化物またはゲルを加えて混合して、ハンバーグの生地を製造した。80gの円形に成型し、230℃のオーブンにて8分間加熱(一次加熱)した後、急速冷凍機を用いて凍結し、-20℃で7日間冷凍保管した。冷凍されたハンバーグを500Wの電子レンジで2分間加熱(二次加熱)して、評価に用いた。評価項目は、「二次加熱後のジューシー感の評価(焼成歩留)」、「二次加熱直後のジューシー感の評価(目視評価)」、「肉汁の透明感の評価(目視評価)」、「冷えたときのジューシー感の評価(目視確認)」、「冷えたときの肉汁の透明感の評価(官能評価)」とし、評価結果は、表1~表4に示した。
【0035】
【表5】
【0036】
<二次加熱後のジューシー感の評価(焼成歩留)>
二次加熱したハンバーグの重量を測定し、焼成前の生地重量で除して、焼成歩留を計算した。焼成歩留が大きいほうが、一次加熱、二次加熱で肉汁がドリップせず、ジューシー感が維持できていることを表す。
8枚測定した平均値にて以下の通りジューシー感を評価した。
◎:85.0%以上
○:82.5%以上、85.0%未満
△:80.0%以上、82.5%未満
×:80.0%未満
【0037】
<二次加熱直後のジューシー感の評価(目視評価)>
二次加熱したハンバーグを半分に切り、レオメーターにてφ30mmの円形平板冶具で50Nの荷重をかけたときに断面から流れ出る肉汁の量について、8名のパネラーで、以下の評価基準で目視評価した。目視評価においては、一次加熱のみ(冷凍なし)したものを2点とし、それよりも肉汁が多ければ3点、少なければ1点とした。
パネラー8名の平均値が、2.5点以上3.0点を◎、2.0点以上2.5点未満を○、1.5点以上2.0点未満を△、1.5点未満を×と評価した。
【0038】
<肉汁の透明感の評価(目視評価)>
二次加熱したハンバーグを半分に切り、断面から流れる肉汁の透明感について、8名のパネラーで、以下の評価基準で目視評価した。目視評価においては、白濁がなく透明なものを3点、肉汁の一部に白濁しているところがあるものを2点、肉汁が白濁しているものを1点として評価した。
パネラー8名の平均値が、2.5点以上を◎、2.0点以上2.5点未満を○、1.5点以上2.0点未満を△、1.5点未満を×と評価した。
【0039】
<冷えたときのジューシー感の評価(目視確認)>
二次加熱したハンバーグを常温にて1時間放置した後に半分に切り、レオメーターにてφ30mmの円形平板冶具で50Nの荷重をかけたときに断面から流れ出る肉汁の量について、8名のパネラーで、以下の評価基準で目視評価した。目視評価においては、一次加熱直後のものを2点とし、それよりも肉汁が多ければ3点、少なければ1点とした。
パネラー8名の平均値が、2.5点以上を◎、2.0点以上2.5点未満を○、1.5点以上2.0点未満を△、1.5点未満を×と評価した。
【0040】
<冷えたときの肉汁の透明感の評価(官能評価)>
二次加熱したハンバーグを常温にて1時間放置した後に半分に切り、断面から流れる肉汁の透明感について、8名のパネラーで、以下の評価基準で目視評価した。目視評価においては、白濁がなく透明なものを3点、肉汁の一部に白濁しているところがあるものを2点、肉汁が白濁しているものを1点として評価した。
パネラー8名の平均値が、2.5点以上を◎、2.0点以上2.5点未満を○、1.5点以上2.0点未満を△、1.5点未満を×と評価した。
【0041】
表1に示すように、本発明の油脂組成物により得られた油中水型乳化物を冷凍ハンバーグに含有すると、焼成歩留まりに優れ、加熱直後のハンバーグにおけるジューシー感及び肉汁の透明感に優れるという効果が認められた。また、冷えたときのハンバーグにおいても、ジューシー感及び肉汁の透明感に優れた効果が認められた。
一方、表2に示すように、比較例1の油脂組成物では、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(B)の含有量が1.0質量%未満であることから、肉汁が流出してしまい、焼成歩留まりが低下し、ジューシー感も得られなかった。
また、比較例2の油脂組成物では、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(B)の含有量が10.0質量%超であることから、二次加熱時に乳化が壊れず、肉汁が白濁していた。
比較例3の油脂組成物では、ポリグリセリン脂肪酸エステル(C)の含有量が0.1質量%未満であることにより、肉汁に白濁が認められた。ポリグリセリン脂肪酸エステル(C)の含有量が0.1質量%未満であることにより、二次加熱時に乳化が破壊されず、白濁した肉汁となると推察される。
比較例4の油脂組成物では、ポリグリセリン脂肪酸エステル(C)の含有量が3.0質量%超であることにより、肉汁が流出してしまい、焼成歩留まりが低下し、ジューシー感も得られなかった。ポリグリセリン脂肪酸エステル(C)の過剰配合により、乳化が不安定となり、一次加熱時に乳化が破壊されて肉汁が流れ出てしまったと推察される。
比較例5、6の油脂組成物では、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(B)とポリグリセリン脂肪酸エステル(C)の質量比((B)/(C))が、10~2の範囲外であるため、ジューシー感と肉汁の透明感を両立して優れた効果を得ることができなかった。
【0042】
(実施例9)
実施例9は表6に示した配合で、実施例1に準じて油脂組成物および油中水型乳化物を製造した。
【0043】
【表6】
【0044】
[ミンチ肉加工冷凍食品(魚肉つみれ)の製造]
表7に示した配合にて、魚肉すりみ、全卵、馬鈴薯澱粉、食塩を混合し、さらに油中水型乳化物を加えて混合して、魚肉つみれの生地を製造した。18gの球形に成型し、沸騰水中で3分間ボイル(一次加熱)した後、急速冷凍機を用いて凍結し、-20℃で7日間冷凍保管した。冷凍された魚肉つみれを500Wの電子レンジで1分間加熱(二次加熱)して、評価に用いた。評価項目は、「二次加熱後のジューシー感の評価(焼成歩留)」、「二次加熱直後のジューシー感の評価(目視評価)」、「肉汁の透明感の評価(目視評価)」、「冷えたときのジューシー感の評価(目視確認)」、「冷えたときの肉汁の透明感の評価(官能評価)」とし、評価結果は、表6に示した。
【0045】
【表7】
【0046】
<二次加熱後のジューシー感の評価(焼成歩留)>
二次加熱した魚肉つみれの重量を測定し、ボイル前の生地重量で除して、歩留を計算した。歩留が大きいほうが、一次加熱、二次加熱で肉汁がドリップせず、ジューシー感が維持できていることを表す。
8個測定した平均値にて以下の通りジューシー感を評価した。
◎:85.0%以上
○:82.5%以上、85.0%未満
△:80.0%以上、82.5%未満
×:80.0%未満
【0047】
<二次加熱直後のジューシー感の評価(目視評価)>
二次加熱した魚肉つみれを半分に切り、レオメーターにてφ30mmの円形平板冶具で50Nの荷重をかけたときに断面から流れ出る肉汁の量について、8名のパネラーで、以下の評価基準で目視評価した。目視評価においては、一次加熱のみ(冷凍なし)したものを2点とし、それよりも肉汁が多ければ3点、少なければ1点とした。
パネラー8名の平均値が、2.5点以上を◎、2.0点以上2.5点未満を○、1.5点以上2.0点未満を△、1.5点未満を×と評価した。
【0048】
<肉汁の透明感の評価(目視評価)>
二次加熱した魚肉つみれを半分に切り、断面から流れる肉汁の透明感について、8名のパネラーで、以下の評価基準で目視評価した。目視評価においては、白濁がなく透明なものを3点、肉汁の一部に白濁しているところがあるものを2点、肉汁が白濁しているものを1点として評価した。
パネラー8名の平均値が、2.5点以上を◎、2.0点以上2.5点未満を○、1.5点以上2.0点未満を△、1.5点未満を×と評価した。
【0049】
<冷えたときのジューシー感の評価(目視確認)>
二次加熱した魚肉つみれを常温にて1時間放置した後に半分に切り、レオメーターにてφ30mmの円形平板冶具で50Nの荷重をかけたときに断面から流れ出る肉汁の量について、8名のパネラーで、以下の評価基準で目視評価した。目視評価においては、一次加熱直後のものを2点とし、それよりも肉汁が多ければ3点、少なければ1点とした。
パネラー8名の平均値が、2.5点以上を◎、2.0点以上2.5点未満を○、1.5点以上2.0点未満を△、1.5点未満を×と評価した。
【0050】
<冷えたときの肉汁の透明感の評価(官能評価)>
二次加熱した魚肉つみれを常温にて1時間放置した後に半分に切り、断面から流れる肉汁の透明感について、8名のパネラーで、以下の評価基準で目視評価した。目視評価においては、白濁がなく透明なものを3点、肉汁の一部に白濁しているところがあるものを2点、肉汁が白濁しているものを1点として評価した。
パネラー8名の平均値が、2.5点以上を◎、2.0点以上2.5点未満を○、1.5点以上2.0点未満を△、1.5点未満を×と評価した。
【0051】
表6を見ると、魚肉つみれにおいても、ハンバーグと同様に、ジューシー感が強く、肉汁は透明感があり、また冷えてもジューシー感が維持される冷凍食品とすることできた。
【0052】
[処方例1:中華まん]
表8に示した配合にて、豚挽肉と、たまねぎ、椎茸、茹で筍、醤油、オイスターソース、砂糖、食塩、片栗粉を混合し、さらに実施例2の油中水型乳化物を加えて混合して、中華まんの具を調製した。次いで、得られた中華まんの具を皮で包み、蒸し器で加熱することで中華まんを得た。
【0053】
【表8】
【0054】
中華まんを冷凍して一週間冷凍保管した後、電子レンジで再加熱したところ、ハンバーグと同様にジューシー感が強く、肉汁は透明感があり、また冷えてもジューシー感が維持される冷凍食品とすることができた。
【0055】
[処方例2:メンチカツ]
表9に示した配合にて、牛挽肉、豚挽肉、玉ねぎ、パン粉、全卵、食塩、胡椒を混合し、さらに実施例8の油中水型乳化物を加えて混合して、メンチカツの具を調製した。次いで、このメンチカツの具に、バッター液、パン粉を付けて、約180℃の油で油ちょうし、メンチカツを得た。
【0056】
【表9】
【0057】
メンチカツを冷凍して一週間冷凍保管した後、電子レンジで再加熱したところ、ハンバーグと同様にジューシー感が強く、肉汁は透明感があり、また冷えてもジューシー感が維持される冷凍食品とすることができた。
【0058】
[処方例3:ロールキャベツ]
表10に示した配合にて、豚挽肉、鶏挽肉、玉ねぎ、パン粉、全卵、固形コンソメ、食塩、胡椒を混合し、さらに実施例7の油中水型乳化物を加えて混合して、ロールキャベツの具を得た。この調製した具を、キャベツで包み、コンソメスープで煮込むことでロールキャベツを得た。
【0059】
【表10】
【0060】
ロールキャベツを冷凍して一週間冷凍保管した後、電子レンジで再加熱したところ、ハンバーグと同様にジューシー感が強く、肉汁は透明感があり、また冷えてもジューシー感が維持される冷凍食品とすることができた。